説明

臨床発作患者の監視方法及びシステム

生理学的に軽度な疾患を予測及び治療するための生命徴候を監視モニタするための方法及びシステム10を提案する。この方法及びシステム10は、限定的ではないが喘息、低血糖症、咳、浮腫、睡眠時無呼吸、疲労、レム睡眠等々の生理学的疾患あるいは「発作」に関して広範囲に監視モニタに適用できる。この方法及びシステム10は、たとえば、心拍数や呼吸数などの生命徴候を検出して偏差傾向の分析や以前の状態あるいは基準との比較に供する信号50を生成する非接触センサなどのセンサ30、110、380を用いている。センサ30、110、380によって被検者12に対する医療介護関係者の監視の必要がなくなる。また、この方法及びシステム10では、検出生命徴候を組み合わせたデータあるいは生命徴候と基準値との比較データに基づいて得られる「スコア」を用いる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2005年11月1日出願の係属仮出願第60/731934号、2006年3月21日出願の係属仮出願第60/784799号、2006年9月12日出願の係属仮出願第60/843672号を優先権主張するもので、これら優先権出願の全ての開示内容を本件出願に包括するものとする。
【0002】
また、本願の要旨は、同一出願人による米国特許第7077810号(2006年7月12日特許)、同一出願人による米国特許出願第11/446281号(2006年6月2日出願)、同一出願人による米国特許出願第11/197786号(2005年8月3日出願)に関連しており、これら先行技術の全ての開示内容を本件出願に包括するものとする。
【技術分野】
【0003】
本発明は、患者の監視及び生理的異常状態の予測及び監視に関するもので、特に、非接触測定による生理的異常状態を監視し、且つ、生理学的症状発作の予測と治療を行うための生理学的及び物理的パラメータ特性を分析するための方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0004】
慢性疾患は臨床症状が発作的に悪化することで発現することが多い。慢性疾患の予防的治療によって、所要の薬剤の総合的な投薬量を減らし、且つ、使用薬物の副作用を軽減することができ、死亡率や罹病率を低減させる。通常、初期段階で臨床症状が認められたら可及的速やかに予防的治療を施すべきで、この予防的治療によって臨床症状の進行・悪化を食い止めることができ、病態生理学的過程を中断させたり、あるいは、逆行させることができる。よって、発作予兆指標を正確に監視する性能が慢性疾患の予防的治療の有効性を向上させる。
【0005】
多くの慢性疾患は、様々な生理学的機序を通して呼吸や心拍などの生命徴候にシステム変化を起こす。たとえば、喘息や、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの一般的な呼吸器疾患、嚢胞性線維症(CF)は、呼吸乃至心拍の直接的な変調因子となる。糖尿病、癲癇、特定の心臓疾患(例えば、鬱血性心不全(CHF))などの慢性疾患も心臓活動や呼吸活動を一時変異させることが知られている。特定の心臓疾患の場合、体液鬱滞や一般的な心血管不全に係わる病態生理学のためにそうした一時変異は普通に発生する。咳や睡眠障害などの徴候も数種の臨床的な重要な症状として知られている。
【0006】
多くの慢性疾患が生命徴候の全身的作用を誘発させ、たとえば、いくつかの慢性疾患は、覚醒状態や睡眠中の正常な呼吸や心臓作用を阻害して、異常呼吸や異常心拍を引き起こす。
【0007】
呼吸及び心拍が様々な直接的及び間接的生理学的機序を介して変調され、一時変異の原因に係わる異常パターンをもたらすことがある。喘息などの呼吸器系疾患やCHFなどの心臓疾患は直接的な呼吸変調因子である。低血糖症などの代謝系の異常や自律神経系の活動に影響する他の神経的な病変は間接的な呼吸変調因子である。
【0008】
喘息は既知の治療法がない慢性疾患である。喘息症状の実質的軽減は、気管支拡張薬や抗炎症薬を使用する予防療法によって可能である。喘息管理は、喘息患者の生活の質を改善する目的があるが、予防療法には肺機能を恒常的な監視と薬剤の種類と投与量に対応する順応性が要求されるので、当該喘息管理には、患者と医師の深刻な課題がある。ところが、肺機能の監視モニタは簡単でなく、通常は非臨床的環境または家庭環境では利用できない高性能の計測機器と専門知識を要する。
【0009】
肺機能の監視モニタは、適切な処理を決めるだけでなく患者の追跡治療を決める主要因子と見られており、望ましい療法としてはエアゾール薬剤がよく用いられ、全身性副作用を最小限にするようにしている。エアゾール療法の有効性は、判断と維持が困難な患者の協力によるところが大きいが、肺機能監視の重要性に寄与する。
【0010】
喘息の症状は時折突発的に発作を起こすように見えるが、通常は数日間継続する。喘息症状が緩やかに始まると、炎症過程を停止し逆進させる対応措置を開始する機会が得られる。発作予兆段階での早期治療が臨床症状の発病を著しく緩和する可能性があり、発作予兆段階から臨床症状の発現への移行をも共に妨げる可能性さえある。
【0011】
2つの技法が通常、喘息の監視モニタに用いられる。第1の技法は肺活量測定法で、肺で空気を給排する量を測定する装置である肺活量計を用いて肺機能を診断する。肺活量計に管を介して接続したマウスピースに患者が力強く給排した空気循環の動的状態を測定する。最大流量計は、肺活量計に似た簡単な構造の装置で、同じように使用される。第2の技法は専用の一酸化炭素モニタを用いて一酸化炭素濃度を測定することで肺機能を監視診断する方法である。この方法では、患者はチューブを介してモニタに繋がれたマウスピースに息を吹き込む。
【0012】
効率的な喘息管理には呼吸機能を日々監視モニタする必要があり、通常は非臨床的環境または家庭環境では実行困難な非現実的である。最大流量計や一酸化炭素モニタは肺機能状態の一般的な適応症を示すが、これら監視装置は予測値が制限されており、発作記録装置として用いられる。加えて、最大流量計や一酸化炭素モニタの稼働には患者の積極的な努力が必要であるが、小児あるいは幼児から有効な監視結果を得ることは困難または不可能である。
【0013】
鬱血性心不全(CHF)は、弱っている心臓の状態や、身体の要求に合わせた血液の循環ができない状態である。それによる脚部、腎臓、肺の体液の増量が鬱血などの状態を特徴づける。その弱体状態は、異なった病因を有する心臓の左心と右心の一方もしくは両方に関連していることがある。大抵の場合、機能不全の左心であり、血液を全身循環させるために効率的に送り出すことができなくなる。その後の肺での流動鬱血は、呼吸困難や頻呼吸などを伴って呼吸速度や呼吸数パターンなどに変化をもたらす。
【0014】
斯かる異常呼吸の定量化が、CHF経過を監視診断する基礎となる。たとえば、チェーン・ストークス呼吸(CSR)は、無呼吸と過呼吸を交互に繰り返す規則的な循環節の一回換気量の周期的振戦に特徴付けられる呼吸数パターンである。CSRは、多くの異なった病変(脳炎、脳循環障害、呼吸中枢の障害など)で観察され、心不全を悪化させる個々の危険因子として、また、CHF罹患患者の生存性の低下因子として認識されている。CHFは、CSRが睡眠を寸断する頻回の覚醒や交感神経同時活性化を伴う。他の異常呼吸数パターンは周期性呼吸、呼気乃至吸息延長や、通常頻呼吸につながる呼吸数の段階的変化などを誘発することがある。
【0015】
胎児の健康については、遺伝的障害や発育障害用のスクリーニング手段として、あるいは、胎児成長を監視するための超音波画像装置と共に、ドプラ超音波変換法を利用して胎児の心電図を監視する装置を含むいくつかの検出撮画手段を用いて妊娠中全般に亘って監視することが行われる。活動期と休息期によって異なる成人の心拍数を観察方法と同じように、健康な乳児が高心拍数を示して活発に反応する状態を見ることができる。胎児の心拍数は、正常で健康な胎児で概ね毎分80〜250回の範囲で心拍数が変化し、運動に応じて多くなる。出生前に斯かる変動が不十分な場合は胎児の死亡率が高くなるという関連性がある。妊娠後期、特に、ハイリスク妊娠の場合、胎児の健康を監視診断して胎児仮死の初期徴候を識別するために定期的に胎児の心拍を監視する。胎児の健康を監視診断する現在の解決法はおおむね家庭環境には適していない。
【0016】
心弾動図記録法は、循環系の心臓及び血液の運動に起因する身体の反跳運動の測定であって、トランスデューサで循環系で血液が移動する際に血液の加速によって生じる身体のわずかな運動を検出する。たとえば、ここでの参照文献である米国特許第4657025号公報(発明者:オルランド)には一台のトランスデューサで心拍と呼吸数を検知する装置が開示されている。トランスデューサは、患者の心拍機能及び呼吸機能の活動によって従来のベッド上で生じる振動の垂直方向の感度を高めるように構成された電磁センサであり、ベッド上で休む患者と、ベッド上に患者から離して置かれたセンサとの間には物理的接続がない状態で十分な感度を達成できる技術として開示されている。
【0017】
下記の特許公報及び特許出願公報は本発明に係わる関連技術文献であるが、これらも注目に値する。
米国特許第7077810号(Lange、他)
米国特許第4657026号(Tagg)
米国特許第5235989号(Zomer)
米国特許第5957861号(Combs)
米国特許第6383142号(Gavriely)
米国特許第6436057号(Goldsmith、他)
米国特許第6856141号(Ariav)
米国特許第5964720号(PeIz)
米国特許出願第20050119586号(Coyle、他)
米国特許出願第20060084848号(Mitchnick)
米国特許第6984207号(Sullivan)
米国特許第6375621号(Sullivan)
【0018】
M.ショチャットの文献「PedemaTOR:前臨床病期における肺浮腫を検出する革新的な方法」(刊行日不詳/「http://www.isramed.info/rsmm_rabinovich/pedemator.htm」で閲覧可能)には、肺浮腫を臨床検出するインピーダンス監視装置が開示されている。このインピーダンス監視装置では、測定した経胸腔インピーダンスから自動演算した皮膚電極インピーダンスを減算することで肺のインピーダンスにほぼ等しい「胸部体内インピーダンス」を測定している。
【0019】
ここでの引例として以下の文献が参考になる。
・J.アリハンカ等著「心弾動図、心拍数、呼吸を長期監視するための新しい方法」、米国生理機能規制統合比較生理学ジャーナル第240号、384〜392頁(1981年)
・L.ベンチュア等著「小児の夜間喘息診断及び治療対応のための喘鳴モニタ」、欧州呼吸器ジャーナル第21(4)号第621〜626頁(2003年)
・A.B.チャン「咳、気道炎症及び軽度喘息悪化」、小児疾病アーカイブ第86号第270〜275頁(2002年)
・J.Y.スウ等著「持続的に咳き込む患者の咳回数:携帯記録計を用いて24時間測定」、欧州呼吸器ジャーナル第7号第1246〜1253頁(1994年)
・D.マック等著「生理学的信号の非侵襲分析/NAPS:睡眠の質の低廉な受動監視及び応用」、バージニア連邦大学健康システム(刊行日不詳)
・J.カーパス著「咳音の分析<概説>」、肺疾患薬理学第9号第261〜268頁(1996年)
・C.ソープ等著「喘息咳音の定量化に向けて」欧州呼吸器ジャーナル第5号第685〜692頁(1992年)
・A.ハータム等著「自由場における咳音の自己回帰聴覚モデル」、音響国際学会、講演第1巻第493〜496頁、米国オーランド、2002年5月
・P.ピーリラ等著「咳の目的分析」欧州呼吸器ジャーナル第8号第1949〜1956頁(1995年)
・T.サルミ等著「静電荷感知ベッド上における運動及びフィルタ処理音響信号を用いた咳の長期記録及び自動分析」、胸部第94号第970〜975頁(1988年)
・T.サルミ等著「静電荷感知ベッドを用いた睡眠記録の自動分析」、脳波検査と神経生理学第64号第84〜87頁(1986年)
・P.A.シュテークマイア−ストラッカ等著「ファジー分類による咳測定」、応用コンピュータに関する1995年ACMS討論会、米国テネシー州ナッシュビル、第440〜444頁(1995年)
・H.F.M.ヴァンダールース等著「多重センサ付ベッドシーツによる生命維持信号の無意識モニタ」、北米リハビリテーション技術学会2001年、米国ネバダ州リーノ、2001年6月22〜26日
・M.ワリス等著「喘鳴自動検出の新方法」、テクノ・ヘルス・ケア第6(1)号第33〜40頁(1998年)
・M.カッツ等著「携帯型子宮活動監視装置による早期陣痛の検出〈速報〉」、産科学及び婦人科学第68号第773〜778頁(1986年)
・「喘息管理についての英国ガイドライン〈全英臨床ガイドライン〉」英国胸部学会、スコットランド大学ガイドラインネットワーク、2004年4月改訂版
・B.E.ブレンナー等著「成人及び小児の急性喘息の臨床所見」、ブレンナー・BE・エマージェンシー・アズマ、ニューヨーク:マーセル・デッカー、201〜232頁(1999年)
・ヴァレン等著「小児喘息のED治療の最新概念」、呼吸器薬総会報告書(トムソン・アメリカン・ヘルス・コンサルタント、2003年12月28日)
・「喘息管理」、キッズヘルス・ウェブサイト(kidshealth.org/parent/medical/lungs/asthma_mgmt.html)
・「喘息の徴候及び症状」、インド胸部協会(インド国ムンバイ)(http://www.indianchestsociety.org/symptomsofasthma.htm)
・「軽度な喘息の呼吸」、インターマウンテン・ヘルス・ケア・クリニカル・エデュケーション・サービス(http://www.ihc.eom/xp/ihc/documents/clinical/l 01/3/1/ asthma_breathe.pdf)
・「喘息に関する相互医学臨床ガイドライン2004年」、メディカル・ミューチュアル(オハイオ州クリーブランド)(http://www.medmutual.com/provider/pdfresources/ asthma4.pdf)
・「ピーク・フロー学習センター」、全米ユダヤ医療研究センター(http://www.njc.org/diseaseinfo/diseases/asthma/living/tools/ peak/index.aspx)
・R.ミンツァ著「教師が喘息発作について知るべきこと」、家庭教育ネットワーク(http://www.familyeducation.eom/article/0.1120,65- 415,00.html).
・「わたしの子どもは喘息もち?」、ソラノ喘息連合、米国東部肺協会(http://www.alaebay.org/misc_pdf/ solano_asthma_coalition _child_asthma.pdf)
・J.ポーテム著「喘息」(http://www.nku.edu/~rad350/asthmajp.html)
・T.プラート著「幼児喘息の追跡と治療」、呼吸器系疾患/小児科医ジャーナル第5(2)号第67〜72頁(2003年)
・M.F.フィッツパトリック等著「英国での喘息及び睡眠障害-地域密着調査」、欧州呼吸器ジャーナル第6号第531〜5頁(1993年)
・P.ジョバンプーツラ等著「一般診療における急性喘息発作の処置」、英国全科診療ジャーナル第41号第410〜3頁(1991年)
・T.O.リム等著「外来診察における喘息罹患率及び喘息治療検査」、シンガポール医療ジャーナル第33号第174〜6頁(1992年)
・P.J.マッジ等著「2つのスコットランド健康管理地域における喘息罹患児への家庭用噴霧器の使用」、スコット医療ジャーナル第40号第141〜3頁(1995年)
・T.ワタナベ等著「睡眠期評価のための非接触方法」、IEEE生物医学工学会議録、第10号第51巻(2004年10月)
・C.ヤンジョーン等著「呼吸及び心拍運動の非拘束測定のためのバランス管を備えた空気マット検出システム」、生理学的計測2005年第26号第413〜422頁
【0020】
米国特許出願公開第2005/0192508号(Lange等)及び国際特許公開第WO2005/074361号公報(Lange等)は本出願の出願人に譲渡された技術であり、当該技術の参考引用するものであるが、臨床発作の徴候予測方法を開示している。この方法は、診断被検者の呼吸を検知し、検知呼吸に応じて診断被検者の少なくとも1つの呼吸数パターンを測定し、斯かる呼吸数パターンを基準呼吸数パターンと比較し、少なくとも度比較結果の一部に応じて発作の徴候を予測するものである。
【0021】
上記発明の背景で列挙した外国文献が、ここに開示する本発明に関する先行技術乃至類似技術であるとは限らない。
【発明の開示】
【0022】
本発明の目的は、たとえば、慢性疾患あるいは病変のある患者の生理学的事象の発症または再発を監視し、病変の治療あるいは病変の軽減処置を行う際に患者もしくは介護者を補助するための様々の方法を提供することにある。更に、本発明の一実施例における目的は、自動化センサ及び電子信号処理手段によって、生理的発作の発病の測定と特徴付けができる重要な徴候とそれほど重要でない徴候を検出することにある。本発明の他の実施例の目的は、治療あるいは投薬によって発作を治療することにある。
【0023】
本発明の他の実施例は、慢性症状などの多様な病状をモニタする方法及びシステムに関し、運動収集モジュールと、分析モジュールと、出力モジュールを有する。モニタした慢性症状は、たとえば、当該開示に出てくる喘息、無呼吸、不眠症、心不全、低血糖症等々の症状と見なすことができる。ここに開示する方法とシステムと装置は、上記した1以上の目的を実行するためのもので、たとえば、システムの制御ユニットと装置を上記方法の1以上の処理ステップを実践するために用いたり、あるいは、上記装置のセンサを上記方法における1以上の検知処理ステップに適用する。
【0024】
更に、本発明の実施例では、心拍数と呼吸数の同時測定に加えて、心拍数信号振幅と呼吸数信号振幅との比を計算し、前記比を判定基準と比較して心拍数信号が有効か否かを判定する処理を行うための方法及びシステムを提供する。
【0025】
本発明の他の実施例では、ベッド上の患者をモニタして、身体運動信号の測定と、前記身体運動信号の標準偏差の計算と、前記標準偏差を判定基準と比較して身体の姿勢に変化があるかどうかを判定する方法及びシステムを提案する。
【0026】
本発明の他の実施例では、たとえば、非接触方式で睡眠中の動悸を測定する方法及びシステムを提供すると共に、長期間に亘って患者の臨床パラメータをモニタし、前記臨床パラメータを臨床的及び非臨床的パラメータ乃至発作との変化を関連づける方法及びシステムを提供し、更に、たとえば、非接触センサを用いて慢性症状の進行の長期間に亘る過程を特定するための長期に亘る臨床パラメータをモニタする方法及びシステムを提供する。
【0027】
本発明の他の実施例では、非接触方式で臨床パラメータをモニタし、臨床パラメータの基準値における変化を特定し、前記変化と治療計画の変化とを関連づけて慢性患者をモニタする方法及びシステムを提供すると共に、呼吸増大または深吸気を識別することによる呼吸数パターンを非接触でモニタする方法及びシステムを提供し、且つ、臨床パラメータをモニタし、臨床パラメータにおける変化に基づく投薬判定を行う喘息患者をモニタする方法及びシステムを提供する。
【0028】
本発明の他の実施例では、睡眠中の臨床パラメータをモニタし、睡眠期を識別し、少なくとも1つの睡眠期における前記臨床パラメータを睡眠期基準臨床パラメータと比較することで臨床状態をモニタする方法及びシステムを提供する。睡眠期を識別する前記方法及び装置は、上述する運動収集モジュールと、パターン分析モジュールと、出力モジュールで構成することができる。
【0029】
本発明の他の実施例では、就寝中の患者をモニタし、患者の就眠を識別し、就眠後の臨床パラメータを測定し、これを就寝中の基準臨床パラメータと比較することで臨床状態をモニタする方法及びシステムを提供する。
【0030】
本発明の更なる実施例では、心拍パターンを用いて呼吸率または呼気−吸気比を測定するための方法及びシステムを提供すると共に、患者の迷走神経刺激治療プロトコルを決定するための方法及びシステムを提供し、且つ、たとえば、非接触モニタ手段によって早産児などの未熟児をモニタするための方法及びシステムを提供し、更に、睡眠中の複数の臨床パラメータを測定することで慢性症状のための臨床スコアを計算するための方法及びシステムを提供する。
【0031】
本発明の他の実施例では、臨床パラメータを非接触定期的モニタして副作用の治療有効性と発症をモニタすることで危険姓のある治療計画も実行できる方法及びシステムを提供すると共に、患者もしくは患者の着衣に接することなくベッドのマットレス上に置いたメカニカルセンサを用いてベッド上の臨床パラメータをモニタできる方法及びシステムを提供し、且つ、患者に通常投与する以上に強力な薬剤を患者に投与し、患者における臨床パラメータの向上をモニタすることで慢性患者に最適な基準臨床パラメータに近似しているかどうかを判定するための方法及びシステムを提供する。
【0032】
本発明の更なる実施例では、患者群の症状をモニタして臨床結果の関連づけをすることで共通の外部パラメータに影響を受ける患者群に及ぼすパラメータを特定するための方法及びシステムを提供する。
【0033】
本発明の他の実施例では、心弾動図信号の高周波スペクトルを変調することで心拍数を測定するための方法及びシステムを提供する。
【0034】
本発明のいくつかの実施例では、就眠している被検者をモニタして、たとえば、レム睡眠期などの1以上の睡眠期を識別するための方法及びシステムを提供する。この方法及びシステムでは、運動収集モジュールと、パターン分析モジュールと、出力モジュールを用いる。一実施例において、たとえば、呼吸率変動(BRV)を分析してレム睡眠を識別することで識別した睡眠期がレム睡眠であると判定する。睡眠期を識別するこの方法及びシステムは、被検者に接触せずに、あるいは、被検者を視認することなく実施できる。また、本発明の一実施例において、レム睡眠中の臨床パラメータを分析することによって慢性症状の悪化をモニタしたり、あるいは、予測できる方法及びシステムを提供する。
【0035】
本発明の更なる実施例では、被検者に接触せずに、あるいは、被検者を視認することなく被検者の浮腫を識別することのできる方法及びシステムを提供すると共に、被検者に接触せずに、あるいは、被検者を視認することなく睡眠中の被検者の身体運動に関する複数のパラメータを評価するための方法及びシステムを提供し、且つ、信号変調分析によって周期性呼吸またはチェーンストークス呼吸を識別するための方法及びシステムを提供する。
【0036】
本発明の更なる実施例では、たとえば、患者の睡眠中の患者の身体の姿勢角度を測定することによって肺浮腫を識別するための方法及びシステムを提供する。
【0037】
本発明の他の実施例では、患者の低血糖症を識別するための方法及びシステムを提供すると共に、たとえば非接触センサを用いて自動的に患者の低血糖症の検出及び治療を行う方法を提供する。これらの方法及びシステムに、低血糖発作が起こった場合あるいは低血糖発作を起こしている場合に患者自身またはヘルスケア介護者に警告を発する手段を持たせることができる。また、これらの方法及びシステムに、後述する運動収集モジュールと、パターン分析モジュールと、出力モジュールを用いてもよい。
【0038】
本発明の更なる実施例では、たとえば、患者の応諾を得ることなく患者への薬効を確認できる方法及びシステムを提供すると共に、たとえば、患者の状態の自動モニタ結果に基づいて患者に所定の活動制限を認知させるための方法及びシステムを提供する。
【0039】
本発明のいくつかの実施例では、咳発作を認識できる方法及びシステムを提供する。この方法及びシステムは、運動収集モジュールと、パターン分析モジュールと、出力モジュールから構成できる。一実施例として、音響信号の周波数変化で咳を特定でき、たとえば、デジタル記録した音響信号を分析し、周波数基準に基づいて咳を識別することができる方法及びシステムを提供する。別の実施例として、咳発作中の音響信号の周波数の変化パターンを特定して咳を識別できる方法及びシステムを提供する。更に別の実施例として、浮腫罹患者の咳と浮腫非罹患者の咳を区別できる方法及びシステムを提供する。
【0040】
本発明のいくつかの実施例では、たとえば、早期陣痛の徴候を予測するために子宮収縮をモニタするための方法及びシステムを提供する。このシステムは、運動収集モジュールと、パターン分析モジュールと、出力モジュールで構成することができる。本発明のこの実施例によれば、たとえば、妊婦の身体を視認または接触することなく、したがって、妊婦による応諾を必要としないで子宮収縮をモニタし、早期陣痛の徴候を予測できる。
【0041】
本発明のいくつかの実施例では、たとえば、睡眠中の無呼吸発作をモニタ、あるいは、予測するための方法及びシステムを提供する。これらの方法及びシステムは、運動収集モジュールと、パターン分析モジュールと、出力モジュールで構成することができる。本発明の一実施例における方法及びシステムによれば、睡眠中の患者の臨床パラメータをモニタし、無呼吸の発作を識別及び予測して緊急治療を施すことができる。
【0042】
本発明のいくつかの実施例では、性交をモニタするための方法及びシステムを提供する。これらの方法及びシステムは、運動収集モジュールと、パターン分析モジュールと、出力モジュールで構成することができる。本発明の一実施例における方法及びシステムによれば、たとえば、早漏を治療する目的で患者の身体を視認もしくは身体に接触することなく性交をモニタすることができる。
【0043】
本発明の他の実施例では、被検者の低血糖症の発症を検出するための方法及びシステムを提供する。この方法は、たとえば被検者に接触することなく低血糖症に関する1以上の臨界パラメータをモニタし、少なくとも1つの臨界パラメータの変異を検出し、少なくとも1つの臨界パラメータの偏差が許容値から逸脱した場合に警告を発することからなる。一実施例における臨界パラメータは、呼吸数、心拍数、動悸の発生、情動不安状態、振戦のうちの少なくとも1つである。
【0044】
本発明の他の実施例では、被検者の低血糖症の発症を検出するための装置を提供する。この装置は、たとえば被検者に接触することなく低血糖症に関する1以上の臨界パラメータをモニタする少なくとも1つのセンサと、少なくとも1つの臨界パラメータを検出する分析器と、少なくとも1つの臨界パラメータの偏差が許容値から逸脱した場合に警告を発する手段よりなる。
【0045】
本発明の他の実施例では、被検者の咳を検出するための方法を提供する。この方法は、たとえば被検者に接触することなく被検者近傍で音声信号を検出し、検出音声信号を分析し、たとえば音声信号の時間周波数特性における変化などの音声信号の周波数変化を確定することで咳を識別することからなる。本発明の一実施例における音声信号の分析は、音声信号の周波数変化を確定して咳を識別することからなる。
【0046】
本発明の他の実施例では、被検者の咳を検出するための装置を提供する。この装置は、たとえば被検者に接触することなく音声信号を検出する電子音声信号検出器と、たとえば音声信号の時間周波数特性における変化などの音声信号の周波数変化を確定することで咳を識別する信号分析器とからなる。本発明の一実施例における音声信号分析器は更に、音声信号エネルギーと音声信号の振幅の少なくともいずれか一方に応答して時間間隔を選択する機能を有する。
【0047】
本発明の他の実施例では、被検者の咳を検出するための装置を提供する。この装置は、たとえば被検者近傍に置いた音声信号センサと、被検者に接することなく被検者の運動を検知して検知運動に対応する運動信号を出力する運動センサと、音声信号と運動信号を分析して咳を識別するための信号分析器とからなる。
【0048】
本発明の他の実施例では、被検者の咳を検出するための方法を提供する。この方法は、被検者近傍の音声信号を検出し、たとえば被検者を視認または被検者に接触することなく被検者の運動を検知して検知運動に対応する運動信号を生成し、音声信号と運動信号を分析して咳を識別することからなる。
【0049】
本発明の他の実施例では、被検者の咳を検出するための装置を提供する。この装置は、音声信号センサと、たとえば被検者を視認または被検者に接触することなく被検者の運動を検知する運動センサと、音声信号と運動信号を分析して咳を識別するための信号分析器とからなる。
【0050】
本発明の他の実施例では、被検者の浮腫を検出するための方法を提供する。この方法は、たとえば、被検者に接触せずに被検者の身体の一部の機械信号を検出できる重量センサなどの複数のメカニカルセンサを設け、複数のセンサからの複数の機械的信号を検出し、複数の機械的信号を分析して浮腫の存在を測定することからなる。本発明の一実施例における複数の機械的信号の分析には、被検者における機械的信号分布を検出して浮腫の存在を測定する処理が含まれる。
【0051】
本発明の他の実施例では、被検者の浮腫を検出するためのシステムを提供する。このシステムは、たとえば、被検者に接触せずに被検者の身体の一部の機械信号を検出する複数のメカニカルセンサと、複数のセンサから複数の機械的信号を検出するセンサと、複数の機械的信号を分析して浮腫の存在を測定する信号分析器とからなる。前記メカニカルセンサとしては、様々のセンサを適用できるが、特に、圧力センサあるいは加速度計を挙げることができる。
【0052】
本発明の他の実施例では、無呼吸の徴候を検出するための方法を提供する。この方法は、たとえば被検者に接触せずに被検者の呼吸などの運動を検出して検出運動から対応する信号を生成し、被検者の呼吸に対応する検出運動信号から呼吸関連信号を抽出し、呼吸関連信号を分析して無呼吸の徴候を予測することからなる。本発明の一実施例における分析処理は、呼吸関連信号及び心拍関連信号の少なくとも1方の振幅の上昇を検出して無呼吸の徴候を予測する処理よりなる。
【0053】
本発明の他の実施例では、無呼吸の徴候を検出するためのシステムを提供する。このシステムは、たとえば、被検者に接触せずに被検者のたとえば呼吸などの運動を検出し、検出運動から対応する信号を検出する少なくとも1つのセンサと、被検者の呼吸に対応する検出運動信号から呼吸関連信号を抽出し、呼吸関連信号を分析して無呼吸の徴候を予測する分析器よりなる。本発明の一実施例における分析器で、検出運動信号から心拍信号を抽出し、検出心拍信号を分析して無呼吸の徴候を予測することもできる。
【0054】
本発明の他の実施例では、無呼吸の徴候を検出するための方法を提供する。この方法は、たとえば被検者の近傍で音声信号を検出し、たとえば被検者に接触せずに被検者の呼吸を検出して検出した呼吸に対応する呼吸関連信号を生成し、音声信号と呼吸関連信号を分析して無呼吸の徴候を検出することからなる。
【0055】
本発明の他の実施例では、無呼吸の徴候を検出するための装置を提供する。この装置は、音声信号を検出する音声センサと、たとえば被検者に接触せずに被検者の呼吸を検出して呼吸に対応する呼吸関連信号を生成する少なくとも1つのセンサと、音声信号と呼吸関連信号を分析して無呼吸の徴候を検出する分析器からなる。
【0056】
本発明の他の実施例では、妊婦の子宮収縮を検出するための方法を提供する。この方法は、たとえば妊婦に接触せずに妊婦の運動を検出して検出運動から対応する信号を生成し、検出信号を分析して陣痛時の子宮収縮を検出することからなる。本発明の一実施例における妊婦の運動検出には、妊婦の下腹部と骨盤と上腹部の運動を検出し、下腹部と骨盤と上腹部に係わる運動関連信号を生成して妊婦の子宮収縮を検出することからなる。
【0057】
本発明の他の実施例では、妊婦の子宮収縮を検出するための装置を提供する。この装置は、たとえば妊婦に接触せずに妊婦の運動を検出して検出運動から対応する信号を生成する少なくとも1つの運動センサと、少なくとも1つの検出信号を分析して陣痛時の子宮収縮を検出する信号分析器からなる。
【0058】
本発明の他の実施例では、被検者のレム(REM)睡眠を識別する方法を提供する。この方法は、たとえば被検者に接触せずに被検者の呼吸を検出して検出呼吸に対応する呼吸関連信号を生成し、呼吸関連信号分析してレム睡眠状態を検出することからなる。
【0059】
本発明の他の実施例では、被検者のレム(REM)睡眠を識別する装置を提供する。この装置は、たとえば被検者に接触せずに被検者の呼吸を検出し検出呼吸に対応する呼吸関連信号を生成する少なくとも1つのセンサと、呼吸関連信号分析してレム睡眠状態を検出する信号分析器とからなる。
【0060】
本発明の他の実施例では、被検者の心拍数及び呼吸数を同時に測定する方法を提供する。この方法は、被検者の運動を検出して検出運動に応じた検出運動信号を生成し、検出運動信号から心拍関連信号を確定し、心拍関連信号から第1の呼吸関連信号を確定し、検出運動信号から直接第2の呼吸関連信号を確定し、第1の呼吸関連信号と第2の呼吸関連信号を比較して心拍関連信号の有効性を決定することからなる。
【0061】
本発明の他の実施例では、被検者の心拍数及び呼吸数を同時に測定するシステムを提供する。このシステムは、被検者の運動を検出して検出運動に応じた検出運動信号を生成する少なくとも1つの運動センサと、検出運動信号から心拍関連信号を確定し、心拍関連信号から第1の呼吸関連信号を確定し、検出運動信号から直接第2の呼吸関連信号を確定し、第1の呼吸関連信号と第2の呼吸関連信号を比較して心拍関連信号の有効性を決定する信号分析器とからなる。
【0062】
本発明の他の実施例では、被検者の姿勢位置の変化をモニタする方法を提供する。この方法は、たとえば被検者に接触せずに被検者の運動を検出して検出運動に対応した検出運動信号を生成し、検出運動信号の変化を測定し、前記変化を判定基準と比較して被検者の姿勢位置が変化したか否かを決定することからなる。
【0063】
本発明の他の実施例では、被検者の姿勢位置の変化をモニタするシステムを提供する。このシステムは、たとえば被検者に接触せずに被検者の運動を検出して検出運動に応じて検出運動信号を生成する少なくとも1つのセンサと、検出運動信号の変化を測定する手段と、前記変化を判定基準と比較して被検者の姿勢位置が変化したか否かを決定する手段とからなる。
【0064】
本発明の他の実施例では、被検者をモニタする方法を提供する。この方法は、たとえば被検者に接触せずに被検者の複数の臨床パラメータを検出して検出臨床パラメータに対応した複数の臨床パラメータ信号を生成し、前記複数の臨床パラメータ信号を合成し、合成臨床パラメータを分析して臨床徴候をモニタあるいは予測することからなる。
【0065】
本発明の他の実施例では、呼吸器疾患のある被検者の状態をモニタする方法を提供する。この方法は、たとえば被検者に接触せずに被検者の複数のパラメータを少なくとも3日間に亘って測定し、各測定日Dにおけるパラメータに基づく呼吸器疾患スコアS(D)を評価し、測定日Dの呼吸器疾患スコアS(D)を測定日D前の少なくとも1日の被検者のスコアを比較して被検者の相対状態を判定することからなる。本発明の一実施例における呼吸器疾患スコアを下記の式によって評価する。
【数1】



式において、Piは複数パラメータのうちの少なくとも1つのパラメータ、Nは複数パラメータのうちの1パラメータPに関連づけた定数、nはパラメータ数である。ここでの呼吸器疾患としては、様々の呼吸器疾患があるが、特に、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を挙げることができる。
【0066】
本発明の他の実施例では、被検者の心拍数から呼吸数を検出する方法を提供する。この方法は、たとえば被検者に接触せずに被検者の心拍数を検出して心拍数に対応した信号を生成し、心拍信号を分析して被検者の呼吸数を確定することからなる。
【0067】
本発明の他の実施例では、被検者の呼吸器発作の徴候をモニタする方法を提供する。この方法は、被検者の複数回の呼吸を検出して複数の呼吸に対応する複数の呼吸信号を生成し、複数の呼吸信号を合成して被検者の特性呼吸パラメータを求め、前記特性呼吸パラメータから呼吸発作の徴候を予測することからなる。本発明の一実施例における特性呼吸パラメータを求めるために複数の呼吸信号を合成する処理は、複数の呼吸信号から呼吸スコアを算出する処理が含まれる。
【0068】
本発明の他の実施例では、被検者の情動不安状態を判定する方法を提供する。この方法は、運動センサで被検者の運動を検出して検出運動に対応する電気信号を生成し、検出信号をフィルタ処理して被検者の心拍数に対応する信号を生成し、検出信号をフィルタ処理して被検者の呼吸数に対応する信号を生成し、心拍数に対応する信号と呼吸数に対応する信号を比較して被検者の情動不安状態を判定することからなる。
【0069】
本発明の他の実施例では、被検者の情動不安状態を判定する方法を提供する。この方法は、運動センサで被検者の運動を検出して検出運動に対応する電気信号を生成し、少なくとも2つの期間に亘って検出運動信号の変化を測定し、前記少なくとも2つの期間の変化を比較して被検者の情動不安状態を判定することからなる。
【0070】
本発明のいくつかの実施例における方法及びシステムによれば、たとえば、患者の身体に触れたり、あるいは、視認することなく呼吸障害を識別し、睡眠中の歯ぎしりを識別してモニタし、血中酸素濃度の変化をモニタして予測し、睡眠中の患者の身体中の流体分布の変化をモニタすることができる。
【0071】
本発明のいくつかの実施例における方法及びシステムによれば、たとえば、心弾動図信号の高周波スペクトルを復調することによって心拍数を測定することができる。また、本発明の方法及びシステムによれば、たとえば被検者に接触せずに、または、視認することなく睡眠中の被検者の複数の身体運動パラメータを評価することができる。
【0072】
本発明のいくつかの実施例における方法及びシステムによれば、慢性症状の状態をモニタできる。これらの方法及びシステムは、運動収集モジュールと、パターン分析モジュールと、出力モジュールで構成することができる。
【0073】
本発明のいくつかの実施例において、上記したシステムによって1以上の上記方法を実行することができる。たとえば、上記システムの制御ユニットで上記方法の(分析処理などの)1以上の処理を実行でき、且つ、上記システムのセンサによって上記方法の1以上の検出処理を実行できる。
【実施例】
【0074】
図1は、本発明の一実施例において被検者12の慢性症状をモニタするためのシステム10の概略図である。システム10は主に、運動センサ30と、制御ユニット14と、ユーザーインターフェース(U/I)24とからなる。適用例としては、図示するように、ユーザーインターフェース24を制御ユニット14に組み込んでもよく、あるいは、ユーザーインターフェース24と制御ユニット14を分離したユニット構成にしてもよい。また、別の適用例としては、運動センサ30を制御ユニット14に組み込むと同時に、ユーザーインターフェース24も制御ユニット14に組み込むか、制御ユニット14から離してもよい。
【0075】
ここで適用しているように、運動センサ30として「非接触センサ」、つまり、被検者の身体あるいは着衣に接触しないセンサを用いることができるが、一例としては、センサ30を被検者12の身体あるいは着衣に接触させてもよく、また、別の実施例では、運動センサ30を被検者の身体あるいは着衣に接触させていない。こうした構成のように被検者に接触しないことによって、患者12に不快感を与えることなくセンサ30によって患者12の運動を検出することができる。別の実施例では、特殊な事例であるが、たとえば患者の同意を得なくても患者が無意識のうちにセンサ12の機能を遂行することも可能である。
【0076】
図2は本発明の一実施例における制御ユニット14の構成を示す概略ブロック図である。制御ユニット14は主に、運動データ収集モジュール20と、パターン分析モジュール16とからなる。パターン分析モジュール16は主に、次のモジュールを1以上備えてなる。即ち、呼吸数パターン分析モジュール22、心拍パターン分析モジュール23、咳分析モジュール26、情動不安分析モジュール28、血圧分析モジュール29、覚醒分析モジュール31である。適用例として、2以上の上記分析モジュール20、22、23、26、28、29、31を単一の筐体にパッケージしてもよく、また別の適用例として、これらのモジュールを別々にパッケージすることもできる(たとえば、データ収集モジュール20によって部分的に収集した呼吸信号を処理する1以上のパターン分析モジュールで遠隔分析できるようにする)。更なる適用例として、ユーザーインターフェース24にLCDやCRTモニタなどの専用の表示ユニットを設けてもよい。これに代えて、または、補足的に、事後の分析に備えて未処理データ乃至処理データを遠隔場所に伝送する通信ラインをユーザーインターフェース24に持たせてもよい。
【0077】
図3を参照に後で詳述するが、呼吸数パターン分析モジュール22によって運動データから呼吸数パターンを抽出し、心拍パターン分析モジュール23によって運動データから心拍パターンを抽出する。これに代えて、または、補足的に、このシステム10において、被検者の顔、首、胸部、背部、あるいは、マットレスの下に音響センサなどの別のタイプのセンサを備える。
【0078】
図3は、本発明の実施例における呼吸数パターン分析モジュール22の概略ブロック図である。この呼吸数パターン分析モジュール22は主に、デジタル信号処理部(DSP)41と、デュアルポートRAM(DPR)42と、EEPROM44と、I/Oポート46とからなる。呼吸数パターン分析モジュール22によって、データ収集モジュール20で生成した未処理データから呼吸数パターンを抽出して呼吸数パターンの処理及び分類を行う。呼吸数パターン分析モジュール22では主に睡眠中の呼吸数パターンの変化を分析する。この分析に応じて、モジュール22では、(a)臨床発作の徴候を予測することと、(b)発作の重症度と進行をモニタするか、または、分析結果を表示もしくは通信伝送することを実行する。モジュール23、26、28、29、31は図3のモジュール22と同種である。たとえば、デジタル信号処理部(DSP)41と、デュアルポートRAM(DPR)42と、EEPROM44と、I/Oポート46と同様のデジタル信号処理部と、デュアルポートRAMと、EEPROMと、I/Oポートをモジュール23、26、28、29、31に備えることができる。
【0079】
本発明の一実施例によって測定した運動信号の分析を説明する図4A、4B、4Cを参照すると、運動センサ30は、振動センサと、圧力センサと、たとえば歪み計などの歪みセンサのいずれかをリクライニング面37に設け、被検者12の運動を検出するようにしている。たとえば被検者の睡眠中にセンサ30で検出した被検者12の運動には、後述するように、通常の呼吸運動と、心拍関連運動と、その他の非関連身体運動、あるいは、これらの合成運動が含まれる。図4Aに、マットレス下に設けた圧電センサで検出できる未処理機械的信号50を示しており、この信号には呼吸ー心拍関連信号の合成成分が含まれている。信号50を、後述する技術を利用して、図4Bに示したような呼吸関連成分52と図4Cに示したような心拍関連成分54に分解する。本発明において1以上の圧電センサを用いて測定を行った実験の結果を説明するが、他の圧力計や加速度計などのような運動センサ30で測定を行ってもよい。
【0080】
本発明の一実施例におけるデータ収集モジュール20によって被検者12の呼吸及び心拍パターンを非侵襲的にモニタできる。呼吸数パターン分析モジュール22と心拍パターン分析モジュール23によって、(a)喘息発作や心臓異常に関連する肺液蓄積などの接近する臨床症状を予測し、(b)臨床発作を発症したら発作の重症度と進行をモニタする。ユーザーインターフェース24によって、発作予測及び発症を被検者12と医療従事者に知らせる。接近する臨床発作の予測によって早期予防治療を容易にし、通常は必要な薬剤投与量を少なくすること、及び、死亡率と疾病率を低下することの少なくともどちらか一方が可能となる。喘息治療の際に、たとえば、発作による炎症を抑えるために必要な投薬量を減らして高投与量による副作用を最小限にすることができる。
【0081】
睡眠中の正常な呼吸数パターンは、日単位、週単位、月単位、年単位で緩慢に変化しがちであり、季節の変化などのような周期的変化や、繰り返す週サイクルのような周期的生活習慣(たとえば毎週日曜日の屋外運動など)、あるいは、排卵周期などのバイオリズムなどによって変化することがある。また、そうした変化が単調に進行することもあり、たとえば、小児の成長や成人の老化などによっても変化する。いずれにしても、適当なシステムを用いて緩慢な変化を動的に追跡することが望まれる。
【0082】
本発明の一実施例において、システム10によって、様々のパラメータのうちでも特に、呼吸数、心拍数、咳回数、呼気/吸気率、呼吸増大量、深呼吸、振戦、睡眠周期、情動不安のパターンをモニタする。ここでは、これらのパラメータを「臨床パラメータ」と定義する。
【0083】
本発明の一実施例におけるパターン分析モジュール16は、臨床徴候をモニタして予測するために、少なくとも1以上の分析モジュール20、22、23、26、28、29から得られた臨床パラメータを結合し、データを分析する。本発明の適用例として、パターン分析モジュール16によって、パラメータの基準値(特定の患者に定めた値、もしくは、一般の平均値)からの偏差に基づいて各パラメータにスコアをつける。パターン分析モジュール16で、スコアの平均値、最大値、標準偏差、あるいは、他の関数を定めるなどの方法によってスコアを結合する。結合したスコアを1以上の閾値(予め設定しておく)と比較して、発作の発現を予測できるか、発作が起こっているのか、発作の予測も進行も判定できないかのいずれかを判断し、且つ、発現した発作の重症度と進行をモニタする。本発明の別の適用例として、パターン分析モジュール16は、患者個人の履歴に基づいて特定の患者もしくは患者グループにおける個別のパラメータスコアを合成するための基準値と関数のいずれか一方もしくは両方を学習する。たとえば、パターン分析モジュール16に、前回の臨床徴候に先立って測定したパラメータを分析することで学習させることができる。
【0084】
本発明の一実施例におけるパターン分析モジュール16によって、臨床パラメータの基準特性の変化を認識するために個々のパターン、たとえば、上記した緩慢な変化のパターンを分析する。たとえば、小児の成長が原因で睡眠中に起こる平均呼吸数の減少変化を認識するために、睡眠中の呼吸数の月間平均を計算する。その上で、システム10によって、ある月から翌月までの平均呼吸数の変化率を計算して、患者もしくは医療専門家に告知認識せしめる。これに代えて、あるいは、補足して、システム10によって、週末における睡眠中の平均呼吸数が平日の平均呼吸数より多くなることを特定し、週末用に臨床発作を起こしているのか、あるいは、発作を起こすのかを比較判定するための異なった基準を設定する。
【0085】
本発明の一実施例におけるシステム10によって、患者の臨床状態を長期間に亘ってモニタし、その記録を残す。同時期に並行して、患者の状態に影響を及ぼす行動パターンと、治療行為データと、外部パラメータをモニタして同様にその記録を残す。同様に、これらの情報をシステム10に入力する。システム10によって、測定臨床パラメータに基づいて患者の臨床状態のスコアを算出する。
【0086】
システム10によって呼吸数パターン及び心拍パターンをいつでもモニタできるが、通常は夜間睡眠時にそれらのパターンをモニタするほうがより効果的である。被検者が目覚めている場合、モニタする条件とは関係のない身体活動及び精神活動が呼吸数パターンや心拍パターンに影響を及ぼすことが多い。通常は、そうした関係のない活動は夜間の睡眠中はほとんど影響することはない。本発明の適用例として、システム10によって夜の全体または一部夜間のパターンをモニタして記録する。結果的に得られる一連のデータには通常、長期呼吸及び心拍パターンが含まれており、総合的な解析が容易になる。加えて、そうした容量の大きい一連のデータは、統計的に重要な分析に足るデータを保存している間に運動動作や他の人為的要素によって劣化した成分を排除するのに役立つ。
【0087】
図2に戻って説明すると、データ収集モジュール20は主に、運動センサ30によって生成された未処理運動信号の処理回路、即ち、少なくとも1つのプリアンプ32と、少なくとも1つのフィルタ34と、アナログーデジタル(A/D)変換器36とからなる。フィルタ34は主に、サンプリングレートの1/2以下のカットオフ周波数を持つアンチエイリアス・フィルタとして機能する帯域フィルタ乃至ローパス・フィルタよりなる。通常、ローパスデータを少なくとも10Hzのサンプリングレートでデジタル化してメモリに保存する。たとえば、アンチエイリアス・フィルタによるカットオフ周波数を10Hzに設定し、サンプリングレートは40Hzに設定するとよい。本発明の一適用例としては、フィルタ34を、約0.05Hzなどのように約0.03Hz〜約10Hzの低域カットオフ周波数と、約5Hzなどのように約1Hz〜約10Hzの広域カットオフ周波数を有する帯域フィルタで構成する。その代わり、または、補足的に、運動センサ30の出力を、所期の信号に従って夫々が調整された利得及びカットオフ値を有する複数の信号導波路に導く。たとえば、呼吸信号については比較的低い利得と約5Hzまでの周波数帯域を用いると同時に、心拍信号については適当な利得と約10Hzの若干高いカットオフ周波数を設定する。本発明の適用例として、運動センサ30を補足的に、約100Hz〜約8kHzの周波数帯域の音響信号の設定にも利用する。
【0088】
慢性症状が睡眠周期に影響することが多い。たとえば、ここでの引用文献であるフィッツパトリックとエングルマンによる「胸部(第46号第569〜573頁)」に開示されているように、喘息は睡眠周期と睡眠の質に影響を及ぼす。本発明の一実施例におけるシステム10によって、被検者12の心拍パターンをモニタする。心拍パターンを分析して、パターンにおけるピークを特定して、ピーク間の間隔を測定する。図26は、本発明の一実施例における測定した典型的な波形を示している。波形510は心拍信号(0.8〜2.0Hz)をフィルタ処理した後の信号である。当分野において認知されているように、「RR間隔」は、たとえばECG心電図波形などの心拍信号の特徴であり、RR間隔は、心拍信号における隣り合うR波間の時間間隔である。本発明の実施例によって、たとえばピーク511と512及びピーク513と514などの各ピーク対間の時間間隔を測定することによってRR信号を計算し、その上で、斯かる時間間隔によって60秒を分割することで1分毎の拍動における瞬間心拍数(つまり、60[回/分]/(R−R)[回/心拍]=60/(R−R)[心拍数/分])を求める。サンプル結果を図27に示している。こうしたデータは、引用文献Shinar等著「心臓病学におけるコンピュータ2001」第28号第593〜596頁に開示されているようなアルゴリズムを用いて睡眠期を特定するために用いることができる。
【0089】
異なった睡眠期の長さと周期性の変化を、喘息発作、鬱血性心不全、嚢胞性線維症、糖尿病、癲癇などの慢性症状の徴候を特定するための補助的臨床パラメータとして利用できる。本発明の一実施例では、上記アルゴリズムを、熟睡期の時間及び期間を特定するために用いる。本発明の一実施例では、システム10を、レム睡眠期の時間、期間及び周期性を特定するために用い、特定したデータを、基準値を設定し、この基準値との比較による変化を求めて臨床病態を予測及びモニタするための補足的臨床パラメータとして利用する。たとえば、被検者12のレム睡眠の基準周期性の変化が喘息発作や肺水腫の徴候を意味することがある。
【0090】
本発明の一実施例におけるシステム10によって、被検者12の呼吸数、心拍数、咳発生回数、身体運動、深呼吸、呼気/吸気率をモニタできる。パターン分析モジュール16によって、臨床パラメータの基準パターンにおける変化を特定するために個々のパターンを分析する。新たな基準が前回の基準と顕著に異なることもあるがこうした変化は、たとえば、投薬などによる変化を表し、医療行為の効果を介護士や医療専門家に有意にフィードバックすることができる。図18は、本発明の実施例の一例として喘息患者について測定した実測値を示している。波形320は、当該患者の午前2時から午前6時の間の睡眠中の平均呼吸数を表している。波形322は、ここでの引用文献である「米国アカデミー睡眠薬総括書(2003年第26(3)号第342〜92頁)」の著者アンコリーイスラエル等が教示するように、デジタル統合アプローチを用いて計算した睡眠中の活動レベル(不穏状態)を表している。波形324は、本発明の一実施例により患者について計算した日常の喘息スコアを表している。波形326はモニタした患者が用いた投薬の変更日を表している。投薬変更の前後の計算データを比較する際に、基準値における統計的に有意な変更を投薬変更と関連づけて特定した。Tテストで、平均呼吸率がP<0.000001、活動レベルがP<0.05、喘息スコアがP<0.004であることを示している。統計的に有意な変化が、投薬の変更によって患者の臨床状態を改善するのに有効であることを表している。
【0091】
本発明の一実施例においけるユーザーインターフェース24によって、たとえば、上記したTテストによって臨床パラメータの基準を前回の基準と比較して求めた変化を変化被検者12と医療従事者の一方もしくは両方が知ることができる。慢性症状を治療する際に斯かる測定結果によって患者もしくは医療専門家が患者に投薬する薬量を最適に決定することができる。たとえば、患者が良好な状態を維持できる薬量を認知すれば、開始基準値に比較した基準値の変化を特定できるまで投与量を減らすことができ、最適な基準値を維持するために必要最小限まで減らして患者に投薬できる。こうして減量した投薬によってある種の喘息治療薬によって被る副作用を最小限に抑えることが可能となる。
【0092】
本発明の一実施例におけるシステム10によって、上記した臨床パラメータをモニタできる。パターン分析モジュール16によって、治療薬の変更を特定して投薬量の最適化を可能にするフィードバック情報を得るために個々のパターンを分析する。たとえば、投与する薬剤がβ遮断薬であってもよい。高血圧(高血圧症)、鬱血性心不全(CHF)、心調律動異常(不整脈)、胸痛(狭心症)を治療するためにβ遮断薬が用いられる。β遮断薬は心筋梗塞(MI)患者に用いられることがあり、心筋梗塞を抑制する。睡眠中の心拍パターンを毎晩測定することによって、たとえば、投薬の効果を確認でき、最適な心拍パターンになるまで投薬量を調整することができる。こうした結果データは患者や医療専門家に報告され、投薬量が自動投薬装置に設定される。
【0093】
本発明の一実施例におけるシステム10によって、たとえばβ遮断薬などの薬剤による不要な副作用の徴候を認識する。様々な副作用があるが、喘鳴、息切れ、徐脈、不穏睡眠などであり、これらを本発明の実施例によって患者が非侵襲的に、あるいは、介護者が確認することができる。
【0094】
再度図1を参考に説明すると、本発明の一実施例における運動センサ30は、主に、患者が横臥もしくは睡眠するリクライニング面の内部もしくは上に設けられる圧力センサ(たとえば、圧電センサなど)、あるいは、加速度計で構成され、被検者の呼吸関連運動または心拍関連運動を検出する。特に、リクライニング面37は、マットレス、マットレスカバー、シーツ、マットレスパッドなどで構成される。本発明の適用例として、運動センサ30をリクライニング面37、つまり、マットレスに埋め込まれ、運動センサとリクライニング面を一体構成にする。また、他の適用例として、運動センサ30を、被検者12の腹部38または胸部39の近傍に位置するリクライニング面37の下に設ける。別の方法として、運動センサ30を、解剖学的な被検者12の胴部の下方、つまり、被検者の脚部40などの被検者近傍のリクライニング面37の内部もしくは上もしくは下に設ける。運動センサ30をこのように位置づけることで、運動センサ30を被検者の腹部38乃至胸部39の近傍に位置づけるよりも明瞭な脈信号が得られる。他の適用例として、運動センサ30を、たとえば、Butter等が応用光学第17号第2867〜2869頁(1978年9月15日)で開示したような光ファイバーセンサで構成してもよい。
【0095】
本発明の適用例として、圧力センサ(たとえば、圧電センサ)を、たとえば、表面積が少なくとも10平方ミリメートル、厚さが5ミリメートルの剛性筐体内に封入する。センサからの出力を、主に圧電加速度計と容量性変換器を備えた電子増幅器に送り、変換器の超高出力インピーダンスを長尺の伝送に適した低インピーダンス電圧に調整する。このセンサ及び電子増幅器で機械的振動を電子信号に変換する。
【0096】
本発明の一実施例における運動センサ30は、リクライニング面37の内部または上または下に設けた格子状の複数センサよりなる。斯かる格子状構造は、単体のものより呼吸信号及び心拍信号の検出性能を高める。
【0097】
呼吸数パターン分析モジュール22によって、図3に従って後述する運動データから呼吸数パターンを抽出する。心拍パターン分析モジュール23によって、運動データから心拍パターンを抽出する。その代わりとして、システム10を、音響センサまたは気流センサなどのような異なったタイプのセンサで構成し、被検者の顔面、首部、胸部、背部などに取り付けるようにすることもできる。
【0098】
再度図1を参照に説明すると、ユーザーインターフェース24は主に、LCDやCRTモニタなどの専用表示ユニットよりなる。その代わりに、出力モジュールに、測定した未処理データあるいは処理データを遠隔場所に伝送するための無線または有線通信ポートを設け、事後の分析、研究、検討など臨床追跡管理に供するようにできる。たとえば、斯かるデータを電話線、インターネット、広域ネットワークなどを通じて無線あるいは有線で伝送することができる。
【0099】
本発明の一実施例における運動データ収集モジュール20において、約0.05〜0.8Hzのスペクトルフィルタ処理によって呼吸関連信号を抽出し、約0.8〜5.0Hzのスペクトルフィルタ処理によって心拍関連信号を抽出する。本発明の適用例として、運動データ収集モジュール20によって、被検者12の年齢に基づくスペクトルフィルタ処理を実行する。たとえば、幼児の場合はおおむね呼吸数及び心拍数が高く、したがって、スペクトルフィルタ処理は、呼吸については約0.1〜0.8Hz程度の周波数範囲の上限近くに設定し、心拍については約1.2〜5Hz範囲の上限近くに設定する。成人の場合のスペクトルフィルタ処理は主に、呼吸については約0.05〜0.5Hz程度の周波数範囲の下限近くに設定し、心拍については約0.5〜2.5Hz範囲の下限近くに設定する。
【0100】
臨床パラメータを非侵襲的にモニタする場合、計測信号の品質は患者の体格及び体重と、患者の姿勢と位置と、ベッドのマットレスなどの支持装置の機械的特性に影響される。本発明の実施例における判定基準は、特定の測定(たとえば、1分間の測定)が高品質で行えるかどうか、また、患者に表示したり事後の分析に供することができるかどうかを判断するために設定される。斯かる判定基準として、たとえば、測定信号の振幅、または、測定信号のパワースペクトルの関連するピークの振幅、あるいは、その他のパラメータを用いることができる。機械的測定では、おおむね呼吸信号は心拍信号に比べて強く明瞭に計測できる。本発明の実施例において、呼吸信号の高調波成分が心拍数の測定を阻害するので心拍関連信号は呼吸信号よりかなり弱い。そのため、この実施例では、運動データ収集モジュール20において約0.05〜0.8Hzの周波数範囲でスペクトルフィルタ処理を行って呼吸関連信号を抽出し、約0.8〜5.0Hzの周波数範囲でスペクトルフィルタ処理を行って心拍関連信号を抽出する。フィルタ処理した信号の夫々についてパワースペクトルを計算し、最も大きいピーク値を特定する。呼吸に関連する最大ピーク値に対する心拍に関連する最大ピーク値の比率を計算する。この比率を、0.02〜0.25の範囲、たとえば、0.05に設定できる基準値と比較する。この比率が基準値より小さいとすると、心拍数測定は不適当と見なし、その時期の測定値が取れなかったと見なす。図14A及び図14Bに本発明の一実施例による測定信号のパワースペクトルを示す。ピーク274は呼吸信号の最大ピーク値に対応し、ピーク276は心拍信号の最大ピーク値に対応する。図14Aにおける2つのピーク値の比は基準値以下であり、図14Bにおける比は基準値以上である。
【0101】
本発明の一実施例における運動データ収集モジュール20において、約0.05〜0.8Hzのスペクトルフィルタ処理によって呼吸関連信号を抽出し、約0.8〜5.0Hzのスペクトルフィルタ処理によって心拍関連信号を抽出する。フィルタ処理した信号の夫々についてパワースペクトルを計算し、最も大きいピーク値を特定する。呼吸比率の二次高調波に対応するピーク値の振幅が得られ、呼吸に関連する二次高調波のピークに対する心拍に関連する最大ピークの比率を計算する。この比率を0.04〜0.50の範囲、たとえば、0.10に設定できる基準値と比較する。この比率が基準値より小さいとすると、心拍数測定は不適当と見なし、その時間帯の値を表示しないか、あるいは、事後の分析に用いる。
【0102】
本発明の一実施例における運動データ収集モジュール20において、約0.05〜0.8Hzのスペクトルフィルタ処理によって呼吸関連信号を抽出し、約0.8〜5.0Hzのスペクトルフィルタ処理によって心拍関連信号を抽出する。フィルタ処理した信号の夫々についてパワースペクトルを計算し、最も大きいピーク値を特定し、呼吸に関連するピークに対する心拍に関連するピークの比率を計算する。夜間測定におけるその比率をグラフに描画している。この比率は通常、被検者が同じ位置に横臥している限りは一定に維持されると想定される。引き続く2つの時間帯(通常は30秒〜300秒の時間)について2つの時間帯の比率変化の割合を計算する。確定した閾値(典型的には10%〜50%の範囲であり、例として、25%)より大きい分だけ比率が変化する毎に、システム10が比率の変化が身体の姿勢の変化によって生じたと見なす。これらの変化の頻度及びタイミングを、睡眠の情動不安の現われとして計測する。
【0103】
本発明の一実施例において、測定信号の標準偏差(STD)を各時間帯毎、たとえば、1分毎に計算する。被検者の睡眠姿勢に変化がなければ、引き続く時間における信号のSTDを睡眠の場合に近似するものと想定し、引き続く時間帯間のSTDの変化範囲の基準値を典型的には10%〜50%、たとえば25%に確定する。基準値より大きい値の変化が確認される毎に、その症状をカウントし、斯かる症状の発生合計数と睡眠期における発生した発作症状の分布を身体位置の変化を表す情報として記録する。本発明の一実施例において、STDの変化が情動不安と同時に観察された場合のみ斯かる症状の記録をとる。
図19に、本発明の実施例において測定される機械的信号と各測定時期のSTDを示している。波形330は測定した機械的圧力信号を表し、領域332は領域333に示したSTDであり、領域334は領域335に示したSTDである。波形335におけるSTDレベルは波形333のところよりかなり大きい。波形335と333の間には波形336に示した有意の情動不安領域がある。システム10によって、身体姿勢の変化として事象336が特定できる。一方、波形337と339は同様にSTDを表している。よって、システム10は、事象338を身体姿勢の変化として識別しない。睡眠中の身体姿勢変化の回数及び運動分布は睡眠中の情動不安レベルとして表され、臨床状態を認定するための臨床パラメータとなる。
【0104】
本発明の一実施例におけるシステム10は、米国カリフォルニア州メンロパークのアパロンバイオシステム社及びスウェーデン・ソルナのエアロクリンAB社が開発した酸化窒素メータと共に用いられる。酸化窒素メータによって測定したデータをパターン分析モジュール16に送り、たとえば喘息発作などの臨床発作の徴候を確認するためにシステム10で測定した他の臨床パラメータに関連させて補足的な臨床パラメータとして用いる。
【0105】
本発明の一実施例における音響センサ110は、音声信号を効率よく検出するために、一般に聴診器内で見られる膜構成で実現できる。膜構成のセンサをマットレス、マットレスパッド、マットレスカバーの下に設けることができる。
【0106】
本発明の一実施例のシステム10を用いて呼吸、心拍、振戦における特徴的変化によって癲癇発作の徴候を認識できる。システム10による分析結果を用いて迷走神経刺激(VNS)のタイミングを決定する。VNSは、標準的な刺激の少ない電気エネルギーパルスを迷走神経を介して脳に送ることで発作を防止する。これらのパルスはペースメーカに似た装置、たとえば、米国テキサス州ヒューストンのサイバロニクス社が開発したVNS装置を用いて供給する。
【0107】
喘息を患う患者は緊急治療室に運び込まれることがしばしばあるが、緊急治療室でも時々、不安発作によるものと誤診されることがあり、結果的に、臨床症状の悪化につながり死に至らしめることが知られている。本発明の一実施例のシステム10によれば、不安発作と喘息発作の違いを区別することができる。睡眠中の不安神経にはかなり慣れているものなので、喘息発作でみられるような呼吸数パターンは顕れない。したがって、システム10では、特徴的な呼吸数パターンの変化が見られた場合は患者が喘息発作に見舞われ、不安発作ではないことを識別できる。こうした所見情報は、患者、介護者、医師、あるいは、その他の臨床的判断を行う当事者に伝えられる。
【0108】
本発明の一実施例におけるシステム10によって、規定の時間帯における平均呼吸数及び平均心拍を算出する。斯かる時間帯とは、時分あるいは日時である。患者の履歴を分析することによって、呼吸数パターンと心拍数パターンとの相関関係を計算する。喘息発作の徴候があると、心拍数と呼吸数の相関に明確な変化が現れる。夜間11時から午前6時までの間の睡眠中の呼吸数と心拍数を平均する。日毎の測定については、最後の夜Nの平均呼吸数を有する長さNの呼吸ベクトルと最後の夜Nの平均心拍数を有する長さNの心拍ベクトルを定義する。Nは主に、3〜30であり、一例として、10とする。システム10で、各日の心拍ベクトルと呼吸ベクトルの相関計数を計算する。呼吸ベクトルと心拍ベクトルの相関係数の変化を計算するために数日の移動枠を用いる。ある期間から他の期間における相関係数の有意の変化を特定するために、少なくとも数日に亘る安定した相関係数パターンが必要である。前回の時間間隔における典型的な相関係数の変動より大きい規模の相関係数レベルの変化、たとえば、前回の時間間隔の相関係数信号の3つの標準偏差より大きい変化として前記の有意の変化を定義する。システム10によって、有意の変化を一般的な臨床発作として識別する。図16及び図17に、2種の異なった喘息患者における相関係数結果を示している。波形300及び310は、本発明の一実施例においてN=10を有する心拍ベクトル及び呼吸ベクトルで計算された相関係数を表している。点302、312、314は、喘息悪化の日時あり、相関係数レベルにおける明らかな有意の変化がそれらの日時及びそれ以前に観察できる。
【0109】
本発明の一実施例におけるシステム10によって、睡眠中の呼吸数と心拍数を測定し、情動不安症状を特定する。情動不安症状を伴った呼吸数パターンと心拍数パターンの変化の相関を、喘息悪化、COPD悪化、CHF悪化などの臨床発作の徴候の指標として用いる。たとえば、情動不安症状のタイミングと心拍・呼吸数の上昇との高い相関は、喘息悪化の明確な指標となる。
【0110】
家庭や病院において早産児、未熟児には、感染症などによる状態悪化などを早期に警告するために細心の監視が必要であり、本発明の一実施例におけるシステム10によれば、非接触方法で未熟児を注意深く監視モニタでき、測定臨床パラメータの変化を察知した時点で医療専門家に警告を発することができる。
【0111】
本発明の一実施例におけるシステム10によって喘息の慢性患者を監視モニタできる。システム10によって、異なった臨床パラメータを夫々特定することによって発熱症状と喘息悪化などの症状を区別できる。図25に、本発明の一実施例で監視モニタした喘息患者の呼吸数パターンと心拍数パターンを示している。各データ点は、午後11時から午前6時までの時間帯における睡眠中の呼吸数と心拍数の平均を表している。本発明によるシステムによって日時502、503で発熱症状があったことを識別特定でき、また、日時504、505で喘息症状があったことを識別特定できる。システム10による識別特定は次のように行う。日時502、503では、心拍数の相対増加は呼吸数の増加よりかなり多く、呼吸数の増加以前に心拍数の増加が発生する。一方、喘息症状においては、呼吸数は、心拍数より早く、かなり有意に増加する。
【0112】
本発明の一実施例におけるシステム10によって、たとえば、非接触センサを用いて就寝中の被検者12の臨床パラメータを測定する。臨床パラメータにおける基準値と比較した偏差を分析するために、患者の覚醒時のデータは無視して、被検者が睡眠している時の測定値のみを考慮する。睡眠状態の特定は上記したRR方法を用いるか、あるいは、呼吸数パターンの周期性に基づいて行う。
【0113】
本発明の一実施例におけるシステム10は、被検者12が有意の情動不安を示した場合は全てのデータを無視する。よって、一例として、患者がベッドに入り、周期的な呼吸数パターンより強い信号を有意にもたらす大きい身体運動で寝返りしたり、あるいは、回転する最初の数分のデータを分析から除外する。
【0114】
本発明の一実施例では、睡眠期を上記した技術によって特定できる。特定した睡眠期に関して、平均呼吸数、平均心拍数を含む臨床パラメータを計算する。臨床発作の徴候または進行を認識するためにそのデータを、特定した各睡眠期について被検者の基準値と比較する。
【0115】
本発明の一実施例では、各夜間及び各睡眠時間について睡眠の始まりから、平均呼吸数、平均心拍数を含む臨床パラメータを計算する。臨床発作の徴候または進行を認識するためにそのデータを基準値と比較する。
【0116】
本発明の一実施例では、各夜間及び各睡眠時間について、平均呼吸数、平均心拍数を含む臨床パラメータを計算する。臨床発作の徴候または進行を認識するためにそのデータを基準値と比較する。臨床発作の徴候または進行を認識するために、たとえば、午前2時から午前3時の間の睡眠中の平均呼吸数を計算して、基準値と比較する。
【0117】
本発明の一実施例におけるシステム10によって、臨床発作の徴候または進行を認識するために、指標として測定した1以上の臨床パラメータの変化の傾向を特定する。たとえば、システム10によって3日間の夜について呼吸数の連続的な増加が見られたら、喘息の悪化の徴候指標として見なすことができる。
【0118】
本発明の一実施例におけるシステム10で、長期に亘る患者の臨床症状をモニタして記録する。同時期に並行して、患者の状態に影響を及ぼす行動パターンと、治療行為データと、外部パラメータをモニタして同様にその記録を残す。同様に、これらの情報をシステム10に入力する。システム10によって、測定臨床パラメータに基づいて患者の臨床状態のスコアを算出する。システム10で、行動パターンと、治療行為データと、外部パラメータを考慮して臨床スコアの相関係数を計算する。スコアとパターンの正相関が当該パラメータと患者の臨床状態との可能性ある因果関係を示していることを患者自身または医師に知らせる。一例として、天候、屋外運動、β作用薬の使用、家庭の掃除などの要素、あるいは、米国ペンシルベニア州ピッツバーグのヘルシーホーム団体などの喘息支援グループによる医療行為などのいくつかのパラメータに係わる喘息患者の臨床状態の変化の相関関係をシステム10で求める。たとえば、ヘルシーホーム団体が提唱した家庭内の粉塵ダニなどを掃除して清浄にする毎に患者の喘息スコアが5%ずつ改善することが本発明のシステム10によって確認できる。こうした情報データは患者、介護士、医療専門家に提供され、生活の質の最適化のために患者のライフスタイルに取り入れられる。
【0119】
本発明の一実施例におけるマルチシステム10を用いて、たとえば、都心街区または大規模な職場やその近辺で生活もしくは仕事に従事する患者をモニタし、各患者の臨床状態を監視できる。患者の臨床スコアを活動パラメータ、外的パラメータ、臨床パラメータと夫々関連づけて、斯かるパラメータの起こり得る一般的な影響を評価する。外部パラメータ、臨床パラメータ、パラメータのいずれかを有する複数の被検者の臨床スコアの正相関は、被検者のパラメータと臨床状態の因果関係を強く表し、こうしたことは、健康状態にリスクが生じる環境で作業する多数の従業員を抱える雇用者にとっては利用価値がある。
【0120】
本発明の一実施例におけるシステムによって異なったパラメータに基づく喘息スコアを計算する。喘息スコアの計算式の一例として、
【数2】

S(D):日付Dのスコア
Ra(D):前回測定した夜の全部期間における平均呼吸数で除した平均呼吸数
R’(D):下式で計算した呼吸数の一次導関数
【数3】



式において、R(D)は、日付Dにおける被検者の平均呼吸数であり、R(D−1)は日付D前の日付における被検者の平均呼吸数である。
Rb(D):先行する3夜を通した平均呼吸数で除した日付D前の夜の平均呼吸数
HRa(D):前回測定した全夜の平均心拍数数で除した平均心拍数
HR’(D):下式で計算した平均心拍数の一次導関数
【数4】



式において、HR(D)は日付Dにおける被検者の平均心拍数であり、HR(D−1)は日付D前の日付における被検者の平均心拍数である。
AC(D):前回測定した全夜の測定値の平均で除した睡眠中の活動レベル(情動不安)の測定値
SE(D):前回測定した全夜の平均睡眠効率で除した同夜の睡眠効率
DI(D):前回測定した全夜の深呼吸の平均回数で除した同夜の深呼吸回数
N:多種の疾患の内の注目する疾患で決まる整数値であって、80〜110の間の数値で、主に、88〜92で、一例として、91
【0121】
上記パラメータの夫々を日付Dに先立つ夜の睡眠時間または特定時間について計算する場合、N値91で同様に計算した喘息スコアの一例を図15に示しているが、高スコアでよりよい臨床状態を表し、1.0〜0.5の間で標準化するために反転している。波形290は、喘息患者について計算したスコアである。矢印294で示した日時は喘息が悪化した日である。
【0122】
値R3(D)、HR3(D)、AC(D)、SE(D)、DI(D)は、日付Dの直前日の、たとえば、少なくとも3連続日などのように少なくとも3日間について計算されたものである。あるいは、値Ra(D)、HR3(D)、AC(D)、SE(D)、DI(D)を、日時パラメータと夜Kの平均値の比として求めることができ、ここでの夜Kは7〜365の範囲、たとえば、30に設定する。夜Kは連続する夜でよく、たとえば、日付Dの前の連続する夜Kなどである。別の方法として、値Ra(D)、HRa(D)、AC(D)、SE(D)、DI(D)は、日パラメータと慢性症状の悪化を除く過去の複数の夜Kに亘る平均の比率として算出できる。症状の悪化のデータは利用者自身が手動で入力したり、あるいは、システム10によって自動的に入力することができる。本発明の一実施例において、睡眠中の1分毎の平均心拍数を算出し、時系列の標準偏差を計算する。この標準偏差を、たとえば、上記した患者の喘息スコア式に類似するスコア式に追加する補助パラメータとして用いる。
【0123】
本発明の一実施例におけるシステム10を用いて患者の長期間の状態をモニタして、患者の治療計画における変更によって生じる臨床変化を特定する。米国ニューヨーク州ニューヨークのプフィッツァー社が開発した糖尿病患者のための糖尿病治療薬「エクスベラ」と呼ばれるインスリン吸入治療方法が最終規制認可承認段階にあるが、吸入薬が呼吸機能に影響する可能性が懸念されている。本発明の一実施例におけるシステム10を用いて、患者にエクスベラを使用した前後に非接触で患者の呼吸機能と心臓機能をモニタして、臨床パラメータにおける変化を観察して呼吸機能になんらかの影響があるか否かを認識する。投与薬の呼吸に関連する作用としての副作用を早期検証が可能になり、喘息患者及びCOPD患者などの呼吸系に障害の高いリスクが考えられる患者にも問題の薬剤を広範に適用できる可能性をつくる。
【0124】
本発明の一実施例におけるシステム10は、マットレス上面に備えるモニタセンサ30を有している。たとえば、枕や「テディベア」のぬいぐるみの中にセンサを埋め込めば、センサをベッドから簡単に取り外したり、子供や成人が旅行時に簡単に携行するなども可能になる。
【0125】
本発明の一実施例におけるセンサ30によって、たとえば、3Hz〜20Hzの音響周波数帯より低いが、呼吸数及び心拍数より高い周波数を検出できる。この周波数帯なら振戦や咳を特定できる。
【0126】
本発明の一実施例におけるシステム10によって、数日の期間を通して疾患関連スコアを算出できる。数日間、たとえば、2週間のスコア変動性を測定し、患者の疾患状態の予測安定性を患者乃至医療専門家に通知できる。
【0127】
本発明の一実施例におけるシステム10によって、慢性疾患患者に通常の薬剤の投与を続けながら疾患状態を測定し、その上で、規定の期間に投与量を増やすか、あるいは、効果が更に強い薬剤を与え、患者が薬効の強い薬剤の投与を受けることで実現する参考のための「最適」基準値を判定する。この最適基準値は、患者が通常の薬剤投与によって最適な状態に維持されるか否かを判定するための参照値として用いられる。最適な状態を維持していなければ、医療専門家は投薬を変更したり、あるいは、別の治療方法を模索することになる。たとえば、喘息患者に経口ステロイドを1週間投与して1分当り呼吸3回以上も平均夜間呼吸数が減少した場合、医療専門家は、現在の標準薬剤が強いと言えず、別の薬剤が必要であると判断することもできる。または、抗炎症薬療法を適用していない喘息患者の呼吸数パターンに顕著な改善(平均呼吸数の低下乃至呼気/吸気率の有意な変化、または、スコア変動性の有意な低下等々)が見られない場合は、2週間に亘って吸入コルチコステロイド剤を投与した上で、医療専門家は患者への投与薬剤の日常使用を決定できる。
【0128】
本発明の一実施例におけるシステム10を用いて、患者の臨床パラメータを収集すると共に患者の個人データベースを構築する。このデータベースは、長い年月に亘って患者や医療専門家に長期に亘る緩慢傾向の経過に関する有用な予測情報をあたえる。これにより、患者の傾向を統計的な平均と照らし合わせて診断に役立ち、治療判断を補佐できる。たとえば、睡眠時の呼吸数に関する長期データを用いて、年齢曲線に対する呼吸数を示すグラフを作成できる。子供の呼吸数は年齢を増すほど減少することが予測されるが、喘息患者では年齢と共に呼吸数が減少することはない。このことは喘息診断と治療の決定の際に参考になる。また、患者の状態が改善されている(計測曲線が統計的平均値に次第に近づく)か否か、あるいは、悪化している(計測曲線が統計的平均値からの乖離が次第に大きくなる)か否かを表す予後診断の手段となる。記録保存するパラメータは呼吸数に限定せず、前記した全てのパラメータを本発明のシステムに記録保存する。早期発見及び早期治療によって重度増悪を更に効果的に抑えて治療コスト及び患者への侵襲を低減することができる。
【0129】
本発明の適用例として、運動データ収集モジュール20は、ゼロ交差法またはパワースペクトル分析を用いてフィルタ処理した信号から呼吸数及び心拍数を検出する。
【0130】
上述したように、睡眠中の被検者の運動には、呼吸関連運動と心拍関連運動と共に、その他の非関連身体運動も含まれている。通常、呼吸関連運動は睡眠中の身体運動の主要な誘因要素である。パターン分析モジュール16によって、運動データ収集モジュール20から送られてくる呼吸及び心拍に関係のない運動を表す運動信号成分を大幅に除去する。たとえば、パターン分析モジュールによって非呼吸関連運動及び非心拍関連運動によって質を低下させる信号成分を除去することができる。呼吸関連運動及び心拍関連運動は周期的であるが、通常、他の運動は不規則に発生し、予測ができない。本発明の適用例として、パターン分析モジュールによって、周波数領域スペクトル分析または時間領域回帰分析を用いて非呼吸関連運動及び非心拍関連運動を除去する。これらの分析技術は本発明の技術分野の技術者には自明であろう。本発明の適用例として、パターン分析モジュール16では、線形予測や異常値分析などの統計的手法を用いて処理対象の信号から非呼吸関連運動及び非心拍関連運動を取り除いている。運動データ収集モジュール20では主に、少なくとも10Hzのサンプリングレートで運動データをデジタル化するが、それ以下の周波数でも適用可能である。
【0131】
呼吸数パターン分析モジュール22によって主に、夫々が吸気/呼気サイクルよりなる一連の過渡呼吸パルスから呼吸数パターンを抽出する。夜間睡眠時の呼吸数パターンは下記のいくつかの分類の一つに属する。
・主にレム睡眠中に起こる比較的変化が激しい不規則な呼吸数パターン
・たとえば、チェーン・ストークス呼吸のような主に数秒から数分の継続時間の周期的呼吸数変動パターン
・呼吸数の緩慢傾向(主に、健康な被検者の正常睡眠中の緩慢傾向には数時間持続する呼吸数単調減少が含まれ、喘息など慢性的に特定疾患に罹患している被検者では図5を参照して後述するように単調減少は認識されないか発症しないことがある。)
・咳や他の睡眠障害などの呼吸数パターン中断
・一時的覚醒による呼吸数パターン中断
【0132】
呼吸数パターンは睡眠期、不安、体温などの様々な生理的パラメータに関係する。たとえば、通常レム睡眠は不規則に変化する呼吸数パターンを示すが、熟睡期はより規則的で安定したパターンを示す。異常に高い体温は呼吸数を増加させるが、通常、正常な周期的呼吸数変動パターンを維持する。不安などの心理学的変数も、睡眠中の呼吸数パターンの調整因子であり、更に、その効果は通常、睡眠の進行と共に弱まる。咳や一時的な覚醒によって起こる呼吸数パターンの中断が喘息などで起こることは正常であるか、喘息に関係するのか、他の非関連症状に関係するのかであるが、いずれにしてもその状況によって評価する。
【0133】
本発明の一実施例では、パターン分析モジュール16は喘息発作の徴候を予測することと、その重症度と進行をモニタすることの少なくとも一方を実行するよう構成されている。パターン分析モジュール22、23は特に、呼吸数パターンと、呼吸数変動パターンと、心拍数パターンと、心拍数変動パターンの少なくとも1つの変化の分析と、喘息発作の徴候の予測を一緒に実行する。本発明の適用例として、呼吸数乃至心拍数の抽出を、フィルタ処理した信号のフーリエ変換を演算し、呼吸数と心拍数に対応する許容範囲内の最大スペクトルピーク値の周波数を求めるか、または、ゼロ交差法を用いて実行するか、あるいは、時間領域信号のピークを求めて1分間のパルス間隔時間を平均化することで実行する。本発明の適用例として、斯かる平均化は範囲外の値を除去した上で行う。
【0134】
呼吸数は発作の徴候以前に若干増加するが、この増加だけが発作の徴候の特異的特徴とは限らないので、発作の徴候をより正確に予測するために、本発明の実施例では、呼吸数パターン分析モジュール22によって補足的に呼吸数変動パターンの変化を分析する。本発明の適用例として、モジュール22で1以上の下記パターンを夫々の基準パターンと比較して、基準値からの偏差を、(a)発作の徴候と、(b)進行中の発作の重症度のいずれか一方または両方の指標として解釈する。即ち、
・緩慢傾向の呼吸数変動パターン: モジュール22において、たとえば、一般に健康な被検者の基準値に対する増加値を接近する発作もしくは進行中の発作の指標として、あるいは、少なくとも1時間以上の、たとえば、特徴区分した少なくとも2時間、3時間、あるいは、4時間の間の呼吸数の単調増加の減衰の指標として、あるいは、前記減衰を発作の重症度に左右される増加呼吸数変動パターンへの変換の指標として解釈する。
・呼吸数パターン: モジュール22において、たとえば、睡眠の最初の2時間、3時間、4時間の間などの最初の数時間における呼吸数の増加または減少しない状態を接近する発作もしくは進行中の発作の指標として解釈する。
・呼吸数変動パターン: モジュール22において、呼吸数変動における減少を接近する発作もしくは進行中の発作の指標として解釈する。斯かる減少は一般に、発症の前兆として発生し、発作中の息切れの進行と共に激しくなる。
・呼吸反復パターン: モジュール22において、呼吸反復の大幅な増加を接近する発作もしくは進行中の発作の指標として解釈する。呼吸反復パターンには、限定的ではないが、吸気時間/総呼吸反復時間、呼気時間/総呼吸反復時間、(吸気時間+呼気時間)/総呼吸反復時間がある。
・夜間睡眠の終了(主に、約午前3時から午前6時の間)に向かう呼吸数の変化
・咳、睡眠障害、覚醒などによる呼吸数パターンの中断: モジュール22において、これらの発現を定量化して、喘息発作の可能性を予測する関連性を判定する。
【0135】
パターン分析モジュール22、23において、斯かる徴候のない夜間における被検者の呼吸乃至心拍パターンの夫々を分析する。あるいは、モジュール22、23に、統計的平均値を基に基準パターンをプログラム設定しておく。本発明の適用例では、斯かる統計的平均値を年齢、身長、体重、性別などの特徴で分類しておく。
【0136】
本発明の一実施例におけるパターン分析モジュール16において、測定呼吸数パターンと基準呼吸数パターンとの比較、及び、測定心拍数パターンと基準心拍数パターンとの比較のいずれか一方もしくは両方を行うことで発作の徴候と進行する発作の重症度のいずれか一方もしくは両方を判定する。
【0137】
本発明の一実施例における呼吸数パターン分析モジュール22において、被検者の睡眠時間で計算した呼吸数パターンをローパス・フィルタ(たとえば、有限インパルス応答フィルタ)に通して、レム睡眠などの短期効果を低減する。本発明の適用例として、心拍パターン分析モジュール23でも心拍データについて同様のフィルタ処理を実施する。
【0138】
本発明の一実施例における実験で計測した慢性喘息患者の呼吸数パターンのグラフを示した図5を参照して説明すると、喘息患者の呼吸を幾晩かの睡眠中にモニタして、患者の呼吸数を睡眠(レム睡眠における短期効果を除くため、または、レム睡眠を考察しないためにローパスフィルタを用いてレム睡眠中のデータを除いた)の各時間毎に平均値を求めた。患者をモニタした最初の約2ヶ月間の間は喘息発作を起こさなかった。波形200は、この無発作期間中に記録した典型的な緩慢傾向の呼吸数パターンであり、よって、これを当該患者の基準緩慢傾向呼吸数パターンとして定義した。注目すべきは、非喘息患者に典型的に見られる呼吸数の単調減少とは異なって、実験における慢性的喘息患者の基準呼吸数パターンは、睡眠初期の数時間中の呼吸数の初期減少を反映し、これは残りの大半の夜時間の呼吸数の漸増の後に続いて起こる。
【0139】
波形202、204は約2か月経過後の引き続く2晩の記録であり、波形202が当該2番の初日であり、波形204は第2夜のものである。患者は、前記第2夜中のぜんそく発作に見舞われており、波形202、204は夫々、発作前の緩慢な傾向の呼吸数パターンと、発作性の緩慢な呼吸数パターンを表している。同グラフから分かるように、患者の呼吸数の数値は毎分約1〜3回の呼吸と、発作前の夜の全体における基準の関係によって上昇し、発作を起こした夜の基準に対する場合は更に上昇する。
【0140】
ここに記載した技術を用いて呼吸数パターン分析モジュール22で、波形202のパターンを波形200の基準パターンと比較して、患者が喘息発作に襲われることを予測する。モジュール22で波形204のパターンを波形200の基準パターンを比較して喘息発作の進行を判断する。
【0141】
本発明の一実施例において基準線からの偏差を基準パターンからの測定パターンの累積偏差として定義する。臨床症状を表す閾値を、一定の標準誤差(たとえば、1つの標準誤差)に等しく設定する。その代わりとして、その他の測定パターンと基準パターンの偏差測定値、たとえば、相関係数、平均平方誤差、パターン間の最大差、パターン間の領域などを用いる。更に別の方法として、パターン分析モジュール16において、たとえば、2倍の重みを睡眠の最初の2時間もしくは午前3時から6時の睡眠に与えることによってパターンに沿う特定領域を重視する重量解析を用いる。
【0142】
図6及び図7は、本発明の一実施例により測定した呼吸及び心拍夜間パターンと典型的な基準パターンのグラフである。波形100と波形102(図6及び図7)は、喘息発作を起こさなかった場合の通常の基準パターンである。棒線は標準誤差である。波形104と波形106(図6及び図7)は、喘息発作の徴候に先立つ夜間のパターンである。波形100、102と波形104、106との間のパターン変化の検出によって接近する喘息発作の早期予測が可能になる。
【0143】
本発明の一実施例におけるパターン分析モジュール16は心不全の臨床症状の徴候を予測することと、症状の進行の重症度を監視モニタすることのどちらか一方もしくは両方を行うように構成されている。モジュール16によって主に、増加した心拍数と共に増加した呼吸数を検出した場合、及び、モニタした呼吸数パターン乃至心拍パターンに心不全に関連する特徴、あるいは、無呼吸、チェーン・ストークス呼吸、周期性呼吸などの症状が含まれている場合の少なくとも1つ以上の症状が含まれていると発作が急迫していると判定する。
【0144】
本発明の一実施例において、呼吸サイクルを吸気と呼気が連続する区分に分割する。呼吸数パターン分析モジュール22によって、睡眠(主に夜間の睡眠)中の吸気に比例する呼気区分の最大継続時間への傾向を接近する発作乃至進行発作の指標と解釈する。本発明の別の実施例では、呼吸活動の反復サイクル(呼気区分に吸気区分を加えた継続時間)に対する非呼吸運動の関係を接近する発作または進行発作として解釈する。
【0145】
再度図2を参照すると、本発明の一実施例におけるシステム10は更に、喘鳴や咳によって賞いる呼吸関連音を測定する音響センサ110を備えている。(本発明の適用例として、呼吸センサ30を圧力計で構成し、音響センサ110をこの圧力計と一体にしてもよい。たとえば、一つのセンサで音響と身体運動の両方を検出してもよい。別の方法として、音響センサ110を別構成にしてもよい。)パターン分析モジュール16によって、呼吸音を独立して処理するか、あるいは、たとえば、喘鳴音のS/N比を高めるスペクトル平均化によって呼気/吸気に固定した時間で処理する。本発明の適用例として、喘鳴レベルと吸気/呼気タイミングが、次の喘息発作の予測と発作の重症度と進行性の監視モニタの少なくとも一方の情報として利用できる。たとえば、大抵の患者における呼気中に起こる喘鳴は、吸気中の喘鳴より高い信頼性のある喘息悪化の指標である。
【0146】
喘鳴は、呼吸サイクルの特定部分(主に、吸気と呼気)の原因となり、次の呼吸困難及び進行中の呼吸困難の種類に関する有用な病識である。加えて、呼吸サイクルの周期性によって喘鳴をフィルタ処理することで、気道閉塞の呼吸関連音の識別性を向上させ、且つ、呼吸活動に関係のない環境雑音の除去性能を高めることができる。周期的呼吸サイクルに関連する喘鳴は、迫り来る呼吸困難または進行中の呼吸困難の予兆を示す知見補助情報でもある。
【0147】
本発明の一実施例におけるパターン分析モジュール16は、臨床発作の接近または発現に伴う咳症状を検出乃至評価する咳分析モジュール26を備えている。喘息の場合、軽度の咳がしばしば、臨床喘息発作の迫り来る発症を表す重要な早期予測値となる(一例として、上記したA.B.Changの文献参照)。鬱血性心不全(CHF)では、咳症状が、心不全悪化あるいは心血管不全による肺の体液鬱滞の早期警告になることがある。
【0148】
本発明の適用例として、咳音を、リクライニング面の中、上、下のいずれかに取り付けた運動センサ30によって、主に約50Hz〜8kHz、たとえば、約100Hz及び約1kHzの周波数の音響帯域フィルタを用いて検出する。別の方法として、信号を2以上の周波数帯域にフィルタ処理する。運動データ収集モジュール20には、身体運動を記録するために主に10Hzまでの範囲の極低周波の少なくとも1つの周波数帯域と、聴覚音を記録するための約50Hz〜8kHzの間の高周波領域の少なくとも1つの周波数帯域を設定している。本発明の適用例として、モジュールに約150Hz〜1kHz程度の比較的狭帯域を設定する。
【0149】
本発明の一実施例による異なった周波数成分の運動信号のグラフを示した図8A及び図8Bを参照すると、咳症状には、身体運動と、音声に続く非音声破裂運動が同時に存在する。咳分析モジュール26によって、音響信号と運動信号からの身体運動信号との相関をとることで咳症状を検出する。モジュール26では主に、咳症状を積極的に検出するために機械成分と音響成分に着目している。図8Aに測定信号の低周波(5Hz以下)成分114を示し、図8Bに測定信号の高周波(200Hz〜1kHz)成分116を示している。咳分析モジュール26では主に、低周波成分114と高周波成分116に顕れる事象のみを咳と見なしている。たとえば、成分116中の高周波事象Aは成分114中の低周波事象Bを伴わず、よって、モジュール26では事象Aを咳とは見なさない。一方、成分116中の高周波事象B、C、D、Eは成分114中の対応する低周波事象を伴うので、咳と見なす。本発明の適用例として、咳分析モジュール26には、上記したようなJ.Korpas等の文献、P.Piiril等の文献、T.Salmi等の文献に記載された技術を適用している。
【0150】
本発明の一実施例では、パターン分析モジュール16において、たとえば、標準FM復調技術などで周波数を復調することで連続する心拍信号から呼吸数を求めている。たとえば、標準ピーク検出アルゴリズムを用いて心拍信号のピーク値を求めることでRR間隔を計算している。図26に喘息疾患小児で測定した心拍信号を示している。図27は、心拍信号から算出したRR信号である。図28はRR信号のパワースペクトル(波形532)と、呼吸信号のパワースペクトル(波形530)を示しており、両波形には呼吸数に対応するピーク(534と536)が含まれている。
【0151】
本発明の一実施例におけるRR信号を、被検者の吸気に対する呼気までの時間率を計算するために用いている。この時間率は、被検者の呼吸系の状態を表している。洞性不整脈によるRR間隔は、呼気による増加と吸気による低下を予測でき、RR信号が高まる時間とRR信号が弱まる時間の比率を計算し、呼吸サイクルの平均を求めることですることで、呼気の吸気に対する比率を算出できる。
【0152】
本発明の他の実施例において、反復サイクルなどの主要な呼吸パラメータと呼気/吸気比を呼吸関連圧力信号から求める。通常の呼吸数パターンは呼気、吸気、休止からなる反復信号複合成分が含まれる。短時間の信号正常性を仮定すると、大半の睡眠期中に予期されるように、整合した呼吸信号複合成分の同期アンサンブル平均化を用いて小さい複素間偏差の平均化が可能になる。吸気から呼気までの遷移に対応する信号ピーク属性を整合点としてもちいて同期平均化を実行する。上昇時間が吸気区間であり、下降時間が呼気区間であり、呼気区間の終了と吸気区間の開始の間の時間が休止区間とした場合、結果的に得られた高品質な平均化呼吸信号複合成分を主要呼吸パラメータの特定に用いる。吸気/呼気区間比率、休止区間と反復サイクルの短縮、信号複合波形の変化などの呼吸パラメータの変化を用いて、迫り来る喘息発作を識別し、進行中の症状の進行乃至症状の緩和を確認モニタする。図22に、一例として識別したピーク365、366、367を含む機械的に測定した呼吸信号を示している。図23は、図解例示のために図22のピークを垂直に変位させて互いに整合させた複数の呼吸サイクルを示している。図24は、図23の整合呼吸サイクルを平均化した結果を示している。波形381は、測定患者の呼吸サイクルの平均化波形である。サイクル区間382−384は吸気に対応し、区間384−386は呼気区間であり、区間386−388は休止区間である。
【0153】
本発明の実施例において、メカニカルセンサで逆呼吸信号を表示する。パルス信号を用いることで信号の正しい方向を確認できるので、呼気区間において増加した心拍数を予測できる。別の方法として、休止区間の位置は呼気後に現れると予期できるので、これによって信号の正確な方向を認識できる。これは、心拍信号には通常正常な呼吸関連洞性不整脈が現れるので可能となる。
【0154】
本発明の位置実施例におけるパターン分析モジュール16によって、たとえば、標準的なAM復調技術を用いることで振幅復調によって連続する振幅信号から呼吸数を算出できる。これは、呼吸関連胸壁運動が心拍信号の機械的変調を誘起するので可能となる。
【0155】
本発明の一実施例のパターン分析モジュール16において、振幅乃至周波数復調心拍信号を用いて心拍信号からの復調洞性不整脈パターンと呼吸信号を比較して呼吸及び心拍信号を適切に取得することができる。本発明の適用例として、連続する心拍数の一連の時間差を求めて洞性不整脈パターンを周波数復調し、進行する呼吸数パターンについて不偏の推定値を確定する。別の方法として、ハイパスフィルタ処理、全波整流処理、ローパスフィルタ処理によって心拍を振幅復調する。
【0156】
本発明の一実施例による経時信号と対応する周波数領域を表すグラフを示した図9を参照に説明すると、グラフ120、122は夫々、経時呼吸信号と周波数領域である。グラフ124、126は振幅復調呼吸数パターン及び周波数復調呼吸数パターンであって、グラフ128に示した心拍信号から求めたものである。グラフ130、132は、特定の周波数領域におけるグラフ124、126から求めた呼吸信号である。
【0157】
これらのグラフは、(a)グラフ120、122に示した呼吸信号から直接求めた呼吸数パターンと、(b)グラフ124、126、130、132に示した心拍信号から間接的に求めた呼吸数パターンとの類似性を表している。この類似性は特に、グラフ122、130、132に示した周波数領域に顕著に表れている。
【0158】
本発明の一実施例におけるパターン分析モジュール16は、呼吸関連信号から心拍信号を求める。この方式は、呼吸関連信号が直接的に測定した心拍信号より明瞭な場合に実用的である。心拍関連信号より有効性の高い機械的身体運動によって呼吸関連信号を生成するので、こうした方法をとることがある。
【0159】
本発明の一実施例において測定した呼吸関連信号を用いて心拍関連信号を復調することで、心拍関連信号の検出を改善することができる。本発明の適用例として、呼吸数パターン分析モジュール22において、約0.05〜0.8Hzの周波数範囲でスペクトルフィルタ処理によって呼吸関連信号を求め、約0.8〜5Hzの周波数範囲でフィルタ処理するによって心拍関連信号を求める。心拍パターン分析モジュール23において、心拍関連信号を呼吸関連信号で乗じるなどによって呼吸関連信号を用いて心拍関連信号を復調する。この復調によって心拍関連信号の明瞭な復調信号が得られ、検出性能を高めることができる。復調信号のパワースペクトルには復調心拍数に対応したピークが鮮明に顕れることがある。
【0160】
図10A、10B、10Cに、本発明の一実施例によって測定した周波数スペクトルのグラフを示している。図10Aに未処理心拍関連信号の周波数スペクトル信号140(未処理信号は図示なし)を示しており、図10Bに同時に測定した呼吸関連周波数スペクトル信号142を示しており、図10Cに呼吸関連スペクトル信号142(図10B)と心拍関連スペクトル信号140(図10A)の積を示している。復調心拍周波数を表す復調スペクトル信号144に明確なピーク150が見られる。
【0161】
本発明の適用例として、復調において用いた呼吸関連信号を、高周波成分を低減した高周波領域カットオフ周波数(たとえば、上記した0.8Hzに代えて0.5Hz)でフィルタ処理する。斯かる低減は通常、呼吸関連信号の基本正弦波形を復調演算に用いる裏付けとなっている。
【0162】
本発明の一実施例における呼吸数パターン分析モジュール22は主に、頻呼吸、チェーン・ストークス呼吸(CSR)、周期性呼吸などの夜間睡眠中にCHFを伴う異常呼吸数パターンを検出できるようになっている。
【0163】
本発明の一実施例におけるシステム10で胎児心拍数を判定する。主に、寛いだ状態での母体心拍数は毎分100回(BPM)以下であるが、健康な胎児心拍数は大体110BPM以上である。システム10の心拍パターン分析モジュール23は、母体心拍信号から胎児心拍信号を主に母体心拍信号用のローパスフィルタと胎児心拍信号用のハイパスフィルタを用いて区別する。
【0164】
図11に本発明の一実施例によって測定した結合及び分解した母体心拍信号及び胎児心拍信号のグラフを示している。グラフ220、222は夫々、特定時間及び周波数領域において測定した結合母体及び胎児呼吸及び心拍信号である。グラフ220で示した信号は次の2つの成分に分解したものである。つまり、(1)グラフ224、226における時間及び周波数領域に示した母体心拍信号、(2)グラフ228、230の時間及び周波数領域に示した胎児心拍信号である。
【0165】
本発明の一実施例において、母体呼吸信号を母体洞性不整脈に整合させることで母体心拍パターンを識別または確認するために母体呼吸信号を用いる。上記したように、母体心拍数を母体呼吸数で周波数変調及び振幅変調するので識別、確認が可能となる。母体心拍を正確に識別する機能によって、胎児心拍パターンの識別が可能になる。
【0166】
本発明の一実施例において、母体呼吸関連信号(胎児心拍関連信号より強くなることが多い)を、胎児心拍関連信号を復調するために用いる。胎児心拍信号を母体呼吸信号で振幅変調する場合があるので前記復調処理が可能となる。こうした場合、検出が比較的簡単な母体呼吸信号を用いて、検出が比較的困難な胎児心拍信号を暗騒音から区別して取り出すことができる。たとえば、(1)上記技術を用いて母体呼吸数を測定する、(2)運動信号を胎児心拍数(たとえば、約1.2Hzから約3Hz)に適した帯域フィルタに通す、(3)フィルタ処理した信号を呼吸信号で乗じる、(4)結果的に得られた信号を高速フーリエ変換する、(5)胎児心拍数に対応する変換信号中のピークを求めるなどの処理によって胎児心拍数信号を検出できる。
【0167】
本発明の実施例におけるシステムで、母体運動とは異なった振幅乃至周波数特性を有する胎児運動パターンを測定する。胎児の運動によって得られる信号は、母体の運動によって得られる信号より弱く、母体運動によって得られた信号より高周波(特定周波数での解析時)である。加えて、胎児の運動は通常、腹部センサによって最初に(または、少なくとも最も強く)記録されると同時に、母体の運動が腹部センサもしくは他のセンサ(たとえば、脚部センサ)によって記録される。本発明の適用例におけるシステム10は、複数の運動センサ30を有し、母体の腹部近傍の高周波運動をモニタして胎児の運動を識別し計測する。
【0168】
本発明の一実施例におけるシステム10は、心臓データ及び呼吸データをモニタすることによって睡眠サイクルを監視モニタすると共に、睡眠中の被検者が浅い眠りやレム睡眠などのような最適な睡眠状態にあることを確認する。覚醒のために被検者自身が選択した時間枠中の睡眠状態を検出した上で、システム10はユーザーインターフェース24を介して可視信号乃至音響信号を被検者に与える。本発明の適用例として、上記したZ.Shinarの文献に開示された技術を利用して、呼吸数データ、心拍数データなどを適当に調整して睡眠段階情報を求める。本発明の一実施例における運動センサ30は主に、リクライニング面30の内部、上面、下方のいずれかに取り付ける(図1)。本発明の適用例として、システム10の全ての構成要素でなくたとえば、運動データ収集モジュール20、運動センサ30、呼吸数パターン分析モジュール22、心拍パターン分析モジュール23などの一部構成要素のみを用いる(図2)。
【0169】
本発明の一実施例におけるシステム10は、生活データや呼吸数パターン、心拍パターン、運動事象、咳症状などの他の補助データを含む毎晩の複数の徴候データを連続モニタして記録する。複数の徴候データを用いて、正常パターンから病態生理学的な変異を追跡する参考データとなる患者の個人的なファイルを作成することができる。
【0170】
本発明の一実施例において、複数の測定パラメータを下記の式に基づいて結合する。
【数5】

・・・(式1)
式において、AiはパラメータPiに与えられる相対重みであり、ΔPiは或る夜の値Piと値Piに設定された基準値との差である。Fは主に、毎時間乃至毎晩計算され、個人履歴に基づいて予め決められた参照値と比較される値である。値Fが参照値を超えた場合、システムは被検者乃至医療関係者に警報を与える。どのパラメータPiにも適するように、値ΔPiの符号の代わりに絶対値ΔPiを考察する。また、どのパラメータPiにも適するように、平方、平方根、指数関数、対数、あるいは、同様の他の関数を用いて考察する。
別の方法として、値ΔPiの代わりにどのパラメータPiにも適するように、値ΔPiを参照テーブルに入力して求めた値を用いることもできる。更に他の方法として、得られた関数Fを(予め設定した、もしくは、学習した)参照テーブルに入れて結果を解釈することもできる。
【0171】
本発明の一実施例では、複数パラメータの夫々のスコアを計算し、上式1などのスコアを結合させる関数を適用して複数パラメータを結合する。本発明の適用例において或る時間、たとえば、1時間、4時間、24時間、48時間などの期間に臨床発作が急迫したものでなければ各スコアはパラメータ値発生の確率を表している。この機能は、或る時間において臨床発作が急迫したものでなければ、結合したパラメータ値発生の組み合わせ確率を予測するものである。たとえば、n個の監視パラメータについて夫々が、臨床発作が閾値t(i)と、クロス閾値t(i)の確率p(i)を有する場合に臨床発作が急迫していなければ、2項分布を計算してクロス閾値の観察組み合わせが不規則である確率を求める。組み合わせが観察される確率が低い場合、緊急信号を発するか、他の手段をとる。たとえば、組み合わせが観察される確率を、システム10によって予め定めた、あるいは、学習された閾値と比較させてもよい。確率が閾値未満である場合、システム10によって、発作が急迫しているより高い確率を示す警告信号を発する。
【0172】
本発明の一実施例におけるシステム10で、上記した閾値、重み、確率の少なくとも1つを学習する。本発明の適用例として、システム10では斯かる学習を実行するために以下の方法を採る。
・発作が発生するたびに、被検者乃至医療従事者がユーザーインターフェース24を用いてシステム10に発作の発生情報を入力する。または、発作を明確に表すパラメータ(たとえば、毎分30回の呼吸を超える呼吸数)を検出することでシステム自身が発作を認識する。更に他の方法として、システム10が投薬装置266からの入力に基づいて発作の発生を検出する(たとえば、発作の発現を表す閾値を超えると吸入器の使用レベルであると判断する)。
・適時(たとえば、2週間毎)に、システム10で実際の発作とシステムが警報を発した発作とを比較する。
・正確に予測された発作、偽陰性、偽陽性の夫々について、現在の閾値、重み、確率分布に従ってシステムが発した予測の正確度をシステム10がチェックする。
・チェック結果に応じて、システムで1以上の閾値、重み、確率分布を増分的に調整する。
【0173】
一例として、ある喘息患者では発作に先立ち咳症状を見せるが、他の患者にはその症状が顕れない。2週間毎にシステムで発作に先立つ咳症状をチェックする。これに従って、各偽陰性あるいは偽陽性について数パーセント(たとえば、5%)だけ閾値の上下調整をシステムで行う。たとえば、本発明の適用例として、正確な予想発作の夫々について、咳パラメータの重みの調整をシステムで行う(たとえば、直近の発作5回に先立つ実質的な咳症状があった場合、システムで咳パラメータの重みを上げる)。別の方法として、偽陰性あるいは偽陽性について咳パラメータの重みを調整する。
【0174】
本発明の実施例において、喘息やCHFなどのいくつかの臨床症状である夜間情動不安乃至覚醒の発症をシステム10でモニタし、分析する。特に、システム10で発作を定量化することで、夜間情動不安乃至覚醒の客観的尺度が得られる。上記したように、システム10では、特定の周波数領域における被検者の周期的運動信号を分析し、呼吸数及び心拍数に対応する周波数領域信号(更には、対応する高調波も選択的に用いる)におけるピークを特定する。被検者の身体運動によって、突発的に、且つ、通常は強力な非周期運動信号を生じる。システム10では、斯かる運動が過渡的(たとえば、約2〜10秒の継続時間)であり、その後周期的呼吸及び心拍信号が戻ってきた場合はその非周期的運動を情動不安と解釈する。また、システム10において、斯かる運動が規定の時間以上継続したり、あるいは、非周期信号が規定の時間以上顕れた場合(いずれの場合でも被検者がベッドを離れた状態)、非周期的運動の発生を覚醒事象と判断する。
【0175】
本発明の実施例において、喘息やCHFなどのいくつかの臨床症状である夜間情動不安乃至覚醒の発症をシステム10でモニタし、分析する。
特に、システム10で発作を定量化することで、夜間情動不安乃至覚醒の客観的尺度が得られる。上記したように、システム10では、特定の周波数領域における被検者の運動信号を分析し、呼吸数及び心拍数に対応する周波数領域信号(更には、対応する高調波も選択的に用いる)におけるピークを特定する。被検者の身体運動によって、突発的に、且つ、通常は強力な非周期運動信号を生じる。システム10で、モニタ期間をいくつかの呼吸サイクルを含む、特に30〜300秒、たとえば、60秒の継続時間に分割する。各発作を「安静」か「喘鳴」と識別する。つまり、パワースペクトルが被検者の呼吸において想定される範囲(たとえば、0.2〜0.5Hz)であれば安静と見なす。各安静状態について機械的信号の標準偏差を計算する。情動不安レベルを次のように求めることができる。即ち、初期においてシステム10が各時間区間の閾値レベルを規定する。たとえば、「安静」状態におけるデータの標準偏差を参考に閾値を設定し、連続的な「喘鳴」状態を有効とする。たとえば、閾値を標準偏差の2〜10倍、例として、標準偏差の3倍、とする。各時間区間について対応する閾値以上の機械的データ信号の範囲を、「米国アカデミー睡眠薬総括書(2003年第26(3)号第342〜92頁)」の著者アンコリーイスラエル等が提案するデジタル積分法に示されたような継続時間の情動不安を推定する。
【0176】
他の呼吸数パターン変化は、たとえば「アン・アレルギー喘息免疫学」(2005年2月、第94(2)号第247〜50頁)でホーク等の文献、「Pflugers Arch」(1977年11月第25巻第372頁(1)項)でコーラーの文献、「応用生理学ジャーナル」(2000年8月第89号第711〜720頁)のカスパーが教示するような呼吸増大(徴候)や深吸気などの呼吸亢進運動の存在に顕れる。本発明の一実施例におけるシステム10で、呼吸増大(一般には「溜息」)や深吸気の症状をモニタして分析する。特に、システム10では、これらの症状を定量化して、異なった睡眠期において異なった夜間区分及びいくつかの症例における数値や比率を測定する。これによって、患者の臨床状態の評価のための補足的臨床パラメータが得られる。深呼気または溜息の症状を次の方法で計算する。即ち、初期において吸気終期及び呼気終期の位置決めをする(ECG信号におけるR波検出)。これらの2種類のパラメータから呼吸長(連続する2つの吸気終期間の時間)と呼吸の深さ(吸気終期における呼吸振幅からから呼気終期における呼吸振幅を差し引いた値)を計算する。正常な呼吸サイクルよりかなり大きい呼吸サイクル、たとえば、次の条件の場合、その呼吸サイクルを溜息/呼吸増大または深吸気と定義する。即ち、(1)深さが直近の12サイクルの平均呼吸深さの1.5〜3倍の深さの場合、(2)長さが直近の12サイクルの平均呼吸長さの1〜2倍の長さ場合、(3)直近の長さ及び深さの標準偏差が20%以下の場合である。
【0177】
本発明の別の実施例におけるシステム10は、溜息呼吸困難と喘息を区別する。
【0178】
喘息患者は医療専門家が勧める以上に幅広く短期間に薬物を服用することがあり、ある場合には、たとえば十代の患者には患者、保護者、医療専門家に知らせず無責任に投薬されることがある。たとえば、気管支拡張薬などの薬剤の過剰服用が治療効果を低減させ、喘息の非常事態時に救済が不十分な結果になることがある。よって、気管支拡張薬の過剰服用を認識する必要がある。気管支拡張薬には、通常4〜6時間内に鎮まる心拍数及び呼吸数の特徴的効果がある。本発明の一実施例におけるシステムは、このパターンを特定して気管支拡張薬の明確な使用の回数と日付を記録し、気管支拡張薬の使用統計量を患者、介護人、医療専門家に知らせる。
【0179】
睡眠時無呼吸症の患者には持続的気道陽圧法(CPAP)の治療が施されることが多い。多くの場合、CPAP装置の使用を最適化するために呼吸数及び心拍数を求めることは有効である。本発明の一実施例における運動データ収集モジュール20において、約0.05〜0.8Hzの周波数範囲のスペクトルフィルタ処理を行って呼吸関連信号を求め、且つ、約0.8〜5.0Hzの周波数範囲のスペクトルフィルタ処理を行って心拍関連信号を求める。呼吸数と心拍数のパターンと同時に、システム10で測定した他の臨床パラメータを用いてCPAP装置の操作を最適化する。
【0180】
本発明の一実施例による身体運動のグラフを示した図12を参照すると、システム10で睡眠中の過剰な身体運動によって顕れる情動不安を監視モニタする。システム10で、情動不安を定量化することで夜間情動不安の客観的尺度が求められる。図12に示すように、情動不安症状250を身体運動の実質的増大で特徴付け、正常な睡眠期252と比較する。本発明の一実施例における運動センサ30は主にリクライニング面37の内部もしくは上もしくは下に設ける(図1)。本発明の適用例として、システム10によって、特定時間帯における測定運動信号の標準偏差が少なくとも睡眠期の一部の間の運動信号の平均標準偏差の倍数である場合に情動不安を表す時間帯を分類する。たとえば、倍数を約2〜5、たとえば、3にする。別の方法として、システム10において偏差の数学的乃至統計的な他の指標、たとえば上記した周波数領域分析技術などを用いる。また、他の方法として、システム10において、下式で定義される積分関数J(i)を用いる。
【数6】

・・・(式2)

式において、X(i)は運動センサ30からサンプリングされた未処理信号である。たとえば、X(i)が毎秒10サンプルであれば、αの最適値は0.01から0.1の間、例として、0.05になる。信号Jは主に全夜の平均であり、標準偏差を計算する。或る時点でJ(i)が少なくとも2秒経過した期間の標準偏差の2倍以上平均を上回る場合は、情動不安の症状とする。
【0181】
本発明の適用例として、斯かる情動不安の症状が特定されれば、システム10で時間(たとえば、30分の継続時間)当たりの症状の発症回数を計測する。臨床発作(ここでの全ての症状)を検出するために、システム10において測定夜間パターンを基準となる参照パターンと比較する。たとえば、情動不安症状がシステム10では、時間の数パーセント以上(10%、または、20%、または、30%以上)で検出された場合は臨床警報を発する。別の方法として、システム10は、1夜当たりの情動不安の回数が閾値を超えた場合に臨床発作警報を発する。本発明の適用例として、参照パターンあるいは閾値を統計的平均に基づいて決定し、また、他例として、参照パターンあるいは閾値を無症候の数夜に亘って被検者からのデータを平均することで決定する。
【0182】
本発明の一実施例における正常な睡眠中及び喘息の臨床発作中の情動不安症状のグラフを示した図13を参照して説明すると、波形260は正常睡眠中の30秒毎の情動不安症状回数であり、波形262は喘息の臨床発作を起こした夜間の30秒毎の情動不安症状回数である。
【0183】
本発明の一実施例におけるシステム10では、喘息発作の到来もしくは進行などの病状についての付加的証拠を提供するために一般的な情動不安乃至咳が原因の覚醒の発作を監視モニタする。
【0184】
本発明の一実施例におけるシステムでは、夜間睡眠中の呼吸、心拍、咳などの少なくともいずれかの一症状の検出パラメータを記録する。このシステムでは記録したパラメータを連続的あるいは朝などの睡眠終了後に分析して、迫り来る臨床発作を予測する。朝あるいは一日の遅くに、システム10によって迫り来る臨床発作の警報をユーザーインターフェース24から発する。迫り来る臨床症状は通常、システム10が臨床症状の接近を予測した後少なくとも数時間経過するまで発症しないので、朝あるいは一日の遅くまで通知を遅らせても被検者の睡眠を中断することなく症状が発現する臨床所見を出す前に被検者に対して治療措置を施すまで十分な時間を確保できる。本発明の適用例として、迫り来る臨床発作の重症度乃至緊急性を予測し、予測した重症度乃至緊急性に対応して被検者を起こすか否かを決定するために前記パラメータを分析する。
【0185】
進行中の臨床発作あるいは比較的短時間後(たとえば、4時間以内)に症状を発症し悪化することを検出する本発明の適用例において、システム10が遅滞なく警報を発して悪化する発作を早期に治療することができる。また、システム10では、睡眠中全体を通して検出したパラメータを記録しながら連続的に分析する。
【0186】
本発明の一実施例におけるシステム10は、心室細動や心停止などの不整脈の発作を検出すると共に、斯かる不整脈発作を検出すると即刻警報を発する機能を備えている。斯かる不整脈を検出するとシステム10は、自動的に適当な電気乃至磁気ショックを実行する。たとえば、ユーザーインターフェース24に、公知の埋め込み型乃至外部の心臓除細動器/除細動器を備え付ける。
【0187】
本発明の一実施例における運動センサ30及び運動データ収集モジュール20の全体乃至一部を、被検者12に埋め込み可能な生体適合性のある筐体(複数の筐体でもよい)に組み込む。生体に埋め込むための構成要素としては、RF(たとえば、ブルートゥースやジグビープロトコルなどを用いる)や超音波などの信号送信手段を利用して外部受信機に検出信号を送信するための無線送信機がある。別の方法としては、分析モジュール22、23、26、28、29、31のうちの1以上の手段、あるいは、ユーザーインターフェース24を他の埋め込み構成要素と共に、あるいは、別にして前記筐体を用いて被検者に埋め込む。更に別の方法として、運動センサ30も被検者に埋め込み、運動データ収集モジュール20を被検者の外部に備えて運動センサ30と無線あるいは有線で通信を行うようにする。
【0188】
本発明の一実施例におけるユーザーインターフェース24は、薬剤及び投与量の情報など被検者に施している薬物療法に係わる情報を入力するための機能を有する。予防薬療法あるいは臨床薬物療法は、呼吸、心拍、咳、情動不安などの生理的パラメータに影響する。たとえば、喘息患者の呼吸数パターンは、気管支拡張薬の使用によって影響されることがある。パターン分析モジュール16によって、測定パラメータの基準パラメータとの偏差を分析する際に入力情報を検討する。たとえば、気管支拡張薬使用後の約1時間内に呼吸数が増加して8時間経過するまで継続した場合、呼吸数パターン分析モジュール22において、基準に比較して呼吸数が約10%増加した軽度の症状については無視することができる。
【0189】
再度図2を参照して説明すると、本発明の適用例として、薬物治療情報はユーザーインターフェース24から人為的に入力するのではなく、投薬装置266からシステム10に直接与える。斯かる薬物治療情報には、たとえば、投与した薬剤(有効成分なども含むことがある)、薬物投与量、投与タイミングなどのうちの少なくとも1情報が含まれる。本発明の適用例として、システム10が投薬装置266に与える薬剤投与量乃至投与タイミングを決定する際に上記薬物治療情報を考慮する。システム10へのデータ入力は、無線または有線を介して実行する。たとえば、投薬装置266に、一般に入手可能な投薬装置にネブライザ・クロノログ(米国コロラド州レークウッドのメドトラック・テクノロジーズ社)、あるいは、Doser(米国マサチューセッツ州ハドソンのメディトラック・プロダクツ社)などに備えられている通信機能を持たせるとよい。
【0190】
本発明の一実施例におけるシステム10は、特殊薬物治療に関連するパラメータパターンの変化を検出抽出し、抽出したパターン変化を基準パターンからのパラメータ偏差を検討する際に考慮する。たとえば、喘息患者への薬物投与から約6〜8時間経ってから正常に戻った後に呼吸数が約10%増加した場合、システム10は気管支拡張薬の使用に関係するものと判断する。
【0191】
図2に戻って説明すると、本発明の一実施例におけるシステム10は、投薬装置266を含む自動閉ループの構成に含まれている。投薬装置で被検者12に薬剤を投与する。システム10で投与薬の臨床効果をモニタし、モニタした情報を、薬剤投与量を維持したり変更するために投薬装置にフィードバックする。本発明の適用例における投薬装置266は、次の構成要素の1以上を備えている。即ち、噴霧器、吸入器、気化器(たとえば、被検者が居る部屋に設ける)、持続的気道陽圧装置、スプレーシステム、静注薬投与システムなどである。別の方法として、システム10に、被検者の1以上の生理的パラメータを適正化するために被検者が居る部屋の最適湿度を判定する機能を持たせると共に、湿度を適切に制御するための噴霧器や加湿器を操作する機能を持たせる。更に別の方法として、システム10に、被検者の1以上の生理的パラメータを適正化するために最適温度を判定する機能を持たせると共に、温度を適切に制御するためのエアコンやヒータを操作する機能を持たせる。
【0192】
本発明の適用例として、薬物治療情報はユーザーインターフェース24から人為的に入力するのではなく、投薬装置266からシステム10に直接与える。斯かる薬物治療情報には、たとえば、投与した薬剤(有効成分なども含むことがある)、薬物投与量、投与タイミングなどのうちの少なくとも1情報が含まれる。本発明の適用例として、システム10が投薬装置266に与える薬剤投与量乃至投与タイミングを決定する際に上記薬物治療情報を考慮する。
【0193】
本発明の適用例として、投薬装置266で数種の薬物の投与量を調整する。たとえば、投薬装置では次の1以上のカテゴリに属する薬物の投与量を調整させる。即ち、気管支拡張薬、抗炎症薬、抗生物質、偽薬プラシーボなどである。喘息患者を治療する適用例としては、投薬装置266に、気管支拡張薬、抗炎症薬、偽薬プラシーボなどの数種類の薬物を入れる3つの薬室を備えた定量吸入器(MDI)を備える。被検者12が朝目覚めた時にシステム10が被検者の現在の状態を判定し、それに応じて、3種の薬物の組み合わせ量を決定する。システムからの薬剤投与情報は、適切な吸入組み合わせ量を設定するMDIに入力される。被検者がMDIを作動すると、薬物の最適な組み合わせと、最適な投与量で薬物が投与される。この技術によれば、被検者がMDIによる薬物の組み合わせ情報を知る必要がなくなる。また、ここに開示する技術はMDI以外の投薬装置にも適している。
【0194】
本発明の一実施例により測定した信号のパワースペクトル密度のグラフを示す図14A及び図14Bを参照して説明すると、同図における波形270、272は夫々、腹部及び脚部の下部で測定した信号のパワースペクトル密度である。ピーク274、276は夫々、被検者の呼吸数及び心拍数に対応する。本発明の適用例によるグラフから分かるように、心拍数は脚部下で測定した信号のほうが明瞭に検出できる。
【0195】
図2に戻って説明すると、本発明の一実施例におけるシステム10は、体温測定のための温度センサ380を備えている。本発明の適用例として、温度センサ30は体温の測定のための一体型赤外センサを有している。体温は全身感染及び炎症などの一般的症状を示す生体徴候である。体温の包括的上昇を医療診断における最大のスクリーニング手段である。
【0196】
本発明の一実施例におけるシステム10は、糖尿病患者の低血糖症の早期徴候を識別する機能を有する。このシステムは斯かる症状の徴候を示す生理的振戦のレベルや、上記した心拍数、呼吸数、覚醒状態、動悸を表す心拍パターンにおける変化などのパラメータを組み合わせた振戦のレベルを測定する(ここでの技術を用いて心拍信号におけるピーク間のタイミングを分析する)。システムは主に、約4Hz〜18Hz、たとえば、8Hz〜12Hzの身体運動をモニタすることで生理的振戦を検出する。別の方法として、システムは、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中、本態性振戦、癲癇、ストレス、心臓細動、アナフィラキシー性ショックなどの症状の発現乃至進行を表す生理的振戦レベルの上昇を識別する。本発明の適用例におけるシステム10は、ユーザーインターフェース24を作動して検出した生理的振戦の1以上の特性、即ち、振戦の振幅乃至スペクトル画像などを表示する機能を有する。たとえば、システム10を病院での生体徴候に関する診断システムとして用いることができる。本発明の適用例として、心信号を分析して動悸を計測して低血糖症を診断できる。動悸は、心拍数や不整脈の増加を意味する(患者は動悸を「欠陥心拍」と考える)。
【0197】
本発明の一実施例におけるシステム10は、上記した一連の生理的パラメータ、つまり、呼吸数、心拍数、咳回数、血圧変動、呼気/吸気比、呼吸高調成分比、夜間複数回の振戦などをモニタする。パターン分析モジュール16では、モニタした各パラメータにスコアをつけ、スコアを組み合わせて複合スコアを生成する。以下は斯かる組み合わせの公式である。
【数7】

・・・(式3)
【0198】
パターン分析モジュール16において複合スコアを第1閾値、及び、それより大きい第2閾値と比較する。複合スコアが第1、第2閾値の間であれば、システム10は将来予測する臨床発作を表す警報を発する。複合スコアが第2閾値より大きければ、現在進行中の臨床発作を表す警報を発する。スコア及び複合スコアはベクトル値である。
【0199】
本発明の適用例において、これらの技術を喘息患者が広く利用している地域疾患管理技法と一緒に用いる。この技法は、喘息症状のない「グリーン」地域と、軽度の喘息がある「イエロー」地域と、発作が高レベルの「レッド」地域で区分する。システム10によって、複合スコアが第1閾値より小さい場合はユーザーインターフェース24を介してグリーン地域を表示し、複合スコアが第1及び第2閾値の間の場合はイエロー区域とし、複合スコアが第2閾値より大きい場合はレッド地域と表示する。
【0200】
本発明の適用例におけるシステム10は、複合スコアが第2閾値より大きい場合に緊急警報を発して患者を夜間睡眠から覚醒させ、複合スコアが第1及び第2閾値の間の場合は朝まで通知せずに待つ。翌朝になって被検者に通知する症状発現予想の通知内容は、複合スコアを計算した後の適時にユーザーインターフェースを介して出力するが、被検者を目覚めさせない方法で行う。
【0201】
本発明の適用例においてシステム10に、閾値、パラメータ、定数の1以上を学習して複合スコアを生成する機能を持たせる。この学習機能のために上記した技術が利用できる。
【0202】
本発明の一実施例におけるシステム10は、腹部38または胸部39の希望に設けた第1センサなどの複数の運動センサ30(図1)と、脚部40近傍に設けた第2センサを備えている。パターン分析モジュール16によって、腹部または胸部下のセンサで測定した脈信号と脚部下で測定した脈信号の時間差を計測する。たとえば、このモジュールで、約1〜3回の心拍サイクルのような呼吸サイクル時間より短い時間枠を用いて心拍信号間の相互相関処理を実行することで時間差を求める。別の方法として、このモジュールで、心拍信号のピークを求めて、各信号のピーク間の時間差を算出する。モジュール16において、たとえば、Chen等の米国特許第6599251号に記載の技術に若干の変更を加えた手段によってこの時間差を用いて連続的に血圧変動を算出する。モジュール16によって、吸気/呼気の全周期に亘って血圧変動の振幅を算出し、算出振幅を、被検者または一般の平均に基づいて予め測定した、たとえば10mmHgの閾値、あるいは、基準値と比較し、閾値より大きい振幅を奇脈と見なす。別の方法として、上記システムで測定した振幅を表示、且つ、記録して、特定患者についての状態変化を識別するために爾後用いる基準を生成する。
【0203】
本発明のいくつかの事例において、心臓領域から四肢末端部への心拍の平均遅れの増大を求めて心臓機能の低下の指標とする。
【0204】
ここでの実施例は、臨床発作を予測乃至モニタするための一連の生体徴候と生理学的作用に関するもので、いくつかの事例において、これらの生体機能を組み合わせて、上記した糖尿病患者の低血糖症の発現を検知するなどのシステム10のモニタ性能及び予知精度の向上を達成している。
【0205】
本発明の一実施例におけるシステム10は、夜間の覚醒回数を計測する機能を有する。本発明の適用例として、斯かる覚醒回数は喘息発作、糖尿病悪化(たとえば、飲料水摂取のための覚醒など)、小腸乃至結腸疾患、前立腺疾患(たとえば、排尿のための覚醒)などの発症の指標となる。本発明の実施例において、覚醒の認識は、上記した技術、あるいは、Z.スビナー等の上記文献(1998)の技術を用いて実現できる。
【0206】
本発明の一実施例におけるシステムは、高齢被検者を、特に被検者もしくは被検者が着用する衣類に接しないで、あるいは、被検者を視認しないで監視モニタできる。たとえば、システム10によって、呼吸数、心拍数、咳、睡眠時間、覚醒事象、睡眠中の情動不安などの1以上の状態を監視モニタできる。本発明の適用例におけるシステム10によって、1以上の上記パラメータを分析して、被検者が介添えなくベッドから出ようとすることを識別し、医療従事者に通知できる。被検者が介添えなくベッドから出ようとしたために死亡事故や負傷事故を起こすことが多くある。
【0207】
本発明の一実施例におけるシステム10は、中枢性睡眠時無呼吸症(CSA)発作を認識するために呼吸及び脈(心拍)パターンを監視モニタする機能を有する。図29A〜Dは、システム10を用いて夜間の7歳児喘息患者の夜間検出記録によるCSA発作例を示している。図29Aに、一例として図1及び図2の運動センサ30によって検出した呼吸及び脈信号(波形100)の複合信号を示している。複合信号100から抽出した対応する呼吸数パターンを図29Bに示している。深呼吸の1サイクル102とその後の無呼吸活動の18.7秒間の時期103と、最後の呼吸数パターンが正常に戻った時期104に続く安静安定した呼吸数パターン101が見られる。図29Cの波形105には図20Aに示した複合信号から得られた心拍脈乃至心拍信号を示している。対応する心拍数を図29Dにおける波形106で示している。CSA中の期間107における心拍数に急激な減少が見られる。
【0208】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、呼吸を妨げる咽頭から気道上部への不調和のために睡眠中の気道の完全または部分的な閉塞が起こる疾患である。結果として、患者は、大鼾と、酸素ヘモグロビン不飽和化、頻繁な覚醒に見舞われる。こうした覚醒は、毎夜何百回も起こるが、患者は完全には覚醒せず、閉塞性睡眠時無呼吸に伴う大鼾や、息詰まり、あえぎ等を覚えていない。中枢性睡眠時無呼吸症とは反対に、OSAには無駄な吸気活動が伴う。
【0209】
本発明の一実施例におけるシステム10によって、機械的なチャネルを通じて呼吸数パターンと、音響及び音声信号、たとえば、音響チャネルを通して鼾を監視モニタする。鼾は、呼吸数パターンと相関する時間である重要な音響信号として識別される。本発明のシステムは、大鼾を含む時期、つまり、時間枠を認識する。呼吸活動は変化しないか、若干増加する。図30に、システム10を用いて8歳児喘息患者の夜間検出記録によるCSA発作例を示している。図30における波形200は呼吸数パターンであり、波形202は関連する音声信号である。最後の3回における呼吸活動204は最初の3回の呼吸活動に類似するが、最後の3回の音声振幅は最初の3回の音声振幅に比べて大幅に減少する。本発明の一実施例におけるシステム10でも、前記事象と同時に心拍数を監視モニタし、心拍数の特徴的変化を見つけることで無呼吸の疑いを検証する。
【0210】
本発明の一実施例におけるシステムによって、機械的なチャネルを通じて呼吸数パターンと、音響チャネルを通して鼾を監視モニタする。当該システムによって、音声信号が減少して情動不安に至るに伴う呼吸運動の増大を認識し、そのパターンを推定OSAパターンとして特定する。
【0211】
本発明の一実施例におけるシステムによって、被検者のOSAまたはCSAの反復パターンを求め、たとえば、チェーン・ストークス呼吸(CSR)に悩む患者のCSA以前の呼吸運動の漸減振幅、あるいは、OSAの減弱音声信号またはCSA前の深吸気を伴う初期の強制呼吸などの無呼吸症状を発生するパターンを求める。無呼吸症状を発生するパターンを認定した上で、システム10が直ちに治療用機器を作動させて無呼吸症状を中断させる。治療用機器としては、たとえば、患者の顔面に継続的に設けられる持続的気道陽圧法(CPAP)のシステムを利用可能であるが、必要な時のみ作動させる。呼吸数パターンが正常に戻ったり、あるいは、無呼吸症状が小康状態になって治療用機器の使用が不要になったら、システム10によって次に予想される無呼吸症状が確認されるまで治療用機器を停止する。斯かる方法でシステムが無呼吸症状を抑制するが、眠りにくくしたり、あるいは、他の副作用をもたらす可能性がある治療用機器を連続して作動させる必要性はない。
【0212】
本発明の一実施例におけるシステム10によって、呼吸数を監視モニタし、基準値に比べて呼吸数が大幅に減少するような呼吸障害を確認する。呼吸障害を検出したら、システムはその情報を表示し、ある場合にはユーザーインターフェース24から警報を発する。本発明によるシステムは、たとえば、手術後の患者、または、オピオイドやバルビツール酸系催眠薬で治療を受けた患者を監視モニタするのに実用的である。呼吸抑制について検出と警報を実行するモニタシステムによって、モニタ監視確認しなければ臨床医学者が使用しないはずの薬剤を使用する場合もあり、あるいは、臨床医学者が薬剤の投与量を増やす場合もある。
【0213】
本発明の一実施例におけるシステム10によって、患者が苦痛に悩んでいることを示す呼吸数、心拍、身体運動の変化を検出することができる。本発明の一実施例におけるシステムは、患者の苦痛を検出すると、投薬装置266を作動させて所定の投与量の適切な薬剤によって自動的に苦痛を和らげる。
【0214】
本発明の一実施例における運動センサ30を、被検者の身体上に設けた加速度計として備えたり、身体に埋め込んだり、あるいは、マットレス、マットレスパッド、マットレスカバーの下や、枕の中に非接触状態で取り付ける。
【0215】
本発明の一実施例における運動センサ30(たとえば、三次元加速度計は三次元の運動信号を生成する)。複数軸に分解することで、呼吸運動から得られる機械的信号と心拍から得られる機械的信号の分離性を向上させることができる。心拍から得られる信号(カーディオ・バリスティック効果)は通常、頭部から爪先までの身体の長さに平行な軸で最も強く、呼吸信号は脊柱から胸までの身体の厚みに平行な軸で最も強い。
【0216】
早漏の治療では性交の長さと頻度をモニタする必要がある。本発明の一実施例におけるシステムで性交のモニタ監視を行う。運動センサで性交時の周期的運動を検出する。パターン分析モジュール16で性交を表す特徴的な運動の周波数を特定すると共に、性交を表す特徴的な音声信号を分析する。性交の持続時間と回数をシステムで記録保存する。
【0217】
本発明の一実施例における運動センサ30を圧電センサで構成できる。本発明の一実施例における運動センサを、心拍周波数に近似する周波数で共鳴させ、脈の測定に対してセンサ感度を最大にするよう設計された機械構造よりなる。
【0218】
本発明の一実施例の運動センサ30を被検者の睡眠中に歯ぎしりを検出するために、枕の中、あるいは、被検者12の頭部近傍に配置する。
【0219】
本発明の一実施例におけるシステム10によって、呼吸数パターンと心拍パターンを監視モニタして、血中酸素濃度の変化をもたらすパターンの変化を検出する。このシステムは、血中酸素濃度の変化を早期警報するシステムとして機能する。心拍パターン変化、呼吸数、呼吸運動パターンが血中酸素濃度の変化に先行することがある。システム10には、血中酸素濃度計が備えられており、被検者12の血中酸素濃度の変化に先行する心拍数パターン、呼吸数パターン、呼吸運動パターンの特徴的変化を学習する。これら学習パターンを検出した上で、システムは血中酸素濃度計で血中酸素の変化を警告する。
【0220】
本発明の一実施例におけるシステム10は、自動車の運転席に取り付けたセンサを用いている。システム10で運転者の呼吸、心拍、運動パターンを監視モニタして、運転者が眠ったり、あるいは、自動車を運転できなくなった徴候(酔い、心臓麻痺など)を認識する。本発明の一実施例におけるシステム10は、家庭や職場で患者が座る椅子に組み込んでいる。
【0221】
本発明の一実施例におけるシステム10を車椅子に取り付けて、車椅子に乗っている被検者12を連続的に監視モニタする。本発明の一実施例におけるシステム10では、車椅子に1つのセンサを設け、もう一つをベッドに設けて、両センサからのデータを無線あるいは有線通信を利用してパターン分析モジュール16に送る。これによって、患者の日常生活全般に亘って幅広くモニタ監視できる。本発明のもう一つの実施例において、システム10を被検者の腕に着ける時計に組み込む。
【0222】
本発明の一実施例におけるシステム10を用いて鬱血性心不全(CHF)患者の呼吸及び心拍数パターンを分析し、肺浮腫のパターン特徴における変化を識別する。本発明の一実施例におけるシステム10によって、脚部の浮腫を表す被検者の脚部近傍で測定したカーディオ・バリスティック効果の変化を求める。夜の早い時間帯に浮腫症状を持ったままベッドに入った患者は、夜間水平状態で寝ている間に腹部範囲に体液が移動する。システム10によって、夜中のパラメータの変化を捉えて、浮腫の程度と変化レベルの推定値を求める。
【0223】
本発明の一実施例におけるパターン分析モジュール16は、妊婦の早期陣痛を確認することができる。米国において早期陣痛は、周産期罹病及び周産期死亡の主な[主要]原因である。早期陣痛の早期診断によって、分娩監視治療を有効に実行でき、ひどい陣痛を軽減できる。本発明の一実施例における運動センサ30は、脚部、骨盤、下腹部、上腹部の近傍に取り付けた複数のセンサよりなる。パターン分析モジュール16によって、子宮収縮信号として、下腹部及び骨盤辺りで最も強く機械的信号が得られ、上腹部辺りでは弱い信号が得られる。本発明の一実施例におけるモジュール10によって、ブラクストン・ヒックス収縮と通常の収縮を区別することで早期陣痛の誤認警報を最小限にできる。本発明の一実施例において、通常の収縮とブラクストン・ヒックス収縮の区別は、収縮の周波数と強度を比較することで実行でき、本発明のもう一つの実施例では、機械的収縮信号の強度を、律動的心拍及び呼吸信号の強度によって正規化する。本発明の一実施例におけるシステムでは、収縮の記録をとり、収縮回数乃至収縮率が規定の閾値を超えたら被検者もしくは医師に警報を発する。
【0224】
本発明の一実施例におけるシステム10をベッドのマットレスの中に設け、且つ、表示装置をマットレスと一体にして、マットレスから壁や天井にデータを投射することできる。本発明の一実施例において表示乃至投射するデータは、ストレスの治療として呼吸数及び心拍数の低減に役立たせるために生体フィードバックの目的で用いることができる。本発明の一実施例においてマットレス内に設けられたシステム10に重量センサを備えてもよく、これによって、CHF悪化の識別と共に、体重当たりの薬剤投与量の算出ができる。
【0225】
心拍信号の分析において、呼吸関連信号を最小限にしたほうがよい場合がある。本発明の一実施例におけるパターン分析モジュール16で呼吸関連信号を分析し、呼吸関連運動がない時の時間帯と識別するが、ほとんどの場合、呼吸サイクル毎に短い時間帯が存在する。その時間帯において、システムでは心拍関連信号を識別し、呼吸信号からの影響を最低限にとどめて効果的に分析する。
【0226】
本発明の一実施例でが、重量センサなどの複数の機械的センサをマットレスに分散配置する。システムによって、異なったセンサ間の被検者の重量分布を計算し、被検者が浮腫を起こしている場合、被検者の脚部領域に体重分布の変化が多く見られ、これによって浮腫を知見することができる。別の実施例において、当該システムで夜間の体重分布の変化を検出する。被検者が浮腫を起こしている場合、重力のせいで体液が脚部領域から胴体上部に移動することが予想され、体重分布の変化を浮腫の存在を認知することができる。本発明の一実施例において、複数のセンサを、標準的なベッドのマットレスの代わりに空気マットレスの内部、上、下などに設ける。空気マットレスを複数の空気室に分割して、夫々の空気室に個別の圧力センサを設ける。各空気室のセンサによって測定された圧力はベッドに横たわる被検者の身体の体重を表している。ここでの機械的センサとして、圧力センサ、振動センサ、歪み計などの歪みセンサ、加速度計や、あるいは、運動乃至負荷を検出できる適当なセンサなどを用いることができる。
【0227】
本発明の一実施例にでは、システム10に咳モニタ機能を持たせる。この実施例におけるシステム10は、モニタ期間中の咳発症回数と咳発症時間を測定する。本発明の一実施例におけるシステム10によって、被検者12の近傍の周辺音信号の音響記録を利用して、たとえば、被検者から50cm範囲にマイクロフォンを取り付けて被検者近傍の音信号を検出することで咳を識別する。このシステムの一部である音響センサからの信号をデジタル分析し、暗騒音レベルより大きい音響事象を識別する。当該システムで、咳音と非咳音を区別し、後者の非咳音をヒトの会話音、笑い声、くしゃみ、鼾、物理的高振幅の衝撃雑音、テレビ音、ラジオ音等々として識別する。図31に異なった音響事象の記録区間の例を示しており、一般的雑音レベル714より高い音である咳710、会話711、物理的高振幅の衝撃雑音712、物理的「ざわめき」713などを図示している。
【0228】
本発明の一実施例において、音響事象を含む時間間隔を信号エネルギー及び振幅エネルギーの閾値を用いて分別する。閾値は、事象及び雑音感覚を含む音響記録の一定の長さ区間毎に算出する。その区間を一定の短期枠に分割するが、一実施例においては枠を重ねない。本発明の別の実施例では、重ねた枠を用いる。各枠につき、信号エネルギーと最大振幅を計算して、数値の対応する分布を求める。通常のテール考察を通してこれらの分布から閾値を抽出する。計算値が閾値より大きい枠を音響事象と間隔結合して、極短い間隔と、長すぎる間隔と、少数の閾値以上の振幅を持つ間隔を無視する。
【0229】
本発明の一実施例のシステムにおいて、咳を検出するために、先ず、音声として認識した信号と、閾値より短いか、あるいは、長い信号を取り除き、咳を表す特定周波数の変化パターンを調べる。
【0230】
3段階の咳構造について関連する背景資料として、C.Thorpe等著「喘息咳音の定量化に向けて」欧州呼吸器ジャーナル第5号第685〜692頁(1992年)がある。咳は、第1段階の初期声門開口破裂と、第2段階の静穏中間期と、更に、(時には)第3段階の終結閉口破裂からなる。
【0231】
図32に、上記3段階の咳、つまり、第1段階721と、第2段階722と、第3段階723とからなる例を示している。図33には、2段階の咳、つまり段階721と722とからなり、上記段階723がない例を示している。第1段階733、734は短く、1時間区間において約0.04〜0.05秒の継続時間である。第2段階735、736の継続時間は約0.17秒である。
【0232】
本発明の一実施例におけるシステム10において、咳を識別するために第1段階のみ用いている。システム10において、自己回帰(AR)法に基づくスペクトル推定を用いた第1段階のパターンを認識している。音響事象を含む時間に亘って移動するスライド枠毎にARモデルを算出する。このARモデルを更に分析し、枠全体のパワースペクトル分布(PSD)を計算する。PSDの最大点に対応する周波数を、時間枠の特徴的周波数として認識する。枠の開始時間が各最大点に起因すると考えることによって、時間間隔の時間周波数特性を求めることができる。
【0233】
本発明の一実施例において、咳の第1段階を、時間間隔の継続時間における大半に亘る時間周波数特性の大幅な減少を見つけることで特定できる。図34は咳の第1段階と第2段階を含む時間間隔に亘るAR時間周波数特性の様子を示すグラフであり、これは、図33における咳の第1段階に対応する。第1段階の持続時間は約0.04秒であり、約6.32〜6.36秒の時間間隔の信号に対応する。大幅な周波数の減少741が6.32〜6.35秒間生じている。このように本発明のシステムによれば、第1段階を検出し、咳と咳発生時間を特定することが可能となる。
【0234】
本発明の一実施例におけるスライド枠の長さと移動量は次の2条件を満たす必要がある。
1.スライド枠長さを長くしてARモデル計算のサンプリング点を十分にする。
2.スライド枠長さと移動量を短くして時間周波数特性における代表点数を求める。
【0235】
本発明の一実施例において、ARモデルの次数は所定の定数である。本発明の一実施例におけるARモデルの次数は、最小記述長アルゴリズムかそれに類するアルゴリズムを用いて計算する。
【0236】
本発明の一実施例におけるスライド枠毎の最高最大周波数のみを分析に供する。他の実施例では、スライド枠毎に2つの最大周波数を分析に用いる。
【0237】
本発明の一実施例における、咳を特定するために用いる音響信号の更に他の特徴は時間領域における音響信号の包絡線である。この包絡線は、適切なスケールとスムージングを有する移動枠当たりの標準偏差を表す一組の点として計算できる。本発明の一実施例では、標準フィルタ処理のような非線形加重最小二乗平均を用いる。咳症状の包絡線の形態は第3段階の存在に左右され、第1段階と第2段階がある場合は、前記包絡線は1つの最大値を有する特殊な幾何形状になる。3つの段階がある場合の包絡線はふたこぶ状になる。本発明の一実施例におけるシステムには、咳の特定と第3段階を持つ咳と第3段階のない咳の区別を行うために包絡分析法を採用する。本発明の一実施例では、第3段階のある咳と、無い咳の2種類のデータを患者や医師に表示するか、あるいは、患者の状態及び基準に対する変化を判定する臨床パラメータデータとしてシステム10で用いる。
【0238】
本発明の一実施例における咳包絡線判定は、上記の包絡線と、この包絡線の最小二乗平均多項式推定との交点の数と位置の計算に基づく。本発明の他の実施例では、動的時間伸縮アルゴリズムを適用して包絡線をテストする。図35には、図33の咳症状(738)と図34における咳症状の包絡線751を示している。
【0239】
本発明の一実施例における非咳音響事象を特定する特殊パターンを、信号振幅ゼロ交差点と、上記の計算によって得られる時間周波数AR特性に関する周波数を用いて算出する。本発明の一実施例において、たとえば非咳音響事象としての音声を咳症状から区別するパターンは、少数の固定値あたりの周波数集合であり、このパターンがゼロ交差法乃至AR法を用いて特定された場合は、斯かる症状を声であって咳ではないと判定する。
【0240】
本発明の一実施例におけるゼロ交差周波数計算の代わりに最大/最小検出法を用いてもよい。この実施例では、最大、最小、ゼロ交差の複合分析を行って結果的に得られる周波数分布の平滑化を行う。
【0241】
図36、37、38は、本発明の一実施例により測定した音声による音響事象とそのパターンの一例を示している。図36に、記録信号と、その包絡線761と、振幅閾値762を示している。図37に、最大/最小周波数の分布を示しており、2つの数値部分771に見られる周波数(3点を除く)の局在性は音声パターンである。周波数が多数の値のある部分に分布する場合もある。図38に、AR周波数の分布を示している。2つの数値部分のAR周波数の局在性は音声パターンである。
【0242】
本発明の一実施例において、音響センサ110(図2)によって測定された音響信号と運動センサ30によって測定された機械的運動信号の合成信号を用いて咳を検出する。咳に関連のない機械的信号としては次の事象がある。
1.呼吸運動:たとえば、1〜6秒の周期的信号、及び、0.3〜2秒間の心拍振動
2.約1秒の時定数を有する身体情動不安による非定常動的要素
3.時定数が約10秒のセンサに関連した過渡的作用
4.外部の機械的衝撃
【0243】
ここでの説明を目的とした一例であるが、信号を1秒以上の時定数の指数によって近似した場合、機械的な動的要素は特定の時間に亘って遅いと見られ、機械的信号が呼吸、心拍、あるいは、緩慢な動的作用を表している場合は、機械的な安静状態が或る時間間隔を有するものとして定義付けられる。
【0244】
本発明の一実施例におけるシステム10の咳分析モジュール26によって、適当な音響信号が、たとえば呼吸運動のみによる正常な運動信号に比べて強く早い身体運動信号に付帯している場合に咳を記録または識別する。たとえば、本発明の一実施例において、モジュール26は、呼吸運動信号からの一次導関数を連続的に計算し、たとえば、咳発作(例として図39の部分793)前の比較的安定状態の運動信号などの呼吸信号の前記一次導関数より少なくとも3倍の基準値を設定する。前記音響基準値に加えて運動信号の一次導関数が同時の基準値の導関数を超えている場合は、複合運動/音響事象を咳として記録する。他の実施例として、機械的センサ信号が飽和水準に達した場合は例外を許容する。
【0245】
図39は、本発明の一実施例によって測定した咳パターン機械的信号、たとえば、咳によって誘発される身体運動による大幅な振幅変化の一例を示している。図39において、音声乃至音響信号791と機械的運動センサ信号792を一緒に示している。機械的信号792は、音声信号791としての時間区間と先行する時間区間で表している。咳発作は、部分794で示した音声信号791の振幅増大として顕れている。咳発作794の前の機械的信号792は呼吸数パターン793である。咳発作794の近接部分で大きい振幅と高速の機械的摂動(機械的信号792における大幅な減少)を伴う初期破裂(第1段階)が起こり、同様のパターン、即ち、機械的信号の大幅な変化(増大)が第2の咳発作795に係わる第1段階近傍で顕れる。
【0246】
本発明の一実施例におけるシステムで、肺内の体液(肺浮腫)が原因の咳と肺内の体液に影響されない咳(正常状態)の音響学的特性を検出する。これによって、鬱血性心不全の悪化を早期警報することが可能になる。本発明の一実施例におけるシステムは、非喫煙者と比較して異なる喫煙者の咳の特徴を判別検知する。
【0247】
本発明の一実施例におけるシステム10に、少なくとも2つの音響センサを備えている。一つのセンサは、マットレスあるいはシーツの下に配置し、もう一つは、たとえば、ベッドの脇に位置付ける。少なくとも2つのセンサの相互関係によって、音源を特定する性能が向上する。たとえば、マットレス下のセンサによって拾った音は、たとえば、手でマットレスを叩いた場合のようなベッドの機械的音源によるものと判断される。また、外部の音響センサが音を拾ったが、ベッド内のセンサは音を拾わなかった場合は、拾った音がベッド外の音源によるものと見なすことができる。
《睡眠障害》
【0248】
睡眠障害は小児患者及び成人患者における喘息に関連する。成人喘息患者の80%以上及び喘息児の61%に浅い眠りが報告されている(参考文献(a)M.F.フィッツパトリック等著「英国での喘息及び睡眠障害−地域密着調査」、欧州呼吸器ジャーナル第6号第531〜5頁(1993年);(b)P.ジョバンプーツラ等著「一般診療における急性喘息発作の処置」、英国全科診療ジャーナル第41号第410〜3頁(1991年);(c)T.O.リム等著「外来診察における喘息罹患率及び喘息治療検査」、シンガポール医療ジャーナル第33号第174〜6頁(1992年);(d)P.J.マッジ等著「2つのスコットランド健康管理地域における喘息罹患児への家庭用噴霧器の使用」、スコット医療ジャーナル第40号第141〜3頁(1995年))。
【0249】
本発明の一実施例におけるシステム10によって、安眠と睡眠障害を区別する。安眠中に当該システムは、呼吸乃至心拍に関する周期的身体運動を測定するが、不安期にはシステムは主に突然の身体運動を感知する。図40に、本発明の一実施例によって測定した安眠(波形101)と不安症状(波形102)の一例を示している。ここでの「安眠」とは、被検者がベッドに穏やかに横臥して周期的呼吸信号が検出できる時間状態であり、被検者が実際には目覚めていてもよい。
【0250】
本発明の一実施例において、不安症状を検出するために、安眠中の信号の振幅によって閾値を設定する。たとえば、システム10によって、周期的呼吸運動のある期間を検出し、閾値を検出期間における信号の標準偏差の5倍にする。同様の特性の新しい期間が検出されるまでこの閾値を維持する。図41に、本発明の一実施例によって求めたデータ信号(波形121で示した絶対値)と、上記アルゴリズムで定義した閾値レベル(波形122)の一例を示している。注目すべきは、閾値レベルは睡眠障害(ピーク123)には影響されないことである。
【0251】
本発明の一実施例では、睡眠の質を評価するためにいくつかのパラメータを設定している。
1)浅い眠りの合計時間: データ信号が上記閾値以上の累積時間
2)睡眠障害の総合力: 閾値以上のデータの範囲(積分)
3)睡眠効率: 安眠期と総睡眠期との比率
【0252】
本発明の一実施例におけるシステム10によって、各不安症状期間によって覚醒症状も検出できる。たとえば、15秒以上継続する不安症状を覚醒期と定義する。
【0253】
本発明の一実施例におけるシステム10では、上で定義した情動不安値をここで定義する臨床パラメータに加算し、基準値とこれらのパラメータを含む臨床スコアを定める。
【0254】
睡眠の質に関連するもう一つのパラメータは、睡眠姿勢の変化の回数である。本発明の一実施例におけるシステム10によって、呼吸によって誘起される信号の振幅に応じた睡眠姿勢の変化を検出する。図42に、本発明の一実施例によって患者に関して測定された25分間に起こる睡眠時の姿勢の3つの変化の一例を示している。範囲131、132、133、134は、信号の振幅の大幅な変化によって表される異なった4つの睡眠姿勢を示している。注目すべきは、この場合、姿勢の各変化は不安症状(たとえば、ピーク135)に関係していることである。
《心拍数》
【0255】
本発明の一実施例におけるシステム10は、心拍と同様に呼吸運動も検出する機能を有する。本発明の一実施例におけるパターン分析モジュール16は、適当なカットオフ周波数の帯域フィルタを用いて呼吸信号と心拍信号を区別する。たとえば、70〜80BPMの予期心拍数を持つ患者には1〜1.5Hz(60〜90BPMに対応)の帯域フィルタを用いる。フィルタ処理した後、各期間についてフーリエ変換を行い、主なスペクトルピークを心拍設定に考慮する。
【0256】
特に心拍数が比較的少ない場合、呼吸数の高調波成分が心臓チャネルのスペクトルに顕れることがあり、これが心拍数の測定に影響を及ぼす。本発明の一実施例におけるシステム10では、(心拍数の基本周波数と共に)呼吸高調波成分を除去するために、たとえば、2〜10Hzの通過帯域を有する帯域フィルタを用いている。結果的に得られる信号のフーリエ解析の段階では、心拍数の基本周波数は最高のピーク値を有していないが、心拍信号の高調波成分はまだ残っている。心拍信号分析モジュール23によって、これらのピークが特定され、連続するピーク間の距離を計算することによって心拍数が算出される。図43に、上記フィルタを用いた例において算出された時系列(波形141)と、対応するパワースペクトル(波形142)の一例を示している。この例では、ピーク143、144、145を識別し、ピーク114と145の間、または、ピーク143と145の間のBPM差として、あるいは、ピーク145と143の間の差の1/2として算出する。ピーク143と145の間の正確な中間点にピーク144が存在することは、正確な心拍数をとるためにピーク143と145の間の距離を2分割すべきである根拠となる。
【0257】
本発明の別の実施例におけるシステム10では、振幅復調法を用いて心拍数を計算している。この方法では、基本心拍周波数と大半の呼吸高調波成分を切り捨てる帯域フィルタを用いる。たとえば、帯域フィルタの通過帯域を2〜10Hzに設定する。フィルタ処理した信号の絶対値を計算し、適当なカットオフ周波数(たとえば、3Hz)を持つローパスフィルタを結果的にえら得る絶対値信号に適用し、最後に、パワースペクトルを計算し、心拍に対応する主ピークを識別する。
【0258】
図44は本発明の一実施例によって実行する分析の結果を示している。波形151は、上記帯域フィルタによる処理で復調された測定時系列を表し、矢印152、153は連続する心拍サイクルである。波形154は時系列の対応する絶対値のパワースペクトルを表し、波形155は心拍数を反映する主ピークを表す。また、ピーク156は心拍数の二次高調波成分であり、ピーク157は呼吸数である。
《振戦》
【0259】
振戦の測定に複数の臨床処置を用いる。一適用例として、糖尿病患者を監視モニタして低血糖症状を識別する。特に、振戦に関連する振動は3〜18Hzの周波数帯域で発生する。本発明の一実施例では、運動データ収集モジュール20とパターン分析モジュール16で前記周波数のデータをデジタル化して解析する。前記周波数範囲で測定されるエネルギーの大幅な変化は振戦レベルの変化に起因し、信号のスペクトルの変化は振戦のスペクトルの変化に起因する。
【0260】
図45に、本発明の一実施例によって、自発誘導振戦増加のある被検者をモニタして求め、解析したデータの一例を示している。上側のグラフは、2〜10Hzの帯域フィルタでフィルタ処理したサンプルデータを時間関数として表しており(波形161)、点線162は、自発誘導振戦増加が始まるタイミングを示している。範囲163(波形162の右側部分)は、信号振幅増加を生じた振戦増加の効果を表している。下側のグラフは3〜9Hzの周波数帯域(波形164)での対応する時間依存スペクトル全領域を示している。波形165は刺激を受けて増大する振戦の発症タイミングであり、範囲166(波形165の右側部分)は本発明の実施例で測定した振戦増大エネルギーを示している。
【0261】
本発明の一実施例におけるシステム10は最初に、心拍数及び呼吸数に関連する信号を特定し、全体の信号から心拍数と呼吸数信号を差し引く。情動不安症状のないこれらの範囲における結果的な信号は、上記分析において振戦と見なせる。本発明の一実施例における振戦エネルギーを呼吸乃至心拍信号の大きさによって正規化する。
《睡眠段階》
【0262】
REM(急速眼球運動)睡眠は周期的な瞼の瞬き、筋麻痺、不規則呼吸などによって特徴付けられる。本発明の一実施例におけるシステム10は、レム睡眠と非レム睡眠とを区別するために呼吸サイクル毎の呼吸数パターンを解析する。
【0263】
本発明の一実施例における呼吸数パターン分析モジュール22によって、被検者12の呼吸率変動性(BRV)を計算する。この計算は、フィルタ処理した呼吸関連信号を求め、標準ピーク検出アルゴリズム(たとえば、自己相関法)を用いてピークを識別することで行われる。全ての時期、たとえば、1分毎に、呼吸ピーク間の時間の標準偏差を算出する。これをBRVと定義している。
【0264】
図46に、本発明の一実施例によって記録する被検者の夜間呼吸数パターンの一例を示している。図46における波形171は、夜間における1分間の平均呼吸数であり、波形173は1分間の呼吸率変動性(BRV)である。変動性が高いということは、不規則な呼吸を意味する。ピーク172、174は平均呼吸数及びBRVが共に増加する時期、つまり、その時間期間を表している。これらはREM期間と認められ、即ち、本発明の態様における呼吸数のピーク、BRVのいずれか一方もしくは両方をレム睡眠の指標として利用できる。
【0265】
本発明の一実施例におけるシステムには、商品「スリープトラッカー」(米国ジョージア州アトランタのイノベーティブ・スリープ・ソリューション社製)に採用されたような方法でレム睡眠サイクルに対する至適時間に被検者12が目覚めるようプログラムされた「アラーム時計」機能を備えているが、本発明の実施例では被検者の身体乃至着衣に触れることはない。
【0266】
本発明の一実施例におけるシステム10は、レム睡眠中に最も効果的に投与する薬治療を実現するためにレム睡眠を検出した上で投薬装置266を作動させる。本発明の一実施例におけるシステム10は、非レム睡眠期に薬剤を投与できるようレム睡眠期終了後の所定の時間に装置266を作動させるもともできる。本発明の一実施例におけるシステム10によって、所定回数の睡眠サイクル後に治療を行う。
【0267】
本発明の一実施例におけるシステム10は、レム睡眠を識別した後、たとえば、その期間の呼吸状態の悪化を被検者の慢性症状の早期徴候として表すと見られる呼吸数パターンの変動を特定する。たとえば、慢性症状が安定している時に比べて喘息状態が悪化した場合、レム睡眠中に呼吸数が劇的に増加する。また、例として、REM中は付帯筋肉の活動が少ないので、喘息患者やCOPD患者はレム睡眠中に呼吸困難を更に多く起こしていると予想される。これにより、悪化の早期識別及び対処のための早期警報が可能となる。
《呼吸数パターン》
【0268】
肺機能は通常、午後4時に最も高く、午前4時に最も低くなる。その結果、喘息症状は一般に、夜が明ける頃に最も多く見られ、普通、数日間続くが、夜間発症したら突然悪化する場合もある。
【0269】
本発明の一実施例におけるシステム10で、関連する臨床パラメータを夜間連続的に測定し、夜が明ける頃の臨床パラメータの同夜間における最小もしくは最適レベルに対する比例変化を計算する。別の方法として、本発明の一実施例におけるシステム10では、夜明け頃の数値と同夜の始め、または、早い段階の値と比較する。たとえば、本発明の一実施例におけるシステム10で、睡眠の終期における平均呼吸数と睡眠の最初の平均呼吸数との比率を計算する。基準に対する比率が大幅な増加した場合は、喘息悪化が近づいている方法として被検者または医療専門家に通知する。また、他の方法として、本発明の一実施例で計測したこの比率を当該システムで計算する臨床スコアの一部としてデータに統合する。
【0270】
本発明の一実施例におけるシステムによって、夜間の突然の悪化を、夜間の呼吸数の増加傾向を特定して認識し、慢性状態の悪化を阻止するための適当な処方が可能なように警報を発する。また、本発明の一実施例におけるシステムによって、夜間の突然の悪化を、夜間の1以上の臨床パラメータの悪化傾向を特定して認識し、慢性状態の悪化を阻止するための適当な処方が可能なように警報を発する。
【0271】
図47は、本発明の一実施例によって測定した喘息患者の結果の一例を示している。波形181は喘息悪化を起こした夜間の呼吸数パターンであり、波形182は正常な夜間の呼吸数パターンである。悪化した時の心拍数の漸増が明確に顕れている。図48は、本発明の一実施例で喘息患者から収集したデータを基に分析した結果の一例を示している。本発明の一実施例において、測定した夜間の睡眠後半における平均呼吸数に対する睡眠前半の平均呼吸数の比率を計算した。時系列201は、3ヶ月に及ぶモニタ監視期間の結果であり、点202、203、204は点203から点204の期日における医師の診断結果による喘息状態の悪化に対応する。本発明の一実施例において、図48に示した数値をシステム10で計算した喘息スコアに統合する。
【0272】
慢性疾患患者は、運動開始前の慢性状態によって身体活動の激しさに制限が設けられる。更に、多くの慢性疾患患者は、身体運動の最中または後に疾患発作を起こしやすくなる。たとえば、喘息患者は「運動誘発性喘息」を起こす傾向にあり、本発明の一実施例によれば、喘息悪化の可能性を示す監視結果に応じて予防的治療を行い、身体活動による慢性症状の悪化を防止したり最小限にすることができる。喘息に対しては主に気管支拡張薬が処方される。
【0273】
本発明の一実施例におけるシステム10は、慢性患者の臨床状態を診断し、慢性状態のスコアを決定し、被検者の身体運動に制限があればそれを表示する。たとえば、本発明の一実施例におけるシステムでは、1分当たりの呼吸スケールを用いて身体運動の制限事項をランク付けし、被検者の喘息スコアに基づいて運動中の最大許容呼吸周波数を制限する。別の実施例では、システムによって、呼吸数と心拍数を被検者の喘息スコアに基づく最大許容値に制限する。
【0274】
本発明の一実施例におけるシステムでは、被検者の身体運動の程度(たとえば、軽度あるいは適度)に適応する予防治療薬の適切な種類と投与量を指示する。たとえば、喘息患者には、激しい短期運動用の気管支拡張薬を処方するか、あるいは、運動競技などにおける持続的な運動用の気管支拡張薬もしくは吸引コルチコステロンを処方する。
【0275】
傾向分析によって収集記録した履歴データを用いて慢性症状の悪化を予測できる。本発明の一実施例では、臨床パラメータにおける現在の夜間及び非夜間パターン変化を、前回の慢性発作に先立つ過去のデータと比較する。前回の慢性症状悪化前の過去のデータパターンと現在の臨床パラメータの一致度から慢性発作の発症の可能性を導き出す。別の方法として、その可能性を、特定の慢性症状に関して臨床パラメータパターンと公知のパターンを比較することで予測する。
【0276】
本発明の実施例におけるシステム10において、翌日乃至数日間の後の臨床発作の発症を予測するために臨床パラメータの過去の測定値を用いる。
【0277】
多くの喘息患者は環境条件や、喘息状態の一時的または慢性的悪化をもたらす外因性刺激物に影響される。斯かる症状悪化の予測は、現在の状態を喘息状態の次回の悪化の示すことで知られている経験的な生理学的知見及び環境的解釈と関連づけて行う。
【0278】
本発明の一実施例におけるシステム10では、被検者について測定した臨床パラメータと共に、潜在的外部修飾因子と気候条件、空気汚染、花粉などの刺激因子の双方を積分することによって被検者の臨床スコアを算出すことで、翌日乃至数日間の後に臨床発作を起こす可能性を判定する。たとえば、喘息患者の喘息発作は刺激因子が増えた日に10%増加するが、医学的介入を要する高い潜在的危険状態を被検者または介護者に警報すべきか否かを決定する閾値と比較する。
《PCA分析》
【0279】
主成分分析(PCA)は、サンプルの特性が座標軸に沿って明確に顕れる高次元空間におけるサンプル点の一次変換を決定する数学的方法であり、サンプル分散は新しい軸に沿って極値をとり、相関関係はない。
【0280】
上記定義によって、基本軸に点サンプルが小さいか分散のない(最小分散)数値が含まれるので、主成分に関しての分析によってデータの一次相互依存を表すことができる。直線関係を保持するMを調整するLを含むZ次元の点サンプルは、拡散がゼロ以外の(L−M)軸のみを表す。よって、各軸に沿う拡散をカットオフすることで、サンプルの次元性を低減できる。実際には、PCAを用いて、問題の次元性を低減し、相互依存の座標を有意の依存性のないものに変換する。
【0281】
本発明の一実施例におけるシステム10は、パターン分析モジュール16で幾晩にも亘って連続して記録した臨床パラメータについてPCA分析を行い、次回の臨床発作を意味する特異なパターンを識別する。夜間睡眠中の記録時間に基づいてデータを同期化し、慢性疾患活動がなかった夜のパターンと顕著に異なる慢性疾患活動を示した夜の一致関連パターンを特定する。慢性活動パターン度の段階的変化を慢性状態の悪化及び改善を追跡するために用いる。慢性的悪化と関連性のあるパターンをパターン分析モジュール16で予め定めるか、あるいは、特定の被検者についてモニタした最初(または、進行中)の慢性悪化以降学習する。本発明の一実施例のシステムで、幾晩にも亘って連続して記録した臨床パラメータパターンに上記PCA分析をパターン分析モジュール16において実施する。
【0282】
本発明の一実施例におけるシステム10によって、無症候と判定された夜の被検者12の臨床パラメータパターンのPCA分析を行い、それらの夜を特徴付けるパターンを生成する。このシステムでは、臨床発作の徴候の指標としてこれらのパターンと比較した変化を見つけ出す。
【0283】
慢性状態の悪化は夜間睡眠中に進行し出す場合があり、迫り来る発作を特定の夜の臨床パラメータの分析から検出できる。夜間睡眠中の呼吸数比(たとえば、夜の後半と前半の平均呼吸数比)、あるいは、夜間睡眠中の発作的な固有の呼吸数及び心拍数パターンなどの異なったパラメータを用いて個別の夜の病理変化を検出できる。
【0284】
本発明の一実施例におけるシステムは、臨床パラメータパターンの夜中変化の検出によって夜間睡眠全体の臨床状態の経過を予測もしくは追跡記録する。斯かる変化は、異なった時間における呼吸数比、あるいは、典型的な夜間挙動履歴に比較した呼吸比パターンなどの異なったパラメータを用いて定量化できる。本発明の一実施例における主成分分析を用いて、患者の履歴知見から代表的な夜間症候性または無症候性の反応を求める。図49には、本発明の一実施例において喘息患者を監視モニタして、夜間呼吸数パターンについてPCAを続行した結果を示している。時系列211、212は夫々、1回目及び2回目の成因を表したPCA分析の結果を示している。点213、214、215は夫々、点214−215間の日において医師が診断した喘息悪化症状に対応しており、同様に、点216、217、218は夫々、点217−218間の日の喘息悪化症状に対応している。この実施例では、同じ方法で、喘息症状を識別している。
【0285】
睡眠中の臨床パラメータの夜間パターンを比較する際には、睡眠が始まった時間に、異なった時間点及び睡眠サイクルの異なった時間長さに基づいて一方のパターンに対して他方のパターンを比較してパターンを変移させることが必要になる場合がある。本発明の一実施例におけるシステムでは、睡眠が始まった時点を識別でき、これに従って、PCA分析を行う前に各夜間パターンを変移する。
【0286】
本発明の一実施例におけるシステムでは、上記したようなレム睡眠の時間を関連づけることで上記変移処理を行い、レム睡眠期を一致させてPCA分析を実行する最適な方法で臨床パラメータのパターンを変移させる。
【0287】
異なった慢性患者は治療に対して異なった反応を示すことがある。本発明の一実施例におけるシステム10を、過去の生理学的知見、過去の治療、関連する過去の臨床スコアを学習して被検者個人に合わせてカスタマイズすることができ、過去の侵襲や処置に類する状況に再度遭遇した場合に推奨措置をとることができる。また、本発明の一実施例におけるシステム10では、被検者の習慣作用あるいは特定薬剤に対する適応性を追跡記録し、推奨投薬の調整、あるいは、投与する薬剤変更、または、投与する薬剤の組み合わせなどを提案することができる。
【0288】
本発明の一実施例におけるシステム10では、過去の生理学的知見、投与薬剤、喘息状態スコアを追跡記録及び分析して、過去に遭遇して治療を施した症例に類する臨床状態の最適な治療方法を推奨提案する。
【0289】
本発明の一実施例におけるシステム10では、長期に亘る治療効果を監視モニタして、当該システムによる薬剤投与量調整の推奨、あるいは、代替薬剤または薬剤組み合わせの推奨を提案した場合の生理学的な習慣作用の可能性を追跡記録し、適切な治療効果を維持する。本発明の一実施例におけるシステム10では、現在の薬剤及び投薬量に効果がみられないことを被検者あるいは医師に通知する。たとえば、システム10において患者の臨床スコア(たとえば、喘息スコア)を計算して、薬剤(たとえば、経口コルチコステロイド剤)の投薬後にデータを手動もしくは自動で入力する。システム10で、投薬後臨床スコアの改善を監視モニタし、新しい薬剤処方毎に複数の症例に関するスコアの改善を記録保存する。臨床スコアに関して薬剤の効果レベルの変化の明確な変化を確認したら、被検者または医療専門家または介護者に表示して通知する。他の実施例では、必要な薬剤を投与することで推奨される適切な治療を行うことができる。
【0290】
夜間睡眠中の呼吸数及び心拍数パターンを用いて、複数患者のうちの目的の喘息患者を監視モニタしていることを確認する。監視モニタした生理学的パターンは、被検者特有で、毎夜の無発作期中に僅かだけ変化する。本発明の一実施例においては、喘息発作の発症及び進行に係わる生理学的傾向が通常、幾夜か続き、対象者の独自性が変化した場合の異常値情報を特定して排除する。
【0291】
本発明の一実施例におけるシステムでは、得られた臨床パラメータを分析して、目的以外の患者を監視モニタした場合に警告を発する。生理学的パラメータ値を、目的の患者の過去のデータから計算した正常なパラメータ分布に比較して、正常なパラメータ分布からの大きな統計的偏差を評価する。斯かる統計的偏差を用いて不整合スコアを生成する。不整合スコアが予め定めた限界を超えた場合は、得られたデータの無視、及び、警報サインの送出の少なくとも一方を実行する。
【0292】
本発明の一実施例におけるシステムは、患者のベッドに設けた一次センサと、別のところにあるイスや他のベッドなどに設けられた二次センサを備えた中央ユニットを有している。二次センサは、有線または無線で接続されて中央ユニットとデータを共有する。本発明の一実施例におけるセンサによるデータは目的とする被検者に係わるものを有効化して、分析のための共通データベースを構築する。
【0293】
本発明の一実施例におけるシステムでは、呼吸パターンと関連する音響信号を利用して鼾を特定する。本発明の別の実施例におけるシステムでは、たとえば、ベッド乃至マットレスの角度を変化させたり、あるいは、枕を膨縮させて頭部の高さを調整するなどの方法で鼾をなくしたり、軽減するために身体姿勢を変化させる。
【0294】
本発明の一実施例におけるシステム10では、たとえば、連続する陽性気道圧(CPAP)装置を作動させ、ベッド乃至マットレスの角度を変化させ、枕を膨縮させて頭部の高さを調整するなどの方法で正常な呼吸を復活させる試みが行われる。
【0295】
本発明の一実施例におけるシステム10では、呼吸パターンと関連する音響信号を利用して鼾や喘鳴を特定する。本発明の別の実施例におけるシステムでは、たとえば、特定した鼾または喘鳴と呼吸サイクルとを相互に関連付けて呼気または吸気中に鼾か喘鳴が起こっているか否かを判定する。
《低血糖症》
【0296】
低血糖症は通常、インスリン依存性糖尿病(IDDM)の患者に対する厳格な血糖コントロールに付帯する。平均して、1型糖尿病患者は1週間に無症候低血糖症の2種類の発作に患わされ、患者二人に一人は年に一度は、助けを要するほどの低血糖症発作(時として、重篤発病または昏睡)に見舞われる。また、1型糖尿病患者は、10%程度の時間であるが50mg/dL(2.9mmol/L)以下の血糖値であり、無数の予兆的症候性低血糖発作をもたらす結果となる。
【0297】
特に重視すべきことは、夜間睡眠中の低血糖発作である。一日絶食している場合一晩中とは、最も長い時間を意味するが、長時間の睡眠中は夜間低血糖を気付かないこともある。このことは、睡眠中の意識減退ばかりでなく、睡眠中のエピネフリン反応低下によるものと説明できる。
【0298】
子どもの夜間睡眠中の低血糖症は主要な関心事である。本発明の実施例によれば、夜間の「低血糖警戒」を出すことによって、この症状の悪化を防止できる。睡眠中の血糖値の直接的な連続測定は特に、入手可能な標準的なグルコース感知商品に限界があるが、非侵襲型の低血糖警戒を作り出す装置は効果的である。こうした低血糖症は極端な代謝欠損症であるので、心拍数及び呼吸数変動、睡眠中の情動不安、振戦などの自律神経系の結果は明白な場合が多い。
【0299】
本発明の一実施例におけるシステム10は、1以上の臨界パラメータを追跡記録できる。本発明に係わる「臨界パラメータ」は、呼吸数、心拍数、動悸の発生、睡眠中の情動不安、振戦を意味する。迫り来る低血糖症発作の場合のリアルタイム警報を発する目的で、夜間睡眠中の低血糖症の発現に関連する臨界パラメータの変化を、システム10を用いて追跡記録する。たとえば、本発明の一実施例のシステムによって、夜間睡眠の開始時点における1以上の臨界パラメータの基準参照レベルを計算し、たとえば1分などの時間間隔毎にシステム10で同じパラメータを計算して、このパラメータを基準データと比較する。本発明の一実施例において、臨界パラメータの合成スコアを計算する。たとえば、低血糖スコア(HypSc)を次の式で計算する。
【数8】

・・・(式4)

式において、
RRS=(現在の呼吸数)/(基準呼吸数)X100
HRS=(現在の心拍数)/(基準心拍数)X100
TRS=(現在の振戦レベル)/(基準振戦レベル)X100
RRS=(現在の情動不安レベル)/(基準情動不安レベル)X100
【0300】
前記スコアを学習ないし規定の閾値、たとえば、値125と比較し、前記スコアが閾値を超えると、徴候警報を発する。本発明の一実施例における基準値は、夜間睡眠の開始時点の参照値である。本発明の一実施例において、基準値は、前回の無症候夜間Kにおいて被検者について測定した平均値であり、1<K<100の場合、一般に、K=10になる。本発明の他の実施例における基準値は、被検者の年齢、体格、性別で一般化されている集団平均である。
【0301】
本発明の一実施例におけるシステム10は、低血糖症状を検知した時点でブドウ糖を患者に投与する投薬装置266を備えている。被検者には経口または注入でブドウ糖を投与する。本発明の一実施例では、投薬装置266によって、被検者を起こす必要なく、また、被検者の身体に触れることなく患者が吸引可能な口の近傍にブドウ糖を噴霧させて投薬する。
《鬱血性心不全》
【0302】
鬱血性心不全(CHF)の悪化は、通常足及び脚部における腫脹(浮腫)をもたらす異常体液鬱滞によって特徴付けられ、これは患者自身の日常の体重を計って診断し、24時間で1kg以上の増加が見られた場合に注意を促すが、これには、患者が体重測定を毎日行う必要がある。本発明の一実施例におけるシステム10では、被検者の体重の変化を認識することができる。本発明の一実施例では、センサユニット30に、AC接続振動センサ(たとえば、0.05Hzのハイパスフィルタを含む)とDC接続圧力センサ(たとえば、非ハイパスフィルタを含む)を備えている。任意であるが、振動センサ及び圧力センサの両方を単一のセンサ要素で構成してもよい。圧力センサからの信号(ここでは、「体重信号」とする)の振幅は被検者の体重に比例するが、当該センサに対する被検者の位置及び姿勢に影響される。振動センサで検出した心拍関連信号(ここでは、「心拍信号」とする)の振幅は被検者の位置及び姿勢と共にカーディオ・バリスティック効果の強さに影響される。体液は身体内で増加すると、被検者の体重は増加し、カーディオ・バリスティック効果は低下する。
【0303】
本発明におけるセンサユニット30は被検者の脚部範囲の下に設けられ、浮腫症状では前記脚部範囲における体重は増加するので、体重による圧力が増えるとカーディオ・バリスティック効果は低下する。パターン分析モジュール16で、体重信号と心拍信号の比率を計算し、前記比率の基準値を算出する。前記比率の上昇は浮腫の徴候を表し、患者もしくは医療専門家に示すか、あるいは、システム10で計算する臨床スコアに組み込む。本発明の一実施例において、特別な身体姿勢乃至位置の影響を最小限にするために夜間の相当期間に亘る当該信号を平均化する。
【0304】
CHF患者は悪化が始まると患者の頭部及び肺部を他の部位に比べて高くした睡眠姿勢をとらせることが多く、そのために、高くした量を検出するシステムによってCHF悪化の初期徴候の認知の一助となる。本発明の一実施例におけるシステム10によって、睡眠姿勢の変化を検出する。また、本発明の一実施例における複数のセンサユニット30をマットレスの下にセットする。被検者12の身体の高さ及び角度の変化を、複数センサ間の圧力分布の変化によって認識する。本発明における傾きセンサは、被検者12の肺部範囲にあたるマットレス上、または、被検者12が使う枕の中などに配置する。たとえば、パターン分析モジュール16において、前夜に比べた被検者の睡眠中の傾斜角度の増加を、被検者の臨床スコアに統合するCHF悪化の指標として表す。
【0305】
本発明の一実施例におけるセンサユニット30の計測範囲を、被検者12の体重を測定するためにマットレスの全域をカバーするようを広げる。本発明の一実施例におけるセンサ30は、たとえば、液体乃至気体などの流体を入れる弾性室に備える。弾性室はマットレスのほぼ全面に及び、被検者12による圧力によって変形する。圧力センサで弾性室内の流体の圧力を検出し、被検者12の体重が増えると圧力も増加する。
【0306】
チェーン・ストークス呼吸(CSR)及び周期性呼吸(PB)はCHFの悪化の指標となることが多く、本発明の一実施例のパターン分析モジュール16では、CHF状態の指標であるCSR及びPBの強度を測定する。図50に、本発明の一実施例によってCHF患者を監視モニタした結果を示している。図50に示した呼吸関連信号の分析を、呼吸運動振幅の周期性と各サイクルの無呼吸の発症の識別によってCSRパターンを確定するために適用できる。図52に、本発明の一実施例によってCHF患者を監視モニタし、周期的呼吸信号包絡線を算出するために呼吸信号を復調した結果を示している。呼吸関連信号の絶対値を求め、たとえば、0.1Hzの低域通過周波数のローパスフィルタに通して呼吸周波数をフィルタ処理する。その結果(波形231)はPB信号包絡線である。波形232は波形231のパワースペクトルである。ピーク233は、この場合約50秒のサイクル時間を有する周期的な呼吸の周波数に対応する。
【0307】
図51は、本発明の一実施例におけるパターン分析モジュール16による図50のデータの分析結果を示している。図51における各点は、連続する2つの呼吸サイクル間の時間を表している。本発明の一実施例におけるパターン分析モジュール16によって、図51に示した結果を規定のCSR閾値、たとえば10秒、と比較し、PB中の閾値以上のピークの夫々をCSR症状と定義する。CSR症状の周波数は、この実施例において計算したCHFスコアに加算されるパラメータである。図53に、本発明の一実施例によってCHF患者を監視モニタしながら測定した周期的呼吸の例を示している。図54は、図53に示された信号について本発明の一実施例によって計算した連続する2つの呼吸サイクル間の時間を示している。ここでは、波形246には10秒の規定閾値以上の高い点は見られず、したがって、これをCSRでなく、PB症状と判定する。
【0308】
本発明の一実施例におけるシステム10に、たとえば複数の重量検出センサなどの複数のセンサを備え、これらのセンサを患者12が休息するマットレス乃至マットレスパッドの下に設け、このシステムによって、センサによって検出された平均重量比の変化を計算する。重量比の変化は、たとえば、患者12が睡眠中の姿勢角度を変化させるなどの姿勢の変化を表す。睡眠時の角度の変化は、たとえば、CHF患者や他の生理学的疾患の患者が代償不全を感じ始めたことを表している。また、重量変化の検出結果は、臨床スコアに統合したり、あるいは、患者や医師に別々に表示することができる。
《不眠症》
【0309】
本発明の一実施例におけるシステム10を用いて、不眠症に悩まされる被検者12を監視モニタすることができる。たとえば、システム10によって、患者が眠りに就く前の床入り期間、総安眠期間、覚醒回数、睡眠効率、レム睡眠期間とタイミングなどを監視モニタする。上記した低血糖スコアにおける喘息スコアに用いた1以上のパラメータを用いて不眠症スコアを計算し、被検者ないし医師に通知する。本発明の一実施例におけるシステム10では更に、不眠症を治療するための異なった治療法の効果、及び、治療の前後の睡眠の質のパラメータを比較して得られた改善を評価できる。本発明の一実施例におけるシステム10では、不眠症の悪化を検出して、更なる治療の必要性を通知する。更に、本発明の一実施例におけるシステム10では、センサによる検出及びシステム10の分析で不眠症を治療する適切な治療の必要性が認められた場合、その治療法を実行管理する。
《反射神経》
【0310】
本発明の一実施例におけるシステム10では、無呼吸や他の生理学的症状の発症を認識して、CPAPや身体の状態変化などへの適切な処置乃至治療を行うことができる。たとえば、無呼吸症や他の生理学的症状の発症を検出したり、あるいは、迫り来る無呼吸症や他の生理学的症状を予測して、システム10によって、短時間の内(数秒から数分以内)に適切な処置乃至治療を行うことができる。本発明の一実施例において、実行した措置乃至治療は、たとえば、閉塞性睡眠時無呼吸発症した時の気道を確保するよう被検者12の身体乃至頭部位置を変える装置を作動させる。たとえば、システム10に、措置治療を実行する際に被検者12の頭部の高さを変化させるよう膨張または収縮できる被検者用枕を用いる。到来するまたは進行中の無呼吸または他の生理学的症状を検出したら、枕内の空気圧を変化させて、患者の姿勢を変化させて生理学的症状を抑制したり、あるいは、防止することができる。
《心拍数標準偏差》
【0311】
本発明の一実施例におけるシステム10は、睡眠中の患者の心拍数を監視モニタして、睡眠時間中の毎分平均心拍数を計算する。このシステムによって、夜間の毎分心拍測定値の時系列標準偏差を計算する。この標準偏差は、喘息、COPD、CHFの悪化などの1以上の生理学的状態を監視モニタする基準となる。たとえば、標準偏差対被検者基準の比率を計算して、これを測定基準として用いるか、あるいは、基準値に対する標準偏差比を患者の臨床スコアに含めて、喘息、COPD、CHFの悪化などの1以上の生理学的状態を監視モニタし予測する。
【0312】
ここに開示の本発明の実施例は、特に喘息発作あるいはCHFに係わる技術であるが、本発明が意図する機能原理は適宜改変を加えて、正常な呼吸数パターンに影響を及ぼす、たとえば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)、糖尿病、神経障害(癲癇など)、CHFに伴う心不全などにおける呼吸状態及び無呼吸状態の予測及び予測に適用できる。本発明の一適用例として、システム10によって、迫り来る偏頭痛の早期徴候である呼吸数及び/または心拍数の変化を監視モニタするなどの方法で片頭痛の発症の予測及び/または監視する。本発明の他の適用例として、システム10を、腸や結腸の僅かな運動を監視し、その運動を胃腸の状態を表す指標として分析できるように構成している。たとえば、システム10によって、腹部下に設けたセンサや肺部下に設けたセンサを用いて検出した信号を微分するなどの方法で胃腸消化管の運動の特徴的な周期を特定することができる。
【0313】
ここに記載の技術は、後述の本発明による適用例に記載の技術と組み合わせて実施することができ、更には、米国特許仮出願第60/674382号、同第60/692105号、同第60/731934号、同第60/784799号、米国特許出願第11/197786号、米国特許出願公開第2005/0192508号(Lange等)、国際特許公開第WO2005/074361号と組み合わせて実施できる。
【0314】
当該技術分野の技術者には明らかであるが、本発明は、特に以上の説明及び図示した実施例のみに限定するものではない。敷衍すると、上記説明で開示した様々な特徴の組み合わせ、更には、その二次的組み合わせと共に、上記説明に係わり当該業者が想定し得る従来技術に基づく変更及び改変をも含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0315】
本発明の要旨は特に本明細書の趣旨である請求の範囲において開示し、権利主張するものである。本発明に係わり上記及び上記以外の目的、特徴及び特長は添付の図面を参照して本発明の実施例の以下の詳細な説明によって明らかにする。
【図1】本発明の一実施例による被検者の慢性的病状をモニタするシステムの概略図である。
【図2】本発明の一実施例に係わり図1に示したシステムの制御ユニットの構成要素を示す概略ブロック図である。
【図3】本発明の一実施例に係わり図2に示した制御ユニットの呼吸数パターン分析モジュールの概略ブロック図である。
【図4】本発明の一実施例によって測定した運動信号の分析を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施例に基づいて行った実験において測定した慢性喘息患者の呼吸数パターンを示すグラフである。
【図6】本発明の一実施例によって測定した呼吸数パターンと心拍パターンと標準基準値を示すグラフである。
【図7】本発明の一実施例によって測定した呼吸数パターンと心拍パターンと標準基準値を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施例による運動信号の異なった周波数成分を示すグラフである。
【図9】本発明の一実施例による経時信号と対応する周波数領域を示すグラフである。
【図10】本発明の一実施例によって測定した周波数スペクトルを示すグラフである。
【図11】本発明の一実施例における合成・分解信号と測定胎児心拍信号を示すグラフである。
【図12】本発明の一実施例による身体運動を示すグラフである。
【図13】本発明の一実施例による睡眠中及び喘息の臨床発作中の情動不安状態を示すグラフである。
【図14】本発明の一実施例によって測定した信号のスペクトル密度を示すグラフである。
【図15】本発明の一実施例における喘息患者のために測定及び分析した臨床スコア計算結果を示すグラフである。
【図16】本発明の一実施例における喘息患者の心拍数と呼吸数の相関を示すグラフである。
【図17】本発明の一実施例における喘息患者の心拍数と呼吸数の相関を示す別のグラフである。
【図18】本発明の一実施例による喘息患者の治療計画の変化において喘息患者を測定した複数のパラメータを示すグラフである。
【図19】本発明の一実施例において喘息患者に対する夜間長期測定による機械的圧力信号を示すグラフであって、下側図は機械的圧力信号の標準偏差グラフである。
【図20】本発明の一実施例において喘息患者の呼吸増大、溜息、深吸気中の機械的圧力信号を示すグラフである。
【図21】本発明の一実施例において喘息患者の呼吸増大、溜息、深吸気中の機械的圧力信号を示す別のグラフである。
【図22】本発明の一実施例において複数の呼吸サイクルを示す喘息患者から得られた機械的圧力信号を示すグラフである。
【図23】本発明の一実施例において図解例示のために図22のピークを垂直に変位させて示した複数の呼吸サイクルを示すグラフである。
【図24】本発明の一実施例において図23の呼吸サイクルを平均化して算出した平均呼吸サイクルを示すグラフであって、呼気、吸息、休息状態を示している。
【図25】本発明の一実施例において喘息患者の平均夜間呼吸数と心拍数を示すグラフである。
【図26】本発明の一実施例において喘息患者で測定した複数の心拍サイクルであって、心拍信号のピークに印を付けたグラフである。
【図27】本発明の一実施例においてRR方法を用いて計算した喘息患者の瞬間心拍信号を示すグラフである。
【図28】本発明の一実施例においてパワースペクトルを示した図27のグラフと同時期における同一喘息患者の信号パワースペクトルのグラフであって、フィルタ処理した呼吸信号と、フィルタ処理した心拍信号のパワースペクトルと、図27の心拍信号のパワースペクトルを示している。
【図29】本発明の一実施例によって測定及び分析した中枢性睡眠時無呼吸症の症状に関するデータを示すグラフである。
【図30】本発明の一実施例によって測定及び分析した運動及び音響データを示すグラフである。
【図31】本発明の一実施例によって測定した異なる音響信号を示すグラフである。
【図32】本発明の一実施例によって測定した咳の3位相からなる音響信号を示すグラフである。
【図33】本発明の一実施例によって測定した2種類の咳の3位相からなる音響信号を示すグラフである。
【図34】本発明の一実施例によって測定した咳の音響信号のAR時間周波数特性の状態を示すグラフである。
【図35】本発明の一実施例によって測定及び分析した咳の音響信号の信号包絡線を示すグラフである。
【図36】本発明の一実施例によって測定及び分析した音声の音響信号を示すグラフである。
【図37】本発明の一実施例による最高/最低分析法を用いて測定及び分析した図51の音声の音響信号の周波数分布を示すグラフである。
【図38】本発明の一実施例によるAR方法を用いて測定及び分析した図51の音声の音響信号の周波数分布を示すグラフである。
【図39】本発明の一実施例によって対象をモニタ測定した咳症状の同時音響信号と機械的運動信号を示すグラフである。
【図40】本発明の一実施例によって対象をモニタ測定した信号であって、慢性喘息患者の安眠時と睡眠中の不安期を示すグラフである。
【図41】本発明の一実施例によって対象をモニタ測定した信号であって、夜間における慢性喘息患者の異なった時間の症状を閾値と共に示すグラフである。
【図42】本発明の一実施例によって対象をモニタ測定した信号であって、慢性喘息患者をモニタした際の睡眠中の姿勢変化を示すグラフである。
【図43】本発明の一実施例によって対象をモニタ測定した信号であって、信号のパワースペクトルを示すグラフである。
【図44】本発明の一実施例によって対象をモニタ測定した信号であって、復調信号のパワースペクトルを示すグラフである。
【図45】本発明の一実施例によって対象をモニタ測定した信号であって、自発的に振戦を誘導させた実験において被検者をモニタして得られた3〜9Hzの周波数帯域における全領域経時パワースペクトルを示すグラフである。
【図46】本発明の一実施例によって対象をモニタ測定した信号であって、睡眠中の呼吸数と呼吸数変動とレム睡眠期を示すグラフである。
【図47】本発明の一実施例によって慢性喘息患者をモニタ測定した信号であって、2つの異なった夜間に測定した呼吸数を示すグラフである。
【図48】本発明の一実施例によって慢性喘息患者をモニタ測定した信号であって、夜の終わりと始めに測定比較した呼吸数を示すグラフである。
【図49】本発明の一実施例によって慢性喘息患者をモニタ測定した結果であって、夜間の呼吸数パターンのPCA分析の結果を示すグラフである。
【図50】本発明の一実施例によって鬱血性心不全患者をモニタ測定した呼吸関連信号であって、チェーンストークス呼吸数パターンを示すグラフである。
【図51】本発明の一実施例によって分析した図50に示す呼吸数パターンの分析結果であって、連続呼吸サイクル時間を示すグラフである。
【図52】本発明の一実施例によって周期性呼吸を伴う鬱血性心不全患者をモニタ測定して算出した復調信号を示すグラフである。
【図53】本発明の一実施例によって周期性呼吸を伴う鬱血性心不全患者をモニタ測定した呼吸関連信号であって、各呼吸サイクルのピークに印をつけたグラフである。
【図54】本発明の一実施例によって算出した呼吸サイクル時間を図53の信号に付記したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者に接触することなく低血糖症に関する1以上の臨床パラメータをモニタし、少なくとも1つの臨床パラメータの変異を検出し、少なくとも1つの臨床パラメータの偏差が許容値から逸脱した場合に警告を発することを特徴とする被検者12の低血糖症の発症を検出する方法。
【請求項2】
少なくとも1つの臨床パラメータの基準値を決定すると共に、前記基準値から前記の少なくとも1つの臨床パラメータの変数を決定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
睡眠中の被検者に実行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
被検者の応諾を要せずに実行することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
被検者に接触することなく低血糖症に関する1以上の臨床パラメータをモニタする少なくとも1つのセンサ30と、少なくとも1つの臨床パラメータを検出する分析器16と、少なくとも1つの臨床パラメータの偏差が許容値から逸脱した場合に警告を発する手段よりなることを特徴とする被検者12の低血糖症の発症を検出するための装置。
【請求項6】
前記分析器16に更に、少なくとも1つの臨界パラメータの基準値を決定する手段を設け、前記基準値に対する前記少なくとも1つの臨界パラメータの変化を検出する機能を前記分析器に持たせたことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
臨床パラメータは、呼吸数、心拍数、動悸の発生、情動不安状態、振戦のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の装置。
【請求項8】
睡眠中の被検者に用いることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
被検者12の咳を検出する方法であって、被検者に接触することなく被検者近傍で音声信号を検出し、検出音声信号を分析し、音声信号の時間周波数特性の変化を確定して咳を識別することを特徴とする方法。
【請求項10】
睡眠中の被検者に実施することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
被検者の応諾を要せずに実行することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
被検者12に接触することなく音声信号を検出する電子音声信号検出器110と、音声信号の時間周波数特性における変化の音声信号の周波数変化を確定することで咳を識別する信号分析器16とからなることを特徴とする被検者の咳を検出するための装置。
【請求項13】
睡眠中の被検者に用いることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
被検者の応諾を要せずに実行することを特徴とする請求項12または請求項13に記載の装置。
【請求項15】
被検者12の近傍の音声信号を検出し、被検者を視認または被検者に接触することなく被検者の運動を検知して検知運動に対応する運動信号50を生成し、音声信号と運動信号を分析して咳を識別することからなることを特徴とする被検者の咳を検出するための方法。
【請求項16】
運動信号の特徴を判定し、肺に体液を鬱滞させた被検者及び喫煙する被検者の一方に関連する基準値に前記特徴を比較することによって前記分析処理を行うことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
被検者近傍からの音声信号検出は、複数の空間音声センサからの複数の音声信号を検出することからなり、前記分析は複数の空間音声信号を分析して音声信号源を特定することを特徴とする請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項18】
睡眠中の被検者に実施することを特徴とする請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
被検者の応諾を要せずに実行することを特徴とする請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
音声信号センサ110と、被検者に接触することなく患者の運動を検出して検出運動に対応する運動信号を生成する運動センサ30と、音声信号と運動信号を分析して咳を識別する信号分析器16とからなることを特徴とする被検者の咳を検出するための装置。
【請求項21】
前記信号分析器に、運動信号の特徴を判定し、肺に体液を鬱滞させた被検者及び喫煙する被検者の一方に関連する基準値に前記特徴を比較する機能を持たせたことを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
複数の音声信号を前記分析器に送る複数の空間音声センサを有すると共に、前記分析器によって前記複数の音声信号を関連づけて音声信号源を特定することを特徴とする請求項20または請求項21に記載の装置。
【請求項23】
被検者12に接触せずに被検者の身体の一部の機械信号を検出できる複数のメカニカルセンサを設け、複数のセンサからの複数の機械的信号を検出し、複数の機械的信号を分析して浮腫の存在を測定することを特徴とする被検者の浮腫を検出するための方法。
【請求項24】
前記分析に、被検者における機械的信号分布を検出して浮腫の存在を測定することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記複数のメカニカルセンサに複数の圧力センサを用いたことを特徴とする請求項23または請求項24に記載の方法。
【請求項26】
睡眠中の被検者に実施することを特徴とする請求項23〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
被検者の応諾を要せずに実行することを特徴とする請求項23〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
被検者12に接触せずに被検者の身体の一部の機械信号を検出して、複数のセンサからの複数の機械的信号を生成する複数のメカニカルセンサ30と、複数の機械的信号を分析して浮腫の存在を測定する信号分析器16とからなることを特徴とする被検者の浮腫を検出するためのシステム。
【請求項29】
前記分析器で、被検者における機械的信号分布を検出して浮腫の存在を測定することを特徴とする請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記複数のメカニカルセンサに複数の圧力センサを用いたことを特徴とする請求項28または請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
睡眠中の被検者に用いることを特徴とする請求項28〜30のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項32】
被検者の応諾を要せずに適用することを特徴とする請求項28〜31のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項33】
被検者に接触せずに被検者の呼吸の運動を検出して検出運動から対応する信号50を生成し、被検者の呼吸に対応する検出運動信号から呼吸関連信号52を抽出し、呼吸関連信号を分析して無呼吸の徴候を予測することを特徴とする無呼吸の徴候を検出するための方法。
【請求項34】
前記運動には更に心拍に関連する運動が含まれ、被検者の心拍に対応する検出運動信号から心拍関連信号54を抽出し、呼吸関連信号を分析して無呼吸の徴候を予測することを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
被検者の応諾を要せずに適用することを特徴とする請求項33または請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
無呼吸の徴候を予測した時に無呼吸被検者を治療することを特徴とする請求項33〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
被検者に接触せずに被検者の呼吸に関連する呼吸運動を検出して検出運動に対応する信号50を生成する少なくとも1つのセンサ30と、被検者の呼吸に対応する検出運動信号50から呼吸関連信号52を抽出して呼吸関連信号を分析して無呼吸の徴候を予測する分析器よりなることを特徴とする無呼吸の徴候を検出するためのシステム。
【請求項38】
前記運動には更に心拍に関連する運動が含まれ、前記分析器で、被検者の心拍に対応する検出運動信号から心拍関連信号54を抽出し、呼吸関連信号を分析して無呼吸の徴候を予測することを特徴とする請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
無呼吸の徴候を予測した時に無呼吸被検者を治療することを特徴とする請求項37または請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
被検者の近傍で音声信号を検出し、被検者に接触せずに被検者の呼吸を検出して検出した呼吸に対応する呼吸関連信号を生成し、音声信号と呼吸関連信号を分析して無呼吸の徴候を検出することを特徴とする無呼吸の徴候を検出するための方法。
【請求項41】
前記分析が、音声信号の振幅の低下を検出し、呼吸関連信号の振幅の少ない低下、または、無振幅低下の相互関連をとる処理からなることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
鼾発症中に行うことを特徴とする請求項40または請求項41に記載の方法。
【請求項43】
無呼吸発作の検出に続いて治療装置を作動させることを含み、少なくとも無呼吸を低減させることを特徴とする請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
無呼吸が収まったところで治療装置を停止させることを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項45】
被検者に接触せずに、あるいは、被検者を視認することなく実施することを特徴とする請求項40〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
被検者の応諾を要せずに実行することを特徴とする請求項40〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
音声信号を検出する音声センサ110と、被検者に接触せずに被検者の呼吸を検出して呼吸に対応する呼吸関連信号を生成する少なくとも1つのセンサ30と、音声信号と呼吸関連信号を分析して無呼吸の徴候を検出する分析器16とからなることを特徴とする無呼吸の徴候を検出するための装置。
【請求項48】
前記分析が、音声信号の振幅の低下を検出し、呼吸関連信号の振幅の少ない低下、または、無振幅低下の相互関連をとる処理からなることを特徴とする請求項47に記載の装置。
【請求項49】
前記音声センサを鼾検出に適用することを特徴とする請求項47または請求項48に記載の装置。
【請求項50】
治療装置と、無呼吸を検出した時に前記治療装置を作動させる手段とを更に有することを特徴とする請求項47〜49のいずれか1項に記載の装置。
【請求項51】
無呼吸が収まったところで治療装置を停止させる手段を有することを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項52】
妊婦に接触せずに妊婦の運動を検出して検出運動から対応する信号を生成し、検出信号を分析して陣痛時の子宮収縮を検出することからなることを特徴とする妊婦の子宮収縮を検出するための方法。
【請求項53】
子宮収縮を検出し、検出した子宮収縮が早産の徴候であれば、早産を阻止する治療を施すことを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項54】
妊婦の心拍数及び呼吸数に少なくとも一方を検知して陣痛時の子宮収縮の発生の検出を補助することを含む請求項52または請求項53に記載の方法。
【請求項55】
陣痛時の子宮収縮時期における陣痛時の子宮収縮の回数と陣痛時の子宮収縮の比率の少なくとも一方を判定し、斯かる回数と比率の少なくとも一方を規定の閾値と比較し、規定の閾値を超えた場合に警報を発することを特徴とする請求項52〜54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
妊婦が着用する衣類に接触したり、視認することなく実行することを特徴とする請求項52〜55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
妊婦の応諾を要せずに実行することを特徴とする請求項52〜56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
妊婦に接触せずに妊婦の運動を検出して検出運動から対応する信号50を生成する少なくとも1つの運動センサ30と、少なくとも1つの検出信号を分析して陣痛時の子宮収縮を検出する信号分析器とからなることを特徴とする妊婦の子宮収縮を検出するための装置。
【請求項59】
妊婦の子宮収縮を検出したら治療を行う手段を設け、妊婦の負担を軽減することを特徴とする請求項58に記載の装置。
【請求項60】
心拍数センサ及び呼吸数センサのうちの少なくともいずれか一方を備え、前記分析器で検出心拍数及び検出呼吸数の少なくとも一方を用いて陣痛時の子宮収縮の発生の検出を行うことを特徴とする請求項58または請求項59に記載の装置。
【請求項61】
陣痛時の子宮収縮時期における陣痛時の子宮収縮の回数と陣痛時の子宮収縮の比率の少なくとも一方を判定する手段と、斯かる回数と比率の少なくとも一方を規定の閾値と比較する手段と、規定の閾値を超えた場合に警報を発する警報器とを更に備えたことを特徴とする請求項58〜60のいずれか1項に記載の装置。
【請求項62】
妊婦を見ないで用いることを特徴とする請求項58〜61のいずれか1項に記載の装置。
【請求項63】
妊婦の応諾を要せずに実行することを特徴とする請求項58〜62のいずれか1項に記載の装置。
【請求項64】
被検者12に接触せずに被検者の呼吸を検出して検出呼吸に対応する呼吸関連信号52を生成し、呼吸関連信号を分析してレム睡眠状態を検出することからなる被検者のレム(REM)睡眠を識別する方法。
【請求項65】
前記分析には、呼吸関連信号から呼吸パターンを求め、呼吸率変動性(BRV)を計算してレム睡眠の発生を検出する処理が含まれることを特徴とする請求項64に記載の方法。
【請求項66】
レム睡眠の発生中またはレム睡眠発生直後に被検者を覚醒させる処理を更に有する請求項64または請求項65に記載の方法。
【請求項67】
レム睡眠の発生中に被検者に薬剤を投与する処理を更に有する請求項64〜66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
非レム睡眠の発生中に被検者に薬剤を投与する処理を更に有する請求項64〜67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
被検者に接触せずに、あるいは、被検者を視認することなく実施することを特徴とする請求項64〜68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
被検者に接触せずに、且つ、被検者の応諾を要せずに被検者の呼吸を検出し検出呼吸に対応する呼吸関連信号52を生成する少なくとも1つのセンサ30と、呼吸関連信号分析してレム睡眠状態を検出する信号分析器16とからなることを特徴とする被検者のレム(REM)睡眠を識別する装置。
【請求項71】
前記分析器に、呼吸関連信号から呼吸パターンを求め、且つ、呼吸率変動性(BRV)を計算する機能を持たせたことを特徴とする請求項70に記載の装置。
【請求項72】
レム睡眠の発生中に被検者を覚醒させる手段を更に持たせた請求項70または請求項71に記載の装置。
【請求項73】
レム睡眠発生直後に被検者を覚醒させる手段を更に持たせた請求項70〜72のいずれか1項に記載の装置。
【請求項74】
レム睡眠の発生中に被検者に薬剤を投与する手段を更に持たせた請求項70〜73のいずれか1項に記載の装置。
【請求項75】
被検者に接触せずに、あるいは、被検者を視認することなく適用できることを特徴とする請求項70〜74のいずれか1項に記載の装置。
【請求項76】
被検者12の運動を検出して検出運動に応じた検出運動信号50を生成し、検出運動信号から心拍関連信号を確定し、心拍関連信号から第1の呼吸関連信号を確定し、検出運動信号から直接第2の呼吸関連信号を確定し、第1の呼吸関連信号と第2の呼吸関連信号を比較して心拍関連信号の有効性を決定することからなることを特徴とした被検者の心拍数及び呼吸数を同時に測定する方法。
【請求項77】
被検者に接触しないで実施できることを特徴とした請求項76に記載の方法。
【請求項78】
被検者に接触せずに、あるいは、被検者を視認することなく実施することを特徴とする請求項76または請求項77に記載の方法。
【請求項79】
被検者の応諾を要せずに実行することを特徴とする請求項76〜78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
被検者の運動を検出して検出運動に応じた検出運動信号50を生成する少なくとも1つの運動センサ30と、検出運動信号から心拍関連信号54を確定し、心拍関連信号から第1の呼吸関連信号を確定し、検出運動信号から直接第2の呼吸関連信号を確定し、第1の呼吸関連信号と第2の呼吸関連信号を比較して心拍関連信号の有効性を決定する信号分析器16とからなることを特徴とする被検者の心拍数及び呼吸数を同時に測定するシステム。
【請求項81】
被検者に接触しないで使用できることを特徴とした請求項80に記載のシステム。
【請求項82】
被検者に接触したり、あるいは、被検者を視認することなく使用できることを特徴とする請求項80または請求項81に記載のシステム。
【請求項83】
被検者の応諾を要せずに使用できることを特徴とする請求項80〜82のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項84】
被検者12に接触せずに被検者の運動を検出して検出運動に対応した検出運動信号を生成し、検出運動信号の変化を測定し、前記変化を判定基準と比較して被検者の姿勢位置が変化したか否かを決定することからなる被検者の姿勢位置の変化をモニタする方法。
【請求項85】
睡眠中の被検者に実行することを特徴とする請求項84に記載の方法。
【請求項86】
被検者に接触せずに、あるいは、被検者を視認することなく実施することを特徴とする請求項84または請求項85に記載の方法。
【請求項87】
被検者の応諾を要せずに適用することを特徴とする請求項84〜86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
被検者12に接触せずに被検者の運動を検出して検出運動に応じて検出運動信号50を生成する少なくとも1つのセンサ30と、検出運動信号の変化を測定する手段と、前記変化を判定基準と比較して被検者の姿勢位置が変化したか否かを決定する手段とからなる被検者の姿勢位置の変化をモニタするシステム。
【請求項89】
睡眠中の被検者に用いることを特徴とする請求項88に記載のシステム。
【請求項90】
被検者に接触せずに、あるいは、被検者を視認することなく適用できることを特徴とする請求項88または請求項89に記載のシステム。
【請求項91】
被検者の応諾を要せずに適用することを特徴とする請求項88〜90のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項92】
被検者12に接触せずに被検者の複数の臨床パラメータを検出して検出臨床パラメータに対応した複数の臨床パラメータ信号を生成し、前記複数の臨床パラメータ信号を合成し、合成臨床パラメータを分析して臨床徴候をモニタあるいは予測することからなる被検者をモニタする方法。
【請求項93】
前記臨床パラメータが、呼吸数、心拍数、咳回数、呼気/吸気率、呼吸増大量、深呼吸、振戦、睡眠周期、情動不安のパターン、睡眠の長さ及び周期性であることを特徴とする請求項92に記載の方法。
【請求項94】
合成臨床パラメータ信号の分析において、合成臨床パラメータ信号を基準値と比較する処理を行うことを特徴とする請求項92または請求項93に記載の方法。
【請求項95】
複数の臨床パラメータ信号の合成において、基準値との比較に基づいて複数の臨床パラメータ信号のスコアを抽出する処理を行うことを特徴とする請求項92〜94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記スコアを閾値スコアに比較する処理を更に含むことを特徴とする請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記スコアと前記閾値スコアとの比較に応じて被検者を治療する処理を更に含むことを特徴とする請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記分析において、合成臨床パラメータ信号の変動と治療計画における変更との相関をとる処理を更に含むことを特徴とする請求項92〜97のいずれか1項に記載の方法。
【請求項99】
前記複数の臨床パラメータのうちの少なくとも1つに睡眠段階を含み、合成臨床パラメータ信号の分析において、睡眠中の合成臨床パラメータ信号の変動を検出する処理を含むことを特徴とする請求項92〜98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項100】
被検者12に接触せずに被検者の複数パラメータを少なくとも3日間に亘って測定し、各日付Dにおけるパラメータに基づく呼吸器疾患スコアS(D)を評価し、日付Dの呼吸器疾患スコアS(D)を日付D前の少なくとも1日の被検者のスコアを比較して被検者の相対状態を判定することからなることを特徴とする呼吸器疾患のある被検者の状態をモニタする方法。
【請求項101】
前記複数パラメータの少なくとも1つに、日付D前の少なくとも3日間の平均呼吸数で除算した日付Dの日平均呼吸数よりなる被検者の平均呼吸数Ra(D)を含むことを特徴とする請求項100に記載の方法。
【請求項102】
複数パラメータに、被検者の日付Dにおける呼吸数の一次導関数R”(D)において下式で計算した値を含み、
【数1】

式において、R(D)は、日付Dにおける被検者の平均呼吸数であり、R(D−1)は日付D前の日付における被検者の平均呼吸数であることを特徴とした請求項100または請求項101に記載の方法。
【請求項103】
呼吸疾患が喘息であることを特徴とする請求項100〜102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
呼吸疾患が慢性閉塞性肺疾患(COPD)であることを特徴とする請求項100〜103のいずれか1項に記載の方法。
【請求項105】
被検者12に接触せずに被検者の心拍数を検出して心拍数に対応した信号を生成し、心拍信号を分析して被検者の呼吸数を確定することからなる被検者の心拍数から呼吸数を検出する方法。
【請求項106】
睡眠中の被検者に実行することを特徴とする請求項105に記載の方法。
【請求項107】
被検者12に接触しないで被検者の呼吸を検出して複数回の呼吸に対応する複数の呼吸信号を生成し、複数の呼吸信号を合成して被検者の特性呼吸パラメータを求め、前記特性呼吸パラメータから呼吸発作の徴候を予測することからなる被検者の呼吸器発作の徴候をモニタする方法。
【請求項108】
合成処理に、同期平均化処理を含めたことを特徴とする請求項107に記載の方法。
【請求項109】
同期平均化処理に、複数の呼吸信号を整合する処理を含めたことを特徴とする請求項108に記載の方法。
【請求項110】
整合処理に、呼吸信号属性を整合する処理を含めたことを特徴とする請求項109に記載の方法。
【請求項111】
複数の呼吸信号を合成して被検者の特性呼吸パラメータを求める処理に、複数の呼吸信号から呼吸スコアを計算する処理を含めたことを特徴とする請求項107〜110のいずれか1項に記載の方法。
【請求項112】
被検者に接触せずに、あるいは、被検者を視認することなく実施することを特徴とする請求項117〜111のいずれか1項に記載の方法。
【請求項113】
被検者の応諾を要せずに実行する請求項107〜112のいずれか1項に記載の方法。
【請求項114】
運動センサで被検者の運動を検出して検出運動に対応する電気信号を生成し、少なくとも2つの期間に亘って検出運動信号の変化を測定し、前記少なくとも2つの期間の変化を比較して被検者の情動不安状態を判定することからなる被検者の情動不安状態を判定する方法。
【請求項115】
被検者に接触せずに、あるいは、被検者を視認することなく実施することを特徴とする請求項114に記載の方法。
【請求項116】
被検者の応諾を要せずに実行することを特徴とする請求項114または請求項115に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【公表番号】特表2009−532072(P2009−532072A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538433(P2008−538433)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際出願番号】PCT/IB2006/002998
【国際公開番号】WO2007/052108
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(507418809)アーリーセンス エルティディ (3)
【Fターム(参考)】