説明

自動変速機の変速制御装置

【課題】燃費の悪化を抑制しつつ排ガスの状態を改善する自動変速機の変速制御装置を提供する。
【解決手段】ターボ過給機20を有するエンジン10の出力回転を変速する自動変速機200の変速制御装置250を、エンジンの吸気状態を検出する吸気状態検出手段33と、吸気状態検出手段の検出結果に基づいて、所定の目標吸気状態が成立しているか判定する吸気状態判定手段100と、運転状態に応じて変速比を設定する第1の変速パターンと、第1の変速パターンに対してエンジン回転数が高くなるように変速比を設定する第2の変速パターンとを有し、目標吸気状態が成立している場合には第1の変速パターンを選択し、成立していない場合には第2の変速パターンを選択する変速パターン選択手段250と、変速パターン選択手段によって選択された変速パターンに基づいて自動変速機の変速機構部を制御する変速制御手段とを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機付きエンジンの出力回転を変速する自動変速機の変速制御装置に関し、特に燃費の悪化を抑制しつつ排ガスの状態を改善するものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば乗用車等の自動車に搭載されるディーゼルエンジンは、ターボチャージャ等による過給を行って吸入空気量を増加させ、通常運転時においては燃料リーンとすることによって、燃焼室内で局所的に燃料リッチとなってスート等の粒子状物質(PM)が発生することを防止している。
しかし、従来のディーゼルエンジンでは、低回転時等のように過給圧が低く、吸入空気量が少ない状態においては、燃料噴射量が増加する高負荷時に酸素不足となってPMの排出量が増大する場合があった。
これに対して、変速機の減速比を大きくしてエンジンの高回転域の使用頻度を増加させれば、エンジンの吸入空気量を確保することが容易となり、排ガス対策の観点からは有利となるが、このように高回転域を多用すると、フリクションロスの増加等によって燃費が悪化してしまう。
【0003】
ディーゼルエンジンの排ガス改善を考慮した変速制御に関する従来技術として、例えば特許文献1には、例えば高地走行等の黒煙が発生しやすい運転状態を検出し、自動変速機の変速段を低めに制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−183675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば低地の標準大気状態のように、黒煙が比較的発生しにくいと考えられる状況であっても、アイドリングからの発進、加速時のような過渡運転状態においては、目標とする過給圧が得られるまでに時間応答遅れがあり、排ガス及び燃費の両面において適切な運転状態が得られない場合があった。
本発明の課題は、燃費の悪化を抑制しつつ排ガスの状態を改善する自動変速機の変速制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1の発明は、ターボ過給機を有するエンジンの出力回転を変速する自動変速機の変速制御装置であって、前記エンジンの吸気状態を検出する吸気状態検出手段と、前記吸気状態検出手段の検出結果に基づいて、所定の目標吸気状態が成立しているか判定する吸気状態判定手段と、運転状態に応じて変速比を設定する第1の変速パターンと、前記第1の変速パターンに対してエンジン回転数が高くなるように変速比を設定する第2の変速パターンとを有し、前記目標吸気状態が成立している場合には前記第1の変速パターンを選択し、成立していない場合には前記第2の変速パターンを選択する変速パターン選択手段と、前記変速パターン選択手段によって選択された変速パターンに基づいて前記自動変速機の変速機構部を制御する変速制御手段とを備えることを特徴とする自動変速機の変速制御装置である。
【0007】
請求項2の発明は、前記吸気状態検出手段は、前記エンジンの吸入空気量、前記エンジンの吸気圧力、前記エンジンの空燃比の少なくとも一つを検出し、前記吸気状態判定手段は、前記エンジンの目標トルク及び運転領域に基づいて前記目標吸気状態を設定することを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の変速制御装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)吸入空気量が不足して目標吸気状態が成立していない場合に、自動変速機の変速パターンを第1の変速パターンから第2の変速パターンへ変更してエンジンの回転数を高め、ターボ過給機の過給圧を向上させてエンジンの吸入空気量を増加させることができる。これによって、燃焼状態を燃料リーン化し、PMの発生を低減させて排ガスの状態を改善することができる。
また、目標吸気状態が成立し、排ガスの状態に問題がない場合には、第1の変速パターンを用いることによってエンジンの回転数を下げ、燃費の悪化を防止することができる。
(2)吸気状態検出手段はエンジンの吸入空気量、吸気圧力、空燃比の少なくとも一つを検出し、吸気状態判定手段は、エンジンの目標トルク及び運転領域に基づいて目標吸気状態を設定することによって、上述した目標吸気状態の判定を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を適用した自動変速機の変速制御装置の実施例を備えた車両におけるエンジン部のシステム構成を示す模式図である。
【図2】実施例の車両におけるトランスミッション部のシステム構成を示す模式図である。
【図3】実施例の自動変速機の変速制御装置における変速パターン選択時の動作を示すフローチャートである。
【図4】実施例の自動変速機の変速制御装置におけるCVT変速線図の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、燃費の悪化を抑制しつつ排ガスの状態を改善する自動変速機の変速制御装置を提供する課題を、ドライバ要求トルク及び運転領域に基づいて設定される目標吸気量に対してエンジンの実際の吸入空気量が少ない場合に、減速比を大きくする過給優先CVT制御を実行することによって解決した。
【実施例】
【0011】
以下、本発明を適用した自動変速機の変速制御装置の実施例について説明する。
図1は、実施例の変速制御装置を備えた車両におけるエンジン部のシステム構成を示す模式図である。
エンジン10は、ターボチャージャ20、インテークシステム30、エキゾーストシステム40、燃料供給装置50、EGR装置60、酸化触媒(DOC)70、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)80、エンジン制御ユニット(ECU)100等を備えて構成されている。
【0012】
エンジン10は、例えば、乗用車等の自動車の走行用動力源として用いられる4ストロークのディーゼルエンジンである。
エンジン10は、クランクシャフト11、ピストン12、シリンダブロック13、ヘッド14、燃焼室15、グロープラグ16、グローコントローラ17等を備えて構成されている。
クランクシャフト11は、エンジン10の出力軸である。
ピストン12は、シリンダ内を往復運動し、コンロッドを介して燃焼圧力をクランクシャフト11に伝達する部材である。
シリンダブロック13は、ピストン12が収容されるシリンダ部及びクランクシャフト11が回転可能に支持されるクランクケース部を一体に形成したものである。
シリンダブロック13は、クランク角センサ13a及び水温センサ13bを備えている。
クランク角センサ13aは、クランクシャフト11の角度位置を検出するものである。
水温センサ13bは、エンジン10内のウォータージャケット内を循環する冷却水温を検出するものである。
ヘッド14は、シリンダブロック13のピストン12の冠側の端部に設けられ、吸気ポート、排気ポート及びこれらに設けられた吸気バルブ及び排気バルブを開閉する動弁駆動機構等を備えている。
燃焼室15は、ピストン12の冠面とヘッド14のこれに対向する部分との間に形成されている。
グロープラグ16は、先端部が燃焼室15内に露出した状態でヘッド14に設けられた予備加熱装置である。
グローコントローラ17は、ECU100の制御に応じてグロープラグ16への通電量を制御するものである。
【0013】
ターボチャージャ20は、エンジン10の排ガス(既燃ガス)のエネルギを用いて、エンジン10が吸入する燃焼用空気(新気)を圧縮するものである。
ターボチャージャ20は、コンプレッサ21、タービン22、アクチュエータ23、負圧制御弁24等を備えている。
コンプレッサ21は、燃焼用空気を圧縮する遠心型圧縮機である。
タービン22は、コンプレッサ21と同軸に設けられ、エンジン10の排ガスによって駆動されるとともに、コンプレッサ21を駆動するものである。タービン22は、タービンホイールの周囲のノズルに設けられる可動式のべーンによってジオメトリを連続的に変更可能な可変ジオメトリ式のものである。
アクチュエータ23は、タービン22の可動ベーンを駆動する負圧式のアクチュエータである。
負圧制御弁24は、図示しない負圧源からの負圧を、ECU100の制御に従ってアクチュエータ23に導入する電磁弁である。
ターボチャージャ20は、ECU100が設定する目標過給圧に対して、実際の過給圧が低い場合には、可動式のベーンを閉じてノズルを絞ることによってタービン22の回転数を高め、過給圧を高める制御が行われる。しかし、このような制御を行った場合であっても、例えばエンジン10の回転数が低い場合には、加速開始から過給圧が上昇するまでの時間応答遅れ(ターボラグ)が大きくなる。このようなターボラグが大きいと、加速性能のほか、排ガス処理性能にも悪影響が出るため、本実施例においては、後述するトランスミッション200との協調制御によって過給圧を早期に高めるようにしている。
【0014】
インテークシステム30は、エンジン10に燃焼用空気を導入するものである。
インテークシステム30は、インテークダクト31、エアクリーナ32、エアフローメータ33、インタークーラ34、スロットルバルブ35、アクチュエータ36、インテークチャンバ37、吸気圧センサ38、インテークマニホールド39等を備えて構成されている。
【0015】
インテークダクト31は、大気から燃焼用空気を導入し、ターボチャージャ20のコンプレッサ21を経由してエンジン10に供給する空気流路である。
エアクリーナ32は、空気を濾過して埃等を除去するフィルタエレメントを備えている。エアクリーナ32を通過した空気はターボチャージャ20のコンプレッサ21に導入され、圧縮される。
エアフローメータ33は、エアクリーナ32の出口部に設けられ、空気流量を検出するセンサを備えている。また、エアフローメータ33には、吸気温度を検出する吸気温度センサが内蔵されている。
なお、エアフローメータ33は、本発明にいう吸気状態検出手段として機能する。
【0016】
インタークーラ34は、ターボチャージャ20のコンプレッサ21を出た空気を、走行風との熱交換によって冷却する熱交換器である。
スロットルバルブ35は、インタークーラ34の下流側に設けられ、エンジン10の吸入空気量を調節するものである。
アクチュエータ36は、ECU100からの制御信号に応じてスロットルバルブ35を開閉駆動するものである。
インテークチャンバ37は、スロットルバルブ35を通過した空気が導入される空気室であって、インテークマニホールド39を介してエンジン10の吸気ポートに接続されている。
吸気圧センサ38は、インテークチャンバ37に設けられ、エンジン10の吸気圧力と実質的に等しいインテークチャンバ37内の圧力を検出するものである。
インテークマニホールド39は、インテークチャンバ37からエンジン10の各気筒の吸気ポートに空気を導入する分岐管路である。
【0017】
エキゾーストシステム40は、エキゾーストマニホールド41、エキゾーストパイプ42等を備えて構成されている。
エキゾーストマニホールド41は、エンジン10の各気筒の排気ポートから排出される排ガスを集合させてターボチャージャ20のタービン22に導入する管路である。
エキゾーストパイプ42は、タービン22から出た排気を車外に排出する管路である。エキゾーストパイプ42には、DOC70、DPF80等の排ガス後処理装置が設けられている。
【0018】
燃料供給装置50は、エンジン10の燃焼室15内に燃料を供給するものである。燃料供給装置50は、サプライポンプ51、吸入調量電磁弁52、燃料温度センサ53、コモンレール54、燃圧センサ55、インジェクタ56等を備えたコモンレール式の高圧燃料噴射装置である。
【0019】
サプライポンプ51は、例えばインナカム式の圧送系を備え、燃料である軽油を加圧してコモンレール54に供給するものである。
吸入調量電磁弁52は、サプライポンプ51の燃料の吸入量を調整するものであって、ECU100からの制御信号に応じて駆動される。
燃料温度センサ53は、サプライポンプ51における燃料の温度を検出するものである。
【0020】
コモンレール54は、サプライポンプ51が吐出した高圧の燃料を貯留する蓄圧器である。
燃圧センサ55は、コモンレール54内の燃料の圧力(燃圧)を検出するものである。上述した吸入調量電磁弁52は、燃圧センサ55の出力を用いたフィードバック制御により、燃圧が例えばエンジン回転数及び負荷に応じて設定される所定の目標値となるようにその開度を調節される。
インジェクタ56は、コモンレール54から供給される燃料を各気筒の燃焼室15内に噴射するものである。インジェクタ56は、例えばピエゾ素子やソレノイド等のアクチュエータによって開閉される弁体を有し、ECU100からの噴射パルス信号に応じて開弁される。インジェクタ56の噴射タイミング及び噴射量はECU100によって制御されている。
【0021】
EGR装置60は、燃焼温度を抑制してNOxの排出量を低減することを目的とし、エキゾーストマニホールド41から抽出したエンジン10の排ガスの一部を、インテークダクト31内に還流させるものである。
EGR装置60は、EGR通路61、EGR制御弁62、EGRクーラ63等を備えて構成されている。
EGR通路61は、エキゾーストマニホールド41からインテークダクト31に排ガスを導入する管路である。
EGR制御弁62は、ECU100の制御に応じてEGR通路61の排ガス流量(EGR量)を調節するものである。
EGRクーラ63は、EGR通路61を流れる排ガスを走行風との熱交換によって冷却するものである。
【0022】
DOC70は、エキゾーストパイプ42に設けられ、排ガス中の主として炭化水素(HC)を酸化処理するものである。DOC70は、例えばコーディエライトハニカム構造体等のセラミック製担体の表面に、白金やパラジウム等の貴金属やアルミナ等の金属酸化物を担持させて形成されている。
DOC70には、入口部分の排ガス温度を検出する温度センサ71が設けられている。
【0023】
DPF80は、エキゾーストパイプ42のDOC70よりも下流側に設けられ、排ガスを濾過して粒子状物質(PM)を捕集するフィルタを備えている。ここで、PMには、スート(煤)、有機溶剤可溶性成分(SOF)、サルフェート(SO)等が含まれる。
フィルタは、例えば、コーディエライト等の耐熱性セラミックスをハニカム構造に形成し、ガス流路となる多数のセルを、入口側、出口側が互い違いとなるように端面に封をして形成されたいわゆるクローズドタイプ(ウォールフロータイプ)のものである。
DPF80は、入口圧力と出口圧力との間の差圧を検出する差圧センサ81、及び、出口の排ガス温度を検出する温度センサ82を備えている。
【0024】
ECU100は、上述したエンジン10及びその補機類を統括的に制御するものであって、CPU等の情報処理装置、ROMやRAM等の記憶装置、入出力インターフェイス、及び、A/D変換器、タイマ、カウンタ、各種ロジック回路等の周辺回路を備えている。
ECU100には、上述した各種センサのほか、アクセルペダルセンサ101、大気圧センサ102の出力が入力される。
アクセルペダルセンサ101は、ドライバが操作するアクセルペダルのポジションを検出することによって、ドライバ要求トルクを検出する要求トルク検出手段である。
大気圧センサ102は、車両の周囲雰囲気における大気圧を検出するものである。
【0025】
ECU100は、アクセルペダルセンサ101の出力に応じて設定される要求トルクに応じて、スロットルバルブ35の開度、燃料供給装置50の燃料噴射量及び時期、燃圧等を制御する。
また、ECU100は、後述するTCU250と協働して本発明の自動変速機の変速制御装置の一部を構成し、エンジン10において所定の目標吸気状態が成立しているか判定する吸気状態判定手段として機能する。
【0026】
図2は、実施例の車両におけるトランスミッション部のシステム構成を示す模式図である。
トランスミッション200は、エンジン10の出力を増減速する例えばチェーン式の無段変速機(CVT)である。
トランスミッション200は、トルクコンバータ210、ドライブプーリ220、ドリブンプーリ230、ドライブチェーン240、トランスミッション制御ユニット250等を備えて構成されている。
【0027】
トランスミッション200は、エンジン10の後部(フライホイール側)に接続されるケース部を備え、この内部にトルクコンバータ210、ドライブプーリ220、ドリブンプーリ230、ドライブチェーン240等の変速機構や、変速後の出力を前後輪のアクスルディファレンシャルに分配するAWDトランスファ、さらに前輪側のディファレンシャル等を収容して構成されている。
【0028】
トルクコンバータ210は、エンジン10のクランクシャフト11後端部に接続される流体継手であって、ロックアップ機構を備えている。
ドライブプーリ220、ドリブンプーリ230、ドライブベルト240は、協働してチェーン式無段変速機(CVT)の変速機構部を構成するものである。
ドライブプーリ220及びドリブンプーリ230は、回転中心軸が平行に配置された状態で隣接して設けられている。ドライブチェーン240は、ドライブプーリ220及びドリブンプーリ230に架け渡され、これらの間で動力伝達を行う。
ドライブプーリ220は、トルクコンバータ210の出力側に接続されている。
ドリブンプーリ230は、AWDトランスファの入力側に接続されている。
【0029】
ドライブプーリ220及びドリブンプーリ230は、それぞれ軸方向に対向して配置された一対のテーパ面を備え、ドライブチェーン240はこれらのテーパ面によって挟持される。また、ドライブプーリ220及びドリブンプーリ230は、対向するテーパ面の間隔を変化させることによって、プーリの実効径を無段階に変化させ、変速比を連続的に変化させることができる。
トランスミッション制御ユニット(TCU)250は、エンジン回転数、トルク等の運転状態に基づいて、CVTの変速比を設定する変速制御手段である。この変速比の設定については、後に詳しく説明する。
ECU100とTCU250とは、例えばCAN通信システム等の車載LANによって接続されて相互に通信し、エンジン10及びトランスミッション200の協調制御を行う。
なお、TCU250は、本発明にいう変速パターン選択手段及び変速制御手段として機能する。
【0030】
上述した協調制御の一つとして、TCU250は、エンジン10において排ガス中のPMが増加しやすい吸入空気量不足の場合に、トランスミッション200の変速パターンを変更し、減速比を大きくしてエンジン10の高回転域使用頻度を増加させる過給優先CVT制御を行う。
図3は、このようなTCU250における変速パターンの選択動作を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
【0031】
<ステップS01:アクセル開度・エンジン回転数・吸入空気量検出>
ECU100は、アクセルペダルセンサ101の出力に基づいて、アクセル開度を検出する。
また、ECU100は、クランク角センサ13aの出力に基づいて、エンジン10のクランクシャフト11の回転数(エンジン回転数)を検出する。さらに、ECU100は、エアフローメータ33の出力に基づいて、エンジン10の現在の吸入空気量を検出する。
その後、ステップS02に進む。
【0032】
<ステップS02:目標トルク算出・運転領域判定・最低限吸入空気量設定>
ECU100は、ステップS01において検出したアクセル開度及びエンジン回転数に基づいて、エンジン10の目標トルクを算出する。この目標トルクは、例えば、アクセル開度及びエンジン回転数に基づいて判定される運転領域に応じて、予め設定されたマップから読み出される。
また、ECU100は、この目標トルク、及び、ステップS01において検出したエンジン回転数に基づいて、最低限吸入空気量を算出する。この最低限吸入空気量は、例えば、目標トルク及びエンジン回転数に基づいて判定される運転領域に応じて、予め設定されたマップから読み出される。
その後、ステップS03に進む。
【0033】
<ステップS03:吸入空気量判断>
ECU100は、ステップS01において検出したエンジン10の実際の吸入空気量と、ステップS02において設定した最低限吸入空気量とを比較し、吸入空気量が最低限吸入空気量を上回っている場合(目標吸気状態が成立した場合)はステップS04に進み、吸入空気量が最低限吸入空気量以下である場合(目標吸気状態が不成立である場合)はステップS05に進む。
【0034】
<ステップS04:目標空気量状態判定・通常CVT制御>
ECU100は、現在のエンジン10の吸気状態が目標空気量状態であると判定し、TCU250に後述する通常CVT制御を実行させ、一連の処理を終了(リターン)する。
【0035】
<ステップS05:非目標空気量状態判定・過給優先CVT制御>
ECU100は、現在のエンジン10の吸気状態が目標空気量状態ではない(吸入空気量不足)と判定し、TCU250に後述する過給優先CVT制御を実行させ、一連の処理を終了(リターン)する。
【0036】
以下、上述した通常CVT制御及び過給優先CVT制御について説明する。
図4は、実施例の自動変速機の変速制御装置におけるCVT変速線図の一例を模式的に示す図である。図4(a)は、通常CVT制御、図4(b)は過給優先CVT制御を示している。各図において、横軸はエンジン回転数を示し、縦軸はエンジン10のトルク(目標トルク又はドライバ要求トルク)を示している。
最も外側の曲線はエンジン10の最大トルク曲線を示しており、その内側の点線はエンジン10の等燃費率線を示している。
それぞれの制御において、TCU250は、エンジン回転数とトルクとの相関が、太線で示す変速ラインに近づくようにトランスミッション200の変速比を制御する。
【0037】
本発明にいう第1の変速パターンである通常CVT制御においては、燃費を優先するため、トルクが小さい領域ではエンジン回転数も低くされ、ここからトルクの増加に伴いエンジン回転数も高くなるように制御される。
これに対し、本発明にいう第2の変速パターンである過給優先CVT制御においては、過給圧を所定値以上の高圧に維持するため、トルクが小さい領域においてもエンジン回転数が通常CVT制御に対して高く設定されるとともに、トルクの増加に対するエンジン回転数の変化率を小さくして、エンジン回転数を高回転域に維持するように制御される。
過給優先CVT制御においては、通常CVT制御に対して減速比を大きくすることによって、同一出力をより高いエンジン回転数で発生し、ターボチャージャ20の過給圧を高めるようにしている。
【0038】
以上説明した実施例においては、エンジン10の吸入空気量が、エンジン10の運転領域から求められる最低限吸入空気量以下である場合に、トランスミッション200の変速パターンを通常CVT制御から過給優先CVT制御に変更することによって、エンジン10の回転数を高めてターボチャージャ20の過給圧を加速開始後早期に高めることができる。これによって、エンジン10の吸入空気量を増やして燃料リーンでの燃焼を可能とし、スート等のPMの発生を抑制して排ガスの状態を改善することができる。
一方、エンジン10の吸入空気量が最低限吸入空気量を上回っている場合には、エンジン回転数を低くする燃費優先の通常CVT制御を行うことによって、車両の燃費悪化を防止することができる。例えば、上述した過給優先CVT制御を行った後、エンジンの吸気状態が改善された場合には、通常CVT制御に復帰することによって、排ガスの状態と燃費とを両立させるエンジン制御及びCVT制御を実現できる。
【0039】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)エンジン、自動変速機、これらの補器類の構成は、上述した実施例のものに限らず、適宜変更することができる。
例えば、実施例においては、自動変速機は例えばチェーン式のCVTであったが、本発明はこれに限らず、ベルト式、トロイダル式等のCVT、複数のプラネタリギヤセットを用いて変速を行うステップAT、奇数段と偶数段それぞれの変速用ギヤセットに独立したクラッチを有し、これらを順次切替えて変速を行うDCT、手動変速機と同様の変速機後部をアクチュエータで駆動するAMTであってもよい。なお、CVT以外の有段の自動変速機を用いる場合、第1及び第2の変速パターンは、シフトアップ及びシフトダウンを行う変速ラインを、第2の変速パターンのほうがエンジン高回転域の使用頻度が高くなるように変更すればよい。
(2)実施例では、エンジンの吸気状態をエアフローメータが検出する吸入空気量に基づいて判定しているが、本発明はこれに限らず、例えばターボチャージャの過給圧や、吸気管内圧力に基づいて吸気状態を判定してもよい。また、これらのパラメータを複数組み合わせて判定してもよい。
(3)実施例では、エンジン制御ユニットがエンジンの吸気状態を判定しているが、このような判定機能は、トランスミッションの制御ユニットや、その他の独立したユニットに持たせるようにしてもよい。
(4)実施例では、2つの変速パターンを単純に切り換える場合を例として説明したが、本発明はこれに限らず、2つの変速パターンの間に複数段階の中間的な変速パターンが設定され、これらが順次切り換えられるようにしてもよい。また、無段階に変速パターンが推移するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 エンジン 11 クランクシャフト
12 ピストン 13 シリンダブロック
13a クランク角センサ 13b 水温センサ
14 ヘッド 15 燃焼室
16 グロープラグ 17 グローコントローラ
20 ターボチャージャ 21 コンプレッサ
22 タービン 23 アクチュエータ
24 負圧制御弁
30 インテークシステム 31 インテークダクト
32 エアクリーナ 33 エアフローメータ
34 インタークーラ 35 スロットルバルブ
36 アクチュエータ 37 インテークチャンバ
38 吸気圧センサ 39 インテークマニホールド
40 エキゾーストシステム 41 エキゾーストマニホールド
42 エキゾーストパイプ
50 燃料供給装置 51 サプライポンプ
52 吸入調量電磁弁 53 燃料温度センサ
54 コモンレール 55 燃圧センサ
56 インジェクタ
60 EGR装置 61 EGR通路
62 EGR制御弁 63 EGRクーラ
70 酸化触媒(DOC) 71 温度センサ
80 ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)
81 差圧センサ 82 温度センサ
100 エンジン制御ユニット(ECU)
101 アクセルペダルセンサ 102 大気圧センサ
200 トランスミッション 210 トルクコンバータ
220 ドライブプーリ 230 ドリブンプーリ
240 ドライブチェーン
250 トランスミッション制御ユニット(TCU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ過給機を有するエンジンの出力回転を変速する自動変速機の変速制御装置であって、
前記エンジンの吸気状態を検出する吸気状態検出手段と、
前記吸気状態検出手段の検出結果に基づいて、所定の目標吸気状態が成立しているか判定する吸気状態判定手段と、
運転状態に応じて変速比を設定する第1の変速パターンと、前記第1の変速パターンに対してエンジン回転数が高くなるように変速比を設定する第2の変速パターンとを有し、前記目標吸気状態が成立している場合には前記第1の変速パターンを選択し、成立していない場合には前記第2の変速パターンを選択する変速パターン選択手段と、
前記変速パターン選択手段によって選択された変速パターンに基づいて前記自動変速機の変速機構部を制御する変速制御手段と
を備えることを特徴とする自動変速機の変速制御装置。
【請求項2】
前記吸気状態検出手段は、前記エンジンの吸入空気量、前記エンジンの吸気圧力、前記エンジンの空燃比の少なくとも一つを検出し、
前記吸気状態判定手段は、前記エンジンの目標トルク及び運転領域に基づいて前記目標吸気状態を設定すること
を特徴とする請求項1に記載の自動変速機の変速制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−231906(P2011−231906A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104975(P2010−104975)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】