説明

自動車のピラーガーニッシュ構造

【課題】乗員の頭部がピラーガーニッシュに当接した際の衝撃の緩和と意匠性の向上とを図る自動車のピラーガーニッシュ構造を提供する。
【解決手段】フロントピラーガーニッシュ26は、中間部28A、前部28B及び後部28Cから成る基材28を備えている。基材28の中間部28A及び後部28Cの表面側には、シート状のダイラタント特性部材40が配設されている。ダイラタント特性部材40は、無負荷時及び低負荷時には柔軟な性質を有し、衝突荷重のような大きな負荷が加わると瞬時に硬化すると共にエネルギー吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のピラーガーニッシュ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、カーテンエアバッグを収納したフロントピラーガーニッシュの内側面(車両幅方向外側の面)に、エネルギー吸収リブを一体に形成した頭部衝撃緩和構造が開示されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、カーテンエアバッグを収納したフロントピラーガーニッシュとフロントピラーインナパネルとの間に、中空構造のエネルギー吸収部材を配設した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3052085号公報
【特許文献2】特許第3722013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記いずれの先行技術に開示された構成においても、頭部への衝撃を緩和するために必要となるエネルギー吸収ストローク(即ち、フロントピラーガーニッシュの裏面からフロントピラーインナパネルの後ろ側フランジ部の車室内側の面までの距離)を確保するため、フロントピラーガーニッシュの断面形状が車室内側へ出っ張った形状になってしまう。このため、フロントピラーガーニッシュの意匠性が低下する。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、乗員の頭部がピラーガーニッシュに当接した際の衝撃の緩和と意匠性の向上とを図ることができる自動車のピラーガーニッシュ構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明に係る自動車のピラーガーニッシュ構造は、車体側部に配置されると共に車両上下方向に沿って延在するピラー本体部に内張りされ、少なくとも基材を備えたピラーガーニッシュ本体部と、このピラーガーニッシュ本体部の基材の裏面又は表面に配置され、無負荷時には柔軟性を有し衝撃荷重が入力されると硬化するダイラタント特性を備えたシート材と、を有している。
【0008】
請求項2記載の本発明に係る自動車のピラーガーニッシュ構造は、請求項1記載の発明において、前記シート材は、前記ピラーガーニッシュ本体部の基材の表面側に固定されかつ表皮によって覆われている、ことを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の本発明に係る自動車のピラーガーニッシュ構造は、請求項1記載の発明において、前記シート材は、前記ピラーガーニッシュ本体部の基材の裏面側に固定されている、ことを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の本発明に係る自動車のピラーガーニッシュ構造は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記ピラー本体部はフロントピラー本体部とされると共に前記ピラーガーニッシュ本体部はフロントピラーガーニッシュ本体部とされており、当該フロントピラー本体部と当該フロントピラーガーニッシュ本体部の基材との間には、少なくとも側面衝突時にルーフサイドレール下方へ膨張展開させるカーテンエアバッグの一部が収納されており、さらに、前記フロントピラーガーニッシュ本体部の基材の裏面側及び前記シート材の裏面側にはフロントピラー本体部の長手方向に沿って脆弱部がそれぞれ設けられており、当該脆弱部が設けられることで当該カーテンエアバッグの展開時のヒンジがフロントピラーガーニッシュに形成されている、ことを特徴としている。
【0011】
請求項1記載の本発明によれば、シート材は無負荷時及び低負荷時には柔軟性を有しているが、衝突時に乗員の頭部がピラーガーニッシュ本体部に当接した場合には、シート材が瞬時に硬化すると共にエネルギー吸収する。これにより、乗員の頭部への衝撃が緩和される。
【0012】
また、シート材によって頭部当接時のエネルギー吸収効果が得られるため、前述した先行技術のようにピラーガーニッシュ本体部とピラー本体部との間にエネルギー吸収リブ等のエネルギー吸収部材を配設する必要がなくなる。このため、ピラーガーニッシュ本体部の車室内側への出っ張り量を減らすことができる。
【0013】
請求項2記載の本発明によれば、シート材はピラーガーニッシュ本体部の基材の表面側に固定されかつ表皮によって覆われているため、柔らかい触感が得られる。
【0014】
請求項3記載の本発明によれば、シート材がピラーガーニッシュ本体部の基材の裏面側に固定されているため、ピラーガーニッシュ本体部の基材の裏面側に例えばワイヤハーネスやアンテナ等の長尺材を配索したときに、当該長尺材は柔らかい状態のシート材と接触することになる。
【0015】
請求項4記載の本発明によれば、フロントピラー本体部とフロントピラーガーニッシュ本体部との間には、カーテンエアバッグの一部が収納されている。また、フロントピラーガーニッシュ本体部の基材の裏面側及びシート材の裏面側には、脆弱部がそれぞれ設けられている。基材及びシート材は、各々の脆弱部が設けられた部位の剛性が他の部位(一般部)に比べて低下している。このため、側面衝突時になると、カーテンエアバッグの膨張圧によってピラーガーニッシュ本体部がヒンジを中心として展開される。これにより、カーテンエアバッグがルーフサイドレール下方へ展開され、乗員の頭部が保護される。
【0016】
このように本発明では、ピラーガーニッシュ本体部の基材とシート材にそれぞれ脆弱部を設けているので、シート材が荷重入力により硬化しても、シート材は脆弱部が形成された部位をヒンジとして展開することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る自動車のピラーガーニッシュ構造は、乗員の頭部がピラーガーニッシュに当接した際の衝撃の緩和と意匠性の向上とを図ることができるという優れた効果を有する。
【0018】
請求項2記載の本発明に係る自動車のピラーガーニッシュ構造は、請求項1記載の本発明の効果である意匠性の向上に加えて、触感の向上(高級感の付与)をも図ることができるという優れた効果を有する。
【0019】
請求項3記載の本発明に係る自動車のピラーガーニッシュ構造は、ピラーガーニッシュ本体部の基材の裏面側にワイヤハーネスやアンテナ等の長尺材を配索した場合に、これらの長尺材が基材に直接当たることにより生じる打音を低減することができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項4記載の本発明に係る自動車のピラーガーニッシュ構造は、カーテンエアバッグの展開時の展開性能を確保することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置の全体構成を示す図2の1−1線に沿った拡大平断面図である。
【図2】第1実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置が適用されたフロントピラーガーニッシュの斜視図である。
【図3】(A)は図2に示されるフロントピラーガーニッシュのヒンジを拡大した拡大斜視図であり、(B)は図1に示されるフロントピラーガーニッシュのヒンジの拡大図である。
【図4】(A)はヒンジの一つ目の変形例を示す図3(A)に対応する拡大斜視図であり、(B)は図3(B)に対応する拡大平断面図である。
【図5】(A)はヒンジの二つ目の変形例を示す図3(A)に対応する拡大斜視図であり、(B)は図3(B)に対応する拡大平断面図である。
【図6】第2実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置の全体構成を示す図1に対応する拡大平断面図である。
【図7】第2実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置が適用されたフロントピラーガーニッシュの斜視図である。
【図8】(A)は図7に示されるフロントピラーガーニッシュのヒンジを拡大した拡大斜視図であり、(B)は図6に示されるフロントピラーガーニッシュのヒンジの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第1実施形態〕
以下、図1〜図5を用いて、本発明に係る自動車のピラーガーニッシュ構造の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0023】
図2には、第1実施形態に係るフロントピラーガーニッシュの外観斜視図が示されている。なお、フロントピラーガーニッシュの断面構造が判るように上端部は水平に破断している。また、図1には、当該フロントピラーガーニッシュの車体への組付状態の平断面図が示されている。
【0024】
これらの図に示されるように、ピラーとしてのフロントピラー10は、車室内側に配置されたフロントピラーインナパネル12と、車室外側に配置されたフロントピラーアウタパネル14と、フロントピラーインナパネル12とフロントピラーアウタパネル14との間に配置されたピラーリインフォースメント16と、によって構成されたフロントピラー本体部18を備えている。フロントピラーインナパネル12は略車両前後方向に沿って延在する直線的な断面形状とされている。フロントピラーリインフォースメント16とフロントピラーアウタパネル14は、いずれも車両幅方向外側へ膨らむ略ハット形の断面形状とされている。そして、これらのフロントピラーインナパネル12、フロントピラーアウタパネル14及びフロントピラーリインフォースメント16は、各々の前端部に形成された三枚のフランジがスポット溶接により接合されると共に(以下、この部位を「フロントピラー本体部18の前側フランジ部18A」と称す。)、各々の後端部に形成された三枚のフランジがスポット溶接により接合されることにより(以下、この部位を「フロントピラー本体部18の後ろ側フランジ部18B」と称す。)、閉断面構造に形成されている。なお、フロントピラーインナパネル12、フロントピラーアウタパネル14及びフロントピラーリインフォースメント16はいずれも金属製とされている。
【0025】
上述したフロントピラー10の前側フランジ部18Aの前面には、ウインドシールドガラス20の端部20Aが接着剤22で接合されている。一方、フロントピラー10の後ろ側フランジ部18Bには、ゴム材料によって形成されたドアオープニングウエザストリップ24が弾性的に嵌合されている。
【0026】
上述したフロントピラーインナパネル12の車室内側には、内装材であるフロントピラーガーニッシュ26が内張りされており、以下に詳細に説明する。
【0027】
フロントピラーガーニッシュ26は、平断面形状が略C字状に形成されたピラーガーニッシュ本体部としての樹脂製の基材28を備えている。より具体的には、基材28は、フロントピラーインナパネル12に対して所定距離だけ車両幅方向内側に離間した位置で略平行に配置(略車両前後方向に沿って延在)される中間部28Aと、この中間部28Aの前端から湾曲しつつ車両幅方向外側へ延びていき、フロントピラー10の前側フランジ部18Aの近傍に至る前部28Bと、中間部28Aの後端から略半円形状に膨らみつつ車両幅方向外側へ延びていき、フロントピラー10の後ろ側フランジ部18Bの近傍に至る後部28Cと、によって構成されている。
【0028】
上記フロントピラーガーニッシュ26の基材28とフロントピラーインナパネル12との間には所定の空間部30が形成されている。この空間部30には、カーテンエアバッグ装置32のカーテンエアバッグ34の前部34Aが折り畳まれた状態で収納されている。なお、カーテンエアバッグ装置32は、フロントピラー10からルーフサイドレールに沿って設けられており、側面衝突時及びロールオーバー時にルーフサイドレール下方へカーテンエアバッグ34を展開して乗員の頭部を保護するためのエアバッグ装置である。また、カーテンエアバッグ装置32に隣接してワイヤハーネス38やアンテナ等の長尺材が配索されている。
【0029】
上記形状の基材28の中間部28A及び後部28Cの車室内側の面には、無負荷状態では柔軟な性質を有し、衝突荷重のような大きな負荷が加わると瞬時に硬化するダイラタント特性を有するシート材としてのダイラタント特性部材40が配置されている。さらに、基材28及びダイラタント特性部材40の車室内側の面は、表皮42で覆われている。
【0030】
図2に示されるように、ダイラタント特性部材40は、フロントピラーガーニッシュ26の上部所定範囲にのみ設定されている。この「上部所定範囲」とは、衝突時に乗員の頭部が当接する可能性がある範囲を指している。具体的には、車両上下方向(ピラー高さ方向)にあっては図2に破線で示したダイラタント特性部材40の下端部40Aの位置まで配設されており、車両前後方向にあっては図1及び図2に示されるように、基材28の前部28Bを除いた範囲である。補足すると、この実施形態の場合、ダイラタント特性部材40が基材28の表面側に配設されるので、前記「上部所定範囲」には触感が求められる範囲という要素も加わる。
【0031】
基材28の後部28Cの裏面(車室外側の面)には、平断面視でV字状のノッチ44が形成されている。同様に、ダイラタント特性部材40の裏面(車室外側の面)における前記ノッチ44と車両前後方向に重なる位置には、平断面視でV字状のノッチ46が形成されている。これにより、基材28及びダイラタント特性部材40には、隣接する部位(一般部)に比べて板厚が薄い脆弱部48、50がそれぞれ形成されており、これらの脆弱部48、50が、カーテンエアバッグ装置32のカーテンエアバッグ34が展開する際のヒンジ52とされている。なお、上記ノッチ44、46及び脆弱部48、50は、フロントピラーガーニッシュ26の長手方向に沿って形成されている。
【0032】
(本実施形態の作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0033】
衝突時ではない場合には、フロントピラーガーニッシュ26に負荷がかからないので、ダイラタント特性部材40は柔らかい性質を有している。従って、乗員が手で触れた場合等には、ソフトな触感が得られる。つまり、ダイラタント特性部材40が触感向上に寄与している。
【0034】
ここで、乗員の頭部(図1に頭部を模擬したヘッドインパクタ54を示す。)がフロントピラーガーニッシュ26に衝突した場合には、ダイラタント特性部材40が瞬時に硬化すると共にエネルギー吸収する。これにより、乗員の頭部への衝撃が緩和される。このようにダイラタント特性部材40によって乗員の頭部衝突時のエネルギー吸収効果が得られるため、前述した先行技術のようにピラーガーニッシュ本体部とピラー本体部との間にエネルギー吸収リブ等のエネルギー吸収部材を配設する必要がなくなる。このため、本実施形態によれば、フロントピラーガーニッシュ26の車室内側への出っ張り量を減らすことができる。
【0035】
上記より、本実施形態に係る自動車のピラーガーニッシュ構造によれば、乗員の頭部がフロントピラーガーニッシュ26に当接した際の衝撃の緩和と意匠性の向上とを図ることができる。
【0036】
また、前記の通り、フロントピラーガーニッシュ26の車室内側への出っ張り量を減らすことができるので、フロントピラーガーニッシュ26の細幅化を実現することができる。その結果、ドライバから車外を見たときの視界が広がり、視界の改善効果が得られる。さらに、フロントピラーガーニッシュ26を細幅化することができることにより、乗降時に頭がフロントピラーガーニッシュの出っ張り部分に当たるといったことがなくなり、乗員の乗降性を改善することができるというメリットもある。
【0037】
さらに、本実施形態では、ダイラタント特性部材40が基材28の表面側に固定されかつ表皮42によって覆われているため、柔らかい触感が得られる。その結果、上記の意匠性の向上効果に加えて、触感の向上(高級感の付与)をも図ることができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、フロントピラー本体部18とフロントピラーガーニッシュ26との間にカーテンエアバッグ装置32のカーテンエアバッグ34の前部が収納されている。また、本実施形態では、フロントピラーガーニッシュ26の基材28の裏面側(車室外側)及びダイラタント特性部材40の裏面側(車室外側)にノッチ44、46を形成して脆弱部48、50がそれぞれ設けられている。基材28及びダイラタント特性部材40は、各々の脆弱部48、50の剛性が他の部位(一般部)に比べて低下している。このため、側面衝突時になると、カーテンエアバッグ34の膨張圧によってフロントピラーガーニッシュ26がヒンジ52を中心として展開される。これにより、カーテンエアバッグ34がルーフサイドレール下方へ展開され、乗員の頭部が保護される。
【0039】
このように本実施形態では、フロントピラーガーニッシュ26の基材28とダイラタント特性部材40にそれぞれ脆弱部48、50を設けているので、ダイラタント特性部材40が荷重入力により硬化しても、ダイラタント特性部材40は脆弱部48、50が形成された部位をヒンジ52として展開することが可能となる。その結果、本実施形態によれば、カーテンエアバッグ34の展開時の展開性能を確保することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、ノッチ44、46を形成して脆弱部48、50を設ける構成を採ったが、他の構成を採ってもよい。以下、二例を説明する。
【0041】
図4(A)、(B)に示される第1変形例では、ダイラタント特性部材40の裏面側に前述したノッチ46が形成されていると共に、ノッチ46の谷部からスリット56が形成されている。これにより、ダイラタント特性部材40は、二つの要素(展開部58と非展開部60)に分断されている。上記構成によれば、ダイラタント特性部材40が予めノッチ46とスリット56によって車両幅方向に分断されているので、カーテンエアバッグ装置32の作動時にカーテンエアバッグ34の膨張圧で展開部58がより迅速に展開されるというメリットがある。
【0042】
図5(A)、(B)に示される第2変形例では、ダイラタント特性部材40に第1変形例のノッチ46とスリット56に代えて長穴62が所定ピッチで一列に形成されている。この長穴62が形成されたことにより、長穴62と長穴62との間の接続部64が脆弱部とされる。上記構成によってもフロントピラーガーニッシュ26はカーテンエアバッグ34の膨張圧が加わると、長穴62を通る位置に形成されたヒンジ52を中心として車室内側へ展開される。また、第1変形例のようにスリット56を形成する場合にはスリット幅を管理するのが難しいが、第2変形例の場合、長穴62を形成するだけでよいので、製作が容易であるというメリットがある。
【0043】
〔第2実施形態〕
次に、図6〜図8を用いて、本発明に係る自動車のピラーガーニッシュ構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0044】
この第2実施形態に係る自動車のピラーガーニッシュ構造では、フロントピラーガーニッシュ70が、第1実施形態と同一構成の基材28と、この基材28の裏面側に設けられたダイラタント特性部材72と、によって構成されている点に特徴がある。換言すれば、第2実施形態のフロントピラーガーニッシュ70は、本来的には基材28のみによってフロントピラーガーニッシュ70が構成されたタイプのであり、表皮42は使われていない。但し、この場合においても、悪路走行時等においてワイヤハーネス38やアンテナ等の長尺材が基材28を叩く打音が生じるのを防止すると共にカーテンエアバッグ34をラッピングする保護部材が基材28と擦れる等して損傷しカーテンエアバッグ34が傷が付くのを防止する目的でフェルト等のシート材を設けるが、このシート材に代わるものとしてダイラタント特性部材72が敷かれた構造になっている。
【0045】
なお、この第2実施形態においても、基材28とダイラタント特性部材72にはノッチ44、46及び脆弱部48、50が形成されており、カーテンエアバッグ34が展開するときのヒンジ52が形成されている。
【0046】
また、第1実施形態と同様に、ダイラタント特性部材72は、フロントピラーガーニッシュ70の上部所定範囲にのみ設定されている。この「上部所定範囲」の意味についても第1実施形態と同様であり、衝突時に乗員の頭部が当接する可能性がある範囲を指している。具体的には、車両上下方向(ピラー高さ方向)にあっては図7に破線で示したダイラタント特性部材72の下端部72Aの位置まで配設されており、車両前後方向にあっては図6及び図7に示されるように、基材28の前部28Bを除いた範囲である。補足すると、この実施形態の場合、第1実施形態と異なり、ダイラタント特性部材72が基材28の裏面側に配設されるので、前記「上部所定範囲」には触感が求められる範囲という要素は加わらない。
【0047】
(作用・効果)
上記構成によれば、前述した第1実施形態と同様に、エネルギー吸収リブ等のエネルギー吸収部材の機能をダイラタント特性部材72が担うので、乗員の頭部がフロントピラーガーニッシュ26に当接した際の衝撃の緩和を図ることができる。また、エネルギー吸収リブ等のエネルギー吸収部材を廃止することができるので、フロントピラーガーニッシュ70が出っ張らず、意匠性の向上(及びフロントピラーガーニッシュ26の細幅化によるドライバの視界改善)を図ることができる。
【0048】
また、本実施形態では、ダイラタント特性部材72がフロントピラーガーニッシュ70の基材28の裏面側に固定されているため、ワイヤハーネス38やアンテナ等の長尺材を配索したときに、当該長尺材は柔らかい状態のシート材と接触することになる。このため、ワイヤハーネス38等の長尺材が基材28に直接当たることにより生じる打音を低減することができる。
【0049】
なお、上記構成では、ダイラタント特性部材72は厚さが一様のシート材として構成されているが、これに限らず、例えば図8(A)、(B)に示されるように、円孔等の貫通孔78を多数配置して、これらの貫通孔78の形成個数やピッチ、分布、径等を適宜変更することにより、ダイラタント特性部材72のエネルギー吸収性能を調節するようにしてもよい。
【0050】
また、上記構成では、カーテンエアバッグ装置32が配設されていたが、カーテンエアバッグ装置を搭載することが必須という訳ではない。その場合においても、ワイヤハーネスやアンテナ等の長尺材がフロントピラーガーニッシュ70とフロントピラー本体部18との間に配設されるので、頭部衝突時の衝撃緩和と意匠性の向上の他に打音防止効果も得られる。
【0051】
〔上記実施形態の補足説明〕
上述した各実施形態では、フロントピラーガーニッシュ26に対して本発明を適用したが、これに限らず、リヤピラーガーニッシュに対して本発明を適用してもよいし、センタピラーガーニッシュに対して本発明を適用してもよい。
【0052】
上述した各実施形態では、基材28の上部所定範囲にのみダイラタント特性部材40、70を設定したが、これに限らず、基材28の前部28B及び下部も含めて基材28の車室内側の面又は車室外側の面の全範囲にダイラタント特性部材40、70を設定しても差し支えない。
【符号の説明】
【0053】
10 フロントピラー(ピラー)
18 フロントピラー本体部(ピラー本体部)
26 フロントピラーガーニッシュ(ピラーガーニッシュ)
28 基材(ピラーガーニッシュ本体部)
32 カーテンエアバッグ装置
34 カーテンエアバッグ
40 ダイラタント特性部材(シート材)
48 脆弱部
50 脆弱部
52 ヒンジ
64 接続部(脆弱部)
70 フロントピラー(ピラー)
72 ダイラタント特性部材(シート材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部に配置されると共に車両上下方向に沿って延在するピラー本体部に内張りされ、少なくとも基材を備えたピラーガーニッシュ本体部と、
このピラーガーニッシュ本体部の基材の裏面又は表面に配置され、無負荷時には柔軟性を有し衝撃荷重が入力されると硬化するダイラタント特性を備えたシート材と、
を有する自動車のピラーガーニッシュ構造。
【請求項2】
前記シート材は、前記ピラーガーニッシュ本体部の基材の表面側に固定されかつ表皮によって覆われている、
ことを特徴とする請求項1記載の自動車のピラーガーニッシュ構造。
【請求項3】
前記シート材は、前記ピラーガーニッシュ本体部の基材の裏面側に固定されている、
ことを特徴とする請求項1記載の自動車のピラーガーニッシュ構造。
【請求項4】
前記ピラー本体部はフロントピラー本体部とされると共に前記ピラーガーニッシュ本体部はフロントピラーガーニッシュ本体部とされており、
当該フロントピラー本体部と当該フロントピラーガーニッシュ本体部の基材との間には、少なくとも側面衝突時にルーフサイドレール下方へ膨張展開させるカーテンエアバッグの一部が収納されており、
さらに、前記フロントピラーガーニッシュ本体部の基材の裏面側及び前記シート材の裏面側にはフロントピラー本体部の長手方向に沿って脆弱部がそれぞれ設けられており、当該脆弱部が設けられることで当該カーテンエアバッグの展開時のヒンジがフロントピラーガーニッシュに形成されている、
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のピラーガーニッシュ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−153196(P2012−153196A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12196(P2011−12196)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】