説明

自動車の下部車体構造

【課題】 縦通し材としての機能を担保しつつ、重量増およびコスト増を可及的に抑制し得る自動車の下部車体構造を提供する。
【解決手段】 車両前後方向に延設された左右一対のサイドフレーム10と、これらのサイドフレーム10間において車両前後方向に配設された左右一対のセンタフレーム21とを備える。このセンタフレーム21は、車両前後方向に分割されてこれらの第1ないし第3分割フレーム22〜24が車両前後方向に離間配置されるとともにこの前後の分割フレーム22〜24がシートを支持するシート支持フレーム25,26によって連結されることにより構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の下部車体構造に関し、詳しくは車両前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム間に車体前後方向に延びるセンタフレームが設けられた自動車の下部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車体下部構造は、通常、車両前後方向に延びるフロントサイドフレーム、ボディサイドフレームおよびリヤサイドフレームが前後方向に連結されて構成されるサイドフレームと、専らボディサイドフレームからリヤサイドフレームにかけて配設され車室の床面を構成するフロアパネルとを備え、このフロアパネルには車幅方向中央部が上方に膨出してフロアトンネル部が形成され、下部車体における車幅方向中央部がこのフロアトンネル部を縦通し材として補強されている。
【0003】
近年、車体の下部構造、特にミニバン等の比較的大きな車両の下部車体構造において、前突時の荷重分散性および下部車体剛性の向上を図る観点から、車幅方向中央部がさらに補強される傾向にある。このような補強構造の一つとして、例えば特許文献1に示されるように、フロアトンネル部の車幅方向両側に配設されるとともにサイドフレームに対して略平行に車両前後方向に延びる左右一対のセンタフレームが設けられた下部車体構造が提案されている。
【特許文献1】特開2003−137136号公報(図8参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1に示される下部車体構造によれば、前突時の荷重が左右一対のセンタフレームにも伝達されその荷重分散性が向上されるとともに、センタフレームによって下部車体の剛性の向上が図られる反面、あらたなセンタフレームを少なくともサイドフレームのボディサイドフレームに対応して設ける必要があるため、車重が大幅に増加するばかりでなく、製造コストの高騰を招くという不都合があった。
【0005】
特に、比較的長尺の車両においては、このセンタフレームが比較的長く形成されることになり、車重増およびコスト増の不都合が顕著に表れることになる。
【0006】
この場合に、このセンタフレームを前後に分断してこの分断されたパーツを適宜間隔置きに配設することも考えられるが、この場合には、センタフレームを設けない場合に比べて荷重分散性および下部車体剛性を向上させることができるものの、縦通し材としての機能を大幅に低下、ないしは失うことになる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、縦通し材としての機能を担保しつつ、重量増およびコスト増を可及的に抑制し得る自動車の下部車体構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る自動車の下部車体構造は、車両前後方向に延設された左右一対のサイドフレームと、これらのサイドフレーム間において車両前後方向に配設された左右一対のセンタフレームとを備え、このセンタフレームは車両前後方向に分割されてこれらの分割フレームが車両前後方向に離間配置されるとともに、この前後の分割フレームがシートを支持するシート支持フレームによって連結されることを特徴とするものである。
【0009】
この発明によれば、センタフレームが車両前後方向に分割されてこれらの分割フレームが車両前後方向に離間配置されるので、センタフレームを分割せずに車両前後方向に延設される場合に比べて、重量の増加および製造コストの増加を可及的に抑制することができる。しかも、分割されて車両前後方向に離間配置された分割フレームが、車室内に配設されるシートを支持するシート支持フレームによって連結されるので、分割フレーム間、すなわち縦通し材としてのセンタフレームの欠損部分を既存のシート支持フレームによって代用してこの欠損部分を補うことができ、前突時等の荷重分散性を向上させることができるとともに、下部車体の剛性を向上させることができる。すなわち、センタフレームの縦通し材としての機能を可及的に担保することができる。
【0010】
ここで、この下部車体構造に用いられるフロアパネルについてフルフラットパネルを用いるものであってもよいが、車両前後方向に延びるトンネル部が設けられたフロアパネルを用いるのが好ましく、この場合には、センタフレームは、このトンネル部の車幅方向両側に配設されるのが好ましい(請求項2)。
【0011】
このように構成すれば、フロアパネルのトンネル部も縦通し材として機能し、下部車体構造の剛性をさらに向上させることができるとともに、前突時等の荷重をより効果的に分散することができる。
【0012】
上記分割フレームは、その車両前後方向に延びる軸心と、上記シート支持フレームの前後方向に延びる軸心とを一致ないしは略一致させた状態で、シート支持フレームによって連結されるものであってもよいが、上記分割フレームは、その車両前後方向に延びる軸心と、上記シート支持フレームの前後方向に延びる軸心とを偏倚させた状態で、シート支持フレームによって連結されるのが好ましい。すなわち、上記分割フレームは、その車両前後方向に延びる軸心から偏倚した位置で上記シート支持フレームによって連結されるのが好ましい(請求項3)。
【0013】
このように構成すれば、分割フレームとシート支持フレームとの前後軸心を一致させて分割フレームを連結させた場合に比べて、連結部分において荷重の伝達効率を低減させて緩衝効果を得ることができ、後側の分割フレームに伝達される衝撃を低減させることができる。
【0014】
この場合、上記シート支持フレームによって連結された前後の分割フレームのうち後側の分割フレームに燃料タンクが支持されるのが好ましい(請求項4)。
【0015】
すなわち、分割フレームとシート支持フレームとの前後軸心を偏倚させて分割フレームを連結させた場合には、後側の分割フレームに伝達される衝撃を低減させることができることから、この後側の分割フレームに燃料タンクを支持させることにより、燃料タンクを安定して支持させることができる。
【0016】
また、この場合に、上記後側の分割フレームは、さらに前後に分割されるとともにこの前後分割フレームがその車両前後方向に延びる軸心から上方に偏倚した位置でこの分割部分に対応する第2のシート支持フレームによって連結されるように構成され、この後側の前後分割フレーム間に上記燃料タンクの一部が配設されているのが好ましい(請求項5)。
【0017】
このように構成すれば、センタフレームをさらに分断して配設することができ、車重および製造コストの増加を効果的に抑制することができるとともに、第2のシート支持フレームによって連結された後側の前後分割フレーム間の空間を利用してこの空間内に燃料タンクの一部を配設させることができ、その分、燃料タンクの容量を大きくすることができる。
【0018】
この発明において、上記左右のサイドフレーム間にセンタフレームの後端が接続されるリヤクロスメンバが車幅方向に沿って配設されるとともに、このリヤクロスメンバの後方にスペアタイヤを収納するタイヤパンが設けられ、最後列シートがこのタイヤパンと平面視において一部重複するように上記リヤクロスメンバに取り付けられ、この最後列シートのシート支持フレームは上記タイヤパンの上方を跨ぐように車幅方向に延びる閉断面を形成するクロスシートフレームと、このクロスシートフレームと上記リヤクロスメンバとを車幅方向中央部において連結する補強メンバとを備えるのが好ましい(請求項6)。
【0019】
このように構成すれば、タイヤパンの存在にかかわらず最後列シートを配設することができ、当該最後列シートのレイアウトの自由度を向上させることができるとともに、リヤクロスメンバ、クロスシートフレームおよび補強メンバによって下部車体の後部の車体剛性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の自動車の下部車体構造によれば、センタフレームを分割せずに車両前後方向に延設される従来の構造に比べて、重量の増加および製造コストの増加を可及的に抑制することができるとともに、センタフレームが分割フレームとして離間配置されているにもかかわらず、既存のシート支持フレームを有効に利用して縦通し材としての機能を可及的に担保することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。図1はこの発明の一実施形態に係る自動車の概要を示す断面図である。また、図2はこの自動車の下部車体構造を概略的に示す斜視図であり、図3は同下部車体構造をフロアパネルを取り外した状態で示す平面図である。
【0022】
この自動車は、車両前後方向に第1列から第3列までのシート4〜6を有するいわゆるミニバンタイプのものであり、これらの各シート3〜5がフロアパネル7上に配置されている。フロアパネル7の車幅方向中央部には、図1および図2に示すように、車両前後方向に延びる所定幅のトンネル部8が上方に向けて突設されている。このトンネル部8は、その前端部が後下がりに傾斜して形成されるとともに、その中間部および後端部はその上方への突出量が比較的小さい値に設定され(図7および図8参照)、これにより乗員による車室内での移動の際の邪魔にならないように構成されている。
【0023】
このフロアパネル7の後部は、その車幅方向中央部が下方に凹陥してスペアタイヤを収容するタイヤパン30が形成されている。このタイヤパン30は、その前端縁がスペアタイヤの外周形状に沿って湾曲形成されている。
【0024】
また、このフロアパネル7の車幅方向両端部は、車両前後方向に延びる左右一対のサイドシル9の内側面に接合されている。このサイドシル9は、図示しないがインナパネルとアウタパネルとによって車両前後方向に延びる閉断面が形成され、車両前後方向に延びる強度部材として構成されている。さらに、このフロアパネル7の下面には、車両前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム10が接合されている。具体的には、サイドフレーム10は、断面視略逆ハット状に形成され(図示せず)、その上端のフランジ部10a(図3参照)においてスポット溶接等によりフロアパネル7の下面に接合されている。このサイドフレーム10は、各々車両前後方向に延びるフロントサイドフレーム11、ボディサイドフレーム12およびリヤサイドフレーム13が車両前後方向に連結されてこの車両前後方向に延びる通し部材として構成されている。なお、図2に示すように、フロントサイドフレーム11には前上がりに傾斜するフロントキックアップ部11aが形成されるとともに、リヤサイドフレーム13には後上がりに傾斜するリヤキックアップ部13aが形成されている。
【0025】
これらのサイドフレーム10の間には、複数本(当実施形態では7本)のクロスメンバ14〜20が車幅方向に沿って架設されているとともに、サイドフレーム10の間であって、上記トンネル部8の車幅方向両側には、車両前後方向に沿って左右一対のセンタフレーム21が配設されている。
【0026】
第1〜第7クロスメンバ14〜20は、それぞれ断面視逆ハット状に形成され、その上端接合フランジ部14a〜20aにおいてフロアパネル7の下面に接合されている。第1クロスメンバ14は、センタフレーム21の前端部間に架設され、その両端部が当該センタフレーム21、具体的には後述する第1分割フレーム22に接合されている。一方、第2クロスメンバ15〜第7クロスメンバ20は、その両端部に接合代(図示せず)を拡開状に設けて、この接合代において当該サイドフレーム10の内側面にスポット溶接等により接合されている。これらの第1〜第7クロスメンバ14〜20は、車両前後方向について相互に離間されて配設されている。第7クロスメンバ20は、図2に示すように、タイヤパン30の車両前方側に配設され、このタイヤパン30の前端部形状に対応して後端部が湾曲形成されている。また、サイドフレーム10とサイドシル9との間には、それぞれ第1〜第6クロスメンバ14〜16の配設位置に対応して第1〜第6連結メンバ31〜36が配設されている。
【0027】
センタフレーム21は、フロントサイドフレーム11のフロントキックアップ部11aの後端部からリヤサイドフレーム13のリヤキックアップ部13aの後端部に亘って配設されている。このセンタフレーム21は、図7に示すように、断面視逆ハット状に形成されるとともに、その上端接合フランジ部21aにおいてスポット溶接等によりフロアパネル7の下面に接合され、これによりフロアパネル7とともに車両前後方向に延びる閉断面が形成されている。また、センタフレーム21は、図1ないし図3に明示するように、車両前後方向に分割されてこれらの複数個(当実施形態では3個)の分割フレーム22〜24が車両前後方向に相互に離間して配置されるとともにこの分割フレーム22〜24が上記各シート4〜6を車体に支持するシート支持フレーム25〜27によって車両前後方向に連結されることにより、構成されている。
【0028】
具体的には、センタフレーム21は、車両前後方向について第1列シート4および第2列シート5に対応する位置において分割されており、この分割後のパーツである第1〜第3分割フレーム22〜24を主要構成部材としている。センタフレーム21は、トンネル部8を中心に左右対称に配設されているので、ここでは一方のみ(図2における車両右側部)について説明する。
【0029】
第1分割フレーム22は、図2および図3に示すように、前端部が湾曲形成され、その前端縁が車幅方向外側を指向するように形成されている。この第1分割フレーム22は、この前端縁がサイドフレーム10のフロントキックアップ部11aの後端部内側面に接合されるとともに、後端縁が第2クロスメンバ15の前端面に接合されている。この第1分割フレーム22の接合構造は、サイドフレーム10とクロスメンバ14〜20との接合構造と同様であり、図において明示していないが、第1分割フレーム22の前後両端縁をラッパ状に拡開させて接合代を設け、この接合代においてサイドフレーム10の車幅方向内側面および下面または第2クロスメンバ15の前端面および下面に重ねられ、この接合代がスポット溶接等されることにより接合されている。なお、第2および第3分割フレーム23,24と各クロスメンバ16〜19との接合構造も同様に構成されている。図4ないし図6に22a、23a、24aで示される部分は、接合代のうち、断面視逆ハット状に形成された分割フレーム22〜24の底壁から延出された接合代であり、側壁から延出された接合代は図示を省略している。
【0030】
また、図1ないし図3に明示するように、第2分割フレーム23は、その前後両端縁がそれぞれ第3クロスメンバ16の後端面および第4クロスメンバ17の前端面に接合されている。すなわち、第2分割フレーム23は、第1分割フレーム22に対して、第2および第3クロスメンバ15,16の間隙分だけ離間されて配設されている。
【0031】
この第2分割フレーム23と第1分割フレーム22とは、図4に示すように、第1列シートレール部材37を介して第1シート4を支持するシート台座部としての第1シート支持フレーム25によって連結されている。第1シート支持フレーム25は、図4および図9に示すように、車両前後方向に配設される左右一対の支持脚部38と、これら一対の支持脚部38を車幅方向に連結する連結アーム部39とを備え、平面視において略H字状に形成されている。この第1支持フレーム25にはその周縁部が適宜下方或いは上方に折り起こされることによりフランジ部(図示せず)が形成され、これにより強度部材として形成されている。
【0032】
各支持脚部38は、その長手方向中間部が上方に突出するように屈曲形成され、長手方向前後両端部において下部車体に取り付けられている。具体的には、車幅方向内側(トンネル部8側)の支持脚部38は、図4に示すように、その前端部が第2クロスメンバ15上に取り付けられたガセットプレート40およびフロアパネル7にボルト43およびピン44によって接合されるとともに、その後端部が第3クロスメンバ16の上端接合フランジ部16a、この第3クロスメンバ16上に取り付けられたガセットプレート41およびフロアパネル7にボルト45により接合されている。一方、車幅方向外側(サイドシル9側)の支持脚部38は、図9に示すように、その前端部が第2連結メンバ32上に取り付けられたガセットプレート42およびフロアパネル7にボルト46およびピン47により接合されるとともに、その後端部がサイドシル9の上壁にボルト48により接合されている。
【0033】
すなわち、第1および第2分割フレーム22,23は、第2および第3クロスメンバ15,16等を介してこの第1シート支持フレーム25、特に車幅方向内側に配設される支持脚部38によって車両前後方向に連結されている。また、この第1シート支持フレーム25は、図4に示すように、第1および第2分割フレーム22,23間をアーチ状に架け渡すように配設されており、各分割フレーム22,23の車両前後方向に延びる軸心22L,23Lから上方に偏倚した位置で第1および第2分割フレーム22,23を連結している。
【0034】
なお、第1シート支持フレーム25は、トンネル部8を挟んで左右に設けられており、各第1シート支持フレーム25にシートレール部材37が支持され、このシートレール部材37にスライダを介して第1列シート4のシートクッションが支持されている。
【0035】
図1ないし図3に戻って、第3分割フレーム24は、その前後両端縁がそれぞれ第5クロスメンバ18の後端面および第6クロスメンバ19の前端面に接合されている。すなわち、第3分割フレーム24は、図5に示すように、第2分割フレーム23に対して、第4および第5クロスメンバ17,18の間隙分だけ離間されて配設されている。
【0036】
この第3分割フレーム24と第2分割フレーム23とは、第2列シート5を前後スライド移動可能に支持するシートレール部材としての第2シート支持フレーム26によって車両前後方向に連結されている。この第2シート支持フレーム26は、図5および図10に示すように、車両前後方向に配設される左右一対のレール本体49と、各レール本体49の長手方向に沿って適宜配設された取付フランジ部50a〜50hとを備え、当実施形態では長手方向の3箇所で当該レール本体49が取付フランジ部50a〜50hによって下部車体に取り付けられている。この取付フランジ部50a〜50hは、それぞれ幅方向両端部が折り起こされることによりフランジ部51が形成され、第2シート支持フレーム26の車体に対する取付強度が向上されている。
【0037】
レール本体49は、車両前後方向に延びるとともにその長手方向に直交する断面が略C字状に形成され、下端部が断面視逆T字状に形成されたスライダ52を前後スライド移動可能で、かつ、所定位置にロック可能に支持している。これらの左右一対のレール本体49のうち車幅方向内側に配設されたレール本体49は、その前端部外側、中央部後寄りの内外両側、および後端部の内外両側に取付フランジ部50a〜50eが設けられている。
【0038】
そして、この車幅方向内側に配設されたレール本体49は、図5および図10に示すように、各取付フランジ部50a〜50eによって、その前端部が第4クロスメンバ17の上端接合フランジ部17aおよびフロアパネル7にボルト53によって接合されるとともに、その中央部において第5クロスメンバ18の上端接合フランジ部18aおよびフロアパネル7にボルト54によって接合され、かつ、その後端部において第3分割フレーム24の上端接合フランジ部21aおよびフロアパネル7にボルト55によって接合されている。なお、第3分割フレーム24内であって、この第2シート支持フレーム26の第3分割フレーム24に対する取付位置には、この取付強度を向上させるために補強部材56が装着されている。また、このレール本体49には、図示しないが、スライダ52のスライド移動量を規制するストッパが設けられている。
【0039】
一方、車幅方向外側に配設されたレール本体49は、図10に示すように、その前端部内側、中央部後寄りの外側、および後端部の内側に取付フランジ部50f〜50hが設けられている。この車幅方向外側に配設されたレール本体49は、各取付フランジ部50f〜50hによって、その前端部がサイドフレーム10(特に、ボディサイドフレーム12)の車幅方向内側のフランジ部10aおよびフロアパネル7に接合されるとともに、その中間部においてサイドフレーム10(特に、ボディサイドフレーム12)の車幅方向外側のフランジ部10aおよびフロアパネル7に接合され、かつ、その後端部において、サイドフレーム10(特に、リヤサイドフレーム13)の上面壁およびフロアパネル7に接合されている。
【0040】
すなわち、第2および第3分割フレーム23,24は、第3および第4クロスメンバ17,18等を介してこの第2シート支持フレーム26、特に車幅方向内側に配設されるレール本体49によって車両前後方向に連結されている。また、この第2シート支持フレーム26は、図5に示すように、第2および第3分割フレーム23,24上に配設され、両フレーム23,24間をその上部において架け渡して各分割フレーム23,24をその車両前後方向に延びる軸心23L,24Lから上方に偏倚した位置で連結している。
【0041】
なお、第2シート支持フレーム26は、トンネル部8を挟んで左右に設けられており、各第2シート支持フレーム26にスライダ52を介して第2列シート5のシートクッションが支持されている。
【0042】
また、図6に示すように、第3分割フレーム24の後端部、言い換えるとセンタフレーム21の後端部が接続される第6クロスメンバ20(リヤクロスメンバの一例に相当)には、最後列シートである第3列シート6の前端部が第6クロスメンバ20上に取り付けられたガセットプレート57およびフロアパネル7を介して取り付けられている。
【0043】
具体的には、この第3列シート6は、車両前後方向の移動が拘束され、そのシートクッション6aが車幅方向に一体的に形成された、いわゆるベンチシートであり、その後端部が第7クロスメンバ20の後方に配置されたタイヤパン30と平面視において重複するように配置されている。この第3列シート6を支持する第3シート支持フレーム27は、図11に示すように、車両前後に延びるとともにリヤサイドフレーム13上に配設された左右一対の支持脚部58と、この支持脚部58の後端部間に車幅方向に沿って架設されたクロスフレーム59(クロスシートフレームの一例に相当)と、このクロスフレーム59と第6クロスメンバ19とを車幅方向中央部において連結する補強メンバ60とを備え、ベンチシートである第3列シート6を下部車体に取付支持している。
【0044】
支持脚部58は、長手方向に沿ってアーチ状に湾曲形成され、その前後両端部においてリヤサイドフレーム13の上面壁にボルト64により締結されている。この支持脚部58は、図示しないが幅方向の両端部がビード状に膨出して形成され、これにより支持脚部58自体の剛性を向上させている。
【0045】
クロスフレーム59は、第7クロスメンバ20の後方に配置され、タイヤパン30を跨ぐように支持脚部58間に架設され、両端部が当該支持脚部58の後端部上面に溶接等により接合されている。このクロスフレーム59は、図6に示すように、偏平な角筒状に形成され、これにより車幅方向に延びる閉断面Cが形成されている。
【0046】
補強メンバ60は、図6および図11に示すように、支持脚部58と同様に、長手方向に沿ってアーチ状に湾曲形成されている。また、補強メンバ60は、幅方向両側部にフランジ部(図示せず)が立設されるとともに、幅方向中央部が上方に膨出するビード部61として形成され、これにより剛性を向上させている。さらに、補強メンバ60は、後半部が拡幅して形成され、この拡幅部60aにおいて上記ビード部61は二股に分岐して形成されている。
【0047】
この補強メンバ60は、その前端部が第6クロスメンバ19の車幅方向中央部に、第6クロスメンバ19に取り付けられたガセットプレート57およびフロアパネル7を介してボルト62により接合されているとともに、その後端部がクロスフレーム59を下方から巻き込んで当該クロスフレーム59の上面に接合されている。この補強メンバ60には、第3列シート6のシートクッション6aを支持する支持ブラケット65,66が上方に突設され、ベンチシートである第3列シート6を車幅方向の略中央部において支持するようになされている。
【0048】
上記構成の第3シート支持フレーム27には、第3列シート6がブラケット65,66等を介して支持されている。すなわち、第3列シート6は、第3シート支持フレーム27を介して、その前端部が第6クロスメンバ19に取り付けられ、その後端部がリヤサイドフレーム13の所定位置に取り付けられている。なお、この第3列シート6はシートバックが車幅方向について分割して形成され、各シートバックが個別に傾倒可能に構成されている。
【0049】
ところで、左右一対のセンタフレーム21には、その第2分割フレーム23と第3分割フレーム24とに跨って燃料タンク68が支持されている。すなわち、燃料タンク68は、フロアパネル7、サイドフレーム10およびセンタフレーム21の下方であって、路面に対して所定の高さ位置に保持されている。図12は、燃料タンクが装着された下部車体構造の底面図である。
【0050】
この燃料タンク68は、合成樹脂によって偏平な略直方体形状に形成され、フロアパネル7と路面との間の空間に装着し得るように構成されている。具体的には、燃料タンク68は、その幅がサイドフレーム10と略同等に形成されるとともに、その長さが第2分割フレーム23の前端部から第3分割フレーム24の中間部に至る程度に設定されている。この燃料タンク68の外周にはフランジ部69が外方に突出した状態で設けられている。このフランジ部69は燃料タンク68の高さ方向中間部において略水平に全周に亘って形成されている。
【0051】
また、図1に示すように、この燃料タンク68の上面壁は、第2分割フレーム23と第3分割フレーム24との間隙を含めた第4クロスメンバ17と第5クロスメンバ18との間の空間部分において上方に膨出して形成され、この膨出分について内部容量が拡大されている。すなわち、第2分割フレーム23と第3分割フレーム24との間には、燃料タンク68の一部が膨出した膨出部分が配設されている。
【0052】
この燃料タンク68は、図12に示すように、その四隅部において接合されるとともに、車幅方向中間部においてもその前後で3点支持されている。すなわち、この燃料タンク68は、そのフランジ部69の四隅部において、ボルト70によってサイドフレーム10の底面壁部に接合されるとともに、前後両側におけるフランジ部69においてそれぞれタンクブラケット71を介して第2および第3分割フレーム23,24の底面壁にボルト72によって接合されている。このように燃料タンク68は第1分割フレーム22に対して離間配置された第2および第3分割フレーム23,24に支持されているので、第1分割フレーム22に入力された荷重は、いったん第1シート支持フレーム25入力されてから第2分割フレーム23に入力されることになり、第2分割フレーム23に入力される荷重に基づく衝撃は緩和された状態となっており、したがって燃料タンク68を安定して支持させることができる。
【0053】
以上のように構成された自動車の下部車体構造によれば、センタフレーム21が3パーツに分割されてこれらの第1〜第3分割フレーム22〜24が車両前後方向に離間配置されるので、センタフレームを分割せずに車両前後方向に連続的に延設される従来の構造に比べて、軽量化できることはもちろんのこと、分割フレーム22〜24の相互の間隔分だけ材料費等を節約することができ、製造コストを抑制することができる。すなわち、センタフレームが設けられていない下部車体構造について重量の増加および製造コストの増加を可及的に抑制することができる。
【0054】
このようにセンタフレーム21を分割して離間配置した場合には、センタフレームが設けられていない下部車体構造に比べて車体剛性を向上させることができるとともに衝撃荷重を効率的に分散させることができるものの、センタフレームが車両前後方向に連続的に延設される従来の構造に比べて、センタフレームの縦通し材としての機能が損なわれる虞がある。すなわち、分割フレーム22〜24が離間配置されているために、縦通し材としての機能が低下ないしは無くなり、車体剛性および荷重分散性が大幅に低下する虞がある。
【0055】
しかしながら、当実施形態の下部車体構造によれば、車室内に配設される第1列および第2列シート4,5を支持する第1および第2シート支持フレーム25,26を有効に利用して、この第1および第2シート支持フレーム25,26によって第1ないし第3分割フレーム22〜24が車両前後方向に連結されるので、第1分割フレーム22と第2分割フレーム23との間、或いは第2分割フレーム23と第3分割フレーム24との間、言い換えると縦通し材として機能するセンタフレーム21の欠損部分を既存の第1および第2シート支持フレーム25,26によって代用してこの欠損部分による剛性の低下或いは荷重伝達性の低下を効果的に軽減することができ、分割フレーム22〜24を離間配置しているにもかかわらず、下部車体剛性を向上させることができるとともに、前突字等の荷重分散性を向上させることができる。しかも、第1および第2シート支持フレーム25,26は一般に強度部材として構成されることが多く、このような強度部材を有効に利用してセンタフレーム21を補強することができる。すなわち、センタフレーム21の縦通し材としての機能を可及的に担保することができる。
【0056】
まとめると、当実施形態の自動車の下部車体構造によれば、センタフレームが設けられていない下部車体構造に比べて、重量および製造コストの増加を抑制しつつ、車体剛性および荷重分散性を向上させることができ、従来の構造ではなし得なかった両者の両立を達成させることができるという利点がある。しかも、フロアパネル7のトンネル部8が車両前後方向に設けられているので、さらなる下部車体の剛性および荷重分散性の向上が図られている。
【0057】
また、当実施形態の下部車体構造によれば、第3シート支持フレーム27を利用して、その後部構造の剛性を向上させることができる。すなわち、サイドフレーム10間にセンタフレーム21の後端が接続される第6クロスメンバ19が車幅方向に沿って配設されるとともに、この第6クロスメンバ19の後方にスペアタイヤを収納するタイヤパン30が設けられ、第3列シート6がこのタイヤパン30と平面視において一部重複するように第6クロスメンバ19に取り付けられ、この第3列シート6のシート支持フレーム27はタイヤパン30の上方を跨ぐように車幅方向に延びる閉断面Cを形成するクロスフレーム59と、このクロスフレーム59と第6クロスメンバ19とを車幅方向中央部において連結する補強メンバ60とを備えるので、タイヤパン30の存在にかかわらず第3列シート6を配設することができ、当該第3列シート6のレイアウトの自由度を向上させることができるとともに、この第6クロスメンバ19、クロスフレーム59および補強メンバ60によって下部車体の後部の車体剛性を向上させることができる。
【0058】
なお、以上に説明した自動車の車体前部構造は、本発明に係る構造の一実施形態であって、同構造の具体的構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であり、変形例を以下に説明する。
【0059】
(1)上記実施形態では、第1シート支持フレーム25が第1分割フレーム22の後端部と第2分割フレーム23の前端部とを各フレーム22,23の軸心22L,23Lから上方に外れた位置で連結しているとともに、第2シート支持フレーム26が第2分割フレーム23の後端部と第3分割フレーム24の前端部とを各フレーム23,24の軸心23L,24Lから上方に外れた位置で連結しているが、シート支持フレームによる分割フレームの連結態様は上記実施形態のものに限定されるものではない。
【0060】
例えば前後の各分割フレーム22〜24の軸心22L〜24Lを直線的に結ぶような態様でシート支持フレームが配設され、このシート支持フレームによってその前後に配設されている分割フレームを連結するようにしてもよい。このように構成しても、シート支持フレームを有効に利用してセンタフレームの欠損部分を補うことができ、車体剛性および荷重分散性を向上させることができる。
【0061】
ただし、上記実施形態のように構成すれば、第1ないし第3分割フレーム22〜24と第1および第2シート支持フレーム25,26との前後軸心を連続的に結ぶように連結させた場合と比べて連結部分において荷重の伝達効率を低減させて緩衝効果を得ることができ、後側の分割フレーム、すなわち第1分割フレーム22に対する第2分割フレーム23、または第2分割フレーム23に対する第3分割フレーム24に伝達される衝撃を低減させることができるという点で有利である。
【0062】
(2)上記実施形態では、トンネル部8が設けられたフロアパネル7が用いられているが、トンネル部が設けられていないフルフラットフロアパネルについても適用できる。この場合には、車幅方向中央部にトンネル部としての縦通し部材が設けられていないことから、センタフレームを縦通し材として設ける意義が向上する。
【0063】
また、トンネル部が車両前後方向の一部に設けられているものであってもよく、さらに上記実施形態と異なり、トンネル部が車両前後方向に略一定の高さで設けられているものであってもよい。
【0064】
(3)上記実施形態では、シート支持フレームとして、第1列シート4を支持するシート台座部、第2列シート5を支持するシートレール部材26が用いられているが、車両前後方向に延び、シートを車体に対して支持するフレームであれば、その具体的構成は特に限定されるものではない。
【0065】
(4)上記実施形態では、第3シート支持フレーム27について車幅方向に一体的に設けられているが、第3列シート6を車幅方向に分割して構成する場合には、この第3シート支持フレームも車幅方向に分割して構成されるものであってもよい。ただし、上記実施形態のように、一体的に第3シート支持フレーム27を設けた場合には、下部車体構造の後部における剛性を効果的に向上させることができる。
【0066】
(5)上記実施形態では第1および第2シート支持フレーム25,26が左右に一対設けられているが、これらの左右のシート支持フレーム25,26が一体的に形成されているものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動車の概略断面図である。
【図2】同自動車の下部車体構造を概略的に示す斜視図である。
【図3】同構造をフロアパネルを取り外した状態で示す平面図である。
【図4】図1の第1列シート周辺部分を拡大して示す断面図である。
【図5】図1の第2列シート周辺部分を拡大して示す断面図である。
【図6】図1の第3列シート周辺部分を拡大して示す断面図である。
【図7】図3のVII−VII線断面図である。
【図8】図3のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図3の第1シート支持フレーム周辺部分を拡大して示す平面図である。
【図10】図3の第2シート支持フレーム周辺部分を拡大して示す平面図である。
【図11】図3の第3シート支持フレーム周辺部分を拡大して示す平面図である。
【図12】燃料タンクを含めた自動車の下部車体構造を示す底面図である。
【符号の説明】
【0068】
4〜6 第1列〜第3列シート
7 フロアパネル
8 トンネル部
10 サイドフレーム
14〜20 第1〜第7クロスメンバ
21 センタフレーム
22〜24 第1〜第3分割フレーム
22L〜24L 軸心
25〜27 第1〜第3シート支持フレーム
30 タイヤパン
59 クロスフレーム
60 補強メンバ
68 燃料タンク
C 閉断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延設された左右一対のサイドフレームと、これらのサイドフレーム間において車両前後方向に配設された左右一対のセンタフレームとを備え、
このセンタフレームは車両前後方向に分割されてこれらの分割フレームが車両前後方向に離間配置されるとともに、この前後の分割フレームがシートを支持するシート支持フレームによって連結されることを特徴とする自動車の下部車体構造。
【請求項2】
車両前後方向に延びるトンネル部が設けられたフロアパネルをさらに備え、上記センタフレームは、このトンネル部の車幅方向両側に配設されていることを特徴とする請求項1記載の自動車の下部車体構造。
【請求項3】
上記分割フレームは、その車両前後方向に延びる軸心から偏倚した位置で上記シート支持フレームによって連結されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の自動車の下部車体構造。
【請求項4】
上記シート支持フレームによって連結された前後の分割フレームのうち後側の分割フレームに燃料タンクが支持されることを特徴とする請求項3記載の自動車の下部車体構造。
【請求項5】
上記後側の分割フレームは、さらに前後に分割されるとともにこの前後分割フレームがその車両前後方向に延びる軸心から上方に偏倚した位置でこの分割部分に対応する第2のシート支持フレームによって連結されるように構成され、この後側の前後分割フレーム間に上記燃料タンクの一部が配設されていることを特徴とする請求項4記載の自動車の下部車体構造。
【請求項6】
上記左右のサイドフレーム間にセンタフレームの後端が接続されるリヤクロスメンバが車幅方向に沿って配設されるとともに、このリヤクロスメンバの後方にスペアタイヤを収納するタイヤパンが設けられ、最後列シートがこのタイヤパンと平面視において一部重複するように上記リヤクロスメンバに取り付けられ、この最後列シートのシート支持フレームは上記タイヤパンの上方を跨ぐように車幅方向に延びる閉断面を形成するクロスシートフレームと、このクロスシートフレームと上記リヤクロスメンバとを車幅方向中央部において連結する補強メンバとを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の自動車の下部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−30628(P2007−30628A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214802(P2005−214802)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】