説明

膜の形成方法および液晶表示素子の製造方法

【課題】大面積の基板を用いた場合でも、蒸着距離を大きくすることなく、配向の均一性を確保可能な膜の形成方法を提供する。
【解決手段】被蒸着基板上に膜を形成する方法であって、蒸着源からの蒸着種が該被蒸着基板の膜を形成する面に向かう方向が、該被蒸着基板の法線方向に対して傾斜するように被蒸着基板を保持する工程と、該被蒸着基板の膜を形成する面に面内の位置によって異なるエネルギーを与える工程と、該蒸着源から蒸発させた蒸着種を該被蒸着基板上に付着させ膜を形成する工程とを有する膜の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜の形成方法および液晶表示素子の製造方法に関し、特に液晶配向膜に好適な無機物からなる蒸着薄膜を比較的大面積の基板上に形成する方法および液晶表示素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCモニタ、薄型テレビ、プロジェクター等に用いられる液晶表示素子は、近年その使用目的に応じた多様な進化を遂げている。液晶表示素子は、その用途によって、使用する液晶、配向膜、電極、基板等は多種多様であるが、基本的な構造は画素電極および対向電極、配向膜が形成された一対の基板間に、液晶組成物を導入した構成であり、これはどの液晶表示素子でも共通の構成である。その中で、配向膜は液晶分子配列を一定方向に規制する機能を有している。液晶分子の配向は、液晶素子が光スイッチング機能を有するために必須であり、またそれ故に配向膜の特性は液晶表示素子の表示特性に大きく影響する。
【0003】
配向膜にはポリイミドに代表される有機配向膜が広く用いられている。しかし高輝度プロジェクターのような高強度光下の環境で用いられる液晶表示素子では、配向膜の光劣化が問題となっている。この問題は、有機配向膜に代わり無機配向膜を採用することで解決される。
【0004】
無機配向膜は、一般的に斜方蒸着法と呼ばれる蒸着法を用いて形成する。これは配向膜の材料となる無機物質を蒸発源から蒸発させ、蒸発した無機物質を基板に斜め方向から付着させ、基板面に膜を形成する方法である。真空容器内で、抵抗加熱法や電子ビーム照射によりボートまたは坩堝内で材料物質を蒸発させ、斜めに保持した基板に蒸着させる。無機配向膜の材料物質としては酸化ケイ素(SiO:x=1から2)がよく用いられる。以下、無機配向膜の材質がSiOの場合について説明するが、他の無機材料物質にも適用できる。
【0005】
基板法線と基板中心−蒸発源を結ぶ線分が、ある一定の角度(一般に蒸着角と呼ぶ)を保った状態で蒸着を行うので、基板上に出来る膜は、微視的には、斜め方向に成長した、微細なSiOから成る柱状構造(カラム構造)を有する。SiOカラム構造を有する斜方蒸着膜の表面は、蒸着角、蒸着方向に対応した形状異方性を有しており、それにより液晶が一方向に配向すると考えられている。
【0006】
斜方蒸着法により形成した無機配向膜は、その蒸着角により液晶配向の様子が異なる。特にプレチルト角と呼ばれる、配向膜の法線方向に対する液晶分子の傾斜角を蒸着角により制御することができる。プレチルト角は表示品質に大きく影響するパラメータである。特に、コントラスト低下の原因となるディスクリネーションラインの発生を抑制するため、液晶素子はある程度のプレチルト角を有している必要がある。
【0007】
特許文献1は、プレチルト角を制御するために斜方蒸着を2層にわたって形成する方法において、1層目の斜方蒸着をイオンビームを照射しながら行う方法を提案する。
【特許文献1】米国特許第5268781号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
プレチルト角を制御するためには、通常の斜方蒸着法において蒸着角を変化させれば良いが、蒸着角が90°近くと大きいところでは、蒸着角の変化に対するプレチルト角の変化が大きくなる。このことは大面積基板上への斜方蒸着を行う際に問題となる。すなわち、大面積の基板に蒸着するときは、基板内の蒸着角分布が大きく、プレチルト角は基板内での蒸着角分布を敏感に反映するので、基板内でプレチルト角を均一にすることは非常に困難となる。
【0009】
基板から蒸発源までの距離に比べて基板の差し渡し寸法が無視できない位に大きいと、基板面内での1点から蒸発源を見たときの方角は、極角、方位角ともに基板面内の位置によって異なる。ここで、極角は基板の面法線からの角度、方位角は面内の角度であって基板の中心点で0°とする。以下、本明細書では、基板面内での1点から蒸発源を見たときの、極角をその位置での蒸着角といい、方位角を蒸着方位という。
【0010】
蒸着角は、図1の15から17に示すように、蒸発源に近い位置では大きく、遠くなるにつれて小さくなる。一方、方位角は、図9の91,92に示すように、基板の左右の端に行くほど正または負の方向に大きくなる。
【0011】
このような蒸着角及び蒸着方位の面内不均一は、プレチルト角の不均一をもたらし、液晶表示素子のコントラストのムラ、輝度ムラ、歩留り低下の原因となる。
蒸着方位の不均一は、図3に示すように、基板12の傾斜方向にそって細長いスリットを開けた防着部材21を通して、スリットと直角方向32に基板12を搬送させながら蒸着することにより原理的には解消させることができる。しかし、スリットに沿った蒸着角分布はこの方法では解決されない。蒸着角分布を小さくするには、基板と蒸発源との距離を大きく、例えば3m以上に設定する必要がある。このような蒸発源までの距離が大きい斜方蒸着を行うためには、大型の真空チャンバーを必要とし、真空度の安定維持のために必要な排気装置等が増え、装置コスト増加の要因となる。
【0012】
特許文献1で提案された斜め蒸着法では、基板に斜め方向からイオンビームを照射しながら第1層の斜方蒸着を行うことにより、基板面内の配向不均一が抑えられる。しかし、基板面積が大きくなると、基板全面にわたって均一な強度でイオンビームを照射することは困難である。また基板傾斜方向の蒸着角の分布を補償するような効果は得られず、蒸着角の差に起因する配向ムラを無くすのは困難である。
【0013】
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、大面積基板を用い、かつ蒸着距離が比較的小さい場合においても、蒸着基板面内全面に渡り、所望のプレチルト角を均一に発現する様な無機配向膜を、容易にかつ高歩留まりで形成することできる膜の形成方法を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、所定のプレチルト角に設定された、高品質な表示を可能にする液晶表示素子の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決する膜の形成方法は、基板の面に膜を形成する方法であって、蒸発源から蒸発した材料物質が基板に向かう方向に対して基板の面を傾斜させて保持し、該材料物質を該基板の面に蒸着させて該材料物質の膜を形成する工程と、該材料物質が該基板の面に蒸着する角度に応じて、異なるエネルギーを該基板に与える工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
上記の課題を解決する液晶表示素子の製造方法は、蒸発源から蒸発した無機物質が基板に向かう方向に対して基板の面を傾斜させて保持し、該無機物質を該基板の面に蒸着させて該無機物質の膜を形成する工程と、該無機物質が該基板の面に蒸着する角度に応じて、異なるエネルギーを該基板に与える工程と、該基板を2枚、該膜が形成された面を対向させて貼りあわせる工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、大面積基板を用い、かつ蒸着距離が比較的小さい場合においても、蒸着基板面内全面に渡り、所望のプレチルト角を均一に発現する様な無機配向膜を、容易にかつ高歩留まりで形成することできる。大面積基板には、例えば直径が20cm以上の基板が挙げられる。
【0018】
また、本発明の膜の形成方法を用いることにより、従来の斜方蒸着膜製造装置と比較して蒸着距離を小さくすることが可能となり、製造装置の小型化に寄与し、結果製造コストの低減に寄与する。
【0019】
また、本発明によれば、所定のプレチルト角に設定された、高品質な表示を可能にする液晶表示素子を提供することができる。
本発明は、斜方蒸着法等の成膜法により形成される無機配向膜を用いた液晶表示素子に利用可能であり、また該液晶表示素子を用いた表示装置、例えばプロジェクター等の投射型表示装置、液晶モニタ、液晶テレビ等に利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明者らは斜方蒸着膜の膜密度とプレチルト角には相関関係があることを確認し、更にイオンビームの照射強度や基板加熱により膜密度が変化し、この変化に追随してプレチルト角が変化することを見出した。これらの知見より、基板面内でのプレチルト角、液晶配向の均一性を確保するためには液晶配向膜の膜密度を均一にすることが必要であるとの認識に至った。つまり、膜密度が小さく、プレチルト角が大きくなる部分にエネルギーを付与して斜方蒸着膜の膜密度を局所的に変化させ、基板全体の膜密度を均一化することで、均一な液晶配向を与える斜方蒸着膜の形成が可能であることを見出した。
【0021】
即ち、本発明に係る膜の形成方法は、基板の面に膜を形成する方法であって、蒸発源から蒸発した材料物質が基板に向かう方向に対して基板の面を傾斜させて保持し、該材料物質を該基板の面に蒸着させて該材料物質の膜を形成する工程と、該材料物質が該基板の面に蒸着する角度に応じて、異なるエネルギーを該基板に与える工程と、を有することを特徴とする。
【0022】
前記異なるエネルギーを与える工程は、イオンビームを基板に局所的に照射し、該イオンビームの照射位置での該材料物質の蒸着角に応じて該イオンビームの照射強度を変化させながら、該イオンビームを基板面内でスキャンする工程を含むことが好ましい。
【0023】
前記イオンビームを基板面内でスキャンする工程は、該イオンビームの源と前記基板との間に開口を有する部材を設置し、該部材を移動させる工程であることが好ましい。
前記異なるエネルギーを与える工程は、半径方向に強度分布を持つイオンビームを、該材料物質の蒸着角に応じて、異なる半径位置で照射する工程を含むことが好ましい。
【0024】
前記イオンビームが、アルゴンイオン、酸素イオン、窒素イオンまたはそれらの混合イオンからなるイオンビームであることが好ましい。
前記異なるエネルギーを与える工程は、該材料物質の蒸着角に応じて、該基板の面内に温度分布を生じさせる工程を含むことが好ましい。
【0025】
前記異なるエネルギーを与える工程は、イオンビームを基板に局所的に照射し、該イオンビームの照射位置での該材料物質の蒸着角に応じて、該イオンビームの照射強度を変化させながら、該イオンビームを基板面内でスキャンする工程を含むことが好ましい。
【0026】
また、本発明に係る液晶表示素子の製造方法は、蒸発源から蒸発した無機物質が基板に向かう方向に対して基板の面を傾斜させて保持し、該無機物質を該基板の面に蒸着させて該無機物質の膜を形成する工程と、該無機物質が該基板の面に蒸着する角度に応じて、異なるエネルギーを該基板に与える工程と、該基板を2枚、該膜が形成された面を対向させて貼りあわせる工程と、を有することを特徴とする。
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、膜の形成方法に係る膜としては特に制限はないが、例えば液晶配向膜、光学薄膜等が挙げられるが、以下に液晶配向膜を用いて説明する。
【0028】
<液晶配向膜の形成方法について>
次に、図を用いて本発明の配向膜の製造方法について説明する。
図1に、一般的な斜方蒸着を行う場合の装置構成の一例を示す。蒸発源11から蒸発した材料物質は、ある蒸着角に設定した基板12へと到達し、膜を形成する。その際の基板面内の各点での極角および方位角方向の蒸着角は異なる。蒸発源11から出射した材料物質は基板中心では蒸着角A15、基板上部では蒸着角B16、基板下部では蒸着角C17の角度を有して入射する。また、基板面内方向でも図9の方位角A91、方位角B92に示すように、基板中心(基板中心では0°)と異なる角度で入射する。
【0029】
方位角方向の蒸着角分布を防ぐには、図2及び図3に示すような防着部材21を用い、基板を移動させながら蒸着を行えばよい。即ち、防着部材で方位角方向を制限し、図3の蒸着部位31に示す、限定された範囲の方位角方向成分を有した蒸着種のみが基板に到達するような構成にし、基板搬送方向32の方向に基板を移動させながら蒸着する。前記の方法により方位角方向が均一な斜方蒸着膜を作製できる。
【0030】
極角方向の蒸着角分布を解決するためには、斜方蒸着中に、基板12の一部にエネルギーを付与することで斜方蒸着膜形成に変化を与え、基板の下部と上部で、同様のプレチルト角を与える様な斜方蒸着膜を形成すればよい。
【0031】
ここで、液晶のプレチルト角について図8を用いて説明する。液晶配向膜83が形成されたガラス基板84を対向させて張り合わせ、その間に液晶分子82から成る液晶を導入した液晶表示素子において、基板法線に対する液晶分子82の傾斜の平均値をプレチルト角と呼ぶ。プレチルト角はクリスタルローテーション法、磁場スレッショルド法、コノスコープ観察等の測定法・観察法により測定が可能である。
【0032】
本発明は、第1に、斜方蒸着膜の膜密度とプレチルト角には相関関係があること、第2に、イオンビームの照射強度や基板加熱により膜密度が変化し、この変化に追随してプレチルト角が変化するという知見にもとづいている。そこから、基板面内でのプレチルト角と液晶配向の均一性を確保するためには、プレチルト角が大きくなる部分に対してエネルギーを付与して、まばらなカラム構造の間隙を埋めるように変化させて膜密度を大きくし、基板全体の膜密度を均一化することで、均一な液晶配向を与える膜になることを見出した。
【0033】
膜密度は、単位体積中の膜物質の質量である。均質な膜材料からなる斜方蒸着膜においては、柱状構造体とその間隙の体積割合を示す指標でもある。本明細書では、膜密度を柱状構造体の体積充填率と定義して単位%で表す。間隙が全くない斜方蒸着膜は膜密度100%であり、柱状構造体の体積と間隙の体積の割合が同じであれば膜密度は50%である。膜密度は膜の屈折率測定や分光エリプソメトリー等の測定により決定することができる。
【0034】
基板12の一部に与える局所的なエネルギー変化は、斜方蒸着膜の形成に影響を及ぼし、結果として斜方蒸着膜の密度を基板面内で均一にするような変化である。基板面内のプレチルト角分布が配向の不均一を生じない範囲に抑えられるようにしなければならない。
【0035】
具体的なエネルギーの付与方法としては、イオンビーム照射、基板加熱・冷却、ラジカル・プラズマ照射、電子線照射、紫外光・可視光・赤外光照射が挙げられる。特に、イオンビーム照射と基板加熱については、基板への局所的なエネルギー付与が比較的容易で、かつ斜方蒸着膜の構造、膜密度への効果が大きく、斜方蒸着膜の液晶配向能を維持可能なため、好ましい方法である。以下これら2つの方法について詳述する。
【0036】
(A):イオンビーム照射
イオンビームを発生するイオンソース23は、図2、図4に示す位置に配置される。即ち、イオンソース23は蒸発源11と基板12の中心を結ぶ線分と、基板法線14を含む平面内に配置される。図4は、図2を、蒸発源11と基板12の中心を結ぶ線分を軸にして90度回転した図であり、説明のため蒸発源11と防着部材A21を省略した図である。
【0037】
イオンビームを基板の一部に照射することで、成膜中の基板に飛来した蒸着粒子にエネルギーを与えて活性化する。その結果、膜上での蒸着粒子の拡散を促進し、斜方蒸着膜の成長に変化を与え、局所的に膜密度を高くすることができる。つまり通常の斜方蒸着において膜密度が低くなる部分に選択的にイオンビームを照射することにより、基板12全面に渡り膜密度を均一にし、その結果、基板12を用いて作製した液晶セルのプレチルト角分布を基板上の任意の点において許容範囲内に収めることができる。
【0038】
実際にイオンビーム照射によってプレチルト角の制御を行った例を図12及び図13に示す。図12は、イオンビーム未照射時と、エンドホール型イオンソースを用いてアノード電圧200V・アノード電流2Aおよび同200V・1Aの条件でアルゴンイオンを照射した時の、蒸着角とプレチルト角の関係を示すグラフであり、この図よりイオンビーム照射によるプレチルト角低下が確認できる。また図13は、蒸着角65°と70°における、イオンソースのアノード電圧200Vにおける、アノード電流とプレチルト角との関係を示すグラフである。蒸着角65°、70°の場合共にアノード電流の増加に伴いプレチルト角が減少することが確認できた。
【0039】
また図16に蒸着角65°、70°における、イオンビーム照射時と未照射時の配向膜密度とプレチルト角の関係を示す。このグラフより膜密度の増加に伴い、プレチルト角が減少傾向にあることが分かる。
【0040】
上記の検討結果より、イオンソースに設定するアノード電流により、プレチルト角を制御可能であることが分かった。また同様の検討を、アノード電圧についても行い、同様の傾向を確認している。つまり、照射ビームのパワーの増加により、膜密度が増加し、プレチルト角はより低下することが明らかとなった。
【0041】
上記のプレチルト角低下効果が発現するのであれば、イオンビームの照射方法やイオンの種類、イオンソースの種類に特に制限はない。照射するイオンビームはアルゴンイオン、酸素イオン、窒素イオン等、またはそれらの混合イオンからなるイオンビームが用いられる。イオンソースは、エンドホール型、ホローカソード型、グリッド型等のイオンソースが用いられる。イオンビームの照射方法に関しては、以下の(a)、(b)に示す照射方法が比較的簡便に適用でき、好ましい方法である。
【0042】
(a):イオンビーム照射位置に対応してイオンビーム照射強度を変化させる方法
図2に示す装置構成において、イオンビームの照射位置を制御可能な防着部材B22を用いて照射位置を選択し、選択した照射位置に応じてイオンビームのパワーを変化させることで、局所的な斜方蒸着膜の成長制御が可能となる。
【0043】
開口部(スリット)を有する防着部材B22の移動により、図5に示す様にイオンビーム照射位置を移動させることができる。開口部形状は、蒸着部位と同程度の幅でイオンビームを照射可能であればよい。イオンビーム照射位置に対応してイオンビーム照射強度を変化させることで、より精密な膜密度制御が可能となる。例えば図5に示す様に、イオンビーム照射部位A51では照射強度を大きく、イオンビーム照射部位B52では中程度の照射強度、イオンビーム照射部位C53では照射強度を小さく設定する。このことで、基板12の上下方向に渡り、膜密度の均一な斜方蒸着膜を作製することができる。基板を基板搬送方向32の方向に移動させながら、上述の照射部位移動を繰り返すことにより、基板全面に渡り膜密度が均一な斜方蒸着膜を作製することができる。
【0044】
(b):イオンビーム照射方向を基板の上端部、またはその上方に設定することにより、イオンビーム照射強度の分布を与える方法
通常、イオンビームは、ビーム中心で最も強度が高く、半径方向に向かって弱くなる強度分布を持つ。これを利用して、基板面に異なるエネルギーを与えることができる。
【0045】
図4に示すように、目標の蒸着部位が領域31であるとすると、この領域31のいちばん上端の位置41に中心を合わせてイオンビームを照射する。半径方向に強度分布を持つイオンビームは、異なる半径位置で領域31の各点に照射され、異なるエネルギーをその位置に与える。このエネルギーが基板の蒸着角度に応じた値になるようにビームの強度分布、または照射角度を調節する。
【0046】
図6は、図4を横から見たものである。イオンビームの中心を基板上端部の照射位置61に設定するので、照射位置61から基板の下方に行くに従い、イオンビームは中心から半径方向に離れた位置で基板に照射され、照射強度が低下する。この結果、図7に示すような照射強度分布を実現することができる。基板上部では照射強度が強く、基板中央では弱く、基板下部にはイオンビームが照射されない、またはその影響が非常に弱い。
【0047】
この状態を維持したまま、基板を水平方向に移動させながら斜方蒸着を行うことにより、基板全面に渡り膜密度が均一な斜方蒸着膜が形成可能となる。基板面上の強度分布に合わせて、イオンビームの照射角度や基板からの距離を設定する。
【0048】
(B):基板に温度分布を付与する方法
基板に温度分布を付与することでも、斜方蒸着膜の成長を制御し、膜密度を制御することができる。具体的には、基板を加熱する事で、加熱部分に飛来した蒸着種に熱エネルギーを与え、基板上での蒸着種の表面拡散を活性化し、結果として膜密度を上げることができる。また、基板を冷却することで、逆に基板上での表面拡散を抑制し、結果として膜密度を下げることができる。
【0049】
基板上への温度分布の付与方法は、斜方蒸着膜の成長に影響を与え、膜密度分布が基板全面に渡り許容できる範囲で均一になり、また前記の基板を用いて作製した液晶セルのプレチルト角分布が許容できる範囲で均一であればよい。例えば、図10に示すように、基板搬送機構102にヒータやペルチェ素子等の温度制御素子が複数設置されたものを用いる方法や、局所的な赤外線照射、ランプ加熱を行う方法等を用いることができる。
【0050】
例えば温度制御素子が複数設置された基板搬送機構を用いる場合には、図11に示すように、基板上部では基板温度が高く、また基板下部では基板温度を低く設定する。このことで、斜方蒸着時の膜成長の制御による基板上下部の膜密度均一化が達成でき、結果プレチルト角も均一にすることができる。
【0051】
また、前記(A)、(B)の方法を組み合わせて斜方蒸着膜の膜密度の均一化とプレチルト角の均一化を行っても良い。この場合、それぞれの設定電圧・電流や設定温度等の設定パラメータを、単独で用いる場合と比較して小さくできるという利点がある。また、(A)、(B)の方法の組み合わせによる、より精密な膜成長制御、膜密度制御が可能となる。
【0052】
蒸発源11は、基板に斜方蒸着膜を形成可能なものであれば特に制限はないが、斜方蒸着膜の構造異方性を発現しやすい方法として、電子ビーム蒸着法、抵抗加熱法等が挙げられ、これらの方法を用いることが好ましい。
【0053】
斜方蒸着膜の材料物質は、無機酸化物、例えば二酸化ケイ素(SiO)、一酸化珪素(SiO)等の酸化ケイ素(SiO:x=1から2程度)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化コバルト(Co)、酸化鉄(Fe、Fe)等やフッ化物、例えばフッ化マグネシウム(MgF2)等、が好ましい。特に二酸化珪素(SiO)、一酸化珪素(SiO)等の酸化ケイ素(SiO)で有ることが望ましい。これらの無機材料は斜方蒸着法によって容易にカラム構造を形成し、また前記エネルギー付与方法による膜密度の制御が比較的容易である。
【0054】
〈液晶配向膜の製造装置について〉
本発明の液晶配向膜の製造装置は、真空チャンバーと、真空チャンバー内を排気する真空ポンプ等の排気装置と、真空チャンバー内で基板を移動させるための基板可搬機構と、蒸発源と、蒸着時に方位各方向を制限するための防着部材と、基板に飛来する蒸着粒子にエネルギー変化を与えるための装置から構成される。
【0055】
真空チャンバーと排気装置は、プロセス中の成膜圧力を適切な圧力に制御可能であれば特に制限はない。
基板可搬機構は、蒸着角の設定と、蒸着時のチャンバー内での基板の保持と移動を行なうための機構であり、その構成に特に制限はない。
【0056】
蒸発源は蒸着原料を蒸発させ基板へ蒸着種を飛来させるために使用し、電子ビーム蒸着(EB)、抵抗加熱蒸着等の蒸発源を用いることができる。蒸発源に導入する蒸着原料は、蒸着した斜方蒸着膜が適切な液晶配向を発現するならば特に制限はないが、酸化ケイ素(SiO)、特に二酸化ケイ素(SiO)が液晶素子に求められる性能の観点から、好ましい材料である。
【0057】
防着部材は斜方蒸着時の方位角方向の角度をある一定の角度分布内に収めるために用いる。防着部材は前記目的を達成するため、形状、設置場所等を適切に設定する必要がある。
【0058】
基板に飛来する蒸着種にエネルギー変化を与えるための装置は、基板上に形成する斜方蒸着膜の任意の場所において、その膜密度が均一に保たれ、その結果前記基板を用いて作製した複数の液晶素子のプレチルト角均一性が保たれる必要がある。この条件を満たす装置であれば、基本的にはどのような装置を用いてもよいが、前述の液晶配向膜の作製方法で述べたような、イオンビームを発生するイオンソースや、基板への部分的な温度変化をもたらす加熱・冷却素子を用いることが好ましい。
【0059】
イオンソースは、それが発生するイオンビームにより、基板内での任意の場所において膜密度の均一化を図れるようなイオンソースであれば、どのようなものを用いてもよい。例えばイオンソースの種類としてはエンドホール型イオンソースや、グリッド型イオンソースが挙げられ、イオンソースから発生されるイオンビームの種類としては、アルゴンイオン、酸素イオン、窒素イオン等が挙げられる。
【0060】
基板へ部分的な温度変化をもたらす加熱・冷却素子は、基板内での任意の場所において膜密度の均一化を図れるような加熱・冷却素子であれば、どのようなものを用いてもよい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を用いてさらに詳しく本実施の形態を説明するが、本発明は実施例に記述されたものに限定されるわけではない。
(実施例1)
本実施例は、図2に記載した構成を有する製造装置を用いて無機配向膜を作製し、それを用いて液晶表示素子を作製した例である。
【0062】
本実施例では、イオンビームアシスト蒸着法と斜方蒸着法を組み合わせることにより無機配向膜を形成する。蒸発源11には、蒸着原料として二酸化珪素(SiO)の顆粒(粒径1から2mm)を導入する。また、イオンソース23としてエンドホール型のイオンガンを用いる。
【0063】
次に、基板搬送機構13に、基板として直径200mmのSi基板を設置する。Si基板には反射電極と液晶素子駆動用のトランジスタが形成されている。次に蒸着角度を65°に設定する。ここで言う蒸着角とは、Si基板の基板法線と、Si基板中心と蒸発源を結ぶ線分のなす角である。
【0064】
次に、蒸発源11とSi基板との間に、方位角分布を制限するための固定スリットを有する防着部材A21を設置する。また、イオンソース23とSi基板との間に、イオンソース23から出射されるイオンビームの流束を制限し、かつ照射位置を制御するためのスリットを有する防着部材B22を設置する。
【0065】
上記の様に各装置、基板、部材を配置した後、真空排気系を順次作動させて成膜装置内を1×10−5Pa以下の圧力になるまで排気する。
次に、Si基板を設置した基板搬送機構を初期位置に移動させる。ここで言う初期位置とは、蒸発源11から発生する蒸着種もイオンソース23から発生するイオンビーム流束もそれぞれの防着部材21,22に遮られ、Si基板に到達しないような位置である。
【0066】
次に、蒸発源11を作動し、蒸着粒子流を発生させる。この時、膜厚モニタ上での成膜速度が0.5nm/sとなるよう、自動でフィードバック制御される。膜厚モニタは蒸着角0°、蒸着距離1mの位置にあり、防着部材等で飛来する蒸着種が遮蔽されない位置に設置されている。また、イオンソース23を作動し、イオンソース23のアノード電圧が200V、アノード電流1.5A、ニュートラライザ電流200mAとなるように、Arガスの流量を設定する。
【0067】
上記状態を安定に保ったまま、基板搬送機構を作動させて基板の移動を開始し、Si基板上への成膜を開始する。基板搬送機構は初期位置から、図3に示すような蒸着位置を経ることでSi基板上への成膜を行い、初期位置とは反対の位置にある終了位置に到達することでSi基板全面への成膜を終了する。終了位置は、初期位置と同様、蒸発源から飛来する蒸着種およびイオンビームが、スリットに遮られてSi基板に到達しない位置である。
【0068】
また、基板搬送機構13を作動して成膜すると同時に、スリットを有する防着部材B22を移動させることで図3に示す蒸着部位31を上下にスキャンするようにイオンビームを部分的に照射する。その際、図5に示すように蒸発源から遠い位置(図5におけるイオンビーム照射位置A51)ではパワーを200V、1.5Aとなるようイオンソースを制御し、基板中心にビームが近づくにつれ徐々にアノード電流量を下げるような制御を自動的に行う。このことにより、基板内でイオンビーム照射パワーの分布をつける。
【0069】
上記の様に、イオンビームパワーを照射位置により変化させるイオンビームアシスト蒸着を行い、Si基板上の各点で、蒸着距離の長さ、蒸着角の大きさに合わせてイオンビームのパワーを制御することにより、配向膜の配向均一性を向上させる。
【0070】
上記の手順により、Si基板上に無機配向膜を形成する。また、同様の手順で、直径200mm(8インチ)のITO薄膜付ガラス基板(以下ITOガラス基板)上にも無機配向膜を形成する。
【0071】
光学顕微鏡による観察において、ムラ等は確認されず、各基板上で液晶配向膜が均一に形成されていることを確認できる。
ここで、200mm(8インチ)基板上でのプレチルト角の均一性を確認するため、200mm(8インチ)のITOガラス基板2枚上に同様の方法で蒸着薄膜を形成した後、プレチルト測定のための液晶セルを作製する。作製するセルおよび液晶のプレチルト角を図8に示す。測定用基板の作製は、2枚のITOガラス基板から、図14に示す基板の各点から測定用基板を切り出し、同じ位置から切り出した基板を蒸着方向が反平行になるように貼り合わせる。その基板間にVA(Vertical Alignment)モード用の液晶混合物であるMLC−6608(メルク社製)を注入する。図14に示す基板の各点におけるプレチルト角を測定すると、以下の表1に示す結果となり、各位置でのプレチルト角の均一性が確認できる。
【0072】
【表1】

【0073】
次に、Si基板とITOガラス基板を切り出し、Si基板上に、粒径3μmのシリカスペーサ−入りシール剤を塗布し、無機配向膜が反平行(アンチパラレル)の構成となるように貼り合わせた。その後、前記シール剤を熱硬化して空セル(液晶を注入していない状態のセル)を作製する。空セルのセルギャップは、空セル内の各点でセル厚が約3μmであることが確認できる。
【0074】
次に、MLC−6608を上記空セルに注入した後に封止処理を行い、ネマティック−等方相相転移温度(91℃)以上に加熱して配向処理を行う。以上の工程を行うことで、200mm(8インチ)Si基板および200mm(8インチ)ITOガラス基板から複数個の液晶表示素子を作製する。
【0075】
各液晶表示素子の電圧−反射率特性(V−R特性)は、各素子ともに同様な特性が得られ、各素子が同じプレチルト角を有していることが確認できる。
上記液晶素子素子を3個用いて反射型投影装置を作製する。この装置を用いて生成した映像をスクリーンに投射すると、表示ムラのない良好な表示が得られる。
【0076】
(比較例1)
実施例1において、イオンビームを用いずに斜方蒸着を行い、無機配向膜および液晶セル作製を行った例を示す。
【0077】
実施例1の場合と同様に、Si基板上の各部位のプレチルト角を測定すると、以下の表2のようになる。
【0078】
【表2】

【0079】
イオンビーム照射を行わないと基板面内の斜方蒸着密度にムラが発生し、その結果基板各点でのプレチルト角が異なる。
また、実施例1と同様の方法で液晶表示素子を作製すると、測定点A付近の基板を用いた素子と測定点E付近の基板を用いた素子では、V−R特性が異なっており、プレチルト角の違いが表示特性に影響していることが確認できる。
【0080】
(実施例2)
実施例1において、スリットを有する防着部材B22の移動によるイオンビーム照射位置スキャンと照射量の制御を行う代わりに、イオンビーム照射範囲中に照射強度分布がある様なイオンソースを用いて、200mm(8インチ)基板上に無機配向膜を作製する。この時、図6に示すように、Si基板内において蒸着距離が最も大きく、即ち蒸着角が最も小さくなる点(図6におけるイオンビーム照射位置中心61)において、イオンビームのイオン電流密度が最も高くなるように、イオンガンの照射角度を設定する。イオン電流密度の測定はイオン電流モニタを用いる。イオンソースの設定は、アノード電圧200V、アノード電流1.5Aである。
【0081】
次に実施例1と同様の方法で2枚の基板を貼りあわせて液晶セルを作製し、プレチルト角測定を行った。基板上の各部におけるプレチルト角測定結果は以下の表3に示すようになり、本実施例の方法でもプレチルト角の均一性が確保されていることが分かる。
【0082】
【表3】

【0083】
(実施例3)
次に基板搬送機構に設置した基板ヒータにより基板を局所的に加熱しながら斜方蒸着を行う例を示す。
【0084】
図15に示す基板上の各部位の温度がそれぞれ部位A152:200℃、部位B153:125℃、部位C154:50℃となるようにヒータ温度を設定する。そして、イオンビームを使用しない以外は実施例1と同様の方法により、Si基板およびITOガラス基板上に無機配向膜の作製を行った。
【0085】
また、実施例1、2と同様の方法を用いてプレチルト角測定を行い、基板上の各部のプレチルト角は以下の表4に示すようになり、実施例1、2の場合と同様、実施例3の方法でもプレチルト角の均一性が確認できる。
【0086】
【表4】

【0087】
(実施例4)
本実施例は、実施例1で用いた蒸着粒子流を制限するスリット、イオンビーム流速を制限するスリットを有する斜方蒸着装置に、実施例3で用いた複数のヒータによる局所基板加熱装置を備えた蒸着装置を用いて無機配向膜を作製する例を示す。
【0088】
実施例3の場合と同様に、図15に示す基板各部位の温度を設定する。基板温度は部位A152で150℃、部位B153で100℃、部位C154で50℃となるように設定する。次に、実施例1の場合と同様な方法でイオンビーム照射強度変調とスキャンを同時に行いながら斜方蒸着を行う。この時のイオンビーム強度の設定値は、最も照射強度が大きい場合(図5における照射部位A51)で、アノード電圧150V、アノード電流2Aである。もっとも照射強度が小さい場合(図5における照射部位C53)で、アノード電圧150V、アノード電流1Aである。
【0089】
上記の条件で無機配向膜を作製した場合の、基板上各部のプレチルト角分布は以下の表5に示すようになり、基板加熱とイオンビーム照射を同時に行うことで、それぞれの設定値が小さい場合でも実施例1から3の場合と同様の効果を得られることが分かる。
【0090】
【表5】

【0091】
(実施例5)
本実施例は、実施例4においてイオンビームスキャンを行う代わりに、実施例2と同様の方法でイオンビームを基板に照射する例を示す。イオン照射時の設定は、アノード電圧150V、アノード電流1Aとする。この条件で無機配向膜を作製すると、実施例4の場合と同様の結果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、斜方蒸着法等の成膜法により形成される無機配向膜を用いた液晶表示素子に利用可能であり、また該液晶表示素子を用いた表示装置、例えばプロジェクター等の投射型表示装置、液晶モニタ、液晶テレビ等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】斜方蒸着を行うための装置の構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の膜の形成方法の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の膜の形成方法における蒸着方法の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の膜の形成方法におけるイオンビーム照射の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の膜の形成方法におけるイオンビーム照射方法の他の例を示す概略図である。
【図6】本発明の膜の形成方法の他の例を示す概略図である。
【図7】本発明の膜の形成方法におけるイオンビーム照射方法の他の例を示す概略図である。
【図8】液晶のプレチルト角の説明図である。
【図9】本発明の膜の形成方法における蒸着方法の他の例を示す概略図である。
【図10】本発明における基板上への温度分布の付与方法の一例を示す概略図である。
【図11】本発明における基板上への温度分布の付与方法の他の例を示す概略図である。
【図12】本発明におけるイオンビーム照射によってプレチルト角の制御を行った一例を示す図である。
【図13】本発明におけるイオンビーム照射によってプレチルト角の制御を行った他の例を示す図である。
【図14】本発明の実施例1における基板の各点におけるプレチルト角の測定位置を示す概略図である。
【図15】本発明の実施例3における基板の各点におけるプレチルト角の測定位置を示す概略図である。
【図16】本発明におけるイオンビーム照射によって配向膜密度およびプレチルト角が変化することを示す図である。
【符号の説明】
【0094】
11 蒸着源
12 被蒸着基板
13 基板搬送機構
14 基板法線
15 蒸着角A
16 蒸着角B
17 蒸着角C
18 蒸着距離
21 防着部材A
22 防着部材B
23 イオンソース
24 イオンビーム照射方向
31 蒸着部位
32 基板搬送方向
41 イオンビーム照射部位
51 イオンビーム照射部位A
52 イオンビーム照射部位B
53 イオンビーム照射部位C
61 イオンビームの照射位置中心
71 イオンビームパワー分布
81 プレチルト角θp
82 液晶分子
83 液晶配向膜
84 ガラス基板
91 方位角A
92 方位角B
101 複数の温度制御素子
102 基板搬送機構
111 基板温度が低い部分
112 基板温度が高い部分
141 斜方蒸着方向
142 被蒸着基板
143 測定点A
144 測定点B
145 測定点C
146 測定点D
147 測定点E
151 斜方蒸着方向
152 部位A
153 部位B
154 部位C

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の面に膜を形成する方法であって、蒸発源から蒸発した材料物質が基板に向かう方向に対して基板の面を傾斜させて保持し、該材料物質を該基板の面に蒸着させて該材料物質の膜を形成する工程と、該材料物質が該基板の面に蒸着する角度に応じて、異なるエネルギーを該基板に与える工程と、を有することを特徴とする膜の形成方法。
【請求項2】
前記異なるエネルギーを与える工程は、イオンビームを基板に局所的に照射し、該イオンビームの照射位置での該材料物質の蒸着角に応じて該イオンビームの照射強度を変化させながら、該イオンビームを基板面内でスキャンする工程を含む請求項1に記載の膜の形成方法。
【請求項3】
前記イオンビームを基板面内でスキャンする工程は、該イオンビームの源と前記基板との間に開口を有する部材を設置し、該部材を移動させる工程である請求項2に記載の膜の形成方法。
【請求項4】
前記異なるエネルギーを与える工程は、半径方向に強度分布を持つイオンビームを、該材料物質の蒸着角に応じて、異なる半径位置で照射する工程を含む請求項1に記載の膜の形成方法。
【請求項5】
前記イオンビームが、アルゴンイオン、酸素イオン、窒素イオンまたはそれらの混合イオンからなるイオンビームである請求項1に記載の膜の形成方法。
【請求項6】
前記異なるエネルギーを与える工程は、該材料物質の蒸着角に応じて、該基板の面内に温度分布を生じさせる工程を含む請求項1に記載の膜の形成方法。
【請求項7】
前記異なるエネルギーを与える工程は、イオンビームを基板に局所的に照射し、該イオンビームの照射位置での該材料物質の蒸着角に応じて、該イオンビームの照射強度を変化させながら、該イオンビームを基板面内でスキャンする工程を含む請求項6に記載の膜の形成方法。
【請求項8】
液晶表示素子の製造方法であって、蒸発源から蒸発した無機物質が基板に向かう方向に対して基板の面を傾斜させて保持し、該無機物質を該基板の面に蒸着させて該無機物質の膜を形成する工程と、該無機物質が該基板の面に蒸着する角度に応じて、異なるエネルギーを該基板に与える工程と、該基板を2枚、該膜が形成された面を対向させて貼りあわせる工程と、を有することを特徴とする液晶表示素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−248381(P2008−248381A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42178(P2008−42178)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】