説明

自動車パネル用成型製品

ポリアミドマトリックスおよび強化繊維からなる少なくとも1つのポリアミド強化層を含む複合材成型製品であって、該ポリアミド強化層が、加圧蒸気工程を使用した固化のために多孔質であることを特徴とする、複合材成型製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成型製品およびその製造方法に関する。
【0002】
自動車産業において、構造用パネルは、高強度および軽量が必要とされる広範な用途において使用されている。成型強化パネルは、特に自動車両において、例えばパーセルシェルフ、天井張り、エンジンベイパネル、またはロードフロアとして、並びに車外で使用されるパネル、例えばエンジンアンダーシールドまたは外部のホイールアーチライナーのために使用される。ノイズ減衰のための追加的な音響特性、特に材料の吸音係数が要件になることがある。例えば、最終的にはハニカムコアを有する複合パネルは、トリム部品、サンルーフパネル、ハードトップ、パーセルシェルフ、予備ホイール用のカバー、および荷台の床の組み立て品において使用される。選択される材料に依存して、それらはアンダーフロア、エンジンカバーまたはエンジンベイカバーとしても使用されることがある。繊維強化複合材は、主材料として、またはそれらの製品のスキン層として、時として特定の目的のための追加的な層と組み合わせて使用される。
【0003】
複合材料(または略して複合材)は、著しく異なる物理的または化学的特性を有する2つまたはそれより多くの構成材料から製造されるエンジニアリング材料であり、前記構成材料は、完成された構造内では分離したままであり且つ微視的なレベルで区別される。
【0004】
複合材は、構成材料として称される個々の材料から作り上げられる。マトリックス材および強化材の、2つのカテゴリーの構成材料がある。各々の種類の少なくとも一部が必要とされる。マトリックス材料は、強化材料を、それらの相対的な位置を保持して、取り囲み且つ支える。その強化材は、特別な機械的特性および物理的特性を付与し、マトリックス特性を高める。相乗作用により、個々の構成材料からは入手できない材料特性を創出する。エンジニアリング複合材料は、造形されなければならない。強化材料を鋳型の空洞内に、または鋳型表面に配置した前または後に、該マトリックス材料を、強化材に導入できる。該マトリックス材料は、物理的状態における変化、例えば熱可塑性材料についての溶融事象を経て、その後、該部品の形状が本質的に固定される。マトリックス材料の性質に依存して、物理的状態におけるこの変化は、様々に、例えば化学的な重合(熱硬化性)または溶融状態からの固化(熱可塑性)を生じ得る。
【0005】
最も商業的に生産されている複合材は、しばしば樹脂溶液と称されるポリマーマトリックス材料を使用する。出発原料成分に依存して入手可能な多くの異なるポリマーがある。いくつかの広い分類があり、それぞれが多数のバリエーションを有する。最も一般的なものは、ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール、ポリイミド、ポリアミド、ポリプロピレン、PEEKおよびその他として公知である。強化材料は、しばしば、繊維であるが、しかし、通例、粉砕鉱物でもある。複合材料を、少なくとも部分的に強化繊維、例えばガラス繊維および結合材材料(粉末、液体の溶液または結合材繊維の形態のいずれか)からなる繊維質材料の層またはマットを使用することによって製造できる。該材料を混合し、且つ、通常、材料を成型プレス内で熱成型することによって硬化させて、直接的に所望の製品形状を製造する。
【0006】
US20050214465号は、ポリアミドをマトリックスとして使用する複合材の製造方法であって、強化材料を、アニオン重合のために活性化されたラクタム溶融物で含浸させ、その後、加熱する、製造方法を開示している。他の公知の方法は、引抜成型法である。製造される材料を粉砕し、その後、射出成型または押出法において使用することができる。
【0007】
使用される他の技術は、強化繊維と熱可塑性溶融物との混合である。ここでも主として、射出成型が続き、最終的には圧縮成型が続いて製品の所望の形態が得られる。
【0008】
熱可塑性溶融物または溶融物での含浸の使用は、得られる製品をコンパクト且つ無孔質にする。なぜなら、その溶融物が強化材料の間の空間を充填し、且つ、存在する全ての孔をふさぐからである。
【0009】
US7132025号は、熱可塑性繊維をマトリックス材料として使用する方法を開示している。それらの繊維は、まず強化繊維と配合され、その後、乾燥されて、配合されたウェブがもたらされる。該ウェブはその後、ニードリングによって固められ、加熱され、且つ緻密化されて最終製品がもたらされる。該ウェブは、通常のオーブンを使用して、またはIR照射によって、熱可塑性繊維の軟化点より高い温度に加熱され、そして直接的に圧縮されて、圧縮され且つ部分的に固められた熱成型可能な半完成品が提供される。
【0010】
US20050140059号は、繊維製の成型部品の製造方法であって、繊維をプレート間でまず加熱し、その後、圧縮成型に供し、追加的に空気吸込を使用して、より良好な造形製品をもたらす製造方法を開示する。使用される繊維は、結合材繊維としてのバイコンポネント繊維、およびばら繊維としての他の繊維、例えば再加工綿およびポリプロピレンである。導入部で、圧縮成型前に、材料の加熱の代替としての高圧蒸気または流動空気の使用が言及されたにもかかわらず、実際に開示された方法は加熱プレートを使用するのみで、200℃にするために1分間で加熱し、そして繊維材料を固化させる。蒸気の使用は、使用された材料と、開示された方法との組み合わせにおいて開示されていない。
【0011】
WO2004098879号は、ニードリングされた不織布を出発材料として使用する、熱可塑性繊維と強化繊維との混合物の複合材料の製造方法を開示している。このウェブは、高溶融熱可塑性材料とより低い溶融熱可塑性材料とを有する二重箔と組み合わせられる。該層状積層物はその後、赤外線または熱風を使用して、該箔の熱可塑性繊維および低溶融熱可塑性材料がそれらの溶融温度より高く加熱される温度まで、軟化を可能にするために充分な長さの短い時間で加熱される。その直後に、層状化材料を、例えばローラーを使用してプレスする。該特許は、一例として、結合材繊維としてのポリアミド−6と、強化繊維としてのガラス繊維およびPET繊維との組み合わせを開示している。
【0012】
WO2007000225号も、低溶融繊維および高溶融繊維との組み合わせを使用する硬質部品の製造方法であって、その際、繊維ウェブを低溶融繊維の溶融温度より高く加熱する製造方法を開示している。該出願は、さらに、高溶融繊維としてのガラス繊維またはポリエステル繊維、および低溶融繊維としてのポリプロピレンまたはポリエステルのコア材料内での使用を開示する。このコア材料は、2つの外側の熱可塑性箔層の間で層状化されている。加熱段階の間、内部のコア材料は、コアの繊維内の内圧のために広がり、材料全体にロフティング効果(lofting effect)をもたらす。最終製品は、部分的に高く圧縮された領域および部分的にこの持ち上げられた領域を包含する。実際に、これはポリプロピレンとガラス繊維との組み合わせを用いて実施され、且つ、ソフトロフティングと称される。
【0013】
従来技術の欠点は、最終の複合材を得るために高温が必要とされることである。達成されるべき加熱温度は、マトリックスポリマーに依存する。複合材を形成するために、マトリックスと強化繊維とを乾燥加熱法、例えば熱風、接触加熱または赤外線加熱を使用して加熱する。該製品を通常、マトリックスポリマーの実際の融点より高く加熱して、例えば素子の加熱から素子の成型への温度損失について補償する。融点より高いポリマーの加熱は分解を促進する。
【0014】
接触型ヒーターの使用は、製品の厚さ全体にわたって熱をよく伝えるために、該製品が圧縮されなければならないというさらなる欠点を有する。熱風は通常、結合材ポリマーの溶融温度より高い温度で使用され、従って該ポリマーは熱損傷を受ける一方、赤外線加熱の使用は薄い材料用にのみ可能である。より厚い材料の場合、内部コアを加熱するために必要な量のエネルギーは、外側の表面ポリマーにダメージを与える。この方法は通常、4〜5mmまでの厚さに対してのみ使用される。
【0015】
他の欠点は、マトリックス繊維として、および強化繊維として使用される大半の熱可塑性ポリマーが、互いに近い溶融温度を有するということであり、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)の溶融温度は、230〜260℃の範囲であり、ポリプロピレンについては140〜170℃の間、ポリアミド−6については170〜225℃の間、そしてポリアミド−6.6については220〜260℃の間である。両方とも熱可塑性ポリマーであるマトリックス繊維および強化繊維、例えばPA6.6をマトリックスとして且つPETを強化材として使用して、マトリックス繊維の溶融温度より高くそれらを加熱することは、強化繊維の溶融または軟化の開始も引き起こす。これは、構造の崩壊をみちびき、非常に緻密な複合材を形成する。
【0016】
該フェルトは、特に自動車産業において、それらの断熱特性および遮音特性のために広く使用されている。動向は再生可能な材料に向かっており、従って、熱可塑性結合材は近年、著しいシェアを占めている。高性能ポリマー、例えばポリエステル、ポリアミド製の繊維は、それらの機械的特性および耐熱特性のために非常に興味深い。しかし、必要な結合剤が、成型された3D部材におけるそれらの利用に対する制限になる。
【0017】
今まで使用された結合剤は常に、強化繊維より低い溶融点を有し、成型繊維ウェブを比較的弱い性能挙動にし、且つその用途を車両内の焼き戻し領域(tempered area)に限定する。それらの種類の成型繊維ウェブのいずれも、エンジンベイまたはコンパートメントの、特にエンジン接触領域の高温への曝露には適していない。それらの結合材のいくつかは、加水分解現象に対して特に敏感なそれらの変性構造のせいで、流動(pour)挙動を有する変性ポリマー(一例としてCO−PET)である。
【0018】
従来技術において公知のかかるフェルトを成型する方法は、フェルトを種々の手段によって予熱し、その後、冷たい鋳型に移し、その中で部品形状を得るために圧縮する「冷間」成型法、または、フェルトを閉じた鋳型に導入して、その中に熱伝達媒体、例えば空気を導入して、結合剤をその融点にし、その後、解放する、「熱間」成型法である。その後、冷却の補助を用いて、または用いないで、ツール内側または外側で部品を冷却する。(例えばEP1656243号、EP1414440号、およびEP590112号を参照)。
【0019】
従って、本発明の課題は、現行の技術の欠点なく、マトリックスと強化繊維とを組み合わせるための代替的な方法を見出すこと、および自動車用途において、特にエンジンベイまたは高温を伴う他の領域において使用できる製品を得ることである。
【0020】
ポリアミドマトリックスと強化繊維とからなる少なくとも1つのポリアミド強化層を含み、該ポリアミド強化層は、繊維または粉末またはフレーク形態のマトリックス材料および強化繊維の、加圧蒸気工程を使用した固化のために多孔質であることを特徴とする、請求項1の複合製品を用いて、および、マトリックスとしての、粉末、フレークまたは繊維形態で適用されるポリアミドのウェブ、および強化繊維を固化するために蒸気工程を使用する請求項8の方法を用いて、強化繊維のロフティング状態の(lofty)ウェブ構造を含有することが可能であり、多孔質の強化された材料が得られる。この材料は、良好な動的ヤング率を有し、且つ、熱安定性である。
【0021】
結合繊維の熱可塑性樹脂の小球により、繊維の重なる位置で結合された、無作為に配置された結合繊維と強化繊維との高められた硬さを有する、ロフティング状態の空気透過性複合材を製造する方法が開発された。
【0022】
この方法において、高い弾性強化繊維を、マトリックス形成ポリアミド繊維と、またはポリアミド粉末またはフレークと混合して、任意の適した方法、例えばエアレイ、ウェットレイ、カーディング等によってウェブを形成する。このウェブをその後、飽和蒸気を使用して加熱して、ISO11357−3による示差走査熱分析(DSC)を使用して測定されるポリマーの溶融温度よりも低い温度で樹脂マトリックス材料を溶融する。例えば、DSCを使用して測定される、ポリアミド−6(PA−6)の溶融温度Tmは220℃である。しかしながら、本発明による蒸気工程における同一のPA−6の溶融温度は、例えば190℃である。
【0023】
該ウェブを、少なくとも1つの蒸気透過性表面を有する耐圧鋳型内に設置する。該鋳型を閉じ、そして内圧に耐えるように締め付ける。少なくとも9bar絶対圧の飽和蒸気を適用し、結合材を溶融させる。20bar絶対圧より高い飽和蒸気は、もはや経済的ではない。好ましくは、11〜15bar絶対圧の範囲が、良好な作業範囲である。ポリアミドの溶融温度の実際のシフトは、製品が蒸気成型される中空室内で生成される蒸気圧に依存する。従って、使用される圧力の選択は、強化繊維の溶融温度にも依存する。例えば、PA−6を結合材繊維として使用する場合、好ましい圧力は11bar絶対圧〜15bar絶対圧である。
【0024】
通常の熱風、ホットプレートまたはIR波の代わりに蒸気を使用することにより、蒸気中の水分子の効果を使用して、ポリアミドの融点をより低い温度へとシフトさせることが可能である。ポリアミドに及ぼす水の効果は公知であり、且つ、普通は欠点だとみなされており、多くの先行技術はその効果を回避するか、またはそれを防ごうとする方法について記載している。意外なことに、粉末、フレークまたは繊維の形態で適用されるPA(ポリアミド)と、DSCを用いて測定される類似の融点を有する他の熱可塑性繊維、例えばPET(ポリエステル)とを、PAを唯一の結合材料として使用して、強化繊維、例えばPETをその繊維状の形態で保持して、組み合わせることを可能にするのは、まさにこの効果である。今や、多孔質構造を有し、それによって音響特性、例えば吸収および空気流抵抗、並びに熱伝導率を強化する、熱安定性の成型製品を得ることが可能である。
【0025】
蒸気の効果は、可逆性の拡散機構に基づいている。小さい繊維直径または粒径の形態でのポリアミドを使用すると、溶融および固化は迅速であり、且つ、短い製造サイクルを提供する。蒸気が鋳型から放出されると、ポリアミドは固体状態へと変化し、且つ、該部品を硬質部品として鋳型から出すこと(demould)ができる。これは、取り扱い可能な(handable)構造化部品を得る前に、明らかに鋳型の内側または外側が冷却される必要がある他の熱可塑性結合材と比較して有利である。
【0026】
使用される全体的な温度を、ここでは、蒸気を用いない加熱方法と比較して遙かにより低く保つことができるので、PET繊維の弾性は損なわれないままであり、よりロフティング状態の材料をみちびく。さらには、PAの結合が、最終製品の必要とされる硬さを得るために充分であることが判明した。なぜなら、PET繊維がそれらの弾性を保持し、且つPA溶融マトリックス材料は交点を結合するのみであるからである。該材料は、ウェブ中の空隙容積のために、その堂々たる外観を保つ。従って、最終製品はまだ空気透過性である。さらには、強化繊維としてのガラス繊維を、マトリックスとしてのポリアミド繊維と共に使用する際も、蒸気の使用が有利であることが見出された。結合特性の正確な制御のおかげで、加熱の間と冷却の間との両方の工程のために、より少ないエネルギーしか必要とされない。
【0027】
通常の加熱工程においては、該材料を、熱可塑性マトリックス材料の融点まで加熱する。該材料の冷却は、製品外でのより緩慢な熱の対流のために緩慢であり、なぜなら、該材料が強化繊維の弾性の欠如のために一緒に落下し、そしてより緻密になるからである。従って、溶融状態はより長い時間の間、継続する。従って、結合の量を制御するのはより困難である。さらには、この冷却時間の間、該材料は、結合マトリックスのより長い溶融状態のために、可撓性があるままであり、従って扱うのがより困難である。特により大きな自動車用トリム部品、例えば、トラックまたはより大きな車両用のヘッドライナーまたはロードフロアを扱う場合である。
【0028】
意外にも、蒸気が材料から除去されるとすぐに、溶融工程は直ちに停止し、且つ、該材料は再度、その固体状態を得ることも判明した。これは、材料が直ちに取り扱い可能であるので、製造のサイクル時間を短縮できる能力において有利である。溶融工程を直ちに停止できるという事実は、結合特性、ひいては材料の多孔性を制御する非常に正確な手段でもある。そのことは、材料の空気透過性のために重要である。
【0029】
ポリアミドマトリックスのために使用される材料は、粉末、フレークまたは繊維の形態であってよい。しかしながら、強化繊維と組み合わせた繊維の使用が最も好ましく、なぜなら、繊維がより良好に混合し、且つ、形成されたウェブを取り扱う間、固化の前に、該繊維が混合された位置に留まっている傾向があるからである。フレークまたは粉末は、強化繊維の間に、ウェブ外または成型鋳型の底に落下することがある。
【0030】
ポリアミドとして、全ての種類のポリアミド、特に、CoPA(コポリアミド)、ポリアミド−6(PA−6)またはポリアミド6.6(PA6.6)が使用可能である。しかしながら、種々の種類のポリアミド、または種々の種類のポリアミドの混合物も、本発明による結合材としてはたらく。基本的なポリアミドの配合において通常使用される添加剤は、特許請求される基本的なポリアミド材料の一部であることが予想され、例えば、紫外線耐性を得るための化学化合物である。
【0031】
強化繊維は、蒸気環境中でのポリアミド結合材の溶融温度よりも高い、DSC測定による溶融温度を有する任意の熱可塑性ポリマーベースの材料であってよい。230〜260℃の溶融温度を有するPETが、強化繊維として良好に機能するであろう。強化繊維は、任意の鉱物材料、特にガラス繊維(GF)、炭素繊維またはバサルト繊維であってもよい。強化繊維の両方の群の混合物も、例えばPETをGFと一緒に使用できる。材料の選択は、最終製品の全体的な熱安定性の要求、および個々の材料の価格に基づいている。
【0032】
強化繊維は、必要とされる材料特性に依存して、カット繊維、エンドレスフィラメントまたはロービングであってよい。
【0033】
本発明のそれらの特徴または他の特徴は、添付の図面を参照して、限定されない例として示される好ましい形態の以下の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】種々の試料の動的ヤング率のグラフ
【図2】同試料の損失係数のグラフ
【図3】本発明による熱成型プレートまたは蒸気工程を使用して固化されたウェブの吸音の比較
【図4】本発明による熱成型プレートまたは蒸気工程を使用して固化されたウェブの熱伝導率の比較。
【0035】
本発明による複合材のために、マトリックス形成結合材繊維を強化繊維と混合し、且つ、カード処理してウェブを形成する。ウェブを、取り扱いのためにニードリングを使用して予備結合した。(しかし、任意の種類の予備結合方法を使用してよい。)特に器具からの蒸気圧の解放の際に、複合試料が鋳型に粘着または固化することを防ぐために、薄い不織布を表面カバーとして使用してよい。使用される不織布は、主な特徴、例えば最終製品の厚さ、音響挙動、または硬さに、無視できるほどの影響しか及ぼさない。本発明によるポリアミド強化層用のウェブは、指定の飽和蒸気を使用して固化された。
【0036】
従来技術の試料を、本発明によるポリアミド強化層と比較した。従来技術の複合材は、市場で入手できるものを持ってきた。
【0037】
複合材1A 密度881kg/m3を有し、市場でSymaliteとして公知の、結合材としてのポリプロピレンおよび強化材料としてのガラス繊維に基づく従来技術の複合材。
【0038】
複合材2A 密度314kg/m3を有し、結合材材料としてのバイコンポネントPETおよび強化材料としての綿で製造された、従来技術のフェルトベースの材料。
【0039】
複合材3A 45%のPA結合材繊維、および強化繊維としての55%のガラス繊維で製造された、本発明による複合材。ウェブの出発質量は、m2あたり1000グラムであった。該複合材を、本発明に従い、11bar絶対圧の飽和蒸気を使用して9秒間成型した。成型されたポリアミド強化層の最終密度は384kg/m3である。
【0040】
複合材4A 55%のPA結合材繊維、および強化繊維としての45%のガラス繊維で製造された、本発明による複合材。ウェブの出発質量は、m2あたり1000グラムであった。該複合材を、本発明に従い、11bar絶対圧の飽和蒸気を使用して9秒間成型した。成型されたポリアミド強化層の最終密度は303kg/m3である。
【0041】
温度範囲に対する動的ヤング率を測定し、且つ、これから、ISO6721−4に従って引っ張り損失係数を算出した。測定および計算を、0.1dBのMetravib Viscoanalyser Type VA 2000を使用して行った。全ての複合材における結果については、図1および2を参照。
【0042】
自動車産業において使用される複合部品のためには、熱安定性への要求が高まっている。特にエンジンベイにおいては、直接的に、より多くの熱を生成する新しいモーター世代のために、並びに隔離を使用して熱を内部に保って燃料の全体的な使用を最適化するオプションのために、より高い熱安定性の要求がみちびかれる。通常は、エンジンベイの材料についての試験は、120℃または150℃での長期間の熱安定性試験である。しかしながら、実際の温度は短い時間の間、容易に180〜190℃に上昇することがある。この温度範囲は、熱いエンジン側、例えば排気ライン、マニホールド、またはコンプレッサーの近傍または周囲で生じることがある。
【0043】
熱安定性試験の1つの要求は、その複合材製品が熱に曝露されている間、その形態または形状を保つかどうかを知ることである。例えば、採光窓(sunny window)下に設置されるパーセルシェルフは、しばらくしてからたるんではならない。エンジンベイカバーは、硬さを保たねばならない。この温度範囲にわたる引っ張り損失係数は、使用される際の製品の硬さを保持するために重要である。
【0044】
図1は、動的ヤング率を示す。複合材1 PPマトリックスと、強化材としてのガラス繊維とに基づく従来技術の製品は、絶対的な観点において、本発明による複合材2および4よりも高い弾性率を示す。これは主に全体的な密度がより高いことに起因する。しかしながら、その傾向は、より低い密度で同一またはより良好な硬さの性能を得ることになり、車における質量を減じる。しかしながら、より重要なのは、従来技術の複合材1は、測定された温度範囲にわたって、動的ヤング率の著しい損失を示すことである。従って、PPとの組み合わせで製造された製品は、温度が高いほど、より柔らかくなる傾向がある。複合材2は、CoPET/PETのバイコンポネント結合繊維と、強化材料としての綿との組み合わせであり、自立するためには全体的にあまりにも低い動的ヤング率を示す。
【0045】
本発明による複合材は、測定された温度範囲にわたってよりいっそう良好な挙動を示す。ポリアミド強化層の動的ヤング率は、150℃〜210℃の温度範囲にわたって、20%より多くは変化しないことが判明した。製品が全体的により熱安定性になる。
【0046】
図2は、複合材製品において測定された温度範囲にわたる引っ張り損失係数を示す。複合材1は、蒸気を用いない成型法を用いて製造されたマトリックス結合材繊維としてのポリプロピレン(PP)に基づく従来技術のものである。該製品は、160℃まで良好な損失係数を有するにもかかわらず、それは溶融のために熱安定性を急速に失う。
【0047】
複合材2は、CoPET/PETバイコンポネント結合繊維と、強化繊維としての綿との組み合わせである。従って、測定された温度範囲にわたる粗悪な損失係数は基本的にCoPETに起因し、80℃で既に軟化し且つ110℃より上で溶融し始める。しかしながらこれは使用されるCoPETに依存する。より高い溶融CoPETは、コストの上昇を含む他の欠点を有する。絶対的な方法において、PET単独を使用する複合材料が、良好な熱安定性を有する製品をもたらすかも知れないが、必要とされる非常に高い溶融温度によって強化繊維を熱損傷せずに、どのようにこれを実現できるのかは現在知られていない。
【0048】
複合材3および4は、本発明に従って蒸気を使用して固化された、PA結合材とガラス繊維強化繊維との組み合わせである。両者は、60〜210℃の温度範囲にわたる0.15未満の安定した引っ張り損失係数(−)を有する。
【0049】
ポリアミド強化製品は、完全または部分的に圧縮されて成型製品を得ることができる。本発明による飽和蒸気を使用する固化工程のおかげで、より低い密度を有しつつも、なお所望の硬さを得る製品を得ることが可能である。飽和蒸気を使用する加熱工程がポリアミド結合材繊維を熱可塑性強化繊維よりもはるかに低い温度で溶融し、且つ、ほぼ同時に厚さ全体にわたるので、強化繊維のウェブ構造の弾性を保つことができる。マトリックス形成ポリアミドの量を、製品全体がちょうど完全に結合するレベルに減少することによって、多孔質の強化層を、複合材の材料のかさ密度のほんの5〜80%である密度で得ることができる。しかしながら、好ましくは5〜60%、さらにより好ましくは5〜25%の範囲が得られ、且つ、部品全体のより低いコストによるより多くの利点が得られる。従って、中実ではなく多孔質のままである製品を得ることが可能であり、材料の多孔性のためにより良好な吸音体(図3参照)、並びにより良好な熱伝導率(図4参照)になる。さらなる突き固め、またはPAマトリックスの量を増加させることのいずれかによって密度を制御することにより、音響特性並びに熱伝導率の両方を制御することが可能である。
【0050】
試料AおよびBを、65%のガラス繊維および35%のPA結合材繊維の、同一のウェブ材料を使用して製造した。複合材Aは、本発明による飽和蒸気を使用して固化させ、複合材Bはホットプレートの間での圧縮を使用して固化させた。両者を、製品の完全な結合が達成されるように処理した。
【0051】
成型された複合材の吸音特性を、インピーダンス管を使用し、ASTM (E−1050)およびISO (10534−1/2) インピーダンス管測定についての規格に従って測定した(200〜3400Hzの間の測定)。熱伝導率を、ISO8301に従い、ガード付きホットプレートを使用して測定した。
【0052】
吸音および熱伝導率は、ホットプレート処理された製品よりも蒸気処理された製品において良好であることが判明した。これは、部分的には、ホットプレートを使用する熱工程の間、完全に結合した製品を得るためにさらなる圧縮を使用することが必要であることに起因する。従って、第一に、より密な製品B、従ってより孔の少ない製品が得られ、熱伝導率と音響特性との両方における低下を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドマトリックスおよび強化繊維からなる少なくとも1つのポリアミド強化層を含む複合材成型製品であって、該ポリアミド強化層が、繊維または粉末またはフレークの形態でのマトリックス材料と、強化繊維との加圧蒸気工程を使用した固化に基づき多孔質であることを特徴とする、成型製品。
【請求項2】
強化繊維が、ポリアミド強化層の動的ヤング率が150℃〜210℃の温度範囲にわたって、20%より多くは変化しないように選択される、請求項1に記載の成型製品。
【請求項3】
複合材の密度が、ポリアミド強化層の材料のかさ密度の5〜80%である、請求項1または2に記載の成型製品。
【請求項4】
最終製品の引っ張り損失係数(−)が、60℃〜210℃の温度範囲にわたって0.15未満である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の成型製品。
【請求項5】
ポリアミドマトリックスが、ポリアミド−6またはポリアミド−6.6または種々の種類のポリアミドの混合物である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の製品。
【請求項6】
強化繊維が、ガラス繊維または炭素繊維またはバサルト繊維などの鉱物繊維である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の成型製品。
【請求項7】
強化繊維が、蒸気圧下でポリアミドの溶融温度よりも高い、DSCによって測定された溶融温度を有する熱可塑性ポリマー繊維である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の成型製品。
【請求項8】
無作為に配置されたポリアミド結合繊維またはフレークまたは粉末、および強化繊維がウェブを形成し、且つ、このウェブを加圧蒸気で処理して該ウェブを固化させることを含む、多孔質成型製品の製造方法。
【請求項9】
9〜20bar絶対圧の範囲の飽和蒸気が使用される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ウェブを、少なくとも1つの蒸気透過性表面を有する耐圧鋳型内で処理して成型製品を形成する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記ウェブを、好ましくはニードリングによって、蒸気処理に移送する前に予め結合する、請求項8から10までのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−504461(P2013−504461A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529226(P2012−529226)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063374
【国際公開番号】WO2011/032908
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(512099884)オートニアム マネジメント アクチエンゲゼルシャフト (4)
【氏名又は名称原語表記】Autoneum Management AG
【住所又は居所原語表記】Schlosstalstrasse 43, CH−8406 Winterthur, Switzerland
【Fターム(参考)】