説明

耐食性に優れたステンレス鉄筋継手

【課題】 クロム系ステンレス鉄筋において優れた耐食性を有する継手及びその製造方法を提供する。
【解決の手段】ステンレス鉄筋母材を熱接合してなるステンレス鉄筋継手であって、質量%で、C:0.001%以上0.5%以下、Si:0.1%以上2.0%以下、Mn:2.0%以下、 P:0.04%以下、S:0.03%以下、N:0.001%以上0.1%以下、Cr:10.50%以上13.50%以下、酸化スケールと母地との界面における固溶Cr濃度:8.0〜13.5%、を含有し、残部鉄および不可避不純物を含有することを特徴とし、接合後に制御冷却することによって耐食性に優れたステンレス鉄筋継手を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物中での耐久性に優れたステンレス異形棒鋼(鉄筋)の継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、Cr量が10.50mass%以上のステンレス鉄筋の継手に関しては、重ね継手や機械式継手が用いられてきた。
【0003】
重ね継手は、簡便でありコストはかからないが、ステンレス細線などによる結束を必要とし、ある程度の重ね長を必要とする上に、継手自身の強度は期待できない。
【0004】
機械式継手は、ボルト及びナット等で締結するので継手自身の強度の信頼性は高いが、コストが高くなる。
【0005】
一方、普通鋼鉄筋(SD295、SD345、SD390等)の継手は熱を加える方式としてガス圧接、エンクローズド溶接、フラッシュバット溶接、アプセットバット溶接が用いられ、熱を加えない方式として重ね継手や機械式継手が用いられてきた。熱を加える方法はコストが低く、しかも信頼性も高いため広く用いられ、継手作製方法や検査方法が規格化されている。
【0006】
しかし、ステンレス鉄筋、特にクロム系の鉄筋に関しては、継手の強度及び耐食性に関して課題があり、熱を加える継手製造方法は実用化されていない。
【0007】
例えば、ガス圧接性にすぐれた普通鋼鉄筋が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、ステンレス鉄筋の継手は開示されていない。また、クロム系の鉄筋が開示されている(特許文献2〜5参照)。しかしながら、継手については開示されていない。
【特許文献1】特開2000−144320号公報
【特許文献2】特開2007-197786号公報
【特許文献3】特開2007−269559号公報
【特許文献4】特開2007−269565号公報
【特許文献5】特開2007−269566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
クロム系ステンレス鉄筋において達成困難であった優れた耐食性を有する継手を提供することを課題とする。発明者等は、後述するように、コンクリート中のpH12以上の高アルカリ性環境では、継手部分のCr欠乏層においてもある程度の固溶Cr濃度を有すれば、不動態皮膜が形成・維持されて高い耐食性を確保できることを見出して本発明に至った。そして継手自身の耐食性が保たれしかも経済性にも優れている熱接合継手を得た。本発明は、その知見に立脚するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)ステンレス鉄筋母材を熱接合してなるステンレス鉄筋継手であって、質量%で、
C:0.001%以上0.5%以下、Si:0.1%以上2.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、N:0.001%以上0.1%以下、Cr:10.50%以上13.50%以下、酸化スケールと母地との界面におけるCr濃度:8.0〜13.5%、を含有し、残部鉄および不可避不純物を含有することを特徴とする耐食性に優れたステンレス鉄筋継手。
(2)質量%で、更にNi:0.6%以下、を含有することを特徴とする(1)に記載の耐食性に優れたステンレス鉄筋継手。
(3)質量%で、更に、Al:0.05%以下、V:0.1%以下、B:0.01%以下、Bi:0.5%以下、Sn:0.5%以下、Nb:0.5%以下、Ti: 0.5%以下、 Mg:0.1%以下、Cu:0.5%以下、の一種または二種以上を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の耐食性に優れたステンレス鉄筋継手。
(4)熱接合がガス圧接であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載の耐食性に優れたステンレス鉄筋継手。
【0010】
本発明における、熱接合とは、鋼材を加熱して接合する接合方法を意味し、熱接合の方法については問わず、継手部が(1)〜(3)のいずれかを具備するものは、本発明の範囲に属するものであるが、この熱接合がガス圧接であることが汎用性および経済性の観点から好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐食性にすぐれたステンレス鉄筋継手を得ることができ、コンクリート構造物の耐久性を格段に向上させることができるなど、産業上有用な著しい効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。まず、本発明において、ステンレス鉄筋継手の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。
【0013】
C:0.001mass%以上0.5mass%以下
Cは、オーステナイト相および炭化物の生成元素である。オーステナイト相は、溶接後においてマルテンサイト組織を生じて強度を向上させ、また微細炭化物も強度の向上に寄与する。しかしながら、 0.5mass%超では硬くなり過ぎて靱性が劣化する。従って、C量は 0.5 mass%以下の範囲に限定した。溶接部の靭性を確保するためには、C量は0.15 mass%以下の範囲にすることが望ましい。
【0014】
また、0.001mass%未満ではオーステナイト相や微細炭化物の生成量が少なすぎて強度が不足するため、0.001mass%以上含有させる。
【0015】
Si:0.1mass%以上2.0mass%以下
Siは、脱酸剤として有用な元素であるが、含有量が 2.0mass%以上になると硬くなり機械的性質が劣化する。従って、Si量は 2.0mass%以下とした。
【0016】
また、0.1mass%未満では脱酸効果が得られないため0.1mass%以上含有させる。
Mn:2.0mass%以下
Mnも、Cと同様、オーステナイト相生成元素であるが、オーステナイトMn含有量が 2.0mass%以上になると鋼中に残存する介在物が多くなり耐食性が劣化する。従って、Mn量は2.0mass%以下の範囲とした。
【0017】
また、含有量が0.1mass%より少ないとオーステナイト相の生成が不十分となるため、熱間加工後のマルテンサイト組織が少なくなって、強度不足となる。したがって0.1mass%以上含有することが望ましい。
【0018】
P:0.04mass%以下
Pは、靱性等の機械的性質を劣化させるだけでなく、耐食性に対しても有害な元素であり、特にP含有量が0.04mass%超になるとその悪影響が顕著になるので、P量は0.04mass%以下とした。
【0019】
S:0.03mass%以下
Sは、Mnと結合してMnSを形成し、初期発銹の起点となる。またSは、結晶粒界に偏析して粒界脆化を促進する有害元素でもあるので、極力低減することが好ましい。特にS含有量が0.03mass%を超えるとその悪影響が顕著になるので、S量は0.03mass%以下とした。
【0020】
N: 0.001mass%以上0.1mass%以下
Nは、オーステナイト相および窒化物の生成元素であり強度を高めるが、耐食性、靭性を劣化させるため上限を0.1mass%とした。また、0.001mass%未満ではオーステナイト相や窒化物の生成が少なく強度向上の効果が得られないため0.001mass%以上含有させる。
【0021】
Cr:10.50mass%以上13.50mass%以下
Crは、本発明における耐食性発現成分として重要な元素である。本発明で対象にする鉄筋継手は、一般的に大気中でさびないCr量として、少なくとも10.50mass%が必要である。これは、10.50mass%未満になると表面において強固な不動態皮膜が生成され難くなるためである。一方、Cr濃度が13.50mass%超になると、耐食性は良くなるものの、フェライト相の生成量が多くなって溶接部の靱性不足となることやコストアップに繋がる。従って、固溶Cr濃度は10.50mass%以上13.50mass%以下とした。
【0022】
界面における固溶Cr濃度:8.0mass%以上13.5mass%以下
本発明で対象にする鉄筋継手として、pH12以上のコンクリート中において塩化物イオンに対する耐食性を確保するためには、少なくともスケールと母地の界面において固溶Cr濃度8.0mass%以上のCr濃度が必要である。これは、後述するように、8.0mass%未満になるとコンクリート中での耐食性が劣化するためである。一方、界面におけるCr濃度は、母地のCr濃度を超えることはない。したがって界面における固溶Cr濃度を8.0mass%以上13.5mass%以下とした。
【0023】
Ni: 0.6mass%以下、
Niは、過剰に含有するとマルテンサイト組織が析出し加工性を劣化させるため、上限を0.6mass%とした。また、靱性を高めるためには0.1mass%以上含有することが望ましい。
【0024】
Al:0.05mass%以下
Alは、脱酸剤として有用な元素であるが、含有量が 0.05mass%超になると靭性が劣化する。従って、0.05mass%以下とすることが望ましい。
【0025】
また、0.001mass%未満では脱酸効果が得られ難いため下限を0.001mass%とすることが望ましい。
V:0.1mass%以下
Vは、耐食性を向上させる有用な元素であるが、含有量が 0.1mass%超になると靭性が劣化する。従って、0.1mass%以下とすることが望ましい。
【0026】
また、0.03mass%未満では耐食性向上効果が得られ難いため下限を0.03mass%とすることが望ましい。
【0027】
B:0.01mass%以下
Bは、熱間加工性を向上させる有用な元素であるが、含有量が 0.01mass%超になると靭性が劣化する。従って、0.01mass%以下とすることが望ましい。
【0028】
また、0.0003mass%未満では熱間加工性を向上効果が得られ難いため下限を0.0003mass%とすることが望ましい。
【0029】
Bi:0.5mass%以下
Biは、耐食性及び切削加工性を向上させる有用な元素であるが、含有量が 0.5mass%超になると靭性が劣化する。従って、0.5 mass%以下とすることが望ましい。
また、0.005mass%未満では耐食性向上効果及び切削加工性向上効果が得られ難いため下限を0.005mass%とすることが望ましい。
【0030】
Sn:0.5mass%以下
Snは、耐食性を向上させる有用な元素であるが、含有量が 0.5mass%超になると靭性が劣化する。従って、0.5mass%以下とすることが望ましい。
【0031】
また、0.01mass%未満では耐食性向上効果が得られ難いため下限を0.01mass%とすることが望ましい。
【0032】
Nb:0.5mass%以下
Nbは、耐食性を向上させる有用な元素であるが、含有量が 0.5mass%超になると靭性が劣化する。従って、0.5mass%以下とすることが望ましい。
また、0.003mass%未満では耐食性向上効果が得られ難いため下限を0.003mass%とすることが望ましい。
【0033】
Ti:0.5mass%以下
Tiは、耐食性を向上させる有用な元素であるが、含有量が 0.5mass%超になると靭性が劣化する。従って、0.5mass%以下とすることが望ましい。
【0034】
また、0.003mass%未満では耐食性向上効果が得られ難いため下限を0.003mass%とすることが望ましい。
【0035】
Mg:0.1mass%以下
Mgは、耐食性を向上させる有用な元素であるが、含有量が 0.1mass%超になると靭性が劣化する。従って、0.1mass%以下とすることが望ましい。
【0036】
また、0.0002mass%未満では耐食性向上効果が得られ難いため下限を0.0002mass%とすることが望ましい。
【0037】
Cu:0.5mass%以下
Cuは、耐食性を向上させる有用な元素であるが、含有量が 0.5mass%超になると靭性が劣化する。従って、0.5mass%以下とした。
【0038】
また、0.03mass%未満では耐食性向上効果が得られ難いため下限を0.03mass%とすることが望ましい。
【0039】
なお、上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
【0040】
次に、鉄筋母材を熱接合してなり、酸化スケールとの境界部分における金属母地の固溶Cr濃度が8.0mass%以上であることに限定した理由を詳しく説明する。
接合部の耐食性を高く保持するために、酸化スケールと母地界面に存在するCr欠乏層におけるCr濃度の低下を抑制する必要がある。継手部のCr濃度を8.0mass%以上とすることができれば、コンクリート中のようにpH12以上のアルカリ性の高い環境は不動態皮膜が形成・維持されるので、高い耐食性を確保することができる。
図1はpH12.5の水溶液環境(飽和Ca(OH)溶液中において種々のCr濃度の鋼材について一定電位をかけた状態における孔食が発生する最も低いCl-濃度(孔食発生限界Cl-濃度)を測定したものである。Cr量が8.0mass%以上では、普通鉄筋(孔食発生限界Cl-濃度0.02%)の約25倍以上の孔食発生限界Cl-濃度であることが分る。
【0041】
図2は、母材Cr濃度が10.50mass%(他の成分組成はC:0.010mass%、 Si:2.00mass%、Mn:0.33mass%、P:0.022mass%、S:0.006mass%、N:0.017mass%)のサンプルに基づいて、熱接合後の冷却速度と酸化スケール皮膜と母地の固溶Cr濃度との関係を示す図である。50K/s以下の冷却速度で制御冷却することにより、Cr濃度8.0mass%以上を確保することができる。
【0042】
Cr濃度は、オージェ電子分光法により測定し、酸化スケール皮膜と母地の境界部分における、最も低いCr濃度とした。図3は、オージェ電子分光法により鉄筋継手における酸化スケール表面から母地への深さ方向のFe、O、Cr等の元素濃度プロファイルの例である。酸化スケール皮膜と母地の境界部分の定義としては、酸化スケールにおける平均酸素濃度の1/2となる部位と母材と同じの酸素濃度となる部位の間の領域とした。
熱接合後50K/s以下の冷却速度(1000℃〜500℃の平均冷却速度)となるように制御冷却し接合部において高温状態となる時間を長く保つことにより、母材のCr濃度が10.50mass%であっても、接合部におけるCrの拡散を促し酸化スケールと母地界面における最低Cr濃度を8.0mass%以上に確保することができる。制御冷却の方法としては、接合後に保温カバーで接合部を覆うことによって熱の放散を防ぎ冷却速度を低くすることができる。
また、ガス圧接やアプセットバット溶接による拡散接合では温度条件として1000℃以下で接合することにより、Cr欠乏層の生成を抑制できるので、熱接合後100K/s以下の冷却速度で制御冷却しても、母材のCr濃度が10.50mass%の場合スケールと母地界面における最低Cr濃度を8.0mass%以上に確保することができる。
本発明において不活性ガス雰囲気中で溶接材料を使って接合するエンクローズ溶接を行う場合には、製造条件の例としては、鉄筋径呼び名D25で、溶接材料YM309、電流260A、電圧25V、溶接時間45秒、とする。また、電気のジュール熱を利用するアプセットバット溶接で接合する場合には、製造条件の例としてはD13で加圧0.3MPa、電流240A、電圧20V、溶接時間5秒とする。これらの条件に加え50K/s以下の冷却速度で制御冷却することにより、継手の固溶Cr濃度を8.0mass%以上に確保することができる。
【0043】
また、本発明のガス圧接継手製造に際しては、製造条件の例としては加熱用アセチレンガス圧4〜8kPa、 酸素圧50kPa、圧接用ポンプ圧10〜50MPa、加熱時間を10〜30秒とし、さらに接合後100K/s以下の冷却速度で制御冷却することにより、継手の固溶Cr濃度を8.0mass%以上に確保することができる。
【0044】
さらに、ショットブラスト処理や酸洗により継手の酸化スケールを除去してもよい。酸洗により表面から酸化スケール及びCr欠乏層を除去すると同時に継手表面の不動態皮膜を強固にすることよって耐食性をさらに向上させることができる。酸洗処理としては、例えば、硝酸-弗酸の混酸溶液中(温度は30℃〜50℃が望ましい)に数分間浸漬し熱接合によって生じた酸化物膜を除去する。その後、不動態皮膜を強化するため硝酸中に浸漬する。場合によっては中和処理のためさらに炭酸水素ナトリウム水溶液等の弱アルカリ性溶液中に浸漬してもよい。
【0045】
また、継手の防食のために塗装を施してもよい。塗装は、例えば、ステンレス鉄筋継手より母材にかかる、熱接合によって酸化物の生成した範囲(50mm〜100mm程度)に耐アルカリ性を有するエポキシ樹脂やアクリル樹脂、ゴム系塗料を塗装する。
【実施例】
【0046】
表1に本発明の鉄筋継手の化学成分と耐食性の評価結果を示す。
【表1】

【0047】
エンクローズ溶接継手については、Arガス雰囲気中で、溶接材料YM309、電流260A、電圧25V、溶接時間30秒〜90秒の範囲で溶接し、50K/s以下の冷却速度で制御冷却した。
アプセットバット溶接継手については、加圧0.2〜0.4MPa、電流240A、電圧20V、溶接時間5秒〜20秒の範囲で溶接し、50K/s以下の冷却速度で制御冷却した。
【0048】
ガス圧接継手については、比較例のNo.34以外は加熱温度を1000℃以下とし冷却速度は100K/s以下で制御冷却した。継手部の固溶Cr濃度は、最もCrが欠乏する酸化スケール皮膜と母地の境界部分3個所においてオージェ電子分光法で測定し、そのなかで最も低いCr濃度を界面における固溶Cr濃度とした。
【0049】
装置名:走査型FEオージェ電子分光装置(SAM670XI型)
測定条件:ビーム電流10nA、ビーム電圧10keV
ビーム径25〜45nm、スパッタ速度50nm/min
表面性状は、処理なし(酸化スケールを除去しない)、酸洗処理(硝酸と弗酸の混酸及び硝酸中に浸漬し脱スケールを施す処理)、及びブラスト処理(ショットを吹き付けて酸化スケールを除去する処理)とした。耐食性は、40℃コンクリート環境の模擬水溶液(飽和Ca(OH)溶液に1%のCl-濃度までNaClを加えたもの)中での孔食電位(500μA/cmとなる電位(飽和KCl銀塩化銀参照電極(SSE)基準))を測定した。孔食電位が高いほど耐食性は高くなるが、継手に酸化スケールが残存している場合でもその孔食電位は普通鉄筋ガス圧接継手の孔食電位(代表例:−0.13V vs. SSE)よりも200mV以上高く、普通鉄筋よりも耐食性が高い。
【0050】
次に、比較例について説明する。
No.32 Cr量が請求範囲を下回っており、耐食性が劣化した。
No.33 Cr量が請求範囲を超えており、継手の靭性が不足した。
No.34 ガス圧接後300K/sで冷却しており、継手の酸化スケール/母地界面におけるCr濃度が少なくなった。
No.35 標準的なガス圧接により作製した普通鉄筋継手の特性を示す。
【0051】
以上のように比較例の鉄筋継手は耐食性が低くなっており、本発明の鉄筋継手は耐食性に優れていることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上の実施例から明らかなように、本発明により耐食性に優れたクロム系ステンレス鉄筋継手の提供が可能であり、コンクリート構造物の建造上、鉄筋の継手が容易に作製できる点で極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】鋼中Cr濃度と、pH12.5の飽和Ca(OH)溶液中において一定電位をかけた状態における孔食が発生する最も低いCl-濃度(孔食発生限界Cl-濃度)の関係を示す図である。
【図2】母材Cr濃度が10.50mass%(他の成分組成はC:0.010mass%、 Si:2.00mass%、Mn:0.33mass%、P:0.022mass%、S:0.006mass%、N:0.017mass%)のサンプルについて、熱接合後の平均冷却速度と、母材と酸化スケール界面におけるCr濃度との関係を示す図である。
【図3】図3は、オージェ電子分光法により鉄筋継手における酸化スケール表面から母地への深さ方向のFe、O、Cr等の元素濃度プロファイルの例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鉄筋母材を熱接合してなるステンレス鉄筋継手であって、
質量%で、
C :0.001%以上0.5%以下、
Si:0.1%以上2.0%以下、
Mn:2.0%以下、
P:0.04%以下、
S:0.03%以下、
N:0.001%以上0.1%以下、
Cr:10.50%以上13.50%以下、
酸化スケールと母地との界面における固溶Cr濃度:8.0〜13.5%、を含有し、残部は鉄および不可避不純物からなることを特徴とする耐食性に優れたステンレス鉄筋継手。
【請求項2】
質量%で、更に、
Ni:0.6%以下、を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐食性に優れたステンレス鉄筋継手。
【請求項3】
質量%で、更に、
Al:0.05%以下、
V:0.1%以下、
B:0.01%以下、
Bi:0.5%以下、
Sn:0.5%以下、
Nb:0.5%以下、
Ti: 0.5%以下、
Mg:0.1%以下、
Cu:0.5%以下、の一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐食性に優れたステンレス鉄筋継手。
【請求項4】
熱接合がガス圧接であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐食性に優れたステンレス鉄筋継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−90456(P2010−90456A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263295(P2008−263295)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(503378420)新日鐵住金ステンレス株式会社 (247)
【Fターム(参考)】