説明

自動車のドアトリム構造

【課題】上端部にグリップが一体形成された自動車のドアトリム構造であって、暗所であっても乗降動作を安全にサポートし、タクシー等の商用車にあっては、暗所でも確実に公告表示を行うことのできる自動車のドアトリム構造を提供する。
【解決手段】ドアインナパネルの室内面に装着されるドアトリム本体4と、前記ドアトリム本体の上部に連結され、透明または透光性を有すると共に、上端断面が略半円形状に膨出した形状のグリップ部5と、前記グリップ部に設けられ、少なくとも該グリップ部の内部を照射する照明手段6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアトリム構造に関し、特に乗降時に掴むためのグリップが一体形成された自動車のドアトリム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、タクシー車両のドアトリムには、着座した乗員の手が届く位置に設けられたグリップや、ペーパー状の公告媒体を挿入するクリアケース等が後付により設けられている。
このうちグリップはドアの開閉時に利用されるものであるが、特にタクシーにあっては、後席ドアは自動開閉されるため、乗客がグリップを利用する機会は殆ど無いといってもよい。
【0003】
一方、本願出願人は、特許文献1において、ドアトリムにグリップが一体形成されたドア構造を開示した。特許文献1に開示されるグリップは、人が握りやすいように、上端断面が略半円形状に膨出した形状を有している。このため、乗員が着座したシートから手が届きやすく、ドアの開閉だけでなく、一連の乗降動作において体を支えるためのアシストグリップとして機能し、一般の乗用車に限らずタクシー車両にも好適に用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−328916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示したように、ドアトリムにグリップを一体形成することにより、従来、別部材としていたグリップ部材が不要となり、製造面では、組立工程数やコストを低減できるというメリットを得ることができる。
しかしながら、使用者である乗員乗客にとって、ドアトリムの上端部付近にグリップが形成されていても、夜間時にあっては、上端断面が略半円形状に膨出したグリップ部が照明に照らされないために視認性が悪く、使い勝手が低下するという課題があった。
また、ドアトリムに設けられた公告媒体にあっては、夜間に照らされないために公告として殆ど機能しないという課題があった。
【0006】
本発明は、前記したような事情の下になされたものであり、上端部にグリップが一体形成された自動車のドアトリム構造であって、暗所であっても乗降動作を安全にサポートし、タクシー等の商用車にあっては、暗所でも確実に公告表示を行うことのできる自動車のドアトリム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するために、本発明に係る自動車のドアトリム構造は、ドアインナパネルの室内面に装着されるドアトリム本体と、前記ドアトリム本体の上部に連結され、透明または透光性を有すると共に、上端断面が略半円形状に膨出した形状のグリップ部と、前記グリップ部に設けられ、少なくとも該グリップ部の内部を照射する照明手段とを備えることに特徴を有する。
尚、前記ドアトリム本体の上部に連結された前記グリップ部は、前記ドアトリム本体上部の幅方向において、その一端から他端まで連続して設けられていることが望ましい。
また、前記照明手段は、前記グリップ部の幅方向に沿って、ライン状に設けられていることが望ましい。
さらに、前記グリップ部において、車窓を介して車外に臨む側面が形成され、該側面の表面から所定の深さ位置には、少なくともシート状の広告媒体を封入可能な隙間が該側面に沿って設けられていることが望ましい。
また、前記グリップ部は、アクリル樹脂により形成されていることが好ましい。
【0008】
このように構成されたグリップ部を設けることによって、このグリップ部をドアの開閉だけでなく、一連の乗降動作において体を支えるためのアシストグリップとして機能させることができる。
また、グリップ部に、照明手段を設けることにより、夜間においてグリップ部の視認性が向上すると共に、乗客の足下を明るく照らすことができ、安全な乗降動作をサポートすることができる。
さらに、公告媒体を設置可能な隙間を設けることにより、暗所であっても車外の通行人等に対する宣伝効果の他、乗降時における乗客に対する宣伝効果を得ることができる。
また、グリップ部において、照明手段の配置を車内側面の上端部及び下端部付近とし、公告媒体の表示面を車内側に向けることにより、車内の乗客に対しても、明るく照らされた公告を提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上端部にグリップが一体形成された自動車のドアトリム構造であって、暗所であっても乗降動作を安全にサポートし、タクシー等の商用車にあっては、暗所でも確実に公告表示を行うことのできる自動車のドアトリム構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明に係るドアトリム構造を説明するための自動車ドア部の斜視図である。
【図2】図2は、図1のA−A断面図である。
【図3】図3は、人の手がグリップ部を掴む状態を示す図である。
【図4】図4は、グリップ部にシート状の広告媒体を挿入する状態を説明するための図である。
【図5】図5は、グリップ部にシート状の広告媒体を挿入する状態を説明するための他の図である。
【図6】図6は、LED照明部が点灯し、ドア内側が照らされる状態を説明するための図である。
【図7】図7は、LED照明部が点灯し、広告部が照らされる状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る自動車のドアトリム構造の実施の形態について図面に基づき説明する。図1は本発明に係るドアトリム構造を説明するための自動車ドア部の斜視図であり、図2は図1のA−A断面図である。尚、本実施の形態では、本発明に係るドアトリム構造を、タクシー車両に適用するものとして説明する。
【0012】
図示するドアトリム1は、自動車ドアに設けられるドアインナパネル(図示せず)の室内面に装着されるトリム本体4と、このドアトリム本体4の上部に連結されたグリップ部5とを備える。尚、これらの連結においては、例えば図2に示すように、前記ドアインナパネルから上方に突出して設けられた強度の剛性を有する連結部材8(例えば鉄骨)がグリップ部5の下面から内部に嵌設される。
【0013】
グリップ部5は、ドアトリム本体5上部の幅方向において、その一端から他端まで連続して設けられている。また、ドアトリム本体4には、ドアロックを施錠/解除を行うためのインサイドハンドル2、肘掛け3等が設けられる。
尚、本発明に係るドアトリム構造にあっては、ドアトリム本体4及び、その表面に設けられるインサイドハンドル2、肘掛け3等については、従来一般的に用いられている材質、形状を適用することができる。
【0014】
グリップ部5は、透明或いは所定の透光性を有し、例えばアクリル樹脂により形成されている。このグリップ部5は、その上端断面が略半円形状に膨出し、図3に示すように人の手のひらにフィットする形状であって、乗客の手が届きやすいように車室内に向けて膨出している。このため、ドアの開閉だけでなく、一連の乗降動作において体を支えるためのアシストグリップとして機能するようになされている。
【0015】
また、グリップ部5の車内側側面5aには、横方向に例えば平行に2つのライン上の照明手段、好ましくはLED(発光ダイオード)からなるLED照明部6が埋設されている。このライン状のLED照明部6は、例えば、複数のLED素子が透明樹脂からなるチューブ内に並べて配置され、各素子に図示しない電源供給部から駆動電圧が供給されることにより点灯(発光)するようになされている。尚、LED照明部6の点灯のタイミングは、少なくともドア開閉時は必須であるが、LED発光の駆動電圧を調整することにより、車両走行中であっても、夜間時等にある程度の発光量で点灯する制御が行われてもよい。
【0016】
このようにLED照明部6が設けられることにより、それが点灯すると、グリップ部6が透光性を有するため、少なくともグリップ部6内部が照射され、特に暗所ではグリップ部6の全体形状を浮き出させることができる。
また、暗所では、グリップ部6全体が発光体として機能することにより、ドアが開けられた際の足下も明るく照らすことができる。
【0017】
また、車外(窓側)に臨む側面5cを構成する部位は、特に、無色透明なアクリル樹脂で形成された広告部7が設けられる。この広告部7において、前記側面5cから所定の深さ位置には、少なくともシート状の広告媒体20(公告シート20と呼ぶ)を封入可能な溝部9(隙間)が側面5cに沿って形成されている。さらに、この溝部9は、広告部7の上端部5bから下方に向けて所定の深さに形成されている。
【0018】
この広告部7においては、図4、図5に示すように、例えば透光性を有する公告シート20を溝部9に挿入できる構成となされている。即ち、広告部7において車窓15を介して車外に臨む側面5cは広告面として機能する。
また、LED照明部6が点灯すると、図6に示すように、このグリップ部6全体が発光するため、公告シート20の裏側から公告を明るく浮き出させるバックライトとして機能する。
尚、LED照明部6の配置を、車内の乗客側から邪魔にならないように、車内側側面5aの上端部及び下端部付近とし、公告シート20の表示面を車内側に向けた場合には、車内の乗客に対しても、明るく照らされた公告が提供される。
【0019】
また、夜間等の暗所において、図7に示すように、ドアを開けた状態でLED照明部6が発光することにより、ドアグリップ本体5の視認性が向上すると共に、開いたドアの内側空間及び足下が明るく照らされ、乗客の一連の乗降動作がサポートされる。
さらには、開いたドアにおいて幅方向に沿ってライン状にLED照明部6が発光するため、後続車等との間での危険が回避される。
【0020】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、ドアトリム本体4上部に連結された透明或いは所定の透光性を有するグリップ部5は、その上端断面が略半円形状に膨出し、人の手のひらにフィットする形状であって、乗客の手が届きやすいように車室内に向けて膨出している。このため、ドアの開閉だけでなく、一連の乗降動作において体を支えるためのアシストグリップとして機能させることができる。
また、グリップ部5には、照明手段としてのLED照明部6が設けられることにより、夜間においてグリップ部5の視認性が向上すると共に、乗客の足下を明るく照らすことができ、安全な乗降動作をサポートすることができる。
さらに、公告シート20を設置可能な広告部7を設けることにより、暗所であっても車外の通行人等に対する宣伝効果の他、乗降時における乗客に対する宣伝効果を得ることができる。
また、LED照明部6の配置を車内側面5aの上端部及び下端部付近とし、公告シート20の表示面を車内側に向けることにより、車内の乗客に対しても、明るく照らされた公告を提供することができる。
【0021】
尚、前記実施の形態によれば、照明手段としてLEDを用いたが、それに限定されず、光源素子としては他の素子(例えば有機EL素子)を用いてもよい。
また、前記実施の形態では、車窓15寄りに公告シート20を設置する例を示したが、車室内寄りに公告シート20を設置する構成であってもよい。
また、本発明は車種に限定されるものではなく、あらゆる車両に適用することができる。即ち、前記実施の形態にあっては、タクシー車両を例に説明したが、タクシーに限らず、他の商用車にも適用することができる。さらには、広告部7を用いなければ、一般の普通乗用車等にも好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0022】
1 ドアトリム
2 インサイドハンドル
3 肘掛け
4 ドアトリム本体
5 グリップ部
6 LED照明部(照明手段)
7 広告部
8 連結部材
9 溝部(隙間)
20 公告シート(シート状の広告媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアトリム構造であって、
ドアインナパネルの室内面に装着されるドアトリム本体と、
前記ドアトリム本体の上部に連結され、透明または透光性を有すると共に、上端断面が略半円形状に膨出した形状のグリップ部と、
前記グリップ部に設けられ、少なくとも該グリップ部の内部を照射する照明手段とを備えることを特徴とする自動車のドアトリム構造。
【請求項2】
前記ドアトリム本体の上部に連結された前記グリップ部は、前記ドアトリム本体上部の幅方向において、その一端から他端まで連続して設けられていることを特徴とする請求項1に記載された自動車のドアトリム構造。
【請求項3】
前記照明手段は、前記グリップ部の幅方向に沿って、ライン状に設けられていることを特徴とする請求項2に記載された自動車のドアトリム構造。
【請求項4】
前記グリップ部において、車窓を介して車外に臨む側面が形成され、該側面の表面から所定の深さ位置には、少なくともシート状の広告媒体を封入可能な隙間が該側面に沿って設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された自動車のドアトリム構造。
【請求項5】
前記グリップ部は、アクリル樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された自動車のドアトリム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−179725(P2010−179725A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23540(P2009−23540)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】