説明

脂肪酸合成酵素及びそれをコードするポリヌクレオチド並びにその利用

本発明は、新規脂肪酸合成を担う脂肪酸合成酵素、それをコードするポリヌクレオチド(例えば、(a)配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド、または(b)配列番号:1の1番目から12486番の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド)、そのポリヌクレオチドを含有する発現ベクター及び形質転換体、該形質転換体を用いる食品等の製造方法、そのような製法によって製造された食品、被検脂質生産菌の評価もしくは選択方法などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪酸合成酵素をコードする遺伝子ならびにその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
新規脂肪酸合成を担う脂肪酸合成酵素遺伝子は、さまざまな生物でクローン化され、よく研究されてきた(例えば、非特許文献1:E.Schweizer et.al., Microbiol. Mol. Biol. Rev., 68, 501−517,2004)。
一部のバクテリア、および菌類や動物では、以下に示すようなタイプIと呼ばれる多機能酵素が、脂肪酸合成における一連の反応を触媒することが知られている。
タイプIa:(菌類)AC−ER−DH−MPT/ACP−KR−KS−PPT、α6β6(β+α:約3950a.a.)。(細菌)AC−ER−DH−MPT−ACP−KR−KS−PPT、α6、菌類のFASのβとαサブユニットがhead−to−tailで連結した構造(α:約3000a.a.)。
タイプIb:(動物)KS−AT−DH−ER−KR−ACP−TE、α2(α:約2500a.a.)。なお、上記各略号は、以下のものを指す:
【0003】
AC:ac(et)yltransferase
AT:malonyl/acetyl−transferase
MPT:malonyl/palmitoyl−transferase
KS:ketoacyl synthase
KR:ketoacyl reductase
DH:dehydratase
ER:enoyl reductase
ACP:acyl carrier protein
TE:thioesterase
PPT:palmitoyl/palmitoyl−transferase
【0004】
酵母Saccharomyces cerevisiae(以下、「S.cerevisiae」と略すことがある)では、新規脂肪酸合成は、脂肪酸合成酵素(FAS1遺伝子にコードされるβサブユニットとFAS2遺伝子にコードされるαサブユニットからなるα6β6複合体)により、炭素数18(ステアリン酸)までを生成する。一方、脂肪酸鎖長延長酵素遺伝子としてELO1、ELO2、ELO3が知られており、ELO1はC12からC16をC16からC18へ、ELO2はC16からC18をC22へ、ELO3はC18からC24とC26への鎖長延長をそれぞれ担っていると考えられている。
【0005】
一方、脂質生産菌モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)(以下、「M.alpina」と略すことがある)においては、変異処理により、パルミチン酸からステアリン酸への脂肪酸鎖長延長活性が低下した変異株が得られる(特許文献1:特開2001−245687)ことから、少なくともパルミチン酸までの合成とパルミチン酸からステアリン酸への合成は別の酵素が担っていることが示唆されていた。
しかしながら、M.alpinaをはじめとする脂質生産菌の新規脂肪酸合成を担う脂肪酸合成酵素遺伝子はこれまでにクローン化されていない。
【非特許文献1】E.Schweizer et.al., Microbiol. Mol. Biol. Rev., 68, 501−517,2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような状況下で、M.alpinaをはじめとする脂質生産菌の新規脂肪酸合成を担う脂肪酸合成酵素、およびそれをコードする遺伝子を同定することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、脂質生産菌であるM.alpinaの新規脂肪酸合成を担う脂肪酸合成酵素遺伝子をクローニングすることに成功し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下のポリヌクレオチド、タンパク質、発現ベクター、形質転換体、該形質転換体を用いる食品等の製造方法、そのような製法によって製造された食品等、ならびに被検脂質生産菌の評価もしくは選択方法を提供する。
【0008】
(1)以下の(a)〜(h)のいずれかに記載のポリヌクレオチド:
(a)配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドもしくはその一部を含有するポリヌクレオチド;
(c)配列番号:3のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(d)配列番号:3のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(e)配列番号:3のアミノ酸配列に対して、60%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(f)配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(g)配列番号:2の塩基配列もしくはその一部と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;または
(h)配列番号:3のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
【0009】
(2)以下の(i)〜(m)のいずれかである上記(1)に記載のポリヌクレオチド:
(i)配列番号:3のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/もしくは付加したアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(j)配列番号:3のアミノ酸配列に対して、90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(k)配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(l)配列番号:2の塩基配列もしくはその一部と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;または
(m)配列番号:3のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
【0010】
(3)配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する、上記(1)に記載のポリヌクレオチド。
(4)配列番号:1の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する、上記(1)に記載のポリヌクレオチド。
(5)配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する、上記(1)に記載のポリヌクレオチド。
(6)配列番号:3のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する、上記(1)に記載のポリヌクレオチド。
(7)DNAである、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
【0011】
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のポリヌクレオチドにコードされるタンパク質。
(8a)配列番号:3のアミノ酸配列を含むタンパク質。
(8b)配列番号:3のアミノ酸配列における1もしくは複数個のアミノ酸が、欠失、置換、挿入、および/もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質。
(8c)配列番号:3のアミノ酸配列に対して60%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質。
【0012】
(9)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有するベクター。
(9a)以下の(a)〜(c)の構成要素を含む発現カセットを含む上記(9)に記載のベクター:
(a)宿主細胞内で転写可能なプロモーター、
(b)該プロモーターに結合した、上記(1)〜(7)のいずれかに記載のポリヌクレオチド、および
(c)RNA分子の転写終結およびポリアデニル化に関し、宿主細胞内で機能するシグナル。
(9b)上記宿主細胞が、脂質生産菌(例えば、M.alpina)または酵母(例えば、S.cerevisiae)である、上記(9a)に記載のベクター。
【0013】
(10)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のポリヌクレオチドが導入された形質転換生物。
(11)上記(9)に記載のベクターが導入された形質転換生物。
(12)上記(9)に記載のベクターを導入することによって、脂肪酸生成能が向上した上記(11)に記載の形質転換生物。
(13)上記生物が、脂質生産菌である、上記(10)〜(12)のいずれかに記載の形質転換生物。
(14)上記脂質生産菌が、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)である、上記(13)に記載の形質転換生物。
(15)上記(10)〜(14)のいずれかに記載の形質転換生物を用いる脂質または脂肪酸の製造方法。
(16)上記(10)〜(14)のいずれかに記載の形質転換生物を用いる食品、医薬品または工業原料の製造方法。
(16a)前記食品が、油脂を含む食品である、上記(16)に記載の製造方法。
(17)上記(16)に記載の方法で製造された食品、医薬品または工業原料。
(17a)前記食品が、油脂を含む食品である、上記(17)に記載の食品または工業原料。
【0014】
(18)配列番号:1の1番目から12486番目のの塩基配列を有する脂肪酸合成酵素遺伝子の塩基配列に基づいて設計したプライマーまたはプローブを用いて、被検脂質生産菌の脂肪酸生成能について評価する方法。
(18a)上記(18)の方法によって、脂肪酸生成能が高い脂質生産菌を選別する方法。
(18b)上記(18a)に記載の方法によって選別された脂質生産菌を用いて油脂を製造する方法。
(19)被検脂質生産菌を培養し、配列番号:1の1番目から12486番目のの塩基配列を有する脂肪酸合成酵素遺伝子の発現量を測定することによって、被検脂質生産菌の脂肪酸生成能を評価する方法。
(19a)上記(19)に記載の方法で、被検脂質生産菌を評価し、上記脂肪酸合成酵素遺伝子の発現量が高い脂質生産菌を選別する、炭素数が16の脂肪酸の生成能が高い脂質生産菌を選別する方法。
(19b)上記(19a)に記載の方法によって選別された脂質生産菌を用いて油脂を製造する方法。
【0015】
(20)基準脂質生産菌および被検脂質生産菌を培養して配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列を有する脂肪酸合成酵素遺伝子の各脂質生産菌における発現量を測定し、基準脂質生産菌よりも該遺伝子が高発現している被検脂質生産菌を選択する、脂質生産菌の選択方法。
(21)基準脂質生産菌および被検脂質生産菌を培養して各脂質生産菌における上記(8)に記載のタンパク質を定量し、基準脂質生産菌よりも該タンパク質量の多い被検脂質生産菌を選択する、脂質生産菌の選択方法。即ち、複数の脂質生産菌を培養して各脂質生産菌における上記(8)に記載のタンパク質を定量し、その中で該タンパク質量の多い被検脂質生産菌を選択する、脂質生産菌の選択方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリヌクレオチドは、脂質生産菌(例えば、M.alpina)、酵母等の形質転換に利用されることによって、そのような形質転換脂質生産菌または形質転換酵母等を使用した食品、化粧料、医薬(例えば、皮膚外用薬)、石鹸等の製造への適用に有用である。
【0017】
本発明の脂質または脂肪酸の製造方法によれば、脂肪酸を効率よく生産することができる。また、本発明のヌクレオチドを酵母などの形質転換に利用することにより、炭素数16の脂肪酸(例えば、パルチミン酸、パルミトレイン酸等)の含有比率の多い脂質または脂肪酸を製造することができる。そのため、このような脂肪酸の生産能を向上させたい場合に有利である。
本発明の脂質生産菌の評価、選択方法を用いて評価、選択された脂質生産菌を使用することにより、効率よく所望の組成の油脂(例えば、炭素数16の脂肪酸の含有比率の高い油脂)を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明者らは、後述の実施例において詳細に記載するように、脂質生産菌であるM.alpina 1S−4株由来の脂肪酸合成酵素の全長cDNAのクローニングに初めて成功した。また、M.alpina 1S−4株由来の脂肪酸合成酵素のゲノムDNAの塩基配列(配列番号:2)、および該脂肪酸合成酵素の推定アミノ酸配列(配列番号:3)も得られた。これらのDNA及び酵素は、後述の実施例に記載した手法、公知の遺伝子工学的手法、公知の合成手法などによって取得することが可能である。本発明によって提供される脂肪酸合成酵素のポリヌクレオチドは、脂質生産菌または酵母等の形質転換に利用されることによって、そのような形質転換脂質生産菌(例えば、M.alpina)または酵母を使用した油脂の製造およびそれを利用した食品、医薬品(例えば、皮膚外用薬)、工業原料(例えば、化粧料、石鹸)等の製造に有用である。
【0019】
1.本発明のポリヌクレオチド
したがって、本発明は、1つの実施形態において、以下のポリヌクレオチド:
(a)配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドもしくはその一部を含有するポリヌクレオチド、
(c)配列番号:3のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(d)配列番号:3のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(e)配列番号:3のアミノ酸配列に対して、60%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(f)配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(g)配列番号:2の塩基配列もしくはその一部と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および
(h)配列番号:3のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
を提供する。
【0020】
本明細書中、「ポリヌクレオチド」とは、DNAまたはRNAを意味する。
本明細書中、「配列番号:2の塩基配列からなるDNAの一部」としては、例えば、配列番号:2の塩基配列のうち、エクソンに相当する部分などが含まれる。
本明細書中、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、例えば、配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列または配列番号:2の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は配列番号:3のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドの全部または一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイゼーションの方法としては、例えば"Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Vol. 3, Cold Spring Harbor, Laboratory Press 2001"、"Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons 1987−1997"などに記載されている方法を利用することができる。
【0021】
本明細書中、「ストリンジェントな条件」とは、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するDNAが効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0022】
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコルにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたDNAを検出することができる。
【0023】
上記以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、FASTA、BLASTなどの相同性検索ソフトウェアにより、デフォルトのパラメーターを用いて計算したときに、配列番号:1(もしくは配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列)又は配列番号:2のDNA、または配列番号:3のアミノ酸配列をコードするDNAと約60%以上、約70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、または99.9%以上の相同性を有するDNAをあげることができる。
【0024】
なお、アミノ酸配列や塩基配列の相同性は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(proc. Natl. Acad. Sci. USA 872264−2268, 1990; proc Natl Acad Sci USA 90: 5873, 1993)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al: J Mol Biol 215: 403, 1990)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
【0025】
上記した本発明のポリヌクレオチドは、公知の遺伝子工学的手法または公知の合成手法によって取得することが可能である。
【0026】
2.本発明のタンパク質およびそれをコードするポリヌクレオチド
本発明は、さらに別の実施形態において、上記ポリヌクレオチド(a)〜(h)のいずれかにコードされるタンパク質も提供する。
本発明は、さらに別の実施形態において、
(a)配列番号:3のアミノ酸配列を含むタンパク質、
(b)配列番号:3のアミノ酸配列における1もしくは複数個のアミノ酸が、欠失、置換、挿入、および/もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質、または
(c)配列番号:3のアミノ酸配列に対して60%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質、を提供する。
【0027】
本発明はまた、別の実施形態において、上記のタンパク質をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
上記(b)または(c)に記載のタンパク質は、代表的には、天然に存在する配列番号:3のタンパク質の変異体であるが、例えば、"Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Vol. 3, Cold Spring Harbor Laboratory Press 2001"、"Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons 1987−1997"、"Nuc. Acids. Res., 10, 6487 (1982)"、"Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)"、"Gene, 34, 315 (1985)"、"Nuc. Acids. Res., 13, 4431 (1985)"、"Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)"等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、人為的に取得することができるものも含まれる。
【0028】
本明細書中、「配列番号:3のアミノ酸配列における1もしくは複数個のアミノ酸が、欠失、置換、挿入および/もしくは付加されたアミノ酸配列からなる、脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質」としては、配列番号:3のアミノ酸配列において、例えば、1〜500個、1〜100個、1〜90個、1〜80個、1〜70個、1〜60個、1〜50個、1〜40個、1〜39個、1〜38個、1〜37個、1〜36個、1〜35個、1〜34個、1〜33個、1〜32個、1〜31個、1〜30個、1〜29個、1〜28個、1〜27個、1〜26個、1〜25個、1〜24個、1〜23個、1〜22個、1〜21個、1〜20個、1〜19個、1〜18個、1〜17個、1〜16個、1〜15個、1〜14個、1〜13個、1〜12個、1〜11個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、または1個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質が挙げられる。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入および/もしくは付加の数は、一般的には小さい程好ましい。
【0029】
また、このようなタンパク質としては、配列番号:3のアミノ酸配列と約60%以上、約70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、または99.9%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質が挙げられる。上記相同性の数値は一般的に大きい程好ましい。なお、脂肪酸合成酵素活性は、例えばJames K. Stoops et. Al., J.B.C., 253, 4464−4475, (1978)に記載の方法によって測定することができる。
【0030】
本発明のタンパク質のアミノ酸配列において1以上のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入および/または付加されたとは、同一配列中の任意かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中の位置において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/又は付加があることを意味し、欠失、置換、挿入及び付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、o−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン;B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸;C群:アスパラギン、グルタミン;D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸;E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン;F群:セリン、スレオニン、ホモセリン;G群:フェニルアラニン、チロシン。
【0031】
また、本発明のタンパク質は、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても製造することができる。また、アドバンスドケムテック社製、パーキンエルマー社製、ファルマシア社製、プロテインテクノロジーインストゥルメント社製、シンセセルーベガ社製、パーセプティブ社製、島津製作所等のペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。
【0032】
3.本発明のベクター及びこれを導入した形質転換体
本発明はまた、別の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを提供する。本発明の発現ベクターは、以下のポリヌクレオチド:
(a)配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドもしくはその一部を含有するポリヌクレオチド;
(c)配列番号:3のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(d)配列番号:3のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(e)配列番号:3のアミノ酸配列に対して、60%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(f)配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(g)配列番号:2の塩基配列もしくはその一部と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;または
(h)配列番号:3のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
のいずれかを含有する。
【0033】
本発明のベクターは、通常、(i)宿主細胞内で転写可能なプロモーター;(ii)該プロモーターに結合した、上記(a)〜(h)のいずれかに記載のポリヌクレオチド;及び(iii)RNA分子の転写終結およびポリアデニル化に関し、宿主細胞内で機能するシグナルを構成要素として含む発現カセットを含むように構成される。このように構築されるベクターは、宿主細胞に導入される。本発明において使用される適切な宿主細胞の例としては、脂質生産菌、酵母等が挙げられる。
【0034】
脂質生産菌としては、例えば、MYCOTAXON,Vol.XLIV,No.2,pp.257−265(1992)に記載されている菌株を使用することができ、具体的には、モルティエレラ(Mortierella)属に属する微生物、例えば、モルティエレラ・エロンガタ(Mortierella elongata)IFO8570、モルティエレラ・エキシグア(Mortierella exigua)IFO8571、モルティエレラ・ヒグロフィラ(Mortierella hygrophila)IFO5941、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)IFO8568、ATCC16266、ATCC32221、ATCC42430、CBS 219.35、CBS224.37、CBS250.53、CBS343.66、CBS527.72、CBS528.72、CBS529.72、CBS608.70、CBS754.68等のモルティエレラ亜属(subgenus Mortierella)に属する微生物、またはモルティエレラ・イザベリナ(Mortierella isabellina)CBS194.28、IFO6336、IFO7824、IFO7873、IFO7874、IFO8286、IFO8308、IFO7884、モルティエレラ・ナナ(Mortierella nana)IFO8190、モルティエレラ・ラマニアナ(Mortierella ramanniana)IFO5426、IFO8186、CBS112.08、CBS212.72、IFO7825、IFO8184、IFO8185、IFO8287、モルティエレラ・ヴィナセア(Mortierella vinacea)CBS236.82等のマイクロムコール亜属(subgenus Micromucor)に属する微生物等を挙げることができる。とりわけ、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)が好ましい。
【0035】
また、酵母の例としては、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)NBRC1951、NBRC1952、NBRC1953、NBRC1954等が挙げられる。本発明のベクターで形質転換されたこれらの宿主細胞は、特に、炭素原子を16個含む脂肪酸を高効率で産生することができる。
脂質生産菌に導入する際に用いるベクターとしては、例えば、pDura5(Appl. Microbiol. Biotechnol., 65, 419-425, (2004))が利用可能であるが、これに限定されない。
【0036】
酵母に導入する際に用いるベクターとしては、多コピー型(YEp型)、単コピー型(YCp型)、染色体組み込み型(YIp型)のいずれもが利用可能である。例えば、YEp型ベクターとしてはYEp24(J. R. Broach et al., Experimental Manipulation of Gene Expression, Academic Press, New York, 83, 1983)、YCp型ベクターとしてはYCp50(M. D. Rose et al., gene, 60, 237, 1987)、YIp型ベクターとしてはYIp5(K. Struhl et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USP, 76, 1035, 1979)が知られており、容易に入手することができる。
【0037】
宿主細胞中での遺伝子発現を調節するためのプロモーター/ターミネーターとしては、宿主細胞中で機能する限り、任意の組み合わせでよい。例えば、脂質生産菌で利用する場合はhistonH4.1遺伝子のプロモーター、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターなどを利用可能である。
形質転換の際に用いる選択マーカーとしては、栄養要求性マーカー(ura5、niaD)、薬剤耐性マーカー(hygromycine、ゼオシン)、ジェネチシン耐性遺伝子(G418r)、銅耐性遺伝子(CUP1)(Marin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 337 1984)、セルレニン耐性遺伝子(fas2m, PDR4)(それぞれ猪腰淳嗣ら, 生化学, 64, 660, 1992; Hussain et et al., gene, 101, 149, 1991)などが利用可能である。
【0038】
宿主細胞の形質転換方法としては一般に用いられる公知の方法が利用できる。例えば、脂質生産菌の場合、エレクトロポレーション法(Mackenxie D. A. et al. Appl. Environ. Microbiol., 66, 4655-4661, 2000)やパーティクルデリバリー法(特開2005−287403「脂質生産菌の育種方法」に記載の方法)が利用できる。また、酵母の場合は、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 p1929(1978))、酢酸リチウム法(J.Bacteriology, 153, p163(1983))、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 p1929 (1978)、Methods in yeast genetics, 2000 Edition : A Cold Spring Harbor Laboratory Course Manualなどに記載の方法で実施可能であるが、これらに限定されない。
【0039】
より具体的には、脂質生産菌の場合、宿主をCzapek-Dox培地に植菌し、28℃にて2週間培養し、胞子を形成させる。つづいて胞子を回収し、パーティクルデリバリー法(特開2005−287403「脂質生産菌の育種方法」に記載の方法)などにより遺伝子を導入する。その後、選択マーカーとして用いる抗生物質等を含む標準寒天培地上あるいは、栄養要求性マーカーを用いる場合は、マーカーとして用いる栄養素を欠いた寒天培地上に植えつけ、形質転換体を取得する。また、酵母の場合は、宿主を標準栄養培地(例えば、YEPD培地"Genetic Engineering. Vo1.1, Plenum Press, New York, 117(1979)"等)で、OD600nmの値が1〜6となるように培養する。この培養細胞を遠心分離して集め、洗浄し、濃度約1〜2Mのアルカリ金属イオン、好ましくはリチウムイオンで前処理する。この細胞を約30℃で、約60分間静置した後、導入するDNA(約1〜20μg)とともに約30℃で、約60分間静置する。ポリエチレングリコール、好ましくは約4,000ダルトンのポリエチレングリコールを、最終濃度が約20%〜50%となるように加える。約30℃で、約30分間静置した後、この細胞を約42℃で約5分間加熱処理する。好ましくは、この細胞懸濁液を標準栄養培地で洗浄し、所定量の新鮮な標準栄養培地に入れて、約30℃で約60分間静置する。その後、選択マーカーとして用いる抗生物質等を含む標準寒天培地上あるいは、栄養要求性マーカーを用いる場合は、マーカーとして用いる栄養素を欠いた寒天培地上に植えつけ、形質転換体を取得する。その他、一般的なクローニング技術に関しては、"Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Vol. 3, Cold Spring Harbor Laboratory Press 2001"、"Methods in Yeast Genitics、A laboratory manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor, NY)"等を参照することができる。
【0040】
4.本発明の脂質または脂肪酸の製造方法
本発明はまた、別の実施形態において、上記の形質転換脂質生産菌または酵母を用いる脂質または脂肪酸の製造方法を提供する。
本明細書中、「脂質」とは、脂肪酸とアルコールとがエステル結合した化合物(例えば、グリセリド)またはその類似体(例えば、コレステロールエステル)などを含む単純脂質、単純脂質の一部にさらにリン酸、アミノ酸、糖などが結合した複合脂質、および脂質の加水分解物で水に溶けない誘導脂質をいうものとする。
本明細書中、「油脂」とは、グリセロールと脂肪酸のエステル(グリセリド)のことをいう。
本明細書中、「脂肪酸」とは、一般式RCOOH(Rはアルキル基)で表される脂肪族モノカルボン酸(カルボキシル基を一個有し、炭素原子が鎖状に連結したカルボン酸)のことをいう。脂肪酸には、炭化水素鎖中に二重結合を有さない飽和脂肪酸と、二重結合を含む不飽和脂肪酸とが含まれる。
【0041】
本発明の脂質または脂肪酸は、本発明に従って形質転換した菌体から以下のようにして抽出することができる。生物(例えば、脂質生産菌または酵母)の形質転換株について、培養終了後、遠心分離法、ろ過等の常法に従って培養菌体を得る。菌体を十分水洗し、好ましくは乾燥する。乾燥は、凍結乾燥、風乾等によって行うことができる。乾燥菌体を、必要に応じて、ダイノミルや超音波などにより破砕した後、好ましくは窒素気流下で有機溶媒によって抽出処理する。有機溶媒としてはエーテル、ヘキサン、メタノール、エタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、石油エーテル等を用いることができ、またはメタノールおよび石油エーテルの交互抽出またはクロロホルム−メタノール−水の一層系の溶媒を用いた抽出によっても良好な結果を得ることができる。抽出物から減圧下で有機溶媒を留去することにより、脂肪酸を含有する脂質を得ることができる。
【0042】
さらに、上記脂肪酸を含有する脂質からの脂肪酸の分離は、混合脂肪酸または混合脂肪酸エステルの状態で、常法(例えば、尿素付加法、冷却分離法、絡むクロマトグラフィー法など)により濃縮分離することにより行うことができる。
本発明の脂質または脂肪酸の製造方法によれば、菌体の脂肪酸含有率が増加することにより、脂肪酸を効率よく生産することができる。また、酵母を宿主として用いた場合、炭素数が16の飽和または不飽和脂肪酸(すなわち、パルチミン酸またはパルミトレイン酸)の含有比率の高い脂質または脂肪酸が得られるため、このような脂肪酸を大量におよび/または効率よく生産することが必要な場合に、特に有用である。
このようにして得られた脂質または脂肪酸は、常法に従って、例えば、油脂を含む食品、医薬品(例えば、皮膚外用薬)、工業原料(化粧料、石鹸等の原料)の製造などの用途に使用することができる。
【0043】
例えば、パルミトレイン酸は、人の皮脂のなかに約10パーセント以上存在する脂肪酸であり、皮脂の再生に大きな役割を果たしているといわれ、皮膚の老化防止のために皮膚化粧料または皮膚外用薬などに含有させて利用され得る。例えば、皮膚に湿疹などの障害がある場合、年齢にかかわらず、パルミトレイン酸を補うことによって皮膚組織の再生を助けることができる。したがって、本発明の脂質または脂肪酸の製造方法により得られる脂質または脂肪酸は、例えば、皮膚の老化防止、皮膚組織の再生などの目的のために作られる化粧料、医薬(皮膚外用薬など)等の製造に有利に用いることができる。
したがって、本発明はまた、別の実施形態において、本発明の形質転換脂質生産菌または形質転換酵母を用いる食品、化粧料、医薬、石鹸等の製造方法を提供する。この方法は、本発明の形質転換脂質生産菌または形質転換酵母を用いて脂質または脂肪酸を生成する工程を包含する。生成された脂質または脂肪酸を含有する食品、化粧料、医薬、石鹸等の調製は、常法による。このように、本発明の製造方法によって製造された食品、化粧料、医薬、石鹸等は、本発明の形質転換脂質生産菌または形質転換酵母を用いて生成された脂質または脂肪酸を含有する。本発明はさらに、そのような方法によって製造された食品、化粧料、医薬、石鹸等を提供する。
【0044】
本発明の化粧料(組成物)または医薬(組成物)の剤型は、特に限定されず、溶液状、ペースト状、ゲル状、固体状、粉末状等任意の剤型をとることができる。また、本発明の化粧料組成物または医薬組成物は、オイル、ローション、クリーム、乳液、ゲル、シャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、エナメル、ファンデーション、リップスティック、おしろい、パック、軟膏、香水、パウダー、オーデコロン、歯磨、石鹸、エアロゾル、クレンジングフォーム等の化粧料もしくは皮膚外用薬の他、皮膚老化防止改善剤、皮膚炎症防止改善剤、浴用剤、養毛剤、皮膚美容液、日焼け防止剤あるいは、外傷、あかぎれ、ひびわれ等による肌荒れの防止改善剤等に用いることができる。
【0045】
本発明の化粧料組成物は、必要に応じてさらに、その他の油脂、および/または色素、香料、防腐剤、界面活性剤、顔料、酸化防止剤等を適宜配合することができる。これらの配合比率は、目的に応じて当業者が適宜決定し得る(例えば、油脂は、組成物中に、1〜99.99重量%、好ましくは、5〜99.99重量%、より好ましくは、10〜99.95重量%含有され得る)。また、本発明の医薬組成物(例えば、皮膚外用薬)は、必要に応じてさらに、その他の医薬活性成分(例えば、消炎成分)または補助成分(例えば、潤滑成分、担体成分)を含んでいても良い。例えば、化粧料あるいは皮膚外用薬におけるその他の常用成分としては、にきび用薬剤、ふけ・かゆみ防止剤、制汗防臭剤、熱傷用薬剤、抗ダニ・シラミ剤、角質軟化剤、乾皮症用薬剤、抗ウイルス剤、経皮吸収促進剤等が挙げられる。
【0046】
本発明の食品の例としては、栄養補助食品、健康食品、機能性食品、幼児用食品、乳児用調製乳、未熟児用調製乳、老人用食品などが挙げられる。本明細書中、食品は、固体、流動体、および液体、ならびにそれらの混合物であって、摂食可能なものの総称である。
栄養補助食品とは、特定の栄養成分が強化されている食品をいう。健康食品とは、健康的なまたは健康によいとされる食品をいい、栄養補助食品、自然食品、ダイエット食品などを含む。機能性食品とは、体の調節機能を果たす栄養成分を補給するための食品をいい、特定保健用途食品と同義である。幼児用食品とは、約6歳までの子供に与えるための食品をいう。老人用食品とは、無処理の食品と比較して消化および吸収が容易であるように処理された食品をいう。乳児用調製乳とは、約1歳までの子供に与えるための調製乳をいう。未熟児用調製乳とは、未熟児が生後約6ヶ月になるまで与えるための調製乳をいう。
【0047】
これらの食品の形態の例としては、肉、魚、ナッツなどの天然食品(油脂で処理したもの)、中華料理、ラーメン、スープなどの調理時に油脂を加える食品、天ぷら、フライ、油揚げ、チャーハン、ドーナッツ、かりん糖などの熱媒体として油脂を用いた食品、バター、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、チョコレート、即席ラーメン、キャラメル、ビスケット、クッキー、ケーキ、アイスクリームなどの油脂食品または加工時に油脂を加えた加工食品、おかき、ハードビスケット、あんパンなどの加工仕上げ時に油脂を噴霧または塗布した食品などを挙げることができる。しかしながら、油脂を含む食品に限定されるわけではなく、例えば、パン、麺類、ごはん、菓子類(キャンデー、チューインガム、グミ、錠菓、和菓子)、豆腐およびその加工品などの農産食品、清酒、薬用酒、みりん、食酢、醤油、みそなどの発酵食品、ヨーグルト、ハム、ベーコン、ソーセージなどの畜産食品、かまぼこ、揚げ天、はんぺんなどの水産食品、果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、茶などであってもよい。
【0048】
本発明の食品はまた、カプセルなどの医薬製剤の形態、またはタンパク質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料などに本発明の油脂が配合された自然流動食、半消化態栄養食、および成分栄養食、ドリンク剤、経腸栄養剤などの加工形態であってもよい。
【0049】
5.本発明の被験脂質生産菌の脂肪酸産生能の評価方法および脂質生産菌の選択方法
本発明はまた、別の実施形態において、(i)配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列を有する脂肪酸合成酵素遺伝子の塩基配列に基づいて設計したプライマーまたはプローブを用いて、被検脂質生産菌の脂肪酸生成能について評価する方法、(ii)被検脂質生産菌を培養し、配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列を有する脂肪酸合成酵素遺伝子の発現量を測定することによって、被検脂質生産菌の脂肪酸生成能を評価する方法、および(iii)基準脂質生産菌および被検脂質生産菌を培養して配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列を有する脂肪酸合成酵素遺伝子の各脂質生産菌における発現量を測定し、基準脂質生産菌よりも該遺伝子が高発現している被検脂質生産菌を選択する、脂質生産菌の選択方法を提供する。なお、配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列の代わりに配列番号:2の塩基配列を用いても良い。
【0050】
このような評価方法の一般的手法は公知であり、例えば、WO01/040514号公報、特開平8−205900号公報などに記載されている。以下、この評価方法について簡単に説明する。
まず、被検脂質生産菌のゲノムを調製する。調製方法は、DNeasy plant kit(QIAGEN社)などの市販のキットを用いるなど、公知の如何なる方法を用いることができる。得られたゲノムを対象にして、配列番号:1の1番目から12486番目または2の脂肪酸合成酵素遺伝子の塩基配列(好ましくは、配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列)に基づいて設計したプライマーまたはプローブを用いて、被検脂質生産菌のゲノムにその遺伝子あるいはその遺伝子に特異的な配列が存在するか否かを調べる。プライマーまたはプローブの設計は公知の手法を用いて行うことができる。
遺伝子または特異的な配列の検出は、公知の手法を用いて実施することができる。例えば、特異的配列の一部または全部を含むポリヌクレオチドまたはその塩基配列に対して相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチドを一つのプライマーとして用い、もう一方のプライマーとしてこの配列よりも上流あるいは下流の配列の一部または全部を含むポリヌクレオチドまたはその塩基配列に対して相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチドを用いて、PCR法によって脂質生産菌の核酸を増幅し、増幅物の有無、増幅物の分子量の大きさなどを測定する。プライマーに使用するポリヌクレオチドの塩基数は、通常、10bp以上であり、15〜25bpであることが好ましい。また、挟み込む部分の塩基数は、通常、300〜2000bpが適当である。
【0051】
PCR法の反応条件は、特に限定されないが、例えば、変性温度:90〜98℃、アニーリング温度:40〜60℃、伸長温度:60〜75℃、サイクル数:10回以上などの条件を用いることができる。得られる反応生成物はアガロースゲルなどを用いた電気泳動法等によって分離され、増幅産物の分子量を測定することができる。この方法により、増幅産物の分子量が特異部分のDNA分子を含む大きさかどうかによって、その脂質生産菌の脂肪酸生成能について予測・評価する。また、増幅物の塩基配列を分析することによって、さらに上記性能についてより正確に予測・評価することが可能である。
また、本発明においては、被検脂質生産菌を培養し、配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列を有する脂肪酸合成酵素遺伝子の発現量を測定することによって、被検脂質生産菌の脂肪酸生成能を評価することもできる。この場合は、被検脂質生産菌を培養し、配列番号:1の1番目から12486番目の脂肪酸合成酵素遺伝子の産物であるmRNAまたはタンパク質を定量することによって可能である。mRNAまたはタンパク質の定量は、公知の手法を用いて行うことができる。例えば、mRNAの定量は例えばノーザンハイブリダイゼーションや定量的RT−PCRによって、タンパク質の定量は例えばウエスタンブロッティングによって行うことができる(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons 1994−2003)。
【0052】
さらに、被検脂質生産菌を培養して、配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列を有する脂肪酸合成酵素遺伝子の発現量を測定し、目的とする脂肪酸生成能に応じた前記遺伝子発現量の被検脂質生産菌を選択することによって、好適な脂質生産菌を選択することができる。また、基準脂質生産菌および被検脂質生産菌を培養し、各脂質生産菌における前記遺伝子発現量を測定し、基準脂質生産菌と被検脂質生産菌の前記遺伝子発現量を比較して、所望の被検脂質生産菌を選択してもよい。具体的には、例えば、基準脂質生産菌および被検脂質生産菌を培養して配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列を有する脂肪酸合成酵素遺伝子の各脂質生産菌における発現量を測定し、基準脂質生産菌よりも該遺伝子が高発現している被検脂質生産菌を選択することによって好適な脂質生産菌を選択することができる。
【0053】
あるいは、被検脂質生産菌を培養して、脂肪酸生成能の高いまたは低い、あるいは配列番号:1の1番目から12486番目の脂肪酸合成酵素活性の高いまたは低い脂質生産菌を選択することによって、所望の被検脂質生産菌を選択することができる。これらの場合、被検脂質生産菌または基準脂質生産菌としては、例えば、上述した本発明のベクターを導入した脂質生産菌、上述した本発明のポリヌクレオチド(DNA)の発現が抑制された脂質生産菌、突然変異処理が施された脂質生産菌、自然変異した脂質生産菌などが使用され得る。脂肪酸生成能は、菌体内の脂肪酸を定量する方法を用いて、脂肪酸合成酵素活性は、James K. Stoops et. Al., J.B.C., 253, 4464−4475, (1978)に記載の方法を用いて測定することができる。
【0054】
このように、本発明により、脂質生産菌(例えば、M.alpina)の脂肪酸生成能を評価し、所望の脂質生産菌(例えば、脂肪酸生産能の高い脂質生産菌や菌体あたりの脂肪酸含量が多い脂質生産菌)を選択することができるため、効率よく所望の組成の油脂を製造することができる。
さらに、当該遺伝子の発現量を指標にして、脂肪酸生産を効率よく行うための培養条件の検討、培養管理、などにも利用できる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって限定されない。
【0056】
EST解析
M. alpina 1S−4株を100mLの培地(1.8%グルコース、1%酵母エキス、pH6.0)に植菌し、3日間28℃で前培養した。10−L培養槽(Able Co.、東京)に5Lの培地(1.8%グルコース、1%大豆粉、0.1%オリーブ油、0.01%アデカノール、0.3%、KH2PO4 0.1% Na2SO4、0.05% CaCl2・2H2O、0.05% MgCl2・6H2O、pH6.0)を入れ、前培養物を全量植菌し、300rpm、1vvm、26℃の条件で8日間通気攪拌培養した。培養1、2、および3日目にそれぞれ2%、2%、および1.5%相当のグルコースを添加した。培養1、2、3、6、および8日目の各ステージに菌体を回収し、塩酸グアジニン/CsCl法でtotal RNAを調製した。Oligotex−dT30<Super>mRNA Purification Kit(タカラバイオ)を用いて、total RNAからpoly(A)+RNAの精製を行った。各ステージのcDNA libraryを、ZAP−cDNA Gigapack III Gold Cloning Kit(STRATAGENE)を用いて作製し、cDNAの5'側からのワンパスシーケンス解析(8000クローン×5ステージ)を行った。
【0057】
FASホモログの検索
得られた塩基配列より、既知の脂肪酸合成酵素遺伝子のホモログをBLASTにより検索した。その結果、Schizosaccharomyces pombe由来の脂肪酸合成酵素αサブユニット(GBアクセッションNo.BAB62032、遺伝子はFAS2)と部分的にもっとも高い相同性を示す塩基配列を2つ見出した。これらの配列は共通の部分があり、1つの遺伝子由来のものであると考えられた。アッセンブリの結果得られた配列は、配列番号:1(cDNA)の塩基番号12262−12920に相当した。一方、FAS1のホモログは見出すことができなかった。
【0058】
FAS1ホモログの部分配列の取得
上記解析により、FAS1ホモログを見出すことができなかったので、既知のFAS1タンパク質のアミノ酸配列(Saccharomyces cerevisiae由来:GB No.P07149、Candida albicans由来:GB No.P34731、Aspergillus nidulans由来:GB No.AAB41494)のアライメントを行い(図1)、その保存領域の配列(1)および(2):
【0059】
配列(1):QGSQEQGMGM(配列番号:4)
配列(2):ATQFRQPALT(配列番号:5)
をもとに、以下の縮重プライマーを設計した:
F1h−f:CARGGNWSNCARGARCARGGNATGGGNATG(配列番号:6)
F1h−r:GTNARNGCNGGYTGNGTRAAYTGNGTNGC(配列番号:7)。
【0060】
M.alpina 1S−4のcDNAは、上記EST解析で得られた全RNAよりスーパースクリプトファーストストランドシステム for RT−PCR(インビトロジェン)でランダムヘキサマーを用いて合成した。M.alpina 1S−4のcDNAを鋳型として、ExTaq(タカラバイオ)を用いて、94℃ 1分、50℃ 1分、72℃ 1分を1サイクルとして30サイクルのPCR反応を行い、約300bpのDNA断片を得た。得られたDNA断片をTAクローニングキット(インビトロジェン)でTAクローニングし、得られたプラスミドをpCR−MaFAS1−1とした。塩基配列を決定した。BLASTの結果、脂肪酸合成酵素βサブユニットの一部分と高い相同性を示した。
【0061】
cDNAライブラリーのスクリーニング
FAS1ホモログおよびFAS2ホモログをcDNAライブラリーより以下のとおりスクリーニングした。スクリーニングには、DIGラベリングシステム(ロシュ)を用いた。FAS1ホモログ用として、プラスミドpCR−MaFAS1−1を鋳型に、プライマーF1−1f:5'−GCTCTGTATGACTCTTCCCCC−3'(配列番号:8)とプライマーF1−1r:5'−GCCAAAAGACCGTTGGGTGAC−3'(配列番号:9)を用いて、PCRによりDIGラベルしたプローブを作製した。
一方、FAS2ホモログ用のプローブを作製するために、M.alpina 1S−4株のcDNAを鋳型として、プライマーF2−1f:5'−GGTGCAGGAGCGGGACTGAGTG−3'(配列番号:10)とF2−1r:5'−CGCATTTGCAACCGCAACCGCG−3'(配列番号:11)を用いて、ExTaq(タカラバイオ)により、94℃ 1分、55℃ 1分、72℃ 1分を1サイクルとして30サイクルの反応を行い、得られた約170bpのDNA断片をTOPO−TAクローニングキット(インビトロジェン)によりTAクローニングし、得られたプラスミドをpCR−MaFAS2−1とした。プラスミドpCR−MaFAS2−1を鋳型にプライマーF2−1fとプライマーF2−1rを用いて、PCRによりDIGラベルしたプローブを作製した。
【0062】
これらのプローブを用いて、cDNAライブラリーよりスクリーニングを行った。FAS1ホモログ用プローブでは、陽性クローンを得ることができなかった。
一方、FAS2ホモログ用プローブを用いた場合には、いくつかの陽性クローンを得ることができ、最長のクローンが配列番号:1(cDNA)の7861−12920にあたる配列(5060bp)を含んでいた。このクローンをプラスミドpBSMAFAS2−1とした。しかしながら、既知のFAS2遺伝子との比較から、全長を含むものではないと考えられた。
【0063】
ゲノムライブラリーの作製
M.alpina 1S−4株を、100mlの液体培地(グルコース1%、酵母エキス0.5%、pH6.0)に植菌し、28℃で4日間振とう培養した。フィルターろ過により菌体を集め、CTAB法によりゲノムDNAを抽出した。
得られたゲノムDNA約200μgを制限酵素Sau3AIで、切断DNAの分布の中心が20kb付近になるよう、部分分解した。得られたDNA断片を10%−40%のショ糖密度勾配遠心(ローターSW28(Beckman)、25,000rpm、10℃、24時間)を行い、AUTOMATIC LIQUID CHARGER(ADVANTEC社)とMICRO TUBE PUMP(EYELA社)を用いて、1mlずつ分画した。20kbp付近に分布の中心があるフラクションを精製した。こうして得られたゲノムDNA断片をλBlueSTAR/BamHIベクターキット(NOVAGEN社)を用いて、ゲノムライブラリーを作製した。
【0064】
ゲノムライブラリーからのスクリーニング
FAS1ホモログおよびFAS2ホモログをゲノムライブラリーより、実施例(cDNAライブラリーからのスクリーニング)と同様にスクリーニングを行った。その結果、FAS1ホモログ用プローブとFAS2ホモログ用プローブの両方で陽性を示すクローンを得た。当該クローンのインサートの塩基配列の一部分(配列番号:2(ゲノム))15539bp)を決定した。
既知のFAS1タンパク質およびFAS2タンパク質のアミノ酸配列との比較により、配列番号:2(ゲノム)の1062−1064のATGが開始コドンであると推定された。また、FAS1ホモログとFAS2ホモログが1本のポリペプチドでコードされていると推定された。
【0065】
全長cDNAのクローン化
まず、M.alpina 1S−4のcDNAを鋳型として、プライマーF1−2f:ATGACTACCGCACAGTCCAACTTGACC(配列番号:12)とプライマーF1−1rを用いて、LATaq(タカラバイオ)により98℃ 10秒、68℃ 15分を1サイクルとして、30サイクルのPCR反応を行った。その結果得られた約5.4kbのDNA断片をTOPO−TAクローニングキット(インビトロジェン)にてクローン化し、プラスミドpCR−MAFAS−1とした。インサートの塩基配列を確認したところ、配列番号:1(cDNA)の1−5435に相当することがわかった。これを制限酵素EcoRIで消化して得られた5.4kbのDNA断片を、ベクターpBluescriptII SK+のEcoRIサイトに連結した。配列番号:1(cDNA)の塩基番号1がベクターpBluescriptII SK+のマルチクローニングサイトのSacI側に位置するものを選択し、プラスミドpBS−MAFAS−1とした。
【0066】
次にプラスミドpBS−MAFAS2−1を制限酵素ApaIとEcoRVで消化して得られた約2kbのDNA断片をベクターpBluescriptII SK+のApaI、EcoRVサイトへ連結した。得られたプラスミドをpBS−FAS−2とした。次に、M.alpina 1S−4のcDNAを鋳型として、プライマーF1−3f:TGTCTTGAAGAGCAAGGAGTGG(配列番号:13)とプライマーF2−2r:GCGTAGTAGTCGCCGTGCTCAGCCATC(配列番号:14)を用いて、Pfu Turbo DNA Polymerase(STRATAGENE)により、92℃ 2分の後、92℃ 10秒、55℃ 30秒、68℃ 8分を1サイクルとして10サイクル、つづいて92℃ 10秒、55℃ 30秒、68℃ 8分+10秒/サイクル数を1サイクルとして20サイクルの反応を行った。その結果得られた約3.6kbのDNA断片をZero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(Invitrogen)を用いてベクターpCR4 Blunt−TOPOベクターにクローニングし、プラスミドpCR−MAFAS−5とした。プラスミドpCR−MAFAS−5を制限酵素EcoRVおよびSpeIで消化して得られた約3.1kbのDNA断片をプラスミドpBS−MAFAS−2を制限酵素EcoRVおよびSpeIで消化して得られた4.9kbのDNA断片と連結し、プラスミドpBS−MAFAS−3とした。
【0067】
さらに、pBS−MAFAS2−1を制限酵素EcoRVで消化し得られた2.6kbのDNA断片を、プラスミドpBS−MAFAS−3を制限酵素EcoRVで消化したDNA断片と連結し、挿入されたDNA断片が順方向であることを確認し、プラスミドpBS−MaFASを得た。
プラスミドpBS−MaFASは配列番号:1で示される塩基配列をもつDNAを含んでおり、M.alpina 1S−4由来のFASホモログのcDNAの全長を含んでいるものと考えられた。CDSは1−12489番目の塩基配列で、ORFは配列番号:1の1番目−12486番目の塩基配列であった。推定アミノ酸配列を配列番号:3(protein)に示す。
このアミノ酸配列を既知の脂肪酸合成酵素遺伝子と比較すると、既知の菌類由来の脂肪酸合成酵素のβとαサブユニットがhead−to−tailで連結した構造になっていた。しかしながら、同様の構造をもつことが知られている細菌由来のタイプI脂肪酸合成酵素とは相同性は低かった。菌類由来のβサブユニットとαサブユニットを連結したアミノ酸配列と当該タンパク質のアミノ酸配列を比較すると50%前後のidentityであった。3−oxoacyl−[acyl−carrier protein]の保存配列(COG4982)の一部に相当する165アミノ酸からなるモチーフが、2回繰り返しになっていた。
【0068】
また、先に得られたゲノム配列と比較すると本遺伝子は7つのイントロンを有していた。配列番号:2のうち、エキソンは1062番目‐1304番目、2140番目-2679番目、2778番目‐4724番目、4823番目‐7027番目、7115番目-7243番目、7339番目-7497番目、7582番目‐10668番目、10772番目-14947番目の8つである。また、イントロンは、1305番目-2139番目、2680番目-2777番目、4725番目-4822番目、7028番目-7114番目、7244番目‐7338番目、7498番目-7581番目、10669番目‐10771番目の7つである。
【0069】
酵母Sacchoromyces cerevisiaeでの発現ベクターの構築
プラスミドpBS−MaFASを制限酵素ApaIで消化したのち、DNA Blunting Kit(タカラバイオ)を用いて末端を平滑化した。つづいて、これを制限酵素EcoRIで消化し、約13kbのDNA断片を得た。このDNA断片を、制限酵素BamHIで消化したのち平滑化し、さらに制限酵素EcoRIで消化したベクターpYE22m(Biosci. Biotech. Biochem., 59, 1221-1228, 1995)と連結することで、プラスミドpYE−MaFASを構築した。
【0070】
MaFAS高発現酵母の脂肪酸分析
プラスミドpYE−MaFASで酵母S.cerevisiae EH1315株(Appl. Microbiol. Biotechnol., 30, 515-520, 1989)を形質転換して得られた形質転換株のうち、任意の2株をMaFAS−1株、MaFAS−2株とした。一方、ベクターpYE22mで酵母S.cerevisiae EH1315株を形質転換して得られた形質転換株のうち、任意の1株をコントロール株(C−1株)とした。これらの株をSC−Trp液体培地 10mlまたはYPD液体培地 10mlにそれぞれ1白金耳植菌し、30℃にて2日間培養した。遠心分離により菌体を集菌し、凍結乾燥した。塩酸メタノール法により、菌体の脂肪酸をメチルエステルに誘導した後、ヘキサンで抽出、ヘキサンを留去し、ガスクロマトグラフィーにより分析を行った。その結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

C−1株では炭素数16の脂肪酸より炭素数18のステアリン酸やオレイン酸の比率が高いのに対し、MaFASを高発現させたMaFAS−1株とMaFAS−2株では、炭素数16のパルミチン酸やパルミトレイン酸の比率が高くなっていた。
【0072】
脂質生産菌Mortierella alpinaでの発現ベクターの構築
プラスミドpBlueHpt(特開2005-287403)を制限酵素NcoIとBamHIで消化し、5'末端をリン酸化したMCS1-FとMCS1-Rをアニーリングして挿入し、プラスミドpBlueHptMCSを得た。
MCS1-F:5'-catggatcctctagactgcaggcatgcaagcttctcga (配列番号:15)
MCS1-R:5'-ctaggagatctgacgtccgtacgttcgaagagctctag (配列番号:16)
プラスミドpDura5(Appl. Microbiol. Biotechnol.,65, 419-425,(2004)を、制限酵素BamHIで消化し末端を平滑化したのちセルフライゲーションした。つづいて、得られたプラスミドを制限酵素XbaIで消化し末端を平滑化したのちセルフライゲーションした。さらに、得られたプラスミドを制限酵素HindIIIで消化し末端を平滑化したのちセルフライゲーションした。得られたプラスミドをEcoRIで消化し、プラスミドpBlueHptMCSをEcoRIで消化して得られた約1.7kbpの断片を挿入し、histonH4.1遺伝子のプロモーターが同じ向きに挿入されたものを選択し、プラスミドベクターpDura5MCSとした。
プラスミドpBS−MaFASを制限酵素ApaIで消化したのち、DNA Blunting Kit(タカラバイオ)を用いて末端を平滑化した。つづいて、これを制限酵素XbaIで消化し、約13kbのDNA断片を得た。このDNA断片を、制限酵素HindIIIで消化したのち平滑化し、さらに制限酵素XbaIで消化したベクターpDura5MCSと連結することで、プラスミドpDura5−MaFASを構築した。
【0073】
脂質生産菌M.alpinaの形質転換
プラスミドpDura5−MaFASを用いて、M.alpina より特許文献(脂質生産菌の育種方法)の方法にしたがって誘導したウラシル要求性株Δura−3を宿主としてパーティクルデリバリー法で形質転換を行った。形質転換株の選択には、SC寒天培地(Yeast Nitrogen Base w/o Amino Acids and Ammonium Sulfate(Difco)0.5%、硫酸アンモニウム0.17%、グルコース2%、アデニン0.002%、チロシン0.003%、メチオニン0.0001%、アルギニン0.0002%、ヒスチジン0.0002%、リジン0.0004%、トリプトファン0.0004%、スレオニン0.0005%、イソロイシン0.0006%、ロイシン0.0006%、フェニルアラニン0.0006%、寒天2%)を用いた。
【0074】
得られた形質転換株のうち2株をFAS−3株、FAS−4株とした。一方、pDura5を導入して得られた任意の一株をC−2株とした。これらの株を、グルコース2%、酵母エキス1%の液体培地に植菌し、28℃にて振とう培養し、培養中の3日目20%グルコース溶液を培養液の20分の1量添加した。4日目に菌体の一部を回収し、凍結乾燥した。菌体の脂肪酸をメチルエステルに誘導した後、ヘキサンで抽出、ヘキサンを留去し、ガスクロマトグラフィーにより分析を行い、菌体あたりの脂肪酸量を定量した。その結果を表2に示す。
【0075】
【表2】

FAS−3株およびFAS−4株では、C−2株に比べて、菌体あたりの脂肪酸含量が増加していた。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、脂肪酸の生産性の向上、または所望の脂肪酸の製造、および/または所望の脂肪酸を含有する食品、化粧料、皮膚外用薬、および/または石鹸等の製造に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1−1】図1−1は、既知のFAS1タンパク質のアミノ酸配列(Saccharomyces cerevisiae由来、Candida albicans由来、Aspergillus nidulans由来)のアラインメントを示す図である。
【図1−2】図1−2は、既知のFAS1タンパク質のアミノ酸配列(Saccharomyces cerevisiae由来、Candida albicans由来、Aspergillus nidulans由来)のアラインメントを示す図である。(続き)
【図1−3】図1−3は、既知のFAS1タンパク質のアミノ酸配列(Saccharomyces cerevisiae由来、Candida albicans由来、Aspergillus nidulans由来)のアラインメントを示す図である。(続き)
【図1−4】図1−4は、既知のFAS1タンパク質のアミノ酸配列(Saccharomyces cerevisiae由来、Candida albicans由来、Aspergillus nidulans由来)のアラインメントを示す図である。(続き)
【図1−5】図1−5は、既知のFAS1タンパク質のアミノ酸配列(Saccharomyces cerevisiae由来、Candida albicans由来、Aspergillus nidulans由来)のアラインメントを示す図である。(続き)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(h)のいずれかに記載のポリヌクレオチド:
(a)配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドもしくはその一部を含有するポリヌクレオチド;
(c)配列番号:3のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(d)配列番号:3のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(e)配列番号:3のアミノ酸配列に対して、60%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(f)配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(g)配列番号:2の塩基配列もしくはその一部と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;または
(h)配列番号:3のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
【請求項2】
以下の(i)〜(m)のいずれかである請求項1に記載のポリヌクレオチド:
(i)配列番号:3のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/もしくは付加したアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(j)配列番号:3のアミノ酸配列に対して、90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(k)配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(l)配列番号:2の塩基配列もしくはその一部と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;または
(m)配列番号:3のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脂肪酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
【請求項3】
配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
配列番号:1の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
配列番号:3のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
DNAである、請求項1〜6のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリヌクレオチドにコードされるタンパク質。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有するベクター。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリヌクレオチドが導入された形質転換生物。
【請求項11】
請求項9に記載のベクターが導入された形質転換生物。
【請求項12】
請求項9に記載のベクターを導入することによって、脂肪酸生成能が向上した請求項11に記載の形質転換生物。
【請求項13】
前記生物が、脂質生産菌である、請求項10〜12のいずれかに記載の形質転換生物。
【請求項14】
前記脂質生産菌が、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)である、請求項13に記載の形質転換生物。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれかに記載の形質転換生物を用いる脂質または脂肪酸の製造方法。
【請求項16】
請求項10〜14のいずれかに記載の形質転換生物を用いる食品、医薬品または工業原料の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法で製造された食品、医薬品または工業原料。
【請求項18】
配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列を有する脂肪酸合成酵素遺伝子の塩基配列に基づいて設計したプライマーまたはプローブを用いて、被検脂質生産菌の脂肪酸生成能について評価する方法。
【請求項19】
被検脂質生産菌を培養し、配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列を有する脂肪酸合成酵素遺伝子の発現量を測定することによって、被検脂質生産菌の脂肪酸生成能を評価する方法。
【請求項20】
基準脂質生産菌および被検脂質生産菌を培養して配列番号:1の1番目から12486番目の塩基配列を有する脂肪酸合成酵素遺伝子の各脂質生産菌における発現量を測定し、基準脂質生産菌よりも該遺伝子が高発現している被検脂質生産菌を選択する、脂質生産菌の選択方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【公表番号】特表2009−536019(P2009−536019A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551795(P2008−551795)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【国際出願番号】PCT/JP2007/059815
【国際公開番号】WO2007/129770
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【Fターム(参考)】