説明

膜パターン、膜パターンの製造方法並びにそれを用いた電子デバイス、電子放出素子、電子源及び画像表示装置の製造方法

【課題】得られる膜パターンの密着性のバラツキの発生を抑制し、得られる膜パターンの密着性を向上させる。
【解決手段】基板上に形成される膜パターンを、抵抗を有する金属もしくは金属酸化物と抵抗を阻害する金属酸化物で構成し、抵抗を有する金属もしくは金属酸化物の膜と抵抗を阻害する金属酸化物の膜を各々別々の膜で存在させ、膜間の境界面に、各々の膜に対して濃度勾配をもたせた膜パターンとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばパターニングされた導体膜として形成される電極、配線、電子放出素子構成部材などや、薄膜トランジスタにおけるパターニングされた半導体膜などの膜パターンに関する。また、この膜パターンの製造方法、それを用いた電子デバイス、電子放出素子、電子源基板及び画像形成装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に、感光性樹脂を用いて樹脂パターンを形成し、該樹脂パターンに金属成分を含む溶液を吸収させた後、当該樹脂パターンを焼成することで、基板上に導電性薄膜のパターンが得られることが知られている。そして、これを利用して、電子放出素子の製造、電子源の製造、さらには画像表示装置の製造を行うことが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−36781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の方法で膜パターンを形成した場合、パターンと基板の密着性にバラツキを生じることがある。例えば高精細な画像表示装置の配線や電極などの形成に用いた場合、パターンの精度やパターンが次工程に耐えるには十分満足できるものではない。
【0005】
また、上記従来の方法によって膜パターンを形成した場合、次工程の熱工程によって膜パターンの凝集が起こることがある。そのためにパターンの抵抗のバラツキを生じやすく、例えば高精細な画像表示装置の配線や電極などの形成に用いるにはパターン精度の上で十分満足できるものではない。
【0006】
本発明は、第1に、得られる膜パターンの密着性のバラツキの発生を抑制し、得られる膜パターンの密着性を向上させることを目的とする。
【0007】
本発明は、第2に、得られる膜パターンの抵抗のバラツキの発生を抑制し、高精度の膜パターンが得られるようにすることを目的とする。
【0008】
また、膜パターンの形成材料に金属ルテニウムおよび二酸化ルテニウムを用いた時は、空気中の焼成で四酸化ルテニウムとなり、昇華していくことが知られている。そして、本発明は、第3に、この金属ルテニウムおよび二酸化ルテニウムの昇華を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一は、基板上に形成される膜パターンであって、抵抗を有する金属又は金属酸化物と抵抗を阻害する金属酸化物で構成されている。そして、抵抗を有する金属又は金属酸化物の膜と抵抗を阻害する金属酸化物の膜が各々別々の膜で存在し、その境界面が各々の膜に対して濃度勾配をもっていること特徴とする膜パターンである。
【0010】
本発明の第二は、基板上に成膜成分を含む溶液を吸収可能な樹脂パターンを形成する樹脂パターン形成工程と、該樹脂パターンに前記溶液を吸収させる吸収工程と、該吸収工程を経た樹脂パターンを焼成して前記成膜成分を含む膜パターンを形成する焼成工程とを有し、前記膜パターンを金属酸化物膜で被膜する、又は下地膜で構成することを特徴とする膜パターンの製造方法である。
【0011】
本発明の第三は、基板上に成膜成分を含む溶液を吸収可能な樹脂パターンを形成する樹脂パターン形成工程と、該樹脂パターンに前記溶液を吸収させる吸収工程と、該吸収工程を経た樹脂パターンを焼成して、前記成膜成分を含む膜パターンを形成する焼成工程とを有し、する膜パターンの形成方法であって、
焼成後に、酸化ルテニウム膜になる膜パターン形成法であって、
酸化ルテニウム膜を金属酸化物膜で被膜することを特徴とする導電膜パターンの製造方法
である。
【0012】
更に本発明は、上記膜パターンの製造方法を用いた電子デバイス、電子放出素子、電子源及び画像表示装置の製造方法を提供するものでもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第一は、得られる膜パターンの密着性の悪さが、基板と膜の間の隙間によって生じていることを見出したことによってなされたものである。
【0014】
本発明の第二は、得られる膜パターンの抵抗値のバラツキが、焼成を行なうことによってパターン膜の凝集が起こることによって生じていることを見出したことによってなされたものである。この凝集は、単一材料で起こりやすく、2成分組成にすることで凝集を抑制することができる。
【0015】
この2成分組成において、2成分の混合膜を形成すると、抵抗材料間に抵抗阻害材料が存在するため抵抗値の制御が難しくなり、制御性が悪化し(バラツキが大きくなる)、阻害による抵抗値の絶対値も大きくなり、導電性パターンとしての意味をなさなくなる。
【0016】
本発明の方法によると、2成分の混合膜と同一成分であっても、抵抗材料間に抵抗阻害材料が存在しないため、抵抗値の制御が容易となり、制御性が向上し、抵抗値の制御性もよくなり、所定の導電性パターンを得ることができる。
【0017】
本発明の第三は、二酸化ルテニウムで得られる膜パターンの抵抗値のバラツキが、焼成を行なうことによって二酸化ルテニウムが減少することによって生じていることを見出したことによってなされたものである。
【0018】
本発明によれば、膜パターンが各々別々の膜で存在し、その境界面が各々の膜に対して濃度勾配をもっていることにより、該膜パターンの密着性のバラツキの発生を抑制し、得られる膜パターンの密着性が向上する。これにより、膜パターンの制御性が向上し、抵抗値の制御性もよくなり、所定の導電性パターンを得ることができる。
【0019】
また、該膜パターンの凝集を抑制することで、膜パターンの抵抗値のバラツキを抑制でき、得られる膜パターンの制御性が向上し、抵抗値の制御性もよくなり、所定の導電性パターンを得ることができる。
【0020】
更に、二酸化ルテニウムを用いたときには、次工程の空気中の焼成で昇華することを抑制することで、膜パターンの制御性が向上し、抵抗値の制御性もよくなり、所定の導電性パターンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明においては、金属酸化物膜の被膜は、成膜成分(膜パターンの構成成分。通常導電性膜又は半導電性膜の構成成分)を樹脂膜又は樹脂パターン中に含ませる工程の後、焼成することで形成することができる。
【0022】
また、導電性膜又は半導電性膜の構成成分を樹脂膜中に含ませる工程の後、金属酸化物膜を被膜し、その後焼成工程を行なうことも可能である。いずれでも金属酸化物膜の被膜により、微細な膜パターンの抵抗値のバラツキが少なく均一に形成できる、例えば表示装置の製造に利用した場合に、高精細化に対応することが可能となる。
【0023】
本発明の実施の形態で用いる液体は、導電性膜又は半導電性膜を構成する成分を含むものである。焼成によって導電性の膜または半導電性の膜を形成できるものであれば、有機溶剤を50重量%以上含む有機溶剤系溶媒を用いた有機溶剤系溶液でも、水を50重量%以上含む水系溶媒を用いた水系溶液でもよい。なお、本発明において、金属とは、合金をも含めて意味するものである。
【0024】
本発明によれば、導電性又は半導電性の膜パターンを形成することができ、電極、配線、表面伝導型電子放出素子の導電性薄膜、薄膜トランジスタにおけるパターニングされた半導電性膜の形成に用いることができる。具体的には、本発明は、電子デバイス、電子放出素子、電子源、画像表示装置などの製造に利用することができる。
【0025】
電子デバイスとは、少なくとも一部に導電性(導体)または半導電性(半導体)の膜パターンを有する回路が設けられた基板を備えた装置で、例えば液晶表示パネル、コンピューターなどを挙げることができる。
【0026】
さらに本発明は、電子放出素子、該電子放出素子を複数備えた電子源および該電子源を用いた画像表示装置の製造に利用することができる。
【0027】
電子放出素子の例としては、絶縁性の基板上に対向して形成した一対の電極に接続して導電性薄膜を形成した後、この導電性薄膜にフォーミングと称される通電処理を施した表面伝導型電子放出素子を挙げることができる。フォーミングは、導電性薄膜に間隙(亀裂)を形成する処理である。この表面伝導型電子放出素子は、前記一対の電極間に電圧を印加することで、前記導電性薄膜から電子放出を生じる。本発明は、上記表面伝導型電子放出素子だけでなく、構成部材として導体の膜パターンを有する電子放出素子の製造にも用いることができる。この他の電子放出素子の例としては、「FE型」と称される電界放出型の電子放出素子や、「MIM型」と称される金属/絶縁層/金属型の構成を有する電子放出素子を挙げることができる。
【0028】
また、本発明は、基板上に、複数の電子放出素子と、この電子放出素子を駆動するための配線とを備えた電子源の製造にも利用することができる。即ち、電子放出素子および配線の少なくとも一部が導電性の膜パターンによって構成されている場合、該膜パターンの少なくとも一部を本発明の膜パターン製造方法で形成することにより、当該電子源を製造することができる。
【0029】
さらに、本発明は、上記のように製造される電子源と、この電子源の電子放出素子より放出された電子線の照射により画像を表示する画像表示部材とを対向させて組み合わせて、画像表示装置を製造することができる。
【0030】
以下、さらに本発明を説明する。
【0031】
(1)抵抗を阻害する金属酸化物膜の形成
本発明の本質となる抵抗を阻害する金属酸化物膜層としての金属酸化物膜の形成方法の具体例としては、酸化物ターゲットを用いたスパッタ、金属ターゲットを用いて酸素雰囲気中での反応性スパッタなどがある。また、金属酸化物膜形成用スピンコート液を基板上に塗布し高温焼成する方法、金属種を添加したアクリル酸樹脂を基板上に塗布し高温焼成する方法も用いることができる。しかし、形成方法は問わず金属酸化物膜であることが重要である。膜パターンの部分にのみ形成する方法としては、金属酸化物膜上にレジストパターンを形成しエッチングする方法、金属種を添加した感光性樹脂を基板全面に塗布しパターニングした後に高温焼成する方法などがある。
【0032】
(2)樹脂膜形成材料
本発明で使用する樹脂膜形成材料としては、感光性樹脂を用いることができる。使用する感光性樹脂は、これを用いて形成した樹脂膜が、後述する導電性膜又は半導電性膜を構成する成分を含む液体を吸収可能であれば特に制限はなく、水溶性の感光性樹脂でも、溶剤溶解性の感光性樹脂でもよい。水溶性の感光性樹脂とは、後述する現像工程における現像を水もしくは水を50重量%以上含む現像剤で行うことができる感光性樹脂をいう。溶剤溶解性の感光性樹脂とは、現像工程における現像を有機溶剤もしくは有機溶剤を50重量%以上含む現像剤で行う感光性樹脂をいう。
【0033】
感光性樹脂としては、樹脂構造中に感光基を有するタイプのものであっても、例えば環化ゴム−ビスアジド系レジストのように、樹脂に感光剤が混合されたタイプのものでもよい。いずれのタイプの感光性樹脂成分においても、光反応開始剤や光反応禁止剤を適宜混合しておくことができる。また、現像液に可溶な感光性樹脂塗膜が光照射によって現像液に不溶化するタイプ(ネガタイプ)であっても、現像液に不溶な感光性樹脂塗膜が光照射によって現像液に可溶化するタイプ(ポジタイプ)であってもよい。
【0034】
本発明では、上記のように、一般の感光性樹脂を広く用いることができる。特に好ましくは、後述する溶液中の成膜成分と反応し、イオン交換可能な樹脂である。イオン交換可能な樹脂は、導電性膜又は半導電性膜を構成する成分の吸収を向上させ、材料の利用効率を高め、より形状の整ったパターンを形成することができる。イオン交換が可能な樹脂とは、イオン交換基を有する樹脂で、とりわけ、形状の整ったパターンを形成しやすいことから、カルボン酸基を有するものが好ましい。また、良好な作業環境を維持しやすいこと、廃棄物の自然に与える負荷が小さいことなどから、水溶性の感光性樹脂を用いることが好ましい。
【0035】
この水溶性の感光性樹脂としては、水を50重量%以上含有し、50重量%未満の範囲で、例えば乾燥速度を速めるためのメチルアルコールやエチルアルコールなどの低級アルコールを加えた現像剤を使用するものを用いることができる。また、水を50重量%以上含有し、50重量%未満の範囲で、感光性樹脂成分の溶解促進や安定性向上などを図るための成分を加えた現像剤を使用するものを用いることもできる。但し、環境負荷を軽減する観点から、水の含有率が70重量%以上の現像剤で現像できるものが好ましい。さらに好ましくは水の含有率が90重量%以上の現像剤で現像できるものであり、水だけを現像剤として現像できるものが最も好ましい。この水溶性の感光性樹脂としては、例えばポリビニルアルコール系樹脂やポリビニルピロリドン系樹脂などの水溶性の樹脂を用いたものを挙げることができる。
【0036】
(3)導電性膜又は半導電性膜を構成する成分(成膜成分)を含む液体
本発明で用いる導電性膜又は半導電性膜を構成する成分(成膜成分)を含む液体は、乾燥と焼成によって導電性膜又は半導電性膜を形成できるものであればよい。導電性膜又は半導電性膜を構成する成分としては、金属または金属化合物を用いることができる。電子デバイス、電子放出素子、電子源基板および画像表示装置の製造への利用を考慮すると、導電性膜又は半導電性膜の構成成分としては、金、銀、銅、ルテニウム、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ビスマスから選択されるいずれかが好ましい。また、バナジウム、クロム、錫、鉛、ケイ素、亜鉛、インジウム、ニッケルから選択されるいずれかも同様に好ましい。上記成膜成分を含む液体は、有機溶剤を50重量%以上含む有機溶剤系溶媒を用いた有機溶剤系溶液でも、水を50重量%以上含む水系溶媒を用いた水系溶液でもよい。成膜成分を含む液体は、例えば、水または有機溶剤に可溶性の金属錯体などの金属有機化合物を水系溶媒または有機溶剤系溶媒に溶解させることで容易に得ることができる。
【0037】
本発明で用いる上記成膜成分を含む液体としては、上記感光性樹脂と同様に、良好な作業環境を維持しやすいこと、廃棄物の自然に与える負荷が小さいことなどから、水系液体であることが好ましい。この水系液体の水系溶媒としては、水を50重量%以上含有し、50重量%未満の範囲で、例えば乾燥速度を速めるためのメチルアルコールやエチルアルコールなどの低級アルコールを加えたものとすることができる。また、水を50重量%以上含有し、50重量%未満の範囲で、上述した金属有機化合物の溶解促進や安定性向上などを図るための成分を加えたものとすることもできる。特に環境負荷を軽減する観点からは、水の含有率が70重量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは水の含有率が90重量%以上であり、総て水であることが最も好ましい。
【0038】
(4)膜パターンの製造方法
樹脂として感光性樹脂を用いた導電性膜又は半導電性膜又は導電性膜と半導電性膜とを含む膜パターンの形成は次の工程で行うことができる。即ち、樹脂パターン形成工程と、樹脂膜中に成膜成分を含ませる吸収工程と、必要に応じて行われる洗浄工程と、高温乾燥による樹脂硬化工程と、焼成工程と、必要に応じて行われるミリング工程を経て行うことができる。樹脂パターン形成工程は、塗布工程、乾燥工程、露光工程、現像工程から構成される。
【0039】
塗布工程は、膜パターンを形成すべき基板上に前述の感光性樹脂を塗布する工程である。この塗布は、各種印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷など)、スピンナー法、ディッピング法、スプレー法、スタンプ法、ローリング法、スリットコーター法、インクジェット法などを用いて行うことができる。
【0040】
乾燥工程は、上記塗布工程において基板上に塗布した感光性樹脂塗膜中の溶媒を揮発させて塗膜を乾燥する工程である。この塗膜の乾燥は、室温下で行うこともできるが、乾燥時間を短縮するために加熱下で行うことが好ましい。加熱乾燥は、例えば無風オーブン、乾燥機、ホットプレートなどを用いて行うことができる。塗布する電極・配線形成用組成物の配合や塗布量などによっても相違するが、一般的には50〜120℃の温度下に1〜30分間置くことで行うことができる。
【0041】
露光工程は、上記乾燥工程において乾燥された基板上の感光性樹脂膜を、所定のパターン、即ち、製造される膜のパターン(例えば所定の電極や配線の形状)に応じて露光する工程である。露光工程で光照射して露光する範囲は、使用する感光性樹脂がネガタイプであるかポジタイプであるかによって相違する。光照射によって現像液に不溶化するネガタイプの場合、樹脂膜の残すべき領域に光を照射して露光する。光照射によって現像液に可溶化するポジタイプの場合、ネガタイプとは逆に、樹脂膜の残すべき領域以外の領域に光を照射して露光する。光照射領域と非照射領域の選択は通常のフォトレジストによるマスク形成における手法と同様にして行うことができる。
【0042】
現像工程は、上記露光工程で露光された感光性樹脂膜について、樹脂膜の残すべき領域以外の領域を除去する工程である。感光性樹脂がネガタイプの場合、光照射を受けていない感光性樹脂膜は現像液に可溶で、光照射を受けた露光部の感光性樹脂膜が現像液に不溶化する。従って、現像液に不溶化していない非光照射部の感光性樹脂膜を現像液で溶解除去することで現像を行うことができる。また、感光性樹脂がポジタイプの場合、光照射を受けていない感光性樹脂膜は現像液に対して不溶で、光照射を受けた露光部の感光性樹脂膜が現像液に可溶化する。従って、現像液に可溶化した光照射部の感光性樹脂膜を現像液で溶解除去することで現像を行うことができる。
【0043】
なお、水溶性の感光性樹脂を用いた場合、現像液としては、例えば、水や通常の水溶性フォトレジストに用いられる現像液と同様のものを用いることができる。また、有機溶媒樹脂の場合は、有機溶媒や溶剤系フォトレジストに用いられる現像液と同様のものを用いることができる。
【0044】
樹脂膜中に、導電性膜又は半導電性膜の構成成分を含ませる吸収工程は、上記で形成した樹脂膜に前述した導電性膜又は半導電性膜の構成成分を含む液体を吸収させる工程である。吸収は、形成した樹脂膜を前記導電性膜又は半導電性膜の構成成分を含む液体と接触させることで行われる。具体的には、例えば前記構成成分を含む液体に浸漬させるディッピング法や、樹脂膜に例えばスプレー法やスピンコート法で前記構成成分を含む液体を塗布する塗布法などで行うことができる。前記構成成分を含む液体を接触させる以前に、例えば、前記水系液体を用いる場合に、前記水系溶媒を用いて樹脂膜を膨潤させておくこともできる。吸収工程は、現像前の樹脂膜に対して行っても、現像後の樹脂パターンに対して行ってもよいが、成膜成分の有効利用の観点からは、樹脂パターンに対して行うことが好ましい。
【0045】
洗浄工程は、樹脂膜又は樹脂パターンに前記導電性膜又は半導電性膜の構成成分を含む液体を吸収させた後、樹脂膜に付着した余剰の液体や、樹脂膜以外の箇所に付着した余剰の液体を除去・洗浄する工程である。この洗浄工程は、前記導電性膜又は半導電性膜の構成成分を含む液体中の溶媒と同様の洗浄液を用い、この洗浄液に前記樹脂膜を形成した基板を浸漬する方法や、該洗浄液を前記樹脂膜を形成した基板に吹き付けることなどによって行うことができる。
【0046】
焼成工程は、上記現像工程および吸収工程さらに必要に応じて上記洗浄工程を経た樹脂パターンを焼成し、樹脂膜中の有機成分を分解除去し、樹脂膜中に含まれている前記導電性膜又は半導電性膜の構成成分で膜パターンを形成する工程である。焼成は、貴金属で導電性膜のパターンを形成する場合には大気中で行うことができるが、銅やパラジウムなどの酸化しやすい金属で導体性膜のパターンを形成する場合には、真空もしくは脱酸素雰囲気下で行うこともできる。脱酸素雰囲気は、例えば窒素などの不活性ガス雰囲気として形成することができる。
【0047】
焼成は、樹脂膜に含まれる有機成分の種類などによっても相違するが、通常400℃〜600℃の温度下に数分〜数十分置くことで行うことができる。焼成は、例えば熱風循環炉、ベルト炉、タクト炉、ホットプレート、IR炉などで行うことができる。この焼成によって、基板上に、所定のパターンに沿った形状で、導電性膜又は半導電性膜又は導電性膜と半導電性膜とを含む膜を形成することができる。
【0048】
(5)膜の密着性評価方法
膜の密着性(付着力)の評価方法としては、テープテスト、引っ掻き、アブレージョン、引っ張り、押し込みが知られている。ガラス基板上の薄膜の試験方法としては、JIS R3255−4997がある。本件では、レスカ製CSR−02のスクラッチ試験を用いた。圧子半径は15μmで針強度は50gfのものを使用した。テープテストも併用し密着力の試験方法とした。スクラッチ試験における密着力強度は、N(ニュートン)で表示される。本件の検討では、5mN以下では密着性のバラツキが発生しており、5mN以上にすることで膜の密着性を改善することがわかった。
【0049】
テープテストは、剥がれるものは密着性が弱く、剥がれないことが必要である。
【0050】
(6)グラデーション膜の評価方法
グラデーション膜の評価は、断面TEM(透過型電子顕微鏡像)を用いたり、この断面のEDS(Energy Dispersive X−Ray Microanalysis)を用いて、元素マッピングすることで評価できる。別に、(5)の膜の密着性評価方法の引っ掻き試験を用いて評価することも可能である。それは、積層膜の界面がグラデーションでない場合は、引っ掻き試験のデータが第1層(表面)と第2層で荷重値が急激に変化するのに対して、グラデーションの場合は、第1層(表面)と第2層の荷重変化が緩やかになることで判別することができる。
【0051】
本検討に関しては、断面TEMとEDSと引っ掻き試験結果を合わせて評価した。
【0052】
(7)膜厚
抵抗を有する金属もしくは金属酸化物(A)の膜厚と、抵抗を阻害する金属酸化物(B)の膜厚と、各々の膜の濃度勾配の膜厚(C)の関係は以下の通りであることが好ましい。
(C)<(A)あるいは(B)/2
【0053】
また、抵抗を有する金属もしくは金属酸化物(A)と抵抗を阻害する金属酸化物(B)の膜厚が1nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0054】
(8)電子放出素子の製造方法
本発明の膜パターンの製造方法は、前述したように、電子放出素子の製造方法として利用できるもので、表面伝導型電子放出素子の製造方法に用いる場合について以下に説明する。
【0055】
図1は、本発明の膜パターンの製造方法を用いて製造することができる電子放出素子の一構成例を模式的に示す図で、(a)は断面図、(b)は平面図である。図中、1は基板、2a,2bは電極、3は導電性薄膜、4は間隙である。
【0056】
図示されるように、本例の電子放出素子は、基板1上に形成した一対の電極2a,2bに間に跨って導電性薄膜3が形成されている。電極2a,2bおよび導電性薄膜3は、導電体の膜パターンとして形成されるもので、両者を形成した後、電極2a,2b間にフォーミングと称される通電処理を施すことにより、導電性薄膜3の一部に、間隙4が形成されたものとなっている。この電子放出素子は、通常、上記フォーミングの後、有機ガスの存在下で電極2a,2b間に電圧を印加し、間隙4およびその近傍に炭素を付着させる活性化処理により、電子放出効率が高められる。
【0057】
上記のように電極2a,2および導電性薄膜3は、導体の膜パターンとして形成されることから、このうちの一方または両者を、本発明の膜パターン形成方法で形成することができる。
【0058】
(9)電子源および画像表示装置の製造方法
本発明の膜パターンの形成方法は、前述したように、電子源および画像表示装置の製造方法としても利用できるもので、表面伝導型電子放出素子を用いた電子源およびそれを用いた画像表表示装置の製造方法に用いる場合について以下に説明する。
【0059】
図2は、本発明の膜パターンの製造方法を用いて製造することができる電子源を用いた画像表示装置を模式的に示す一部切欠斜視図である。
【0060】
電子源10は、基板11上に、電極12a,12bと、間隙14を有する導電性薄膜13を備えた電子放出素子15を複数個、X・Y方向に配列したものとなっている。また、Y方向配線(下配線)16とX方向配線(上配線)17で接続した単純マトリクス配置となっており、Y方向配線16には各電子放出素子15の電極2bが接続され、X方向配線17には各電子放出素子15の電極2aが接続されている。電子放出素子15は、基本的には図1に示されるものと同様で、基板11、電極12a,12b、導電性薄膜13および間隙14は、それぞれ図1における基板1、電極2a,2b、導電性薄膜3および間隙4に対応する。
【0061】
上記電子源10は、リアプレート18上に設けられている。このリアプレート18上に設けられた電子源10に対向して、内面側に蛍光膜19とメタルバック20が設けられたフェースプレート21が設けられている。リアプレート18とフェースプレート21間は、両者間の周囲を囲む支持枠23を介して封止されており、内部が真空雰囲気となっている。
【0062】
上記画像表示装置は、X方向配線17およびY方向配線16にそれぞれ接続された引き出し端子X1〜Xn,Y1〜Ymを介して選択された電子放出素子15の電極12a,12b間に電圧を印加する。これと共に、高圧端子22からメタルバック20に10〜15KVの高電圧を印加することで、上記選択された電子放出素子15から放出される電子線を対応する蛍光体19に照射して画像を表示するものとなっている。
【0063】
上記電子源10の製造には、まず、複数対の電極12a,12bと、該各対の電極12a,12b間を接続する導電性薄膜13と、各電極12b間を接続するY方向配線16と、各電極12a間を接続するX方向配線17とを形成する。その後、各対の電極12a,12b間に通電し、各導電性薄膜13に間隙14を形成することで上記電子源10を製造することができる。
【0064】
上記電極12a,12b、導電性薄膜13、Y方向配線16およびX方向配線17は、いずれも導体の膜パターンとして形成可能であり、これらのいずれか又は総てを本発明の膜パターンの製造方法で製造することで、電子源10を製造することができる。また、得られた電子源10を、電子線の照射によって画像を表示する画像表示部材である蛍光膜19と対向配置することで、画像表示装置を製造することができる。
【実施例】
【0065】
実施例1
(下地膜の形成)
酸化ビスマススピンコート液(豊島製作所製)を、ガラス製の基板(75mm×75mm×厚さ2.8mm)にスピンコーターで3000rpm/30秒で全面に塗布し、ホットプレートにて100℃で10分間乾燥した。その後、熱風循環炉にて500℃、1時間焼成した。
【0066】
得られた酸化ビスマス膜の膜厚は12.3nmであった。
【0067】
(導電膜の形成)
得られた酸化ビスマス膜上に感光性樹脂(メタクリル酸−メチルメタクリル酸―エチルアクリレート−n−ブチルアクロレート−アゾビスイソブチロニトリル重合体)をスピンコーターで全面に塗布し、ホットプレートにて100℃で10分間乾燥した。
【0068】
次いで、フォトマスクを用いて感光性樹脂の塗膜のパターンを形成する領域を、超高圧水銀ランプ(照度=1600mW/cm2)にて、スキャンスピード26mm/secで露光し、現像を行って樹脂パターンを得た。露光には、キヤノン社製MPA3200(ミラープロジェクションマスクアライナー)を用いた。
【0069】
樹脂パターンを形成した基板を純水中に30秒浸漬した後、Pt錯体溶液に60秒浸漬し、樹脂パターンに溶液を吸収させた。
【0070】
基板を引き上げ、流水で5秒間洗浄して、樹脂パターン間のPt錯体溶液を洗い流し、エアーで水切りをし、80℃のホットプレートで5分乾燥した後、熱風循環炉にて、500℃で1時間焼成した。
【0071】
得られたプラチナのパターンの密着性を、テープ剥離およびスクラッチ試験機で評価した。
【0072】
結果を表1に示す。
【0073】
実施例2
ニッケルターゲットを用いて酸素との反応性スパッタで酸化ニッケル膜を基板に成膜した。成膜条件は、酸素流量が19.5sccm、チャンバー圧力が0.5Pa、プラズマ発生パワーが50wであった。
【0074】
得られた酸化ニッケル膜上に実施例1と同様にPtの導電膜を形成して、密着性を評価した。
【0075】
結果を表1に示す。
【0076】
実施例3
酢酸コバルトをコバルト0.5wt%添加した感光性樹脂を用いて、実施例1の導電膜の形成方法と同様に樹脂パターンを形成し、熱風循環炉にて500℃1時間焼成した。
【0077】
得られた酸化コバルト膜上に実施例1と同様にPtの導電膜を形成して、密着性を評価した。
【0078】
結果を表1に示す。
【0079】
実施例4
硝酸鉛を鉛0.5wt%添加したアクリル酸樹脂を、基板にスピンコーターで全面に塗布し、ホットプレートにて100℃で10分間乾燥した後、熱風循環炉にて500℃1時間焼成した。
得られた酸化鉛の膜上に実施例1と同様にPtの導電膜を形成して、密着性を評価した。
【0080】
結果を表1に示す。
【0081】
実施例5
硝酸ジルコニウムをジルコニウム0.1wt%添加したアクリル酸樹脂を用いて、実施例4と同様に下地層を形成した。
【0082】
得られた酸化ジルコニウム膜上に実施例3と同様に導電膜を形成する。この際に、樹脂パターンにRu錯体溶液〔トリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)塩化物水溶液、ルテニウム含有量0.1重量%〕に180秒浸漬し吸収させ、酸化ルテニウム膜を形成して、密着性を評価した。
【0083】
結果を表1に示す。
【0084】
実施例6
硝酸インジウムをインジウム1.0wt%添加したアクリル酸樹脂を用いて、実施例5と同様に下地層を形成した。
【0085】
得られた酸化インジウムの膜上に実施例5と同様に酸化ルテニウム膜を形成して、密着性を評価した。
【0086】
結果を表1に示す。
【0087】
比較例1
下地層を形成しなかった以外は実施例1と同様にしてPtパターンを得た後、実施例1と同様の測定と評価を行った。
【0088】
比較例2
下地層を形成しなかった以外は実施例5と同様にして酸化ルテニウムパターンを得た後、実施例1と同様の測定と評価を行った。
【0089】
結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
尚、表1に各項目の結果は以下の通りである。
【0092】
[テープ剥離]
〇:導電膜パターンがテープ剥離で剥がれない
×:導電膜パターンがテープ剥離で剥がれる
【0093】
[スクラッチ]
カンチレバーに荷重をかけ、導電膜が剥がれたときに荷重の大きさである。この値が5以上の場合、後工程の耐性があると判断できる。
【0094】
[総合判定]
〇:テープ剥離が〇、スクラッチの値が5 mN以上の場合
×:テープ剥離が×、またはスクラッチの値が5 mN未満の場合
【0095】
実施例7
(下地膜の形成)
実施例1と同様の方法で酸化ビスマス膜を形成した。
【0096】
(導電膜の形成)
得られた酸化ビスマス膜上に感光性樹脂(メタクリル酸−メチルメタクリル酸―エチルアクリレート−n−ブチルアクロレート−アゾビスイソブチロニトリル重合体)をスピンコーターで全面に塗布し、ホットプレートにて100℃で10分間乾燥した。
【0097】
次いで、フォトマスクを用いて感光性樹脂の塗膜のパターンを形成する領域を、超高圧水銀ランプ(照度=1600mW/cm2)にて、スキャンスピード26mm/secで露光し、現像を行って樹脂パターンを得た。露光には、キヤノン社製MPA3200(ミラープロジェクションマスクアライナー)を用いた。
【0098】
樹脂パターンを形成した基板を純水中に30秒浸漬した後、Pt錯体溶液に60秒浸漬し、樹脂パターンに溶液を吸収させた。
【0099】
基板を引き上げ、流水で5秒間洗浄して、樹脂パターン間のPt錯体溶液を洗い流し、エアーで水切りをし、200℃のホットプレートで10分乾燥した。
【0100】
その後、バッファードフッ酸(フッ酸濃度0.9%)溶液に5分間浸し、剥き出し部分の酸化ビスマス膜をエッチングした。基板を引き上げ、流水で30秒間洗浄して、バッファードフッ酸溶液を洗い流し、エアーで水切りをし、熱風循環炉にて、500℃で1時間焼成した。
【0101】
実施例8
実施例7でバッファードフッ酸(フッ酸濃度0.9%)溶液の替わりに、EDTA(エチレンジアミンテトラアンミン)5%溶液に15分間浸す以外は、実施例7と同様の方法で作製した。
【0102】
実施例9
感光性樹脂(メタクリル酸−メチルメタクリル酸―エチルアクリレート−n−ブチルアクロレート−アゾビスイソブチロニトリル重合体)をガラス製の基板(75mm×75mm×厚さ2.8mm)にスピンコーターで全面に塗布した。その後、ホットプレートで90℃で10分間乾燥した。
【0103】
次いで、表2に示される線幅の直線状パターンのフォトマスクを用い、感光性樹脂塗膜のパターン形成領域を、超高圧水銀ランプ(照度=1850mW/cm2)にて、スキャンスピード10.5mm/secで露光し、現像を行って樹脂パターンを得た。露光には、キヤノン社製MPA3000(ミラープロジェクションマスクアライナー)を用いた。
【0104】
樹脂パターンを形成した基板を純水中に30秒浸漬した後、Pt錯体溶液〔テトラアンミン白金(II)酢酸水溶液、白金含有量1.0重量%〕の60秒浸漬し、樹脂パターンに溶液を吸収させた。
【0105】
基板を引き上げ、流水で5秒間洗浄して、樹脂パターン間のPt錯体溶液を洗い流し、エアーで水切りをし、80℃のホットプレートで5分乾燥した。その後、循環炉にて、500℃で1時間焼成した。
【0106】
得られた白金膜の膜厚は32nmであった。
【0107】
この膜に、ビスマス溶液〔硝酸ビスマスのエチレングリコール溶液、ビスマス比率5重量%〕を、スピンコーターで全面に塗布し、ホットプレートで80℃で2分間乾燥した。その後熱風循環炉にて、500℃で1時間焼成した。得られた酸化ビスマスの膜厚は5.0nmであった。
【0108】
得られた白金膜の直線状膜パターンの線幅を、線幅測定機で測定し、直線状膜パターンの直線性を、マスクパターンとのバラツキ(3σ/平均値、σ=標本標準偏差)で評価した。この線幅パターンは、線幅が6μm、8μm、10μm、20μm、50μmの5種類、長さは総て1000μmとし、各膜パターンの線幅を10μmピッチで90ポイント測定した。
【0109】
結果を表2に示す。
【0110】
実施例10
感光性樹脂(メタクリル酸−メチルメタクリル酸―エチルアクリレート−n−ブチルアクロレート−アゾビスイソブチロニトリル重合体)を、ガラス製の基板(75mm×75mm×厚さ2.8mm)にスピンコーターで全面に塗布した。その後、ホットプレートで90℃で10分間乾燥した。
【0111】
次いで、表2に示される線幅の直線状パターンのフォトマスクを用い、感光性樹脂の塗膜のパターン形成領域を、超高圧水銀ランプ(照度=1850mW/cm2)にて、スキャンスピード10.5mm/secで露光し、現像を行って樹脂パターンを得た。露光には、キヤノン社製MPA3000(ミラープロジェクションマスクアライナー)を用いた。
【0112】
樹脂パターンを形成した基板を純水中に30秒浸漬した後、Pt錯体溶液〔テトラアンミン白金(II)酢酸水溶液、白金含有量1.0重量%〕の60秒浸漬し、樹脂パターンに溶液を吸収させた。
【0113】
基板を引き上げ、流水で5秒間洗浄して、樹脂パターン間のPt錯体溶液を洗い流し、エアーで水切りをし、80℃のホットプレートで5分乾燥した。
【0114】
この膜に、ビスマス溶液〔硝酸ビスマスのエチレングリコール溶液、ビスマス比率5重量%〕を、スリットコータで全面に塗布し、ホットプレートで80℃で2分間乾燥した。
その後、循環炉にて、500℃で1時間焼成した。
【0115】
得られた白金膜の膜厚は32nm、酸化ビスマスの膜厚は5.0nmであった。
【0116】
得られた白金膜について、実施例9と同様の測定と評価を行った。
【0117】
結果を表2に示す。
【0118】
実施例11
実施例9のビスマス溶液に代えて、鉛溶液〔酢酸鉛水溶液、鉛比率5重量%〕を用いた以外は実施例9と同様の方法で基板を作製した。
【0119】
得られた酸化鉛の膜厚は4.5nmであった。
【0120】
得られた白金膜について、実施例9と同様の測定と評価を行った。
【0121】
結果を表2に示す。
【0122】
比較例3
実施例9で酸化ビスマスで被膜しない以外は、実施例9と同様にして白金の直線状膜パターンを得た。
【0123】
得られた白金膜について、実施例9と同様の測定と評価を行った。
【0124】
結果を表2に示す。
【0125】
【表2】

【0126】
図1に示される、電極2a,2bを上記各実施例に記載の方法にて形成し、製造された電子放出素子は、良好な電子放出特性を再現性良く呈していた。
【0127】
また、図2に示される電子源10の各電子放出素子15の電極12a,12bを上記各実施例に記載された方法にて形成した際、電子放出素子間で均一な電子放出特性を呈していた。
【0128】
また、図2に示される電子源10の、各電子放出素子15の電極12a,12b、Y方向配線(下配線)16、X方向配線(上配線)17を上記各実施例に記載された方法で形成した際、より一層電子放出素子間で均一な電子放出特性を呈していた。
【0129】
また、上記方法にて製造された電子源10を図2に示す画像表示装置に適用した際、表示性能の良好な信頼性の高い画像表示装置が得られた。
【0130】
実施例12
感光性樹脂(メタクリル酸−メチルメタクリル酸―エチルアクリレート−n−ブチルアクロレート−アゾビスイソブチロニトリル重合体)を、ガラス製の基板(75mm×75mm×厚さ2.8mm)にスピンコーターで全面に塗布した。その後、ホットプレートで90℃で10分間乾燥した。
【0131】
次いで、表3に示される線幅の直線状パターンのフォトマスクを用いて露光した。感光性樹脂の塗膜のパターンを形成する領域を、超高圧水銀ランプ(照度=1850mW/cm2)で、スキャンスピード10.5mm/secで露光し、現像を行って樹脂パターンを得た。露光にはキヤノン社製MPA3000(ミラープロジェクションマスクアライナー)を用いた。
【0132】
樹脂パターンを形成した基板を純水中に20秒浸漬した後、ルテニウム錯体溶液〔トリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)塩化物水溶液、ルテニウム含有量0.1重量%〕の600秒浸漬し、樹脂パターンに溶液を吸収させた。
【0133】
基板を引き上げ、流水で5秒間洗浄して、樹脂パターン間のルテニウム錯体溶液を洗い流し、エアーで水切りをし、80℃のホットプレートで5分乾燥した。その後、循環炉にて、500℃で1時間焼成した。
【0134】
得られた酸化ルテニウム膜の膜厚は40nmであった。
【0135】
この膜に、ビスマス溶液〔硝酸ビスマスのエチレングリコール溶液、ビスマス比率5重量%〕を、スピンコーターで全面に塗布し、ホットプレートで80℃で2分間乾燥した。その後熱風循環炉にて、500℃で1時間焼成した。
得られた酸化ビスマスの膜厚は5.0nmであった。
【0136】
実施例13
ビスマス溶液〔硝酸ビスマスのエチレングリコール溶液、ビスマス比率5重量%〕を、スピンコーターで全面に塗布し、ホットプレートで80℃で2分間乾燥した。その後熱風循環炉にて、500℃で1時間焼成した。得られた酸化ビスマスの膜厚は5.0nmであった。
【0137】
この膜に感光性樹脂(メタクリル酸−メチルメタクリル酸―エチルアクリレート−n−ブチルアクロレート−アゾビスイソブチロニトリル重合体)を、ガラス製の基板(75mm×75mm×厚さ2.8mm)にスピンコーターで全面に塗布した。その後、ホットプレートで90℃で10分間乾燥した。
【0138】
次いで、表3に示される線幅の直線状パターンのフォトマスクを用い、感光性樹脂の塗膜のパターンを形成する領域を、超高圧水銀ランプ(照度=1850mW/cm2)にて、スキャンスピード10.5mm/secで露光し、現像を行って樹脂パターンを得た。露光には、キヤノン社製MPA3000(ミラープロジェクションマスクアライナー)を用いた。
【0139】
樹脂パターンを形成した基板を純水中に20秒浸漬した後、ルテニウム錯体溶液〔トリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)塩化物水溶液、ルテニウム含有量0.1重量%〕の600秒浸漬し、樹脂パターンに溶液を吸収させた。
【0140】
基板を引き上げ、流水で5秒間洗浄して、樹脂パターン間のルテニウム錯体溶液を洗い流し、エアーで水切りをし、80℃のホットプレートで5分乾燥した。その後、循環炉にて、500℃で1時間焼成した。
【0141】
得られた酸化ルテニウム膜の膜厚は40nmであった。
【0142】
比較例4
感光性樹脂(メタクリル酸−メチルメタクリル酸―エチルアクリレート−n−ブチルアクロレート−アゾビスイソブチロニトリル重合体)を、ガラス製の基板(75mm×75mm×厚さ2.8mm)にスピンコーターで全面に塗布した。その後、ホットプレートで90℃で10分間乾燥した。
【0143】
次いで、表3に示される線幅の直線状パターンのフォトマスクを用い、感光性樹脂の塗膜のパターンを形成する領域を、超高圧水銀ランプ(照度=1850mW/cm2)にて、スキャンスピード10.5mm/secで露光し、現像を行って樹脂パターンを得た。露光には、キヤノン社製MPA3000(ミラープロジェクションマスクアライナー)を用いた。
【0144】
樹脂パターンを形成した基板を純水中に20秒浸漬した後、ルテニウム錯体溶液〔トリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)塩化物水溶液、ルテニウム含有量0.1重量%〕の600秒浸漬し、樹脂パターンに溶液を吸収させた。
【0145】
基板を引き上げ、流水で5秒間洗浄して、樹脂パターン間のルテニウム錯体溶液を洗い流し、エアーで水切りをし、80℃のホットプレートで5分乾燥した。その後、循環炉にて、500℃で1時間焼成した。
【0146】
得られた酸化ルテニウム膜の膜厚は40nmであった。
【0147】
比較例5
感光性樹脂(メタクリル酸−メチルメタクリル酸―エチルアクリレート−n−ブチルアクロレート−アゾビスイソブチロニトリル重合体)を、ガラス製の基板(75mm×75mm×厚さ2.8mm)にスピンコーターで全面に塗布した。その後、ホットプレートで90℃で10分間乾燥した。
【0148】
次いで、表3に示される線幅の直線状パターンのフォトマスクを用いて露光した。感光性樹脂の塗膜のパターンを形成する領域を、超高圧水銀ランプ(照度=1850mW/cm2)で、スキャンスピード10.5mm/secで露光し、現像を行って樹脂パターンを得た。露光にはキヤノン社製MPA3000(ミラープロジェクションマスクアライナー)を用いた。
【0149】
樹脂パターンを形成した基板を純水中に20秒浸漬した。その後、ルテニウム錯体/硝酸Bi溶液〔トリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)塩化物水溶液、ルテニウム含有量0.1重量%、硝酸ビスマス0.05重量%〕の600秒浸漬し、樹脂パターンに溶液を吸収させた。
【0150】
基板を引き上げ、流水で5秒間洗浄して、樹脂パターン間のルテニウム錯体/ビスマス混合溶液を洗い流し、エアーで水切りをし、80℃のホットプレートで5分乾燥した。その後、循環炉にて、500℃で1時間焼成した。
【0151】
得られた酸化ルテニウム/ビスマス混合膜の膜厚は45nmであった。
【0152】
実施例12、13と比較例4、5を用いて、循環炉にて、500℃で1時間焼成した。焼成前後の膜を電子線マイクロアナライザ(EPMA)にて、ルテニウム量とビスマス量を測定した。
【0153】
結果を表3に示す。
【0154】
【表3】

【0155】
(注)(焼成前ルテニウムcount−焼成後ルテニウムcount)/焼成前ルテニウムcount*100
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明の膜パターンの形成方法を用いて製造することができる電子放出素子の一構成例を模式的に示す図で、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図2】本発明の膜パターンの形成方法を用いて製造することができる電子源を用いた画像表示装置を模式的に示す一部切欠斜視図である。
【符号の説明】
【0157】
1 基板
2a 電極
2b 電極
3 導電性薄膜
4 間隙
10 電子源
11 基板
12a 電極
12b 電極
13 導電性薄膜
14 間隙
15 電子放出素子
16 Y方向配線(下配線)
17 X方向配線(上配線)
18 リアプレート
19 蛍光膜
20 メタルバック
21 フェースプレート
22 高圧端子
1〜Xn 引き出し端子
1〜Ym 引き出し端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成される膜パターンであって、抵抗を有する金属又は金属酸化物と抵抗を阻害する金属酸化物で構成され、抵抗を有する金属又は金属酸化物の膜と抵抗を阻害する金属酸化物の膜が各々別々の膜で存在し、その境界面が各々の膜に対して濃度勾配をもっていること特徴とする膜パターン。
【請求項2】
抵抗を有する金属又は金属酸化物が基板上に存在し、その上に抵抗を阻害する金属酸化物が存在し、その境界面が各々の膜に対して濃度勾配をもっていること特徴とする膜パターン。
【請求項3】
基板上のパターンが、抵抗を阻害する金属酸化物が基板上に存在し、その上に抵抗を有する金属又は金属酸化物が存在し、その境界面が各々の膜に対して濃度勾配をもっていること特徴とする膜パターン。
【請求項4】
基板上のパターンが、抵抗を阻害する金属酸化物が基板上に存在し、その上に抵抗を有する金属又は金属酸化物が存在し、さらにその上に抵抗を阻害する金属酸化物が存在し、その境界面が各々の膜に対して濃度勾配をもっていること特徴とする膜パターン。
【請求項5】
前記抵抗を有する金属酸化物が、ルテニウム、パラジウム、イリジウムから選択されるいずれかであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の膜パターン。
【請求項6】
前記抵抗を有する金属が、白金、金、銀、銅、ルテニウム、パラジウム、イリジウムから選択されるいずれかであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の膜パターン。
【請求項7】
前記抵抗を阻害する金属酸化物が、ロジウム、ビスマス、バナジウム、クロム、錫、鉛、亜鉛、インジウム、ニッケル、コバルトから選択されるいずれかであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の膜パターン。
【請求項8】
抵抗を有する金属もしくは金属酸化物(A)の膜厚と、抵抗を阻害する金属酸化物(B)の膜厚と、各々の膜の濃度勾配の膜厚(C)の関係が、
(C)<(A)あるいは(B)/2
であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の膜パターン。
【請求項9】
抵抗を有する金属もしくは金属酸化物(A)と抵抗を阻害する金属酸化物(B)の膜厚が1nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項8に記載の膜パターン。
【請求項10】
基板上に成膜成分を含む溶液を吸収可能な樹脂パターンを形成する樹脂パターン形成工程と、該樹脂パターンに前記溶液を吸収させる吸収工程と、該吸収工程を経た樹脂パターンを焼成して、前記成膜成分を含む膜パターンを形成する焼成工程とを有し、前記膜パターンを金属酸化物膜で被膜する、もしくは下地膜で構成することを特徴とする膜パターンの製造方法。
【請求項11】
少なくとも一部に導体または半導体の膜パターンを有する回路が設けられた基板を備えた電子デバイスの製造方法であって、前記膜パターンの少なくとも一部を、請求項10に記載の膜パターンの製造方法により製造することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項12】
構成部材として導体の膜パターンを有する電子放出素子の製造方法であって、該膜パターンを請求項10に記載の膜パターンの製造方法により製造することを特徴とする電子放出素子の製造方法。
【請求項13】
基板上に、一対の電極と、該電極間を接続する導電性薄膜とを形成した後、電極間に通電して、導電性薄膜に間隙を形成する電子放出素子の製造方法において、電極と導電性薄膜のいずれか一方または両者を、請求項10に記載の膜パターンの製造方法により製造することを特徴とする電子放出素子の製造方法。
【請求項14】
基板上に設けられた複数の電子放出素子と、該電子放出素子を駆動するための配線とを備え、該電子放出素子および配線の少なくとも一部が導体の膜パターンによって構成された電子源の製造方法において、前記膜パターンの少なくとも一部を、請求項10に記載の膜パターンの製造方法により製造することを特徴とする電子源の製造方法。
【請求項15】
請求項14の製造方法により得られた電子源を、電子線の照射によって画像を表示する画像表示部材を有する基板と対向配置することを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【請求項16】
基板上に成膜成分を含む溶液を吸収可能な樹脂パターンを形成する樹脂パターン形成工程と、該樹脂パターンに前記溶液を吸収させる吸収工程と、該吸収工程を経た樹脂パターンを焼成して、前記成膜成分を含む膜パターンを形成する焼成工程とを有する膜パターンの製造方法であって、
焼成後に、酸化ルテニウム膜になる膜パターン製造方法であって、
酸化ルテニウム膜を金属酸化物膜で被膜することを特徴とする膜パターンの製造方法。
【請求項17】
基板上に成膜成分を含む溶液を吸収可能な樹脂パターンを形成する樹脂パターン形成工程と、該樹脂パターンに前記溶液を吸収させる吸収工程と、該吸収工程を経た樹脂パターンを焼成して、前記成膜成分を含む膜パターンを形成する焼成工程とを有する膜パターンの製造方法であって、
焼成後に、酸化ルテニウム膜になる膜パターン製造方法であって、
酸化ルテニウム膜と基板の間または酸化ルテニウム膜の上に金属酸化物膜を形成することを特徴とする膜パターンの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−37766(P2009−37766A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199008(P2007−199008)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】