説明

自動塗布システム、および自動塗布システムの制御方法

【課題】高精度かつ高品位な接触塗布を行える自動塗布システムおよび自動塗布システムの制御方法を提供する。
【解決手段】被塗布物と接触して該被塗布物に塗布液を塗布するディスペンサーチップ180を有するサーボガン100をロボットアーム200で操作して、被塗布物にディスペンサーチップ180を接触させた状態で移動させ、サーボガン100に接触塗布を行わせ、ロボットアーム200にサーボガン100とともに装着され、サーボガン100が被塗布物上に形成した塗布液の塗布パターンをCCDカメラ800で撮影し、画像処理903で撮影画像データを解析して得た塗布液の塗布パターン形成状態に関する情報に基づき、サーボガン100の塗布動作、またはロボットアーム200の動作をフィードバック制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗布物と接触して該被塗布物に塗布液を塗布する接触塗布手段と、前記接触塗布手段に前記塗布液を供給する塗布液供給手段とを用いる自動塗布システム、および自動塗布システムの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、塗装ロボットのような自動塗装システムが知られている。塗装ロボットの場合、スプレーガンをロボットハンドで操作し、所期の塗装結果が得られるようあらかじめプログラムした経路で対象物に沿って移動させつつ、コンプレッサなどから得られる加圧エアを用いて塗料をスプレーガンのノズルから噴射させる構造が用いられている。
【0003】
従来の塗装ロボットのような自動塗装システムでは、上記のようなスプレーないしエアブラシ式の塗装ヘッドが多いが、塗装の形態や仕様、使用したい塗料や対象物の特性によっては必ずしもスプレーないしエアブラシ式の塗装ヘッドが適しているとは限らない。
【0004】
たとえば、手塗りの場合には、筆や刷毛(ブラシ)、フェルトペンのチップのような含浸体を塗料の塗布体として用いて行なういわゆる接触塗装の手法がある。このような接触塗装の手法は、直線や曲線、あるいは文字などのパターンを表現する場合に必要とされ、
また、塗装領域と、非塗装領域とが明確に区画されるような形態で塗料が塗布される必要がある場合にも適している。さらに、このような接触塗装の手法には、塗布体先端の形状や固さ、大きさ(太さ)などを選択することにより多彩な表現が可能であり、またマスキングなどを行わなくても塗装が可能である、などの利点がある。
【0005】
また、上記のような接触塗装の手法では、筆や刷毛のような塗布体に塗料を付けながら手塗り作業を行なうだけではなく、塗料を収容し、加圧により(あるいは重力によって)塗料を先端の塗布体に供給するようにした塗布用具(たとえば下記の特許文献1)を利用することも考えられる。
【特許文献1】特開平11−332643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の自動塗装システムでは、上述のような含浸体を塗料の塗布体に用いた接触塗装手法による塗装作業を自動的に行うものが殆ど知られていない。
【0007】
たとえば、上述の特許文献1に記載されるような塗布用具(ディスペンサー)を汎用のロボットハンドで移動させ、塗料を塗布することも考えられるが、塗装面積が大きい場合には、塗布用具の塗料容量によっては塗布用具を多数回交換したり、あるいは塗料を補充したりする必要があって、作業の中断が多くなったり、コスト高になる、などの問題を生じる。また、重力によって塗料を塗布体に供給する構成の塗布用具では、用具の姿勢によっては塗料供給不足が生じてかすれが起きたりする問題がある。
【0008】
大きな塗装面積に対応でき、また安定した塗布を行えるようにするには、ロボットハンドで操作する塗装ヘッド(ないしディスペンサー)に筆や刷毛(ブラシ)、フェルトペンのチップのような塗料の塗布体を装着し、外部の塗料タンクから塗料を供給するような構成が適していると考えられる。
【0009】
しかしながら、従来では、このような塗布体を用いた接触塗装を行なう自動塗装システムが殆んど存在せず、塗料が漏れたり垂れたりすることなく、安定して塗料を塗装ヘッドの塗布体に供給でき、高精度かつ高品位な塗装を行うに充分な洗練された構造については殆ど知られていなかった。
【0010】
特に、この種の接触塗装手法による自動塗装システムでは、マスキングなどを行うことなく、線や文字、図形などのパターンを接触塗布によって形成することが求められる、と考えられる。そして、用途によっては、極めて高精度かつ高品位に塗布パターンを形成することが要求されるかもしれない。
【0011】
たとえば数mmなら数mm、数cmなら数cmといった線幅(等幅あるいは可変幅)で、極めて小さな誤差をもって接触塗布を行うことが求められる可能性がある。また、塗布濃度についても、色ムラなどを生じることなく、均一な塗布濃度で塗布パターンを形成することが要求される可能性がある。
【0012】
従来では、このように高精度に接触塗布を制御し、高品位な仕上がりを得られる自動塗装(自動塗布)システムは殆ど存在しなかった。
【0013】
なお、以上では、塗装対象物へ塗布される塗布液として塗料を考えたが、塗布される塗布液が薬液など他の液体である場合にも上記の問題は共通する。たとえば、塗料に限らず、液状の物質を対象物に付着させる手法として、治療用、表面処理用など種々の薬液を対象物に付着させる技術が必要とされている。そして、用いられる液状物質、あるいは対象物の特性によっては、たとえばスプレーないしエアブラシ式の方式のような手法は必ずしも適しておらず、上述のような接触塗装の手法の方がより好ましい用途、場面も少なくないと考えられる。
【0014】
本発明の課題は、以上の事情に鑑み、高精度かつ高品位な接触塗布を行える自動塗布システムおよび自動塗布システムの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明においては、自動塗布システムおよび自動塗布システムの制御方法において、
被塗布物と接触して該被塗布物に塗布液を塗布する接触塗布手段を有する塗布装置をロボットアームで操作して、前記被塗布物に前記接触塗布手段を接触させた状態で移動させ、前記塗布装置に接触塗布を行わせ、
前記ロボットアームに前記塗布装置とともに装着された撮影手段により前記塗布装置が前記被塗布物上に形成した前記塗布液の塗布パターンを撮影し、
該撮影手段の撮影した画像データを解析し、前記塗布液の塗布パターン形成状態に関する情報を生成する画像処理を行い、該塗布液の塗布パターン形成状態に関する情報に基づき、前記塗布装置の塗布動作、または前記ロボットアームの動作をフィードバック制御する構成を採用した。
【0016】
このような構成により、前記撮影手段で前記被塗布物上に形成した前記塗布液の塗布パターンを撮影し、前記撮影手段の撮影した画像データの画像処理を介して、塗布液の塗布パターン形成状態に関する情報、たとえば線幅や濃度に関する情報を接触塗布状態に関する情報として取得し、前記塗布装置の塗布動作、または前記ロボットアームの動作を制御し、所期の接触塗布動作を実行する。
【0017】
また、前記塗布装置の塗布方向に応じて、前記被塗布物上の形成直後の前記塗布液の塗布パターンを撮影する追従位置へ前記撮影手段が移動するよう追従動作させることにより前記被塗布物上の形成直後の前記塗布液の塗布パターンの形成状態を接触塗布動作にフィードバックすることができる。
【発明の効果】
【0018】
上記構成により、本発明によれば、被塗布物上の形成直後の塗布液の塗布パターンの形成状態を撮影手段で撮影し、該塗布液の塗布パターンの形成状態に関する情報を接触塗布動作にフィードバックすることができ、これにより、所期の塗布条件にしたがって、高精度かつ高品位な接触塗布動作を実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、発明を実施するための最良の形態の一例として、接触塗布を行う塗装ヘッドをロボットアームで操作し、塗装を行う自動塗装システムに関する実施例を示す。すなわち、以下では、被塗布物(塗布対象物)に塗布する塗布液として塗料を一例とし、接触塗布により被塗布物(塗布対象物)に塗装を行う自動塗装システムに関する実施例を示す。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明を採用した自動塗装システムの概要を示している。
【0021】
図1において符号100は塗料を接触塗布するサーボガンで、このサーボガン100は、ロボットアーム200により操作される。
【0022】
サーボガン100の詳細は後述するが、サーボガン100の先端には、塗料の塗布体としてディスペンサーチップ180が装着されている。ディスペンサーチップ180は、塗料が浸透可能なフェルト様の含浸体(軟質多孔質体)から形成された塗布体チップを有し、図1では不図示の経路より塗料がディスペンサーチップ180に対して供給される。
【0023】
このサーボガン100をロボットアーム200により操作し、ディスペンサーチップ180を被塗布物(塗装対象)に接触させた状態で移動することにより、被塗布物上に塗布パターンを形成する。
【0024】
ロボットアーム200の操作は、制御部900により制御する。塗布パターンの形状により、被塗布物上に線、文字、画像などを塗料で表現することができる。このように、被塗布物上で塗布パターンは、線、文字、画像など任意の表現となるが、以下では便宜上、塗料の塗布パターン(塗布軌跡)の形成動作を「描画」とも称する。
【0025】
この描画処理は、制御部900がロボットアーム200の制御に同期してサーボガン100の動作を制御することにより行なわれる。こうして行なわれる描画、すなわち塗布パターンの形成は、制御部900が描画プログラム901に沿ってロボットアーム200、およびサーボガン100の動作を制御することにより行なわれる。ロボットアーム200、およびサーボガン100は制御部900によりインターフェース902を介して制御される。
【0026】
さらに、本実施例では、実際の塗布パターンの形成状態を検出し、検出した塗布パターンの形成状態に関する情報をロボットアーム200、およびサーボガン100の動作にフィードバックすることにより、所期の条件で塗布パターンを形成できるようにするための制御機構を設けている。
【0027】
本実施例では、このために、撮影手段としてCCDカメラ800を設けサーボガン100の形成する塗布パターンを追尾(追従)するようにCCDカメラ800を制御する。後述の例では、CCDカメラ800はサーボガン100とともにロボットアーム200に塔載され、後述の駆動機構を介してサーボガン100の形成する塗布パターンを追尾(追従)する姿勢をとるよう制御される。
【0028】
CCDカメラ800の撮影した画像は画像処理部903で画像解析される。画像処理部903は、専用のハードウェアを用いて構成するか、あるいは制御部900のソフトウェアにより構成することができる。画像処理部903は、CCDカメラ800の撮影した画像から、サーボガン100による塗布パターンの形成状態に関する情報、特に後述の例では塗布された塗料の線幅、濃度などの情報を抽出する。
【0029】
この画像処理部903による画像解析は、CCDカメラ800の撮影した画像中から、塗布パターンとそれ以外の領域、すなわち塗布領域と非塗布領域を識別することを基本とするもので、この基本部分は公知の画像認識処理を利用して行うことができる。そして、塗布領域を非塗布領域から識別することができれば、CCDカメラ800の構成や撮影条件からあらかじめ既知である撮影倍率、サーボガン100の描画方向などに基づき、サーボガン100が描画した線幅(w)に関する情報を検出することができる。また、塗布領域を非塗布領域から識別することができれば、塗布領域内側の濃度(d)に関する情報を検出することができる。
【0030】
そして、制御部900は、画像処理部903が出力するサーボガン100が描画した線幅や濃度に関する情報に基づき、ロボットアーム200、およびサーボガン100の動作を制御することにより、描画プログラム901に基づく所期の条件、たとえば所期の線幅、ないし濃度により高精度に、高品位な塗布パターンを形成することができる。
【0031】
ここで、図9により、制御部900が実行する描画プログラム901の一例を説明しておく。この例は、あくまでも一例に過ぎず、また、本実施例を簡潔に説明すべく特化された擬似的なものであって、実際にこの通りに描画プログラムが構成される必要はない。たとえば、描画コマンドや座標系は図9に示す以外にも等価な構成が多数考えられる。
【0032】
図9の描画プログラムは、描画コマンドCMD1、CMD2、CMD3…CMDn、CMDn+1…により構成されている。ここでは、描画コマンドCMDnは、始点Pn(Xn,Yn,Zn)から終点Pn+1(Xn+1,Yn+1,Zn+1)に至るベクターで表現されている。
【0033】
なお、描画コマンドCMDnに含まれるベクター表現は、理論的にはたとえば始点Pnと終点Pn+1の座標値のみで足りるが、後述の描画処理中の計算負荷を低減するために、始点Pn〜終点Pn+1への方向の情報を格納してもよい(たとえばxy、xzなどの2平面内における角度情報などにより表現される)。
【0034】
あるいは、後述するように、本実施例で描画コマンドCMDnに関して描画方向の評価が必要になる場合、直前の描画コマンドCMDn−1と、描画コマンドCMDnの間で描画方向に方向転換が生じたか否か(のみ)が問題となるので、あらかじめ描画プログラム作成時に直前の描画コマンドCMDn−1と、描画コマンドCMDnの方向を比較し、方向転換が方向転換が生じたか否かのフラグ情報、すなわち、方向転換フラグを生成して描画コマンドCMDn内に格納しておくことにしてもよい。このような構成によって、さらに描画処理中の計算負荷を低減することができる。
【0035】
なお、曲線は長さのごく短いベクターに相当する描画コマンドの集合として近似的に表現することができるが、曲線を表現するための他の描画コマンド形式を用意しておくこととしてもよい。
【0036】
また、本実施例では、1つの描画コマンドCMDnには、描画(塗布パターン形成)を制御するパラメータとして、少なくとも、線幅wi、および濃度diの目標値に関する情報、あるいはさらに筆圧などの目標値に関する情報などが含まれるものとする。ここで筆圧目標値は、たとえば、ディスペンサーチップ180を保持するサーボガン100と、被塗布物の距離などによって表現される。
【0037】
したがって、描画プログラムは、多数の上記描画コマンドCMD1、CMD2、CMD3…CMDn、CMDn+1…の各々を特定の格納形式でメモリやHDDなどの記憶装置上に配置することにより構成される。
【0038】
ここで、図2に図1の自動塗装システムの構成例を、また、図3に図2におけるサーボガン100の基本構成の例をより具体的に示す。
【0039】
図2は本発明を採用した自動塗装システムの全体構成を、図3は図2の自動塗装システムにおいて、ロボットアーム200で操作される塗装ヘッドとしてのサーボガン100の構成を詳細に示している。以下では、まず図3によりサーボガン100の基本構成を説明し、続いて同サーボガン100を用いた図2の自動塗装システムについて述べる。
【0040】
図3はサーボガン100要部の断面構造を示している。
【0041】
図3のサーボガン100は、ハウジング101を有し、このハウジング101の先端にシャフト126、126を介して塗料供給および塗装加圧を制御するチャンバー103が固定されている。ハウジング101、およびチャンバー103はたとえば金属材料からの削り出しやダイキャスト成型により構成される。
【0042】
チャンバー103の後部には、所定径(φ10程度)圧力室103aが穿孔されている。この圧力室103aは後述のピストン102が内部を同軸的に摺動可能な円筒断面形状を有するシリンダ室として機能する。
【0043】
圧力室103aの前方(図の右側)には、後述の充填側バルブユニット142から塗料を供給するための塗料パス103bが、また、側方には後述の吐出側バルブユニット141へ塗料を吐出するための塗料パス103cが穿孔されている。
【0044】
圧力室103aの後端部にはパッキンセット120がパッキン押え104により固定されており、パッキンセット120内部には後述のサーボモータ114で駆動されるピストン102の先端が挿入され、パッキンセット120で密閉された状態でピストン102が摺動することにより圧力室103a内部の圧力を調節するようになっている。
【0045】
圧力室103a内部の塗料圧力は、圧力センサヘッド191により検出される。圧力センサヘッド191は、そのプローブ(不図示)が圧力室103a内部の圧力に晒されるよう、チャンバー103に装着される。圧力センサヘッド191の圧力検出方式は、薄ゲージ式、半導体ストレインゲージ式、圧電式など任意である。
【0046】
チャンバー103前方部分には、チャンバー側方の吐出側バルブユニット141から吐出される塗料を通過させる塗料パス103dが穿孔されている。塗料パス103dはチャンバー103先端部分のノズルポート103eへと連通している。
【0047】
なお、塗料パス141cと103d、塗料パス142cと103bなどの接合部には、必要に応じてOリング123、123…が配置される。
【0048】
ノズルポート103eには、塗料の塗布手段として、ディスペンサーチップ180が装着されている。ディスペンサーチップ180は略チューブ状の構造で、後端部に螺合などによりノズルポート103eと結合する結合部を有し、ノズルポート103eから先端の塗布体181に塗料を供給する。
【0049】
塗布体181は塗料の塗布手段の要部を構成するもので、たとえば用途に応じて種々の毛の長さや硬度、密度などが調製されたブラシ、フェルトペンやマーカーなどの文房具で用いられるペン先に採用されているような塗料が浸透可能なフェルト様の含浸体(軟質多孔質体)から形成された塗布体チップを用いることができる。なお、塗布体181は、後述のようにして圧力調整された上、供給される塗料を塗装対象物と接触するその先端へと伝えることができる構造であればどのような構造であってもよい。また、塗布体181の塗料の浸透(伝達)特性によって、後述のようにして調節される塗料の供給圧力を制御すべきであることはいうまでもない。
【0050】
次に、塗料を圧力室103aに充填し、また、圧力室103aからディスペンサーチップ180へと供給(吐出)する充填側バルブユニット142、および吐出側バルブユニット141の構造につき説明する。
【0051】
ここでは、各バルブユニット142、141に共通する構造については同時に説明する。本実施例では、各バルブユニット142、141はほぼ共通する構造を有する共通部品として形成されており、一部の充填側ないし吐出側のいずれかとして用いるに際し、不要な開口を盲蓋などにより密閉する仕様としている。このような構成により、コストダウンが可能となる。
【0052】
充填側バルブユニット142、および吐出側バルブユニット141はいずれも内部にニードルバルブ109、109を有し、このニードルバルブ109、109の開閉を各バルブユニット後方に配置されたエアシリンダユニット152、151により制御することにより、塗料の通過をオン/オフ制御するよう構成されている。
【0053】
ニードルバルブ109、109は、それぞれ後方のシャフト部分よりも直径が大きな頭部を有し、これら頭部の後端に斜面が切られている。このニードルバルブ109、109頭部後端の斜面は、充填側バルブユニット142、および吐出側バルブユニット141内部の開口142b、141bの斜面と対向しており、ニードルバルブ109、109と各開口142b、141bを離間させるか、あるいは密着させるかによって、塗料の通過を制御することができる。
【0054】
各バルブユニット142、141の開口142b、141bの前方は、それぞれニードルバルブ109、109の上記頭部を収容できる内径に前方から穿孔することにより形成される。開口142b、141bの前部はOリング122、122を介して盲蓋108、108によって密閉されている。また、開口142b、141bの後方部分はそれよりも狭い内径で各バルブユニット142、141の後端のパッキンセット121、121が装着された大径部分まで貫通している。パッキンセット121、121が装着される開口の大径部分は各バルブユニット142、141の後方(図の左側)から穿孔される。
【0055】
パッキンセット121、121はパッキン押え107、107により固定されている。パッキンセット121、121内部には、先端がそれぞれニードルバルブ109、109と結合されたシャフト110、110が貫通している。このような構成により、パッキンセット121、121によって密閉された状態で後述のエアシリンダユニット152、151によりシャフト110、110を介してニードルバルブ109、109を操作することができる。
【0056】
次に充填側バルブユニット142、および吐出側バルブユニット141内の塗料パスにつき説明する。
【0057】
充填側バルブユニット142の側方には、吸入ポート142aが穿孔されている。吸入ポート142aから内部へ続く通路は、貫通孔として形成されており、充填側バルブユニット142内部の開口142bと交差して連通するとともに、他端の開口はチャンバー103の外壁により閉鎖されている。吸入ポート142aには、後述のタンクからの塗料を供給するホースが接続される。
【0058】
吐出側バルブユニット141にも上記同様の貫通孔の構造(141a)が設けられているが、充填側バルブユニット142の吸入ポート142aに相当する開口は盲蓋141a’により閉鎖されており、同貫通孔の構造(141a)のうち、吐出側バルブユニット141内部の開口141bと、チャンバー103側方に穿孔された塗料パス103cを連絡する部分のみが塗料の通路として機能するようになっている。
【0059】
充填側バルブユニット142の開口142bの前方の大径部分には塗料パス142cが穿孔されており、チャンバー103側方に穿孔された塗料パス103bと連絡している。塗料パス103bは、チャンバー103の圧力室103aと連通している。
【0060】
塗料パス142cと同様の貫通孔は吐出側バルブユニット141の側にも同じ位置、同じ構造で設けられており、この貫通孔は塗料パス141cとして機能する。塗料パス141cは、吐出側バルブユニット141の開口141bの前方の大径部分とチャンバー103の塗料パス103dを連絡している。
【0061】
上記の構造における塗料の供給経路を要約すると次のようになる。すなわち、図3の構造における塗料の供給経路は、吸入ポート142a〜ニードルバルブ109〜開口142b〜塗料パス142c(以上充填側バルブユニット142)〜塗料パス103b〜圧力室103aと続く。また、圧力室103aより下流の塗料の供給経路は、塗料パス103c(以上チャンバー103)〜塗料パス141a〜ニードルバルブ109〜開口141b〜塗料パス141c(以上吐出側バルブユニット141)〜塗料パス103d〜ノズルポート103e(以上チャンバー103前部)〜ディスペンサーチップ180と続く。
【0062】
なお、上記のうち、塗料供給手段として機能する圧力室103aから、塗装対象物に塗料を塗布する塗料塗布手段として機能するディスペンサーチップ180までの直線距離は、水頭圧を考慮して、サーボガン100の姿勢をどのように制御しても塗料がディスペンサーチップ180から垂れ落ちない程度の長さ、たとえばほぼ30cm以内程度、より好ましくは10cm以内程度とする。ただし、この圧力室103a〜ディスペンサーチップ180までの塗料の経路の全長については、塗料の粘度などに応じて当業者が適宜の設計変更を行うことができるのはいうまでもない。
【0063】
また、ピストン102を図3左方の初期位置まで後退させた時に得られる、塗料供給手段として機能する圧力室103aの最大の塗料保持量は、上記と同じ条件、すなわち、サーボガン100の姿勢をどのように制御しても塗料がディスペンサーチップ180から垂れ落ちない程度の容量、たとえばほぼ50cc以内程度、より好ましくは5cc以内程度とする。ただし、この圧力室103aの塗料保持容量については、塗料の粘度などに応じて当業者が適宜の設計変更を行うことができるのはいうまでもない。
【0064】
充填側バルブユニット142、および吐出側バルブユニット141のニードルバルブ109、109の開閉は、シャフト110、110を介してエアシリンダユニット152、151によりそれぞれ操作される。
【0065】
エアシリンダユニット152、151の構造は共通であり、それぞれ外殻としてのエアシリンダチューブ111を有する。エアシリンダチューブ111はビス止めなどによりチャンバー103の側方に固定される。
【0066】
エアシリンダチューブ111の内部にはエアシリンダシャフト127が図の左右方向に摺動可能に支持されている。エアシリンダシャフト127の前方部分(図の右側)は、Oリング124を介してエアシリンダチューブ111により支持されている。
【0067】
エアシリンダシャフト127の前端部は、スタッドボルトおよびナットなどを介し充填側バルブユニット142および吐出側バルブユニット141を操作するシャフト110と結合されている。
【0068】
また、エアシリンダシャフト127の後端部(図の左側)には、エアシリンダピストンヘッド112が固定されており、エアシリンダピストンヘッド112は図の左方へスプリング128で付勢されている。エアシリンダチューブ111の後端部(図の左側)は、Oリング125を介してエアシリンダヘッドカバー113により密閉されている。
【0069】
エアシリンダピストンヘッド112を前進させるためのエアは、エアシリンダヘッドカバー113に設けられたポート151a、または152aからエアシリンダチューブ111内部に送り込まれる。
【0070】
エアが供給されていない時はスプリング128の付勢力によって、また、エアシリンダチューブ111側方のポート152b、または151bからエアシリンダピストンヘッド112を後退させるためのエアが供給されている時は、このエア圧力とスプリング128の付勢力によりエアシリンダピストンヘッド112は図の左方へ後退し、充填側バルブユニット142または吐出側バルブユニット141のニードルバルブ109が図の左方へ引かれ、塗料の通路を閉成する。
【0071】
一方、ポート152aまたは151aからエアを供給し、エアシリンダチューブ111内部のエアシリンダピストンヘッド112の後方部分(図の左側)を加圧するとエアシリンダピストンヘッド112が(図の右方へ)前進し、充填側バルブユニット142または吐出側バルブユニット141のニードルバルブ109が図の右方へ押され、塗料の通路が開放される。
【0072】
エアシリンダ151、152に対するエアの供給は後述のソレノイドバルブにより制御され、充填側バルブユニット142または吐出側バルブユニット141の開閉は、独立して制御することができる。各バルブユニットの開閉制御の態様については後で詳述する。
【0073】
次に、ピストン102により圧力室103a内の圧力を制御するための構造につき説明する。
【0074】
ハウジング101の後端部には、サーボモータ114が取り付けられており、サーボモータ114の駆動軸はカップリング115を介してボールネジ117の後端部と結合されている。ボールネジ117はハウジング101とチャンバー103を結合しているシャフト126、126の中央位置にサポートユニット116を介して支持されている。
【0075】
ボールネジ117の先端部には穴付きボルト119となっており、ピストン102の内部に切られたボールガイド118と螺合している。
【0076】
以上の構造により、サーボモータ114によりボールネジ117を反時計廻りまたは時計廻りに回転させると、ピストン102が前進または後退し、これによりピストン102の頭部をチャンバー103の圧力室103a内に進入または脱出させ、圧力室103a内を加圧または減圧することができる。
【0077】
なお、本実施例では、ピストン102位置は光ファイバセンサにより検出できるようにしてある。ピストン102の後端部にはセンサドグ136が紙面に垂直な方向に立設されている。そして、センサドグ136が通過する領域と光軸が交差するように光ファイバセンサの投光側および受光側の光ファイバ138a、および138bが配置されている。光ファイバ138a、および138bは、ファイバブラケット134および135を介してハウジング101にネジ止めなどにより固定されている。
【0078】
また、ハウジング101には、不図示の光ファイバセンサアンプユニットを装着するための取付け金具138が装着されている。投光側および受光側の光ファイバ138a、および138bはこの取付け金具138に装着された光ファイバセンサアンプユニットと接続され、同アンプユニットによって検出、および表示制御が行われる。この種のアンプユニットには、感度設定などの制御を行う操作手段などの他、光ファイバ間を通過するドグの検出状態を表示するLEDインジケータなどが設けられており、アンプユニットをこのようにサーボガン100に装着しておくことにより、アンプユニットのLEDインジケータをピストン102の動作状態の表示器として機能させることができる。
【0079】
また、光ファイバセンサの出力は、後述の制御において、ピストン102の初期位置の検出などに利用することもできる。
【0080】
次に図2を参照して、本実施例の塗装システムの全体構成につき説明する。
【0081】
図2において、図3で説明したサーボガン100は、ロボットアーム200のアーム先端に支持されている。ロボットアーム200はたとえば3軸制御(たとえばテーブル回転2軸、アーム回転1軸)が可能な公知のロボットアーム200である。また、塗装用途によっては走行式など駆動方式が異なるもの、軸数が異なるものなどを用いてもよい。
【0082】
自動塗装処理は、ロボットアーム200でサーボガン100を操作し、塗装対象物(不図示)にサーボガン100先端のディスペンサーチップ180を接触させるとともに、塗装対象物とサーボガン100の間に相対移動を生じさせることによって行なう。このようにして、塗装対象物上に所定の塗料塗布パターンを形成することができる。このような塗装処理により、直線、曲線、文字、画像、塗り潰しなどの表現が可能となる。
【0083】
ロボットアーム200の制御、およびサーボガン100の塗料充填および塗布に関する制御は、制御部900によって行う。
【0084】
制御部900は、たとえばロボット操作盤300およびPLC400を用いて構成することができる。以下では、制御部900をロボット操作盤300およびPLC400を用いて構成する例を示すが、もちろん制御部900はロボットアーム200の制御、およびサーボガン100の塗料充填および塗布制御を行なう単一の制御手段により構成してもよい。
【0085】
本実施例では、ロボットアーム200の操作ないしプログラミングは、ロボット操作盤300を介して行う。ロボット操作盤300には、ロボットアーム200を操作するための操作手段の他、たとえばファンクションキーなどを利用して構成したサーボガン100の動作タイミングを指定するための操作手段が設けられる。
【0086】
一方、サーボガン100による塗装動作は、PLC(Programmable Logic Controller)400によって制御される。
【0087】
本実施例では、ロボット操作盤300により、ロボットアーム200でアーム先端のサーボガン100を動かし、サーボガン100のディスペンサーチップ180を対象物に接触させ、塗料を所定の塗布パターン(形状)に沿って塗布するようプログラミングする。
【0088】
同時に、ロボット操作盤300で、ディスペンサーチップ180先端を対象物に接触させて塗布を開始する、またディスペンサーチップ180先端を対象物から離して塗布を終了する、といった各タイミングでPLC400がサーボガン100による塗装動作を制御できるように、ロボット操作盤300のI/O入出力基板301、およびアナログ出力基板302から制御信号を出力するようになっている。
【0089】
本実施例では、ロボット操作盤300のI/O入出力基板301は、吐出バルブON/OFF信号、充填バルブON/OFF信号、吸引信号、塗布信号、速度制御信号、および位置制御信号などの制御信号をPLC400のI/O入力ポート403に対して出力する。
【0090】
また、ロボット操作盤300のアナログ出力基板302から、サーボ速度指令信号(電圧信号)をPLC400のアナログ入力ポート405に対して出力する。
【0091】
PLC400はPC(パーソナルコンピュータ)402に、電源401、I/O入力ポート403、I/O出力ポート404、アナログ入力ポート405、および位置決めユニット406を組み合わせて構成されている。
【0092】
また、PLC400のI/O出力ポート404から、ロボット操作盤300のI/O入出力基板301に対して、ロボットアーム200の3軸(ないしそれ以上の複数軸)制御を行うための所定の制御信号を入力することにより、PLC400側からロボット操作盤300を介してロボットアーム200の動作を制御することもできる。
【0093】
以上のように制御部900を構成することにより、たとえば、ロボット操作盤300を用いて、サーボガン100を操作するロボットアーム200の動作、およびサーボガン100の塗料の塗布開始、終了タイミングなどをプログラミングした後、PLC400側でそのプログラミングデータを記録し、後で再生する、すなわち、PLC400が記録したプログラミングデータに基づき、ロボット操作盤300を介してロボットアーム200の動作を制御するとともに、サーボガン100の塗装動作を制御することにより、自動塗装処理を行うこともできる。
【0094】
次に、サーボガン100の塗装制御系についてさらに詳細に説明する。
【0095】
上述のように、サーボガン100には、塗料を加圧するための圧力室103aが設けられ、ピストン102により圧力室103a内の塗料の圧力を制御することができる。
【0096】
ピストン102は、サーボモータ114により駆動されるが、このサーボモータ114はサーボコントローラ407を介してPLC400の位置決めユニット406により制御される。
【0097】
圧力室103a内の塗料圧力は、圧力センサヘッド191により検出される。圧力センサヘッド191の検出状態は圧力センサユニット193でデジタル信号に変換され、I/O入力ポート403を介してPLC400に入力される。
【0098】
したがって、PLC400は、塗料塗布期間、あるいはサーボガン100移動中の予圧(予備加圧)期間(後述)などにおいて、圧力センサヘッド191から得られる検出値に基づき、圧力室103a内の塗料圧力が所定値になるよう、サーボモータ114を介してピストン102の位置を制御することによりフィードバック制御することができる。
【0099】
また、サーボガン100には、圧力室103aに対して塗料を充填する充填側バルブユニット142、および吐出側バルブユニット141が設けられる。これら充填側バルブユニット142、および吐出側バルブユニット141の開閉はそれぞれエアシリンダユニット152、および151により制御される。
【0100】
このエアシリンダユニット152、および151の駆動は、充填バルブ用ソレノイドバルブ162、および吐出バルブ用ソレノイドバルブ161によりそれぞれ制御される。充填バルブ用ソレノイドバルブ162、および吐出バルブ用ソレノイドバルブ161と、エアシリンダユニット152、および151は、エアシリンダピストンヘッド112の前進および後退をそれぞれ制御するエア配管により接続される。
【0101】
これら充填バルブ用ソレノイドバルブ162、および吐出バルブ用ソレノイドバルブ161は、PLC400のI/O出力ポート404の信号により制御される。
【0102】
このような構成により、PLC400は、塗装シーケンスの進行に応じて、充填側バルブユニット142、および吐出側バルブユニット141の開き、また閉じるよう、充填バルブ用ソレノイドバルブ162、および吐出バルブ用ソレノイドバルブ161を介してエア供給を制御する。
【0103】
エアシリンダユニット152、および151の駆動に必要なエアは不図示の外部のコンプレッサなどから吸入ポート501を介して供給される。吸入ポート501の直後の配管には微粒子、油分、水分などの異物を除去するためのミストセパレータ502が配置される。
【0104】
なお、本実施例では、充填バルブ用ソレノイドバルブ162、および吐出バルブ用ソレノイドバルブ161は、エアシリンダユニット152、および151のエアシリンダピストンヘッド112の前進および後退を2ポート式で制御するように図示してあるが、これらソレノイドバルブ/エアシリンダユニットのポート構成は図示の態様に限定されるものではない。
【0105】
サーボガン100に供給される塗料は粘度不均一や固化などを防止するため、密閉型タンク700に収容し、撹拌機600により常時、撹拌する。撹拌機600としてはマグネチックスターラのような任意の撹拌方式のものを用いることができる。
【0106】
密閉型タンク700の内部は、上記のミストセパレータ502を経て、さらに精密レギュレータ504を介して流量を一定に制御されたエアにより予備加圧する。
【0107】
密閉型タンク700の内の塗料にはナイロン製などの塗料チューブ701の一端が浸漬され、この塗料チューブ701の他端は充填側バルブユニット142吸入ポート142aに接続される。
【0108】
塗料は顔料を、たとえば、ホワイトガソリン、アルコール、シンナーなど各種の溶媒に溶いたもので、ディスペンサーチップ180の塗布体181先端まで毛細管現象によって到達できるものであれば任意の組成の塗料を用いることができる。
【0109】
塗料チューブ701の中間部には、塗料の流量を一定に制御するためのエアオペレギュレータ192が配置される。エアオペレギュレータ192には、上記ミストセパレータ502を経て、さらに精密レギュレータ503を介して流量を一定に制御された制御エアが供給される。このようにして、サーボガン100への塗料の供給流量が一定に制御される。
【0110】
さらに、本実施例では、サーボガン100の塗布軌跡を追従するように動作するCCDカメラ800をサーボガン100とともにロボットアーム200に塔載する。CCDカメラ800を塔載するための構造については、図4および図5により後述する。
【0111】
CCDカメラ800の画像信号出力は、PLC400のアナログ入力ポート405に入力される。前述の画像処理部903は、アナログ入力ポート405の入力画像を処理する不図示のハードウェア回路、あるいはPLC400の画像処理プログラムにより構成されるものとする。
【0112】
なお、上記の塗料およびエア系の配管(チューブ)、ないし配線はサヤ管艤装部700aによって束ねられ、サーボガン100まで配管される。
【0113】
ここで、図4および図5にCCDカメラ800をサーボガン100とともにロボットアーム200に塔載し、また、サーボガン100の塗布動作に追従させるべく変位させるための構造の一例を示す。
【0114】
上述のように構成されたサーボガン100は、略L字型の断面構造を有するツールブラケット1001上にブラケット1002を介して、たとえばボルト止め(1002a)などの方法で固定される。サーボガン100の先端には、上述の塗布体181を有するディスペンサーチップ180が装着されている。
【0115】
CCDカメラ800は、マウント1004上に照明801とともに固定されている。マウント1004は、L型支持具1004aを介してアーム1003に固着されている。アーム1003は金属カラー1016を介してシャフト1006に溶接ないし接着などの方法で固着されている。
【0116】
シャフト1006は、CCDカメラ800の揺動中心であり、サーボガン100の塗布手段であるディスペンサーチップ180のほぼ中心を通る直線に一致するようベアリングホルダーセット1012、1013により回動自在に軸支される。
【0117】
このような構成により、CCDカメラ800を、サーボガン100の塗布手段であるディスペンサーチップ180のほぼ中心を通る直線を中心とする異なる任意の回動位置に旋回できるように支持し、塗装対象物上の形成直後の塗料の塗布パターンを撮影するようサーボモータ(下記の1008)によりCCDカメラ800の撮影光軸を、上記回動位置のいずれかに移動させることができる。
【0118】
これにより、塗料の塗布方向に応じて、塗装対象物上の形成直後の塗料の塗布パターンを撮影する追従位置へCCDカメラ800が移動するよう追従動作させることができ、塗装対象物上の形成直後の塗料の塗布パターンの形成状態を接触塗布動作にフィードバックすることができる。
【0119】
シャフト1006の両端は、ベアリングホルダーセット1012、1013の外側でベアリングナット1014、1014により抜け止め固定される。後端のベアリングホルダーセット1012はツールブラケット1001後端に設けられたザグリ穴内部に固定され、前端のベアリングホルダーセット1013は、ツールブラケット1001と固定された不図示の支持部材に支持されるものとする。
【0120】
シャフト1006中央には平歯車1010が固着されており、この平歯車1010はサーボモータ1008により駆動される平歯車1009と噛合している。サーボモータ1008は取り付け金具100aを介してツールブラケット1001上に固定され、平歯車1009、1010はギアカバー1007内に収容されている。
【0121】
図4および図5に実線で示したCCDカメラ800の揺動位置は、たとえばホームポジションで、この揺動位置は、光センサや磁気センサなどから成る近接センサ1015により検出される。
【0122】
図5に一点鎖線800aで示すものは、上記のシャフト1006を中心とするCCDカメラ800の撮影光軸の回動軌跡である。CCDカメラ800は、上記ホームポジションを中心に、たとえば図示の±120度の範囲内をサーボモータ1008の駆動によって旋回でき、また任意の位置で停止できるものとする。
【0123】
図5の紙面内のいずれの方向にもサーボガン100のディスペンサーチップ180が描画操作されるものとすれば、CCDカメラ800は、好ましくは全ての描画直後の塗料の塗布軌跡を撮影できるよう構成すべきで、この撮影条件を満足するよう、上記のCCDカメラ800の旋回範囲ないしCCDカメラ800の撮影画角を選択する。
【0124】
なお、図4において符号191は上述の圧力センサヘッドを示す。また、図5に示されたU字型の金具1020は補強およびCCDカメラ800の旋回ガイドとして機能する構造部材である。
【0125】
CCDカメラ800は、たとえば1秒間に数ないし数10フレームの画像を撮影できるもので、CCDカメラ800出力する画像信号は上述のようにPLC400のアナログ入力ポート405に入力される。ただし、CCDカメラ800の出力する画像信号がJPEGやMPEGなどの静止画/動画のデータ形式でPLC400に入力される構成であってもよい。
【0126】
また、CCDカメラ800の姿勢を制御/決定するサーボモータ1008の駆動制御情報は、たとえばPLC400のサーボコントローラ407(図2)から不図示の経路で供給されるか、ロボット制御盤301を経由してロボットアームの制御信号の1つとして供給されるものとする。当然ながらサーボモータ1008は、入力された駆動制御情報にしたがって、平歯車1009、1010を介してシャフト1006を回動させ、入力された駆動制御情報の指定する回動位置にCCDカメラ800を回動させることができるよう構成されているものとする。
【0127】
次に、以上の構成における自動塗装(自動塗布)動作につき説明する。ここでは、図6〜図8により、サーボガン100の基本制御(下位レベルの制御)を説明し、続いて図10〜図12によりCCDカメラ800の撮影画像を用いて行なう塗布(描画)制御(上位レベルの制御)につき説明する
図6〜図8に上記構成において実施される自動塗装制御の基本部分、特に下位レベルに属する塗料の供給制御を主に示す。ここでは、ロボットアーム200の制御によりサーボガン100のディスペンサーチップ180を塗装対象物に触れさせる、あるいはさらに塗装対象物に沿い、所期の塗装パターンに応じて移動させる、塗装対象物から離間させ、待機(休止)位置まで移動させる、といったロボットアーム200側の制御について公知であるものとして説明を省略する。
【0128】
図6〜図8に示した制御手順は、たとえば図2の制御部900が実行する自動塗装制御プログラムとして制御部900の記憶手段に格納することができる。たとえば、図2において、PLC400がロボットアーム200の動作と、サーボガン100による塗装動作を含む全体を制御する場合には、後述の制御手順はPLC400のHDDやフラッシュメモリなどの記憶手段(不図示)に格納することができる。
【0129】
図6の充填手順は、圧力室103aに塗料を充填する充填処理の制御手順の流れを示している。図6の充填手順は、たとえば、サーボガン100のディスペンサーチップ180が塗装対象物から離間している間、あるいはロボットアーム200によりサーボガン100が所定の休止/待機位置などに移動されている、といった非塗布期間の任意のタイミングにおいて実施することができる。
【0130】
図6の充填処理を実行する際、撹拌機600を駆動しておき、密閉型タンク700を撹拌するとともに、各ソレノイドバルブ161、162、エアオペレギュレータ192などの動作が可能となるよう、不図示のコンプレッサなどから吸入ポート501に所定圧力のエアを供給する(後述の吐出/塗布処理などにおいても同様)。
【0131】
図6のステップS301では、まず吐出バルブ用ソレノイドバルブ161、およびエアシリンダユニット151を介して吐出側バルブユニット141を閉成(OFF)し、ステップS302では、充填バルブ用ソレノイドバルブ162、およびエアシリンダユニット152を介して充填側バルブユニット142を開放(ON)する。
【0132】
なお、上述の説明より各ソレノイドバルブ161、162、各エアシリンダユニット151、152および各バルブユニット141、142の動作は自明であるから、以下では煩雑さを避けるため単に充填側バルブユニット142および吐出側バルブユニット141の動作についてのみ言及する。
【0133】
ステップS302およびS303では、サーボモータ114およびボールネジ117を介してピストン102を図3左方の初期位置まで移動させる。この時、充填側バルブユニット142が開、吐出側バルブユニット141が閉の状態であるから、このピストン102の初期位置への移動により、圧力室103a内に塗料が充填される。
【0134】
塗料は、密閉型タンク700から塗料チューブ701を経て、前述のように吸入ポート142a〜ニードルバルブ109〜開口142b〜塗料パス142c(以上充填側バルブユニット142)〜塗料パス103b〜圧力室103aへと続く経路で充填される。
【0135】
ピストン102の現在位置は、サーボモータ114のエンコーダの出力を監視することにより、あるいは光ファイバセンサの出力を監視することにより検出する。
【0136】
ステップS302でピストン102が所定の初期位置まで後退したことを検出すると、ステップS304に移行し、充填側バルブユニット142を閉成(OFF)する。
【0137】
続いて、ステップS305〜S307においては、充填側バルブユニット142および吐出側バルブユニット141を閉成した状態で圧力室103a内の塗料を所定の圧力に予圧(予備加圧)する。
【0138】
ステップS305では、圧力センサヘッド191、圧力センサユニット193を介して圧力室103a内の塗料圧力を検出し、同圧力値が所定の予圧目標値に(ほぼ)等しいか否かを検出する。
【0139】
ステップS305で圧力室103a内の塗料圧力が所定の予圧目標値より高ければ、サーボモータ114およびボールネジ117を介して、ステップS306においてピストン102を後退させ、所定の予圧目標値より低ければ、ステップS307においてピストン102を前進させる。
【0140】
なお、上述の説明よりサーボモータ114、ボールネジ117およびピストン102の動作は自明であるから、以下では煩雑さを避けるため単にピストン102の動作についてのみ言及する。
【0141】
ステップS305〜S307の予圧調整処理は、ステップS308で充填処理の終了を検出するまで続行される。
【0142】
ステップS308で検出される充填処理の終了は、たとえば、サーボガン100のディスペンサーチップ180が塗装対象物に触れる、あるいは塗装対象物まで移動された、などのように塗装処理を開始する条件が成立することを検出することなどにより判定することができる。
【0143】
図6のようにして、非塗布期間中にピストン102を初期位置に移動して圧力室103a内に所定容量の塗料を充填するとともに、さらに、充填側バルブユニット142および吐出側バルブユニット141を閉成した状態で圧力室103a内の塗料を所定の予圧圧力に調節することができる。このように非塗布期間中に圧力室103a内の塗料圧力を所定の予圧値に調節しておくことにより、ディスペンサーチップ180を塗装対象物に触れさせた直後から、所期の塗料圧力でディスペンサーチップ180に塗料を供給することができ、効率良く塗料の塗布を行うことができる。
【0144】
図7は、サーボガン100のディスペンサーチップ180を塗装対象物に触れさせて行う塗布(吐出)処理の流れを示している。図7の塗布(吐出)処理は、たとえば、ディスペンサーチップ180を塗装対象物に触れさせた(あるいは塗装対象物近傍に近接させた)時点から開始することができる。
【0145】
図7のステップS401では、まず充填側バルブユニット142を閉成(OFF)とし、ステップS402では、吐出側バルブユニット141を開放(ON)する。この各バルブユニットの状態は、ステップS406で塗布処理の終了が検出されるまで保持される。
【0146】
これにより、圧力室103aより下流の塗料の供給経路、すなわち塗料パス103c(以上チャンバー103)〜塗料パス141a〜ニードルバルブ109〜開口141b〜塗料パス141c(以上吐出側バルブユニット141)〜塗料パス103d〜ノズルポート103e(以上チャンバー103前部)〜ディスペンサーチップ180と続く供給経路が形成される。
【0147】
ステップS403では、圧力センサヘッド191、圧力センサユニット193を介して圧力室103a内の塗料圧力を検出し、同圧力値が所定の目標値に(ほぼ)等しいか否かを検出する。この塗布時の圧力目標値は、先の予圧目標値と同じでもよいし、諸条件により先の予圧目標値よりも高く、あるいは低く設定しておくことができる。
【0148】
ステップS403で圧力室103a内の塗料圧力が所定の予圧目標値より高ければ、サーボモータ114およびボールネジ117を介して、ステップS404においてピストン102を後退させ、所定の予圧目標値より低ければ、ステップS405においてピストン102を前進させる。
【0149】
このようにして、塗布処理において、圧力室103a内の塗料圧力を、所定の圧力目標値になるようフィードバック制御し、塗料がディスペンサーチップ180の先端の塗布体181から垂れ落ちるような不都合を生じることなく、また、塗料供給不足に起因するかすれや塗布ムラなどの不都合を生じることなく、塗料を塗布することができる。
【0150】
すなわち、ディスペンサーチップ180の先端の塗布体181から塗装対象物に塗布されて消費される量に応じて減圧していく分だけピストン102を前進させることができ、また、ピストン102が前進しすぎるなどして塗料圧力が高くなりすぎた場合はピストン102を後退させることができる。また、このようなフィードバック制御により、あるいはサーボガン100の姿勢などによって発生しうる塗料圧力のバラツキを補償することができ、ディスペンサーチップ180の先端の塗布体181直前の圧力が塗料塗布に適したほぼ一定の圧力に制御することができる。
【0151】
ステップS406では、塗布(吐出)処理の終了を検出する。塗布(吐出)処理の終了は、ディスペンサーチップ180により、塗装対象物に所定のパターンを描き終り、ディスペンサーチップ180を塗装対象物から離間させる、といった条件の検出により判定することができる。塗布(吐出)処理の終了を検出した場合にはステップS407で吐出側バルブユニット141を閉成(OFF)し、塗布(吐出)処理全体を終了する。塗布(吐出)処理が終了した場合には、たとえば、直ちに図6の充填処理に移行することができる。
【0152】
以上のようにして、塗料の塗布中、チャンバー103の圧力室103a内の塗料圧力を所定の目標値に近づけるよう制御する、すなわち、圧力室103a内の塗料圧力が所定範囲内となるよう制御することができ、これによりディスペンサーチップ180から塗料が垂れ落ちるのを防止でき、作業環境や被塗布物の不要な部分を汚染することなく、前記被塗布物に前記塗布液を塗布することができる。またディスペンサーチップ180に対して一定の塗料供給量で塗料を供給できるため、直線、曲線、文字、画像、塗り潰しなどの表現を高精度に行なうことができる。
【0153】
図8は、自動塗装制御、特に下位部分の制御のおおまかな流れを示している。図8の処理は、図示のように、ステップS501で行う塗布(吐出)区間か否かの判定に応じて、ステップS502の塗布(吐出)処理(図7)、またはステップS503の充填処理(図6)を行なうものである。ステップS501〜S503の処理は、ステップS504で自動塗装処理全体の終了を検出するまで続行される。
【0154】
ステップS501の塗布(吐出)区間か否かの判定は、たとえば、サーボガン100のディスペンサーチップ180が塗装対象物に触れた、あるいは塗装対象物近傍まで移動された、などの条件を検出することにより行うことができる。
【0155】
また、ステップS504の自動塗装処理全体の終了判定は、塗装対象物に全ての塗装パターンを描き終ったことを検出することにより行うことができる。
【0156】
図8に示したように、充填処理を塗装対象物に塗料を塗布する塗布時以外の非塗布期間において行なうことにより、効率よくサーボガン100のチャンバー103に塗料を充填(補給)することができる。
【0157】
一方、図10〜図12は、制御部900が実行する、より上位の描画制御の流れを示している。図6〜図8に示した下位のルーチンは、図10〜図12に示す制御の流れに応じて必要に応じて呼び出される。図10〜図12の制御は、制御部900が実行するプログラムとしてPLC400のHDDやフラッシュメモリなどの記憶手段(不図示)に格納することができる。
【0158】
図10〜図12の説明において、描画プログラム(901:図1)はたとえば前述の図9に示したようなベクター表現を基本とするデータ表現を用いて構成されているものとする。前述の通り図9に示したようなデータ表現は、あくまでも一例に過ぎない。
【0159】
図10は、描画プログラムを実行する制御部900が、描画の方向転換を検出し、CCDカメラ800を描画に追従させる制御を示している。
【0160】
図10のステップS601では、不図示のHDDやメモリ上に展開されている描画プログラム(901)から描画コマンドCMDn(図9)を1つ取り出す。描画プログラム(901)はリンクトリストのような格納形式で記憶されており、プログラム上ステップS601では、前回取り出した描画コマンドCMDn−1の次の描画コマンドCMDnが取り出されるよう構成されているものとする。
【0161】
ステップS602では、取り出した描画コマンドCMDnを解析し、該描画コマンドの実行によって描画方向に方向転換が生じるか否かを判定する。図9に示したように、描画コマンドCMDnはベクター表現であり、移動方向に関する情報を含んでおり、前回実行した描画コマンドCMDn−1と比較すれば今回の描画コマンドCMDnの実行で描画方向に方向転換が生じるか否かを判定することができる。このとき前述のように描画コマンドCMDnに始点Pn〜終点Pn+1への方向の情報や、方向転換フラグが格納されている場合には、これらを用いて描画方向に方向転換が生じるか否かを容易に判定することができる。
【0162】
ステップS602で方向転換が生じないと判定した場合には、後述のステップS604で、描画制御を行う。ステップS602からステップS604に移行した場合には、従前のCCDカメラ800の旋回位置、および描画制御条件(ステップS604、図11ないし図12参照)が用いられる。
【0163】
ステップS602で描画コマンドCMDnの実行により描画方向に方向転換が生じると判定した場合には、ステップS603でCCDカメラ800の追従位置を計算する。CCDカメラ800は、図4、図5に示した通り、サーボモータ1008を介して、ディスペンサーチップ180の中心に一致した旋回軸廻りのたとえば120°+120°の範囲を旋回し任意の位置で停止させることができる。
【0164】
描画コマンドCMDnから、ロボットアーム200により操作されるディスペンサーチップ180の移動方向が演算できるから、このステップS603では、CCDカメラ800の旋回位置として、ディスペンサーチップ180の移動方向とは180°異なる旋回位置を選択すればよい。なお、図5のような構成では、CCDカメラ800はディスペンサーチップ180を中心とする360°の範囲を旋回できないから、ディスペンサーチップ180の移動方向と180°異なる旋回位置を選択できない場合は、CCDカメラ800の画角の範囲内にディスペンサーチップ180の形成する塗布軌跡を捉えられる最適な位置をCCDカメラ800の旋回位置として選択するものとする。
【0165】
ステップS605では、ロボットアーム200を制御して、描画の方向転換を行う。同時に、サーボモータ1008を制御して、ステップS603で計算した旋回位置(追従位置)にCCDカメラ800を旋回させ、ステップS604の描画制御に移る。
【0166】
ステップS604の描画制御では、描画コマンドCMDnに格納された始点Pn(Xn,Yn,Zn)、終点Pn+1(Xn+1,Yn+1,Zn+1)などに関する情報、線幅wi、および濃度diの目標値に関する情報、あるいはさらに筆圧などの目標値に関する情報など基づき、前述の下位レベルの塗布制御を実行しつつ、ロボットアーム200を制御することにより、サーボガン100のディスペンサーチップ180で描画コマンドCMDnで表現された描画動作を行なわせる。
【0167】
また、ステップS604の描画制御では、CCDカメラ800の撮影した画像情報を用いて図11ないし図12に示すような描画制御呼び出して実行させることができる。
【0168】
図11の描画制御は、CCDカメラ800の撮影した画像情報に基づき、サーボガン100のディスペンサーチップ180が描画する塗布パターンの線の幅が一定の目標値に一致するよう制御するもの(一定線幅制御)、また、図12の描画制御は、CCDカメラ800の撮影した画像情報に基づき、サーボガン100のディスペンサーチップ180が描画する塗布パターンの塗料濃度幅が一定の目標値に一致するよう制御するものである(一定濃度制御)。
【0169】
図11の一定線幅制御は、描画を実行している間、行なわれる。すなわち、図11のステップS701では、サーボガン100のディスペンサーチップ180を被塗布物に接触させ、塗料の塗布による描画を行っているか否かを判定し、描画中の場合のみ、ステップS703以降の処理を実行する。描画中ではない場合は、この一定線幅制御を呼び出した描画ルーチン(ステップS604)に復帰する(ステップS702)。
【0170】
ステップS701で描画中の場合、ステップS703で、CCDカメラ800の撮影した画像情報から現在の塗布軌跡の線幅w(実際値)を取得する。この線幅w(実際値)の取得は、画像処理部903(図1)により行わせる。
【0171】
続いてステップS704において、塗布軌跡の線幅w(実際値)が線幅の目標値wiと等しい(あるいは一定の範囲内でほぼ等しい)か否かを判定する。ステップS704が肯定された場合には、それ以上、線幅制御を実行することなく、元の描画ルーチンに復帰する(ステップS707)。
【0172】
また、ステップS704で、塗布軌跡の線幅w(実際値)が線幅の目標値wiよりも小さい場合にはステップS705へ、塗布軌跡の線幅w(実際値)が線幅の目標値wiよりも大きい場合にはステップS706へそれぞれ分岐する。
【0173】
ステップS705では、現在の線幅wがより大きくなるよう描画制御を行なう(線幅拡大制御)。また、ステップS706では、現在の線幅wがより小さくなるよう描画制御を行なう(線幅縮小制御)。
【0174】
これら線幅拡大制御(S705)、線幅縮小制御(S706)には種々の手法が考えられる。
【0175】
たとえば、ディスペンサーチップ180の塗布体181が上述のようなある程度柔軟性を有する材質である場合には、被塗布物にディスペンサーチップ180を押し付ける圧力(筆圧)により、塗布される線幅を変更できる。そこで、この場合には、線幅拡大制御(S705)では、ディスペンサーチップ180の筆圧を増大させ、線幅縮小制御(S706)では、ディスペンサーチップ180の筆圧を減少させる制御を行なうことにより、それぞれのステップの所期の線幅調節制御を実行することができる。ディスペンサーチップ180の筆圧は、たとえば、ディスペンサーチップ180を保持するサーボガン100と被塗布物の距離を調節することにより制御することができる。
【0176】
また、ディスペンサーチップ180の塗布体181先端の断面形状が矩形である、などの場合には、描画方向に対するディスペンサーチップ180先端の軸廻りの回動角度を調節することにより、塗布パターンの線の幅が一定の目標値に一致するよう(あるいは近づくよう)フィードバック制御する(一定線幅制御)ことができる。また、ディスペンサーチップ180の塗布体181の長さが一端から他端に向かうにしたがって変更されているような構造では、ディスペンサーチップ180の傾斜角度を調節することによっても、塗布パターンの線の幅が一定の目標値に一致するよう(あるいは近づくよう)フィードバック制御する(一定線幅制御)ことができる。ただし、これらの制御では、図4および図5の構造にしたがう限り、CCDカメラの撮影範囲が変動するから、ディスペンサーチップ180の軸廻りの回動角度や、傾斜角度を調節する場合は、これらの調節量に応じてCCDカメラの旋回位置を補正する制御を行う。
【0177】
なお、上記の筆圧や、ディスペンサーチップ180の軸廻りの回動角度や、傾斜角度などの制御量にはおのずと限界が存在する。たとえば、筆圧が過大であれば、ディスペンサーチップ180やサーボガン100、ロボットアーム200、あるいはこれらを結合する機構、そして塗装対象物などを破損する可能性があるし、上記回動角度や、傾斜角度がある範囲を超えると塗布が不能になる可能性もある。そこで、これらサーボガン100やロボットアーム200の動作に関する制御量がある限界値に達している場合には、それ以上のフィードバック制御を行わないよう制限し、あるいはさらにユーザに対して音や光の発生(当然ながら音源とスピーカー、表示器などを用いる)によって警告情報を発生するようにしてもよい。このようにして、機構の破損などを防止するとともに、ユーザに異常が発生していることを報知することができる。
【0178】
以上のように、図11の一定線幅制御を行うことにより、CCDカメラ800の撮影した画像情報に基づき、塗布パターンの線の幅が一定の目標値に(ほぼ)一致するよう制御することができる。
【0179】
一方、図12の一定濃度制御の全体の流れは、図11の制御とほぼ同等である。図12では、図11と同等のステップには同一のステップ番号を用いている。
【0180】
図12の一定濃度制御も、描画を実行している間、行なわれる。すなわち、図12のステップS701では、サーボガン100のディスペンサーチップ180を被塗布物に接触させ、塗料の塗布による描画を行っているか否かを判定し、描画中の場合のみ、ステップS803以降の処理を実行する。描画中ではない場合は、この一定濃度制御を呼び出した描画ルーチン(ステップS604)に復帰する(ステップS702)。
【0181】
ステップS701で描画中の場合、ステップS803で、CCDカメラ800の撮影した画像情報から現在の塗布軌跡の濃度d(実際値)を取得する。この濃度d(実際値)の取得は、画像処理部903(図1)により行わせる。
【0182】
続いてステップS804において、塗布軌跡の濃度d(実際値)が濃度の目標値diと等しい(あるいは一定の範囲内でほぼ等しい)か否かを判定する。ステップS804が肯定された場合には、それ以上、濃度制御を実行することなく、元の描画ルーチンに復帰する(ステップS807)。
【0183】
また、ステップS804で、塗布軌跡の濃度d(実際値)が濃度の目標値diよりも小さい場合にはステップS805へ、塗布軌跡の濃度d(実際値)が濃度の目標値diよりも大きい場合にはステップS806へそれぞれ分岐する。
【0184】
ステップS805では、現在の濃度dがより大きくなるよう描画制御を行なう(濃度増加制御)。また、ステップS806では、現在の濃度dがより小さくなるよう描画制御を行なう(濃度減少制御)。
【0185】
これら濃度増加制御(S805)、濃度減少制御(S806)には種々の手法が考えられるが、たとえば、上述のように圧力センサヘッド191を介してフィードバック制御されているサーボガン100のチャンバー103の圧力室103a内の塗料圧力の目標値を変更することにより、ディスペンサーチップ180に対する塗料の供給量を微小な範囲内で増加ないし減少させることにより行うことができる。
【0186】
もちろん、この塗料の供給量の調節は、上述の通り、ディスペンサーチップ180から余分の塗料が垂れ落ちない程度の範囲内で行う必要があるから、特に、濃度増加(ステップS805)のステップには、既に塗料圧力が塗料が垂れ落ちない範囲の限界に達している場合はそれ以上の塗料の供給量増加を行なわないような制限ルーチンを組み込んでおく必要がある。あるいはさらに、この制限ルーチンが起動される場合は、多くの場合、システムの所期の作動条件を満足しないようなエラーが発生している可能性が高いから、ユーザに対して音や光の発生によって警告情報を発生するようにしてもよい。
【0187】
以上のように、図12の一定濃度制御を行うことにより、CCDカメラ800の撮影した画像情報に基づき、塗布パターンの濃度が一定の目標値に(ほぼ)一致するよう(あるいは近づくよう)フィードバック制御することができる。
【0188】
以上、図11および図12により、一定線幅制御、および一定濃度制御を独立した制御手順として図示したが、もちろんこれらの制御を両方とも実行することもできる。その場合、たとえば、図12のステップS803〜S806で構成されるルーチンを図7のステップS707の直前に挿入することが考えられる。
【0189】
以上のようにして、本実施例では、ロボットアーム200により操作されるサーボガン100の塗布軌跡を追跡するように変位するCCDカメラ800で、サーボガン100の塗布軌跡を撮影する。そして、CCDカメラ800の撮影した画像情報に基づき、接触塗布状態に関する情報、すなわち前記塗布液の塗布パターン形成状態に関する情報、たとえば線幅や濃度に関する情報を検出し、ロボットアーム200およびサーボガン100の動作をフィードバック制御することにより、所期の塗布条件にしたがって、高精度かつ高品位な接触塗布動作を実行することができる。
【0190】
以上では、描画プログラムを実行する制御部900が、描画の方向転換を検出し、CCDカメラ800を描画に追従させる例を示した。しかしながら、CCDカメラ800の姿勢制御を行なう制御手段は、ロボットアーム200側に設けられていてもよい。この場合は、制御部900からロボットアーム200に送信される指令を解析し、ロボットアーム先端の移動方向の方向転換を検出して、CCDカメラ800の姿勢を制御する制御回路をロボットアーム200に塔載しておけばよい。
【0191】
なお、以上では、被塗布物(塗布対象物)に塗布する塗布液として塗料を一例とし、接触塗布により被塗布物(塗布対象物)に塗装を行う自動塗装システムに関する実施例を示した。しかしながら、上記構成は、塗布液が塗料以外の場合、たとえば任意の薬液などであっても同様に適用できるのはいうまでもない。その場合、上記の「塗料」を「塗布液」、「塗装対象物」を「被塗布物」、「塗装」を「塗布」、などと適宜読みかえれば上記の説明はそのまま塗料以外の塗布液を用いる場合にも通用する。
【図面の簡単な説明】
【0192】
【図1】本発明を採用した塗布装置の構成を概念的に示したブロック図である。
【図2】本発明を採用した塗布装置のシステム構成を示した説明図である。
【図3】本発明を採用した塗布装置のサーボガンの構成を示した断面図である。
【図4】本発明を採用した塗布装置のサーボガンおよびCCDカメラ廻りの構成を示した断面図である。
【図5】本発明を採用した塗布装置のサーボガンおよびCCDカメラ廻りの構成を示した正面図である。
【図6】本発明を採用した塗布装置における塗布液充填制御の流れを示したフローチャート図である。
【図7】本発明を採用した塗布装置における塗布制御の流れを示したフローチャート図である。
【図8】本発明を採用した塗布装置における自動塗布制御の流れを示したフローチャート図である。
【図9】本発明を採用した塗布装置における描画コマンドの構成を示した説明図である。
【図10】本発明を採用した塗布装置における描画制御の流れを示したフローチャート図である。
【図11】図10の描画制御における一定線幅制御の流れを示したフローチャート図である。
【図12】図10の描画制御における一定濃度制御の流れを示したフローチャート図である。
【符号の説明】
【0193】
100 サーボガン
101 ハウジング
102 ピストン
103 チャンバー
104 パッキン押エ
107、107 パッキン押エ
108、108 盲蓋
109、109 ニードルバルブ
110、110 シャフト
111 エアシリンダチューブ
112 エアシリンダピストンヘッド
113 エアシリンダヘッドカバー
114 サーボモータ
115 カップリング
117 ボールネジ
118 ボールガイド
119 穴付きボルト
120 パッキンセット
121 パッキンセット
123〜125 Oリング
126 シャフト
127 エアシリンダシャフト
128 スプリング
134オヨビ135 ファイバブラケット
136 センサドグ
138a、138b 光ファイバ
141 吐出側バルブユニット
142 充填側バルブユニット
151a、151b、152a、152b ポート
152、151 エアシリンダユニット
161 吐出バルブ用ソレノイドバルブ
162 充填バルブ用ソレノイドバルブ
180 ディスペンサーチップ
181 塗布体
191 圧力センサヘッド
192 エアオペレギュレータ
193 圧力センサユニット
200 ロボットアーム
300 ロボット操作盤
301 I/O入出力基板
302 アナログ出力基板
400 PLC
401 電源
402 PC(パーソナルコンピュータ)
403 I/O入力ポート
404 I/O出力ポート
405 アナログ入力ポート
406 位置決メユニット
407 サーボコントローラ
501 吸入ポート
502 ミストセパレータ
503、504 精密レギュレータ
600 撹拌機
700 密閉型タンク
701 塗料チューブ
800 CCDカメラ
801 照明
900 制御部
901 描画プログラム
903 画像処理部
1001 ツールブラケット
1002 ブラケット
1003 アーム
1006 シャフト
1007 ギアカバー
1008 サーボモータ
1009、1010 平歯車
1012、1013 ベアリングホルダーセット
1015 近接センサ
1016 金属カラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布物と接触して該被塗布物に塗布液を塗布する接触塗布手段を有する塗布装置と、
該塗布装置を操作して、前記被塗布物に前記接触塗布手段を接触させた状態で移動させ、前記塗布装置に接触塗布を行わせるロボットアームと、
前記ロボットアームに前記塗布装置とともに装着され、前記塗布装置が前記被塗布物上に形成した前記塗布液の塗布パターンを撮影する撮影手段と、
該撮影手段の撮影した画像データを解析し、前記塗布液の塗布パターン形成状態に関する情報を生成する画像処理手段と、
前記画像処理手段が生成する前記塗布液の塗布パターン形成状態に関する情報に基づき、前記塗布装置の塗布動作、または前記ロボットアームの動作をフィードバック制御する制御手段と、
を有することを特徴とする自動塗布システム。
【請求項2】
前記撮影手段の撮影光軸を前記塗布装置に対して異なる相対位置に移動させる駆動手段を有し、前記制御手段は前記塗布装置の塗布方向に応じて、前記被塗布物上の形成直後の前記塗布液の塗布パターンを撮影する追従位置へ前記駆動手段を介して前記撮影手段を移動させることを特徴とする請求項1に記載の自動塗布システム。
【請求項3】
前記画像処理手段が前記撮影手段の撮影した画像データから、前記塗布液の塗布パターンの線幅の実際値に関する情報を生成し、前記制御手段が該線幅の実際値に関する情報が所定の線幅の目標値に近づくよう前記塗布液の塗布パターンの線幅をフィードバック制御することを特徴とする請求項1または2に記載の自動塗布システム。
【請求項4】
前記画像処理手段が前記撮影手段の撮影した画像データから、前記塗布液の塗布パターンの濃度の実際値に関する情報を生成し、前記制御手段が該濃度の実際値に関する情報が所定の濃度の目標値に近づくよう前記塗布液の塗布パターンの濃度をフィードバック制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動塗布システム。
【請求項5】
前記制御手段による前記塗布装置の塗布動作、または前記ロボットアームの動作に関するフィードバック制御において、前記塗布装置、または前記ロボットアームに対する制御量が所定の限界に達している場合には、前記制御手段がそれ以上のフィードバック制御を行わないよう制限することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動塗布システム。
【請求項6】
前記塗布装置、または前記ロボットアームに対する制御量が所定の限界に達している場合には、前記制御手段がユーザに対して警告情報を発生することを特徴とする請求項5に記載の自動塗布システム。
【請求項7】
前記塗布装置の前記接触塗布手段に前記塗布液を供給する塗布液供給手段を有し、前記制御手段が前記塗布液供給手段から供給された前記塗布液が前記接触塗布手段から垂れ落ちない供給量で前記塗布液供給手段を制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動塗布システム。
【請求項8】
前記撮影手段が前記塗布装置の前記接触塗布手段のほぼ中心を通る直線を中心とする異なる任意の回動位置に旋回できるように支持され、前記制御手段は前記塗布装置の塗布方向に応じて、前記被塗布物上の形成直後の前記塗布液の塗布パターンを撮影するよう前記駆動手段を介して前記撮影手段を前記回動位置のいずれかに移動させることを特徴とする請求項2に記載の自動塗布システム。
【請求項9】
被塗布物と接触して該被塗布物に塗布液を塗布する接触塗布手段を有する塗布装置をロボットアームで操作して、前記被塗布物に前記接触塗布手段を接触させた状態で移動させ、前記塗布装置に接触塗布を行わせ、
前記ロボットアームに前記塗布装置とともに装着された撮影手段により前記塗布装置が前記被塗布物上に形成した前記塗布液の塗布パターンを撮影し、
該撮影手段の撮影した画像データを解析し、前記塗布液の塗布パターン形成状態に関する情報を生成する画像処理を行い、該塗布液の塗布パターン形成状態に関する情報に基づき、前記塗布装置の塗布動作、または前記ロボットアームの動作をフィードバック制御することを特徴とする自動塗布システムの制御方法。
【請求項10】
前記撮影手段の撮影光軸を前記塗布装置に対して異なる相対位置に移動させる駆動手段を用い、前記塗布装置の塗布方向に応じて、前記被塗布物上の形成直後の前記塗布液の塗布パターンを撮影する追従位置へ前記撮影手段を移動させることを特徴とする請求項9に記載の自動塗布システムの制御方法。
【請求項11】
前記画像処理において、前記撮影手段の撮影した画像データから、前記塗布液の塗布パターンの線幅の実際値に関する情報を生成し、該線幅の実際値に関する情報が所定の線幅の目標値に近づくよう前記塗布液の塗布パターンの線幅をフィードバック制御することを特徴とする請求項9または10に記載の自動塗布システムの制御方法。
【請求項12】
前記画像処理において、前記撮影手段の撮影した画像データから、前記塗布液の塗布パターンの濃度の実際値に関する情報を生成し、該濃度の実際値に関する情報が所定の濃度の目標値に近づくよう前記塗布液の塗布パターンの濃度をフィードバック制御することを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の自動塗布システムの制御方法。
【請求項13】
前記前記塗布装置の塗布動作、または前記ロボットアームの動作に関するフィードバック制御において、前記塗布装置、または前記ロボットアームに対する制御量が所定の限界に達している場合には、それ以上のフィードバック制御を行わないよう制限することを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の自動塗布システムの制御方法。
【請求項14】
前記塗布装置、または前記ロボットアームに対する制御量が所定の限界に達している場合には、ユーザに対して警告情報を発生することを特徴とする請求項13に記載の自動塗布システムの制御方法。
【請求項15】
前記塗布装置の前記接触塗布手段に前記塗布液を供給する塗布液供給手段を有し、前記塗布液供給手段から供給された前記塗布液が前記接触塗布手段から垂れ落ちない供給量で前記塗布液供給手段を制御することを特徴とする請求項9〜14のいずれか1項に記載の自動塗布システムの制御方法。
【請求項16】
前記撮影手段が前記塗布装置の前記接触塗布手段のほぼ中心を通る直線を中心とする異なる任意の回動位置に旋回できるように支持され、前記塗布装置の塗布方向に応じて、前記被塗布物上の形成直後の前記塗布液の塗布パターンを撮影するよう前記駆動手段を介して前記撮影手段を前記回動位置のいずれかに移動させることを特徴とする請求項10に記載の自動塗布システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−172452(P2009−172452A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10539(P2008−10539)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(597156236)日邦興産株式会社 (4)
【Fターム(参考)】