説明

自動変速機制御装置

【課題】省燃費走行となるように自動変速機を制御することができる自動変速機制御装置を提供する。
【解決手段】運転特性算出部42は、車両が所定の道路を走行している際の運転者の運転特性を示す運転特性データ224を生成する。ネットワークデータ送信部46は、運転特性データ224をネットワークデータ・データベース14に送信する。ネットワークデータ受信部44は、燃料消費量が最も少なくなる運転特性を示すネットワークデータ222を受信する。運転特性算出部42は、ネットワークデータ222に基づいて運転特性データを補正して運転特性データ学習値220を生成して変速制御部16に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されている自動変速機による変速を制御する自動変速機制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されている自動変速機においては、一般的に、予め変速特性が設定してある変速タイミングとスロットル開度等の車両の走行状態とを比較して変速段を判定し、車両の走行状態に応じた最良の変速制御を行うようになっている。
【0003】
しかしながら、変速制御における制御パターンは、一般の走行を基準に設定されているので、例えば、傾斜路等の平坦路ではない道路での走行では必ずしも最適な変速が行われるとは限らない。また、道路環境に基づく駆動力の変化に伴って、燃料消費量が変化するような場合等においても、必ずしも最適な燃費が得られるような変速が行われるとは限らない。
【0004】
例えば特許文献1には、ナビゲーション装置を自動変速機の変速制御装置として動作させることが記載されている。具体的には、特許文献1には、現在位置から目標位置までの変速スケジュールを道路環境及び燃費を考慮して設定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−21457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の自動変速機制御装置においては、現在位置から目標位置まで経路が設定されていることが前提となっているため、経路が設定されていない場合には、省燃費走行となるように自動変速機を精度よく制御することが困難であるという問題点があった。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑み、現在位置から目標位置まで経路が設定されていない場合であっても、省燃費走行となるように自動変速機を制御することができる自動変速機制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した従来の技術の課題を解決するため、車両が所定の道路を走行している際の運転者の運転特性を示す運転特性データを生成する運転特性データ生成部(52)と、前記運転特性データを外部のデータベースに送信するデータ送信部(46)と、前記データベースより燃料消費量が最も少なくなる運転特性を示すネットワークデータを受信するデータ受信部(44)と、前記ネットワークデータに基づいて運転特性データを補正して運転特性データ学習値を生成し、自動変速機(18)を制御する変速制御部(16)が、前記運転特性データ学習値が示す少なくとも前記車両の加速度及び速度と前記道路の傾斜情報とに基づいて前記自動変速機におけるギアを選択するよう、前記運転特性データ学習値を前記変速制御部に供給する運転特性データ学習値算出部(50)とを備えることを特徴とする自動変速機制御装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自動変速機制御装置によれば、現在位置から目標位置まで経路が設定されていない場合であっても、省燃費走行となるように自動変速機を制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の自動変速機制御装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1中の運転特性算出部42の具体的構成例を示すブロック図である。
【図3】運転特性データ224のデータ構造の一例を示す図である。
【図4】ネットワークデータ222のデータ構造の一例を示す図である。
【図5】一実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の自動変速機制御装置の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。本実施形態では、ナビゲーション装置12内に自動変速機制御装置100の各構成を設けた例を示している。自動変速機制御装置100は、ナビゲーション装置12が有している既存の構成の一部を利用して構成することができる。
【0012】
図1において、車両に搭載または設置されているセンサ群10は、GPS測位部20,速度センサ22,加速度センサ24,角速度センサ26を含む。GPS測位部20は、図示しないGPS衛星からの信号を受信して、GPS測位データ200を算出する。GPS測位データ200は、経緯度、車両の高度であるGPS高度、移動速度であるGPS速度、車両の方位であるGPS方位、PDOP(Position Dilution Precision)、捕捉衛星数等のデータを含む。PDOPは、GPS測位データ200におけるGPS衛星位置の誤差が受信点位置にどのように反映されるかの指標であり、測位誤差に相当する。GPS測位データ200が上記のデータ以外のデータを含んでいてもよい。
【0013】
GPS測位部20におけるGPS測位データ200は、公知の技術によって算出すればよいので、ここでは説明を省略する。GPS測位部20は、GPS測位データ200を所定のサンプリング間隔ごとに、即ち、周期的に算出する。GPS測位部20は、算出したGPS測位データ200を自動変速機制御装置100内の自車位置算出部28へ逐次出力する。GPS測位部20は、ナビゲーション装置12に付属または内蔵されているものを用いればよい。
【0014】
速度センサ22は、車両のドライブシャフトの回転に対応して回転するスピードメータケーブルの中間に設置されている。速度センサ22は、ドライブシャフトの回転に伴った速度パルス信号を出力し、車両の移動に伴って出力される速度パルス信号を所定の期間ごとに計数することによって、周期的にパルス数を検出する。速度パルス検出装置としては公知の技術を使用すればよいので、ここでは説明を省略する。速度センサ22は、自車位置算出部28へ速度センサ出力信号202を出力する。
【0015】
加速度センサ24は、例えば、加速度計等の加速度計測装置に相当し、車両の進行方向における加減速の変化や、重力加速度から車両の傾きを相対的な加速度変化として検出する。即ち、加速度センサ24は、車両の加速度と、水平面からの車両の上下左右方向の傾きを検出する。検出された加速度は、例えば、0V〜5Vのアナログ信号として出力される。その際、車両の進行方向と同方向に対応した正の加速度は5V側への2.5Vからの偏差電圧として出力され、車両の進行方向と逆方向に対応した負の加速度は0V側への2.5Vからの偏差電圧として出力される。2.5Vは、加速度のオフセット値、つまり零点であり、温度等の影響を受けドリフトする。
【0016】
2.5Vからの加速度の偏差程度である感度係数(mV/deg/s)は、水平な状態において許容誤差内に収まる所定の値として定められている。この許容誤差原因は、加速度計測装置の個体差や経年変化、温度による影響等である。加速度計測装置の電圧値は、図示していないA/D変換装置によって、例えば、サンプリング間隔100msでA/D変換され、その結果のデジタル信号が出力される。このデジタル信号は加速度センサ出力電圧に相当し、加速度センサ24の出力信号を加速度センサ出力信号204と称することとする。加速度計測装置としては公知の技術を使用すればよいので、ここでは説明を省略する。加速度センサ24は、自車位置算出部28内の加速度センサデータ算出部30へ加速度センサ出力信号204を逐次出力する。加速度センサ24は車両に搭載されているものを用いればよい。
【0017】
ここでは、速度センサ22及び加速度センサ24は車両が有するものとしたが、ナビゲーション装置12に付属または内蔵されているものを用いてもよい。
【0018】
角速度センサ26は、例えば、振動ジャイロ等のジャイロ装置に相当し、車両の進行方向の変化を車両の相対的な角度変化として検出する。即ち、角速度センサ26は、車両の旋回角速度を検出する。検出された角速度は、例えば、0V〜5Vのアナログ信号として出力される。その際、時計回りの旋回に対応した正の角速度は5V側への2.5Vからの偏差電圧として出力され、反時計回りの旋回に対応した負の角速度は0V側への2.5Vからの偏差電圧として出力される。2.5Vは、角速度のオフセット値、つまり零点であり、温度等の影響を受けドリフトする。
【0019】
2.5Vからの角速度の偏差程度である感度係数(mV/deg/s)は、水平な状態において許容誤差内に収まる所定の値として定められている。この許容誤差原因は、ジャイロ装置の個体差や経年変化、温度による影響等である。ジャイロ装置の電圧値は、図示しないA/D変換装置によって、例えば、サンプリング間隔100msでA/D変換され、その結果のデジタル信号が出力される。このデジタル信号は角速度センサ出力電圧に相当し、角速度センサ26の出力信号を角速度センサ出力信号206と称することとする。ジャイロ装置としては公知の技術を使用すればよいので、ここでは説明を省略する。角速度センサ26は、自車位置算出部28へ角速度センサ出力信号206を逐次出力する。角速度センサ26は、ナビゲーション装置12に付属または内蔵されているものを用いればよい。
【0020】
自動変速機制御装置100は前述のようにナビゲーション装置12内に構成されている。自動変速機制御装置100は、自車位置算出部28,経路探索部32,道路データ記憶部36,燃料消費量データ演算部38,車両負荷データ算出部40,運転特性算出部42,ネットワークデータ受信部44,ネットワークデータ送信部46を含む。
【0021】
自車位置算出部28は加速度センサデータ算出部30を有しており、経路探索部32は運転特性経路演算部34を有している。自車位置算出部28及び経路探索部32は、ナビゲーション装置12が有している既存の構成を利用することができる。また、ナビゲーション装置12が外部との通信機能を有している場合には、ネットワークデータ受信部44及びネットワークデータ送信部46は、ナビゲーション装置12が有している既存の構成を利用することができる。
【0022】
加速度センサデータ算出部30は、加速度センサ24から入力される加速度センサ出力信号204に基づいて加速度センサデータ210を算出する。加速度センサデータ210は、例えば、車両の前後方向に働く加速度と、水平面に対する車両の上下左右方向の傾き等を示すデータである。加速度センサデータ210は自車位置算出部28で利用されると共に運転特性算出部42へと供給される。
【0023】
自車位置算出部28には、道路データ記憶部36より出力される道路データ212が逐次入力される。自車位置算出部28は、センサ群10から逐次入力されるGPS測位データ200,速度センサ出力信号202,角速度センサ出力信号206と、加速度センサデータ算出部30が算出した加速度センサデータ210と、道路データ212とに基づいて、例えば500msや1000ms等の一定の周期で自車の位置を算出する。自車位置算出部28は、算出した自車位置データ208を経路探索部32と道路データ記憶部36とに供給する。
【0024】
運転特性経路演算部34は、運転特性算出部42から入力される運転特性データ学習値220に基づいて、運転者の運転特性を考慮した経路を推定して運転特性経路データを算出する。ここで、運転特性を考慮した経路とは、例えば、様々な道路環境や車両の状態に対して、運転者の加減速の程度や、変速のタイミング、加減速の際の燃料消費量を考慮し、運転者にとって最も走りやすく、さらに燃料消費量を最小限に抑えることができる経路である。
【0025】
経路探索部32にも、道路データ記憶部36より出力される道路データ212が逐次入力される。経路探索部32は、自車位置データ208と、道路データ212と、運転特性経路演算部34で算出した運転特性経路データとに基づいて、車両の現在地からユーザが設定する車両の目的地までの経路を探索する。経路探索部32における探索経路結果としては、例えば、有料道路優先の経路、一般道路優先の経路、最短距離の経路、運転特性経路データを考慮した経路等が挙げられる。また、VICS(Vehicle Information and Communication System)信号等から、道路の渋滞情報を考慮した経路を算出してもよい。
【0026】
さらに、経路探索部32は、走行中に車両が経路から外れた場合、自車位置データ208を基に、自車位置から目的地までの経路を速やかに再探索する等の処理を行ってもよい。探索経路の算出方法としては公知の技術を使用すればよいので、ここでは説明を省略する。
【0027】
道路データ記憶部36には自車位置演算部28から自車位置データ208が入力され、道路データ記憶部36は、自車位置演算部28と経路探索部32と運転特性算出部42とに道路データ212を供給する。ここで、道路データ記憶部36は、例えば、図示していない地図データベースから、自車位置を中心としたある一定範囲の道路データを取得し記憶する等の処理を行う。
【0028】
燃料消費量データ演算部38は、燃料消費量データ214を生成して運転特性算出部42に供給する。ここで、燃料消費量データ演算部38は、例えば、車両のスロットル開度、エンジンの回転数、燃料噴射時間等から車両の燃料消費量を計算する。燃料消費量の算出方法としては公知の技術を使用すればよいので、ここでは説明を省略する。
【0029】
車両負荷データ算出部40は、車両負荷データ216を算出して運転特性算出部42に供給する。ここで、車両負荷データ216とは、例えば、車両のエアーコンディショナ(エアコン)スイッチやファンスイッチ、熱線スイッチ等のオン/オフの状態により車両にかかる負荷を表したデータである。車両負荷データの算出方法としては公知の技術を使用すればよいので、ここでは説明を省略する。
【0030】
運転特性算出部42には、上述した加速度センサデータ210,道路データ212,燃料消費量データ214,車両負荷データ216に加えて、車両に搭載されている変速制御部16から出力された変速制御データ218と、ネットワークデータ受信部44から出力されたネットワークデータ222が入力される。運転特性算出部42は、加速度センサデータ210,道路データ212,燃料消費量データ214,車両負荷データ216,変速制御データ218を運転特性データとして記憶する。そして、運転特性算出部42は、運転特性データとネットワークデータ222とに基づいて、運転者の運転特性データ学習値220を算出する。
【0031】
ここで、運転特性とは、例えば、様々な道路環境に対する運転者の加減速の状況や、変速のタイミング、エアコン等により車両にかかる負荷を考慮した場合の車両の燃料消費量の情報等から導き出される、運転者による車両の運転の特性を表す。
【0032】
ネットワークデータ受信部44は、車両の外部に設けられているネットワークデータ・データベース14からネットワークデータ222を入力して運転特性算出部42へと供給する。ネットワークデータ送信部46は、運転特性算出部42から出力された運転特性データ224をネットワークデータ・データベース14へと送出する。
【0033】
ネットワークデータ・データベース14は、例えば、本実施形態の自動変速機制御装置100またはそれと同様の機能を有している様々な車両のナビゲーション装置と通信をすることにより、様々な道路環境に対応した、車種別の車両の加減速情報、変速タイミング情報、燃料消費量情報等のデータを取得・蓄積し、ネットワークデータとして、様々なユーザに提供する等の処理を行う。
【0034】
変速制御部16には、運転特性算出部42から運転特性データ学習値220と、自動変速機18から自動変速機変速データ226とが入力される。変速制御部16は、予め変速特性が設定してある変速マップを備えており、この変速マップと、運転特性算出部42から入力される運転特性データ学習値220とにより、例えば、様々な道路環境に対応した運転者の加減速の特性や燃料消費量の情報を考慮し、運転者の運転特性に合わせ、新たに変速マップを作成する。そして、変速制御部16は、新たに作成した変速マップに基づいて自動変速機18の変速制御を行う。変速制御部16は、運転特性算出部42に変速制御データ218を供給し、自動変速機18に変速制御部変速データ228を供給する。
【0035】
自動変速機18は、例えば、動力の断続にトルクコンバータを用いたものに多段変速機と組み合わせたオートマチックトランスミッション等である。自動変速機18は入力された変速制御部変速データ228に基づいてギアの自動変速を行い、変速制御部16に自動変速機変速データ226を供給する。
【0036】
ここで、図2を用いて運転特性算出部42の具体的構成例及び運転特性データ学習値220の算出方法の一例について説明する。運転特性算出部42は運転特性データ学習値算出部50と運転特性データ記憶部52とを備える。運転特性データ記憶部52は入力された種々のデータに基づいて運転特性データ224を生成する運転特性データ生成部となっている。運転特性データ学習値算出部50には、運転特性データ記憶部52から運転特性データ224と、上述したネットワークデータ222とが入力される。運動特性データ学習算出部50は、入力された運転特性データ224から、運転者の運転特性を算出する。
【0037】
ここで、図3に運転特性データ224のデータ構造の一例を、図4にネットワークデータ222のデータ構造の一例を示す。図3に示すように、運転特性データ224は、加速度センサ24より得られる加速度の情報及び傾斜角の情報、道路種別、道路リンクID、燃料消費量、車両負荷(エアコンのオン/オフ)の情報、車両速度、距離、ギアの段数の情報を含む。特に図示していないが、運転特性データ224は運転している車種(型式)の情報に対応させて生成されている。なお、燃料消費量はある一定時間(例えば、数秒間や数分間)に消費した消費量であり、距離についてもある一定時間に進んだ距離である。
【0038】
図4に示すように、ネットワークデータ222は運転特性データ224から道路リンクIDを除いたものに相当する。図4に示すネットワークデータ222は、ネットワークデータ・データベース14へと送出された図3の運転特性データ224に含まれている加速度センサ加速度と傾斜角と道路リンクID等に基づいて抽出される。
【0039】
運転特性データ学習値算出部50は、ネットワークデータ222から、他のユーザから提供された同車種の様々な道路環境における変速タイミングや燃料消費量のデータを取得する。そして、運転特性データ学習値算出部50は、前述の算出された運転特性において、様々な道路環境に対し、最良の燃料消費量で最良の変速タイミングとなるように、例えば10秒や1分等の間隔で繰り返し運転特性を補正することによって運転特性データ学習値220を算出する。運転特性データ学習値220のデータ構造は、運転特性データ224と同様のデータ構造である。
【0040】
運転特性データ学習値220は、例えば、取得した加速度センサデータ210、変速制御データ218、燃料消費量データ214等に対し、それぞれ500msや1000ms等の一定の間隔で平均化処理等を行って、さらにネットワークデータ222の中で最良の値に近付くようにフィルタリング処理等の種々の処理を施して算出する。このとき、ネットワークデータ222ではなく、過去の運転特性データ学習値を基準とし、この値に近付くように演算処理を施してもよい。
【0041】
運転特性データ記憶部52は不揮発性のメモリ等であり、運転特性データ学習値220と、加速度センサデータ210と、道路データ212と、燃料消費量データ214と、車両負荷データ216と、変速制御データ218とを入力して記憶する。運転特性データ記憶部52は、車両の前回走行時のデータを保存し、運転特性データ224に含めて運転特性データ学習値算出部50に出力しているので、自動変速機制御装置100の起動直後であっても精度の高い運転特性データ学習値220を算出することができる。
【0042】
次に、図5のフローチャートを用いて自動変速機制御装置100の動作を説明する。車両のエンジンが始動するとほぼ同時に、自動変速機制御装置100が起動して図5の処理が開始される。図5において、運転特性データ学習値算出部50は、ステップS1にて、ネットワークデータ受信部44を介して、ネットワークデータ・データベース14から他のユーザから提供された様々な道路環境における同車種の燃料消費量データや変速マップ等のネットワークデータ222を取得する。運転特性データ学習値算出部50は、ステップS2にて、取得したネットワークデータ222と、運転特性データ記憶部52より出力される運転特性データ224に含まれる前回までの運転特性データ学習値とを用いて、起動直後の運転特性データ学習値220を演算する。
【0043】
次に、経路探索部32は、ステップS3にて、目的地が設定されているか否か判定する。目的地が設定されていれば(Yes)、ステップS4に移り、目的地が設定されていなければ(No)、ステップS5に移る。運転特性経路演算部34は、ステップS4にて、運転特性データ学習値算出部50から出力される起動直後の運転特性データ学習値220と、自車位置算出部28より出力される自車位置データ208とから、例えば、前回までの車両の加速時の運転者によるアクセルの踏み方に合わせた変速タイミングのスケジューリングを行う。また、運転特性経路演算部34は、運転者の運転特性に合わせ、燃料消費量が最小となるような経路を算出する。
【0044】
ステップS4にて経路探索終了後、または、ステップS3にて目的地が設定されていないと判定された場合、加速度センサデータ算出部30は、ステップS5にて、加速度センサ出力信号204と道路データ212とから、加速度センサデータ210より加速度情報及び傾斜情報を算出する。自車位置演算部28は、ステップS6にて、GPS測位データ200と、速度センサ出力信号202と、角速度センサ出力信号206と、加速度センサデータ算出部30より出力される加速度センサデータ210と、道路データ212とに基づいて、現在の自車位置を算出する。
【0045】
そして、運転特性データ記憶部52は、ステップS7にて、加速度センサデータ210を記憶後、道路データ212と燃料消費量データ214と車両負荷データ216と変速制御データ218とを所定期間記憶し、記憶したそれぞれのデータを運転特性データ224として運転特性データ学習値算出部50へと供給する。
【0046】
運転特性データ学習値算出部50は、ステップS8にて、運転特性データ224とネットワークデータ222とに基づいて運転特性データ学習値220を算出して、変速制御部16と運転特性データ記憶部52に供給する。変速制御部16は、ステップS9にて、運転特性データ学習値220に基づいて、運転者の運転特性に合わせ、燃料消費量が最小となるよう変速制御を行う。変速制御部16は、最新の変速制御データ218を運転特性データ記憶部52に供給する。変速制御部16は、入力された運転特性データ学習値220に含まれている少なくとも加速度と傾斜角と車両速度の3つの情報に基づいて最適なギアを選択するよう自動変速機18を制御すればよい。
【0047】
運転特性データ記憶部52は、所定量の変速制御データ218を記憶して、ステップS10にて、ネットワークデータ送信部46へと運転特性データ224を出力する。ネットワークデータ送信部46は、入力された運転特性データ224をネットワークデータ・データベース14へと送出する。
【0048】
ナビゲーション装置12が有している図示していない制御部は、ステップS11にて、エンジンが停止されたか否かを判定し、エンジンが停止されたと判定した場合は終了し、停止されたと判定しなかった場合はステップS5に戻り以上の動作を繰り返す。
【0049】
なお、運転特性データ学習値220に含まれている道路種別の情報に基づいてギアを選択するように構成してもよい。例えば、一般道走行中で傾斜情報が一定値を超えた場合は傾斜路(山岳路等)を走行していると判断し、ギアをその道路状況に合わせて選択させることができる。また、高速道路走行中はある一定値以上の速度変化や道路の高低差の変化等がなければ変速を行わないというように制御することもできる。つまり、一般道走行中は、センサ群10から出力された出力値が第1の値変化した際に変速を行うようにし、高速道路走行中は、センサ群10から出力された出力値が第1の値よりも大きい第2の値変化した際に変速を行うようにしてもよい。
【0050】
運転特性データ学習値算出部50において、例えば、運転者が不意に急加速や急減速をした場合等のデータを学習演算に用いた場合、学習値の精度が低下し、変速制御等が最良な状態で行われない可能性がある。このような場合、運転特性データ学習値算出部50は、例えば、車両の加速度、車両の状態、道路環境から、ある一定の閾値を設けて車両の走行状態(例えば、停車中、傾斜路走行中等)を判定し、走行状態が良好なときのデータのみを学習値演算に使用して学習値を算出してもよい。
【符号の説明】
【0051】
12 ナビゲーション装置
14 ネットワークデータ・データベース
16 変速制御部
18 自動変速機
28 自車位置算出部
32 経路探索部
42 運転特性算出部
44 ネットワークデータ受信部
46 ネットワークデータ送信部
50 運転特性データ学習値算出部
52 運転特性データ記憶部(運転特性データ生成部)
100 自動変速機制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が所定の道路を走行している際の運転者の運転特性を示す運転特性データを生成する運転特性データ生成部と、
前記運転特性データを外部のデータベースに送信するデータ送信部と、
前記データベースより燃料消費量が最も少なくなる運転特性を示すネットワークデータを受信するデータ受信部と、
前記ネットワークデータに基づいて運転特性データを補正して運転特性データ学習値を生成し、自動変速機を制御する変速制御部が、前記運転特性データ学習値が示す少なくとも前記車両の加速度及び速度と前記道路の傾斜情報とに基づいて前記自動変速機におけるギアを選択するよう、前記運転特性データ学習値を前記変速制御部に供給する運転特性データ学習値算出部と、
を備えることを特徴とする自動変速機制御装置。
【請求項2】
前記運転特性データ学習値は前記車両が走行している道路が一般道であるか高速道路であるかを示す道路種別を示す情報を含み、前記変速制御部が前記道路種別を示す情報に基づいて前記自動変速機におけるギアを選択するよう、前記道路種別を示す情報を前記変速制御部に供給することを特徴とする請求項1記載の自動変速機制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−233519(P2012−233519A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101690(P2011−101690)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】