説明

肛門直腸障害の処置のための組成物および方法

【課題】肛門直腸障害によって引き起こされる他の肛門直腸状態を含む)の他の非外科的処置を提供すること。
【解決手段】肛門直腸障害の処置のため、およびそれに伴う疼痛を制御するための組成物であって、該組成物が、以下:ホスホジエステラーゼII型インヒビター、ホスホジエステラーゼIV型インヒビター、ホスホジエステラーゼV型インヒビター、非特異的ホスホジエステラーゼインヒビター、スーパーオキシドスカベンジャー、β−アドレナリン作動性アゴニスト、cAMP依存性プロテインキナーゼアクチベーター、α1−アドレナリン作動性アンタゴニスト、エストロゲン、ATP感受性K+チャネルアクチベーターおよび平滑筋弛緩剤、からなる群より選択される第2の薬剤を、薬学的に受容可能なキャリアと混合して、NOドナーを含む、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、1998年12月14日に出願された、米国仮出願60/112,325;1999年6月17日に出願された、同60/139,916、および1999年9月21日に出願された、同60/155,318からの優先権を主張する。各々の開示は、本明細書中でその全体において参考として援用される。
【0002】
(連邦政府の後援による研究および開発に基づいてなされた発明に対する権利に関する陳述)
適用されない。
【0003】
(発明の背景)
本発明は、内部肛門括約筋を弛緩させる薬剤または薬剤の組み合わせを、このような処置を必要とする被験体の適切な肛門領域(例えば、内部肛門管)に投与することによる、肛門直腸障害(例えば、裂肛、肛門潰瘍、痔核疾患および挙筋痙攣)を処置するための組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、肛門括約筋における環状ヌクレオチドにおける増加を誘導し、または環状ヌクレオチドの作用を模倣し、あるいは罹患した肛門括約筋組織における細胞内カルシウム濃度を減少し、それによって、このような障害に罹患した患者における肛門括約筋の緊張過度および/または痙攣を減少させる薬剤を用いた、肛門直腸障害を処置するための組成物および方法を記載する。
【背景技術】
【0004】
一般に、裂肛(fissure−in−ano)、肛門潰瘍、痔核疾患および挙筋痙攣(一過性直腸神経痛)は被験体(あらゆる年齢、人種および性別のヒトを含む)に罹患する、肛門直腸領域の比較的一般的な良性の状態である。しかし、これらの状態は、処置するのに、問題があり、かつ不便であり得、そして耐えるのに困難であり得る。裂肛または肛門潰瘍は、遠位肛門管の粘膜または内層組織の裂け目または潰瘍である。裂肛または肛門潰瘍は、別の全身性疾患または局所性疾患に伴い得るが、より頻繁に、孤立した所見として存在する。代表的な特発性亀裂または潰瘍は、肛門粘膜に制限され、そして通常、歯状線から遠位の背部の中線に位置する。裂肛または肛門潰瘍を有する個体は、頻繁に、肛門痛および肛門出血を経験し、この肛門痛は、腸運動(排便)の間および腸運動(排便)後に、より著しい。
【0005】
痔核は、肛門粘膜直下に位置する管領域に限定される。徴候的な痔核疾患は、痔核組織の出血、痔核組織の血栓症および/または痔核組織の脱出症によって明示される。一般に、内部の痔核組織は、排便中に肛門管へ突出し、そして出血および疼痛を生じる。その組織が拡張するにつれて、さらなる出血、疼痛、脱出症および血栓症が確実になり得る。痔核の血栓症は、出血および疼痛のさらに別の原因である。
【0006】
挙筋痙攣は、男性よりも頻繁に女性に罹患する状態である。この症候群は、肛門括約筋複合体の一部の挙筋肛門筋の痙攣によって特徴づけられる。挙筋痙攣に苦しむ患者は、痛烈で一時的な直腸の疼痛を経験し得る。身体検査は、恥骨直腸筋の痙攣を明らかにし得、そして疼痛は、この筋肉への直接的な圧迫によって再現され得る。出血は、通常、この状態には伴わない。
【0007】
括約筋は、凹窩器官の開口部を制御する、平滑筋の環状の群である。胃腸(GI)管中に存在する括約筋は、体のこの系を通じた物質の通過を制御する。収縮する場合、括約筋は、凹窩器官(例えば、胃、腸、肛門など)へと導く開口部を閉じる。括約筋が開くためには、筋肉は弛緩しなければならない。肛門を閉じる括約筋(肛門括約筋)は、2つの括約筋の群からなる。外部の肛門括約筋は、肛門の縁を囲む外皮に付着した、横紋筋線維の薄い平らな平面である。内部の肛門括約筋(IAS)は、直腸の低い方の末端を囲む、平滑筋の環であり、そして不随意平滑筋線維の集合によって形成される。炎症は、局所的に括約筋の痙攣および疼痛を引き起こし得る。
【0008】
肛門括約筋痙攣は、内部肛門括約筋の筋肉が、異常な緊張下にある状態である。括約筋痙攣に伴う内部肛門括約筋の強い収縮は、しばしば、特に排便後の肛門の縁上の直腸亀裂として公知の、有痛性の線状の潰瘍または亀裂様びらんを生じさせる。肛門括約筋痙攣はまた、直腸手術または血栓が形成された痔核の後の疼痛の原因と考えられる。直腸亀裂の現在の処置は、拡張症を含む括約筋の痙攣の軽減(麻酔下)、または括約筋の一部(側方内部の括約筋切開術)の切断に指向される。熱、冷却、ウイッチヘーゼル、局所麻酔、局所ステロイド、便軟化剤、および床上安静の適用もまた、直腸疼痛の処置のために指示されている。しかし、これらのアプローチのいずれもが、括約筋の痙攣そのものを顕著には緩和しない。
【0009】
例えば、裂肛の処置は、150年より長きにわたって、顕著に変化していない。代表的には、膨脹性緩下薬および/または坐浴を含む、非外科的治療が用いられる。約60%の急性裂肛が、この処置レジメンのもとで、3週間以内に治癒される。治癒されない急性裂肛は、慢性裂肛または慢性肛門潰瘍となる。裂肛の主要な原因と考えられる内部の肛門括約筋の緊張過度は、外科的括約筋切開術を通して軽減され得る。The Standards Task Force of the American Society of Colon and Rectal Surgeonsは、「進行した弁または手動での拡張を用いた、皮下または開いた側方内部の括約筋切開術、背部の内部括約筋切開術」による、慢性裂肛の管理を推薦する。治癒は、括約筋切開術後に、95%の症例において生じる。成功した括約筋切開術(または、肛門拡張)は、肛門内の圧力における顕著な減少に関連する。しかし、多くの患者が、外科的処置の後に、失禁を経験する。
【0010】
括約筋の緊張の公知のモデレーター(moderator)は、一酸化窒素(NO)である。一酸化窒素は、インビトロで、内部括約筋の平滑筋の細片の安静時緊張(resting tension)における濃度依存性減少を引き起こすことが示され(非特許文献1)、そしてNOドナー(例えば、ニトログリセリン、イソソルビドジニトレート、イソソルビドモノニトレート)は、ヒトにおける肛門の圧力を減少する。NOはまた、下部食道括約筋(非特許文献2;非特許文献3)、幽門括約筋(非特許文献4)、オッディ括約筋(非特許文献5)、および回結腸括約筋(非特許文献6)を含む、胃腸管における他の括約筋の適応的弛緩を媒介することが示された。NOまたはNO様物質は、胃腸適応的弛緩の一般的な現象の重要な制御メカニズムとして役立つと考えられる。
【0011】
特許文献1および特許文献2は、肛門直腸状態の処置のためのNOドナーの使用を記載する。しかし、頭痛の発生のような不都合な副作用の発生が、特に、より高い用量での独立型治療において、NOドナーの使用を限定する。
【特許文献1】米国特許第5,504,117号明細書
【特許文献2】米国特許第5,693,676号明細書
【非特許文献1】Rattanら、Am.J.Physiol.1992年、第262巻:p.G107−112
【非特許文献2】Conklinら、Gastroenterology 1993年、第104巻:p.1439−1444
【非特許文献3】Tottrupら、Br.J.Pharmacol.1991年、第104巻:p.113−116
【非特許文献4】Bayguinovら、Am.J.Physiol.1993年、第264巻:p.G975−983
【非特許文献5】Mourelleら、Gastroenterology 1993年、第105巻:p.1299−1305
【非特許文献6】Wardら、Br.J.Pharmacol.1992年、第105巻:p.776−782
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
肛門直腸障害(例えば、裂肛、ならびに肛門括約筋の痙攣および/または緊張過度(急性痔核疾患および一過性直腸神経痛を含む)によって引き起こされる他の肛門直腸状態を含む)の他の非外科的処置についての有意な必要性が明白に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、以下を提供する:
(項目1) 肛門直腸障害の処置のため、およびそれに伴う疼痛を制御するための組成物であって、該組成物が、以下:
ホスホジエステラーゼII型インヒビター、ホスホジエステラーゼIV型インヒビター、ホスホジエステラーゼV型インヒビター、非特異的ホスホジエステラーゼインヒビター、スーパーオキシドスカベンジャー、β−アドレナリン作動性アゴニスト、cAMP依存性プロテインキナーゼアクチベーター、α1−アドレナリン作動性アンタゴニスト、エストロゲン、ATP感受性K+チャネルアクチベーターおよび平滑筋弛緩剤、
からなる群より選択される第2の薬剤を、薬学的に受容可能なキャリアと混合して、NOドナーを含む、組成物。
(項目2) 上記NOドナーが、以下:
ニトログリセリン、L−アルギニン、SNAP、GSNOおよびSIN−1、
からなる群より選択され、そして上記第2の薬剤が、以下:
スーパーオキシドジスムターゼおよび化学的スーパーオキシドジスムターゼ模倣物、
からなる群より選択される、スーパーオキシドスカベンジャーである、項目1に記載の組成物。
(項目3) 上記キャリアが、局所適用のために処方される、項目1に記載の組成物。
(項目4) 上記第2の薬剤が、以下:
ホスホジエステラーゼII型インヒビター、ホスホジエステラーゼIV型インヒビター、ホスホジエステラーゼV型インヒビターおよび非特異的ホスホジエステラーゼインヒビター、
からなる群より選択される、項目1に記載の組成物。
(項目5) 上記第2の薬剤が、β−アドレナリン作動性アゴニストからなる群より選択される、項目1に記載の組成物。
(項目6) 上記β−アドレナリン作動性アゴニストが、以下:
β2−アドレナリン作動性アゴニストおよびβ3−アドレナリン作動性アゴニスト、
からなる群より選択される、項目5に記載の組成物。
(項目7) 上記第2の薬剤が、ATP感受性K+チャネルアクチベーターからなる群より選択される、項目1に記載の組成物。
(項目8) 肛門直腸障害の処置のため、およびそれに伴う疼痛を制御するための組成物であって、該組成物が、ホスホジエステラーゼインヒビターおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物。
(項目9) 上記ホスホジエステラーゼインヒビターが、以下:
ホスホジエステラーゼII型インヒビター、ホスホジエステラーゼIV型インヒビター、ホスホジエステラーゼV型インヒビターおよび非特異的ホスホジエステラーゼインヒビター、
からなる群より選択される、項目8に記載の組成物。
(項目10) 項目9に記載の組成物であって、該組成物が、以下:
β−アドレナリン作動性アゴニスト、cAMP依存性プロテインキナーゼアクチベーター、α1−アドレナリン作動性アンタゴニスト、L型Ca2+チャネルブロッカー、エストロゲン、ATP感受性K+チャネルアクチベーターおよび平滑筋弛緩剤、
からなる群より選択される薬剤をさらに含む、組成物。
(項目11) 肛門直腸障害の処置のため、およびそれに伴う疼痛を制御するための組成物であって、該組成物が、β−アドレナリン作動性アゴニストおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物。
(項目12) 上記β−アドレナリン作動性アゴニストが、以下:
β2レセプター、β3レセプターおよびそれらの組み合わせ、
からなる群より選択されるレセプターアイソフォームに特異的である、項目11に記載の組成物。
(項目13) 上記β−アドレナリン作動性アゴニストが、イソプロテレノールである、項目11に記載の組成物。
(項目14) 項目11に記載の組成物であって、該組成物が、以下:cAMP加水分解性PDEインヒビター、非特異的PDEインヒビター、α1−アドレナリン作動性アンタゴニスト、エストロゲン、L型Ca2+チャネルブロッカー、ATP感受性K+チャネルアクチベーターおよび平滑筋弛緩剤、
からなる群より選択される薬剤をさらに含む、組成物。
(項目15) 肛門直腸障害の処置のため、およびそれに伴う疼痛を制御するための組成物であって、該組成物が、以下:
ATP感受性K+チャネルアクチベーターおよび薬学的に受容可能なキャリア、を含む、組成物。
(項目16) 項目15に記載の組成物であって、該組成物が、以下:cAMP依存性プロテインキナーゼアクチベーター、エストロゲン、α1−アドレナリン作動性アンタゴニスト、L型Ca2+チャネルブロッカーおよび平滑筋弛緩剤、
からなる群より選択される薬剤をさらに含む、組成物。
(項目17) 肛門直腸障害の処置のため、およびそれに伴う疼痛を制御するための組成物であって、該組成物が、以下:
α1−アドレナリン作動性アンタゴニストおよび薬学的に受容可能なキャリア、を含む、組成物。
(項目18) 上記組成物が、以下:
cAMP加水分解性ホスホジエステラーゼインヒビター、エストロゲンおよび平滑筋弛緩剤、
からなる群より選択される薬剤をさらに含む、項目17に記載の組成物。
(項目19) 上記cAMP加水分解性ホスホジエステラーゼインヒビターが、ホスホジエステラーゼIV型インヒビターである、項目17に記載の組成物。
(項目20) 肛門直腸障害の処置のため、およびそれに伴う疼痛を制御するための組成物であって、該組成物が、以下:
cAMP依存性プロテインキナーゼアクチベーターおよびL型Ca2+チャネルブロッカー、
を含む、組成物。
(項目21) 肛門直腸障害の処置のため、およびそれに伴う疼痛を制御するための組成物であって、該組成物が、以下:
cGMP依存性プロテインキナーゼアクチベーターおよび薬学的に受容可能なキャリア、
を含む、組成物。
(項目22) 肛門直腸障害の処置のため、およびそれに伴う疼痛を制御するための組成物であって、該組成物が、必要に応じて、平滑筋弛緩剤と混合して、非特異的環状ヌクレオチド依存性プロテインキナーゼアクチベーターを含む、組成物。
(項目23) 肛門直腸障害の処置のため、およびそれに伴う疼痛を制御するための方法であって、該方法が、治療的に有効な量のNOドナー、ならびに以下:
ホスホジエステラーゼII型インヒビター、ホスホジエステラーゼIV型インヒビター、ホスホジエステラーゼV型インヒビター、非特異的ホスホジエステラーゼインヒビター、スーパーオキシドスカベンジャー、β−アドレナリン作動性アゴニスト、cAMP依存性プロテインキナーゼアクチベーター、α1−アドレナリン作動性アンタゴニスト、エストロゲン、L型Ca2+チャネルブロッカー、ATP感受性K+チャネルアクチベーターおよび平滑筋弛緩剤、
からなる群より選択される第2の薬剤を、このような処置を必要とする被験体に投与する工程、を包含する、方法。
(項目24) 上記NOドナーおよび上記第2の薬剤が、組み合わせて投与される、項目23に記載の方法。
(項目25) 上記第2の薬剤が、上記NOドナーの前に投与される、項目23に記載の方法。
(項目26) 上記肛門直腸障害が、裂肛である、項目23に記載の方法。
(項目27) 肛門直腸障害の処置のため、およびそれに伴う疼痛を制御するための方法であって、該方法が、ホスホジエステラーゼインヒビターを含む治療的に有効な量の組成物を、このような処置を必要とする被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目28) 項目27に記載の方法であって、該方法が、以下:
β−アドレナリン作動性アゴニスト、cAMP依存性プロテインキナーゼアクチベーター、α1−アドレナリン作動性アンタゴニスト、エストロゲン、L型Ca2+チャネルブロッカー、ATP感受性K+チャネルアクチベーターおよび平滑筋弛緩剤、
からなる群より選択される、第2の薬剤を、上記被験体に投与する工程をさらに包含する、方法。
(項目29) 肛門直腸障害の処置のため、およびそれに伴う疼痛を制御するための方法であって、該方法が、β−アドレナリン作動性アゴニストを含む治療的に有効な量の組成物を、このような処置を必要とする被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目30) 項目29に記載の方法であって、該方法が、以下:
cAMP依存性プロテインキナーゼアクチベーター、α1−アドレナリン作動性アンタゴニスト、エストロゲン、L型Ca2+チャネルブロッカー、ATP感受性K+チャネルアクチベーターおよび平滑筋弛緩剤、
からなる群より選択される、第2の薬剤を、上記被験体に投与する工程をさらに包含する、方法。
(項目31) 肛門直腸障害の処置のため、およびそれに伴う疼痛を制御するための方法であって、該方法が、以下:
ATP感受性カリウムチャネルオープナーおよびcAMP媒介性肛門括約筋弛緩を促進する薬剤、
を含む治療的に有効な量の組成物を、このような処置を必要とする被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目32) 肛門直腸障害の処置のため、およびそれに伴う疼痛を制御するための方法であって、該方法が、カリウムチャネルオープナーを含む治療的に有効な量の組成物を、このような処置を必要とする被験体に投与する工程であって、ここで、該治療的に有効な量が、該被験体の肛門括約筋の緊張過度を減少 させる、工程を包含する、方法。
(項目33) 肛門直腸障害の処置のため、およびそれに伴う疼痛を制御するための方法であって、該方法が、このような処置を必要とする被験体に、以下:
薬学的に受容可能なキャリア、および該被験体の肛門括約筋の組織中で、環状グアニジン一リン酸または環状アデノシン一リン酸のレベルを増加させる薬剤、
を含む、治療的に有効な量の組成物を投与し、それによって、該被験体の該肛門括約筋の過度の緊張過度を減少させる工程を包含する、方法。
(発明の要旨)
一つの局面において、本発明は、肛門直腸障害の処置のための組成物を提供し、その組成物は、第2の薬剤(代表的にcAMPまたはcGMPのレベルを調節する薬剤)と組み合わせて、一酸化窒素ドナーを含む。第2の薬剤は、ホスホジエステラーゼV型(PDE V)インヒビター、ホスホジエステラーゼII型(PDE II)インヒビター、ホスホジエステラーゼIV型(PDE IV)インヒビター、非特異的PDEインヒビター、β−アドレナリン作動性アゴニスト、cAMP依存性プロテインキナーゼアクチベーター、エストロゲンまたはエストロゲン様化合物、またはα1 アドレナリン作動性アンタゴニストであり得る。この薬剤はまた、スーパーオキシドアニオン(O2-)スカベンジャー、ATP感受性K+チャネルアクチベーター、または平滑筋弛緩剤であり得るが、これらの薬剤は、cAMPレベルまたはcGMPレベルのいずれも直接調節しない。本発明はさらに、これらの組成物を使用する方法を提供する。
【0014】
別の局面において、本発明は、肛門直腸障害の処置のための組成物を提供し、その組成物は、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて、ホスホジエステラーゼインヒビター、好ましくは、PDEIIインヒビター、PDE IVインヒビターまたはPDE Vインヒビターを、単独またはβ−アドレナリン作動性レセプターアゴニスト、α1−アドレナリン作動性アンタゴニスト、L−型Ca2+チャネルブロッカー、ATP感受性K+チャネルアクチベーターまたは平滑筋弛緩剤から選択される別の薬剤と組み合わせて含む。本発明はまた、これらの組成物を使用する方法を提供する。
【0015】
別の局面において、本発明は、肛門直腸障害の処置のための組成物を提供し、その組成物は、β−アドレナリン作動性レセプターアゴニスト、好ましくは、β2アドレナリン作動性レセプターアゴニストまたはβ3アドレナリン作動性レセプターアゴニス単独またはcAMP加水分解性PDEインヒビター(例えば、PDE IVインヒビター)、非特異的PDEインヒビター、α1−アドレナリン作動性アンタゴニスト、エストロゲンまたはエストロゲン様化合物、L型Ca2+チャネルブロッカーまたはATP感受性K+チャネルアクチベーターから選択される別の薬剤と組み合わせて含む。そして本発明は、この組成物を使用する方法を提供する。
【0016】
さらに別の局面において、本発明は、肛門直腸障害の処置のための組成物を提供し、その組成物は、ATP感受性K+チャネルアクチベーターを単独またはcAMP依存性プロテインキナーゼアクチベーター、α1−アドレナリン作動性アンタゴニスト、エストロゲン、L−型Ca2+チャネルブロッカーまたは平滑筋弛緩剤から選択される別の薬剤と組み合わせて含む。そして本発明は、この組成物を使用する方法を提供する。
【0017】
なお別の局面において、本発明は、肛門直腸障害の処置のための組成物を提供し、その組成物は、α1−アドレナリン作動性アンタゴニストを単独またはcAMP加水分解性PDEインヒビター(好ましくは、PDE IVインヒビター)または平滑筋弛緩剤から選択される別の薬剤と組み合わせて含む。そして本発明は、この組成物を使用する方法を提供する。
【0018】
別の局面において、本発明は、肛門直腸障害の処置のための組成物を提供し、その組成物は、環状ヌクレオチド依存性プロテインキナーゼアクチベーターを単独または別の薬剤と組み合わせて含む。これらの組成物の使用のための方法もまた、提供される。実施形態の一つの群において、cGMP依存性プロテインキナーゼアクチベーターが単独で使用される。別の群の実施形態において、非特異的環状ヌクレオチド依存性プロテインキナーゼアクチベーターは、単独で使用される。実施形態のさらに別の群において、非特異的環状ヌクレオチド依存性プロテインキナーゼアクチベーターは、平滑筋弛緩剤と組み合わせて使用される。実施形態のなお別の群において、cAMP依存性プロテインキナーゼアクチベーターは、L型Ca2+チャネルブロッカーと組み合わせて提供される。
【0019】
なお別の局面において、本発明は、肛門直腸障害の処置のための組成物を提供し、その組成物は、エストロゲンまたは他の化合物を単独または別の薬剤と組み合わせて含む。これらの組成物を使用するための方法もまた、提供される。実施形態の一つの群において、エストロゲン化合物が、単独で使用される。実施形態の別の群において、そのエストロゲン化合物は、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて、ホスホジエステラーゼインヒビター、β−アドレナリン作動性レセプターアゴニスト、α1−アドレナリン作動性アンタゴニスト、L型Ca2+チャネルブロッカー、ATP感受性K+チャネルアクチベーター、または平滑筋弛緩剤から選択される第2の薬剤と組み合わせて使用される。本発明はさらに、これらの組成物を使用するための方法を提供する。
【0020】
肛門直腸障害を処置する方法もまた、本明細書中に提供される。本発明の方法は、一つ以上の上記の組成物の適切な処方物を被験体に投与する工程を包含する。関連する方法において、処置は、同じ投与経路または異なる投与経路のいずれかで、2つ以上の薬剤を順に投与することにより実施される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(発明の詳細な発明)
(略号および定義)
cAMP、環状アデノシン一リン酸;cGMP、グアノシン一リン酸;NO、一酸化窒素;NTG、ニトログリセリン;SOD、スーパーオキシドジスムターゼ;PDE、ホスホジエステラーゼ;IASP、内部肛門括約筋圧;Rp−cAMPS、Rp−アデノシン−3’,5’−環状モノホスホロチオエート;Sp−cAMPS、Sp−アデノシン−3’,5’−アデノシン−3’,5’−環状モノホスホロチオエート;8−CPT cAMP,8−(4−クロロフェニルチオ)−アデノシン−3’,5’−一リン酸、ナトリウム塩;Sp−5,6−DCI−cBiMPS,Sp−5,6−ジクロロ−1−b−D−リボフラノシルベンズイミダゾール−3’、5’−モノホスホロチオエート;ジブチリル−cAMP,N6,2’−O−ジブチリルアデノシン−3’,5’−環状一リン酸、ナトリウム塩一水和物;Sp−8−pCPT−cGMPS,Sp−8−(4−クロロフェニルチオ)−グアノシン(quanosine)−3’,5’−環状一リン酸、ナトリウム塩;8−ブロモ−cGMP,8−ブロモグアノシン−3’,5’−環状一リン酸、ナトリウム塩;Rp−8−Br−cGMPS,Rp−8−ブロモグアノシン−3’,5’−環状一リン酸、ナトリウム塩;ジブチリル−cGMP、N2,2’−O−ジブチリルグアノシン−3’,5’−環状一リン酸、ナトリウム塩;EHNA、エリスロ−9−(2−ヒドロキシ−3−ノニル)アデニンHCl;IBMX、3−イソブチル−1−メチルキサンチン;MY−5445、1−(3−クロロフェニルアミノ)−4−フェニルフタラジン;Ro20−1724、4−(3−ブトキシ−4−メトキシベンジル)−2−イミダゾリジノン。
【0022】
別に定義されない限り、本明細書中に使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野における当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。以下の参考文献は、当業者に、本発明において使用される多くの用語の一般的な定義を提供する:Singletonら、DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY(第2版 1994);THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY(Walker編、1988);およびHale&Marham、THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY(1991)。本明細書中で使用される場合、以下の用語は、別に特定されない限り、これらに基づく意味を有する。本明細書中に記載されるものと類似または等価である任意の方法および材料が、本発明の実施または試験において使用され得、好ましい方法および材料が、記載される。本発明のために、以下の用語が、下記に定義される。
【0023】
用語「処置」、「治療」などは、レシピエントの状態の変化を含むが、限定されない。この変化は、主観的または客観的のいずれかであり得、そして処置される疾患または状態の症状または徴候のような特徴に関連し得る。例えば、患者が、減少したかゆみ、減少した出血、減少した不快感、減少した痛みに気づくならば、成功した処置が生じている。同様に、臨床医が、客観的な変化(例えば、生検サンプルの組織学的分析によって)を認める場合もまた、その処置は成功である。あるいは、臨床医は、患者の診察の際に、障害または他の異常の大きさが減少していることを認め得る。これはまた、改善した処置または成功した処置を表す。レシピエントの状態の悪化の予防もまたこの用語に含まれる。治療的有益性は、本明細書中で議論されるように、処置される状態の応答を示す、すべての多くの主観的薬剤または客観的薬剤を含む。
【0024】
「薬物」、「薬理学的薬剤」、「薬学的薬剤」、「活性薬剤」および「薬剤」は、交換可能に使用されて、そして所望される、通常の有益な効果を産生するために、生物に送達される、任意の治療的に活性な物質としての最も広範な解釈を有することが意図される。
【0025】
「薬学的に受容可能」または「治療的に受容可能」とは、活性成分の有効性または生物学的活性を妨げず、かつ宿主(投与される、ヒトまたは動物のいずれかであり得る)に対して有毒ではない物質をいう。「治療的に有効な量」とは、所望される生物学的成果を誘導するのに十分な活性薬剤の量をいう。その結果は、疾患の徴候、症状もしくは原因の軽減または生物学的系の任意の他の所望される変化であり得る。用語「治療的に有効な量」は、本明細書中で、発症した領域にある期間に渡って繰り返して適用される場合、疾患状態の実質的な改善を生じる処方物の任意の量を示す。その量は、処置される状態、状態の進展の段階、および適用される処方物の型および濃度により変動する。任意の所定の例における適切な量は、当業者に対して容易に明らかであるか、または慣用的な実験によって決定され得る。
【0026】
用語「肛門直腸領域」は、本明細書中で、哺乳動物の肛門領域および直腸領域の両方を含むように定義される。より詳細には、その用語は、内部肛門管、外部肛門、および直腸下部を含む。
【0027】
「緊張過度」とは、通常の筋肉伸長よりも大きい状態または不完全な緩和の状態にあることをいう。
【0028】
用語「環状ヌクレオチド」とは、環状アデノシン一リン酸および環状グアノシン一リン酸をいう。
【0029】
用語「調節」とは、生物学的機能に影響を及ぼすのに十分であると確認された変動の特徴(例えば、頻度、濃度、振幅、有効性など)における任意の系統的バリエーションまたは段階的変化をいう。用語「変化」は、その特徴における増加または減少を包含する。
【0030】
用語「被験体」とは、本明細書中で使用される場合、動物(例えば、ヒトを含む哺乳動物)を包含する。
【0031】
用語「肛門直腸障害」は、肛門直腸疾患に関連するすべての障害を含み、急性または慢性の肛門裂傷(裂肛)、内部または外部に凝塊した痔(痔核)、痔疾患(痔核)、内視鏡的な痔結紮またはそのような結紮によって引き起こされる痛みに関連する障害、挙筋痙攣、便秘および肛門括約筋の高張または痙攣によって引き起こされる他の肛門直腸障害を含む。用語「肛門裂傷(裂肛)」はまた、「肛門亀裂」とも称され、そして肛門裂傷の痙攣はまた、「直腸テネスムス」としても言及される。さらに、この用語は、任意の上記の障害または状態に関連し得る痛みを含むことを意味する。
【0032】
用語「カリウムチャネルオープナー」および「カリウムチャネルアクチベーター」とは、一般的に、少なくとも一つのカリウムチャネルを有する細胞膜を経由する、電気的に興奮性の細胞の内側から外側へのカリウムイオンの増大した流れを引き起こす薬物のクラスをいう。カリウムチャネルオープナー活性は、細胞膜のカリウムチャネルを経由する、細胞の内側から外側へのカリウムイオンの流れによって引き起こされる通細胞膜電位の過分極(すなわち、よりネガティブな膜電位)を測定することによって観察され得る。
【0033】
用語「薬学的組成物」は、被験体(動物またはヒトを含む)における薬学的使用のために適切な組成物を意味する。薬学的組成物は、一般に有効な量のアクチベーターおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む。
【0034】
用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、任意の標準的な薬学的キャリア、緩衝剤、および賦形剤(リン酸緩衝化生理食塩溶液、水、および乳剤(例えば、油/水乳剤または水/油乳剤)を含む)ならびに種々の型の湿潤剤および/またはアジュバントを含む。適切な薬学的キャリアおよびその処方物は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCE(Mack Publishing Co、Easton、第19版 1995)に記載される。好ましい薬学的キャリアは、活性薬剤の投与の意図される様式に依存する。投与の代表的な様式が、以下に記載される。
【0035】
用語「有効量」は、所望の結果を生成するのに十分な投薬量を意味する。所望の結果は、その投薬量のレシピエントにおける主観的改善または客観的改善を含み得る。
【0036】
「予防処置」は、疾患の徴候を示さないか、または疾患の初期の徴候のみを示す被験体に投与される処置であり、ここで処置は、病状を発達させる危険を減少するために投与される。
【0037】
「治療処置」は、病状の徴候を示す被験体に投与される処置であり、ここで処置は、それらの病理学的徴候を減少させるか、または除去するために投与される。
【0038】
用語「適切な肛門領域」は、肛門の障害または疾患に影響されるか、またはそれを被る肛門または括約筋の任意の領域または組織を意味し、これは、例えば外部肛門または内部肛門、外部肛門括約筋または内部肛門括約筋、肛門括約筋、または外部肛門管または内部肛門管を含む。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「NOドナー」とは、病理学的設定において一酸化窒素を送達し得る任意の有機化合物または無機化合物をいう。一酸化窒素を送達する化合物にインビボで代謝され得るそれらの化合物もまた含まれる(例えば、NOドナーのプロドラッグ形態、またはバイナリーNO生成系)。
【0040】
(概要)
肛門障害を処置するための有望な新しいアプローチは、適切な肛門領域への一酸化窒素(NO)ドナーの局所的適用である。一酸化窒素は、内括約平滑筋片の安静時張力において濃度依存性の減少をインビトロでもたらすことが示されており(Rattanら、Am.J.Physiol.262:G107−112(1992))そしてNOドナー(例えば、ニトログリセリン、イソソルビドジニトレート、イソソルビドモノナイトレート、およびL−アルギニン)は、ヒトにおける肛門圧を減少することが示されている(Schouten,W.R.ら、「Pathophysiological aspects and clinical outcome of intra−anal application of isosorbide dinitrate in patients with chronic anal fissure」Gut39:465−9(1996);Farid,M.、Br.J.Surg.84:1(1997);およびHechtman,H.Bら、Arch.Surg.131:775−778(1996))。NOはまた、下部食道括約筋(Conklinら、Gastroenterology 104:1439−1444(1993);Tottrupら、Br.J.Pharmacol.104:113−116(1991))、幽門括約筋(Bayguinovら、Am.J.Physiol.264:G975−983(1993)、オッディ括約筋(Mourelleら、Gastroenterology 105:1299−1305(1993))および回結腸括約筋(Wardら、Br.J.Pharmacol.105:776−782(1992))を含む消化管内の他の括約筋の順応的な緩和を媒介することが示されている。NOまたはNO様物質は、胃腸順応性緩和の一般的現象に対する重要な制御機構として役に立つと考えられる。
【0041】
NOドナーの初期の見込みにもかかわらず、タキフィラキシーが、このクラスの薬剤メンバーについて観察されている。驚くべきことに、本発明は、現在の治療に関連する副作用および問題を克服するために有用である組成物を提供する。
【0042】
(実施形態の説明)
(第2の薬剤と組み合わせたNOドナー)
1つの局面において、本発明は、cAMPまたはcGMPのレベルを調節する第2の薬剤との組み合わせた一酸化窒素を含む肛門障害の処置のための組成物を提供する。実施形態の1つのグループにおいて、その第2の薬剤は、V型ホスホジエステラーゼ(PDE V)インヒビターである。実施形態の別のグループにおいて、その第2の薬剤は、IV型ホスホジエステラーゼ(PDE IV)インヒビターである。実施形態の別のグループにおいて、その第2の薬剤は、II型ホスホジエステラーゼ(PDE II)インヒビターである。実施形態の別のグループにおいて、その第2の薬剤は、非特異的PDEインヒビターである。実施形態のなお別のグループにおいて、その第2の薬剤は、スーパーオキシドアニオン(O2-)スカベンジャーである。実施形態のさらに別のグループにおいて、その第2の薬剤は、β−アドレナリン作動性アゴニストである。実施形態の別のグループにおいて、その第2の薬剤は、cAMP依存性プロテインキナーゼアクチベーターである。実施形態の別のグループにおいて、その第2の薬剤は、α1−アドレナリン作動性アンタゴニストである。実施形態の別のグループにおいて、その第2の薬剤はエストロゲン、エストロゲンアナログ、またはエストロゲン性化合物である。実施形態の別のグループにおいて、第2の薬剤は、L型Ca2+チャネルブロッカーである。実施形態のなお別のグループにおいて、第2の薬剤は、ATP−感受性K+チャネルアクチベーターである。本発明はさらに、上記に提供した組成物の使用方法を提供する。関連する局面において、本発明は、NOドナーおよび平滑筋弛緩剤を含有する組成物を提供する。
【0043】
上記の実施形態の各々において、一酸化窒素ドナーは、種々のNOドナーのいずれかであり得、これらには、例えば、有機NOドナー、無機NOドナー、およびNOドナーのプロドラッグ形態が含まれる。好ましくは、NOドナーは、少なくとも1種の有機ニトレート(硝酸のエステルを含む)を含み、そして環式および非環式化合物のいずれかであり得る。例えば、適切なNOドナーには、ニトログリセリン(NTG)、イソソルビドジニトレート(ISDN)、イソソルビドモノニトレート(ISMN)(これは、イソソルビド−2−モノニトレート(IS2N)および/またはイソソルビド−5−モノニトレート(IS5N)を含み得る)、エリスリチルテトラニトレート(ETN)、ペンタエリスリチルテトラニトレート(PETN)、エチレングリコールジニトレート、イソプロピルニトレート、グリセリル−1−モノニトレート、グリセリル−1,2−ジニトレート、グリセリル−1,3−ジニトレート、ブタン−1,2,4−トリオールトリニトレートなどが含まれる。より好ましくは、NOドナーはNTGである。ニトログリセリンおよび他の有機ニトレート(ISDN、ETN、およびPETNを含む)には、ヒト患者に対する医学の他の分野における処置における使用のための所定の当局の認可が与えられた。さらなるNOドナーには、ニトロプルシド(nitroprusside)ナトリウム、N,O−ジアセチル−N−ヒドロキシ−4−クロロベンゼンスルホンアミド、NG−ヒドロキシ−L−アルギニン(NOHA)、ヒドロキシグアニジンサルフェート、モルシドミン、3−モルホリノシドノンイミン(morpholinosydnonimine)(SIN−1)、(±)−S−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン(SNAP)、S−ニトロソグルタチオン(GSNO)、(±)−(E)−エチル−2−[(E)−ヒドロキシイミノ]−5−ニトロ−3−ヘキセンアミド(FK409)、(±)−N−[(E)−4−エチル−3−[(Z)−ヒドロキシイミノ]−5−ニトロ−3−ヘキセン−1−イル]−3−ピリジンカルボキサミド(FR144420)、および4−ヒドロキシメチル−3−フロキサンカルボキサミドが含まれる。
【0044】
一般的に、有機一酸化窒素ドナーは、有機ニトレートを含むために、単独で使用された場合に肛門疾患の処置の実施において有効であるよりも少ない任意の量で存在する。本発明の代表的な実施において、有機一酸化窒素ドナーは、約0.01〜約0.1重量パーセントの濃度で存在し得る。本明細書中のすべての重量パーセントは、組成物の総重量に基づく。NTGについては、好ましい濃度は、約0.01〜約5重量%の範囲にある。
【0045】
実施形態の1つのグループにおいて、その組成物は、V型ホスホジエステラーゼ(PDE V)インヒビターである薬剤を含む。ホスホジエステラーゼ(PDE)のインヒビターは、組織においてcAMPおよびcGMPの分解をブロックし得る薬剤である。PDEインヒビターは、非特異的PDEインヒビターと特異的PDEインヒビター(1つの型のホスホジエステラーゼを阻害し、もしあれば、他の型のホスホジエステラーゼに対するわずかな効果を伴う)の両方を含む。V型ホスホジエステラーゼには、ザプリナスト、MBCQ、MY−5445、ジピリダモール、およびシルデニフィル(sildenifil)を含む。
【0046】
実施形態の別のグループにおいて、その組成物は、II型ホスホジエステラーゼ(PDE II)インヒビターである薬剤を含む。適切なII型ホスホジエステラーゼには、EHNAが含まれる。
【0047】
実施形態のなお別のグループにおいて、その組成物は、IV型ホスホジエステラーゼ(PDE IV)インヒビターである薬剤を含む。適切なIV型ホスホジエステラーゼインヒビターには、アリフロ(ariflo)(SB207499)、RP73401、CDP840、ロリプラム、およびLAS31025が含まれる。
【0048】
実施形態のさらに別のグループにおいて、その組成物は、非特異的ホスホジエステラーゼ(非特異的PDE)インヒビターである薬剤を含む。適切な非特異的ホスホジエステラーゼインヒビターには、IBMX、テオフィリン、アミノフィリン、ペントキシフィリン、パパベリン、およびカフェインが含まれる。
【0049】
実施形態のさらに別のグループにおいて、その組成物は、スーパーオキシドアニオン(O2-)スカベンジャーである薬剤を含む。スーパーオキシドは、NOと反応し得、そしてその生物学的効果を劇的に減少させ得る。従って、スーパーオキシドアニオンを除去する薬剤(例えば、外因性Mnスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)またはCu/Znスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)または低分子のSOD模倣物(例えば、Mn(III)テトラ(4−安息香酸)ポルフィリンクロライド(MnTBAP))およびM40403、Salveminiら、Science286(5438):304−306(1999))は、NOの効果を増強し得る。SODは、比較的安定な酵素であり、そしてNTGから生成されたNOの局所的な強度をブーストするために、例えば、NTGのようなNOドナーを有する局所的処方物において使用され得る。NTGから形成された一酸化窒素は、その短い半減期に起因して、局所的にのみ作用する。しかし、NTGそれ自体は、粘膜吸収後に全身的な効果を発揮するために十分に安定である。SODまたはSOD模倣物を用いてNTGの局所的な効力を増強することによって、同じ程度の内部の肛門括約筋の弛緩を産生するために、より少ないNTGが必要とされ、そしてより少ないNTGが吸収され、全身的な副作用の減少をもたらす。
【0050】
実施形態のなお別のグループにおいて、その組成物は、β−アドレナリン作動性アゴニスト、好ましくは、β2−アドレナリン作動性レセプターアゴニストまたはβ3−アドレナリン作動性レセプターアゴニストである薬剤を含む。種々のβ−アドレナリン作動性アゴニストが文献に記載され、そして本発明において有用である。適切なβ3−アドレナリン作動性アゴニストは、例えば、Bristolら、ANNUAL REPORTS IN MEDICINAL CHEMISTRY、第33巻、第19章、193〜202頁、Academic Press(1998)に記載される。好ましいβ−アドレナリン作動性アゴニストには、サルブタモール、テルブタリン、プロカテロール、クレンブテロール、イソプロテレノール、ジンテロール(zinterol)、BRL37344、CL316243、CGP−12177A、GS332、L−757793、L−760087、L−764646、およびL−766892が含まれる。
【0051】
実施形態の別のグループにおいて、その薬剤は、cAMP依存性プロテインキナーゼアクチベーターである。種々の環状ヌクレオチド依存性プロテインキナーゼアクチベーターが本発明において有用であり、それらには、例えば、cAMP模倣物、およびデュアルcGMP/cAMP依存性プロテインキナーゼアクチベーターが含まれる。cAMP模倣物は、当業者に周知であり、そしてこれらには、8−ブロモ−cAMP、ジブチリル−cAMP、Rp−cAMPS、およびSp−cAMPSが含まれる。デュアルアクチベーターには、Sp−8−pCPT−cGMPS、Sp−8−ブロモ−cGMPSおよび8−CPT−cAMPが含まれる。
【0052】
実施形態のなお別のグループにおいて、その組成物は、エストロゲンまたはエストロゲンアナログまたは模倣物である薬剤を含む。本明細書中で使用される場合、用語「エストロゲン」は、エストロゲンおよびエストロゲン様化合物(例えば、エストロゲン様活性を有する化合物(例えば、競合結合アッセイにおいてエストロゲンレセプターに結合する化合物))のすべての形態を含むことを意味する。エストロゲンは、ステロイド性または非ステロイド性のいずれかであり得る(例えば、Bristolら、ANNUAL REPORTS IN MEDICINAL CHEMISTRY、第31巻、第19章、181頁〜190頁、Academic Press(1996)およびそこに引用される参考文献を参照のこと)。エストロゲン様化合物には、以下が含まれるがこれらに限定されない:17−β−エストラジオール、エストロン、メストラノール、エストラジオール吉草酸塩、エストラジオールジプロピオネート(dypionate)、エチニルエストラジオール、キネストロール、硫酸エストロン、植物エストロゲン(例えば、フラボン(falvone)、イソフラボン(例えば、ゲニステイン)、レスベラトロール(resveratrol)、クメスタン(coumestan)誘導体)、殺虫剤を含む他の合成エストロゲン性化合物(例えば、p,p’−DDT)、可塑剤(例えば、ビスフェノールA)、および種々の他の工業的化学物質(例えば、ポリ塩化ビフェニル)。
【0053】
実施形態のなお別のグループにおいて、その組成物は、α1−アドレナリン作動性アンタゴニストである薬剤を含む。交感神経の神経伝達物質であるノルエピネフリンは、α1−アドレナリン作動性レセプターを介して、括約筋の平滑筋を収縮する。被験体の適切な肛門領域に交感神経遮断性薬剤を投与することによる、ノルエピネフリン放出またはα1−アドレナリン作動性レセプターへの結合の薬理学的な妨害はまた、肛門の括約筋の収縮ならびに肛門直腸の障害の徴候および症状の改善をもたらし得る。このような交感神経遮断性薬剤には、α1−アドレナリン作動性レセプターアンタゴニスト(例えば、Goodman&Gilman’s THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS、第9版、JG Hardmanら編、McGraw−Hill 1996に記載されるような、プラゾシン、ドキサゾシン、フェントラミン、トラゾリンなど)、ノルエピネフリン放出をブロックするα2−アドレナリン作動性アゴニスト(例えば、クロニジン)、神経終末ノルエピネフリン枯渇薬剤(例えば、グアネチジン、ブレチリウム、レセルピン)、ノルエピネフリン合成インヒビター(例えば、α−メチルチロシン)、および交感神経終末を破壊する薬剤(例えば、6−ヒドロキシドパミン)が含まれる。従って、関連する実施形態において、その組成物は、α2−アドレナリン作動性レセプターアゴニスト、神経終末ノルエピネフリン枯渇薬剤、ノルエピネフリン合成インヒビター、または交感神経終末を破壊する別の薬剤のような代替的な交感神経遮断性薬剤を含む。
【0054】
実施形態のなお別のグループにおいて、その薬剤は、ATP感受性K+チャネルアクチベーターである。ATPは、NOと共に、胃腸の平滑筋の適応性の弛緩を媒介する、腸管の非アドレナリン作動性、非コリン作動性神経から放出される阻害的な神経伝達物質として働くと考えられている(Burnstock、Pharmacol.Rev.24:509−81(1972))。ATPは、主に、細胞膜を過分極するATP感受性カリウム(KATP)チャネルを開くことによって機能し、このことは、細胞カルシウム濃度を減少させ、平滑筋の弛緩をもたらすようである。ATP感受性K+チャネルを活性化する合成化合物は、平滑筋弛緩剤(例えば、ミノキシジル、ミノキシジルサルフェート、ピノシジル(pinocidil)、ジアゾキシド、レブクロモカリム(levcromokalim)、クロマカリムなどである(Whiteら、Eur.J.Pharmacol.357(1):41−51(1998)を参照のこと)。ATP感受性カリウムチャネルはGI平滑筋で発現する(Kohら、Biophys.J.75:1793−80(1998))。従って、特異的なカリウムチャネルオープナーは、内部の肛門括約筋の平滑筋を弛緩させること、ならびに肛門直腸の障害の徴候および症状を改善することのために有用である。他のK+チャネル(アパミン感受性低コンダクタンスカルシウム活性化K+チャネルおよびカリブドトキシン感受性高コンダクタンスカルシウム活性化K+チャネルを含む)もまた、平滑筋の緊張に影響を与え得ることに留意するべきである。
【0055】
なお他の実施形態において、その組成物は、NOドナーおよび平滑筋弛緩剤を含む。好ましい平滑筋弛緩剤には、例えば、ヒドララジン、パパベリン、チロプラミド(tiropramide)、シクランデレート、イソクスプリン、またはナイリドリンが含まれる。
【0056】
(ホスホジエステラーゼインヒビター組成物)
別の局面において、本発明は、ホスホジエステラーゼインヒビター(好ましくは、PDE IIインヒビター、PDE IVインヒビター、またはPDE Vインヒビター)を、単独でまたは別の薬剤(β−アドレナリン作動性レセプターアゴニスト、α1−アドレナリン作動性アンタゴニスト、エストロゲン、L型Ca2+チャネルブロッカー、ATP感受性K+チャネルアクチベーター、もしくは平滑筋弛緩剤から選択される)と組み合わせてかのいずれかで、そして、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて含む、肛門直腸の障害の処置のための組成物を提供する。本発明はまた、これらの組成物の使用方法も提供する。
【0057】
ホスホジエステラーゼインヒビター(PDEインヒビター)は、組織においてcAMPおよびcGMPの分解をブロックし得る薬剤である。PDEインヒビターは、非特異的PDEインヒビターと特異的PDEインヒビターを含む。非特異的PDEインヒビターは、1つ以上の型のインヒビターをホスホジエステラーゼを阻害するが、一方特異的PDEインヒビターは、1つの型のホスホジエステラーゼのみを阻害し、もしあっても、他のいずれの型のホスホジエステラーゼに対して効果をほとんど伴わない。5つの環状ヌクレオチドPDEアイソザイムファミリーの特異的インヒビターが特徴付けられされている:8−メトキシメチル−IBMX(イソブチルメチルキサンチン)またはビンポセチン(Ca2+、カルモジュリン依存性I型PDE);EHNA(エリスロ−9−(2−ヒドロキシ−3−ノニル)アデニンHCl)(cGMP刺激II型PDE);ミルリノン(cGMP阻害III型PDE);ロリプラム(cAMP特異的IV型PDE);ならびにザプリナストおよびDMPPO(1,3−ジメチル−6−(2−プロポキシ−5−メタンスルホニルアミドフェニル)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−(5H)−オン)(cGMP特異的V型PDE)。現在の知見は、最近発見された9A型(Fisherら、J.Biol.Chem.273(25):15559−15564(1998)を参照のこと)を加えて、少なくとも9のクラスのPDEアイソザイムが存在することを示唆する。PDEの非特異的インヒビターである薬剤には、例えば、IBMX、テオフィリン、アミノフィリン、カフェインなどが含まれる(Vemulapalliら、J.Cardiovasc.Pharmacol.28(6):862−9(1996)を参照のこと)。
【0058】
好ましくは、肛門直腸の障害を処置するための組成物は、局所的処置のために適切な処方物中に、PDE IIインヒビター、PDE IVインヒビター、およびPDE Vインヒビターのクラスから選択される1つ以上の化合物を含む。これらのクラスの各メンバーは、β−アドレナリン作動性レセプターアゴニスト(好ましくは、β2−アドレナリン作動性レセプターアゴニストもしくはβ3−アドレナリン作動性レセプターアゴニスト)、α1−アドレナリン作動性アンタゴニスト、L型Ca2+チャネルブロッカー、エストロゲン、ATP感受性K+チャネルアクチベーター、または平滑筋弛緩剤からなる群より選択される第2の薬剤と有利に組み合わされ得る。さらなる薬剤の各クラスからの好ましいメンバーは、NOドナーを伴う使用のために上記に記載されたものである。
【0059】
(β−アドレナリン作動性レセプターアゴニスト組成物)
別の局面において、本発明は、β−アドレナリン作動性レセプターアゴニスト(好ましくは、β2−アドレナリン作動性レセプターアゴニストもしくはβ3−アドレナリン作動性レセプターアゴニスト)を、単独でまたは別の薬剤(cAMP加水分解性PDEインヒビター(例えば、PDE IVインヒビター)、非特異的PDEインヒビター、α1−アドレナリン作動性アンタゴニスト、エストロゲン、L型Ca2+チャネルブロッカー、ATP感受性K+チャネルアクチベーター、もしくは平滑筋弛緩剤から選択される)と組み合わせてかのいずれかで含み、そして薬学的に受容可能なキャリアを含む、肛門直腸の障害の処置のための組成物を提供する。本発明はまた、これらの組成物の使用方法を提供する。
【0060】
本発明のこの局面において、β−アドレナリン作動性レセプターアゴニストは、本質的に、NOドナーと組み合わせる使用のために上記に提供されたβ−アドレナリン作動性レセプターアゴニストのいずれかである。好ましくは、β−アドレナリン作動性レセプターアゴニストは、β2−アドレナリン作動性レセプターアゴニストまたはβ3−アドレナリン作動性レセプターアゴニストである。特に好ましいβ−アドレナリン作動性レセプターアゴニストは、Bristolら、ANNUAL REPORTS IN MEDICINAL CHEMISTRY、第33巻、第19章、193〜202頁、Academic Press(1998)に記載されたものであるか、またはサルブタモール、テルブタリン、プロカテロール、クレンブテロール、イソプロテレノール、ジンテロール(zinterol)、BRL37344、CL316243、CGP−12177A、GS332、L−757793、L−760087、L−764646、およびL−766892から選択される。
【0061】
実施形態の1つのグループにおいて、その組成物は、適切なβ−アドレナリン作動性レセプターアゴニストおよび薬学的に受容可能なキャリア、好ましくは、肛門直腸の疾患または障害の処置の部位に対する局所送達のために処方されたものを含む。
【0062】
実施形態の別のグループにおいて、その組成物は、cAMP加水分解性PDEインヒビター(例えば、PDE IVインヒビター)、非特異的PDEインヒビター、α1−アドレナリン作動性アンタゴニスト、エストロゲン、L型Ca2+チャネルブロッカー、ATP感受性K+チャネルアクチベーター、または平滑筋弛緩剤から選択される、別の薬剤を含む。
【0063】
実施形態の1つの好ましいグループにおいて、その薬剤は、cAMP加水分解性PDEインヒビター、より好ましくは、IV型ホスホジエステラーゼインヒビターである。好ましいIV型ホスホジエステラーゼ(PDE IVおよびPDE4ともいわれる)インヒビターは、例えば、Bristolら、ANNUAL REPORTS IN MEDICINAL CHEMISTRY、第33巻、第10章、91〜109頁、Academic Press(1998)に記載される。最も好ましくは、PDE IVインヒビターは、ロリプラム、Ro20−1724、またはEtazolateである。
【0064】
好ましい実施形態の別のグループにおいて、その薬剤は、非特異的PDEインヒビター(例えば、IBMX、アミノフィリン、テオフィリン、ペントキシフィリン、リソフィリン(lisophylline)、およびパパベリンが含まれる。
【0065】
好ましい実施形態のなお別のグループにおいて、その薬剤はα1−アドレナリン作動性アンタゴニストである。適切なα1−アドレナリン作動性レセプターアンタゴニスト(プラゾシン、ドキサゾシン、フェントラミン、トラゾリンなど)は、Goodman&Gilman’s THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS、第9版、JG Hardmanら編、McGraw−Hill 1996に記載される。これらの組成物における使用のための好ましい薬剤は、プラゾシン、ドキサゾシン、フェントラミン、トラゾリンおよびそれらの誘導体から選択される。
【0066】
なお他の好ましい実施形態において、β−アドレナリン作動性レセプターアンタゴニストは、L型Ca2+チャネルブロッカー(例えば、ニフェジピン、ニモジピン、フェロジピン(felopidine)、ニカルジピン、イスラジピン(isradipine)、アムロジピン、ジルチアゼム、およびベラパミル)と組み合わせられる。
【0067】
さらに他の好ましい実施形態において、β−アドレナリン作動性レセプターアゴニストは、ATP−感受性K+チャネルアクチベーターと組み合わせされる。このグループにおける好ましい薬剤は、NOドナーを伴う使用のための上記に提供されたものと同じである。
【0068】
さらなる組成物は、β−アドレナリン作動性レセプターアゴニストがエストロゲンもしくはエストロゲン様化合物と、または平滑筋弛緩剤と組み合わされる。これらのクラスの各々において適切な化合物は、NOドナーを伴う使用のために上記に記載された。
【0069】
(カリウムチャネルアクチベーター組成物)
なお別の局面において、本発明は、ATP−感受性K+チャネルアクチベーターを、単独でまたは別の薬剤(cAMP依存性プロテインキナーゼアクチベーター、エストロゲン、α1−アドレナリン作動性アンタゴニスト、L型Ca2+チャネルブロッカー、または平滑筋弛緩剤から選択される)と組み合わせてかのいずれかで含み、そして薬学的に受容可能なキャリアを含む、肛門直腸の障害の処置のための組成物を提供する。本発明はさらに、これらの組成物の使用方法を提供する。
【0070】
本発明のこの局面において、選択された組み合わせは、NOドナー組成物について上記に詳細に記載された成分から作製される。さらなるカリウムイオンチャネルアクチベーターの記載は、例えば、Bristolら、ANNUAL REPORTS IN MEDICINAL CHEMISTRY、第29巻、第8章、73〜82頁、Academic Press(1991)に記載される。好ましい実施形態において、カリウムイオンチャネルアクチベーターは、ジアゾキシド、ミノキシジル、PCO400、ピノシジル(pinocidil)、レブクロモカリン(levcromokalin)、またはクロマカリムである。
【0071】
いくつかの実施形態において、その組成物は、さらなる薬剤(これは、cAMP依存性プロテインキナーゼアクチベーター、エストロゲンもしくはエストロゲン様化合物、α1−アドレナリン作動性アンタゴニスト、L型Ca2+チャネルブロッカー、または平滑筋弛緩剤である)を含む。好ましくは、cAMP依存性プロテインキナーゼアクチベーターは、cAMP模倣物またはデュアルcGMP/cAMP依存性プロテインキナーゼアクチベーターである。より好ましくは、cAMP模倣物は、8−ブロモ−cAMP、ジブチリル−cAMP、Rp−cAMPS、またはSp−cAMPSであり、そしてデュアルアクチベーターは、Sp−8−pCPT−cGMPS、Sp−8−ブロモ−cGMPSおよび8−CPT−cAMPから選択される。
【0072】
実施形態の1つのグループにおいて、α1−アドレナリン作動性アンタゴニストが、ATP−感受性カリウムチャネルアクチベーターと組み合わせられる。好ましくは、α1−アドレナリン作動性アンタゴニストは、プラゾシン、フェントラミン、またはトラゾリンである。
【0073】
実施形態の別のグループにおいて、L型Ca2+チャネルブロッカーが、ATP−感受性カリウムチャネルアクチベーターと組み合わせられる。好ましくは、L型Ca2+チャネルブロッカーは、ニフェジピン、ニモジピン、フェロジピン(felopidine)、ニカルジピン、イスラジビン(isradipine)、アムロジピン、ジルチアゼム、またはベラパミルである。
【0074】
実施形態のなお別のグループにおいて、平滑筋弛緩剤がATP−感受性カリウムチャネルアクチベーターと組み合わせられる。好ましくは、平滑筋弛緩剤は、ヒドララジン、パパベリン、チロプラミド(tiropramide)、シクランデレート、イソクスプリン、またはナイリドリンである。
【0075】
(α1−アドレナリン作動性アンタゴニスト組成物)
なお別の局面において、本発明は、α1−アドレナリン作動性アンタゴニストを、単独でまたは別の薬剤(cAMP加水分解性PDEインヒビター(好ましくは、PDE IVインヒビター)、エストロゲンまたは平滑筋弛緩剤から選択される)と組み合わせてかのいずれかで含み、そして薬学的に受容可能なキャリアを含む、肛門直腸の障害の処置のための組成物を提供する。本発明はさらに、これらの組成物の使用方法を提供する。
【0076】
本発明のこの局面において有用であるα1−アドレナリン作動性アンタゴニストは上記に記載され、そして例えば、Goodman&Gilman’s THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS、第9版、JG Hardmanら編、McGraw−Hill 1996において見出され得る。好ましいα1−アドレナリン作動性アンタゴニストは、プラゾシン、フェントラミン、およびトラゾリンである。
【0077】
α1−アドレナリン作動性アンタゴニストがcAMP加水分解性PDEインヒビター(好ましくは、PDE IVインヒビター)、エストロゲンもしくはエストロゲン様化合物または平滑筋弛緩剤と組み合わされるこれらの実施形態において、各クラスの好ましいメンバーは、NOドナーを伴う使用のために上記に記載されたものである。
【0078】
(環状ヌクレオチド依存性プロテインキナーゼアクチベーター組成物)
別の局面において、本発明は、環状ヌクレオチド依存性プロテインキナーゼアクチベーターを、単独または別の薬剤との組合せで含む肛門直腸疾患の処置のための薬学的組成物を提供する。これらの組成物のための方法もまた提供される。1つのグループの実施形態において、cGMP依存性プロテインキナーゼアクチベーターが単独で使用される。別の群の実施形態において、非特異的な環状ヌクレオチド依存性プロテインキナーゼアクチベーターが単独で使用される。さらに別のグループ実施形態において、非特異的な環状ヌクレオチド依存性プロテインキナーゼアクチベーターが平滑筋弛緩因子と組合せて使用される。なお別の群の実施形態において、cAMP依存性プロテインキナーゼアクチベーターは、L型Ca2+チャネルブロッカーと組み合わせて提供される。
【0079】
各例において、示されるクラスの化合物の好ましいメンバーは、単独または他の組合せでの使用のために上記で使用されるものである。
【0080】
(エストロゲンおよびエストロゲン模倣物組成物)
別の局面において、本発明は、エストロゲンまたはエストロゲン模倣物を、単独または上記の因子のクラスのいずれかからの別の因子との組合せで含む、肛門直腸障害の処置のための薬学的組成物を提供する。エストロゲン様化合物としては、以下が挙げられるがそれらに限定されない:17−β−エストラジオール、エストロン、メストラノール、吉草酸エストラジオール、エストラジオールジピオネート(dypionate)、エチニルエストロジル(estrodil)、キネストロール、硫酸エストロン、フィトエストロゲン(例えば、フラボン、イソフラボン(例えば、ゲニステイン))、レスベラトロール、クメスタン誘導体、他の合成エストロゲン化合物(殺虫剤(例えば、p,p’−DDT)、可塑化剤(例えば、ビスフェノールA)、および種々の他の産業用化学物質(例えば、ポリ塩化ビフェニル)(GoodmanおよびGilmanのTHE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS、第9版、JG Hardmanら編、McGraw−Hill(1996)))。好ましい薬剤は、上記の単一の薬剤または組合せの組成物を参照して記載されるものから選択される。これらの組成物の使用のための方法もまた提供される。
【0081】
(肛門直腸障害の処置のための処方物)
上記の組成物の個々の成分の多くは、種々の疾患状態において使用するために記載されている。しかし、特定のクラスおよびクラスの組合せは、今や、肛門疾患の処置について有用であることが見出され、そして適切な肛門領域へ送達するために最良に適した処方物中に提供され得る。好ましい処方物は、その組成物が、外部肛門および内部肛門、外部肛門括約筋および肛門内括約筋、肛門括約筋、外部肛門管または内部肛門管、ならびに肛門管の上の直腸下部に対して局所塗布するための局所処方物中で合わされるものである。
【0082】
従って、上記に提供される組成物の各々は、代表的に、適切な薬学的処方物中に提供され、その処方物は、有効な量の上記薬剤(例えば,NOドナー、β2アドレナリン作動性レセプターアゴニストまたはβ3アドレナリン作動性レセプターアゴニスト、cAMP加水分解性PDEインヒビター、非特異的PDEインヒビター、α1−アドレナリン作動性アンタゴニスト、L型Ca2+チャネルブロッカー、ATP感受性K+チャネルアクチベーターなど)を含む。
【0083】
当業者は、適切な処方物が使用される送達の形態に依存すること、そのような形態のすべてが本発明によって意図されることを認識する。さらに、いくつかの実施形態において、薬剤の組合せは、単一の処方物において使用され、他方で、他の実施形態において、薬剤は、別個に処方されるが、組み合わせて、もしくは連続的に投与される。以下の考察において、単一の薬剤の組成物は、2つ以上の薬剤の組成物をも含むことが理解される。さらになお、異なる処方物は、薬剤が、異なる投与経路によって、別個もしくは連続的に投与される実施形態について使用され得る。
【0084】
(局所組成物)
上記に鑑み、本発明は、肛門直腸障害(内部肛門括約筋の高緊張性および/または痙攣に関連するもの(例えば、痔核痛を含む))を処置するため、および哺乳動物(ヒトを含む)の痙攣の処置に有用な局所組成物を提供する。その組成物は、肛門括約筋の収縮を妨害する薬剤の有効量および薬学的に受容可能なキャリアを含む。1つの実施形態において、その薬剤は、ATP感受性カリウムチャネルオープナーである。別の実施形態において、その薬剤は、ホスホジエステラーゼインヒビター、環状ヌクレオチド模倣物、βアドレナリン作動性アゴニスト、エストロゲンもしくはエストロゲン様化合物、α1アドレナリン作動性アンタゴニストである。
【0085】
関連する実施形態において、本発明は、単位投薬量形態における局所的な薬学的組成物を提供する。この薬学的組成物は、1単位投薬量あたり、上記に提供される薬剤または組合せのある量を含む。この量は、そのような処置の必要な被験体における肛門障害を処置するために有効である。代表的に、その薬剤は、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせられる。そのような組成物は、肛門障害に関連する疼痛(例えば、痔核痛)を処置もしくは減少させる際に、および括約筋(内部肛門括約筋、下部食道括約筋、幽門括約筋、オッディ括約筋、および回結腸括約筋を含む)の痙攣および/または緊張過度を処置するために有用である。局所組成物はまた、肛門直腸領域の括約筋の痙攣および/または高緊張から生じる状態(裂肛、手術後の直腸痛、緊張過度、幽門狭窄、膵臓炎を含む)ならびにGI管の筋肉の一般的な痙攣にから生じる状態(ツェンカー憩室、アカラシア、食道痙攣(くるみ割食道)、過敏性腸疾患、およびヒルシュプラング病(腸閉塞)を含む)を処置するにおいて有用である。さらに、局所組成物は、肛門括約筋を弛緩させるため、ならびに肛門、直腸、および胃腸系下部の試験、装置の挿入および手順(例えば、手術)の前、間および後の疼痛を低減させるために、有用である。
【0086】
(投薬形態)
本発明の肛門括約筋弛緩剤の局所投与のための投薬形態としては、散剤、噴霧剤、軟膏、パスタ剤、クリーム、ローション、ジェル、液剤、パッチ、坐剤およびリポソーム調製物が挙げられる。この投薬形態は、肛門粘膜での活性体の持続的な放出のために粘膜接着性ポリマーを用いて処方され得る。この活性化合物は、薬学的に受容可能なキャリアを用いる滅菌条件下で、および必要とされ得る、任意の保存剤、緩衝剤もしくはプロペラントとともに、混合され得る。局所調製物は、局所的な乾燥、液体、クリームおよびエアゾール処方物において一般的に使用される従来の薬学的希釈剤およびキャリアとこの肛門括約筋弛緩剤とを合わせることによって調製され得る。軟膏およびクリームは、適切な濃化剤および/またはゲル化剤を添加した、例えば、水性基剤または油性基剤を用いて処方され得る。そのような基剤は、水および/または油(例えば、液体パラフィン、またはピーナツ油もしくはひまし油のような植物油)を含み得る。この基剤の性質に従って使用され得る濃化剤としては、液体パラフィン、ステアリン酸ナトリウム、セトステアリルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、羊毛脂、水素化ラノリン、蜜蝋などが挙げられる。ローションは、水性基剤または油性基剤を用いて処方され得、そして一般に、以下の1つ以上を含み得る:安定化剤、乳化剤、分散剤、懸濁剤、濃化剤、着色剤、香料など。散剤は、任意の適切な粉末基剤(例えば、タルク、ラクトース、デンプンなど)の助けを用いて形成され得る。ドロップ剤は、水性基剤または非水性基剤を用いて処方され得、これはまた、1つ以上の分散剤、懸濁剤、可溶化剤などを含む。
【0087】
軟膏、パスタ剤、クリームおよびゲルはまた、賦形剤(例えば、動物および植物の脂肪、油、蝋、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、珪酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはそれらの混合物を含み得る。散剤および噴霧剤はまた、ラクトース、タルク、珪酸、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物のような賦形剤を含み得る。噴霧剤は、さらに、慣用的なプロペラント(例えば、クロロフルオロ炭化水素)および揮発性不置換炭化水素(例えば、ブタンおよびプロパン)を含み得る。
【0088】
代表的な組成物は、局所組成物を含む。この組成物は、以下の1つ以上の第一の薬理学的薬剤を含む:NOドナー、ホスファチジルジエステラーゼインヒビター、環状ヌクレオチド模倣物、βアドレナリン作動性アゴニスト、L型カルシウムチャネルブロッカー、αアドレナリン作動性アゴニスト、ATP感受性カリウムチャネルアクチベーター、エストロゲンもしくはエストロゲン様化合物またはボツリヌス毒素と、以下の薬学的に受容可能なキャリアおよび少なくとも1つの以下の第二の薬理学的薬剤との組合せ:局所麻酔剤(例えば、リドカイン、プリロカインなど)、局所抗炎症剤(例えば、ナプロキセン、プラモキシカムなど)、コルチコステロイド(例えば、コルチゾン、ヒドロコルチゾンなど)、抗痒剤(例えば、ロペラミドジフィレノキシラートなど)、末梢感覚ニューロンの活性化に干渉する薬剤(二価および三価の金属イオン(例えば、マンガン、カルシウム、ストロンチウム、ニッケル、ランタニド、セリウム、亜鉛など)を含む)、鎮痛剤、酵母ベースの産物(例えば、凍結乾燥酵母、酵素抽出物など)、再内皮化を促進することが公知である、増殖促進剤および/または創傷治癒促進剤(例えば、血小板由来増殖因子PDGF、インターロイキン−11(IL−11)など)、抗微生物剤(例えば、ネオスポリン、ポリミキシンB硫酸、バシトラシン亜鉛など)、粘膜接着剤(例えば、セルロース誘導体など)、細胞保護剤(例えば、コロイド性ビスマス、ミソプロストロールなど、ただし、スクラルファートを除く)(これらは、GOODMAN&GILMANのTHE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS,前出に規定されている)、局所的組織硬化を促進する薬剤(例えば、ミョウバンなど)、またはメントール。この少なくとも1つの第一の薬理学的薬剤は、代表的に、第一の医学的状態(例えば、肛門疾患またはそれに伴う疼痛)のための処置に有効な、単位投薬形態中に代表的に存在する。この少なくとも1つの第二の薬理学的薬剤は、代表的に、第二の医学的状態、またはその第一の医学的状態に伴うかもしくはそれから生じる状態、症状もしくは効果の処置のために有効な単位投薬形態中の組成物に代表的に存在する。
【0089】
1つの局面において、本発明は、活性薬剤および薬学的に受容可能なキャリアを含む、肛門直腸障害を処置するための組成物を提供する。この活性薬剤は、それぞれグアニリルシクラーゼもしくはアデニリルシクラーゼの活性化を通じたcGMPもしくはcAMP、環状ヌクレオチド模倣物、PDEインヒビター、αアドレナリン作動性レセプターアンタゴニスト、またはβアドレナリン作動性レセプターアゴニスト、またはカリウムチャネルオープナーの増加を刺激するかまたは生じる薬剤を包含する。1つの局面において、この活性薬剤は、本発明の組成物中にその組成物の約0.001重量%〜約15重量%の量で存在する。別の局面において、この活性薬剤は、その組成物の、約0.01重量%〜約7.5重量%または約0.05重量%〜約2重量%の量で存在する。
【0090】
例えば、一群の実施形態において、本発明は、薬学的に受容可能なキャリアおよび約0.001重量%〜約15重量%の量のシルデナフィル(sildenafil)を含む肛門直腸障害を処置するための組成物を提供する。別の局面において、薬学的に受容可能なキャリアおよび約0.01重量%〜約7.5重量%または約0.05重量%〜約2重量%の量のシルデナフィルを含む組成物が提供される。
【0091】
局所薬学的組成物はまた、1つ以上の保存剤または静菌剤(例えば、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、クロロクレゾール、塩化ベンザルコニウムなど)を含み得る。局所薬学的組成物はまた、抗菌剤(特に、抗生物質)、麻酔剤、鎮痛剤および止痒剤のような他の活性成分を含み得る。
【0092】
局所処方物の1つの例は、75%(w/w)白色ワセリンUSP、4%(w/w)パラフィン蝋USP/NF、ラノリン14%(w/w)、2%ソルビタンセスキオレエートNF、4%プロピレングリコールUSP、および1%肛門括約筋弛緩剤を含む。
【0093】
特定の肛門括約筋弛緩剤の投薬量は、多くの因子に依存する。これら因子は、当業者に周知であり、例えば、具体的な薬剤;処置される状態;レシピエント患者の年齢、体重および臨床状態;ならびにその治療を投与する臨床医もしくは開業医の経験および判断がある。有効量の化合物は、症状の実質的な寛解または臨床医または他の資格のある看視者によって認められるような具体的に同定可能な改善のいずれかを提供するものである。投与量の範囲は、使用される化合物、投与の経路および特定の化合物の効力に従って変動する。
【0094】
経粘膜(すなわち、舌下、直腸、結腸、肺、頬(口腔)および膣)薬物送達は、全身循環への活性物質の効率的な投入を提供し、そして肝臓および腸壁微生物叢による直接の代謝を減少する(Chien Y.W.、NOVEL DRUG DELIVERY SYSTEMS,第4節、「Mucosal Drug Delivery」、Marcel Dekker、Inc.(1992)を参照のこと)。経粘膜薬物投薬形態(例えば、錠剤、坐剤、軟膏、ゲル、ペッサリー、膜および散剤)は、代表的に、粘膜との接触を保持し、そして迅速に崩壊および/または溶解して、即座の局所および全身性吸収を可能にする。これらの処方物を、本発明の抗炎症剤とともに使用して、経粘膜の炎症を減少もしくは除去し得る。
【0095】
(徐放または制御送達処方物)
なお他の実施形態において、本発明は、局所的な、徐放および長期放出薬学的組成物を提供する。これは、肛門直腸障害を処置するために、1つ以上の肛門括約筋弛緩剤(一酸化窒素ドナー(例えば、ニトログリセリン、イソソルビドジニトレート、およびL−アルギニン)または上記の薬理学的薬剤および薬学的に受容可能なキャリアを含む。そのような組成物は、そのような障害の処置およびそのような障害に伴う疼痛を制御および減少させるにおいて有用である。そのような組成物は、1つ以上の特定の活性薬剤(例えば、一酸化窒素ドナー)(これは、肛門障害を処置するにおいておよびそれに伴う疼痛を制御および除去するにおいて有用である)の単位投薬量を含み得る。好ましくは、その組成物は、そのような処置の必要な被験体に対して単位投薬形態で投与される。他の実施形態において、その組成物は、単独で使用される場合には有効量未満であるが、被験体においてcAMPまたはcGMPのレベルを調節する第二の薬剤と組み合わせて使用される場合には有効な量でNOドナーを含む。局所的な徐放および長期の放出組成物は、代表的に改変体であり、これは、以下を含む1)親水性基剤中の吸収剤;2)疎水性基剤中の吸収剤;および3)適切なビヒクル中に分散された吸収性マトリクスを含むコーティングされたビーズ。また、肛門障害またはGI管障害を処置する方法が提供される。この方法は、有効量のそのような組成物(例えば、単位投薬形態中)をそのような処置の必要な被験体の適切な肛門領域に局所的に投与する工程を包含する。
【0096】
本発明のそのような親水性組成物及び調製物は、そのポリマーに対してその一酸化窒素ドナーを結合させるための、一酸化窒素ドナー(または他の適切な薬剤または薬剤の組合せ)およびポリマー(例えば、セルロース(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、より高分子量のポリエチレングリコール、メタクリル酸−アクリル酸エマルション、ヒドロゲル、カルボポール、エチル酢酸ビニルコポリマー、またはポリエステルなど)を含む。次いで、その一酸化窒素ドナーポリマーマトリクスまたは薬剤ポリマーマトリクスを、親水性ビヒクル中に分散させて、半固体を形成させる。そのような親水性組成物を適切な肛門領域(例えば、肛門管または肛門括約筋)へと投与した後、その半固体調製物中の水が吸収され、そしてその活性成分(一酸化窒素ドナーまたは他の薬剤)を有するそのポリマーマトリクスは、それが塗布された肛門領域または領域においてコーティングとして残留する。次いで、その一酸化窒素ドナーは、このコーティングからゆっくりと放出される。
【0097】
本発明の疎水性組成物および調製物は、親水性調製物において使用されるような類似のポリマーを使用するが、ポリマー/一酸化窒素ドナーマトリクスは、ビヒクル(例えば、プラスチベース(plastibase))、疎水性組成物および調製物中に分散される。プラスチベースは、一酸化窒素ドナーを部分的にのみ溶解するミネラルオイル基剤である。半固体組成物は、その組成物が塗布された肛門領域(例えば、肛門管または肛門括約筋領域)における薄いコーティングを形成し、そしてゆっくりとその活性物を放出する。長期の作用は、そのビヒクル中の活性成分(一酸化窒素ドナー)の可溶性によって主に制御される。
【0098】
本発明はまた、コーティングされたビーズを提供する。このビーズは、まず、ポリエチレングリコール、賦形剤(filler)、結合剤および他の賦形剤と混和したセルロースベースの材料上に一酸化窒素ドナーまたは他の薬剤もしくは薬剤の組合せを吸収させることによって生成される。次いで、得られたマトリクスは、押出され、そして球形化して(例えば、球形へとさせるプロセス)小さなビーズを生成する。次いで、このビーズを1つ以上の適切な材料(例えば、メタクリル酸−アクリル酸ポリマー、ポリウレタン、エチル酢酸ビニルコポリマー、ポリエステル、シラスチック(silastic)など)で適切な厚さへとコーティングする。このビーズ上のコーティングは、そのコアビーズからその薬剤の放出を調節する速度制御膜として作用する。
【0099】
(経口処方物)
なお別の実施形態において、本発明は、経口投与に適切な薬学的組成物を提供する。これは、単位投薬形態で提供され、一単位投薬量あたり、あるホスホジエステラーゼインヒビター、環状ヌクレオチド模倣物、またはβアドレナリン作動性アゴニスト、および薬学的に受容可能なキャリアを含む。このような組成物は、上記に提供されるそれらの障害および状態を含む肛門直腸障害を処置するために有用である。
【0100】
口腔(頬)膜への送達(代表的には、経口処方物)(例えば、ロゼンジ、錠剤またはカプセル)が使用される。これらの処方物の製造方法は、当該分野において公知であり、これらには、以下が挙げられるがそれらには限定されない:薬理学的薬剤の予備製造錠剤への添加;不活性賦形剤、結合剤および薬理学的薬剤もしくはその薬剤を含む物質の冷却圧縮(米国特許第4,806,356号において記載されるとおり);ならびにカプセル化。別の経口処方物は、接着剤を用いて口腔粘膜へと塗布され得るもの(例えば、セルロース誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース)である(例えば、米国特許第4,940,587号に記載される)。この口腔接着処方物は、口腔粘膜に塗布される場合に、口へ、および口腔粘膜を介しての、薬理学的薬剤の制御された放出を可能にする。本発明の抗炎症剤は、これらの処方物にもまた、取り込まれ得る。
【0101】
(エアゾール処方物)
鼻または気管支の膜への送達のために、代表的には、エアゾール処方物が使用される。用語「エアゾール」とは、気管支経路または鼻経路へ吸入され得る、薬理学的因子の任意の気体を保持する懸濁された相を包含する。具体的には、エアゾールは、本発明の化合物の小滴の気体含有懸濁物を、メモリ付き投与吸入器または噴霧器、あるいはミストスプレー装置において生成され得るように包含する。エアゾールはまた、空気または他のキャリア気体中に懸濁された薬理学的薬剤の化合物の乾燥粉末組成物を包含する。これらは、例えば、吸入デバイスからガス吸入によって送達され得る。エアゾールを作製するにおいて使用される溶液について、その薬理学的薬剤の濃度の好ましい範囲は、0.1−100ミリグラム(mg)/ミリリットル(mL)であり、より好ましくは0.1−30mg/mlであり、そして最も好ましくは、1−10mg/mLである。通常、その溶液は、生理学的に適合性の緩衝剤(例えば、リン酸塩または重炭酸塩)を用いて緩衝化されている。この通常のpH範囲は、5〜9であり、好ましくは6.5〜7.8であり、そしてより好ましくは7.0〜7.6である。代表的には、塩化ナトリウムを加えて、その生理学的範囲に対して浸透圧を、好ましくは等張の10%以内に調節する。エアゾール吸入剤を作製するためのそのような溶液の処方物は、RemingtonのPharmaceutical Sciencesにおいて議論されている。また、以下も参照のこと:GandertonおよびJOねs、DRUG DELIVERY TO THE RESPIRATORY TRACT、Ellis Horwood(1987);Gonda(1990)Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 6:273−313;ならびにRaeburnら、(1992)J.Pharmacol.Toxicol.Methods 27:143−159。
【0102】
薬理学的薬剤の溶液は、エアゾール吸入剤医薬を作製するために慣用的に用いられる任意の公知の手段によってエアゾールへと変換され得る。一般に、そのような方法は、その溶液の容器を圧縮する工程(通常は不活性キャリア気体を用いて)または圧縮する手段を提供する工程、およびその圧縮された気体を小さな穴を通過させ、それによって、その薬物が投与される動物の口および気管へとその溶液の小滴を押出す工程を包含する。代表的には、マウスピースをその穴の出口に適合させて、口および気管への送達を容易にする。
【0103】
(非経口処方物)
なお別の実施形態において、本発明は、単位投薬量形態で提供される非経口投与のために適切な薬学的組成物を提供する。この単位投薬量形態は、1単位投薬量あたり、あるホスホジエステラーゼインヒビター、環状ヌクレオチド模倣物またはβアドレナリン作動性アゴニスト、および薬学的に受容可能なキャリアを含む。そのような組成物は、上記に記載のような肛門直腸障害および状態を処置するために有用である。
【0104】
(局所的全身処方物)
溶液および水性懸濁物は、眼の表面または角膜または結膜を通過した後に眼の中において活性でなければならない薬物を投与するために最も広汎に使用される薬学的形態である。薬物のバイオアベイラビリティーを増加させるため、治療効力を増進するため、および患者のコンプライアンスを改善するために、種々の投薬形態が過去数年に亙って開発されてきている。これらには、可溶性インサート(徐々に溶解を受ける/または表面腐食)、不溶性インサート(例えば、薬物処理されたコンタクトレンズ(例えば、Ocusert(登録商標)など)、ゲル(例えば、Gelrite(登録商標))、ナノ粒子(エマルション、懸濁物など)を介したリポソームおよび薬物送達、ならびに軟膏(Edman,BIOPHARMACEUTICAL OF OCULAR DRUG DELIVERY、CRC Press,1993を参照のこと)。
【0105】
(肛門直腸障害を処置する方法)
別の局面において、本発明は、肛門直腸障害を処置するための方法を提供する。この方法は、そのような処置を必要とする被験体の適切な肛門領域または罹患した肛門組織(例えば、外部肛門組織もしくは内部肛門組織または肛門管)に、有効量の上記に提供される任意の組成物を投与する工程を包含する。本発明のそのような方法を使用することによって、肛門直腸高緊張および/または痙攣が緩和され、そして肛門直腸障害(例えば、裂肛、肛門潰瘍、痔核)に伴う徴候および症状ならびに痛みが改善される。本明細書に記載される方法はまた、再発性肛門疾患の処置に適用可能であり、そしてまた、肛門括約筋の弛緩および(障害を有する患者および有しない患者での)(特に装置が肛門に挿入される場合の手順の間の)肛門直腸検査の間の疼痛の減少のために有用である。
【0106】
本発明はさらに、上記の組成物を、局所麻酔剤(例えば、リドカイン、プリロカインなど)と組み合わせて使用する方法を提供する。それらの組成物の各々は、代表的に、医学的状態(例えば、痔核疼痛)のため、および内部肛門括約筋、食道底部括約筋、幽門括約筋、オッジ括約筋、および回結腸括約筋を含む括約筋の痙攣および/または高浸透性を処置するための、有効な処置としての薬学的に受容可能な投薬形態で存在する。これらの薬学的調製物はまた、裂肛、術後直腸疼痛、緊張過度幽門狭窄、および膵炎を含む肛門直腸領域の痙攣および/または緊張過度から生じる状態、ならびにツェンカー憩室、アカラシア、食道痙攣(くるみ割食道)、過敏性腸疾患、およびヒルシュプラング病(腸閉塞))を含むGI管の筋肉の一般的な痙攣から生じる状態を処置するにおいて有用である。別の局面において、本発明は、肛門障害を処置するための方法を提供する。この方法は、そのような処置を必要とする被験体に局所麻酔剤とともにそのような組成物の有効量を投与する工程を包含する。そのような組成物は、経口的、局所的、または非経口的に投与され得る。
【0107】
同様に、本発明は、上記の組成物を局所的な抗炎症剤(例えば、ナプロキセン、ピロキシカムなど)と組合せて、痔核痛のような医学的状態のため、ならびに括約筋の緊張過度および/または痙攣(内部肛門括約筋、食道底部括約筋、幽門括約筋、オッジ括約筋および回結腸括約筋を含む)を処置するための有効な処置として薬学的に受容可能な投薬形態で用いる方法を提供する。これらの薬学的調製物はまた、裂肛、術後直腸痛、緊張過度幽門狭窄、および膵炎を含む肛門直腸領域の括約筋の痙攣および/または高緊張、ならびにツェンカー憩室、アカラシア、食道痙攣(くるみ割食道)、過敏性腸疾患、およびヒルシュプラング病(腸閉塞)を含むGI管の筋肉の一般的な痙攣から生じる状態を処置するにおいて有用である。別の局面において、本発明は、そのような組成物の有効量を、局所麻酔剤と組み合わせて、そのような処置を必要とする被験体に投与する工程を包含する、肛門障害を処置するための方法を提供する。そのような組成物は、経口、局所または非経口的に投与され得る。
【0108】
本発明によって提供されるさらなる方法は、NOドナー、ホスホジエステラーゼV型(PDE V)インヒビター、ホスホジエステラーゼII型(PDE II)インヒビター、非特異的PDEインヒビター、βアドレナリン作動性アゴニスト、cAMP依存性プロテインキナーゼアクチベーター、α1アドレナリン作動性アンタゴニスト、スーパーオキシドアニオン(O2+)スカベンジャー、ATP感受性K+チャネルアクチベーター、エストロゲンもしくはエストロゲン模倣物、または平滑筋弛緩剤から選択される2つ以上の薬剤が合わせてまたは連続的に投与されて、増強された治療的利益を提供する方法である。特に、NOドナーおよび上記に提供されるものからの第二の薬剤の使用は、NOドナーを単独で使用する場合の等量の有効用量よりも、少なくかつあまり重篤でない副作用を提供し得る。より詳細には、第二の薬剤と組み合わせたNOドナーの使用は、NOドナーの減少された量を使用して、単独で使用するのと同じ利益を達成することを可能にし、そして頭痛の有意に減少した発生および期間を提供する。
【実施例】
【0109】
(実施例1)
本実施例は、cGMPの効果を、単独およびNOドナーとの組合せで、ラット内部肛門括約筋(IAS)弛緩モデル中において例示する。
【0110】
雄性Sprague−Dawleyラット(300〜400g)を、筋肉内に投与したケタミン(90mg/kg)、キシラジン(9mg/kg)で麻酔し、そして必要に応じて1/3の用量を補充した。ラットを、加熱術台(Harvard Apparatus)上で、実験の期間中、仰向けに緩やかに拘束した。麻酔の利尿効果を、腹膜内包埋した24ゲージの血管カテーテル(VWR、San Francisco,CA)を通じて生理食塩水を用いて再水和することによって相殺した。収縮/弛緩測定アセンブリは、−50mmHgと150mmHgとの間の圧力測定について正確である、Digi−Med Low Pressure Analyzer(Micro−Med)に接続されたMillarカテーテル/トランスデューサ(1.67mm直径)を備えていた。このデータを統合し、そしてDigi−Med System Integratorソフトウェアを用いて波形へと変換した。血液圧力の変化を、動脈カテーテル/トランスデューサおよびDMSIソフトウェアとともにDigi−Med Blood Pressure Analyzerを使用してモニタリングした。呼吸変化を、水銀ひずみゲージ/トランスデューサを用いてモニタリングし、そのラットの胸郭の周りを包み、DMSIソフトウェアを用いてDigi−Med Analog Signal Analyzerへとつないだ。薬物送達を、カテーテルセンサに隣接するPE10チューブを用いてデッドスペースのない2つのHamiltonシリンジによって達成した。薬物を、代表的に、安定なベースライン読み取りから記録された直後に適用した。麻酔していない拘束されたラットを他の研究において使用したが、麻酔後の安静肛門圧においては差違はみられなかった。従って、これらの研究を、動物に対する過度な負担を避けるために麻酔して行った。
【0111】
代表的な平均安静内部肛門括約筋圧(IASP)は、このモデルにおいて、30〜60mmHGの間を変動した。Millarカテーテルセンサは、ISAについて正確な、独立した記録を可能にした。図1は、安静について代表的な波形パターンがIASPに対して最小限の効果を有したことを示す。ニトログリセリンでの処置後最初の10分間を図2に示す。
【0112】
同様の実験的プロトコルを用いて、cGMP模倣物であるジブチリルcGMPの効果を研究した。図3は、肛門管に適用された、生理食塩水中の20μlのジブチリルcGMP10%溶液が、処置後2.5時間で、45%平均のIASPを減少させたことを示す。実験を終える前の最後の1時間の平均のIASPは、60%減少していた。
【0113】
IASPは、翌朝までに34%さらに減少した。このことは、薬物の潜在的な長期効果を示す。1%ニトログリセリンの続いての投与は、30分間で24%IASPを減少させ、そして処置後最初の10分間で71%減少した。IASPが処置前のレベルに戻った後、ジブチリルcGMPのさらなる用量を投与し、そして続いて3時間10分に亙ってIASPが15%低下することが見出された(図4を参照のこと)。
【0114】
これらの結果は、肛門括約筋の緊張を弛緩するにおけるcGMP模倣物の効果を支持し、そしてより重要なことに、NOドナーとcGMP模倣物との組合せを用いることが、NOドナーの作用の迅速な発現およびcGMP模倣物によって生成される弛緩のより長い時間に起因して、潜在的な利益があることを示唆する。
【0115】
(実施例2)
この実施例は、ラット内部肛門括約筋の弛緩モデルにおけるホスホジエステラーゼインヒビターの効果を例示する。
【0116】
上記と同じ実験プロトコルを用いて、1−メチル−2−ピロリジノン中の20μLの5%ザプリナスト溶液は、ビヒクル処置単独と比べて、32分間に亙り、平均IASPを21%下げた。ホスホジエステラーゼインヒビターの効果を、最小限の濃度のNOドナー(例えば、ニトログリセリン)によってさらに増強し得た。このNOドナーは、高用量のNOドナー単独を用いて観察された頭痛および他の有害な反応を伴わずに、迅速な効果の発揮および持続的な括約筋の弛緩をもたらした。
【0117】
(実施例3)
この実施例は、ラット小腸肛門括約筋の収縮/弛緩モデルにおけるカリウムチャネルオープナー(ミノキシジル)の効果を例示する。
【0118】
上記と同じ実験プロトコルを使用して、62.5μ%のプロピレングリコール中の単回20μl用量の4%溶液のミノキシジルは、処置後2.5時間に亙って、IASPの64%の減少を生じた。ビヒクル単独は、IASPに対して殆ど効果を有しなかった(図5を参照のこと)。
【0119】
(実施例4)
本実施例は、ホスホジエステラーゼインヒビターおよび他の薬剤を個体中で用いて、肛門障害を処置して、急性および慢性の裂肛を含む傷害に伴う疼痛を減少させるための方法を例示する。
【0120】
重篤な肛門痛を伴う患者(特に腸の動きの間および後)を、以下の治療で処置し得る:ザプリナスト、ザプリナストおよびニトログリセリン、ミノキシジル、ニトログリセリンおよびcGMP模倣物、イソプロテネロール、またはシルデナフィル(1日1回〜3回または肛門直腸痛を有効に減少するに必要なだけのいずれか)。疼痛減少(平均痛および/または排泄痛における減少によって示される)を、評価し、そして疼痛減少までの時間もまた評価する。肛門痛を寛解するにおいて有効な治療は、最終的に、これらの肛門直腸障害の有効な消散をもたらす。さらに、疾患の再発を有効に予防し得、そして頭痛、眩暈および低血圧のような有害反応を最小限で生じるかまたは全く生じない薬物は、非常に治療的利益がある。
【0121】
(実施例5)
本実施例は、ホスホジエステラーゼインヒビターおよび他の薬剤を用いて個体における肛門障害を処置して、急逝および慢性の裂肛の治癒を促進させるための方法を例示する。
【0122】
裂肛を有する患者を、以下の治療で処置し得る:ザプリナスト、ザプリナストおよびニトログリセリン、ミノキシジル、ニトログリセリンおよびcGMP模倣物、イソプロテネロール、またはシルデナフィル(1日1回〜3回または治癒を有効に促進するに必要なだけのいずれか)。治癒は、観察される裂目の再内皮化の改善によって示され、そして治癒が完了するまでに必要な時間とともに評価され得る。裂肛の治癒において有効な治療は、最終的に、これらの肛門直腸障害の消散をもたらす。さらに、この疾患の再発を有効に予防し得、そしてなお、頭痛のような有害反応を最小限で起こすかまたは起こさない薬物は、有意な医療的利益を提供する。
【0123】
(実施例6)
本実施例は、痔核の症状または疾患を伴う患者において出血を減少する方法を例示する。
【0124】
痔核の症状または疾患を伴う患者を、以下の治療を用いて処置し得る:ザプリナスト、ザプリナストおよびニトログリセリン、ミノキシジル、ニトログリセリンおよびcGMP模倣物、イソプロテネロール、またはシルデナフィル(1日1回〜3回または出血を有効に減少し、そして治癒を促進するに必要なだけのいずれか)。出血および/または疼痛の減少によって示される疾患の消散は、治癒までの時間とともに評価され得る。痔核症状を改善するにおいて有効な治療は、最終的に、これらの肛門直腸障害の消散をもたらす。さらに、この疾患の再発を有効に予防し得、他方で、頭痛のような有害反応を最小限で起こすかまたは起こさない薬物は、有意な医療的利益を有する。
【0125】
(実施例7)
1.0gのサルブタモール、0.6gのカルボポール 1342 USP、35.44gのプロピレングリコール、15.16gの脱水和したエタノールUSP、15.16gのイソプロピルアルコールUSP、2.5%オレイン酸、6.0〜7.0のpHに調整するためのトリエタノールアミンHCl 1N、0l05gの酪酸ヒドロキシトルエンNF、および29.72gの精製水USPを含む基剤ゲルの組成物。他の濃度のサルブタモールを、同じゲル基剤中に添加して、治療的に有効な用量を達成し得る。これはまた、オレイン酸のようなゲル基剤の賦形剤を用いて他のβアゴニストの濃度を調整することによって達成され得る。
【0126】
(実施例8)
局所組成物の一例は、0.05%〜1%のシルデナフィル、75%(w/w)の白色ワセリンUSP、4%(w/w)のパラフィン蝋USP/NF、ラノリン14%(w/w)、2%ソルビタンセスキオレエートNF、4%プロピレングリコールUSP、および1%肛門括約筋弛緩剤を、肛門直腸領域に対して治療有効用量にて含む。代表的には、50mg〜600mgのシルデナフィル軟膏を、肛門直腸障害(例えば、裂肛、肛門潰瘍および痔核疾患)に伴う徴候および/または症状を減少させるために、肛門直腸領域に塗布し得る。シルデナフィルまたは他のホスホジエステラーゼインヒビターの濃度は、局所組織へのシルデナフィルの付着を容易にする賦形剤か、または罹患した組織への吸収を容易にする薬剤とシルデナフィルとの間の比を調整することによって変動させ得る。
【0127】
局所組成物のさらに別の実施例は、ニトログリセリンを0.1%の濃度で含み、そしてシルデナフィルを0.1%の濃度を上記と同じ軟膏基剤に取り込み得る。この組成物は、メモリ付き投与deviCeから局所的に塗布され、ここで、1.5g用量のその組成物に対して50mgが罹患した肛門直腸組織に対して投与されて所望の治療効果を達成する。
【0128】
別の治療的レジメンは、経口シルデナフィル錠剤および局所ニトログリセリン軟膏の両方を肛門直腸障害に罹患した患者に提供することである。これらの2つの投薬形態を、これらの患者の中で最良の効力およびコンプライアンスを提供する組み合わせで使用し得る。
【0129】
(実施例9)
アミノフィリン(aminothylline)局所スプレー組成物の組成物は、0.1〜5.0%(w/w)のアミノフィリン、アセチル化ラノリンアルコール、アロエベラ、ブタン、酢酸セチル、ヒドロフルオロカーボン、メチルパラベン、ラウリル酸PEG−8、およびポリソルベート80を、2オンスのポンプスプレー瓶中に含む。アミノフィリンまたは他の非特異的なホスホジエステラーゼインヒビターの濃度は、0.5%と5%との間を変動し得る。他の非ヒドロフルオロカーボンプロペラントもまた、この組成物においてヒドロフルオロカーボンの代わりに使用され得る。この組成物は、1日1回〜4回罹患した組織に直接噴霧されて、肛門直腸障害に罹患した徴候および/または症状の所望の寛解を達成し得る。この組成物はまた、メントールおよびベンゾカインを含んで、直接の局所的疼痛寛解および感覚の鎮静化を提供し得るが、アミノフィリンは、より長く続く肛門括約筋圧の弛緩を提供する。
【0130】
(実施例10)
基剤クリーム組成物は、2gの塩酸プラゾシン(2.0%w/w)、54.3gの精製水USP、2gのSepigel305、4.5gのCrodamol、5.0gのグリセリン、6.0gのゴマ油、15.0gの白色ワセリンUSP、2.0gのラノリンUSP、7.0gの1,3−ブチレングリコール、0.2gのメチルパラベンおよび2.0gのシリコンHL88を含む。
【0131】
基剤クリームは、水性対非水性(すなわち、クリームの成分である油相)のまず別々の混合によって調製され得る。一旦塩酸プラゾシンを含む水相が充分に混合されると、融解させた油相をその水相中へとゆっくりと攪拌させて、均一なクリーム基剤を形成させる。
【0132】
(実施例11)
シルデナフィルは、V型ホスホジエステラーゼの特異的なインヒビターであり、錠剤を介して経口的に、非経口的に与えられ得、あるいは裂肛(急性または慢性のいずれかの裂肛)または他の肛門直腸障害と診断された患者に局所塗布され得る。シルデナフィルは、8週間にわたり、1日あたり1〜3回与えられ得、特に、慢性の裂肛に罹患した患者の場合においては、肛門直腸障害に罹患した徴候および症状の現象を生じさせる。
【0133】
局所塗布について、およそ50mg〜900mg用量の、シルデナフィルを0.02%〜5%の濃度で含むクリーム(メモリ付き投与デバイスで測定される)を、塗布器または指を用いて罹患した肛門直腸領域に、1日1回〜4回塗布して、所望の治療的効果を達成し得る。あるいは、所定のレジメンで経口および局所の処置を使用して、最良の治療効果を達成し得る。
【0134】
(実施例12)
ホスホジエステラーゼインヒビター(例えば、アミノフィリン)は、錠剤を介して経口的に、非経口的に与えられ得、あるいは裂肛(急性または慢性のいずれかの裂肛)または他の肛門直腸障害と診断された患者に、局所投薬形態(例えばクリーム)から塗布され得る。局所塗布について、およそ50mg〜900mg用量のクリーム(メモリ付き投与デバイスで測定される)を、塗布器または指を用いて罹患した肛門直腸領域に、1日1回〜4回塗布して、所望の治療的効果を達成し得る。
【0135】
(実施例13)
βアドレナリン作動性アゴニスト(例えば、サルブタモール)を、坐剤投薬形態から与えられ得、あるいは裂肛または他の肛門直腸障害(急性または慢性のいずれかの裂肛)と診断された患者に、局所投薬形態(例えばクリーム)から塗布され得る。坐剤塗布について、3gの坐剤単位に対しておよそ300mgが、塗布器または指を用いて罹患した肛門直腸領域へと塗布され得る。一旦坐剤が肛門膣内で融解すると、その投薬形態から放出されたサルブタモールは、所望の治療効果を達成するために利用可能である。
【0136】
(実施例14)
αアドレナリン作動性アンタゴニスト(すなわち、プラゾシン)を、単独で、またはリドカインのような局所麻酔剤と組み合わせて、あるいは混合されたβ2アドレナリン作動性アゴニストおよびβ3アドレナリン作動性アゴニスト(例えば、サルブタモール)と組み合わせて、あるいはPDE IVインヒビター(例えば、ariflo(SB207499)、RP73401、CDP840、ロリプラム、およびLAS31025)と組み合わせて、痔核障害と診断された患者に局所スプレーから塗布され得る。プラゾシンは、そのスプレーからそのプロペラントとともに罹患した領域に直接塗布され得、そして必要に応じて用いて、局所疼痛および肛門括約筋緊張過度を寛解させ得る。最終的に、プラゾシンの塗布は、痔核障害の治癒をもたらした。
【0137】
本明細書において記載される実施例および実施形態は、例示の目的のためのみであり、そしてそれに鑑み種々の改変または変更が、当業者には示唆され、そして本願の趣旨および範囲ならびに添付の特許請求の範囲の範囲内に包含されるべきであることが理解される。本明細書において引用されたすべての刊行物、特許および特許出願は、その全体がすべての目的のために参考として本明細書において援用される。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】図1は、コントロール実験の条件下のラットにおける、安静時IASPについての代表的な波形パターンを例示する。
【図2】図2は、プロピレングリコール中の1%ニトログリセリン溶液20μlを投与した後のラットにおける、IASPについての波形パターンを例示する。
【図3】図3は、ラットの内部肛門括約筋圧に対するcGMP模倣物の効果を例示する。この図は、生理食塩水中の10%ジブチリル−cGMP溶液を20μl投与した後のラットのIASPについての波形パターンを示す。
【図4】図4は、ラットの内部肛門括約筋圧に対するホスホジエステラーゼインヒビターの効果を示す。この図は、1−メチル−2−ピロリジノン中の5%ザプリナスト溶液を20μl投与した後のラットのIASPについての波形パターンを示す。
【図5】図5は、ラットにおける内部括約筋圧に対するカリウムチャネルオープナーの効果を示す。この図は、62.5%プロピレングリコール中の4%ミノキシジル溶液を20μl投与した後のラットのIASPについてに波形パターンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肛門直腸障害の処置のため、およびそれに伴う疼痛を制御するための組成物であって、該組成物が、以下:
ホスホジエステラーゼII型インヒビター、ホスホジエステラーゼIV型インヒビター、ホスホジエステラーゼV型インヒビター、非特異的ホスホジエステラーゼインヒビター、スーパーオキシドスカベンジャー、β−アドレナリン作動性アゴニスト、cAMP依存性プロテインキナーゼアクチベーター、α1−アドレナリン作動性アンタゴニスト、エストロゲン、ATP感受性K+チャネルアクチベーターおよび平滑筋弛緩剤、
からなる群より選択される第2の薬剤を、薬学的に受容可能なキャリアと混合して、NOドナーを含む、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−56042(P2007−56042A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328712(P2006−328712)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【分割の表示】特願2000−587755(P2000−587755)の分割
【原出願日】平成11年12月13日(1999.12.13)
【出願人】(501238058)セレジィ ファーマシューティカルス, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】