説明

自動列車停止装置および自動列車停止方法

【課題】変周式およびトランスポンダ式の両方式に対応したATS車上装置の更なる小型化を図ることが可能な自動列車停止装置および自動列車停止方法を得る。
【解決手段】列車で検出された速度情報20を速度照査パターンに照査して列車速度を制御するATS車上装置1を備えた自動列車停止装置であって、ATS車上装置1には、トランスポンダ式地上子からの電文を受信する車上子13と、変周式地上子の周波数に応じて変周された変周信号を検出する車上子14とが設置されており、ATS車上装置1は、車上子14から勾配補正を示す変周信号が出力された場合、この変周信号を出力した2つの変周式地上子間の距離を計測し、計測された距離に対応した勾配値で速度照査パターンを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用の列車保安に使用する自動列車停止(ATS:Automatic Train Stop)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ATS装置は、列車の安全運行を確保するために、列車が停止信号を無視あるいは誤認して進行を続ける場合、自動的にブレーキをかけて列車を停止させて衝突事故を防止する装置である。現在、実用に供されているATS装置は、主に発振周波数変周式(変周式)ATS装置とトランスポンダ式ATS装置とに大別される。以下の説明では、変周式ATS装置を単に「ATS−S:Automatic Train Stop-Signal」と称し、トランスポンダ式ATS装置を単に「ATS−P:Automatic Train Stop system-Pattern」と称する。
【0003】
ATS−Sとトランスポンダの区別は、地上と車上間の情報伝達方式の違いおよび列車制動方式の違いによる。ATS−Sでは、信号機の外方一定距離(「警報距離」という)に地上子を設置しておき、車上子が地上子上を通過するとき、車上子と地上子が電気的に結合することで車上子の常時発振周波数が地上子の共振周波数に変周され、この変周された信号(以下「変周信号」と称する)を読み取るように構成されている。一方、ATS−Pでは地上子から送信された電文を読み取るように構成されている。
【0004】
近年、異なる方式のATSを採用している鉄道会社の間で相互に乗入れを行うケースが増えているため、両方式の区間をまたがって運行される列車には、その両方式に対応できるように、2つの方式の機器を搭載する必要がある。ただし、車上の限られたスペースにこれらの機器を設置することが困難になるという問題だけでなく、機器のコストが高くなる等の問題が生じている。このような問題を解決する手段として、下記特許文献1に示される従来技術では、送受信部の統合化を図ることにより、一台のATS装置でATS−SおよびATS−Pに対応可能に構成されている。
【0005】
他方、ATS−Sでは、所定の地上子を通過すると、この地上子からの情報により車上装置が警報を作動させ、作動後5秒以内に確認扱いを怠ると非常ブレーキを動作させるものである。確認扱いとは、警報に対して確認ボタンを押す行為である。ただし、警報が作動した後の5秒以内に運転士が確認扱いを行った場合、運転手の確認扱い後の失念によって信号冒進の可能性がある。このような問題を解決する手段として、下記特許文献2に示される従来技術には、ATS−Sの保安度を高める方式が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−323445号公報
【特許文献2】特開2008−037291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に示される従来技術は、変周式地上子とトランスポンダ式地上子との両方を検知することが可能であるが、速度照査を行う装置が統合化されていないため、更なる省スペース化への要求を満たすことができないという課題があった。
【0008】
他方、上記特許文献2に示される従来技術は、特定した変周式地上子に対応したトランスポンダ電文をデータベースから取得することによって、あたかもATS−Pに近い制御を行うことは可能である。しかしながら、上記特許文献2に示される従来技術は、2つの変周式地上子間の距離に応じて制限速度を決定する変周式ATS装置(ATS−Ps:Automatic Train Stop system-Signal Pattern)には対応していないという課題があった。すなわち、ATS−Psでは、2つの地上子間距離を計測する機能(「位置検知手段」ともいう)が必要となるわけであるが、上記特許文献2に示される従来技術は、位置検知手段を備えていないため、ATS−Psの区間には対応しておらず、装置の統合化の実現には至っていないという課題があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、変周式およびトランスポンダ式の両方式に対応したATS車上装置の更なる小型化を図ることが可能な自動列車停止装置および自動列車停止方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、トランスポンダ式地上子から送出され列車の走行制御に用いられる電文と、変周式地上子から送出され前記列車の走行制御に用いられる周波数情報とを受信可能に構成され、前記列車で検出された列車速度を速度照査パターンに照査して前記列車速度を制御する車上装置を備えた自動列車停止装置であって、前記車上装置には、前記トランスポンダ式地上子からの前記電文を受信する第1の車上子と、前記変周式地上子の周波数に応じて変周された変周信号を検出する第2の車上子とが設置され、前記第1の車上子を介して前記電文を受信した場合、前記電文に基づいて前記速度照査パターンを生成すると共に、警報を示す変周信号と、即時停止を示す変周信号と、速度照査パターンを発生させる変周信号との何れかが前記第2の車上子から出力された場合、前記電文のフレーム構成と同じフレーム構成の擬似電文に変換してこの擬似電文に基づいて前記速度照査パターンを生成し、前記第2の車上子から勾配補正を示す変周信号が出力された場合、前記列車速度を用いてこの変周信号を出力した2つの前記変周式地上子間の距離を計測し、計測された距離に対応した勾配値を考慮して前記擬似電文に基づく前記速度照査パターンを生成すること特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、変周信号を受信したときには、列車速度を用いて2つの変周式地上子間の距離を計測すると共にトランスポンダ電文と同等の電文(以下「擬似電文」と称する)を作成して速度照査パターンを生成するようにしたので、変周式およびトランスポンダ式の両方式に対応したATS車上装置の更なる小型化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる自動列車停止装置の構成例を示す図である。
【図2】図2は、ATS−Ps区間に配設される地上子と速度照査パターンとの関係を説明するための図である。
【図3】図3は、速度照査パターンの下り勾配補正を説明するための図である。
【図4】図4は、臨時徐行制限の速度照査パターンを説明するための図である。
【図5】図5は、電文変換部における処理内容を中心とするフロー図である。
【図6】図6は、情報種別の内容が制限速度である場合の擬似電文の一例を説明するための図である。
【図7】図7は、情報種別の内容が停止信号現示である場合の擬似電文の一例を説明するための図である。
【図8】図8は、速度情報を車上無線局に取り込むように構成した速度制御部の構成例を示す図である。
【図9】図9は、速度情報を速度照査部に取り込むように構成した速度制御部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる自動列車停止装置および自動列車停止方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態にかかる自動列車停止装置の構成例を示す図であり、特に、ATS車上装置1(車上装置)を中心として示すものである。図1に示されるATS車上装置1は、車上子13(第1の車上子)と変周式の車上子14(第2の車上子)と速度制御部15とを有して構成されている。
【0015】
車上子13は、トランスポンダ方式の周波数帯域に対応しており、図示しないトランスポンダ式地上子からのトランスポンダ電文を受信して車上無線局12(受信部)へ送信する。このトランスポンダ電文には、現示状態を表わす情報として、例えば、地点情報、制限速度、勾配情報などが含まれている。
【0016】
車上子14は、変周式の周波数帯域に対応しており、現示状態に対応する周波数(共振周波数)を送出する変周式の地上子と結合した際、この周波数に変周された変周信号を、車上無線局12に送信する。
【0017】
速度制御部15は、車上無線局12と速度照査部11と電文変換部16を有して構成され、速度制御部15には、速度発電機2からの速度情報20(列車速度)と、車上子13からのトランスポンダ電文と、車上子14からの変周信号とが取り込まれ、この速度制御部15は、列車で検出された速度情報20を速度照査パターンに照査して列車速度を制御する。
【0018】
車上無線局12は、車上子13からのトランスポンダ電文を受信した場合、トランスポンダ電文を速度照査部11へ送信すると共に、車上子14からの変周信号を受信した場合、変周信号を電文変換部16へ送信する。
【0019】
さらに、車上無線局12は、以下の機能を有する。ATS−Ps区間では、速度照査パターンの下り勾配補正を行うため、所定の場所に設置された2つの地上子間の距離情報が必要となる。さらにATS−Ps区間では、速度照査パターンを生成する際、制限区間の制限速度を求める必要があり、この制限速度を求める場合にも2つの地上子間の距離情報が必要となる。本実施の形態にかかる車上無線局12は、速度発電機2からの速度情報20を用いて、距離計測用の地上子の内、1つめの地上子からの変周信号を検知した時点から2つめの地上子からの変周信号を受信するまでの距離を計測し、速度照査部11は、車上無線局12で計測された距離を用いて、この距離に対応する勾配値あるいは制限速度を求め、勾配値あるいは制限速度を考慮した速度照査パターンを生成するように構成されている。
【0020】
なお、車上無線局12は、例えば列車情報としての列車種別、列車編成番号、運行番号などが含まれた制御用電文をトランスポンダ式地上子へ送信する機能や、高減速性能車情報などを変周式地上子へ送信する機能を有しているため、図1に示される車上無線局12には便宜上「送受信部」と表記されている。
【0021】
電文変換部16には、トランスポンダ電文のフレーム構成と同じフレーム構成の電文であって現示状態に対応した複数の擬似電文が設定されており、電文変換部16は、車上子14からの変周信号を受信した場合、この変周信号に対応した擬似電文を速度照査部11へ送信する。この電文変換部16の機能は、列車がATS−S区間およびATS−Ps区間を走行する際に用いられる。
【0022】
次に、速度照査部11の機能を説明する。速度照査部11は、車上子13からのトランスポンダ電文を受信した場合、このトランスポンダ電文に基づいて速度照査パターンを生成し、生成された速度照査パターンと速度情報20とを比較する。そして、速度照査部11は、列車速度20が速度照査パターンを超過した場合、ブレーキ制御装置3に対してブレーキ指令を送信する。
【0023】
また、速度照査部11は、電文変換部16からの擬似電文を受信した場合、この擬似電文と車上無線局12からの距離情報とに基づいて速度照査パターンを発生させる。この速度照査パターンは、上述したように下り勾配補正や制限区間における制限速度などが加味されたものである。
【0024】
以下、本実施の形態にかかる自動列車停止装置の動作を説明する。まず、ATS−S区間における動作を説明する。
【0025】
信号機が停止信号を現示している場合、信号機外方一定の距離に設置された変周式の地上子(「ロング地上子」と呼ぶ)を列車が通過したとき、車上子14の常時発振周波数73kHzがロング地上子の共振周波数(例えば130kHz)に変周される。信号機外方一定の距離とは、区間最高の速度の列車が非常ブレーキで停止できる距離である。そして、速度照査部11は、130kHzの変周信号を検出したとき、運転台に設置された警報ランプや警報ベルに警報指令を出力し、警報から5秒以内に確認扱いがなかった場合にはブレーキ制御装置3にブレーキ指令を出力する。
【0026】
絶対信号機(例えば場内信号機)が停止信号を現示している場合、変周式のロング地上子を列車が通過したとき、車上子14の発振周波数73kHzがロング地上子の共振周波数(例えば123kHz)に変周される。速度照査部11は、123kHzの変周信号を検出したとき、警報を作動させることなくブレーキ制御装置3にブレーキ指令を出力する。
【0027】
次に、図2〜図4を用いてATS−Ps区間における動作を説明する。なお、図2〜図4は、公知文献「信号概論ATS・ATC」(社団法人日本鉄道電気技術協会)に記載されているものである。
【0028】
図2は、ATS−Ps区間に配設された地上子と速度照査パターンとの関係を説明するための図であり、図2には、下り勾配補正が不要な通常のATS−Ps区間が示されると共に、複数の変周式地上子が示されている。
【0029】
例えば所定の信号機の手前655mの地点には、第1の速度照査パターンを発生するための第1の地上子が配設されている。また、この信号機の手前390mの地点には、第2の速度照査パターンを発生するための第2の地上子が2つ配設されている。また、第1の地上子と第2の地上子との間には、ATS−S装置におけるロング地上子と同様に警報を発生させるための地上子が配設され、信号機の手前20mの地点には、非常ブレーキを発生させるための直下地上子が配設されている。
【0030】
さらに、信号機が停止信号を現示しているときの各地上子の共振周波数は、例えば、第1の地上子では80kHz、ロング地上子では130kHz、第2の地上子では108.5kHz、直下地上子では123kHzである。
【0031】
列車が第1の地上子を通過した場合、車上子14の常時発振周波数73kHzが80kHzに変周される。電文変換部16は、80kHzの変周信号に対応した擬似電文に変換し、速度照査部11は、この擬似電文に基づいて第1の速度照査パターンを生成する。
【0032】
列車がロング地上子を通過した場合、車上子14の常時発振周波数73kHzが130kHzに変周される。電文変換部16は、130kHzの変周信号に対応した擬似電文に変換し、速度照査部11は、この擬似電文に基づいて警報指令を出力し、警報から5秒以内に確認扱いがなかった場合にはブレーキ指令を出力する。
【0033】
列車が第2の地上子を通過した場合、車上子14の常時発振周波数73kHzは108.5kHzに2回連続して変周される。電文変換部16は、108.5kHzの変周信号に対応した擬似電文に変換し、速度照査部11は、この擬似電文に基づいて第2の速度照査パターンを生成する。
【0034】
列車が直下地上子を通過した場合、車上子14の常時発振周波数73kHzが123kHzに変周される。電文変換部16は、123kHzの変周信号に対応した擬似電文に変換し、速度照査部11は、この擬似電文に基づいてブレーキ指令を出力する。
【0035】
図3は、速度照査パターンの下り勾配補正を説明するための図である。図3には、一例として、第2の速度照査パターンを発生する第2の地上子から、第1の速度照査パターンを発生する第1の地上子までの平均勾配が21‰である場合の路線が示されている。マーカ地上子は、例えば、ロング地上子の外方4mの地点に設置されているものとする。なお、ATS−Psには、図3に示される第2の速度照査パターンの勾配補正をするための変周信号の組み合わせとして「95kHz+130kHz」というものがある。もし、図3に示されるマーカ地上子がない場合、ロング地上子からの変周信号130kHzは、前述した警報用の変周信号として扱われてしまうが、130kHの変周信号を出力するロング地上子の手前に、95kHzの変周信号を出力するマーカ地上子が配設されていることによって、第2の速度照査パターンの勾配補正が可能となる。
【0036】
列車が第1の地上子を通過した場合、車上子14の常時発振周波数73kHzが80kHzに変周される。電文変換部16は、80kHzの変周信号に対応した擬似電文に変換し、速度照査部11は、この擬似電文に基づいて第1の速度照査パターンを生成する。
【0037】
次に、列車がマーカ地上子を通過した場合、車上子14の常時発振周波数73kHzが95kHzに変周される。車上無線局12は、この変周信号を受信したとき速度情報20を用いて距離の計測を開始し、ロング地上子の変周信号130kHzを検出するまで距離を計測する。車上無線局12は、車上無線局12で計測さえた距離が、例えば3.3m〜4.8mの範囲の場合には−25‰の勾配補正情報が得られたと判別する。車上無線局12には、図3の下側に示されるように、計測された距離と勾配補正情報(勾配値G)とが対応付けて管理されており、例えば、上述した距離が、1.0m〜2.7mの範囲の場合には勾配値G=−15‰となり、5.7m〜7.2mの範囲の場合には勾配値G=−35‰となる。
【0038】
続いて、列車が第2の地上子を通過したことによって、車上子14の常時発振周波数73kHzが108.5kHzに2回連続して変周された場合、電文変換部16は、108.5kHzの変周信号に対応した擬似電文に変換する。この擬似電文は、第2の速度照査パターンを発生させるための電文である。速度照査部11は、この擬似電文に基づいて速度照査パターンを生成する際、この速度照査パターンを車上無線局12からの勾配値で補正する。すなわち、電文変換部16は、この勾配値を考慮して擬似電文に基づく速度照査パターンを生成する。
【0039】
図4は、臨時徐行制限の速度照査パターンを説明するための図である。図4に示されるATS−Ps区間には、一例として、速度照査パターン発生用の2つのマーカ地上子と、速度照査パターン消去用の2つのマーカ地上子とが示されている。図4の左側に示される2つのマーカ地上子の間の距離Lは、例えば9mとする。
【0040】
列車が1つめのマーカ地上子を通過した場合、車上子14の常時発振周波数73kHzが90kHzに変周される。車上無線局12は、この変周信号を受信したとき速度情報20を用いて距離の計測を開始し、次のマーカ地上子の変周信号90kHzを検出するまで距離を計測する。車上無線局12は、この距離Lが例えば8.3m〜9.8mの範囲の場合であるときには、約500前方に45km/hの臨時徐行制限があると判断する。車上無線局12には、図4の下側に示されるように、計測された距離Lと臨時徐行制限(制限速度)とが対応付けて管理されており、例えば、距離Lが、3.3m〜4.8mの範囲の場合には制限速度=55km/hとなる。
【0041】
そして、電文変換部16は、臨時徐行制限に対応した擬似電文に変換する。速度照査部11は、電文変換部16からの擬似電文に基づいて第2の速度照査パターンを生成する。
【0042】
列車が3つめのマーカ地上子を通過した場合、車上子14の常時発振周波数73kHzが90kHzに変周される。車上無線局12は、この変周信号を受信したとき速度情報20を用いて距離の計測を開始し、次のマーカ地上子の変周信号90kHzを検出するまで距離を計測する。このとき得られた距離は、例えば1.0m〜2.7mの範囲であると仮定する。この場合、速度照査部11は、車上無線局12からの距離が1.0m〜2.7mの範囲の場合、速度照査部11は、臨時徐行制限の速度照査パターンを消去する。
【0043】
図5は、電文変換部16における処理内容を中心とするフロー図である。
【0044】
ステップS10において、列車が地上子を通過した際、車上無線局12は、車上子13からのトランスポンダ電文、または車上子14からの変周信号を受信する。車上子13からのトランスポンダ電文を受信した場合(ステップS11,Yes)、車上無線局12は、このトランスポンダ電文を速度照査部11へ送信する(ステップS15)。
【0045】
一方、車上子14からの変周信号を受信した場合(ステップS11,No)、車上無線局12はこの変周信号を電文変換部16へ送信し、電文変換部16によってステップS12の処理が実行される。
【0046】
ステップS12において、電文変換部16は、変周信号がATS−S地上子の情報であるかATS−Ps地上子の情報であるかを判断する。なお、この判断は、前述した公知文献「信号概論ATS・ATC」に示されるように、変周信号とこの変周信号を受信した際の車上装置側の動作(警報や停止など)との対応関係が、ATS−Sで使用される変周信号とATS−Psで使用される変周信号とで区別されているためである。変周信号がATS−S地上子の情報である場合(ステップS12,Yes)、電文変換部16は、ステップS14の処理を実行する。
【0047】
一方、変周信号がATS−S地上子の情報ではない場合(ステップS12,No)、すなわち変周信号がATS−Ps地上子の情報である場合、電文変換部16は、ステップS13の処理を実行する。
【0048】
次に、ステップS13における動作を説明する。ここでは、一例として、図2に示されるATS−Ps区間の変周信号を用いて説明する。
【0049】
第1の地上子を通過した際の変周信号が、例えば図2に示される第1の地上子の変周信号(80kHz)である場合、または図2に示されるロング地上子を通過した際の変周信号が130kHzである場合、電文変換部16は、ATS−Ps地上子の情報が確定したものとしてステップS14の処理に移行する(ステップS13,Yes)。
【0050】
さらに、電文変換部16は、108.5kHzを2回連続して検出した時点で、ATS−Ps地上子の情報が確定したものとしてステップS14の処理に移行する(ステップS13,Yes)。ただし、108.5kHzを1回検出した時点ではATS−Ps地上子の情報が確定していないため、電文変換部16は、108.5kHzを2回連続して検出するまでステップS10〜13の処理を実行する(ステップS13,No)。
【0051】
ステップS14において、電文変換部16は、各変周信号に対応した擬似電文に変換する。ステップS15において、電文変換部16は、この擬似電文をトランスポンダ電文として速度照査部11へ送信する。
【0052】
次に、図6および図7を用いて擬似電文の具体例を説明する。
【0053】
図6は、情報種別の内容が制限速度である場合の擬似電文の一例を説明するための図であり、図6に示される電文フレーム100aは、速度制限(曲線)の場合における電文に対応するものである。
【0054】
電文フレーム100aは、フラグ101(8bit)、情報種別102(6bit)、運転方向103(2bit)、地上子番号104(4bit)、個別情報105(36bit)、CRC106(16bit)、およびフラグ107(8bit)で構成されている。
【0055】
フラグ101は開始フラグを表す。情報種別102には、例えば、速度制限(曲線)におけるコードである「001000」が割り当てられている。運転方向103には、例えば、AB線用の「11」が割り当てられている。地上子番号104には、有電源地上子の番号を示す「0001」から「1110」までの番号が割り当てられている。この番号は、「1110」までソフトウェアでインクリメントされる。CRC106(巡回冗長符号;Cyclic Redundancy Check)は、データの誤りを検出するための符号であり、フラグ107は終結フラグを表す。
【0056】
個別情報105は、空き領域111(3bit)、制限速度112(5bit)、制限区間長113(8bit)、曲線までの距離114(10bit)、各社の情報115(10bit)で構成されている。
【0057】
制限速度112には、電車の場合例えば65km/hを表す「01101」が割り当てられている。制限区間長113には、最大値「11111111」すなわち最大値1020m(4m間隔で255パターン)が割り当てられている。
【0058】
曲線までの距離114には、最大値「1111111111」すなわち最大4092m(4*1023)を割り当てることができるが、本実施の形態では一例として256mに相当するコードが割り当てられている。なお、この距離は、線区最大速度からY現示相当の速度まで減速するために必要な距離であり、車種毎に、車両の減速度から予め決定するものとする。
【0059】
各社の情報115には、線区コードや駅名コードなどを設定可能だが、本実施の形態では一例として「0000000000」とする。
【0060】
なお、図6には、情報種別の内容が「曲線」の速度制限を例示しているが、電文変換部16には、情報種別の内容が「分岐」や「勾配」などの速度制限に対応した擬似電文も設定されているものとする。
【0061】
図7は、情報種別の内容が停止信号現示である場合の擬似電文の一例を説明するための図であり、図7に示される電文フレーム100bは、「停止信号現示」の場合における電文に対応するものである。なお、図7に示される電文フレーム100bは、一例として、路線の勾配が「無し」である場合のフレームである。
【0062】
図7において、電文フレーム100bは、電文フレーム100aと同様に、フラグ101、情報種別102、運転方向103、地上子番号104、個別情報105、CRC106、およびフラグ107で構成されている。電文フレーム100aと異なる点は、停止信号現示におけるコードである「000000」が情報種別102に割り当てられている点である。
【0063】
個別情報105は、左から順に、空き領域121(2it)、分岐パターン継続122(1bit)、保全情報(1)123(3bit)、空き領域124(2it)、信号パターン補正125(3bit)、保全情報(2)126(5bit)、停止現示信号機までの距離127(10bit)、次地上子までの距離128(5bit)、および空き領域129(5bit)で構成されている。
【0064】
分岐パターン継続122には、制限速度(分岐)を入力したことで発生した分岐パターンの継続を表す「1」、または分岐パターンの消去を表す「0」が割り当てられる。本実施の形態では一例として「0」を割り当てられている。
【0065】
保全情報(1)123には、現示コードR、Y、Gなどを表す値が割り当てられる。本実施の形態では一例として、停止を表わす「R」に対応した値が割り当てられている。
【0066】
信号パターン補正125には、下り勾配における減速度を補正する値が割り当てられる。本実施の形態では下り勾配0‰(パーミル)に相当する「000」が割り当てられている。
【0067】
保全情報(2)126には信号機種別が割り当てられるが、本実施の形態では「00000」とする。
【0068】
停止現示信号機までの距離127は、勾配値(G)を考慮して決定する。本実施の形態では、勾配が無い場合の値である390mに相当する「1100001」が割り当てられている。なお、勾配値(G)は以下の値となる。390m(勾配値G≧−5‰)、455m(−5‰>G≧−15‰)、560m(−15‰>G≧−25‰)、765m(−25‰>G≧−35‰)。
【0069】
次地上子までの距離128には、最大値を示す1920mに相当する「11111」が割り当てられている。
【0070】
次に、図4に示された電文フレーム100aと、図5に示された電文フレーム100bと、ATS車上装置1の動作とを関連付けて説明する。
【0071】
まず、本実施の形態にかかるATS車上装置1を搭載した列車がATS−S区間を運行する場合における動作を説明する。
【0072】
ATS−S区間における変周信号は、一例として、車内警報用の変周信号を130kHzとし、即時停止用の変周信号を123kHzとして説明する。
【0073】
ここで、130kHzは車内警報用の変周信号であるが、トランスポンダ情報種別には車内警報に対応するものが無い。そこで、例えば、図6に示される電文フレーム100aの情報種別102に、警報情報を表すコードを割り当てることで130kHzに対応した擬似電文を作成する。この警報情報を表すコードは、例えば情報種別102の予備欄のコード(例えば000100)とする。
【0074】
130kHzの変周信号が検出された場合、電文変換部16は、この変周信号を対応する擬似電文に変換し、この擬似電文を速度照査部11へ送信する。速度照査部11は、この擬似電文を受信したとき、運転台に設置された警報ランプおよび警報ベルに警報指令を出力し、警報から5秒以内に確認扱いがなかった場合にはブレーキ制御装置3にブレーキ指令を出力する。
【0075】
123kHzの変周信号に対応した擬似電文は、例えば、図6に示される電文フレーム100aの情報種別102に、即時停止を表すコード「000001」を割り当てることで作成する。
【0076】
123kHzの変周信号が検出された場合、電文変換部16は、この変周信号に対応する擬似電文に変換し、この擬似電文を速度照査部11へ送信する。速度照査部11は、この擬似電文を受信したとき、即座にブレーキ指令を出力する。
【0077】
次に、本実施の形態にかかるATS車上装置1を搭載した列車がATS−Ps区間を運行する場合における動作を説明する。ここでは、図2に示されるATS−Ps区間の図を用いることとする。
【0078】
80kHzの変周信号が検出された場合、電文変換部16は、この変周信号に対応する擬似電文に変換する。この擬似電文は、例えば、図6に示される電文フレーム100aである。そして、速度照査部11は、この擬似電文を受信したとき、第1の速度照査パターンを生成し、この第1の速度照査パターンと速度情報20とを比較する。そして、速度照査部11は、列車速度20が第1の速度照査パターンを超過する場合、ブレーキ制御装置3に対してブレーキ指令を送信する。
【0079】
130kHzの変周信号が検出された場合、電文変換部16は、この変周信号に対応する擬似電文に変換する。この擬似電文は、図6に示される電文フレーム100aの情報種別102に、警報情報を表すコードを割り当てることで作成する。そして、速度照査部11は、この擬似電文を受信したとき、運転台に設置された警報ランプと警報ベルに対して警報指令を出力し、警報から5秒以内に確認扱いがなかった場合にはブレーキ指令を出力する。
【0080】
108.5kHzの変周信号が2回連続して検出された場合、電文変換部16は、この変周信号(108.5kHz+108.5kHz)に対応する擬似電文に変換して、この擬似電文を速度照査部11へ送信する。この擬似電文は、例えば、図6に示される電文フレーム100aである。速度照査部11は、電文変換部16からの擬似電文を受信したとき、第2の速度照査パターンを生成し、生成された第2の速度照査パターンと速度情報20とを比較する。速度照査部11は、列車速度20が第2の速度照査パターンを超過する場合、ブレーキ制御装置3に対してブレーキ指令を送信する。
【0081】
123kHzの変周信号が検出された場合、電文変換部16は、この変周信号に対応する擬似電文に変換し、この擬似電文を速度照査部11へ送信する。この擬似電文は、図7に示される電文フレーム100bの情報種別102に、即時停止を表すコードを割り当てることで作成する。そして、速度照査部11は、この擬似電文を受信したとき、即座にブレーキ指令を出力する。
【0082】
なお、速度照査部11は、以下のように構成してもよい。ATS−S区間において130kHzの変周信号が検出された場合、警報作動後の5秒以内に確認扱いがされたときでもブレーキ指令を出力するように構成してもよい。このようにすれば、ATS−S区間における保安度を向上させることが可能である。
【0083】
図8は、速度情報20を車上無線局12に取り込むように構成した速度制御部15の構成例を示す図である。図1に示される速度制御部15は、車上無線局12および速度照査部11のそれぞれに速度情報20が入力されるように構成されている。一方、図8に示される速度制御部15は、速度発電機2からの速度情報20が車上無線局12に取り込まれ、速度照査部11で必要となる速度情報20は、車上無線局12を介して取り込まれる。このように構成した場合、車上無線局12における距離計測を開始するタイミングが遅延することなく、速度発電機2と速度照査部11との間における速度情報20を取り込むためのインターフェイスや配線が削減可能である。
【0084】
図9は、速度情報20を速度照査部11に取り込むように構成した速度制御部15の構成例を示す図である。図9に示される速度制御部15は、速度発電機2からの速度情報20が速度照査部11に取り込まれ、車上無線局12で必要となる速度情報20は、速度照査部11を介して車上無線局12に取り込まれるように構成されている。このように構成した場合、車上無線局12における距離計測のタイミングが図8の構成に比べて遅延するものの、車上無線局12における距離計測は可能であり、かつ、速度発電機2と車上無線局12との間における速度情報20を取り込むためのインターフェイスや配線が削減可能である。
【0085】
以上に説明したように、本実施の形態にかかる自動列車停止装置は、トランスポンダ式地上子からのトランスポンダ電文を受信する車上子13(第1の車上子)と、変周式地上子の周波数に応じて変周された変周信号を検出する車上子14(第2の車上子)とが設置され、車上子13を介してトランスポンダ電文を受信した場合、この電文に基づいて速度照査パターンを生成すると共に、警報を示す変周信号と、即時停止を示す変周信号と、速度照査パターンを発生させる変周信号との何れかが車上子14から出力された場合、トランスポンダ電文のフレーム構成と同じフレーム構成の擬似電文に変換し、この擬似電文に基づいて速度照査パターンを生成し、車上子14から勾配補正を示す変周信号または制限速度を示す変周信号が出力された場合、速度情報20(列車速度)を用いてこの変周信号を出力した2つの変周式地上子間の距離を計測し、計測された距離に対応した勾配値を考慮して前記擬似電文に基づく前記速度照査パターンを生成し、または計測された距離に対応する制限速度を考慮して前記擬似電文に基づく前記速度照査パターンを生成するATS車上装置1を備えるようにしたので、複数の速度照査部11を搭載することなく、ATS−S区間、ATS−Ps区間、およびATS−P区間における列車の速度制御が可能である。さらに、ATS−Ps区間においては、路線の下り勾配または速度制限区間における制限速度を考慮して速度照査パターンを生成可能である。その結果、本実施の形態にかかる自動列車停止装置によれば、異なる方式のATS装置を統合することが可能となり、更なるコストダウンを実現することができるだけでなく、列車床下のぎ装スペースを縮小することが可能である。特に、従来技術は、ATS−Ps方式には対応していなかったが、本実施の形態にかかるATS車上装置1は、車上無線局12に位置検知手段を備えているため、ATS−Ps方式の区間にも対応することが可能である。
【0086】
また、ATS車上装置1は、警報を示す変周信号に対応した擬似電文、即時停止を示す変周信号に対応した擬似電文、または速度照査パターンを発生させる変周信号に対応した擬似電文に変換する電文変換部16と、トランスポンダ式地上子からの電文と変周式地上子からの周波数情報を受信すると共に、勾配補正を示す変周信号または制限速度を示す変周信号を受信した場合には、列車速度を用いて変周式地上子間の距離を計測する車上無線局12と、速度照査パターンを生成し、車上無線局12を介して取り込まれた列車速度が速度照査パターンを超過した場合にはブレーキ指令を出力する速度照査部11と、を有するようにしたので、車上無線局12における距離計測を開始するタイミングが遅延することなく、速度発電機2と速度照査部11との間における速度情報20を取り込むためのインターフェイスや配線が削減可能である。
【0087】
さらに、ATS車上装置1は、警報を示す変周信号に対応した擬似電文、即時停止を示す変周信号に対応した擬似電文、または速度照査パターンを発生させる変周信号に対応した擬似電文に変換する電文変換部16と、速度照査パターンを生成し、列車速度が速度照査パターンを超過した場合、ブレーキ指令を出力する速度照査部11と、トランスポンダ式地上子からの電文と変周式地上子からの周波数情報とを受信すると共に、勾配補正を示す変周信号または制限速度を示す変周信号を受信した場合には、速度照査部11を介して取り込まれた列車速度を用いて変周式地上子間の距離を計測する車上無線局12と、を有するようにしたので、車上無線局12における距離計測が可能であり、かつ、速度発電機2と車上無線局12との間における速度情報20を取り込むためのインターフェイスや配線が削減可能である。
【0088】
また、電文変換部16は、停止信号現示の変周信号を受信した場合、少なくとも情報種別の値が停止信号現示を表す値に設定された擬似電文に変換し、速度制限の変周信号を受信した場合、少なくとも情報種別の値が速度制限を表す値に設定された擬似電文に変換し、即時停止を示す変周信号を受信した場合、情報種別の値が即時停止を表す値に設定された擬似電文に変換し、警報を示す変周信号を受信した場合、情報種別の値が警報を表す値に設定された擬似電文に変換するようにしたので、変周式地上子の周波数検知のみで、トランスポンダ式地上子からの電文と同等の擬似電文を作成し、ATS−P装置の機能で速度照査パターンを発生させることが可能である。
【0089】
なお、本実施の形態に示した自動列車停止装置は、本発明の内容の一例を示すものであり、更なる別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能であることは無論である。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上のように、本発明は、鉄道用の列車保安に使用する自動列車停止装置に適用可能であり、特に、変周式およびトランスポンダ式の両方式に対応した車上装置の更なる小型化を図ることが可能な発明として有用である。
【符号の説明】
【0091】
1 ATS車上装置(車上装置)
2 速度発電機
3 ブレーキ制御装置
11 速度照査部
12 車上無線局(受信部)
13 車上子(第1の車上子)
14 車上子(第2の車上子)
15 速度制御部
16 電文変換部
20 速度情報(列車速度)
100a 電文フレーム
100b 電文フレーム
101 フラグ
102 情報種別
103 運転方向
104 地上子番号
105 個別情報
106 CRC
107 フラグ
111、121、124、129 空き領域
112 制限速度
113 制限区間長
114 曲線までの距離
115 各社の情報
122 分岐パターン継続
123 保全情報(1)
125 信号パターン補正
126 保全情報(2)
127 停止現示信号機までの距離
128 次地上子までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスポンダ式地上子から送出され列車の走行制御に用いられる電文と、変周式地上子から送出され前記列車の走行制御に用いられる周波数情報とを受信可能に構成され、前記列車で検出された列車速度を速度照査パターンに照査して前記列車速度を制御する車上装置を備えた自動列車停止装置であって、
前記車上装置には、
前記トランスポンダ式地上子からの前記電文を受信する第1の車上子と、前記変周式地上子の周波数に応じて変周された変周信号を検出する第2の車上子とが設置され、
前記第1の車上子を介して前記電文を受信した場合、前記電文に基づいて前記速度照査パターンを生成すると共に、警報を示す変周信号と、即時停止を示す変周信号と、速度照査パターンを発生させる変周信号との何れかが前記第2の車上子から出力された場合、前記電文のフレーム構成と同じフレーム構成の擬似電文に変換してこの擬似電文に基づいて前記速度照査パターンを生成し、前記第2の車上子から勾配補正を示す変周信号が出力された場合、前記列車速度を用いてこの変周信号を出力した2つの前記変周式地上子間の距離を計測し、計測された距離に対応した勾配値を考慮して前記擬似電文に基づく前記速度照査パターンを生成すること特徴とする自動列車停止装置。
【請求項2】
トランスポンダ式地上子から送出され列車の走行制御に用いられる電文と、変周式地上子から送出され前記列車の走行制御に用いられる周波数情報とを受信可能に構成され、前記列車で検出された列車速度を速度照査パターンに照査して前記列車速度を制御する車上装置を備えた自動列車停止装置であって、
前記車上装置には、
前記トランスポンダ式地上子からの前記電文を受信する第1の車上子と、前記変周式地上子の周波数に応じて変周された変周信号を検出する第2の車上子とが設置され、
前記第1の車上子を介して前記電文を受信した場合、前記電文に基づいて前記速度照査パターンを生成すると共に、警報を示す変周信号と、即時停止を示す変周信号と、速度照査パターンを発生させる変周信号との何れかが前記第2の車上子から出力された場合、前記電文のフレーム構成と同じフレーム構成の擬似電文に変換してこの擬似電文に基づいて前記速度照査パターンを生成し、前記第2の車上子から制限速度を示す変周信号が出力された場合、前記列車速度を用いてこの変周信号を出力した2つの前記変周式地上子間の距離を計測し、計測された距離に対応する制限速度を考慮して前記擬似電文に基づく前記速度照査パターンを生成することを特徴とする自動列車停止装置。
【請求項3】
前記車上装置は、
前記警報を示す変周信号に対応した前記擬似電文、前記即時停止を示す変周信号に対応した前記擬似電文、または前記速度照査パターンを発生させる変周信号に対応した前記擬似電文に変換する電文変換部と、
前記トランスポンダ式地上子からの前記電文と前記変周式地上子からの前記周波数情報とを受信すると共に、前記勾配補正を示す変周信号または前記制限速度を示す変周信号を受信した場合には、前記列車速度を用いて前記変周式地上子間の距離を計測する受信部と、
前記速度照査パターンを生成し、前記受信部を介して取り込まれた前記列車速度が前記速度照査パターンを超過した場合、ブレーキ指令を出力する速度照査部と、を有することを特徴する請求項1または2に記載の自動列車停止装置。
【請求項4】
前記車上装置は、
前記警報を示す変周信号に対応した前記擬似電文、前記即時停止を示す変周信号に対応した前記擬似電文、または前記速度照査パターンを発生させる変周信号に対応した前記擬似電文に変換する電文変換部と、
前記速度照査パターンを生成し、前記列車速度が前記速度照査パターンを超過した場合、ブレーキ指令を出力する速度照査部と、
前記トランスポンダ式地上子からの前記電文と前記変周式地上子からの前記周波数情報とを受信すると共に、前記勾配補正を示す変周信号または前記制限速度を示す変周信号を受信した場合には、前記速度照査部を介して取り込まれた前記列車速度を用いて前記変周式地上子間の距離を計測する受信部と、を有することを特徴する請求項1または2に記載の自動列車停止装置。
【請求項5】
前記電文変換部は、停止信号現示の前記変周信号を受信した場合、少なくとも情報種別の値が停止信号現示を表す値に設定された前記擬似電文に変換し、速度制限の前記変周信号を受信した場合、少なくとも情報種別の値が速度制限を表す値に設定された前記擬似電文に変換し、前記即時停止を示す変周信号を受信した場合、情報種別の値が即時停止を表す値に設定された前記擬似電文に変換し、前記警報を示す変周信号を受信した場合、情報種別の値が警報を表す値に設定された前記擬似電文に変換することを特徴する請求項1〜4の何れか1つに記載の自動列車停止装置。
【請求項6】
トランスポンダ式地上子から送出され列車の走行制御に用いられる電文と、変周式地上子から送出され前記列車の走行制御に用いられる周波数情報とを受信可能に構成され、前記列車で検出された列車速度を速度照査パターンに照査して前記列車速度を制御する車上装置に適用される自動列車停止方法であって、
前記トランスポンダ式地上子からの前記電文と前記変周式地上子からの前記周波数情報とを受信する受信ステップと、
前記受信ステップにおいて勾配補正を示す変周信号が出力された場合、前記列車速度を用いてこの変周信号を出力した2つの前記変周式地上子間の距離を計測する距離計測ステップと、
警報を示す変周信号、即時停止を示す変周信号、および速度照査パターンを発生させる変周信号の何れかが変周式車上子から出力された場合、前記電文のフレーム構成と同じフレーム構成の電文であって、前記警報を示す変周信号に対応した前記擬似電文、前記即時停止を示す変周信号に対応した前記擬似電文、または前記速度照査パターンを発生させる変周信号に対応した前記擬似電文に変換する電文変換ステップと、
前記距離計測ステップにて計測された距離に対応した勾配値を考慮して前記擬似電文に基づく前記速度照査パターンを生成する速度照査パターン生成ステップと、
を含むことを特徴とする自動列車停止方法。
【請求項7】
トランスポンダ式地上子から送出され列車の走行制御に用いられる電文と、変周式地上子から送出され前記列車の走行制御に用いられる周波数情報とを受信可能に構成され、前記列車で検出された列車速度を速度照査パターンに照査して前記列車速度を制御する車上装置に適用される自動列車停止方法であって、
前記トランスポンダ式地上子からの前記電文と前記変周式地上子からの前記周波数情報とを受信する受信ステップと、
前記受信ステップにおいて制限速度を示す変周信号が出力された場合、この変周信号を出力した2つの前記変周式地上子間の距離を計測する距離計測ステップと、
警報を示す変周信号、即時停止を示す変周信号、および速度照査パターンを発生させる変周信号の何れかが変周式車上子から出力された場合、前記電文のフレーム構成と同じフレーム構成の電文であって、前記警報を示す変周信号に対応した前記擬似電文、前記即時停止を示す変周信号に対応した前記擬似電文、または前記速度照査パターンを発生させる変周信号に対応した前記擬似電文に変換する電文変換ステップと、
前記距離計測ステップにて計測された距離に対応する制限速度を考慮して前記擬似電文に基づく前記速度照査パターンを生成する速度照査パターン生成ステップと、
を含むことを特徴とする自動列車停止方法。
【請求項8】
前記電文変換ステップには、
停止信号現示の前記変周信号を受信した場合、少なくとも情報種別の値が停止信号現示を表す値に設定された前記擬似電文に変換するステップと、
速度制限の前記変周信号を受信した場合、少なくとも情報種別の値が速度制限を表す値に設定された前記擬似電文に変換するステップと、
前記即時停止を示す変周信号を受信した場合、情報種別の値が即時停止を表す値に設定された前記擬似電文に変換するステップと、
前記警報を示す変周信号を受信した場合、情報種別の値が警報を表す値に設定された前記擬似電文に変換するステップと、
の少なくとも1つが含まれることを特徴する請求項6または7に記載の自動列車停止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−135147(P2012−135147A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286173(P2010−286173)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】