説明

自動車の後部車体構造

【課題】 車体後部のねじり剛性や曲げ剛性の向上等を図った自動車の後部車体構造を提供する。
【解決手段】 ホイールハウスインナ15aには、その車外側壁面との間に閉断面を形成するダンパスティフナ21が接合されている。フロアフレーム14およびリヤフロアパネル6には、それぞれの車外側壁面との間に閉断面を形成するフロアクロスメンバ22が接合されている。ダンパスティフナ21は、その下端がフロアフレーム14の上端を覆う位置まで延設され、フロアクロスメンバ22とともにホイールハウスインナ15aにスポット溶接されている。これにより、トランクルーム13の底面から側面にかけて連続した稜線l,l’を有する閉断面骨格23を介して、左右のホイールハウス15とリヤフロアパネル6とがフロアフレーム3に強固に連結されることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部の剛性向上を図った自動車の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の懸架装置は、サスペンションアームやスプリング、ダンパ等から構成されている。ダンパは、通常、ホイールハウス内に直立状態で設置されており、その上端がホイールハウスの上壁に支持される。ホイールハウスには悪路走行時等にダンパから上下方向の衝撃荷重が入力するため、その剛性が低い場合にはホイールハウスが撓み変形し、操縦安定性等に悪影響をあたえる。そこで、ホイールハウスの車外側壁面に骨格材であるダンパスティフナを取り付け、閉断面骨格を形成させることで剛性の向上を図る技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、トランクルームの床面を形成するリヤフロアパネルは、リヤシートや荷物等の重量を支える強度や剛性を確保するため、その下面に骨格材であるフロアフレームやフロアクロスメンバを備えることが多い(特許文献2参照)。フロアフレームやフロアクロスメンバは、例えば鋼板をコ字断面形状に成形したものであり、フロアパネルにスポット溶接されてリヤフロアパネルとの間に閉断面骨格を形成する。通常、フロアクロスメンバの左右端は、左右フロアフレームの内側壁面にスポット溶接されている。
【特許文献1】特開平7−309252号公報(段落0012、図3)
【特許文献2】特開平8−216927号公報(段落0016、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モノコック構造のボディを採用した自動車では、操縦安定性や乗り心地等を高めるべく、車体のねじり剛性や曲げ剛性を十分に確保する必要がある。しかしながら、特許文献1のダンパスティフナは、ホイールハウスの剛性には寄与するものの、車体後部全体の剛性を向上させるものではなかった。また、特許文献2のフロアフレームやフロアクロスメンバも、リヤフロアパネルの剛性には寄与するものの、これも車体後部全体の剛性を向上させるものではなかった。ダンパスティフナとフロアクロスメンバとの前後位置を一致させたものもあるが、フロアフレームによってダンパスティフナ側の閉断面骨格とフロアクロスメンバ側の閉断面骨格がとぎれてしまうため、やはり、車体後部全体の剛性を効果的に向上させることはできなかった。
【0005】
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、車体後部のねじり剛性や曲げ剛性の向上等を図った自動車の後部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る自動車の後部車体構造は、左右のリヤホイールハウスにおけるダンパ装着部近傍の車外側壁面に接合され、当該リヤホイールハウスとの間に閉断面を形成するダンパスティフナと、リヤフロアパネルの下面に接合され、当該リヤフロアパネルとの間に閉断面を形成するフロアクロスメンバとを備えた自動車の後部車体構造であって、前記左右のリヤホイールハウスをつなぐ連続する閉断面骨格を形成すべく、前記ダンパスティフナと前記フロアクロスメンバとをどちらか一方が他方に被さるかたちで接合したことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の発明に係る自動車の後部車体構造は、請求項1に記載の自動車の後部車体構造において、前記リヤホイールハウスと前記リヤフロアパネルとがトランクルームを画成し、前記リヤホイールハウスと前記リヤフロアパネルとの間に前後方向に延びるフロアフレームが設置され、前記閉断面骨格が、前記トランクルームの側壁と前記フロアフレームの外壁とを連結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の自動車の後部車体構造によれば、底面から側面にかけて連続する稜線によって左右のリヤホイールハウスとリヤフロアパネルとが強固に連結されるため、自動車の車体後部の曲げ剛性やねじり剛性が上昇し、操縦安定性や乗り心地等を向上させることができる。また、請求項2の自動車の後部車体構造によれば、トランクルームの剛性が向上することにより車体のねじり変形や曲げ変形が効果的に抑制され、操縦安定性や乗り心地等が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を適用した自動車の後部車体構造の一実施形態を詳細に説明する。
図1は実施形態に係る自動車のボディを示す斜視図であり、図2は図1中のII部拡大縦断面図であり、図3は図2中のIII矢視図である。
【0010】
≪実施形態の構成≫
図1に示すように、本実施形態のハッチバック車1は、ボディ2の後部にテールゲート3を備えた4ドアセダン型乗用車である。ボディ2は、リヤパネル4や、ルーフパネル5、リヤフロアパネル6、左右のアウタパネル7,8等をスポット溶接によって組み立ててなるモノコック構造となっている。テールゲート3は、ルーフパネル5の後端に設けられたヒンジ(図示せず)を支点として上方に開放し、開放状態でサポートストラット9により支持される。なお、図1は、車体構造の説明を容易にするため、トランクルームのカーペットやトリム類を外した状態で示している。
【0011】
リヤシート11の後方には、リヤフロアパネル6やリヤインナパネル12等によってトランクルーム13が画成されている。図2,図3に示すように、トランクルーム13の側方には、フロアフレームインナ14aとフロアフレームアウタ14bとをスポット溶接してなる矩形断面形状のフロアフレーム14が配置されている。フロアフレーム14には、その内側面にリヤフロアパネル6がスポット溶接され、その外側面にホイールハウスインナ15aがスポット溶接されている。ホイールハウスインナ15aは、リヤインナパネル12を間に挟むかたちでホイールハウスアウタ15bにスポット溶接されてホイールハウス15を形成する。
【0012】
ホイールハウスインナ15aには、上下一対のダンパマウント(マウンティングラバー)16,17を介して、ダンパ20の上端が弾性支持されている。ダンパ20は、その下端が図示しないサスペンションアームに連結されており、ホイールの上下動に伴うサスペンションアームの振動を減衰する。
【0013】
ホイールハウスインナ15aには、ダンパ20の直後に、その車外側壁面との間に閉断面を形成するダンパスティフナ21が接合されている。ダンパスティフナ21は、略コ字断面形状を呈する鋼板プレス成型品であり、接合フランジ21aをもってホイールハウスインナ15aの上端部から下端部にかけてスポット溶接されている。
【0014】
一方、フロアフレーム14およびリヤフロアパネル6には、それぞれの車外側壁面との間に閉断面を形成するフロアクロスメンバ22が接合されている。フロアクロスメンバ22も、略コ字断面形状を呈する鋼板プレス成型品であり、接合フランジ22aをもって左右のフロアフレーム14(図2,図3には左側のみ示す)とリヤフロアパネル6とにスポット溶接されている。なお、フロアクロスメンバ22の接合フランジ22aには、プレス成形(絞り加工)を容易にすべく、フロアフレーム14の角部に対応する部位に切欠22b、22cが設けられている。
【0015】
本実施形態の場合、フロアクロスメンバ22は、その左右上端がフロアフレーム14の上端まで延設されている。そして、ダンパスティフナ21は、その下端がフロアフレーム14の上端を覆う位置まで延設され、フロアクロスメンバ22とともにホイールハウスインナ15aにスポット溶接されている。これにより、本実施形態のボディ2では、トランクルーム13の底面から側面にかけて連続した稜線l,l’を有する閉断面骨格23が形成され、この閉断面骨格23を介して左右のホイールハウス15とリヤフロアパネル6とがフロアフレーム3に強固に連結されることになる。
【0016】
≪実施形態の作用≫
自動車の悪路走行時において、ホイールハウス15のダンパ装着部には、大きな上下方向荷重が作用する。ところが、本実施形態では、ホイールハウスインナ15aとの間に閉断面を形成するダンパスティフナ21が存在するため、ホイールハウス15の撓み変形が効果的に抑制され、高い操縦安定性が実現される。一方、自動車の旋回走行時においては、ロールに伴うねじり荷重や曲げ荷重がボディ2に作用する。ところが、本実施形態の場合、底面から側面にかけて連続した稜線l,l’を有する閉断面骨格23によって左右のホイールハウス15とリヤフロアパネル6とがフロアフレーム3強固に連結されているため、トランクルーム13の剛性が向上してボディ2のねじり変形や曲げ変形が効果的に抑制される。その結果、高い操縦安定性や良好な乗り心地が得られるとともに、騒音や振動の減少も実現される。
【0017】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態は本発明をセダン型4ドア乗用車における後部車体構造に適用したものであるが、他の形式の自動車における後部車体構造に本発明を適用してもよい。また、上記実施形態では、ダンパスティフナとフロアクロスメンバとの接合部位をホイールハウスインナの下端部としたが、ダンパスティフナを下方に延設してフロアフレームの下部等で接合するようにしてもよい。また、上記実施形態では、接合部においてダンパスティフナをフロアクロスメンバに被せるようにしたが、フロアクロスメンバをダンパスティフナに被せるようにしてもよい。更に、ダンパスティフナやフロアクロスメンバ等の具体的形状等についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る自動車を示す斜視図である。
【図2】図1中のII部を示す拡大縦断面図である。
【図3】図1中のIII矢視図である。
【符号の説明】
【0019】
2 ボディ
6 リヤフロアパネル
13 トランクルーム
14 フロアフレーム
15 リヤホイールハウス
20 ダンパ
21 ダンパスティフナ
22 フロアクロスメンバ
23 閉断面骨格

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のリヤホイールハウスにおけるダンパ装着部近傍の車外側壁面に接合され、当該リヤホイールハウスとの間に閉断面を形成するダンパスティフナと、
リヤフロアパネルの下面に接合され、当該リヤフロアパネルとの間に閉断面を形成するフロアクロスメンバとを備えた自動車の後部車体構造であって、
前記左右のリヤホイールハウスをつなぐ連続する閉断面骨格を形成すべく、前記ダンパスティフナと前記フロアクロスメンバとをどちらか一方が他方に被さるかたちで接合したことを特徴とする自動車の後部車体構造。
【請求項2】
前記リヤホイールハウスと前記リヤフロアパネルとがトランクルームを画成し、
前記リヤホイールハウスと前記リヤフロアパネルとの間に前後方向に延びるフロアフレームが設置され、
前記閉断面骨格が、前記トランクルームの側壁と前記フロアフレームの外壁とを連結することを特徴とする、請求項1に記載の自動車の後部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−312376(P2006−312376A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135733(P2005−135733)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】