説明

自動車の下部車体構造

【課題】前後のクロスメンバに跨るようにシートスライドレールが配置された車体構造において、前突時に該レールが折れるのを抑え、側突時にサイドシルの内倒れを抑える。
【解決手段】フロア3と、サイドシル5と、前側及び後側クロスメンバ7,9と、これらクロスメンバ7,9に跨るように車両前後方向に延びるシートスライドレール25とを備えた自動車の下部車体構造1である。シートスライドレール25は、底壁部を有するロアレール27と、ロアレール27に対してスライド可能なアッパレール35とを有している。前後のクロスメンバ7,9を連結するように車両前後方向に延び、フロア3及びサイドシル5とともに閉断面を形成している連結ブラケット11をさらに備えている。連結ブラケット11は、ロアレール27の底壁部の下面に接している又は近接している頂壁部13と、該頂壁部13から下方に延びている立壁部15とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロア上に設けられた前後のクロスメンバに跨るようにシートスライドレールが配置された自動車の下部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のシートを車両前後方向にスライドできるようにシートスライドレールが設けられた車体構造が知られている。このシートスライドレールは、例えば、フロアパネル側に固定されるロアレールと、シートが取り付けられ、該ロアレールに対してスライド可能なアッパレールとを有している。
【0003】
上記シートスライドレールでは、フロアパネル上に設置された取付部にロアレールが取り付けられるようになっており、例えば特許文献1には、フロア上に設けられた取付部としての前側及び後側クロスメンバにシートスライドレールが取り付けられた車体構造が開示されている。
【特許文献1】特開2003−146248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動車のフロントシートのシートベルト装置では、乗員を拘束するウェビングが、サイドシルとセンターピラーとの接合部に設けられたリトラクターを始点として、センターピラー内部を通って、シートに取り付けられたバックルに至るものが通常多い。この種のシートベルト装置では、車両の前突時には、乗員の車両前方移動による荷重の一部がセンターピラーによって支えられることになる。
【0005】
これに対し、例えば、センターピラーのない、いわゆるセンターピラーレスの自動車のフロントシートのシートベルト装置では、ウェビングが、フロントシートに取り付けられたリトラクターを始点として、シート内部を通ってショルダーアンカーに至り、該ショルダーアンカーからシートに取り付けられたラップアンカーに至るとともに、両アンカー間のウェビングがタングを介して同じくシートに取り付けられたバックルに接続されるものがある。このシートベルト装置では、その構成部品が全てフロントシート自体に取り付けられていることから、車両の前突時には、乗員の車両前方移動による荷重が全て、シートを車体に取り付けているシート取付部に作用することになる。
【0006】
ここで、例えばセンターピラーレスの自動車に、上記特許文献1で開示されているような、前後のクロスメンバにシートスライドレールが取り付けられた車体構造を採用すると、以下の問題が生じることになる。すなわち、図16(a)に示すように、シート39を最も車両後方に移動させた状態で車両の前突が起きると、両端固定梁状態のロアレール27にアッパレール35の前端35aから下向きの大きな荷重が作用し、これによりロアレール27が中央部(ロアレール27の前端部の取付部近傍)で折れるおそれがあり、最悪の場合には、ロアレール27の前端部の取付部に荷重が伝達され難くなり、前突による荷重を全てロアレール27の後端部の取付部が受け、図16(b)に示すように、ロアレール27が後側クロスメンバ9から外れることがある。このような問題は、フロアが変形することでレール取付部に作用する荷重が吸収される車幅方向内側のシートスライドレールよりも、サイドシルにより剛性が高められているためフロアが変形し難い車幅方向外側のシートスライドレールで顕著となる。
【0007】
一方、車両の側突時には、前側及び後側クロスメンバの車幅方向一端部が接続されたサイドシルが車幅方向内側に倒れる、いわゆる内倒れが生ずるおそれがある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フロア上に設けられた前後のクロスメンバに跨るようにシートスライドレールが配置された自動車の下部車体構造において、車両の前突時に乗員の車両前方移動による荷重がシートスライドレールに作用しても、シートスライドレールが折れるのを抑えることができ、且つ車両の側突時にサイドシルの内倒れを抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、フロアと、該フロア上の車幅方向一端部において車両前後方向に延びているサイドシルと、上記フロア上において車両前後方向に間隔をあけて車幅方向に延び、車幅方向一端部が上記サイドシルに接続された前側及び後側クロスメンバと、該前側及び後側クロスメンバに跨るように車両前後方向に延び、シートを車両前後方向に移動させるためのシートスライドレールとを備えた自動車の下部車体構造であって、上記シートスライドレールは、底壁部を有するロアレールと、上記シートが取り付けられ、上記ロアレールに対してスライド可能なアッパレールとを有しており、上記前側及び後側クロスメンバを連結するように車両前後方向に延び、上記前側及び後側クロスメンバの間において上記フロア及び上記サイドシルとともに閉断面を形成している連結ブラケットをさらに備え、上記連結ブラケットは、上記ロアレールの底壁部の下面に接している又は近接している頂壁部と、該頂壁部から下方に延びている立壁部とを有していることを特徴とするものである。
【0010】
このように、前側及び後側クロスメンバを連結するように車両前後方向に延び、前側及び後側クロスメンバの間においてフロア及びサイドシルとともに閉断面を形成している連結ブラケットを備えるとともに、この連結ブラケットがロアレールの底壁部の下面に接している又は近接している頂壁部を有していることから、前突時に乗員の車両前方移動による荷重がシートスライドレールに作用しても、連結ブラケットがシートスライドレールを支持するのでシートスライドレールの変形を抑えることができ、且つサイドシルの剛性を高めることができる。したがって、前後のクロスメンバに跨るようにシートスライドレールが配置されたセンターピラーレスの自動車であっても、前突時にシートスライドレールが折れるのを抑えることができるとともに、側突時のサイドシルの内倒れを抑制することができる。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記ロアレールは、前後端部がそれぞれ上記連結ブラケットの頂壁部における上記前側及び後側クロスメンバの上方近傍部に取り付けられており、上記連結ブラケットにおける上記ロアレールの前端部の取付部近傍を補強する補強部材をさらに備えていることを特徴とするものである。
【0012】
このように、補強部材をさらに備えているので、連結ブラケットのうち、前突時に荷重が作用する、連結ブラケットにおけるロアレールの前端部の取付部近傍部分を補強することができる。
【0013】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記補強部材は、上記連結ブラケットの内側に配置されていて、上記前側クロスメンバの上方から上記連結ブラケットの頂壁部に沿うように車両前後方向に延びている頂壁部と、該頂壁部の後端部から下方に延びている後壁部と、該後壁部の車幅方向内側端部から車両後方に延び、上記連結ブラケットの立壁部の車幅方向外側の面に取り付けられた内壁部とを有していることを特徴とするものである。
【0014】
このように、補強部材が、連結ブラケットの立壁部の車幅方向外側の面に取り付けられる内壁部を有することにより、連結ブラケットの頂壁部のみならず立壁部も補強することができる。したがって、下向きにかかる荷重に対する立壁部の座屈強度を向上させることができる。
【0015】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記補強部材は上記頂壁部、後壁部及び内壁部に加え、該頂壁部の車幅方向外側端部から下方に延びている外壁部をさらに有しており、上記外壁部の下端は上記前側クロスメンバの上面に接している又は近接していることを特徴とするものである。
【0016】
このように、補強部材に外壁部を形成することにより、連結ブラケットにおけるロアレールの前端部の取付部の車幅方向外側における上下方向の剛性を向上させることができる。
【0017】
第5の発明は、上記第2〜4のいずれか1つの発明において、上記補強部材は、その後端が上記シートを最も車両後方に移動させた状態における上記アッパレールの前端よりも車両後方に位置するように、上記前側クロスメンバの上方において車両後方に延びていることを特徴とするものである。
【0018】
このように、補強部材は、その後端がシートを最も車両後方に移動させた状態におけるアッパレールの前端よりも車両後方に位置するように、前側クロスメンバの上方において車両後方に延びているので、アッパレールのスライド位置に関係なく、連結ブラケットのうち、前突時に荷重の作用点となるアッパレールの前端位置に対応する部分を補強することができる。
【0019】
第6の発明は、上記第1〜5のいずれか1つの発明において、上記連結ブラケットは、その上記頂壁部が上記前側及び後側クロスメンバの上面から上方に離間するように設けられており、該各クロスメンバ及び上記サイドシルとともに閉断面を形成していることを特徴とするものである。
【0020】
このように、連結ブラケットにおけるロアレールの前端部の取付部近傍に閉断面を複数形成するので、連結ブラケットの支持剛性を向上させることができる。
【0021】
第7の発明は、上記第6の発明において、上記連結ブラケットの頂壁部の車幅方向外側端部は、上記サイドシルの上面に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0022】
このように、連結ブラケットの頂壁部の車幅方向外側端部をサイドシルの上面に取り付けることにより、連結ブラケットによって形成される閉断面を大型化することが可能となる。したがって、サイドシルの剛性が高められることから、側突時のサイドシルの内倒れを確実に抑制することができる。
【0023】
第8の発明は、上記第1〜7のいずれか1つの発明において、上記連結ブラケットには、その後端部から車両後方に延びている延出部が形成されており、上記延出部の立壁部は、車両前方から後方に向かうに従って車幅方向外側に延びていることを特徴とするものである。
【0024】
このように、連結ブラケットの延出部の立壁部が車両前方から後方に向かうに従って車幅方向外側に延びているので、後席の足下スペースを確保しつつ連結ブラケットにおけるロアレールの後端部の取付部の剛性を向上させることができる。
【0025】
第9の発明は、上記第1の発明において、上記連結ブラケットは、上記前側クロスメンバの後面と上記後側クロスメンバの前面とを連結するように延びており、上記連結ブラケットの、上記シートを最も車両後方に移動させた状態における上記アッパレールの前端に対応する部分近傍を補強する補強部材をさらに備えていることを特徴とするものである。
【0026】
このように、連結ブラケットが前側クロスメンバの後面と後側クロスメンバの前面とを連結するように延びているので、簡易な構造でシートスライドレールの変形を抑えることができるとともに、連結ブラケットをコンパクトにすることによりその軽量化を図ることができる。また、シートを最も車両後方に移動させた状態におけるアッパレールの前端に対応する部分近傍を補強する補強部材をさらに備えているので、連結ブラケットにおける前突時に荷重が作用する部分近傍を補強することができる。
【0027】
第10の発明は、上記第9の発明において、上記補強部材は、その上端部が上記連結ブラケットの頂壁部の下面に取り付けられているとともに、下方に向かうに従って車両前方に延びていて、その下端部が上記前側クロスメンバの後面に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0028】
補強部材をこのように配置することにより方杖として機能するので、連結ブラケットの上下方向の剛性が向上する。したがって、連結ブラケットにおける前突時に荷重が作用する部分近傍を確実に補強することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、前側及び後側クロスメンバを連結するように車両前後方向に延び、前側及び後側クロスメンバの間においてフロア及びサイドシルとともに閉断面を形成している連結ブラケットを備えるとともに、この連結ブラケットがロアレールの底壁部の下面に接している又は近接している頂壁部を有していることから、前後のクロスメンバに跨るようにシートスライドレールが配置されたセンターピラーレスの自動車であっても、前突時にシートスライドレールが折れるのを抑えることができるとともに、側突時のサイドシルの内倒れを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
(実施形態1)
図1及び図2は、本実施形態に係る下部車体構造1を有する自動車37の右側のフロントシート39を模式的に示す斜視図である。この自動車37は、センターピラーが設けられておらず、いわゆる観音開き式ドア構造を有している。このため、リトラクター(図示せず)やバックル53等からなるシートベルト装置は、全てフロントシート39自体に取り付けられている。フロントシート39は、シートスライドレール25に取り付けられており、このシートスライドレール25に沿って車両前後方向にスライド可能となっている。以下、下部車体構造1の右側部分を説明する。なお、その左側部分も右側部分とほぼ同様の構成である。また、図1及び図2ではシートスライドレール25の下に配置されるフロアマットを図示省略している。
【0032】
下部車体構造1の右側部分は、図3〜図12に示すように、フロア3とサイドシル5と前側及び後側クロスメンバ7,9とシートスライドレール25,25と連結ブラケット11とを備えている。この下部車体構造1の右側部分はさらに、連結ブラケット11における、シートスライドレール25の前側及び後側の取付部11a,11bをそれぞれ補強する第1及び第2補強部材41,65を備えている。
【0033】
上記フロア3の車幅方向中央部には車両前後方向に延びているフロアトンネル55が形成されている。上記サイドシル5は横断面略矩形状であり、フロア3上の車幅方向右側端部において車両前後方向に延びている。上記前側及び後側クロスメンバ7,9は、図3に示すように、右側のフロア3上において車両前後方向に間隔をあけて配置されており、車幅方向に延びていてサイドシル5とフロアトンネル55とを連結している。前側及び後側クロスメンバ7,9はともに横断面略矩形状であり、前側クロスメンバ7の高さは後側クロスメンバ9の高さよりも高く形成されている。
【0034】
上記シートスライドレール25は、図4〜図7に示すように、前側及び後側クロスメンバ7,9の上方に配置されており、前側及び後側クロスメンバ7,9に跨るように車両前後方向に延びていて、フロントシート39を車両前後方向に移動させるようになっている。シートスライドレール25,25は2つ設けられており、サイドシル5とフロアトンネル55との間で互いに平行に配置されている。車幅方向内側のシートスライドレール25は、その前端部及び後端部がそれぞれ前側クロスメンバ7の上面7a、及びフロアトンネル55と後側クロスメンバ9との接続部を補強する補強部材73の上面に取り付けられている。一方、車幅方向外側のシートスライドレール25は、連結ブラケット11に取り付けられているロアレール27と、フロントシート39が取り付けられているとともに該ロアレール27に対してスライド可能なアッパレール35とを有している。
【0035】
ロアレール27は、アッパレール35が係合するレール本体部29と、このレール本体部29が取り付けられて車両前後方向に延びている底壁部31と、該底壁部31の車幅方向両端部から下方に延びている脚部33とを有している。ロアレール27は、その前端部27a及び後端部27bがそれぞれ後述する連結ブラケット11の頂壁部13における前側及び後側クロスメンバ7,9の上方近傍部に締結ボルト57,57によって取り付けられている。これらの取付部11a,11bでは、底壁部31の下面31aに形成された下方に突出する凸部59a,59bがそれぞれ連結ブラケット11の頂壁部13の上面と接している。
【0036】
上記連結ブラケット11は、前側クロスメンバ7と後側クロスメンバ9とを連結するように車両前後方向に延びていて、頂壁部13と立壁部15と端壁部17とを有している。
【0037】
上記頂壁部13は略矩形板状であり、略水平に且つ前側及び後側クロスメンバ7,9の上面7a,9aから上方に離間するように設けられるとともに、ロアレール27の底壁部31の下面31aに近接している。頂壁部13は、その前端が前側クロスメンバ7よりも車両前方に位置しているとともに、その後端が後側クロスメンバ9よりも車両後方に位置している。また、頂壁部13には、その剛性を高めるために、車幅方向外側端部において上方に膨出する横断面略台形の膨出部61が形成されている。この膨出部61の車幅方向外側の傾斜面の下端から車幅方向外側に延びている延出部13a、すなわち、頂壁部13の車幅方向外側端部13aはサイドシル5の上面5aに取り付けられている。
【0038】
上記立壁部15は略矩形板状であり、頂壁部13の車幅方向内側端部から下方に延びていてその下端部がフロア3の上面に取り付けられている。立壁部15には、矩形状の切欠き部63が車両前後方向に間隔をあけて2つ形成されており、これらの切欠き部63,63がそれぞれ前側及び後側クロスメンバ7,9を跨ぐようになっている。
【0039】
連結ブラケット11は、前側クロスメンバ7と後側クロスメンバ9との間においては、図7に示すように、頂壁部13の車幅方向外側端部13aがサイドシル5の上面5aに取り付けられ、且つ立壁部15の下縁部がフロア3の上面に取り付けられることにより、正面視において(自動車37の前側から見て)フロア3及びサイドシル5とともに閉断面を形成している。
【0040】
また、連結ブラケット11は、前側クロスメンバ7の前端と後端との間及び後側クロスメンバ9の前端と後端との間においては、図6に示すように、頂壁部13の車幅方向外側端部13aがサイドシル5の上面5aに取り付けられ、且つ立壁部15の各切欠き部63の周縁部のうち上縁部63aが各クロスメンバ7,9の上面7a,9aに取り付けられることにより、連結ブラケット11は正面視において各クロスメンバ7,9及びサイドシル5とともに閉断面を形成している。
【0041】
上記端壁部17は略矩形板状であり、図9に示すように、その上端部17aが頂壁部13と、その下端部17bがフロア3の上面と、その車幅方向内側端部17cが立壁部15と、その車幅方向外側端部17dがサイドシル5と、それぞれ接続されている。
【0042】
さらに、連結ブラケット11には、その後端部11cから車両後方に延びている延出部19が一体に形成されている。延出部19の立壁部(車幅方向内側の面)23は、車両前方から後方に向かうに従って車幅方向外側に延びている。そして、連結ブラケット11の頂壁部13と一体に形成されている、延出部19の頂壁部21も立壁部23に沿うように車両前方から後方に向かうに従って車幅方向外側に延びている。これらにより、連結ブラケット11は平面視で略台形状をなしている。
【0043】
また、延出部19の立壁部23は、図10に示すように、その上端部23aが延出部19の頂壁部21と、その下端部23bがフロア3の上面と、その前端部23cが連結ブラケット11の立壁部15と、その後端部23dがサイドシル5と、それぞれ接続されている。
【0044】
これらのことを言い換えると、下部車体構造1の右側部分では、前側及び後側クロスメンバ7,9の車幅方向外側端部を囲むように、連結ブラケット11とフロア3とサイドシル5とによって中空の箱状体が形成されているのである。これにより、図15(a)に示すように、ロアレール27は箱状の連結ブラケット11に支持された状態となり、アッパレール35の前端35aから下向きの大きな荷重が作用しても、図15(b)に示すように、仮にロアレール27が僅かに変形することはあっても後側クロスメンバ9から外れるのを抑えることができる。
【0045】
上記第1補強部材41は、連結ブラケット11におけるロアレール27の前端部27aの取付部(前側取付部)11a近傍を補強するものであり、図5〜図7に示すように、連結ブラケット11の内側に組み付けられている。
【0046】
図11及び図12は、連結ブラケット11を取り外した状態の第1及び第2補強部材41,65を示す図であり、第1補強部材41は、頂壁部43と後壁部45と内壁部47と外壁部49(図6参照)とを有している。
【0047】
図5は、フロントシート39を最も車両後方に移動させた状態を示しており、上記頂壁部43は、その後端43c(第1補強部材41の後端41a)がフロントシート39を最も車両後方に移動させた状態におけるアッパレール35の前端35aよりも車両後方に位置するように、前側クロスメンバ7の上方且つ前端近傍から連結ブラケット11の頂壁部13に沿うように車両前後方向に延びている。
【0048】
上記後壁部45は頂壁部43の後端部43cから下方に延びており、その下端は下方に向かうに従って車幅方向内側に延びている。上記内壁部47は、後壁部45の車幅方向内側端部45aから車両後方に延びており、連結ブラケット11の立壁部15の車幅方向外側の面15aに取り付けられている。上記外壁部49は、頂壁部43の車幅方向外側端部43aから下方に延びており、その下端は前側クロスメンバ7の上面7aに近接している。
【0049】
第2補強部材65は、連結ブラケット11におけるロアレール27の後端部15bの取付部(後側取付部)11b近傍を補強するものであり、第1補強部材41と同様に、連結ブラケット11の内側に組み付けられている。
【0050】
第2補強部材65は、後側クロスメンバ9の上方から連結ブラケット11の頂壁部13に沿うように車両前後方向に延びている略台形板状の頂壁部67と、該頂壁部67の車幅方向内側端部から下方に延びている立壁部69と、車両前方から後方に向かうに従って車幅方向外側に延びている後壁部71とを有している。第2補強部材65の頂壁部67、立壁部69及び後壁部71は互いに接続されており、これら頂壁部67、立壁部69及び後壁部71が、それぞれ連結ブラケット11の頂壁部13、連結ブラケット11の立壁部15及び延出部19の立壁部23に対向するように組み付けられことで、後側取付部11b近傍における連結ブラケット11の剛性を高めている。
【0051】
−効果−
本実施形態では、前側及び後側クロスメンバ7,9を連結するように車両前後方向に延び、前側及び後側クロスメンバ7,9の間においてフロア3及びサイドシル5とともに閉断面を形成している連結ブラケット11を備えるとともに、この連結ブラケット11がロアレール27の底壁部31の下面31aに近接している頂壁部13を有していることから、前突時に乗員の車両前方移動による荷重がシートスライドレール25に作用しても、連結ブラケット11がシートスライドレール25を支持するのでシートスライドレール25の変形を抑えることができ、且つサイドシル5の剛性を高めることができる。したがって、前後のクロスメンバ7,9に跨るようにシートスライドレール25が配置されたセンターピラーレスの自動車37であっても、前突時にシートスライドレール25が折れるのを抑えることができるとともに、側突時のサイドシル5の内倒れを抑制することができる。
【0052】
さらに、補強部材41をさらに備えているので、前突時に荷重が作用する、前側取付部11a近傍部分を補強することができる。
【0053】
また、第1補強部材41が、連結ブラケット11の立壁部15の車幅方向外側の面15aに取り付けられる内壁部47を有することにより、連結ブラケット11の頂壁部13のみならず立壁部15も補強することができる。したがって、下向きにかかる荷重に対する立壁部15の座屈強度を向上させることができる。
【0054】
さらに、第1補強部材41に外壁部49を形成することにより、前側取付部11aの車幅方向外側における上下方向の剛性を向上させることができる。
【0055】
また、第1補強部材41は、その後端41aがシート39を最も車両後方に移動させた状態におけるアッパレール35の前端35aよりも車両後方に位置するように、前側クロスメンバ7の上方において車両後方に延びているので、アッパレール35のスライド位置に関係なく、連結ブラケット11のうち、前突時に荷重の作用点となるアッパレール35の前端35a位置に対応する部分を補強することができる。
【0056】
さらに、前側取付部11a近傍に閉断面を複数形成するので、連結ブラケット11の支持剛性を向上させることができる。
【0057】
また、連結ブラケット11の頂壁部13の車幅方向外側端部13aをサイドシル5の上面5aに取り付けることにより、連結ブラケット11によって形成される閉断面を大型化することが可能となる。したがって、サイドシル5の剛性が高められることから、側突時のサイドシル5の内倒れを確実に抑制することができる。
【0058】
さらに、連結ブラケット11の延出部19の立壁部23が車両前方から後方に向かうに従って車幅方向外側に延びているので、後席の足下スペースを確保しつつ後側取付部11bの剛性を向上させることができる。
【0059】
(実施形態2)
本実施形態は、連結ブラケット及び補強部材が実施形態1と異なるものである。以下、実施形態1と異なる点について説明する。なお、以下の説明では、下部車体構造1の右側部分について記載するが、その左側部分も右側部分とほぼ同様の構成である。
【0060】
図13及び図14は、本実施形態に係る下部車体構造1を模式的に示す図である。下部車体構造1の右側部分は、フロア3、サイドシル5、前側及び後側クロスメンバ7,9、シートスライドレール25,25及び連結ブラケット11に加え、連結ブラケット11を補強する第3補強部材75をさらに備えている。
【0061】
前側及び後側クロスメンバ7,9はともに横断面略矩形状であり、略同じ断面寸法を有している。ロアレール27は、その前端部27a及び後端部27bがそれぞれ前側及び後側クロスメンバ7,9の上面7a,9aに締結ボルト57,57によって取り付けられている。これらの取付部7c,9cでは、底壁部31に形成された下方に突出する凸部59a,59bがそれぞれ前側及び後側クロスメンバ7,9の上面7a,9aと接している。
【0062】
連結ブラケット11は、前側クロスメンバ7の後面7b(後端)と後側クロスメンバ9の前面9b(前端)とを連結するように車両前後方向に延びていて、頂壁部13と立壁部15とを有している。
【0063】
上記頂壁部13は略矩形板状であり、略水平に且つ前側及び後側クロスメンバ7,9の上面7a,9aと面一となるように設けられており、ロアレール27の底壁部31の下面31aに近接している。頂壁部13は、その前端が前側クロスメンバ7の車両前後方向略中央部に、その後端が後側クロスメンバ9の車両前後方向略中央部にそれぞれ位置している。頂壁部13の車幅方向外側端部13aは、サイドシル5の側面5bに取り付けられている。
【0064】
上記立壁部15は略矩形板状であり、頂壁部13の車幅方向内側端部から下方に延びていてその下端部がフロア3の上面に取り付けられている。立壁部15は、その前端部が前側クロスメンバ7の後面7bに、その後端部が後側クロスメンバ9の前面9bに、それぞれ取り付けられている。
【0065】
連結ブラケット11は、このように頂壁部13の車幅方向外側端部13aがサイドシル5の側面5bに取り付けられ、且つ立壁部15の下縁部がフロア3の上面に取り付けられることにより、正面視においてフロア3及びサイドシル5とともに閉断面を形成している。
【0066】
これらのことを言い換えると、下部車体構造1の右側部分では、前側及び後側クロスメンバ7,9の車幅方向外側端部において、連結ブラケット11と前側クロスメンバ7の後面7bと後側クロスメンバ9の前面9bとフロア3とサイドシル5とによって中空の箱状体が形成されているのである。これにより、図15(a)に示すように、ロアレール27は箱状の連結ブラケット11に支持された状態となり、アッパレール35の前端35aから下向きの大きな荷重が作用しても、図15(b)に示すように、仮にロアレール27が僅かに変形することはあっても後側クロスメンバ9から外れるのを抑えることができる。
【0067】
上記第3補強部材75は、連結ブラケット11の、フロントシート39を最も車両後方に移動させた状態(図14参照)におけるアッパレール35の前端35aに対応する部分(前突時に荷重が作用する部分)近傍を補強するものであり、連結ブラケット11の内側に組み付けられている。
【0068】
第3補強部材75は、略矩形板状で下方に向かうに従って車両前方に延びており、その上端部75aが、連結ブラケット11の頂壁部13の下面における前突時に荷重が作用する部分近傍に取り付けられているとともに、その下端部75bが前側クロスメンバ7の後端面7bに取り付けられている。第3補強部材75をこのように配置することにより方杖として機能するので、連結ブラケット11の上下方向の剛性が向上する。
【0069】
−効果−
本実施形態では、連結ブラケット11が前側クロスメンバ7の後面7bと後側クロスメンバ9の前面9bとを連結するように延びているので、略矩形板状の頂壁部13と略矩形板状の立壁部15とからなる簡易な構造でシートスライドレール25の変形を抑えることができるとともに、連結ブラケット11をコンパクトにすることによりその軽量化を図ることができる。
【0070】
また、フロントシート39を最も車両後方に移動させた状態におけるアッパレール35の前端35aに対応する部分近傍を補強する第3補強部材75をさらに備えているので、連結ブラケット11における前突時に荷重が作用する部分近傍を補強することができる。
【0071】
さらに、第3補強部材75が方杖として機能するので、連結ブラケット11の上下方向の剛性が向上し、連結ブラケット11における前突時に荷重が作用する部分近傍を確実に補強することができる。
【0072】
−その他の実施形態−
上記各実施形態では、連結ブラケット11の頂壁部13とロアレール27の底壁部31の下面31aとが近接しているが、連結ブラケット11の頂壁部13とロアレール27の底壁部31の下面31aとが接していてもよい。このようにすれば、シートスライドレール25の変形をより確実に抑制できる。
【0073】
上記実施形態1では、第1補強部材41は、その後端41aがフロントシート39を最も車両後方に移動させた状態におけるアッパレール35の前端35aよりも車両後方に位置しているが、第1補強部材41を備えることにより連結ブラケット11の剛性が高まるので、第1補強部材41の後端41aは必ずしも該アッパレール35の前端35aよりも車両後方に位置していなくてもよい。
【0074】
上記実施形態1では、前側取付部11a及び後側取付部11bをそれぞれ補強する第1及び第2補強部材41,65を設けているが、前突時には前側取付部11a近傍においてアッパレール35からロアレール27に大きな荷重が作用することから、前側取付部11aを補強する第1補強部材41だけを設けてもよい。
【0075】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0076】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明したように、本発明は、前後のクロスメンバに跨るようにシートスライドレールが配置されている自動車の下部車体構造等について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施形態1に係る下部車体構造を有する自動車の右側のフロントシートを模式的に示す斜視図である。
【図2】シートを取り外した状態の右側のフロントシートを模式的に示す斜視図である。
【図3】下部車体構造を模式的に示す斜視図である。
【図4】下部車体構造を示す平面図である。
【図5】図4のV−V線の矢視断面図である。
【図6】図4のVI−VI線の矢視断面図である。
【図7】図4のVII−VII線の矢視断面図である。
【図8】連結ブラケットを左側から見た斜視図である。
【図9】連結ブラケットを車両斜め前方から見た斜視図である。
【図10】連結ブラケットを車両斜め後方から見た斜視図である。
【図11】連結ブラケットを取り外した状態の補強部材を左側から見た斜視図である。
【図12】連結ブラケットを取り外した状態の補強部材を車両斜め後方から見た斜視図である。
【図13】実施形態2に係る下部車体構造を模式的に示す斜視図である。
【図14】図13のXIV−XIV線の矢視断面図である。
【図15】前後のクロスメンバに跨るようにシートスライドレールが配置された本実施形態の下部車体構造における前突時の状態を説明する模式図である。
【図16】前後のクロスメンバに跨るようにシートスライドレールが配置された従来の下部車体構造における前突時の状態を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0079】
1 下部車体構造
3 フロア
5 サイドシル
5a 上面
7 前側クロスメンバ
7a 上面
7b 後面
9 後側クロスメンバ
9a 上面
9b 前面
11 連結ブラケット
11a 前側取付部
11c 後端部
13 頂壁部
13a 車幅方向外側端部
15 立壁部
15a 車幅方向外側の面
19 延出部
23 立壁部
25 シートスライドレール
27 ロアレール
27a 前端部
27b 後端部
31 底壁部
31a 下面
35 アッパレール
35a 前端
39 フロントシート(シート)
41 第1補強部材(補強部材)
41a 後端
43 頂壁部
43a 車幅方向外側端部
43c 後端部
45 後壁部
45a 車幅方向内側端部
47 内壁部
49 外壁部
75 第3補強部材(補強部材)
75a 上端部
75b 下端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアと、該フロア上の車幅方向一端部において車両前後方向に延びているサイドシルと、上記フロア上において車両前後方向に間隔をあけて車幅方向に延び、車幅方向一端部が上記サイドシルに接続された前側及び後側クロスメンバと、該前側及び後側クロスメンバに跨るように車両前後方向に延び、シートを車両前後方向に移動させるためのシートスライドレールとを備えた自動車の下部車体構造であって、
上記シートスライドレールは、底壁部を有するロアレールと、上記シートが取り付けられ、上記ロアレールに対してスライド可能なアッパレールとを有しており、
上記前側及び後側クロスメンバを連結するように車両前後方向に延び、上記前側及び後側クロスメンバの間において上記フロア及び上記サイドシルとともに閉断面を形成している連結ブラケットをさらに備え、
上記連結ブラケットは、上記ロアレールの底壁部の下面に接している又は近接している頂壁部と、該頂壁部から下方に延びている立壁部とを有していることを特徴とする自動車の下部車体構造。
【請求項2】
請求項1記載の自動車の下部車体構造において、
上記ロアレールは、前後端部がそれぞれ上記連結ブラケットの頂壁部における上記前側及び後側クロスメンバの上方近傍部に取り付けられており、
上記連結ブラケットにおける上記ロアレールの前端部の取付部近傍を補強する補強部材をさらに備えていることを特徴とする自動車の下部車体構造。
【請求項3】
請求項2記載の自動車の下部車体構造において、
上記補強部材は、上記連結ブラケットの内側に配置されていて、上記前側クロスメンバの上方から上記連結ブラケットの頂壁部に沿うように車両前後方向に延びている頂壁部と、該頂壁部の後端部から下方に延びている後壁部と、該後壁部の車幅方向内側端部から車両後方に延び、上記連結ブラケットの立壁部の車幅方向外側の面に取り付けられた内壁部とを有していることを特徴とする自動車の下部車体構造。
【請求項4】
請求項3記載の自動車の下部車体構造において、
上記補強部材は上記頂壁部、後壁部及び内壁部に加え、該頂壁部の車幅方向外側端部から下方に延びている外壁部をさらに有しており、
上記外壁部の下端は上記前側クロスメンバの上面に接している又は近接していることを特徴とする自動車の下部車体構造。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1つに記載の自動車の下部車体構造において、
上記補強部材は、その後端が上記シートを最も車両後方に移動させた状態における上記アッパレールの前端よりも車両後方に位置するように、上記前側クロスメンバの上方において車両後方に延びていることを特徴とする自動車の下部車体構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の自動車の下部車体構造において、
上記連結ブラケットは、その上記頂壁部が上記前側及び後側クロスメンバの上面から上方に離間するように設けられており、該各クロスメンバ及び上記サイドシルとともに閉断面を形成していることを特徴とする自動車の下部車体構造。
【請求項7】
請求項6記載の自動車の下部車体構造において、
上記連結ブラケットの頂壁部の車幅方向外側端部は、上記サイドシルの上面に取り付けられていることを特徴とする自動車の下部車体構造。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の自動車の下部車体構造において、
上記連結ブラケットには、その後端部から車両後方に延びている延出部が形成されており、
上記延出部の立壁部は、車両前方から後方に向かうに従って車幅方向外側に延びていることを特徴とする自動車の下部車体構造。
【請求項9】
請求項1記載の自動車の下部車体構造において、
上記連結ブラケットは、上記前側クロスメンバの後面と上記後側クロスメンバの前面とを連結するように延びており、
上記連結ブラケットの、上記シートを最も車両後方に移動させた状態における上記アッパレールの前端に対応する部分近傍を補強する補強部材をさらに備えていることを特徴とする自動車の下部車体構造。
【請求項10】
請求項9記載の自動車の下部車体構造において、
上記補強部材は、その上端部が上記連結ブラケットの頂壁部の下面に取り付けられているとともに、下方に向かうに従って車両前方に延びていて、その下端部が上記前側クロスメンバの後面に取り付けられていることを特徴とする自動車の下部車体構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2009−119997(P2009−119997A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295255(P2007−295255)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】