自動車用駆動システム
【課題】回生運転時の燃料消費の向上を図りつつ内燃機関の再始動時のレスポンスの向上を図る。
【解決手段】エンジンENGと、トランスミッションTMと、ワンウェイ・クラッチOWCと、ワンウェイ・クラッチからの出力を駆動車輪2に伝えるデフケース(被回転駆動部材)11と、エンジンの出力軸をモータリングすることができるように接続された第1のモータジェネレータMG1と、デフケースに接続された第2のモータジェネレータMG2と、第2のモータジェネレータが回生運転を行っている際にエンジンへの燃料カットを実施しつつ第1のモータジェネレータよりエンジンをモータリングする車両制御手段50と、を備える。
【解決手段】エンジンENGと、トランスミッションTMと、ワンウェイ・クラッチOWCと、ワンウェイ・クラッチからの出力を駆動車輪2に伝えるデフケース(被回転駆動部材)11と、エンジンの出力軸をモータリングすることができるように接続された第1のモータジェネレータMG1と、デフケースに接続された第2のモータジェネレータMG2と、第2のモータジェネレータが回生運転を行っている際にエンジンへの燃料カットを実施しつつ第1のモータジェネレータよりエンジンをモータリングする車両制御手段50と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用の駆動源として内燃機関(エンジン)と電動発電機(モータジェネレータ)を備えるハイブリッド型の自動車用駆動システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の自動車用駆動システムとして、特許文献1に示されるように、エンジンとトランスミッションとモータジェネレータを組み合わせて構成したハイブリッド型の駆動システムが知られている。図13は特許文献1に記載された駆動システムのスケルトン図、図14はその構成を簡略化して示すブロック図である。
【0003】
これらの図13および図14に示すように、この駆動システムでは、エンジンENGの出力軸にトランスミッションTMの入力軸が接続され、トランスミッションTMの出力軸にワンウェイ・クラッチOWCを介して、駆動車輪2に繋がるディファレンシャル装置DIFFのデフケースが接続されている。ワンウェイ・クラッチOWCは、変速機構TMが偏心体駆動装置で構成されている関係から、その1要素として組み込まれている。また、モータジェネレータMGが、第1のクラッチCL1を介してトランスミッションTMの入力軸(エンジンENGの出力軸)に接続されると共に、第2のクラッチCL2およびギアセットGEARを介してディファレンシャル装置DIFFのデフケースに接続されている。
【0004】
この駆動システムでは、エンジンENGの駆動力だけを利用したエンジン走行、モータジェネレータMGの駆動力だけを利用したEV走行、エンジンENGの駆動力とモータジェネレータMGの駆動力の両方を利用したパラレル走行を行うことができる。また、モータジェネレータMGの回生動作を利用することにより、減速時に回生エネルギーを得ることができると同時に、回生ブレーキを駆動車輪2に利かせることもできる。また、モータジェネレータMGでエンジンENGを始動させることもできる。
【0005】
ところで、上記の駆動システムのように、エンジンENGの回転動力を駆動車輪2側に伝達する動力伝達経路にワンウェイ・クラッチOWCを有するシステムの場合、ワンウェイ・クラッチOWCの下流側の回転速度が上流側の回転速度より大きくなると、ワンウェイ・クラッチOWCが動力伝達を遮断するため、駆動車輪2側からエンジンENG側には動力が伝達されない。従って、アクセルペダルをOFF(解放)するなどしてワンウェイ・クラッチOWCの下流側の回転速度が上流側の回転速度より大きくなった場合には、第1のクラッチCL1をOFFにすると共に第2のクラッチCL2をONにして、モータジェネレータMGにより駆動車輪2側の動力を回生し同時に駆動車輪2側に回生ブレーキを利かせる運転を選択することになる。
【0006】
また、その間は、ワンウェイ・クラッチOWCが接続状態とならない範囲で、エンジンENGをアイドリング状態に維持したり、あるいは、アイドリングストップ状態に維持したりすることが可能である。エンジンENGをアイドリング状態に維持しておけば、次にエンジン走行に移行する際に即座にエンジン回転数を要求回転数まで上昇させることができるので、レスポンスを良くすることができる。また、アイドリングストップ状態に設定した場合は、燃料消費をそれだけ抑制することができるようになる。なお、アイドリングストップ状態にした場合は、エンジン始動の際に第1のクラッチCL1をONにし第2のクラッチCL2をOFFにして、モータジェネレータMGによりエンジンENGをクランキングする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2005−502543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、アイドリング状態にしてエンジンENGを待機させる場合は、エンジン走行へ切り替える際にレスポンス良く切り替えを行うことができるが、アイドリングのための燃料消費が課題となる。一方で、アイドリングストップ状態にしてエンジンENGを待機させる場合は、アイドリング状態にして待機する場合に比べて燃料消費を抑制できるものの、第1のクラッチCL1をONにすると共に第2のクラッチCL2をOFFに切り替えてから、モータジェネレータMGによりエンジンENGを始動しトルク伝達可能回転数までエンジン回転数を上昇させる必要があるので、その間の時間が余計にかかることになり、レスポンス良く対応することができないという課題がある。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料消費の向上を図りつつ、内燃機関の再始動時のレスポンスの向上を図ることのできる自動車用駆動システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、請求項1の発明の自動車用駆動システム(例えば、後述の実施形態における自動車用駆動システム1)は、
燃料の供給を受けることで回転動力を発生する内燃機関(例えば、後述の実施形態におけるエンジンENG)と、
該内燃機関の発生する回転動力を変速して出力する変速機構(例えば、後述の実施形態におけるトランスミッションTM)と、
入力部材(例えば、後述の実施形態における入力部材122)と出力部材(例えば、後述の実施形態における出力部材121)とこれら入力部材および出力部材を互いにロック状態または非ロック状態にする係合部材(例えば、後述の実施形態におけるローラ123)とを有し、前記変速機構からの回転動力を受ける前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材と出力部材がロック状態になることで、前記入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達するワンウェイ・クラッチ(例えば、後述の実施形態におけるワンウェイ・クラッチOWC)と、
該ワンウェイ・クラッチの出力部材に連結され、該出力部材に伝達された回転動力を駆動車輪(例えば、後述の実施形態における駆動車輪2)に伝える被回転駆動部材(例えば、後述の実施形態における被回転駆動部材11)と、
前記内燃機関の出力軸をモータリングすることができるように接続された電動機(例えば、後述の実施形態における第1のモータジェネレータMG1)と、
前記被回転駆動部材に接続され、該被回転駆動部材に回転動力を伝達する電動機としての機能と該被回転駆動部材からの回転動力を受けて回生運転する発電機としての機能とを有する電動発電機(例えば、後述の実施形態における第2のモータジェネレータMG2)と、
前記電動発電機が回生運転を行っている際に前記内燃機関への燃料カットを実施しつつ前記電動機により前記内燃機関の出力軸をモータリングする制御手段(例えば、後述する実施形態における車両制御手段50)と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、
前記制御手段が、前記電動発電機が回生運転して得た電力を前記電動機の駆動電力として供給することを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成において、
前記制御手段が、前記電動発電機が回生運転を行っている際に、最初の所定時間は前記内燃機関のアイドリングを実行し、前記所定時間の経過後に前記内燃機関への燃料カットを実施しつつ前記電動機により前記内燃機関の出力軸をモータリングすることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの構成において、
前記制御手段が、前記モータリングを実行している状態で所定時間を経過した段階でモータリングを停止することを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの構成において、
レスポンス重視モードを検出する手段(例えば、後述する実施形態におけるスポーツモード検出手段55)を備え、
前記制御手段が、レスポンス重視モードが選択されている際に、前記モータリングを実行するのに優先してアイドリングを実行することを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかの構成において、
前記変速機構が無段変速機構(例えば、後述する実施形態における無限・無段変速機構BD)よりなり、
前記制御手段が、前記モータリングを実行しているときの前記変速機構の変速比を、前記ワンウェイ・クラッチの入力部材の回転速度が出力部材の回転速度を下回るように、前記被回転駆動部材側の回転速度に応じて変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明の自動車用駆動システムによれば、アクセルがOFF状態となった時に、ワンウェイ・クラッチより下流側に位置する電動発電機によって駆動車輪側からの動力の回生を行いながら、ワンウェイ・クラッチより上流側に位置する電動機の駆動力によって内燃機関の出力軸を回転(モータリング)させ、その間は燃料カットを実行する。この間はモータリング状態になっており内燃機関の出力軸が予備回転しているため、次に内燃機関の駆動力を利用する状態に切り替える際に、燃料供給を再開するだけで、レスポンス良く所定の要求回転数まで内燃機関の出力回転数を上昇させることができる。また、モータリング(電動機により内燃機関の出力軸を回転させる)時には、最少の燃料供給によるアイドリングを行う必要がないので、余分な燃料消費を抑制することができる。つまり、本駆動システムによれば、燃料消費の向上を図りつつ、内燃機関の再始動時のレスポンスの向上を図ることができる。また、減速中の状態から再びアクセルがONされて加速の要求がなされた時に、内燃機関が要求駆動力を生み出せる状態になるまでにある一定以上のタイムラグが発生すると想定される場合には、電動機の駆動力をそのまま内燃機関の出力軸に乗せ続けることでレスポンス遅れを補償することができ、また、電動発電機の駆動力を被回転駆動部材に乗せることでレスポンス遅れを補償することができる。
【0017】
請求項2の発明の自動車用駆動システムによれば、内燃機関のモータリングに必要な電動機の駆動電力を、電動発電機により得た回生エネルギーで賄うため、エネルギー効率が向上する。
【0018】
請求項3の発明の自動車用駆動システムによれば、燃料カットしながらモータリングする期間(この期間を「モータリング待機」という)の前にアイドリングの期間(この期間を「アイドリング待機」という)を入れたので、アイドリング待機中に再びアクセルがONされた(アクセルペダルが踏み込まれた)場合に、モータリング待機中にアクセルONされた場合よりも、レスポンス良く対応する(内燃機関の出力回転数を要求回転数まで上昇させる)ことができる。ここで、モータリングとは、燃料供給の有無に拘わらず、電動機の動力で内燃機関の出力軸を回転させることを指し、アイドリングとは燃料を供給して最小回転数で無負荷回転させることを指す。
【0019】
請求項4の発明の自動車用駆動システムによれば、モータリングを実行しても、予め決められた所定時間の経過後にモータリングを停止するため、エネルギー消費を抑制することができる。即ち、長い下り坂を走行しているときなどでは、アクセルペダルを再度踏み込むまでに長い時間がかかる場合がある。そのような場合にその長い時間の間ずっとモータリングを続けていると、電気エネルギーが無駄に消費されてしまうことになる。そこで、ある所定時間を経過したら、レスポンスの問題に優先してモータリングを停止する。そうすることで、エネルギーの無駄な消費を抑えることができる。
【0020】
請求項5の発明の自動車用駆動システムによれば、レスポンス重視モードが選択されているときには、モータリング待機に優先してアイドリング待機を実施するので、アイドリング待機中に再びアクセルがONされた際にレスポンス良く対応することができる。
【0021】
請求項6の発明の自動車用駆動システムによれば、モータリングによるショックが駆動車輪側に伝達するのを防ぐことができ、商品性能の向上に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態の自動車用駆動システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】同システムの系統図である。
【図3】同システムの無限・無段変速機構の具体的な構成を示す断面図である。
【図4】同変速機構の一部の構成を軸線方向から見た側断面図である。
【図5】同変速機構における変速比可変機構による変速原理の前半部分の説明図であり、(a)は偏心ディスク104の中心点である第1支点O3の回転中心である入力中心軸線O1に対する偏心量r1を「大」にして変速比iを「小」に設定した状態を示す図、(b)は偏心量r1を「中」にして変速比iを「中」に設定した状態を示す図、(c)は偏心量r1を「小」にして変速比iを「大」に設定した状態を示す図、(d)は偏心量r1を「ゼロ」にして変速比iを「無限大(∞)」に設定した状態を示す図である。
【図6】同変速機構における変速比可変機構による変速原理の後半部分の説明図であって、偏心ディスクの偏心量r1を変更して変速比iを変えた場合のワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2の変化を示す図であり、(a)は偏心量r1を「大」にし変速比iを「小」にすることで、入力部材122の揺動角度θ2が「大」になった状態を示す図、(b)は偏心量r1を「中」にし変速比iを「中」にすることで、入力部材122の揺動角度θ2が「中」になった状態を示す図、(c)は偏心量r1を「小」にし変速比iを「大」にすることで、入力部材122の揺動角度θ2が「小」になった状態を示す図である。
【図7】4節リンク機構として構成された前記無限・無段変速機構の駆動力伝達原理の説明図である。
【図8】同変速機構において、入力軸と共に等速回転する偏心ディスクの偏心量r1(変速比i)を「大」、「中」、「小」と変化させた場合の、入力軸の回転角度θとワンウェイ・クラッチの入力部材の角速度ω2の関係を示す図である。
【図9】同変速機構において、複数の連結部材によって入力側(入力軸や偏心ディスク)から出力側(ワンウェイ・クラッチの出力部材)へ動力が伝達される際の出力の取り出し原理を説明するための図である。
【図10】実施形態の自動車用駆動システムにおける主要動作を示すタイムチャートである。
【図11】図10のタイムチャートの動作を実現するための制御フローを示すフローチャートである。
【図12】本発明の別の実施形態のフローチャートである。
【図13】従来の自動車用駆動システムの一例を示すスケルトン図である。
【図14】図13の構成を簡略化して示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る自動車用駆動システムを図面に基づいて説明する。
図1は実施形態の自動車用駆動システムの概略構成を示すブロック図、図2は同システムの系統図、図3は同システムの無限・無段変速機構の具体的な構成を示す断面図、図4は同無限・無段変速機構の一部の構成を軸線方向から見た側断面図である。
【0024】
《全体構成》
図1および図2に示すように、この自動車用駆動システム1は、燃料の供給を受けることで回転動力を発生するエンジン(内燃機関)ENGと、エンジンENGの下流側に設けられ、エンジンENGの発生する回転動力を無段階に変速して出力するトランスミッション(無段変速機構)TMと、エンジンENGとトランスミッションTMの間にギヤ3、4を介して接続されて、エンジンENGの出力軸をモータリングすることが可能な第1のモータジェネレータ(電動機)MG1と、トランスミッションTMの出力部に設けられ、エンジンENG側から駆動車輪2側への動力のみ伝達するワンウェイ・クラッチOWCと、このワンウェイ・クラッチOWCを介して伝達された出力回転を受けて駆動車輪2に伝達する被回転駆動部材11と、この被回転駆動部材11にギヤの組み合わせ20(ギヤ15、16、17)を介して接続された第2のモータジェネレータ(電動発電機)MG2と、を備える。
【0025】
また、自動車用駆動システム1は、第1のモータジェネレータMG1および/または第2のモータジェネレータMG2との間でインバータINVを介して電力のやりとりが可能なバッテリBATTと、各種要素を制御することで走行パターンなどの各種制御を行う車両制御手段50と、車両制御手段50に制御に必要な情報を与える車両状態検出手段51などをさらに備えている。
【0026】
車両状態検出手段51には、エンジンENGの回転数NEを検出するENG回転数検出手段52、トランスミッションTMの変速比を検出するレシオ検出手段53、シフトレンジ切替装置SLにおいてスポーツモード(レスポンス重視モードに相当)が選択されているかどうかを検出するスポーツモード検出手段54、アクセルペダルAPの状態を検出するAP状態検出手段55、ブレーキペダルBPの状態を検出するBP状態検出手段56、駆動車輪2の車軸(足軸)の回転数を検出する足軸検出手段57、バッテリBATTの蓄電残量(SOC)を検出するSOC検出手段58などが含まれている。
【0027】
ワンウェイ・クラッチOWCは、図4に示すように、入力部材(クラッチアウタ)122と、出力部材(クラッチインナ)121と、これら入力部材122および出力部材121の間に配されて両部材122、121を互いにロック状態または非ロック状態にする複数のローラ(係合部材)123と、ロック状態を作る方向にローラ123を付勢する付勢部材126とを有する。そして、トランスミッションTMからの各回転動力を受ける入力部材122の正方向(矢印RD1方向)の回転速度が、出力部材121の正方向の回転速度を上回ったとき、入力部材122と出力部材121が互いにロック状態になることにより、入力部材122に入力された回転動力を出力部材121に伝達する。
【0028】
ワンウェイ・クラッチOWCの出力部材121は、ギヤ15、16を介して被回転駆動部材11に連結されている。被回転駆動部材11は、ディファレンシャル装置10のデフケースにより構成されており、ワンウェイ・クラッチOWCの出力部材121に伝達された回転動力は、ディファレンシャル装置10および左右のアクスルシャフト13L、13Rを介して、左右の駆動車輪2に伝達される。ディファレンシャル装置10のデフケース(被回転駆動部材11)には、図示しないデフピニオンやサイドギヤが取り付けられており、左右のサイドギヤに左右のアクスルシャフト13L、13Rが連結され、左右のアクスルシャフト13L、13Rは差動回転する。
【0029】
図1に示すように、第2のモータジェネレータMG2と被回転駆動部材11は、第2のモータジェネレータMG2のロータ軸に取り付けたギヤ17がワンウェイ・クラッチOWCの出力軸(出力部材121)に設けたギヤ15を介して被回転駆動部材11に設けたギヤ16と噛合することにより、動力伝達可能に接続されている。例えば、第2のモータジェネレータMG2がモータとして機能するときは、第2のモータジェネレータMG2から被回転駆動部材11に駆動力が伝達される。また、第2のモータジェネレータMG2を発電機として機能させるときは、被回転駆動部材11から第2のモータジェネレータMG2に動力が入力され、機械エネルギーが電気エネルギーに変換される。同時に、第2のモータジェネレータMG2から被回転駆動部材11に回生制動力が作用する。なお、第2のモータジェネレータMG2と被回転駆動部材11との間の動力伝達は、ギヤ15〜17からなる組み合わせの代わりに、遊星ギヤ機構によって行われてもよい。
【0030】
また、第1のモータジェネレータMG1のロータ軸は、ギヤ3、4を介してトランスミッションTMの入力軸101に接続されると共に、ギヤ3、4を介してエンジンENGの出力軸に接続されており、エンジンENGの出力軸およびトランスミッションTMの入力軸101との間で動力の相互伝達を行う。この場合も、第1のモータジェネレータMG1がモータとして機能するときは、第1のモータジェネレータMG1からトランスミッションTMの入力軸101やエンジンENGの出力軸に駆動力が伝達される。また、第1のモータジェネレータMG1が発電機として機能するときは、エンジンENGの出力軸から第1のモータジェネレータMG1に動力が伝達される。
【0031】
以上の要素を備えたこの駆動システム1では、エンジンENGおよび/または第1のモータジェネレータMG1の発生する回転動力が、トランスミッションTMを介してワンウェイ・クラッチOWCに入力され、ワンウェイ・クラッチOWCを介して被回転駆動部材11に入力されて、ディファレンシャル装置10から駆動車輪2に伝達される。あるいは、第2のモータジェネレータMG2の発生する回転動力が被回転駆動部材11に入力されて、ディファレンシャル装置10から駆動車輪2に伝達される。
【0032】
《トランスミッションの構成》
次に、この駆動システム1に用いられているトランスミッションTMについて説明する。
トランスミッションTMは無段変速機構により構成されている。この場合の無段変速機構は、IVT(Infinity Variable Transmission=クラッチを使用せずに変速比を無限大にして出力回転をゼロにできる方式の変速機構)と呼ばれるものの一種であり、変速比(レシオ=i)を無段階に変更できると共に、変速比の最大値を無限大(∞)に設定することのできる、無限・無段変速機構BDにより構成されている。
【0033】
この無限・無段変速機構BDは、図3および図4に構成を示すように、エンジンENGからの回転動力を受けることで入力中心軸線O1の周りを回転する入力軸101と、入力軸101と一体回転する複数の偏心ディスク104と、入力側と出力側を結ぶための偏心ディスク104と同数の連結部材130と、出力側に設けられたワンウェイ・クラッチ120とを備えている。
【0034】
複数の偏心ディスク104は、それぞれ第1支点O3を中心とした円形形状に形成されている。第1支点O3は、入力軸101の周方向に等間隔に設けられると共に、それぞれが、入力中心軸線O1に対する偏心量r1を変更可能で、且つ、該偏心量r1を保ちつつ、入力中心軸線O1の周りに入力軸101と共に回転するように設定されている。従って、複数の偏心ディスク104は、それぞれに偏心量r1を保った状態で、入力中心軸線O1の周りに入力軸101の回転に伴って偏心回転するように設けられている。
【0035】
偏心ディスク104は、図4に示すように、外周側円板105と、入力軸101に一体形成された内周側円板108とで構成されている。内周側円板108は、入力軸101の中心軸線である入力中心軸線O1に対して一定の偏心距離だけ中心を偏倚させた肉厚円板として形成されている。外周側円板105は、第1支点O3を中心にした肉厚円板として形成されており、その中心(第1支点O3)を外れた位置に中心を持つ第1円形孔106を有している。そして、この第1円形孔106の内周に回転可能に内周側円板108の外周が嵌っている。
【0036】
また、内周側円板108には、入力中心軸線O1を中心とすると共に周方向の一部が内周側円板108の外周に開口した第2円形孔109が設けられており、その第2円形孔109の内部にピニオン110が回転自在に収容されている。ピニオン110の歯は、第2円形孔109の外周の開口を通して、外周側円板105の第1円形孔106の内周に形成した内歯歯車107に噛み合っている。この場合、ピニオン110の歯数と内歯歯車107の歯数の比は1:2となっている。
【0037】
このピニオン110は、入力軸101の中心軸線である入力中心軸線O1と同軸に回転するように設けられている。即ち、ピニオン110の回転中心と入力軸101の中心軸線である入力中心軸線O1とが一致している。ピニオン110は、図3に示すように、直流モータおよび減速機構によって構成されるアクチュエータ180により、第2円形孔109の内部で回転させられる。通常時は、入力軸101の回転と同期させてピニオン110を回転させ、同期する回転数を基準として、ピニオン110に入力軸101の回転数を上回るか下回るかする回転数を与えることにより、ピニオン110を入力軸101に対して相対回転させる。例えば、ピニオン110およびアクチュエータ180の出力軸が互いに連結されるように配置し、アクチュエータ180の回転が入力軸101の回転に対して回転差を生じる場合には、その回転差に減速比をかけた分だけ入力軸101とピニオン110の相対角度が変化する減速機構(例えば遊星歯車)を用いることで実現できる。この際、アクチュエータ180と入力軸101の回転差がなく同期している場合には偏心量r1は変化しない。
【0038】
従って、ピニオン110を回すことにより、ピニオン110の歯が噛合している内歯歯車107つまり外周側円板105が内周側円板108に対して相対回転し、それにより、ピニオン110の中心(入力中心軸線O1)と外周側円板105の中心(第1支点O3)との間の距離(つまり偏心ディスク104の偏心量r1)が変化する。
【0039】
この場合、ピニオン110の回転によって、ピニオン110の中心(入力中心軸線O1)に外周側円板105の中心(第1支点O3)を一致させることができるように設定されており、両中心を一致させることにより、偏心ディスク104の偏心量r1を「ゼロ」に設定できる。
【0040】
また、ワンウェイ・クラッチ120は、入力中心軸線O1から離れた出力中心軸線O2の周りを回転する出力部材(クラッチインナ)121と、外部から回転方向の動力を受けることで出力中心軸線O2の周りを揺動するリング状の入力部材(クラッチアウタ)122と、これら入力部材122および出力部材121を互いにロック状態または非ロック状態にするために入力部材122と出力部材121の間に挿入された複数のローラ(係合部材)123と、ロック状態を与える方向にローラ123を付勢する付勢部材126とを有し、入力部材122の正方向(例えば、図4中の矢印RD1で示す方向)の回転速度が出力部材121の正方向の回転速度を上回ったとき、入力部材122に入力された回転動力を出力部材121に伝達し、それにより、入力部材122の揺動運動を出力部材121の回転運動に変換することができるようになっている。
【0041】
図3に示すように、ワンウェイ・クラッチ120の出力部材121は、軸方向に一体に連続した部材として構成されたものであるが、入力部材122は、軸方向に複数に分割されており、偏心ディスク104および連結部材130の数だけ、軸方向に各々独立して揺動できるように配列されている。そして、ローラ123は、入力部材122毎に、入力部材122と出力部材121との間に挿入されている。
【0042】
リング状の各入力部材122上の周方向の1箇所には張り出し部124が設けられており、その張り出し部124に、出力中心軸線O2から離間した第2支点O4が設けられている。そして、各入力部材122の第2支点O4上にピン125が配置され、このピン125によって、連結部材130の先端(他端部)132が入力部材122に回転自在に連結されている。
【0043】
連結部材130は、一端側にリング部131を有し、そのリング部131の円形開口133の内周が、ベアリング140を介して、偏心ディスク104の外周に回転自在に嵌合されている。従って、このように連結部材130の一端が偏心ディスク104の外周に回転自在に連結されると共に、連結部材130の他端が、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122上に設けられた第2支点O4に回動自在に連結されることにより、入力中心軸線O1、第1支点O3、出力中心軸線O2、第2支点O4の4つの節を回動点とする四節リンク機構が構成されており、入力軸101から偏心ディスク104に与えられる回転運動が、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122に対して該入力部材122の揺動運動として伝えられ、その入力部材122の揺動運動が出力部材121の回転運動に変換される。
【0044】
その際、ピニオン110、ピニオン110を収容する第2円形孔109を備えた内周側円板108、内周側円板108を回転可能に収容する第1円形孔106を備えた外周側円板105、アクチュエータ180などにより構成された変速比可変機構112の前記ピニオン110をアクチュエータ180で動かすことにより、偏心ディスク104の偏心量r1を変化させることができる。そして、偏心量r1を変更することで、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2を変更することができ、それにより、入力軸101の回転数に対する出力部材121の回転数の比(変速比:レシオi)を変えることができる。即ち、入力中心軸線O1に対する第1支点O3の偏心量r1を調節することで、偏心ディスク104からワンウェイ・クラッチ120の入力部材122に伝えられる揺動運動の揺動角度θ2を変更し、それにより、入力軸101に入力される回転動力が、偏心ディスク104および連結部材130を介してワンウェイ・クラッチ120の出力部材121に回転動力として伝達される際の変速比を変更することができる。
【0045】
本実施形態では、エンジンENGの出力軸が、無限・無段変速機構BDの入力軸101に一体に連結され、第1のモータジェネレータMG1のロータ軸が、無限・無段変速機構BDの入力軸101にギヤ3、4を介して連結されている。また、無限・無段変速機構BDの構成要素であるワンウェイ・クラッチ120が、トランスミッションTMと被回転駆動部材11との間に設けられた前記ワンウェイ・クラッチOWCを兼ねている。
【0046】
図5および図6は、無限・無段変速機構BDにおける変速比可変機構112による変速原理の説明図である。これら図5および図6に示すように、変速比可変機構112のピニオン110を回転させて、内周側円板108に対して外周側円板105を回転させることにより、偏心ディスク104の入力中心軸線O1(ピニオン110の回転中心)に対する偏心量r1を調節することができる。
【0047】
例えば、図5(a)、図6(a)に示すように、偏心ディスク104の偏心量r1を「大」にした場合は、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2を大きくすることができるので、小さな変速比iを実現することができる。また、図5(b)、図6(b)に示すように、偏心ディスク104の偏心量r1を「中」にした場合は、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2を「中」にすることができるので、中くらいの変速比iを実現することができる。また、図5(c)、図6(c)に示すように、偏心ディスク104の偏心量r1を「小」にした場合は、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2を小さくすることができるので、大きな変速比iを実現することができる。また、図5(d)に示すように、偏心ディスク104の偏心量r1を「ゼロ」にした場合は、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2を「ゼロ」にすることができるので、変速比iを「無限大(∞)」にすることができる。
【0048】
図7は4節リンク機構として構成された前記無限・無段変速機構BDの駆動力伝達原理の説明図、図8は同変速機構BDにおいて、入力軸101と共に等速回転する偏心ディスク104の偏心量r1(変速比i)を「大」、「中」、「小」と変化させた場合の、入力軸101の回転角度(θ)とワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の角速度ω2の関係を示す図、図9は同変速機構BDにおいて、複数の連結部材130によって入力側(入力軸101や偏心ディスク104)から出力側(ワンウェイ・クラッチ120の出力部材121)へ動力が伝達される際の出力の取り出し原理を説明するための図である。
【0049】
図7に示すように、ワンウェイ・クラッチ120(OWC)の入力部材122は、連結部材130を介して偏心ディスク104から与えられる動力により揺動運動する。偏心ディスク104を回転させる入力軸101が1回転すると、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122は1往復揺動する。図8に示すように、偏心ディスク104の偏心量r1の値に関係なく、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の揺動周期は常に一定である。入力部材122の角速度ω2は、偏心ディスク104(入力軸101)の回転角速度ω1と偏心量r1によって決まる。
【0050】
入力軸101とワンウェイ・クラッチ120を繋ぐ複数の連結部材130の一端(リング部131)は、入力中心軸線O1の周りに周方向等間隔で設けられた偏心ディスク104に回転自在に連結されているので、各偏心ディスク104の回転運動によりワンウェイ・クラッチ120の入力部材122にもたらされる揺動運動は、図9に示すように、一定の位相で順番に起こることになる。
【0051】
その際、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122から出力部材121への動力(トルク)の伝達は、入力部材122の正方向(図4中矢印RD1方向)の回転速度が出力部材121の正方向の回転速度を超えた条件でのみ行われる。つまり、ワンウェイ・クラッチ120では、入力部材122の回転速度が出力部材121の回転速度より高くなったときに初めてローラ123を介しての噛み合い(ロック)が発生し、連結部材130により、入力部材122の動力が出力部材121に伝達され、駆動力が発生する。
【0052】
1つの連結部材130による駆動が終了した後は、入力部材122の回転速度が出力部材121の回転速度より低下すると共に、他の連結部材130の駆動力によってローラ123によるロックが解除されて、フリーな状態(空転状態)に戻る。これが、連結部材130の数だけ順番に行われることで、揺動運動が一方向の回転運動に変換される。そのため、出力部材121の回転速度を超えたタイミングの入力部材122の動力のみが出力部材121に順番に伝えられ、ほぼ平滑に均された回転動力が出力部材121に与えられることになる。
【0053】
また、この4節リンク機構式の無限・無段変速機構BDでは、偏心ディスク104の偏心量r1を変更することで、変速比(レシオ=エンジンENGの出力軸であるクランク軸の1回転でどれだけ被回転駆動部材11を回転させるか)を決めることができる。この場合、偏心量r1をゼロに設定することで、変速比iを無限大に設定することができ、エンジンENGの回転中にも拘わらず、入力部材122に伝達される揺動角度θ2をゼロにすることができる。
【0054】
《車両制御手段50の主な働き》
次に、この駆動システム1において車両制御手段50が実行する制御の内容について説明する。
車両制御手段50は、車両状態検出手段51からの入力情報などに基づいて、エンジンENG、第1のモータジェネレータMG1、第2のモータジェネレータMG2、トランスミッションTMを構成する無限・無段変速機構BDのアクチュエータ180などに制御信号を送り、これらの要素を制御することで様々な走行パターン制御などの制御を実行する。
【0055】
例えば、車両制御手段50は、エンジンENGの駆動力のみによるエンジン走行を制御するエンジン走行制御モード、第1のモータジェネレータMG1の駆動力または/および第2のモータジェネレータMG2の駆動力によるEV走行を制御するEV走行制御モード、エンジンENGの駆動力と第1のモータジェネレータMG1の駆動力または/および第2のモータジェネレータMG2の駆動力の両方を利用して走行するパラレル走行モード、第2のモータジェネレータMG2による回生運転制御などを選択して実行する機能を有している。また、車両制御手段50は、必要に応じてエンジンENGへの燃料供給系に指令を出して燃料カットを実行する機能も有している。
【0056】
以下、第1のモータジェネレータMG1と第2のモータジェネレータMG2の特徴的な使われ方の例として、回生運転時の制御の内容について説明する。図10は回生運転時の動作を含む制御の内容を示すタイムチャート、図11はそのタイムチャートの動作を実現するための制御フローを示すフローチャートである。
【0057】
図10のタイムチャートと図11のフローチャートに従って制御の内容を説明する。
まず、アクセルペダルAPがONの状態でエンジン走行しているときには、ステップS101の判断がNOとなってステップS111に進む。アクセルペダルAPがONの状態でエンジン走行しているときには、アイドリング回転数Nαよりもエンジン回転数NEが当然大きい状態であるから、ステップS111の判断がYESとなり、図11のルーチンを終了して(END)、エンジンENGの回転数制御や無限・無段変速機構BDのレシオ制御のステージに移行する。
【0058】
アクセルペダルAPがONの状態からOFFの状態(アクセルペダルAPを解放した状態)になったら(図10のタイムチャートのタイミングA)、ステップS101の判断がYESになり、ステップS102で充電要求があるかどうかを判断し、充電要求がある場合はステップS103で第2のモータジェネレータMG2による回生運転を実行する。つまり、アクセルペダルAPがONの状態からOFFの状態になると、エンジンENGの回転数が低下し、ワンウェイ・クラッチOWCの入力側の回転速度が出力側の回転速度より小さくなることにより、ワンウェイ・クラッチOWCが遮断状態になる。このとき、第2のモータジェネレータMG2は発電機として働かせることができるので、回生運転を実施することにより、駆動車輪2側の動力を電気エネルギーとして回生すると同時に、回生ブレーキを駆動車輪2に作用させることができる。この回生によって得られる電気エネルギーは、バッテリBATTに全部充電されるか、後述するように一部または全部が直接第1のモータジェネレータMGへの供給電力として使われる。
【0059】
ステップS103で回生運転を実行したら、そのまま回生運転を続行しながらステップS104に進む。充電要求がない場合は、ステップS102からステップS103をパスしてステップS104に進む。ステップS104では、アクセルペダルAPがOFFになってからの累積時間が第1の所定時間t1以上になったかどうかを判断する。所定時間t1が経過するまでは、ステップS105に進んでエンジンENGをアイドリング待機させる。つまり、最少の燃料供給量(タイムチャートのFUELを参照)によりアイドリング回転数Nα(安全運転下限NEで約500rpm)でエンジンENGを無負荷回転させる。
【0060】
このアイドリング待機の状態において、再びアクセルペダルAPが踏み込まれてONになると(図10のタイムチャートのタイミングB)、レスポンス良く(アクセルペダルAPをONにしてからほぼ応答遅れなく)エンジン回転数NEを要求回転数まで上昇させることができ、エンジンENGの駆動力を走行駆動力として利用することができる。
【0061】
このようにアクセルペダルAPがONになると、ステップS101の判断がNOとなり、ステップS111に進む。ステップS111では、エンジン回転数NEがアイドリング回転数Nα以上であることから、本ルーチンの制御を終了し、エンゲージ時(ワンウェイ・クラッチOWCの出力部材121や被回転駆動部材11にエンジン側の動力が伝達される状態にする時)の制御ステージ(エンジンの駆動力を駆動車輪側に伝達するためのエンジン回転数や無限・無段変速機のレシオ制御)に移行する。
【0062】
また、アイドリング状態を維持したまま、アクセルペダルAPがOFFになってからの累積時間が第1の所定時間t1以上になったら(図10のタイムチャートのタイミングC)、ステップS104の判断がYESになり、ステップS106に進む。このステップS106では、アクセルペダルAPがOFFになってからの累積時間が第2の所定時間t2(t2>t1)以上になったかどうかを判断する。
【0063】
第1の所定時間t1が経過してから第2の所定時間t2が経過するまでの期間(t1からt2までの期間)は、ステップS107〜ステップS109に順番に進んで、エンジンENGの出力軸を第1のモータジェネレータMG1の駆動力によって回転させる(これを「モータリング」といい、モータリングを行っている状態をモータリング待機という)。同時に、この期間はアイドリングが不要になるので、燃料カット(FUEL CUT)を行う。このモータリング時のエンジンENGの出力軸の回転数Nβは、自着火可能下限回転数(燃料供給を再開すればエンジンが回転スタートするスタータ回転数)かそれ以上(ただし、アイドリング回転数より低い回転数で約300rpm)に設定されている。
【0064】
このモータリング待機の状態のときに、再びアクセルペダルAPが踏み込まれてONになると(図10のタイムチャートのタイミングD)、燃料供給が再開されることにより、アイドリング時ほどではないものの、レスポンス良く(アクセルペダルAPをONにしてから僅かな応答遅れで)エンジン回転数NEが要求回転数まで上昇し、エンジンENGの駆動力を走行駆動力として利用することができる。このとき、第1のモータジェネレータMG1は、エンジン回転数NEがアイドリング回転数Nαに到達するまで駆動力をエンジンENGの出力軸に与え続け、アイドリング回転数に到達したら第1のモータジェネレータMG1はトルク供給を停止する。なお、第1のモータジェネレータMG1の駆動力を、エンジン回転数が要求回転数に到達するまで、エンジンENGの出力軸に与え続けるようにしてもよく、そうすることでレスポンス遅れを補償することができる。
【0065】
また、アクセルペダルAPがOFFになってからの累積時間が第2の所定時間t2以上になったら(図10のタイムチャートのタイミングE)、ステップS106の判断がYESになり、ステップS110に進んでエンジンENGの出力軸のモータリングを停止させる。つまり、長い下り坂を走行しているときなどのように長い時間にわたってアクセルペダルがOFFの状態のまま経過する場合は、モータリングを続行するのもエネルギーの無駄になるので、モータリングを停止する。
【0066】
この状態において、アクセルペダルAPが踏み込まれてONになると(図10のタイムチャートのタイミングF)、ステップS101の判断がNOとなりステップS111に進む。この段階では「エンジン回転数NE<アイドリング回転数Nα」であるので、ステップS111の判断がNOとなり、ステップS112にて第1のモータジェネレータMG1によりエンジンENGにスタータ回転を与える。NE≧Nβとなるまで、ステップS101→ステップS111→ステップS112→ステップS113と進むことにより、スタータ回転を与え続け、NE≧Nβとなった段階でステップS113の判断がYESになり、ステップS114に進んで燃料噴射を行う。それによりエンジンENGが始動する。
【0067】
ただしこの場合は、エンジンENGの出力軸が回転数ゼロの状態からの始動となるので、レスポンス遅れが若干生じることになる。そこで、エンジンENGの回転数がアイドリング回転数Nαに到達するまでの間、第2のモータジェネレータMG2の駆動力を被回転駆動部材11に乗せることで、エンジン始動時の走行力不足をアシストすることができる。こうすることにより、レスポンス遅れを補償することができる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態の駆動システムでは、第2のモータジェネレータMG2が回生運転を行っている際に、エンジンENGへの燃料カットを実施しつつ第1のモータジェネレータMG1によりエンジンENGの出力軸をモータリングする。つまり、アクセルペダルAPがOFF状態となった時に、ワンウェイ・クラッチOWCより下流側に位置する第2のモータジェネレータMG2によって駆動車輪2側からの動力の回生を行いながら、ワンウェイ・クラッチOWCより上流側に位置する第1のモータジェネレータMG1の動力によってエンジンENGの出力軸を予備回転(モータリング)させつつ、その間は燃料カットを実行する。そうすることで、次にエンジンENGの駆動力を利用する状態(エンジン走行状態)に切り替える際に、燃料供給を再開するだけで、レスポンス良く所定の要求回転数までエンジンENGの出力回転数を上昇させることができる。
【0069】
また、モータリング(第1のモータジェネレータMG1によりエンジンENGの出力軸を回転させる)時には、最少の燃料供給によるアイドリングを行う必要がないので、余分な燃料消費を抑制することができる。つまり、本駆動システムによれば、燃料消費の向上を図りつつ、エンジンENGの再始動時のレスポンスの向上を図ることができる。
【0070】
また、アクセルペダルAPをOFFにして減速している状態から再びアクセルペダルAPが踏まれて加速の要求がなされた時に、エンジンENGが要求駆動力を生み出せる状態になるまでにある一定以上のタイムラグが発生すると想定される場合には、第1のモータジェネレータMG1の駆動力をそのままエンジンENGの出力軸に乗せ続けることで、レスポンス遅れを補償することも可能である。
【0071】
また、モータリング待機の前段にアイドリング待機を優先的に入れるようしているので、即ち、第2のモータジェネレータMG2により回生運転を行っている際に、最初の所定時間t1(前段)はエンジンENGのアイドリングを実行し、所定時間t1の経過後に燃料カットを実施しつつ第1のモータジェネレータによりエンジンENGの出力軸をモータリングするようにしているので、アイドリング待機中に再びアクセルがONされた場合に、モータリング待機中にアクセルONされた場合よりも、レスポンス良く対応することができる。
【0072】
また、モータリングを実行している状態で所定時間(t2−t1)を経過した段階でモータリングを停止するようにしているので、電力エネルギーの無駄な消費を極力抑えることができる。即ち、長い下り坂を走行しているときなどでは、アクセルペダルAPを再度踏み込むまでに長い時間がかかる場合があり、そのような場合にその長い時間の間ずっとモータリングを続けていると、電力エネルギーが無駄に消費されてしまうことになるが、ある所定時間が経過したら、レスポンスの問題は無視して、モータリングを停止するようにしているので、電力エネルギーの無駄な消費を抑えることができる。
【0073】
また、モータリングを実行しているときのトランスミッションTMの変速比を、ワンウェイ・クラッチOWC(120)の入力部材122の回転速度が出力部材121の回転速度を下回るように、被回転駆動部材11側の回転速度に応じて変更するようにすることで、モータリングによるショックが駆動車輪2側に伝達するのを防ぐことができ、商品性能の向上に貢献することができる。
【0074】
また、第2のモータジェネレータMG2が回生運転して得た電力を第1のモータジェネレータMG1の駆動電力として直接供給するようにした場合には、エネルギー効率の向上を図ることができる。
【0075】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0076】
例えば、上記実施形態では、図10および図11に示すように、アイドリング待機するかどうかをアクセルペダルがOFFされてからの累積時間で決めるようにした場合を示したが、シフトレバーSLがスポーツモード(レスポンス優先モード)を選択しているときだけ、アイドリング待機を設けるようにしてもよい。即ち、スポーツモードはレスポンス重視モードであるから、このモードが選択されているときには、モータリングを実行するのに優先してアイドリングを実行するようにする。具体的には、図12のフローチャートのステップS104Bに示すように、このステップS104Bにおいてクイックレスポンスが要求されている(スポーツモードスイッチON)かどうかを判断し、YESの場合はステップS105に進んでアイドリング待機を実行するようにする。こうすることで、アイドリング待機中に再びアクセルがONされた際にレスポンス良く対応することができる。なお、図12のフローチャートの図11のフローチャートに対する違いは、ステップS104Bだけであり、その他のステップは全く同じである。
【0077】
また、上記実施形態では、トランスミッションTMが、偏心ディスク104や連結部材130、ワンウェイ・クラッチ120を使用した形式のもので構成されている場合を示したが、その他のCVTなどの無段変速機構を用いてもよい。その他の形式の無段変速機構を用いた場合は、ワンウェイ・クラッチOWCを無段変速機構の下流側に装備してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 自動車用駆動システム
2 駆動車輪
11 被回転駆動部材(デフケース)
50 車両制御手段
120 ワンウェイ・クラッチ
121 出力部材
122 入力部材
123 ローラ(係合部材)
ENG エンジン(内燃機関)
TM 無段変速機構
OWC ワンウェイ・クラッチ
MG1 第1のモータジェネレータ(電動機)
MG2 第2のモータジェネレータ(電動発電機)
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用の駆動源として内燃機関(エンジン)と電動発電機(モータジェネレータ)を備えるハイブリッド型の自動車用駆動システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の自動車用駆動システムとして、特許文献1に示されるように、エンジンとトランスミッションとモータジェネレータを組み合わせて構成したハイブリッド型の駆動システムが知られている。図13は特許文献1に記載された駆動システムのスケルトン図、図14はその構成を簡略化して示すブロック図である。
【0003】
これらの図13および図14に示すように、この駆動システムでは、エンジンENGの出力軸にトランスミッションTMの入力軸が接続され、トランスミッションTMの出力軸にワンウェイ・クラッチOWCを介して、駆動車輪2に繋がるディファレンシャル装置DIFFのデフケースが接続されている。ワンウェイ・クラッチOWCは、変速機構TMが偏心体駆動装置で構成されている関係から、その1要素として組み込まれている。また、モータジェネレータMGが、第1のクラッチCL1を介してトランスミッションTMの入力軸(エンジンENGの出力軸)に接続されると共に、第2のクラッチCL2およびギアセットGEARを介してディファレンシャル装置DIFFのデフケースに接続されている。
【0004】
この駆動システムでは、エンジンENGの駆動力だけを利用したエンジン走行、モータジェネレータMGの駆動力だけを利用したEV走行、エンジンENGの駆動力とモータジェネレータMGの駆動力の両方を利用したパラレル走行を行うことができる。また、モータジェネレータMGの回生動作を利用することにより、減速時に回生エネルギーを得ることができると同時に、回生ブレーキを駆動車輪2に利かせることもできる。また、モータジェネレータMGでエンジンENGを始動させることもできる。
【0005】
ところで、上記の駆動システムのように、エンジンENGの回転動力を駆動車輪2側に伝達する動力伝達経路にワンウェイ・クラッチOWCを有するシステムの場合、ワンウェイ・クラッチOWCの下流側の回転速度が上流側の回転速度より大きくなると、ワンウェイ・クラッチOWCが動力伝達を遮断するため、駆動車輪2側からエンジンENG側には動力が伝達されない。従って、アクセルペダルをOFF(解放)するなどしてワンウェイ・クラッチOWCの下流側の回転速度が上流側の回転速度より大きくなった場合には、第1のクラッチCL1をOFFにすると共に第2のクラッチCL2をONにして、モータジェネレータMGにより駆動車輪2側の動力を回生し同時に駆動車輪2側に回生ブレーキを利かせる運転を選択することになる。
【0006】
また、その間は、ワンウェイ・クラッチOWCが接続状態とならない範囲で、エンジンENGをアイドリング状態に維持したり、あるいは、アイドリングストップ状態に維持したりすることが可能である。エンジンENGをアイドリング状態に維持しておけば、次にエンジン走行に移行する際に即座にエンジン回転数を要求回転数まで上昇させることができるので、レスポンスを良くすることができる。また、アイドリングストップ状態に設定した場合は、燃料消費をそれだけ抑制することができるようになる。なお、アイドリングストップ状態にした場合は、エンジン始動の際に第1のクラッチCL1をONにし第2のクラッチCL2をOFFにして、モータジェネレータMGによりエンジンENGをクランキングする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2005−502543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、アイドリング状態にしてエンジンENGを待機させる場合は、エンジン走行へ切り替える際にレスポンス良く切り替えを行うことができるが、アイドリングのための燃料消費が課題となる。一方で、アイドリングストップ状態にしてエンジンENGを待機させる場合は、アイドリング状態にして待機する場合に比べて燃料消費を抑制できるものの、第1のクラッチCL1をONにすると共に第2のクラッチCL2をOFFに切り替えてから、モータジェネレータMGによりエンジンENGを始動しトルク伝達可能回転数までエンジン回転数を上昇させる必要があるので、その間の時間が余計にかかることになり、レスポンス良く対応することができないという課題がある。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料消費の向上を図りつつ、内燃機関の再始動時のレスポンスの向上を図ることのできる自動車用駆動システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、請求項1の発明の自動車用駆動システム(例えば、後述の実施形態における自動車用駆動システム1)は、
燃料の供給を受けることで回転動力を発生する内燃機関(例えば、後述の実施形態におけるエンジンENG)と、
該内燃機関の発生する回転動力を変速して出力する変速機構(例えば、後述の実施形態におけるトランスミッションTM)と、
入力部材(例えば、後述の実施形態における入力部材122)と出力部材(例えば、後述の実施形態における出力部材121)とこれら入力部材および出力部材を互いにロック状態または非ロック状態にする係合部材(例えば、後述の実施形態におけるローラ123)とを有し、前記変速機構からの回転動力を受ける前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材と出力部材がロック状態になることで、前記入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達するワンウェイ・クラッチ(例えば、後述の実施形態におけるワンウェイ・クラッチOWC)と、
該ワンウェイ・クラッチの出力部材に連結され、該出力部材に伝達された回転動力を駆動車輪(例えば、後述の実施形態における駆動車輪2)に伝える被回転駆動部材(例えば、後述の実施形態における被回転駆動部材11)と、
前記内燃機関の出力軸をモータリングすることができるように接続された電動機(例えば、後述の実施形態における第1のモータジェネレータMG1)と、
前記被回転駆動部材に接続され、該被回転駆動部材に回転動力を伝達する電動機としての機能と該被回転駆動部材からの回転動力を受けて回生運転する発電機としての機能とを有する電動発電機(例えば、後述の実施形態における第2のモータジェネレータMG2)と、
前記電動発電機が回生運転を行っている際に前記内燃機関への燃料カットを実施しつつ前記電動機により前記内燃機関の出力軸をモータリングする制御手段(例えば、後述する実施形態における車両制御手段50)と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、
前記制御手段が、前記電動発電機が回生運転して得た電力を前記電動機の駆動電力として供給することを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成において、
前記制御手段が、前記電動発電機が回生運転を行っている際に、最初の所定時間は前記内燃機関のアイドリングを実行し、前記所定時間の経過後に前記内燃機関への燃料カットを実施しつつ前記電動機により前記内燃機関の出力軸をモータリングすることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの構成において、
前記制御手段が、前記モータリングを実行している状態で所定時間を経過した段階でモータリングを停止することを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの構成において、
レスポンス重視モードを検出する手段(例えば、後述する実施形態におけるスポーツモード検出手段55)を備え、
前記制御手段が、レスポンス重視モードが選択されている際に、前記モータリングを実行するのに優先してアイドリングを実行することを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかの構成において、
前記変速機構が無段変速機構(例えば、後述する実施形態における無限・無段変速機構BD)よりなり、
前記制御手段が、前記モータリングを実行しているときの前記変速機構の変速比を、前記ワンウェイ・クラッチの入力部材の回転速度が出力部材の回転速度を下回るように、前記被回転駆動部材側の回転速度に応じて変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明の自動車用駆動システムによれば、アクセルがOFF状態となった時に、ワンウェイ・クラッチより下流側に位置する電動発電機によって駆動車輪側からの動力の回生を行いながら、ワンウェイ・クラッチより上流側に位置する電動機の駆動力によって内燃機関の出力軸を回転(モータリング)させ、その間は燃料カットを実行する。この間はモータリング状態になっており内燃機関の出力軸が予備回転しているため、次に内燃機関の駆動力を利用する状態に切り替える際に、燃料供給を再開するだけで、レスポンス良く所定の要求回転数まで内燃機関の出力回転数を上昇させることができる。また、モータリング(電動機により内燃機関の出力軸を回転させる)時には、最少の燃料供給によるアイドリングを行う必要がないので、余分な燃料消費を抑制することができる。つまり、本駆動システムによれば、燃料消費の向上を図りつつ、内燃機関の再始動時のレスポンスの向上を図ることができる。また、減速中の状態から再びアクセルがONされて加速の要求がなされた時に、内燃機関が要求駆動力を生み出せる状態になるまでにある一定以上のタイムラグが発生すると想定される場合には、電動機の駆動力をそのまま内燃機関の出力軸に乗せ続けることでレスポンス遅れを補償することができ、また、電動発電機の駆動力を被回転駆動部材に乗せることでレスポンス遅れを補償することができる。
【0017】
請求項2の発明の自動車用駆動システムによれば、内燃機関のモータリングに必要な電動機の駆動電力を、電動発電機により得た回生エネルギーで賄うため、エネルギー効率が向上する。
【0018】
請求項3の発明の自動車用駆動システムによれば、燃料カットしながらモータリングする期間(この期間を「モータリング待機」という)の前にアイドリングの期間(この期間を「アイドリング待機」という)を入れたので、アイドリング待機中に再びアクセルがONされた(アクセルペダルが踏み込まれた)場合に、モータリング待機中にアクセルONされた場合よりも、レスポンス良く対応する(内燃機関の出力回転数を要求回転数まで上昇させる)ことができる。ここで、モータリングとは、燃料供給の有無に拘わらず、電動機の動力で内燃機関の出力軸を回転させることを指し、アイドリングとは燃料を供給して最小回転数で無負荷回転させることを指す。
【0019】
請求項4の発明の自動車用駆動システムによれば、モータリングを実行しても、予め決められた所定時間の経過後にモータリングを停止するため、エネルギー消費を抑制することができる。即ち、長い下り坂を走行しているときなどでは、アクセルペダルを再度踏み込むまでに長い時間がかかる場合がある。そのような場合にその長い時間の間ずっとモータリングを続けていると、電気エネルギーが無駄に消費されてしまうことになる。そこで、ある所定時間を経過したら、レスポンスの問題に優先してモータリングを停止する。そうすることで、エネルギーの無駄な消費を抑えることができる。
【0020】
請求項5の発明の自動車用駆動システムによれば、レスポンス重視モードが選択されているときには、モータリング待機に優先してアイドリング待機を実施するので、アイドリング待機中に再びアクセルがONされた際にレスポンス良く対応することができる。
【0021】
請求項6の発明の自動車用駆動システムによれば、モータリングによるショックが駆動車輪側に伝達するのを防ぐことができ、商品性能の向上に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態の自動車用駆動システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】同システムの系統図である。
【図3】同システムの無限・無段変速機構の具体的な構成を示す断面図である。
【図4】同変速機構の一部の構成を軸線方向から見た側断面図である。
【図5】同変速機構における変速比可変機構による変速原理の前半部分の説明図であり、(a)は偏心ディスク104の中心点である第1支点O3の回転中心である入力中心軸線O1に対する偏心量r1を「大」にして変速比iを「小」に設定した状態を示す図、(b)は偏心量r1を「中」にして変速比iを「中」に設定した状態を示す図、(c)は偏心量r1を「小」にして変速比iを「大」に設定した状態を示す図、(d)は偏心量r1を「ゼロ」にして変速比iを「無限大(∞)」に設定した状態を示す図である。
【図6】同変速機構における変速比可変機構による変速原理の後半部分の説明図であって、偏心ディスクの偏心量r1を変更して変速比iを変えた場合のワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2の変化を示す図であり、(a)は偏心量r1を「大」にし変速比iを「小」にすることで、入力部材122の揺動角度θ2が「大」になった状態を示す図、(b)は偏心量r1を「中」にし変速比iを「中」にすることで、入力部材122の揺動角度θ2が「中」になった状態を示す図、(c)は偏心量r1を「小」にし変速比iを「大」にすることで、入力部材122の揺動角度θ2が「小」になった状態を示す図である。
【図7】4節リンク機構として構成された前記無限・無段変速機構の駆動力伝達原理の説明図である。
【図8】同変速機構において、入力軸と共に等速回転する偏心ディスクの偏心量r1(変速比i)を「大」、「中」、「小」と変化させた場合の、入力軸の回転角度θとワンウェイ・クラッチの入力部材の角速度ω2の関係を示す図である。
【図9】同変速機構において、複数の連結部材によって入力側(入力軸や偏心ディスク)から出力側(ワンウェイ・クラッチの出力部材)へ動力が伝達される際の出力の取り出し原理を説明するための図である。
【図10】実施形態の自動車用駆動システムにおける主要動作を示すタイムチャートである。
【図11】図10のタイムチャートの動作を実現するための制御フローを示すフローチャートである。
【図12】本発明の別の実施形態のフローチャートである。
【図13】従来の自動車用駆動システムの一例を示すスケルトン図である。
【図14】図13の構成を簡略化して示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る自動車用駆動システムを図面に基づいて説明する。
図1は実施形態の自動車用駆動システムの概略構成を示すブロック図、図2は同システムの系統図、図3は同システムの無限・無段変速機構の具体的な構成を示す断面図、図4は同無限・無段変速機構の一部の構成を軸線方向から見た側断面図である。
【0024】
《全体構成》
図1および図2に示すように、この自動車用駆動システム1は、燃料の供給を受けることで回転動力を発生するエンジン(内燃機関)ENGと、エンジンENGの下流側に設けられ、エンジンENGの発生する回転動力を無段階に変速して出力するトランスミッション(無段変速機構)TMと、エンジンENGとトランスミッションTMの間にギヤ3、4を介して接続されて、エンジンENGの出力軸をモータリングすることが可能な第1のモータジェネレータ(電動機)MG1と、トランスミッションTMの出力部に設けられ、エンジンENG側から駆動車輪2側への動力のみ伝達するワンウェイ・クラッチOWCと、このワンウェイ・クラッチOWCを介して伝達された出力回転を受けて駆動車輪2に伝達する被回転駆動部材11と、この被回転駆動部材11にギヤの組み合わせ20(ギヤ15、16、17)を介して接続された第2のモータジェネレータ(電動発電機)MG2と、を備える。
【0025】
また、自動車用駆動システム1は、第1のモータジェネレータMG1および/または第2のモータジェネレータMG2との間でインバータINVを介して電力のやりとりが可能なバッテリBATTと、各種要素を制御することで走行パターンなどの各種制御を行う車両制御手段50と、車両制御手段50に制御に必要な情報を与える車両状態検出手段51などをさらに備えている。
【0026】
車両状態検出手段51には、エンジンENGの回転数NEを検出するENG回転数検出手段52、トランスミッションTMの変速比を検出するレシオ検出手段53、シフトレンジ切替装置SLにおいてスポーツモード(レスポンス重視モードに相当)が選択されているかどうかを検出するスポーツモード検出手段54、アクセルペダルAPの状態を検出するAP状態検出手段55、ブレーキペダルBPの状態を検出するBP状態検出手段56、駆動車輪2の車軸(足軸)の回転数を検出する足軸検出手段57、バッテリBATTの蓄電残量(SOC)を検出するSOC検出手段58などが含まれている。
【0027】
ワンウェイ・クラッチOWCは、図4に示すように、入力部材(クラッチアウタ)122と、出力部材(クラッチインナ)121と、これら入力部材122および出力部材121の間に配されて両部材122、121を互いにロック状態または非ロック状態にする複数のローラ(係合部材)123と、ロック状態を作る方向にローラ123を付勢する付勢部材126とを有する。そして、トランスミッションTMからの各回転動力を受ける入力部材122の正方向(矢印RD1方向)の回転速度が、出力部材121の正方向の回転速度を上回ったとき、入力部材122と出力部材121が互いにロック状態になることにより、入力部材122に入力された回転動力を出力部材121に伝達する。
【0028】
ワンウェイ・クラッチOWCの出力部材121は、ギヤ15、16を介して被回転駆動部材11に連結されている。被回転駆動部材11は、ディファレンシャル装置10のデフケースにより構成されており、ワンウェイ・クラッチOWCの出力部材121に伝達された回転動力は、ディファレンシャル装置10および左右のアクスルシャフト13L、13Rを介して、左右の駆動車輪2に伝達される。ディファレンシャル装置10のデフケース(被回転駆動部材11)には、図示しないデフピニオンやサイドギヤが取り付けられており、左右のサイドギヤに左右のアクスルシャフト13L、13Rが連結され、左右のアクスルシャフト13L、13Rは差動回転する。
【0029】
図1に示すように、第2のモータジェネレータMG2と被回転駆動部材11は、第2のモータジェネレータMG2のロータ軸に取り付けたギヤ17がワンウェイ・クラッチOWCの出力軸(出力部材121)に設けたギヤ15を介して被回転駆動部材11に設けたギヤ16と噛合することにより、動力伝達可能に接続されている。例えば、第2のモータジェネレータMG2がモータとして機能するときは、第2のモータジェネレータMG2から被回転駆動部材11に駆動力が伝達される。また、第2のモータジェネレータMG2を発電機として機能させるときは、被回転駆動部材11から第2のモータジェネレータMG2に動力が入力され、機械エネルギーが電気エネルギーに変換される。同時に、第2のモータジェネレータMG2から被回転駆動部材11に回生制動力が作用する。なお、第2のモータジェネレータMG2と被回転駆動部材11との間の動力伝達は、ギヤ15〜17からなる組み合わせの代わりに、遊星ギヤ機構によって行われてもよい。
【0030】
また、第1のモータジェネレータMG1のロータ軸は、ギヤ3、4を介してトランスミッションTMの入力軸101に接続されると共に、ギヤ3、4を介してエンジンENGの出力軸に接続されており、エンジンENGの出力軸およびトランスミッションTMの入力軸101との間で動力の相互伝達を行う。この場合も、第1のモータジェネレータMG1がモータとして機能するときは、第1のモータジェネレータMG1からトランスミッションTMの入力軸101やエンジンENGの出力軸に駆動力が伝達される。また、第1のモータジェネレータMG1が発電機として機能するときは、エンジンENGの出力軸から第1のモータジェネレータMG1に動力が伝達される。
【0031】
以上の要素を備えたこの駆動システム1では、エンジンENGおよび/または第1のモータジェネレータMG1の発生する回転動力が、トランスミッションTMを介してワンウェイ・クラッチOWCに入力され、ワンウェイ・クラッチOWCを介して被回転駆動部材11に入力されて、ディファレンシャル装置10から駆動車輪2に伝達される。あるいは、第2のモータジェネレータMG2の発生する回転動力が被回転駆動部材11に入力されて、ディファレンシャル装置10から駆動車輪2に伝達される。
【0032】
《トランスミッションの構成》
次に、この駆動システム1に用いられているトランスミッションTMについて説明する。
トランスミッションTMは無段変速機構により構成されている。この場合の無段変速機構は、IVT(Infinity Variable Transmission=クラッチを使用せずに変速比を無限大にして出力回転をゼロにできる方式の変速機構)と呼ばれるものの一種であり、変速比(レシオ=i)を無段階に変更できると共に、変速比の最大値を無限大(∞)に設定することのできる、無限・無段変速機構BDにより構成されている。
【0033】
この無限・無段変速機構BDは、図3および図4に構成を示すように、エンジンENGからの回転動力を受けることで入力中心軸線O1の周りを回転する入力軸101と、入力軸101と一体回転する複数の偏心ディスク104と、入力側と出力側を結ぶための偏心ディスク104と同数の連結部材130と、出力側に設けられたワンウェイ・クラッチ120とを備えている。
【0034】
複数の偏心ディスク104は、それぞれ第1支点O3を中心とした円形形状に形成されている。第1支点O3は、入力軸101の周方向に等間隔に設けられると共に、それぞれが、入力中心軸線O1に対する偏心量r1を変更可能で、且つ、該偏心量r1を保ちつつ、入力中心軸線O1の周りに入力軸101と共に回転するように設定されている。従って、複数の偏心ディスク104は、それぞれに偏心量r1を保った状態で、入力中心軸線O1の周りに入力軸101の回転に伴って偏心回転するように設けられている。
【0035】
偏心ディスク104は、図4に示すように、外周側円板105と、入力軸101に一体形成された内周側円板108とで構成されている。内周側円板108は、入力軸101の中心軸線である入力中心軸線O1に対して一定の偏心距離だけ中心を偏倚させた肉厚円板として形成されている。外周側円板105は、第1支点O3を中心にした肉厚円板として形成されており、その中心(第1支点O3)を外れた位置に中心を持つ第1円形孔106を有している。そして、この第1円形孔106の内周に回転可能に内周側円板108の外周が嵌っている。
【0036】
また、内周側円板108には、入力中心軸線O1を中心とすると共に周方向の一部が内周側円板108の外周に開口した第2円形孔109が設けられており、その第2円形孔109の内部にピニオン110が回転自在に収容されている。ピニオン110の歯は、第2円形孔109の外周の開口を通して、外周側円板105の第1円形孔106の内周に形成した内歯歯車107に噛み合っている。この場合、ピニオン110の歯数と内歯歯車107の歯数の比は1:2となっている。
【0037】
このピニオン110は、入力軸101の中心軸線である入力中心軸線O1と同軸に回転するように設けられている。即ち、ピニオン110の回転中心と入力軸101の中心軸線である入力中心軸線O1とが一致している。ピニオン110は、図3に示すように、直流モータおよび減速機構によって構成されるアクチュエータ180により、第2円形孔109の内部で回転させられる。通常時は、入力軸101の回転と同期させてピニオン110を回転させ、同期する回転数を基準として、ピニオン110に入力軸101の回転数を上回るか下回るかする回転数を与えることにより、ピニオン110を入力軸101に対して相対回転させる。例えば、ピニオン110およびアクチュエータ180の出力軸が互いに連結されるように配置し、アクチュエータ180の回転が入力軸101の回転に対して回転差を生じる場合には、その回転差に減速比をかけた分だけ入力軸101とピニオン110の相対角度が変化する減速機構(例えば遊星歯車)を用いることで実現できる。この際、アクチュエータ180と入力軸101の回転差がなく同期している場合には偏心量r1は変化しない。
【0038】
従って、ピニオン110を回すことにより、ピニオン110の歯が噛合している内歯歯車107つまり外周側円板105が内周側円板108に対して相対回転し、それにより、ピニオン110の中心(入力中心軸線O1)と外周側円板105の中心(第1支点O3)との間の距離(つまり偏心ディスク104の偏心量r1)が変化する。
【0039】
この場合、ピニオン110の回転によって、ピニオン110の中心(入力中心軸線O1)に外周側円板105の中心(第1支点O3)を一致させることができるように設定されており、両中心を一致させることにより、偏心ディスク104の偏心量r1を「ゼロ」に設定できる。
【0040】
また、ワンウェイ・クラッチ120は、入力中心軸線O1から離れた出力中心軸線O2の周りを回転する出力部材(クラッチインナ)121と、外部から回転方向の動力を受けることで出力中心軸線O2の周りを揺動するリング状の入力部材(クラッチアウタ)122と、これら入力部材122および出力部材121を互いにロック状態または非ロック状態にするために入力部材122と出力部材121の間に挿入された複数のローラ(係合部材)123と、ロック状態を与える方向にローラ123を付勢する付勢部材126とを有し、入力部材122の正方向(例えば、図4中の矢印RD1で示す方向)の回転速度が出力部材121の正方向の回転速度を上回ったとき、入力部材122に入力された回転動力を出力部材121に伝達し、それにより、入力部材122の揺動運動を出力部材121の回転運動に変換することができるようになっている。
【0041】
図3に示すように、ワンウェイ・クラッチ120の出力部材121は、軸方向に一体に連続した部材として構成されたものであるが、入力部材122は、軸方向に複数に分割されており、偏心ディスク104および連結部材130の数だけ、軸方向に各々独立して揺動できるように配列されている。そして、ローラ123は、入力部材122毎に、入力部材122と出力部材121との間に挿入されている。
【0042】
リング状の各入力部材122上の周方向の1箇所には張り出し部124が設けられており、その張り出し部124に、出力中心軸線O2から離間した第2支点O4が設けられている。そして、各入力部材122の第2支点O4上にピン125が配置され、このピン125によって、連結部材130の先端(他端部)132が入力部材122に回転自在に連結されている。
【0043】
連結部材130は、一端側にリング部131を有し、そのリング部131の円形開口133の内周が、ベアリング140を介して、偏心ディスク104の外周に回転自在に嵌合されている。従って、このように連結部材130の一端が偏心ディスク104の外周に回転自在に連結されると共に、連結部材130の他端が、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122上に設けられた第2支点O4に回動自在に連結されることにより、入力中心軸線O1、第1支点O3、出力中心軸線O2、第2支点O4の4つの節を回動点とする四節リンク機構が構成されており、入力軸101から偏心ディスク104に与えられる回転運動が、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122に対して該入力部材122の揺動運動として伝えられ、その入力部材122の揺動運動が出力部材121の回転運動に変換される。
【0044】
その際、ピニオン110、ピニオン110を収容する第2円形孔109を備えた内周側円板108、内周側円板108を回転可能に収容する第1円形孔106を備えた外周側円板105、アクチュエータ180などにより構成された変速比可変機構112の前記ピニオン110をアクチュエータ180で動かすことにより、偏心ディスク104の偏心量r1を変化させることができる。そして、偏心量r1を変更することで、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2を変更することができ、それにより、入力軸101の回転数に対する出力部材121の回転数の比(変速比:レシオi)を変えることができる。即ち、入力中心軸線O1に対する第1支点O3の偏心量r1を調節することで、偏心ディスク104からワンウェイ・クラッチ120の入力部材122に伝えられる揺動運動の揺動角度θ2を変更し、それにより、入力軸101に入力される回転動力が、偏心ディスク104および連結部材130を介してワンウェイ・クラッチ120の出力部材121に回転動力として伝達される際の変速比を変更することができる。
【0045】
本実施形態では、エンジンENGの出力軸が、無限・無段変速機構BDの入力軸101に一体に連結され、第1のモータジェネレータMG1のロータ軸が、無限・無段変速機構BDの入力軸101にギヤ3、4を介して連結されている。また、無限・無段変速機構BDの構成要素であるワンウェイ・クラッチ120が、トランスミッションTMと被回転駆動部材11との間に設けられた前記ワンウェイ・クラッチOWCを兼ねている。
【0046】
図5および図6は、無限・無段変速機構BDにおける変速比可変機構112による変速原理の説明図である。これら図5および図6に示すように、変速比可変機構112のピニオン110を回転させて、内周側円板108に対して外周側円板105を回転させることにより、偏心ディスク104の入力中心軸線O1(ピニオン110の回転中心)に対する偏心量r1を調節することができる。
【0047】
例えば、図5(a)、図6(a)に示すように、偏心ディスク104の偏心量r1を「大」にした場合は、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2を大きくすることができるので、小さな変速比iを実現することができる。また、図5(b)、図6(b)に示すように、偏心ディスク104の偏心量r1を「中」にした場合は、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2を「中」にすることができるので、中くらいの変速比iを実現することができる。また、図5(c)、図6(c)に示すように、偏心ディスク104の偏心量r1を「小」にした場合は、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2を小さくすることができるので、大きな変速比iを実現することができる。また、図5(d)に示すように、偏心ディスク104の偏心量r1を「ゼロ」にした場合は、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2を「ゼロ」にすることができるので、変速比iを「無限大(∞)」にすることができる。
【0048】
図7は4節リンク機構として構成された前記無限・無段変速機構BDの駆動力伝達原理の説明図、図8は同変速機構BDにおいて、入力軸101と共に等速回転する偏心ディスク104の偏心量r1(変速比i)を「大」、「中」、「小」と変化させた場合の、入力軸101の回転角度(θ)とワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の角速度ω2の関係を示す図、図9は同変速機構BDにおいて、複数の連結部材130によって入力側(入力軸101や偏心ディスク104)から出力側(ワンウェイ・クラッチ120の出力部材121)へ動力が伝達される際の出力の取り出し原理を説明するための図である。
【0049】
図7に示すように、ワンウェイ・クラッチ120(OWC)の入力部材122は、連結部材130を介して偏心ディスク104から与えられる動力により揺動運動する。偏心ディスク104を回転させる入力軸101が1回転すると、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122は1往復揺動する。図8に示すように、偏心ディスク104の偏心量r1の値に関係なく、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122の揺動周期は常に一定である。入力部材122の角速度ω2は、偏心ディスク104(入力軸101)の回転角速度ω1と偏心量r1によって決まる。
【0050】
入力軸101とワンウェイ・クラッチ120を繋ぐ複数の連結部材130の一端(リング部131)は、入力中心軸線O1の周りに周方向等間隔で設けられた偏心ディスク104に回転自在に連結されているので、各偏心ディスク104の回転運動によりワンウェイ・クラッチ120の入力部材122にもたらされる揺動運動は、図9に示すように、一定の位相で順番に起こることになる。
【0051】
その際、ワンウェイ・クラッチ120の入力部材122から出力部材121への動力(トルク)の伝達は、入力部材122の正方向(図4中矢印RD1方向)の回転速度が出力部材121の正方向の回転速度を超えた条件でのみ行われる。つまり、ワンウェイ・クラッチ120では、入力部材122の回転速度が出力部材121の回転速度より高くなったときに初めてローラ123を介しての噛み合い(ロック)が発生し、連結部材130により、入力部材122の動力が出力部材121に伝達され、駆動力が発生する。
【0052】
1つの連結部材130による駆動が終了した後は、入力部材122の回転速度が出力部材121の回転速度より低下すると共に、他の連結部材130の駆動力によってローラ123によるロックが解除されて、フリーな状態(空転状態)に戻る。これが、連結部材130の数だけ順番に行われることで、揺動運動が一方向の回転運動に変換される。そのため、出力部材121の回転速度を超えたタイミングの入力部材122の動力のみが出力部材121に順番に伝えられ、ほぼ平滑に均された回転動力が出力部材121に与えられることになる。
【0053】
また、この4節リンク機構式の無限・無段変速機構BDでは、偏心ディスク104の偏心量r1を変更することで、変速比(レシオ=エンジンENGの出力軸であるクランク軸の1回転でどれだけ被回転駆動部材11を回転させるか)を決めることができる。この場合、偏心量r1をゼロに設定することで、変速比iを無限大に設定することができ、エンジンENGの回転中にも拘わらず、入力部材122に伝達される揺動角度θ2をゼロにすることができる。
【0054】
《車両制御手段50の主な働き》
次に、この駆動システム1において車両制御手段50が実行する制御の内容について説明する。
車両制御手段50は、車両状態検出手段51からの入力情報などに基づいて、エンジンENG、第1のモータジェネレータMG1、第2のモータジェネレータMG2、トランスミッションTMを構成する無限・無段変速機構BDのアクチュエータ180などに制御信号を送り、これらの要素を制御することで様々な走行パターン制御などの制御を実行する。
【0055】
例えば、車両制御手段50は、エンジンENGの駆動力のみによるエンジン走行を制御するエンジン走行制御モード、第1のモータジェネレータMG1の駆動力または/および第2のモータジェネレータMG2の駆動力によるEV走行を制御するEV走行制御モード、エンジンENGの駆動力と第1のモータジェネレータMG1の駆動力または/および第2のモータジェネレータMG2の駆動力の両方を利用して走行するパラレル走行モード、第2のモータジェネレータMG2による回生運転制御などを選択して実行する機能を有している。また、車両制御手段50は、必要に応じてエンジンENGへの燃料供給系に指令を出して燃料カットを実行する機能も有している。
【0056】
以下、第1のモータジェネレータMG1と第2のモータジェネレータMG2の特徴的な使われ方の例として、回生運転時の制御の内容について説明する。図10は回生運転時の動作を含む制御の内容を示すタイムチャート、図11はそのタイムチャートの動作を実現するための制御フローを示すフローチャートである。
【0057】
図10のタイムチャートと図11のフローチャートに従って制御の内容を説明する。
まず、アクセルペダルAPがONの状態でエンジン走行しているときには、ステップS101の判断がNOとなってステップS111に進む。アクセルペダルAPがONの状態でエンジン走行しているときには、アイドリング回転数Nαよりもエンジン回転数NEが当然大きい状態であるから、ステップS111の判断がYESとなり、図11のルーチンを終了して(END)、エンジンENGの回転数制御や無限・無段変速機構BDのレシオ制御のステージに移行する。
【0058】
アクセルペダルAPがONの状態からOFFの状態(アクセルペダルAPを解放した状態)になったら(図10のタイムチャートのタイミングA)、ステップS101の判断がYESになり、ステップS102で充電要求があるかどうかを判断し、充電要求がある場合はステップS103で第2のモータジェネレータMG2による回生運転を実行する。つまり、アクセルペダルAPがONの状態からOFFの状態になると、エンジンENGの回転数が低下し、ワンウェイ・クラッチOWCの入力側の回転速度が出力側の回転速度より小さくなることにより、ワンウェイ・クラッチOWCが遮断状態になる。このとき、第2のモータジェネレータMG2は発電機として働かせることができるので、回生運転を実施することにより、駆動車輪2側の動力を電気エネルギーとして回生すると同時に、回生ブレーキを駆動車輪2に作用させることができる。この回生によって得られる電気エネルギーは、バッテリBATTに全部充電されるか、後述するように一部または全部が直接第1のモータジェネレータMGへの供給電力として使われる。
【0059】
ステップS103で回生運転を実行したら、そのまま回生運転を続行しながらステップS104に進む。充電要求がない場合は、ステップS102からステップS103をパスしてステップS104に進む。ステップS104では、アクセルペダルAPがOFFになってからの累積時間が第1の所定時間t1以上になったかどうかを判断する。所定時間t1が経過するまでは、ステップS105に進んでエンジンENGをアイドリング待機させる。つまり、最少の燃料供給量(タイムチャートのFUELを参照)によりアイドリング回転数Nα(安全運転下限NEで約500rpm)でエンジンENGを無負荷回転させる。
【0060】
このアイドリング待機の状態において、再びアクセルペダルAPが踏み込まれてONになると(図10のタイムチャートのタイミングB)、レスポンス良く(アクセルペダルAPをONにしてからほぼ応答遅れなく)エンジン回転数NEを要求回転数まで上昇させることができ、エンジンENGの駆動力を走行駆動力として利用することができる。
【0061】
このようにアクセルペダルAPがONになると、ステップS101の判断がNOとなり、ステップS111に進む。ステップS111では、エンジン回転数NEがアイドリング回転数Nα以上であることから、本ルーチンの制御を終了し、エンゲージ時(ワンウェイ・クラッチOWCの出力部材121や被回転駆動部材11にエンジン側の動力が伝達される状態にする時)の制御ステージ(エンジンの駆動力を駆動車輪側に伝達するためのエンジン回転数や無限・無段変速機のレシオ制御)に移行する。
【0062】
また、アイドリング状態を維持したまま、アクセルペダルAPがOFFになってからの累積時間が第1の所定時間t1以上になったら(図10のタイムチャートのタイミングC)、ステップS104の判断がYESになり、ステップS106に進む。このステップS106では、アクセルペダルAPがOFFになってからの累積時間が第2の所定時間t2(t2>t1)以上になったかどうかを判断する。
【0063】
第1の所定時間t1が経過してから第2の所定時間t2が経過するまでの期間(t1からt2までの期間)は、ステップS107〜ステップS109に順番に進んで、エンジンENGの出力軸を第1のモータジェネレータMG1の駆動力によって回転させる(これを「モータリング」といい、モータリングを行っている状態をモータリング待機という)。同時に、この期間はアイドリングが不要になるので、燃料カット(FUEL CUT)を行う。このモータリング時のエンジンENGの出力軸の回転数Nβは、自着火可能下限回転数(燃料供給を再開すればエンジンが回転スタートするスタータ回転数)かそれ以上(ただし、アイドリング回転数より低い回転数で約300rpm)に設定されている。
【0064】
このモータリング待機の状態のときに、再びアクセルペダルAPが踏み込まれてONになると(図10のタイムチャートのタイミングD)、燃料供給が再開されることにより、アイドリング時ほどではないものの、レスポンス良く(アクセルペダルAPをONにしてから僅かな応答遅れで)エンジン回転数NEが要求回転数まで上昇し、エンジンENGの駆動力を走行駆動力として利用することができる。このとき、第1のモータジェネレータMG1は、エンジン回転数NEがアイドリング回転数Nαに到達するまで駆動力をエンジンENGの出力軸に与え続け、アイドリング回転数に到達したら第1のモータジェネレータMG1はトルク供給を停止する。なお、第1のモータジェネレータMG1の駆動力を、エンジン回転数が要求回転数に到達するまで、エンジンENGの出力軸に与え続けるようにしてもよく、そうすることでレスポンス遅れを補償することができる。
【0065】
また、アクセルペダルAPがOFFになってからの累積時間が第2の所定時間t2以上になったら(図10のタイムチャートのタイミングE)、ステップS106の判断がYESになり、ステップS110に進んでエンジンENGの出力軸のモータリングを停止させる。つまり、長い下り坂を走行しているときなどのように長い時間にわたってアクセルペダルがOFFの状態のまま経過する場合は、モータリングを続行するのもエネルギーの無駄になるので、モータリングを停止する。
【0066】
この状態において、アクセルペダルAPが踏み込まれてONになると(図10のタイムチャートのタイミングF)、ステップS101の判断がNOとなりステップS111に進む。この段階では「エンジン回転数NE<アイドリング回転数Nα」であるので、ステップS111の判断がNOとなり、ステップS112にて第1のモータジェネレータMG1によりエンジンENGにスタータ回転を与える。NE≧Nβとなるまで、ステップS101→ステップS111→ステップS112→ステップS113と進むことにより、スタータ回転を与え続け、NE≧Nβとなった段階でステップS113の判断がYESになり、ステップS114に進んで燃料噴射を行う。それによりエンジンENGが始動する。
【0067】
ただしこの場合は、エンジンENGの出力軸が回転数ゼロの状態からの始動となるので、レスポンス遅れが若干生じることになる。そこで、エンジンENGの回転数がアイドリング回転数Nαに到達するまでの間、第2のモータジェネレータMG2の駆動力を被回転駆動部材11に乗せることで、エンジン始動時の走行力不足をアシストすることができる。こうすることにより、レスポンス遅れを補償することができる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態の駆動システムでは、第2のモータジェネレータMG2が回生運転を行っている際に、エンジンENGへの燃料カットを実施しつつ第1のモータジェネレータMG1によりエンジンENGの出力軸をモータリングする。つまり、アクセルペダルAPがOFF状態となった時に、ワンウェイ・クラッチOWCより下流側に位置する第2のモータジェネレータMG2によって駆動車輪2側からの動力の回生を行いながら、ワンウェイ・クラッチOWCより上流側に位置する第1のモータジェネレータMG1の動力によってエンジンENGの出力軸を予備回転(モータリング)させつつ、その間は燃料カットを実行する。そうすることで、次にエンジンENGの駆動力を利用する状態(エンジン走行状態)に切り替える際に、燃料供給を再開するだけで、レスポンス良く所定の要求回転数までエンジンENGの出力回転数を上昇させることができる。
【0069】
また、モータリング(第1のモータジェネレータMG1によりエンジンENGの出力軸を回転させる)時には、最少の燃料供給によるアイドリングを行う必要がないので、余分な燃料消費を抑制することができる。つまり、本駆動システムによれば、燃料消費の向上を図りつつ、エンジンENGの再始動時のレスポンスの向上を図ることができる。
【0070】
また、アクセルペダルAPをOFFにして減速している状態から再びアクセルペダルAPが踏まれて加速の要求がなされた時に、エンジンENGが要求駆動力を生み出せる状態になるまでにある一定以上のタイムラグが発生すると想定される場合には、第1のモータジェネレータMG1の駆動力をそのままエンジンENGの出力軸に乗せ続けることで、レスポンス遅れを補償することも可能である。
【0071】
また、モータリング待機の前段にアイドリング待機を優先的に入れるようしているので、即ち、第2のモータジェネレータMG2により回生運転を行っている際に、最初の所定時間t1(前段)はエンジンENGのアイドリングを実行し、所定時間t1の経過後に燃料カットを実施しつつ第1のモータジェネレータによりエンジンENGの出力軸をモータリングするようにしているので、アイドリング待機中に再びアクセルがONされた場合に、モータリング待機中にアクセルONされた場合よりも、レスポンス良く対応することができる。
【0072】
また、モータリングを実行している状態で所定時間(t2−t1)を経過した段階でモータリングを停止するようにしているので、電力エネルギーの無駄な消費を極力抑えることができる。即ち、長い下り坂を走行しているときなどでは、アクセルペダルAPを再度踏み込むまでに長い時間がかかる場合があり、そのような場合にその長い時間の間ずっとモータリングを続けていると、電力エネルギーが無駄に消費されてしまうことになるが、ある所定時間が経過したら、レスポンスの問題は無視して、モータリングを停止するようにしているので、電力エネルギーの無駄な消費を抑えることができる。
【0073】
また、モータリングを実行しているときのトランスミッションTMの変速比を、ワンウェイ・クラッチOWC(120)の入力部材122の回転速度が出力部材121の回転速度を下回るように、被回転駆動部材11側の回転速度に応じて変更するようにすることで、モータリングによるショックが駆動車輪2側に伝達するのを防ぐことができ、商品性能の向上に貢献することができる。
【0074】
また、第2のモータジェネレータMG2が回生運転して得た電力を第1のモータジェネレータMG1の駆動電力として直接供給するようにした場合には、エネルギー効率の向上を図ることができる。
【0075】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0076】
例えば、上記実施形態では、図10および図11に示すように、アイドリング待機するかどうかをアクセルペダルがOFFされてからの累積時間で決めるようにした場合を示したが、シフトレバーSLがスポーツモード(レスポンス優先モード)を選択しているときだけ、アイドリング待機を設けるようにしてもよい。即ち、スポーツモードはレスポンス重視モードであるから、このモードが選択されているときには、モータリングを実行するのに優先してアイドリングを実行するようにする。具体的には、図12のフローチャートのステップS104Bに示すように、このステップS104Bにおいてクイックレスポンスが要求されている(スポーツモードスイッチON)かどうかを判断し、YESの場合はステップS105に進んでアイドリング待機を実行するようにする。こうすることで、アイドリング待機中に再びアクセルがONされた際にレスポンス良く対応することができる。なお、図12のフローチャートの図11のフローチャートに対する違いは、ステップS104Bだけであり、その他のステップは全く同じである。
【0077】
また、上記実施形態では、トランスミッションTMが、偏心ディスク104や連結部材130、ワンウェイ・クラッチ120を使用した形式のもので構成されている場合を示したが、その他のCVTなどの無段変速機構を用いてもよい。その他の形式の無段変速機構を用いた場合は、ワンウェイ・クラッチOWCを無段変速機構の下流側に装備してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 自動車用駆動システム
2 駆動車輪
11 被回転駆動部材(デフケース)
50 車両制御手段
120 ワンウェイ・クラッチ
121 出力部材
122 入力部材
123 ローラ(係合部材)
ENG エンジン(内燃機関)
TM 無段変速機構
OWC ワンウェイ・クラッチ
MG1 第1のモータジェネレータ(電動機)
MG2 第2のモータジェネレータ(電動発電機)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料の供給を受けることで回転動力を発生する内燃機関と、
該内燃機関の発生する回転動力を変速して出力する変速機構と、
入力部材と出力部材とこれら入力部材および出力部材を互いにロック状態または非ロック状態にする係合部材とを有し、前記変速機構からの回転動力を受ける前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材と出力部材がロック状態になることで、前記入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達するワンウェイ・クラッチと、
該ワンウェイ・クラッチの出力部材に連結され、該出力部材に伝達された回転動力を駆動車輪に伝える被回転駆動部材と、
前記内燃機関の出力軸をモータリングすることができるように接続された電動機と、
前記被回転駆動部材に接続され、該被回転駆動部材に回転動力を伝達する電動機としての機能と該被回転駆動部材からの回転動力を受けて回生運転する発電機としての機能とを有する電動発電機と、
前記電動発電機が回生運転を行っている際に前記内燃機関への燃料カットを実施しつつ前記電動機により前記内燃機関の出力軸をモータリングする制御手段と、
を備えることを特徴とする自動車用駆動システム。
【請求項2】
前記制御手段が、前記電動発電機が回生運転して得た電力を前記電動機の駆動電力として供給することを特徴とする請求項1に記載の自動車用駆動システム。
【請求項3】
前記制御手段が、前記電動発電機が回生運転を行っている際に、最初の所定時間は前記内燃機関のアイドリングを実行し、前記所定時間の経過後に前記内燃機関への燃料カットを実施しつつ前記電動機により前記内燃機関の出力軸をモータリングすることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用駆動システム。
【請求項4】
前記制御手段が、前記モータリングを実行している状態で所定時間を経過した段階でモータリングを停止することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車用駆動システム。
【請求項5】
レスポンス重視モードを検出する手段を備え、
前記制御手段が、レスポンス重視モードが選択されている際に、前記モータリングを実行するのに優先してアイドリングを実行することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車用駆動システム。
【請求項6】
前記変速機構が無段変速機構よりなり、
前記制御手段が、前記モータリングを実行しているときの前記変速機構の変速比を、前記ワンウェイ・クラッチの入力部材の回転速度が出力部材の回転速度を下回るように、前記被回転駆動部材側の回転速度に応じて変更することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車用駆動システム。
【請求項1】
燃料の供給を受けることで回転動力を発生する内燃機関と、
該内燃機関の発生する回転動力を変速して出力する変速機構と、
入力部材と出力部材とこれら入力部材および出力部材を互いにロック状態または非ロック状態にする係合部材とを有し、前記変速機構からの回転動力を受ける前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材と出力部材がロック状態になることで、前記入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達するワンウェイ・クラッチと、
該ワンウェイ・クラッチの出力部材に連結され、該出力部材に伝達された回転動力を駆動車輪に伝える被回転駆動部材と、
前記内燃機関の出力軸をモータリングすることができるように接続された電動機と、
前記被回転駆動部材に接続され、該被回転駆動部材に回転動力を伝達する電動機としての機能と該被回転駆動部材からの回転動力を受けて回生運転する発電機としての機能とを有する電動発電機と、
前記電動発電機が回生運転を行っている際に前記内燃機関への燃料カットを実施しつつ前記電動機により前記内燃機関の出力軸をモータリングする制御手段と、
を備えることを特徴とする自動車用駆動システム。
【請求項2】
前記制御手段が、前記電動発電機が回生運転して得た電力を前記電動機の駆動電力として供給することを特徴とする請求項1に記載の自動車用駆動システム。
【請求項3】
前記制御手段が、前記電動発電機が回生運転を行っている際に、最初の所定時間は前記内燃機関のアイドリングを実行し、前記所定時間の経過後に前記内燃機関への燃料カットを実施しつつ前記電動機により前記内燃機関の出力軸をモータリングすることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用駆動システム。
【請求項4】
前記制御手段が、前記モータリングを実行している状態で所定時間を経過した段階でモータリングを停止することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車用駆動システム。
【請求項5】
レスポンス重視モードを検出する手段を備え、
前記制御手段が、レスポンス重視モードが選択されている際に、前記モータリングを実行するのに優先してアイドリングを実行することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車用駆動システム。
【請求項6】
前記変速機構が無段変速機構よりなり、
前記制御手段が、前記モータリングを実行しているときの前記変速機構の変速比を、前記ワンウェイ・クラッチの入力部材の回転速度が出力部材の回転速度を下回るように、前記被回転駆動部材側の回転速度に応じて変更することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車用駆動システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−49384(P2013−49384A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189283(P2011−189283)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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