説明

自動車車体の製造方法

【課題】スペースフレーム構造の車体を、モノコック構造の車体を組み立てる組立ラインに混流して組み立てることができる自動車車体の製造方法を提供する。
【解決手段】スペースフレーム構造の車体を組み立てるに際し、フロアパネル11を含むアンダーボディ10に閉断面状に一体的に形成されたサイドシル12を組み付けるステップと、車体上下方向に延びるピラー22とサイドフレームアウタ25とを含むサイドボディ20にスタッドボルトを立設するステップと、前記アンダーボディに前記サイドボディを組み付けるとともに、前記サイドシルに前記スタッドボルトを車幅方向外方側から組み付けるステップとを備え、前記スタッドボルトは、車幅方向内方側に向かって延びるように前記ピラーの下部に立設され、前記サイドフレームアウタは、前記サイドシルの下部まで延びるように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モノコック構造の車体を組み立てる組立ラインにおいて、モノコック構造の車体にスペースフレーム構造の車体を混流してスペースフレーム構造の車体を組み立てる自動車車体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、自動車の車体構造として、モノコック構造やスペースフレーム構造が一般に知られており、モノコック構造の車体は、独立したフレーム骨格を用いることなくパネルを組み付けることによりボディが形成されて製造されるのに対し、スペースフレーム構造の車体は、フレーム骨格を形成した後にパネルを組み付けることによりボディが形成されて製造されている。
【0003】
このようなスペースフレーム構造の車体に関するものとして、例えば特許文献1には、フレーム部材の交差結合部分に関するものではあるが、ルーフクロス部材とピラー部材とフロアクロス部材とを連結してキャビン部を左右方向断面で連続的に囲繞する第1骨格部材群と、ルーフフレーム部材と前方ピラー部材と後方ピラー部材とフロアフレーム部材とを連結してキャビン部を前後方向断面で連続的に囲繞する第2の骨格部材群とを相互に交差結合することにより、キャビン部を前後・左右方向に囲繞する構造を有する車両骨格構造が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−338419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、自動車の車体を組み立てる組立ラインにおいては、車種の多様化や組立コストの低減化の要請に応える一環として、モノコック構造の車体とスペースフレーム構造の車体とを1つの組立ラインにおいて混流して組み立てることが考えられている。
【0006】
ここで、図8は、モノコック構造の車体を組み立てる組立ラインを示す図であり、図8では、位置決め精度が要求される精度保証工程を二重枠により囲み、接合強度が要求される強度保証工程に斜線ハッチングを施している。図8に示すように、モノコック構造の車体を組み立てる際には、先ず、フロントフレームと、フロントフロアパネルと、リアフレームと、リアフロアパネルとがそれぞれサブアセンブリーとして組み立てられる。
【0007】
次に、サブアセンブリーとして組み立てられたフロントフレームとフロントフロアパネルとが位置決めされた状態で仮付けされフロントボディが組み立てられる一方、サブアセンブリーとして組み立てられたリアフレームとリアフロアパネルとが位置決めされた状態で仮付けされリアボディが組み立てられる。そして、仮付け状態にあるフロントボディとリアボディとが、位置決めされた状態で仮付けされアンダーボディが組み立てられる。
【0008】
アンダーボディが組み立てられた後には、仮付け状態にあるアンダーボディに対して増打ち溶接が施される。図8に示すモノコック構造の車体の組立ラインでは、2回の増打ち溶接工程が行われ、フロントボディとリアボディとが増打ち溶接されてアンダーボディの接合強度が確保される。
【0009】
そして、このようにして組み立てられたアンダーボディに、サブアセンブリーとして組み立てられたサイドボディとルーフとがそれぞれ位置決めされた状態で仮付けされ、ボディシェルが組み立てられる。仮付け状態にあるボディシェルに対して再び増打ち溶接が施される。図8に示すモノコック構造の車体の組立ラインでは、3回の増打ち溶接工程が行われ、アンダーボディにサイドボディサブアセンブリー及びルーフサブアセンブリーが増打ち溶接されてボディシェルの接合強度が確保される。このようにして、モノコック構造の車体を構成するボディシェルが組み立てられる。
【0010】
一方、図9は、スペースフレーム構造の車体を組み立てる組立ラインを示す図であり、図9においても、位置決め精度が要求される精度保証工程を二重枠により囲み、接合強度が要求される強度保証工程に斜線ハッチングを施している。図9に示すように、スペースフレーム構造の車体を組み立てる際には、先ず、フロントフレームとリアフレームがそれぞれ、サブアセンブリーとして組み立てられる。
【0011】
次に、サブアセンブリーとして組み立てられたフロントフレームとリアフレームとが位置決めされた状態で仮付けされ、仮付け状態にあるフロントフレームサブアセンブリーとリアフレームサブアセンブリーとに対して増打ち溶接が施され、フロントフレームサブアセンブリーとリアフレームサブアセンブリーとの接合強度が確保される。
【0012】
その後に、ダッシュパネルが位置決めされた状態で仮付けされ、仮付け状態にあるダッシュパネルに対して増打ち溶接が施され、ダッシュパネルの接合強度が確保される。フロントフロアパネルとリアフロアパネルについてもそれぞれ順に、仮付けされた後に増打ち溶接が施され、フロントフロアパネルとリアフロアパネルの接合強度が確保され、これにより、アンダーボディが組み立てられる。
【0013】
そして、このようにして組み立てられたアンダーボディに対して、サブアセンブリーとして組み立てられたサイドフレームインナと、ルーフフレームと、サイドフレームアウタと、ルーフパネルと、リアエンドパネルとがそれぞれ順に、位置決めされた状態で仮付けされ、その後に増打ち溶接が施されて接合強度が確保される。このようにして、スペースフレーム構造の車体を構成するボディシェルが組み立てられる。
【0014】
前述したように、モノコック構造の車体とスペースフレーム構造の車体とを1つの組立ラインにおいて混流して組み立てる場合、図8及び図9に示すように、モノコック構造の車体の組立ラインは、スペースフレーム構造の車体の組立ラインに比べて精度保証工程や強度保証工程が少ないので、モノコック構造の車体の組立ラインにおいてモノコック構造の車体にスペースフレーム構造の車体を混流して組み立てることが好ましい。
【0015】
しかしながら、モノコック構造の車体にスペースフレーム構造の車体を混流してスペースフレーム構造の車体を組み立てる場合には、モノコック構造の車体の組立ラインでは、アンダーボディにサブアセンブリーとして組み立てられたサイドボディを組み付けることとなるので、スペースフレーム構造の車体において閉断面状に一体的に形成されたサイドシルを如何に組み付けるかが問題となる。
【0016】
図10は、モノコック構造の車体においてサイドシルを形成する方法を説明するための説明図であり、モノコック構造の車体における車体側面の一部を断面図で示している。モノコック構造の車体において、車体側面の下部に車体前後方向に延び閉断面状に形成されるサイドシルを有する場合、図10に示すように、サイドシル100は、車幅方向内方へ膨出し断面ハット状に形成されたサイドシルインナ101と、車幅方向外方へ膨出し断面ハット状に形成されたサイドシルアウタ102とを備え、サイドシルインナ101とサイドシルアウタ102の上端部及び下端部がそれぞれフランジ結合により接合されて閉断面状に形成される。
【0017】
また、図10に示すモノコック構造の車体では、サイドシルインナ101の車幅方向内方側には、サイドシルインナ101にフロアパネル103が接合され、サイドシルアウタ102の車幅方向外方側には、車幅方向外方へ膨出し断面ハット状に形成されたサイドフレームアウタ104が、サイドシルインナ101とサイドシルアウタ102と共にフランジ結合により接合されている。
【0018】
このようにして構成されるサイドシル100を備えたモノコック構造の車体をモノコック構造の車体組立ラインにおいて製造する場合、フロアパネル103にサイドシルインナ101が取り付けられたアンダーボディ105と、サイドシルアウタ102とサイドフレームアウタ104とが取り付けられたサイドボディ106とを組み付ける際に、サイドシルインナ101とサイドシルアウタ102とがそれぞれ上端部及び下端部においてフランジ結合され、閉断面状のサイドシル100が形成される。
【0019】
これに対し、スペースフレーム構造の車体では、サイドシルは閉断面状に一体的に形成されるので、モノコック構造の車体のように、フランジ結合するためのフランジ部を設ける必要がなく、サイドシルを形成するためにフランジ結合する必要もないので、組立工程の簡略化や車体の軽量化を図ることができる。
【0020】
図11は、スペースフレーム構造の車体においてサイドシルを含む車体側面の一部を示す断面図である。スペースフレーム構造の車体では、図11に示すように、車体側面の下部において車体前後方向に延びるサイドシル110は、閉断面状に一体的に形成され、サイドシル110の車幅方向内方側にはフロアパネル111が取り付けられ、サイドシル110の車幅方向外方側には、車体上下方向に延び車幅方向外方へ膨出し断面ハット状に形成されたサイドフレームアウタ112が取り付けられる。なお、後述する図12に示すように、サイドシル110と車体上下方向に延びるピラーとが交差する部分では、サイドシル110とサイドフレームアウタ112との間にピラーが取り付けられる。
【0021】
このようなサイドシル110を備えたスペースフレーム構造の車体をモノコック構造の車体の組立ラインにおいて製造する場合、車体上下方向に延びるピラー及びサイドフレームアウタ112を含むサイドボディと、フロアパネル111を含むアンダーボディとの何れかにサイドシル110を組み付けることが必要となるが、サイドシル110をサイドボディに組み付けると、フロアパネル111を含むアンダーボディを搬送する際にフロアパネル111が変形する畏れがあるので、サイドシル110をアンダーボディに組み付けることが考えられる。
【0022】
しかしながら、サイドシル110をフロアパネル111に接合させてアンダーボディに組み付け、アンダーボディとサイドボディとを組み付ける場合、図11に示すサイドフレームアウタ112においては、サイドシル110の車幅方向外方側においてサイドシル110とサイドフレームアウタ112とを接合することが困難となる。
【0023】
また、図12は、スペースフレーム構造の車体においてサイドシルを含む車体側面の別の一部を示す断面図であり、図12では、サイドシルとピラーとが交差する部分について示している。図12に示すように、サイドシル110がフロアパネル(不図示)に接合され組み付けられたアンダーボディ115と、車体上下方向に延びるピラー113とサイドフレームアウタ112とを含むサイドボディ116とを組み付ける際に、サイドシル110とピラー113とを接触させ、サイドシル110とピラー113との接触部分の上端部及び下端部を溶接して溶接部117、118を形成することで、閉断面状に一体的に形成されたサイドシル110を有するスペースフレーム構造の車体をモノコック構造の車体の組立ラインにおいて組み立てることが可能であるが、かかる場合には、車体側面の見栄えを確保するために溶接部118を覆うようにサイドシルガーニッシュ119を取り付ける必要がある。
【0024】
したがって、車体側面の見栄えを確保するための部品を設けることなく車体側面の見栄えを確保し、閉断面状に一体的に形成されたサイドシルを有するスペースフレーム構造の車体をモノコック構造の車体の組立ラインにおいてモノコック構造の車体に混流して組み立てることが望まれる。
【0025】
そこで、この発明は、前記技術的課題に鑑みてなされたものであり、閉断面状に一体的に形成されたサイドシルを有するスペースフレーム構造の車体を、車体側面の見栄えを損なうことなく、モノコック構造の車体を組み立てる組立ラインに混流して組み立てることができる自動車車体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
このため、本願の請求項1に係る自動車車体の製造方法は、モノコック構造の車体にスペースフレーム構造の車体を混流して、スペースフレーム構造の車体を組み立てるようにした自動車車体の製造方法であって、スペースフレーム構造の車体において、フロアパネルを含むアンダーボディに閉断面状に一体的に形成されたサイドシルを組み付けるステップと、スペースフレーム構造の車体において、車体上下方向に延びるピラーとサイドフレームアウタとを含むサイドボディにスタッドボルトを立設するステップと、前記アンダーボディに前記サイドボディを組み付けるとともに、前記アンダーボディに組み付けられた前記サイドシルに、前記サイドボディに立設された前記スタッドボルトを車幅方向外方側から組み付けるステップとを備え、前記スタッドボルトは、前記アンダーボディに前記サイドボディが組み付けられた際に車幅方向内方側に向かって延びるように前記ピラーの下部に立設され、前記サイドフレームアウタは、前記アンダーボディに前記サイドボディが組み付けられた際に前記サイドシルの下部まで延びるように形成されていることを特徴としたものである。
【0027】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記スタッドボルトは、前記アンダーボディに前記サイドボディが組み付けられる際に、閉断面状に一体的に形成された前記サイドシルの内部を貫通して前記サイドシルに組み付けられることを特徴としたものである。
【0028】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記サイドシルに組み付けられた前記スタッドボルトと締結する締結部材が、前記サイドシルの車室内側に取り付けられることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0029】
本願の請求項1に係る自動車車体の製造方法によれば、アンダーボディにサイドシルを組み付けるステップと、サイドボディにスタッドボルトを立設するステップと、アンダーボディにサイドボディを組み付けるとともに、サイドシルにスタッドボルトを車幅方向外方側から組み付けるステップとを備え、スタッドボルトは、車幅方向内方側に向かって延びるようにピラーの下部に立設され、サイドフレームアウタは、サイドシルの下部まで延びるように形成されることにより、スペースフレーム構造の車体において、車体側面の見栄えを阻害することなく、サイドシルが組み付けられたアンダーボディにサイドボディを組み付けることができるので、モノコック構造の車体を組み立てる組立ラインにスペースフレーム構造の車体を混流して組み立てることができ、モノコック構造の車体とスペースフレーム構造の車体との混流生産を容易に行うことができる。
【0030】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、スタッドボルトは、閉断面状に一体的に形成されたサイドシルの内部を貫通してサイドシルに組み付けられることにより、スタッドボルトが立設されたピラーの下部とサイドシルとをより強固に接合することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0031】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、サイドシルに組み付けられたスタッドボルトと締結する締結部材が、サイドシルの車室内側に取り付けられることにより、砂や泥などによって締結部材が腐食されることを抑制し締結部材の耐食性を向上させることができるとともに、締結部材が車体外側から視認されることなく車体側面の見栄えを確保することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体を分解して示す分解斜視図である。図1に示すように、本発明の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体1は、車体底面部を構成するアンダーボディ10と、アンダーボディ10の左右両側の車体側壁部を構成するサイドボディ20と、車体屋根部を構成するルーフ30とを備えている。
【0033】
アンダーボディ10は、平板状に形成されるフロアパネル11を備え、アンダーボディ10にはフロアパネル11の車幅方向両側に車体前後方向に延び閉断面状に一体的に形成されたサイドシル12が取り付けられている。一方、サイドボディ20は、車体上下方向に延びるフロントピラー21、センターピラー22及びリアピラー23と車体前後方向に延びるサイドフレーム24とが接合されたサイドフレームインナと、前記サイドフレームインナの車幅方向外方側に設けられ車体上下方向に延びるサイドフレームアウタ25とが組み付けられて構成されている。フロントピラー21、センターピラー22及びリアピラー23は、それぞれの上端部がサイドフレーム24に接合され、車体前後方向に離間した状態で設けられている。
【0034】
本実施形態に係るスペースフレーム構造の車体1は、図8に示すモノコック構造の車体を組み立てる組立ラインにおいてモノコック構造の車体に混流して組み立てられるようにしたものであり、モノコック構造の車体の組立ラインにおいて組み立てる際には、閉断面状に一体的に形成されたサイドシル12がフロアパネル11を含むアンダーボディ10に組み付けられ、サイドシル12が組み付けられたアンダーボディ10に対して、車体上下方向に延びるフロントピラー21、センターピラー22、リアピラー23、サイドフレームアウタ25などが組み付けられたサイドボディ20とルーフ30とが組み付けられる。
【0035】
図2は、前記スペースフレーム構造の車体においてサイドシルを含む車体側面の一部を示す断面図であり、図2では、サイドシルとセンターピラーとが交差する部分について示している。図2に示すように、スペースフレーム構造の車体1では、フロアパネル11に閉断面状に一体的に形成されたサイドシル12が取り付けられている。このサイドシル12は、中空部12aを有し断面四角形状に形成され、車幅方向内方側の側面部12bに開口部12cが形成され、開口部12cと同軸状に車幅方向外方側の側面部12dに開口部12eが形成されている。なお、サイドシル12は、例えば鉄やアルミニウムなどの材料を用いて押出成形によって製造される。
【0036】
一方、センターピラー22には、その下部に車幅方向内方側に向かって延びるスタッドボルト27が立設され、スタッドボルト27は、円柱状に形成される円柱部27aと該円柱部27aよりも小径のネジ部27bとを備え、円柱部27aの一端が、例えばアークスタッド溶接などによってセンターピラー22に取り付けられている。このスタッドボルト27は、サイドシル12の開口部12e及び開口部12cを通じサイドシル12の内部を貫通してサイドシル12に組み付けられ、サイドシル12の車室内側には、スタッドボルト27のネジ部27bと締結する、例えばナットなどの締結部材28が取り付けられている。
【0037】
図2に示すように、サイドシル12の車幅方向内方側の側面部12bに形成された開口部12cは、ネジ部27bよりも大きく円柱部27aよりも小さく形成されており、これにより、締結部材28をスタッドボルト27のネジ部27bと締結する際に、スタッドボルト27の円柱部27aの車幅方向内方側の端面27cによってサイドシル12の車幅方向内方側の側面部12bが変形することを抑制することができるようになっている。
【0038】
また、スペースフレーム構造の車体1では、サイドボディ20のサイドフレームアウタ25が、センターピラー22及びサイドシル12を車幅方向外方側から覆うように、サイドシル12の下方まで延び、断面L字状に形成されている。
【0039】
なお、図2では、サイドシル12とセンターピラー22とが交差する部分について示しているが、スペースフレーム構造の車体1では、フロントピラー21及びリアピラー23についてもそれぞれの下部に車幅方向内方側に向かって延びるスタッドボルトが立設され、サイドシルに車幅方向外方側から組み付けることができるようになっている。
【0040】
このようにして構成されるスペースフレーム構造の車体1をモノコック構造の車体の組立ラインにおいて組み立てる際には、フロアパネル11を含むアンダーボディ10に閉断面状に一体的に形成されたサイドシル12が組み付けられ、車体上下方向に延びるピラー21、22、23とサイドフレームアウタ25とを含むサイドボディ20にスタッドボルト27が立設され、その後に、アンダーボディ10にサイドボディ20が組み付けられるとともに、アンダーボディ10に組み付けられたサイドシル12に、サイドボディ20に立設されたスタッドボルト27が車幅方向外方側から組み付けられる。また、アンダーボディ10にはルーフ30が組み付けられ、スペースフレーム構造の車体1が組み立てられる。
【0041】
このように、本実施形態に係る自動車車体の製造方法では、スペースフレーム構造の車体において、フロアパネル11を含むアンダーボディ10に閉断面状に一体的に形成されたサイドシル12を組み付けるステップと、車体上下方向に延びるピラー21、22、23とサイドフレームアウタ25とを含むサイドボディ20にスタッドボルト27を立設するステップと、アンダーボディ10にサイドボディ20を組み付けるとともにサイドシル12にスタッドボルト27を車幅方向外方側から組み付けるステップとを備え、スタッドボルト27は、アンダーボディ10にサイドボディ20が組み付けられた際に車幅方向内方側に向かって延びるようにピラー22の下部に立設され、サイドフレームアウタ25は、アンダーボディ10にサイドボディ20が組み付けられた際にサイドシル12の下部まで延びるように形成される。これにより、スペースフレーム構造の車体1において、車体側面の見栄えを阻害することなく、サイドシル12が組み付けられたアンダーボディ10にサイドボディ20を組み付けることができるので、モノコック構造の車体を組み立てる組立ラインにスペースフレーム構造の車体を混流して組み立てることができ、モノコック構造の車体とスペースフレーム構造の車体との混流生産を容易に行うことができる。
【0042】
また、スタッドボルト27は、閉断面状に一体的に形成されたサイドシル12の内部を貫通してサイドシル12に組み付けられることにより、スタッドボルトが立設されたピラーの下部とサイドシルとをより強固に接合することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0043】
更に、サイドシル12に組み付けられたスタッドボルト27と締結する締結部材28が、サイドシル12の車室内側に取り付けられることにより、砂や泥などによって締結部材が腐食されることを抑制し締結部材の耐食性を向上させることができるとともに、締結部材が車体外側から視認されることなく車体側面の見栄えを確保することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0044】
図3は、本発明の第2の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体においてサイドシルを含む車体側面の一部を示す断面図である。第2の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体は、第1の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体1と、サイドシルとピラーとの取付構造のみが異なるものであるので、同様の構成を備え同様の作用をなすものについては同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
図3に示すように、第2の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体では、閉断面状に一体的に形成されるサイドシル40は、中空部40aを有し断面四角形状にものの、車幅方向外方側の側面部40bにサイドシル40の上方側に延びる上側フランジ部40cとサイドシル40の下方側に延びる下側フランジ部40dが設けられ、上側フランジ部40cには開口部40eが形成され、下側フランジ部40dには開口部40fが形成されている。
【0046】
一方、センターピラー42は、その下部に車幅方向内方側に向かって延びるスタッドボルト43、44が立設され、スタッドボルト43、44はそれぞれサイドシル40の開口部40e、40fを通じてフランジ部40c、40dに組み付けられ、サイドシル40のフランジ部40c、40dの車室内側には、スタッドボルト43、44と締結する締結部材45、46が取り付けられている。
【0047】
第2の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体においても、フロアパネル11を含むアンダーボディ10に閉断面状に一体的に形成されたサイドシル40を組み付け、車体上下方向に延びるピラー42とサイドフレームアウタ25とを含むサイドボディ20にスタッドボルト43、44を立設し、その後に、アンダーボディ10にサイドボディ20を組み付けるとともに、アンダーボディ10に組み付けられたサイドシル40に、サイドボディ20に立設されたスタッドボルト43、44を車幅方向外方側から組み付けることで、モノコック構造の車体を組み立てる組立ラインに混流して組み立てることができる。また、かかる場合には、スタッドボルト43、44を小さくすることができ、車体の軽量化を図ることができる。
【0048】
第1及び第2の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体では、閉断面状に一体的に形成されたサイドシルが四角筒状に形成されているが、サイドシルの内部に車幅方向に延びるリブを備えたサイドシルを用いる場合においても、ピラーの下部に車幅方向内方側に延びるスタッドボルトを立設し、サイドシルとスタッドボルトと組み付けるようにすることで、スペースフレーム構造の車体をモノコック構造の車体に混流して組み立てることが可能である。
【0049】
図4は、本発明の第3の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体においてサイドシルを含む車体側面の一部を示す断面図である。第3の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体は、第1の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体1と、サイドシルの断面構造及びサイドシルとピラーとの取付構造のみが異なるものであるので、同様の構成を備え同様の作用をなすものについては同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
図4に示すように、第3の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体では、閉断面状に一体的に形成されるサイドシル50は、車幅方向に延びるリブ50aを有し断面略日の字状に形成され、車幅方向内方側の側面部50bに開口部50c、50dが形成され、車幅方向外方側の側面部50eに開口部50f、50gが形成されている。
【0051】
一方、センターピラー52には、その下部に車幅方向内方側に向かって延びるスタッドボルト53、54が立設され、スタッドボルト53、54はそれぞれ、円柱状に形成される円柱部53a、54aと該円柱部53a、54aよりも小径のネジ部53b、54bとを備え、円柱部53a、54aの一端がセンターピラー52の下部に設けられたスタッドボルト挿入用穴部52a、52bに挿入されて取り付けられている。スタッドボルト53がサイドシル50の開口部50c、50fを通じサイドシル50の内部を貫通してサイドシル50に組み付けられ、スタッドボルト54がサイドシル50の開口部50d、50gを通じサイドシル50の内部を貫通してサイドシル50に組み付けられ、サイドシル50の車室内側には、スタッドボルト53、54のネジ部53b、54bと締結する締結部材55、56が取り付けられている。
【0052】
第3の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体においても、フロアパネル11を含むアンダーボディ10に閉断面状に一体的に形成されたサイドシル50を組み付け、車体上下方向に延びるピラー52とサイドフレームアウタ25とを含むサイドボディ20にスタッドボルト53、54を立設し、その後に、アンダーボディ10にサイドボディ20を組み付けるとともに、アンダーボディ10に組み付けられたサイドシル50に、サイドボディ20に立設されたスタッドボルト53、54を車幅方向外方側から組み付けることで、モノコック構造の車体を組み立てる組立ラインに混流して組み立てることができる。
【0053】
図5は、本発明の第4の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体においてサイドシルを含む車体側面の一部を示す断面図である。第4の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体は、第3の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体と、サイドシルの断面構造のみが異なるものであるので、同様の構成を備え同様の作用をなすものについては同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
図5に示すように、第4の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体では、閉断面状に一体的に形成されるサイドシル60は、第3の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体におけるサイドシル50と同様にサイドシル60の内部にリブが形成されるものの、サイドシル60にセンターピラー52に立設されたスタッドボルト53、54を組み付ける際にスタッドボルト53、54をガイドするようにリブ50h、50iが形成されている。リブ50h、50iは、スタッドボルト53、54の円柱部53a、54aの直径よりも大きい直径を有し、その車幅方向外方側にテーパ面50j、50kに形成され、サイドシル60にスタッドボルト53、54を組み付ける際にスタッドボルト53、54をガイドすることができるようになっている。
【0055】
第4の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体においても、フロアパネル11を含むアンダーボディ10に閉断面状に一体的に形成されたサイドシル60を組み付け、車体上下方向に延びるピラー52とサイドフレームアウタ25とを含むサイドボディ20にスタッドボルト53、54を立設し、その後に、アンダーボディ10にサイドボディ20を組み付けるとともに、アンダーボディ10に組み付けられたサイドシル60に、サイドボディ20に立設されたスタッドボルト53、54を車幅方向外方側から組み付けることで、モノコック構造の車体を組み立てる組立ラインに混流して組み立てることができる。また、かかる場合には、リブ50h、50iによってサイドシル60にスタッドボルト53、54を組み付ける際にスタッドボルト53、54をガイドすることができ、サイドシル60にスタッドボルト53、54をより容易に組み付けることができる。
【0056】
図6は、本発明の第5の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体においてサイドシルを含む車体側面の一部を示す断面図である。第5の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体は、第3の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体と、サイドシルとピラーとの取付構造のみが異なるものであるので、同様の構成を備え同様の作用をなすものについては同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
図6に示すように、第5の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体では、閉断面状に一体的に形成されるサイドシル70は、車幅方向に延びるリブ70aを有し断面略日の字状に形成されるものの、車幅方向外方側の側面部70bにサイドシル70の上方側に延びる上側フランジ部70cとサイドシル70の下方側に延びる下側フランジ部70dが設けられ、上側フランジ部70cには開口部70eが形成され、下側フランジ部70dには開口部70fが形成されている。
【0058】
一方、センターピラー72は、その下部に車幅方向内方側に向かって延びるスタッドボルト73、74が立設され、スタッドボルト73、74はそれぞれサイドシル70の開口部70e、70fを通じてフランジ部70c、70dに組み付けられ、サイドシル70のフランジ部70c、70dの車室内側には、スタッドボルト73、74と締結するための締結部材75、76が取り付けられている。
【0059】
第5の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体においても、フロアパネル11を含むアンダーボディ10に閉断面状に一体的に形成されたサイドシル70を組み付け、車体上下方向に延びるピラー72とサイドフレームアウタ25とを含むサイドボディ20にスタッドボルト73、74を立設し、その後に、アンダーボディ10にサイドボディ20を組み付けるとともに、アンダーボディ10に組み付けられたサイドシル70に、サイドボディ20に立設されたスタッドボルト73、74を車幅方向外方側から組み付けることで、モノコック構造の車体を組み立てる組立ラインに混流して組み立てることができる。
【0060】
図7は、本発明の第6の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体においてサイドシルを含む車体側面の一部を示す断面図である。第6の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体は、第5の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体と、サイドシルとピラーとの取付構造のみが異なるものであるので、同様の構成を備え同様の作用をなすものについては同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
図7に示すように、第6の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体では、閉断面状に一体的に形成されるサイドシル80は、車幅方向に延びるリブ80aを有し断面略日の字状に形成され、車幅方向外方側の側面部80bにサイドシル80の上方側に延びる上側フランジ部80cとサイドシル80の下方側に延びる下側フランジ部80dが設けられ、上側フランジ部80cには開口部80eが形成されるものの、下側フランジ部80dには開口部が形成されていない。
【0062】
一方、センターピラー82は、その下部に車幅方向内方側に向かって延びるスタッドボルト83が立設されているものの、センターピラー82の下端部が車幅方向内方側に折り曲げられ鉤状に形成された係止部82aを備えている。センターピラー82は、係止部82aがサイドシル80のフランジ部80dに係止させられ、スタッドボルト83がサイドシル80の開口部80eを通じてフランジ部80cに組み付けられている。また、サイドシル80のフランジ部80cの車室内側には、スタッドボルト83と締結する締結部材85が取り付けられている。
【0063】
第6の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体においても、フロアパネル11を含むアンダーボディ10に閉断面状に一体的に形成されたサイドシル80を組み付け、車体上下方向に延びるピラー82とサイドフレームアウタ25とを含むサイドボディ20にスタッドボルト83を立設し、その後に、アンダーボディ10にサイドボディ20を組み付けるとともに、アンダーボディ10に組み付けられたサイドシル80に、係止部82aをフランジ部80dに係止させた状態で、サイドボディ20に立設されたスタッドボルト83を車幅方向外方側から組み付けることで、モノコック構造の車体を組み立てる組立ラインに混流して組み立てることができる。
【0064】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、モノコック構造の車体を組み立てる組立ラインにおいて、モノコック構造の車体にスペースフレーム構造の車体を混流してスペースフレーム構造の車体を組み立てる自動車車体の製造方法に関するものであり、閉断面状に一体的に形成されるサイドシルを有するスペースフレーム構造の車体の製造に好適に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体を分解して示す分解斜視図である。
【図2】前記スペースフレーム構造の車体においてサイドシルを含む車体側面の一部を示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体においてサイドシルを含む車体側面の一部を示す断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体においてサイドシルを含む車体側面の一部を示す断面図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体においてサイドシルを含む車体側面の一部を示す断面図である。
【図6】本発明の第5の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体においてサイドシルを含む車体側面の一部を示す断面図である。
【図7】本発明の第6の実施形態に係るスペースフレーム構造の車体においてサイドシルを含む車体側面の一部を示す断面図である。
【図8】モノコック構造の車体を組み立てる組立ラインを示す図である。
【図9】スペースフレーム構造の車体を組み立てる組立ラインを示す図である。
【図10】モノコック構造の車体においてサイドシルを形成する方法を説明するための説明図である。
【図11】スペースフレーム構造の車体においてサイドシルを含む車体側面の一部を示す断面図である。
【図12】スペースフレーム構造の車体においてサイドシルを含む車体側面の別の一部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 車体
10 アンダーボディ
11 フロアパネル
12、40、50、60、70、80 サイドシル
20 サイドボディ
21、22、23、42、52、72、82 ピラー
25 サイドフレームアウタ
27、43、44、53、54、73、74、83 スタッドボルト
28、45、46、75、76 83 締結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノコック構造の車体にスペースフレーム構造の車体を混流して、スペースフレーム構造の車体を組み立てるようにした自動車車体の製造方法であって、
スペースフレーム構造の車体において、フロアパネルを含むアンダーボディに閉断面状に一体的に形成されたサイドシルを組み付けるステップと、
スペースフレーム構造の車体において、車体上下方向に延びるピラーとサイドフレームアウタとを含むサイドボディにスタッドボルトを立設するステップと、
前記アンダーボディに前記サイドボディを組み付けるとともに、前記アンダーボディに組み付けられた前記サイドシルに、前記サイドボディに立設された前記スタッドボルトを車幅方向外方側から組み付けるステップと、
を備え、
前記スタッドボルトは、前記アンダーボディに前記サイドボディが組み付けられた際に車幅方向内方側に向かって延びるように前記ピラーの下部に立設され、
前記サイドフレームアウタは、前記アンダーボディに前記サイドボディが組み付けられた際に前記サイドシルの下部まで延びるように形成されている、
ことを特徴とする自動車車体の製造方法。
【請求項2】
前記スタッドボルトは、前記アンダーボディに前記サイドボディが組み付けられる際に、閉断面状に一体的に形成された前記サイドシルの内部を貫通して前記サイドシルに組み付けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動車車体の製造方法。
【請求項3】
前記サイドシルに組み付けられた前記スタッドボルトと締結する締結部材が、前記サイドシルの車室内側に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車車体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−83286(P2010−83286A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253494(P2008−253494)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】