脱硫剤及びその製造方法
【課題】耐酸化性、耐発火性及び生産性を改善した脱硫剤及びその製造方法を提供する。
【解決手段】結晶粒界を有する多数のマグネシウム−アルミニウム合金結晶粒、及び前記マグネシウム−アルミニウム合金結晶粒の内部ではない外部として前記結晶粒界に存在する、マグネシウム及びアルミニウムのうち選択された少なくとも何れか一つとアルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち選択された少なくとも何れか一つ間の化合物を含む脱硫剤の構造として、脱硫剤粒子を稠密に形成することでマグネシウムの酸化力を減らし、発火温度を高めて、大気中の酸素と反応せず溶銑内で硫黄と反応して、脱硫効率を高めることができる。
【解決手段】結晶粒界を有する多数のマグネシウム−アルミニウム合金結晶粒、及び前記マグネシウム−アルミニウム合金結晶粒の内部ではない外部として前記結晶粒界に存在する、マグネシウム及びアルミニウムのうち選択された少なくとも何れか一つとアルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち選択された少なくとも何れか一つ間の化合物を含む脱硫剤の構造として、脱硫剤粒子を稠密に形成することでマグネシウムの酸化力を減らし、発火温度を高めて、大気中の酸素と反応せず溶銑内で硫黄と反応して、脱硫効率を高めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱硫剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、マグネシウム合金は実用金属のうち最も軽い金属であって、比強度、比剛性が優れて軽量構造材料として期待されている。また、このようなマネシウムは、脱硫性能が優れて、近年脱硫剤としても開発が行われている。例えば、マグネシウムを用いて鉱石に含まれた硫化鉄を純粋な鉄にする製鋼工程で脱硫剤として用いられることができる。
【0003】
このようなマグネシウム合金は、高温で溶かしたマグネシウム合金溶液を用いて製造されるが、溶湯は発火しやすいという問題がある。また、マグネシウム合金は酸化特性が強いため、脱硫剤としての使用が困難であって、マグネシウム合金を脱硫剤として使用するためには、粉末または顆粒状態で形成されなければならないため、粉砕性の向上が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、耐酸化性、耐発火性及び生産性を改善した脱硫剤及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明にかかる脱硫剤は、結晶粒界を有する多数のマグネシウム−アルミニウム合金結晶粒;及び前記マグネシウム−アルミニウム合金結晶粒の内部ではない外部として前記結晶粒界に存在する、マグネシウム及びアルミニウムのうち選択された少なくとも何れか一つとアルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち選択された少なくとも何れか一つ間の化合物を含む。
【0006】
ここで、前記アルミニウムは、前記マグネシウム−アルミニウム合金結晶粒内に40乃至65重量比存在してもよい。
【0007】
そして、前記アルカリ土類金属のうちカルシウムが前記化合物を形成してもよい。
【0008】
また、前記カルシウムは、前記マグネシウム−アルミニウム合金結晶粒内に0.5乃至50重量比存在してもよい。
【0009】
また、前記結晶粒界に存在する酸化カルシウム(CaO)をさらに含んでもよい。
【0010】
また、前記脱硫剤の発火温度は1100℃乃至1500℃であってもよい。
【0011】
さらに、本発明にかかる脱硫剤の製造方法、マグネシウム−アルミニウム合金をるつぼに入れて400℃乃至800℃の温度で溶解して、マグネシウム−アルミニウム合金溶湯を形成するマグネシウム−アルミニウム合金溶湯形成段階;前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯に、添加剤としてアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を添加する添加剤添加段階;前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯を1分乃至400分間撹拌する撹拌段階;前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯を常温乃至400℃の鋳型に入れて鋳造してマグネシウム−アルミニウム合金鋳造物を形成する鋳造段階;及び前記マグネシウム−アルミニウム合金鋳造物を冷却する冷却段階を含んで成る。
【0012】
ここで、前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯形成段階で、アルミニウムを40重量比乃至65重量比形成してもよい。
【0013】
そして、前記添加剤添加段階で、前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯に酸化カルシウムを添加してもよい。
【0014】
また、前記添加剤添加段階で、前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯に、カルシウムの重量が0.5重量比乃至50重量比になるよう、前記酸化カルシウムを添加してもよい。
【0015】
また、前記冷却段階の後に、前記冷却されたマグネシウム−アルミニウム合金鋳造物を粉砕して粉末または顆粒状態に形成する粉砕段階がさらに行われてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる脱硫剤は、マグネシウムに40重量比乃至65重量比のアルミニウムを添加して形成されることで、耐発火性及び粉砕性が向上することができる。
また、本発明にかかる脱硫剤は、マグネシウムに0.5重量比乃至50重量比のカルシウムを添加して形成されることで、耐酸化性及び耐発火性が向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる脱硫剤の製造方法を説明するための順序図である。
【図2】脱硫剤内にアルミニウムが含まれた場合と含まれなかった場合の粉砕性を比べた図である。
【図3】純粋マグネシウムの組職図である。
【図4A】本発明にかかる脱硫剤を形成するマグネシウム−アルミニウム合金で、42重量比のアルミニウムからなるマグネシウム−アルミニウム合金に1.5重量比の酸化カルシウムを入れて観察した組職図である。
【図4B】本発明にかかる脱硫剤を形成するマグネシウム−アルミニウム合金で、42重量比のアルミニウムからなるマグネシウム−アルミニウム合金に3.5重量比の酸化カルシウムを入れて観察した組職図である。
【図5A】本発明にかかる脱硫剤を形成するマグネシウム−アルミニウム合金で、56重量比のアルミニウムからなるマグネシウム−アルミニウム合金に2.2重量比の酸化カルシウムを入れて観察した組職図である。
【図5B】本発明にかかる脱硫剤を形成するマグネシウム−アルミニウム合金で、56重量比のアルミニウムからなるマグネシウム−アルミニウム合金に3.7重量比の酸化カルシウムを入れて観察した組職図である。
【図6】本発明にかかる脱硫剤を構成するマグネシウム−アルミニウム合金の粉砕性実験結果を図示したグラフである。
【図7】本発明にかかる脱硫剤を構成するマグネシウム−アルミニウム合金の酸化実験結果を図示したグラフである。
【図8A】純粋マグネシウムの発火実験結果を図示したグラフである。
【図8B】本発明にかかる脱硫剤を構成するマグネシウム−アルミニウム合金の発火実験結果を図示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の好ましい実施例を図面を参照して詳しく説明する。
【実施例】
【0019】
以下では、本発明にかかる脱硫剤の製造方法を説明する。
【0020】
図1は、本発明にかかる脱硫剤の製造方法を説明するための順序図である。
【0021】
図1を参照すると、本発明にかかる脱硫剤の製造方法は、マグネシウム−アルミニウム溶湯形成段階S1、添加剤添加段階S2、撹拌段階S3、鋳造段階S4及び冷却段階S5を含む。また、前記冷却段階S5の後には粉砕段階S6がさらに行われてもよい。
【0022】
前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯形成段階S1では、マグネシウム−アルミニウム合金(Mg−Al alloy)をるつぼに入れて、400℃乃至800℃で加熱する。すると、前記るつぼ内のマグネシウム−アルミニウム合金は溶解されて、マグネシウム−アルミニウム合金溶湯を形成する。ここで、前記温度が400℃未満であると、マグネシウム−アルミニウム合金溶湯の形成が困難であり、温度が800℃を超えると、マグネシウム−アルミニウム合金溶湯が発火する恐れがある。
【0023】
前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯形成段階S1で使用されるアルミニウムは、全体脱硫剤100重量比に対して40重量比乃至65重量比から成ることができる。前記アルミニウムが40重量比以上形成されると、前記アルミニウムが前記マグネシウムに対する還元剤として作用して、前記マグネシウムが酸化されることを防止し、前記マグネシウム−アルミニウム合金の耐発火性を向上させ、さらに前記粉砕段階S6で前記マグネシウム−アルミニウム合金が容易に粉砕されるようにして、生産性を向上させることができる。また、前記アルミニウムが65重量比以下形成されると、前記マグネシウム−アルミニウム合金の耐発火性を向上させ、含量を高めて脱硫効率を増加させ、さらに前記マグネシウム−アルミニウム合金が容易に粉砕されるようにすることができる。
【0024】
また、前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯の発火を防止するために、付加的に少量の保護ガスが提供されることができる。前記保護ガスとしては、通常のSF6、SO2、CO2、HFC−134a、NovecTM612、非活性気体及びその等価物と、またこれらの混合ガスを用いて、前記マグネシウムの発火を抑制することができる。しかし、本発明でこのような保護ガスが必ずしも必要なのではなく、提供されなくてもよい。
【0025】
前記添加剤添加段階S2では、前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯に粉末形態の添加剤を添加する。ここで、添加される前記添加剤は、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物のうち少なくとも何れか一つで形成されることができる。特に、前記添加剤は、酸化カルシウム(CaO)から成ってもよい。前記添加剤は、マグネシウムまたはアルミニウムと結合して粒子を稠密に形成することで、マグネシウム−アルミニウム合金溶湯内のマグネシウムの酸化力を減らし、発火温度を高める。それによって、前記添加剤により、前記マグネシウムが脱硫工程中に大気中の酸素と反応せず熔銑内で硫黄と反応して、脱硫効率を高めることができ、保護ガスの必要量を減らすことができる。
【0026】
前記添加剤添加段階S2で用いられた添加剤は、前記アルカリ土類金属化合物のうち酸化カルシウム(CaO)であってもよく、カルシウム(Ca)が全体脱硫剤100重量比に対して0.5乃至50重量比からなるように添加されてもよい。前記カルシウムが0.5重量比以上である場合、添加剤による効果(酸化減少、発火温度増加及び保護ガス減少)が向上することができる。また、前記カルシウムが50重量比以下である場合、元のマグネシウム−アルミニウム合金の特性が現われることができる。
【0027】
また、前記添加剤添加段階S2で用いられた添加剤は、大きさが0.1μm乃至500μmであってもよい。前記添加剤の大きさが0.1μm以上である場合、前記添加剤の製造が現実的に可能である。また、前記添加剤の大きさが500μm以下である場合、前記添加剤が前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯内で容易に反応することができる。
【0028】
前記撹拌段階S3では、前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯を1〜400分間撹拌する。ここで、撹拌時間が1分未満であるとマグネシウム−アルミニウム合金溶湯に添加剤が充分に混合されず、撹拌時間が400分を超えると、マグネシウム−アルミニウム合金溶湯の撹拌時間が無駄に長くなる恐れがある。
【0029】
ここで、前記添加剤は、前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯内で反応を行う。前記添加剤として酸化カルシウム(CaO)が前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯に添加された場合、前記カルシウム(Ca)が還元されて、マグネシウムまたはアルミニウムと結合した添加剤化合物を形成する。この時、前記添加剤化合物はAl2Ca、(Mg,Al)2Ca、Mg2Ca等として形成されることができ、このような相形成により前記マグネシウム−アルミニウム溶湯の耐発火性が向上することができる。
【0030】
また、前記添加剤である酸化カルシウム(CaO)の一部は反応せず残存する場合がある。この場合、前記酸化カルシウムC(aO)も脱硫能力が優れているため、前記マグネシウム−アルミニウム合金内に残存して脱硫剤として機能することができる。
【0031】
また、上記のような撹拌段階S3で、前記添加剤は前記マグネシウム−アルミニウム合金結晶粒の内部に存在せず、結晶粒の外部、即ち、結晶粒界で金属間化合物形態で存在するようになる。即ち、このような撹拌段階S3で、添加剤は添加剤化合物形態を有するが、より具体的に、Al2Ca、(Mg,Al)2Ca、Mg2Caなどの形態を有するようになって、マグネシウム−アルミニウム合金の耐発火性を向上させることができる。
【0032】
また、マグネシウムは沸点が低いので、溶湯添加時表面に浮び上がる傾向がある。そして、前記添加剤によって添加されたカルシウム(Ca)は、前記マグネシウム−アルミニウム合金結晶内で、前記マグネシウムの蒸気圧を減少させて、反応を静かに誘導することができる。
【0033】
一方、添加剤を成す他の元素(O2)は、全てマグネシウム溶湯の表面に浮遊するようになり、これは手動または自動設備によって除去されることができる。
【0034】
前記鋳造段階S4では、前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯を常温乃至400℃の鋳型に入れて鋳造する。
【0035】
ここで、前記鋳型としては、金型、セラミック型、グラファイト型及びその等価物のうち選択された何れか一つを用いることができる。また、鋳造方式としては、重力鋳造、連続鋳造及びその等価方式が可能である。しかし、ここで前記鋳型の種類及び前記鋳造の方式を限定するのではない。
【0036】
前記冷却段階S5では、前記鋳型を常温で冷却した後、鋳型からマグネシウム−アルミニウム合金(例えば、マグネシウム−アルミニウム合金インゴット)を取り出す。
【0037】
ここで、上記のような方法で製造されたマグネシウム−アルミニウム合金は、後述する結晶粒界を有する多数のマグネシウム−アルミニウム合金結晶粒と、前記マグネシウム−アルミニウム合金結晶粒の内部ではない外部として前記結晶粒界に存在する金属間化合物からなる。
【0038】
尚、前記マグネシウム−アルミニウム合金の製造工程中に添加される物質は、単に添加剤と定義し、製造されたマグネシウム−アルミニウム合金に添加されている物質は、添加剤化合物と定義することができる。即ち、製造されたマグネシウム合金に添加されている物質は、金属間化合物形態を有するからである。
【0039】
前記粉砕段階S6は、前記マグネシウム−アルミニウム合金インゴットを常温で粉碎して、粉末または顆粒の脱硫剤を形成する段階である。前記粉砕は、別途のハンマーまたはミーリングドラムマシン(Milling Drum Machine)のような粉砕機などを用いた通常の粉砕方法で行われてもよい。ここで、前記マグネシウム−アルミニウム合金は、砕けやすい(brittle)性質、即ち、高い粉砕性(crushability)を有する。よって、前記マグネシウム−アルミニウム合金を粉砕する場合、作業性が向上して脱硫剤の生産性を高めることができる。
【0040】
図2は、全体脱硫剤の重量比に対して、前記アルミニウムが42重量比で形成された場合と前記アルミニウムが20重量比で形成された脱硫剤を同じ力のハンマーで粉砕した結果を比べたものである。そして、毎回ごとに前記マグネシウム−アルミニウム合金に前記ハンマーにより30Nの力を加えた。
【0041】
図2に示すように、同じ回数の力に対して、前記アルミニウムが42重量比の場合が20重量比の場合に比べて粉砕効果が優れたことを確認できる。よって、前記アルミニウムを40重量比乃至65重量比で形成して、本発明にかかる脱硫剤の生産性を向上させることができる。
【0042】
以下では、本発明にかかる脱硫剤の構成を説明する。
【0043】
図3は、純粋マグネシウムの組職図である。図4A及び図4Bは、本発明にかかる脱硫剤を形成するマグネシウム−アルミニウム合金で、酸化カルシウムの組成を異なるようにして観察した組職図である。
【0044】
図3を参照すると、純粋マグネシウムの場合、結晶粒界にいかなる添加剤化合物も観察されない。また、別途に図示していないが、酸化カルシウム(CaO)を添加して添加剤化合物を形成した場合、添加剤化合物は内部に存在する。
【0045】
図4Aに図示されたマグネシウム−アルミニウム合金は、42重量比のアルミニウムからなるマグネシウム−アルミニウム合金に1.5重量比の酸化カルシウムを入れて製造したものである。図4Bに図示されたマグネシウム−アルミニウム合金は、42重量比のアルミニウムからなるマグネシウム−アルミニウム合金に3.5重量比の酸化カルシウムを入れて製造したものである。
【0046】
図4A及び図4Bを比べると、酸化カルシウムの添加量が増加するほど結晶粒界にもっと多い添加剤化合物が形成されたことを確認できる。ここで、重要なのは、前記酸化カルシウムの添加による添加剤化合物が、結晶粒の内部ではなく結晶粒界に形成されるということである。前記添加剤化合物は、Al2Ca、(Mg,Al)2Ca、Mg2Caなどの形態を有する。即ち、前記添加剤の酸化カルシウム内カルシウム(Ca)は還元されてマグネシウム(Mg)またはアルミニウム(Al)と反応し、その結果、組職が微細化され結晶粒界に添加剤化合物が形成されて、マグネシウム−アルミニウム合金溶湯の耐酸化性及び耐発火性が向上することができる。そしてこの時、図4A乃至図4Bに示された数個の黒い点は反応せず残存する酸化カルシウム(CaO)である。また、酸化カルシウム(CaO)も脱硫能力が優れているので、前記残存する酸化カルシウム(CaO)は、本発明の実施例にかかる脱硫剤内で脱硫効率に寄与することができる。
【0047】
図5Aに図示されたマグネシウム−アルミニウム合金は、56重量比のアルミニウムからなるマグネシウム−アルミニウム合金に2.2重量比の酸化カルシウムを入れて製造したものである。図5Bに図示されたマグネシウム−アルミニウム合金は、56重量比のアルミニウムからなるマグネシウム−アルミニウム合金に3.7重量比の酸化カルシウムを入れて製造したものである。
【0048】
図5A及び図5Bを図4A及び図4Bと比べると、アルミニウムの添加量及び酸化カルシウムの添加量が増加するほど、組職が微細化され結晶粒界に添加剤化合物が形成されることを確認できる。よって、アルミニウム及び酸化カルシウムの増加によって、マグネシウム−アルミニウム合金溶湯の耐酸化性及び耐発火性が向上することができる。
【0049】
以下では、本発明にかかる脱硫剤の粉砕性について説明する。
【0050】
図6は、本発明にかかる脱硫剤を構成するマグネシウム−アルミニウム合金の粉砕性(crushability)実験結果を図示したグラフである。
【0051】
図6において、X軸はアルミニウムの重量(wt.%)であり、Y軸は平均粒子大きさ(μm)でありる。実験は、アルミニウムの重量を漸次的に増加させたマグネシウム−アルミニウム合金溶湯に10重量比の酸化カルシウムを添加して行った。また、粉砕は、ミーリングドラムマシン(milling drum machine)でミール(mill)の回転数は50rpmにして行った。
【0052】
図6のグラフを表で表すと、次のようになる。
【0053】
【表1】
【0054】
図6及び表1を参照すると、アルミニウムの重量が増加するほど、粉砕後平均粒子の大きさが小くなっていてまた増加することを確認できる。即ち、前記平均粒子大きさは、前記アルミニウムが30重量比である場合525μmで、アルミニウムが35重量比である時は452μmに減少し、アルミニウムが40重量比である時は153μmに急激に減少する。一方、前記平均粒子大きさは、アルミニウムが40重量比乃至65重量比である時、最低値を有する。即ち、アルミニウムが40重量比乃至65重量比である時、本発明の実施例にかかる脱硫剤の粉砕性が最も良いことが確認できる。一方、前記平均粒子大きさは、アルミニウムが65重量比を超えると急激に増加する。
【0055】
従って、上述したように、前記アルミニウムが40重量比乃至65重量比存在する場合、本発明の実施例にかかる脱硫剤の粉砕性が増加し、生産量が増加することができる。
【0056】
以下では、本発明にかかる脱硫剤の耐酸化性について説明する。
【0057】
図7は、本発明にかかる脱硫剤に添加される酸化カルシウムによる酸化実験結果を図示したグラフである。
【0058】
図7において、X軸は経過時間(min)であり、Y軸は酸化量である。Y軸の基本値は100に設定されている。実験は、純粋なマグネシウムに添加剤として酸化カルシウムを0.10重量比乃至2.05重量比まで漸次的に増加させながら行われた。
【0059】
図7に示すように、純粋なマグネシウムの場合、時間の経過によって酸化が発生しY軸の値が増加する。一方、製造工程によって酸化カルシウム(CaO)が添加されたマグネシウムの場合、時間の経過によって酸化される度合を比べると、純粋なマグネシウムに比べてY軸の値である酸化量がもっと少ないことを確認できる。さらに、前記酸化カルシウムが0.82重量比乃至2.05重量比である場合、時間が経過しても酸化量が殆ど増加しないことを確認できる。
【0060】
従って、本発明にかかる脱硫剤を構成するマグネシウム−アルミニウム合金は、酸化量を減らして、脱硫剤の耐酸化性を向上させることができるのを確認できる。
【0061】
以下では、本発明にかかる脱硫剤の耐発火性について説明する。
【0062】
図8Aは、純粋マグネシウムの発火実験結果を図示したグラフである。図8Bは、本発明にかかる脱硫剤を構成するマグネシウム−アルミニウム合金の発火実験結果を図示したグラフである。
【0063】
図8A及び図8Bにおいて、X軸は酸化カルシウムの加熱時間(min)であり、Y軸は温度(℃)である。図8Bの実験は、42重量比のアルミニウムを有するマグネシウム−アルミニウム合金溶湯に3.5重量比の酸化カルシウムを添加して行った。
【0064】
先ず、図8Aを参照すると、青色の温度(temperature)グラフと緑色の温度差(temperature difference)グラフが接する温度で発火が起きる。そして、純粋なマグネシウムの発火温度は約580℃であることを確認できる。
【0065】
一方、図8Bを参照すると、アルミニウムが42重量比、酸化カルシウムが3.5重量比添加されたマグネシウム−アルミニウム合金は、発火温度が約1170℃まで上昇したことを確認できる。また、前記発火温度は、1100℃乃至1500℃の間で形成される。よって、本発明にかかる脱硫剤を構成するマグネシウム−アルミニウム合金の発火温度は、純粋なマグネシウムに比べて増加するようになることを確認できる。
【0066】
従って、上述したように、本発明にかかる脱硫剤は、マグネシウム−アルミニウム合金により耐発火性を向上させることができ、粉砕性を向上させて生産性を向上させることができる。また、本発明にかかる脱硫剤は、マグネシウム−アルミニウム合金に酸化カルシウムを添加して、脱硫剤の耐酸化性及び耐発火性を向上させることができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱硫剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、マグネシウム合金は実用金属のうち最も軽い金属であって、比強度、比剛性が優れて軽量構造材料として期待されている。また、このようなマネシウムは、脱硫性能が優れて、近年脱硫剤としても開発が行われている。例えば、マグネシウムを用いて鉱石に含まれた硫化鉄を純粋な鉄にする製鋼工程で脱硫剤として用いられることができる。
【0003】
このようなマグネシウム合金は、高温で溶かしたマグネシウム合金溶液を用いて製造されるが、溶湯は発火しやすいという問題がある。また、マグネシウム合金は酸化特性が強いため、脱硫剤としての使用が困難であって、マグネシウム合金を脱硫剤として使用するためには、粉末または顆粒状態で形成されなければならないため、粉砕性の向上が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、耐酸化性、耐発火性及び生産性を改善した脱硫剤及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明にかかる脱硫剤は、結晶粒界を有する多数のマグネシウム−アルミニウム合金結晶粒;及び前記マグネシウム−アルミニウム合金結晶粒の内部ではない外部として前記結晶粒界に存在する、マグネシウム及びアルミニウムのうち選択された少なくとも何れか一つとアルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち選択された少なくとも何れか一つ間の化合物を含む。
【0006】
ここで、前記アルミニウムは、前記マグネシウム−アルミニウム合金結晶粒内に40乃至65重量比存在してもよい。
【0007】
そして、前記アルカリ土類金属のうちカルシウムが前記化合物を形成してもよい。
【0008】
また、前記カルシウムは、前記マグネシウム−アルミニウム合金結晶粒内に0.5乃至50重量比存在してもよい。
【0009】
また、前記結晶粒界に存在する酸化カルシウム(CaO)をさらに含んでもよい。
【0010】
また、前記脱硫剤の発火温度は1100℃乃至1500℃であってもよい。
【0011】
さらに、本発明にかかる脱硫剤の製造方法、マグネシウム−アルミニウム合金をるつぼに入れて400℃乃至800℃の温度で溶解して、マグネシウム−アルミニウム合金溶湯を形成するマグネシウム−アルミニウム合金溶湯形成段階;前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯に、添加剤としてアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を添加する添加剤添加段階;前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯を1分乃至400分間撹拌する撹拌段階;前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯を常温乃至400℃の鋳型に入れて鋳造してマグネシウム−アルミニウム合金鋳造物を形成する鋳造段階;及び前記マグネシウム−アルミニウム合金鋳造物を冷却する冷却段階を含んで成る。
【0012】
ここで、前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯形成段階で、アルミニウムを40重量比乃至65重量比形成してもよい。
【0013】
そして、前記添加剤添加段階で、前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯に酸化カルシウムを添加してもよい。
【0014】
また、前記添加剤添加段階で、前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯に、カルシウムの重量が0.5重量比乃至50重量比になるよう、前記酸化カルシウムを添加してもよい。
【0015】
また、前記冷却段階の後に、前記冷却されたマグネシウム−アルミニウム合金鋳造物を粉砕して粉末または顆粒状態に形成する粉砕段階がさらに行われてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる脱硫剤は、マグネシウムに40重量比乃至65重量比のアルミニウムを添加して形成されることで、耐発火性及び粉砕性が向上することができる。
また、本発明にかかる脱硫剤は、マグネシウムに0.5重量比乃至50重量比のカルシウムを添加して形成されることで、耐酸化性及び耐発火性が向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる脱硫剤の製造方法を説明するための順序図である。
【図2】脱硫剤内にアルミニウムが含まれた場合と含まれなかった場合の粉砕性を比べた図である。
【図3】純粋マグネシウムの組職図である。
【図4A】本発明にかかる脱硫剤を形成するマグネシウム−アルミニウム合金で、42重量比のアルミニウムからなるマグネシウム−アルミニウム合金に1.5重量比の酸化カルシウムを入れて観察した組職図である。
【図4B】本発明にかかる脱硫剤を形成するマグネシウム−アルミニウム合金で、42重量比のアルミニウムからなるマグネシウム−アルミニウム合金に3.5重量比の酸化カルシウムを入れて観察した組職図である。
【図5A】本発明にかかる脱硫剤を形成するマグネシウム−アルミニウム合金で、56重量比のアルミニウムからなるマグネシウム−アルミニウム合金に2.2重量比の酸化カルシウムを入れて観察した組職図である。
【図5B】本発明にかかる脱硫剤を形成するマグネシウム−アルミニウム合金で、56重量比のアルミニウムからなるマグネシウム−アルミニウム合金に3.7重量比の酸化カルシウムを入れて観察した組職図である。
【図6】本発明にかかる脱硫剤を構成するマグネシウム−アルミニウム合金の粉砕性実験結果を図示したグラフである。
【図7】本発明にかかる脱硫剤を構成するマグネシウム−アルミニウム合金の酸化実験結果を図示したグラフである。
【図8A】純粋マグネシウムの発火実験結果を図示したグラフである。
【図8B】本発明にかかる脱硫剤を構成するマグネシウム−アルミニウム合金の発火実験結果を図示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の好ましい実施例を図面を参照して詳しく説明する。
【実施例】
【0019】
以下では、本発明にかかる脱硫剤の製造方法を説明する。
【0020】
図1は、本発明にかかる脱硫剤の製造方法を説明するための順序図である。
【0021】
図1を参照すると、本発明にかかる脱硫剤の製造方法は、マグネシウム−アルミニウム溶湯形成段階S1、添加剤添加段階S2、撹拌段階S3、鋳造段階S4及び冷却段階S5を含む。また、前記冷却段階S5の後には粉砕段階S6がさらに行われてもよい。
【0022】
前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯形成段階S1では、マグネシウム−アルミニウム合金(Mg−Al alloy)をるつぼに入れて、400℃乃至800℃で加熱する。すると、前記るつぼ内のマグネシウム−アルミニウム合金は溶解されて、マグネシウム−アルミニウム合金溶湯を形成する。ここで、前記温度が400℃未満であると、マグネシウム−アルミニウム合金溶湯の形成が困難であり、温度が800℃を超えると、マグネシウム−アルミニウム合金溶湯が発火する恐れがある。
【0023】
前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯形成段階S1で使用されるアルミニウムは、全体脱硫剤100重量比に対して40重量比乃至65重量比から成ることができる。前記アルミニウムが40重量比以上形成されると、前記アルミニウムが前記マグネシウムに対する還元剤として作用して、前記マグネシウムが酸化されることを防止し、前記マグネシウム−アルミニウム合金の耐発火性を向上させ、さらに前記粉砕段階S6で前記マグネシウム−アルミニウム合金が容易に粉砕されるようにして、生産性を向上させることができる。また、前記アルミニウムが65重量比以下形成されると、前記マグネシウム−アルミニウム合金の耐発火性を向上させ、含量を高めて脱硫効率を増加させ、さらに前記マグネシウム−アルミニウム合金が容易に粉砕されるようにすることができる。
【0024】
また、前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯の発火を防止するために、付加的に少量の保護ガスが提供されることができる。前記保護ガスとしては、通常のSF6、SO2、CO2、HFC−134a、NovecTM612、非活性気体及びその等価物と、またこれらの混合ガスを用いて、前記マグネシウムの発火を抑制することができる。しかし、本発明でこのような保護ガスが必ずしも必要なのではなく、提供されなくてもよい。
【0025】
前記添加剤添加段階S2では、前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯に粉末形態の添加剤を添加する。ここで、添加される前記添加剤は、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物のうち少なくとも何れか一つで形成されることができる。特に、前記添加剤は、酸化カルシウム(CaO)から成ってもよい。前記添加剤は、マグネシウムまたはアルミニウムと結合して粒子を稠密に形成することで、マグネシウム−アルミニウム合金溶湯内のマグネシウムの酸化力を減らし、発火温度を高める。それによって、前記添加剤により、前記マグネシウムが脱硫工程中に大気中の酸素と反応せず熔銑内で硫黄と反応して、脱硫効率を高めることができ、保護ガスの必要量を減らすことができる。
【0026】
前記添加剤添加段階S2で用いられた添加剤は、前記アルカリ土類金属化合物のうち酸化カルシウム(CaO)であってもよく、カルシウム(Ca)が全体脱硫剤100重量比に対して0.5乃至50重量比からなるように添加されてもよい。前記カルシウムが0.5重量比以上である場合、添加剤による効果(酸化減少、発火温度増加及び保護ガス減少)が向上することができる。また、前記カルシウムが50重量比以下である場合、元のマグネシウム−アルミニウム合金の特性が現われることができる。
【0027】
また、前記添加剤添加段階S2で用いられた添加剤は、大きさが0.1μm乃至500μmであってもよい。前記添加剤の大きさが0.1μm以上である場合、前記添加剤の製造が現実的に可能である。また、前記添加剤の大きさが500μm以下である場合、前記添加剤が前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯内で容易に反応することができる。
【0028】
前記撹拌段階S3では、前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯を1〜400分間撹拌する。ここで、撹拌時間が1分未満であるとマグネシウム−アルミニウム合金溶湯に添加剤が充分に混合されず、撹拌時間が400分を超えると、マグネシウム−アルミニウム合金溶湯の撹拌時間が無駄に長くなる恐れがある。
【0029】
ここで、前記添加剤は、前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯内で反応を行う。前記添加剤として酸化カルシウム(CaO)が前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯に添加された場合、前記カルシウム(Ca)が還元されて、マグネシウムまたはアルミニウムと結合した添加剤化合物を形成する。この時、前記添加剤化合物はAl2Ca、(Mg,Al)2Ca、Mg2Ca等として形成されることができ、このような相形成により前記マグネシウム−アルミニウム溶湯の耐発火性が向上することができる。
【0030】
また、前記添加剤である酸化カルシウム(CaO)の一部は反応せず残存する場合がある。この場合、前記酸化カルシウムC(aO)も脱硫能力が優れているため、前記マグネシウム−アルミニウム合金内に残存して脱硫剤として機能することができる。
【0031】
また、上記のような撹拌段階S3で、前記添加剤は前記マグネシウム−アルミニウム合金結晶粒の内部に存在せず、結晶粒の外部、即ち、結晶粒界で金属間化合物形態で存在するようになる。即ち、このような撹拌段階S3で、添加剤は添加剤化合物形態を有するが、より具体的に、Al2Ca、(Mg,Al)2Ca、Mg2Caなどの形態を有するようになって、マグネシウム−アルミニウム合金の耐発火性を向上させることができる。
【0032】
また、マグネシウムは沸点が低いので、溶湯添加時表面に浮び上がる傾向がある。そして、前記添加剤によって添加されたカルシウム(Ca)は、前記マグネシウム−アルミニウム合金結晶内で、前記マグネシウムの蒸気圧を減少させて、反応を静かに誘導することができる。
【0033】
一方、添加剤を成す他の元素(O2)は、全てマグネシウム溶湯の表面に浮遊するようになり、これは手動または自動設備によって除去されることができる。
【0034】
前記鋳造段階S4では、前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯を常温乃至400℃の鋳型に入れて鋳造する。
【0035】
ここで、前記鋳型としては、金型、セラミック型、グラファイト型及びその等価物のうち選択された何れか一つを用いることができる。また、鋳造方式としては、重力鋳造、連続鋳造及びその等価方式が可能である。しかし、ここで前記鋳型の種類及び前記鋳造の方式を限定するのではない。
【0036】
前記冷却段階S5では、前記鋳型を常温で冷却した後、鋳型からマグネシウム−アルミニウム合金(例えば、マグネシウム−アルミニウム合金インゴット)を取り出す。
【0037】
ここで、上記のような方法で製造されたマグネシウム−アルミニウム合金は、後述する結晶粒界を有する多数のマグネシウム−アルミニウム合金結晶粒と、前記マグネシウム−アルミニウム合金結晶粒の内部ではない外部として前記結晶粒界に存在する金属間化合物からなる。
【0038】
尚、前記マグネシウム−アルミニウム合金の製造工程中に添加される物質は、単に添加剤と定義し、製造されたマグネシウム−アルミニウム合金に添加されている物質は、添加剤化合物と定義することができる。即ち、製造されたマグネシウム合金に添加されている物質は、金属間化合物形態を有するからである。
【0039】
前記粉砕段階S6は、前記マグネシウム−アルミニウム合金インゴットを常温で粉碎して、粉末または顆粒の脱硫剤を形成する段階である。前記粉砕は、別途のハンマーまたはミーリングドラムマシン(Milling Drum Machine)のような粉砕機などを用いた通常の粉砕方法で行われてもよい。ここで、前記マグネシウム−アルミニウム合金は、砕けやすい(brittle)性質、即ち、高い粉砕性(crushability)を有する。よって、前記マグネシウム−アルミニウム合金を粉砕する場合、作業性が向上して脱硫剤の生産性を高めることができる。
【0040】
図2は、全体脱硫剤の重量比に対して、前記アルミニウムが42重量比で形成された場合と前記アルミニウムが20重量比で形成された脱硫剤を同じ力のハンマーで粉砕した結果を比べたものである。そして、毎回ごとに前記マグネシウム−アルミニウム合金に前記ハンマーにより30Nの力を加えた。
【0041】
図2に示すように、同じ回数の力に対して、前記アルミニウムが42重量比の場合が20重量比の場合に比べて粉砕効果が優れたことを確認できる。よって、前記アルミニウムを40重量比乃至65重量比で形成して、本発明にかかる脱硫剤の生産性を向上させることができる。
【0042】
以下では、本発明にかかる脱硫剤の構成を説明する。
【0043】
図3は、純粋マグネシウムの組職図である。図4A及び図4Bは、本発明にかかる脱硫剤を形成するマグネシウム−アルミニウム合金で、酸化カルシウムの組成を異なるようにして観察した組職図である。
【0044】
図3を参照すると、純粋マグネシウムの場合、結晶粒界にいかなる添加剤化合物も観察されない。また、別途に図示していないが、酸化カルシウム(CaO)を添加して添加剤化合物を形成した場合、添加剤化合物は内部に存在する。
【0045】
図4Aに図示されたマグネシウム−アルミニウム合金は、42重量比のアルミニウムからなるマグネシウム−アルミニウム合金に1.5重量比の酸化カルシウムを入れて製造したものである。図4Bに図示されたマグネシウム−アルミニウム合金は、42重量比のアルミニウムからなるマグネシウム−アルミニウム合金に3.5重量比の酸化カルシウムを入れて製造したものである。
【0046】
図4A及び図4Bを比べると、酸化カルシウムの添加量が増加するほど結晶粒界にもっと多い添加剤化合物が形成されたことを確認できる。ここで、重要なのは、前記酸化カルシウムの添加による添加剤化合物が、結晶粒の内部ではなく結晶粒界に形成されるということである。前記添加剤化合物は、Al2Ca、(Mg,Al)2Ca、Mg2Caなどの形態を有する。即ち、前記添加剤の酸化カルシウム内カルシウム(Ca)は還元されてマグネシウム(Mg)またはアルミニウム(Al)と反応し、その結果、組職が微細化され結晶粒界に添加剤化合物が形成されて、マグネシウム−アルミニウム合金溶湯の耐酸化性及び耐発火性が向上することができる。そしてこの時、図4A乃至図4Bに示された数個の黒い点は反応せず残存する酸化カルシウム(CaO)である。また、酸化カルシウム(CaO)も脱硫能力が優れているので、前記残存する酸化カルシウム(CaO)は、本発明の実施例にかかる脱硫剤内で脱硫効率に寄与することができる。
【0047】
図5Aに図示されたマグネシウム−アルミニウム合金は、56重量比のアルミニウムからなるマグネシウム−アルミニウム合金に2.2重量比の酸化カルシウムを入れて製造したものである。図5Bに図示されたマグネシウム−アルミニウム合金は、56重量比のアルミニウムからなるマグネシウム−アルミニウム合金に3.7重量比の酸化カルシウムを入れて製造したものである。
【0048】
図5A及び図5Bを図4A及び図4Bと比べると、アルミニウムの添加量及び酸化カルシウムの添加量が増加するほど、組職が微細化され結晶粒界に添加剤化合物が形成されることを確認できる。よって、アルミニウム及び酸化カルシウムの増加によって、マグネシウム−アルミニウム合金溶湯の耐酸化性及び耐発火性が向上することができる。
【0049】
以下では、本発明にかかる脱硫剤の粉砕性について説明する。
【0050】
図6は、本発明にかかる脱硫剤を構成するマグネシウム−アルミニウム合金の粉砕性(crushability)実験結果を図示したグラフである。
【0051】
図6において、X軸はアルミニウムの重量(wt.%)であり、Y軸は平均粒子大きさ(μm)でありる。実験は、アルミニウムの重量を漸次的に増加させたマグネシウム−アルミニウム合金溶湯に10重量比の酸化カルシウムを添加して行った。また、粉砕は、ミーリングドラムマシン(milling drum machine)でミール(mill)の回転数は50rpmにして行った。
【0052】
図6のグラフを表で表すと、次のようになる。
【0053】
【表1】
【0054】
図6及び表1を参照すると、アルミニウムの重量が増加するほど、粉砕後平均粒子の大きさが小くなっていてまた増加することを確認できる。即ち、前記平均粒子大きさは、前記アルミニウムが30重量比である場合525μmで、アルミニウムが35重量比である時は452μmに減少し、アルミニウムが40重量比である時は153μmに急激に減少する。一方、前記平均粒子大きさは、アルミニウムが40重量比乃至65重量比である時、最低値を有する。即ち、アルミニウムが40重量比乃至65重量比である時、本発明の実施例にかかる脱硫剤の粉砕性が最も良いことが確認できる。一方、前記平均粒子大きさは、アルミニウムが65重量比を超えると急激に増加する。
【0055】
従って、上述したように、前記アルミニウムが40重量比乃至65重量比存在する場合、本発明の実施例にかかる脱硫剤の粉砕性が増加し、生産量が増加することができる。
【0056】
以下では、本発明にかかる脱硫剤の耐酸化性について説明する。
【0057】
図7は、本発明にかかる脱硫剤に添加される酸化カルシウムによる酸化実験結果を図示したグラフである。
【0058】
図7において、X軸は経過時間(min)であり、Y軸は酸化量である。Y軸の基本値は100に設定されている。実験は、純粋なマグネシウムに添加剤として酸化カルシウムを0.10重量比乃至2.05重量比まで漸次的に増加させながら行われた。
【0059】
図7に示すように、純粋なマグネシウムの場合、時間の経過によって酸化が発生しY軸の値が増加する。一方、製造工程によって酸化カルシウム(CaO)が添加されたマグネシウムの場合、時間の経過によって酸化される度合を比べると、純粋なマグネシウムに比べてY軸の値である酸化量がもっと少ないことを確認できる。さらに、前記酸化カルシウムが0.82重量比乃至2.05重量比である場合、時間が経過しても酸化量が殆ど増加しないことを確認できる。
【0060】
従って、本発明にかかる脱硫剤を構成するマグネシウム−アルミニウム合金は、酸化量を減らして、脱硫剤の耐酸化性を向上させることができるのを確認できる。
【0061】
以下では、本発明にかかる脱硫剤の耐発火性について説明する。
【0062】
図8Aは、純粋マグネシウムの発火実験結果を図示したグラフである。図8Bは、本発明にかかる脱硫剤を構成するマグネシウム−アルミニウム合金の発火実験結果を図示したグラフである。
【0063】
図8A及び図8Bにおいて、X軸は酸化カルシウムの加熱時間(min)であり、Y軸は温度(℃)である。図8Bの実験は、42重量比のアルミニウムを有するマグネシウム−アルミニウム合金溶湯に3.5重量比の酸化カルシウムを添加して行った。
【0064】
先ず、図8Aを参照すると、青色の温度(temperature)グラフと緑色の温度差(temperature difference)グラフが接する温度で発火が起きる。そして、純粋なマグネシウムの発火温度は約580℃であることを確認できる。
【0065】
一方、図8Bを参照すると、アルミニウムが42重量比、酸化カルシウムが3.5重量比添加されたマグネシウム−アルミニウム合金は、発火温度が約1170℃まで上昇したことを確認できる。また、前記発火温度は、1100℃乃至1500℃の間で形成される。よって、本発明にかかる脱硫剤を構成するマグネシウム−アルミニウム合金の発火温度は、純粋なマグネシウムに比べて増加するようになることを確認できる。
【0066】
従って、上述したように、本発明にかかる脱硫剤は、マグネシウム−アルミニウム合金により耐発火性を向上させることができ、粉砕性を向上させて生産性を向上させることができる。また、本発明にかかる脱硫剤は、マグネシウム−アルミニウム合金に酸化カルシウムを添加して、脱硫剤の耐酸化性及び耐発火性を向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶粒界を有する多数のマグネシウム−アルミニウム合金結晶粒;及び
前記マグネシウム−アルミニウム合金結晶粒の内部ではない外部として前記結晶粒界に存在する、マグネシウム及びアルミニウムのうち選択された少なくとも何れか一つとアルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち選択された少なくとも何れか一つ間の化合物を含むことを特徴とする脱硫剤。
【請求項2】
前記アルミニウムは、前記マグネシウム−アルミニウム合金結晶粒内に40乃至65重量比存在することを特徴とする請求項1に記載の脱硫剤。
【請求項3】
前記アルカリ土類金属のうちカルシウムが前記化合物を形成することを特徴とする請求項1に記載の脱硫剤。
【請求項4】
前記カルシウムは、前記マグネシウム−アルミニウム合金結晶粒内に0.5乃至50重量比存在することを特徴とする請求項3に記載の脱硫剤。
【請求項5】
前記結晶粒界に存在する酸化カルシウム(CaO)をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の脱硫剤。
【請求項6】
前記脱硫剤の発火温度は1100℃乃至1500℃であることを特徴とする請求項1に記載の脱硫剤。
【請求項7】
マグネシウム−アルミニウム合金をるつぼに入れて400℃乃至800℃の温度で溶解して、マグネシウム−アルミニウム合金溶湯を形成するマグネシウム−アルミニウム合金溶湯形成段階;
前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯に、添加剤としてアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を添加する添加剤添加段階;
前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯を1分乃至400分間撹拌する撹拌段階;
前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯を常温乃至400℃の鋳型に入れて鋳造してマグネシウム−アルミニウム合金鋳造物を形成する鋳造段階;及び
前記マグネシウム−アルミニウム合金鋳造物を冷却する冷却段階を含んで成ることを特徴とする脱硫剤の製造方法。
【請求項8】
前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯形成段階で、アルミニウムを40重量比乃至65重量比形成することを特徴とする請求項7に記載の脱硫剤の製造方法。
【請求項9】
前記添加剤添加段階で、前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯に酸化カルシウムを添加することを特徴とする請求項7に記載の脱硫剤の製造方法。
【請求項10】
前記添加剤添加段階で、前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯に、カルシウムの重量が0.5重量比乃至50重量比になるよう、前記酸化カルシウムを添加することを特徴とする請求項9に記載の脱硫剤の製造方法。
【請求項11】
前記冷却段階の後に、前記冷却されたマグネシウム−アルミニウム合金鋳造物を粉砕して粉末または顆粒状態に形成する粉砕段階をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の脱硫剤の製造方法。
【請求項1】
結晶粒界を有する多数のマグネシウム−アルミニウム合金結晶粒;及び
前記マグネシウム−アルミニウム合金結晶粒の内部ではない外部として前記結晶粒界に存在する、マグネシウム及びアルミニウムのうち選択された少なくとも何れか一つとアルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち選択された少なくとも何れか一つ間の化合物を含むことを特徴とする脱硫剤。
【請求項2】
前記アルミニウムは、前記マグネシウム−アルミニウム合金結晶粒内に40乃至65重量比存在することを特徴とする請求項1に記載の脱硫剤。
【請求項3】
前記アルカリ土類金属のうちカルシウムが前記化合物を形成することを特徴とする請求項1に記載の脱硫剤。
【請求項4】
前記カルシウムは、前記マグネシウム−アルミニウム合金結晶粒内に0.5乃至50重量比存在することを特徴とする請求項3に記載の脱硫剤。
【請求項5】
前記結晶粒界に存在する酸化カルシウム(CaO)をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の脱硫剤。
【請求項6】
前記脱硫剤の発火温度は1100℃乃至1500℃であることを特徴とする請求項1に記載の脱硫剤。
【請求項7】
マグネシウム−アルミニウム合金をるつぼに入れて400℃乃至800℃の温度で溶解して、マグネシウム−アルミニウム合金溶湯を形成するマグネシウム−アルミニウム合金溶湯形成段階;
前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯に、添加剤としてアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を添加する添加剤添加段階;
前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯を1分乃至400分間撹拌する撹拌段階;
前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯を常温乃至400℃の鋳型に入れて鋳造してマグネシウム−アルミニウム合金鋳造物を形成する鋳造段階;及び
前記マグネシウム−アルミニウム合金鋳造物を冷却する冷却段階を含んで成ることを特徴とする脱硫剤の製造方法。
【請求項8】
前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯形成段階で、アルミニウムを40重量比乃至65重量比形成することを特徴とする請求項7に記載の脱硫剤の製造方法。
【請求項9】
前記添加剤添加段階で、前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯に酸化カルシウムを添加することを特徴とする請求項7に記載の脱硫剤の製造方法。
【請求項10】
前記添加剤添加段階で、前記マグネシウム−アルミニウム合金溶湯に、カルシウムの重量が0.5重量比乃至50重量比になるよう、前記酸化カルシウムを添加することを特徴とする請求項9に記載の脱硫剤の製造方法。
【請求項11】
前記冷却段階の後に、前記冷却されたマグネシウム−アルミニウム合金鋳造物を粉砕して粉末または顆粒状態に形成する粉砕段階をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の脱硫剤の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【公開番号】特開2011−63873(P2011−63873A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228465(P2009−228465)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(509272609)韓国生産技術研究院 (10)
【氏名又は名称原語表記】Korea Institute of Industrial Technology
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(509272609)韓国生産技術研究院 (10)
【氏名又は名称原語表記】Korea Institute of Industrial Technology
【Fターム(参考)】
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