説明

繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび繊維強化複合材料

【課題】
耐熱性と機械特性に優れた繊維強化複合材料を提供できるエポキシ樹脂組成物、取り扱い性良好なプリプレグ、および、耐熱性、ねじり強さに優れた繊維強化複合材料を提供すること。
【解決手段】
次の構成要素[A]、[B]、[C]を含むエポキシ樹脂組成物であり、[C]の最大粒径が10μm以下であることを特徴とする強化繊維複合材料用エポキシ樹脂組成物。
[A]エポキシ樹脂
[B]硬化剤
[C]フラーレン類
さらに、該エポキシ樹脂組成物と強化繊維とからなるプリプレグ、および該プリプレグを硬化せしめてなる繊維強化複合材料

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材料に有用なエポキシ樹脂組成物、繊維強化複合材料を得るための中間基材としてのプリプレグ、およびスポーツ用途、航空宇宙用途、一般産業用途に適した繊維強化複合材料、特に、ゴルフシャフト、釣り竿、自動車のプロペラシャフトなどの管状体材料に好適に用いることができる繊維強化複合材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分子内にエポキシ基を有する化合物で構成されるエポキシ樹脂と、その硬化剤とからなる一液型のエポキシ樹脂組成物は、その優れた機械強度、耐薬品性、耐熱性、金属部材や強化繊維などの基材との良好な接着性などのために、塗料・舗装材料、接着剤、あるいは炭素繊維などの強化繊維と組み合わせて繊維強化複合材料用マトリックス樹脂として用いられている。
【0003】
強化繊維とマトリックス樹脂とからなる繊維強化複合材料は、軽量性能と優れた強度特性のため、ゴルフシャフト、釣り竿、テニスやバトミントン等のラケット、ホッケー等のスティックなど、スポーツ用途をはじめ、航空宇宙用途、自動車・船舶、浴槽、ヘルメット等の一般産業用途などに広く用いられているが、さらなる軽量化要求に応えるため、かかる材料の強度特性を向上させる技術が必要とされている。特にゴルフシャフト、釣竿、自動車用プロペラシャフトなどは管状体としてのねじり強さが必要とされている。
【0004】
この要求に対して、例えば、カーボン短繊維を配合したエポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂として用い、一方向複合材料の機械物性を向上させる手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、かかる方法では、ゴルフクラブシャフトのような繊維方向が複数からなる積層構成を有する複合材料管状体のねじり強さに関しては、向上効果が不十分であり、更なる高性能な繊維強化複合材料への要求に対し応えきれず、かかる強度特性をさらに向上させる技術が必要であった。
【0005】
また、樹脂硬化物の圧縮降伏応力、圧縮降伏呼び歪み、圧縮弾性率、および圧縮破壊呼び歪みを一定の範囲内に制御して、複合材料管状体のねじり強さを向上する手法が知られている(例えば、特許文献2参照)。しかし、かかる方法でもねじり強さ向上効果は不十分で、圧縮破壊呼び歪みもしくは圧縮弾性率を高めようとすると耐熱性が低下する懸念があった。
【0006】
さらに、平均粒径が0.001μm以上30μm以下のフラーレン類を硬化性樹脂に配合してなる樹脂組成物により、樹脂曲げ強度を向上させる手法が知られている(例えば、特許文献3参照)が、かかる方法は、繊維強化複合材料の管状体のねじり強さ向上を示唆するものではなく、その効果も不十分であった。
【0007】
このように、これら公知の技術では、管状体のねじり強さに関して十分な効果を発現できるエポキシ樹脂組成物や繊維強化複合材料は未だ得られていないのが現状であった。
【特許文献1】特開2003−201388号公報
【特許文献2】特開2003−277471号公報
【特許文献3】特開2004−182775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述した問題点を解決し、優れた耐熱性および強度特性を有するエポキシ樹脂組成物、また、より軽量で強度特性に優れた繊維強化複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前述した目的を達成する為に以下の構成を有する。すなわち、次の構成要素[A]、[B]、[C]からなるエポキシ樹脂組成物であり、[C]の最大粒径が10μm以下であることを特徴とする繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
[A]エポキシ樹脂
[B]硬化剤
[C]フラーレン類
また、前記エポキシ樹脂組成物と強化繊維とからなるプリプレグ、さらには繊維強化複合材料である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、樹脂硬化物の圧縮弾性率、圧縮破壊呼び歪み、圧縮降伏応力、および耐熱性が良好である。
【0011】
また、本発明のプリプレグは、取り扱い性が良好であり、成形性に優れるため機械特性に優れた繊維強化複合材料を提供することができる。
【0012】
さらに、本発明の繊維強化複合材料は軽量で、かつ、例えば円筒状繊維強化複合材料のねじり強さなどが優れた機械特性を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、次の構成要素[A]、[B]、[C]からなるエポキシ樹脂組成物であり、[C]の最大粒径(測定方法は実施例で後述)が10μm以下であることを特徴とする強化繊維複合材料用エポキシ樹脂組成物である。
[A]エポキシ樹脂
[B]硬化剤
[C]フラーレン類
本発明には構成要素[A]としてエポキシ樹脂を含むことが必要である。構成要素[A]のエポキシ樹脂としては、分子内に平均して1個を超えるエポキシ基を有する化合物である。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂などを使用することができる。これらのエポキシ樹脂は、単独、または2種類以上を併用して使用することが出来、さらには液状のものから固体状のものまで使用することができる。
【0014】
本発明には構成要素[B]として硬化剤を含むことが必要である。構成要素[B]の硬化剤としては、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンのような芳香族アミン、脂肪族アミン、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物のようなカルボン酸、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリフェノール化合物、ノボラック樹脂、ポリメルカプタン、及びフッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体などを使用することができる。中でもジシアンジアミドを含むことが熱安定性の点から好ましい。また、これら硬化剤とエポキシ樹脂とを反応させて得られる硬化活性を有する付加物も、硬化剤に代用させて使用することができる。さらに、これら硬化剤をマイクロカプセル化したものは、プリプレグの保存安定性を高めるために、好ましく用いられる。
【0015】
本発明には構成要素[C]としてフラーレン類を含むことが必要である。フラーレン類としては、C60、C70、C76、C86、C116等挙げられ、単独、または2種類以上を混合して使用することができる。例えば、C60単独としては、ナノムパープル(C60(98%含有))[フロンティアカーボン(株)社製]などがあげられ、C60とC70の混合品としては、ナノムミックス(C60(60%)、C70(25%)含有))[フロンティアカーボン(株)社製]などがあげられる。また、上記フラーレン類を官能基化、水素化したものを用いても良く、水素化フラーレンや水酸化フラーレンの例としては、ナノムスペクトラ[フロンティアカーボン(株)社製]
などがあげられる。
【0016】
構成要素[C]の最大粒径は10μm以下であることが必要である。好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。最大粒径が大きいとプリプレグを作製する際に、粒径の大きい物が、加圧含浸しても、強化繊維束中に入り込まず、プリプレグ表面に残存し、樹脂の含浸性を悪化させる。そのため、繊維強化複合材料とした際に、ボイドが発生したり、粒子自体が破壊の起点となり物性低下を引き起こす。したがって、平均粒径ではなく、最大粒径の小さいことが重要である。
【0017】
構成要素[C]の配合量は、構成要素[A]100重量部に対し、[C]が0.001〜4重量部、好ましくは0.001〜0.5、さらに好ましくは、0.001〜0.05重量部である。0.001重量部未満の配合量であると、ねじり強さの向上効果が小さいことがあり、好ましくない。また4重量部を超えると、プリプレグ作製時の樹脂の含浸性が著しく低下することがあり、これが物性低下に繋がるため、好ましくない。
【0018】
構成要素[A]は粘度の低いエポキシ樹脂を含むことが好ましい。粘度の低いエポキシ樹脂を含むことで、[C]の粒度分布をシャープにでき、最大粒径を小さくすることができる。具体的には、25℃における粘度が10000mPa・s以下のエポキシ樹脂を5〜80重量%含むと良く、好ましくは、4000mPa・s以下、さらに好ましくは1000mPa・s以下、特に好ましくは400mPa・s以下のエポキシ樹脂を5〜80重量%含むと良い。
【0019】
また、構成要素[A]に含む25℃における粘度が10000mPa・s以下のエポキシ樹脂としては、グリシジルアミノ基を有することが特に好ましく、5〜80重量%含むことが好ましい。グリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂が5重量%以上であると[C]フラーレンの最大粒径が小さくなる効果が著しいことがあり、ねじり強さの向上効果が大きく好ましい。しかし、80重量%を超えて含まれるとプリプレグにした際、プリプレグのライフが悪くなることがあるため好ましくない。
【0020】
25℃における粘度が10000mPa・s以下のグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂としては、MY0500(Vantico Inc製、5000mPa・s)、Ep630(ジャパンエポキシレジン(株)製、1000mPa・s)、MY0510(Vantico Inc製、800mPa・s)、GAN(日本化薬(株)製、160mPa・s)、GOT(日本化薬(株)製、80mPa・s)などが挙げられる。
【0021】
本発明における構成要素[A]の平均エポキシ当量は200〜400であることが好ましい。かかるエポキシ当量となるように原料樹脂を配合することで、得られる樹脂硬化物の架橋密度を好ましい範囲とすることができる。即ち、エポキシ当量が大きいほど架橋点となるエポキシ基の密度が低下し、硬化物の架橋密度は小さくなるため、塑性変形能力を高めることができる。かかる平均エポキシ当量が200未満では樹脂硬化物の塑性変形能力が不十分で、円筒状繊維強化複合材料とした場合のねじり強さが不十分である。一方、400を超えると、樹脂硬化物の耐熱性が不十分になる。平均エポキシ当量が大きい方が、フラーレン類配合による物性(ねじり強さ)向上の効果が相乗的に大きくなるが、耐熱性とのバランスから、より好ましくは220〜390、さらに好ましくは240〜380である。
【0022】
ここで、エポキシ当量とは、エポキシ樹脂の質量(g)を樹脂に含まれる全エポキシ基のモル数で除した値である。樹脂の混合物のエポキシ当量は、混合物の直接滴定により定量化できるが、個々の平均エポキシ当量と配合量から計算によって求めることもできる。
【0023】
また、構成要素[A]には、平均エポキシ当量450以上、10000以下の2官能エポキシ樹脂を5重量%以上、60重量%以下含むことが、フラーレン類との相乗効果により、ねじり強さを向上できるため好ましい。平均エポキシ当量750以上の2官能エポキシ樹脂を5重量%以上、60重量%以下含むことがより好ましく、平均エポキシ当量1000以上、5000以下の2官能エポキシ樹脂を5重量%以上60重量%以下含むことがさらに好ましい。エポキシ樹脂は液状成分を含んでいるため、平均エポキシ当量が450以上、10000以下のエポキシ樹脂が5重量%未満であると、全体としての平均エポキシ当量を200以上とすることができず、塑性変形能力の向上効果が不十分となることがあり、一方で60重量%を超えて存在すると、プリプレグ製造工程における、樹脂の含浸性が不十分となることがあるので好ましくない。
【0024】
本発明においては、構成要素[A]にビフェニル、ナフタレン、フルオレン、ジシクロペンタジエン、およびオキサゾリドン環から選ばれる少なくとも1つの骨格を有する1種以上のエポキシ樹脂を含むことが好ましい。かかるエポキシ樹脂を1種以上含むことにより、フラーレン類との相乗効果による円筒状繊維強化複合材料のねじり強さが著しく向上し、樹脂硬化物の耐熱性も向上できる。
【0025】
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂は市販のものを用いてもよく、例えばエピコート(登録商標)YX4000、エピコートYX4000H、エピコートYL6121(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、NC3000、NC3000H(以上、日本化薬(株)製)などを挙げることができる。
【0026】
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂としてはエピクロン(登録商標)HP4032、エピクロンHP4032D、エピクロンH4032H、エピクロンEXA4750、エピクロンEXA4700、エピクロンEXA4701(以上、大日本インキ工業(株)製)、NC7000L、NC7300L(以上、日本化薬)などが挙げられる。
【0027】
フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂としてはオグソール(登録商標)PG、オグソール(登録商標)EG(以上、ナガセケムテックス(株)製)などを挙げることができる。
【0028】
ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂としては、エピクロン(登録商標)HP7200L(エポキシ当量245〜250、軟化点54〜58)、エピクロンHP7200(エポキシ当量255〜260、軟化点59〜63)、エピクロンHP7200H(エポキシ当量275〜280、軟化点80〜85)、エピクロンHP7200HH(エポキシ当量275〜280、軟化点87〜92)(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、XD−1000−L(エポキシ当量240〜255、軟化点60〜70)、XD−1000−2L(エポキシ当量235〜250、軟化点53〜63)(以上、日本化薬(株)製)、Tactix(登録商標)556(エポキシ当量215〜235、軟化点79℃)(Huntsman Inc社製)などを挙げることができる。
【0029】
オキサゾリドン環骨格を有するエポキシ樹脂としては、アラルダイトAER(登録商標)4152、XAC4151(以上、旭化成エポキシ(株)製)などを挙げることができる。
【0030】
かかるエポキシ樹脂の中でもビフェニル、ジシクロペンタジエン型、およびオキサゾリドン環から選ばれる骨格を有するエポキシ樹脂は、構成要素[C]のフラーレン類と組み合わせた場合にねじり強さの向上効果が大きい点で好ましい。特にビフェニル型、ジシクロペンタジエン型骨格を有するエポキシ樹脂ではねじり強さの向上効果が大きいため好ましく、耐熱性の向上の大きさからジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂との組み合わせが最も好ましい。
【0031】
本発明における前記構成要素[A]にビフェニル、ナフタレン、フルオレン、ジシクロペンタジエン、およびオキサゾリドン環から選ばれる少なくとも1つの骨格を有するエポキシ樹脂が、5〜50重量%含まれることが好ましい。7〜45重量%がより好ましく、10〜40重量%含まれることがさらに好ましい。5重量%未満では、ねじり強さと耐熱性の向上効果が小さく、50重量%を超えると、プリプレグ製造時の樹脂の強化繊維への含浸性が低下する。
【0032】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、エラストマー、無機粒子等を添加することができる。
【0033】
本発明に用いる熱可塑性樹脂としては、エポキシ樹脂に可溶なものが好ましい。またエポキシ樹脂に不溶のものであっても、粉砕し、微粒子化したものは好ましく、配合することができる。
【0034】
具体的にはポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアラミド、ポリアリレーンオキシド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリベンズイミダゾール、ポリメタクリル酸メチル等が用いられる。
【0035】
また、中でもエポキシ樹脂との相溶性、コンポジット物性への悪影響を及ぼさない等の理由から、分子内に水素結合性官能基を有する熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
【0036】
分子内に水素結合性官能基の有する熱可塑性樹脂のうち、特にポリアミドは硬化物の弾性率をほとんど損なわずに、靭性及び耐衝撃性を向上させるのに有効である。また、特にポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンは、硬化物の耐熱性を損なうことなく、炭素繊維との接着性を改善するのに有効である。さらに、ポリビニルアセタール、およびポリビニルホルマールは、加熱によりエポキシ樹脂に容易に可溶し、硬化物の耐熱性を損なうことなく炭素繊維との接着性を改善すると共に、粘度調整が可能であるため、本発明における熱可塑性樹脂として特に好ましい。
【0037】
本発明において、構成要素[A]のエポキシ樹脂100重量部に対して、熱可塑性樹脂は0.1〜10重量部含まれることが好ましく、0.1〜8重量部、さらには、0.1〜5重量部であることが好ましい。10重量部を超えると、プリプレグ製造工程において、強化繊維への樹脂の含浸性が不十分となり、繊維強化複合材料の物性が低下する場合がある。
【0038】
本発明において、硬化性を向上させるために、硬化促進剤を用いることができる。硬化促進剤としては、特に限定されないが、イミダゾール化合物、ウレア化合物、3級アミン等を挙げることができる。樹脂組成物の貯蔵安定性を高めるために、表面が樹脂被覆されているマイクロカプセル型の硬化促進剤を用いても良い。中でも硬化促進剤としてウレア化合物を含むことが、樹脂組成物の貯蔵安定性をほとんど損なうこと無く、十分な促進効果が得られるという理由から、好ましく用いられる。ウレア化合物として具体的には、3−(3,4−ジクロロフェニル)1,1−ジメチルウレア、商品名“DCMU99”保土谷化学製やトルエンビス(ジメチルウレア)、商品名“オミキュア24”PTIジャパン製などがあげられるがこれに限定されるものではない。
【0039】
ウレア化合物は、構成要素[A]のエポキシ樹脂100重量部に対して、1〜10重量部用いることが好ましい。1重量部未満では、促進効果が弱くなる為、樹脂組成物が135℃、2時間程度の加熱では、十分硬化しない場合があり、逆に10重量部を超えると、促進効果が強くなりすぎて、高温時の樹脂組成物の貯蔵安定性が不十分となる場合がある。
【0040】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、粘弾性測定装置で測定した測定周波数0.5Hzにおける30℃での貯蔵弾性率G’が3000〜1000000Paであることが好ましい。貯蔵弾性率G’が3000Pa未満では経時変化に伴いプリプレグのタック(粘着性)が悪化することにより、プリプレグ同士を貼り合わせにくくなり取り扱い性が悪くなることがあり、また、成形時の炉落ちの問題が発生することがある。1000000を超えると、プリプレグが固くなり円筒作成の際、プリプレグのドレープ性(しなやかさ)が悪くなりマンドレルに巻き付けにくく取り扱い性が悪くなることがあり好ましくない。
【0041】
本発明のプリプレグは、強化繊維に本発明のエポキシ樹脂組成物を含浸せしめたものである。
【0042】
本発明のプリプレグに用いる強化繊維は、特に限定されないが炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維等が使用できる。これらの繊維を2種以上混在させることもできるが、より軽量かつ高耐久性の成形品を得るために、炭素繊維を用いるのが好ましい。中でも引張弾性率が150〜650GPaであることが好ましく、200〜550GPaがより好ましく、300〜500GPaの炭素繊維を用いることが、軽量性能と力学特性に優れた材料を得るのに特に好ましい。
【0043】
本発明のプリプレグに含まれる強化繊維の形態及び配列は、例えば、一方向に引き揃えたもの、織物(クロス)、トウ、マット、ニット等が用いられる。中でも、積層構成によって容易に強度特性を設計可能であることから、一方向に引き揃えられたものを採用するのが好ましい。
【0044】
本発明のプリプレグ、および繊維強化複合材料の強化繊維重量含有率は60〜90重量%、より好ましくは70〜85重量%である。本発明のエポキシ樹脂組成物を用いた場合、このように繊維含有率の高い領域において、プリプレグの成形性、特に管状体(円筒状繊維強化複合材料)を成形する際の成形性向上効果が一段と明確に現れ優れたものになる。また前記樹脂組成とすることで、プリプレグにおける取り扱い性(タック性、ドレープ性等)の経時変化制御を行うこともできる。さらには得られる繊維強化複合材料の品位・性能も優れたものとすることができる。
【0045】
本発明のプリプレグは単位面積あたりの繊維重量が40〜250g/mであることが好ましく、さらには50〜200g/mであることが好ましい。単位面積あたりの繊維重量が40g/m未満であるとプリプレグの形状保持性が低下し、やや取扱いにくくなる。また単位面積あたりの繊維重量が250g/mを超えると、プリプレグ内部の繊維アライメントが乱れやすく、高性能な繊維強化複合材料となりにくい場合がある。
【0046】
ここでいう単位面積あたりの繊維重量及び繊維含有量はプリプレグから有機溶媒などにより樹脂を溶出し、繊維重量を計量することにより求めることができる。
【0047】
本発明の炭素繊維は、炭素繊維表面にエポキシ基、水酸基、アクリレート基、メタクリレート基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有するサイジング剤を付着させることで、炭素繊維表面の官能基、および樹脂硬化物のポリマーネットワーク中の官能基との間で化学結合、あるいは水素結合などの共有結合による相互作用を生じ、炭素繊維と樹脂硬化物との接着性を高めることができる。
【0048】
また、本発明に使用する炭素繊維には、ポリエチレンオキシド骨格を有する化合物を含むサイジング剤を付与する事が好ましい。ポリエチレンオキシド骨格を有する化合物を含むサイジング剤を用いることにより、フラーレン類を配合した際のねじり向上効果が大きくなり好ましい。ポリエチレンオキシド骨格を有する化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとビスフェノールA型エポキシ樹脂や、ビスフェノールF型エポキシ樹脂との反応物、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルとビスフェノールAやビスフェノールFとの反応物などが挙げられる。前記サイジング剤が付着した炭素繊維を製造する方法としては、例えば、サイジング剤を溶解又は分散させたサイジング液中に炭素繊維を通過させることで炭素繊維表面に付着させ、その後、加熱して溶媒を除去する方法がある。
【0049】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、構成要素[C]を予め液状エポキシ樹脂など分散媒に分散する工程と、構成要素[C]が分散したエポキシ樹脂に、さらにエポキシ樹脂、構成要素[B]の硬化剤、その他の硬化促進剤や熱可塑性樹脂などの成分を配合して製造することが好ましい。
【0050】
本発明のプリプレグは、上記の製造方法により調製された繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸することで、プリプレグを作製するプリプレグ化工程によって製造されることが好ましい。
【0051】
分散処理方法としては、ニーダー、プラネタリーミキサー、二軸押出機、三本ロール、ホモミキサー、ディゾルバー、ボールミル、ビーズミル、超音波等を挙げることができる。本発明の分散工程ではホモミキサー、ビーズミル、超音波を用いると最大粒径が小さくなるため好ましく、ビーズミル、超音波を用いるとより好ましい。さらに、ビーズミルで粒径を小さくした後に超音波を用いると最も好ましい。分散媒100重量部に対して[C]を0.003〜20重量部で分散することが好ましく、さらに0.01〜10重量部であると好ましく、0.02〜3部重量部であることが最も好ましい。0.003重量部未満では、エポキシ樹脂組成物とした際にフラーレン類の配合量が少なくなり物性の向上効果が小さい可能性や、配合量を増やすために液状エポキシ樹脂成分が多くなり、プリプレグの取り扱い性が悪くなる場合があるため好ましくない。20重量部より多くなると、分散工程で多大な時間を要したり、最大粒径が小さくならない場合があるため、好ましくない。
【0052】
ビーズミル分散においては、ビーズの直径は小さいものを使用することが分散性の観点から好ましい。ビーズ直径は1mm以下が好ましく、0.5mm以下であるとより好ましく、0.3mm以下であるとさらに好ましい。
【0053】
超音波分散装置の周波数は10kHz以上、100kHz以下であることが好ましく、20kHz以上、50kHz以下であることがさらに好ましい。10kHz未満では分散能力が小さく粒径が小さくなりにくい場合があり好ましくない。100kHzより大きいと化学作用が起き、エポキシ樹脂の分子鎖が切断されるなど物性の低下に繋がる可能性があるため好ましくない。超音波分散装置の振幅は1μm以上、100μm以下であることが好ましい。1μm未満であると粒径が小さくなりにくい場合があり好ましくない。100μmを超えるとエポキシ樹脂の分子が切断されるなどの物性低下に繋がる可能性があるため好ましくない。
【0054】
分散工程で使用する分散媒としては、粘度が小さいことが好ましい。高い粘度の分散媒を用いると、[C]の粒度分布がブロードになり最大粒径が小さくならず、物性の低下に繋がる可能性が有るため好ましくない。効率的に粒径を小さくする為には、分散媒の粘度をある一定値以下にすることが好ましい。具体的には、25℃における粘度が10000mPa・s以下が良く、好ましくは、4000mPa・s以下、さらに好ましくは1000mPa・s以下が良く、最も好ましくは400mPa・s以下が良い。
【0055】
分散媒としては、エポキシ樹脂、もしくは硬化剤と反応しうる官能基を有する化合物であることが好ましく、特にエポキシ樹脂であることが好ましい。エポキシ樹脂組成物を硬化する際に、分散媒がエポキシ樹脂もしくは硬化剤と反応し系中に取り込まれないと、耐熱性や物性低下の可能性があるため好ましくない。
【0056】
分散媒は2種類以上の化合物の混合品でも良く、高粘度の分散媒と低粘度の分散媒との組み合わせによって低粘度化しても良い。その場合、常圧における沸点は200℃以上の化合物であることが好ましい。沸点200℃未満の化合物と混合し低粘度化した場合、硬化時にボイドの原因となり物性低下に繋がるため好ましくない。
【0057】
分散媒の官能基としては、グリシジルアミノ基を有する化合物であることが好ましい。グリシジルアミノ基を有する化合物の粘度も低いことが好ましく、25℃における粘度が10000mPa・s以下が良く、好ましくは4000mPa・s以下、さらにこのましくは1000mPa・s以下、最も好ましくは400mPa・s以下が良い。グリシジルアミノ基を有する化合物としては、MY0500(Vantico Inc製、5000mPa・s)、Ep630(ジャパンエポキシレジン(株)製、1000mPa・s)、MY0510(Vantico Inc製、800mPa・s)、GAN(日本化薬(株)製、160mPa・s)、GOT(日本化薬(株)製、80mPa・s)などが挙げられる。
【0058】
ここで分散媒にエポキシ樹脂を用いた場合、構成要素[A]は構成要素[C]を予め分散させたエポキシ樹脂とさらに分散媒としてのエポキシ樹脂とを加えた成分となりうる。
【0059】
なお、本発明における、樹脂調製工程では、ニーダー、プラネタリーミキサー、二軸押出機を用いることが好ましい。
【0060】
次に、本発明のプリプレグ化工程では、ホットメルト法を用いることが好ましい。プリプレグの製造方法は、マトリックス樹脂をメチルエチルケトン、メタノールなどの溶媒に溶解して低粘度化し、含浸させるウエット法と、加熱により低粘度化し、含浸させるホットメルト法などの方法により製造される。
【0061】
ウェット法は、炭素繊維等をエポキシ樹脂組成物からなる液体に浸漬した後、引き上げ、オーブンなどを用いて溶媒を蒸発させてプリプレグを得る方法である。
【0062】
ホットメルト法は、加熱により低粘度化したエポキシ樹脂組成物を直接炭素繊維等に含浸させる方法、あるいは一旦エポキシ樹脂組成物を離型紙などの上にコーティングしたフィルムをまず作成し、ついで炭素繊維等の両側あるいは片側から該フィルムを重ね、加熱加圧することにより樹脂を含浸させたプリプレグを製造する方法である。ホットメルト法には、プリプレグ中に残留する溶媒がないため好ましい。
【0063】
本発明の繊維強化複合材料の成形は、例えば以下の要領で行われる。プリプレグを裁断して得たパターンを積層後、積層物に圧力を付与しながら、樹脂を加熱硬化させることにより、繊維強化複合材料が得られる。熱および圧力を付与する方法には、プレス成型法、オートクレーブ成型法、真空圧成形法、シートワインディング法、および内圧成形法などがあり、特にスポーツ用品に関しては、シートワインディング法あるいは内圧成形法が好ましく採用される。
【0064】
シートワインディング法は、マンドレルにプリプレグを巻いて円筒状物を成形する方法であり、ゴルフシャフトや釣竿などの棒状体を作成する際に好適である。具体的には、マンドレルにプリプレグを巻き付け、プリプレグがマンドレルから剥離しないように固定したり、または、プリプレグに成形圧力を付与するために、プリプレグの外側にテープ状の熱可塑性樹脂フィルム(ラッピングテープ)を巻き付け、オーブンで樹脂を加熱硬化させた後に、芯金を抜き取って円筒状成形物を得る方法である。
【0065】
内圧成形法は、熱可塑性樹脂よりなる内圧付与体の外側にプリプレグを巻き付けたプリフォームを金型内にセットし、内圧付与体に高圧空気を導入して加圧し、同時に金型を加熱することにより繊維強化複合材料を成形する方法である。この内圧成形法は、特殊形状のゴルフシャフトやバット、特にテニスやバトミントンなどのラケットのような複雑な形状を成形する際に好適に用いられる。
【0066】
本発明の繊維強化複合材料は、ガラス転移温度が100〜150℃であることが好ましく、100〜140℃がより好ましい。100℃未満であると、スポーツ用途などにおいて耐熱性が不足することがある。150℃を超えると、残留熱応力が大きく、加熱硬化後の繊維強化複合材料の機械物性が低くなることがある。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、実施例中の評価方法は以下に示す通りである。表1、表2、表3、表4、表5、および表6に各実施例の樹脂組成、プリプレグ特性、繊維強化複合材料特性をまとめて示す。
【0068】
A.樹脂調製
表1〜6に示す構成要素[A]の欄に示すエポキシ樹脂のうち任意に選んだ液状のエポキシ樹脂と[C]フラーレン類を用いて分散処理を行った。得られたフラーレン配合エポキシ樹脂と残りの樹脂原料および[B]硬化剤、その他添加剤等をニーダー混練によって調製した。
【0069】
B.硬化物中に分散するフラーレン類の最大粒径測定
A.にて得られたエポキシ樹脂組成物を80℃に加熱して真空ポンプにて脱泡後、モールドに注入し、130℃で90分間、加熱処理することにより、樹脂硬化物の板を作製した。得られたエポキシ樹脂硬化物の断面を、日立株式会社製System S−4100走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、以下の測定条件にて観察した。樹脂硬化物中に存在するフラーレン類の凝集粒子100個の粒径の最長径を測定し、その中で最も大きい粒子径を本発明における最大粒径とした。
加速電圧:3kV
蒸着:Pt−Pd 約4μm
C.プリプレグの作製
a.バイアス材の作製
エポキシ樹脂組成物を、リバースロールコーターを用いて離型紙状に塗布して樹脂フィルムを作製した。次に、一方向に配列させた引張弾性率392GPaの炭素繊維“トレカ”(登録商標)M40SC−12K(東レ(株)社製)の両側面に樹脂フィルムを重ね、加熱加圧(130℃、0.4MPa)することによって、樹脂を含浸させ、プリプレグの単位面積あたりの繊維重量が125g/m、繊維重量含有率が76%の一方向プリプレグを作製した。
【0070】
b.ストレート材の作製
エポキシ樹脂組成物を、リバースロールコーターを用いて離型紙上に塗布して樹脂フィルムを作製した。次に、一方向に配列させた引張弾性率295GPaの炭素繊維“トレカ”(登録商標)T800H−12K(東レ(株)社製)の両側面に樹脂フィルムを重ね、加熱加圧(130℃、0.4MPa)することによって、樹脂を含浸させ、プリプレグ単位面積あたりの繊維重量が125g/m、繊維重量含有率が76%の一方向プリプレグを作製した。
【0071】
D.含浸性
できあがったプリプレグの含浸性を目視および触感で4段階評価した。表には極めて良好を○○、良好を○、若干未含浸部があったものを△、含浸不良を×で表した。
【0072】
E.円筒状繊維強化複合材料の作製
下記(a)〜(e)の操作により、円筒軸方向に対して[0/±45](すなわち、円筒内側より、+45°の繊維方向と−45°の繊維方向を交互に各3層した外側に0°の繊維方向を3層)の積層構成を有し、内径が10mmの円筒状繊維強化複合材料を作製した。マンドレルには直径10mm(いずれも長さ1000mm)のステンレス製丸棒を使用した。
(a)一方向プリプレグを繊維の方向がマンドレルの軸方向に対して45°になるように、縦800mm×横103mmの長方形に2枚切り出した。この2枚の離型フィルムを剥いだ直後に繊維方向が互いに交差するように、かつ横方向に16mm(マンドレル半周分に対応)ずらして貼り合わせた。
(b)貼り合わせたプリプレグ(バイアス材)の離型紙をはぎ取り、離型処理したマンドレルに、プリプレグの縦方向とマンドレルの軸方向が一致するように巻き付けた。
(c)その上に、プリプレグ(ストレート材)を繊維の方向が縦方向になるように、縦800mm×横112mmの長方形に切り出したものをプリプレグの縦方向とマンドレルの軸方向が一致するように巻き付けた。
(d)ラッピングテープ(耐熱性フィルムテープ)を巻きつけ、硬化炉中で130℃、2時間加熱成形した。
(e)成形後、マンドレルを抜き取り、ラッピングテープを除去して円筒状繊維強化複合材料を得た。
【0073】
F.円筒繊維強化複合材料のねじり強さの測定
内径10mmの円筒状繊維強化複合材料から長さ350mmの試験片を切り出し、「ゴルフクラブ用シャフトの認定基準及び基準確認方法」(製品安全協会編、通商産業大臣承認5産第2087号、1993年)に記載の方法に従い、ねじり試験を行った。試験片ゲージ長は250mmとし、試験片両端の50mmを固定治具で把持した。ねじり強さは次式により求めた。
【0074】
ねじり強さ(N・m・deg)=破壊トルク(N・m)×破壊時のねじれ角(deg)
G.ガラス転移温度(Tg)
E.で作製した円筒状繊維強化複合材料を用い、JIS K7121−1987に従い、示差走査熱量計(DSC)によりガラス転移温度測定を行った。容量50μlの密閉型サンプル容器に15〜20mgの試料を詰め、昇温速度40℃/分で30〜200℃まで昇温し、測定した。尚、ここでは、測定装置としてPerkinElmer社製Pyris1DSCを使用した。
【0075】
具体的には、得られたDSC曲線の階段状変化を示す部分において、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度をガラス転移温度とした。
【0076】
(比較例1)
表1に示すエピコート807の内15重量部(分散媒)中にナノムミックス(0.03重量部)を配合し、60℃でニーダー分散を行った。その後、残りのエポキシ樹脂原料およびビニレックK(熱可塑性樹脂)を配合し加熱溶融した後、60℃でジシアンジアミド、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレアを配合しエポキシ樹脂組成物を作製した。得られたエポキシ樹脂組成物を用いて前記方法によりエポキシ樹脂硬化物、プリプレグ、円筒状繊維強化複合材料を作製した。得られたエポキシ樹脂硬化物中の最大粒径は20μmと大きく、得られたプリプレグは樹脂の含浸不良があった。円筒状繊維強化複合材料のねじり強さは1716N・m・degと低いものであった。
(実施例1)
表1に示すエピコート807の内15重量部(分散媒)中にナノムミックス(0.03重量部)を配合し60℃、ホモミキサー分散を行った後、超音波分散(振幅1μm)を行った以外は比較例1と同様の方法でエポキシ樹脂硬化物、プリプレグ、円筒状繊維強化複合材料を作製した。得られたエポキシ樹脂硬化物中の最大粒径は10μmと小さく、得られたプリプレグは若干の樹脂未含浸部があったが、円筒状繊維強化複合材料のねじり強さは2123N・m・degと高いものであった。
(実施例2)
超音波分散時に振幅を10μmに変更した以外は比較例1と同様の方法でエポキシ樹脂硬化物、プリプレグ、円筒状繊維強化複合材料を作製した。結果、表1に示す通り、得られたエポキシ樹脂硬化物中の最大粒径は5μmと小さく、得られたプリプレグの含浸性は良好であった。円筒状繊維強化複合材料のねじり強さは2309N・m・degと高いものであった。
(実施例3)
超音波分散時に振幅を20μmに変更した以外は比較例1と同様の方法でエポキシ樹脂硬化物、プリプレグ、円筒状繊維強化複合材料を作製した。結果、表1に示す通り、得られたエポキシ樹脂硬化物中の最大粒径は1μmと小さく、得られたプリプレグの含浸性は極めて良好であった。円筒状繊維強化複合材料のねじり強さは2512N・m・degと高いものであった。
(実施例4)
超音波分散時に振幅を50μmに変更した以外は比較例1と同様の方法でエポキシ樹脂硬化物、プリプレグ、円筒状繊維強化複合材料を作製した。結果、表1に示す通り、得られたエポキシ樹脂硬化物中の最大粒径は0.5μmと小さく、得られたプリプレグの含浸性は極めて良好であった。円筒状繊維強化複合材料のねじり強さは2562N・m・degと高いものであった。
【0077】
【表1】

【0078】
(比較例2)
表2に示す通り、ナノムミックスを未配合に変更した以外は実施例4と同様の方法でプリプレグ、円筒状繊維強化複合材料を作製した。結果、表1に示す通り、得られたプリプレグの含浸性は極めて良好であったが、円筒状繊維強化複合材料のねじり強さは1905N・m・degと実施例と比較すると低いものであった。
(実施例5および6)
表2に示す配合比でナノムミックスを配合した以外は実施例4と同様の方法でエポキシ樹脂硬化物、プリプレグ、円筒状繊維強化複合材料を作製した。得られた樹脂硬化物の最大粒径はいずれも0.5μmと小さく、得られたプリプレグの含浸性も極めて良好であった。円筒状繊維強化複合材料のねじり強さはいずれも高いものであった。
(実施例7〜9)
表2に示す配合比でナノムミックスを配合した以外は実施例4と同様の方法でエポキシ樹脂硬化物、プリプレグ、円筒状繊維強化複合材料を作製した。得られた樹脂硬化物の最大粒径はいずれも0.5μmと小さく、得られたプリプレグは[C]の配合量が多くなると樹脂の未含浸部が増える傾向があった。円筒状繊維強化複合材料のねじり強さも高いものであったが、構成要素[C]の配合量が多くなると、ねじり強さが低下する傾向あった。
【0079】
【表2】

【0080】
(実施例10)
分散媒としてエピコート828の内15重量部を使用した以外は実施例7と同様の方法でエポキシ樹脂硬化物、プリプレグ、円筒状繊維強化複合材料を作製した。結果、表3に示す通り、得られた樹脂硬化物の最大粒径はいずれも10μmと大きく、得られたプリプレグは、若干、樹脂の未含浸部があった。円筒状繊維強化複合材料のねじり強さは2079N・m・degであり、比較例と比べると高いものであったが、実施例7と比較すると低下した。耐熱性は向上した。
(実施例11)
分散媒としてエピコート826の内15重量部を使用した以外は実施例7と同様の方法でエポキシ樹脂硬化物、プリプレグ、円筒状繊維強化複合材料を作製した。結果、表3に示す通り、得られた樹脂硬化物の最大粒径はいずれも5μmと大きく、得られたプリプレグの含浸性は良好であったが実施例7と比較すると若干、低下した。円筒状繊維強化複合材料のねじり強さは2268N・m・degと比較例と比べると高いものであったが、実施例7と比較すると若干、低下した。耐熱性は向上した。
(実施例12)
分散媒としてデナコールEx146の内15重量部を使用した以外は実施例7と同様の方法でエポキシ樹脂硬化物、プリプレグ、円筒状繊維強化複合材料を作製した。結果、表3に示す通り、得られた樹脂硬化物の最大粒径は0.4μmと小さく、得られたプリプレグの含浸性は極めて良好であった。円筒状繊維強化複合材料のねじり強さも2828N・m・degと高いものであったが、耐熱性が低下した。
(実施例13)
分散媒としてGANの内15重量部を使用した以外は実施例7と同様の方法でエポキシ樹脂硬化物、プリプレグ、円筒状繊維強化複合材料を作製した。結果、表3に示す通り、得られた樹脂硬化物の最大粒径は0.2μmと非常に小さく、得られたプリプレグの含浸性も極めて良好であった。円筒状繊維強化複合材料のねじり強さも2945N・m・degと高いものであったが、耐熱性が低下した。
【0081】
【表3】

【0082】
(実施例14および15)
表4に示す配合比でエポキシ樹脂を配合した以外は実施例13と同様の方法でエポキシ樹脂硬化物、プリプレグ、円筒状繊維強化複合材料を作製した。得られた樹脂硬化物の最大粒径は0.2μmと非常に小さく、得られたプリプレグの含浸性も極めて良好であった。円筒状繊維強化複合材料のねじり強さも高いものであったが、実施例13と比較し平均エポキシ当量が小さくなるとねじり強さが低下する傾向がみられた。一方、耐熱性は向上した。
(実施例16)
表4に示す配合比でエポキシ樹脂を配合した以外は実施例13と同様の方法でエポキシ樹脂硬化物、プリプレグ、円筒状繊維強化複合材料を作製した。得られた樹脂硬化物の最大粒径は0.2μmと非常に小さかった。得られたプリプレグの含浸性は良好であったが若干、低下した。円筒状繊維強化複合材料のねじり強さも高いものであったが、耐熱性が若干、低下した。
(実施例17および18)
表4に示す配合比でエポキシ樹脂を配合した以外は実施例13と同様の方法でエポキシ樹脂硬化物、プリプレグ、円筒状繊維強化複合材料を作製した。得られた樹脂硬化物の最大粒径は0.2μmと非常に小さかった。得られたプリプレグの含浸性は良好であった。円筒状繊維強化複合材料のねじり強さも高く優れものであったが、平均エポキシ当量が増えるに従い若干、耐熱性が低下傾向がみられた。
【0083】
【表4】

【0084】
(実施例19)
表5に示す配合比でオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を配合した以外は実施例16と同様の方法でエポキシ樹脂硬化物、プリプレグ、円筒状繊維強化複合材料を作製した。得られた樹脂硬化物の最大粒径は0.2μmと非常に小さかった。得られたプリプレグの含浸性は極めて良好であった。円筒状繊維強化複合材料のねじり強さも実施例16と同様に高く、また、耐熱性にも優れたものであった。
(実施例20)
表5に示す配合比でビフェニル骨格含有エポキシ樹脂を配合した以外は実施例16と同様の方法でエポキシ樹脂硬化物、プリプレグ、円筒状繊維強化複合材料を作製した。得られた樹脂硬化物の最大粒径は0.2μmと非常に小さかった。得られたプリプレグの含浸性は極めて良好であった。円筒状繊維強化複合材料のねじり強さも実施例16と比べてさらに高く、また、耐熱性にも優れたものであった。
(実施例21)
表5に示す配合比でジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を配合した以外は実施例16と同様の方法でエポキシ樹脂硬化物、プリプレグ、円筒状繊維強化複合材料を作製した。得られた樹脂硬化物の最大粒径は0.2μmと非常に小さかった。得られたプリプレグの含浸性は極めて良好であった。円筒状繊維強化複合材料のねじり強さも実施例16と比べて特に高く、また、耐熱性にも特に優れたものであった。
【0085】
【表5】

【0086】
(実施例22)
炭素繊維のサイジング剤としてポリエチレンオキシド骨格を有するサイジング剤(ビスフェノールA型樹脂/ポリエチレングリコール=50/50重量%)を1.0重量%を付着させた以外は、実施例4と同様の方法でエポキシ樹脂硬化物、プリプレグ、円筒状繊維強化複合材料を作製した。得られた樹脂硬化物の最大粒径は0.2μmと非常に小さかった。得られたプリプレグの含浸性は極めて良好であった。円筒状繊維強化複合材料のねじり強さも実施例4と比較して高く、耐熱性にも優れたものであった。
【0087】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構成要素[A]、[B]、[C]を含むエポキシ樹脂組成物であり、[C]の最大粒径が10μm以下であることを特徴とする繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
[A]エポキシ樹脂
[B]硬化剤
[C]フラーレン類
【請求項2】
構成要素[A]100重量部に対し、[C]を0.001〜4重量部配合させる請求項1記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
構成要素[A]に、25℃における粘度が10000mPa・s以下のエポキシ樹脂が5〜80重量%含まれる請求項1〜2のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
構成要素[A]に、グリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂が5〜80重量%含まれる請求項3に記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
構成要素[A]の平均エポキシ当量が200〜400である請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
構成要素[A]に平均エポキシ当量450以上10000以下の2官能エポキシ樹脂が5〜60重量%含まれる請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
構成要素[A]に、ビフェニル、ナフタレン、フルオレン、ジシクロペンタジエン、およびオキサゾリドン環から選ばれる少なくとも1つの骨格を有する1種以上のエポキシ樹脂が、5〜50重量%含まれる請求項1〜6のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
構成要素[A]100重量部に対し、分子内に水素結合性官能基を有する熱可塑性樹脂が0.1〜10重量部含まれる請求項1〜7のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール、またはポリビニルホルマールである請求項8に記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
ウレア化合物を含む請求項1〜9のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸してなるプリプレグ。
【請求項12】
ポリエチレンオキシド骨格を有する化合物を含むサイジング剤を付与する強化繊維を使用することを特徴とする請求項11記載のプリプレグ。
【請求項13】
液状のエポキシ樹脂に構成要素[C]を分散させる分散工程と、調製されたエポキシ樹脂混合物に構成要素[B]を配合し繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を調製する樹脂調製工程を有する製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂を強化繊維に含浸してプリプレグを作製するプリプレグ化工程を有する製造方法。
【請求項15】
請求項11または12に記載のプリプレグを硬化せしめてなる繊維強化複合材料。
【請求項16】
硬化物のガラス転移温度が100〜150℃である請求項15に記載の繊維強化複合材料。
【請求項17】
請求項15または16に記載の繊維強化複合材料を用いてなる繊維強化複合材料製管状体。

【公開番号】特開2006−124555(P2006−124555A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315960(P2004−315960)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】