説明

自動車の車体後部構造

【課題】剛性・強度を確保するとともに、乗員の足元空間を良好に確保することができる自動車の車体後部構造を提供する。
【解決手段】自動車の車体後部構造10は、フレーム傾斜部52が下側部位53から上側部位54に向けて徐々に細幅に形成されるとともに、その内部に沿ってミドルスチフナ58が車体前後方向に向けて設けられ、このミドルスチフナ58は、内外のスチフナ側壁73,74およびスチフナ底壁75で上方に開口した断面コ字状に形成され、内外のスチフナ側壁73,74がリヤフレームの内外の側壁47,48に接合されるとともに、スチフナ底壁75とリヤフレームの底壁49との間隔がフレーム傾斜部52の下側部位53から上側部位54に向けて徐々に減少するようにミドルスチフナ58を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヤフレームの途中の傾斜部を車体後方に向けて上り勾配で立ち上げ、傾斜部の後側にシートを備えた自動車の車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体後部構造は、左右のリヤフレームを上向きに開口した断面略コ字状に形成し、左右のリヤフレームの上辺にフロアパネルを載置することで、フロアパネルで開口を閉塞するとともにリヤフロアを形成する。
車体後部構造のなかには、後輪用のリヤアクスルを車幅方向に延ばすために、左右のリヤフレームを車体後方に向けて上り勾配で立ち上げ、左右のリヤフレーム内に補強用のリインフォースメント(スチフナ)を設けたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実用新案登録第2586651号公報
【0003】
この車体後部構造は、左右のリヤフレームが前端から後端まで同じ幅に形成され、左右のリヤフレーム内に補強用のリインフォースメント(スチフナ)を設けることで、左右のリヤフレームの剛性・強度を確保するように構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、車体後部構造のなかには、左右の立上げ部の後方にシートを備えたものがある。このシートに着座した乗員は、立上げ部近傍のリヤフロアに足を載せることになる。
しかし、特許文献1のリヤフレームは前端から後端まで同じ幅に形成されているため、シートに着座した乗員の足元空間を確保することが難しい。
【0005】
本発明は、剛性・強度を確保するとともに、乗員の足元空間を良好に確保することができる自動車の車体後部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、左右のリヤフレームをそれぞれ内外の側壁および底壁で上方に開口した断面略コ字状に形成し、各リヤフレームの途中の傾斜部をそれぞれ車体後方に向けて上り勾配で立ち上げ、各リヤフレームにリヤフロアパネルを設け、このリヤフロアパネルの前記傾斜部後側にシートを備えた自動車の車体後部構造において、前記傾斜部が下側部位から上側部位に向けて徐々に細幅に形成されるとともに、その内部に沿ってスチフナが車体前後方向に向けて設けられ、このスチフナは、内外のスチフナ側壁およびスチフナ底壁で上方に開口した断面コ字状に形成され、内外のスチフナ側壁が前記内外の側壁に接合されるとともに、前記スチフナ底壁と前記底壁との間隔が前記傾斜部の下側部位から上側部位に向けて徐々に減少するようにスチフナを配置したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明において、前記スチフナは、前記スチフナ底壁に前端部から後端部に渡って段差部が設けられたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明において、前記リヤフレームは、前後の部位に分割され、分割された前後の部位が前記細幅に形成された箇所で重ね合わせた状態に結合されたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明において、前記リヤフレームは、前記細幅に形成された箇所の内部にバルクヘッドが設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、傾斜部を下側部位から上側部位に向けて徐々に細幅に形成した。これにより、シートに着座した乗員の足元空間を拡大することができるという利点がある。
【0011】
さらに、スチフナ底壁と底壁との間隔を車体後方に向けて徐々に減少させるようにスチフナを配置した。よって、スチフナを略水平の向きに近づけることが可能になる。
これにより、リヤフレーム後端部に前向きの衝撃力が作用した場合に、リヤフレーム後端部に作用した衝撃力をスチフナで受けることができる。
したがって、衝撃力で傾斜部が変形することを一層確実に防ぐことができるという利点がある。
【0012】
請求項2に係る発明では、スチフナ底壁に前端部から後端部に渡って段差部を設けた。車体前後方向に向けて段差部を設けることで、稜線(すなわち、角部)を形成することができる。
これにより、スチフナの前後方向に対する剛性・強度を一層高めることができるという利点がある。
【0013】
請求項3に係る発明では、リヤフレームを前後の部位に分割し、分割した前後の部位を細幅に形成された箇所で重ね合わせて結合した。
細幅の部位を分割することで、例えば、比較的プレス成形し難い高張力鋼板を用いて細幅のリヤフレームを容易に形成することができるという利点がある。
加えて、高張力鋼板を用いることで、板厚寸法を小さく抑えることが可能になり、リヤフレームの軽量化を図ることができるという利点がある。
【0014】
請求項4に係る発明では、細幅に形成された箇所にバルクヘッドを設けた。これにより、リヤフレーム後端部に前向きの衝撃力が作用した場合に、リヤフレームの断面形状をバルクヘッドで保つことが可能になり、リヤフレーム後端部に作用した衝撃力をリヤフレームで受けることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は作業者から見た方向に従い、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
図1は本発明に係る自動車の車体後部構造を示す分解斜視図である。
自動車の車体後部構造10は、後部フレーム構造11が枠体状に形成され、この後部フレーム構造11の車体前後方向略中央に傾斜部(段差部)12を形成することで後半分フレーム部13が前半分フレーム部14より高い位置に配置され、後部フレーム構造11にリヤフロアパネル16が取り付けられている。
【0016】
後部フレーム構造11は、前半分フレーム部14の下部に燃料タンク18が取り付けられている。
リヤフロアパネル16は、後半分フロアパネル21を前半分フロアパネル22より高い位置に配置するように略中央にフロア段差部23が形成されている。
【0017】
後半分フロアパネル21は後半分フレーム部13に取り付けられ、前半分フロアパネル22は前半分フレーム部14に取り付けられる。
さらに、フロア段差部23は傾斜部12に取り付けられる。
このフロア段差部23の後方の後半分フロアパネル21、すなわち、傾斜部12の後側にシート25が取り付けられている。
【0018】
図2は本発明に係る後部フレーム構造を示す斜視図、図3は本発明に係る自動車の車体後部構造を示す断面図である。
後部フレーム構造11は、車体の両側に車体前後方向に向けて左右のサイドシル27,28をそれぞれ設け、左サイドシル27から左リヤフレーム(リヤフレーム)31を車体後方に向けて延ばすとともに、右サイドシル28から右リヤフレーム(リヤフレーム)32を車体後方に向けて延ばし、左右のリヤフレーム31,32に左右のアッパースチフナ(サイドカバー)35,36をそれぞれ被せ、左右のサイドシル27,28に前クロスメンバー38を車幅方向に向けて架け渡し、左右のリヤフレーム31,32の後端部31a,32aに後クロスメンバー39を車幅方向に向けて架け渡すことで略矩形状の枠体に形成されている。
さらに、後部フレーム構造11は、左右のリヤフレーム31,32の中央に第1〜第3中央クロスメンバー41,42,43を所定間隔をおいて架け渡したものである。
【0019】
図3に示すように、右リヤフレーム32と右アッパースチフナ36との間に、リヤフロアパネル16の右側辺16b(図1も参照)が挟持された状態でスポット溶接される。
同様に、左リヤフレーム31と左アッパースチフナ35との間に、リヤフロアパネル16の左側辺16aが挟持された状態でスポット溶接される(図8、図9、図10参照)。
これにより、後部フレーム構造11にリヤフロアパネル16が取り付けられ、リヤフロアパネル16および左右のアッパースチフナ35,36でリヤフロア45が形成される。
【0020】
ここで、左右のアッパースチフナ35,36は、リヤフロアパネル16より板厚寸法が大きく設定されている。
リヤフロアパネル16より板厚寸法が大きな左右のアッパースチフナ35,36を用いることで、左右のアッパースチフナ35,36は、左右のリヤフレーム31,32の骨格材と、リヤフロア45の左右の側部とを兼ねる。
【0021】
リヤフロア45を構成する部材をリヤフロアパネル16と左右のアッパースチフナ35,36とに分けることで、リヤフロアパネル16の板厚寸法を抑えた状態で、左右のアッパースチフナ35,36の板厚寸法のみを大きくすることができる。
これにより、リヤフロアパネル16の取り扱いが容易になり、製造の容易化を図ることができるとともに、車体重量の増加を抑えることができる。
【0022】
なお、左右のリヤフレーム31,32および左右のアッパースチフナ35,36は、それぞれ左右対称の部材である。よって、左右のリヤフレーム31,32および左右のアッパースチフナ35,36の各構成部材に同一符号を付し、左側の部材31,35について説明して右側の部材32,36の説明を省略する。
【0023】
図4は本発明に係る左リヤフレームおよび左アッパースチフナを分解した状態を示す斜視図、図5は本発明に係る左リヤフレームを示す分解斜視図である。
左リヤフレーム31は、内外の側壁47,48および底壁49で上方に開口部51を有する断面略コ字状に形成され、左リヤフレーム31の途中のフレーム傾斜部(傾斜部)52が車体後方に向けて下側部位53から上側部位54に上り勾配で立ち上げられている。
【0024】
左リヤフレーム31の略中央のフレーム傾斜部52を車体後方に向けて上り勾配で立ち上げることで、左リヤフレーム31の略中央に段差を形成してフレーム後半分55がフレーム前半分56より高い位置に配置される。
【0025】
フレーム傾斜部52は、下側部位53から上側部位54に向けて幅寸法Wが徐々に細幅になるように形成され、左リヤフレーム31の内部に沿ってミドルスチフナ(スチフナ)58が車体前後方向に向けて設けられ、細幅に形成された箇所59(以下、「細幅の部位59」という)の内部にバルクヘッド61が設けられている。
フレーム傾斜部52はシートに着座した乗員の足元近傍に位置する。そこで、フレーム傾斜部52を下側部位53から上側部位54に向けて幅寸法Wが徐々に細幅になるように形成することで、シート25に着座した乗員の足元空間を拡大することができる。
【0026】
この左リヤフレーム31は、図5に示すように、前フレーム部位(前部位)63、中央フレーム部位(後部位)64および後フレーム部位65に分割されている。
前フレーム部位63は、フレーム前半分56からフレーム傾斜部52を経てフレーム後半分55の前端部55aまで延びた部位である。
フレーム傾斜部52の内側壁47bに支えブラケット67が溶接されている。
支えブラケット67は、図5に示すように、水平支えブラケット67aと、傾斜支えブラケット67bとで略く字状に形成されている。
【0027】
中央フレーム部位64は、フレーム傾斜部52の後端部52aからフレーム後半分55の中央55bまで延びた部位である。
前フレーム部位63および中央フレーム部位64は、それぞれの後端部63aおよび前端部64aが細幅の部位59で重ね合わせた状態に結合される。
【0028】
細幅の部位59を前フレーム部位63および中央フレーム部位64で分割することで、例えば、比較的プレス成形し難い高張力鋼板を用いて細幅のリヤフレームを容易に形成することができる。
加えて、高張力鋼板を用いることで、板厚寸法を小さく抑えることが可能になり、リヤフレームの軽量化を図ることができる。
【0029】
中央フレーム部位64の前端部64a、すなわち、細幅の部位59に相当する部位には車体前後方向に延びる隆起部71が形成されている。
この隆起部71の略中央を横切るようにバルクヘッド61が配置されている。
【0030】
後フレーム部位65は、フレーム後半分55の中央55bからフレーム後半分55の後端部55cまで延びた部位である。
中央フレーム部位64および後フレーム部位65は、それぞれの後端部64bおよび前端部65aで重ね合わせた状態に結合される。
【0031】
中央フレーム部位64および後フレーム部位65を分割することで、後フレーム部位65を衝撃吸収可能な材質で形成することができる。
具体的には、後フレーム部位65の後端部に前向きの衝撃力が作用した場合に、後フレーム部位65を良好に変形させて(潰して)衝撃力を良好に吸収することができる。
【0032】
ミドルスチフナ58は、内外のスチフナ側壁73,74およびスチフナ底壁75で上方に開口した断面コ字状に形成されている。
内スチフナ側壁73が左リヤフレーム31の内側壁47に接合されるとともに、外スチフナ側壁74が左リヤフレーム31の外側壁48に接合される。
【0033】
図6は本発明に係る左リヤフレームを示す断面図である。
ミドルスチフナ58は、フレーム前半分56に沿って延びるスチフナ水平部81と、フレーム傾斜部52に沿って延びるスチフナ傾斜部82とを備える。
スチフナ水平部81は、フレーム前半分56の底壁49aに対してスチフナ底壁75が所定間隔D1をおいて略平行に設けられている。
スチフナ傾斜部82は、フレーム傾斜部52の底壁49bに対して所定間隔D1が下側部位53から上側部位54に向けて徐々に減少するように設けられている。
【0034】
よって、ミドルスチフナ58を略水平の向きに近づけることが可能になる。これにより、例えば、左リヤフレーム31の後端部31a(図2参照)に前向きの衝撃力が作用した場合に、左リヤフレーム31の後端部31aに作用した衝撃力をミドルスチフナ58で良好に受けることができる。
【0035】
ミドルスチフナ58は、スチフナ底壁75に前端部58aから後端部58bに渡ってスチフナ段差部(段差部)58cが設けられている(図5、図8も参照)。
車体前後方向に向けて段差部58cを設けることで、図5に示す稜線(すなわち、角部)58d,58eを形成することができる。
これにより、ミドルスチフナ58の前後方向に対する剛性・強度を高めることができる。
【0036】
図7は本発明に係る左リヤフレームを示す斜視図である。
左リヤフレーム31の細幅の部位59の内部にバルクヘッド61が設けられている。
よって、左リヤフレーム31の後端部に前向きの衝撃力が作用した場合に、左リヤフレーム31の断面形状が変形しないようにバルクヘッド61で保つことが可能になる。
これにより、左リヤフレーム31の後端部に作用した衝撃力を左リヤフレーム31で受けることができる。
【0037】
前フレーム部位63および中央フレーム部位64は、それぞれの後端部63aおよび前端部64aを細幅の部位59で重ね合わせた状態に結合されている。
このように、後端部63aおよび前端部64aを細幅の部位59で重ね合わせることで、細幅の部位59の剛性・強度を確保することができる。
【0038】
図8は図2の8−8線断面図であり、左リヤフレーム31のフレーム前半分56にリヤフロアパネル16を取り付けた状態を示す。
フレーム前半分56は、内外の側壁47a,48aおよび底壁49aで上方に開口部51を備えた断面略コ字状の部材であり、内側壁47aの上端に車体中心側に折り曲げた内側折曲辺84を備え、外側壁48aの上端に車体外側に折り曲げた外側折曲辺85を備える。
外側壁48aおよび外側折曲辺85が左サイドシル27に溶接されている。
【0039】
フレーム前半分56の上部に左アッパースチフナ35が被せられている。
具体的には、外側折曲辺85に左アッパースチフナ35の外側辺35aがスポット溶接されている。
また、内側折曲辺84と左アッパースチフナ35の内側辺35bとの間にリヤフロアパネル16の左側辺16aが挟み込まれ、この状態で内側折曲辺84、内側辺35bおよび左側辺16aがスポット溶接されている。
これにより、左アッパースチフナ35でフレーム前半分56の開口部51が覆われる。
【0040】
図9は図2の9−9線断面図であり、左リヤフレーム31のフレーム傾斜部52にリヤフロアパネル16を取り付けた状態を示す。
フレーム傾斜部52は、内外の側壁47b,48bおよび底壁49bで上方に開口部51を備えた断面略コ字状の部材である。
内側壁47bの表面(車体中心側に臨む面)には、支えブラケット67がスポット溶接で接合されている。
【0041】
図5に示すように、支えブラケット67は、水平支えブラケット67aと、傾斜支えブラケット67bとで略く字状に形成されている。
この支えブラケット67は、内側壁47bの表面中央に接合された取付部87と、取付部87の下端部から車体中央に向けて延ばした支え部88とを有し、左アッパースチフナ35に臨むように設けられている。
支えブラケット67は、取付部87および支え部88で略L字状に形成されている。
【0042】
支え部88は、内側壁47bの上縁47cからH寸法だけ下方に配置されている。
この支え部88は、水平支えブラケット67aにおいて、内側折曲辺84(図5、図8参照)から車体後方に向けて水平に延び、傾斜支えブラケット67bにおいて、略鉛直状に立ち上げられている。
【0043】
また、フレーム傾斜部52内には、前述したように、ミドルスチフナ58が設けられている。
具体的には、ミドルスチフナ58の内外の側壁が、フレーム傾斜部52の内外の側壁47b,48bにスポット溶接で接合されている。
ミドルスチフナ58は、スチフナ底壁75が支えブラケット67の支え部88と略水平な位置になるように設けられている。
【0044】
フレーム傾斜部52の上部に左アッパースチフナ35が被せられている。
左アッパースチフナ35は、開口部51の上方に位置する水平部91と、水平部91の内側辺91aから下方に延びた鉛直部92と、鉛直部92の下端部92aから車体中心に向けて略水平に張り出した張出部93とを有する。
張出部93は支え部88の上方に位置する。
【0045】
水平部91の外側辺91bが、ホイールハウス取付部材95を介して外側壁48bの上端部48cにスポット溶接で接合されている。
さらに、支え部88と張出部93との間にリヤフロアパネル16の左側辺16aが挟み込まれた状態で支え部88、張出部93および左側辺16aがスポット溶接されている。
【0046】
すなわち、左アッパースチフナ35は、フレーム傾斜部52の上部52bに水平部91を被せて開口部51を覆うとともに、水平部91の外側辺91bを外側壁48bの上端部48cに接合し、水平部91の内側辺91aから下方に延びた鉛直部92で内側壁47bを覆い、張出部93と支え部88とでリヤフロアパネル16の左側辺16aを挟持するものである。
【0047】
また、ホイールハウス取付部材95は後輪用のホイールハウス(図示せず)に接合するための部材である。
フレーム傾斜部52をホイールハウス(図示せず)に接合することで、フレーム傾斜部52の剛性・強度を確保する。
【0048】
以上説明したように、支え部88を、内側壁47bの上縁47cからH寸法だけ下方に配置し、鉛直部92の下端部92aから張出部93を張り出し、この張出部93と支え部88との間にリヤフロアパネル16の左側辺16aを接合した。
よって、フレーム傾斜部52の近傍において、リヤフロアパネル16を下方に凹ませることが可能になり、かつ、鉛直部92とリヤフロアパネル16との交差角部(すなわち、鉛直部92の下端部)92aの曲げ半径寸法を小さくすることが可能になる。
これにより、リヤフロア45の低床化とともに、シート25(図1参照)に着座した乗員の足元空間を拡大することができる。
【0049】
さらに、左アッパースチフナ35の水平部91をフレーム傾斜部52の上部52bに被せ、水平部91の外側辺91bを外側壁48bの上端部48cに接合する。
左アッパースチフナ35の鉛直部92で内側壁47bを覆い、鉛直部92の下端部92aから張出部93を略水平に張り出す。
【0050】
一方、支えブラケット67の支え部88を内側壁47bから張出部93の下方まで張り出す。そして、張り出した支え部88および張出部93間にリヤフロアパネル16の左側辺16aを接合する。
このように、水平部91の外側辺91bを外側壁48bの上端部48cに接合するとともに、支え部88に張出部93を接合することで、フレーム傾斜部52の剛性・強度を確保することができる。
【0051】
さらに、左アッパースチフナ35の張出部93と支えブラケット67の支え部88とでリヤフロアパネル16の左側辺16aを挟持することができる。
これにより、張出部93と支え部88とにリヤフロアパネル16を強固に接合することができ、接合強度の増大を図ることができる。
【0052】
さらに、ミドルスチフナ58を支えブラケット67に対して水平な位置に設けた。
これにより、ミドルスチフナ58で支えブラケット67を支えることが可能になり、フレーム傾斜部52の剛性・強度を一層高めることができる。
【0053】
ところで、左アッパースチフナ35の鉛直部92は、フレーム傾斜部52の内側壁47bに対して一定間隔のクリアランスD3が設定されている。
このように、フレーム傾斜部52の内側壁47bと左アッパースチフナ35の鉛直部92との間にクリアランスD3を設定することで、フレーム傾斜部52の製造公差を吸収することが可能になり、製造の容易化を図ることができる。
【0054】
図10は図2の10−10線断面図であり、左リヤフレーム31のフレーム後半分55にリヤフロアパネル16を取り付けた状態を示す。
前フレーム部位63および中央フレーム部位64が、それぞれの後端部63aおよび前端部64aで重ね合わせた状態に結合されている。
中央フレーム部位64の前端部64aの内部にバルクヘッド61が設けられている。
【0055】
前フレーム部位63の後端部63aは、内外の側壁63b,63cおよび底壁63dで上方に開口部51を備えた断面略コ字状の部材であり、内側壁63bの上端に車体中心側に折り曲げた内側折曲辺98を備える。
底壁63dには、車体前後方向に延びる隆起部63e(図5も参照)が形成されている。
【0056】
中央フレーム部位64の前端部64aは、内外の側壁64c,64dおよび底壁64eで上方に開口部51を備えた断面略コ字状の部材である。
底壁64eには、車体前後方向に延びる隆起部71(図5も参照)が形成されている。
【0057】
前フレーム部位63の後端部63aと中央フレーム部位64の前端部64aとを重ね合わせた部位の上部に左アッパースチフナ35が被せられている。
具体的には、中央フレーム部位64の前端部64aの上端部64fに左アッパースチフナ35の外側辺35aがスポット溶接されている。
【0058】
また、内側折曲辺98と左アッパースチフナ35の内側辺35bとの間に、リヤフロアパネル16の左側辺16aが挟み込まれ、この状態で内側折曲辺98、内側辺35bおよび左側辺16aがスポット溶接されている。
これにより、左アッパースチフナ35でフレーム後半分55の開口部51が覆われる。
【0059】
図11は本発明に係る左リヤフレームの後端部に前向きの衝撃力が作用した例を説明する図である。
左リヤフレーム31の後端部31a(図2参照)に前向きの衝撃力F1が作用した場合に、作用した衝撃力F1の一部F2がミドルスチフナ58のスチフナ傾斜部82に矢印の如く伝わる。
【0060】
スチフナ傾斜部82、すなわち、ミドルスチフナ58は略水平の向きに近づけた状態で配置されている。
よって、スチフナ傾斜部82に伝わった衝撃力F2をミドルスチフナ58で良好に受けることができる。
これにより、衝撃力F1でフレーム傾斜部52が変形することを防ぐことができる。
【0061】
加えて、ミドルスチフナ58のスチフナ底壁75にスチフナ段差部58cが設けられているので、ミドルスチフナ58の前後方向に対する剛性・強度を高めることができる。
これにより、衝撃力F1でフレーム傾斜部52が変形することを一層良好に防ぐことができる。
【0062】
図12(a),(b)は本発明に係る車体後部構造における乗員の足元空間を説明する図である。なお、図12においては、理解を容易にするために右側の部位を図示する。
(a)に示すように、支え部88は、水平支えブラケット67aにおいて、内側折曲辺84から車体後方に向けて水平に延び、傾斜支えブラケット67bにおいて、略鉛直状に立ち上げられている(図3も参照)。
【0063】
そして、支え部88は、水平支えブラケット67aにおいて、図9に示すように、内側壁47bの上縁47cから下方に配置されている。
よって、フレーム傾斜部52の近傍において、リヤフロアパネル16をフレーム傾斜部52の表面52c下方に凹ませることが可能になる。
【0064】
(b)に示すように、ホイールハウスなどをサイドライニング101で覆い、リヤフロア45(図9参照)にフロアマット102を取り付け、フレーム傾斜部52の後側にシート25を備える。
(a)で説明したように、フレーム傾斜部52の近傍において、リヤフロアパネル16を下方に凹ませたので、シート25に着座した乗員の足元空間105を拡大することができる。
【0065】
さらに、図4、図5で説明したように、フレーム傾斜部52を下側部位53から上側部位54に向けて幅寸法Wが徐々に細幅になるように形成することで、シート25に着座した乗員の足元空間105を一層拡大することができる。
【0066】
なお、前記実施の形態で例示した左右のアッパースチフナ35,36、ミドルスチフナ58、バルクヘッド61などの形状は適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、リヤフレームの途中の傾斜部を車体後方に向けて上り勾配で立ち上げ、傾斜部の後側にシートを備えた自動車の車体後部構造への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る自動車の車体後部構造を示す分解斜視図である。
【図2】本発明に係る後部フレーム構造を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る自動車の車体後部構造を示す断面図である。
【図4】本発明に係る左リヤフレームおよび左アッパースチフナを分解した状態を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る左リヤフレームを示す分解斜視図である。
【図6】本発明に係る左リヤフレームを示す断面図である。
【図7】本発明に係る左リヤフレームを示す斜視図である。
【図8】図2の8−8線断面図である。
【図9】図2の9−9線断面図である。
【図10】図2の10−10線断面図である。
【図11】本発明に係る左リヤフレームの後端部に前向きの衝撃力が作用した例を説明する図である。
【図12】本発明に係る車体後部構造における乗員の足元空間を説明する図である。
【符号の説明】
【0069】
10…自動車の車体後部構造、16…リヤフロアパネル、25…シート、31…左リヤフレーム(リヤフレーム)、32…右リヤフレーム(リヤフレーム)、35…左アッパースチフナ(サイドカバー)、36…右アッパースチフナ(サイドカバー)、45…リヤフロア、47,47b…内側壁、48,48b…外側壁、49,49b…底壁、51…開口部、52…フレーム傾斜部(傾斜部)、53…下側部位、54…上側部位、58…ミドルスチフナ(スチフナ)、58c…スチフナ段差部(段差部)、59…細幅の部位(細幅に形成された箇所)、61…バルクヘッド、63…前フレーム部位(前部位)、64…中央フレーム部位(後部位)、73…内スチフナ側壁、74…外スチフナ側壁、75…スチフナ底壁、D1…スチフナ底壁と底壁との間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のリヤフレームをそれぞれ内外の側壁および底壁で上方に開口した断面略コ字状に形成し、各リヤフレームの途中の傾斜部をそれぞれ車体後方に向けて上り勾配で立ち上げ、各リヤフレームにリヤフロアパネルを設け、このリヤフロアパネルの前記傾斜部後側にシートを備えた自動車の車体後部構造において、
前記傾斜部が下側部位から上側部位に向けて徐々に細幅に形成されるとともに、その内部に沿ってスチフナが車体前後方向に向けて設けられ、
このスチフナは、内外のスチフナ側壁およびスチフナ底壁で上方に開口した断面コ字状に形成され、
内外のスチフナ側壁が前記内外の側壁に接合されるとともに、前記スチフナ底壁と前記底壁との間隔が前記傾斜部の下側部位から上側部位に向けて徐々に減少するようにスチフナを配置したことを特徴とする自動車の車体後部構造。
【請求項2】
前記スチフナは、前記スチフナ底壁に前端部から後端部に渡って段差部が設けられたことを特徴とする請求項1記載の自動車の車体後部構造。
【請求項3】
前記リヤフレームは、前後の部位に分割され、分割された前後の部位が前記細幅に形成された箇所で重ね合わせた状態に結合されたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の自動車の車体後部構造。
【請求項4】
前記リヤフレームは、前記細幅に形成された箇所の内部にバルクヘッドが設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車の車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−296932(P2007−296932A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125584(P2006−125584)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】