説明

耐候性多層システム

本発明は、第1層(A)、第2層(B)、第3層(C)および第4層(D)を含有する多層製品に関する。第1層(A)は340nmにて少なくとも0.2の吸光度を有する耐引掻保護層であり、第2層(B)は、340nmにて少なくとも2の吸光度を有するアルキルアクリレート層であり、第3層(C)および該第4層(D)は、紫外線安定化ポリカーボネートを含有する。また、本発明は、該多層製品の製造方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は4つの層を含有する多層製品であって、第2層および第3層が熱可塑性物質および紫外線安定化ポリカーボネートから成る複合層であり、第2層はアルキルアクリレートに基づく紫外線保護層であり、第1層は紫外線吸収剤を同様に含有する引掻保護層であり、第1層および第2層は特定の吸光度(extinction)を示し、第4層も同様にポリカーボネートから構成される該多層製品に関する。さらに、本発明は、これらの多層製品の製造と、製品、例えば、該多層製品を具備するガラスなどの製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート製の成型体は、長年に亘り既知である。しかしながら、ポリカーボネートは、それ自体が本質的に紫外線安定性を有さないといった欠点を有する。ビスフェノールAポリカーボネートの感度曲線は、320nm〜330nmの間に最も高い感度を有する。300nm未満の太陽放射は地球に到達せず、350nm以上においては、このポリカーボネートは無反応であり、黄変をもはや生じさせない。
【0003】
大気中における紫外線の悪影響からポリカーボネートを保護するために、一般に、紫外線放射を吸収し、該紫外線を無害の熱エネルギーに変換する紫外線安定剤が使用されている。
【0004】
耐久性のある保護を行うために、ポリカーボネート表面に紫外線放射が到達する前に有害な紫外線放射を効果的に除去することが有利であり、このことは、ポリカーボネート上に、紫外線保護層、例えば紫外線吸収剤を含有する共押出層、紫外線吸収剤を含有するフィルムまたは紫外線吸収剤を含有するコーティング組成物を用いることにより行われている。
【0005】
このことに対して使用される既知の代表的な紫外線吸収剤類は、2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-シアノアクリレートおよびオキサルアニリド(oxalanilide)である。
【0006】
多層製品に関する先行技術は、例として以下に要約される。
【0007】
欧州特許出願公開第0110221号A明細書は、2種類のポリカーボネート層から構成されるプレートを開示し、1つの層は紫外線吸収剤を少なくとも3wt%含有する。欧州特許出願公開第0110221号明細書によると、これらのプレートは共押出し法によって製造される。
【0008】
欧州特許出願公開第0320632号A明細書は、熱可塑性物質(好ましくはポリカーボネート)製の2層から構成される成形体を開示し、1つの層は紫外線吸収剤として特別に置換したベンゾトリアゾールを含有する。また、欧州特許出願公開第0320632号A明細書は、共押出し法によってこれらの成形体を製造することを開示する。
【0009】
欧州特許出願公開第0247480号A明細書は、熱可塑性物質製の層に加えて、分岐鎖ポリカーボネートの層を含む多層板を開示し、該ポリカーボネート層は、紫外線吸収剤として特別に置換したベンゾトリアゾールを含有する。共押出し法によるこれらの多層板の製造も同様に開示されている。
【0010】
欧州特許出願公開第0500496号A明細書は、特別なトリアジンによって、紫外線光に対して安定させたポリマー組成物を開示し、多層システムにおける最外層としてのそれらの使用も開示する。ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセテート、ポリフェニレンオキシドおよびポリフェニレンスルフィドがポリマーとして記載されている。
【0011】
米国特許出願公開第2006/0234061号A1明細書は、第1層および第2層を含有する多層製品を開示する。第2層はポリカーボネートを含有し、第1層はアルキルアクリレートに基づく紫外線保護層であり、該層は、紫外線安定剤としてジフェニル置換トリアジンを含有する。
【0012】
国際特許出願公開第2006/121484号A2明細書は、ポリマー層と、耐候性フィルム層と摩耗保護層を含有するプラスチック板と、全ての総合的な複合材料を開示する。ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート/アクリロニトリルブタジエンスチレンブレンドおよびポリカーボネート/ポリエステルブレンドがポリマーとして記載されている。
【0013】
しかしながら、既知の紫外線安定化ポリカーボネート成形体は、視覚的印象について常に高い要求がされている種々の用途(特に、屋外用途)、例えば、ガラスなどにおいて、黄変に対する長期間の安定性は未だ不十分である。コーティング工程は高価であり、コーティングの欠如による影響を受けやすいので、コーティング工程の数も可能な限りさらに少なくすべきである。
【0014】
このような用途において、340nmにて30MJ/mの照射条件下(フロリダでの10年間におよぶ屋外風化に相当する)において、ΔYI3よりも高く黄変しないポリカーボネート成形体が要求されている。
【0015】
風化に関するこの試験は、340nmで0.75W/m/nmの照射を行い、乾燥/雨サイクルが102:18分であるAtlas Ci 5000耐候性試験機で行った。ブラックパネル温度は70℃、サンプル室温55℃であり、相対湿度は40%である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0110221号A明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0320632号A明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0247480号A明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0500496号A明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2006/0234061号A1明細書
【特許文献6】国際特許出願公開第2006/121484号A2明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、上記風化条件下において、黄変が可能な限り小さい(YIまたはΔYIが可能な限り低い)ポリカーボネート成形体を提供することである。更に、加工時間を削減することができ、コーティングの欠陥による感受性の観点より、コーティング工程が可能な限り少ないことも要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
驚くべきことに、この目的は、第1層(A)、第2層(B)、第3層(C)および第4層(D)を含有する多層製品であって、
第1層(A)が340nmにて少なくとも0.3の吸光度を有する耐引掻保護層であり、
第2層(B)が340nmにて少なくとも2、好ましくは>2.5の吸光度を有するアルキルアクリレート層であり、
第3層(C)および第4層(D)が紫外線安定化ポリカーボネートを含有する、
該多層製品によってもたらされる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで、第2層および第3層(BおよびC)は、共押出フィルム形態、または2つの積層フィルム形態、あるいは(B)で被覆されたポリカーボネートフィルム(C)形態であり、これらの層は、続く工程において、層(D)でバック射出成形され(好ましくは、フィルム射出成形(FIM)され)、続いて、層(A)が付与される。層(A)を施すのに適当な方法は、例えばフローコーティング、ディップコーティング、噴霧、ローリングまたはスピンコーティングである(明細書参照)。すなわち、共押出フィルムまたは積層フィルムを使用する場合は、1つのコーティング工程のみが必要である。
【0020】
また、本発明は、第1層(A)、第2層(B)、第3層(C)および第4層(D)を含有する多層製品であって、
第1層(A)が340nmにて少なくとも0.3の吸光度を有する、耐引掻保護層であり、
第2層(B)が340nmにて少なくとも2、好ましくは>2.5の吸光度を有する、アルキルアクリレート層であり、
第3層(C)および第4層(D)が紫外線安定化ポリカーボネートを含有する、該多層製品の製造方法を提供し、
該方法において、第2層および第3層(BおよびC)は、共押出フィルム形態、2つの積層フィルム形態、または(B)で被覆されたポリカーボネートフィルム(C)形態であり、これらの層は、バック射出成形され(好ましくは、フィルム射出成形によって行われ)、続いて、例えばフローコーティング、ディップコーティング、噴霧、ローリングまたはスピンコーティングによって層(A)が付与されることを特徴とする。
【0021】
更なる層(E)および(F)を施してもよく、(E)は層(A)を施す前に施され、次いで、例えばフローコーティング、ディップコーティング、噴霧、ローリングまたはスピンコーティングによって(A)および(F)が施され、好ましくは熱的に硬化させる。
【0022】
驚くべきことに、本発明は、耐引掻保護層(A)および紫外線保護層(B)によってもたらされる紫外線保護は、ポリカーボネートを損傷させて黄変を生じさせることを原則として実質的に排除する。この点に関して、文献は、YI(黄色度指数)を計算するのに可能な方法を開示する:まず、材料の波長依存黄変をスペクトル感度法(「ポリマーのスペクタル感度および作用スペクタルに関する解説」,P.Trubiroha,Tagungsband der XXII.Donaulaendergespraeche,2001年8月17日、ベルリン、4−1頁)を使用して決定する。次に紫外線保護層の後方の太陽紫外光のスペクトル分布を計算する。これらの二つのデータセットから屋外曝露後の黄変をコンボリューションおよび時間関数としての積分値を用いて既知の方法で決定できる。(「風化における寿命予測の原理」(Grundsaetzliches zur Lebensdauervorhersage in der Bewitterung)、A.Geburtig,V.Wachtendorf,環境硬化の検出、シミュレーションおよび評価」に関する第34年次大会の議事録(Tagungsband 34.Jahrestagung der Gesellschaft fuer Umweltsimulation,Umwelteinfluesse erfassen,simulieren und bewerten),2005年3月2日、Pfinztal、159頁)。
【0023】
本発明はこの多層製品に関する。
【0024】
本発明に係る多層製品は、更なる層、特に更なる紫外線保護層(E)を含有し、該保護層(E)は、紫外線安定剤を含有するアルキルアクリレート層であり、フィルム形態であってもよく、硬化させたコーティング組成物形態であってもよい。この場合、層の順序は(A)-(B)-(C)-(D)-(E)である。更なる引掻保護層(F)を、(E)上に更に施してもよく、この場合、(A)および(F)は同一の組成物を含有してもよく、異なる組成物を含有してもよい。この場合、層の順序は(A)-(B)-(C)-(D)-(E)-(F)である。(E)および(F)の代わりに、単一の紫外線安定化引掻保護層(G)を施すことも可能である。この場合、層の順序は(A)-(B)-(C)-(D)-(G)である。層(E)または(G)は本明細書において記載される紫外線吸収剤を含んでもよい。
【0025】
本発明に係る多層製品における層(A)および所望による(F)において使用される紫外線吸収剤は、下記一般式(I)で表わされる:
【0026】
【化1】

(式中Rは所望により置換または未置換の単環または多環式芳香族基を示し、Rは分岐または非分岐のC-C10アルキルであり、Rは分岐または非分岐のC-Cアルキルである)。
【0027】
4,6−ジベンゾイル−2−(3−トリアルコキシシリルアルキル)レソルシノールが好ましく使用され、4,6−ジベンゾイル−2−(3−トリエトキシシリルプロピル)レソルシノール(CAS番号、166255-23-8)が特に好ましく使用される。このような、一般式(I)で表わされる、シリル化ベンゾフェノン紫外線吸収剤は、主にUS005391795、US005679820およびEP0339257において既知である。
【0028】
本発明に係る多層製品における層(B)および所望による層(E)において使用される紫外線吸収剤は、アクリレート中で安定であると共に吸収を示す紫外線吸収剤の群から選択でき、それによって、特に320〜350nmの領域においてポリカーボネートを保護する。既知のように、ベンゾトリアジンおよびトリアゾールが特に適している。なぜならば、それらは、例えば、ベンゾフェノン誘導体と比較して、高い吸光係数を示すと共に、アクリレート中での分解が低いからである。
【0029】
一般式(II)で表わされるトリアゾールが好ましく使用される:
【0030】
【化2】

(式中、
Xは、OR、OCHCHOR、OCHCH(OH)CHORまたはOCH(R)COORであり、
はC〜C13アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C12アリールまたは−CO−C〜C18アルキルであり、
は、HまたはC〜Cアルキルであり、RはC〜C12アルキル;C〜C12アルケニルまたはC〜Cシクロアルキルを示し、
Zは、相互に独立して、未置換フェニル若しくはジフェニル、またはC-Cアルキル(好ましくはメチルおよび/またはエチル)で単置換したまたは多置換したフェニル若しくはジフェニルであり、好ましくはフェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニルまたはジフェニルである)。
【0031】
例えば、アルキルまたはアルケニルの炭化水素鎖は、それぞれ分岐または非分岐であってもよい。
【0032】
例えば、紫外線保護層(B)または(E)がフィルムまたは共押出し層の場合、Xは好ましくはOR(特に好ましくはR=CHCH(CHCH)Cである)であり、Z=ジフェニルである。
【0033】
紫外線保護層(E)が、硬化させるコーティング配合物形態の場合、Xは好ましくはOCH(R)COORであり、特に好ましくはR=CH、R=C17、Z=ジフェニルである。
【0034】
このような、一般式(II)で表わされるジフェニル置換トリアジンは、主にWO96/28431,DE-A19739797、WO00/66675、US-A6225384、US6255483、EP-A1308084およびFR2812299において既知である。
【0035】
本発明に係る紫外線保護層(B)または(E)がフィルムまたは共押出し層の場合、該保護層は、ポリマーマトリックスとして、好ましくはアルキル中に1〜10個の炭素原子を有する、アルキルメタクリレート(特に好ましくはメチルメタクリレート)をモノマー成分として含有するポリアクリレートを含有する。ポリメチルメタクリレートが特に好ましい。
【0036】
本明細書において、用語「アルキルアクリレート」および「ポリアルキルアクリレート」は、上記定義のように、ポリアクリレートと同義である。PMMAは、ポリメチルメタクリレートを意味する。
【0037】
長期に亘る紫外線保護のために、特定の最小吸光度が紫外線保護層において要求され、要求される紫外線吸収剤濃度は層厚に依存する。
【0038】
本発明に係る耐引掻層(A)または(F)は、ゾル-ゲルシロキサンコーティング組成物に基づくと共に、1〜20μm、好ましくは2〜15μm、特に好ましくは4〜12μmの層厚を有し、0.2〜4、好ましくは0.2〜2、特に好ましくは0.3≦吸光度(耐引掻層)≦1の吸光度を示し、式(I)で表わされる紫外線吸収剤を含有する。
【0039】
共押出し層から構成される本発明に係る紫外線保護層(B)または(E)は、1〜500μm、好ましくは1〜100μm、特に好ましくは2〜50μmの層厚を有し、0.05〜20wt%、好ましくは0.1〜15wt%、特に好ましくは0.5〜10wt%の、式(II)で表わされる紫外線吸収剤を含有する。2μmの層厚を有する共押出し層は、少なくとも10wt%、好ましくは15wt%以上の紫外線吸収剤を含有し、10μmのものは、少なくとも2wt%、好ましくは3wt%以上の紫外線吸収剤を含有し、30μmのものは少なくとも0.7wt%、好ましくは1wt%以上の紫外線吸収剤を含有する。紫外線保護層(B)の吸光度は、下記の様に適用される(それぞれ、340nmの波長で表わされる):1≦吸光度(紫外線保護層)≦10、好ましくは2≦吸光度(紫外線保護層)≦9、特に好ましくは3≦吸光度(紫外線保護層)≦8。
【0040】
硬化コーティング配合物から構成される、本発明に係る紫外線保護層(B)または(E)は、1〜100μm、好ましくは1〜30μm、特に好ましくは1〜10μmの層厚を有すると共に、コーティング配合物の固形分に基づき、0.5〜20wt%、好ましくは1〜15wt%、特に好ましくは1.5〜10wt%の式(I)で表わされる紫外線吸収剤を有する。塗布および硬化後に1μmの層厚を有する配合物は、少なくとも10wt%、好ましくは15wt%以上の紫外線吸収剤を含有し、5μmのものは、少なくとも2wt%、好ましくは3wt%以上の紫外線吸収剤を含有し、10μmのものは少なくとも1wt%、好ましくは1.5wt%以上の紫外線吸収剤を含有する。
【0041】
フィルムから構成される本発明に係る紫外線保護層は、2μm〜2mm、好ましくは50μm〜1mm、特に好ましくは80μm〜500μmの層厚を有し、0.01〜20wt%、好ましくは0.02〜5wt%、特に好ましくは0.04〜2wt%の式(I)で表わされる紫外線吸収剤を有する。80μmの層厚のフィルムは、少なくとも0.25wt%、好ましくは0.4wt%以上の紫外線吸収剤を含有し、200μmのものは少なくとも0.1wt%、好ましくは0.15wt%以上の紫外線吸収剤を含有し、500μmのものは少なくとも0.04wt%、好ましくは0.06wt%以上の紫外線吸収剤を含有する。
【0042】
本発明に係る層(G)は、紫外線安定化引掻保護層であり、特に好ましくはハイブリッドコーティング組成物である。層(A)における適当な塗布方法は、例えば、フローコーティング、ディップコーティング、噴霧、ローリングまたはスピンコーティングである。硬化は、熱的および紫外線放射によって行うことができる。熱的に硬化可能なハイブリッドコーティング組成物として可能なものはPHC587である(Momentive パフォーマンス・マテリアル社、EP0570165参照)。
【0043】
紫外線硬化可能なハイブリッドコーティング組成物の例は、紫外線硬化性アクリレートコーティング組成物または紫外線硬化性で水不含有の加水分解性シラン系であり、WO2008/071363AまたはDE-A2804283に記載されている。UVHC3000(Momentive パフォーマンス・マテリアル社)は、商業的に入手可能な該組成物の1つである。
【0044】
本発明に係る多層製品における第3層(C)および第4層(D)に関する適当なポリカーボネートは、全ての既知のポリカーボネートである。また、それらは、ホモポリカーボネート、コポリカーボネートおよび熱可塑性ポリエステルカーボネートであってもよい。
【0045】
それらは、光散乱によって重量較正され、ジクロロメタン中またはフェノール/o−ジクロロベンゼンの等重量混合物中で相対溶液粘度を測定することにより決定される、18,000〜40,000、好ましくは22,000〜36,000、特に24,000〜33,000の平均分子量Mwを有する。
【0046】
第3層(C)の場合、同様に紫外線吸収剤を含有するが、その一方で(D)は紫外線安定化が施されてもよいが、必ずしも紫外線安定化する必要はない。ポリカーボネート用の全ての常套の紫外線吸収剤を、紫外線吸収剤として選択でき、例えば下記のものが含まれる:Tinuvin(登録商標)234:(2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール(CAS番号.70321-86-7))、Tinuvin(登録商標)326:(2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-シクロベンゾトリアゾール、(CAS番号.3896-11-5))、Tinuvin(登録商標)329:(2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(CAS番号.3147-75-9))、Tinuvin(登録商標)350:(2-(2H-ベンゾトリアゾール-2−イル)-4-(1,1-ジメチルエチル)-6-(2-メチルプロピル)フェノール、CAS番号.134440-54-3)、Tinuvin(登録商標)360:(2,2'-メチレンビス(6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール)、CAS番号103597-45-1)またはTinuvin(登録商標)1577:(2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-s-トリアジン、CAS番号.147315-50-2)チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社。紫外線保護化ポリカーボネート層は、0.1〜3wt%、好ましくは0.1〜1.5wt%、特に好ましくは0.2〜0.5wt%の紫外線吸収剤を含有する。
【0047】
ポリカーボネートの製造に関し、例えば、Schnell著、「ポリカーボネートの化学および物理」Polymer Reviews,第9巻,Interscience Publishers,ニューヨーク,ロンドン,シドニー 1964年、D.C.PREVORSEK,B.T.DEBONA and Y.KESTEN(アライドケミカル社の総合研究所所属),モリスタウン,ニュージャージー07960著「ポリ(エステル)カーボネートコポリマーの合成」ジャーナル・オブ・ポリマーサイエンス、ポリマー化学編、第19巻,75〜90頁(1980年)、D.Freitag,U.Grigo,P.R.Mueller,N.Nouvertne,バイエル AG社著、ポリマー化学およびエンジニアリング百科事典における「ポリカーボネート」、第11巻,第二版,1988年,648〜718頁,および、Dres.U.Grigo,K.Kircher and P.R.Mueller著、Becker/Braunによるプラスチックハンドブックにおける「ポリカーボネート」,第3/1巻,ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエステル、セルロースエステル,Carl Hanser Verlag ミュンヘン,ウィーン 1992年,117〜299頁参照。
【0048】
ポリカーボネートを、相界面法または溶融エステル交換法によって好ましく製造できる。以下に例として相界面法について記述する。
【0049】
出発化合物として好ましく使用される化合物は、下記の一般式で表わされるビスフェノールである:
【0050】
【化3】

(式中、Rは、一以上の芳香族基を含有し、炭素原子を6〜30個有する、二価の有機基である。)
【0051】
そのような化合物の例は、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、インダンビスフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトンおよびα,α’−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼンから成る群に属するビスフェノールである。
【0052】
上記化合物群に属する特に好ましビスフェノールは、ビスフェノールA、テトラアルキルビスフェノールA、4,4−(メタ−フェニレンジイソプロピル)-ジフェノール(ビスフェノールM)、4,4−(パラ−フェニレンジイソプロピル)ジフェノール、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(BP−TMC)、および所望によりそれらの混合物である。
【0053】
本発明において使用されるビスフェノール化合物を、好ましくは、炭酸化合物(特にホスゲン)と反応させるか、または溶融エステル交換法の場合、ジフェニルカーボネートもしくはジメチルカーボネートと反応させる。
【0054】
ポリエステルカーボネートは、好ましくは、上述のビスフェノールと、少なくとも一種類の芳香族ジカルボン酸と、所望により炭酸と同等の化合物を反応させることにより得られる。適当な芳香族ジカルボン酸は、例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、3,3’−または4,4’−ジフェニルジカルボン酸およびベンゾフェノンジカルボン酸である。ポリカーボネート中のカーボネート基の、80mol%以下、好ましくは20〜50mol%の部分を芳香族ジカルボキシレート基で置換してもよい。
【0055】
相界面法において使用される不活性有機溶媒は、例えば、ジクロロメタン、種々のジクロロエタンおよびクロロプロパン化合物、テトラクロロメタン、トリクロロメタン、クロロベンゼンおよびクロロトルエンであり、クロロベンゼンまたはジクロロメタンあるいはジクロロメタンとクロロベンゼンとの混合物が好ましく使用される。
【0056】
相界面反応は、触媒、例えば第三級アミン、特にN−アルキルピペリジンまたはオニウム塩などにより促進できる。トリブチルアミン、トリエチルアミンおよびN−エチルピペリジンが好ましく使用される。溶融エステル交換法の場合、DE−A 4 238 123に記載の触媒が好ましく使用される。
【0057】
少量の分岐剤を使用することにより、意図的にかつ制御的に、ポリカーボネートを分岐させることができる。いくつかの好適な分岐剤には、以下のものが含まれる:フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン−2;4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン;2,2−ビス−[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン;2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)フェノール;2,6−ビス−(2−ヒドロキシ−5’−メチル−ベンジル)−4−メチルフェノール;2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−プロパン;ヘキサ−(4−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェニル)オルトテレフタレート;テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、テトラ−(4−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノキシ)メタン;α,α’,α’’−トリス−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン;2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌル、3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール、1,4−ビス−(4’,4''−ジヒドロキシトリフェニル)−メチル)ベンゼン、特に1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよびビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール。
【0058】
使用されるジフェノールに基づいて、0.05〜2mol%の分岐剤または分岐剤の混合物を所望により使用でき、ジフェノールと共に使用してもよく、合成の後期に添加してもよい。
【0059】
連鎖停止剤として、フェノール、例えばフェノール、アルキルフェノール、例えばクレゾールおよび4−tert.−ブチルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、クミルフェノールまたはこれらの混合物を好ましく使用でき、ビスフェノール1モルあたり1〜20mol%、好ましくは2〜10mol%の量で使用できる。フェノール、4−tert.−ブチルフェノールまたはクミルフェノールが好ましい。
【0060】
連鎖停止剤および分岐剤を合成物へ単独で添加してもよく、あるいはビスフェノールと共に添加してもよい。
【0061】
溶融エステル交換法によるポリカーボネートの製造は、例えばDE−A 4238 123に記述されている。
【0062】
本発明による多層製品の第2層に好ましい本発明に係るポリカーボネートは、好ましくは、ビスフェノールAを基剤とするホモポリカーボネート、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを基剤とするホモポリカーボネート、並びにビスフェノールAと1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの二種類のモノマーを基剤とするコポリカーボネートである。
【0063】
ビスフェノールAを基剤とするホモポリカーボネートが特に好ましい。
【0064】
ポリカーボネートは安定剤を含んでもよい。適当な安定剤は、例えばホスフィン、ホスファイトまたはSi含有安定剤およびEP−A 0 500 496に記述されている他の化合物である。トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス−(ノニルフェニル)ホスファイト、テトラキス−(2,4−ジ−tert.−ブチルフェニル)−4,4’−ジフェニレンジホスホナイト、およびトリアリールホスファイトが例示される。トリフェニルホスフィンおよびトリス−(2,4−ジ−tert.−ブチルフェニル)ホスファイトが特に好ましい。
【0065】
ポリカーボネートを含有する、本発明に係る多層製品の第2層(B)は、0.01〜0.5wt%の、1価または多価アルコール(特にグリセロール、ペンタエリトリトールまたはゲルベアルコール)のエステルまたは部分エステル(semiester)を更に含有してもよい。
【0066】
一価アルコールの例は、ステアリルアルコール、パルミチルアルコールおよびゲルベアルコールである。
【0067】
二価アルコールの例は、グリコールである。
【0068】
三価アルコールの例は、グリセロールである。
【0069】
四価アルコール例は、ペンタエリトリトールおよびメソエリトリトールである。
【0070】
五価アルコールの例は、アラビトール、リビトールおよびキシリトールである。
【0071】
六価アルコールの例は、マンニトール、グルシトール(ソルビトール)およびズルシトールである。
【0072】
エステルは、飽和脂肪族C10〜C36モノカルボン酸および所望によりヒドロキシモノカルボン酸、好ましくは飽和脂肪族C14〜C32モノカルボン酸および所望によりヒドロキシ−モノカルボン酸のモノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、ペンタエステルおよびヘキサエステルまたはそれらの混合物(特に、統計的混合物)である。
【0073】
商業的に入手可能な脂肪酸エステル、特にペンタエリトリトールおよびグリセロールの脂肪酸エステルは、その生成に起因して、60%未満の種々の部分エステルを含み得る。
【0074】
炭素原子を10〜36個有する飽和脂肪族モノカルボン酸の例には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸およびモンタン酸が含まれる。
【0075】
炭素原子を14〜22個有する好ましい飽和脂肪族モノカルボン酸の例には、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、アラキン酸およびベヘン酸が含まれる。
【0076】
飽和脂肪族モノカルボン酸、例えばパルミチン酸、ステアリン酸およびヒドロキシステアリン酸が特に好ましい。
【0077】
飽和脂肪族C10〜C36カルボン酸および脂肪酸エステルは、文献で知られているものであるか、または文献で知られている方法によって製造される。ペンタエリトリトール脂肪酸エステルの例は、上記特に好ましいモノカルボン酸のものである。
【0078】
ペンタエリトリトールおよびグリセロールとステアリン酸およびパルミチン酸とのエステルが特に好ましい。
【0079】
更に、ゲルベアルコールおよびグリセロールとステアリン酸およびパルミチン酸および所望によりヒドロキシステアリン酸とのエステルも特に好ましい。
【0080】
本発明に係る多層製品は、有機染料、無機着色顔料、蛍光染料、IR吸収体、および特に好ましくは光学的光沢剤を含有してもよい。
【0081】
本発明に係る多層系は、下記のようにして製造される:
(a1)ポリアクリレートおよび(a2)紫外線吸収剤(特に好ましくは、一般式(II)で表わされるジフェニル置換トリアジン)から成る成分(a)と、紫外線保護ポリカーボネートとを、化合物(a)から構成される薄い紫外線保護層(少なくとも2.5の吸光度を示す)がポリカーボネート表面に良好に接着するような方法で共押出しさせる。次いで、共押出フィルムのポリカーボネート面を、ポリカーボネートとバック射出成形または貼り合せて、強固に接着させた複合材料を形成させる。最後に、同様に紫外線吸収剤を含有する耐引掻層(A)を、ポリカーボネート成形品の表面(紫外線保護層(B)の表面)にフローコーティング、ディップコーティング、噴霧、ローリングまたはスピンコーティングによって施す。次いで、物理的に乾燥させて、アルキルアクリレート層上に強固に接着させたコーティングが得られる。この層(A)の吸光度は少なくとも0.3である。
【0082】
所望により、耐引掻層(A)を施す前に、まず、更なる紫外線保護層(E)を、ポリカーボネート成形品のポリカーボネート面に施す。この紫外線保護層(E)は、主なモノマー成分としてメチルメタクリレートを含有するポリアクリル酸樹脂(b1)と、一般式(II)で表わされるジフェニル置換トリアジン(b2)を含有するコーティング配合物(b)から構成され、所望により、より長い直鎖状または分岐化アルキル鎖(-CH2n+1で表わされ、n>1;好ましくは1≦n≦10、特に好ましくは直鎖状でn=3)を備える更なるアルキルメタクリレート(特に好ましくは、ブチルメタクリレート)と、1種以上の溶媒、および所望により更なるコーティング添加剤、例えば、充填剤、レベリング剤、ラジカル捕捉剤などを含有する。このコーティング配合物(b)を、ポリカーボネート成形体の表面に、フローコーティング、ディップコーティング、噴霧、ローリングまたはスピンコーティングによって施し、次いで、物理的に乾燥させて、PC上に強固に接着させたコーティングが得られる。最後に、上述の方法で成形品の両面に、引掻保護層(A)を施す。
【0083】
2つのメタクリレートモノマー単位の比は、好ましくは、75〜100%のメチルメタクリレート/25〜0%のアルキルメタクリレート、好ましくは85〜100%のメチルメタクリレート/15〜0%のアルキルメタクリレート、特に好ましくは90〜100%のメチルメタクリレートおよび10〜0%のアルキルメタクリレートである(重量%で表わされる)。
【0084】
(b)に係るコーティング配合物と、基材上への紫外線保護コーティング配合物を施すことは、例えば、好ましくはWO2006/108520A号に記載されている。
【0085】
耐引掻層を、耐引掻性または耐摩耗性コーティング組成物、これらに限定されないが、例えば、ポリシロキサンコーティング組成物、またはゾル-ゲルコーティング組成物、シリケートコーティング(水ガラス)または、ナノ粒子含有配合物(ハイブリッドコーティング組成物)の形態を、紫外線保護層の表面に、フローコーティング、ディップコーティング、噴霧、ローリングまたはスピンコーティングによって施す。その後、硬化させ、強固に接着させたPC/紫外線保護層/耐引掻層の複合材料が形成される。
【0086】
本発明に係るゾル-ゲルコーティング組成物は、ゾル-ゲル法によって調製されるコーティング組成物である。ゾル-ゲル法は、コロイド状分散体(いわゆるゾル)から、非金属の無機物質またはハイブリッドポリマー材料を合成させる方法である。
【0087】
例えば、一般式RSi(OR')で表わされるオルガノアルコキシシランまたはオルガノアルコキシシランの混合物とコロイド状二酸化ケイ素の水性分散系を加水分解させることにより、このようなゾル-ゲルティング溶液を調製できる。式中、一般式RSi(OR')で表わされるオルガノアルコキシシランにおけるRは、一価C〜Cアルキル残基または完全もしくは部分フッ素化C〜Cアルキル、ビニルまたはアリル単位、アリール残基またはC〜Cアルコキシ基を示す。Rは、特に好ましくは、C〜Cアルキル基、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、tert.-ブチル、sec.-ブチルまたはn-ブチル基、ビニル、アリル、フェニルまたは置換フェニル単位である。-OR'は、相互に独立して、C〜Cアルコキシ基、ヒドロキシル基、ホルミル単位およびアシル単位を含む群から選択される。
【0088】
コロイド状二酸化ケイ素は、例えばLevasil200A(HCストラック社)、Nalco1034A(ナルコケミカル社)、Ludox AS-40またはLudox LS(グレース・デイビソン社)として入手できる。下記の化合物を、例えばオルガノアルコキシシランシランとして記載できる:3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン(例えばフェニルトリエトキシシランおよびフェニルトリメトキシシラン)およびそれらの混合物。
【0089】
有機および/または無機酸または塩基を、例えば触媒として使用できる。
【0090】
1実施態様において、コロイド状の二酸化ケイ素粒子を、アルコキシシランから出発させる事前縮合によってそのまま調製してもよい(「シリカの化学」Ralph K.Iler,John Wiley&Sons(1979年)、第312頁〜第461ページ)。
【0091】
ゾル-ゲル溶液の加水分解は、溶媒、好ましくはアルコール性溶媒(例えば、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノールまたはそれらの混合物を添加することにより終了または鈍化させる。所望により溶媒中に予め溶解させた、本発明に係る1種またはそれ以上の紫外線吸収剤を、その後、ゾル-ゲルコーティング溶液へ添加し、次いで、数時間または数日/数週間の熟成工程へ付す。さらに、更なる添加剤および/または安定剤、例えばレベリング剤、表面添加剤、増粘剤、顔料、硬化触媒、IR吸収体、紫外線吸収剤および/または接着促進剤を添加してもよい、ヘキサメチルジシラザン、または同程度の化合物を使用してもよく、これらは、コーティングの亀裂に対する感受性を減少させる(WO2008/109072A参照)。
【0092】
Momentive Performance Materials製のAS4700(紫外線吸収剤を含有する、ポリシロキサンを基剤とするトップコーティング組成物)を、耐引掻性のコーティング組成物として例えば好ましく使用する。
【0093】
本発明に係るハイブリッドコーティング組成物は、バインダーとしてハイブリッドポリマーを使用することに基づく。ハイブリッドポリマー(hibrida:lat、「混成結合生成物」)は、それらの分子レベルの範囲内で、種々の物質類の構造単位を化合させたポリマー材料である。それらの構造に起因して、ハイブリッドポリマーは、全く新しい組合せの性能を有することができる。(明確な界面と層間の弱い相互作用を示す)複合材料および(ナノスケールの充填剤を使用する)ナノコンポジットと比べ、ハイブリッドポリマーの構造単位は、分子レベルで相互結合している。これは、無機網目を構築できる、例えばゾル-ゲル法などの化学的な方法によりもたらされる。付加的な有機オリゴマー/ポリマー構造体は、有機反応性の先駆物質、例えば有機変性金属アルコキシドを使用することにより生成できる。有機/無機網目を形成する表面変性ナノ粒子を含有するアクリレート系コーティング組成物も、同様に、ハイブリッドコーティング組成物として定義できる。
【0094】
本発明によると、好ましい多層製品は、板材、フィルム、および3次元形状部品からなる群から選択されるものである。
【0095】
本発明はまた、該多層製品の使用、特に、視覚的印象について常に高い要求がされている屋外用途(例えばガラスなど)の該製品の使用に関する。
【0096】
本発明を、下記の実施例によって更に説明するが、それらに限定されるものではない。本発明に係る実施例は、単に、本発明の好ましい実施態様を説明するに過ぎない。
【実施例】
【0097】
実施例1:
ビスフェノールAポリカーボネート[種類:Makrolon3108(高粘度BPA PC(1.2kgの加重と300℃にてISO1133に従い、MFR6.5g/10分)、紫外線安定化なし]と/Plexiglas 8Hで示されるPMMAマトリックス(PSで較正したGPCを用いて測定した、103.5kg/モルの分子量(Mw)を有するPMMA;ロームGmbH&Co.KG社)およびチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製のCGX XUVA006(式(II)で表わされ、X=OCHCH(CHCH)Cであるジフェニル置換トリアジン)から構成される紫外線保護共押出層とを有する共押出フィルムのPC面を、Makrolon AL2647(バイエル・マテリアルサイエンスAG社;中程度の粘度を示すビスフェノールAポリカーボネート、1.2kgの加重と300℃の条件にてISO1133に従い、MVR12.5cm/10分、紫外線安定性と易離型性を備える)でバック射出成形し、次いで、PMMA面を、Momentive Performance Materials製のAS4700で表わされる耐引掻性コーティング組成物で被覆した。
【0098】
紫外線保護化合物の調製
100℃にて3時間予め乾燥させたPlexiglas8Hの14.25kgを、粉末状(約700μm)にすり潰し、750gの紫外線吸収剤CGX UVA006(95%、5wt%に相当)と混合させた。次いで、150分-1の回転速度を示す2軸押出し機(ZSX 32/3)を用いて処理することにより粒状体を形成させた。溶融温度は260℃とし、得られた粒状体は澄んだ透明であった。
【0099】
共押出フィルムの製造
片面にフィルムを形成させるために、基材であるMakrolon3108を予備乾燥(120℃で4時間)させた後、主たる押出機において溶融させた(回転速度65.7分-1、溶融温度296℃、融解圧力99bar)。他の面から、100℃にて3時間予備乾燥させた紫外線保護化合物から構成される共押出材料(上記参照)を、共押出機(回転速度10分-1、溶融温度286℃、融解圧力64bar)から注入し、回転機構上にプレートノズルを介して基材と共に搬送させた。このようにして得られた共押フィルムは、約175μmの基材厚と、約13μmの共押出し紫外線保護層を有した。
【0100】
共押出しフィルムを含有するプレートの製造:
これは、ポリカーボネート面へ、Makrolon AL2647(バイエル・マテリアルサイエンスAG社;中程度の粘度を示すビスフェノールAポリカーボネート、1.2kgの加重と300℃の条件にてISO1133に従い、MVR12.5cm/10分、紫外線安定性と易離型性を備える)でバック射出成形した。
【0101】
耐引掻性コーティング組成物の塗布
次いで、Momentive Performance Materials製のAS4700で表わされる耐引掻性コーティング組成物を、フローコーティング法によって、共押出しフィルムのPMMA面上に施した。その後、循環式空気乾燥キャビネット中で、120℃にて60分間かけて硬化させた。
【0102】
340nmにおける共押出し層の初期吸光度は3.3であった。
【0103】
実施例2:
紫外線保護能を有さないMomentive Performance Materials製のSHC5020で表わされる耐引掻性コーティング組成物を用いることを除き、実施例1と同様にしておこなう比較例。
【0104】
実施例3:
0.3wt%のTinuvin360(2,2'-メチレンビス(6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール)、CAS番号103597-45-1))を有する紫外線保護ビスフェノールAポリカーボネート[種類:Makrolon3108(高粘度BPA PC(1.2kgの加重と300℃にてISO1133に従い、MFR6.5g/10分)、紫外線安定化なし]を共押出しフィルムの成分として使用したことを除き、実施例1と同様にしておこなう比較例。
【0105】
実施例4:
風化装置中での散乱放射による背面への損傷を防ぐために、風化作用中に背面保護層(Makrolon AL2647(バイエル・マテリアルサイエンスAG社;中程度の粘度を示すビスフェノールAポリカーボネート、1.2kgの加重と300℃の条件にてISO1133に従い、MVR12.5cm/10分、紫外線安定性と易離型性を備える)から構成される3.2mmの板)を用いることを除き、実施例3と同様にしておこなう比較例。背面保護層を除去して黄色度指数を測定した。
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【0108】
耐引掻性層(A)、ポリカーボネート(C)で紫外線保護をせずに紫外線保護層(B)で紫外線保護する共押出しフィルムと、紫外線保護層(B)で紫外線保護せずに紫外線保護したポリカーボネート層(C)を用いる共押出しフィルムに関する、各層の吸光度を、水晶を基準に決定した。サンプルの透過率をPELambda900(光度計0°/散乱性/方法:MW50002)を用いて測定した。その後、個々の層厚に関する、340nmでの吸光度をランベルト・ベール法則に従い算出して表示した。
【0109】
PC基材に基づく多層系の結合性に関する調査
下記の接着試験を行った:a)(ISO 2409またはASTM D 3359と同様にして)格子状の切断無しおよび有りの状態での、粘着テープ剥離(粘着テープは3M スコッチ898を使用した)
(b)沸騰水中に4時間貯蔵した後の粘着テープ剥離
(c)(ISO 2812−2およびASTM 870−02と同様にして)
約65℃の温水中に10日間貯蔵した後の粘着テープ剥離。
これらの試験を全てパスした。すなわち、コーティングの剥離は生じず、または層状複合体の剥離は生じなかった(ISO 2409に従うスコア0またはASTM D 3359に従う5B)。
【0110】
340nmで0.75W/m/nmの風化作用を7000時間行ったのちの多層複合材に関する調査
風化は、乾燥/雨サイクルが102:18の条件で、340nmにて0.75W/m/nmの照射を行うAtlas社製の Ci 5000を用いて行った。ボロ/ボロフィルター(昼光フィルター)が選択され、ASTM G155に基づくブラックパネル温度は70(±2)℃、サンプル室温は55(±2)℃(乾燥サイクル)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層(A)、第2層(B)、第3層(C)および第4層(D)を含有する多層製品であって、
該第1層(A)は、340nmにて少なくとも0.2の吸光度を有する耐引掻保護層であり、
該第2層(B)は、340nmにて少なくとも2の吸光度を有するアルキルアクリレート層であり、
該第3層(C)および該第4層(D)は、紫外線安定化ポリカーボネートを含有する、該多層製品。
【請求項2】
層(A)が、340nmにて少なくとも0.3の吸光度を有する、請求項1に記載の多層製品。
【請求項3】
層(A)が、ゾル-ゲルコーティング組成物に基づくと共に、340nmにて0.2〜4の吸光度を有する、請求項1に記載の多層製品。
【請求項4】
層(B)が、340nmにて1〜10の吸光度を有する、請求項1に記載の多層製品。
【請求項5】
層(A)が下記式(I)で表わされる紫外線吸収剤を含有する、請求項1に記載の多層製品:
【化1】

(式中、Rは置換または未置換の単環または多環式芳香族残基を示し、Rは分岐または非分岐のC-C10アルキルを示し、Rは分岐または非分岐のC-Cアルキルを示す)。
【請求項6】
紫外線吸収剤が、4,6−ジベンゾイル−2−(3−トリアルコキシシリルアルキル)レソルシノールおよび4,6−ジベンゾイル−2−(3−トリエトキシシリルプロピル)レソルシノールから選択される、請求項5に記載の多層製品。
【請求項7】
層(B)が下記式(II)で表わされる紫外線吸収剤を含有する、請求項1に記載の多層製品:
【化2】

(式中、
Xは、OR;OCHCHOR;OCHCH(OH)CHORまたはOCH(R)COORを示し、該式中、
は、それぞれC〜C13アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C12アリールまたは−CO−C−C18アルキルを表わし、Rは、HまたはC〜Cアルキルであり、
はC〜C12アルキル;C〜C12アルケニルまたはC〜Cシクロアルキルを表わし、
Zは、相互に独立して、それぞれ未置換フェニル若しくはジフェニル、またはC-Cアルキルで単置換または多置換したフェニル若しくはジフェニルを示す)。
【請求項8】
式(II)において、
XがORを表わし、
がCHCH(CHCH)Cを表わし、
Zはジフェニルを表わすことを特徴とする、請求項7に記載の多層製品。
【請求項9】
層(E)および層(F)または層(G)から選択される少なくとも1つの更なる層を含有する、請求項1に記載の多層製品であって、
該層(E)は、紫外線安定剤を含有するアルキルアクリレートに基づく更なる紫外線保護層であり、
該層(F)は、引掻保護層であり、および
該層(G)は、紫外線安定化引掻保護層である、該多層製品。
【請求項10】
層(E)が下記式(II)で表わされる紫外線吸収剤を含有する、請求項9に記載の多層製品:
【化3】

(式中、
Xは、OCH(R)COORを示し、
=CH、R=C17およびZはジフェニルを示す)。
【請求項11】
請求項1に記載の多層製品の製造方法であって、
共押出フィルム形態、2層の積層フィルム形態、または層(B)で被覆されたポリカーボネートフィルム形態である第2層および第3層(BおよびC)は、バック射出成形され、その後、層(A)が施されることを特徴とする、該製造方法。

【公表番号】特表2012−526672(P2012−526672A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510138(P2012−510138)
【出願日】平成22年5月4日(2010.5.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002701
【国際公開番号】WO2010/130350
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】