説明

膜形成方法および膜形成装置

【課題】担持体上に形成したポリシラザン膜を転写することにより、基板表面に良好な膜を形成することのできる技術を提供する。
【解決手段】ポリシラザン材料を含む塗布液が表面に塗布されてなる薄膜Rを担持するシートフィルムFを処理チャンバ1内に収容し、処理チャンバ1内を排気する。加熱ヒータ541によってシートフィルムFを所定温度に加熱しつつ、処理チャンバ1内に酸素を含む硬化促進ガスを導入して薄膜Rの粘度を増大させる。その後、ガスの供給を停止するとともに処理チャンバ1内を再び排気することで硬化促進ガスを除去し、硬化の進行を抑制する。この状態で、シートフィルムF上の薄膜Rと基板Wとを密着させ加圧することで、薄膜Rを基板Wに転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板の表面にポリシラザン膜を形成する膜形成方法および膜形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばシリコン半導体基板のような基板の表面に良質の保護膜を形成する技術として、基板表面にポリシラザン膜を形成し、これを例えば加熱することによりシリコン酸化膜に変化させる技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載の技術では、過水素化シラザン重合体溶液を半導体基板の表面に塗布して溶媒を揮発させることでポリシラザン膜を形成し、不純物除去後にアニール処理を行うことでポリシラザン膜をシリコン酸化膜に変化させている。
【0003】
また、基板の表面に薄膜を形成する他の技術として、例えば樹脂製のシートフィルムからなる担持体の表面に薄膜を形成し、これを基板に密着させて加圧することで薄膜を基板に転写した後、基板に薄膜が転写されてなる積層体から担持体だけを剥離させる技術がある。例えば、特許文献2に記載の技術では、シートフィルム上に薄膜材料を塗布して乾燥させることによって薄膜を形成し、これを基板表面に押圧することで、基板に薄膜を転写している。
【0004】
このような膜転写技術は、例えば特許文献3に記載されているように、半導体基板表面に設けた溝(トレンチ)を保護膜で覆うことによってエアギャップを形成する場合にも適用可能である。このような膜転写技術に用いる材料として、上記したポリシラザン膜を採用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−171231号公報(例えば、段落0029)
【特許文献2】特開2010−050183号公報(例えば、図2)
【特許文献3】特開2009−135172号公報(例えば、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ポリシラザン膜は材料自身が常温付近で高い流動性を有しているため、溝を設けた基板に膜を押圧した際に膜材料が溝の内部まで浸入し、溝が埋まってしまうことがあった。また、特許文献1等に記載されたポリシラザン膜を使用する技術では、加熱処理することで膜をシリコン酸化膜に変化させ硬化させることが用いられているが、このように硬化した後では該膜を基板に転写することが困難である。また、膜の担持体として例えば樹脂製のシートフィルムを用いる場合には加熱処理の条件が限定されてしまう。
【0007】
このように、担持体上に形成したポリシラザン膜を基板表面に転写することで良質の膜を形成することができる可能性があるものの、具体的にそれを可能とする技術についてはこれまで確立されるに至っていなかった。
【0008】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板の表面にポリシラザン膜を形成する技術において、担持体上に形成したポリシラザン膜を転写することにより、基板表面に良好な膜を形成することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明にかかる膜形成方法は、上記目的を達成するため、ポリシラザンまたはその原料物質を含む塗布液が膜状に塗布されたシート状の担持体を、酸素および水蒸気の少なくとも一方を含む硬化促進ガス雰囲気中で加熱して、前記塗布液の膜表面における硬化を促進させる硬化促進工程と、前記膜の周囲雰囲気から前記硬化促進ガスを除去する、または前記膜の温度を低下させることによって、前記膜表面の硬化を抑制する硬化抑制工程と、前記硬化抑制工程後に、前記膜の表面を基板の表面に密着させて前記膜を前記基板に転写する転写工程とを備えることを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明では、担持体に塗布されたポリシラザンまたはその原料物質を含む塗布液の膜に対して、硬化促進ガス雰囲気中で加熱することにより一時的に硬化、特に硬化促進ガスに触れる膜の表面の硬化が促進され、その後で硬化促進が停止される。そして、こうして膜の粘度がある程度増大された状態で、かつ粘度の増大の進行が抑制された状態で膜が基板に転写される。
【0011】
塗布液が塗布されたままの状態では膜表面の粘度が非常に低いため、例えばトレンチが形成された基板に対してはトレンチの内部にまで膜材料が浸入してしまい、エアギャップを維持した状態で膜を転写することが困難である。一方、硬化が進んだ膜では基板への転写性が悪く、また担持体からの剥離性も悪いため、基板上に良質の膜を形成することが難しい。
【0012】
これに対して、本発明では、膜の硬化を一時的に促進させた後、膜の硬化を抑制した状態で転写を行う。このため、転写時の膜表面の粘度を適度に、かつ制御性よく維持して転写を行うことができ、基板表面に良好な膜を形成することができる。例えばトレンチが形成された基板に対しては、膜表面の粘度を適度に増大させた状態で密着させることにより、エアギャップを維持した状態で膜を基板に転写することができる。
【0013】
より具体的な態様としては、例えば、硬化促進工程では、塗布液を塗布された担持体をチャンバに収容して該チャンバ内を減圧した後、チャンバ内に硬化促進ガスを導入する一方、硬化抑制工程では、チャンバ内を再び減圧して硬化促進ガスを排気するようにしてもよい。担持体を収容したチャンバ内に硬化促進ガスを導入することで膜の硬化を促進することができる一方、該ガスをチャンバから排気することで、硬化を抑制することができる。これにより、転写前の膜表面を転写に好適な粘度として転写を行うことができる。また、膜の周囲雰囲気を管理することで、膜に不純物やゴミが付着するのを防止することができる。
【0014】
ここで、例えば、硬化促進工程では、硬化促進ガスの組成および圧力の少なくとも一方を調整することで膜の硬化を制御するようにしてもよい。これらはいずれもポリシラザン膜の硬化の進行度合いに影響するパラメータであり、かつその制御が比較的容易なものである。これらを制御することにより、転写時の膜表面の粘度を適度に調整して、良好な膜を基板に転写することが可能となる。
【0015】
また、例えば、硬化促進工程では、担持体の加熱温度を180℃以下とすることができる。硬化促進ガス雰囲気下であれば、この程度の温度でもポリシラザンの硬化が進行することが確認されている。また、このような比較的低温での加熱に留めることにより、担持体として例えば樹脂製のシートフィルムを使用することが可能となる。このため、膜形成のコストおよび作業性を向上させることができる。
【0016】
また、例えば、膜の硬化促進を開始してから膜の表面を基板の表面に密着させるまでの間、担持体に一定の張力を付与するようにしてもよい。こうすることで、担持体上に形成され基板に転写される膜に生じるシワや損傷を防止することができる。このことは、特に前記したようにシートフィルム状の担持体を用いる場合に有効である。
【0017】
また、例えば、転写工程では、基板の下面を膜の表面に密着させて転写するようにしてもよい。例えばトレンチを形成された基板に膜を転写する場合、トレンチを上向きにした基板を上から覆うように膜を転写すると、膜は完全に硬化しているわけではないので、重力により垂れ下がってトレンチを埋めてしまい、エアギャップが塞がれたり断面積が小さくなってしまうことがある。基板の表面を下向きにすることで、このような問題が防止される。
【0018】
また、例えば、担持体への塗布液の塗布と、硬化促進工程とを同一のチャンバ内で行うようにしてもよい。こうすることで、塗布液の塗布から表面の硬化までを雰囲気管理下で行うことができるので、基板に転写される膜の品質を良好に維持することができる。さらに転写工程までを同一チャンバ内で行うようにすれば、その効果はさらに大きくなる。
【0019】
この発明にかかる膜形成装置は、上記目的を達成するため、ポリシラザンまたはその原料物質を含む塗布液が膜状に塗布されたシート状の担持体を、前記塗布液が塗布された面を上向きに略水平状態に保持する担持体保持手段と、前記担持体保持手段に保持された前記担持体を加熱するとともに、該担持体表面に塗布された前記塗布液の膜に対して、酸素および水蒸気の少なくとも一方を含む硬化促進ガスを供給して、前記塗布液の膜表面における硬化を促進させる硬化促進手段と、前記担持体表面の前記膜に基板を密着させて、前記膜を前記基板に転写する転写手段と、前記硬化促進手段により前記担持体の加熱および前記膜への前記硬化促進ガスの供給を行わせた後、該加熱および前記硬化促進ガスの供給の少なくとも一方を停止させ、その後に、前記転写手段により前記膜を前記基板に転写させる制御手段とを備えることを特徴としている。
【0020】
このように構成された発明では、担持体に塗布されたポリシラザンまたはその原料物質を含む塗布液の膜に対して、硬化促進ガス雰囲気中での加熱により一時的に硬化促進が行われる。そして、こうして膜の粘度がある程度増大された状態で、かつ粘度の増大の進行が抑制された状態で膜が基板に転写される。このため、転写時の膜表面の粘度を適度に、かつ制御性よく維持して転写を行うことができ、基板表面に良好な膜を形成することができる。例えばトレンチが形成された基板に対しては、膜表面の粘度を適度に増大させた状態で密着させることにより、エアギャップを維持した状態で膜を基板に転写することができる。
【0021】
ここで、制御手段は、例えば、硬化促進ガスの組成および圧力の少なくとも一方を調整することで膜の硬化を制御するようにしてもよい。これらはいずれもポリシラザン膜の硬化の進行度合いに影響するパラメータであり、その制御が比較的容易である。これらを制御することにより、転写時の膜表面の粘度を適度に調整して、良好な膜を基板に転写することができる。
【0022】
また、この発明にかかる膜形成装置の他の態様は、上記目的を達成するため、ポリシラザンまたはその原料物質を含む塗布液が膜状に塗布されたシート状の担持体を、前記塗布液が塗布された面を上向きに略水平状態に保持する担持体保持手段と、前記担持体保持手段に保持された前記担持体を加熱するとともに、該担持体表面に塗布された前記塗布液の膜に対して、酸素および水蒸気の少なくとも一方を含む硬化促進ガスを供給して、前記塗布液の膜表面における硬化を促進させる硬化促進手段と、前記硬化促進手段からの前記硬化促進ガスの供給停止後、前記膜表面の周囲雰囲気から前記硬化促進ガスを除去する除去手段と、前記担持体表面の前記膜に基板を密着させて、前記膜を前記基板に転写する転写手段とを備えることを特徴としている。
【0023】
このように構成された発明では、塗布液の膜が形成された基板が硬化促進ガス雰囲気下で加熱されることにより、特に硬化促進ガスに触れる膜表面の硬化が一時的に促進される。そして、硬化促進ガスの除去によってさらなる膜の硬化が抑制されるので、膜表面が適度な粘度を維持した状態で膜と基板とを密着させることができる。このため、転写時の膜表面の粘度を適度に、かつ制御性よく維持して転写を行うことができ、基板表面に良好な膜を形成することができる。
【0024】
この場合において、例えば、担持体保持手段に保持された担持体および基板を収容する処理空間を有するチャンバを備え、硬化促進手段は処理空間内に硬化促進ガスを供給する一方、除去手段は処理空間から硬化促進ガスを排気するように構成することができる。チャンバの処理空間に硬化促進ガスを供給して膜の硬化を促進することができる一方、処理空間から硬化促進ガスを排気して硬化の進行を抑制することができる。このように、硬化促進手段と除去手段とがチャンバ内の雰囲気制御を行うことによって、膜の硬化の進行度合いを適正に制御することが可能である。
【0025】
さらに、例えば、転写手段は、処理空間内で膜を基板に転写するようにしてもよい。こうすることで、膜が基板に転写されるまでの雰囲気制御が容易となり、不純物やゴミの混入のない良質の膜を基板に形成することが可能となる。
【0026】
本発明にかかる膜形成装置において、硬化促進手段は、例えば、加熱された硬化促進ガスを膜に供給するようにしてもよい。このようにすると、硬化促進ガスを供給することで同時に加熱も行われるので、別途担持体を加熱するための構成を必要としない。また、加熱温度の制御もしやすくなる。
【0027】
あるいは、硬化促進手段は、例えば、担持体を加熱するためのランプを備えるようにしてもよい。ランプ加熱によってポリシラザンの硬化を促進することが可能であり、また熱源としてのランプはチャンバに組み込むことが容易であるので、比較的簡単な装置構成で上記作用効果を得ることが可能である。
【0028】
また、担持体保持手段は、膜の硬化促進を開始してから膜の表面を基板の表面に密着させるまでの間、担持体に一定の張力を付与した状態で保持するようにしてもよい。こうすることにより、粘度の増大する膜にシワが寄ったりクラックが生じるのを未然に防止することができる。その結果、担持体として柔軟なシート材、例えば樹脂性シートフィルムを使用することが可能となり、基板への膜の転写後の剥離作業の利便性を大きく向上させることができる。
【0029】
また、この発明においては、例えば、膜を上向きにして担持体を保持し、基板の下面を膜の表面(すなわち上面)に密着させるようにして転写を行ってもよい。転写は膜が完全に硬化しない状態で行う必要がある一方、このような流動性を維持した膜は、例えばトレンチが形成された基板に密着されたときにトレンチを埋めてしまうおそれがある。特に、基板を下に、膜を上にして転写を行った場合には、転写された膜が重力により垂れ下がって基板のトレンチを埋めてしまう可能性が高い。一方、基板の下面に膜を転写すれば、重力による垂れ下がりが生じないためトレンチが埋まることが比較的容易に回避可能であり、これにより良質なエアギャップを形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、担持体表面にポリシラザン膜の材料を含む塗布液を塗布し、硬化促進ガス雰囲気中で加熱することで膜表面の粘度を調整し、硬化の促進を停止させてから基板への転写を行うので、基板表面に良好なポリシラザン膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明にかかる半導体装置の製造方法の概要を示すフローチャートである。
【図2】リング体の構造を示す分解組立斜視図である。
【図3】本発明の実施に好適な塗布装置の構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施に好適な転写装置の構成例を示す図である。
【図5】転写装置における動作を示すフローチャートである。
【図6】転写装置の動作を模式的に示す第1の図である。
【図7】転写装置の動作を模式的に示す第2の図である。
【図8】塗布および硬化促進処理を連続的に行う処理装置の構成例である。
【図9】図8の処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】硬化促進処理を実行する他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1はこの発明にかかる半導体装置の製造方法の概要を示すフローチャートである。この半導体装置の製造方法は、表面にトレンチ(溝)を形成した半導体基板の表面をシリコン酸化膜で被覆して、トレンチの壁面およびシリコン酸化膜で囲まれたエアギャップを有する半導体装置を製造する方法である。そして、半導体基板の表面にシリコン酸化膜を形成する前段階としてのポリシラザン膜を半導体基板の表面に形成するために、本発明にかかる膜形成方法が適用されている。
【0033】
図1の処理では、まず最初に、一時的なポリシラザン膜の担持体として機能する樹脂製のシートフィルムを準備する。そして、シートフィルムの一方表面にポリシラザンまたはその原料物質を含む塗布液をスピンコート法により塗布して、シートフィルム表面にポリシラザン膜を形成する(ステップS101)。ポリシラザンは、
−(SiH−NH)−
を基本構造とする高分子材料である。シートフィルムとしては、比較的熱に強く化学的に安定な樹脂材料、例えばポリエチレン(PE)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)などを好適に用いることができる。
【0034】
塗布液の塗布後、塗布液を乾燥させる。すなわち、シートフィルムに塗布された塗布液に含まれる溶剤を揮発させる。これにより、シートフィルムには表面(上面)にポリシラザンを含む薄膜が担持されることとなる。溶剤の大部分が揮発した状態であっても、一般的にポリシラザン膜は常温で高い流動性を有する。したがって、この状態のまま薄膜を基板に密着させた場合、基板表面に形成されたトレンチの内部まで膜材料が入り込み、トレンチが埋まってしまうおそれがある。
【0035】
そこで、この実施形態では、塗布によりシートフィルム表面に形成されたポリシラザン薄膜を、その硬化を促進させる性質を有するガス(硬化促進ガス)として例えば酸素を含む雰囲気下で加熱し膜表面の硬化を促進させることで、転写時にトレンチに埋め込まれてしまうことがないようにする(ステップS102;硬化促進処理)。これにより、ポリシラザンはシロキサンに変化し化学的に安定するが、表面の硬化が進みすぎると基板への転写性が低下してしまうので、硬化の進行度合いを適切に制御することが必要である。
【0036】
そのためには、硬化促進のための処理条件を確立することに加えて、膜表面が適度の粘度となった段階で硬化を抑制するための処理を行い、過度の硬化を防止する必要がある。そこで、この実施形態では、所定の処理条件で硬化促進処理を行った後、それを停止するための処理を行う(ステップS103)。硬化促進のための処理条件および硬化促進を停止するための処理の具体的な内容については後に説明する。
【0037】
こうして表面の粘度が適度に制御されたポリシラザン膜を基板表面に密着させて加圧することで、膜を基板表面に転写する(ステップS104)。続いて、こうして一体化された、シートフィルム、ポリシラザン薄膜および基板からなる積層体から、シートフィルムのみを剥離させる(ステップS105)。こうして基板と薄膜からなる積層体が得られる。
【0038】
図示を省略しているが、こうして得られた積層体に適宜の熱処理を施すことで、ポリシラザンからシロキサンへの化学反応が進み、最終的に薄膜は非常に緻密な酸化シリコン膜に変化する。こうして形成された酸化シリコン膜は、機械的強度および耐電圧に優れた絶縁膜として機能する。
【0039】
なお、この製造方法においては、基板に転写される前のポリシラザン膜を一時的に担持する担持体として樹脂製のシートフィルムを用いる。このようなシートフィルムは折れ曲がったり撓んだりしやすいが、これにより表面に形成された薄膜も変形したり断裂したりするおそれがある。そのため、少なくとも塗布液の塗布終了から転写を開始するまでの期間においては、シートフィルムを緊張させた状態に維持することが好ましい。以下に説明するように、この実施形態では、シートフィルムを上下2分割可能なリング体によって支持する。このリング体は特許文献2に記載された薄膜形成システムでも扱うことができるものである。
【0040】
図2はリング体の構造を示す分解組立斜視図である。このリング体RFは、上部リングRupと下部リングRlwとで樹脂製のシートフィルムFの周縁部を挟み込むことによってシートフィルムFを保持したものである。上部リングRupおよび下部リングRlwは例えばアルミニウムにより同一径に形成された円環であり、このうち上部リングRup上面の一部には4枚の磁性体(例えば鉄または鉄系合金)材料からなるプレート91が取り付けられている。このプレート91は、リング体RFの搬送の際、図示しない搬送手段によりリング体RFを吸着保持するのに用いられる。
【0041】
また、上部リングRupには上記プレート91とは異なる位置に複数の永久磁石92が埋め込まれる一方、下部リングRlwにも同数の永久磁石93が埋め込まれている。永久磁石92と永久磁石93とは、上部リングRupと下部リングRlwとを重ね合わせたときに互いに相対する位置に取り付けられるとともに、互いに引き合う極性となっている。このため、上部リングRupおよび下部リングRlwが直接またはシートフィルムFを挟んで重ね合わせられると、永久磁石の吸着力によって上下リングが一体化される。
【0042】
上部リングRupおよび下部リングRlwの外周面の各1箇所に、位置決め用の切り込み部94,95が設けられている。また、上部リングRupには複数の貫通孔96が穿設される一方、下部リングRlwにも複数の貫通孔97が設けられている。上部リングRupの貫通孔96と、下部リングRlwの貫通孔97とは互いに異なる位置に設けられており、上部リングRupと下部リングRlwとを一体化させたときにそれぞれの貫通孔が重なり合うことがないようになっている。このように配置された貫通孔96,97に突き出しピン(図示せず)を挿入し押圧することで、永久磁石の吸着力に打ち勝って上下リングを分離させることができる。
【0043】
次に、上記した各工程を実施するのに好適な装置の具体的構成について順次説明する。上記各工程は、基本的には前述の特許文献1および2に記載の装置構成あるいはそれを部分的に改変したものによって実行することが可能であるが、以下に説明する装置は、上記した各工程を実行するのに特に適した構成を有するものである。
【0044】
図3は本発明の実施に好適な塗布装置の構成例を示す図である。より具体的には、この塗布装置100は、上記した製造方法(図1)のうちステップS101を好適に実行可能な装置である。図3(a)に示すように、この塗布装置100は、略鉛直軸周りに回転自在の支軸102に支持された略円板状のステージ101を備えている。ステージ101の上面周縁部には中央部分101aよりも低くなった段差部101bが設けられている。図3(b)に示すように、この段差部101bにシートフィルムを保持するリング体の下部リングRlwが嵌まり込むようになっており、このとき下部リングRlwの上面とステージ中央部分101aとが同一平面となる。
【0045】
ステージ101の回転中心の上方には、図示を省略する塗布液貯留部から通送される、ポリシラザン材料を含む塗布液を吐出する塗布ノズル103が設けられている。図3(b)に示すように、ステージ101に下部リングRlwが取り付けられるとともにシートフィルムFが載置された状態でステージ101が回転し、シートフィルムFの上面に対して、塗布ノズル103からポリシラザンまたはその材料物質を含む塗布液Pが供給される。塗布液Pは遠心力の作用によってシートフィルムFの上面に薄く均一に塗り広げられる。
【0046】
一方、ステージ101の周縁部の上方にはエッジリンスノズル104が設けられており、ステージ101に載置されたシートフィルムFの周縁部に向けてリンス液Lを供給する。エッジリンスノズル104からのリンス液の吐出方向をステージ101の回転中心から見て径方向外向きにすることで、周縁部以外にリンス液が付着するのを防止することができる。これにより、周縁部の塗布液Pは洗い流されて、塗布の終了後には、図3(c)に示すように、周縁部を除くシートフィルムFの中央部分にポリシラザンによる薄膜Rが形成される。ここに上部リングRupが搬入されて下部リングRlwと結合されることにより、薄膜Rが形成されたシートフィルムFを上下リングRup,Rlwで挟み込んでなるリング体RFが構成される。薄膜Rの基板への転写が終了するまでの間、シートフィルムFはこのリング体RFの状態で搬送される。
【0047】
図4は本発明の実施に好適な転写装置の構成例を示す図である。より具体的には、この転写装置は、上記した製造方法(図1)のうちステップS102ないしS104を好適に実行可能な装置であり、図4はその内部構造を横から見た図である。この装置では、処理チャンバ1の内部に形成される処理空間内に転写ユニットが設置されており、基板表面への薄膜形成は、減圧された処理空間内でこの転写ユニットにより行われる。説明の便宜上、図4に示すようにX、Y、Zの各方向を定義する。この転写装置の主要な構成は、本願出願人が先に開示した特開2010−192516号公報に記載されたものと同様であり、特に基板を保持するための機構および基板に薄膜を押し付けるための機構については当該公報に記載されたものを利用可能であるので、これらの詳細な構造については説明を省略する。
【0048】
この転写ユニットは、処理チャンバ1を構成する上板11に固定された上側ブロック3と、底板19に固定された下側ブロック5とを備えており、薄膜形成対象である基板Wと、薄膜材料を塗布された薄膜担持体としてのシートフィルムFとを上下ブロック3、5で挟み込むことにより、シートフィルムF上の薄膜を基板Wに転写する。
【0049】
なお、以下の説明において、各構成要素に付した符号が「3」から始まるものは当該要素が上側ブロック3を構成するものであることを意味する一方、「5」から始まるものは当該要素が下側ブロック5を構成するものであることを意味するものとする。
【0050】
処理空間SP内は、排気管851を介して処理チャンバ1と接続された真空ポンプ85によって真空排気可能になっている。この真空ポンプ85は装置全体を制御する制御ユニット81に制御されており、制御ユニット81からの動作指令に応じて作動して処理空間SP内を排気減圧することができるようになっている。また、制御ユニット81は真空ポンプ85による処理空間SPからの排気量を調整し、処理空間SP内の圧力(真空度)を制御可能となっている。
【0051】
また、処理チャンバ1は、制御ユニット81により開閉制御されるバルブ(図示省略)を介して酸素ガス供給源87および窒素ガス供給源88に接続されている。このため、処理チャンバ1内には必要に応じて酸素ガスおよび窒素ガスを導入可能となっている。制御ユニット81は、処理チャンバ1内の雰囲気の組成およびその圧力を制御することが可能であり、処理チャンバ1内は大気圧から数Paまでの範囲内の所定の圧力に設定された組成制御された気体で満たされる。
【0052】
処理空間SPには、第1、第2プレート34、54が上下に対向して収容されている。第1プレート34は処理チャンバ1を構成する上板11の下面に固定された上ベース部材31によって水平に固定支持されており、第2プレート54の上方に位置している。第1プレート34は基板Wが装着される試料台を構成し、第2プレート54と対向する下面342が基板Wの装着面を形成している。第1プレート34の下面342は円形に形成されている。
【0053】
第1プレート34の下面342には、基板Wが装着される。第1プレート34は、内部に加熱手段として加熱ヒータ341を具備している。この加熱ヒータ341はヒータコントローラ83と電気的に接続されており、制御ユニット81からの基板温度情報に基づきヒータコントローラ83が加熱ヒータ341を25℃〜200℃の間で加熱制御する。なお、第1プレート34の下面342は石英板で形成されてもよい。
【0054】
ここで、薄膜形成対象となる基板Wとしては、例えば円板状に形成された半導体ウエハの表面に素子分離用のトレンチを形成したものを好適に使用可能であり、トレンチ形成面を下向きにして第1プレート34の下面342に装着される。
【0055】
処理チャンバ1の上面を構成する上板11には、処理対象となる基板Wを保持したり該保持を解除することができるとともに、基板Wを上下方向に昇降させることができる基板保持機構300が設けられている。この基板保持機構300では、複数本(この実施形態では2本)のリフタ344が昇降自在で、しかも水平方向に移動自在に支持されている。各リフタ344の下端部には爪部材345が固着されている。爪部材345はその上面が基板Wの周縁部と係合可能に仕上げられ、基板Wを爪部材345上に載置させることができる。基板保持機構300は、制御ユニット81からの制御指令に応じて、リフタ344に取り付けられた爪部材345を鉛直方向(Z方向)および水平方向(X方向)に所定距離だけ移動させる。これにより、基板Wの把持・解放および第1プレート34への押し付けが行われる。
【0056】
一方、第2プレート54は、移動方向Z(鉛直方向)に沿って昇降自在に設けられた昇降ユニット52に装備され、第1プレート34の下方に軸線を一致させて対向して配置されている。昇降ユニット52は底板19に取り付けられた下ベース部材51を有し、下ベース部材51上に第2プレート54が固定支持されている。第2プレート54はシートフィルムFが装着される転写板を構成し、第1プレート34と対向する上面542がシートフィルムFの装着面を形成している。第2プレート54の上面542は円形に形成されている。シートフィルムFは基板Wより大きい円形に形成され、その表面(薄膜形成面)には薄膜が形成されている。また、第2プレート54の上面542の平面サイズはシートフィルムFの平面サイズよりも小さく形成されている。第2プレート54の上面542は、石英板によって形成されている。また、第2プレート54には加熱手段として加熱ヒータ541が内蔵されている。この加熱ヒータ541はヒータコントローラ84と電気的に接続されており、制御ユニット81からの基板温度情報に基づきヒータコントローラ84が加熱ヒータ541を25℃〜200℃の間で加熱制御する。
【0057】
昇降ユニット52は、下ベース部材51の下面中央部に一体に垂設された支持軸513を有している。支持軸513は移動方向Zに沿って昇降自在に軸支され、加重モータ53によって昇降されるように構成されている。すなわち、支持軸513の下端には加重モータ53が接続されており、制御ユニット81からの動作指令に応じて加重モータ53が作動することで、昇降ユニット52を移動方向Zに沿って昇降させることができる。昇降ユニット52の昇降により、下ベース部材51上に支持された第2プレート54が移動方向Zに沿って昇降する。
【0058】
また、第1、第2プレート34、54の周囲には、一対のリングRup,Rlwを上下から挟み込んでリング体RFを保持する上クランプ35および下クランプ55が設けられている。上クランプ35および下クランプ55はそれぞれ、一対のリングRup,Rlwとほぼ同じ内径を有する円環状部材であり、これらがリング体RFを上下方向(移動方向Z)に挟んで保持する。
【0059】
上クランプ35および下クランプ55で保持されたリング体RF中のシートフィルムFは第1プレート34と第2プレート54との間に配置される。具体的には、薄膜が形成されたシートフィルムFの表面(薄膜形成面)が第1プレート34に対向する一方、シートフィルムFの裏面(非薄膜形成面)側が第2プレート54に対向するように、リング体RFが上下クランプにより挟持される。
【0060】
2つのクランプのうち下クランプ55は、底板19に立設された複数本(この実施形態では3本)の円柱体よりなるクランプ受け555上に水平姿勢で支持される。クランプ受け555は第2プレート54の上面542の中心を通り移動方向Zに伸びる軸(以下、単に「中心軸」という)J回りに互いに等角度(120°)間隔で放射状に配置されている。下クランプ55の上面周縁部(円環部)にはリング体RFの下端部(下リングRlw)を収容可能な内部に向けて窪んだ窪部が形成されている。そして、リング体RFの下端部を窪部に収容させることによって、窪部の周囲を取り囲む周面部によってリング体RFの水平方向の移動を規制することができる。
【0061】
また、下ベース部材51上には、複数本(この実施形態では3本)の突き当てピン56が中心軸J回りに互いに等角度(120°)間隔で放射状に、しかも円周方向に沿ってクランプ受け555の間に位置するように立設されている。一方、下クランプ55の下面には各突き当てピン56に対応して突き当てピン56の先端部を挿入させることが可能なピン挿入孔553が形成されている。このため、昇降ユニット52が上昇駆動されると、突き当てピン56の先端部がピン挿入孔553に挿入されるとともに、突き当てピン56の先端部と後端部との間に形成された段差面が下クランプ55の下面と当接する。これにより、突き当てピン56と下クランプ55とが互いに係合する。この状態で昇降ユニット52がさらに上昇駆動されると、下クランプ55がクランプ受け555から離れ、突き当てピン56と下クランプ55とが係合した状態で一体的に上昇する。これにより、第2プレート54とリング体RFとが一定の位置関係を保ったまま上昇する。
【0062】
下クランプ55の下面周縁部には下クランプ55の水平方向における位置を固定するために、複数本の位置決めピン514が下方に延びるように取り付けられている。これら位置決めピン514は下ベース部材51に移動方向Zに沿って形成された貫通孔512に挿通されている。位置決めピン514と貫通孔512の内壁との間にはボールスプライン機構等が介在しており、位置決めピン514はボールスプライン機構等を介して移動方向Zに沿ってのみ可動(昇降)自在に支持される。つまり、下クランプ55は移動方向Zに直交する方向(水平方向)に移動するのを規制されながら下ベース部材51に対して移動方向Zに沿って昇降自在に支持される。このような構成によれば、昇降ユニット52(第2プレート54)を移動方向Zに沿って移動させたとしても、水平方向において第2プレート54と下クランプ55との間の相対位置関係を確実に固定することができる。また、第2プレート54と下クランプ55(およびそれに支持されるリング体RF)とが互いに水平方向にずれるのを防止することができる。
【0063】
また、もう一方のクランプ、つまり上クランプ35は昇降自在に支持された複数本のロッド356の下端に固着されている。この実施形態では、3本のロッド356が中心軸J回りに互いに等角度(120°)間隔で放射状に、上クランプ35から上方に伸びるように設けられている。複数本のロッド356の各々には、上クランプ35を移動方向Zに沿って昇降駆動させるためのエアシリンダ357が連結されている。そして、制御ユニット81からの動作指令に応じてエアシリンダ357が作動することで、上クランプ35を移動方向Zに沿って昇降させることができる。具体的には、上クランプ35を上昇させて第2プレート54に対するリング体RFの搬入出を可能とする一方、上クランプ35を下降させて下クランプ55とでリング体RFを挟持して固定することができる。
【0064】
このエアシリンダ357は、処理チャンバ1の外部に突設された支柱311により固定された円板状のトッププレート312に配設されており、エアシリンダ357から発生するパーティクル等の汚染物質が処理空間SP内に混入するのを防止することができる。なお、上クランプ35を昇降駆動させる駆動機構としては、エアシリンダに限らず、エアシリンダ以外の他の昇降駆動用アクチュエータを用いるようにしてもよい。
【0065】
また、エアシリンダ357と、該エアシリンダ357に圧縮空気を供給するための圧縮空気供給源(図示省略)との間には調圧弁358が介装されている。そして、制御ユニット81からの動作指令に応じて調圧弁358の開度が調整されることにより、ロッド356の推力を一定に保つことが可能となっている。この実施形態では、支持軸513が移動方向Zにおいて受ける加重圧力を検出する荷重センサ86が設けられており、荷重センサ86によって検出された加重圧力に基づいて制御ユニット81が調圧弁358の開度を調整し、ロッド356の推力を一定に保つようにフィードバック制御する。これにより、下クランプ55に載置されたリング体RFを上クランプ35により一定の押圧力で押圧することができる。すなわち、リング体RFに装着されたシートフィルムFを上方から一定の押圧力で押圧することが可能となっている。
【0066】
図5は転写装置における動作を示すフローチャートである。また、図6および図7は転写装置の動作を模式的に示す図である。最初に、表面にポリシラザン膜が形成されたシートフィルムF、実際にはシートフィルムFが上下リングRup,Rlwにより挟持されてなるリング体RFと、膜の転写対象である基板Wとを処理チャンバ1内に搬入する(ステップS201)。このとき、図6(a)に示すように、基板Wはトレンチ形成面を下向きにして第1プレート34の下面342に密着保持される。
【0067】
一方、処理チャンバ1内に搬入されたリング体RFは上クランプ35および下クランプ55により挟持される。次いで第2プレート54が上昇し、図6(b)に示すように、シートフィルムFの中央部分が第2プレート54の上面542により上方へ押し上げられ、これによりシートフィルムFに張力が付与される。上下方向(Z方向)における第2プレート54と下クランプ55との位置関係は突き当てピン56によって規定されて、シートフィルムFに付与される張力は一定となっている。なお、図6(b)および(c)では、各部の状態を見やすくするために上下クランプの図示を省略している。
【0068】
この時点では、シートフィルムFに担持されたポリシラザン薄膜Rは塗布後の流動性の高い状態である。そこで、膜Rの粘度を調整するために、前記した硬化促進処理を実行する。具体的には、シートフィルムFおよび基板Wを収容した状態で、処理チャンバ1内を例えば200Pa程度まで減圧する(ステップS202、図7(a))。この減圧は、以降の処理での雰囲気制御をしやすくするとともに、予め処理チャンバ1内から空気を排除しておくことによって、酸素との反応により進行するポリシラザン膜の硬化度合いを確実に管理するためである。減圧に先立って、処理チャンバ1内に窒素ガス供給源88から窒素ガスを導入してチャンバ内の酸素をパージしておくようにしてもよい。
【0069】
続いて、第2プレート54に設けられた加熱ヒータ541によって第2プレート54を昇温させ、シートフィルムFおよびこれに担持された薄膜Rを加熱する(ステップS203)。この時点では周囲雰囲気の酸素濃度が低いため、薄膜Rの硬化はほとんど進行しない。
【0070】
薄膜Rの温度が所定の温度に達すると、酸素ガス供給源87から酸素を処理チャンバ1内に導入する(ステップS204、図7(b))。このときの処理チャンバ1内の圧力は制御ユニット81および真空ポンプ85によって管理されており、例えば2000Pa程度とすることができる。こうして薄膜Rを酸素を含む雰囲気下で加熱することにより、ポリシラザンのシロキサンへの化学変化が進み、膜の硬化が進行する。加熱温度および雰囲気中の酸素量(圧力)を管理することにより、硬化の進行度合いを制御することができる。
【0071】
なお、ポリシラザンを硬化させるという目的からは、酸素を含む雰囲気下で加熱することが要件となる。この意味において、処理チャンバ1内の雰囲気は純粋な酸素である必要は必ずしもない。例えば酸素ガス供給原87および窒素ガス供給源88からそれぞれ供給される酸素と窒素との混合気体であってもよく、空気であってもよい。これらの場合、雰囲気中の酸素の分圧を管理することにより硬化度合いを制御することができる。また、酸素と同じくポリシラザンに対する硬化促進作用を有する水蒸気をこれらの雰囲気に添加してもよい。
【0072】
この状態を所定時間維持した後(ステップS205)、酸素ガス供給源87からの酸素供給を停止し、これとともに処理チャンバ1内を再び減圧することで(200Pa以下)、処理チャンバ1内から酸素を排除する(ステップS206、図7(c))。これにより膜の硬化の進行を抑制する。硬化の進行を抑制するためには、周囲雰囲気から酸素を除去する、または膜温度を低下させることが考えられるが、より急速に硬化を停止させられるという点において、酸素を除去する方法が好ましい。また、基板への転写性を確保するという点からは、薄膜を加熱しておくことが望ましく、この点からも酸素を除去する方法が好ましい。
【0073】
続いて第1のプレート34に設けられた加熱ヒータ341により基板Wも加熱し(ステップS207)、この状態でシートフィルムF上の膜Rと基板Wとを密着させ加圧することで、膜を基板に転写する(ステップS208)。具体的には、図6(c)に示すように、加重モータ53を作動させてリング体RFと第2プレート54とを一体的に上昇させてシートフィルムF上の膜Rと基板Wとを密着させ、荷重センサ86により計測される荷重が所定値となるように加圧した状態を一定時間継続する。
【0074】
その後、加熱ヒータ341,541による加熱を停止し、爪部材345による基板Wの保持を解除した後に第2プレート54を下降させ第1プレート34から離間させる(ステップS209)。このとき、基板Wの保持が解除され、しかもシートフィルムF上の薄膜Rが基板Wに転写された状態となっているため、基板WはシートフィルムFの上面に貼り付いたままリング体RFと一体となって下降することになる。
【0075】
こうして基板Wと一体化されたリング体RFを図示しない剥離装置へ移送し(ステップS210)、薄膜Rを基板W上に残してシートフィルムFのみを剥離する。この場合の剥離装置としては、例えば本願出願人が先に開示した特開2009−239072号公報に記載された装置をそのまま好適に適用することができるので、ここでは剥離装置の構成およびその動作についての説明を省略する。
【0076】
次に、硬化促進処理の処理条件について説明する。本願発明者は、このような硬化促進処理の処理条件を種々変更して膜の硬化度合いを評価した。具体的には、半導体用途向けに市販されているペルヒドロポリシラザン溶液を塗布液として用い、種々の条件で硬化促進処理を行った後に膜を基板に転写して、膜がトレンチに埋め込まれることなくエアギャップを形成することができるか否かを評価した。硬化促進ガスとしては、水蒸気を添加した空気を用いた。
【0077】
その結果、例えばポリシラザン膜の膜厚が100nmないし150nm程度の場合には、膜温度175℃、チャンバ圧力10000Pa(酸素分圧約2000Pa)で300秒程度の硬化促進処理を行い、転写時の加重値を5kgf、加圧時間を60秒としたとき、膜がトレンチに埋め込まれることなくエアギャップが形成された。硬化促進処理における温度が上記より低いとトレンチへの膜の埋め込みがみられ、エアギャップが形成されなかった。また、硬化促進処理の時間(酸素雰囲気に曝露する時間)が短い場合も埋め込みが生じる一方、処理時間が長いと基板への転写性が著しく低下し、膜が基板に接着しなかったり、シートフィルムから剥離できないという問題があった。
【0078】
また、例えばポリシラザン膜の膜厚が300nmないし400nm程度の場合には、膜を適度な粘度まで硬化させるのにはより硬化が進むような条件が必要となり、具体的には膜温度180℃、処理時間300秒ないし420秒程度が好適であった。上記例と同様に、膜温度が低かったり処理時間が短いと埋め込みが発生し、処理時間が長いと転写性が低下するという傾向がみられた。なお、膜温度を180℃よりも高くしようとすると、シートフィルム自体の熱による劣化が生じる。
【0079】
以上のように、この実施形態では、ポリシラザン膜の材料物質を含む塗布液をシートフィルムに塗布した後、管理された環境下で膜の硬化を促進させる硬化促進処理を行い、さらに硬化の促進を停止する処理を行って硬化の進行を抑制してから膜を基板に転写する。具体的には、ポリシラザンに対する硬化促進作用を有する酸素または水蒸気を含む硬化促進ガス雰囲気下で膜を加熱することによりポリシラザン膜の硬化を促進させる。このとき、雰囲気の組成、圧力、加熱温度、処理時間等の処理条件を管理することで硬化の進行度合いを制御するとともに、処理後は直ちに硬化促進を停止させることで、過度の硬化の進行を防止する。
【0080】
こうして適度に硬化が進行し粘度が増大された膜を基板に転写することで、基板に形成されたトレンチを埋めることなく、また転写性を損なうことなく良質の膜を基板に転写することが可能である。
【0081】
また、この実施形態の硬化促進処理では、処理チャンバ内に組成および圧力を制御された硬化促進ガスを一定時間導入した後、チャンバ内の雰囲気を排気することで、硬化の促進を停止している。硬化の促進を停止する方法として硬化促進ガスを排気することにより、硬化の進行を素早く止めることができ、膜の粘度を適正に制御することが可能である。
【0082】
また、この実施形態では、ポリシラザン膜の硬化促進と基板への転写を同一の処理チャンバ1内で連続的に行っている。このようにすることで、硬化から転写までの周囲雰囲気の管理が容易となり、転写時における膜の粘度をより的確に制御することが可能となる。また、基板に転写される膜に不純物が混入することも回避される。
【0083】
また、シートフィルムFに一定の張力を付与した状態で膜の硬化促進および転写を行うことにより、シワや断裂のない高品質の膜を形成し基板に転写することができる。
【0084】
また、トレンチを形成された基板のトレンチ形成面を下向きにした状態で膜の転写を行うことにより、流動性を有する膜が重力の作用で垂れ下がりトレンチを埋めることが効果的に防止される。
【0085】
以上説明したように、この実施形態では、本発明の「担持体」として機能するシートフィルムFを保持する上下リングRup,Rlw、上下クランプ35,55等が一体として本発明の「担持体保持手段」として機能している。また、酸素ガス供給源87、真空ポンプ85、加熱ヒータ541等が一体として本発明の「硬化促進手段」として機能しており、制御ユニット81が本発明の「制御手段」として機能している。また、真空ポンプ85は本発明の「除去手段」としての機能も有する。
【0086】
また、第1のプレート34、第2のプレート54およびこれらを駆動する機構等が一体として本発明の「転写手段」として機能しており、処理チャンバ1が本発明の「チャンバ」として機能している。
【0087】
<第1の変形例>
上記した実施形態の構成では、塗布装置でシートフィルムFにポリシラザン材料を含む塗布液を塗布した後、シートフィルムFを転写装置に移送して硬化促進処理および転写処理を1つのチャンバ内で行っている。これに代えて、塗布液の塗布および硬化促進処理を1つのチャンバ内で連続的に行うようにすることも可能である。
【0088】
図8は塗布および硬化促進処理を連続的に行う処理装置の構成例である。図8(a)に示すように、この処理装置1000は処理チャンバ1100を備えており、その内部に、それぞれ略鉛直軸周りに回転自在の支軸1102,1107,1108が設けられている。支軸1102には上面にシートフィルムFを載置可能なステージ1101が取り付けられている。また、支軸1107には先端に塗布ノズル1103が取り付けられた揺動アームが、また支軸1108には先端にエッジリンスノズル1104が取り付けられた揺動アームがそれぞれ取り付けられている。
【0089】
また、処理チャンバ1000内でステージ1101の上方には、上下動自在の支軸1106、1つまたは複数のランプ1111およびランプカバー1112を備えるランプユニット1110が配置されている。各ランプ1111はその輻射熱により塗布液(ポリシラザン膜)を加熱する熱源として使用されるものであり、例えばハロゲンランプを用いることができる。ランプカバー1112は、ランプ1111から放射される熱および光の放射方向をステージ1101側に制限する。これらは支軸1106の上下動により一体的にステージ1101に対して接近・離間移動する。図示を省略しているが、上記各部の動作を制御する制御ユニットが別途設けられる。
【0090】
図9は図8の処理装置の動作を示すフローチャートである。初期状態では、塗布ノズル1103、エッジリンスノズル1104およびランプユニット1110はそれぞれステージ1101から離間した位置に位置決めされている。最初に、リング体RFを構成する下部リングRlwおよびシートフィルムFを処理チャンバ1100内に搬入し、ステージ1101に載置する(ステップS301)。次いで、ステージ1101を回転開始するとともに(ステップS302)、塗布ノズル1103およびエッジリンスノズル1104を図8(a)に示す所定の塗布位置に配置する(ステップS303)。すなわち、それぞれ支軸の回動により、塗布ノズル1103についてはステージ1101の回転中心の上方に、またエッジリンスノズル1104についてはノズル先端をステージ1101の周縁部上方に位置決めする。
【0091】
そして、塗布ノズル1103からポリシラザン膜の材料物質を含む塗布液を吐出しシートフィルムFに塗布するとともに、エッジリンスノズル1104からリンス液を吐出してエッジリンスを行う(ステップS304)。ステージ1101の周囲にはスプラッシュガード1105が設置されており、ステージ1101の回転によりその周縁から振り切られた液体の飛散を防止する。
【0092】
こうして塗布が終了すると塗布ノズル1103およびエッジリンスノズル1104をステージ1101上から退避させ(ステップS305)、代わってランプユニット1110を下降させ、図8(b)に示すようにステージ1101の直上に位置決めする(ステップS306)。
【0093】
続いてランプ1111を点灯させて、シートフィルムF上の塗布液Pに対してランプ加熱を行う(ステップS307)。このとき、先の実施形態と同様に処理チャンバ1100内の雰囲気を適宜に調整して、ポリシラザン膜の硬化を促進させる。硬化後のポリシラザン膜の粘度については、ランプ照射温度、照射時間、ステージ回転数および処理チャンバ内の雰囲気等によって制御することが可能である。ランプ1111として点灯時の立ち上がりの早いハロゲンランプを用いれば、照射時間を正確に管理することが可能である。
【0094】
所定時間ランプ加熱を行った後、ランプ1111を消灯させるとともにランプユニット1110を上方へ退避させ(ステップS308)、硬化の促進を停止させる。上記実施形態と同様に、チャンバ内の排気を組み合わせてもよい。その後、上部リングRupを搬入し下部リングRlwと係合させてリング体RFを形成し、ポリシラザン膜が形成されたシートフィルムFをリング体RFとともに転写装置へ移送する(ステップS309)。転写装置としては図4に示した転写装置を用いることが可能であるが、硬化促進処理は既に施されているため、転写装置では硬化促進ガス雰囲気中での薄膜の加熱を省略することができる。
【0095】
<第2の変形例>
図10は硬化促進処理を実行する他の構成例を示す図である。上記実施形態の硬化促進処理では、第2プレート54を加熱することによってその表面542に当接するシートフィルムFを介して薄膜Rを加熱し、処理チャンバ1内に硬化促進ガスを導入することで、ポリシラザン膜の硬化促進を行っている。これに代えて、次に説明するように、温度調整された硬化促進ガスを薄膜Rに供給することによっても、硬化促進処理を制御性よく行うことが可能である。なお、以下では上記実施形態と共通の構成には同一符号を付してその説明を省略する。
【0096】
図10(a)に示す例では、第2のプレート54に載置したシートフィルムFの上方に、温度調整された硬化促進ガスをシートフィルムF上の薄膜Rに向けて吐出するガス吐出ヘッド1200が近接配置可能に構成されている。すなわち、ガス吐出ヘッド1200がチャンバ内で図示しない移動手段に連結されており、必要に応じてガス吐出ヘッド1200を第2のプレート54に近接・離間移動させることができる。ガス吐出ヘッド1200は内部が空洞1209になっており、該空洞1209に連通するガス導入口1201を介して、外部のガス供給源から硬化促進ガスとして酸素、空気、水蒸気のいずれかを少なくとも含むガスが空洞1209に導入される。
【0097】
空洞1209には複数のガス供給路1202が連通しており、各ガス供給路1202の他方端はガス吐出ヘッド1200の下面に開口してガス吐出口1204を形成している。ガス吐出口1204はガス吐出ヘッド1200の下面に略一定の密度に分散配置されている。また、各ガス供給路1202をそれぞれ取り巻くように、加熱ヒータ1203が設けられている。また、ガス供給路1202自体を発熱体により構成してもよい。
【0098】
このような構成では、ガス供給源から供給される硬化促進ガスがガス供給路1202を通過する間に加熱ヒータ1203によって熱せられ、高温のガスとして薄膜Rに供給される。これによって薄膜Rの硬化を促進することができる。したがって、第2プレート54を昇温させておく必要は必ずしもない。また、ガス供給を停止することにより、硬化の進行を抑制することが可能である。
【0099】
一方、図10(b)に示す他の例では、ガス吐出ヘッド1300の空洞1309は下方に向けて大きく開口しており、その内部に、平板状で多数の貫通孔が設けられた例えばセラミックヒータからなる加熱ヒータ1303と、気体を通過させることのできる多孔質材料により形成された先端部材1304とが装着されている。
【0100】
このような構成では、空洞1309に案内された硬化促進ガスが加熱ヒータ1303により熱せられ、高温のガスとなって先端部材1304を通過して薄膜Rに向けて供給される。これにより薄膜Rの硬化が促進される。このような多孔質の先端部材1304を介してガスを吐出させることにより、処理チャンバ内が減圧された環境下でも空洞1309内の硬化促進ガスを適切にかつ効率よく昇温させて、温度および供給量の安定した硬化促進ガスを薄膜Rに対して供給することができ、薄膜Rの硬化度合いを適切に制御することができる。
【0101】
これらの変形例においては、ガス吐出ヘッド1200,1300がそれぞれ本発明の「硬化促進手段」として機能する。なお、これらのように熱した硬化促進ガスを供給することで薄膜の硬化を促進させる方法は、いずれも図8に示した装置におけるランプ加熱の代わりとしても適用することが可能である。
【0102】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、樹脂製のシートフィルムFにポリシラザン膜を形成し、該シートフィルムを本発明の「担持体」として機能させているが、担持体はこのようなフィルム状のものに限定されない。またその材料も上記実施形態に限定されない。例えば、円盤状の樹脂板、石英板などを本発明の担持体として機能させることが可能である。
【0103】
また、上記実施形態は、トレンチを形成された基板の表面にポリシラザン膜を転写してエアギャップ構造を実現する製造方法および装置であるが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、例えばエアギャップ形成を目的としない薄膜形成においても、本発明の製造方法を適用することが可能である。
【0104】
また、上記実施形態では、枚葉状のシートフィルムFを上下リングRup,Rlwで挟み込むことでシートフィルムFを緊張させた状態に保持しているが、これに限定されず、例えば長尺状のシートフィルムをローラー等に張架することでシートに張力を与えるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0105】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板全般を処理対象とし、これらの基板にポリシラザン膜を転写する技術に好適に適用することができる。特に、エアギャップ構造を有する半導体装置を膜転写により製造する技術に好適なものである。
【符号の説明】
【0106】
1 処理チャンバ(チャンバ)
34 第1のプレート(転写手段)
35 上クランプ(担持体保持手段)
54 第2のプレート(転写手段)
55 下クランプ(担持体保持手段)
81 制御ユニット(制御手段)
85 真空ポンプ(硬化促進手段、除去手段)
87 酸素ガス供給源(硬化促進手段)
541 加熱ヒータ(硬化促進手段)
F…シートフィルム(担持体)
R…薄膜
Rup…上部リング(担持体保持手段)
Rlw…下部リング(担持体保持手段)
W…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシラザンまたはその原料物質を含む塗布液が膜状に塗布されたシート状の担持体を、酸素および水蒸気の少なくとも一方を含む硬化促進ガス雰囲気中で加熱して、前記塗布液の膜表面における硬化を促進させる硬化促進工程と、
前記膜の周囲雰囲気から前記硬化促進ガスを除去する、または前記膜の温度を低下させることによって、前記膜表面の硬化を抑制する硬化抑制工程と、
前記硬化抑制工程後に、前記膜の表面を基板の表面に密着させて前記膜を前記基板に転写する転写工程と
を備えることを特徴とする膜形成方法。
【請求項2】
前記硬化促進工程では、前記塗布液を塗布された前記担持体をチャンバに収容して該チャンバ内を減圧した後、前記チャンバ内に前記硬化促進ガスを導入する一方、前記硬化抑制工程では、前記チャンバ内を再び減圧して前記硬化促進ガスを排気する請求項1に記載の膜形成方法。
【請求項3】
前記硬化促進工程では、前記硬化促進ガスの組成および圧力の少なくとも一方を調整することで前記膜の硬化を制御する請求項1または2に記載の膜形成方法。
【請求項4】
前記硬化促進工程では、前記担持体の加熱温度を180℃以下とする請求項1ないし3のいずれかに記載の膜形成方法。
【請求項5】
前記膜の硬化促進を開始してから前記膜の表面を前記基板の表面に密着させるまでの間、前記担持体に一定の張力を付与する請求項1ないし4のいずれかに記載の膜形成方法。
【請求項6】
前記転写工程では、前記基板の下面に前記膜の表面に密着させて転写する請求項1ないし5のいずれかに記載の膜形成方法。
【請求項7】
前記担持体への前記塗布液の塗布と、前記硬化促進工程とを同一のチャンバ内で行う請求項1ないし6のいずれかに記載の膜形成方法。
【請求項8】
ポリシラザンまたはその原料物質を含む塗布液が膜状に塗布されたシート状の担持体を、前記塗布液が塗布された面を上向きに略水平状態に保持する担持体保持手段と、
前記担持体保持手段に保持された前記担持体を加熱するとともに、該担持体表面に塗布された前記塗布液の膜に対して、酸素および水蒸気の少なくとも一方を含む硬化促進ガスを供給して、前記塗布液の膜表面における硬化を促進させる硬化促進手段と、
前記担持体表面の前記膜に基板を密着させて、前記膜を前記基板に転写する転写手段と、
前記硬化促進手段により前記担持体の加熱および前記膜への前記硬化促進ガスの供給を行わせた後、該加熱および前記硬化促進ガスの供給の少なくとも一方を停止させ、その後に、前記転写手段により前記膜を前記基板に転写させる制御手段と
を備えることを特徴とする膜形成装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記硬化促進ガスの組成および圧力の少なくとも一方を調整することで前記膜の硬化を制御する請求項8に記載の膜形成装置。
【請求項10】
ポリシラザンまたはその原料物質を含む塗布液が膜状に塗布されたシート状の担持体を、前記塗布液が塗布された面を上向きに略水平状態に保持する担持体保持手段と、
前記担持体保持手段に保持された前記担持体を加熱するとともに、該担持体表面に塗布された前記塗布液の膜に対して、酸素および水蒸気の少なくとも一方を含む硬化促進ガスを供給して、前記塗布液の膜表面における硬化を促進させる硬化促進手段と、
前記硬化促進手段からの前記硬化促進ガスの供給停止後、前記膜表面の周囲雰囲気から前記硬化促進ガスを除去する除去手段と、
前記担持体表面の前記膜に基板を密着させて、前記膜を前記基板に転写する転写手段と
を備えることを特徴とする膜形成装置。
【請求項11】
前記担持体保持手段に保持された前記担持体および前記基板を収容する処理空間を有するチャンバを備え、
前記硬化促進手段は前記処理空間内に前記硬化促進ガスを供給する一方、前記除去手段は前記処理空間から前記硬化促進ガスを排気する請求項10に記載の膜形成装置。
【請求項12】
前記転写手段は、前記処理空間内で前記膜を前記基板に転写する請求項11に記載の膜形成装置。
【請求項13】
前記硬化促進手段は、加熱された前記硬化促進ガスを前記膜に供給する請求項8ないし12のいずれかに記載の膜形成装置。
【請求項14】
前記硬化促進手段は、前記担持体を加熱するためのランプを備える請求項8ないし13のいずれかに記載の膜形成装置。
【請求項15】
前記担持体保持手段は、前記膜の硬化促進を開始してから前記膜の表面を前記基板の表面に密着させるまでの間、前記担持体に一定の張力を付与した状態で保持する請求項8ないし14のいずれかに記載の膜形成装置。
【請求項16】
前記担持体保持手段は前記膜を上向きにして前記担持体を保持する一方、前記転写手段は、前記基板の下面を前記膜の表面に密着させる請求項8ないし15のいずれかに記載の膜形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−30614(P2013−30614A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165598(P2011−165598)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】