説明

自動調心ころ軸受

【課題】運転時に複数の球面ころ4、4がスキューする事を防止して、これら各球面ころ4、4と、外輪軌道7及び1対の内輪軌道8、8との転がり接触部での摩擦低減を図り、運転時に発生する摩擦熱を低減する。
【解決手段】1対の保持器5b、5cを構成する両リム部9a、9aの軸方向に対向する軸方向側面同士の間の環状隙間20aに設けた弾性部材21により、上記両保持器5b、5c、及び各球面ころ4、4に対して軸方向の弾性力を付与する。これによりこれら各球面ころ4、4の姿勢を規制し、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種機械装置に組み込まれ、例えばハウジングの内側に回転軸を支承する、自動調心ころ軸受の改良に関する。具体的には、運転時に複数の球面ころがスキューする事を防止して、これら各球面ころの転動面と、外輪軌道及び内輪軌道との転がり接触部での摩擦低減を図るものである。
【0002】
例えば重量の嵩む軸をハウジングの内側に回転自在に支承する為に従来から、特許文献1〜2に記載された様な自動調心ころ軸受が使用されている。図5は、これら特許文献1〜2に記載される等により、従来から広く知られている自動調心ころ軸受1を示している。この自動調心ころ軸受1は、互いに同心に組み合わされた外輪2と内輪3との間に、複数の球面ころ4、4を転動自在に配列して成る。そして、保持器5と案内輪6とにより、これら各球面ころ4、4の位置並びに姿勢を規制している。
【0003】
上記外輪2の内周面には、単一の中心を有する球状凹面である、外輪軌道7を形成している。又、上記内輪3の外周面の幅方向(図5の左右方向)両側には、それぞれが上記外輪軌道7と対向する、1対の内輪軌道8、8を形成している。又、上記複数の球面ころ4、4は、その最大径部が各球面ころ4、4の軸方向中間部に存在するビヤ樽型(一般的には最大径部が軸方向中央部にある対称形)で、上記外輪軌道7と上記1対の内輪軌道8、8との間に、2列に亙って転動自在に配列されている。
【0004】
上記保持器5は、真鍮の如き銅系合金の様に自己潤滑性を有する金属製の素材に削り加工を施す事により、或いは、合成樹脂を射出成形する事により、全体を一体に造られたもので、円環状のリム部9と、このリム部9の軸方向両側面から互いに反対方向に突出した複数本の柱部10、10とを備える。そして、円周方向に隣り合う柱部10、10の側面と上記リム部9の軸方向側面とにより三方を囲まれる部分を、それぞれ上記各球面ころ4、4を保持する為のポケット11、11としている。
【0005】
更に、上記案内輪6は、銅系合金の如き自己潤滑性を有する金属、含油メタル、合成樹脂等の、摩擦係数の低い材料により、全体を円環状に形成している。又、上記案内輪6は、軸方向幅が外径側で大きく内径側で小さい、断面台形で、上記内輪3の軸方向中間部の外径よりも少しだけ大きい内径と、上記保持器5のリム部9の内径よりも少しだけ小さい外径とを有する。この様な案内輪6は、上記内輪3の軸方向中間部外周面と上記リム部9の内周面との間に、これら内輪3及びリム部9に対する相対回転を可能に設置している。この状態で上記案内輪6の軸方向両側面12、12は、上記各球面ころ4、4の軸方向内端面(軸方向に関して「内」とは、自動調心ころ軸受1の幅方向中央側を言い、反対に、自動調心ころ軸受1の幅方向外側を軸方向に関して「外」と言う。本明細書の全体で同じ。)13、13と実質的に(対向する部分の周方向両端同士を結ぶ面同士が)平行になる。
【0006】
上述の様に構成される自動調心ころ軸受1により、例えばハウジングの内側に回転軸を支承する場合、前記外輪2をハウジングに内嵌固定し、上記内輪3を回転軸に外嵌固定する。この回転軸と共にこの内輪3が回転する場合には、上記各球面ころ4、4が転動して、この回転を許容する。上記ハウジングの軸心と上記回転軸の軸心とが不一致の場合、上記外輪2の内側で上記内輪3が調心する(外輪2の中心軸に対し内輪3の中心軸を傾斜させる)事で、この不一致を補償する。この場合に於いて、前記外輪軌道7は単一球面状に形成されている為、上記各球面ころ4、4の転動は、不一致補償後に於いても、円滑に行なわれる。又、これら各球面ころ4、4は、それぞれの軸方向内端面13、13と上記案内輪6の軸方向両側面12、12との係合に基づいて姿勢を制御される。即ち、上記各球面ころ4、4の自転中心軸が本来の位置からずれるスキューを抑え、これら各球面ころ4、4の転動面と上記外輪軌道7及び前記両内輪軌道8、8との転がり接触部での摩擦を抑える。
【0007】
従来の自動調心ころ軸受1は、この自動調心ころ軸受1を構成する内輪3の外周面の軸方向両端部に形成した鍔部14、14の内側面15、15と上記案内輪6の軸方向両側面12、12との距離が、上記各球面ころ4、4の軸方向長さよりも大きくなる様に設計している。つまり、上記自動調心ころ軸受1を組立てた状態では、上記軸方向両側面12、12と上記各球面ころ4、4の軸方向内端面13、13との間部分と、上記各鍔部14、14の内側面15、15とこれら各球面ころ4、4の軸方向外端面16、16との間部分との、少なくとも一方の間部分に、軸方向の隙間を設けている。
この理由は、上記案内輪6の軸方向両側面12、12と前記内輪3の外周面の軸方向両端部に形成した鍔部14、14の内側面15、15との距離が上記各球面ころ4、4の軸方向長さより小さいと、上記自動調心ころ軸受1の組立て時に、これら両側面12、15同士の間に上記各球面ころ4、4を挿入できなくなる為である。
【0008】
ところが、上記自動調心ころ軸受1の運転時に於いて、上記案内輪6の軸方向両側面12、12と上記各球面ころ4、4の軸方向内端面13、13との間部分、上記各鍔部14、14の内側面15、15とこれら各球面ころ4、4の軸方向外端面16、16との間部分との、少なくとも一方の間部分に、軸方向の隙間が存在すると、この隙間の分だけ、これら各球面ころ4、4の変位が可能になる。そして、これら各球面ころ4、4の変位がスキューとして出現した場合、上記各球面ころ4、4の転動面と上記外輪軌道7及び両内輪軌道8、8との転がり接触部での滑り摩擦の割合が多くなり、摩擦熱が増大する。
【0009】
そこで、上述した様な問題を考慮した構造として、特許文献3〜4に記載されている自動調心ころ軸受の構造がある。
図6は、特許文献3に記載された自動調心ころ軸受1aの構造を示している。この自動調心ころ軸受1aは、1対の外輪2a、2bを、これら両外輪2a、2bの軸方向外端面17、17に、これら両外輪2a、2bの軸方向内端面18、18同士を突き合わせるべく、互いに対向する向きの予圧Fを付与した状態で、軸方向に組立てている。そして、上記両外輪2a、2bに付与している上記予圧Fを、各球面ころ4、4に伝え、これら各球面ころ4、4を、内輪3aの軸方向中央部に形成された中央鍔部19に押し付けて、運転時に於ける上記各球面ころ4、4の軸方向の位置決めを図り、スキューの発生を抑えている。
【0010】
この様な特許文献3に記載された自動調心ころ軸受1aの場合、各部の寸法及び形状、並びに、上記予圧Fを適正値にしないと、上記両外輪2a、2b同士の、軸方向に関する位置関係が不適正になる事が考えられる。又、ラジアル荷重に基づいて、上記両外輪2a、2bの中心軸同士が不一致になる可能性もある。何れにしても、これら両外輪2a、2bの内周面に形成している外輪軌道7a、7bが単一球面上に存在しなくなって、上記自動調心ころ軸受1aの調心性が損なわれる事が考えられる。
【0011】
又、図7は、特許文献4に記載された自動調心ころ軸受1bの構造を示している。この自動調心ころ軸受1bは、内輪3bの中央突部24と1対の保持器5a、5aとの間に1対の円輪状案内輪6a、6aを、それぞれの軸方向内側面を対向させた状態で設けている。又、これら両案内輪6a、6aの対向する軸方向内側面同士の間の環状隙間20に、軸方向寸法を弾性的に拡縮させる弾性部材である、ウェーブワッシャ22を設けている。そして、このウェーブワッシャ22により、上記両案内輪6a、6aに対して軸方向外向の弾性力を付与している。そして、この弾性力により、これら両案内輪6a、6aの側面と各球面ころ4、4の軸方向内端面13、13とを係合させる事で、上記自動調心ころ軸受1bの運転時に於ける、上記各球面ころ4、4の軸方向の位置決めを図り、スキューを抑えている。
【0012】
この様な、特許文献4に記載された自動調心ころ軸受1bの場合、上記ウェーブワッシャ22の弾性力により押圧される上記両案内輪6a、6aが、上記各球面ころ4、4の軸方向内端面13、13のうち、外輪2及び上記内輪3bの径方向に関して内寄り部分(図7の下寄り部分)を押圧する。この部分では、上記外輪2及び内輪3bの周方向(図7の表裏方向)に関する、上記各球面ころ4、4の軸方向内端面13、13の長さが短く、これら軸方向内端面13、13と上記両案内輪6a、6aの側面との対向部の、上記周方向に関する長さ、及び押圧面積を確保しにくい。そして、これら長さ、及び押圧面積を確保しにくいと、上記各球面ころ4、4のスキューを防止する効果が低くなる。
【0013】
【特許文献1】特開平11−30232号公報
【特許文献2】特開2000−352418号公報
【特許文献3】特開2005−9669号公報
【特許文献4】特開2001−82467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述の様な事情に鑑み、運転時に複数の球面ころがスキューする事を防止して、これら各球面ころの転動面と、外輪軌道及び内輪軌道との転がり接触部での摩擦低減を図り、自動調心ころ軸受の運転時に発生する摩擦熱を、この自動調心ころ軸受全体として低減できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の対象となる自動調心ころ軸受は、外輪と、内輪と、複数個の球面ころと、1対の保持器とを備える。
このうちの外輪は、内周面に、単一の中心を有する球状凹面である、外輪軌道を有する。
又、上記内輪は、外周面に、この外輪軌道と対向する、1対の内輪軌道を有する。
又、上記各球面ころは、この外輪軌道とこれら両内輪軌道との間に、2列に亙って転動自在に設けられている。
又、上記1対の保持器は、それぞれが上記各球面ころを転動自在に保持する複数のポケットを備える。
【0016】
特に、本発明の自動調心ころ軸受に於いては、上記1対の保持器の、それぞれの軸方向側面のうちの互いに対向する側面同士の間の環状隙間に、軸方向寸法を弾性的に拡縮させる弾性部材を設ける。
又、上述の様な本発明を実施する場合に、例えば請求項2に記載した発明の様に、上記両保持器を、円環状のリム部と、複数の柱部とを備えたものとする。このうちの各柱部は、一端部をこのリム部の軸方向片側面に円周方向等間隔に結合し、他端部を他の部分に結合しない自由端とする。又、このリム部の片側面と円周方向に隣り合う各柱部の円周方向側面とにより周囲を囲まれる部分を、上記各球面ころを転動自在に保持する為のポケットとする。そして、上記両保持器を、それぞれのリム部の軸方向側面のうちの、上記各柱部が結合している側面と反対側面同士を対向させた状態で、軸方向に組み合わせる。
【0017】
又、この様な請求項1〜2に記載した発明を実施する場合に、例えば上記弾性部材を、請求項3に記載した発明の様に、ウェーブワッシャー、又は、請求項4に記載した発明の様に、皿ばねとする。
【発明の効果】
【0018】
上述の様に本発明の自動調心ころ軸受によれば、1対の保持器の軸方向側面のうちの、互いに対向する側面同士の間の環状隙間に設けた弾性部材により、上記両保持器に対して軸方向外向の弾性力を付与している。そして、この弾性力により、これら両保持器の各ポケットと上記各球面ころの軸方向内端面とを係合させている。
この様にして、自動調心ころ軸受の運転時に於ける、上記各球面ころのスキューを抑えれば、このスキューに基づきこれら各球面ころの転動面と外輪軌道及び内輪軌道との転がり接触部で、滑りの要素が増大する事を抑えられる。この為、自動調心ころ軸受全体としての運転時の発熱量を抑える事ができ、この自動調心ころ軸受のより高速での運転を可能にする他、耐久性の向上も図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[実施の形態の第1例]
図1〜3は、総ての請求項に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例を含め、本発明の特徴は、自動調心ころ軸受1cに、これら自動調心ころ軸受1cを構成する各球面ころ4、4のスキューを防止する構造を設けた点にある。その他の部分の構成及び作用は、前述した従来構造と同様であるから、同等部分には同一符号を付して重複する説明は省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0020】
本例の自動調心ころ軸受1cを構成する1 対の保持器5b、5cは、それぞれが、円環状のリム部9a、9aと、複数の柱部10、10とを備えている。
又、これら各柱部10、10は、それぞれの軸方向内端部(上記保持器5bに於いては図1の右側端部、上記保持器5cに於いては図1の左側端部)を、上記両リム部9a、9aの軸方向外側面の円周方向等間隔位置に結合し、軸方向外端部(上記保持器5bに於いては図1の左側端部、上記保持器5cに於いては図1の右側端部)を、他の部分に結合しない自由端としている。そして、上記両リム部9a、9aの軸方向内側面と円周方向に隣り合う上記各柱部10、10の円周方向側面とにより周囲を囲まれる部分を、上記各球面ころ4、4を転動自在に保持する為のポケット11、11としている。
【0021】
又、上記両保持器5b、5cを構成する上記両リム部9a、9aの軸方向側面のうち、互いに対向する軸方向内側面同士の間の環状隙間20aに、軸方向寸法を弾性的に拡縮させる弾性部材21を設けている。
この弾性部材21としては、図2に示す様な、ウェーブワッシャ22aや、図3に示す様な皿ばね23を使用できる。この他にも、軸方向寸法を弾性的に拡縮させられる部材であれば、ゴムの如きエラストマー等を、上記弾性部材21として使用できる。
【0022】
上述の様に本例の自動調心ころ軸受1cは、上記環状隙間20aに設けている弾性部材21により、上記両保持器5b、5cに対して軸方向外向の弾性力を付与する事で、これら両保持器5b、5cの各ポケット11、11の内面のうち、上記両リム部9a、9aの軸方向外側面と、上記各球面ころ4、4の軸方向内端面13、13とを係合させている。
この様にして、上記自動調心ころ軸受1cの運転時に於ける、上記各球面ころ4、4のスキューを抑え、このスキューに基づきこれら各球面ころ4、4の転動面と外輪軌道7及び各内輪軌道8、8との転がり接触部で、滑りの要素が増大する事を抑えている。この為、自動調心ころ軸受1c全体としての運転時の発熱量を抑える事ができ、この自動調心ころ軸受1cのより、高速での運転を可能にする他、耐久性の向上も図れる。
【0023】
又、本例の自動調心ころ軸受1cの場合、上記弾性部材21の弾性力により押圧される上記両保持器5b、5cが、上記各球面ころ4、4の軸方向内端面13、13のうち、外輪2及び内輪3bの径方向(図1の上下方向)に関して中央部分(図1に鎖線αで示す、上記各球面ころ4、4の自転軸を含む部分)を押圧する。この押圧する部分は、上記外輪2及び内輪3bの周方向(図1の表裏方向)に関する、上記各球面ころ4、4の軸方向内端面13、13の長さが長い。従って、これら軸方向内端面13、13と、上記両保持器5b、5cのリム部9a、9aの外側面との対向部の、上記周方向に関する長さ、及び押圧面積を確保し易い。この為、前述した特許文献4の構造と比較して、方向性の面から、安定した弾性力を上記各球面ころ4、4に付与する事ができ、上記各球面ころ4、4のスキューを防止する効果を高くできる。
又、本例の自動調心ころ軸受1cの構造では、この自動調心ころ軸受1cを構成する上記両保持器5b、5cの径方向の厚さが、案内輪6の径方向の厚さに比べて大きい。この為、本例の様に、上記各球面ころ4、4の軸方向内端面13、13と係合させる部材を上記両保持器5b、5cにすれば、上記係合させる部材を案内輪6にする場合に比べて、これら各球面ころ4、4を押圧する部分の周方向に関する長さ、及び押圧面積を確保し易い。この為、これら各球面ころ4、4のスキューを防止する効果を、より高くできる。
【0024】
尚、本例の自動調心ころ軸受1cは、上記各球面ころ4、4の位置並びに姿勢の規制を、上記両保持器5b、5cにより行なっている。この為、上記案内輪6は、上記各球面ころ4、4の位置並びに姿勢の規制は行なわず、上記各保持器5b、5cの径方向位置並びに姿勢の規制のみを行なっている。
又、本例の自動調心ころ軸受1cは、前述した図5に示す、従来例の自動調心ころ軸受1と同様に、上記案内輪6の軸方向両側面12、12と上記各鍔部14、14の内側面15、15との距離を上記各球面ころ4、4の軸方向長さより大きくしている。この為、上記自動調心ころ軸受1cの組立て作業の際に、上記両側面12、15との間に上記各球面ころ4、4を挿入する作業が行ないにくくなる事はない。
【0025】
[実施の形態の第2例]
図4も、総ての請求項に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合も、上述した実施の形態の第1例の自動調心ころ軸受1cと同様に、自動調心ころ軸受1dを構成する両保持器5b、5cの両リム部9a、9aの軸方向に対向する軸方向内側面同士の間の環状隙間20aに、軸方向寸法を弾性的に拡縮させる弾性部材21を設けている。
ただし、内輪3bの両端部外周面には、上記実施の形態の第1例の様な鍔部14、14(図1参照)を設けていない。この場合、上記両保持器5b、5cとして、これら両保持器5b、5cの各ポケット11、11で各球面ころ4、4を保持できて、上記自動調心ころ軸受1dの運転時に、これら各球面ころ4、4が軸方向にばれる事を防止できる構造のものを使用する事が好ましい。
【0026】
この様な本例の自動調心ころ軸受1dの場合にも、上記環状隙間20aに設けている弾性部材21により、上記両保持器5b、5cに対して軸方向外向の弾性力を付与する事で、これら両保持器5b、5cの各ポケット11、11の内面のうち、上記両リム部9a、9aの軸方向外側面と、上記各球面ころ4、4の軸方向内端面13、13とを係合させている。
又、上記各球面ころ4、4には、これら各球面ころ4、4の転動面と、外輪軌道7及び1対の内輪軌道8、8との係合により、これら各球面ころ4、4を案内輪6に向け押圧する方向の力が作用している。
従って、本例の構造の様に、上記鍔部14、14を省略しても、上記弾性部材21により付与している軸方向外方の弾性力と、上記案内輪6に向け押圧する方向(軸方向内方)の力とにより、上記自動調心ころ軸受1dの運転時に於ける、上記各球面ころ4、4のスキューを抑える事ができる。
その他の部分の構造及び作用は、上述した実施の形態の第1例と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0027】
尚、本発明は、前述した各従来例、又は実施の形態の第1〜2例の様な案内輪6a、6を設ける構造に限らず、これら案内輪6a、6を設けず、両保持器5b、5cの各ポケット11、11と各球面ころ4、4との係合によりこれら両保持器5b、5cを案内する、転動体案内の保持器を有する自動調心ころ軸受にも採用する事で、同様の効果を得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す、自動調心ころ軸受の部分断面図。
【図2】同じく、弾性部材の第1例であるウェーブワッシャを示す、斜視図。
【図3】同じく、弾性部材の第2例である皿ばねの斜視図(a)と、(a)のA−A断面図(b)。
【図4】本発明の実施の形態の第2例を示す、自動調心ころ軸受の部分断面図。
【図5】従来構造の自動調心ころ軸受の第1例を示す部分断面図。
【図6】同第2例を示す部分断面図。
【図7】同第3例を示す部分断面図。
【符号の説明】
【0029】
1、1a、1b、1c、1d 自動調心ころ軸受
2、2a、2b 外輪
3、3a、3b 内輪
4 球面ころ
5、5a、5b、5c 保持器
6、6a 案内輪
7、7a、7b 外輪軌道
8 内輪軌道
9、9a リム部
10 柱部
11 ポケット
12 側面
13 内端面
14 鍔部
15 内側面
16 外端面
17 軸方向外端面
18 軸方向内端面
19 中央鍔部
20、20a 環状隙間
21 弾性部材
22、22a ウェーブワッシャ
23 皿ばね
24 中央突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の中心を有する球状凹面である外輪軌道を、その内周面に形成した外輪と、上記外輪軌道と対向する1対の内輪軌道を、その外周面に形成した内輪と、上記外輪軌道と内輪軌道との間に、2列に亙って転動自在に設けられた複数の球面ころと、これら各球面ころを転動自在に保持する複数のポケットを備えた1対の保持器とを備えた自動調心ころ軸受に於いて、これら両保持器の、それぞれの軸方向側面のうちの互いに対向する側面同士の間の環状隙間に、軸方向寸法を弾性的に拡縮させる弾性部材を設けた事を特徴とする自動調心ころ軸受。
【請求項2】
1対の保持器はそれぞれが、円環状のリム部と、複数の柱部とを備え、これら各柱部は、一端部をこのリム部の軸方向片側面に円周方向等間隔に結合し、他端部を他の部分に結合しない自由端としており、このリム部の片側面と円周方向に隣り合う各柱部の円周方向側面とにより周囲を囲まれる部分を、各球面ころを転動自在に保持する為のポケットとしたものであり、
上記両保持器が、それぞれのリム部の軸方向側面のうちの、上記各柱部が結合している側面と反対側面同士を対向させた状態で軸方向に組み合わされている、請求項1に記載した自動調心ころ軸受。
【請求項3】
弾性部材がウェーブワッシャーである、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した自動調心ころ軸受。
【請求項4】
弾性部材が皿ばねである、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した自動調心ころ軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−174669(P2009−174669A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15811(P2008−15811)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】