説明

耐熱仮着用の粘着剤組成物及び粘着テープ

【課題】電子部品を一時的に固定又は保護するために使用される粘着テープであって、電子部品に対する初期粘着力が高く、また、高温にさらされた場合であっても粘着力が低下し難く、固定や保護に必要な粘着力を有し、さらに、剥離除去する際には糊残りすることなく容易に剥離可能な耐熱仮着用の粘着剤組成物及び粘着テープを提供すること。
【解決手段】電子部品の製造工程において該電子部品を一時的に固定又は保護するために使用される耐熱仮着用の粘着剤組成物であって、粘着剤組成物からなる粘着剤層2の形成用材料として、アクリル系ポリマーと、エネルギー線重合性オリゴマーと、重合開始剤と、架橋剤とを含有し、前記アクリル系ポリマーは、アクリロニトリルに由来する繰り返し単位を有する共重合体である粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造工程において該電子部品を一時的に固定又は保護するために使用される耐熱仮着用の粘着剤組成物及び粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子部品の製造工程では、ダイシングテープやバックグラインドテープ等の粘着テープが使用されている。これらの粘着テープは、部品の固定や保護を目的として使用されているため、製造の各工程では環境条件に耐え得る強い接着力を有し、固定や保護の必要がなくなり、剥離除去する際には容易に剥離できることが望ましい。
【0003】
かかる特性を有する粘着テープとして、特許文献1には、基材フィルムの片表面に、放射線硬化型粘着剤層と、貯蔵弾性率が特定の範囲にある粘着剤層とを設けたものが開示されている。また、特許文献2には、水親和性アクリル系粘着剤と、活性エネルギー線硬化性化合物と、光重合開始剤と、架橋剤とからなる再剥離型粘着剤組成物が開示されている。これらは、エネルギー線等を照射する前は強い粘着力を示し、被着体を適切に固定・保護するが、エネルギー線等を照射すると粘着力が著しく低下し、被着体から容易に剥離可能となるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−53819号公報
【特許文献2】特開2000−345131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、電子部品の製造工程では、粘着テープを貼付した状態の部品が高温にさらされることも少なくない。そのため、電子部品の製造工程に使用する粘着テープには、高温条件に耐え得る耐熱性も求められる。しかしながら、部品を一時的に固定又は保護するために使用する粘着テープは、高温にさらされると粘着力が低下し、工程中に剥がれる、或いは、工程終了後、被着体に強固に粘着し、糊残りが生じるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、電子部品を一時的に固定又は保護するために使用される耐熱仮着用の粘着剤組成物及び粘着テープであって、電子部品に対する初期粘着力が高く、また、高温にさらされた場合であっても粘着力が低下し難く、固定や保護に必要な粘着力を有し、さらに、剥離除去する際には糊残りすることなく容易に剥離可能な耐熱仮着用の粘着剤組成物及び粘着テープの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねたところ、耐熱仮着用粘着剤組成物の形成用材料として、アクリロニトリルに由来する繰り返し単位を有する共重合体であるアクリル系ポリマーと、エネルギー線重合性オリゴマーと、重合開始剤と、架橋剤とを選択することで、電子部品に貼付した状態で高温にさらした場合であっても、粘着力が低下し難く、また、剥離除去の際には糊残りを生じない粘着テープが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1)本発明は、電子部品の製造工程において該電子部品を一時的に固定又は保護するために使用される耐熱仮着用の粘着剤組成物であって、アクリル系ポリマーと、エネルギー線重合性オリゴマーと、重合開始剤と、架橋剤とを含有し、前記アクリル系ポリマーは、アクリロニトリルに由来する繰り返し単位を有する共重合体である粘着剤組成物である。
【0010】
(2)また、本発明は、上記粘着剤組成物からなる10μmの粘着剤層を介して無機ガラス又はシリコン板と耐熱性基材とが積層されたときの無機ガラス面及びシリコン面に対する上記粘着剤層の180°引き剥がし粘着力(JIS Z0237準拠)が、上記無機ガラス面及びシリコン面に上記耐熱性基材を貼付して20分経過後では、0.5N/25mm以上であり、150℃にて60分間加熱した後では、0.5N/25mm以上であり、且つ、上記加熱後のエネルギー線照射による硬化後では、0.4N/25mm以下である(1)に記載の粘着剤組成物である。
【0011】
(3)また、本発明は、上記粘着剤組成物からなる10μmの粘着剤層を介してポリエチレンナフタレートフィルム又はポリイミドフィルムと無機ガラスとが積層されたときのポリエチレンナフタレートフィルム面及びポリイミドフィルム面に対する上記粘着剤層の180°引き剥がし粘着力(JIS Z0237準拠)が、上記ポリエチレンナフタレートフィルム面及びポリイミドフィルム面に上記無機ガラスを貼付して20分経過後では、0.3N/25mm以上であり、180℃にて120分間加熱した後では、0.5N/25mm以上であり、且つ、上記加熱後のエネルギー線照射による硬化後では、0.3N/25mm以下である(1)に記載の粘着剤組成物である。
【0012】
(4)また、本発明は、エネルギー線重合性モノマーを含有する(1)から(3)のいずれかに記載の粘着剤組成物である。
【0013】
(5)また、本発明は、上記(1)から(4)のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層が前記耐熱性基材上に形成されている耐熱仮着用粘着テープである。
【0014】
(6)また、本発明は、前記耐熱性基材の加熱収縮率(JIS C2151準拠)が、MD方向及びTD方向において1.0%以下である(5)に記載の耐熱仮着用粘着テープである。
【0015】
(7)また、本発明は、上記(1)から(4)のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層を介して、少なくとも第1の剥離フィルムと第2の剥離フィルムとが積層された耐熱仮着用粘着テープである。
【0016】
(8)また、本発明は、前記電子部品における前記粘着剤層との仮着面が無機ガラス面及び/又はシリコン面であり、上記(5)又は(6)に記載の耐熱仮着用粘着テープと、前記電子部品の前記無機ガラス面及び/又はシリコン面とが、前記粘着剤層を介して貼付されてなる被仮着体である。
【0017】
(9)また、本発明は、上記粘着剤層の面と、当該粘着剤層の面と接する無機ガラス面及びシリコン面との表面自由エネルギーの分散成分の差(Δysd)が11mJ/m以上である(8)に記載の被仮着体である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の耐熱仮着用の粘着剤組成物及び粘着テープによれば、電子部品に対する初期粘着力が高く、また、高温にさらされた場合であっても粘着力が低下し難く、固定や保護に必要な粘着力を維持し、さらに、剥離除去する際には糊残りすることなく容易に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る粘着テープを模式的に示した断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る粘着テープを模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0021】
[耐熱仮着用粘着剤組成物]
本発明の耐熱仮着用粘着剤組成物は、電子部品の製造工程において、例えば、無機ガラス面及び/又はシリコン面を有する電子部品を一時的に固定又は保護するために使用される粘着剤組成物である。本発明の粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーと、エネルギー線重合性オリゴマーと、重合開始剤と、架橋剤とを含有し、アクリル系ポリマーは、アクリロニトリルに由来する繰り返し単位を有する共重合体である。本発明は、粘着剤層の形成材料として、アクリロニトリルに由来する繰り返し単位を有する共重合体であるアクリル系ポリマーと、エネルギー線重合性オリゴマーと、重合開始剤と、架橋剤とを選択することで、電子部品に対する初期粘着力が高く、また、高温にさらされた場合であっても粘着力が低下し難く、固定や保護に必要な粘着力を維持し、さらに、剥離除去する際には糊残りすることなく容易に剥離することができることを初めて見出した点に意義がある。
【0022】
(アクリル系ポリマー)
本発明の粘着剤組成物は、透明性、耐熱性、耐湿熱性、耐久性、塗工適性等に優れ、低コストであるアクリル系ポリマーを主剤として含有する。そして、アクリル系ポリマーは、アクリロニトリルに由来する繰り返し単位を有する共重合体であれば、特に限定されず、例えば、アクリル酸エステルとアクリロニトリルとの共重合体、アクリル酸エステルとアクリロニトリルと他の単量体との共重合体等が挙げられる。アクリル酸エステルとしては、例えば、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、ヒドロキシルエチルアクリレート、プロピレングリコールアクリレート、グリシジルアクリレート等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本発明では、上記アクリル酸エステルの中でも、特に、n−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートが、透明性、耐熱性、耐湿熱性、耐久性、塗工適性等に優れ、また、低コストである点において好ましい。
【0023】
他の単量体としては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、ヒドロキシルエチルアクリレート、ヒドロキシルエチルメタクリレート、プロピレングリコールアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、tert−ブチルアミノエチルメタクリレート、n−エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本発明では、上記他の単量体の中でもメチルメタクリレートが好ましい。
【0024】
その他、好ましい他の単量体としては、例えば、共重合可能な水酸基含有モノマーが挙げられる。本発明において、共重合可能な水酸基含有モノマーとは、その構造中に共重合可能な重合性基と、水酸基とを有している単量体をいう。共重合可能な水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート等が挙げられる。本発明では、これらの中でも2−ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。
【0025】
本発明の粘着剤組成物では、上記アクリル系ポリマーの質量平均分子量(Mw)は、15万〜150万の範囲内であることが好ましく、40万〜120万の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であれば、粘着剤層の初期粘着力の調整が容易である。また、凝集力の高い粘着剤層の形成が可能となる。なお、質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際の、ポリスチレン換算の値である。
【0026】
本発明の粘着剤組成物では、上記アクリル系ポリマーは、アクリロニトリルに由来する繰り返し単位を有し、その割合を調整することで、所望の凝集力を粘着剤層に付与することができる。アクリル系ポリマーの全繰り返し単位に対するアクリロニトリルに由来する繰り返し単位の割合は、3〜40質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましく、5〜10質量%であることが更により好ましい。上記範囲内であれば、高温にさらされた場合であっても、粘着力が低下し難く、固定や保護に必要な粘着力が維持可能な粘着剤層を形成することができる。また、剥離除去する際には糊残りが生じ難い。
【0027】
(エネルギー線重合性オリゴマー)
本発明の粘着剤組成物は、エネルギー線重合性オリゴマーを含有する。エネルギー線重合性オリゴマーは、エネルギー線の照射により重合し得るものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、光ラジカル重合性、光カチオン重合性、光アニオン重合性等のオリゴマーが挙げられる。これらの中でも、光ラジカル重合性オリゴマーが好ましい。硬化速度が速く、また、多種多様な化合物から選択することができ、さらには、硬化前の粘着性や硬化後の剥離性等の物性を容易に所望のものに制御することができるからである。光ラジカル重合性のオリゴマーとしては、例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、シリコーン系(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明では、これらの中でもポリウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
【0028】
エネルギー線重合性オリゴマーの質量平均分子量(Mw)は、特に限定されるものではないが、250〜5000であることが好ましく、250〜1500であることがより好ましい。上記範囲内であれば、エネルギー線照射前には所望の粘着力を示し、また、エネルギー線照射後には糊残りすることなく、容易に剥離可能な粘着剤層を形成することができる。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際の、ポリスチレン換算の値である。
【0029】
エネルギー線重合性オリゴマーの含有量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、10〜60質量部であることが好ましく、20〜50質量部であることがより好ましい。エネルギー線重合性オリゴマーの量を調整することにより、エネルギー線照射後の粘着力の制御が可能となる。上記範囲内であれば、エネルギー線照射後の架橋密度が十分なものとなるので、適正な剥離性を実現することができる。また、凝集力の低下による被着体への糊残りが生じ難い。
【0030】
なお、上記エネルギー線重合性オリゴマー以外に、エネルギー線の照射により重合し得るエネルギー線重合性モノマーを含有してもよい。エネルギー線重合性モノマーは、エネルギー線重合性オリゴマーと同様に、エネルギー線の照射により重合し得るものであれば、特に限定されるものではない。例えば、光ラジカル重合性、光カチオン重合性、光アニオン重合性等のモノマーが挙げられ、硬化速度が速く、また、多種多様な化合物から選択することができ、さらには、硬化前の粘着性や硬化後の剥離性等の物性を容易に所望のものに制御することができる光ラジカル重合性モノマーが好ましい。光ラジカル重合性のモノマーとしては、多官能性アクリレートや多官能性メタクリレートが好ましく、例えば、一分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上有するトリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、これらのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等が好ましい。これらは、電離放射線を照射した際に、粘着剤組成物を3次元架橋により硬化させて粘着力を低下させるとともに、粘着剤の凝集力を高めて被接着面に転着させないようにする機能を有するからである。
【0031】
粘着剤組成物中に、上記エネルギー線重合性オリゴマーと上記エネルギー線重合性モノマーとを含有する場合には、その合計含有量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、10〜60質量部であることが好ましく、20〜50質量部であることがより好ましい。これらの合計含有量を調整することにより、エネルギー線照射後の粘着力の制御が可能となる。上記範囲内であれば、エネルギー線照射後の架橋密度が十分なものとなるので、適正な剥離性を実現することができる。また、凝集力の低下による被着体への糊残りが生じ難い。
【0032】
エネルギー線としては、例えば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波のほか、電子線、プロトン線、中性子線等が挙げられる。硬化速度、照射装置の入手容易さ、価格等の観点において、紫外線照射による硬化が好ましい。
【0033】
(重合開始剤)
本発明の粘着剤組成物は、重合開始剤を含有する。重合開始剤によれば、上記エネルギー線重合性オリゴマーやエネルギー線重合性モノマーの感応性を増進させることができるので、エネルギー線による重合硬化時間やエネルギー線照射量の低減が可能となる。重合開始剤は、特に限定されるものではなく、市販品としては、例えば、BASFジャパン株式会社製のIRGACURE184、IRGACURE754、IRGACURE2959等を好適に使用することが挙げられる。
【0034】
重合開始剤の含有量は、例えば、ラジカル連鎖反応が開始し、進行する量であれば、特に限定されるものではない。一般には、市販の分光光度計を用いて測定した重合開始剤の極大吸収波長における吸光度が0.4〜0.5の範囲内となる量の重合開始剤を配合する。
【0035】
(架橋剤)
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤を含有する。本発明の粘着剤組成物は、上記アクリル系ポリマー、上記エネルギー線重合性オリゴマー、及び重合開始剤とともに、架橋剤を含有するので、耐熱性に優れ、電子部品が高温にさらされる状況下で使用しても、粘着力が低下せず、固定や保護に必要な粘着力を有する。架橋剤は、特に限定されるものではなく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等が挙げられる。イソシアネート系架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物の3量体、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られるイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー、該ウレタンプレポリマーの3量体等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,5−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4′−ジイソシアネート、リジンイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
また、エポキシ系架橋剤としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル等の多官能エポキシ系化合物が挙げられる。
【0037】
上記架橋剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができ、上記アクリル系ポリマーの種類に応じて、適宜選択するとよい。例えば、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマーに、共重合可能な水酸基含有モノマーが含まれる場合には、イソシアネート系架橋剤が好ましく、共重合可能なカルボキシル基含有モノマーが含まれる場合には、エポキシ系架橋剤が好ましい。ここで、共重合可能なカルボキシル基含有モノマーとは、その構造中に、共重合可能な重合性基と、カルボキシル基とを有するモノマーをいい、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸等が挙げられる。上記選択によれば、高温にさらされた場合の粘着力の低下が生じ難い粘着剤層を形成することができる。
【0038】
なお、上記イソシアネート系架橋剤の市販品としては、例えば、L−45(綜研化学株式会社製)、TD−75(綜研化学株式会社製)、BXX5627(東洋インキ製造株式会社製)、X−301−422SK(サイデン化学株式会社製)等を好適に用いることができる。また、上記エポキシ系架橋剤の市販品としては、例えば、E−5XM(綜研化学株式会社製)、E−5C(綜研化学株式会社製)等を好適に用いることができる。
【0039】
架橋剤の含有量は、架橋剤の種類によっても異なるが、例えば、イソシアネート系架橋剤の場合には、上記アクリル系ポリマー、及び上記エネルギー線重合性オリゴマーの合計100質量部に対して、0.01〜15質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部であることがより好ましい。上記範囲であれば、粘着剤層と基材との密着性を向上させることができる。0.01質量部に満たないと、粘着剤層と基材との密着性が不十分なものとなったり、粘着剤層が十分な強度を有することが困難となり、被着体から剥離する際に粘着剤層が凝集破壊を起こし、糊残りが生じたりする場合がある。15質量部を超えると、粘着剤層中に未反応モノマーとして残留するため、凝集力が低下する場合がある。
【0040】
また、エポキシ系架橋剤の場合には、上記アクリル系ポリマー、及び上記エネルギー線重合性オリゴマーの合計100質量部に対して、0.01〜15質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部であることがより好ましい。上記範囲であれば、エネルギー線照射前における粘着力や凝集力を所望の強度に制御することができる。0.01質量部に満たないと、粘着剤層が十分な強度を有することが困難となり、被着体から剥離する際に粘着剤層が凝集破壊を起こし、糊残りが生じる場合がある。15質量部を超えると、エネルギー線照射前における粘着力が低下するため、電子部品の適切な固定や保護が困難となる場合がある。
【0041】
本発明の粘着剤組成物には、その他、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、シランカップリング剤、粘着付与剤、金属キレート剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、着色剤、耐電防止剤、防腐剤、消泡剤、ぬれ性調整剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0042】
[耐熱仮着用粘着剤組成物の製造方法]
本発明の耐熱仮着用粘着剤組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、上記アクリル系ポリマーと、上記エネルギー線重合性オリゴマーと、上記重合開始剤と、上記架橋剤と、必要に応じて、上記各種添加剤とを有機溶剤に溶解又は分散させることにより製造できる。有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジメチルアセトアミド、これらの混合溶液等を好適に使用することができる。
【0043】
[耐熱仮着用粘着テープ]
本発明の耐熱仮着用粘着テープ(以下、粘着テープともいう。)は、電子部品の製造工程において該電子部品を一時的に固定又は保護するために使用される耐熱仮着用粘着テープである。本発明の一実施形態に係る粘着テープは、耐熱性基材上に、アクリル系ポリマーと、エネルギー線重合性オリゴマーと、重合開始剤と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物からなる粘着剤層が形成されており、アクリル系ポリマーは、アクリロニトリルに由来する繰り返し単位を有する共重合体である。そして、本発明の一実施形態に係る粘着テープに形成されている粘着剤層は、無機ガラス面及びシリコン面に対する180°引き剥がし粘着力(JIS Z0237準拠)が、上記無機ガラス面及びシリコン面に貼付して20分経過後では、0.5N/25mm以上であり、150℃にて60分間加熱した後では、0.5N/25mm以上であり、且つ、上記加熱後のエネルギー線照射による硬化後では、0.4N/25mm以下である。本発明は、粘着剤層の形成材料として、アクリロニトリルに由来する繰り返し単位を有する共重合体であるアクリル系ポリマーと、エネルギー線重合性オリゴマーと、重合開始剤と、架橋剤とを選択することで、電子部品の無機ガラス面及びシリコン面に対する初期粘着力が高く、また、高温にさらされた場合であっても粘着力が低下し難く、固定や保護に必要な粘着力を維持し、さらに、剥離除去する際には糊残りすることなく容易に剥離することができる粘着テープが得られることを初めて見出した点に意義がある。
【0044】
また、本発明の他の実施形態に係る粘着テープは、上記の粘着剤組成物からなる粘着剤層を介して、少なくとも第1の剥離フィルムと第2の剥離フィルムとが積層される。そして、本発明の他の実施形態に係る粘着テープに形成されている粘着剤層は、ポリエチレンナフタレートフィルム面及びポリイミドフィルム面に上記無機ガラスを貼付して20分経過後では、0.3N/25mm以上であり、180℃にて120分間加熱した後では、0.5N/25mm以上であり、且つ、上記加熱後のエネルギー線照射による硬化後では、0.3N/25mm以下である。本発明は、粘着剤層の両面を剥離フィルムで貼り合わせた点に特徴があり、これにより、基材として無機ガラス板や、ポリカーボネートなどの硬質板状部材を用いる場合、粘着剤層を基材上に転写して粘着層の支持体とすることができ、粘着層支持体の自由度を、軟質の基材のみならず、硬質の板状部材にまで拡張できる。
【0045】
まず、本発明の一実施形態に係る粘着テープの構成について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る粘着テープ10を模式的に示した断面図である。図1において、粘着テープ10は、基材1上に、粘着剤層2と剥離層3とが順次形成されているが、これに限定されるものではない。以下、基材1、粘着剤層2、剥離層3、粘着テープ10の順に説明する。
【0046】
<基材1>
本発明の粘着テープ10では、耐熱性を有する基材1を用いる。本発明において、耐熱性を有する基材1とは、電子部品の製造工程における想定加熱温度(120℃)での使用に耐え得る、融点が120℃より高い基材をいう。なお、好ましくは融点が180℃より高い基材である。また、本発明の粘着テープ10では、基材1は、加熱収縮率(JIS C2151準拠,150℃×30min)がMD及びTDともに1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。さらに、基材1は、エネルギー線の透過を妨げず、必要な強度と柔軟性とを有する基材が好ましく、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の公知の樹脂を材料とする合成樹脂フィルムが挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、基材1は、単層であってもよいし、2層以上の積層体であってもよい。なお、機械的強度の観点から、1軸延伸や2軸延伸した延伸フィルムが好ましい。本発明の粘着テープは、電子部品の製造工程において、電子部品を一時的に固定又は保護するために使用されることから、上記耐熱性、寸法安定性、エネルギー線透過性、柔軟性、強度等以外に、剛性、伸長性、積層適性、耐薬品性にも優れるポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。
【0047】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等が挙げられるが、これらの中でも、取り扱いが容易、且つ低価格なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0048】
基材1の厚みは、特に限定されるものではないが、30〜300μmであることが好ましく、50〜100μmであることがより好ましい。上記範囲であれば、粘着テープ10の形態を維持することができるので、粘着テープ10の貼付や剥離等の作業性が良い。また、反り、弛み、破断等が生じ難く、十分な機械的強度を示すので、連続帯状で供給して加工することも可能である。さらに、電子部品の製造工程において、被着体である電子部品等の表面を適切に保護することができる。なお、上記の厚さを超えると、過剰性能でコスト高になる場合がある。
【0049】
なお、エネルギー線として光線を用いる場合には、基材の400nm以下の光線に対する透過率は80%以上であることが好ましい。光線の透過率は、市販の分光光度計、例えば、島津製作所社製のMPC2200を用いて測定することができる。
【0050】
基材1の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、溶液流延法、溶融押出法、カレンダー法等の従来公知の製膜方法を用いることができる。また、上記方法によりあらかじめフィルム状に製膜された市販の基材を用いてもよい。
【0051】
なお、基材1には、粘着剤組成物との濡れ性を向上させるために、その片面又は両面に、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー処理、蒸着処理、アルカリ処理等の公知の易接着処理を施してもよい。
【0052】
<粘着剤層2>
本発明の粘着テープ10では、上記の粘着剤組成物からなる粘着剤層2が、上記の耐熱性基材1上に形成されている。粘着剤層2の厚みは、通常、5〜50μmであり、好ましくは10〜30μmである。上記範囲内であれば、粘着物性が安定する。なお、厚みが5μm未満であると、十分な粘着力が得られない場合があり、50μmを超えると、粘着剤層2の内部までエネルギー線が十分に透過せず、エネルギー線の照射により粘着力が低下しない場合がある。また、過剰性能でコスト高になる場合がある。
【0053】
厚さ50μmの耐熱性基材1上に、上記粘着剤組成物からなる厚さ10μmの粘着剤層2を形成した場合、無機ガラス面及びシリコン面に対する粘着剤層2の180°引き剥がし粘着力(JIS Z0237準拠)は、上記無機ガラス面及びシリコン面に貼付して20分経過後では、0.5N/25mm以上であり、150℃にて60分間加熱した後では、0.5N/25mm以上であり、且つ上記加熱後のエネルギー線照射による硬化後では、0.4N/25mm以下であり、好ましくは、上記無機ガラス面又はシリコン面に貼付して20分経過後では、0.7N/25mm以上であり、150℃にて60分間加熱した後では、0.7N/25mm以上であり、且つ上記加熱後のエネルギー線照射による硬化後では、0.3N/25mm以下である。なお、上記の加熱条件は電子部品の製造プロセス上で加えられる加熱条件の一例である。
【0054】
上記範囲内であれば、電子部品の無機ガラス面及びシリコン面に対する初期粘着力としては十分に高く、また、電子部品の製造工程中の高温条件下においても被着体から剥離することがなく、さらに、剥離除去する際には糊残りすることなく容易に剥離することができる。
【0055】
本発明の粘着テープ10では、粘着剤層2の面と、該粘着剤層2の面と接する無機ガラス面及びシリコン面との表面自由エネルギーの分散成分の差(Δysd)が11mJ/m以上であることが好ましく、13mJ/m以上であることがより好ましい。粘着剤層2の面と、該粘着剤層2の面と接する無機ガラス面及びシリコン面との表面自由エネルギーの分散成分の差が、11mJ/m以上であれば、高温にさらされた場合に粘着力の低下が生じ難く、また、加熱後にエネルギー線照射すると容易に剥離することができる。
【0056】
なお、粘着剤層2の面と、該粘着剤層2の面と接する無機ガラス面及びシリコン面の表面自由エネルギーの分散成分は、まず、エチレングリコール、水、及びヨウ化メチレンの接触角を、接触角計を使用し、JIS K2396に準拠した方法により測定する。そして、得られた値とKitazaki−Hataの理論とから解析する。上記接触角計としては、例えば、協和界面科学株式会社製のFACE接触角計CA−D型を使用することができる。
【0057】
<剥離層3>
本発明の粘着テープ10では、剥離層3を有していることが好ましい。剥離層3とは、剥離性を有する剥離部材からなり、粘着剤層2の表面を保護する機能を有する剥離シートを意味する。剥離部材は、必要な強度と柔軟性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、一般には、シリコーン離型処理した合成樹脂フィルムが用いられる。合成樹脂フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂が好ましい。剥離層3の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは25〜100μmである。
【0058】
続いて、本発明の他の実施形態に係る粘着テープの構成について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の他の実施形態に係る粘着テープ20を模式的に示した断面図である。図2において、粘着テープ20は、上記粘着剤層2の両面に上記剥離層3が形成されたものである。一の実施形態に係る粘着テープ10と対比すると、粘着テープ10の基材1が剥離層3に置き換えられた点で異なる。その結果、粘着テープ10の基材1に限定されず、例えば無機ガラスなどの硬質の板状部材を支持基材とすることが可能となる。
【0059】
厚さ900μmの無機ガラス上に、上記粘着剤組成物からなる厚さ10μmの粘着剤層2を形成した場合、ポリエチレンナフタレートフィルム面及びポリイミドフィルム面に対する粘着剤層2の180°引き剥がし粘着力(JIS Z0237準拠)は、上記ポリエチレンナフタレートフィルム面及びポリイミドフィルム面に上記無機ガラスを貼付して20分経過後では、0.3N/25mm以上であり、180℃にて120分間加熱した後では、0.5N/25mm以上であり、且つ、上記加熱後のエネルギー線照射による硬化後では、0.3N/25mm以下である。
【0060】
上記範囲内であれば、電子部品に対する初期粘着力としては十分に高く、また、電子部品の製造工程中の高温条件下においても被着体から剥離することがなく、さらに、剥離除去する際には糊残りすることなく容易に剥離することができる。
【0061】
[耐熱仮着用粘着テープ10,20の製造方法]
本発明の粘着テープ10,20の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、一の実施形態に係る耐熱仮着用粘着テープ10であれば、上記粘着剤組成物を、上記耐熱性基材1上にアプリケータ等により全面塗工し、粘着剤層2を形成する。一方、他の実施形態に係る耐熱仮着用粘着テープ20であれば、上記粘着剤組成物を、上記剥離層3上にアプリケータ等により全面塗工し、粘着剤層2を形成する。その後、該粘着剤層2を乾燥させ、剥離可能な合成樹脂フィルム等をラミネートすることにより、本発明の粘着テープ10,20を形成することができる。
【0062】
上記粘着剤組成物を、上記耐熱性基材1又は剥離層3上に塗工する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。印刷による形成方法としては、例えば、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法等が挙げられる。コーティングによる方法としては、例えば、ロールコート、リバースコート、コンマコート、ナイフコート、ダイコート、グラビアコート等が挙げられる。
【0063】
本発明の粘着テープ10,20の厚みは、特に限定されないが、80〜350μmであることが好ましく、90〜140μmであることがより好ましい。上記範囲であれば、適度な柔軟性を有するので、取り扱いが容易となる。
【0064】
本発明の粘着テープ10,20の貼付対象は、例えば、無機ガラス面及び/又はシリコン面を有する電子部品であり、無機ガラス又はシリコンからなる電子部品も含まれる。本発明の粘着テープ10,20によれば、無機ガラス面及びシリコン面に対する初期粘着力が高く、また、高温にさらされた場合であっても粘着力が低下し難く、固定や保護に必要な粘着力を有し、さらに、剥離除去する際には、エネルギー線を照射するという簡単な操作により、糊残りすることなく容易に剥離することができるので、工程中は適切な固定や保護を必要とし、最終的には剥離除去する高温条件下での使用を伴う電子部品製造工程用テープとして好適である。具体的には、プリント配線基板製造工程において部品を一時的に固定又は保護するために使用する粘着テープとして好適である。部品としては、例えば、ICチップの製造に用いられる電子部品が挙げられる。
【0065】
本発明の一実施形態に係る粘着テープ10の使用方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、本発明の粘着テープ10を貼付対象である電子部品の無機ガラス面及び/又はシリコン面に貼付する。そして、加熱処理、加工処理、薬品処理等の工程を経て、固定又は保護の必要がなくなった時点で、粘着テープの基材側から紫外線等のエネルギー線を照射して粘着剤層2を硬化させることにより、粘着テープを電子部品の無機ガラス面及び/又はシリコン面から剥離除去する。
【0066】
本発明の他の実施形態に係る粘着テープ20の使用方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、一方の剥離層3を剥がし、支持基材上にあらかじめ粘着剤層2を転写すればよい。その後に、貼付対象である電子部品の、例えばポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム面及び/又はポリイミド(PI)フィルム面に貼付して固定する。そして、加熱処理、加工処理、薬品処理等の工程を経て、固定又は保護の必要がなくなった時点で、粘着テープの基材側から紫外線等のエネルギー線を照射して粘着剤層2を硬化させることにより、基材1を電子部品のPEN面及び/又はPI面から剥離除去する。
【0067】
エネルギー線として紫外線を使用する場合には、例えば、150〜450nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ等を用いて、積算光量が50mJ/cm以上、好ましくは200mJ/cm以上になるように照射すればよい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0069】
<実施例1>
アクリル系粘着剤(商品名:E−306,アクリル系ポリマー+エネルギー線重合性オリゴマー+エネルギー線重合性モノマー+重合開始剤,アクリル系ポリマー:n−ブチルアクリレートとメチルメタクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートとアクリロニトリルとの共重合体,構成モノマーの質量比:n−ブチルアクリレート+メチルメタクリレート+2−ヒドロキシエチルアクリレート/アクリロニトリル(95/5),アクリル系ポリマーの質量平均分子量:約65万,エネルギー線重合性オリゴマー:ポリウレタンアクリレートオリゴマー,エネルギー線重合性モノマー:ジペンタエリスリトールトリアクリレート,重合開始剤:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン,BASF社製)100質量部に、架橋剤(商品名:L−45,イソシアネート系架橋剤,固形分45%,綜研化学株式会社製)5質量部を配合し、トルエン及びメチルエチルケトンの混合溶媒(商品名:KT11,質量比1:1,DICグラフィックス株式会社製)87質量部で希釈し、十分に分散させて、粘着剤層形成用塗工液を調製した。
【0070】
次いで、基材(二軸延伸ポリエステルフィルム,商品名:ルミラー S56,加熱収縮率(JIS C2151準拠,150℃×30min):MDが0.5%、TDが0.3%,膜厚:50μm,東レ株式会社製)上に、乾燥後の膜厚が10μmとなるように、上記粘着剤層形成用塗工液をアプリケータにより全面塗工し、粘着剤層を形成した。その後、乾燥させ、剥離シート(PETセパレータ,商品名:SP−PET−01,膜厚:38μm,三井化学東セロ株式会社製)をラミネートし、実施例1の粘着テープを得た。
【0071】
<実施例2>
アクリル系粘着剤(商品名:E−306,アクリル系ポリマー+エネルギー線重合性オリゴマー+エネルギー線重合性モノマー+重合開始剤,アクリル系ポリマー:n−ブチルアクリレートとメチルメタクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートとアクリロニトリルとの共重合体,構成モノマーの質量比:n−ブチルアクリレート+メチルメタクリレート+2−ヒドロキシエチルアクリレート/アクリロニトリル(95/5),アクリル系ポリマーの質量平均分子量:約65万,エネルギー線重合性オリゴマー:ポリウレタンアクリレートオリゴマー,エネルギー線重合性モノマー:ジペンタエリスリトールトリアクリレート,重合開始剤:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン,BASF社製)100質量部に、架橋剤(商品名:L−45,イソシアネート系架橋剤,固形分45%,綜研化学株式会社製)10質量部を配合し、トルエン及びメチルエチルケトンの混合溶媒(商品名:KT11,質量比1:1,DICグラフィックス株式会社製)87質量部で希釈し、十分に分散させて、粘着剤層形成用塗工液を調製した。
【0072】
次いで、剥離シート(PETセパレータ,商品名:SP−PET−01,膜厚:38μm,三井化学東セロ株式会社製)上に、乾燥後の膜厚が10μmとなるように、上記粘着剤層形成用塗工液をアプリケータにより全面塗工し、粘着剤層を形成した。その後、乾燥させ、上記剥離シートをラミネートし、実施例2の粘着テープを得た。
【0073】
<比較例1>
アクリル系粘着剤(商品名:N−4498,アクリル系ポリマー+エネルギー線重合性オリゴマー,アクリル系ポリマー:n−ブチルアクリレートとメチルメタクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体,アクリル系ポリマーの質量平均分子量:約40万,エネルギー線重合性オリゴマー:ポリウレタンアクリレートオリゴマー,固形分:40%,日本合成化学工業株式会社製)100質量部に、重合開始剤(商品名:IRGACURE754,光ラジカル発生剤,固形分:100%,BASFジャパン株式会社製)1.4質量部と、架橋剤(商品名:コロネートL,イソシアネート系架橋剤,固形分:75%,日本ポリウレタン株式会社製)1.5質量部とを配合し、トルエン及びメチルエチルケトンの混合溶媒(商品名:KT11,質量比1:1,DICグラフィックス株式会社製)180質量部で希釈し、十分に分散させて、粘着剤層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法により、比較例1の粘着テープを得た。
【0074】
<比較例2>
アクリル系粘着剤(商品名:N−7257,アクリル系ポリマー+エネルギー線重合性オリゴマー,アクリル系ポリマー:n−ブチルアクリレートとメチルメタクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体,アクリル系ポリマーの質量平均分子量:約40万,エネルギー線重合性オリゴマー:ポリウレタンアクリレートオリゴマー,固形分:41%,日本合成化学工業株式会社製)100質量部に、重合開始剤(商品名:IRGACURE754,光ラジカル発生剤,固形分:100%,BASFジャパン株式会社製)1.4質量部と、架橋剤(商品名:コロネートL,イソシアネート系架橋剤,固形分:75%,日本ポリウレタン株式会社製)2質量部とを配合し、トルエン及びメチルエチルケトンの混合溶媒(商品名:KT11,質量比1:1,DICグラフィックス株式会社製)186質量部で希釈し、十分に分散させて、粘着剤層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法により、比較例2の粘着テープを得た。
【0075】
<比較例3>
アクリル系粘着剤(商品名:SKダイン SW−2B,アクリル系ポリマー:n−ブチルアクリレートとメチルメタクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体,アクリル系ポリマーの質量平均分子量:約20万,固形分45%,綜研化学株式会社製)100質量部に、エネルギー線重合性オリゴマー(商品名:UV−7600B,ポリウレタンアクリレートオリゴマー,固形分:100%,日本合成化学工業株式会社製)12質量部と、重合開始剤(商品名:IRGACURE184,光ラジカル発生剤,固形分:100%,BASFジャパン株式会社製)1.3質量部と、架橋剤(商品名:E−5XM,エポキシ系架橋剤,固形分:5%,綜研化学株式会社製)7質量部と、架橋剤(商品名:L−45,イソシアネート系架橋剤,固形分45%,日本ポリウレタン株式会社製)2.7質量部とを配合し、トルエン及びメチルエチルケトンの混合溶媒(商品名:KT11,質量比1:1,DICグラフィックス社製)100質量部で希釈し、十分に分散させて、粘着剤層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法により、比較例3の粘着テープを得た。
【0076】
<比較例4>
アクリル系粘着剤(商品名:SKダイン SW−2B,アクリル系ポリマー:n−ブチルアクリレートとメチルメタクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体,アクリル系ポリマーの質量平均分子量:約20万,固形分45%,綜研化学株式会社製)100質量部に、エネルギー線重合性オリゴマー(商品名:UV−7600B,ポリウレタンアクリレートオリゴマー,固形分:100%,日本合成化学工業株式会社製)12質量部と、重合開始剤(商品名:IRGACURE184,光ラジカル発生剤,固形分:100%,BASFジャパン株式会社製)1.3質量部と、架橋剤(商品名:E−5XM,エポキシ系架橋剤,固形分:5%,綜研化学株式会社製)7質量部と、架橋剤(商品名:L−45,イソシアネート系架橋剤,固形分45%,日本ポリウレタン株式会社製)7質量部とを配合し、トルエン及びメチルエチルケトンの混合溶媒(商品名:KT11,質量比1:1,DICグラフィックス社製)100質量部で希釈し、十分に分散させて、粘着剤層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法により、比較例4の粘着テープを得た。
【0077】
<比較例5>
アクリル系粘着剤(商品名:E−306,アクリル系ポリマー+エネルギー線重合性オリゴマー+エネルギー線重合性モノマー+重合開始剤,アクリル系ポリマー:n−ブチルアクリレートとメチルメタクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートとアクリロニトリルとの共重合体,構成モノマーの質量比:n−ブチルアクリレート+メチルメタクリレート+2−ヒドロキシエチルアクリレート/アクリロニトリル(95/5),アクリル系ポリマーの質量平均分子量:約65万,エネルギー線重合性オリゴマー:ポリウレタンアクリレートオリゴマー,エネルギー線重合性モノマー:ジペンタエリスリトールトリアクリレート,重合開始剤:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)100質量部を、トルエン及びメチルエチルケトンの混合溶媒(商品名:KT11,質量比1:1,DICグラフィックス株式会社製)87質量部で希釈し、十分に分散させて、粘着剤層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法により、比較例5の粘着テープを得た。
【0078】
<比較例6>
アクリル系粘着剤(商品名:N−4498,アクリル系ポリマー+エネルギー線重合性オリゴマー,アクリル系ポリマー:n−ブチルアクリレートとメチルメタクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体,アクリル系ポリマーの質量平均分子量:約40万,エネルギー線重合性オリゴマー:ポリウレタンアクリレートオリゴマー,固形分:40%,日本合成化学工業株式会社製)100質量部に、重合開始剤(商品名:IRGACURE754,光ラジカル発生剤,固形分:100%,BASFジャパン株式会社製)1.4質量部を配合し、トルエン及びメチルエチルケトンの混合溶媒(商品名:KT11,質量比1:1,DICグラフィックス株式会社製)180質量部で希釈し、十分に分散させて、粘着剤層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法により、比較例6の粘着テープを得た。
【0079】
[粘着力評価]
上記実施例1、2及び比較例1〜6で得られた粘着テープについて、無機ガラス及びシリコンウェーハに対する粘着力評価を行った。
【0080】
(表面自由エネルギーの測定)
まず、粘着力評価に使用する無機ガラス(商品名:フロート板ガラス,株式会社日本タクト製)及びシリコン(シリコンウェーハ)について、表面自由エネルギーを測定した。表面自由エネルギーは、測定装置として接触角計(製品名:FACE接触角計CA−D型,協和界面科学社製)を使用し、JIS R3257に準拠した方法で、エチレングリコール、水、及びヨウ化メチレンの接触角を測定し、その測定値とKitazaki−Hata理論とから分散成分、極性成分、及び水素結合成分を解析し、表面自由エネルギーを算出した。その結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
上記実施例1、2及び比較例1〜4で得られた粘着テープの粘着剤層の面について、表面自由エネルギーを測定した。試験片は、粘着テープを幅25mm×長さ100mmに切断し、作成した。そして、試験片の剥離シートを剥がし、粘着剤層の面について、上記と同様の方法にて接触角を測定し、その測定値とKitazaki−Hata理論とから、分散成分、極性成分、及び水素結合成分を解析し、表面自由エネルギー算出した。その結果を表2に示す。
【0083】
【表2】

【0084】
(算術平均粗さの測定)
粘着力評価に使用する無機ガラス(商品名:フロート板ガラス,株式会社日本タクト製)及びシリコン(シリコンウェーハ)について、算術平均粗さ(Ra)を測定した。算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601−2001に準拠した方法で測定した。測定条件を下記に示す。その結果、無機ガラスの算術平均粗さ(Ra)は、0.17μmであり、シリコンの算術平均粗さ(Ra)は、0.14μmであった。
【0085】
<測定条件>
使用装置:原子間力顕微鏡(製品名:NanoScope V MultiMode,探針:MPP−11100−10,Veeco社製)
使用スキャナ:J−scanner
測定モード:TM−AFM
走査範囲:1.0×1.0μm
解像度:1024×1024
Scan rate:0.5Hz
【0086】
(初期粘着力測定)
上記実施例1及び比較例1〜6で得られた粘着テープについては、上記試験片の剥離シートを剥がし、上記無機ガラス及びシリコンのそれぞれに対して2kgのローラーを用いてラミネートし、常温常湿下にて20分間放置した。上記実施例2で得られた粘着テープについては、一方の剥離シートを剥がし、無機ガラス上に粘着剤層を転写した後、他方の剥離シートを剥がし、2種類の被着体のそれぞれに対して2kgのローラーを用いてラミネートした。そして、常温常湿下にて20分間放置した。その後、各々の粘着テープについて、万能材料試験機(5565型,インストロン・ジャパン社製)を用いて、初期粘着力を測定(JIS Z0237準拠,剥離速度:300mm/min,剥離距離:50mm,剥離角:180°)した。無機ガラスにおける結果を表3に、シリコンにおける結果を表4に示す。また、2種類の被着体における結果を表5に示す。
【0087】
実施例2で得られた粘着テープにラミネートした2種類の被着体は、次のとおりである。
(1)ポリエチレンナフタレートフィルム,商品名:Q51,帝人デュポンフィルム株式会社製
(2)ポリイミドフィルム,商品名:カプトン200H,東レデュポン株式会社製
【0088】
なお、初期粘着力の評価基準は、次のとおりである。
〔実施例1及び比較例1〜6〕
○:0.5N/25mm以上、×:0.5N/25mm未満。
〔実施例2〕
○:0.3N/25mm以上、×:0.3N/25mm未満。
【0089】
(加熱処理後の粘着力測定)
上記実施例1及び比較例1〜6で得られた粘着テープについては、上記試験片の剥離シートを剥がし、上記無機ガラス及びシリコンのそれぞれに対して2kgのローラーを用いてラミネートし、常温常湿下にて20分間放置した。上記実施例2で得られた粘着テープについては、一方の剥離シートを剥がし、無機ガラス上に粘着剤層を転写した後、他方の剥離シートを剥がし、2種類の被着体のそれぞれに対して2kgのローラーを用いてラミネートした。そして、常温常湿下にて20分間放置した。次いで、上記実施例1及び比較例1〜6で得られた粘着テープについては、150℃にて60分間、上記実施例2で得られた粘着テープについては、180℃にて120分間加熱した後、万能材料試験機(5565型,インストロン・ジャパン社製)を用いて、加熱処理後の粘着力を測定(JIS Z0237準拠,剥離速度:300mm/min,剥離距離:50mm,剥離角:180°)した。無機ガラスにおける結果を表3に、シリコンにおける結果を表4に示す。また、ポリエチレンナフタレートフィルム及びポリイミドフィルムにおける結果を表5に示す。
【0090】
なお、加熱処理後の粘着力の評価基準は、次のとおりである。○:0.5N/25mm以上、×:0.5N/25mm未満。
【0091】
(紫外線照射後の粘着力測定)
上記実施例1及び比較例1〜6で得られた粘着テープについては、上記試験片の剥離シートを剥がし、上記無機ガラス及びシリコンのそれぞれに対して2kgのローラーを用いてラミネートし、常温常湿下にて20分間放置した後、150℃にて60分間加熱した。上記実施例2で得られた粘着テープについては、一方の剥離シートを剥がし、無機ガラス上に粘着剤層を転写した後、他方の剥離シートを剥がし、2種類の被着体のそれぞれに対して2kgのローラーを用いてラミネートした。そして、常温常湿下にて20分間放置した後、180℃にて120分間加熱した。次いで、基材側からフュージョン社製のH・バルブランプを光源とする紫外線を照射(積算光量:200mj/cm)した後、万能材料試験機(5565型,インストロン・ジャパン社製)を用いて、紫外線照射後の粘着力を測定(JIS Z0237準拠,剥離速度:300mm/min,剥離距離:50mm,剥離角:180°)した。無機ガラスにおける結果を表3に、シリコンにおける結果を表4に示す。また、ポリエチレンナフタレートフィルム及びポリイミドフィルムにおける結果を表5に示す。
【0092】
なお、紫外線照射後の粘着力の評価基準は、次のとおりである。○:0.4N/25mm以下、×:0.4N/25mm超。
【0093】
[糊残りの有無の確認]
上記実施例1、2及び比較例1〜6で得られた粘着テープについて、無機ガラス及びシリコンに対する糊残りの有無の確認を行った。まず、粘着テープを幅25mm×長さ100mmに切断し、試験片を作成した。次に、上記実施例1及び比較例1〜6で得られた粘着テープについては、上記試験片の剥離シートを剥がし、上記無機ガラス及びシリコンのそれぞれに対して2kgのローラーを用いてラミネートし、常温常湿下にて20分間放置した後、150℃にて60分間加熱した。一方、上記実施例2で得られた粘着テープについては、一方の剥離シートを剥がし、無機ガラス上に粘着剤層を転写した後、他方の剥離シートを剥がし、2種類の被着体のそれぞれに対して2kgのローラーを用いてラミネートした。そして、常温常湿下にて20分間放置した後、180℃にて120分間加熱した。次いで、基材側からフュージョン社製のH・バルブランプを光源とする紫外線を照射(積算光量:500mj/cm)した後、試験片を剥がし(剥離速度:300mm/min,剥離距離:50mm,剥離角:180°)、上記無機ガラス及びシリコンの表面の糊残り(幅1mm以上)を光学顕微鏡(VHX−600、キーエンス社製、倍率200)にて確認した。無機ガラスにおける結果を表3に、シリコンにおける結果を表4に示す。また、ポリエチレンナフタレートフィルム及びポリイミドフィルムにおける結果を表5に示す。
【0094】
【表3】

【0095】
【表4】

【0096】
【表5】

【0097】
表3,4に示すように、実施例1及び2の粘着テープは、良好な初期粘着力を示し、加熱処理した場合であっても粘着力が低下せず、剥離除去の際には、容易に剥離可能な粘着力を示した。また、剥離した後の糊残りも発生しなかった。
これに対して、比較例1〜6の粘着テープは、加熱処理後に粘着力が低下したり、紫外線を照射しても容易に剥離できる程度まで粘着力が低下しなかった。
【0098】
なお、表1〜4に示す結果から、粘着テープの粘着剤層の面と接する無機ガラス面及びシリコン面との表面自由エネルギーの分散成分の差(Δysd)が、加熱処理後の粘着力及びUV照射後の粘着力に関係していると推測される。
【符号の説明】
【0099】
1 基材
2 粘着剤層
3 剥離層
10,20 粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の製造工程において該電子部品を一時的に固定又は保護するために使用される耐熱仮着用の粘着剤組成物であって、
アクリル系ポリマーと、エネルギー線重合性オリゴマーと、重合開始剤と、架橋剤とを含有し、
前記アクリル系ポリマーは、アクリロニトリルに由来する繰り返し単位を有する共重合体である粘着剤組成物。
【請求項2】
前記粘着剤組成物からなる10μmの粘着剤層を介して無機ガラス又はシリコン板と厚さ50μmの耐熱性基材とが積層されたときの無機ガラス面及びシリコン面に対する前記粘着剤層の180°引き剥がし粘着力(JIS Z0237準拠)が、前記無機ガラス面及びシリコン面に前記耐熱性基材を貼付して20分経過後では、0.5N/25mm以上であり、150℃にて60分間加熱した後では、0.5N/25mm以上であり、且つ、前記加熱後のエネルギー線照射による硬化後では、0.4N/25mm以下である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記粘着剤組成物からなる10μmの粘着剤層を介してポリエチレンナフタレートフィルム又はポリイミドフィルムと無機ガラスとが積層されたときのポリエチレンナフタレートフィルム面及びポリイミドフィルム面に対する前記粘着剤層の180°引き剥がし粘着力(JIS Z0237準拠)が、前記ポリエチレンナフタレートフィルム面及びポリイミドフィルム面に前記無機ガラスを貼付して20分経過後では、0.3N/25mm以上であり、180℃にて120分間加熱した後では、0.5N/25mm以上であり、且つ、前記加熱後のエネルギー線照射による硬化後では、0.3N/25mm以下である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
エネルギー線重合性モノマーを含有する請求項1から3のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層が前記耐熱性基材上に形成されている耐熱仮着用粘着テープ。
【請求項6】
前記耐熱性基材の加熱収縮率(JIS C2151準拠)が、MD方向及びTD方向において1.0%以下である請求項5に記載の耐熱仮着用粘着テープ。
【請求項7】
請求項1から4のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層を介して、少なくとも第1の剥離フィルムと第2の剥離フィルムとが積層された耐熱仮着用粘着テープ。
【請求項8】
前記電子部品における前記粘着剤層との仮着面が無機ガラス面及び/又はシリコン面であり、請求項5又は6に記載の耐熱仮着用粘着テープと、前記電子部品の前記無機ガラス面及び/又はシリコン面とが、前記粘着剤層を介して貼付されてなる被仮着体。
【請求項9】
前記粘着剤層の面と、当該粘着剤層の面と接する無機ガラス面及びシリコン面との表面自由エネルギーの分散成分の差(Δysd)が11mJ/m以上である請求項8に記載の被仮着体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−177084(P2012−177084A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147632(P2011−147632)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】