説明

置換ナフチルベンゾチオフェン酸

本発明は、一般的に、置換ナフチルベンゾチオフェン酸およびその使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な記載】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2004年9月23日に出願された米国出願番号第 号の優先権を主張し、2003年9月23日に出願された仮出願番号第60/505,982号の利益を受け、それらの開示は出典明示により本明細書に組み入れる。
【0002】
発明の背景
本発明は、一般的に、置換ナフチルベンゾチオフェン酸およびその使用方法に関する。
【0003】
セリンプロテアーゼ阻害剤PAI−1は、線溶系の主要な阻害剤の1つである。線溶系は、2種の組織型プラスミノーゲンアクチベータ、t−PAまたはu−PAの1つにより活性酵素、プラスミンに変換される、プロ酵素プラスミノーゲンを含む。PAI−1は、t−PAおよびu−PAの主要な生理学的阻害剤である。プラスミンの線溶系における主な役割の1つは、血管外傷部位でのフィブリンの消化である。しかしながら、線溶系は、循環系からフィブリンを除去することに関するだけでなく、排卵、胚形成、内膜増殖、血管新生、腫瘍形成およびアテローム性動脈硬化症を含む他のいくつかの生物学的プロセスにも関与する。
【0004】
高レベルのPAI−1は、線溶系の障害に付随するものを含む種々の疾患および症状に関連する。例えば、高レベルのPAI−1は、血栓症、例えば血管の血流を局所的に妨害するか、または血流の下流を塞ぐように閉塞して引き離す血栓の形成により特徴付けられる疾患に関与している(Krishnamurti, Blood, 69, 798 (1987); Reilly, Arteriosclerosis and Thrombosis, 11, 1276 (1991); Carmeliet, Journal of Clinical Investigation, 92, 2756 (1993), Rocha, Fibrinolysis, 8, 294, 1994; Aznar, Haemostasis 24, 243 (1994))。PAI−1活性の抗体中和は、内因性血栓溶解および再潅流を促進させる(Biemond, Circulation, 91, 1175 (1995); Levi, Circulation 85, 305, (1992))。また、高レベルの PAI-1は、多嚢胞性卵巣症候群 (Nordt, Journal of clinical Endocrinology and Metabolism, 85, 4, 1563 (2000))、エストロゲン欠乏により引き起こされる骨喪失(Daci, Journal of Bone and Mineral Research, 15, 8, 1510 (2000))、嚢胞性線維症、糖尿病、慢性歯周炎、リンパ腫、細胞外マトリックス蓄積に付随する疾患、悪性腫瘍および新血管新生に付随する疾患、炎症性疾患、感染症に付随する血管損傷およびuPAレベルの増加に関連する疾患、例えば乳癌および卵巣癌に関与する。
【0005】
上記を考慮して、PAI−1活性の阻害剤の同定および高レベルのPAI−1に関連する障害を治療するために対象のPAI−1発現または活性をモジュレートするための同定した阻害剤の使用方法の必要性がある。
【0006】
概要
本発明は、置換ナフチルベンゾチオフェン酸およびその使用方法を提供する。ある具体例において、本発明の置換ナフチルベンゾチオフェン酸は、下記式:
【化1】

[ここに:
R、R、RおよびRは、独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、−CH−(C−Cシクロアルキル)、C−Cアルカノイル、ハロ、ヒドロキシ、アリール、ヘテロアリール、C−Cペルフルオロアルキル、C−Cアルコキシ、アミノ、−NH(C−Cアルキル)、−N(C−Cアルキル)またはC−Cペルフルオロアルコキシであり;
は、水素、C−Cアルキル、ペルフルオロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、−CH、−CH(OH)R、−C(=O)R、−CH(SH)R、−C(=S)Rまたは−(CH−C−Cシクロアルキルであり;
nは、0〜6の整数であり;
mは、0〜6の整数であり;
は、水素、C−Cアルキル、ペルフルオロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、C−Cシクロアルキル、アリールアルキルまたは−(CH−C−Cシクロアルキルであり;
pは、0〜6の整数であり;
は、水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、−CH−(C−Cシクロアルキル)、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールまたはヘテロアリールであり;
Aは、COOHまたは酸ミミックである]
で示される化合物を含む。
【0007】
また、本発明は、とりわけ、式1の医薬上許容される塩またはエステルを提供する。
さらに、本発明は、とりわけ、置換ナフチルベンゾチオフェン酸の使用方法を提供する。本発明の一の態様において、治療的に有効な量の1個以上の置換ナフチルベンゾチオフェン酸は、例えば対象のPAI−1活性を阻害することによりPAI−1関連障害を治療するために対象に投与される。PAI−1活性は、多くの疾患および症状に関連している。例えば、本発明の一の具体例において、PAI−1活性は、線溶系の障害に関連する。他の態様において、PAI−1活性は、血栓症、例えば、静脈血栓症、動脈血栓症、脳血栓症、および深部静脈血栓症、心房性細動、肺線維症、手術の血栓塞栓性合併症、心血管疾患、例えば、心筋虚血、動脈硬化性プラーク形成、慢性閉塞性肺疾患、腎線維症、多嚢胞性卵巣症候群、アルツハイマー病または癌に関連する。
【0008】
発明の詳細な記載
A.一般概要
本発明は、PAI−1活性を阻害する化合物、かかる化合物の製造方法、かかる化合物を含有する医薬組成物および医薬療法におけるかかる化合物の使用方法を提供する。PAI−1の産生および/または作用に関連する種々の疾患および障害の、予防および阻害を含む治療に有用である特性を有する。これらは、限定するものではないが、血栓症、冠状動脈性心臓病、腎線維症、動脈硬化性プラーク形成、肺疾患、心筋虚血、心房性細動、凝固症候群、手術の血栓塞栓性合併症、末梢動脈閉塞および肺線維症を含む線溶系の障害から生じる障害を含む。他の障害は、限定するものではないが、多嚢胞性卵巣症候群、アルツハイマー病および癌を含む。
【0009】
本明細書で用いられる「アルキル」および「アルキレン」なる用語は、単独または他の基の一部として用いられても、置換または非置換脂肪族炭化水素鎖を意味し、その違いは、アルキル基が事実上一価(すなわち、末端)であるのに対して、アルキレン基は二価であり、典型的にはリンカーとして提供されることである。両方とも、限定するものではないが、特記しない限り、1〜約12個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子を含有する、直鎖および分枝鎖を含む。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、i−ブチルおよびt−ブチルは、「アルキル」なる用語に含まれる。特に、「アルキル」の定義には、置換されていてもよい脂肪族炭化水素鎖も含まれる。代表的な任意の置換基は、限定するものではないが、ハロゲン、シアノ、アリール、ヒドロキシ、アシルオキシ、アルコキシ、アミノ、1または2個の1〜6個の炭素原子のアルキル基により置換されているアミノ、アミノアシル、アシルアミノ、1〜6個の炭素原子のチオアルコキシ、1〜6個の炭素原子の置換チオアルコキシおよびトリハロメチルを含む。好ましい置換基は、ハロゲン、−CN、−OHおよびアミノ基を含む。好ましくは、アルキルおよびアルキレン基は非置換である。
本明細書の定義で用いられる炭素数は、炭素骨格および炭素分枝鎖を意味し、置換基、例えばアルコキシ置換基などの炭素原子は含まない。
【0010】
「アルケニル」なる用語は、本明細書で用いられる場合、単独または他の基の一部として用いられても、置換または非置換脂肪族炭化水素鎖を意味し、限定するものではないが、2〜約10個の炭素原子を有し、少なくとも1個の二重結合を含有する、直鎖および分枝鎖を含む。好ましくは、アルケニル基は、1または2個の二重結合を有する。かかるアルケニル基は、EまたはZの立体構造で存在することができ、本発明の化合物は、両方の立体構造も含む。特に、「アルケニル」の定義には、置換されていてもよい脂肪族炭化水素鎖も含まれる。代表的な任意の置換基は、限定するものではないが、アリール、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アシルオキシ、アルコキシ、アミノ、1または2個の1〜6個の炭素原子のアルキル基により置換されているアミノ、アミノアシル、アシルアミノ、1〜6個の炭素原子のチオアルコキシ、1〜6個の炭素原子の置換チオアルコキシおよびトリハロメチルを含む。好ましい置換基は、ハロゲン、−CN、−OHおよびアミノ基を含む。アルケニルに結合したヘテロ原子、例えばOまたはSは、二重結合に結合している炭素原子に結合すべきではない。好ましくは、アルケニル基は非置換である。
【0011】
「アルキニル」なる用語は、本明細書で用いられる場合、単独または他の基の一部として用いられても、置換または非置換の脂肪族炭化水素を意味し、限定するものではないが、2〜約10個の炭素原子を有し、少なくとも1個の三重結合を含有する、直鎖および分枝鎖を含む。好ましくは、アルキニル基は3〜6個の炭素原子を有する。ある具体例において、アルキニルは、1個以上の三重結合を含有することができ、かかる場合において、アルキニル基は、少なくとも3個の炭素原子を含有しなければならない。特に、「アルキニル」の定義には、置換されていてもよい脂肪族炭化水素鎖も含まれる。代表的な任意の置換基は、限定するものではないが、アリール、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アシルオキシ、アルコキシ、アミノ、1または2個の1〜6個の炭素原子のアルキル基により置換されているアミノ、アミノアシル、アシルアミノ、1〜6個の炭素原子のチオアルコキシ、1〜6個の炭素原子の置換チオアルコキシおよびトリハロメチルを含む。好ましい置換基は、ハロゲン、−CN、−OHおよびアミノ基を含む。アルキニルに結合したヘテロ原子、例えばOまたはSは、三重結合に結合した炭素原子に結合すべきではない。好ましくは、アルキニル基は非置換である。
【0012】
「シクロアルキル」なる用語は、本明細書で用いられる場合、単独または他の基の一部としても、3〜約20個の炭素原子、好ましくは、3〜約6個の炭素原子を有する、飽和または不飽和脂環式炭化水素基を意味する。特に、「シクロアルキル」の定義には、置換されていてもよい脂環式炭化水素基が含まれる。代表的な任意の置換基は、ハロゲン、C−Cアルキル、C−Cペルフルオロアルキル(好ましくは、CF)、−O−C−Cペルフルオロアルキル(好ましくは、−OCF)、C−Cアルコキシ、−OH、−NHまたは−NOから選択される1〜3個の基を含む。好ましくは、シクロアルキル基は非置換である。
【0013】
「アリール」なる用語は、本明細書で用いられる場合、単独または他の基の一部として用いられても、5〜約50個の炭素原子を、好ましくは約6〜約14個の炭素原子を有する置換または非置換芳香族炭化水素環基を意味する。「アリール」基は、単環または多縮合環を有しうる。「アリール」なる用語は、限定するものではないが、フェニル、ベンジル、α−ナフチル、β−ナフチル、ビフェニル、アントリル、テトラヒドロナフチル、フルオレニル、インダニル、ビフェニレニルおよびアセナフテニルを含む。好ましいアリール基はフェニルおよびナフチルである。特に、「アリール」の定義内には、置換されていてもよい芳香基を含む。したがって、本明細書に記載のアリール基は、非置換または置換されているアリール基の両方を意味する。例えば、本発明の代表的な具体例において、「アリール」基は、アシルオキシ、ヒドロキシ、アシル、1〜6個の炭素原子のアルキル、1〜6個の炭素原子のアルコキシ、2〜6個の炭素原子のアルケニル、2〜6個の炭素原子のアルキニル、アミノ、アミノ(1または2個の、1〜6個の炭素原子のアルキル基により置換されている)、アミノアシル、アシルアミノ、アジド、シアノ、ハロ、ニトロ、1〜6個の炭素原子のチオアルコキシ、1〜6個の炭素原子の置換チオアルコキシおよびトリハロメチルからなる群から選択される1〜5個の置換基により置換されていてもよい。好ましい置換基は、アルキル、アルケニル、アルコキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、トリハロメチルおよびチオアルコキシを含む。
【0014】
「ヘテロアリール」なる用語は、本明細書で用いられる場合、単独または他の基の一部として用いられても、置換または非置換の芳香族ヘテロサイクリック環系(単環または二環式)を含む。ヘテロアリール基は、例えば約3〜約50個の炭素原子(特記しない限り)を有し、約4〜約10個が好ましい。いくつかの具体例において、ヘテロアリール基は、炭素原子ならびに酸素、窒素または硫黄から選択される1、2、3または4個のヘテロ原子を含む約5〜約14個の環原子を有する芳香族ヘテロサイクリック環系である。代表的なヘテロアリール基は、フラン、チオフェン、インドール、アザインドール、オキサゾール、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、イミダゾール、N−メチルインダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピロール、N−メチルピロール、ピラゾール、N−メチルピラゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,4−トリアゾール、1−メチル−1,2,4−トリアゾール、1H−テトラゾール、1−メチルテトラゾール、ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラン、ベンゾイソキサゾール、ベンズイミダゾール、N−メチルベンズインダゾール、アザベンズインダゾール、インダゾール、キナゾリン、キノリンおよびイソキノリンである。二環式芳香族ヘテロアリール基は、フェニル、ピリジン、ピリミジンまたはピリジジン環を含み、これらは(a)1個の窒素原子を有する6員の芳香族(不飽和)ヘテロサイクリック環に縮合するか;(b)2個の窒素原子を有する5または6員の芳香族(不飽和)ヘテロサイクリック環に縮合するか;(c)1個の窒素原子を、1個の酸素または1個の硫黄原子のいずれかと一緒に有する、5員の芳香族(不飽和)ヘテロサイクリック環に縮合するか;あるいは(d)O、NまたはSから選択される1個のヘテロ原子を有する、5員の芳香族(不飽和)ヘテロサイクリック環に縮合している。代表的なヘテロアリールは、ピリジル、ピロリル、フリル、インドリル、インドリジニル、ベンゾフラニルまたはベンゾチエニル基を含む。本発明の好ましい具体例において、ヘテロアリールはピリジル、ピロリルまたはフリルである。特に、「ヘテロアリール」の定義には、例えばアシルオキシ、ヒドロキシ、アシル、1〜6個の炭素原子のアルキル、1〜6個の炭素原子のアルコキシ、2〜6個の炭素原子のアルケニル、2〜6個の炭素原子のアルキニル、アミノ、アミノ(1または2個の、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基により置換されている)、アミノアシル、アシルアミノ、アジド、シアノ、ハロ、ニトロ、1〜6個の炭素原子のチオアルコキシ、1〜6個の炭素原子の置換チオアルコキシおよびトリハロメチルからなる群から選択される、1〜5個の置換基により置換されていてもよい芳香環を含む。好ましい置換基は、アルキル、アルコキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、トリハロメチルおよびチオアルコキシを含む。
【0015】
また、「アリール」および「ヘテロアリール」なる用語は、本明細書に記載のアロイルまたはヘテロアロイルの一部に含まれる。
「アルコキシ」なる用語は、本明細書で用いられる場合、Rが上記と同意義のアルキル基である、R−O−基を意味する。特に、「アルコキシ」の定義には、置換されていてもよいアルコキシ基が含まれる。
【0016】
上記したチオアルコキシおよびアルコキシ基上の代表的な任意の置換基は、限定するものではないが、−CN、−OHおよびアミノ基を含む。アミノ基は、例えば1個または2個の1〜6個の炭素原子のアルキル基により置換されているアミノ基を含む。
【0017】
「ペルフルオロアルキル」なる用語は、本明細書で用いられる場合、単独または他の基の一部として用いられても、1〜6個の炭素原子を有し、2またはそれ以上のフッ素原子を有する飽和脂肪族炭化水素を意味し、限定するものではないが、直鎖または分枝鎖、例えば−CF、−CHCF、−CFCFおよび−CH(CFを含む。
【0018】
「アルカノイル」なる用語は、本明細書で用いられる場合、アルキルが上記と同意義である−C(=O)−アルキル基を意味する。代表的なアルカノイル基は、限定するものではないが、アセチル(エタノイル)、n−プロパノイル、n−ブタノイル、2−メチルプロパノイル、n−ペンタノイル、2−メチルブタノイル、3−メチルブタノイル、2,2−ジメチルプロパノイル、ヘプタノイルおよびデカノイルを含む。アルカノイル基のアルキル部は置換されていてもよい。
「アロイル」なる用語は、アリールが上記と同意義であるカルボニル−C(=O)−アリールを意味する。アロイル基のアリール部は、置換されていてもよい。代表的なアロイル基は、限定するものではないが、ベンゾイルを含む。
【0019】
「アリールアルキル」なる用語は、本明細書で用いられる場合、単独または他の基の一部として用いられても、Rが上記と同意義であるアルキレン基であり、上記と同意義のアリール基Rにより置換されている、−R−R基を意味する。アリールアルキル基の例としては、限定するものではないが、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル等を含む。アリールアルキル基は置換されていてもよい。例えば、本発明の代表的な具体例において、アリール環は、アシルオキシ、ヒドロキシ、アシル、1〜6個の炭素原子のアルキル、1〜6個の炭素原子のアルコキシ、2〜6個の炭素原子のアルケニル、2〜6個の炭素原子のアルキニル、置換アルキル、置換アルコキシ、置換アルケニル、置換アルキニル、アミノ、1または2個の1〜6個の炭素原子のアルキル基により置換されているアミノ、アミノアシル、アシルアミノ、アジド、シアノ、ハロ、ニトロ、1〜6個の炭素原子のチオアルコキシ、1〜6個の炭素原子の置換チオアルコキシおよびトリハロメチルからなる群から選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよい。好ましい任意の置換基は、ハロゲン、C−Cアルキル、C−Cペルフルオロアルキル(好ましくは、CF)、−O−C−Cペルフルオロアルキル(好ましくは、−OCF)、C−Cアルコキシ、−OH、−NHまたは−NOから選択される1〜3個の置換基を含む。
【0020】
「アルキルアリール」なる用語は、本明細書で用いられる場合、単独または他の基の一部として用いられても、Rが上記と同意義であるアリールであり、上記と同意義のアルキル基Rにより置換されている、−R−R基を意味する。
「ハロゲン」または「ハロ」なる用語は、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素を意味する。
【0021】
「治療する」または「治療」なる用語は、いずれの他覚的または自覚的パラメータを含む、損傷、病状または症状の改善の成功のしるし、例えば兆候の軽減;鎮静;縮小;または損傷、病状または症状を患者がより耐えうるようにすること;変性または衰退の速度を緩めること;変性の最終点を衰弱しないようにすること;あるいは対象の肉体的または精神的満足度を改善することを意味する。兆候の治療または改善は、身体的検査、神経学的検査および/または精神学的評価の結果を含む、他覚的または自覚的パラメータに基づく。「治療する」または「PAI−1関連障害の治療」は、障害の兆候を未だに経験または示していないが、PAI−1関連障害にかかりやすい対象の兆候の発生を防止すること(予防的治療)、障害の兆候を阻害すること(進行を遅延させるか、または阻む)、障害の兆候または副作用の不安を取り除くこと(緩和療法を含む)および/または障害の兆候の緩和すること(発生回帰)を含む。したがって、「治療する」なる用語は、PAI−1関連障害に付随する兆候または症状の進行、例えば癌に付随する腫瘍成長を防止または遅延、軽減または阻むまたは阻害するために、本発明の化合物または物質を対象に投与することを含む。医師は、治療が必要である患者を同定するのに、例えば、患者を試験し、PAI−1レベルまたは活性の上昇に付随することが知られている疾患を患っているかどうかを決定することによるか、またはPAI−1関連疾患を患っている疑いのある個体の血漿または組織中のPAI−1レベルをアッセイし、PAI−1関連疾患を患っている疑いのある個体の血漿または組織中のPAI−1レベルを、健康な個体の血漿または組織中のPAI−1レベルと比較することによる、標準的な方法をどのように用いるかを知っているだろう。PAI−1レベルの増加は、疾患につながる。したがって、本発明は、とりわけ、本発明の化合物を患者に投与する方法、および対象のPAI−1レベルを測定する方法を提供する。対象のPAI−1レベルは、化合物の投与の前および/または後に測定することができる。
【0022】
健康な個々において、PAI−1は、血漿中に低レベル(例えば、約5〜26ng/mL)で見られるが、これは、例えばアテローム性動脈硬化症(Schneiderman J. et. al, Proc Natl Acad Sci 89: 6998-7002, 1992)深部静脈血栓症(Juhan-Vague I, et. al, Thromb Haemost 57: 67-72, 1987)およびインスリン非依存性糖尿病(Juhan-Vague I, et. al, Thromb Haemost 78: 565-660, 1997)を含む多くのPAI−1関連障害において増加する。PAI−1は、それぞれ、心筋梗塞後の冠動脈閉塞(Hamsten A, et. al. Lancet 2:3-9, 1987)および整形外科的手術からの術後回復に伴う静脈血栓症に寄与する動脈および静脈の血栓を安定化する(Siemens HJ, et. al, J Clin Anesthesia 11: 622-629, 1999)。また、血漿PAI−1は、例えば閉経後の女性においても増加し、この群の心血管疾患発生率の増加に寄与していることが示唆されている(Koh K et. al, N Engl J Med 336: 683-690, 1997)。
【0023】
「PAI−1関連障害または疾患」なる用語は、PAI−1の発現または活性の増加または増強、あるいは、PAI−1をコードする遺伝子の発現または活性の増加または増強に付随する、疾患または症状を意味する。かかる活性または発現の増加の例としては、以下の1以上を含む:蛋白質の活性または蛋白質をコードする遺伝子の発現が、正常な対象のレベルよりも増加する;蛋白質の活性または蛋白質をコードする遺伝子の発現が、正常な対象において通常検出されない臓器、組織または細胞において見られる(すなわち、蛋白質の分布または蛋白質をコードする遺伝子の発現が変化している);蛋白質の活性または蛋白質をコードする遺伝子の発現が、蛋白質の活性または蛋白質をコードする遺伝子の発現が正常な対象においてよりも長期間、臓器、組織または細胞に存在する場合に増加する(すなわち、蛋白質の活性または蛋白質をコードする遺伝子の発現期間が増加する)。正常または健康な対象とは、PAI−1関連障害または疾患を患っていない対象である。本発明のいくつかの具体例において、PAI−1関連障害は、高血糖症に関連しない。高血糖症に関連しないPAI−1関連障害は、例えば血中のグルコースのレベルの上昇により引き起こされない障害である。
【0024】
「医薬上許容される賦形剤」なる用語は、一般的に、安全、無毒かつ望ましい医薬組成物の調製に有用な賦形剤を意味し、獣医的使用ならびにヒトの医薬使用に適応しうる賦形剤を含む。かかる賦形剤は、固体、液体、半固体であってもよく、あるいはエアロゾール組成物である場合、ガスでありうる。
【0025】
「医薬上許容される塩およびエステル」は、医薬上許容され、所望の医薬特性を有する塩およびエステルを意味する。かかる塩は、例えば化合物中に存在する酸性プロトンが、無機または有機塩基と反応することができる塩を含む。適当な無機塩は、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えばナトリウムおよびカリウム、マグネシウム、カルシウムおよびアルミニウムと形成されるものを含む。適当な有機塩は、例えば、アミン塩基、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメタミン、Nメチルグルカミン等の塩有機塩基と形成されるものを含む。また、医薬上許容される塩は、親化合物の塩基性基、例えばアミンと無機酸(例えば、塩酸および臭化水素酸)および有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸およびアルカン−およびアレン−スルホン酸、例えばメタンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸)との反応から形成される酸付加塩も含む。医薬上許容されるエステルは、化合物に存在するカルボキシ、スルホニルオキシおよびホスホノキシ基から形成されるエステル、例えばC1−6アルキルエステルを含む。2つの酸性基が存在する場合、医薬上許容される塩またはエステルは、モノ−酸−モノ−塩またはエステルまたはジ−塩またはエステルでありえ;同様に、2つより多くの酸性基が存在する場合、かかる基のいくつかまたはすべては、塩またはエステル化することができる。本発明の化合物は、塩またはエステル化されていない形態、または塩および/またはエステル形態で存在することができ、かかる化合物の命名は、本来(塩およびエステル化されていない)化合物ならびにその医薬上許容される塩およびエステルの両方を含む。また、本発明のある種の化合物は、1種以上の立体異性体で存在することができ、かかる化合物の命名は、すべての単一の立体異性体およびかかる立体異性体のすべての混合物(ラセミ体または他の混合物)を含む。
【0026】
発現または活性の、「阻害剤」「アクチベータ」および「モジュレーター」は、それぞれ、阻害、活性化またはモジュレート分子を示すのに用いられ、発現または活性のインビトロおよびインビボアッセイを用いて同定される。本発明の阻害剤は、PAI−1の発現を阻害するか、あるいは結合して、PAI−1の活性を部分的または完全に刺激を遮断、減少、防止するか、活性化を遅らせるか、不活性化、脱感作させるか、あるいは下方調節する組成物である。PAI−1を含む試料またはアッセイは、本発明の組成物で処理することができ、本発明の組成物を含まない対照試料と比較する。対照試料(本発明の組成物で未処理である)は、100%の相対活性値を与えうる。ある具体例において、PAI−1の阻害は、対照に対する活性値が約80%それ未満、所望により50%または25、10%、5%または1%である場合に達成される。
【0027】
「医薬上許容される」、「生理学的に許容される」およびその文法的バリエーションは、それらが組成物、担体、希釈剤および薬剤を意味する場合、同義的に用いられ、物質が投与可能であるか、あるいは、ヒトにおいて化合物の投与を禁止すべきであろう望ましくない生理学的効果、例えば吐き気、めまい、異常亢進等が生じないことを意味する。
【0028】
「治療的に有効な量」または「医薬的に有効な量」は、対象に投与した場合に、投与されたことに対する効果を生じさせる量を意味する。例えば、「治療的に有効な量」は、PAI−1活性を阻害するために対象に投与された場合、PAI−1活性を阻害するのに十分な量である。「治療的に有効な量」は、疾患を治療するために対象に投与された場合、その疾患の治療に効果を与えるのに十分な量である。
【0029】
言及がある場合を除き、「対象」または「患者」なる用語は、同義的に用いられ、哺乳動物、例えばヒト患者および非ヒト霊長類ならびに実験動物、例えばウサギ、ラットおよびマウスおよび他の動物を意味する。したがって、「対象」または「患者」なる用語は、本明細書で用いられる場合、本発明の化合物を投与することができるいずれもの哺乳動物患者または対象を意味する。本発明の代表的な具体例において、本発明の方法に従って治療する対象患者を同定するために許容されるスクリーニング法を、標的または疑いがある疾患または症状に関連する危険因子を測定するため、または対象に存在する疾患または症状の状態を測定するのに用いる。これらのスクリーニング法は、例えば、標的または疑いのある疾患または症状に付随しうる危険因子を測定するのに慣用的な検査を含む。これらおよび他の一般的な方法は、臨床医が、本発明の方法および処方を用いる治療を必要とする患者を選択することを可能にする。本発明のいくつかの具体例において、本発明の方法で治療される対象は、高血糖症および/または高血糖症により引き起こされる疾患を有しない。対象が高血糖症であるかどうかを決定する方法は当該分野で公知であり、例えば、血中のグルコースレベルを測定するグルコース試験により行われる。血中の過剰なグルコースレベルを検出するのに用いることができる2つの代表的な試験は、一晩絶食した血中のグルコース量を測定する試験および高グルコースを飲んだ後に過剰に存在する糖の体内での処理能力を測定する方法である。典型的には、110mg/dlの絶食糖レベルを有するヒトが高血糖レベルであるので、約64〜約110mg/dl投与の絶食糖レベル(一晩絶食した後の糖レベル)を有する対象は高血糖症を有しない。少なくとも2回の機会において、約140mg/dl以上の値であることは、典型的には、糖尿病を患っている対象であることを意味している。
【0030】
可変部がいずれもの構成または式内に1個以上生じる場合、各々の事象の定義は、他のすべての事象の定義から独立する。置換基および/または可変部の組み合わせは、かかる組み合わせが安定な化合物を与える場合にのみ許容される。
【0031】
B.置換ナフチルベンゾチオフェン酸
本発明は、置換ナフチルベンゾチオフェン酸を提供する。かかる化合物は、好ましくは、対象のPAI−1発現または活性を阻害し、結果として、対象のPAI−1活性の増加に関連する疾患または症状、例えばPAI−1関連障害を治療するために投与される。
【0032】
置換ナフチルベンゾチオフェン酸は、下記式:
【化2】

[式中:
R、R、RおよびRは、独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、−CH−(C−Cシクロアルキル)、C−Cアルカノイル、ハロ、ヒドロキシ、アリール、ヘテロアリール、C−Cペルフルオロアルキル、C−Cアルコキシ、アミノ、−NH(C−Cアルキル)、−N(C−Cアルキル)またはC−Cペルフルオロアルコキシであり;
は、水素、C−Cアルキル、ペルフルオロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、−CH、−CH(OH)R、−C(=O)R、−CH(SH)R、−C(=S)Rまたは−(CH−C−Cシクロアルキルであり;
nは、0〜6の整数であり;
mは、0〜6の整数であり;
は、水素、C−Cアルキル、ペルフルオロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、C−Cシクロアルキル、アリールアルキルまたは−(CH−C−Cシクロアルキルであり;
pは、0〜6の整数であり;
は、水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、−CH−(C−Cシクロアルキル)、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールまたはヘテロアリールであり;
Aは、COOHまたは酸ミミックである]
で示される化合物である。
【0033】
また、本発明の化合物は、式1の、プロドラッグ、立体異性体または医薬上許容される塩またはエステル形態を含む。
本発明で用いられる場合、R、R、RおよびRは、水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、−CH−(C−Cシクロアルキル)、C−Cアルカノイル、ハロ、ヒドロキシ、アリール、ヘテロアリール、C−Cペルフルオロアルキル、C−Cアルコキシ、アミノ、−NH(C−Cアルキル)、−N(C−Cアルキル)またはC−Cペルフルオロアルコキシであり得る。ある種の本発明の化合物において、RおよびRは、独立して、水素、アルカノイルまたは分枝鎖アルカノイルである。ある種の好ましい化合物において、RおよびRは、水素、ペンタノイルまたは分枝鎖ペンタノイルである。かかる化合物において、R、R、R、n、m、pおよびAは上記と同意義である。
【0034】
いくつかの本発明の化合物において、RおよびRは、独立して、水素またはハロゲンである。ある好ましい具体例において、Rは、水素、塩素または臭素である。かかる具体例において、R、R、R、R、R、n、m、pおよびAは上記と同意義である。
【0035】
は、水素、C−Cアルキル、ペルフルオロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、−CH、−CH(OH)R、−C(=O)R、−CH(SH)R、−C(=S)Rまたは−(CH−C−Cシクロアルキルでありえ、Rは、水素、C−Cアルキル、ペルフルオロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、C−Cシクロアルキル、アリールアルキルまたは−(CH−C−Cシクロアルキルであり得る。いくつかの具体例において、Rは−C(=O)Rであり、Rはアルキルまたはアリールアルキルである。ある好ましい具体例において、Rは−C(=O)Rであり、RはCアルキルまたはベンジルである。かかる具体例において、R、R、R、R、R、R、n、m、pおよびAは上記と同意義である。
【0036】
AはCOOHまたは酸ミミックであり得る。本発明のいくつかの好ましい具体例において、AはCOOHまたはテトラゾールである。かかる具体例において、R、R、R、R、R、R、R、m、nおよびpは上記と同意義である。
【0037】
は、水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、−CH−(C−Cシクロアルキル)、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールまたはヘテロアリールであり得る。本発明のいくつかの好ましい具体例において、Rは水素である。かかる具体例において、R、R、R、R、R、R、R、n、p、mおよびAは上記と同意義である。
【0038】
本発明のある具体例において、かかる置換化合物は、下記式:
【化3】

[式中、R、R、R、R、R、R、R、n、p、mおよびAは上記と同意義である]
および
【0039】
【化4】

[式中、R、R、RおよびRは、上記と同意義であり;
nは0であり;
Aは、カルボン酸またはテトラゾール基であり;
は、水素、C−Cアルキルまたはベンジル基であり;
Yは、2つの単結合したH原子;1つのHおよび1つのOH;または二重結合した酸素原子であり;
は、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、−CH−(C−Cシクロアルキル)またはベンジルである]
で示される化合物を含む。
【0040】
本発明の具体的な例において、Rで示されるシクロアルキルおよびベンジル基の環は、ハロゲン、C−Cアルキル、C−Cペルフルオロアルキル、好ましくは−CF、−O−C−Cペルフルオロアルキル、好ましくは−O−CF、C−Cアルコキシ、−OH、−NHまたは−NOから選択される1〜3個の基により置換されている。
【0041】
本発明の代表的な置換ナフチルベンゾチオフェン酸は、限定するものではないが、1−{2−[5−ブロモ−6−(1H−テトラゾール−5−イルメトキシ)−ナフタレン−2−イル]−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル}−ペンタン−1−オンまたはその医薬上許容される塩もしくはエステル形態、[1−ブロモ−6−(3−ペンタノイル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸またはその医薬上許容される塩もしくはエステル形態、1−{2−[5−ブロモ−6−(1H−テトラゾール−5−イルメトキシ)−ナフタレン−2−イル]−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル}−2−フェニル−エタノンまたはその医薬上許容される塩もしくはエステル形態、[1−ブロモ−6−(3−フェニルアセチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸またはその医薬上許容される塩もしくはエステル形態、1−{2−[5−ブロモ−6−(1H−テトラゾール−5−イルメトキシ)−ナフタレン−2−イル]−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル}−3−メチル−ブタン−1−オンまたはその医薬上許容される塩もしくはエステル形態、{1−ブロモ−6−[3−(3、3−ジメチル−ブチリル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−ナフタレン−2−イルオキシ}−酢酸またはその医薬上許容される塩もしくはエステル形態、{1−ブロモ−6−[6−(4、4−ジメチル−ペンタノイル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−ナフタレン−2−イルオキシ}−酢酸またはその医薬上許容される塩もしくはエステル形態および[1−クロロ−6−(3−ペンタノイル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸またはその医薬上許容される塩もしくはエステル形態を含む。
【0042】
また、本発明は、式1〜3で示される化合物またはその立体異性体もしくは医薬上許容される塩を含む置換ナフチルベンゾチオフェン酸および1種以上の医薬上許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む組成物を提供する。かかる組成物は、PAI−1活性の増加に付随する病態または症状を治療するかあるいは制御するための医薬組成物を含む。ある具体例において、組成物は、1種以上の置換ナフチルベンゾチオフェン酸の混合物を含む。
【0043】
ある種の式1〜3で示される化合物は、不斉炭素原子または他のキラル元素を含有し、かくして、エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む立体異性体でありうる。本発明は、すべての式1〜3で示される立体異性体ならびに立体異性体の混合物を含む。本明細書の全体にわたって、生成物の名称は、個々の立体異性体ならびにその立体異性体の混合物を包含する。When it is necessary to distinguish the enantiomers from one anotherおよびfrom the racemate, the sign of the optical rotation [(+), (-)および(±)] is utilized. Furthermore, throughout this application, the designations R*およびS* are used to indicate relative stereochemistry, employing the Chemical Abstracts convention which automatically assigns R* to the lowest numbered asymmetric center.
【0044】
エナンチオマーが好ましい場合、いくつかの具体例において、これは対応するエナンチオマーを実質的に含まずに提供される。かくして、対応するエナンチオマーを実質的に含まないエナンチオマーは、分離技術により単離または分離されるか、対応するエナンチオマーを含まずに調製された化合物を意味する。「実質的に含まない」なる用語は、本明細書で用いられる場合、化合物が有意に大きい割合の一のエナンチオマーにより構成されていることを意味する。好ましい具体例において、化合物は、少なくとも約90重量%の好ましいエナンチオマーにより構成されていることを意味する。本発明の他の具体例において、化合物は、少なくとも約99重量%の好ましいエナンチオマーにより構成される。好ましいエナンチオマーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびキラル塩の形成および結晶化を含む、当業者に公知の方法によりラセミ混合物から単離することができるか、あるいは、好ましいエナンチオマーは、本明細書に記載の方法により調製することができる。好ましいエナンチオマーの製造方法は、例えば、Jacques, et al., Enantiomers, Racemates and Resolutions (Wiley Interscience, New York, 1981); Wilen, S.H., et al., Tetrahedron 33:2725 (1977); Eliel, E.L. Stereochemistry of Carbon 化合物s (McGraw-Hill, NY, 1962);およびWilen, S.H. Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p. 268 (E.L. Eliel, Ed., Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, IN 1972)に記載されている。
【0045】
本発明の化合物の代表的な塩形態は、限定するものではないが、ナトリウム塩およびカリウム塩を含む。これらの化合物の他の代表的な塩形態は、限定するものではないが、当該分野で公知の、医薬上許容される無機および有機塩基と形成されるものを含む。無機塩基を用いて形成された塩形態は、治療的に許容されるアルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えばナトリウムカリウム、マグネシウム、カルシウム等の塩酸塩、炭酸塩または重炭酸塩を含む。許容される有機塩基は、アミン、例えばベンジルアミン、モノ−、ジ−およびトリアルキルアミン、好ましくは、1〜6個の炭素原子、より好ましくは1〜3個の炭素原子のアルキル基を有するもの、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ−、ジ−およびトリエタノールアミンを含む。また、代表的塩は、6個までの炭素原子を含有するアルキレンジアミン例えばヘキサメチレンジアミン;ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジンおよびそれらのN−アルキルおよびN−ヒドロキシアルキル誘導体、例えばN−メチル−モルホリンおよびN−(2−ヒドロキシエチル)−ピペリジンまたはピリジンを含む、6個までの炭素原子を含有する環状飽和または不飽和塩基を含む。また、第4級塩、例えばテトラアルキル、例えばテトラメチル、アルキル−アルカノール、例えばメチル−トリエタノールまたはトリメチル−モノエタノールおよび環状アンモニウム塩、例えばN−メチルピリジニウム、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−モルホリニウム、N,N−ジ−メチルモルホリニウム、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−モルホリニウムまたはN,N−ジメチル−ピペリジニウム塩形態を形成することができる。これらの塩形態は、式1〜3で示される酸性化合物(複数でも可)および当該分野で公知の方法を用いて調製することができる。
【0046】
本発明の化合物の代表的なエステル形態は、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、2−メチルプロピルおよび1,1−ジメチルエチルエステル、シクロアルキルエステル、アルキルアリールエステル、ベンジルエステル等を含む、1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキルエステルまたは1〜6個の炭素原子を含有する分枝鎖アルキルエステルを含む。他の代表的なエステルは、限定するものではないが、Rが式:
【化5】

[式中、R、R10、R11、およびR12は、独立して、水素、1〜10個の炭素原子のアルキル、6〜12個の炭素原子のアリール、6〜12個の炭素原子のアリールアルキル;ヘテロアリールまたはアルキルヘテロアリールから選択され、ここに、ヘテロアリール環は、1〜6個の炭素原子のアルキル鎖により結合する]
から選択される、式−COORで示されるものを含む。
【0047】
本発明の酸および酸ミミックは、プロトンまたは水素供与基として定義される。代表的な、本発明の酸ミミックまたはミメティックは、医薬上有用なカルボン酸および当該分野で公知の酸ミミックまたはミメティック、例えば、R. Silverman, The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action, Academic Press (1992)およびその他に記載ようなものを含む。代表的な酸ミミックまたはミメティックは、テトラゾール、テトロン酸、アシルテトロン酸、および式:
【化6】

[式中、Rは、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cシクロアルキル、−CH−(C−Cシクロアルキル)、C−Cシクロアルケニル、−CH−(C−Cシクロアルケニル)、置換されていてもよいアリールもしくはヘテロアリール基または置換されていてもよいアリール(C−C)アルキルもしくはヘテロアリール(C−C)アルキルであり、該アリールおよびヘテロアリール基は上記と同意義である]
を有する基を含む。
【0048】
本発明の好ましい化合物は、PAI−1活性を阻害する。したがって、化合物は、例えばインスリン非依存性糖尿病の治療、心血管疾患の治療および冠状動脈および脳血管疾患に付随する血栓症の事象の治療を含む、対象のPAI−1関連障害の予防、阻害および/または改善を含む治療に用いることができる。本発明の方法を用いて、式1〜3で示されるものを含む置換ナフチルベンゾチオフェン酸を、PAI−1活性または発現の増加に付随する疾患、例えば糖尿病または心血管疾患を患っている疑いのある対象に、かかる疾患を治療するためにどのように投与するかは、医師には明らかだろう。
【0049】
一の具体例において、置換ナフチルベンゾチオフェン酸は、限定するものではないが、動脈硬化性プラークの形成、静脈および動脈血栓症、心筋虚血、心房性細動、深部静脈血栓症、凝固症候群、肺血栓症、脳血栓症、手術の血栓塞栓性合併症(例えば、関節または股関節置換術)および末梢動脈閉塞を含む、血栓および血栓前状態に関与する疾患を治療するために対象に投与される。
【0050】
対象のPAI−1活性または発現の増加に付随するいずれの疾患または症状は、置換ナフチルベンゾチオフェン酸を用いて治療することができる。代表的な疾患および症状は、卒中、例えば心房性細動に付随するまたはそれにより長じる卒中;限定するものではないが、腎線維症、慢性閉塞性肺疾患、多嚢胞性卵巣症候群、再狭窄、腎血管性疾患および臓器移植拒否反応を含む細胞外マトリックス蓄積に付随する疾患;限定するものではないが、糖尿病性網膜症を含む新血管形成に付随する疾患;例えば対象のプラスミン濃度レベルの増加または正常化によるアルツハイマー病;例えば、間質細胞増殖の調節および細胞外マトリックス蛋白質の増加による骨髄様化生を伴う骨髄線維症を含む。
【0051】
本発明の化合物は、例えば、ネフロパシーに付随する糖尿病性ネフロパシーおよび腎臓透析;限定するものではないが、白血病、乳癌および卵巣癌を含む悪性腫瘍または癌;限定するものではないが、脂肪肉腫および上皮腫瘍;敗血症を含む腫瘍;肥満症;インスリン耐性;限定するものではないが、乾癬を含む増殖性疾患、;異常な凝固恒常性に付随する症状;軽度の血管炎症;脳血管疾患;高血圧;認知症;骨粗鬆症;関節炎;呼吸器系疾患、例えば、喘息;心不全;不整脈;限定するものではないが、狭心症を含む狭心症;アテローム性動脈硬化症および後遺症;腎不全;多発性硬化症;骨粗鬆症;骨減少症;認知症;末梢血管の疾患;末梢動脈障害;急性血管症候群;限定するものではないが、ネフロパシー、ニューロパシー、網膜症およびネフローゼ症候群を含む微小血管症;高血圧;I型およびII型糖尿病および関連疾患;高血糖症;高インスリン血;悪性病変;前癌性病変;胃腸悪性腫瘍;限定するものではないが、心筋梗塞、安定および不安定狭心症の一次および二次予防、冠動脈事象の一次予防および心血管事象の二次予防を含む冠状動脈性心臓病;および限定するものではないが、感染症に付随する敗血性ショックおよび血管損傷を含む炎症性疾患を治療するのに用いることができる。
【0052】
また、本発明の化合物は、限定するものではないが、血栓解剤、線維素溶解剤および抗凝固剤を含む第2の治療剤と組み合わせて、または他の治療剤、例えばプロテアーゼ阻害剤と組み合わせて投与することができ、HIV−1感染患者の線維素溶解障害および高凝固性に由来する疾患の治療用の高活性抗レトロウイルス治療(HAART)を含む。ある具体例において、本発明の化合物は、限定するものではないが、血管手術、血管移植およびステント開通術、臓器、組織および細胞植込みおよび移植を含む、血管開通の維持に関与する方法または手段と組み合わせて、および/またはそれに続いて投与することができる。また、本発明の化合物は、透析に用いる血液および血液産物、液状での血液貯蓄、特に生体外血小板凝集の処理に用いることができる。また、本発明の化合物は、ホルモン補充剤として、あるいは炎症マーカーまたはC−活性蛋白質を減少させるために対象に投与することができる。化合物は、凝固恒常性の改善、内皮機能の改善のため、あるいは創傷治癒への局所適用、例えば傷の予防として投与することができる。本発明の化合物は、心筋再血管形成法を受ける危険性を軽減するために対象に投与することができる。また、本発明の化合物は、病院内でその線維素溶解能を測定するために血液化学の分析の間にヒト血漿に加えることができる。ある具体例において、本発明の化合物は、転移性癌の同定用のイメージング剤として用いることができる。
【0053】
C.置換ナフチルベンゾチオフェン酸の合成
本発明の化合物は、容易に入手できる試薬および出発物質を利用する慣用的な合成方法を用いて、有機合成の分野の当業者により調製することができる。本発明の代表的な化合物は、下記合成スキームを用いて調製することができる。当業者は、これら種々の工程段階の使用方法を知っており、これら自体も当該分野でよく知られている。RおよびRは式1の記載と同意義であり、R13およびR14は、小分子アルキル、例えばメチルまたはエチルである。
【0054】
【化7】

【0055】
対応する6−ブロモ−2−ナフトール4aから、文献(Buu−Hoi、JOC1951、16、185)に記載のように6−ブロモ−1−クロロ−2−ナフトール4を調製した。6−ブロモ−1−メチル−2−ナフトール7を、反応スキームIに記載のように調製した。6−ブロモ−2−ナフトール4aをジメチルアミンおよび水性ホルムアルデヒドとアルコール中で反応させて、Mannich生成物5を得た。5を塩化アセチルと塩化メチレンまたはクロロホルム中で反応させて6を得た。6をエタノールのような溶媒中で水素化し、ついで、塩基で処理して、所望の6−ブロモ−1−メチル−2−ナフトール7を得た。
【0056】
【化8】

【0057】
スキームIIにおいて、塩基性条件下、種々の溶媒中またはジオキサン、水、トルエン、アルコールまたはTHFのような溶媒混合物中での標準的なパラジウム−触媒クロスカップリング法を用いて、置換ブロモナフタレンを種々のベンゾチオフェンボロン酸8とのクロスカップリングさせることにより置換2−ナフチルベンゾチオフェン9を得た。9を酸クロライドまたは酸無水物と、ルイス酸、例えば塩化スズ(IV)の存在下、塩化メチレンまたはクロロホルムのような溶媒中で反応させて、3−アシルベンゾチオフェン誘導体10を得た。10のメトキシ基を、対応するヒドロキシ基に、10を三塩化ホウ素または三臭化ホウ素と、塩化メチレン中で処理することにより変換して、誘導体11を得た。続いて、11を酢酸中の臭素で、酢酸ナトリウムの存在下で臭素化して、ブロモ誘導体12aを得た。12aまたは11を、ボロヒドリドナトリウムで、エタノールのような溶媒中で還元して、それぞれ、アルコール12bまたは12cを得た。さらに、12bまたは12cを、トリエチルシランを用いて塩化メチレンのような溶媒中、酸性条件(トリフルオロ酢酸)下で還元して、それぞれ、アルキル誘導体12dおよび12eを得た。
同様の方法で、置換2−ナフチルベンゾチオフェン酸13a、13b、13c、14a、14bおよび14cを、6−ブロモナフタレン4または7から、下記スキームIIに記載の反応の改法に従って調製した。
【0058】
【化9】

【0059】
スキームIIIにおいて、化合物12、13または14を、ブロモアセトニトリルで、塩基、例えば炭酸カリウムまたは炭酸セシウムを用いて、アセトンのような溶媒中でアルキル化して、ニトリル15を得た。ニトリル15を対応するテトラゾール誘導体1aに、アジ化ナトリウムと、塩化アンモニウムの存在下、DMFのような溶媒中、80〜100℃で変換した。同様に、12、13または14をブロモアセテートで、上記のような塩基性条件下でアルキル化して、酢酸誘導体16を得た。16を鹸化して、対応する酢酸誘導体1bを得た。別法として、化合物12、13または14の化合物を、ヒドロキシエステル、例えばフェニル乳酸エステルを用いて、標準的なミツノブ反応条件下でカップリングさせて、置換エステル17を得た。上記のようにエステルの加水分解を行って所望の酸1cを得た。
【0060】
D.医薬組成物としての置換ナフチルベンゾチオフェン酸
本発明は、医薬としての置換ナフチルベンゾチオフェン酸を提供する。好ましい具体例において、置換ナフチルベンゾチオフェン酸は、PAI−1活性の増加に関連する疾患を、例えば対象のPAI−1活性を阻害することにより治療するための医薬として処方する。
【0061】
一般的には、置換ナフチルベンゾチオフェン酸は、経口、バッカル、局所、全身(例えば、経皮、経鼻または坐剤により)または非経口(例えば、筋肉内、皮下または静脈内注射)を含む、治療剤を投与するのに当該分野で公知の方法により、医薬組成物として投与することができる。組成物は、錠剤、丸薬、カプセル、半固体、粉末、持続放出性処方、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エリキシル、エアロゾールまたは他のいずれかの適当な組成物の形態であり得;少なくとも1種の医薬上許容される賦形剤と組み合わせた少なくとも1種の本発明の化合物を含む。適当な賦形剤は、当業者によく知られており、これら賦形剤および組成物を処方する方法は、例えば、標準的な参考文献Alfonso AR: Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton PA, 1985に見ることができる。特に注射溶液用の、適当な液体担体は、水、生理食塩水、水性デキストロース溶液およびグリコールを含む。本発明のいくつかの具体例において、本発明を実行するのに用いるのに適した置換ナフチルベンゾチオフェン酸は、単一または少なくとも1種の本発明の化合物と組み合わせて投与することができる。また、本発明を実行するのに用いるのに適した置換ナフチルベンゾチオフェン酸は、少なくとも1種のその疾患の治療用の他の慣用的な治療剤と一緒に投与することができる。
【0062】
本発明の水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合した置換ナフチルベンゾチオフェン酸を含有する。かかる賦形剤は、懸濁化剤、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアカシアガムおよび分散剤または湿潤剤、例えば天然のリン脂質(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシとと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール由来の部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノ−オレアート)またはエチレンオキシドと、脂肪酸および無水ヘキシトール由来の部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノ−オレアート)を含みうる。また、水性懸濁液は、1種以上の保存剤、例えばエチルまたはn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエート、1種以上の着色剤、1種以上のフレーバー剤および1種以上の甘味剤、例えばシュークロース、アスパルテームまたはサッカリンを含有しうる。処方は浸透圧を調節することができる。
【0063】
油性懸濁液は、置換ナフチルベンゾチオフェン酸を、植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油またはヤシ油中に、または鉱油、例えば液体パラフィン中;あるいはその混合物中に懸濁することにより処方することができる。油性懸濁液は、増粘剤、ハードパラフィンまたはセチルアルコールを含有しうる。甘味剤を口当たりのより経口製剤を提供するために添加することができ、例えばグリセロール、ソルビトールまたはシュークロースを含む。これらの処方は、酸化防止剤、例えばアスコルビン酸を添加することにより保存することができる。注射可能油性ビヒクルの例としては、Minto, J. Pharmacol. Exp. Ther. 281:93-102, 1997を参照のこと。また、本発明の医薬処方は、水中油型エマルジョンの形態であってもよい。油相は、上記した植物油または鉱油あるいはその混合物でありうる。適当な、天然のガム、例えばアカシアガムおよびトラガカントガム、天然のリン脂質、例えば大豆レシチン、脂肪酸および無水ヘキシトール由来のエステルまたは部分エステル、例えばソルビタンモノ−オレアートおよびその部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノ−オレアートを含む。また、エマルジョンは、シロップおよびエリキシルの処方として甘味剤およびフレーバー剤を含有することができる。また、かかる処方は、粘滑剤、保存剤または着色剤と含有することができる。
【0064】
選択した化合物は、単独で、または他の適当な成分と組み合わせて、吸入により投与するためのエアロゾール処方に製造することができる(すなわち、これらは「噴霧する」ことができる)。エアロゾール処方は、加圧可能推進剤、例えばジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等の中に置くことができる。
【0065】
局所投与、例えば関節内(関節内)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内および皮下経路による投与に適した処方は、酸化防止剤、バッファー、静菌剤および意図する患者の血液との処方等張性を与える溶質を含有する水性および非水性、等張滅菌注射溶液、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤および保存剤を含有する水性および非水性滅菌懸濁液を含む。用いることができる許容されるビヒクルおよび溶媒は、水およびリンガー溶液、等張性塩化ナトリウムを含む。加えて、滅菌不揮発性油は、溶媒または懸濁化媒体として慣用的に用いることができる。この目的に関して、合成モノまたはジグリセライドを含むいずれの無菌不揮発性油を用いることができる。加えて、脂肪酸、例えばオレイン酸は、注射可能製剤に用いることができる。これらの溶液は滅菌されており、一般的に望ましくない物質を含まない。化合物が十分に可溶性である場合、これらは、適当な有機溶媒、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールを用いてまたは用いずに、例えば通常の生理食塩水に直接溶解することができる。微粉化化合物の分散液は、水性スターチまたはナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液中、または適当な油、例えばラッカセイ油中に構成することができる。これらの処方は、慣用的な、よく知られた滅菌法により滅菌することができる。処方は、例えばpH調節のような物理的条件に近づけるために必要である場合、医薬上許容される補助物質、および緩衝化剤、毒性調節剤、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム等を含みうる。これらの処方中の置換ナフチルベンゾチオフェン酸の濃度は広範囲であり得、主に液体の容量、粘度、重量などに基づいて、選択した投与経路および患者のニーズに従って選択されるだろう。IV投与に関しては、処方は、滅菌注射可能製剤、例えば滅菌注射可能溶液または油性懸濁液であることができる。この懸濁液は、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて公知の技術に従って処方することができる。また、滅菌注射可能製剤は、非毒性非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射可能溶液または懸濁液、例えば1,3−ブタンジオールの溶液でありうる。好ましい処方は、単位用量または複数回用量のシールしたコンテナ、例えばアンプルおよびバイアルで提供することができる。
注射溶液および懸濁液は、上記した滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0066】
本発明を実行するのに用いるのに適した置換ナフチルベンゾチオフェン酸は、経口で投与することができる。組成物中の本発明の化合物の量は、組成物の型、剤形の大きさ、賦形剤の種類および他の当業者に公知の因子に応じて広範囲に変化しうる。一般的には、最終組成物は、0.000001重量%(%w)〜10%w、好ましくは0.00001%w〜1%wの置換ナフチルベンゾチオフェン酸を、残りの賦形剤と一緒に含む。
【0067】
経口投与用の医薬処方は、経口投与に適した投与量で、よく知られた医薬上許容される担体を用いて処方することができる。かかる担体は、医薬処方を、錠剤、丸薬、粉末、糖衣錠、カプセル、液体、ロゼンジ、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液など患者が摂取するのに適した単位剤形に処方することを可能にする。経口投与に適した処方は、(a)溶液、例えば希釈剤、例えば水、生理食塩水またはPEG400中に懸濁した有効量のパックした核酸;(b)それぞれ、液体、固体、下流またはゼラチンとして予備計量した活性剤を含有する、カプセル、サッシェまたは錠剤;(c)適当な液体中の懸濁液;および(d)適当なエマルジョンから構成される。
【0068】
経口での使用に適した医薬製剤は、本発明の化合物を固体賦形剤と組み合わせ、所望により、得られた混合物をすりつぶし、顆粒混合物を処理し、ついで、所望により適当な付加的な化合物を添加して、錠剤または糖衣錠の核を得ることにより得ることができる。適当な固体賦形剤は、カルボヒドレートまたはプロテイン充填剤であり、限定するものではないが、ラクトース、シュークロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖、コーン、小麦、コメ、ポテトまたは他の植物からのスターチ;セルロース、例えばメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロースまたはナトリウムカルボキシメチルセルロース;およびアラビアガムおよびトラガカントガムを含むガム;ならびに、蛋白質、例えばゼラチンおよびコラーゲンを含む。望ましい場合、崩壊剤または可溶化剤、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸、アルギン酸ナトリウムを加えることができる。錠剤形態は、1種以上のラクトース、シュークロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、微結晶セルロース、ゼラチン、コロイド状シリカジオキシド、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸および他の賦形剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝化剤、湿潤剤、保存剤、フレーバー剤、染料、崩壊剤、および医薬上適当する担体を含む。ロゼンジ形態は、フレーバー、例えばシュークロース中に活性成分を含むことができ、ならびに、トローチは、不活性塩基、例えば、付加的な活性成分、当該分野で公知の担体を含有するゼラチンおよびグリセリンまたはシュークロースおよびアカシアエマルジョン、ゲル中に活性成分を含む。
【0069】
また、本発明の置換ナフチルベンゾチオフェン酸は、薬剤の直腸投与用の坐剤形態で投与することができる。これらの処方は、薬剤を常温で固体であるが腸での温度で液体であり、したがって、直腸で融解し薬剤が放出される、適当な非刺激賦形剤と混合することにより調製することができる。かかる物質は、ココアバターおよびポリエチレングリコールである。
また、本発明の化合物は、鼻腔内、眼球内、膣内および直腸内経路により投与することができ、坐剤、吸入、粉末およびエアロゾール処方(例えば、ステロイド吸入剤、 Rohatagi, J. Clin. Pharmacol. 35:1187-1193, 1995; Tjwa, Ann. Allergy Asthama Immunol. 75:107-111, 1995を参照)を含む。
【0070】
本発明の置換ナフチルベンゾチオフェン酸は、塗布剤、溶液、懸濁液、エマルジョン、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ジェル、ペイント、粉末およびエアロゾールとして処方され、経皮的に局所経路でデリバリーすることができる。
また、カプセル化物質も本発明の化合物と用いることができ、「組成物」なる用語は、他の担体を含むまたは含まずに、処方としてカプセル化物質と組み合わせた活性成分を含むことを意図する。また、例えば本発明の化合物は、体内でゆっくりと放出されるマイクロスフェアとしてデリバリーすることができる。一の具体例において、マイクロスフェアは、皮下でゆっくりと放出される薬剤含有マイクロスフェアの皮内注射(例えば、Rao, J. Biomater Sci. Polym. Ed. 7:623-645, 1995を参照);生分解性かつ注射可能ゲル処方(例えば、Gao, Pharm. Res. 12:857-863, 1995を参照);または、経口投与用マイクロスフェア(例えば、Eyles, J. Pharm. Pharmacol. 49:669-674, 1997を参照)として投与することができる。経皮および皮内投与は、両方とも、数週間または数ヶ月の間一定にデリバリーする。また、サッシェは、本発明の化合物、例えば抗アテローム硬化性医薬のデリバリーに用いることができる。
【0071】
他の具体例において、本発明の化合物は、細胞膜と融合するまたはエンドサイトーシスされるリポソームを用いて、すなわち、エンドサイトーシスを生じる細胞の表面膜蛋白質受容体に結合する、リポソームに結合するリガンドまたはオリゴヌクレオチドに直接結合するリガンドを用いることによりデリバリーすることができる。リポソームを用いることにより、特に、リポソーム表面が、標的細胞に特異的なリガンドをキャリーし、またはさもなければ優先的に特定の臓器に関連する場合、一は、インビボで標的細胞に化合物をデリバリーすることができる。(例えば、Al-Muhammed, J. Microencapsul. 13:293-306, 1996; Chonn, Curr. Opin. Biotechnol. 6:698-708, 1995; Ostro, Am. J. Hosp. Pharm. 46:1576-1587, 1989を参照)。
【0072】
他の場合において、好ましい製剤は、例えば、1mM〜50mMのヒスチジン、0.1%〜2%のシュークロース、2%〜7%のマンニトールのいずれかまたはすべてをpH範囲4.5〜5.5で含有しうる、使用前にバッファーと組み合わせてもよい凍結乾燥粉末でありうる。
本発明の医薬組成物は、所望により、さらなる置換ナフチルベンゾチオフェン酸、少なくとも1種のPAI−1活性の増加に付随する疾患または症状の治療に有用な他の治療剤を含有することができる。
医薬組成物は、一般的に、滅菌、実質的に等張性および米国食品医薬品局の医薬品製造品質管理基準(Good Manufacturing Practice)(GMP)レジュレーションに完全に順守して処方される。
【0073】
E.置換ナフチルベンゾチオフェン酸の投与計画の決定
本発明は、PAI−1活性の増加に付随する疾患および症状を置換ナフチルベンゾチオフェン酸を用いて治療する対象のPAI−1活性阻害方法を提供する。
【0074】
治療目的に関して、本明細書の組成物または化合物は、長期間にわたる連続的デリバリー(例えば、連続的経皮、粘膜または静脈内デリバリー)により単一ボーラス投与で、あるいは繰り返し投与プロトコール(例えば、毎時間、毎日または毎週の繰り返し投与プロトコールにより)で患者に投与することができる。本発明の医薬処方は、例えば、1日に1回以上、1週間に3回または毎週投与することができる。本発明の代表的な具体例において、本発明の医薬処方は、1日に1または2回経口投与される。
【0075】
これに関して、生物活性剤(複数でも可)の治療的に有用な投与は、PAI−1活性の増加に付随する1つ以上の兆候または検出可能な症状を緩和する、臨床的に有意な結果を与えるであろう長期治療計画での繰り返し投与を含みうる。これに関しての有効な投与量の決定は、典型的には、動物モデル研究に基づき、さらにヒト臨床試験で調べられ、対象の標的となる兆候または症状の発生または重症度を有意に減少させる有効な用量および投与プロトコールを決定することにより導かれる。これに関する適当なモデルは、例えば、マウス、ラット、ブタ、ネコ、非ヒト霊長類および他の当該分野で知られた許容される動物モデル対象を含む。別法として、有効な用量は、インビトロモデル(例えば、免疫学的および組織病理学的アッセイ)を用いて決定することができる。かかるモデルを用いる場合、通常の計算および調節だけが、典型的には、治療的に有効な量の生物活性剤(複数でも可)(例えば、所望の応答を引き出すのに、鼻腔内的に有効な、経皮的に有効な、静脈内的に有効なまたは筋肉内的に有効な量)を投与するのに適した濃度および用量を決定するのに必要である。他の具体例において、生物活性剤(複数でも可)の「有効量」または「治療的に有効な量」は、治療または診断の目的のいずれにおいても、上記したような疾患または症状に関連する1以上の選択された生物活性を単に阻害または増加させることができる。
【0076】
生物活性剤の実際の投与量は、曝露の範囲および対象の特定の状態(例えば、対象の年齢、大きさ、健康、兆候の範囲、感受性因子など)、投与回数および経路、ならびに同時に投与される他の薬剤または治療などの因子に応じて変化するだろう。投与計画は、最適な予防または治療応答を得るために調節することができる。「治療的に有用な用量」は、本明細書において、それを投与したことに対する効果が生じる用量を意味する。より特別には、本発明の化合物の治療的に有効な用量は、好ましくは、PAI−1活性の増加に付随する疾患の兆候、合併症または理化学的な兆候を緩和する。正確な用量は、治療目的に依存し、公知の技術を用いて当業者により確認されるだろう(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (Vols. 1-3, 1992); Lloyd, 1999, The Art, Science, and Technology of Pharmaceutical Compounding; and Pickar, 1999, Dosage Calculationsを参照)。また、治療的に有効な用量は、活性剤の毒性または有害な副作用を臨床的に治療的に有利な効果が上回るような量である。さらに、個々の対象に関しては、特定の投与計画を評価し、個々の必要性、および化合物を投与するか、または投与を監督する専門家の判断に応じて長期にわたり調節されるべきである。
【0077】
本発明の代表的な具体例において、化合物の単位剤形は、標準的な投与計画に関して調製される。このように、組成物は、医師の指示でより少用量に容易に分割することができる。例えば、単位剤形は、パックされた粉末、バイアルまたはアンプルに、好ましくはカプセルまたは錠剤形態に製造することができる。これら組成物の単位剤形に存在する活性化合物は、例えば、1日に単回または複数回投与に関して、患者の必要性に応じて、約1グラム〜約15グラム以上の量で存在しうる。約1グラムの1日の最小量で開始することにより、PAI−1の血中レベルおよび患者の兆候の緩和を分析して、投与量が多いか、または少ないかを決定することができる。本発明の化合物の効果的な投与は、例えば、約0.1mg/kg/日〜約1、000mg/kg/日の経口投与である。好ましくは、投与量は、約10/mg/kg/日〜約600mg/kg/日、より好ましくは約25〜約200mg/kg/日、さらにより好ましくは約50mg/kg/日〜約100mg/kg/日である。いくつかの具体例において、約1mg/kg/日〜約250mg/kg/日の1日の投与量が与えられる。
【0078】
ある具体例において、本発明は、式1〜3で示される化合物のプロ戸ラックに関する。「プロドラッグ」なる用語は、本明細書で用いられる場合、インビボで、代謝手段(例えば、加水分解により)式1〜3で示される化合物に変換可能な化合物を意味する。プロドラッグの種々の形態は当該分野で公知であり、例えば、Bundgaard, (ed.), Design of Prodrugs, Elsevier (1985); Widder, et al. (ed.), Methods in Enzymology, vol. 4, Academic Press (1985); Krogsgaard-Larsen, et al., (ed). 「Design and Application of Prodrugs, Textbook of Drug Design and Development, Chapter 5, 113-191 (1991), Bundgaard, et al., Journal of Drug Delivery Reviews, 8:1-38(1992), Bundgaard, J. of Pharmaceutical Sciences, 77:285 et seq. (1988);およびHiguchiおよびStella (eds.) Prodrugs as Novel Drug Delivery Systems, American Chemical Society (1975)に記載のものである。
【0079】
キット
置換ナフチルベンゾチオフェン酸を含む医薬を適当な担体中に処方した後、適当な容器中に入れ、PAI−1関連障害、例えば、血栓症の治療に関してラベル付けすることができる。加えて、PAI−1関連障害の治療に有用な少なくとも1つの他の治療剤を含む他の医薬を、同様に容器中に入れ、特定の疾患の治療に関してラベル付けすることができる。別法として、置換ナフチルベンゾチオフェン酸およびPAI−1関連障害の治療に有用な少なくとも1つの他の治療剤を含む単一の医薬を、適当な容器中の入れ、治療に関してラベル付けする。置換ナフチルベンゾチオフェン酸を含む医薬の投与および置換ナフチルベンゾチオフェン酸およびPAI−1関連障害の治療に有用な少なくとも1つの他の治療剤を含む医薬の単一の医薬での投与に関して、かかるラベリングは、例えば、投与の量、頻度および方法に関する説明を含むだろう。同様に、容器で提供される複数の医薬の投与に関しては、かかるラベリングは、例えば、個々の医薬の投与の量、頻度および方法に関する説明を含むだろう。
【0080】
実施例
化合物1〜8の合成を、それぞれ、実施例1〜8に記載する。
実施例1:1−{2−[5−ブロモ−6−(1H−テトラゾール−5−イルメトキシ)−ナフタレン−2−イル]−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル}−ペンタン−1−オンの合成
工程1:(1,6−ジブロモ−ナフタレン−2−イルオキシ)−アセトニトリルの合成:
アセトン(250mL)中の6−メトキシ−2−ブロモナフトール(25.0g、82.8mmol)および炭酸セシウム(54.0g、166mmol)の混合物を、常温で1時間撹拌した。ついで、ブロモアセトニトリル(6.3mL、91mmol)を加えた。反応混合物を常温で17時間撹拌した。ついで、不溶性物質を濾過し、アセトン濾液の溶媒を蒸発させた。ついで、得られた残渣を、少し加温して酢酸エチルおよび水間で分配した。有機相をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮した。固体残渣をヘキサン中で10分間撹拌し、濾過し、ヘキサンで洗浄した。これを減圧下72℃で5時間乾燥して、(1,6−ジブロモ−ナフタレン−2−イルオキシ)−アセトニトリル(25.3g、89.7%)を淡褐色固体として得た:MP:130−2℃;質量スペクトル(+EI,[M+OAc])m/z398。H NMR(400MHz,DMSO−d):δ8.26(d,1H,J=1.97Hz),8.01−8.05(m,2H),7.75(dd,1H,J=9.04Hzおよび2.10Hz),7.63(d,1H,J=9.11Hz),7.55(d,1H,J=8.5Hz),5.38ppm(s,2H);元素分析:C12BrNO:計算値:C,42.27;H,2.07;N,4.11;実測値:C,42.42;H,2.04;N,4.15。
【0081】
工程2:(6−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−1−ブロモ−ナフタレン−2−イルオキシ)−アセトニトリルの合成:
THF(25mL)および水(41mL)中の(1,6−ジブロモ−ナフタレン−2−イルオキシ)−アセトニトリル(9.2g、27mmol)、2部分のベンゾチオフェン−2−ボロン酸(7.2g、40mmol)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(8.7g、27mmol)、炭酸カリウム(9.4g68mmol)および酢酸パラジウム(II)(0.079g、0.35mmol)の混合物を、70℃で7時間加熱した。常温に冷却した後、反応混合物を2Nの塩酸に注いだ。これを熱クロロホルム(溶解度が乏しいため)により抽出した。有機相を水およびブラインで洗浄した。ついで、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣を、アセトニトリル中で10分間撹拌した。ついで、濾過し、アセトニトリルで洗浄した。沈殿を12時間減圧下76℃で乾燥し、6.8gの標題化合物を暗茶褐色固体として得た。濾液を濃縮し、ヘキサン中の10〜45%クロロホルムを用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。20分60℃減圧下で乾燥した後、1.33g以上の標題化合物を淡淡黄色固体として得た。(6−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−1−ブロモ−ナフタレン−2−イルオキシ)−アセトニトリルの総収量は8.1g(86%)であった:MP:179−81℃;質量スペクトル(+EI,M)m/z393/395.H NMR(500MHz,DMSO−d):δ8.37(d,1H,J=1.83Hz),8.20(d,2H,J=7.94Hz),8.15(dd,1H,J=8.86および1.87Hz),8.01−4(m,2H),7.88−7.90(m,1H),7.67(d,1H,J=9.16Hz),7.37−7.43(m,2H),5.44ppm(s,2H);元素分析:C2012BrNOS:計算値:C,60.92;H,3.07;N,3.55;実測値:C,60.75;H,2.91;N,3.34。
【0082】
工程3:[1−ブロモ−6−(3−ペンタノイル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−アセトニトリルの合成:
クロロホルム(400mL)中の(6−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−1−ブロモ−ナフタレン−2−イルオキシ)−アセトニトリル(5.27g、13.4mmol)の0℃の懸濁液に、塩化バレリル(2.1mL、17mmol)および塩化スズ(IV)(2.3mL、20mmol)を加えた。反応混合物を22.5時間還流した。還流の間、塩化バレリル(8.5mL、70mmol)を4回で、塩化スズ(IV)(8.9mL、76mmol)を4回で加えた。常温に冷却した後、反応混合物を氷水に注いだ。相を分離し、有機相を水およびブラインで洗浄した。ついで、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣を、(1)100%クロロホルム、(2)ヘキサン中20〜60%塩化メチレンおよび100%塩化メチレンを用いるフラッシュクロマトグラフィーおよび(3)水中86%アセトニトリル(0.1%トリフルオロ酢酸)でのHPLCにより精製した。溶媒を蒸発させ、酢酸エチルで抽出し、水およびブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、60℃で30分間乾燥して、標題化合物(0.356g、5.23%)を透明な褐色ガムとして得た:質量スペクトル(+EI,[M+H])m/z478/480.H NMR(500MHz,DMSO−d):δ8.24−8.28(m,2H),8.20(d,1H,J=1.83Hz),8.10(dd,1H,J=6.49Hzおよび1.48Hz),7.96−7.97(m,1H),7.81(dd,1H,J=8.71Hzおよび1.84Hz),7.73(d,1H,J=9.15Hz),7.46−7.52(m,2H),5.47(s,2H),2.42(t,2H,J=7.26Hz),1.41−1.46(m,2H),0.97−1.04(m,2H),0.57ppm(t,3H,J=7.33Hz);元素分析:C2520BrNOS+0.6モルHO:計算値:C,61.38;H,4.37;N,2.86;実測値:C,61.07;H,4.21;N,2.67。
【0083】
工程4:1−{2−[5−ブロモ−6−(1H−テトラゾール−5−イルメトキシ)−ナフタレン−2−イル]−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル}−ペンタン−1−オンの合成:
DMF(10mmol)中の[1−ブロモ−6−(3−ペンタノイル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−アセトニトリル(0.576g、1.20mmol)、アジ化ナトリウム(0.393g、6.05mmol)および塩化アンモニウム(0.33g、6.2mmol)の混合物を、80℃で3時間加熱した。常温に冷却した後、反応混合物を過剰の水に注ぎ、2Nの塩酸で酸性化した。ついで、酢酸エチルで抽出した。有機相を水およびブラインで洗浄した。ついで、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣を、移動相として水中81%アセトニトリル(0.1%ギ酸)を用いるHPLCにより精製した。溶媒を蒸発させ、酢酸エチルで抽出し、水およびブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、減圧下58℃で16時間乾燥して、1−{2−[5−ブロモ−6−(1H−テトラゾール−5−イルメトキシ)−ナフタレン−2−イル]−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル}−ペンタン−1−オンを淡黄色泡沫体として得た(0.312g、49.8%)。質量スペクトル(+EI,[M+H])m/z521/523.H NMR(500MHz,DMSO−d):δ16.6−17.3(br,1H),8.24(d,1H,J=8.86Hz),8.16−8.20(m,2H),8.08−8.09(m,1H),7.95−7.97(m,1H),7.75−7.78(m,2H),7.46−7.52(m,2H),5.76(s,2H),2.42(t,2H,J=7.26Hz),1.40−1.46(m,2H),0.96−1.04(m,2H),0.58ppm(t,3H,J=7.42Hz);元素分析:C2521BrNS:計算値:C,57.59;H,4.06;N,10.74;実測値:C,57.42;H,4.19;N,10.59。
【0084】
実施例2:[1−ブロモ−6−(3−ペンタノイル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸の合成
工程1:(1,6−ジブロモ−ナフタレン−2−イルオキシ)−酢酸エチルエステルの合成:
アセトン(200mL)中の6−メトキシ−2−ブロモナフトール(20.1g、66.6mmol)および炭酸セシウム(43.2g、133mmol)の混合物を、常温で1時間撹拌した。ついで、ブロモ酢酸エチル(8.8mL、80mmol)を加えた。反応混合物を、常温で23時間撹拌した。ついで、不溶性物質を濾過し、アセトン濾液の溶媒を蒸発させた。ついで、水および酢酸エチル間で分配した。有機相を水およびブラインで洗浄した。ついで、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。得られた残渣をヘキサン中で10分間撹拌し、濾過し、ヘキサンで洗浄した。ついで、64℃で25時間乾燥して、(1,6−ジブロモ−ナフタレン−2−イルオキシ)−酢酸エチルエステルを淡黄色固体として得た(19.5g,75.6%):MP:104−6℃;質量スペクトル(+EI,M)m/z388.H NMR(500MHz,DMSO−d):δ8.24(d,1H,J=1.99Hz),8.03(d,1H,J=9.01Hz),7.95(d,1H,J=9.01Hz),7.75(dd,1H,J=9.09Hzおよび2.07Hz),7.47(d,1H,J=9.17Hz),5.07(s,2H),4.17(q,2H,J=7.07Hz),1.21ppm(t,3H,J=7.07Hz);元素分析:C1412Br:計算値:C,43.33;H,3.12;N,0.00;実測値:C,43.40;H,3.10;N,0.00。
【0085】
工程2:(6−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−1−ブロモ−ナフタレン−2−イルオキシ)−酢酸エチルエステルの合成:
水(90mL)およびTHF(35mL)中の(1,6−ジブロモ−ナフタレン−2−イルオキシ)−酢酸エチルエステル(6.9g、18mmol)、ベンゾチオフェン−2−ボロン酸(4.78g、26.8mmol)(2部分)、パラジウム(II)アセテート(0.11g、0.49mmol)、炭酸カリウム(6.2g、45mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム(5.8g、18mmol)の混合物を70℃で3.5時間加熱した。反応混合物を常温に冷却し、ついで、過剰の2Nの塩酸中に加えた。クロロホルムで抽出した。ついで、有機相水およびブラインで洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、熱濾過(溶解度が乏しいため)および溶媒を蒸発させた。残渣を、ヘキサン中25〜45%塩化メチレンおよび100%クロロホルムを溶出液として用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。減圧下60℃で30分間乾燥し、(6−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−1−ブロモ−ナフタレン−2−イルオキシ)−酢酸エチルエステルを黄褐色固体として得た(3.3g、42%)MP:178−81℃;質量スペクトル(+EI,M)m/z440/442.H NMR(500MHz,DMSO−d):δ8.32(d,1H,J=1.83Hz),8.18(d,1H,J=8.86Hz),8.07−8.12(m,2H),8.01(d,2H,J=7.33Hz),7.88(dd,1H,J=7.63Hzおよび1.07Hz),7.47(d,1H,J=9.16Hz),7.36−7.43(m,2H),5.09(s,2H),4.18(q,2H,J=7.08Hz),1.22ppm(t,3H,J=7.11Hz);元素分析:C2217BrOS:計算値:C,59.87;H,3.88;N,0.00;実測値:C,60.03;H,3.83;N,0.00。
【0086】
工程3:[1−ブロモ−6−(3−ペンタノイル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸エチルエステルの合成:
クロロホルム(90mL)中の(6−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−1−ブロモ−ナフタレン−2−イルオキシ)−酢酸エチルエステル(3.0g、6.8mmol)の0℃に溶液に、塩化バレリル(0.97mL、8.2mmol)および塩化スズ(IV)(1.2mL、10mmol)を加えた。反応混合物を常温で3時間撹拌した。ついで、合計17.5時間撹拌した。還流の間、塩化バレリル(1.94mL、16.4mmol)を2回で、塩化スズ(IV)(2.4mL、20mmol)を2回で加えた。反応混合物を常温に冷却した。ついで、氷水に注ぎ、さらにクロロホルムで希釈した。有機相を水およびブラインで洗浄した。ついで、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。ついで、残渣を、(1)ヘキサン中の20%〜50%塩化メチレンおよび100%塩化メチレン、(2)100%ヘキサン、ヘキサン中の1〜10%酢酸エチルおよび(3)100%ヘキサンおよびヘキサン中の5〜40%1,2−ジクロロエタンおよび100%塩化メチレンを用いるフラッシュクロマトグラフィーにより複数回精製した。さらに、水中90%アセトニトリル(0.1%ギ酸)を移動相として用いるHPLCにより精製した。溶媒を蒸発させ、酢酸エチルで抽出し、水およびブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、60℃で30分間乾燥して、[1−ブロモ−6−(3−ペンタノイル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸エチルエステルを透明な淡褐色ガムとして得た(0.0979g、2.72%);H NMR(400MHz,DMSO−d):δ8.23(d,1H,J=8.81Hz),8.06−8.14(m,3H),7.94−7.96(m,1H),7.72(dd,1H,J=8.81Hzおよび1.79Hz),7.44−7.52(m,3H),5.11(s,2H),4.19(q,2H,J=7.11Hz),2.37(t,2H,J=7.30Hz),1.18−1.20(m,2H),1.38−1.45(m,2H),0.9−1.05(m,3H),0.56ppm(t,3H,J=7.37Hz)。
【0087】
工程4:[1−ブロモ−6−(3−ペンタノイル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸の合成:
THF(5mL)および水(5mL)中の[1−ブロモ−6−(3−ペンタノイル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸エチルエステル(0.0932g、0.177mmol)および水酸化カリウム(0.063gm1.1mmol)の混合物を、常温で2時間撹拌した。ついで、過剰の水に注ぎ、2Nの塩酸で酸性化した。ついで、酢酸エチルで抽出し、水およびブラインで洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させ、減圧下64℃で25時間乾燥して、[1−ブロモ−6−(3−ペンタノイル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸を淡黄色固体として得た(0.0662g、75.2%):MP:164−5℃;質量スペクトル(+EI,[M+H])m/z497/499.H NMR(500MHz,DMSO−d):δ13.0−13.2(br,1H),8.24(d,1H,J=8.70Hz),8.07−8.13(m,3H),7.95−7.97(m,1H),7.76(dd,1H,J=8.78Hzおよび1.91Hz),7.45−7.51(m,3H),5.02(s,2H),2.42(t,2H,J=7.22Hz),1.40−1.46(m,2H),0.97−1.04(m,2H),0.58ppm(t,3H,J=7.41Hz);元素分析:C2521BrOS:計算値:C,60.37;H,4.26;N,0.00;実測値:C,60.23;H,4.35;N,0.00。
【0088】
実施例3:1−{2−[5−ブロモ−6−(1H−テトラゾール−5−イルメトキシ)−ナフタレン−2−イル]−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル}−2−フェニル−エタノンの合成
工程1:[1−ブロモ−6−(3−フェニルアセチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−アセトニトリルの合成:
クロロホルム(250mL)中の(6−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−1−ブロモ−ナフタレン−2−イルオキシ)−アセトニトリル(4.87g、12.4mmol)の0℃の混合物に、塩化フェニルアセチル(2.0mL、15mmol)および塩化スズ(IV)(2.2mL、19mmol)を加えた。5時間還流した。還流の間、さらに塩化フェニルアセチル(2.0mL、15mmol)および塩化スズ(IV)(2.2mL、19mmol)を加えた。ついで、反応混合物を常温に冷却し、氷水に注いだ。さらにクロロホルムで希釈し、水およびブラインで洗浄した。ついで、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。エーテル中の残渣を撹拌し、濾過した後、濾液を濃縮し、ヘキサン中25〜45%塩化メチレンおよび100%塩化メチレンを溶出液として用いるフラッシュクロマトグラフィーにより、ついで、移動相として86%アセトニトリル(0.1%ギ酸)を用いるHPLCにより精製した。溶媒を蒸発させ、酢酸エチルで抽出し、水およびブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、減圧下60℃で1時間乾燥して、標題化合物を硬琥珀色ガムとして得た(0.531g、8.36%);質量スペクトル(+EI,[M+H])m/z512/514.H NMR(500MHz,DMSO−d):δ8.30(d,1H,J=8.70Hz),7.74(d,1H,J=9.17Hz),7.85(dd,1H,J=8.70Hzおよび1.83Hz),8.21−8.25(m,2H),8.07−8.10(m,1H),7.90−7.94(m,1H),7.44−7.50(m,2H),7.13−7.19(m,3H),6.91−6.94(m,2H),5.47(s,2H),3.8ppm(s,2H);元素分析:C2818BrOS:計算値:C,65.63;H,3.54;N,2.73;実測値:C,65.48;H,3.43;N,2.35。
【0089】
工程2:1−{2−[5−ブロモ−6−(1H−テトラゾール−5−イルメトキシ)−ナフタレン−2−イル]−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル}−2−フェニル−エタノンの合成:
DMF(10mmol)中の[1−ブロモ−6−(3−フェニルアセチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−アセトニトリル(0.437g、0.852mmol)、アジ化ナトリウム(0.284g、4.36mmol)および塩化アンモニウム(0.233g、4.36mmol)の混合物を、80℃で2時間加熱した。常温に冷却した後、反応混合物を過剰の水に注ぎ、2Nの塩酸で酸性化した。ついで、酢酸エチルで抽出した。有機相を水およびブラインで洗浄した。ついで、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣を、水中72%アセトニトリル(0.1%トリフルオロ酢酸)を移動相として用いるHPLCにより精製した。溶媒を蒸発させ、酢酸エチルで抽出し、水およびブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、減圧下64℃で4時間乾燥して、1−{2−[5−ブロモ−6−(1H−テトラゾール−5−イルメトキシ)−ナフタレン−2−イル]−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル}−2−フェニル−エタノンを黄色泡沫体として得た(0.180g、38.1%);質量スペクトル(+EI,[M+H])m/z555/557.H NMR(500MHz,DMSO−d):δ16.7−17.2(br,1H),8.27(d,1H,J=8.86Hz),8.18−8.20(m,2H),8.07−8.10(m,1H),7.90−7.93(m,1H),7.82(dd,1H,J=8.70Hzおよび1.83Hz),7.77(d,1H,J=9.16Hz),7.45−7.50(m,2H),7.13−7.19(m,3H),6.93(dd,2H,J=7.64Hzおよび1.55Hz),5.77(s,2H),3.81ppm(s,2H);元素分析:C2819BrNS+0.3モルHO:計算値:C,59.96;H,3.52;N,9.99;実測値:C,59.58;H,3.40;N,9.69。
【0090】
実施例4:[1−ブロモ−6−(3−フェニルアセチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸の合成
工程1:[1−ブロモ−6−(3−フェニルアセチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸エチルエステルの合成
クロロホルム(220mL)中の(6−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−1−ブロモ−ナフタレン−2−イルオキシ)−酢酸エチルエステル(4.35g,9.86mmol),フェニルアセチルクロライド(4.0mL,30mmol)(2部分)および塩化スズ(IV)(4.3mL,37mmol)の混合物を、5時間還流した。常温に冷却し、氷水に注いだ。さらにクロロホルムで希釈し、水およびブラインで洗浄した。ついで、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。エーテル中の残渣を撹拌し、濾過した後、濾液を濃縮し、(1)ヘキサン中の25〜35%塩化メチレンおよび100%塩化メチレンおよび(2)ヘキサン中の1〜8%酢酸エチルを用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。ついで、水中85%アセトニトリル(0.1%トリフルオロ酢酸)を移動相として用いるHPLCにより精製した。溶媒を蒸発させ、酢酸エチルで抽出し、水およびブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、減圧下60℃で1時間乾燥し、[1−ブロモ−6−(3−フェニルアセチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸エチルエステルを黄色半固体として得た(0.491g、8.89%);質量スペクトル(+EI,[M+H])m/z559/561.H NMR(500MHz,DMSO−d):δ8.28(d,1H,J=7.19Hz),8.17(d,1H,J=1.98Hz),8.12(d,1H,J=9.01Hz),8.06−8.10(m,1H),7.90−7.93(m,1H),7.81(dd,1H,J=8.78Hzおよび1.91Hz),7.54(d,1H,J=9.16Hz),7.45−7.50(m,2H),7.13−7.19(m,3H),6.91−6.94(m,2H),5.13(s,2H),4.19(q,2H,J=7.13Hz),3.81(s,2H),1.22ppm(t,3H,J=7.10Hz);元素分析:C3023BrOS+0.10molHO:計算値:C,64.19;H,4.17;N,0.00;実測値:C,63.85;H,4.03;N,0.00。
【0091】
工程2:[1−ブロモ−6−(3−フェニルアセチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸の合成:
THF(125mL)および水(125mL)中の[1−ブロモ−6−(3−フェニルアセチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸エチルエステル(0.427g、0.764mmol)および水酸化カリウム(0.162g2.89mmol)の混合物を、常温で2時撹拌した。ついで、過剰の水に注ぎ、2Nの塩酸で酸性化した。ついで、これを酢酸エチルで抽出し、水およびブラインで洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させ、水中の65%アセトニトリル(0.1%トリフルオロ酢酸)を移動相として用いるHPLCにより精製した。溶媒を蒸発させ、酢酸エチルで抽出し、水およびブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、減圧下60℃で25時間乾燥して、[1−ブロモ−6−(3−フェニルアセチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸を黄色固体として得た(0.100g、24.6%):MP:170−2C;質量スペクトル(+EI,[M+H])m/z531/533.H NMR(500MHz,DMSO−d):δ13.0−13.3(br,1H),8.27(d,1H,J=8.86Hz),8.16(d,1H,J=1.52Hz),8.06−8.12(m,2H),7.89−7.92(m,1H),7.81(dd,1H,J=8.86Hzおよび1.83Hz),7.44−7.52(m,3H),7.13−7.19(m,3H),6.92−6.94(m,2H),5.02(s,2H),3.81ppm(s,2H);元素分析:C2819BrOS+0.15moleHO:計算値:C,62.96;H,3.64;N,0.00;実測値:C,62.59;H,3.79;N,0.00.
【0092】
実施例5:1−{2−[5−ブロモ−6−(1H−テトラゾール−5−イルメトキシ)−ナフタレン−2−イル]−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル}−3−メチル−ブタン−1−オンの合成
工程1:{1−ブロモ−6−[3−(3−メチル−ブチリル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−ナフタレン−2−イルオキシ}−アセトニトリルの合成:
クロロホルム(560mL)中の、(6−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−1−ブロモ−ナフタレン−2−イルオキシ)−アセトニトリル(11.3g、32.4mmol)の0℃の混合物に、塩化イソバレリル(4.7mL、39mmol)および塩化スズ(IV)(5.8mL、49mmol)を加えた。ついで、反応混合物を23時間還流した。この時点で、塩化イソバレリル(12.7mL、103mmol)を3回でおよび塩化スズ(IV)(13.4mL、113mmol)を3回で加えた。常温に冷却した後、反応混合物を氷水に注いだ。さらにクロロホルムで希釈し、有機相を水およびブラインで洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣をエーテル中で撹拌し、濾過した。濾液を濃縮し、ヘキサン中の25〜50%塩化メチレンを用いるフラッシュクロマトグラフィーにより、ついで、水中89%アセトニトリル(0.1%トリフルオロ酢酸)を移動相として用いるHPLCにより精製した。溶媒を蒸発させ、酢酸エチルで抽出し、水およびブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、減圧下70℃で50分間乾燥し、{1−ブロモ−6−[3−(3−メチル−ブチリル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−ナフタレン−2−イルオキシ}−アセトニトリル(1.1g、7.10%)を黄色半固体として得た。質量スペクトル(−EI,[M−H])m/z476/478.H NMR(500MHz,DMSO−d):δ8.19−8.25(m,2H),8.16(d,1H,J=1.83Hz),8.04−8.07(m,1H),7.91−7.94(m,1H),7.78(dd,1H,J=8.78Hzおよび1.95Hz),7.69(d,1H,J=9.15Hz),7.42−7.49(m,2H),5.43(s,2H),2.28(d,2H,J=6.71Hz),1.93−2.00(m,1H),0.64ppm(d,6H,J=6.71Hz);元素分析:C2520BrNOS:計算値:C,62.77;H,4.21;N,2.93;実測値:C,62.79;H,4.18;N,2.82
【0093】
工程2:1−{2−[5−ブロモ−6−(1H−テトラゾール−5−イルメトキシ)−ナフタレン−2−イル]−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル}−3−メチル−ブタン−1−オンの合成:
DMF(10mmol)中の{1−ブロモ−6−[3−(3−メチル−ブチリル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−ナフタレン−2−イルオキシ}−アセトニトリル(1.01g、2.11mmol)、アジ化ナトリウム(0.687g、10.6mmol)および塩化アンモニウム(0.570g、10.7mmol)の混合物を、80℃で2時間加熱した。常温に冷却した後、反応混合物を過剰の水に注ぎ、2Nの塩酸で酸性化した。ついで、これを酢酸エチルで抽出した。有機相を水およびブラインで洗浄した。ついで、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。減圧下78℃で12時間乾燥し、1−{2−[5−ブロモ−6−(1H−テトラゾール−5−イルメトキシ)−ナフタレン−2−イル]−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル}−3−メチル−ブタン−1−オンを黄色泡沫体として得た(0.602g、75%)。質量スペクトル(+EI,[M+H])m/z521/523.H NMR(500MHz,DMSO−d):δ16.7−17.2(br,1H),8.24(d,1H,J=9.01Hz),8.16−8.19(m,2H),8.08−8.10(m,1H),7.95−7.97(m,1H),7.75−7.79(m,2H),7.46−7.52(m,2H),5.77(s,2H),2.32(d,2H,J=6.72Hz),1.95−2.02(m,1H),0.65ppm(d,6H,J=6.57Hz);元素分析:C2521BrNS:計算値:C,57.59;H,4.06;N,10.74;実測値:C,57.37;H,4.12;N,10.48
【0094】
実施例6:{1−ブロモ−6−[3−(3,3−ジメチル−ブチリル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−ナフタレン−2−イルオキシ}−酢酸の合成
工程1:{1−ブロモ−6−[3−(3,3−ジメチル−ブチリル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−ナフタレン−2−イルオキシ}−酢酸エチルエステルの合成:クロロホルム(270mL)中の(6−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−1−ブロモ−ナフタレン−2−イルオキシ)−酢酸エチルエステル(5.18g、11.7mmol)の0℃の混合物に、塩化t−ブチルアセチル(2.0mL、14mmol)および塩化スズ(IV)(2.1mL、18mmol)を加えた。23時間還流した。還流の間、さらに塩化t−ブチルアセチル(9.0mL、66mmol)を4回で、塩化スズ(IV)(8.4mL、71mmol)を4回で加えた。ついで、常温に冷却し、氷水に注いだ。さらにクロロホルムで希釈し、水およびブラインで洗浄した。ついで、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣を、(1)100%クロロホルム、(2)ヘキサン中の25〜60%塩化メチレンを用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。ついで、水中90%アセトニトリル(0.1%トリフルオロ酢酸)を移動相として用いるHPLCにより精製した。溶媒を蒸発させ、酢酸エチルで抽出し、水およびブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、減圧下常温で2時間乾燥して、{1−ブロモ−6−[3−(3,3−ジメチル−ブチリル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−ナフタレン−2−イルオキシ}−酢酸エチルエステルを琥珀色の半固体として得た(0.412g、6.53%);質量スペクトル(+EI,[M+H])m/z539/541.H NMR(500MHz,DMSO−d):δ8.26(d,1H,J=8.81Hz),8.07−8.14(m,3H),7.91−7.93(m,1H),7.76(dd,1H,J=8.81Hzおよび1.97Hz),7.45−7.53(m,3H),5.12(s,2H),4.19(q,2H,J=7.15Hz),2.33(s,2H),1.20−1.25(m,3H),0.76ppm(s,9H);元素分析:C2827BrNOS:計算値:C,62.34;H,5.04;N,0.00;実測値:C,57.16;H,4.37;N,0.00。
【0095】
工程2:{1−ブロモ−6−[3−(3,3−ジメチル−ブチリル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−ナフタレン−2−イルオキシ}−酢酸の合成:
THF(5mL)および水(5mL)中の{1−ブロモ−6−[3−(3,3−ジメチル−ブチリル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−ナフタレン−2−イルオキシ}−酢酸エチルエステル(0.360g、0.667mmol)および水酸化カリウム(0.125g、2.23mmol)の混合物を、常温で4時間撹拌した。ついで、過剰の水に注ぎ、2Nの塩酸で酸性化した。ついで、これを酢酸エチルで抽出し、水およびブラインで洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させ、減圧下78℃で12時間乾燥して、{1−ブロモ−6−[3−(3,3−ジメチル−ブチリル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−ナフタレン−2−イルオキシ}−酢酸を淡黄色固体として得た(0.233g、68.3%):MP:206−7℃;質量スペクトル(+EI,[M+H])m/z511/513。H NMR(500MHz,DMSO−d):δ12.9−13.4(br,1H),8.24(d,1H,J=9.01Hz),8.11−8.13(m,2H),8.07−8.09(m,1H),7.74(dd,1H,J=8.78Hzおよび1.76Hz),7.46−7.51(m,3H),5.02(s,2H),2.33(s,2H),0.76ppm(s,9H);元素分析:C2623BrNOS:計算値:C,61.06;H,4.53;N,0.00;実測値:C,61.17;H,4.64;N,0.00
【0096】
実施例7:{1−ブロモ−6−[6−(4,4−ジメチル−ペンタノイル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−ナフタレン−2−イルオキシ}−酢酸の合成
工程1:{1−ブロモ−6−[6−(4,4−ジメチル−ペンタノイル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−ナフタレン−2−イルオキシ}−酢酸エチルエステルの合成:
{1−ブロモ−6−[6−(4,4−ジメチル−ペンタノイル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−ナフタレン−2−イルオキシ}−酢酸エチルエステルを、実施例6工程2のHPLC精製からの副生成物として得た。黄褐色固体(MPは測定していない)の収量は0.207g、3.84%であった;質量スペクトル(+EI,[M+H])m/z539/541。H NMR(500MHz,DMSO−d):δ8.74(s,1H),8.40(d,1H,J=1.68Hz),8.22(d,1H,J=9.00Hz),8.12−8.16(m,3H),7.96−8.00(m,2H),7.50(d,1H,J=9.15Hz),5.12(s,2H),4.20(q,2H,J=7.12Hz),3.01(s,2H),1.23(t,3H,J=7.10Hz),1.05ppm(s,9H);元素分析:C2827BrNOS:計算値:C,62.34;H,5.04;N,0.00;実測値:C,57.27;H,4.72;N,0.00
【0097】
工程2:{1−ブロモ−6−[6−(4,4−ジメチル−ペンタノイル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−ナフタレン−2−イルオキシ}−酢酸の合成:
THF(20mL)および水(20mL)中の{1−ブロモ−6−[6−(4,4−ジメチル−ペンタノイル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−ナフタレン−2−イルオキシ}−酢酸エチルエステル(0.167g、0.310mmol)および水酸化カリウム(0.056g、1.0mmol)の混合物を、常温で1時間撹拌した。ついで、過剰の水に注ぎ、2Nの塩酸で酸性化した。ついで、酢酸エチルで抽出し、水およびブラインで洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させ、減圧下65℃で13.5時間乾燥して、{1−ブロモ−6−[6−(4,4−ジメチル−ペンタノイル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−ナフタレン−2−イルオキシ}−酢酸を淡黄色固体として得た(0.119g、74.8%):MP:246−7℃;質量スペクトル(−EI,[M−H])m/z509/511.H NMR(500MHz,DMSO−d):δ8.74(s,1H),8.40(d,1H,J=1.68Hz),8.21(d,1H,J=9.00Hz),8.11−8.15(m,3H),7.97−7.98(m,2H),7.48(d,1H,J=9.16Hz),5.01(s,2H),3.01(s,2H),1.05ppm(s,9H);元素分析:C2623BrNOS:計算値:C,61.06;H,4.53;N,0.00;実測値:C,60.94;H,4.59;N,0.00。
【0098】
実施例8:[1−クロロ−6−(3−ペンタノイル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸の合成
工程1:6−ブロモ−1−クロロ−ナフタレン−2−オールの合成:
クロロホルム(220mL)中の6−ブロモ−2−ナフトール(20.0g、89.7mmol)および塩化スルフリル(14.4mL、180mmol)の混合物を30分間還流した。ついで、常温に冷却しながら1時間撹拌した。水(100mL)を反応混合物に加えた。有機相をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣を熱ヘキサン中で再結晶させた。冷アセトンで洗浄し、減圧下60℃で30分間乾燥して、6−ブロモ−1−クロロ−ナフタレン−2−オールを黄褐色固体として得た(11.2g、48.3%):MP:100−1℃;質量スペクトル(−ES,[M−H])m/z255,257,259。H NMR(500MHz,DMSO−d):δ10.63(s,1H),8.15(d,1H,J=1.8Hz),7.95(d,1H,J=9.0Hz),7.77(d,1H,J=9Hz),7.68(dd,1H,J=9.0,1.8Hz)および7.32ppm(d,1H,J=8.85Hz);元素分析:C10BrClO:計算値:C,46.64;H,2.35;N,0.00.実測値:C,46.69;H,2.35;N,0.00
【0099】
工程2:6−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−1−クロロ−ナフタレン−2−オールの合成:
水(65mL)およびTHF(40mL)中の6−ブロモ−1−クロロ−ナフタレン−2−オール(11.2g、43.5mmol)、ベンゾチオフェン−2−ボロン酸(15.1g、85.0mmol)(3部分)、パラジウム(II)アセテート(0.76g、3.43mmol)(3部分)、炭酸カリウム(30.1g、224mmol)(3部分)、臭化テトラブチルアンモニウム(14.0g、43.5mmol)の混合物を70℃で8.5時間加熱した。反応混合物を常温に冷却し、ついで、過剰の2Nの塩酸に注いだ。クロロホルムで抽出した。ついで、有機相を水およびブラインで洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣を、100%クロロホルム、ヘキサン中の30〜50%1,2−ジクロロエタンおよびヘキサン中の20〜30%1,2−ジクロロエタン(Biotageの装置)を溶出液として用いる、フラッシュクロマトグラフィーにより精製した。減圧下60℃で20分間乾燥して、6−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−1−クロロ−ナフタレン−2−オールをベージュの黄色固体として得た(3.22g、23.9%)MP:220−1℃;質量スペクトル(−ES,[M−H])m/z309/311。H NMR(500MHz,DMSO−d):δ10.64(s,1H),8.26(d,1H,J=1.73Hz),8.11(d,1H,J=8.85Hz),8.05(dd,1H,J=8.85および1.83Hz),7.95−8.01(m,2H),7.87−7.92(m,2H),7.33−7.43ppm(m,3H);元素分析:C1811ClOS:計算値:C,69.56;H,3.57;N,0.00;実測値:C,69.58;H,3.83;N,0.00
【0100】
工程3:(6−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−1−クロロ−ナフタレン−2−イルオキシ)−酢酸エチルエステルの合成:
アセトン(100mL)中の6−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−1−クロロ−ナフタレン−2−オール(3.19g、10.2mmol)および炭酸セシウム(6.8g、21mmol)の混合物を、常温で1時間15分撹拌した。ブロモ酢酸エチル(1.4mL、12mmol)を加え、反応混合物を3.5時間常温で撹拌した。不溶性固体を濾過し、濾液の溶媒を蒸発させた。残渣を熱クロロホルム中に溶解し、水およびブラインで洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。ついで、残渣をヘキサン中で約10分間撹拌し、濾過し、ヘキサンで洗浄した。減圧下65℃で2時間乾燥し、(6−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−1−クロロ−ナフタレン−2−イルオキシ)−酢酸エチルエステルを淡黄色固体として得た(2.7g、67%):MP:187−8℃;質量スペクトル(+ES,[M+H])m/z397/399。H NMR(500MHz,DMSO−d):δ8.34(d,1H,J=1.68Hz),8.21(d,1H,J=8.85Hz),8.13(dd,1H,J=8.93および1.76Hz),8.01−8.07(m,3H),7.89−7.90(m,1H),7.52(d,1H,J=9.15Hz),7.37−7.44(m,2H),5.11(s,2H),4.20(q,2H,J=7.12Hz),1.23ppm(t,3H,J=7.10Hz);元素分析:C2217ClOS:計算値:C,66.58;H,4.32;N,0.00;実測値:C,66.43;H,4.27;N,0.00
【0101】
工程4:[1−クロロ−6−(3−ペンタノイル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸エチルエステルの合成:
クロロホルム(55mL)中の得られた(6−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−1−クロロ−ナフタレン−2−イルオキシ)−酢酸エチルエステル(2.7g、6.8mmol)、塩化バレリル(3.9mL、33mmol)(4部分)および塩化スズ(IV)(6.4mL、56mmol)(4部分)の混合物を、5時間還流した。ついで、常温に冷却し、氷水に注いだ。さらにクロロホルムで希釈し、水およびブラインで洗浄した。ついで、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣を、(1)ヘキサン中25〜60%塩化メチレン、(2)ヘキサン20〜40%1,2−ジクロロエタンおよび(3)ヘキサン中の2.5〜7.5%メチルt−ブチルエーテルを用いるフラッシュクロマトグラフィー(Biotage装置)により3回精製した。ついで、水中92%アセトニトリル(0.1%トリフルオロ酢酸)を移動相として用いるHPLCにより精製した。溶媒を蒸発させ、酢酸エチルで抽出し、水およびブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、減圧下60℃で20分間乾燥して、[1−クロロ−6−(3−ペンタノイル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸エチルエステルを黄緑色ガムとして得た(0.0702g、2.14%)。
【0102】
工程5:[1−クロロ−6−(3−ペンタノイル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸の合成:
THF(4mL)および水(4mL)中の[1−クロロ−6−(3−ペンタノイル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸エチルエステル(0.0701g、0.146mmol)および水酸化カリウム(0.032g、0.57mmol)の混合物を、常温で1.5時間撹拌した。ついで、過剰の水に注ぎ、2Nの塩酸で酸性化した。ついで、これを酢酸エチルで抽出し、水およびブラインで洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させて、減圧下60℃で14時間乾燥させて、[1−クロロ−6−(3−ペンタノイル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸を黄色半固体として得た(0.0462g、69.9%);質量スペクトル(+ES,[M+H])m/z453;H NMR(500MHz,DMSO−d):δ12.9−13.5(br,1H),8.26(d,1H,J=8.85Hz),8.16(d,1H,J=1.83Hz),8.09−8.10(m,2H),7.97−7.99(m,1H),7.77(dd,1H,J=8.70および1.83Hz),7.47−7.56(m,3H),5.03(s,2H),2.43(t,2H,J=7.25Hz),1.42−1.48(m,2H),0.98−1.06(m,2H),0.59ppm(t,3H,J=7.40Hz);元素分析:C2521ClOS+0.2モルHO:計算値:C,65.77;H,4.72;N,0.00;実測値:C,65.74;H,4.99;N,0.00。
【0103】
実施例9:PAI−1阻害に関する一次スクリーン
試験化合物を10mMの最終濃度でDMSOに溶解し、ついで、生理学的バッファーで100X希釈した。阻害アッセイを、140nMの組み換えヒトプラスミノーゲンアクチベータ阻害剤−1(PAI−1;Molecular Innovations, Royal Oak, MI)を含有するpH6.6のバッファー中の試験化合物(1〜100μMの最終濃度、最大DMSO濃度0.2%)を添加することにより開始する。室温にて1時間インキュベーションした後、70nMの組み換えヒト組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)を加え、試験化合物、PAI−1およびtPAの混合物をさらに30分間インキュベートする。第2のインキュベーション後、Spectrozyme−tPA(American Diagnostica, Greenwich, CT)(tPAに対する発色基質)を加え、吸光度を、405nmで0および60分に読み取る。相対的なPAI−1阻害は、試験化合物およびPAI−1の存在下での残余tPA活性と等しい。対照処理は、(2:1)のモル比でのtPAのPAI−1による完全阻害およびtPA単独での試験化合物の影響の欠如を含む。
【0104】
実施例10:PAI−1の阻害のIC50測定アッセイ
このアッセイは、tPAおよび活性PAI−1の間の非−SDS分離相互作用に基づく。アッセイプレートを、最初に、ヒトtPA(10μg/ml)でコートする。本発明の試験化合物を、10mMでDMSO中に溶解し、ついで、生理学的バッファー(pH7.5)で希釈し、最終濃度1〜50μMにする。試験化合物を、ヒトPAI−1(50ng/ml)と15分間室温にてインキュベートする。tPA−コートプレートを0.05%のTween20および0.1%のBSAの溶液で洗浄し、ついで、プレートを3%のBSA溶液で遮断する。ついで、試験化合物/PAI−1溶液のアリコートを、tPA−コートプレートに加え、室温にて1時間インキュベートして、洗浄する。プレートに結合した活性PAI−1を、ヒトPAI−1に対して1:1000の希釈度の33B8モノクローナル抗体のアリコートを加え、プレートを室温にて1時間インキュベートすることにより評価する(Molecular Innovations, Royal Oak, MI)。プレートを再び洗浄し、ヤギ抗−マウスIgG−アルカリホスファターゼコンジュゲートの溶液を、1:50,000希釈度で、ヤギ血清に加えた。プレートを30分間室温にてインキュベートし、洗浄し、アルカリホスファターゼ基質を加える。このプレートを45分間室温にてインキュベートし、着色をOD405nmで測定する。種々の濃度の試験化合物でのtPAに結合した活性PAI−1の定量を、IC50を測定するのに用いる。結果を、対数最適(logarithmic best-fit)方程式を用いて評価する。アッセイ感度は、0〜100ng/mlからの標準的な曲線範囲から測定される5ng/mlのヒトPAI−1である。
【0105】
本発明の化合物は、プラスミノーゲンアクチベータ阻害剤−1を表1に記載のように阻害した。
【表1】

【0106】
前記の発明を、理解を明瞭にすることを目的として一例として詳細に記載したが、ある種の変更および修飾が開示により包含され、過度の実験なく、説明に限定されるものではない特許請求の範囲を実行することができることは当業者には明らかだろう。
上記したすべての刊行物および特許文献は、出典明示により本明細書に組み入れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

[式中:
R、R、RおよびRは、独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、−CH−(C−Cシクロアルキル)、C−Cアルカノイル、ハロ、ヒドロキシ、アリール、ヘテロアリール、C−Cペルフルオロアルキル、C−Cアルコキシ、アミノ、−NH(C−Cアルキル)、−N(C−Cアルキル)またはC−Cペルフルオロアルコキシであり;
は、水素、C−Cアルキル、ペルフルオロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、−CH、−CH(OH)R、−C(=O)R、−CH(SH)R、−C(=S)Rまたは−(CH−C−Cシクロアルキルであり;
nは、0〜6の整数であり;
mは、0〜6の整数であり;
は、水素、C−Cアルキル、ペルフルオロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、C−Cシクロアルキル、アリールアルキルまたは−(CH−C−Cシクロアルキルであり;
pは、0〜6の整数であり;
は、水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、−CH−(C−Cシクロアルキル)、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールまたはヘテロアリールであり;
Aは、COOHまたは酸ミミックである]
を有する化合物またはその医薬上許容される塩もしくはエステル形態。
【請求項2】
Aがテトラゾールであるか、あるいはテトラゾール、テトロン酸、アシルテトロン酸または式:
【化2】

[式中、Rは、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cシクロアルキル、−CH−(C−Cシクロアルキル)、C−Cシクロアルケニル、−CH−(C−Cシクロアルケニル)、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基または置換されていてもよいアリール(C−C)アルキルまたはヘテロアリール(C−C)アルキルである]
で示される基から選択される、請求項1記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項3】
Aがテトラゾールである、請求項2記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項4】
RおよびRが、独立して、水素、アルカノイルまたは分枝鎖アルカノイルである、請求項1〜3いずれか1項記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項5】
およびRが、独立して、水素またはハロゲンである、請求項1〜4いずれか1項記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項6】
が−C(=O)Rであり、Rが、C1−8アルキルまたはアリールアルキルである、請求項1〜5いずれか1項記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項7】
が水素である、請求項1〜6いずれか1項記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項8】
式:
【化3】

を有する請求項1記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくはエステル形態。
【請求項9】
式:
【化4】

[式中:
nは0であり;
は、カルボン酸またはテトラゾール基であり;
は、水素、C−Cアルキルまたはベンジルであり;
Yは、2つの単結合したH原子;1つのHおよび1つのOH;または二重結合した酸素原子であり;
は、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、−CH−(C−Cシクロアルキル)またはベンジルである]
を有する請求項8記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくはエステル形態。
【請求項10】
{1−ブロモ−6−[6−(4,4−ジメチル−ペンタノイル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−ナフタレン−2−イルオキシ}−酢酸またはその医薬上許容される塩もしくはエステル形態または1−{2−[5−ブロモ−6−(1H−テトラゾール−5−イルメトキシ)−ナフタレン−2−イル]−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル}−ペンタン−1−オンまたはその医薬上許容される塩もしくはエステル形態である、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
[1−ブロモ−6−(3−ペンタノイル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸またはその医薬上許容される塩もしくはエステル形態または1−{2−[5−ブロモ−6−(1H−テトラゾール−5−イルメトキシ)−ナフタレン−2−イル]−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル}−2−フェニル−エタノンまたはその医薬上許容される塩もしくはエステル形態である、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
[1−ブロモ−6−(3−フェニルアセチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸またはその医薬上許容される塩もしくはエステル形態または1−{2−[5−ブロモ−6−(1H−テトラゾール−5−イルメトキシ)−ナフタレン−2−イル]−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル}−3−メチル−ブタン−1−オンまたはその医薬上許容される塩もしくはエステル形態である、請求項1記載の化合物。
【請求項13】
{1−ブロモ−6−[3−(3,3−ジメチル−ブチリル)−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル]−ナフタレン−2−イルオキシ}−酢酸またはその医薬上許容される塩もしくはエステル形態または[1−クロロ−6−(3−ペンタノイル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−ナフタレン−2−イルオキシ]−酢酸またはその医薬上許容される塩もしくはエステル形態である、請求項1記載の化合物。
【請求項14】
PAI−1活性の阻害方法であって、該阻害を必要とする対象に、治療的に有効な量の請求項1〜13いずれか1項記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項15】
治療的に効果的な量が25mg/kg/日〜200mg/kg/日である、請求項14項記載の方法。
【請求項16】
PAI−1関連障害の治療方法であって、該治療を必要とする対象に、治療的に有効な量の請求項1〜13いずれか1項記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項17】
治療的に効果的な量が25mg/kg/日〜200mg/kg/日である、請求項16項記載の方法。
【請求項18】
PAI−1関連障害が線溶系の障害である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
PAI−1関連障害が、血栓症、心房性細動、肺線維症、心筋虚血、卒中、手術の血栓塞栓性合併症、心血管疾患、動脈硬化性プラーク形成、慢性閉塞性肺疾患、腎線維症、多嚢胞性卵巣症候群、糖尿病、アルツハイマー病または癌である、請求項16記載の方法。
【請求項20】
血栓症が、静脈血栓症、動脈血栓症、脳血栓症および深部静脈血栓症からなる群から選択される請求項19記載の方法。
【請求項21】
PAI−1関連障害が、対象においてインスリン非依存性糖尿病により引き起こされる心血管疾患である、請求項19記載の方法。
【請求項22】
請求項1〜13いずれか1項記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくはエステル形態および医薬上許容される賦形剤または担体を含む、医薬組成物。
【請求項23】
血栓症、心房性細動、肺線維症、手術の血栓塞栓性合併症、卒中、心筋虚血、動脈硬化性プラーク形成、慢性閉塞性肺疾患または腎線維症の治療方法であって、該治療を必要とする対象に治療的に有効な量の式:
【化5】

[式中:
R、R、RおよびRは、独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、−CH−(C−Cシクロアルキル)、C−Cアルカノイル、ハロ、ヒドロキシ、アリール、ヘテロアリール、C−Cペルフルオロアルキル、C−Cアルコキシ、アミノ、−NH(C−Cアルキル)、−N(C−Cアルキル)またはC−Cペルフルオロアルコキシであり;
は、水素、C−Cアルキル、ペルフルオロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、−CH、−CH(OH)R、−C(=O)R、−CH(SH)R、−C(=S)Rまたは−(CH−C−Cシクロアルキルであり;
nは、0〜6の整数であり;
mは、0〜6の整数であり;
は、水素、C−Cアルキル、ペルフルオロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、C−Cシクロアルキル、アリールアルキルまたは−(CH−C−Cシクロアルキルであり;
pは、0〜6の整数であり;
は、水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、−CH−(C−Cシクロアルキル)、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールまたはヘテロアリールであり;
Aは、COOHまたは酸ミミックである]
またはその医薬上許容される塩もしくはエステル形態を投与することを含む方法。

【公表番号】特表2007−524653(P2007−524653A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528220(P2006−528220)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/031397
【国際公開番号】WO2005/030750
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】