説明

自動車の前部構造

【課題】 マッドガード、アンダーカバーの支持剛性を高め、タイヤデフレクタ、アンダーカバーの垂れ下がりや走行中の振動を防止し、空力性能が確実に向上することができる、自動車の前部構造を提供する。
【解決手段】 タイヤデフレクタ9が、バンパーフェース7の側方部分に締結される取付部20と、この取付部20からタイヤハウス5の前端側の下方へ延びる本体部25とを有し、このタイヤデフレクタ9に取付部20から車幅方向内側へ延びる延出部30を形成し、この延出部30にアンダーカバー11の後端部とマッドガード8の前部下端部とを連結支持した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の前部構造に関し、特に、タイヤハウスの前部下端部の前側に配設されたタイヤデフレクタに、マッドガードの前部下端部とアンダーカバーの後端部とを連結支持させた構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の前部構造において、タイヤハウス等の車体部材に合成樹脂製のマッドガードを取付け、そのマッドガードによりタイヤハウス内の前輪の外周外側を覆い、また、空力性能を向上させ、エンジンや補機類を保護可能に、タイヤハウスの前側の下部に合成樹脂製のアンダーカバーを設け、そのアンダーカバーの前端部を含む外側端縁をバンパーフェースの下端部に取付けられた構造が周知である。
【0003】
特許文献1の自動車の前部構造では、マッドガード(フェンダプロテクタ)の前部下端部に鉛直なフランジが一体形成され、アンダーカバーの後端部に水平板状の一般部から下側に折れ曲がった鉛直なフランジが一体形成され、これら両フランジが当接した状態で車両前後方向から締結され連結されている。
【0004】
他方、自動車の前部構造において、タイヤハウスの前部下端部の前側にタイヤデフレクタを配設して前輪の前側に垂下させ、前輪の空気抵抗を低減させるようにした構造が周知である。特許文献1の自動車の前部構造では、マッドガードとアンダーカバーとに一体形成された両フランジによりタイヤデフレクタが構成されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−305784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の自動車の前部構造では、合成樹脂製のマッドガードの前部下端部と合成樹脂製のアンダーカバーの後端部とが直接連結され他のバンパーフェース等の部位には連結をとっていないため、バンパーフェースに対してアンダーカバーの前端部を含む外側端縁のみが取付けられる場合、また、タイヤハウス等の車体部材に対してマッドガードの上部のみが連結される場合、アンダーカバーのマッドガードとの連結部分や内側端縁部分が、必要な支持剛性を得られず垂れ下がったり走行中に振動して、アンダーカバーによる空力性能を向上させる機能、エンジンや補機類を保護する機能が低下する虞がある。
【0007】
また、特許文献1の自動車の前部構造では、マッドガードとアンダーカバーとに一体形成された両フランジによりタイヤデフレクタが構成されているが、前記課題により、このタイヤデフレクタも垂れ下がったり走行中に振動して、タイヤデフレクタによる前輪の空気抵抗を低減させる機能が低下する虞がある。しかも、タイヤデフレクタは、硬質の合成樹脂製のマッドガード、アンダーカバーと一体形成されているため、接触により損傷する虞が高く、損傷したタイヤデフレクタを交換する場合には、マッドガード、アンダーカバーを交換する必要があり、その交換の為の作業負荷が大きくコストが高価になる。
【0008】
本発明の目的は、タイヤデフレクタをバンパーフェースに締結して設け、このタイヤデフレクタにマッドガードとアンダーカバーとを連結支持して、マッドガード、アンダーカバーの支持剛性を高め、タイヤデフレクタ、アンダーカバーの垂れ下がりや走行中の振動を防止して、タイヤデフレクタ、アンダーカバーによる機能を確実に発揮させ、しかも、タイヤデフレクタ、アンダーカバーの組付け性を向上させ、また、損傷したタイヤデフレクタを交換する場合には、その交換のための作業負荷、コストを抑えることができる、自動車の前部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の自動車の前部構造は、バンパーフェースと、タイヤハウスと、タイヤハウス内の前輪の外周外側を覆うようにタイヤハウスを形成する為の車体部材に上部が取付けられた合成樹脂製のマッドガードとを備えた自動車の前部構造において、前記バンパーフェースの側方部分に締結される取付部と、この取付部からタイヤハウスの前端側の下方へ延びる本体部とを有するタイヤデフレクタと、前記タイヤハウスの前側の下部に設けられ、バンパーフェースの下端部に前端部を含む外側端縁が取付けられた合成樹脂製のアンダーカバーとを備え、前記タイヤデフレクタに前記取付部から車幅方向内側へ延びる延出部が形成され、この延出部にアンダーカバーの後端部とマッドガードの前部下端部とが連結支持されたことを特徴とする。
【0010】
この自動車の前部構造では、タイヤハウスを形成する為の車体部材に合成樹脂製のマッドガードの上部が取付けられ、このマッドガードによりタイヤハウス内の前輪の外周外側が覆われている。タイヤデフレクタは取付部と本体部とを有し、取付部がバンパーフェースの側方部分に締結され、本体部が取付部からタイヤハウスの前端側の下方へ延び、この本体部により前輪の空気抵抗が低減される。タイヤデフレクタについては、弾性部材で構成してもよい。
【0011】
タイヤハウスの前側の下部に合成樹脂製のアンダーカバーが設けられ、アンダーカバーの前端部を含む外側端縁がバンパーフェースの下端部に取付けられ、このアンダーカバーにより、車両下面の空気の流れが整流され、また、エンジンや補機類が保護される。タイヤデフレクタはマッドガードとアンダーカバーとは別体に構成され、このタイヤデフレクタに取付部から車幅方向内側へ延びる延出部が形成され、この延出部にアンダーカバーの後端部とマッドガードの前部下端部とが連結支持されている。
【0012】
従って、マッドガード、アンダーカバーの支持剛性が高められ、タイヤデフレクタ、アンダーカバーの垂れ下がりや走行中の振動が防止されて、タイヤデフレクタ、アンダーカバーによる機能が確実に発揮され、また、マッドガード、タイヤデフレクタ、アンダーカバーが損傷した場合には、これら交換を個別に行うことができ、その交換のための作業負荷とコストが軽減する。
【0013】
請求項1の発明には、次の構成を採用可能である。
前記タイヤデフレクタの延出部は、マッドガードの前部下端部が車両前後方向から締結される縦壁状のマッドガード締結部と、アンダーカバーの後端部が上下方向から締結される横壁状のアンダーカバー締結部とを有する(請求項2)。前記タイヤデフレクタの延出部は、マッドガード締結部の下端部からアンダーカバー締結部が前方へ張出すように構成されると共に、マッドガード締結部の前面とアンダーカバー締結部の上面とを繋ぐように車幅方向に間隔を空けて配置された複数の補強リブを有する(請求項3)。
【0014】
前記マッドガードの前部下端部に、タイヤデフレクタの取付部の車幅方向内側端近傍部が通過する縦向きのスリットが下端解放状に形成され、マッドガードの前部下端部に対して、タイヤデフレクタの取付部が後側に配置され延出部が前側に配置される(請求項4)。前記タイヤデフレクタの取付部と本体部との境界部分に、アンダーカバー締結部から車幅方向外側に連続的に延びる横壁部が一体的に形成され、この横壁部の下面と本体部の前面とを繋ぐように車幅方向に間隔を空けて配置された第2の複数の補強リブが形成されると共に、この横壁部にアンダーカバーの後端部が支持される(請求項5)。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の自動車の前部構造によれば、特に、タイヤデフレクタが、バンパーフェースの側方部分に締結される取付部と、この取付部からタイヤハウスの前端側の下方へ延びる本体部とを有し、このタイヤデフレクタに取付部から車幅方向内側へ延びる延出部を形成し、この延出部にアンダーカバーの後端部とマッドガードの前部下端部とを連結支持したので、マッドガードとアンダーカバーとをタイヤデフレクタを介してバンパーフェースに支持させて、別途ブラケットを設けることなく、マッドガード、アンダーカバーの支持剛性を高め、タイヤデフレクタ、アンダーカバーの垂れ下がりや走行中の振動を防止して、タイヤデフレクタ、アンダーカバーによる機能を確実に発揮させ、空力性能を確実に高めることができる。しかも、タイヤデフレクタ、アンダーカバーの組付け性を向上させ、また、マッドガード、タイヤデフレクタ、アンダーカバーが損傷した場合には、これら交換を個別に行うことができ、その交換のための作業負荷とコストを軽減できる。
【0016】
請求項2の自動車の前部構造によれば、タイヤデフレクタの延出部は、マッドガードの前部下端部が車両前後方向から締結される縦壁状のマッドガード締結部と、アンダーカバーの後端部が上下方向から締結される横壁状のアンダーカバー締結部とを有するので、マッドガードとアンダーカバーの形状を複雑化させることなく、タイヤデフレクタにマッドガードとアンダーカバーとを簡単に確実に連結することができ、タイヤデフレクタ、マッドガードの組付け性が確実に向上する。
【0017】
請求項3の自動車の前部構造によれば、タイヤデフレクタの延出部が、マッドガード締結部の下端部からアンダーカバー締結部が前方へ張出すように構成されると共に、マッドガード締結部の前面とアンダーカバー締結部の上面とを繋ぐように車幅方向に間隔を空けて配置された複数の補強リブを有するので、マッドガードとアンダーカバーを、その車幅方向内側端部付近まで補強リブを有する延出部に取付けて、マッドガード、アンダーカバーの支持剛性を確実に高めることができる。
【0018】
請求項4の自動車の前部構造によれば、マッドガードの前部下端部に、タイヤデフレクタの取付部の車幅方向内側端近傍部が通過する縦向きのスリットを下端解放状に形成し、マッドガードの前部下端部に対して、タイヤデフレクタの取付部を後側に配置し延出部を前側に配置したので、タイヤデフレクタの取付部と延出部を、タイヤデフレクタの前部下端部よりも下側へ張出さないように設けて、省スペース化でき、この延出部にアンダーカバーの後端部とマッドガードの前部下端部とを確実に連結することができる。
【0019】
請求項5の自動車の前部構造によれば、タイヤデフレクタの取付部と本体部との境界部分に、アンダーカバー締結部から車幅方向外側に連続的に延びる横壁部を一体的に形成し、この横壁部の下面と本体部の前面とを繋ぐように車幅方向に間隔を空けて配置された第2の複数の補強リブを形成すると共に、この横壁部にアンダーカバーの後端部を支持したので、取付部と本体部との強度を格段に高めつつ、アンダーカバーの支持剛性を一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の自動車の前部構造は、タイヤハウス内の前輪の外周外側を覆うようにタイヤハウスを形成する為の車体部材に上部が取付けられた合成樹脂製のマッドガード、バンパーフェースの側方部分に締結される取付部とこの取付部からタイヤハウスの前端側の下方へ延びる本体部とを有するタイヤデフレクタ、タイヤハウスの前側の下部に設けられバンパーフェースの下端部に前端部を含む外側端縁が取付けられた合成樹脂製のアンダーカバーを備え、タイヤデフレクタに取付部から車幅方向内側へ延びる延出部が形成され、この延出部にアンダーカバーの後端部とマッドガードの前部下端部とが連結支持されている。
【実施例】
【0021】
図1〜図4、図11に示すように、自動車の前部構造1は、フェンダーパネル2、エプロンパネル3、エプロンレインフォースメント4、タイヤハウス5、タイヤハウスインナパネル6、バンパーフェース7、マッドガード8、タイヤデフレクタ9、アンダーパネル10、アンダーカバー11等を備えている。尚、バンパーフェース7とアンダーパネル10以外の前記部材2〜6,8,9,11は、夫々、左右1対設けられていが、左右対称であるので、一方(右側)のものについて説明する。
【0022】
図11に示すように、フェンダーパネル2の車幅方向内側端部の下側にエプロンパネル3が配設され、そのエプロンパネル3の車幅方向外側に断面コ字形のエプロンレインフォースメント4が配設され、そのエプロンレインフォースメント4の上下両側の車幅方向内側端部分が エプロンパネル3の上下両端部に接合されて、閉断面が形成され、エプロンパネル3の下端部にはタイヤハウスインナパネル6の上端縁部が接合され、このタイヤハウスインナパネル6とマッドガード8によりタイヤハウス5が形成されている。
【0023】
図1〜図4に示すように、バンパーフェース7は、車両正面を覆う正面フェース部7aと、正面フェース部7aの左右両端から左右1対のタイヤハウス5までの側面を覆う左右1対の側面フェース部7bとを有し、正面フェース部7aと1対の側面フェース部7bの下端部には下方へ延びるスカート部7cが形成されている。
【0024】
図1〜図4、図11に示すように、マッドガード8は合成樹脂製であり、側面視にて円弧状に形成されて前輪の幅に相当する程度の幅を有し、このマッドガード8の上部を含む所定の複数部位が、タイヤハウス5を形成する為の車体部材であるエプロンレインフォースメント4とタイヤハウスインナパネル6とに、複数の締結部材8aにより締結され取付けられて、タイヤハウス5の周壁を形成し、このマッドガード8により、タイヤハウス5内の前輪の外周外側を覆われている。
【0025】
マッドガード8の頂部付近には、サスペンションタワー(図示略)が通過する切欠部8bが形成され、マッドガード8の車幅方向外側端部は、フェンダーパネル2のタイヤハウス5側の円弧状端部に内側且つ上側から係合されている。尚、この係合部分は必要に応じて何らかの固定手段で固定されている。
【0026】
図6〜図8に示すように、タイヤデフレクタ9は合成樹脂製又はゴム性の弾性部材からなり、バンパーフェース7の側方部分の側面フェース部7bに締結される取付部20と、この取付部20からタイヤハウス5の前端側の下方へ延びる本体部25と、取付部20から車幅方向内側へ延びる延出部30と有し、これら取付部20と本体部25と延出部30は一体形成されている。
【0027】
タイヤデフレクタ9は、マッドガード8の前部下端部の車幅方向幅と程同じ車幅方向長さを有し、その車幅方向外側半部余りに取付部20と本体部25が設けられ、車幅方向内側半部足らずに延出部30が設けられている。
【0028】
取付部20は車幅方向に細長い帯片状に形成され、この取付部20の全体から本体部25が下方へ延びてタイヤハウス5の前端側の下方に位置し、取付部20と本体部25の車幅方向外側部分は全体的に上方へ湾曲した形状になっている。取付部20の車幅方向外側端部分に締結孔20aが形成され、取付部20の車幅方向中央部において本体部25の前側へ膨出するブラケット部21に締結孔21aが形成されている。
【0029】
延出部30は、マッドガード8の前部下端部が車両前後方向から締結される縦壁状のマッドガード締結部31と、このマッドガード締結部31の下端部から前方へ張出してアンダーカバー11の後端部が上下方向から締結される横壁状のアンダーカバー締結部32と、マッドガード締結部31の前面とアンダーカバー締結部32の上面とを繋ぐように車幅方向に間隔を空けて配置された複数(例えば、3つ)の補強リブ33とを有し、これらマッドガード締結部31とアンダーカバー締結部32と複数の補強リブ33は一体形成されている。
【0030】
延出部30はマッドガード締結部31とアンダーカバー締結部32とで断面L形に形成され、これら締結部31,32が複数の補強リブ33により補強され、マッドガード締結部31とアンダーカバー締結部32には、夫々、複数の補強リブ33に対してから車幅方向へシフトした位置に複数(例えば、2つ)の締結孔31a,32aが形成されている。
【0031】
取付部20と本体部25との境界部分には、アンダーカバー締結部32から車幅方向外側に連続的に延びる横壁部35が、前方へ張出すように一体形成されている。この横壁部35は取付部20の車幅方向内側半部内に設けられ、この横壁部35の下面と本体部25の前面とを繋ぐように車幅方向に間隔を空けて配置された第2の複数(例えば、3つ)の補強リブ36が一体形成されている。ブラケット部21は、横壁部35の車幅方向外側近くに形成されている。
【0032】
図3〜図5に示すように、マッドガード8の前部下端部には、その車幅方向中央部よりも少し内側に縦向きのスリット8cが形成され、このマッドガード8の前部下端部のうち、スリット8cの車幅方向内側部分が車幅方向外側部分よりも少し後側に位置し、タイヤデフレクタ9の取付部20の車幅方向内側端近傍部がスリット8c通過して、マッドガード8の前部下端部に対して、取付部20が後側に配置され延出部30が前側に配置され、横壁部35がマッドガード8の前部下端部の下側から前方へ突出している。
【0033】
図1に示すように、アンダーパネル10は合成樹脂製であり、バンパーフェース7の正面フェース部7aの後側の下部に配設され、車幅方向に細長い水平板状に形成され、その前端部が正面フェース部7aの下端部に複数の締結部材10aにより締結され、このアンダーパネル10の左右両側に左右1対のアンダーカバー11が設けられている。
【0034】
図1〜図5に示すように、アンダーカバー11は合成樹脂製であり、タイヤハウス5の前側の下部に設けられ、アンダーカバー11の前端部を含む外側端縁は、バンパーフェース7の正面フェース部7aの車幅方向側端部分と側面フェース部7bとに沿った形状に形成されて、その対応部分のバンパーフェース7の下端部分に複数の締結部材11aにより締結され取付けられ、アンダーパネル10と締結部材11bにより連結されている。
【0035】
ここで、バンパーフェース7、マッドガード8、タイヤデフレクタ9、アンダーカバー11の関連する連結構造について詳細に説明する。
【0036】
バンパーフェース7とタイヤデフレクタ9との連結については、図6、図12に、図13に示すように、バンパーフェース7の側面フェース部7bの後端部のスカート部7cの少し上側部分に、車幅方向内側へ延びる連結板部7dが形成され、この連結板部7dに締結孔7eが形成され、連結板部7dにタイヤデフレクタ9の取付部20が後側から当接され、これらの両締結孔7e,20aに挿通された締結部材40により締結されている。
【0037】
バンパーフェース7の側面フェース部7bのスカート部7cの後端部に、車幅方向内側へ延びる連結板部7fが形成され、この連結板部7fに締結孔7gが形成され、連結板部7fにタイヤデフレクタ9の取付部20のブラケット部21が後側から当接され、これらの両締結孔7g,21aに挿通された締結部材41により締結されている。
【0038】
次に、タイヤデフレクタ9とマッドガード8との連結については、図4、図5、図12に示すように、タイヤデフレクタ9の延出部30のマッドガード締結部31が、マッドガード8の前部下端部に前側から当接され、マッドガード締結部31の複数の締結孔31aとマッドガード8の前部下端部に形成された複数(例えば、2つ)の締結孔8dとに挿通された複数(例えば、2つ)の締結部材42により締結されている。
【0039】
次に、タイヤデフレクタ9とアンダーカバー11との連結については、図4、図5、図12に示すように、タイヤデフレクタ9の延出部30のアンダーカバー締結部32が、アンダーカバー11の後端部に上側から当接され、アンダーカバー締結部32の複数の締結孔32aとアンダーカバー11の前端部に形成された複数(例えば、2つ)の締結孔11aとに挿通された複数(例えば、2つ)の締結部材43により締結されている。
【0040】
また、図5に示すように、アンダーカバー11の後端部には、後方に向かって段上がり状に延びる支持片11cが形成され、この支持片11cがタイヤデフレクタ9の横壁部35に上側から掛けられて支持されている。
【0041】
以上説明した自動車の前部構造1の効果について説明する。
特に、タイヤデフレクタ9が、バンパーフェース7の側方部分の側面フェース部7bに締結される取付部20と、この取付部20からタイヤハウス5の前端側の下方へ延びる本体部25とを有し、このタイヤデフレクタ9に取付部20から車幅方向内側へ延びる延出部30を形成し、この延出部30にアンダーカバー11の後端部とマッドガード8の前部下端部とを連結支持した。
【0042】
従って、マッドガード8とアンダーカバー11とをタイヤデフレクタ9を介してバンパーフェース7に支持させて、別途ブラケットを設けることなく、マッドガード8、アンダーカバー11の支持剛性を高め、タイヤデフレクタ9のアンダーカバー11との連結部分や内側端縁部分が垂れ下がりや走行中の振動を防止して、タイヤデフレクタ9により前輪の空気抵抗を低減する機能と、アンダーカバー11により車両下面の空気の流れを整流する機能とエンジンや補機類を保護する機能を確実に発揮させ、空力性能を確実に高めることができる。
【0043】
しかも、タイヤデフレクタ9、アンダーカバー11の組付け性を向上させ、また、マッドガード8、タイヤデフレクタ9、アンダーカバー11が損傷した場合には、これら交換を個別に行うことができ、その交換のための作業負荷とコストを軽減できる。
【0044】
タイヤデフレクタ9の延出部30は、マッドガード8の前部下端部が車両前後方向から締結される縦壁状のマッドガード締結部31と、アンダーカバー11の後端部が上下方向から締結される横壁状のアンダーカバー締結部32とを有するので、マッドガード8とアンダーカバー11の形状を複雑化させることなく、タイヤデフレクタ9にマッドガード8とアンダーカバー11とを簡単に確実に連結することができ、タイヤデフレクタ9、マッドガード8の組付け性が確実に向上する。
【0045】
タイヤデフレクタ9の延出部30が、マッドガード締結部31の下端部からアンダーカバー締結部32が前方へ張出すように構成されると共に、マッドガード締結部31の前面とアンダーカバー締結部32の上面とを繋ぐように車幅方向に間隔を空けて配置された複数の補強リブ33を有するので、マッドガード8とアンダーカバー11を、その車幅方向内側端部付近まで補強リブ33を有する延出部30に取付けて、マッドガード8、アンダーカバー11の支持剛性を確実に高めることができる。
【0046】
マッドガード8の前部下端部に、タイヤデフレクタ9の取付部20の車幅方向内側端近傍部が通過する縦向きのスリット8cを下端解放状に形成し、マッドガード8の前部下端部に対して、タイヤデフレクタ9の取付部20を後側に配置し延出部30を前側に配置したので、タイヤデフレクタ9の取付部20と延出部30を、タイヤデフレクタ9の前部下端部よりも下側へ張出さないように設けて、省スペース化でき、延出部30にアンダーカバー11の後端部とマッドガード8の前部下端部とを確実に連結できる。
【0047】
タイヤデフレクタ9の取付部20と本体部25との境界部分に、アンダーカバー締結部32から車幅方向外側に連続的に延びる横壁部35を一体的に形成し、この横壁部35の下面と本体部25の前面とを繋ぐように車幅方向に間隔を空けて配置された第2の複数の補強リブ36を形成すると共に、この横壁部36にアンダーカバー11の後端部を支持したので、取付部20と本体部25との強度を格段に高めつつ、アンダーカバー11の支持剛性を一層高めることができる。
【0048】
尚、前記実施例を次のように変更してもよい。
1]タイヤデフレクタ9を硬質の合成樹脂で構成してもよい。
2]タイヤデフレクタ9の横壁部35を取付部20の全幅に亙って形成してもよい。
3]タイヤデフレクタ9の本体部25を延出部30の下側にも設けてもよい。
4]タイヤデフレクタ9の横壁部35にアンダーカバー11の後端部を支持した状態で締結してもよい。
【0049】
5]タイヤデフレクタ9の取付部20のブラケット部21を省略し、本体部25の上部側にバンパーフェース7を直接連結してもよい。
6]前記各種連結部材として、ボルト・ナット、ファスナー部材、ピン部材等の種々の部材を採用可能である。
7]その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前記開示事項以外の種々の変更を付加して実施可能であり、また、本発明を種々の自動車の前部構造に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】自動車の前部構造の後方斜め下側からの斜視図である。
【図2】自動車の前部構造の前方下側からの斜視図である。
【図3】自動車の前部構造の後方斜め上側からの斜視図である。
【図4】自動車の前部構造の後方斜め下側からの斜視図である。
【図5】自動車の前部構造の要部の前方斜め上側からの斜視図である。
【図6】自動車の前部構造の要部の前方下側からの斜視図である。
【図7】タイヤデフレクタの前方斜め上側からの斜視図である。
【図8】タイヤデフレクタの前方斜め下側からの斜視図である。
【図9】タイヤデフレクタの正面図である。
【図10】タイヤデフレクタの平面図である。
【図11】自動車の前部構造の縦断面図である。
【図12】自動車の前部構造の要部の横断面図である。
【図13】自動車の前部構造の要部の縦断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 自動車の前部構造
5 タイヤハウス
7 バンパーフェース
8 マッドガード
8c スリット
9 タイヤデフレクタ
11 アンダーカバー
20 取付部
25 本体部
30 延出部
31 マッドガード締結部
32 アンダーカバー締結部
33 補強リブ
35 横壁部
36 第2の補強リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンパーフェースと、タイヤハウスと、タイヤハウス内の前輪の外周外側を覆うようにタイヤハウスを形成する為の車体部材に上部が取付けられた合成樹脂製のマッドガードとを備えた自動車の前部構造において、
前記バンパーフェースの側方部分に締結される取付部と、この取付部からタイヤハウスの前端側の下方へ延びる本体部とを有するタイヤデフレクタと、
前記タイヤハウスの前側の下部に設けられ、バンパーフェースの下端部に前端部を含む外側端縁が取付けられた合成樹脂製のアンダーカバーとを備え、
前記タイヤデフレクタに前記取付部から車幅方向内側へ延びる延出部が形成され、この延出部にアンダーカバーの後端部とマッドガードの前部下端部とが連結支持されたことを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項2】
前記タイヤデフレクタの延出部は、マッドガードの前部下端部が車両前後方向から締結される縦壁状のマッドガード締結部と、アンダーカバーの後端部が上下方向から締結される横壁状のアンダーカバー締結部とを有することを特徴とする請求項1に記載の自動車の前部構造。
【請求項3】
前記タイヤデフレクタの延出部は、マッドガード締結部の下端部からアンダーカバー締結部が前方へ張出すように構成されると共に、マッドガード締結部の前面とアンダーカバー締結部の上面とを繋ぐように車幅方向に間隔を空けて配置された複数の補強リブを有することを特徴とする請求項2に記載の自動車の前部構造。
【請求項4】
前記マッドガードの前部下端部に、タイヤデフレクタの取付部の車幅方向内側端近傍部が通過する縦向きのスリットが下端解放状に形成され、マッドガードの前部下端部に対して、タイヤデフレクタの取付部が後側に配置され延出部が前側に配置されたことを特徴とする請求項3に記載の自動車の前部構造。
【請求項5】
前記タイヤデフレクタの取付部と本体部との境界部分に、アンダーカバー締結部から車幅方向外側に連続的に延びる横壁部が一体的に形成され、この横壁部の下面と本体部の前面とを繋ぐように車幅方向に間隔を空けて配置された第2の複数の補強リブが形成されると共に、この横壁部にアンダーカバーの後端部が支持されたことを特徴とする請求項4に記載の自動車の前部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2007−168620(P2007−168620A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369162(P2005−369162)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】