説明

自動車運転支援装置および自動車

【課題】障害者による自動車の運転を可能とし、さらに、障害者の障害の部位や障害の度合いに適応する。
【解決手段】運転者の操作を受ける操作レバーと20、操作レバー20の操作に応じて自動車のアクセルペダル32およびブレーキペダル31を動作させる機械式リンク機構30と、操作レバー20が第1の方向または第2の方向に操作されたときに、機械式リンク機構30に駆動力を与えて、自動車のアクセルペダルまたはブレーキペダルの位置を変化させる第1のアクチュエータと、自動車のステアリングホイール1と機械的に連動する回転機構と、操作レバー20が第3の方向または第4の方向に操作されたときに、回転機構に駆動力を与えて、自動車のステアリングホイール1の軸を回転駆動する第2のアクチュエータと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の運転を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の運転を支援する自動車運転支援装置が提案されている。例えば、特許文献1には、油圧シリンダーなどを用いた運転支援システムが開示されている。この運転支援システムでは、ブレーキ、アクセルのそれぞれのペダルについて、油圧アクチュエータを配置している。また、特許文献2には、電動モータを使用した運転支援システムが開示されている。この運転支援システムは、ペダルおよびブレーキ駆動用に1つの電動モータを備えると共に、舵取りハンドルの回転駆動用に1つの電動モータを備えている。そして、各電動モータをペダル付近、ハンドルの付け根付近に設置し、1本のスティックで2つの電動モータの動きを操作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4722416号明細書
【特許文献2】米国特許第5086870号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、ブレーキ、アクセルのそれぞれのペダルについて、油圧アクチュエータを配置しているため、装置全体の重量や大きさが増大してしまう。また、制御に異常をきたした場合などには、アクセルとブレーキのペダルを両方同時に押す操作が発生する恐れがあり、安全性を向上する余地が残されている。さらに,ハンドルを駆動するためには、油圧のパワーステアリングを強化し、ジョイスティックの操作により制御できるように改造する必要がある。このため、購入時の自動車の性能・機能を変更しなければならない。このような改造作業を行なうことによって、自動車メーカのメーカ保障が失効する場合が多い。
【0005】
また、特許文献2記載の技術では、ステアリング軸にモータの軸を直接結合する構造を採るため、通常のハンドルを使用した運転においては、そのハンドル操作が重くなってしまう。また、近年におけるエアバック、操作スイッチ類を備えたハンドルに対応することが容易ではなく、その適用車種は限定されてしまう。
【0006】
また、特許文献2記載のペダル駆動システムでは、アクセルおよびブレーキの2つのペダルを動作させる際に、電動モータの回転方向を変更し、動力伝達経路を変化させることによって、1つの電動モータで2つのペダルを駆動している。しかしながら、ペダルを足で操作する運転を阻害する場所に装置を設置する必要があり、通常の運転が困難になってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、一般の自動車操縦機器を備えた自動車としての機能を保持しつつ、また、健常者による一般の自動車操縦機器を用いた運転環境を保持しつつ、障害者による自動車の運転を可能とし、さらに、障害者の障害の部位や障害の度合いに適応することができる自動車運転支援装置および自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の自動車運転支援装置は、自動車の運転を支援する自動車運転支援装置であって、運転者の操作を受ける操作器と、前記操作器の操作に応じて前記自動車のアクセルペダルおよびブレーキペダルを動作させる機械式リンク機構と、前記操作器が第1の方向または第2の方向に操作されたときに、前記機械式リンク機構に駆動力を与えて、前記操作器の第1の方向または第2の方向への操作量に応じて前記自動車のアクセルペダルまたはブレーキペダルの位置を変化させる第1のアクチュエータと、前記機械式リンク機構および前記第1のアクチュエータとの間に設けられ、駆動力を前記第1のアクチュエータから前記機械式リンク機構の方向にのみ伝達する不可逆機構と、前記不可逆機構から伝達される駆動力を前記機械式リンク機構に伝達しまたは切断する切り替え機構と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この構成により、一般の自動車について後付けで自動車運転支援装置として機能させることが可能となる。また、一般的なペダル機構や舵取りハンドルなどの自動車操縦機器を備えた自動車としての機能を失ったり、制限したり、または性能を変更することなく、さらに、健常者による一般の自動車操縦機器を用いた運転環境を損なうことなく、障害者による運転が可能となる。さらに、障害者の障害の部位や障害の度合いに適応することが可能となる。また、機械式リンク機構および第1のアクチュエータとの間に設けられ、駆動力を第1のアクチュエータから前記機械式リンク機構の方向にのみ伝達する不可逆機構と、不可逆機構から伝達される駆動力を機械式リンク機構に伝達しまたは切断する切り替え機構を備えるので、第1のアクチュエータ自身、第1のアクチュエータの制御装置、または、第1のアクチュエータのエネルギー源である自動車のバッテリーシステムや油圧、空気圧システムその他の箇所において、運転者の意図に反した第1のアクチュエータ動作が発生したときに、第1のアクチュエータと自動車操縦機器あるいは不可逆機構との動力伝達を切り離すことができ、車両の安全を確保することが可能となる。また、この構成により、小さなアクチュエータで駆動することができるようになるため、運転席に装置を設置することが可能となり、従来の運転方法による操縦との両立を実現することができる。
【0010】
(2)また、本発明の自動車運転支援装置は、自動車の運転を支援する自動車運転支援装置であって、運転者の操作を受ける操作器と、前記自動車のステアリングホイールと機械的に連動する回転機構と、前記操作器が第1の方向および第2の方向とは異なる第3の方向または第4の方向に操作されたときに、前記回転機構に駆動力を与えて、前記操作器の第3の方向または第4の方向への操作量に応じて前記自動車のステアリングホイールの軸を回転駆動する第2のアクチュエータと、前記回転機構および前記第2のアクチュエータとの間に設けられ、駆動力を前記第2のアクチュエータから前記回転機構の方向にのみ伝達する不可逆機構と、前記不可逆機構から伝達される駆動力を前記回転機構に伝達しまたは切断する切り替え機構と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この構成により、一般の自動車について後付けで自動車運転支援装置として機能させることが可能となる。また、一般的なペダル機構や舵取りハンドルなどの自動車操縦機器を備えた自動車としての機能を失ったり、制限したり、または性能を変更することなく、さらに、健常者による一般の自動車操縦機器を用いた運転環境を損なうことなく、障害者による運転が可能となる。さらに、障害者の障害の部位や障害の度合いに適応することが可能となる。また、回転機構および第2のアクチュエータとの間に設けられ、駆動力を第2のアクチュエータから回転機構の方向にのみ伝達する不可逆機構と、不可逆機構から伝達される駆動力を回転機構に伝達しまたは切断する切り替え機構を備えるので、第2のアクチュエータ自身、第2のアクチュエータの制御装置、または、第2のアクチュエータのエネルギー源である自動車のバッテリーシステムや油圧、空気圧システムその他の箇所において、運転者の意図に反した第2のアクチュエータ動作が発生したときに、第2のアクチュエータと自動車操縦機器あるいは不可逆機構との動力伝達を切り離すことができ、車両の安全を確保することが可能となる。また、この構成により、小さなアクチュエータで駆動することができるようになるため、運転席に装置を設置することが可能となり、従来の運転方法による操縦との両立を実現することができる。
【0012】
(3)また、本発明の自動車運転支援装置において、前記機械式リンク機構は、前記操作レバーが第1の方向に操作された場合は、前記自動車のブレーキが動作する方向に前記ブレーキペダルに駆動力を伝達すると共に、前記アクセルペダルへの駆動力の伝達を切断する一方、前記操作レバーが第2の方向に操作された場合は、前記自動車のアクセルが動作する方向に前記アクセルペダルに駆動力を伝達すると共に、前記自動車のブレーキが動作しない方向に前記ブレーキペダルに駆動力を伝達することを特徴とする。
【0013】
この構成により、運転者が指令を与えるための操作レバーを、運転席の各々の操作を行なう部位に適した位置、ストローク、力加減などに応じて設置・調整をすることができるので、運転者に残存して独立に動作できる身体機能に適切に割り当てることが可能となり、運転操作を簡単化することが可能となる。また、システム構成を簡略化させることができるため、装置全体の重量や大きさが増大することを回避することが可能となる。
【0014】
(4)また、本発明の自動車運転支援装置において、前記回転機構は、前記自動車のステアリングホイールと軸を共有する第1のスプロケットと、前記第2のアクチュエータで直接駆動される第2のスプロケットと、前記第1のスプロケットおよび第2のスプロケットを機械的に連結するチェーンと、から構成されることを特徴とする。
【0015】
この構成により、運転者が指令を与えるための操作レバーを、運転席の各々の操作を行なう部位に適した位置、ストローク、力加減などに応じて設置・調整をすることができるので、運転者に残存して独立に動作できる身体機能に適切に割り当てることが可能となり、運転操作を簡単化することが可能となる。また、システム構成を簡略化させることができるため、装置全体の重量や大きさが増大することを回避することが可能となる。
【0016】
(5)また、本発明の自動車運転支援装置は、自動車の運転を支援する自動車運転支援装置であって、運転者の操作を受ける第1の操作器と、前記第1の操作器とは独立して設けられた第2の操作器と、前記第1の操作器の操作に応じて前記自動車のアクセルペダルおよびブレーキペダルを動作させる機械式リンク機構と、前記第1の操作器が第1の方向または第2の方向に操作されたときに、前記機械式リンク機構に駆動力を与えて、前記第1の操作器の第1の方向または第2の方向への操作量に応じて前記自動車のアクセルペダルまたはブレーキペダルの位置を変化させる第1のアクチュエータと、前記自動車のステアリングホイールと機械的に連動する回転機構と、前記第2の操作器が第1の方向および第2の方向とは異なる第3の方向または第4の方向に操作されたときに、前記回転機構に駆動力を与えて、前記第2の操作器の第3の方向または第4の方向への操作量に応じて前記自動車のステアリングホイールの軸を回転駆動する第2のアクチュエータと、前記機械式リンク機構および前記第1のアクチュエータとの間に設けられ、駆動力を前記第1のアクチュエータから前記機械式リンク機構の方向にのみ伝達する第1の不可逆機構と、前記第1の不可逆機構から伝達される駆動力を前記機械式リンク機構に伝達しまたは切断する切り替え機構と、前記回転機構および前記第2のアクチュエータとの間に設けられ、駆動力を前記第2のアクチュエータから前記回転機構の方向にのみ伝達する第2の不可逆機構と、前記第2の不可逆機構から伝達される駆動力を前記回転機構に伝達しまたは切断する切り替え機構と、を備えることを特徴とする。
【0017】
この構成により、一般の自動車について後付けで自動車運転支援装置として機能させることが可能となる。また、一般的なペダル機構や舵取りハンドルなどの自動車操縦機器を備えた自動車としての機能を失ったり、制限したり、または性能を変更することなく、さらに、健常者による一般の自動車操縦機器を用いた運転環境を損なうことなく、障害者による運転が可能となる。さらに、障害者の障害の部位や障害の度合いに適応することが可能となる。第1および第2のアクチュエータ自身、第1および第2のアクチュエータの制御装置、または、第1および第2のアクチュエータのエネルギー源である自動車のバッテリーシステムや油圧、空気圧システムその他の箇所において、運転者の意図に反した第1および第2のアクチュエータ動作が発生したときに、第1および第2のアクチュエータと自動車操縦機器あるいは不可逆機構との動力伝達を切り離すことができ、車両の安全を確保することが可能となる。また、この構成により、小さなアクチュエータで駆動することができるようになるため、運転席に装置を設置することが可能となり、従来の運転方法による操縦との両立を実現することができる。
【0018】
(6)また、本発明の自動車運転支援装置において、前記機械式リンク機構は、前記第1の操作レバーが第1の方向に操作された場合は、前記自動車のブレーキが動作する方向に前記ブレーキペダルに駆動力を伝達すると共に、前記アクセルペダルへの駆動力の伝達を切断する一方、前記第1の操作レバーが第2の方向に操作された場合は、前記自動車のアクセルが動作する方向に前記アクセルペダルに駆動力を伝達すると共に、前記自動車のブレーキが動作しない方向に前記ブレーキペダルに駆動力を伝達することを特徴とする。
【0019】
この構成により、運転者が指令を与えるための操作レバーを、運転席の各々の操作を行なう部位に適した位置、ストローク、力加減などに応じて設置・調整をすることができるので、運転者に残存して独立に動作できる身体機能に適切に割り当てることが可能となり、運転操作を簡単化することが可能となる。また、システム構成を簡略化させることができるため、装置全体の重量や大きさが増大することを回避することが可能となる。
【0020】
(7)また、本発明の自動車運転支援装置において、前記回転機構は、前記自動車のステアリングホイールと軸を共有する第1のスプロケットと、前記第2のアクチュエータで直接駆動される第2のスプロケットと、前記第1のスプロケットおよび第2のスプロケットを機械的に連結するチェーンと、から構成されることを特徴とする。
【0021】
この構成により、運転者が指令を与えるための操作レバーを、運転席の各々の操作を行なう部位に適した位置、ストローク、力加減などに応じて設置・調整をすることができるので、運転者に残存して独立に動作できる身体機能に適切に割り当てることが可能となり、運転操作を簡単化することが可能となる。また、システム構成を簡略化させることができるため、装置全体の重量や大きさが増大することを回避することが可能となる。
【0022】
(8)また、本発明の自動車は、上記(1)から(7)のいずれかに記載の自動車運転支援装置を備えたことを特徴とする。
【0023】
この構成により、一般の自動車について後付けで自動車運転支援装置として機能させることが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、一般の自動車について後付けで自動車運転支援装置として機能させることが可能となる。また、一般的なペダル機構や舵取りハンドルなどの自動車操縦機器を備えた自動車としての機能を失ったり、制限したり、または性能を変更することなく、さらに、健常者による一般の自動車操縦機器を用いた運転環境を損なうことなく、障害者による運転が可能となる。さらに、障害者の障害の部位や障害の度合いに適応することが可能となる。また、小さなアクチュエータで駆動することができるようになるため、運転席に装置を設置することが可能となり、従来の運転方法による操縦との両立を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】自動車の運転席に設けられた第1の実施形態に係る自動車運転支援装置を示す図である。
【図2】自動車の運転席に設けられた第2の実施形態に係る自動車運転支援装置を示す図である。
【図3】第3の実施形態に係る自動車運転支援装置の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
先天的な要因や、後天的な事故・病気などにより、通常の自動車の操縦が困難である身体が不自由な者にとって、自身による自動車の運転に対しては強い欲求と希望がある。そのなかで、上半身、特に両腕が健常である人に対しては、通常足で操作するアクセルおよびブレーキペダルを手で操作できるようにするシステムが実用化されている。そして、これを利用できる人たちの社会参加、行動範囲の拡大に大きな貢献がなされている。以下、本明細書では、手・腕による自動車の運転を可能にする自動車運転支援装置について説明する。
【0027】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係るシステムは、一本のスティック(操作レバー)の操作で、アクセルとブレーキ、およびハンドル操作を行なうことで、片手による自動車運転を可能にする。従来から知られているシステムでは、電子的なジョイスティック(前後、左右に操作棒を傾斜する)が操作指令装置として用いられている。そして、アクセル、ブレーキ、ハンドルの通常の操作装置全てをモータなどの駆動機器を用いて、コンピュータ制御で操作する方式を採用している。
【0028】
しかしながらこの方式は、電子回路、ソフトウェア、電源系統、その他の不具合がアクセル、ブレーキの操作にもおよぶ恐れがあり、自動車走行の危険性が大きいという欠点がある。また、操作に際してペダル、ブレーキ、及びハンドルの負荷を直接感じることができないので、操縦の感覚的な危険予知や、路面状況の把握などの観点からも好ましいものではない。
【0029】
図1は、自動車の運転席に設けられた第1の実施形態に係る自動車運転支援装置を示す図である。第1の実施形態に係る自動車運転支援装置は、自動車の運転席に設けられる。操作レバー20は、スティック型であり、前後方向および左右方向に傾斜させることができるように構成されている。なお、左右方向の代わりに、回転方向に可動させても良い。運転者は、操作レバー20を操作することによって、自動車を運転することが可能となる。この操作レバー20は、操作器を構成する。操作器は、操作レバーのみならず、運転者の首、息、舌または足などで操縦するような機器を含む概念である。電動車いすで活用されている種々の操縦装置を自動車にも適用する趣旨である。
【0030】
機械式リンク機構30a〜30cは、アクチュエータ30から駆動力を受けて動作する。第1のアクチュエータは、操作レバー20が第1の方向(自動車の前方向)または第2の方向(自動車の後方向)に操作されたときに、機械式リンク機構30に駆動力を与えて、操作レバー20の第1の方向または第2の方向への操作量に応じて自動車のアクセルペダル32またはブレーキペダル31の位置を変化させる。操作レバー20が第1の方向(自動車の前方向)または第2の方向(自動車の後方向)に操作されたときに、操作レバー20の第1の方向または第2の方向への操作量に応じて、ブレーキペダル31またはアクセルペダル32の操作量を変化させる。
【0031】
機械式リンク機構30は、操作レバー20が第1の方向に操作された場合は、自動車のブレーキが動作する方向にブレーキペダル31に駆動力を伝達すると共に、アクセルペダル32への駆動力の伝達を切断する。アクセルペダル32は、チェーンまたはワイヤを介して機械式リンク機構30に連結されているため、張力がかかる方向、すなわち、アクセルが動作する方向にしか駆動力が伝達されない。一方、操作レバー20が第2の方向に操作された場合は、自動車のアクセルが動作する方向にアクセルペダル32に駆動力を伝達すると共に、自動車のブレーキが動作しない方向にブレーキペダル31に駆動力を伝達する。
【0032】
本発明の回転機構は、自動車のステアリングホイール1と軸を共有する第1のスプロケット2と、第2のアクチュエータで直接駆動される第2のスプロケット3と、第2のスプロケット3に回転力を与えるアクチュエータ3aと、第1のスプロケット2および第2のスプロケット3を機械的に連結するチェーン10と、から構成される。
【0033】
本実施形態によれば、ステアリングホイール1を取り外すことなく、また、エアバック、ホーンなどのハンドルに設置される諸機能を損なうことなく、ステアリングホイール1のアクチュエータ(モータ)による回転を実現することが可能となる。なお、スプロケット、チェーンによる駆動のほか、タイミングベルト、平歯車による駆動方式を採用することも可能である。
【0034】
(第2の実施形態)
図2は、自動車の運転席に設けられた第2の実施形態に係る自動車運転支援装置を示す図である。第2の実施形態に係る自動車運転支援装置は、運転者の操作を受ける操作レバーを2つ備えている。すなわち、第1の操作レバー20は、アクセル・ブレーキ操作レバーであり、第2の操作レバー21は、ステアリング操作レバーである。第1の操作レバー20をCの方向(自動車の前方向)またはDの方向(自動車の後方向)に動作させることによって、機械式リンク機構を介してアクセルペダルおよびブレーキペダルが操作される。また、第2の操作レバー21をAの方向(左折方向)またはBの方向(右折方向)に動作させることによって、回転機構を介してステアリングホイールを操作することができる。
【0035】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態に係る自動車運転支援装置の概要を示す図である。ここでは、ステアリングホイールの駆動機構と、ペダルの駆動機構とを合わせて示している。ジョイスティック100は、運転者がステアリングホイールを操作するための操作レバーである。ジョイスティック100は、運転者の操作角度をシステムコントローラ101に出力する。システムコントローラ101は、コンピュータ102と、FETブリッジ103と、リレー104とを備えており、モータ11の駆動を制御する。
【0036】
このモータ11の駆動力は、ウォームギア12に伝達される。このウォームギア12は、不可逆機構を構成し、ウォームギア12の回転力は、ウォームホイール13に伝達される。切り替え機構としてのマグネットクラッチ(電磁クラッチ)14は、ウォームホイール13からの駆動力を伝達したり、切断したりする。マグネットクラッチ14が接続状態である場合は、ギア16a、16bに回転力が伝達される。そして、図示しないユニバーサルジョイントを介して、ステアリングホイールに駆動力が伝達される。ポテンショメータ15は、ステアリングホイールの変位を検出する。
【0037】
このような構成により、操舵輪から逆伝搬する力がモータ11に伝達することが防止され、安定した操舵動作を行なうことが可能となる。また、近年の自動車に備えられるパワーステアリング装置に一切改変を加えることなく、その機能を有効に活用して、運転支援システムを用いることが可能となる。この際、パワーステアリングの形態は、油圧、電動の如何を問わず、あらゆる種類に対応することができる。これにより、自動車運転支援装置の小型化を図ることが可能となる。
【0038】
ジョイスティック200は、運転者がブレーキペダル41およびアクセルペダル42を操作するための操作レバーである。ジョイスティック200は、運転者の操作角度をシステムコントローラ201に出力する。システムコントローラ201は、コンピュータ202と、FETブリッジ203と、リレー204とを備えており、モータ310の駆動を制御する。このモータ310の駆動力は、ウォームギア320に伝達される。このウォームギア320は、不可逆機構を構成し、ウォームギア320の回転力は、ウォームホイール33に伝達される。切り替え機構としてのマグネットクラッチ(電磁クラッチ)34は、ウォームホイール33からの駆動力を伝達したり、切断したりする。マグネットクラッチ34が接続状態である場合は、ギア36a、36bに回転力が伝達される。ポテンショメータ35は、ブレーキペダル41およびアクセルペダル42の変位を検出する。
【0039】
このような構成により、ブレーキペダル41およびアクセルペダル42から逆伝搬する力がモータ310に伝達することが防止され、安定したペダル動作を行なうことが可能となる。
【0040】
また、第2の実施形態に係る自動車運転支援装置は、マグネットクラッチ14を接続状態から切断状態に切り替えるスイッチ50を備えている。また、スイッチ50が操作されたときに、自動車のブレーキペダル41を操作する停止装置を備えている。また、第2の実施形態に係る自動車運転支援装置は、マグネットクラッチ34を接続状態から切断状態に切り替えるスイッチ51を備えている。また、スイッチ51が操作されたときに、自動車のブレーキペダル41を操作する停止装置を備えている。すなわち、第2の実施形態では、各マグネットクラッチの動力線にスイッチを挿入し、非常停止の際には、マグネットクラッチの動力を強制的に切断する。これにより、いかなるモータの動作も操作装置には伝達されず、図示しない空気圧シリンダーなどを利用して、ブレーキを作動させる。
【0041】
また、例えば、システムの異常時にマグネットクラッチを切断する場合のみならず、ステアリングホイールを利用した通常の運転を行う場合には、マグネットクラッチによる接続を切ることによって、モータの動力伝達系と、ステアリングホイールの動作を完全に遮断することができる。これにより、異常時には安全に車両を停止し、緊急避難をすることを可能とすると共に、通常のステアリングホイールを用いた運転時には、通常のステアリングホイールの操作と変わらない軽い操作を実現することができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、マグネットクラッチを接続状態から切断状態に切り替えるスイッチと、スイッチが操作されたときに、自動車のブレーキペダルを操作する停止装置を備えるので、車両の安全を確保することが可能となる。また、本実施形態によれば、一般の自動車について後付けで自動車運転支援装置として機能させることが可能となる。また、一般的なペダル機構や舵取りハンドルなどの自動車操縦機器を備えた自動車としての機能を失ったり、制限したり、または性能を変更することなく、さらに、健常者による一般の自動車操縦機器を用いた運転環境を損なうことなく、障害者による運転が可能となる。さらに、障害者の障害の部位や障害の度合いに適応することが可能となる。また、運転者が指令を与えるための操作レバーを、運転席の各々の操作を行なう部位に適した位置、ストローク、力加減などに応じて設置・調整をすることができるので、運転者に残存して独立に動作できる身体機能に適切に割り当てることが可能となり、運転操作を簡単化することが可能となる。また、システム構成を簡略化させることができるため、装置全体の重量や大きさが増大することを回避することが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1 ステアリングホイール
2 第1のスプロケット
3 第2のスプロケット
10 チェーン
20 操作レバー(第1の操作レバー)
21 操作レバー(第2の操作レバー)
30 機械式リンク機構
31 ブレーキペダル
32 アクセルペダル
11 モータ
12 ウォームギア
13 ウォームホイール
14 マグネットクラッチ
15 ポテンショメータ
16a ギア
30 アクチュエータ
30a、30b、30c 機械式リンク機構
310 モータ
320 ウォームギア
33 ウォームホイール
34 マグネットクラッチ
35 ポテンショメータ
36a ギア
41 ブレーキペダル
42 アクセルペダル
50 スイッチ
51 スイッチ
100 ジョイスティック
101 システムコントローラ
102 コンピュータ
103 ブリッジ
104 リレー
200 ジョイスティック
201 システムコントローラ
202 コンピュータ
203 ブリッジ
204 リレー



【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の運転を支援する自動車運転支援装置であって、
運転者の操作を受ける操作器と、
前記操作器の操作に応じて前記自動車のアクセルペダルおよびブレーキペダルを動作させる機械式リンク機構と、
前記操作器が第1の方向または第2の方向に操作されたときに、前記機械式リンク機構に駆動力を与えて、前記操作器の第1の方向または第2の方向への操作量に応じて前記自動車のアクセルペダルまたはブレーキペダルの位置を変化させる第1のアクチュエータと、
前記機械式リンク機構および前記第1のアクチュエータとの間に設けられ、駆動力を前記第1のアクチュエータから前記機械式リンク機構の方向にのみ伝達する不可逆機構と、
前記不可逆機構から伝達される駆動力を前記機械式リンク機構に伝達しまたは切断する切り替え機構と、を備えることを特徴とする自動車運転支援装置。
【請求項2】
自動車の運転を支援する自動車運転支援装置であって、
運転者の操作を受ける操作器と、
前記自動車のステアリングホイールと機械的に連動する回転機構と、
前記操作器が第1の方向および第2の方向とは異なる第3の方向または第4の方向に操作されたときに、前記回転機構に駆動力を与えて、前記操作器の第3の方向または第4の方向への操作量に応じて前記自動車のステアリングホイールの軸を回転駆動する第2のアクチュエータと、
前記回転機構および前記第2のアクチュエータとの間に設けられ、駆動力を前記第2のアクチュエータから前記回転機構の方向にのみ伝達する不可逆機構と、
前記不可逆機構から伝達される駆動力を前記回転機構に伝達しまたは切断する切り替え機構と、を備えることを特徴とする自動車運転支援装置。
【請求項3】
前記機械式リンク機構は、前記操作器が第1の方向に操作された場合は、前記自動車のブレーキが動作する方向に前記ブレーキペダルに駆動力を伝達すると共に、前記アクセルペダルへの駆動力の伝達を切断する一方、前記操作器が第2の方向に操作された場合は、前記自動車のアクセルが動作する方向に前記アクセルペダルに駆動力を伝達すると共に、前記自動車のブレーキが動作しない方向に前記ブレーキペダルに駆動力を伝達することを特徴とする請求項1記載の自動車運転支援装置。
【請求項4】
前記回転機構は、前記自動車のステアリングホイールと軸を共有する第1のスプロケットと、前記第2のアクチュエータで直接駆動される第2のスプロケットと、前記第1のスプロケットおよび第2のスプロケットを機械的に連結するチェーンと、から構成されることを特徴とする請求項2記載の自動車運転支援装置。
【請求項5】
自動車の運転を支援する自動車運転支援装置であって、
運転者の操作を受ける第1の操作器と、
前記第1の操作器とは独立して設けられた第2の操作器と、
前記第1の操作器の操作に応じて前記自動車のアクセルペダルおよびブレーキペダルを動作させる機械式リンク機構と、
前記第1の操作器が第1の方向または第2の方向に操作されたときに、前記機械式リンク機構に駆動力を与えて、前記第1の操作器の第1の方向または第2の方向への操作量に応じて前記自動車のアクセルペダルまたはブレーキペダルの位置を変化させる第1のアクチュエータと、
前記自動車のステアリングホイールと機械的に連動する回転機構と、
前記第2の操作器が第1の方向および第2の方向とは異なる第3の方向または第4の方向に操作されたときに、前記回転機構に駆動力を与えて、前記第2の操作器の第3の方向または第4の方向への操作量に応じて前記自動車のステアリングホイールの軸を回転駆動する第2のアクチュエータと、
前記機械式リンク機構および前記第1のアクチュエータとの間に設けられ、駆動力を前記第1のアクチュエータから前記機械式リンク機構の方向にのみ伝達する第1の不可逆機構と、
前記第1の不可逆機構から伝達される駆動力を前記機械式リンク機構に伝達しまたは切断する切り替え機構と、
前記回転機構および前記第2のアクチュエータとの間に設けられ、駆動力を前記第2のアクチュエータから前記回転機構の方向にのみ伝達する第2の不可逆機構と、
前記第2の不可逆機構から伝達される駆動力を前記回転機構に伝達しまたは切断する切り替え機構と、を備えることを特徴とする自動車運転支援装置。
【請求項6】
前記機械式リンク機構は、前記第1の操作器が第1の方向に操作された場合は、前記自動車のブレーキが動作する方向に前記ブレーキペダルに駆動力を伝達すると共に、前記アクセルペダルへの駆動力の伝達を切断する一方、前記第1の操作器が第2の方向に操作された場合は、前記自動車のアクセルが動作する方向に前記アクセルペダルに駆動力を伝達すると共に、前記自動車のブレーキが動作しない方向に前記ブレーキペダルに駆動力を伝達することを特徴とする請求項5記載の自動車運転支援装置。
【請求項7】
前記回転機構は、前記自動車のステアリングホイールと軸を共有する第1のスプロケットと、前記第2のアクチュエータで直接駆動される第2のスプロケットと、前記第1のスプロケットおよび第2のスプロケットを機械的に連結するチェーンと、から構成されることを特徴とする請求項5記載の自動車運転支援装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の自動車運転支援装置を備えたことを特徴とする自動車。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−209962(P2011−209962A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76270(P2010−76270)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(508346631)
【出願人】(505455554)
【Fターム(参考)】