自動車のフードストッパ構造
【課題】 フードを閉止する際に、フードの閉止時に作用する衝撃エネルギーを吸収するとともに、フード上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生した場合に歩行者の頭部に加えられる衝撃を効果的に緩和できるようにする。
【解決手段】 フード5を閉止する際に上記ストッパ7に入力される荷重の入力方向が略鉛直方向βに設定された自動車のフードストッパ構造において、上記ストッパ7を支持する支持部と、その後方側に設けられて車体側部材1の被取付部に取り付けられる第1脚部10とを備えた支持ブラケットを有し、この支持ブラケットの第1脚部11および上記車体側部材の被取付部27が後下がりの傾斜面に沿って設置されるとともに、この傾斜面に沿った方向βに一定値以上の荷重が作用したときに、車体側部材の被取付部27に沿って上記支持ブラケット8の第1脚部10を下方に移動させるように構成した。
【解決手段】 フード5を閉止する際に上記ストッパ7に入力される荷重の入力方向が略鉛直方向βに設定された自動車のフードストッパ構造において、上記ストッパ7を支持する支持部と、その後方側に設けられて車体側部材1の被取付部に取り付けられる第1脚部10とを備えた支持ブラケットを有し、この支持ブラケットの第1脚部11および上記車体側部材の被取付部27が後下がりの傾斜面に沿って設置されるとともに、この傾斜面に沿った方向βに一定値以上の荷重が作用したときに、車体側部材の被取付部27に沿って上記支持ブラケット8の第1脚部10を下方に移動させるように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の前部に設けられたフードの閉止時に緩衝材として機能するストッパがフードと車体側部材との間に設けられた自動車のフードストッパ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示すように、ゴム等の弾性を有する材料よりなるフードダンパを介して車体側受止部に当接支持される自動車のフード端部の支持構造において、車体側受止部とフード端部との少なくとも一方に、設定以上の荷重でフード端部が押されたときに変形可能な断面台形状の支持ブラケットからなる緩衝部を設けるとともに、該緩衝部とフード端部との間にフードダンパを配設することが行われている。
【特許文献1】実公昭63−11020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示された発明では、フードを閉止する際に、フードダンパを弾性変形させることにより、フードの閉止時に作用する衝撃エネルギーを吸収するとともに、フード上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生した場合に、上記緩衝部を変形させて衝撃エネルギーを吸収することにより、上記歩行者の頭部に加えられる衝撃をある程度緩和することが可能である。
【0004】
しかし、上記衝突事故の発生時に緩衝部となる支持ブラケットを変形させることによってフードに作用する衝撃エネルギーを吸収するように構成した場合には、フードの閉止時に大きな衝撃荷重が作用すると、上記支持ブラケットが塑性変形してフードを閉止状態に保持する機能が損なわれるという問題がある。このような問題が発生するのを防止するために、上記支持ブラケットの剛性を高い値に設定すると、フード上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生した場合に、上記支持ブラケットを早期に変形させることが困難であり、この支持ブラケットを変形させることによる衝撃エネルギーの吸収効果を充分に発揮させることができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、フードを閉止する際に、緩衝材としての機能を有するストッパを弾性変形させることによりフードの閉止時に作用する衝撃エネルギーを吸収することができるとともに、フード上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生した場合に歩行者の頭部に加えられる衝撃を効果的に緩和することができる自動車のフードストッパ構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車体の前部に設けられたフードの閉止時に緩衝材として機能するストッパがフードと車体側部材との間に設けられるとともに、フードを閉止する際に上記ストッパに入力される荷重の入力方向が略鉛直方向に設定された自動車のフードストッパ構造において、上記ストッパを支持する支持部と、その後方側に設けられて車体側部材の被取付部に取り付けられる第1脚部とを備えた支持ブラケットを有し、この支持ブラケットの第1脚部および上記車体側部材の被取付部が後下がりの傾斜面に沿って設置されるとともに、この傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が作用したときに、車体側部材の被取付部に沿って上記支持ブラケットの第1脚部を下方に移動させるように構成したものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の自動車のフードストッパ構造において、車体側部材の被取付部に棒状部材を設けるとともに、支持ブラケットの第1脚部に上記棒状部材が挿通される挿通部と、上記傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が作用したときに棒状部材がスライド変位するスリットとを設けたものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記請求項2に記載の自動車のフードストッパ構造において、支持ブラケットの第1脚部に棒状部材を設けるとともに、車体側部材の被取付部に上記棒状部材が挿通される挿通部と、上記傾斜面に沿って一定値以上の荷重が作用したときに棒状部材がスライド変位するスリットを設けたものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、上記請求項2に記載の自動車のフードストッパ構造において、支持ブラケットに入力される荷重が一定値以上となるまで棒状部材が上記スリットに沿って移動するのを規制する進入規制手段を設けたものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、上記請求項4に記載の自動車のフードストッパ構造において、上記支持ブラケットに、ストッパを支持する支持部と、車体側部材に設けられた棒状部材が挿通される挿通部とを設け、上記ストッパの支持部と棒状部材の挿通部との間に上記棒状部材の移動を規制する進入規制手段を配設するとともに、この進入規制手段を挟んで複数のスリットを直列に配設したものである。
【0011】
請求項6に係る発明は、上記請求項1に記載の自動車のフードストッパ構造において、支持ブラケットに、後上がりに傾斜した傾斜面を有するとともに、ストッパの支持部の前方側に配設されて車体側部材に取り付けられる第2脚部を設けたものである。
【0012】
請求項7に係る発明は、上記請求項1に記載の自動車のフードストッパ構造において、支持ブラケットにストッパが嵌着される支持孔を設けるとともに、このストッパに一定値以上の荷重が作用したときに、上記支持孔の拡開変形を促進する複数のスリットを支持孔の周囲に設けたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、フードを閉止する際には、支持ブラケットに支持されたストッパを弾性変形させることによりフードの閉止時に作用する衝撃エネルギーを吸収することができるとともに、フード上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生して後下がりの傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が上記支持ブラケットに作用した場合には、この支持ブラケットの第1脚部を車体側部材の被取付部に沿って下方に移動させることにより、上記歩行者の頭部等に加えられる衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、フード上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生して後下がりの傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が上記支持ブラケットに作用した場合には、支持ブラケットの第1脚部が、車体側部材の被取付部に設けられた棒状部材によってガイドされつつ下方に移動することにより、上記歩行者の頭部等に加えられる衝撃が安定して緩和されることになる。また、上記被取付部は車体剛性の寄与度が大きいために、上記スリットを形成することによる剛性の低下を生じさせたくない場合や、材質や板厚、形状等の条件によりスリットを被取付部に設けることが支持ブラケットに比べて困難である場合等には、上記スリットを支持ブラケットに設けた構成を採用することが適当である。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、フード上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生して後下がりの傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が上記支持ブラケットに作用した場合には、支持ブラケットの第1脚部に設けられた棒状部材が車体側部材の被取付部に設けられたスリットに沿ってガイドされつつ、上記支持ブラケットが下方に移動することにより、上記歩行者等に加えられる衝撃が安定して緩和されることになる。また、上記被取付部にスリットを形成することによる剛性低下が問題となることがなく、かつ材質や板厚、形状等の条件によりスリットを被取付部に設けることが困難でない場合には、上記棒状部材をガイドするスリットを支持ブラケットに設けることによる強度低下を防止するために、上記支持ブラケットにフランジを設けたり、板厚を増大させたりする等の補強を施すことなく、上記衝突事故の発生時に支持ブラケットを屈曲させることなくスムーズに下方にスライド変位させて荷重を吸収することができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、フードを閉止する際には、上記支持ブラケットに入力される荷重が一定値以上となるまで上記棒状部材がスリット内に進入することが防止されることにより、支持ブラケットに保持された上記ストッパによる衝撃エネルギーの吸収作用が充分に発揮されるとともに、フード上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生し、上記ストッパを支持する支持ブラケットに一定値以上の荷重が入力されて上記進入規制手段による棒状部材の進入規制状態が解除された時点で、上記棒状部材が適正時期に精度良くスリット内に進入して支持ブラケットの第1脚部が車体側部材の被取付部に沿って下方に移動することにより、上記歩行者の頭部等に加えられる衝撃が効果的に緩和されるという利点がある。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、フード上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生し、上記ストッパを支持する支持ブラケットに一定値以上の荷重が入力されて複数の進入規制手段による棒状部材の進入規制状態が解除されることにより、上記棒状部材が複数のスリット内に順次、進入して支持ブラケットの第1脚部が車体側部材の被取付部に沿って下方に移動しつつ、上記歩行者の頭部等に加えられる衝撃が効果的に緩和されるという利点がある。また、上記棒状部材がストッパの支持部に連通したスリット内に進入した時点で、このスリットを拡開変形させることにより、支持ブラケットに設けられたストッパの支持部から上記ストッパを効果的に離脱させることができるため、このストッパがフードと車体側部材との間に挟み込まれるという事態の発生を抑制し、上記歩行者の頭部等に加えられる衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、フード上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生して後下がりの傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が上記支持ブラケットに作用した場合には、支持ブラケットの第2脚部を容易に傾倒させて上記ストッパの支持部を車体の後方側に移動させることにより、その後方側に設けられた第1脚部を車体側部材の被取付部に沿ってスムーズに移動させることができる。
【0019】
請求項7に係る発明によれば、フード上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生して後下がりの傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が上記支持ブラケットに作用した場合には、支持ブラケットに設けられた複数のスリットを利用してストッパの支持部を容易に拡開変形させることにより、この支持部からストッパを適正時期に精度良く離脱させて、ストッパがフードと車体側部材との間に挟み込まれるという事態の発生を効果的に防止できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動車のフードストッパ構造を備えた前部車体を示している。この前部車体には、前方部に設けられたシュラウドアッパ1と、左右両側辺部に設けられたフロントフェンダエプロン2と、後方部に設けられたダッシュパネル3とにより囲繞されたエンジンルーム4の上端開口部を開閉するフード5が設けられている。
【0021】
上記フード5は、その後端部下面とフロントフェンダパネル2の後端部上面との間に配設されたフードヒンジ6を支点として揺動操作されることにより、エンジンルーム4の上端開口部を閉止した状態と開放した状態とに変位可能に支持されている。また、上記フード5の前端部下面とシュラウドアッパ1の上面との間には、フード5を閉止状態に保持する図略のフードロックが設けられるとともに、フード5の閉止時に緩衝材として機能するストッパ7がシュラウドアッパ1上の4個所に設けられている。
【0022】
上記ストッパ7は、合成ゴム材等により形成された円柱状体からなり、図2および図3に示すように、シュラウドアッパ1に取り付けられた支持ブラケット8に支持されるように構成されている。この支持ブラケット8には、取付ボルト9によりシュラウドアッパ1の被取付部に締着される第1脚部10と、この第1脚部10の上端部から車体の前方側に延びる天板部11と、この天板部11の前端部に連設された後上がりの傾斜面12を有する第2脚部13とが設けられている。この支持ブラケット8の第2脚部13には、上記傾斜面12の下端部から車体の前方側に向けて突出するフランジ14が設けられるとともに、このフランジ14に上記取付ボルト15の挿通孔16が形成されている。
【0023】
上記天板部11の中央部には、ストッパ7が嵌着される支持孔17からなるストッパ7の支持部が形成されるとともに、この支持孔17は、その周縁部が螺旋状に形成されている。また、ストッパ7の下方部には雄ねじ状の突条部7aが形成され、この突条部7aが上記支持孔17にねじ込まれることにより、この支持孔17に上記ストッパ7が嵌着されるようになっている。
【0024】
そして、上記支持ブラケット8に支持されたストッパ7は、フード5の下面に設けられたフードインナパネル21の下面が当接するように配設され、フード5の閉止時に、図3の矢印αに示すように略鉛直方向の荷重が上記ストッパ7に入力され、この荷重に応じて上記ストッパ7が弾性変形することにより、フード閉止時の衝撃エネルギーが吸収されるとともに、自動車の走行時におけるフード5の振動が上記ストッパ7により規制されるようになっている。
【0025】
上記第1脚部10には、下端部に取付ボルト9が挿通される挿通孔18が形成されるとともに、その上方側に長孔状の第1スリット19と、第2スリット20とが連続して配設され、かつ補強用のフランジ部10aが第1脚部10の左右両側辺部に設けられている。また、上記第1脚部10の上端部および天板部11の後方部には、上記支持孔17の後縁部に連通する長孔状の第3スリット22が形成されるとともに、支持ブラケット8の天板部11には、上記支持孔17の前縁部に連通するU字状の切欠きからなる第4スリット23が形成されている。
【0026】
上記取付ボルト9の挿通孔18とその上方に位置する第1スリット19との間には、取付ボルト13のねじ軸が第1スリット19内に進入するのを規制する第1閉塞部24からなる進入規制手段が設けられるとともに、上記第1スリット19とその上方に位置する第2スリット20との間には、取付ボルト9のねじ軸が第2スリット20内に進入するのを規制する第2閉塞部25からなる進入規制手段が設けられ、かつ上記第2スリット20と第3スリット22との間には取付ボルト9のねじ軸が第3スリット20内に進入するのを規制する第3閉塞部26からなる進入規制手段が設けられている。
【0027】
上記シュラウドアッパ1は、後下がりに傾斜した後壁部27を有し、この後壁部27に、支持ブラケット8の第1脚部10が取付ボルト9により取り付けられるとともに、シュラウドアッパ1の上面前方部に、支持ブラケット8の第2脚部13が取付ボルト15により取り付けられるように構成されている。また、シュラウドアッパ1の上面後方部には、上記支持孔17から離脱したストッパ7の収容部となる凹部28が設けられている。
【0028】
そして、上記支持ブラケット8の第1脚部10およびシュラウドアッパ1の後壁部27が設置された後下がりの傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が作用したときには、上記第1〜第3閉塞部24〜26が取付ボルト15のねじ軸により順次、破断されることにより、このねじ軸が上記第1〜第3スリット19,20,22内に進入するとともに、上記シュラウドアッパ1の後壁部27に沿って支持ブラケット8の第1脚部10が下方に移動するように、上記取付ボルト15による第1脚部10の締着力および上記第1〜第3閉塞部24〜26の破断強度等が設定されている。
【0029】
上記のように車体の前部に設けられたフード5の閉止時に緩衝材として機能するストッパ7が、フード5と車体側部材(シュラウドアッパ1)との間に設けられるとともに、フード5の閉止時に上記ストッパ7に入力される荷重の入力方向αが略鉛直方向に設定された自動車のフードストッパ構造において、上記ストッパ7を支持する支持部(支持孔17)と、その後方側に設けられて車体側部材の被取付部に取り付けられる第1脚部10とを備えた支持ブラケット8を設け、この支持ブラケット8の第1脚部10および上記車体側部材の被取付部を後下がりの傾斜面に沿って設置するとともに、この傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が作用したときに、車体側部材の被取付部(シュラウドアッパ1の後壁部27)に沿って上記支持ブラケット8の第1脚部10を下方に移動させるように構成したため、フード5を閉止する際には、上記ストッパ7を緩衝材として効果的に機能させることができるとともに、自動車の走行時に歩行者が車体の前面に衝突して図4に示すように、歩行者がフード5上に倒れ込んで歩行者の頭部がフード5にぶつかる等の衝突事故が発生した場合には、このフード5をクッション材として機能させて上記歩行者の頭部に加えられる衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0030】
すなわち、上記フード5の閉止時には、その後端部に設けられたフードヒンジ6を支点にしてフード5が揺動変位することにより、図3の矢印αに示すように、略鉛直方向の荷重が上記ストッパ7および支持ブラケット8に入力されるため、この支持ブラケット8の第1脚部10をシュラウドアッパ1の後壁部27に圧接させる方向γの分力が作用することになる。したがって、フード5を閉止する際には、上記分力に対応した摩擦抵抗と、取付ボルト9の締着力に対応した移動抵抗との両方により、略鉛直方向αに作用する上記荷重を安定して支持することができ、支持ブラケット8が塑性変形したり、上記第1脚部10の取付け位置がずれたりするのを効果的に防止できるという利点がある。
【0031】
これに対してフード5上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生した場合には、図3の矢印βに示すように、上記支持ブラケット8の第1脚部10およびシュラウドアッパ1の後壁部27が設置された後下がりの傾斜面に沿って荷重が入力されるため、支持ブラケット8の第1脚部10をシュラウドアッパ1の後壁部27に圧接させる方向γに大きな分力が作用することはない。したがって、上記衝突事故の発生時には、比較的に早い段階で、シュラウドアッパ1の後壁部27に沿って上記支持ブラケット8の第1脚部10を下方に移動させることにより、図5示すように、支持ブラケット8を塑性変形させるとともに、フード5を下方に大きく変位させて上記歩行者の頭部等に作用する衝撃を効果的に緩和することができる。
【0032】
特に、上記第1実施形態では、シュラウドアッパ1の後壁部27からなる車体側部材の被取付部に取付ボルト9を設けるとともに、支持ブラケット8の第1脚部10に上記取付ボルト9のねじ軸からなる棒状部材が挿通される挿通孔18と、上記シュラウドアッパ1の後壁部27および支持ブラケット8の第1脚部10が設置された後下がりの傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が作用したときに上記棒状部材がスライド変位する第1スリット19等とを設けたため、フード5上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生して、上記傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が支持ブラケット8に作用した場合には、上記棒状部材により支持ブラケット8の第1脚部10をガイドしつつ下方に移動させることにより、上記歩行者の頭部等に加えられる衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0033】
また、上記第1実施形態では、支持ブラケット8に入力される荷重が一定値以上となるまで上記取付ボルト9のねじ軸からなる棒状部材が上記第1スリット19に沿って移動するのを上記第1閉塞部24からなる進入規制手段により規制するように構成したため、フード5を閉止する際には、支持ブラケット8に入力される荷重を上記進入規制手段(第1閉塞部24)において支持することにより、上記第1スリット19内に棒状部材が進入するのを防止してフード閉止時の衝撃エネルギーを上記ストッパ7により効果的に吸収することができる。
【0034】
一方、フード5上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生した場合には、上記ストッパ7を支持する支持ブラケット8に一定値以上の荷重が入力されて上記進入規制手段による棒状部材の進入規制状態が解除された時点、つまり上記第1閉塞部24が破断された時点で、上記棒状部材を第1スリット19内に進入させて支持ブラケット8の第1脚部10を車体側部材の被取付部(シュラウドアッパ1の後壁部27)に沿って下方に移動させることにより、上記フード5をクッション材として効果的に機能させて上記歩行者の頭部等に加えられる衝撃を充分に緩和できるという利点がある。しかも、上記第1閉塞部24の強度を適宜の値に設定することにより、上記棒状部材が第1スリット19内に進入する時点の荷重を容易かつ適正値に設定できるという利点がある。
【0035】
また、上記のように支持ブラケット8に、ストッパ7を支持する支持孔17からなる支持部と、車体側部材に設けられた棒状部材が挿通される挿通孔18からなる挿通部とを設け、上記ストッパ7の支持部と棒状部材の挿通部との間に上記棒状部材の移動を規制する第1〜第3閉塞部24〜26からなる進入規制手段を配設するとともに、この進入規制手段を挟んで複数のスリット19,20,22を直列に配設した場合には、フード5上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生し、上記ストッパ7を支持する支持ブラケット8に一定値以上の荷重が入力されて複数の進入規制手段による棒状部材の進入規制状態が解除されることにより、上記棒状部材が複数のスリット内に順次、進入して支持ブラケット8の第1脚部10が車体側部材の被取付部(後壁部27)に沿って下方に移動しつつ、上記歩行者の頭部等に加えられる衝撃が効果的に緩和されるという利点がある。
【0036】
すなわち、上記衝突事故の発生時には、図6の実線Aで示すように、ストッパ7に入力される荷重が一定値以上となる時点t1までの間にストッパ7が弾性変形することにより衝撃エネルギーが吸収される。次いで、支持ブラケット8の第1〜第3閉塞部24〜26が順次、破断され、この破断時点t2〜t4で衝撃エネルギーが段階的に吸収されるとともに、支持ブラケット8の第1脚部10がシュラウドアッパ1の後壁部27に沿って下降することにより、ピーク荷重が効果的に抑制されつつ、フード5によるクッション作用が充分に発揮されて歩行者の頭部等に加えられる衝撃を効果的に緩和されることになる。
【0037】
また、上記取付ボルト9のねじ軸からなる棒状部材がストッパ7の支持孔17に連通した第3スリット22内に進入することにより、この第3スリット22が拡幅されるとともに、上記支持孔17が所定径に拡開変形された時点t5で、この支持孔17から上記ストッパが効果的に離脱されるため、特許文献1に示されるように、車体側部材にストッパの下部が確実に落とし込まれる逃がし孔を形成する等の手段を講じることなく、上記ストッパ7がフード5と車体側部材との間に挟み込まれるのを防止し、上記フード5を充分に変形させて衝撃エネルギーを吸収することにより、上記歩行者の頭部等に加えられる衝撃を効果的に緩和することができる。
【0038】
例えば、フード5とシュラウドアッパ1からなる車体側部材との間に上記ストッパ7が挟み込まれた場合には、図6の仮想線Bで示すように、歩行者の頭部等がフード5に上面に衝突する事故が発生した時点t0の後、上記ストッパ7の挟み込みが発生する時点taまで間は、このストッパ7に作用する荷重が略一定の割合で上昇するとともに、上記挟み込みが発生した時点taの後に、このストッパ7によりフード5の変形が阻止されることになる結果、上記歩行者の頭部等に加えられる衝撃荷重が急上昇することになる。
【0039】
これに対して上記第1実施形態のように、図6の実線Aで示すように、支持ブラケット8に所定の荷重が入力された時点t5で、上記支持孔17からストッパ7を離脱させるように構成した場合には、このストッパ7が離脱した時点t5でフード5を大きく変形させることにより、従来よりもピーク荷重を抑えながらフード5がシュラウドアッパ1に当接する前に衝撃エネルギーを充分に吸収することができるとともに、このフード5の下降ストロークを充分に確保して歩行者の頭部等に加えられる衝撃荷重を急減させることができる。
【0040】
また、上記第1実施形態では、支持ブラケット8に設けられた第3スリット22の設置部と反対側(前端部側)の位置において、上記ストッパ7の支持孔17に連通する第4スリット(U字状の切欠き)23を設けることにより、上記ストッパ7に一定値以上の荷重が作用したときに上記支持孔17の拡開変形を促進する複数のスリット22,23を支持孔17の周囲に配設したため、この支持ブラケット8に一定値以上の荷重が作用して上記取付ボルト13のねじ軸が支持ブラケット8の第3スリット22内に進入した時点で、上記支持孔17からなるストッパ7の支持部を容易に拡開変形させて、この支持孔17からストッパ7を、より適正時期に精度良く離脱させることができるという利点がある。
【0041】
上記第1実施形態では、支持ブラケット8に設けられたストッパ7の支持孔17の前方側に、シュラウドアッパ1に取り付けられるとともに、後上がりに傾斜した傾斜面12を有する第2脚部13を設けたため、フード5上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生して上記後下がりの傾斜面に沿った方向βに一定値以上の荷重が上記支持ブラケット8に作用した場合に、支持ブラケット8の第2脚部13を容易に傾倒させて上記ストッパ7の支持部を車体の後方側に移動させることにより、その後方側に設けられた上記第1脚部10を車体側部材の被取付部(後壁部27)に沿ってスムーズに移動させることができる。
【0042】
すなわち、フード5上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生した場合には、図3に示すように、第2脚部13の傾斜面12と略直交する方向βに荷重が作用するため、上記傾斜面12の下端部を支点にして上記第2脚部13の傾倒を増大させる方向δに大きな曲げモーメントが作用し、これに曲げモーメントに応じて支持ブラケット8を容易に塑性変形させることにより、図5に示すように、支持ブラケット8の天板部11および傾斜面12をシュラウドアッパ1上に倒伏させるとともに、第1脚部10をシュラウドアッパ1の後壁部27に沿ってスムーズに下降させることができる。
【0043】
さらに、上記第1実施形態では、シュラウドアッパ1の上面後方部に凹部28を設け、上記支持ブラケット8に設けられた支持孔17から離脱したストッパ7を上記凹部28内に収容するように構成したため、上記ストッパ7を紛失したり、エンジンルーム内の補機等に上記ストッパ7が噛み込んだりするという事態の発生を効果的に低減することができる。また、上記のように第1脚部10の左右両側に補強用のフランジ部10aを設けた場合には、支持ブラケット8に一定値以上の荷重が入力された場合に、上記第1脚部10が変形することに起因して、この第1脚部10を下方にスライド変位させることができなくなるという事態の発生を効果的に防止できるという利点がある。
【0044】
図7は、上記支持ブラケット8の第1脚部10に設けられた棒状部材の挿通孔18からなる挿通部に連通した第1スリット29と、支持ブラケット8の天板部11に設けられた支持孔17からなるストッパ7の支持部に連通した第2スリット30とが支持ブラケット8に設けられるとともに、上記第1スリット29と第2スリット30との間に閉塞部31からなる進入規制手段を設けることにより、支持ブラケット8に入力される荷重が一定値以上となるまで、上記棒状部材が第2スリット30内に進入するのを規制するように構成された本発明の第2実施形態を示している。
【0045】
上記第2実施形態では、図8の実線Cで示すように、ストッパ7に入力される荷重が一定値以上となる時点t1までの間にストッパ7が弾性変形することにより衝撃荷重が吸収されるとともに、その後に荷重が上昇するのに伴って支持ブラケット8の挿通孔18内にある取付ボルト9のねじ軸が上記第1スリット29内に進入し、この進入時点t21から上記ねじ軸が閉塞部31に当接する時点t22までの間は、それ程大きな荷重の上昇を生じることなく、上記ねじ軸により支持ブラケット8の第1脚部10がガイドされつつ、支持ブラケット8の第1脚部10がシュラウドアッパ1の後壁部27に沿って下降することにより、歩行者の頭部等に加えられる衝撃が安定して緩和されることになる。そして、上記閉塞部31に作用する荷重が一定値となった時点t23で、この閉塞部31が破断されて、上記ねじ軸が適正時期に精度良く第2スリット30内に進入し、その後にストッパ7が上記支持孔17から離脱した時点t24で、フード5が大きく変形することにより歩行者の頭部等に加えられる衝撃荷重が急減されることになる。
【0046】
なお、上記閉塞部31からなる進入規制手段に代え、支持ブラケット8に形成された1本のスリットを部分的に被覆する別体の被覆プレートを設け、この被覆プレートによって上記取付ボルト9のねじ軸からなる棒状部材の移動を規制し、または上記スリットの幅寸法を部分的に小さくしあるいはスリットの側辺部の板厚を部分的に増大させる等により上記棒状部材に移動を規制するように構成してもよい。
【0047】
また、図9は、支持ブラケット8の第1脚部10に設けられた挿通孔32に取付ボルト9のねじ軸を挿通させて支持させるとともに、シュラウドアッパ1の後壁部27からなる車体側部材の被取付部に上記ねじ軸が挿通される挿通孔33からなる挿通部と、この挿通孔33の下端部から下方に延びる長孔状のスリット34とを設け、上記後壁部27の傾斜面に沿って一定値以上の荷重が作用したときに取付ボルト9のねじ軸をスリット34に沿ってスライド変位させるように構成した本発明の第3実施形態を示している。
【0048】
上記第3実施形態では、図10の実線Dで示すように、ストッパ7に入力される荷重が一定値以上となる時点t1までの間にストッパ7が弾性変形することにより衝撃荷重が吸収されるとともに、その後に荷重が上昇するのに伴って図11に示すようにシュラウドアッパ1の挿通孔33内にある取付ボルト9のねじ軸が、図12に示すように上記スリット34内に進入し、この進入時点t31から上記ねじ軸が上記スリット34の下端部に当接する時点t32までの間は、それ程大きな荷重の上昇を生じることなく、上記ねじ軸により支持ブラケット8の第1脚部10がガイドされつつ、支持ブラケット8の第1脚部10がシュラウドアッパ1の後壁部27に沿って下降することにより、歩行者の頭部等に加えられる衝撃が安定して緩和されることになる。そして、上記支持ブラケット8に作用する荷重が一定値となった時点t33で、上記支持孔17が拡開変形してストッパ7が支持ブラケット8から離脱することになる。
【0049】
また、上記第3実施形態のように棒状部材がスライド変位するスリット34を上記シュラウドアッパ1の後壁部27からなる車体側部材の被取付部に設けた場合には、上記第1,第2実施形態のように棒状部材がスライド変位するスリット19等を支持ブラケット8に設けた場合のように支持ブラケット8の剛性が低下する等の問題が生じることがないため、上記支持ブラケット8にフランジ10aを設けたり、板厚を増大させたりする等の補強を施すことなく、上記衝突事故の発生時に支持ブラケット8が屈曲するのを防止して、この支持ブラケット8をスムーズに下方にスライド変位させることができる。したがって、上記被取付部にスリット34を形成することによって車体の剛性が低下する等の問題となることがなく、かつ材質や板厚、形状等の条件によりスリット34を上記被取付部に設けることが困難でない場合には、上記第4実施形態の構成を採用することが好ましい。
【0050】
一方、上記被取付部にスリット34が形成されることによる車体の剛性が低下するという問題が生じる場合や、材質や板厚、形状等の条件によりスリット34を被取付部に設けることが困難である場合等には、上記第1,第2実施形態のように棒状部材がスライド変位するスリット19を支持ブラケット8に設けた構成を採用することが好ましい。
【0051】
なお、上記のように取付ボルト13のねじ軸からなる棒状部材を上記第1スリット18内に進入させることにより、この第1スリット18を拡幅して上記ストッパ7の支持孔17を拡開変形させるように構成された上記第1〜第3実施形態に代え、三角柱状の楔体等からなる棒状部材を車体側部材であるシュラウドアッパ1の後壁部27または支持ブラケット8の第1脚部10に突設した構造としてもよい。
【0052】
また、上記各実施形態では、支持ブラケット8をシュラウドアッパ1からなる車体側部材に取り付けた例について説明したが、上記シュラウドアッパ1に代え、フロントフェンダ2の上面等に取り付けた構造としてもよい。さらに、上記各実施形態に示すように、フード5の後端部に設けられたフードヒンジ6を支点して前開き可能に構成された上記フード5に代え、後開きタイプのフードを備えた自動車のフードストッパ構造についても本発明を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る自動車のフードストッパ構造を備えた前部車体構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る自動車のフードストッパ構造の第1実施形態を示す分解斜視図である。
【図3】フードの閉止状態を示す側面断面図である。
【図4】自動車のフード上に歩行者が乗り上げた状態を示す斜視図である。
【図5】支持ブラケットの変形状態を示す側面断面図である。
【図6】フードから支持ブラケットに入力される荷重の変化状態を示すグラフである。
【図7】本発明に係る自動車のフードストッパ構造の第2実施形態を示す分解斜視図である。
【図8】第2実施形態の支持ブラケットに入力される荷重の変化状態を示すグラフである。
【図9】本発明に係る自動車のフードストッパ構造の第3実施形態を示す斜視図である。
【図10】第3実施形態の支持ブラケットに入力される荷重の変化状態を示すグラフである。
【図11】第3実施形態において支持ブラケットに荷重が入力される前の状態を示す断面図である。
【図12】第3実施形態において支持ブラケットに荷重が入力された後の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 シュラウドアッパ(車体側部材)
5 フード
8 支持ブラケット
9 取付ボルト(棒状部材)
11 第1脚部
13 第2脚部
17 支持孔(支持部)
18,33 挿通孔(挿通部)
19,20,22,23,29,30,34 スリット
24,25,26,31 閉塞部(進入規制手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の前部に設けられたフードの閉止時に緩衝材として機能するストッパがフードと車体側部材との間に設けられた自動車のフードストッパ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示すように、ゴム等の弾性を有する材料よりなるフードダンパを介して車体側受止部に当接支持される自動車のフード端部の支持構造において、車体側受止部とフード端部との少なくとも一方に、設定以上の荷重でフード端部が押されたときに変形可能な断面台形状の支持ブラケットからなる緩衝部を設けるとともに、該緩衝部とフード端部との間にフードダンパを配設することが行われている。
【特許文献1】実公昭63−11020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示された発明では、フードを閉止する際に、フードダンパを弾性変形させることにより、フードの閉止時に作用する衝撃エネルギーを吸収するとともに、フード上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生した場合に、上記緩衝部を変形させて衝撃エネルギーを吸収することにより、上記歩行者の頭部に加えられる衝撃をある程度緩和することが可能である。
【0004】
しかし、上記衝突事故の発生時に緩衝部となる支持ブラケットを変形させることによってフードに作用する衝撃エネルギーを吸収するように構成した場合には、フードの閉止時に大きな衝撃荷重が作用すると、上記支持ブラケットが塑性変形してフードを閉止状態に保持する機能が損なわれるという問題がある。このような問題が発生するのを防止するために、上記支持ブラケットの剛性を高い値に設定すると、フード上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生した場合に、上記支持ブラケットを早期に変形させることが困難であり、この支持ブラケットを変形させることによる衝撃エネルギーの吸収効果を充分に発揮させることができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、フードを閉止する際に、緩衝材としての機能を有するストッパを弾性変形させることによりフードの閉止時に作用する衝撃エネルギーを吸収することができるとともに、フード上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生した場合に歩行者の頭部に加えられる衝撃を効果的に緩和することができる自動車のフードストッパ構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車体の前部に設けられたフードの閉止時に緩衝材として機能するストッパがフードと車体側部材との間に設けられるとともに、フードを閉止する際に上記ストッパに入力される荷重の入力方向が略鉛直方向に設定された自動車のフードストッパ構造において、上記ストッパを支持する支持部と、その後方側に設けられて車体側部材の被取付部に取り付けられる第1脚部とを備えた支持ブラケットを有し、この支持ブラケットの第1脚部および上記車体側部材の被取付部が後下がりの傾斜面に沿って設置されるとともに、この傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が作用したときに、車体側部材の被取付部に沿って上記支持ブラケットの第1脚部を下方に移動させるように構成したものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の自動車のフードストッパ構造において、車体側部材の被取付部に棒状部材を設けるとともに、支持ブラケットの第1脚部に上記棒状部材が挿通される挿通部と、上記傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が作用したときに棒状部材がスライド変位するスリットとを設けたものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記請求項2に記載の自動車のフードストッパ構造において、支持ブラケットの第1脚部に棒状部材を設けるとともに、車体側部材の被取付部に上記棒状部材が挿通される挿通部と、上記傾斜面に沿って一定値以上の荷重が作用したときに棒状部材がスライド変位するスリットを設けたものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、上記請求項2に記載の自動車のフードストッパ構造において、支持ブラケットに入力される荷重が一定値以上となるまで棒状部材が上記スリットに沿って移動するのを規制する進入規制手段を設けたものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、上記請求項4に記載の自動車のフードストッパ構造において、上記支持ブラケットに、ストッパを支持する支持部と、車体側部材に設けられた棒状部材が挿通される挿通部とを設け、上記ストッパの支持部と棒状部材の挿通部との間に上記棒状部材の移動を規制する進入規制手段を配設するとともに、この進入規制手段を挟んで複数のスリットを直列に配設したものである。
【0011】
請求項6に係る発明は、上記請求項1に記載の自動車のフードストッパ構造において、支持ブラケットに、後上がりに傾斜した傾斜面を有するとともに、ストッパの支持部の前方側に配設されて車体側部材に取り付けられる第2脚部を設けたものである。
【0012】
請求項7に係る発明は、上記請求項1に記載の自動車のフードストッパ構造において、支持ブラケットにストッパが嵌着される支持孔を設けるとともに、このストッパに一定値以上の荷重が作用したときに、上記支持孔の拡開変形を促進する複数のスリットを支持孔の周囲に設けたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、フードを閉止する際には、支持ブラケットに支持されたストッパを弾性変形させることによりフードの閉止時に作用する衝撃エネルギーを吸収することができるとともに、フード上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生して後下がりの傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が上記支持ブラケットに作用した場合には、この支持ブラケットの第1脚部を車体側部材の被取付部に沿って下方に移動させることにより、上記歩行者の頭部等に加えられる衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、フード上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生して後下がりの傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が上記支持ブラケットに作用した場合には、支持ブラケットの第1脚部が、車体側部材の被取付部に設けられた棒状部材によってガイドされつつ下方に移動することにより、上記歩行者の頭部等に加えられる衝撃が安定して緩和されることになる。また、上記被取付部は車体剛性の寄与度が大きいために、上記スリットを形成することによる剛性の低下を生じさせたくない場合や、材質や板厚、形状等の条件によりスリットを被取付部に設けることが支持ブラケットに比べて困難である場合等には、上記スリットを支持ブラケットに設けた構成を採用することが適当である。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、フード上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生して後下がりの傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が上記支持ブラケットに作用した場合には、支持ブラケットの第1脚部に設けられた棒状部材が車体側部材の被取付部に設けられたスリットに沿ってガイドされつつ、上記支持ブラケットが下方に移動することにより、上記歩行者等に加えられる衝撃が安定して緩和されることになる。また、上記被取付部にスリットを形成することによる剛性低下が問題となることがなく、かつ材質や板厚、形状等の条件によりスリットを被取付部に設けることが困難でない場合には、上記棒状部材をガイドするスリットを支持ブラケットに設けることによる強度低下を防止するために、上記支持ブラケットにフランジを設けたり、板厚を増大させたりする等の補強を施すことなく、上記衝突事故の発生時に支持ブラケットを屈曲させることなくスムーズに下方にスライド変位させて荷重を吸収することができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、フードを閉止する際には、上記支持ブラケットに入力される荷重が一定値以上となるまで上記棒状部材がスリット内に進入することが防止されることにより、支持ブラケットに保持された上記ストッパによる衝撃エネルギーの吸収作用が充分に発揮されるとともに、フード上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生し、上記ストッパを支持する支持ブラケットに一定値以上の荷重が入力されて上記進入規制手段による棒状部材の進入規制状態が解除された時点で、上記棒状部材が適正時期に精度良くスリット内に進入して支持ブラケットの第1脚部が車体側部材の被取付部に沿って下方に移動することにより、上記歩行者の頭部等に加えられる衝撃が効果的に緩和されるという利点がある。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、フード上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生し、上記ストッパを支持する支持ブラケットに一定値以上の荷重が入力されて複数の進入規制手段による棒状部材の進入規制状態が解除されることにより、上記棒状部材が複数のスリット内に順次、進入して支持ブラケットの第1脚部が車体側部材の被取付部に沿って下方に移動しつつ、上記歩行者の頭部等に加えられる衝撃が効果的に緩和されるという利点がある。また、上記棒状部材がストッパの支持部に連通したスリット内に進入した時点で、このスリットを拡開変形させることにより、支持ブラケットに設けられたストッパの支持部から上記ストッパを効果的に離脱させることができるため、このストッパがフードと車体側部材との間に挟み込まれるという事態の発生を抑制し、上記歩行者の頭部等に加えられる衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、フード上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生して後下がりの傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が上記支持ブラケットに作用した場合には、支持ブラケットの第2脚部を容易に傾倒させて上記ストッパの支持部を車体の後方側に移動させることにより、その後方側に設けられた第1脚部を車体側部材の被取付部に沿ってスムーズに移動させることができる。
【0019】
請求項7に係る発明によれば、フード上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生して後下がりの傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が上記支持ブラケットに作用した場合には、支持ブラケットに設けられた複数のスリットを利用してストッパの支持部を容易に拡開変形させることにより、この支持部からストッパを適正時期に精度良く離脱させて、ストッパがフードと車体側部材との間に挟み込まれるという事態の発生を効果的に防止できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動車のフードストッパ構造を備えた前部車体を示している。この前部車体には、前方部に設けられたシュラウドアッパ1と、左右両側辺部に設けられたフロントフェンダエプロン2と、後方部に設けられたダッシュパネル3とにより囲繞されたエンジンルーム4の上端開口部を開閉するフード5が設けられている。
【0021】
上記フード5は、その後端部下面とフロントフェンダパネル2の後端部上面との間に配設されたフードヒンジ6を支点として揺動操作されることにより、エンジンルーム4の上端開口部を閉止した状態と開放した状態とに変位可能に支持されている。また、上記フード5の前端部下面とシュラウドアッパ1の上面との間には、フード5を閉止状態に保持する図略のフードロックが設けられるとともに、フード5の閉止時に緩衝材として機能するストッパ7がシュラウドアッパ1上の4個所に設けられている。
【0022】
上記ストッパ7は、合成ゴム材等により形成された円柱状体からなり、図2および図3に示すように、シュラウドアッパ1に取り付けられた支持ブラケット8に支持されるように構成されている。この支持ブラケット8には、取付ボルト9によりシュラウドアッパ1の被取付部に締着される第1脚部10と、この第1脚部10の上端部から車体の前方側に延びる天板部11と、この天板部11の前端部に連設された後上がりの傾斜面12を有する第2脚部13とが設けられている。この支持ブラケット8の第2脚部13には、上記傾斜面12の下端部から車体の前方側に向けて突出するフランジ14が設けられるとともに、このフランジ14に上記取付ボルト15の挿通孔16が形成されている。
【0023】
上記天板部11の中央部には、ストッパ7が嵌着される支持孔17からなるストッパ7の支持部が形成されるとともに、この支持孔17は、その周縁部が螺旋状に形成されている。また、ストッパ7の下方部には雄ねじ状の突条部7aが形成され、この突条部7aが上記支持孔17にねじ込まれることにより、この支持孔17に上記ストッパ7が嵌着されるようになっている。
【0024】
そして、上記支持ブラケット8に支持されたストッパ7は、フード5の下面に設けられたフードインナパネル21の下面が当接するように配設され、フード5の閉止時に、図3の矢印αに示すように略鉛直方向の荷重が上記ストッパ7に入力され、この荷重に応じて上記ストッパ7が弾性変形することにより、フード閉止時の衝撃エネルギーが吸収されるとともに、自動車の走行時におけるフード5の振動が上記ストッパ7により規制されるようになっている。
【0025】
上記第1脚部10には、下端部に取付ボルト9が挿通される挿通孔18が形成されるとともに、その上方側に長孔状の第1スリット19と、第2スリット20とが連続して配設され、かつ補強用のフランジ部10aが第1脚部10の左右両側辺部に設けられている。また、上記第1脚部10の上端部および天板部11の後方部には、上記支持孔17の後縁部に連通する長孔状の第3スリット22が形成されるとともに、支持ブラケット8の天板部11には、上記支持孔17の前縁部に連通するU字状の切欠きからなる第4スリット23が形成されている。
【0026】
上記取付ボルト9の挿通孔18とその上方に位置する第1スリット19との間には、取付ボルト13のねじ軸が第1スリット19内に進入するのを規制する第1閉塞部24からなる進入規制手段が設けられるとともに、上記第1スリット19とその上方に位置する第2スリット20との間には、取付ボルト9のねじ軸が第2スリット20内に進入するのを規制する第2閉塞部25からなる進入規制手段が設けられ、かつ上記第2スリット20と第3スリット22との間には取付ボルト9のねじ軸が第3スリット20内に進入するのを規制する第3閉塞部26からなる進入規制手段が設けられている。
【0027】
上記シュラウドアッパ1は、後下がりに傾斜した後壁部27を有し、この後壁部27に、支持ブラケット8の第1脚部10が取付ボルト9により取り付けられるとともに、シュラウドアッパ1の上面前方部に、支持ブラケット8の第2脚部13が取付ボルト15により取り付けられるように構成されている。また、シュラウドアッパ1の上面後方部には、上記支持孔17から離脱したストッパ7の収容部となる凹部28が設けられている。
【0028】
そして、上記支持ブラケット8の第1脚部10およびシュラウドアッパ1の後壁部27が設置された後下がりの傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が作用したときには、上記第1〜第3閉塞部24〜26が取付ボルト15のねじ軸により順次、破断されることにより、このねじ軸が上記第1〜第3スリット19,20,22内に進入するとともに、上記シュラウドアッパ1の後壁部27に沿って支持ブラケット8の第1脚部10が下方に移動するように、上記取付ボルト15による第1脚部10の締着力および上記第1〜第3閉塞部24〜26の破断強度等が設定されている。
【0029】
上記のように車体の前部に設けられたフード5の閉止時に緩衝材として機能するストッパ7が、フード5と車体側部材(シュラウドアッパ1)との間に設けられるとともに、フード5の閉止時に上記ストッパ7に入力される荷重の入力方向αが略鉛直方向に設定された自動車のフードストッパ構造において、上記ストッパ7を支持する支持部(支持孔17)と、その後方側に設けられて車体側部材の被取付部に取り付けられる第1脚部10とを備えた支持ブラケット8を設け、この支持ブラケット8の第1脚部10および上記車体側部材の被取付部を後下がりの傾斜面に沿って設置するとともに、この傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が作用したときに、車体側部材の被取付部(シュラウドアッパ1の後壁部27)に沿って上記支持ブラケット8の第1脚部10を下方に移動させるように構成したため、フード5を閉止する際には、上記ストッパ7を緩衝材として効果的に機能させることができるとともに、自動車の走行時に歩行者が車体の前面に衝突して図4に示すように、歩行者がフード5上に倒れ込んで歩行者の頭部がフード5にぶつかる等の衝突事故が発生した場合には、このフード5をクッション材として機能させて上記歩行者の頭部に加えられる衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0030】
すなわち、上記フード5の閉止時には、その後端部に設けられたフードヒンジ6を支点にしてフード5が揺動変位することにより、図3の矢印αに示すように、略鉛直方向の荷重が上記ストッパ7および支持ブラケット8に入力されるため、この支持ブラケット8の第1脚部10をシュラウドアッパ1の後壁部27に圧接させる方向γの分力が作用することになる。したがって、フード5を閉止する際には、上記分力に対応した摩擦抵抗と、取付ボルト9の締着力に対応した移動抵抗との両方により、略鉛直方向αに作用する上記荷重を安定して支持することができ、支持ブラケット8が塑性変形したり、上記第1脚部10の取付け位置がずれたりするのを効果的に防止できるという利点がある。
【0031】
これに対してフード5上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生した場合には、図3の矢印βに示すように、上記支持ブラケット8の第1脚部10およびシュラウドアッパ1の後壁部27が設置された後下がりの傾斜面に沿って荷重が入力されるため、支持ブラケット8の第1脚部10をシュラウドアッパ1の後壁部27に圧接させる方向γに大きな分力が作用することはない。したがって、上記衝突事故の発生時には、比較的に早い段階で、シュラウドアッパ1の後壁部27に沿って上記支持ブラケット8の第1脚部10を下方に移動させることにより、図5示すように、支持ブラケット8を塑性変形させるとともに、フード5を下方に大きく変位させて上記歩行者の頭部等に作用する衝撃を効果的に緩和することができる。
【0032】
特に、上記第1実施形態では、シュラウドアッパ1の後壁部27からなる車体側部材の被取付部に取付ボルト9を設けるとともに、支持ブラケット8の第1脚部10に上記取付ボルト9のねじ軸からなる棒状部材が挿通される挿通孔18と、上記シュラウドアッパ1の後壁部27および支持ブラケット8の第1脚部10が設置された後下がりの傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が作用したときに上記棒状部材がスライド変位する第1スリット19等とを設けたため、フード5上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生して、上記傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が支持ブラケット8に作用した場合には、上記棒状部材により支持ブラケット8の第1脚部10をガイドしつつ下方に移動させることにより、上記歩行者の頭部等に加えられる衝撃を効果的に緩和できるという利点がある。
【0033】
また、上記第1実施形態では、支持ブラケット8に入力される荷重が一定値以上となるまで上記取付ボルト9のねじ軸からなる棒状部材が上記第1スリット19に沿って移動するのを上記第1閉塞部24からなる進入規制手段により規制するように構成したため、フード5を閉止する際には、支持ブラケット8に入力される荷重を上記進入規制手段(第1閉塞部24)において支持することにより、上記第1スリット19内に棒状部材が進入するのを防止してフード閉止時の衝撃エネルギーを上記ストッパ7により効果的に吸収することができる。
【0034】
一方、フード5上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生した場合には、上記ストッパ7を支持する支持ブラケット8に一定値以上の荷重が入力されて上記進入規制手段による棒状部材の進入規制状態が解除された時点、つまり上記第1閉塞部24が破断された時点で、上記棒状部材を第1スリット19内に進入させて支持ブラケット8の第1脚部10を車体側部材の被取付部(シュラウドアッパ1の後壁部27)に沿って下方に移動させることにより、上記フード5をクッション材として効果的に機能させて上記歩行者の頭部等に加えられる衝撃を充分に緩和できるという利点がある。しかも、上記第1閉塞部24の強度を適宜の値に設定することにより、上記棒状部材が第1スリット19内に進入する時点の荷重を容易かつ適正値に設定できるという利点がある。
【0035】
また、上記のように支持ブラケット8に、ストッパ7を支持する支持孔17からなる支持部と、車体側部材に設けられた棒状部材が挿通される挿通孔18からなる挿通部とを設け、上記ストッパ7の支持部と棒状部材の挿通部との間に上記棒状部材の移動を規制する第1〜第3閉塞部24〜26からなる進入規制手段を配設するとともに、この進入規制手段を挟んで複数のスリット19,20,22を直列に配設した場合には、フード5上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生し、上記ストッパ7を支持する支持ブラケット8に一定値以上の荷重が入力されて複数の進入規制手段による棒状部材の進入規制状態が解除されることにより、上記棒状部材が複数のスリット内に順次、進入して支持ブラケット8の第1脚部10が車体側部材の被取付部(後壁部27)に沿って下方に移動しつつ、上記歩行者の頭部等に加えられる衝撃が効果的に緩和されるという利点がある。
【0036】
すなわち、上記衝突事故の発生時には、図6の実線Aで示すように、ストッパ7に入力される荷重が一定値以上となる時点t1までの間にストッパ7が弾性変形することにより衝撃エネルギーが吸収される。次いで、支持ブラケット8の第1〜第3閉塞部24〜26が順次、破断され、この破断時点t2〜t4で衝撃エネルギーが段階的に吸収されるとともに、支持ブラケット8の第1脚部10がシュラウドアッパ1の後壁部27に沿って下降することにより、ピーク荷重が効果的に抑制されつつ、フード5によるクッション作用が充分に発揮されて歩行者の頭部等に加えられる衝撃を効果的に緩和されることになる。
【0037】
また、上記取付ボルト9のねじ軸からなる棒状部材がストッパ7の支持孔17に連通した第3スリット22内に進入することにより、この第3スリット22が拡幅されるとともに、上記支持孔17が所定径に拡開変形された時点t5で、この支持孔17から上記ストッパが効果的に離脱されるため、特許文献1に示されるように、車体側部材にストッパの下部が確実に落とし込まれる逃がし孔を形成する等の手段を講じることなく、上記ストッパ7がフード5と車体側部材との間に挟み込まれるのを防止し、上記フード5を充分に変形させて衝撃エネルギーを吸収することにより、上記歩行者の頭部等に加えられる衝撃を効果的に緩和することができる。
【0038】
例えば、フード5とシュラウドアッパ1からなる車体側部材との間に上記ストッパ7が挟み込まれた場合には、図6の仮想線Bで示すように、歩行者の頭部等がフード5に上面に衝突する事故が発生した時点t0の後、上記ストッパ7の挟み込みが発生する時点taまで間は、このストッパ7に作用する荷重が略一定の割合で上昇するとともに、上記挟み込みが発生した時点taの後に、このストッパ7によりフード5の変形が阻止されることになる結果、上記歩行者の頭部等に加えられる衝撃荷重が急上昇することになる。
【0039】
これに対して上記第1実施形態のように、図6の実線Aで示すように、支持ブラケット8に所定の荷重が入力された時点t5で、上記支持孔17からストッパ7を離脱させるように構成した場合には、このストッパ7が離脱した時点t5でフード5を大きく変形させることにより、従来よりもピーク荷重を抑えながらフード5がシュラウドアッパ1に当接する前に衝撃エネルギーを充分に吸収することができるとともに、このフード5の下降ストロークを充分に確保して歩行者の頭部等に加えられる衝撃荷重を急減させることができる。
【0040】
また、上記第1実施形態では、支持ブラケット8に設けられた第3スリット22の設置部と反対側(前端部側)の位置において、上記ストッパ7の支持孔17に連通する第4スリット(U字状の切欠き)23を設けることにより、上記ストッパ7に一定値以上の荷重が作用したときに上記支持孔17の拡開変形を促進する複数のスリット22,23を支持孔17の周囲に配設したため、この支持ブラケット8に一定値以上の荷重が作用して上記取付ボルト13のねじ軸が支持ブラケット8の第3スリット22内に進入した時点で、上記支持孔17からなるストッパ7の支持部を容易に拡開変形させて、この支持孔17からストッパ7を、より適正時期に精度良く離脱させることができるという利点がある。
【0041】
上記第1実施形態では、支持ブラケット8に設けられたストッパ7の支持孔17の前方側に、シュラウドアッパ1に取り付けられるとともに、後上がりに傾斜した傾斜面12を有する第2脚部13を設けたため、フード5上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生して上記後下がりの傾斜面に沿った方向βに一定値以上の荷重が上記支持ブラケット8に作用した場合に、支持ブラケット8の第2脚部13を容易に傾倒させて上記ストッパ7の支持部を車体の後方側に移動させることにより、その後方側に設けられた上記第1脚部10を車体側部材の被取付部(後壁部27)に沿ってスムーズに移動させることができる。
【0042】
すなわち、フード5上に歩行者の頭部がぶつかる等の衝突事故が発生した場合には、図3に示すように、第2脚部13の傾斜面12と略直交する方向βに荷重が作用するため、上記傾斜面12の下端部を支点にして上記第2脚部13の傾倒を増大させる方向δに大きな曲げモーメントが作用し、これに曲げモーメントに応じて支持ブラケット8を容易に塑性変形させることにより、図5に示すように、支持ブラケット8の天板部11および傾斜面12をシュラウドアッパ1上に倒伏させるとともに、第1脚部10をシュラウドアッパ1の後壁部27に沿ってスムーズに下降させることができる。
【0043】
さらに、上記第1実施形態では、シュラウドアッパ1の上面後方部に凹部28を設け、上記支持ブラケット8に設けられた支持孔17から離脱したストッパ7を上記凹部28内に収容するように構成したため、上記ストッパ7を紛失したり、エンジンルーム内の補機等に上記ストッパ7が噛み込んだりするという事態の発生を効果的に低減することができる。また、上記のように第1脚部10の左右両側に補強用のフランジ部10aを設けた場合には、支持ブラケット8に一定値以上の荷重が入力された場合に、上記第1脚部10が変形することに起因して、この第1脚部10を下方にスライド変位させることができなくなるという事態の発生を効果的に防止できるという利点がある。
【0044】
図7は、上記支持ブラケット8の第1脚部10に設けられた棒状部材の挿通孔18からなる挿通部に連通した第1スリット29と、支持ブラケット8の天板部11に設けられた支持孔17からなるストッパ7の支持部に連通した第2スリット30とが支持ブラケット8に設けられるとともに、上記第1スリット29と第2スリット30との間に閉塞部31からなる進入規制手段を設けることにより、支持ブラケット8に入力される荷重が一定値以上となるまで、上記棒状部材が第2スリット30内に進入するのを規制するように構成された本発明の第2実施形態を示している。
【0045】
上記第2実施形態では、図8の実線Cで示すように、ストッパ7に入力される荷重が一定値以上となる時点t1までの間にストッパ7が弾性変形することにより衝撃荷重が吸収されるとともに、その後に荷重が上昇するのに伴って支持ブラケット8の挿通孔18内にある取付ボルト9のねじ軸が上記第1スリット29内に進入し、この進入時点t21から上記ねじ軸が閉塞部31に当接する時点t22までの間は、それ程大きな荷重の上昇を生じることなく、上記ねじ軸により支持ブラケット8の第1脚部10がガイドされつつ、支持ブラケット8の第1脚部10がシュラウドアッパ1の後壁部27に沿って下降することにより、歩行者の頭部等に加えられる衝撃が安定して緩和されることになる。そして、上記閉塞部31に作用する荷重が一定値となった時点t23で、この閉塞部31が破断されて、上記ねじ軸が適正時期に精度良く第2スリット30内に進入し、その後にストッパ7が上記支持孔17から離脱した時点t24で、フード5が大きく変形することにより歩行者の頭部等に加えられる衝撃荷重が急減されることになる。
【0046】
なお、上記閉塞部31からなる進入規制手段に代え、支持ブラケット8に形成された1本のスリットを部分的に被覆する別体の被覆プレートを設け、この被覆プレートによって上記取付ボルト9のねじ軸からなる棒状部材の移動を規制し、または上記スリットの幅寸法を部分的に小さくしあるいはスリットの側辺部の板厚を部分的に増大させる等により上記棒状部材に移動を規制するように構成してもよい。
【0047】
また、図9は、支持ブラケット8の第1脚部10に設けられた挿通孔32に取付ボルト9のねじ軸を挿通させて支持させるとともに、シュラウドアッパ1の後壁部27からなる車体側部材の被取付部に上記ねじ軸が挿通される挿通孔33からなる挿通部と、この挿通孔33の下端部から下方に延びる長孔状のスリット34とを設け、上記後壁部27の傾斜面に沿って一定値以上の荷重が作用したときに取付ボルト9のねじ軸をスリット34に沿ってスライド変位させるように構成した本発明の第3実施形態を示している。
【0048】
上記第3実施形態では、図10の実線Dで示すように、ストッパ7に入力される荷重が一定値以上となる時点t1までの間にストッパ7が弾性変形することにより衝撃荷重が吸収されるとともに、その後に荷重が上昇するのに伴って図11に示すようにシュラウドアッパ1の挿通孔33内にある取付ボルト9のねじ軸が、図12に示すように上記スリット34内に進入し、この進入時点t31から上記ねじ軸が上記スリット34の下端部に当接する時点t32までの間は、それ程大きな荷重の上昇を生じることなく、上記ねじ軸により支持ブラケット8の第1脚部10がガイドされつつ、支持ブラケット8の第1脚部10がシュラウドアッパ1の後壁部27に沿って下降することにより、歩行者の頭部等に加えられる衝撃が安定して緩和されることになる。そして、上記支持ブラケット8に作用する荷重が一定値となった時点t33で、上記支持孔17が拡開変形してストッパ7が支持ブラケット8から離脱することになる。
【0049】
また、上記第3実施形態のように棒状部材がスライド変位するスリット34を上記シュラウドアッパ1の後壁部27からなる車体側部材の被取付部に設けた場合には、上記第1,第2実施形態のように棒状部材がスライド変位するスリット19等を支持ブラケット8に設けた場合のように支持ブラケット8の剛性が低下する等の問題が生じることがないため、上記支持ブラケット8にフランジ10aを設けたり、板厚を増大させたりする等の補強を施すことなく、上記衝突事故の発生時に支持ブラケット8が屈曲するのを防止して、この支持ブラケット8をスムーズに下方にスライド変位させることができる。したがって、上記被取付部にスリット34を形成することによって車体の剛性が低下する等の問題となることがなく、かつ材質や板厚、形状等の条件によりスリット34を上記被取付部に設けることが困難でない場合には、上記第4実施形態の構成を採用することが好ましい。
【0050】
一方、上記被取付部にスリット34が形成されることによる車体の剛性が低下するという問題が生じる場合や、材質や板厚、形状等の条件によりスリット34を被取付部に設けることが困難である場合等には、上記第1,第2実施形態のように棒状部材がスライド変位するスリット19を支持ブラケット8に設けた構成を採用することが好ましい。
【0051】
なお、上記のように取付ボルト13のねじ軸からなる棒状部材を上記第1スリット18内に進入させることにより、この第1スリット18を拡幅して上記ストッパ7の支持孔17を拡開変形させるように構成された上記第1〜第3実施形態に代え、三角柱状の楔体等からなる棒状部材を車体側部材であるシュラウドアッパ1の後壁部27または支持ブラケット8の第1脚部10に突設した構造としてもよい。
【0052】
また、上記各実施形態では、支持ブラケット8をシュラウドアッパ1からなる車体側部材に取り付けた例について説明したが、上記シュラウドアッパ1に代え、フロントフェンダ2の上面等に取り付けた構造としてもよい。さらに、上記各実施形態に示すように、フード5の後端部に設けられたフードヒンジ6を支点して前開き可能に構成された上記フード5に代え、後開きタイプのフードを備えた自動車のフードストッパ構造についても本発明を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る自動車のフードストッパ構造を備えた前部車体構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る自動車のフードストッパ構造の第1実施形態を示す分解斜視図である。
【図3】フードの閉止状態を示す側面断面図である。
【図4】自動車のフード上に歩行者が乗り上げた状態を示す斜視図である。
【図5】支持ブラケットの変形状態を示す側面断面図である。
【図6】フードから支持ブラケットに入力される荷重の変化状態を示すグラフである。
【図7】本発明に係る自動車のフードストッパ構造の第2実施形態を示す分解斜視図である。
【図8】第2実施形態の支持ブラケットに入力される荷重の変化状態を示すグラフである。
【図9】本発明に係る自動車のフードストッパ構造の第3実施形態を示す斜視図である。
【図10】第3実施形態の支持ブラケットに入力される荷重の変化状態を示すグラフである。
【図11】第3実施形態において支持ブラケットに荷重が入力される前の状態を示す断面図である。
【図12】第3実施形態において支持ブラケットに荷重が入力された後の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 シュラウドアッパ(車体側部材)
5 フード
8 支持ブラケット
9 取付ボルト(棒状部材)
11 第1脚部
13 第2脚部
17 支持孔(支持部)
18,33 挿通孔(挿通部)
19,20,22,23,29,30,34 スリット
24,25,26,31 閉塞部(進入規制手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前部に設けられたフードの閉止時に緩衝材として機能するストッパがフードと車体側部材との間に設けられるとともに、フードを閉止する際に上記ストッパに入力される荷重の入力方向が略鉛直方向に設定された自動車のフードストッパ構造において、上記ストッパを支持する支持部と、その後方側に設けられて車体側部材の被取付部に取り付けられる第1脚部とを備えた支持ブラケットを有し、この支持ブラケットの第1脚部および上記車体側部材の被取付部が後下がりの傾斜面に沿って設置されるとともに、この傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が作用したときに、車体側部材の被取付部に沿って上記支持ブラケットの第1脚部を下方に移動させるように構成したことを特徴とする自動車のフードストッパ構造。
【請求項2】
車体側部材の被取付部に棒状部材を設けるとともに、支持ブラケットの第1脚部に上記棒状部材が挿通される挿通部と、上記傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が作用したときに棒状部材がスライド変位するスリットとを設けたことを特徴とする請求項1に記載の自動車のフードストッパ構造。
【請求項3】
支持ブラケットの第1脚部に棒状部材を設けるとともに、車体側部材の被取付部に上記棒状部材が挿通される挿通部と、上記傾斜面に沿って一定値以上の荷重が作用したときに棒状部材がスライド変位するスリットを設けたことを特徴とする請求項1に記載の自動車のフードストッパ構造。
【請求項4】
支持ブラケットに入力される荷重が一定値以上となるまで棒状部材が上記スリットに沿って移動するのを規制する進入規制手段を設けたことを特徴とする請求項2または3に記載の自動車のフードストッパ構造。
【請求項5】
上記支持ブラケットに、ストッパを支持する支持部と、車体側部材に設けられた棒状部材が挿通される挿通部とを設け、上記ストッパの支持部と棒状部材の挿通部との間に上記棒状部材の移動を規制する進入規制手段を配設するとともに、この進入規制手段を挟んで複数のスリットを直列に配設したことを特徴とする請求項4に記載の自動車のフードストッパ構造。
【請求項6】
支持ブラケットに、後上がりに傾斜した傾斜面を有するとともに、ストッパの支持部の前方側に配設されて車体側部材に取り付けられる第2脚部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の自動車のフードストッパ構造。
【請求項7】
支持ブラケットにストッパが嵌着される支持孔を設けるとともに、このストッパに一定値以上の荷重が作用したときに、上記支持孔の拡開変形を促進する複数のスリットを支持孔の周囲に設けたことを特徴とする請求項1に記載の自動車のフードストッパ構造。
【請求項1】
車体の前部に設けられたフードの閉止時に緩衝材として機能するストッパがフードと車体側部材との間に設けられるとともに、フードを閉止する際に上記ストッパに入力される荷重の入力方向が略鉛直方向に設定された自動車のフードストッパ構造において、上記ストッパを支持する支持部と、その後方側に設けられて車体側部材の被取付部に取り付けられる第1脚部とを備えた支持ブラケットを有し、この支持ブラケットの第1脚部および上記車体側部材の被取付部が後下がりの傾斜面に沿って設置されるとともに、この傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が作用したときに、車体側部材の被取付部に沿って上記支持ブラケットの第1脚部を下方に移動させるように構成したことを特徴とする自動車のフードストッパ構造。
【請求項2】
車体側部材の被取付部に棒状部材を設けるとともに、支持ブラケットの第1脚部に上記棒状部材が挿通される挿通部と、上記傾斜面に沿った方向に一定値以上の荷重が作用したときに棒状部材がスライド変位するスリットとを設けたことを特徴とする請求項1に記載の自動車のフードストッパ構造。
【請求項3】
支持ブラケットの第1脚部に棒状部材を設けるとともに、車体側部材の被取付部に上記棒状部材が挿通される挿通部と、上記傾斜面に沿って一定値以上の荷重が作用したときに棒状部材がスライド変位するスリットを設けたことを特徴とする請求項1に記載の自動車のフードストッパ構造。
【請求項4】
支持ブラケットに入力される荷重が一定値以上となるまで棒状部材が上記スリットに沿って移動するのを規制する進入規制手段を設けたことを特徴とする請求項2または3に記載の自動車のフードストッパ構造。
【請求項5】
上記支持ブラケットに、ストッパを支持する支持部と、車体側部材に設けられた棒状部材が挿通される挿通部とを設け、上記ストッパの支持部と棒状部材の挿通部との間に上記棒状部材の移動を規制する進入規制手段を配設するとともに、この進入規制手段を挟んで複数のスリットを直列に配設したことを特徴とする請求項4に記載の自動車のフードストッパ構造。
【請求項6】
支持ブラケットに、後上がりに傾斜した傾斜面を有するとともに、ストッパの支持部の前方側に配設されて車体側部材に取り付けられる第2脚部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の自動車のフードストッパ構造。
【請求項7】
支持ブラケットにストッパが嵌着される支持孔を設けるとともに、このストッパに一定値以上の荷重が作用したときに、上記支持孔の拡開変形を促進する複数のスリットを支持孔の周囲に設けたことを特徴とする請求項1に記載の自動車のフードストッパ構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−96281(P2006−96281A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287278(P2004−287278)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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