説明

自動車用シートの取付構造

【課題】 シートを車体にしっかりと取り付けることができる自動車用シートの取付構造を提供すること。
【解決手段】 自動車用シートの取付構造は、車体Cの側部で前後に延びるサイドシル4と、車体Cの車幅方向に伸びるクロスメンバ3と、車体Cの前後に延び、端部が湾曲してサイドシル4に接合されサイドシル4とクロスメンバ3とに架設されたフロアフレーム5と、フロアフレーム5に接合されたシート取付ブラケット9と、シート取付ブラケット9に固定されたシートSとを備えなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体にシートを取り付けるための自動車用シートの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来のフロントシートの取り付け状態を示す要部側面図である。図7は、従来のフロントシートが取り付けられるクロスメンバおよびシート取付ブラケットの設置状態を示す要部拡大斜視図である。
【0003】
図6に示すように、従来、運転席および助手席のフロントシート100は、シートクッション110の下面のベースフレーム120が、クロスメンバ200およびシート取付ブラケット400に架設したシートレール300に対して前後方向に移動可能に設置されている。そのシートレール300は、前端部がクロスメンバ200を介してフロアパネル800に固定され、後端部がシート取付ブラケット400を介してフロアパネル800に固定されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図7に示すように、クロスメンバ200は、車体の中央部から前後方向に延設されたセンタシル500と、車体の側部から前後方向に延設された左右一対のサイドシル600と、に架設して車幅方向に向けて設置されている。
センタシル500は、サイドシル600に対して略平行に、車体の中央部に設置されている。
シート取付ブラケット400は、サイドシル600のセンタシル500側の側面にスポット溶接によって固着されている。
フロアパネル800は、サイドシル600、クロスメンバ200、およびシート取付ブラケット400の下面にスポット溶接されるとともに、下面に設置された前記センタシル500によって保持されている。
【0005】
例えば、自動車が正面衝突した場合、フロントシート100には、図6に示すように、矢印Gの前方方向に慣性力がかかることにより、シート取付ブラケット400にフロアパネル800から剥離する矢印H方向に荷重がかかる。このため、従来は、衝突時に、シート取付ブラケット400がフロアパネル800から剥離することを防止するために、シート取付ブラケット400を補強するための補強ブラケット700を設置するとともに、シート取付ブラケット400をボルト900でフロアパネル800に固定している。
【0006】
補強ブラケット700は、シート取付ブラケット400の直ぐ下側に、一端がサイドシル600に固定され、他端がセンタシル500に固定されて架設され、シート取付ブラケット400を保持している。
【特許文献1】特開2001−63620号公報(段落0012から0016、図3および図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1の車体構造では、衝突時にフロントシート100がフロアパネル800から剥離するのを防止するために、シート取付ブラケット400に、補強ブラケット700やボルト900を追加することによって、シート取付ブラケット400の強度を向上させている。その結果、部品点数や組付工数や重量が増加するという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、前記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、部品点数などを増加させることなく、シートを車体にしっかりと取り付けることができる自動車用シートの取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の自動車用シートの取付構造は、車体の側部で前後に延びるサイドシルと、前記車体の車幅方向に伸びるクロスメンバと、前記車体の前後に延び、端部が湾曲して前記サイドシルに接合され前記サイドシルと前記クロスメンバとに架設されたフロアフレームと、前記フロアフレームに接合されたシート取付ブラケットと、前記シート取付ブラケットに固定されたシートとを備えてなることを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の自動車用シートの取付構造の発明によれば、シート取付ブラケットは、比較的強度が高いフロアフレームに接合されるので、別途の補強が不要となる。フロアフレームは、車体の前後に延び、端部が湾曲してサイドシルに接合され、そのクロスメンバと車幅方向に配設されるサイドシルとに架設されたことにより、剛性および強度を備えているクロスメンバとサイドシルとにしっかりと固定することが可能となる。例えば、シートに過大な荷重がかかった場合には、その荷重を、フロアフレームを介してサイドシルとクロスメンバとに分散できる。その結果、フロフレームに取り付けられるシートは、部品点数、組付工数、および重量を増加させることなく、車体にしっかりと取り付けられることになる。
【0011】
請求項2に記載の自動車用シートの取付構造は、請求項1に記載の自動車用シートの取付構造であって、前記フロアフレームは、上面側に開口を有する断面略U字型に形成され、前記シート取付ブラケットは、少なくとも一部が前記開口内の側壁に接合されたことを特徴とする。
ここで、フロアフレームの断面略U字型の断面とは、上側が開口してればよく、底が箱型であっても谷型であってもよい。
【0012】
請求項2に記載の自動車用シートの取付構造の発明によれば、シート取付ブラケットは、少なくとも一部がフロアフレームの開口内の側壁に接合されたことにより、例えば、シートにフロアパネルから剥離する方向の過大な荷重(慣性力)がかかった場合に、その荷重がシート取付ブラケットの接合部に対してせん断荷重となる。その結果、シート取付ブラケットは、シートをフロアパネルから剥離する荷重に対して抵抗力が向上され、シートの剥離を防止できる。
【0013】
請求項3に記載の自動車用シートの取付構造は、請求項2に記載の自動車用シートの取付構造であって 前記フロアフレームは、前記開口の開口端に鍔部が形成され、前記シート取付ブラケットは、車両後方側が前記鍔部の上面に接合され、車両前方側が前記開口内の車両前方側の側壁に接合されたことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の自動車用シートの取付構造の発明によれば、シート取付ブラケットは、車両後方側をフロアフレームの鍔部の上面に接合し、車両前方側を開口内の車両前方側の側壁に接合したことにより、フロアパネルとシート取付ブラケットの開口とで三角形の閉断面が形成されるため、強度が向上される。その開口にシート取付ブラケットが取り付けられたことにより、開口が補強されて、衝突時に過大な荷重がかかったとしても型崩れしなくなる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の自動車用シートの取付構造によれば、シート取付ブラケットが車体の前後に延び、端部が湾曲してサイドシルに接合して、そのサイドシルとクロスメンバとに架設されたフロアフレームに接合されたことにより、他端側を車幅方向に配設されるクロスメンバにしっかりと固定することが可能となるため、シートにかかった過大な荷重をサイドシルとクロスメンバとに分散できる。その結果、シートを、部品点数組付工数、および重量を増加させることなく、さらに車体にしっかりと取り付けることができる。
【0016】
請求項2に記載の自動車用シートの取付構造の発明によれば、シート取付ブラケットは、少なくとも一部がフロアフレームの開口内の側壁に接合されたことにより、シートをフロアパネルから剥離する荷重に対して抵抗力が向上され、衝突時に過大な荷重がかかってもシートの剥離を防止できる。
【0017】
請求項3に記載の自動車用シートの取付構造の発明によれば、シート取付ブラケットが、車両後方側をフロアフレームの鍔部の上面に接合し、車両前方側を開口内の車両前方側の側壁に接合したことにより、フロアパネルとシート取付ブラケットの開口とで三角形の閉断面が形成されるため、開口の強度が向上されて、衝突時に過大な荷重がかかっても型崩れしなくなり、シートの剥離を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、図1〜図5を参照して、発明を実施するための最良の形態(以下「実施形態」という)を説明する。
なお、本発明の実施形態では、「前」は車両のフロント側、「後」は車両のリア側、「上」は鉛直上方側、「下」は鉛直下方側、「左右」は車幅方向側とする。
図1は、本発明の実施形態に係る自動車用シートの取付構造を示す図であり、シートの設置状態を示す自動車の斜視図である。図2は、本発明の実施形態に係る自動車用シートの取付構造を示す要部概略側面図である。図3は、本発明の実施形態に係る自動車用シートの取付構造を示す図であり、フロアパネルを取り外したときのフロアフレームの設置状態を示す要部拡大斜視図である。図4は、図2のA部拡大図である。図5は、図3のY−Y断面図である。
【0019】
≪車体≫
図1に示すように、自動車の車体Cは、鋼板、アルミニウム合金板などの金属板により高強度に構成され、その車体Cによって形成された車室内の床面として、シートSを配置したフロアパネル1が配設されている。その他、この車体Cの床面部位には、中央部に前後方向に延設されたセンタシル2と、このセンタシル2に直交するようにして車幅方向に向けて配設されたクロスメンバ3と、このクロスメンバ3の両端部に接合されて前後方向に延設された左右一対のサイドシル4,4と、このサイドシル4,4とクロスメンバ3とに接合したフロアフレーム5,5と、が主に備えられている。車体Cは、センタシル2を中心として略左右対称に形成されている。以下、運転席のシートSが設置されている部位(前列右側)を主に説明する。
【0020】
≪フロアパネル≫
図1に示すように、フロアパネル1は、車室内の床面を形成する鋼板、アルミニウム合金板などの比較的薄い金属板からなり、左右のサイドシル4と、センタシル2との間に設置されている。フロアパネル1の上面には、シートSの下方部位に設置されたスライドレール8に接合されたシート保持部材6(図2参照)と、クロスメンバ3と、がアーク溶接、スポット溶接などによって接合されている。フロアパネル1の下面には、フロアフレーム5が設置されている。
【0021】
≪センタシル≫
センタシル2は、いわゆるフロアトンネルと言われている強度および剛性を備えた部材であり、下側が開口し、正面視して断面略コ字型の板厚が厚い鋼板、アルミニウム合金板などの金属板からなる。このセンタシル2は、シートSの前端部に位置する付近の側壁に、クロスメンバ3がスポット溶接などによって固定され、シートSの後端部に位置する付近に、シート保持部材7が設置されている。
【0022】
≪クロスメンバ≫
図2に示すように、クロスメンバ3は、下側が開口し、側面視して断面略ハット形状の板厚が厚い鋼板、アルミニウム合金板などの金属板からなり、前後の下端部および左右の端部に、接合用および補強用の鍔部3aが形成されている。クロスメンバ3は、センタシル2と右側のサイドシル4との間、およびセンタシル2と左側のサイドシル4との間に、それぞれ鍔部3aをスポット溶接などによって接合され、車幅方向に延設されている(図1参照)。
【0023】
≪サイドシル≫
図3に示すように、サイドシル4は、2枚の鋼板、アルミニウム合金板などの金属板によって形成されたインナパネル4aとアウタパネル4bによって閉断面を形成する部材からなる。このサイドシル4は、図示しない左右の前輪と後輪との間で車体の側部に配置され、センタシル2に略平行に前後方向に延びる左右一対の部材からなる。サイドシル4には、内側側面にクロスメンバ3の鍔部3aがスポット溶接などによって接合され、下面にフロアフレーム5の鍔部5eが同様に接合されている。
なお、図3〜図5において図面中のX印は、スポット溶接した接合箇所を示している。
【0024】
≪フロアフレーム≫
図4に示すように、フロアフレーム5は、フロアパネル1の上面に設置されてシートSを保持しているシート保持部材6を、フロアパネル1の下面側から保持する補強部材である。このフロアフレーム5は、上面側の周縁に鍔部5eを有する開口5aが形成された断面略U字型の鋼板、アルミニウム合金板などの金属板からなるプレス加工品である。フロアフレーム5の上面側には、シートSを固定するシート取付ブラケット9が接合されるとともに、上面の鍔部5eがフロアパネル1に密着するように接合されている。
【0025】
図3に示すように、このフロアフレーム5は、車体Cの前後に延び、端部が、クロスメンバ3からサイドシル4側へ円弧状に湾曲して形成されている(図1参照)。フロアフレーム5は、前端部5fがクロスメンバ3に直交するように前方向に向けて配置して接合され、後端部5gがサイドシル4に直交するように車幅方向に向けて配置して接合されている。このため、フロアフレーム5は、車体Cの骨格を構成するクロスメンバ3とサイドシル4とをしっかりと連結させる補強材としての役目も果たしている。
【0026】
図3に示すように、開口5aは、クロスメンバ3側の前端部5fが正面視して底が箱型に近い略U字型に形成され、この前端部5fから後端部5g側に行くのに従って側壁5b,5cが拡開するように傾斜されて、底が断面略V字型(谷型)に近くなるように形成されている。このため、クロスメンバ3の後端部5gの幅は、前端部5fの幅より広く、かつ、上下方向の高さが低く形成されている。
図4に示すように、開口5aのシート取付ブラケット9が設置されている箇所付近では、前側の側壁5bが比較的緩やかな傾斜に形成され、後側の側壁5cが前側に比べ急な斜面に形成されている。
【0027】
底面5dは、図3および図4に示すように、フロアフレーム5の長手方向に略沿って形成された水平な面でなる。
鍔部5eは、前端部5fを除いて、フロアフレーム5の周縁に水平に形成されている。
前端部5fは、この部位に形成されている鍔部5eがフロアパネル1を介して重ねた状態で、クロスメンバ3の下面にスポット溶接などによって接合されている。なお、前端部5fは、車体Cの前部まで延設して、フロントサイドフレームなど車体前部骨格体に接合してもよい。
後端部5gは、図3に示すように、この部位に形成されている鍔部5eがフロアパネル1を介して重ねた状態で、クロスメンバ3にスポット溶接などによって接合されている。後端部5gには、鍔部5eから底面5dに向かって傾斜面5iが形成されている。
【0028】
≪シート取付ブラケット≫
図3に示すように、シート取付ブラケット9は、鋼板、アルミニウム合金板などの金属板からなるプレス加工品であり、シート保持部材6をフロアパネル1を介して当該シート取付ブラケット9に固定するボルトB1が挿通される貫通孔9aと、そのボルトB1で締結したときにフロアパネル1の下面が密着する座面9bと、が形成されている(図4参照)。シート取付ブラケット9は、フロアフレーム5の開口5aの底面5d、側壁5b,5cおよび鍔部5eに密着するように接合されるフランジ部9cと、フロアパネル1(図4参照)が載置される平らな前記座面9bとを、プレス機によって浮き出し成形して剛性が向上されている。シート取付ブラケット9は、フロアフレーム5のサイドシル4側に比較的近い位置に配置され、車両後方側を鍔部5eの上面に接合し、車両前方側を開口5a内の車両前方側の側壁5bに接合されるように配設されている。シート取付ブラケット9は、このようにフロアフレーム5の鍔部5eおよび開口5aの内面に密着して重ねたことにより、開口5aとで閉断面が形成されて強度が向上されるため、衝突時の衝撃力によって開口5aの形状が崩れることを防止する補強部材の役目も果たしている。
なお、シート取付ブラケット9は、少なくとも一部が、フロアフレーム5の開口5a内の側壁5bにフロアフレーム5に一体にスポット溶接などによって接合されている。また、座面9bの下面には、ボルトB1が螺合されるナットが電気抵抗溶接などによって接合されている。
【0029】
≪シート≫
図2に示すシートSは、運転席または助手席に設置されるフロントシートである。このシートSは、例えば、シートクッションSaと、シートバックSbと、シートクッションSaの下面に設置されたベースフレームScと、スライドレール8,8と、シート保持部材6,7とを備えてなり、フロアパネル1上に設置されている(図1参照)。このシートSは、スライドレール8,8の前端部がクロスメンバ3を介してフロアパネル1上に固定され、車体Cの側部側のスライドレール8の後端部がシート保持部材6およびフロアパネル1を介してシート取付ブラケット9にボルトB1で固定され、車体C中側のスライドレール8の後端部がシート保持部材7の取付部7aにボルト(図示せず)で固定されていることによって、車体Cに取り付けられている(図1参照)。なお、シートSは、例えば、ベースフレームScが、シートクッションSaの左右下端部に、前後方向に向けてそれぞれ配設され、スライドレール8に前後方向に摺動可能に係合されている。
【0030】
≪スライドレール≫
左右一対のスライドレール8,8は、図2に示すように、前端部が、クロスメンバ3の上にボルト(図示せず)などによって固定され、右側のスライドレール8の後端部が、ボルトB2などによってフロアフレーム5およびフロアパネル1上に配置されたシート保持部材6にボルトなどによって固定され、左側のスライドレール8の後端部が、図1に示すように、センタシル2に取り付けられたシート保持部材7にボルト(図示せず)などによって固定されている。
【0031】
≪シート保持部材≫
図2に示すように、シート保持部材6,7(図1参照)は、左右のスライドレール8,8の後端部を車体C側にそれぞれ固定するための金属製固定具であり、プレス成形によって形成されている。
右側のシート保持部材6は、図2および図4に示すように上端部がボルトB1によってスライドレール8に固定されて、下端部がボルトB1によってフロアパネル1およびシート取付ブラケット9に固定されている。
左側のシート保持部材7は、図1に示すように、センタシル2に係合するようにして載置してボルト締めされる板部材からなり、正面視して断面略コ字型をしている。このシート保持部材7は、左右の側壁にスライドレール8を載置してボルト締めする平らな取付部7aを有する。
【0032】
≪作用≫
次に、図1〜図5を参照しながら本発明の実施形態に係る自動車用シートの取付構造の作用を説明する。
例えば、乗員がシートSに着座すると、乗員の体重や、走行時の急停止などの慣性力が図2に示すシートクッションSaからベースフレームSc、スライドレール8を介してシート保持部材6,6およびクロスメンバ3にかかる。
【0033】
外側のシート保持部材6にかかった荷重は、フロアパネル1に与えられるが、その下にシート取付ブラケット9、およびフロアフレーム5を重ねて配設されていることによって補強されているため、フロアパネル1に大きな応力が生じることが防止される。よって、走行時の急停止などの慣性力で、外側のシート保持部材6がフロアパネル1から剥離することが確実に防止される。すなわち、外側のシート保持部材6は、フロアパネル1を介してシート取付ブラケット9、およびフロアフレーム5が重ねて配設されていることにより、簡単な構成によって、シートSの保持がより強固になされることとなる。
【0034】
一方、内側のシート保持部材6にかかった荷重は、センタシル2に与えられが、センタシル2がフロアトンネルを構成する剛性および強度を備えているため、大きな応力が生じることが防止される。よって、走行時の急停止などの慣性力で、内側のシート保持部材6がセンタシル2から剥離することが防止される。
【0035】
また、自動車が正面衝突などの前突したときには、図2に示すように、前記シートSに矢印F方向の前記よりさらに大きな荷重がかかる。そうすると、シートSの前側下方のクロスメンバ3には、矢印Dの下方向の荷重がかかり、シートSの後側下方のシート保持部材6,6には、矢印Eの上方向の荷重(慣性力)がかかる。
【0036】
クロスメンバ3にかかった矢印Dの下方向の荷重は、フロアパネル1およびその下側のフロアフレーム5を押圧する。したがって、フロアフレーム5は、フロアパネル1を介してクロスメンバ3に一部を重ねて配置しているため、そのクロスメンバ3を下側から保持することになる。
【0037】
外側のシート保持部材6にかかった矢印E方向の荷重は、シート保持部材6、フロアパネル1、シート取付ブラケット9、およびフロアフレーム5にかかる。シート保持部材6、フロアパネル1、シート取付ブラケット9、およびフロアフレーム5は、重ねて配設されて補強されていることにより、フロアパネル1に大きな応力が生じることが防止されるため、外側のシート保持部材6がフロアパネル1から剥離することが防止される。
【0038】
また、シートSにフロアパネル1から剥離する矢印E方向の過大な荷重がかかった場合には、その荷重がシート取付ブラケット9に対してせん断荷重となる。その結果、シート取付ブラケット9は、シートSがフロアパネル1から剥離する荷重に対して抵抗力が向上される。
さらに、シート取付ブラケット9にかかった過大な荷重は、シート取付ブラケット9の全周のフランジ部9cにフロアフレーム5が密着して接合されていることによって受け止められて、フロアフレーム5の両端部が接合されているクロスメンバ3とサイドシル4との反力により矢印Eの上方向への変形が防止される。
よって、シートSがフロアパネル1から剥離することが確実に防止される。
【0039】
一方、内側のシート保持部材7にかかった衝突のときの荷重は、センタシル2に与えられるが、センタシル2がフロアトンネルを構成する剛性および強度を備えているため、シート保持部材7の移動が防止される。
【0040】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造および変更が可能であり、本発明はこれら改造および変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0041】
例えば、シートSは、ベースフレームScがスライドレール8に対して前後方向に摺動可能に設置されたものを例に挙げて説明したが、移動型シートに限定されるものではなく、ベースフレームScをフロアパネル1に固定した固定型シートでもよい。さらに、シートSは、複数の乗員が着座可能なベンチ型シートでもよい。また、シートSは、リアシートでもよい。
【0042】
なお、シートSが車体Cに固定される車室中央側の取付構造は、下側が開口したセンタシル2を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、フロアパネルを床面全体に平らに配設して、そのフロアパネルの中央下側から上側が開口した断面略ハット形状のセンタシルでシート保持部材を固定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る自動車用シートの取付構造を示す自動車の概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る自動車用シートの取付構造を示す要部概略側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る自動車用シートの取付構造を示す図であり、フロアパネルを取り外したときのフロアフレームの設置状態を示す要部拡大斜視図である。
【図4】図2のA部拡大図である。
【図5】図3のY−Y断面図である。
【図6】従来のフロントシートの取り付け状態を示す要部側面図である。
【図7】従来のフロントシートが取り付けられるクロスメンバおよびシート取付ブラケットの設置状態を示す要部拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1 フロアパネル
3 クロスメンバ
4 サイドシル
5a 開口
5b,5c 側壁
5e 鍔部
9 シート取付ブラケット
C 車体
S シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側部で前後に延びるサイドシルと、
前記車体の車幅方向に伸びるクロスメンバと、
前記車体の前後に延び、端部が湾曲して前記サイドシルに接合され前記サイドシルと前記クロスメンバとに架設されたフロアフレームと、
前記フロアフレームに接合されたシート取付ブラケットと、
前記シート取付ブラケットに固定されたシートとを備えてなること
を特徴とする自動車用シートの取付構造。
【請求項2】
前記フロアフレームは、上面側に開口を有する断面略U字型に形成され、
前記シート取付ブラケットは、少なくとも一部が前記開口内の側壁に接合されたこと
を特徴とする請求項1に記載の自動車用シートの取付構造。
【請求項3】
前記フロアフレームは、前記開口の開口端に鍔部が形成され、
前記シート取付ブラケットは、車両後方側が前記鍔部の上面に接合され、車両前方側が前記開口内の車両前方側の側壁に接合されたこと
を特徴とする請求項2に記載の自動車用シートの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−335287(P2006−335287A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164542(P2005−164542)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】