説明

耐磨耗弁座

【課題】弁座における共晶炭化物等の化合物相の連続的腐食を抑制し、弁座の耐食性・耐衝撃性・耐エロージョン性を向上させた弁を提供する。
【解決手段】弁座表面垂直方向への荷重負荷により圧着された状態で回転するツールを弁座面上で移動させて摩擦撹拌処理を行い、弁座表層部の溶着金属組織を等軸晶化することにより、デンドライト2の間隙に晶出する共晶炭化物等の化合物相5を100μm程度以下の粒状または塊状に分散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電プラント、火力発電プラントに使用され、弁座(摺動または接触部の部品)を備えた弁に係り、特に、弁座に使用される表面溶着金属の肉盛材について、金属組織の改質およびそれに伴う材料特性の向上技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、発電設備などで使用されている弁座を有する弁などの機器において、実運転中に弁座が弁の開閉に伴う衝撃に耐えうること、弁座が高流速,キャビテーション,液滴の衝撃に耐えうること及び、前記弁座が高温高圧環境下において優れた耐食性を有することが要求されている。
【0003】
このことから、従来では、耐食・耐摩耗性に優れたCo基合金、またはNi基合金、またはFe基合金を高温溶解し、弁箱及び弁体に肉盛するなどの方法を用いて硬材質な表面溶着金属の肉盛材の弁座が設けられた弁が作製されている。
【0004】
しかし、前記の表面溶着金属を高温溶解により肉盛した場合、一般的に用いられているCo基合金、またはNi基合金、またはFe基合金などの肉盛弁座の金属組織は、鋳造にて作製した金属材料の金属組織と同様な組織形態を呈し、高温溶解時の溶融状態から固体状態へ冷却する際にデンドライト(基地部)が晶出し、またそのデンドライト間隙には網目状の共晶炭化物またはホウ化物などの化合物相を形成する。
【0005】
Co基合金、またはNi基合金、またはFe基合金などの表面溶着金属は、デンドライト間隙に晶出した網目状共晶炭化物などの化合物相の耐食性,耐摩耗性が、デンドライト基地部に比べ低く、その特性上、表面溶着金属に接触する流体などによる化合物相の選択的腐食およびエロージョン等により生じる表面溶着金属の表面侵食の進行を止めることが不可能であり、頻繁な点検補修作業を行わなければならない。
【0006】
一方、前記網目状共晶炭化物等の化合物相の選択的腐食を抑止または抑制することを目的とし、例えば特許文献1に示されるように、共晶炭化物等の化合物相を塊状または粒状に分散させたCo基合金、またはNi基合金、またはFe基合金の耐食・耐摩耗合金が発明されている。更に、例えば特許文献2に示されるように、前記耐食・耐摩耗合金を用いて弁座を作製し、前記弁座が塊状または粒状の化合物相を有する金属組織を保持したまま、弁箱または弁体と接合する技術として拡散接合技術が発明されている。しかし、拡散接合法は弁座と機械的特性及び組成の異なるインサート材を弁箱または弁体と弁座の間に挿入し、熱処理によって接合する技術であることから、工数の増大とともに、弁箱または弁体と弁座間に形成された中間層の機械的特性の低下が懸念される。
【0007】
従来のように、Co基合金、またはNi基合金、またはFe基合金等の表面溶着金属を高温溶解し、弁箱及び弁体に肉盛溶接することにより、硬材質な表面溶着金属の弁座が設けられた弁を作製すると、弁座金属組織は必然的にデンドライト組織となり、またそのデンドライト間隙には共晶炭化物等の化合物相が網目状に形成されてしまう。前記共晶炭化物等の化合物相は、デンドライト間隙に連続分布することから、一度共晶炭化物等の化合物相の選択的腐食が生じてしまうと、その腐食は連続的に進行し、弁座の面荒れ及びそれに伴う耐漏洩性能の低下が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−273573号公報
【特許文献2】特開2000−095219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、前記の弁座における共晶炭化物等の化合物相の連続的腐食を抑制し、弁座の耐食性・耐衝撃性・耐エロージョン性を向上させた弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、弁体及び弁箱を備え、両者が摺動する面にそれぞれ弁座を有する弁において、それぞれの前記弁座がCo基,Ni基,Fe基から選ばれた少なくとも1種であり、弁座の表層が、等軸晶からなる基地部と粒径100μm以下の粒状または塊状の共晶化合物が分散した合金で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、Co基合金、またはNi基合金、またはFe基合金等の表面溶着金属を高温溶解し、弁箱及び弁体に肉盛溶接することにより作製された弁の、腐食及びエロージョン損傷の連続進行を抑制し、同時に弁類の摺動部における摩擦抵抗の増加や弁座面などの荒れによる耐漏洩性能の低下も抑制するとともに、耐衝撃性・保守性能に優れた弁類を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来の弁座および本発明の弁座の断面金属組織概念図。
【図2】摩擦攪拌工具の概念図。
【図3】平面状の弁座面に対する摩擦攪拌処理実施の概念図。
【図4】平面状の弁座面に摩擦攪拌処理を施した後の弁座表面の概念図。
【図5】円筒状の弁座面に対する摩擦攪拌処理実施の概念図。
【図6】円筒状の弁座面に摩擦攪拌処理を施した後の弁座表面の概念図。
【図7】仕切り弁本体の断面図。
【図8】仕切り弁弁体13および仕切り弁弁箱の弁座部12近傍の断面図。
【図9】逆止弁本体の断面図。
【図10】逆止弁弁体16および逆止弁弁箱の弁座部15近傍の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、Co基合金、またはNi基合金、またはFe基合金等の表面溶着金属を高温溶解し、弁箱及び弁体に肉盛溶接することにより作製された弁に対し、弁座表面垂直方向への荷重負荷により圧着された状態で回転するツールを弁座面上で移動させて摩擦撹拌処理を行い、弁座表層部の溶接金属組織を等軸晶化することによって、デンドライト間隙に晶出する共晶炭化物等の化合物相を100μm程度以下の粒状または塊状に分散させる。
【0014】
以下、本発明について、図面を参照しながら詳細を説明する。
【0015】
本発明は、図1(A)に示す機器の摺動部及び弁の弁座部等の耐食・耐摩耗材として使用されているCo基合金、またはNi基合金、またはFe基合金等の表面溶着金属を構成する鋳造組織の表層のみを摩擦攪拌処理によって改質し、図1(B)に示すように等軸晶化することにより、摺動部及び弁座の表層における鋳造組織のデンドライト (基地)間隙に連続的に分布していた網目状の共晶炭化物等の化合物相3を粒状もしくは塊状の共晶炭化物等の化合物相5とし、耐食・耐エロージョン性、更には弁座面荒れによる弁の耐漏洩性能の低下を抑制することが可能となる。
【0016】
弁座面の一部、もしくは弁座面全面の鋳造組織を改質した弁座を作成するため、弁座表面に対し垂直方向への荷重負荷により圧着された状態で回転するツールを前記弁座面上で移動させて、弁座表面に対し摩擦撹拌処理を施す。
【0017】
摩擦攪拌用の工具の概念図を図2に示す。摩擦攪拌用の工具7は、ショルダ8と前記ショルダの端面に突出するように設けられたピン状プローブ9を有する。ピン状プローブ9の長さは、摩擦攪拌処理を施す弁座部の板厚以下とするのが望ましい。なお、ピンが突出していない摩擦攪拌工具を使用してもよい。
【0018】
弁座としては、図3および図4に示されるような平面状、図5および図6に示されるような円筒状など種々の形状に適用が可能である。また、弁座材としては、Co基合金、またはNi基合金、またはFe基合金等の耐食・耐摩耗性合金のほか、アルミニウム,銅,チタン,マグネシウム,亜鉛,銀等およびこれらの合金にも適用可能である。
【0019】
前記弁座材を加工テーブルにクランプ固定した後、弁座材に対する摩擦攪拌処理を行う。摩擦攪拌用工具7で弁座の表面改質処理を行う際の模式図を図2および図4に示す。また、摩擦攪拌処理を施した後の弁座の模式図を図3および図5に示す。摩擦攪拌処理時には、弁座材板厚よりもピン長さの短い摩擦攪拌工具を用いることにより、弁座と弁箱もしくは弁体との接合部信頼性を低下させることなく、弁座表層のみの金属組織を改質することが可能である。また、図3および図5では、弁座面全面に摩擦攪拌処理を施した例を示したが、弁座の一部に対して摩擦攪拌処理を施しても良い。
【0020】
摩擦攪拌処理時の施工条件としては、摩擦攪拌工具にPCBN等の高硬度セラミックス系等のツールを用い、主軸回転数を200〜1200rpm、接合速度を20〜400mm/minとするのが望ましい。本条件にて前記Co基合金、またはNi基合金、またはFe基合金等の表面溶着金属に対し摩擦攪拌処理を施せば、摩擦攪拌処理後の表面は平滑となり、また、施工面にピンホールやボイド等の欠陥は生じない。
【0021】
Co基合金、またはNi基合金、またはFe基合金等の表面溶着金属を高温溶解し、弁箱及び弁体に肉盛溶接することにより作製された弁座の断面金属組織の模式図を図1(A)に示した。Co基合金、またはNi基合金、またはFe基合金等の表面溶着金属の表層のみに摩擦攪拌処理を施した場合、図1(B)に示した様に弁座と弁箱もしくは弁体との接合部近傍における弁座金属組織は、前記弁箱もしくは弁体に対し弁座を溶接肉盛施工した時のデンドライト組織のままとなり、以降弁座板厚方向かつ弁座表面方向に向かい、内層(デンドライト)と表層(等軸晶)の遷移領域もしくは加工組織6,等軸晶組織(基地部)4および粒状もしくは塊状の共晶炭化物等の化合物相5と板厚方向に金属組織の異なった傾斜組織を有する弁座が作製可能となる。
【0022】
上記の摩擦攪拌処理を施した後の弁座は、前記の通り弁座表層の金属組織が等軸晶となり、同時に基地間隙に晶出する共晶炭化物等の化合物相も粒状もしくは塊状に分散する。本摩擦攪拌処理を施すことにより、共晶炭化物等の化合物相の選択的かつ連続的な腐食損傷及びエロージョン損傷の連続進行を抑制し、同時に弁類の摺動部における摩擦抵抗の増加や弁座面などの荒れによる耐漏洩性能の低下も抑制することができると共に、耐衝撃性・保守性能に優れた弁類を提供することができる。
【0023】
上記の処理を行うための摩擦攪拌装置は、弁座材を攪拌するための攪拌手段、摩擦攪拌処理位置を移動させるための可動テーブル等及び前記弁座材を可動テーブル等に固定するためのクランプ等の固定器具等から構成される。また、攪拌手段を移動させ、摩擦攪拌処理を施す弁座材を非可動テーブル等に固定して摩擦攪拌処理を施工してもよい。さらに、攪拌された領域を熱処理する加熱手段や、攪拌処理後の表面を平滑とするため、摩擦攪拌により生成した表面の凹凸部を研削する切削手段を設けてもよい。
【実施例1】
【0024】
図7および図8は、Co基合金、またはNi基合金、またはFe基合金製の耐食・耐摩耗性合金を使用した弁座を有する仕切り弁への本発明の適用例を示す。弁座を有する弁の構成は、仕切り弁の弁箱14に、シリンダーなどの駆動装置によって上下方向に移動操作することができる弁棒15および前記弁棒15に接続された弁体13を備えている。前記弁体13の移動により接触し、液体または気体または気液混合の流体の流れを遮断し、前記流体の漏洩を防ぐためのCo基合金、またはNi基合金、またはFe基合金製の表面溶着金属によりなる弁座12が弁箱14および弁体13に、高温溶解により肉盛溶接されている。
【0025】
しかし、Co基合金、またはNi基合金、またはFe基合金等の表面溶着金属を高温溶解し、弁箱14及び弁体13に肉盛溶接することにより、硬材質な表面溶着金属の弁座が設けられた弁を作製すると、弁座金属組織は必然的にデンドライト組織となり、またそのデンドライト間隙には共晶炭化物等の化合物相が網目状に形成されてしまう。前記共晶炭化物等の化合物相は、デンドライト間隙に連続分布することから、一度共晶炭化物等の化合物相の選択的腐食が生じてしまうと、その腐食は連続的に進行し、弁座の面荒れ及びそれに伴う耐漏洩性能の低下が生じる。
【0026】
本発明は、上記課題を解決する手段として、前記Co基合金、またはNi基合金、またはFe基合金等の表面溶着金属を高温溶解し、弁箱14及び弁体13に肉盛溶接することにより作製された、硬材質な表面溶着金属の弁座表面に対し、弁座表面垂直方向への荷重負荷により圧着された状態で回転する摩擦攪拌工具を弁座面上で移動させて摩擦撹拌処理を行い、弁座表層部の溶着金属組織を等軸晶化することにより、デンドライト間隙に晶出する共晶炭化物等の化合物相を100μm程度以下の粒状または塊状に分散させて、摩擦攪拌処理を施した弁座部16を形成させた。
【0027】
摩擦攪拌処理時の施工条件としては、摩擦攪拌工具にPCBN等の高硬度セラミックス系等のツールを用い、主軸回転数を200〜1200rpm、接合速度を20〜400mm/minとした。また摩擦攪拌処理の施工深さは3mm(弁座の表面溶着金属の厚さ未満)とし、弁座12と弁体14もしくは弁箱13の接合部に、摩擦攪拌処理の影響がおよばぬよう配慮した。
【0028】
前記Co基合金、またはNi基合金、またはFe基合金等の摩擦攪拌処理を施した弁座部16の断面光学顕微鏡観察を実施したところ、弁座表層のCo基合金、またはNi基合金、またはFe基合金等の基地部は等軸晶となっており、また共晶炭化物などの化合物相は100μm以下の粒状または塊状に分散していた。また、摩擦攪拌処理深さは、弁座の表面溶着金属の厚さ以下としたことから、弁座12と弁体14もしくは弁箱13の接合部近傍における弁座の金属組織は、摩擦攪拌処理を実施前のデンドライト組織のままであり、弁座板厚方向かつ弁座表面方向に向かい、加工組織,等軸晶組織と板厚方向に金属組織の異なった傾斜組織を有する弁座が作製できていた。
【0029】
摩擦攪拌処理を施した弁座表層にはピンホールやボイド等の欠陥は認めらなかった。本発明の方法で作製した仕切り弁においては、溶存酸素による共晶炭化物等の化合物相の連続的な腐食の進行が抑制され、エロージョン損傷などによる基地部の脱落も抑制されるため、弁座の耐漏洩性能の低下が抑制できると共に、耐衝撃性・保守性能に優れた仕切り弁を提供することができる。
【0030】
本実施例1では、Co基合金、またはNi基合金、またはFe基合金製の耐食・耐摩耗性合金を使用した弁座を有する仕切り弁への本発明の適用例を示したが、本発明は仕切り弁に限らず、弁体及び弁箱を備え、両者が摺動する面にそれぞれ弁座を有する他の弁にも適用可能である。
【実施例2】
【0031】
図9および図10は、Co基合金、またはNi基合金、またはFe基合金製の耐食・耐摩耗性合金を使用した弁座を有する逆止弁への本発明の適用例を示す。本逆止弁についても実施例1に示した仕切り弁と同様に、Co基合金、またはNi基合金、またはFe基合金製の表面溶着金属によりなる弁座が弁箱19および弁体18に、高温溶解により肉盛溶接されている。
【0032】
逆止弁においても、Co基合金、またはNi基合金、またはFe基合金等の表面溶着金属を高温溶解し、弁箱19及び弁体18に肉盛溶接することにより、硬材質な表面溶着金属の弁座が設けられた弁を作製すると、弁座金属組織は必然的にデンドライト組織となり、またそのデンドライト間隙には共晶炭化物等の化合物相が網目状に形成されてしまう。前記共晶炭化物等の化合物相は、デンドライト間隙に連続分布することから、一度共晶炭化物等の化合物相の選択的腐食が生じてしまうと、その腐食は連続的に進行し、弁座の面荒れ及びそれに伴う耐漏洩性能の低下が生じる。
【0033】
実施例2においても実施例1と同様に、Co基合金、またはNi基合金、またはFe基合金等の表面溶着金属を高温溶解し、弁箱19及び弁体18に肉盛溶接することにより作製された、硬弁座表面に対し、弁座表面垂直方向への荷重負荷により圧着された状態で回転する摩擦攪拌工具を弁座面上で移動させて摩擦撹拌処理を行い、弁座表層部の溶着金属組織を等軸晶化することにより、デンドライト間隙に晶出する共晶炭化物等の化合物相を100μm程度以下の粒状または塊状に分散させて、摩擦攪拌処理を施した弁座部16を形成させた。
【0034】
摩擦攪拌処理時の施工条件としては、摩擦攪拌工具にPCBN等の高硬度セラミックス系等のツールを用い、主軸回転数を200〜1200rpm、接合速度を20〜400mm/minとした。また摩擦攪拌処理の施工深さは3mm(弁座の表面溶着金属の厚さ未満)とし、弁座と弁体18もしくは弁箱19の接合部に、摩擦攪拌処理の影響がおよばぬよう配慮した。
【0035】
前記Co基合金、またはNi基合金、またはFe基合金等の弁座の摩擦攪拌処理を施した弁座部16の断面光学顕微鏡観察を実施したところ、弁座表層のCo基合金、またはNi基合金、またはFe基合金等の基地部は等軸晶となっており、また共晶炭化物などの化合物相は100μm以下の粒状または塊状に分散していた。また、摩擦攪拌処理深さは、弁座の表面溶着金属の厚さ以下としたことから、弁座と弁体18もしくは弁箱19の接合部近傍における弁座の金属組織は、摩擦攪拌処理を実施前のデンドライト組織のままであり、弁座板厚方向かつ弁座表面方向に向かい、加工組織,等軸晶組織と板厚方向に金属組織の異なった傾斜組織を有する弁座が作製できていた。
【0036】
摩擦攪拌処理を施した弁座表層にはピンホールやボイド等の欠陥は認めらなかった。本発明の方法で作製した仕切り弁においては、溶存酸素による共晶炭化物等の化合物相の連続的な腐食の進行が抑制され、エロージョン損傷などによる基地部の脱落も抑制されるため、弁座の耐漏洩性能の低下が抑制できると共に、耐衝撃性・保守性能に優れた逆止弁を提供することができる。
【0037】
本実施例2では、Co基合金、またはNi基合金、またはFe基合金製の耐食・耐摩耗性合金を使用した弁座を有する逆止弁への本発明の適用例を示したが、本発明は逆止弁に限らず、弁体及び弁箱を備え、両者が摺動する面にそれぞれ弁座を有する他の弁にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は耐食性・耐摩耗性が要求される種々の材質に対して適用することが可能であり、特にCo基合金、またはNi基合金、またはFe基合金製の弁座及び種々摺動部における腐食及びエロージョン損傷の抑制に利用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 弁体もしくは弁箱の基材
2 デンドライト(基地部)
3 網目状共晶炭化物等の化合物相
4 等軸晶組織(基地部)
5 粒状もしくは塊状の共晶炭化物等の化合物相
6 内層(デンドライト)と表層(等軸晶)の遷移領域もしくは加工組織
7 摩擦攪拌工具
8 摩擦攪拌工具のショルダ部
9 摩擦攪拌工具のピン状のプローブ
10 弁座(表面溶着金属)
11 摩擦攪拌処理後の弁座表面
12 仕切り弁の弁箱の弁座部
13 仕切り弁の弁体
14 仕切り弁の弁箱
15 仕切り弁の弁棒
16 摩擦攪拌処理を施した弁座部
17 逆止弁の弁箱の弁座部
18 逆止弁の弁体
19 逆止弁の弁箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体及び弁箱を備え、両者が摺動する面にそれぞれ弁座を有する弁において、それぞれの前記弁座がCo基,Ni基,Fe基から選ばれた少なくとも1種であり、弁座の表層が、等軸晶からなる基地部と粒径100μm以下の粒状または塊状の共晶化合物が分散した合金で形成されていることを特徴とする弁。
【請求項2】
請求項1において、前記弁座は、弁座の板厚方向に異なる組織(内層:デンドライト組織、中層:加工組織、表層:等軸晶組織)を有する弁座が接合されていることを特徴とする弁。
【請求項3】
請求項1または2において、弁体と弁箱とに接合された弁座が表面硬化肉盛材により形成され、前記弁座表面に摩擦攪拌プロセスを行い、表面肉盛材を溶融もしくは半溶融させた後に冷却して形成されることを特徴とする弁。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の前記弁は、原子力発電プラントに使用されることを特徴とする弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−214682(P2011−214682A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84783(P2010−84783)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】