説明

自動変速機の制御装置

【課題】手動変速モードに切り換えた直後の変速比を運転者の意図に的確に適合させることができる自動変速機の制御装置を提供する。
【解決手段】TCU21は、セレクトレバー43の操作による自動変速モードから手動変速モードへの切り換え直後の変速比εを低速側に変更するダウンシフトを行う制御において、手動変速モードから自動変速モードに切り換えられた後に再度手動変速モードに切り換えられたときの経過時間Tが設定時間T1未満である場合には、手動変速モードへの切り換え直後の変速比εの変更を禁止する。これにより、手動変速モードと自動変速モードとの切り換えが短時間のうちに繰り返し行われた場合にも変速比εの低速側への過剰な変更を防止することができ、手動変速モードに切り換えた直後の変速比εを運転者の意図に的確に適合させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブレンジ等の自動変速モードの他に、手動操作で変速比を切り換える手動変速モードを有する自動変速機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用の自動変速機においては、予め設定された変速特性に従った変速制御によって変速比を自動的に切り換えるDレンジ等の自動変速モードの他に、運転者の手動操作に連動させて変速比を切り換える手動変速モードを備えたものが実用化されている。
【0003】
この種の自動変速機の制御において、自動変速モードから手動変速モードに切り換えた直後に運転者の要求に適合した変速状態を速やかに実現するため、例えば、特許文献1には、自動変速モードから手動変速モードへの切り換え操作時に、エンジン回転数が所定値より低い場合には、変速段を自動変速モードでの切り換え操作直前の変速段より1段シフトダウンし、エンジン回転数が所定値より高い場合には、1段シフトアップする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−103468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術のように、単に、自動変速モードから手動変速モードへの切り換え操作に連動してシフトアップ或いはシフトダウンを行う場合、運転者の意思とは合致しない変速が行われる虞がある。例えば、誤操作等によって手動変速モードから自動変速モードへと切り換えられた直後に運転者が慌てて手動変速モードに戻した場合や、マニュアル車両から乗り換えた運転者等が無意識下にシフトレバーを揺動させた場合等に、運転者の意図しないシフトアップ或いはシフトダウンが繰り返し行われる虞がある。そして、特に、シフトダウンが繰り返し行われた場合、車両は運転者の意思に反して急減速してしまう等の虞がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、手動変速モードに切り換えた直後の変速比を運転者の意図に的確に適合させることができる自動変速機の制御装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、予め設定された変速特性に従って変速比を自動的に切り換える自動変速モードと、運転者の手動操作に応じて変速比を切り換える手動変速モードとを有し、前記自動変速モードと前記手動変速モードとを運転者による選択操作部材の操作によって選択的に切換可能な自動変速機の制御装置において、前記選択操作部材の操作によって前記手動変速モードに切り換えられたときの変速比を直前の変速比とは異なる変速比に変更する変速比変更手段と、前記手動変速モードから当該手動変速モード以外の変速モードに切り換えられた後に再び前記手動変速モードに切り換えられるまでの経過時間が設定時間未満であるとき、前記変速比の変更を制限する変速比制限手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の自動変速機の制御装置によれば、手動変速モードに切り換えた直後の変速比を運転者の意図に的確に適合させることができる自動変速機の制御装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】手動変速モード付き無段変速装置の概略構成図
【図2】セレクト操作部の斜視図
【図3】無段変速機の変速特性図
【図4】手動変速モード制御ルーチンを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、図1は手動変速モード付き無段変速装置の概略構成図、図2はセレクト操作部の斜視図、図3は無段変速機の変速特性図、図4は手動変速モード制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0011】
図1において符号1はエンジンを示し、このエンジン1の出力軸は、電磁クラッチ或いはトルクコンバータ等の発進クラッチ2を介して、無段変速機3に連設されている。無段変速機3は、発進クラッチ2に連設する前後進切換装置4を有し、この前後進切換装置4から延出するプーリ入力軸5bにはプライマリプーリ5aが軸支されている。また無段変速機3は、プーリ入力軸5bに平行なプーリ出力軸5cを有し、このプーリ出力軸5cにはセカンダリプーリ5dが軸支されている。そして、これらプライマリプーリ5aとセカンダリプーリ5dとの間には、駆動ベルト5eが巻装されている。さらに、プーリ出力軸5cには、終減速装置6の減速歯車群6aを介してディファレンシャル装置5bに連設され、このディファレンシャル装置6bに前輪或いは後輪の駆動輪7aを軸着する駆動軸7が連設されている。
【0012】
また、この無段変速機3のプライマリプーリ5aにはプライマリ油圧室5fが併設され、このプライマリ油圧室5fに供給されるプライマリ油圧により、プライマリプーリ5aのプーリ溝幅が調整される。一方、セカンダリプーリ5dにはセカンダリ油圧室5gが併設され、このセカンダリ油圧室5gに供給されるセカンダリ油圧により、トルク伝達に必要な張力が駆動ベルト5eに付与される。これらプライマリ圧及びセカンダリ圧は、後述するトランスミッション制御装置(TCU)21によりエンジン運転状態等に基づいて設定され、これらの油圧を通じて両プーリ5a,5dの溝幅が互いに反比例状態に制御されることにより、無段変速機3は所望の変速比を実現する。
【0013】
TCU21は、CPU、ROM、RAM等を備えた周知のマイクロコンピュータを主体に構成され、ROMに格納された制御プログラムに従って無段変速機3の変速比を設定する。
【0014】
このTCU21の入力側には、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ31、スロットル弁(図示せず)の開度(スロットル開度)θを検出するスロットル開度センサ32、無段変速機3のプライマリプーリ5aの回転数(プライマリ回転数)Npを検出するプライマリプーリ回転数センサ33、セカンダリプーリ5dの回転数(セカンダリ回転数)Nsを検出するセカンダリプーリ回転数センサ34等が接続されている。さらに、TCU21の入力側には、車室内のセンタコンソール上のセレクト操作部41に設けられたインヒビタスイッチ35、アップシフトスイッチ36a、ダウンシフトスイッチ36b、及び、マニュアルモードスイッチ37等の各種スイッチ類が接続されている。
【0015】
一方、TCU21の出力側には、変速制御用アクチュエータ15を構成するライン圧制御用ソレノイド弁15aとプライマリ圧制御用ソレノイド弁15bとが接続され、TCU21は、これら各制御用ソレノイド弁15a,15bを通じて無段変速機3の油圧を制御する。
【0016】
ここで、図2に示すように、セレクト操作部41のレンジエスカッション42には、セレクトゲート44が開口され、このセレクトゲート44からは選択操作部材としてのセレクトレバー43が突出されている。セレクトゲート44は、例えば、互いに平行に形成されたメインゲート44a及びサブゲート44bと、それらを連通するスルーゲート44cとを有する。
【0017】
メインゲート44aには、例えば、パーキング(P)レンジ、リバース(R)レンジ、ニュートラル(N)レンジ、及び、ドライブ(D)レンジを選択するためのシフトポジションが順に設定されている。このメインゲート44aには上述のインヒビタスイッチ35が配設され、運転者がセレクトレバー43をメインゲート44a内で移動させると、セットされたレンジに応じたレンジ信号がTCU21に出力される。
【0018】
サブゲート44bの中央部には、メインゲート44aの後端に設定されたDレンジが、スルーゲート44cを介して連通されている。このサブゲート44bの中央部には、メインゲート44a側から導入されたセレクトレバー43を弾性支持する中立位置が設定されている。また、中立位置を中心とするサブゲート44b上の前後端部は、アップシフト(+)位置及びダウンシフト(−)位置として設定され、これら各位置には上述のアップシフトスイッチ36a及びダウンシフトスイッチ36bが配設されている。これら両シフトスイッチ36a,36bは常開スイッチで構成され、運転者が外部操作によりセレクトレバー43を介して押圧したときにのみON信号が出力される。
【0019】
スルーゲート44cには、上述したマニュアルモードスイッチ37が配設されている。このマニュアルモードスイッチ37は、例えば、シーソスイッチ或いはスライドスイッチ等で構成され、セレクトレバー43がメインゲート44a側からサブゲート44b側へ移動するとON信号が継続的に出力され、サブゲート44b側からメインゲート44a側へ移動するとOFF信号が継続的に出力される。
【0020】
次に、無段変速機3の油圧回路について説明する。図1の符号11はエンジン駆動式、或いは電動式のオイルポンプであり、このオイルポンプ11の吐出口がライン圧油路12を介してライン圧制御弁13に連通されている。さらに、このライン圧制御弁13がライン圧油路12を介して無段変速機3のセカンダリ油圧室5g、プライマリ圧制御弁14、及び変速制御用アクチュエータ15を構成するライン圧制御用ソレノイド弁15aとプライマリ圧制御用ソレノイド弁15bとにオリフィス16を介して連通されている。
【0021】
ライン圧制御用ソレノイド弁15a及びプライマリ圧制御用ソレノイド弁15bは、TCU21から出力されるデューティ比等のプライマリプーリ駆動用信号にて制御動作され、ライン圧制御用ソレノイド弁15aから油路17を経てライン圧制御弁13にライン動作圧を供給し、また、プライマリ圧制御用ソレノイド弁15bからプライマリ圧制御弁14へ油路18を経てプライマリ圧を供給する。
【0022】
ライン圧制御弁13は、ライン動作圧により、変速比ε及びエンジントルクTに基づくライン圧Psの制御を行う。また、プライマリ圧制御弁14は、元圧であるライン圧Psとプライマリ圧との圧力の釣り合いにより、プライマリ圧制御弁14上流のライン圧油路12と無段変速機3のプライマリ油圧室5fに連通する油路19とを接続する給油位置と、油路12,19を遮断すると共に該油路19をドレーンする排油位置と、を切換動作することで、プライマリ油圧室5fに供給する油圧を制御して変速制御を行う。
【0023】
TCU21は、マニュアルモードスイッチ37からOFF信号が出力されているときは、インヒビタスイッチ35で検出されるシフトポジションに応じた無段変速機3の制御を行い、特に、走行レンジであるDレンジの選択時には自動変速モードを実行する。自動変速モードが実行されると、TCU21は、例えば、車両の走行状態に応じてプライマリ回転数Npと車速V(セカンダリ回転数Ns)との関係が、図3中に2点鎖線で示す変速領域内において、スロットル開度センサ32で検出したスロットル開度θで決まる最適値となるよう変速比ε(ε=Np/Ns)を設定する。
【0024】
一方、TCU21は、マニュアルモードスイッチ37からON信号が出力されているときは、手動変速モードを実行する。この手動変速モードが実行されると、TCU21は、基本的には、プライマリ回転数Npと車速Vとの関係が、例えば、図3中に実線で示す1速〜7速の変速段線で規定される関係となるよう、変速比(固定変速比)εの設定を行う。そして、TCU21は、アップシフトスイッチ36aからのON信号が検出されたとき、現在の変速比よりも1段高速側の変速段の変速比を新たな変速比εとして設定し、ダウンシフトスイッチ36bからのON信号が検出されたとき、現在の変速比よりも1段低速側の変速段の変速比を新たな変速比εとして設定する。
【0025】
ここで、TCU21は、セレクトレバー43の操作によって手動変速モードに切り換えられたときの変速比εの初期値を、切り換え直前の変速比εとは異なる変速比に変更する。具体的には、TCU21は、例えば、手動変速モードに切り換えられた直後の変速比εを、切り換え直前の変速比よりも低速側の変速段で定められる変速比に変更する。より具体的には、サブゲート44bの中立位置がメインゲートのDレンジに連通されている本実施形態においては、手動変速モードに切り換えられたときの変速比が、自動変速モードにて設定されていた直前の変速比よりも低速側の変速段で定められる変速比に変更される。なお、変速比の変更は、低速側の変速比への変更のみに限定されるものではなく、例えば、エンジン回転数が高い場合等には、高速側の変速比への変更を行うよう設定することも可能である。
【0026】
但し、TCU21は、セレクトレバー43の操作によって手動変速モードから当該手動変速モード以外の変速モードに切り換えられた後に再び手動変速モードに切り換えられるまでの経過時間Tが設定時間T1未満であるとき、切り換え直後の変速比ε(初期値)の変更を制限する。具体的には、TCU21は、例えば、経過時間Tが設定時間T1未満であるとき、切り換え直前の変速比からの変更を禁止する。
【0027】
加えて、TCU21は、経過時間Tが設定時間T1未満の場合であっても、手動変速モードに切り換えられたときの自車の走行状態が予め設定された走行状態に達していないとき(例えば、切り換え時の車速Vが設定車速V1未満であるとき)、切り換え直後の変速比εの変更を制限する。
【0028】
このように、本実施形態において、TCU21は、変速比変更手段、及び、変速比制限手段としての各機能を実現する。
【0029】
次に、TCU21で実行される手動変速モード制御について、図4に示す手動変速モード制御ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは設定時間毎に繰り返し実行されるもので、ルーチンがスタートすると、TCU21は、先ず、ステップS101において、マニュアルモードスイッチ37からの信号に基づき、現在、手動変速モード(Mモード)であることが検出されているか否かを調べる。
【0030】
そして、ステップS101において、マニュアルモードスイッチ37からON信号が出力されており、現在、手動変速モードであることが検出されていると判定した場合、TCU21は、ステップS102に進み、今回の処理が手動変速モードに再度切り換えられてから最初の処理であるか否かを調べる。すなわち、ステップS102において、TCU21は、今回の処理が、以前に手動変速モードから自動変速モード等への切り換えを経験した上で、再び手動変速モードに切り換えられた直後の処理であるか否かを調べる。本実施形態において、この判定は、例えば、フラグMに基づいて行われ、フラグMが「1」にセットされている場合には、今回の処理が手動変速モードに再度切り換えられてから最初の処理であると判定される。一方、フラグMが「0」にリセットされている場合には、今回の処理が、手動変速モードに初めて切り換えられたときの処理、或いは、手動変速モードに再度切り換えられてから2回目以降の処理であると判定される。
【0031】
なお、手動変速モードに初めて切り換えられた場合と再度切り換えられた場合とを的確に区別するため、このフラグMは、例えば、エンジン始動時或いはPレンジ検出時等に「0」にリセットされることが望ましい。
【0032】
そして、ステップS102において、フラグMが「1」であり、今回の処理が手動変速モードに切り換えられてから最初の処理であると判定してステップS103に進むと、TCU21は、車速Vが設定車速V1以上であるか否かを調べる。ここで、設定車速V1には、例えば、通常の走行時において1速に割り当てられる車速が設定され、本実施形態においては、15〜20Km/hの範囲内の車速が好適に設定される。
【0033】
そして、ステップS103において、車速Vが設定車速V1未満であると判定した場合、TCU21は、ステップS105にジャンプする。
【0034】
一方、ステップS103において、車速Vが設定車速V1以上であると判定した場合、TCU21は、ステップS104に進み、前回手動変速モードから自動変速モードに切り換えられてからの経過時間Tが設定時間T1未満であるか否かを調べる。ここで、設定時間T1には、例えば、0.5〜数秒の範囲内の時間を好適に設定することが可能であり、本実施形態においては1秒が設定されている。
【0035】
そして、ステップS104において、経過時間Tが設定時間T1よりも長いと判定した場合、TCU21は、ステップS105に進み、現在の変速比εを低速側で直近の変速段によって規定される変速比に変更するダウンシフト制御を行った後、ステップS108に進む。例えば、直前の自動変速モードでの変速比εが2速で規定される変速比と3速で規定される変速比との間の変速比である場合、TCU21は、ダウンシフト制御により、手動変速モードに切り換えられた直後の変速比ε(初期値)として2速で規定される変速比を設定する。
【0036】
一方、ステップS104において、経過時間Tが設定時間T1未満であると判定した場合、TCU21は、ステップS106に進み、現在の変速比εをそのまま初期値として維持したまま、ステップS108に進む。
【0037】
また、ステップS102において、フラグMが「0」であり、今回の処理が手動変速モードに切り換えられてから2回目以降の処理等であると判定してステップS107に進むと、TCU21は、通常の手動変速モード制御を行った後、ステップS108に進む。すなわち、TCU21は、例えば、1速〜7速の変速段で規定される固定変速比に基づいて変速比εの設定を行い、アップシフトスイッチ36aからのON信号が検出された場合には現変速比εを1段高速側の変速段の固定変速比に変更(アップシフト)し、ダウンシフトスイッチ36bからのON信号が検出された場合には現変速比εを1段低速側の変速段の固定変速比に変更(ダウンシフト)する。
【0038】
そして、ステップS105、ステップS106、或いは、ステップS107からステップS108に進むと、TCU21は、フラグMを「0」にリセットした後、ルーチンを抜ける。
【0039】
また、ステップS101において、マニュアルモードスイッチ37からOFF信号が出力されており、現在、手動変速モードであることが検出されていないと判定した場合、TCU21は、ステップS109に進み、前回(前ループ)のモードが手動変速モードであったか否かを調べる。
【0040】
そして、ステップS109において、前ループのモードが手動変速モードであったと判定した場合、TCU21は、ステップS110に進み、フラグMを「1」にセットし、続くステップS111において、経過時間Tを示すタイマを「0」にクリアした後、ルーチンを抜ける。一方、ステップS109において、前ループのモードが手動変速モード以外であったと判定した場合、TCU21は、ステップS112に進み、経過時間Tを示すタイマをインクリメントした後、ルーチンを抜ける。これにより、手動変速モードから切り換えられた直後に限り、フラグMが「1」にセットされ、当該タイミングからの経過時間Tが計時される。
【0041】
このような実施形態によれば、セレクトレバー43の操作による自動変速モードから手動変速モードへの切り換え直後の変速比εを低速側に変更するダウンシフト制御において、手動変速モードから自動変速モードに切り換えられた後に再度手動変速モードに切り換えられたときの経過時間Tが設定時間T1未満である場合には、手動変速モードへの切り換え直後の変速比εの変更を禁止することにより、手動変速モードと自動変速モードとの切り換えが短時間のうちに繰り返し行われた場合にも変速比εの低速側への過剰な変更を防止することができ、手動変速モードに切り換えた直後の変速比εを運転者の意図に的確に適合させることができる。
【0042】
ここで、上述の実施形態のように無段変速機3を採用した構成においては、例えば、手動変速モードに切り換えられたときの経過時間Tが設定時間T1未満である場合の変速比εの変更量を、経過時間Tが設定時間T1よりも長いときの変速比εの変更量よりも相対的に小さくするよう制御することも可能である。このように構成すれば、運転者による手動変速モードへの切り換え操作が繰り返された場合にも、変速比εの所定の変更を許容しつつ、変速比εの過剰な変更を抑制することができる。
【0043】
なお、上述の実施形態においては、制御対象として無段変速機を用いた一例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、有段変速機等にも適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1 … エンジン
2 … 発進クラッチ
3 … 無段変速機
4 … 前後進切換装置
5a … プライマリプーリ
5b … プーリ入力軸
5b … ディファレンシャル装置
5c … プーリ出力軸
5d … セカンダリプーリ
5e … 駆動ベルト
5f … プライマリ油圧室
5g … セカンダリ油圧室
6 … 終減速装置
6a … 減速歯車群
6b … ディファレンシャル装置
7 … 駆動軸
7a … 駆動輪
11 … オイルポンプ
12 … ライン圧油路
13 … ライン圧制御弁
14 … プライマリ圧制御弁
15 … 変速制御用アクチュエータ
15a … ライン圧制御用ソレノイド弁
15b … プライマリ圧制御用ソレノイド弁
16 … オリフィス
17〜19 … 油路
21 … トランスミッション制御装置(変速比変更手段、変速比制限手段)
31 … エンジン回転数センサ
32 … スロットル開度センサ
33 … プライマリプーリ回転数センサ
34 … セカンダリプーリ回転数センサ
35 … インヒビタスイッチ
36a … アップシフトスイッチ
36b … ダウンシフトスイッチ
37 … マニュアルモードスイッチ
41 … セレクト操作部
42 … レンジエスカッション
43 … セレクトレバー
44 … セレクトゲート
44a … メインゲート
44b … サブゲート
44c … スルーゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された変速特性に従って変速比を自動的に切り換える自動変速モードと、運転者の手動操作に応じて変速比を切り換える手動変速モードとを有し、前記自動変速モードと前記手動変速モードとを運転者による選択操作部材の操作によって選択的に切換可能な自動変速機の制御装置において、
前記選択操作部材の操作によって前記手動変速モードに切り換えられたときの変速比を直前の変速比とは異なる変速比に変更する変速比変更手段と、
前記手動変速モードから当該手動変速モード以外の変速モードに切り換えられた後に再び前記手動変速モードに切り換えられるまでの経過時間が設定時間未満であるとき、前記変速比の変更を制限する変速比制限手段と、を備えたことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項2】
前記変速比変更手段は、前記選択操作部材の操作によって前記手動変速モードに切り換えられたときの変速比を、予め設定された変速段毎の変速比の何れかに変更するものであり、
前記変速比制限手段は、前記経過時間が設定時間未満であるとき、前記変速比の変更を禁止することを特徴とする請求項1記載の自動変速機の制御装置。
【請求項3】
前記変速比制限手段は、前記経過時間が設定時間未満であるときの変速比の変更量を、前記経過時間が設定時間以上であるときの変速比の変更量よりも相対的に小さくすることを特徴とする請求項1記載の自動変速機の制御装置。
【請求項4】
前記変速比制限手段は、前記経過時間が設定時間以上であっても、自車が予め設定された走行状態に達していないとき、前記変速比の変更を制限することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の自動変速機の制御装置。
【請求項5】
前記選択操作部材によって選択される前記手動変速モードの選択位置は、前記自動変速モードの選択位置に隣接して設定されるものであって、当該自動変速モードの選択位置から直接的に切換可能な中立位置と、当該中立位置から選択可能な高速側変速比選択位置及び低速側変速比選択位置とを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の自動変速機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−58540(P2011−58540A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207340(P2009−207340)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】