説明

自動車の車体後部構造

【課題】左右車輪のトレッドを大きくして、操安性を向上させるようにし、かつ、車体側におけるサスペンションアームの支持強度、NV性能が十分に保持されるようにする。
【解決手段】自動車1は、各サイドメンバ10に結合されるロッカー部18と、各サイドメンバ10から下方に向かって突出する支持ブラケット26と、一端部27がロッカー部18と支持ブラケット26とに支持され、他端部30が車輪7を支持する左右サスペンションアーム29とを備える。車体2の幅方向でサイドメンバ10の中心Aよりもサスペンションアーム29の一端部27の中心Bを車外側OUTに配置する。サイドメンバ10に沿って延び、このサイドメンバ10と支持ブラケット26とにそれぞれ結合される補強材48を設ける。車体2に支持される燃料タンク55を、支持ブラケット26と補強材48とによりそれぞれ形成された左右組み立て体26,48の間に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヤサイドメンバにサスペンションアームの一端部を支持させるようにした自動車の車体後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記自動車の車体後部構造には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、自動車の車体後部構造は、車体の長手方向に延びる左右リヤサイドメンバと、これら各サイドメンバの車外側に位置してこれら各サイドメンバに結合され、下端部がこのサイドメンバよりも下方に向かって突出するロッカー部と、上記各サイドメンバから下方に向かって突出し、車体の幅方向で上記ロッカー部と並設される支持ブラケットと、一端部が上記ロッカー部と支持ブラケットとに両持ち支持され、他端部が車輪を支持する左右サスペンションアームと、これら各サスペンションアームの他端部側と車体との間に架設される緩衝器とを備えている。
【0003】
自動車の走行により走行路面から車輪に衝撃力が与えられるとき、この衝撃力により、上記サスペンションアームはその一端部を中心として上記車輪と共に上下に揺動する。そして、このサスペンションアームの揺動に上記緩衝器が連動して衝撃力が緩和され、円滑な走行が得られるようになっている。
【特許文献1】特開2000−153778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動車の操安性を向上させようとする場合、例えば、車体の幅方向における上記左右サスペンションアーム同士の間隔をより大きく拡げ、これにより、左右車輪のトレッドをより大きくさせることが考えられる。
【0005】
ここで、特に軽自動車では、車体の最大幅寸法につき一定の制限が設けられている。このため、上記のように左右サスペンションアーム同士の間隔を拡げようとする場合、上記制限下では、次のようにすることが考えられる。
【0006】
即ち、上記ロッカー部や支持ブラケットを屈曲させて、これらにおける上記サスペンションアームの一端部の支持部分を、その基部よりも車体の外側方に向けてオフセット配置する。これによれば、上記サスペンションアームの一端部を、車体の幅方向で、より外側方に配置させることができる。このため、車体の幅寸法を上記した一定の制限内に保ったままで、上記左右サスペンションアーム同士の間隔を拡げることができ、これにより、上記左右車輪のトレッドを大きくできる。
【0007】
しかし、上記したように、ロッカー部や支持ブラケットを屈曲させて、これらにおけるサスペンションアームの一端部の支持部分をオフセット配置したとすると、車体側における上記サスペンションアームの支持部の左右剛性が低下し、強度やNV性能が低下するおそれを生じる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車体の幅方向における左右サスペンションアーム同士の間隔を、より大きく拡げることにより、これらサスペンションアームに支持された左右車輪のトレッドを大きくして、操安性を向上させるようにし、かつ、このようにした場合でも、車体におけるサスペンションアームの支持強度、NV性能が十分に保持されるようにすることである。
【0009】
また、本発明の他の目的は、車体に支持された燃料タンクが自動車の衝突により破損する、ということを簡単な構成によって防止できるようにすることである。
【0010】
請求項1の発明は、車体2の長手方向に延びる左右リヤサイドメンバ10と、これら各サイドメンバ10の車外側OUTに位置してこれら各サイドメンバ10に結合され(S3,S4)、下端部がこのサイドメンバ10よりも下方に向かって突出するロッカー部18と、上記各サイドメンバ10から下方に向かって突出し、車体2の幅方向で上記ロッカー部18と並設される支持ブラケット26と、一端部27が上記ロッカー部18と支持ブラケット26とに両持ち支持され、他端部30が車輪7を支持する左右サスペンションアーム29とを備えた自動車の車体後部構造において、
上記車体2の幅方向で上記サイドメンバ10の中心Aよりも上記サスペンションアーム29の一端部27の中心Bを車外側OUTに配置し、
上記サイドメンバ10に沿って延び、このサイドメンバ10と上記支持ブラケット26とにそれぞれ結合される補強材48を設け、
上記車体2に支持される燃料タンク55を、上記支持ブラケット26に補強材48とによりそれぞれ形成された左右組み立て体26,48の間に配置したものである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明に加えて、上記サイドメンバ10の側面と下面とに対しそれぞれ上記支持ブラケット26の上部を結合(S7−S9,S11,S12)し、
上記支持ブラケット26が、それぞれ縦方向に延びて、その各上部が上記サイドメンバ10に結合(S7−S9,S11,S12)される一方、各下部が上記サイドメンバ10よりも下方に突出して互いに結合(S13,S14)される内、外側ブラケット部材38,39を備え、上記サイドメンバ10と内、外側ブラケット部材38,39とにより、閉断面構造が形成されるようにしたものである。
【0012】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明による効果は、次の如くである。
【0014】
請求項1の発明は、車体の長手方向に延びる左右リヤサイドメンバと、これら各サイドメンバの車外側に位置してこれら各サイドメンバに結合され、下端部がこのサイドメンバよりも下方に向かって突出するロッカー部と、上記各サイドメンバから下方に向かって突出し、車体の幅方向で上記ロッカー部と並設される支持ブラケットと、一端部が上記ロッカー部と支持ブラケットとに両持ち支持され、他端部が車輪を支持する左右サスペンションアームとを備えた自動車の車体後部構造において、
上記車体の幅方向で上記サイドメンバの中心よりも上記サスペンションアームの一端部の中心を車外側に配置している。
【0015】
このため、上記左右サスペンションアームの一端部が車外側に配置された分、車体の幅方向における上記左右サスペンションアーム同士の間隔を、より大きく拡げることができる。よって、これら左右サスペンションアームに支持された左右車輪のトレッドを大きくでき、自動車の操安性を向上させることができる。
【0016】
また、上記サイドメンバに沿って延び、このサイドメンバと上記支持ブラケットとにそれぞれ結合される補強材を設けている。
【0017】
このため、上記補強材により、サイドメンバと支持ブラケットとがそれぞれ補強されると共に、上記サイドメンバにそれぞれ結合されたロッカー部と支持ブラケットとの互いの結合強度が向上させられる。
【0018】
よって、前記したように、左右サスペンションアーム同士の間隔を拡げようとして、これら各サスペンションアームの一端部を両持ち支持する上記ロッカー部と支持ブラケットとの形状を定める場合に、これらの強度低下をある程度犠牲にするとしても、この強度低下は、上記補強材によって補填される。つまり、操安性を向上させるようにした場合でも、上記ロッカー部と支持ブラケットとにおけるサスペンションアームの支持強度、NV性能は十分に保持可能とされる。
【0019】
また、上記車体に支持される燃料タンクを、上記支持ブラケットと補強材とによりそれぞれ形成された左右組み立て体の間に配置している。
【0020】
このため、上記自動車に対し、例えば、その後方から何らかの物体が衝突して、その衝撃力により、上記各サイドメンバが屈曲したとしても、上記衝撃力が上記燃料タンクにまで及ぶことは、上記組み立て体によって防止され、この燃料タンクが破損することは防止される。
【0021】
よって、上記サスペンションアームを強固に支持するための上記組み立て体が上記燃料タンクの破損防止に有効利用されたことから、自動車の衝突時に上記燃料タンクが破損する、ということは、簡単な構成によって防止される。
【0022】
請求項2の発明は、上記サイドメンバの側面と下面とに対しそれぞれ上記支持ブラケットの上部を結合している。
【0023】
ここで、上記支持ブラケットに対し一方向に向かう外力が与えられることにより、上記サイドメンバの側面と下面とに対する上記支持ブラケットの両結合部のうち、一方の結合部に引張力が与えられるとする。すると、この一方の結合部では、上記サイドメンバと支持ブラケットとの間で剥離が生じようとし、これは、上記サイドメンバに対する支持ブラケットの結合強度の点で好ましくない。しかし、上記サイドメンバの側面と下面とは、互いにほぼ直交する関係にある。このため、上記外力により、上記一方の結合部に引張力が与えられるときには、他方の結合部には剪断力が与えられがちとなって、上記剥離は防止される。このため、この他方の結合部は上記外力に強固に対抗する。
【0024】
よって、例えば、サイドメンバの一面にのみ支持ブラケットを結合することに比べて、上記したサイドメンバに対する支持ブラケットの結合強度は、より向上する。この結果、上記ロッカー部と支持ブラケットとにおけるサスペンションアームの支持強度は、より向上させられる。
【0025】
また、上記支持ブラケットが、それぞれ縦方向に延びて、その各上部が上記サイドメンバに結合される一方、各下部が上記サイドメンバよりも下方に突出して互いに結合される内、外側ブラケット部材を備え、上記サイドメンバと内、外側ブラケット部材とにより、閉断面構造が形成されるようにしている。
【0026】
このため、上記支持ブラケットは、その閉断面構造により強度と剛性とがより向上させられる。よって、上記ロッカー部と支持ブラケットとにおけるサスペンションアームの支持強度、NV性能は、更に向上させられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の自動車の車体後部構造に関し、車体の幅方向における左右サスペンションアーム同士の間隔を、より大きく拡げることにより、これらサスペンションアームに支持された左右車輪のトレッドを大きくして、操安性を向上させるようにし、かつ、このようにした場合でも、車体におけるサスペンションアームの支持強度が十分に保持されるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための最良の形態は、次の如くである。
【0028】
即ち、自動車の車体後部構造は、車体の長手方向に延びる左右リヤサイドメンバと、これら各サイドメンバの車外側に位置してこれら各サイドメンバに結合され、下端部がこのサイドメンバよりも下方に向かって突出するロッカー部と、上記各サイドメンバから下方に向かって突出し、車体の幅方向で上記ロッカー部と並設される支持ブラケットと、一端部が上記ロッカー部のインナパネルと支持ブラケットとに両持ち支持され、他端部が車輪を支持する左右サスペンションアームとを備えている。
【0029】
上記車体の幅方向で上記サイドメンバの中心よりも上記サスペンションアームの一端部の中心が車外側に配置されている。上記サイドメンバに沿って延び、このサイドメンバと上記支持ブラケットとにそれぞれ結合される補強材が設けられている。上記車体に支持される燃料タンクは、上記支持ブラケットと補強材とによりそれぞれ形成された左右組み立て体の間に配置されている。
【実施例】
【0030】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0031】
図において、符号1は自動車で、矢印Frは、この自動車1の進行方向の前方を示している。
【0032】
上記自動車1の車体2は、その下部を構成してこの車体2の骨格をなす車体フレーム3と、この車体フレーム3上に支持されてその内部が車室4とされる車体本体5と、上記車体フレーム3に懸架装置6により懸架される左右後車輪7とを備えている。上記車体2は、その幅方向の中央部を通る車体中心線8を基準として、ほぼ左右対称形とされている。
【0033】
上記車体フレーム3は、車体2の長手方向に延びる左右リヤサイドメンバ10と、車体2の幅方向に延びて、上記左右サイドメンバ10を互いに結合させる複数のクロスメンバ11とを備えている。上記サイドメンバ10は板金製であって、その長手方向の各部断面は倒立ハット形状をなしている。上記サイドメンバ10は、車体2の幅方向で互いに対面する左右側板12,13と、これら側板12,13の各下縁部同士を互いに一体的に連結させる連結板14と、上記各側板12,13の上縁部にそれぞれ一体的に形成される外向きフランジ15とを備えている。
【0034】
上記車体本体5は、上記各サイドメンバ10の車外側OUTに隣接するよう位置して、下端部がこのサイドメンバ10よりも下方に向かって突出するロッカー部18を備えている。このロッカー部18は板金製で、上記車体2の幅方向で対面し互いにスポット溶接S1により結合されるアウタ、インナパネル19,20と、このインナパネル20の内面に接合されて、スポット溶接S2により結合される補強パネル21とを備えている。上記サイドメンバ10の両側板12,13のうち、車外側OUTの側板12に上記ロッカー部18のインナパネル20がスポット溶接S3,S4により結合されている。
【0035】
また、上記車体本体5は、上記車体フレーム3の上面に沿って延び、車室4の下面を形成するフロアパネル23を備えている。このフロアパネル23は、上記サイドメンバ10の各外向きフランジ15と、ロッカー部18のインナパネル20とにスポット溶接S5,S6により結合されている。
【0036】
前記懸架装置6は、上記各サイドメンバ10からそれぞれ下方に向かって突出し、車体2の幅方向で、上記ロッカー部18よりも車内側INに位置してこのロッカー部18と並設される支持ブラケット26と、この支持ブラケット26よりも後方域で車体2の長手方向に延び、その一端部(前端部)27が上記補強パネル21により補強されたインナパネル20の部分と支持ブラケット26とに対し枢支軸28により両持ち支持されるサスペンションアーム29と、このサスペンションアーム29の他端部(後端部)30に支持され、車軸31を介し上記車輪7を支持するアクスルハウジング32と、上記左右サスペンションアーム29を互いに結合するクロスメンバ33とを備えている。
【0037】
また、上記懸架装置6は、上記サスペンションアーム29の中途部と、このサスペンションアーム29の中途部の上方における上記サイドメンバ10の部分との間に介設される圧縮状態のばね34と、上記アクスルハウジング32とこのアクスルハウジング32の後上方における車体2の部分とに架設される緩衝器35とを備えている。
【0038】
上記支持ブラケット26は板金製で、互いに車体2の幅方向で並設され、それぞれ縦方向に延びる内、外側ブラケット部材38,39を備えている。
【0039】
上記内側ブラケット部材38は、車体2の長手方向に延びる第1部材40と、この第1部材40の前縁部から車外側OUTに向かって一体的に延出する第2部材41とを備えている。上記第1部材40の上部は、上記サイドメンバ10の両側板12,13のうち、車内側INの側板13の側面(外側面)にスポット溶接S7,S8により結合されている。また、上記第2部材41の上部は、上記サイドメンバ10の連結板14の下面にスポット溶接S9により結合されている。更に、上記第2部材41の延出端部は、上記ロッカー部18のインナパネル20と補強パネル21とにスポット溶接S10により三枚重ねで結合されている。
【0040】
上記第2部材41の上部は、上記サイドメンバ10の連結板14の下面にスポット溶接S11,S12により結合されている。上記内側ブラケット部材38の第1部材40と外側ブラケット部材39の各下部は、互いに接合されてスポット溶接S13により結合されている。上記内側ブラケット部材38の第2部材41の車体2の幅方向の中途部と外側ブラケット部材39の前縁部とは、互いに接合されてスポット溶接S14により結合されている。
【0041】
上記車体2の長手方向に沿った視線でみて(図1)、上記内側ブラケット部材38の第1部材40の上部に対しこの第1部材40の下部は車外側OUTに偏位している。上記第1部材40の縦方向の中途部40aは下方に向かうに従い車外側OUTに向かうよう傾斜し、一方、上記外側ブラケット部材39の縦方向の中途部39aはほぼ鉛直方向に延びている。上記第1部材40の上部と中途部40aとには縦方向に延びる複数(2本)のビード42が形成されて、十分に補強されている。上記サイドメンバ10と内、外側ブラケット部材38,39の各中途部40a,39aとにより、倒立直角三角形状の閉断面構造が形成されている。なお、この閉断面構造は矩形状や多角形状であってもよい。
【0042】
前記枢支軸28は、上記ロッカー部18のインナパネル20および補強パネル21の接合部と、上記内側ブラケット部材38の第1部材40および外側ブラケット部材39の各下部同士の接合部との間に介設されるカラー45と、上記各接合部およびカラー45を貫通してこれらを共締め状に締結する締結具46とを備えている。上記枢支軸28とサスペンションアーム29の一端部27との間には円環形状のゴム製の緩衝体47が介設されている。
【0043】
特に図1において、上記車体2の幅方向で、上記サイドメンバ10の中心Aよりも上記サスペンションアーム29の一端部27の中心Bが、上記車体2の車外側OUTに配置されている。
【0044】
上記各サイドメンバ10に嵌入され、このサイドメンバ10に沿って延び、このサイドメンバ10と上記支持ブラケット26とに結合される補強材48が設けられている。この補強材48は板金製であって、その長手方向の各部断面はU字形状をなしている。上記補強材48は、車体2の幅方向で互いに対面する左右側板49,50と、これら側板49,50の各下縁部同士を互いに一体的に連結させる連結板51とを備えている。そして、上記補強材48は、上記サイドメンバ10の内面に全体的に面接合させられている。
【0045】
上記サイドメンバ10と補強材48とのそれぞれ車外側OUTの側板12,49は、前記スポット溶接S3により上記ロッカー部18のインナパネル20と三枚重ねで結合されている。また、上記サイドメンバ10と補強材48とのそれぞれ車内側INの側板13,50は、スポット溶接S8,S15により互いに結合され、このうち、特に前記スポット溶接S8により、支持ブラケット26の内側ブラケット部材38の第1部材40と三枚重ねで互いに結合されている。
【0046】
また、上記サイドメンバ10と補強材48との各連結板14,51はスポット溶接S9,S11,S16により互いに結合され、このうち、スポット溶接S9により上記支持ブラケット26の内側ブラケット部材38の第2部材41と三枚重ねで互いに結合され、また、スポット溶接S11により上記支持ブラケット26の外側ブラケット部材39と三枚重ねで互いに結合されている。
【0047】
図2,3において、上記車体フレーム3の前、後クロスメンバ11には、締結具54により燃料タンク55が支持されている。この燃料タンク55は、上記左右サイドメンバ10の間、左右サスペンションアーム29の前部の間、および上記支持ブラケット26と補強材48とによりそれぞれ形成された左右組み立て体26,48の間に配置されている。つまり、自動車1の側面視(図2)で、上記サイドメンバ10、サスペンションアーム29の前部、および組み立て体26,48と、燃料タンク55とは互いにラップさせられている。また、左右サイドメンバ10のうち、一側部(右側部)のサイドメンバ10と上記燃料タンク55との間には、車体2の前部に搭載されたエンジン側から後方に向かって延びる排気管56が配置されている。なお、上記燃料タンク55と排気管56とは、図3中二点鎖線で示すように形成してもよい。
【0048】
上記構成によれば、車体2の幅方向で上記サイドメンバ10の中心Aよりも上記サスペンションアーム29の一端部27の中心Bを車外側OUTに配置している。
【0049】
このため、上記左右サスペンションアーム29の一端部27が車外側OUTに配置された分、車体2の幅方向における上記左右サスペンションアーム29同士の間隔を、より大きく拡げることができる。よって、第1に、これら左右サスペンションアーム29に支持された左右車輪7のトレッドを大きくでき、自動車1の操安性を向上させることができる。また、第2に、上記左右サスペンションアーム29の間に配置された燃料タンク55の幅寸法を大きくして、その容量を大きくできる。
【0050】
また、上記サイドメンバ10に沿って延び、このサイドメンバ10と上記支持ブラケット26とにそれぞれ結合される補強材48を設けている。
【0051】
このため、上記補強材48により、サイドメンバ10と支持ブラケット26とがそれぞれ補強されると共に、上記サイドメンバ10にそれぞれ結合されたロッカー部18と支持ブラケット26との互いの結合強度が向上させられる。
【0052】
よって、前記したように、左右サスペンションアーム29同士の間隔を拡げようとして、これら各サスペンションアーム29の一端部27を両持ち支持する上記ロッカー部18と支持ブラケット26との形状を定める場合に、これらの強度低下をある程度犠牲にするとしても、この強度低下は、上記補強材48によって補填される。つまり、操安性を向上させるようにした場合でも、上記ロッカー部18と支持ブラケット26とにおけるサスペンションアーム29の支持強度、NV性能は十分に保持可能とされる。
【0053】
また、上記車体2に支持される燃料タンク55を、上記支持ブラケット26と補強材48とによりそれぞれ形成された左右組み立て体26,48の間に配置している。
【0054】
このため、上記自動車1に対し、例えば、その後方から何らかの物体が衝突して、その衝撃力Fにより、上記各サイドメンバ10が、図2中一点鎖線のように屈曲したとしても、上記衝撃力Fが上記燃料タンク55にまで及ぶことは、上記組み立て体26,48によって防止され、この燃料タンク55が破損することは防止される。
【0055】
よって、上記サスペンションアーム29を強固に支持するための上記組み立て体26,48が上記燃料タンク55の破損防止に有効利用されたことから、自動車1の衝突時に上記燃料タンク55が破損する、ということは、簡単な構成によって防止される。
【0056】
また、前記したように、サイドメンバ10の側面と下面とに対しそれぞれ上記支持ブラケット26の上部を結合(S7−S9,S11,S12)している。
【0057】
ここで、上記支持ブラケット26に対し一方向に向かう外力が与えられることにより、上記サイドメンバ10の側面と下面とに対する上記支持ブラケット26の両結合部のうち、一方の結合部に引張力が与えられるとする。すると、この一方の結合部では、上記サイドメンバ10と支持ブラケット26との間で剥離が生じようとし、これは、上記サイドメンバ10に対する支持ブラケット26の結合強度の点で好ましくない。しかし、上記サイドメンバ10の側面と下面とは、互いにほぼ直交する関係にある。このため、上記外力により、上記一方の結合部に引張力が与えられるときには、他方の結合部には剪断力が与えられがちとなって、上記剥離は防止される。このため、この他方の結合部は上記外力に強固に対抗する。
【0058】
よって、例えば、サイドメンバ10の一面にのみ支持ブラケット26を結合することに比べて、上記したサイドメンバ10に対する支持ブラケット26の結合強度は、より向上する。この結果、上記ロッカー部18と支持ブラケット26とにおけるサスペンションアーム29の支持強度は、より向上させられる。
【0059】
また、前記したように、支持ブラケット26が、それぞれ縦方向に延びて、その各上部が上記サイドメンバ10に結合(S7−S9,S11,S12)される一方、各下部が上記サイドメンバ10よりも下方に突出して互いに結合(S13,S14)される内、外側ブラケット部材38,39を備え、上記サイドメンバ10と内、外側ブラケット部材38,39とにより、閉断面構造が形成されるようにしている。
【0060】
このため、上記支持ブラケット26は、その閉断面構造により強度と剛性とがより向上させられる。よって、上記ロッカー部18と支持ブラケット26とにおけるサスペンションアーム29の支持強度、NV性能は、更に向上させられる。
【0061】
なお、以上は図示の例によるが、上記補強材48はサイドメンバ10の外面側に結合してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図4のI−I線矢視断面図である。
【図2】車体後部の側面図である。
【図3】車体後部の平面図である。
【図4】図2の部分拡大詳細図である。
【図5】図4で示したものの平面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 自動車
2 車体
3 車体フレーム
5 車体本体
6 懸架装置
7 車輪
10 サイドメンバ
18 ロッカー部
20 インナパネル
21 補強パネル
26 支持ブラケット
27 一端部
28 枢支軸
29 サスペンションアーム
30 他端部
38 内側ブラケット部材
39 外側ブラケット部材
39a 中途部
40a 中途部
48 補強材
55 燃料タンク
OUT 車外側
IN 車内側
A 中心
B 中心
F 衝撃力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の長手方向に延びる左右リヤサイドメンバと、これら各サイドメンバの車外側に位置してこれら各サイドメンバに結合され、下端部がこのサイドメンバよりも下方に向かって突出するロッカー部と、上記各サイドメンバから下方に向かって突出し、車体の幅方向で上記ロッカー部と並設される支持ブラケットと、一端部が上記ロッカー部と支持ブラケットとに両持ち支持され、他端部が車輪を支持する左右サスペンションアームとを備えた自動車の車体後部構造において、
上記車体の幅方向で上記サイドメンバの中心よりも上記サスペンションアームの一端部の中心を車外側に配置し、
上記サイドメンバに沿って延び、このサイドメンバと上記支持ブラケットとにそれぞれ結合される補強材を設け、
上記車体に支持される燃料タンクを、上記支持ブラケットと補強材とによりそれぞれ形成された左右組み立て体の間に配置したことを特徴とする自動車の車体後部構造。
【請求項2】
上記サイドメンバの側面と下面とに対しそれぞれ上記支持ブラケットの上部を結合し、
上記支持ブラケットが、それぞれ縦方向に延びて、その各上部が上記サイドメンバに結合される一方、各下部が上記サイドメンバよりも下方に突出して互いに結合される内、外側ブラケット部材を備え、上記サイドメンバと内、外側ブラケット部材とにより、閉断面構造が形成されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自動車の車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−269291(P2007−269291A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100928(P2006−100928)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】