説明

脂肪族結合した臭素を含有するポリマーのための安定剤

脂肪族臭素含有ポリマーが、アルキルホスファイトとエポキシ化合物との混合物の使用により安定化される。この安定剤パッケージは、脂肪族臭素含有ポリマーが溶融加工操作に見られるような高温に供される場合に生じる架橋反応の防止に極めて有効である。安定化された脂肪族臭素含有ポリマーは、他のポリマー(とりわけポリスチレン発泡体)に対する難燃剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、米国仮出願第61/138,572号(2008年12月18日出願)による優先権を主張する。
【0002】
本発明は、臭素化ポリマー難燃剤を含有する安定化組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ヘキサブロモシクロドデカンは、ポリスチレン発泡体用に一般的に使用される難燃剤であり、種々の管轄における規制の圧力に直面している。これは1つには、これが生物濃縮すると考えられているからである。従ってこれの置き換えの要望が存在する。
【0004】
特定の臭素化ポリマーは、種々のポリマー系における難燃剤としてのヘキサブロモシクロドデカンの置き換えについての有望な候補である。これらの物質は、これらが生物濃縮されると予測されないのに十分高い分子量を有する。脂肪族炭素−炭素不飽和を含有する種々のポリマーは高臭素量に臭素化でき、そして高臭素量はこれらを有効なFR添加剤にする。臭素化ポリマーは、しばしば、他の鍵となる特徴(他のポリマーおよび他の添加剤(とりわけ発泡剤)との親和性が挙げられる)をも有する。この点において、臭素化ポリマーは、潜在的に多用途のFR添加剤である。ポリマー骨格は、具体的なバルクレジンとともに用いるために選択または調整できるからである。例えば、ポリスチレンブロックを臭素化ブタジエンポリマー中に含ませてポリスチレンレジン中への分散性を改善することができる。ポリマー発泡体用途において、FR添加剤は、発泡プロセスに対して、または生成する発泡体に対して、特に発泡体セル形成および発泡体セルサイズに対して、顕著な不利な効果を有さないのがよい。
【0005】
臭素化FR添加剤の性能は、臭素−炭素結合の熱安定性に大きく左右される。これらの結合は、例えば、FR添加剤をバルクレジン中に組み込むため、または得られるブレンド物を有用な物品に加工するため、に用いる場合がある種々の溶融加工操作の間に直面する加熱条件に耐えるのに十分に安定であるのがよい。FR添加剤は、これらの加工操作の間、温度230〜250℃または更に高温に曝される場合があり、そしてこれらの条件下で顕著量の臭素を放出しないのがよい。幾らかのより高温、典型的には300〜400℃で、FR添加剤は、熱的に分解して活性臭素含有種(これは火炎条件下で火炎抑制を助けると理解されている)を生成しなければならない。
【0006】
臭素化FR添加剤が十分熱的に安定でない場合、臭素は溶融加工中に遊離される可能性がある。これは幾つかの問題の原因になる。1つの問題は、加工中の臭素の損失がFR性能の損失を招来し、臭素化FR添加剤を含有するバルクポリマーを分解させる可能性があることである。別の問題は、損失した臭素がHBr(これは、加工設備を腐食させ、更にはFR添加剤を触媒的に分解させ、そして作業者の曝露の懸念を与える可能性がある酸である)を形成する可能性があることである。
【0007】
第3の問題は、臭素化FR添加剤が高分子量ポリマーである場合に存在することが見出されている。臭素の損失は、ポリマー鎖間の分子間結合の形成を招来する可能性がある。1つのあり得る機構は、ポリマー中での脂肪族炭素−炭素不飽和の形成を含む。この不飽和は重合性である。高温の条件下で、これらの不飽和種、更に他の残りの不飽和(ポリマー中に存在する場合があるもの)は、他のポリマー分子と結合して更に高い分子量を有する物質を形成する可能性がある。臭素化ポリマーの分子量はそもそも高いため、不溶性ゲルを形成するのに十分な分子量および/または架橋を構築するのは困難ではない。
【0008】
ゲルは生成物中で化粧上の欠陥の原因となる可能性があり、そして場合によってはその性能に影響する可能性がある。ゲルは、加工設備の内側表面上にビルドアップされる可能性がある。特別な問題は、発泡材料の製造において生じる可能性がある。ゲル化した材料が発泡体のセル構造の形成と干渉し、またその物理特性に対する不利な作用を有する可能性がある。これは、ゲル化した材料の粘弾性特性がしばしばFR添加剤自体のものと顕著に異なるからである。
【0009】
ゲル化の程度は時間およびプロセス温度に左右される。ゲル化の量は、特に材料を温度200℃超で溶融加工する場合には、極めて顕著になる可能性がある。この問題は、熱可塑性発泡体押出プロセスおよび大量のスクラップを発生させる他のプロセスにおいて特に深刻である。コストを低減するために、スクラップをプロセス中に再循環させて戻す。従って、スクラップ中に含有されるゲル化した材料およびFR添加剤も再循環される。ゲルはこの方法で再循環させて戻した場合にしばしば再溶融できない。再循環させた、ゲル化した材料およびFR添加剤は、高い加工温度への追加の曝露に供される。これは、加速されたゲル生成を招来する可能性がある。ゲル粒子が追加の反応にあずかる場合があるからである。結果として、スクラップがますます再循環されるに従って、ゲル化した材料が生成物中に蓄積する。このゲル形成を可能な限り大きく低減することが極めて重要である。
【0010】
従って、脂肪族臭素含有ポリマーおよび脂肪族臭素含有コポリマーのゲル化を、これらが高温に曝される場合に低減または防止する方法を提供することが望ましい。これは、低コストで、溶融加工操作自体または得られる生成物に対する顕著な不利な影響を有さない材料または方法を用いて達成されるのがよい。溶融加工操作の生成物が発泡材料である場合、発泡体構造、すなわちセルサイズ、セルサイズ分布および開放/閉鎖セル量への影響が最小限であるのがよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、一側面において、ポリマー組成物の製造方法であって、溶融バルクポリマーおよび脂肪族臭素含有ポリマーを含有する混合物を、(1)少なくとも1種のアルキルホスファイト、(2)少なくとも1種のエポキシ化合物、または(3)(1)および(2)の両者、の存在下で溶融加工することを含む方法である。
【0012】
アルキルホスファイトおよびエポキシ化合物は各々、溶融加工操作におけるゲルの形成を顕著に低減することが見出されている。加えて、これらの材料はまた、以下に説明する重量損失試験に従って測定される、脂肪族臭素含有ポリマーの熱安定性を改善する。アルキルホスファイトおよびエポキシ化合物は、小さい添加レベルで有効であり、そしてコストを殆ど加えず、溶融加工操作または溶融加工されたポリマーの特性に対して有する影響が最小限である。溶融加工操作が押出発泡プロセスである好ましい方法において、アルキルホスファイト化合物およびエポキシ化合物の存在は、セルサイズおよび発泡体物理特性に対して不利な影響を殆ど有さない。
【0013】
本発明の別の利点は、必要なエポキシ化合物の量が通常小さく、コスト、燃焼特性に対する潜在的な不利な影響、およびより低分子量の物質の加工設備の内側表面および外側表面への潜在的なビルドアップを最小化することである。同様に、他の安定剤,例えば種々の無機物質、ポリヒドロキシル化合物および有機スズ安定剤の存在は排除または最小化できる。従って、これらの物質を用いる場合に見られることがある不利な効果、特に発泡体セル構造に対する不利な効果を、回避または低減できる。
【0014】
これらの効果は、少なくとも1種のアルキルホスファイトおよび少なくとも1種のエポキシ化合物を組合せで使用する場合に一層現れる。これらの化合物の組合せは、既知レベルの性能を得るために必要なエポキシ化合物の量を低減するという追加の利益を有する。これは、コストの点から、そして加工設備に影響する場合がある添加剤の使用を最小限にすることから望ましい。これらの効果は、添加レベルがより小さい場合には低下する。
【0015】
本発明によって提供される低下したゲル形成により、ゲルが系中にビルドアップする傾向が小さくなるに従って、スクラップが溶融加工操作中により容易に再循環されることが可能になる。低減されたゲル形成は、化粧上の利益を与えることができ、そして場合によっては最終製品の特性に対する有利な効果を有することができる。
【0016】
別の側面において、本発明はまた、(a)バルクポリマー、(b)脂肪族臭素含有ポリマー、および、(c)少なくとも1種のアルキルホスファイト、少なくとも1種のエポキシ化合物、または少なくとも1種のアルキルホスファイトと少なくとも1種のエポキシ化合物との混合物、を含むポリマー組成物であり、そして更に別の側面においては、脂肪族臭素含有ポリマー、および少なくとも1種のアルキルホスファイト、少なくとも1種のエポキシ化合物、または少なくとも1種のアルキルホスファイトと少なくとも1種のエポキシ化合物との混合物を含む組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において、バルクポリマーは、脂肪族臭素含有ポリマー、アルキルホスファイトおよび/またはエポキシ化合物の存在下で溶融加工される。バルクポリマーは、任意の熱可塑性ポリマー(これは温度250℃以下で溶融加工できる)であることができる。バルクポリマーおよび脂肪族臭素含有ポリマーは、脂肪族臭素含有ポリマーが、溶融したバルクポリマーと親和性であるように、一緒に選択するのがよい。脂肪族臭素含有ポリマーは、本発明の目的のために、バルクポリマーと親和性である(これが、存在する相対比でバルクポリマー中で混和性である場合、またはこれがバルクポリマー中に分散して微分散ドメインを形成できる場合には)と考えられる。これらのドメインは、好ましくは主に25ミクロン未満、より好ましくは10ミクロン未満のサイズであるが、幾らかかのより大きいドメインが存在してもよい。溶融加工された生成物中の脂肪族臭素含有ポリマーの主に巨視的(約100ミクロン以上のスケール)なドメインは、このような親和性の欠如を示す。
【0018】
バルクポリマーとしての主題の熱可塑性ポリマーとしては、ビニル芳香族ポリマー(ビニル芳香族ホモポリマー、ビニル芳香族コポリマー、または1種以上のビニル芳香族ホモポリマーおよび/またはビニル芳香族コポリマーのブレンド物が挙げられる)、更に他の有機ポリマーであって脂肪族臭素含有ポリマーが可溶であるかまたは分散して主要部が25μm未満、好ましくは10μm未満のサイズのドメインを形成できるもの、が挙げられる。スチレンのポリマーおよびコポリマーは好ましい。最も好ましくは、ポリスチレンホモポリマー、ならびに、スチレンとエチレン、プロピレン、アクリル酸、無水マレイン酸および/またはアクリロニトリルとのコポリマーである。ポリスチレンホモポリマーは最も好ましい。任意の2種以上の前記のポリマー、または1種以上の前記のポリマーと別のレジンとのブレンド物もまたバルクポリマーとして使用できる。
【0019】
バルクポリマーは、溶融加工を可能にするのに十分な分子量を有するのがよい。一般的には、数平均分子量は少なくとも10,000である。本発明の目的のために、バルクポリマーおよび脂肪族臭素含有ポリマーの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定される、ポリスチレン換算に対しての見かけの分子量である。GPC分子量評価は、Agilent 1100シリーズ液体クロマトグラフ(2つのPolymer Laboratories PLgel 5マイクロメートルMixed−Cカラム(直列に接続)およびAgilent G1362A屈折率検出器を備える)または同等の装置を用いて、テトラヒドロフラン(THF)または他の好適な溶媒(1mL/分の量で流し、温度35℃に加熱される)を溶離液として、実施できる。
【0020】
脂肪族臭素含有ポリマーは、脂肪族炭素原子に結合した臭素原子を含有する有機ポリマーである。脂肪族臭素含有ポリマーは、好ましくは、存在してもよい任意の芳香環上に臭素化を殆どまたは全く有さない。更により好ましくは、脂肪族臭素含有ポリマーは、アリル炭素原子または3級炭素原子で殆どまたは全く臭素化を有さず、ヒドロ臭素化部位(すなわち、臭素および水酸基が隣接炭素原子上にある部位)を殆どまたは全く含有しない。顕著量のこれらの基の存在は、脂肪族臭素含有ポリマーの熱安定性を低下させる傾向がある。
【0021】
脂肪族臭素含有ポリマーは、脂肪族の非共役炭素−炭素不飽和の部位を含有する出発ポリマーを臭素化することによって簡便に調製される。臭素化反応は、臭素を、これらの不飽和部位の幾らかまたは全てに亘って付加し、臭素原子を脂肪族炭素原子に結合させ、これにより脂肪族臭素含有ポリマーを生成する。出発ポリマーは、好ましくは、臭素化に際し、得られる脂肪族臭素含有ポリマーが少なくとも20質量%、好ましくは少なくとも35質量%の臭素を含有するような十分な不飽和部位を含有する。臭素含有量は、60%、65%、70%またはこれを超える高さであることができる。
【0022】
出発ポリマーは、好適には、重量平均分子量(Mw)1,000〜400,000、好ましくは2,000〜300,000、より好ましくは5,000〜200,000、および更により好ましくは20,000〜200,000の範囲を有する。
【0023】
好適な出発ポリマーの例としては、(i)共役ジエン,例えばブタジエン、イソプレンまたは1,3−脂環式ジエンのホモポリマーおよびコポリマー、(ii)アリルマレイミドのポリマーまたはコポリマー,特にそのスチレンとのコポリマー、(iii)脂肪族不飽和ポリエステル、(iv)ノボラックレジンのアリルエーテル、(v)ROMPポリマーもしくはROMPコポリマー、または(vi)ポリ(4−ビニルフェノールアリルエーテル)が挙げられる。これらの出発ポリマーの幾つかは、第WO2007/019120号に記載されている。
【0024】
(i)種の出発ポリマーの中で好ましいのは、ブタジエンのホモポリマーまたはコポリマーである。これらの中で好ましいのは、ブタジエンおよび少なくとも1種のビニル芳香族モノマーのコポリマーである。このようなコポリマーは、ランダム、ブロックまたはグラフトのコポリマーであることができる。「ビニル芳香族」モノマーは、芳香環の炭素原子に直接結合した重合性のエチレン性不飽和基を有する芳香族化合物である。ビニル芳香族モノマーとしては、非置換物質,例えばスチレンおよびビニルナフタレン、更に、エチレン性不飽和基で置換(例えば、アルファ−メチルスチレン)および/または環置換されている化合物が挙げられる。環置換されているビニル芳香族モノマーとしては、ハロゲン、アルコキシル、ニトロまたは非置換もしくは置換のアルキル基(芳香環の炭素原子に直接結合しているもの)を有するものが挙げられる。このような環置換されたビニル芳香族モノマーとしては、2−または4−ブロモスチレン、2−または4−クロロスチレン、2−または4−メトキシスチレン、2−または4−ニトロスチレン、2−または4−メチルスチレンおよび2,4−ジメチルスチレンが挙げられる。好ましいビニル芳香族モノマーは、スチレン、アルファ−メチルスチレン、パラ−メチルスチレン、およびこれらの混合物である。
【0025】
有用な出発ブタジエンポリマーは、少なくとも10質量%の重合ブタジエンを含有する。ブタジエンは重合して2種の繰返し単位を形成する。1種は、本明細書で「1,2−ブタジエン単位」といい、
【0026】
【化1】

【0027】
の形をとることによって側鎖不飽和基をポリマーに導入する。第2の種類は、本明細書で「1,4−ブタジエン」単位といい、−CH2−CH=CH−CH2−の形をとり、不飽和を主ポリマー鎖に導入する。出発ブタジエンポリマーは、好ましくは少なくとも幾つかの1,2−ブタジエン単位を含有する。出発ブタジエンポリマー中のブタジエン単位の、少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、およびより好ましくは少なくとも20%、および更により好ましくは少なくとも25%が、1,2−ブタジエン単位である。1,2−ブタジエン単位は、出発ブタジエンポリマー中のブタジエン単位の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、または少なくとも70%を構成できる。1,2−ブタジエン単位の比率は、出発ポリマー中のブタジエン単位の85%過剰、または更に90%過剰であることができる。
【0028】
制御された1,2−ブタジエン含有量でのブタジエンポリマーの製造方法は、J.F.HendersonおよびM.Szwarcにより、Journal of Polymer Science(D,Macromolecular Review),Volume 3,第317頁(1968)に,Y.Tanaka,Y.Takeuchi,M.KobayashiおよびH.TadokoroによってJ.Polym.Sci.A−2,9,43−57(1971)に,J.Zymona,E.SantteおよびH.HarwoodによってMacromolecules,6,129−133(1973)に,そしてH.AshitakaらによってJ.Polym.Sci.,Polym.Chem.,21.1853−1860(1983)に記載されている。
【0029】
スチレン/ブタジエンコポリマーは、特にバルクポリマーがスチレンのホモポリマーまたはコポリマーである場合に特に好ましい。出発ポリマーとして有用であるスチレン/ブタジエンブロックコポリマーとしては、Dexco Polymersから、商品名VECTORTMで入手可能であるものが好適である。スチレン/ブタジエンランダムコポリマーは、A.F.HalasaによってPolymer,Volume 46,第4166頁(2005)に記載される方法に従って調製できる。スチレン/ブタジエングラフトコポリマーは、A.F.HalasaによってJournal of Polymer Science(Polymer Chemistry Edition),Volume 14,第497頁(1976)に記載される方法に従って調製できる。スチレン/ブタジエンのランダムおよびグラフトのコポリマーはまた、HsiehおよびQuirkによって、Anionic Polymerization Principles and Practical Applications,Marcel Dekker,Inc.,New York,1996の第9章に記載される方法に従って調製できる。
【0030】
出発ブタジエンポリマーはまた、ブタジエンおよびビニル芳香族モノマー以外のモノマーを重合させることによって形成される繰返し単位を含有できる。このような他のモノマーとしては、オレフィン,例えばエチレンおよびプロピレン、アクリレートまたはアクリルモノマー,例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、アクリル酸等が挙げられる。これらのモノマーは、ビニル芳香族モノマーおよび/またはブタジエンとランダムに重合でき、重合してブロック体を形成でき、または出発ブタジエンコポリマー上にグラフトできる。
【0031】
最も好ましい種類の出発ブタジエンポリマーは、1種以上のポリスチレンブロック体および1種以上のポリブタジエンブロック体を含有するブロックコポリマーである。これらのうち、ジブロックコポリマーおよびトリブロックコポリマーは特に好ましい。
【0032】
出発ポリマー種ii)物質としては、スチレンとアリルマレイミドとのコポリマーが挙げられる。この種のポリマーは、理想構造:
【0033】
【化2】

【0034】
(式中、xおよびyは、それぞれの繰返し単位のモル分率を表す)
で表すことができる。上記構造において、スチレンおよびアリルマレイミドのそれぞれの繰返し単位の幾らかまたは全ては交互であることができ、そしてスチレンおよび2,3−ジブロモプロピルマレイミドのそれぞれの繰返し単位の幾らかまたは全ては、同種の2つ以上の連続単位のブロック体を形成できる。出発コポリマー中のアリルマレイミド繰返し単位に対するスチレンのモル比は、95:5から約40:60の範囲であることができるが、アリルマレイミドレベルはこの範囲の上限に向かう方(例えば30〜60モル%の無水マレイン酸)が好ましい。これは、最終製品中のより高い臭素量が得られることを可能にするからである。この種のコポリマーは、スチレン−無水マレイン酸コポリマーから簡便に形成される。スチレン−マレイン酸コポリマーとアリルアミンとの反応は、無水マレイン酸繰返し単位をN−アリルマレイミド繰返し単位に転化させる。臭素化後、アリルマレイミド繰返し単位の少なくとも一部が臭素化され、構造:
【0035】
【化3】

【0036】
(式中、xおよびyは前記の通りである)
を有する臭素化ポリマーが形成される。
【0037】
有用な出発不飽和ポリマーである脂肪族ポリエステルとしては、−A−B−構造を有するものが挙げられる。ここで、Aはジカルボン酸繰返し単位を表し、そしてBはジオール繰返し単位を表す。Aおよび/またはBの単位の幾らかまたは全部は、臭素化前に、非芳香族炭素−炭素不飽和を含有する。この種のポリエステルは、ジカルボン酸(または対応する酸ハライドもしくは無水物)とジオールとの反応(これらの少なくとも1つは非芳香族炭素−炭素不飽和を含有する)において調製できる。ジカルボン酸および対応する無水物であって非芳香族炭素−炭素不飽和を有するものの例としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、テトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸(すなわち:
【0038】
【化4】

【0039】
等が挙げられる。これらの二塩基酸もしくは無水物および/またはこれらのそれぞれの酸ハライドを用いて、非芳香族炭素−炭素不飽和を伴うA単位を有する出発ポリエステルを調製できる。1,4−ジヒドロキシ−but−2−エンは、非芳香族炭素−炭素不飽和を有するジオールの例であり、対応する不飽和を有するB単位を有する出発コポリマーを形成するために使用できる。出発ポリマーとして有用である不飽和ポリエステルの具体的な種類としては、例えば、マレイン酸またはマレイン酸/フマル酸混合物、任意に1種以上の追加の二塩基酸、および1種以上の脂肪族ジオールのポリエステル;テトラヒドロフタル酸無水物と1種以上の脂肪族ジオールとのポリエステル;テトラヒドロフタル酸無水物、少なくとも1種の追加の二塩基酸(または対応する酸ハライドもしくは無水物)および1種以上の脂肪族ジオールのポリエステル;ならびに1,4−ジヒドロキシ−but−2−エンと1種以上の二塩基酸(または対応する酸ハライドもしくは無水物)とのポリエステルが挙げられる。
【0040】
出発ポリマー種iv)は、ノボラックレジンのアリルエステルである。「ノボラック」レジンにより、ホルムアルデヒドおよびフェノール性化合物,例えばフェノールまたはクレゾール、のポリマーを意味する。フェノール性化合物は、任意に、環上に1つまたは2つの置換基(これは臭素を含むことができる)を含有できる。好ましくは、フェノール化合物は、このような置換基を含有しないか、または1つのみ置換基を含有する(特に低級アルキル,例えばメチルを、パラ位で)。(iv)種の出発ポリマーとしては、理想構造:
【0041】
【化5】

【0042】
(式中、R5は、置換基,例えばアルキル基または他の置換基を表し、そしてmは0〜3である。)
で表されるものが挙げられる。これらのポリマーは、多くが市販で入手可能であるノボラックレジンから調製できる。アリルエーテル基は、フェノール性水酸基と水素化ナトリウムとの反応によって導入してアルコキシド基を形成でき、次いでこれはアリルハライド,例えば塩化アリルまたは臭化アリルと反応してエーテルを生成する。
【0043】
ROMPポリマー(出発ポリマー v型)は、開環メタセシス重合(ROMP)プロセスにおいて、環構造中に炭素−炭素不飽和を有する特定の非芳香族環状モノマーから形成されるホモポリマーまたはコポリマーである。出発物質として有用なROMPポリマーの例としては、シクロペンテン、シクロオクテン、ノルボルネン、シクロヘキセニルノルボルネン、エキソ−ノルボルネンジカルボン酸無水物およびジシクロペンタジエンのホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。好適なコモノマーの例としては、環状オレフィン,例えばシクロオクテンが挙げられる。ROMPのポリマーおよびコポリマーは、炭素−炭素二重結合を主ポリマー鎖中に含有する。
【0044】
(vi)型の出発ポリマー、更にこれらのポリマーの臭素化方法は、第WO2007/019120号に記載されている。
【0045】
脂肪族臭素含有ポリマーは、前記の出発ポリマーの任意のもの、または、炭素−炭素不飽和を含有する他のポリマーから、脂肪族炭素−炭素不飽和に亘って臭素を添加することによって、調製できる。臭素化は、直接臭素化プロセスを用いて実施でき、ここで、例えば、出発ブタジエンポリマーは、第WO2008/021418号に記載されるように元素臭素で臭素化される。脂肪族アルコールは、臭素化反応中に存在できる(これも第WO2008/021418号に記載されるように)。残存臭素および他の副生成物は、得られる脂肪族臭素含有ポリマー溶液から、押出し、洗浄、または他の有用な方法によって除去できる。
【0046】
これに代えて、脂肪族臭素含有ポリマーは、出発ポリマーを4級アンモニウムトリブロミドで臭素化する(例えば第WO2008/021417号に記載されるように)ことによって得ることができる。好ましいこのようなプロセスにおいて、出発ポリマーを4級アンモニウムトリブロミドと、これらが反応して脂肪族臭素含有ポリマーおよび4級アンモニウムモノブロミド副生成物の溶液を生成するような条件下で、接触させる。4級アンモニウムモノブロミドを、好ましくは、還元剤を含有する水性相で抽出して、4級アンモニウムモノブロミド流を臭素化ポリマーから除去する。
【0047】
出発ポリマー中に含有される脂肪族炭素−炭素不飽和部位の少なくとも60,70,75,80,または85%を臭素化することが好ましい。一般的には、より高い臭素化度が好ましい。これは脂肪族炭素−炭素不飽和のポリマー中での残存部位の数を低減し、よって脂肪族臭素含有ポリマーが熱加工に供される際のゲル形成の可能性を低減するからである。従って、脂肪族炭素−炭素不飽和の部位の少なくとも90%または少なくとも95%を臭素化することがより好ましい。脂肪族炭素−炭素不飽和部位の最大100%を臭素化できる。実際の上限は、一般的には最大98%または最大99%である。
【0048】
脂肪族臭素含有ポリマーは、バルクポリマー用のFR添加剤として有用である。好ましくは、十分な脂肪族臭素含有ポリマーが、バルクポリマーのとのブレンド物において存在し、臭素含有量0.1質量%〜25質量%の範囲(ブレンド物の質量基準)のブレンド物を与える。ブレンド物中の好ましい臭素濃度(FR添加剤によって与えられる)は0.25〜10質量%であり、より好ましい量は0.5〜5質量%であり、そして更により好ましい量は1〜3質量%である。既定の臭素含有量をブレンド物に与えるのに必要な脂肪族臭素含有ポリマーの量は、無論、その臭素含有量に左右される。しかし一般的には、約0.15質量部という少なさの脂肪族臭素含有ポリマーを100質量部バルクレジン当たり(pphr)で与えることができる。少なくとも0.4pphrまたは少なくとも0.8pphrの脂肪族臭素含有ポリマーを得ることができる。最大100pphrの脂肪族臭素含有ポリマーがブレンド物中に存在できるが、より好ましくは最大量は50pphrであり、より好ましい最大量は20pphrであり、そして更により好ましい最大量は10pphrまたは更に7.5pphrである。
【0049】
幾つかの態様において、ブレンド物は、少なくとも1種のアルキルホスファイト化合物を含有する。好ましいアルキルホスファイトは、“Plastic Additive Handbook”,H.Zweifel編集,5th Ed.,p.441(2001)に記載されている。アルキルホスファイト化合物は、少なくとも1種の:
【0050】
【化6】

【0051】
基を含有する。ここで、各R基は、非置換または置換のアルキル基である。2つのR基は一緒に、置換されていてもよい2価基を形成でき、これは、脂肪族炭素を介して隣接の−O−原子に結合して、−O−P−O−結合を含む環構造を形成する。R基は、直鎖または分岐であることができる。−O−原子に隣接および結合している、R基上の炭素原子は、好ましくはメチレン(−CH2−)炭素である。R基上の置換基は、例えば、アリール、シクロアルキル、
【0052】
【化7】

【0053】
または不活性置換基であることができる。前記構造中のR1基は、別のR基、またはアリール基もしくは置換アリール基であることができる。
【0054】
好ましい種類のR1基は、3級炭素原子を含有する少なくとも1つの分岐アルキル基で置換されているアリール基である。3級炭素原子を含有する分岐アルキル基は、1つ以上のアリール基で更に置換されていることができる。別の好ましい種類のR1基は、アルキル基であり、これは、2〜30個、好ましくは8〜20個の炭素原子を有する、分岐または直鎖であることができる。好適なR1基の例としては、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、2,4−ジ−(t−ブチル)−フェニル、
【0055】
【化8】

【0056】
が挙げられる。
【0057】
好ましいアルキルホスファイトは、ペンタエリスリトールジホスファイト化合物である。これらの物質は、構造:
【0058】
【化9】

【0059】
(式中、R2は、非置換または置換、直鎖または分岐の、アルキル基、アリール基または置換アリール基である)
を有する。
【0060】
好ましいアルキルホスファイトの具体例としては、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトおよびジ−(2,4−ジ−(t−ブチル)フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられる。これらは、DoverphosTM S−9228(Dover Chemical Corporation)、DoverphosTM S−682(Dover Chemical Corporation)およびIrgafosTM 126(Ciba Specialty Chemicals)として市販で入手可能である。
【0061】
アルキルホスファイト化合物は、好ましくは、少なくとも10質量部、好ましくは少なくとも20質量部、およびより好ましくは少なくとも40質量部のアルキルホスファイト化合物(100質量部の脂肪族臭素含有ポリマー当たり)の範囲で、脂肪族臭素含有ポリマー中に可溶である。
【0062】
アルキルホスファイト化合物は、好適には、(用いる場合)約1〜約40質量部、好ましくは約1〜約30質量部、およびより好ましくは約1〜約20質量部(100質量部の脂肪族臭素含有化合物当たり)の量で存在する。アルキルホスファイトと脂肪族臭素含有化合物およびバルクポリマーとのブレンド物は、一般的に、少なくとも0.0015質量部、好ましくは少なくとも0.0025質量部、より好ましくは少なくとも0.005質量部および更により好ましくは0.01質量部のアルキルホスファイト(100質量部のバルクポリマー当たり)(pphr)を含有する。このようなブレンド物は、40pphrという多さのアルキルホスファイト化合物を含有できるが、好ましくはアルキルホスファイトは、20pphrを超える量では存在せず、より好ましくは8pphr以下であり、更により好ましくは4pphr以下であり、そして更により好ましくは2pphr以下である。
【0063】
他の態様において、エポキシ化合物がブレンド物中に存在する。エポキシ化合物は、分子当たり、平均で少なくとも1つ、および好ましくは2つ以上のエポキシド基を含有する。エポキシ化合物は、好ましくは、エポキシド基当たりの質量当量2000以下、好ましくは1000以下、および更により好ましくは500以下を有する。エポキシ化合物の分子量は、好ましい態様において、少なくとも1000である。エポキシ化合物は臭素化できる。種々の市販で入手可能なエポキシレジンが好適である。これらは、例えば、ビスフェノール化合物,例えばビスフェノールAの種々のジグリシジルエーテルを基にすることができる。これらは、臭素化ビスフェノール化合物を基にすることができる。エポキシ化合物は、エポキシノボラックレジン、またはエポキシクレゾールノボラックレジンであることができる。エポキシ化合物は、完全に脂肪族の物質,例えば、ポリエーテルジオールまたはエポキシ化植物油のジグリシジルエーテルであることができる。本件で有用である市販で入手可能なエポキシ化合物の例としては、F2200HMおよびF2001(ICL Industrial Productsより),DEN 439(The Dow Chemical Companyより),Araldite ECN−1273およびECN−1280(Huntsman Advanced Materials Americas,Inc.より),ならびにPlaschek 775(Ferro Chemical Co.より)が挙げられる。
【0064】
エポキシ化合物は、好適には、(用いる場合)約1〜約40質量部、好ましくは約1〜約20質量部(100質量部の脂肪族臭素含有化合物当たり)の量で存在する。エポキシ化合物と脂肪族臭素含有化合物およびバルクポリマーとのブレンド物は、一般的には、少なくとも0.0015質量部、好ましくは少なくとも0.0025質量部、より好ましくは少なくとも0.005質量部および更により好ましくは0.01質量部のエポキシ化合物(100質量部のバルクポリマー当たり)(pphr)を含有する。このようなブレンド物は、40pphrという多さのエポキシ化合物を含有できるが、好ましくはエポキシ化合物は、20pphrを超える量では存在せず、より好ましくは8pphr以下であり、更により好ましくは4pphr以下であり、そして更により好ましくは2pphr以下である。
【0065】
アルキルホスファイトおよびエポキシ化合物の両者がブレンド物中に存在することが好ましい。このような場合、アルキルホスファイト化合物およびエポキシ化合物は、各々、1〜40質量部または1〜20質量部(100質量部の脂肪族臭素含有ポリマー当たり)の量で存在する。このような場合におけるブレンド物は、好ましくは、0.0015〜20pphr、特に0.005〜2pphrのエポキシ化合物および0.0015〜20pphr、好ましくは0.005〜2pphr、およびより好ましくは0.01〜1.2pphrのアルキルホスファイト化合物を含有する。
【0066】
他の安定剤および/または酸捕捉剤が、アルキルホスファイトおよびエポキシ化合物に加えて、存在できる。このような物質の例としては、例えば、無機物質,例えばピロリン酸四ナトリウム、ハイドロカルマイト、ハイドロタルサイト、およびハイドロタルサイト様クレー;分子量1000以下を有するポリヒドロキシル化合物,例えばペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセロール、キシリトール、ソルビトールもしくはマンニトール、またはこれらの部分エステル;ならびに、有機スズ安定剤であって親アリル性および/または親ジエン性であることができるもの、が挙げられる。有機スズ化合物としては、例えば、アルキルスズチオグリコレート、アルキルスズメルカプトプロピオネート、アルキルスズメルカプチド、アルキルスズマレエートおよびアルキルスズ(アルキルマレエート)が挙げられ、ここでアルキルは、メチル、ブチルおよびオクチルから選択される。好適な有機スズ化合物は、Ferro Corporation(すなわちThermchekTM 832,ThermchekTM 835)、およびBaerlocher GmbH(すなわちBaerostabTM OM 36,BaerostabTM M25,BaerstabTM MSO,BaerostabTM M63,BaerostabTM OM 710S)から市販で入手可能である。
【0067】
集合体中で、約0.5pphr以下の、このような無機物質、ポリヒドロキシル化合物および有機スズ安定剤を用いることが一般的には好ましい。これらの物質は、過度に多量に用いた場合、ポリマーを可塑化させ、および/またはセル構造に干渉する傾向があるからである。特に、有機スズ安定剤の量は、好ましくは、0.5pphr以下であり、そして存在する場合、好ましくは0.1〜0.4pphrのレベルで存在する。幾つかの態様において、これらの物質は、組成物には不存在である。
【0068】
バルクポリマーと脂肪族臭素含有ポリマーとの混合物は、アルキルホスファイトおよび/またはエポキシ化合物の存在下で溶融加工する。他に、任意の含有成分が、特に溶融加工操作のために必要または所望に応じて存在できる。
【0069】
溶融加工は、本発明の目的のために、バルクポリマーおよび脂肪族臭素含有ポリマーの溶融物を形成すること、溶融物を形成すること、次いで溶融物を冷却してこれを固化させて物品を形成すること、を含む。種々の溶融加工操作は本発明の範囲内であり、例えば押出し、射出成形、圧縮成形、キャスト等がある。最も関心ある溶融加工操作は押出し発泡である。各々の場合において、溶融加工操作は、任意の簡便な様式で実施できる。脂肪族臭素含有ポリマー、アルキルホスファイトおよび/またはエポキシ化合物の存在を別にすれば、溶融加工操作は全体的に従来のものであることができる。
【0070】
溶融加工操作中に存在できる他の添加剤としては、例えば、潤滑剤,例えばステアリン酸バリウムまたはステアリン酸亜鉛;UV安定剤、顔料、成核剤、可塑剤、FR共力剤、IRブロッカー等が挙げられる。
【0071】
押出し発泡は、バルクポリマー、脂肪族臭素含有ポリマー、発泡剤、アルキルホスファイトおよび/またはエポキシ化合物ならびに他の添加剤(例えば有用であることができるもの)を含有する加圧溶融物を形成することによって実施する。原料が混合されポリマーが溶融した時点で、得られるゲルを開口経由でより低圧のゾーン内に強制的に送る。ここで発泡剤は膨張し、そしてポリマーは固化して発泡体を形成する。押出した発泡体はシート(厚み最大1/2インチ(12mm)を有する)、プランクもしくはボード材(厚み1/2インチ(12mm)から12インチ(30cm)以上を有する)の形状、または他の便利な形状をとることができる。所望であれば、発泡体を押出して融合ストランド発泡体を形成できる。
【0072】
種々の原料は、加工設備内に個別に、または種々の組合せで供給できる。アルキルホスファイトおよび/またはエポキシレジンは、例えば、脂肪族臭素含有ポリマー、バルクポリマー、または両者と予めブレンドできる。同様に、脂肪族臭素含有ポリマーは、別個の成分として導入でき、または何らかの方法でバルクポリマーと前混合できる。前混合は、バルクポリマーの粒子および脂肪族臭素含有ポリマーの粒子のドライブレンドの形態であることができる。代替として、または追加的に、バルクポリマーおよび脂肪族臭素含有ポリマーは、溶融加工操作の前に溶融ブレンドでき、そして溶融した混合物またはブレンド物の粒子を溶融加工操作に導入できる。ポリマー材料が溶融した後に、発泡剤を別個の流れとして導入することが一般的には好ましい。
【0073】
押出し発泡プロセスにおける発泡剤は、発熱(化学)型または吸熱(物理)型であることができる。物理的な発泡剤,例えば二酸化炭素、種々の炭化水素、ヒドロフルオロカーボン、水、アルコール、エーテルおよびヒドロクロロフルオロカーボンは特に好適である。
【0074】
溶融加工操作は、所定量のスクラップ物質を生成する傾向がある。これは、押出し発泡操作について特に真実である。特に開始時およびプロセスのアップセット中の仕様外の泡の生成に起因し、そして所定量の製造がしばしば泡の形成後に行われるからである。可能な場合、スクラップ物質をプロセスに戻してリサイクルし、原料損失を低減し、よってプロセスの経済性を改善することが望ましい。しかし、スクラップ物質は、これが相当量のゲルを含有する場合、またはこれがプロセスを経てリサイクルされたときに相当量のゲルを形成する場合にはリサイクルできない。
【0075】
ゲルはポリマー物質の塊であり、これは、架橋によってもはや可塑性ではなく、そして溶融バルクポリマー中または脂肪族臭素含有ポリマー中で、一様に分散せず、または変形性を有する。脂肪族臭素含有ポリマーは、ゲル生成の影響を幾らか受けやすい。主として、これが残存脂肪族炭素−炭素二重結合を含有する場合があり、または/およびHBrを排除(溶融加工操作中に)して、脂肪族炭素−炭素二重結合を形成する可能性があるからである。炭素−炭素二重結合は、架橋反応にあずかってより高分子量の種およびゲルを形成できる部位を表す。
【0076】
スクラップがプロセスを経てリサイクルされる場合、脂肪族臭素含有ポリマーの特定の分子は、溶融加工操作を複数回通過できる。脂肪族臭素含有ポリマーがより多くの回数溶融加工ステップを通過するほど、架橋およびゲル形成の可能性が大きくなる。
【0077】
本発明の利点は、アルキルホスファイトおよびエポキシ化合物が、溶融加工中に脂肪族臭素含有ポリマーがゲルを形成するのを防止することにおいて、各々有効であることである。アルキルホスファイトとエポキシ化合物との組合せは、一般的には、特に良好に働く。これは、溶融加工操作、特に押出し発泡操作(ここでプロセスからのスクラップ物質は溶融加工操作を経てリサイクルする)における脂肪族臭素含有ポリマーの使用を大きく促進する。
【0078】
溶融加工操作において生成する物品は、他の溶融加工操作において形成される同様の物品と同じ様式で使用できる。物品が発泡体である場合、発泡体は、好ましくは、密度80kg/m3以下、より好ましくは64kg/m3以下、および更により好ましくは48kg/m3以下を有する。断熱として用いる発泡体は、好ましくは、密度24〜48kg/m3を有するボード材の形状である。ビレット発泡体は、好ましくは密度24〜64kg/m3、より好ましくは28〜48kg/m3を有する。発泡体は、好ましくは平均セルサイズ0.1〜4.0mmの範囲、特に0.1〜0.8mmの範囲(ASTM D3576によって)を有する。発泡体は、主として閉鎖セルのものであり、すなわち、30%以下、好ましくは10%以下、および更により好ましくは5%以下の開放セル(ASTM D6226−05により)を含有できる。より多く開放セルを有する発泡体もまた、本発明に従って製造できる。
【0079】
本発明に従って製造されるボード材発泡体は、建造物発泡体断熱として、屋根または壁の組立物の一部として、有用である。本発明に従って製造される他の発泡体は、装飾ビレット、パイプ断熱として、および成形コンクリート基礎用途において、使用できる。
【0080】
以下の例は、本発明を例示するために与えるがその範囲を限定するものではない。全ての部およびパーセントは特記がない限り質量基準である。
【0081】
例1〜4
スクリーン実験を行って、臭素ブタジエンポリマー中で、熱的に誘導されるゲル化を種々の安定剤が防止する能力を評価する。スクリーニング実験における臭素化ブタジエンポリマーは、臭素化前に60質量%のブタジエンを含有するスチレン/ブタジエン/スチレントリブロックポリマーである。この出発ポリマーを、第WO2008/021418号に記載されるように、元素臭素を臭素化剤として用いて臭素化し、そして得られる臭素化物質は、臭素量62質量%を有する。出発ポリマー中の脂肪族炭素−炭素二重結合の3%が臭素化後に残存する。炭素−臭素 C−Br結合の3.5%は、アリル炭素原子または3級炭素原子に対するものであり、これは熱安定性が構造中の他のC−Br結合よりも小さい。
【0082】
各々のスクリーニング実験において、臭素化ブタジエンは、安定剤と、下記表1に示す量で溶融ブレンドする。ブレンドした物質をモルタル中で粉砕し、すりつぶし、次いで塩化メチレン中に、10mLの塩化メチレン当たり1gのブレンド物、の比率で浸漬する。このブレンド物のフィルムをキャストし、減圧オーブン内で30℃にて乾燥させる。各々の場合におけるフィルムサンプルを30℃で窒素下で5分間平衡させ、次いで180℃まで窒素下で速度20℃/分で、熱重量分析計(TGA)にて加熱する。サンプルを180℃にて20分間保持し、次いで30℃まで速度50℃/分で冷却する。全て窒素下である。次いでサンプルを2mLの塩化メチレン中に入れ、目視で検査して臭素化ブタジエンポリマーが溶解するか否かを評価する。溶解しない、および/またはゲル化する物質の存在は、加熱を与える条件下で架橋が生じたことを示し、よって試験する種々の安定剤が熱誘導架橋を防止することの有効性を示す。
【0083】
加えて、加熱処理された生成物の5%重量損失温度を、熱重量分析を用いて評価する。10ミリグラムのポリマーブレンド物を、TA Instruments モデルHi−Res TGA 2950または同等の装置を用い、60ミリリットル毎分(mL/分)のガス状窒素の流れおよび加熱速度10℃/分で、室温(名目上25℃)から600℃の範囲に亘って、分析する。サンプルによって損失された重量を加熱ステップ中に監視し、サンプルが100℃でのその重量の5%を損失した温度(後、すなわち揮発性物質が取り去られた後)を5%重量損失温度(5%WLT)と規定する。
【0084】
評価される種々の安定剤、各々の場合において使用する安定剤の量、熱エージング後の溶解性および5%WLTは表1に報告する通りである。
【0085】
【表1】

【0086】
スクリーニング実験に基づき、ジ−(2,4−ジ−(t−ブチル)フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトおよび(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトは、臭素化ブタジエンポリマー中での架橋の良好な抑制、更に5%WLTの顕著な増大の両者を与える物質として特定される。
【0087】
50グラムの市販の発泡体グレードポリスチレンレジン、1.5グラムの同じ臭素化スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマーおよび0.25グラムのエポキシクレゾールノボラックレジンのブレンド物を以下のように形成する。ポリスチレンレジンをHaake RheocordTM 90(コントローラーおよびローラーブレードミキサーを収容する混合ボールを有する)に入れる。ボールを180℃に予熱する。ポリスチレンを2分間40rpmでブレンドし、次いで臭素化コポリマーおよびエポキシレジンをドライブレンドとして添加する。ブレンドを更に8分間同じ温度および速度で継続する。得られるブレンド物を例1とする。
【0088】
例2〜7および比較サンプルAは、各々の場合で安定剤パッケージを変えて同じように形成する。各々の場合の安定剤パッケージは下記表2に示す通りである。比較サンプルAは安定剤パッケージを含有しない。
【0089】
例1〜7および比較サンプルAの各々において溶解性のままである(よってゲル化しない)臭素化ブロックコポリマーの量は、以下の方法で見積もる。サンプルは各々の場合でトルエン中に溶解させ、ろ別し、そして元のろ別していない溶液、およびろ別した溶液の両者における臭素量を、蛍光X線によって、卓上エネルギー分散X線分光器を用いて評価する。較正基準は、臭素化ブタジエンポリマーの純粋サンプルから、Comptonピーク補正法を用いて準備する。これらの測定された臭素量の比は、架橋した臭素化ブタジエンポリマーのパーセントと相関する。各々の場合の見積もりは表2で報告する通りである。各々の場合において、誤差範囲は、±5パーセントポイントと考えられる。
【0090】
各々のブレンド物の一部を別個に230℃まで熱重量分析計で加熱し、その温度で保持する。サンプルが測定可能な重量損失を示す時間を、ブレンド物の熱安定性の指標として評価する。結果は表2に示す通りである。
【0091】
【表2】

【0092】
この組の実験で用いる臭素化ブタジエンコポリマーは、幾らか高いレベルの、アリル炭素または3級炭素に弱く結合した臭素を含有する。安定剤パッケージ不存在(比較サンプルA)では、コポリマーゲルは極めて顕著に、そして熱分解が230℃で6分未満後に始まる。エポキシレジンのみを添加(例1および2でのように)することにより、ゲル化が低減され、そしてより大きい熱安定性が与えられる。しかし、1質量%のエポキシレジン(例2でのように)は、幾らか高レベルである。このようなレベルで存在する場合、エポキシはポリスチレンを可塑化する可能性があるからである。従って、エポキシレジン量を低減し、同等またはより良好な結果を維持することが望ましい。
【0093】
例3は、例2で用いるエポキシレジンの半分を0.2%のアルキルホスファイトで置き換えることの効果を示す。ゲル化はこれらの2つの場合で同等であり、熱安定性の小さな損失のみが230℃の熱エージング試験で見られる。
【0094】
例4は、アルキルホスファイトレベルを0.4%に増大させることによって、ゲル化が顕著に低減され、そしてブレンド物が若干、より熱的に安定であることを示す。総添加剤レベルは例2のものよりも低いままである。
【0095】
例5、6および7は、少量の有機スズ安定剤を例1および3のブレンド物に添加することの効果を示す。熱安定性は各々の場合で顕著に改善される。例1または3においてよりも少ない臭素化ブタジエンが可溶性のままであるが、これは、安定剤パッケージの有効性の実際の低下よりも、有機スズ安定剤の存在による溶解性パラメータの変化に起因する可能性がある。0.4%レベルで、有機スズ安定剤は、ポリスチレン発泡体のセル構造と干渉し始める可能性がある。
【0096】
例8〜17および比較サンプルB
例8〜17および比較サンプルBは、先の例と同じ方法で形成する。この場合における臭素化ブタジエンポリマーは、臭素化前に60質量%のブタジエンを含有するスチレン/ブタジエン/スチレントリブロックポリマーである。この出発ポリマーは、4級アンモニウムブロミドを臭素化剤として用いて臭素化する(第WO2008021417号に記載する通り)。得られる臭素化物質は、臭素量63%を有する。臭素化ブタジエンポリマーは7%の残存脂肪族炭素−炭素二重結合を含有する。この臭素化ポリマー中の1%よりも少ない炭素−臭素結合は、アリル炭素原子または3級炭素原子である。この組の実験で用いる酸化防止剤パッケージは表3に示す通りである。各々のブレンド物における可溶性の臭素化ブタジエンポリマーの量および各々のブレンド物についての230℃のオンセット時間は、先の例において記載したように評価する。結果は表3に示す通りである。
【0097】
【表3】

【0098】
表3中のデータは、ジ−(2,4−ジ−(t−ブチル)フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトおよびエポキシクレゾールノボラックレジンの各々が、臭素化ブタジエンポリマーのゲル化の低減において、そして臭素化ブタジエンポリマーの分解の遅延において、有効であることを示す。しかし、ホスファイトのレベルを0.4pphrから0.8pphrに増大させることは、追加の有益な効果を殆ど有さない。アルキルホスファイトおよびエポキシクレゾールノボラックレジンを一緒に用いる場合(例11、14および17でのように)、230℃オンセット時間の極めて顕著な長時間化が見られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)バルクポリマー、(b)脂肪族臭素含有ポリマー、および、(c)少なくとも1種のアルキルホスファイト、少なくとも1種のエポキシ化合物、または少なくとも1種のアルキルホスファイトと少なくとも1種のエポキシ化合物との混合物、を含むポリマー組成物。
【請求項2】
100質量部の脂肪族臭素含有ポリマー当たり1〜40質量部のエポキシ化合物が存在する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
100質量部の脂肪族臭素含有ポリマー当たり1〜40質量部のアルキルホスファイトが存在する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
脂肪族臭素含有ポリマーが、臭素化ブタジエンホモポリマーまたは臭素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
脂肪族臭素含有ポリマーが、スチレンおよびアリルマレイミドのコポリマー、脂肪族不飽和ポリエステル、ノボラックノボラックレジンのアリルエーテル、またはROMPポリマーもしくはROMPコポリマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
バルクポリマーが、スチレンのポリマーまたはコポリマーである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
発泡体の形状である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
アルキルホスファイトが、少なくとも1種の
【化1】

(式中、R基は、非置換もしくは置換の、直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、または2つのR基が一緒に2価基を形成し、該2価基は置換されていてもよく、隣接−O−基に脂肪族炭素を介して結合して−O−P−O−結合を含む環構造を形成しており、そしてR1基は別のR基、またはアリール基もしくは置換アリール基である)
の部分を含有する、前掲の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
アルキルホスファイトが、構造
【化2】

(式中、各R2は、非置換もしくは置換の、直鎖もしくは分岐の、アルキル基、アリール基または置換アリール基である)
を有するペンタエリスリトールジホスファイト化合物である、前掲の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
アルキルホスファイトが、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトまたはジ(2,4−ジ−(t−ブチル)フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトである、前掲の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリマー組成物を製造する方法であって、溶融バルクポリマーおよび脂肪族臭素含有ポリマーまたは脂肪族臭素含有コポリマーを含有する混合物を、(1)少なくとも1種のアルキルホスファイト、(2)少なくとも1種のエポキシ化合物または(3)少なくとも1種のアルキルホスファイトと少なくとも1種のエポキシ化合物との混合物、の存在下で溶融加工することを含む、方法。
【請求項12】
脂肪族臭素含有ポリマーおよび少なくとも1種のアルキルホスファイト、少なくとも1種のエポキシ化合物または少なくとも1種のアルキルホスファイトと少なくとも1種のエポキシ化合物との混合物を含む、組成物。
【請求項13】
100質量部の脂肪族臭素含有ポリマー当たり1〜40質量部のエポキシ化合物が存在する、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
100質量部の脂肪族臭素含有ポリマー当たり1〜40質量部のアルキルホスファイトが存在する、請求項11または12に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
脂肪族臭素含有ポリマーが、臭素化ブタジエンホモポリマー、臭素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、スチレンおよびアリルマレイミドのコポリマー、脂肪族不飽和ポリエステル、ノボラックレジンのアリルエステル、またはROMPポリマーもしくはROMPコポリマーである、請求項11〜14のいずれか1項に記載のポリマー組成物。

【公表番号】特表2012−512942(P2012−512942A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542234(P2011−542234)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/067034
【国際公開番号】WO2010/080285
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】