説明

自己免疫疾患を治療するメチマゾール誘導体および互変異性環状チオン

【課題】哺乳類の自己免疫疾患を治療する方法、および移植レシピエントの移植拒絶を予防または治療する方法を提供する。
【解決手段】特定のメチマゾール誘導体および互変異性環状チオン化合物並びにこれらの化合物を含有する医薬組成物を利用する。これらの化合物および組成物は、医薬活性に関してはメチマゾールと少なくとも同じように有効であるが、一方、甲状腺機能に対する副作用が少ない。それらはまた通常の医薬賦形剤における溶解性がメチマゾールよりも高い。自己免疫疾患に対して有用な化合物の活性(MHCクラスIおよびクラスII分子の発現を抑制する能力)をスクリーニングするアッセイもまた教示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類の自己免疫疾患および移植拒絶に関する。より具体的には、本発明は、本発明に記述された目的のための、綿密に規定した1群のメチマゾール誘導体および互変異性環状チオンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
哺乳類における免疫反応の主要な機能は、非自己抗原から自己を識別し、さらに非自己抗原を排除することである。免疫反応は細胞対細胞の複雑な相互作用を含み、主として3つの主要な免疫細胞タイプに依存する。これらは、胸腺由来(T)リンパ球、骨髄由来(B)リンパ球、およびマクロファージである。免疫反応は、主要組織適合性複合体(MHC)によってコードされる分子によって仲介される。MHC分子の2つの主要な型(クラスIおよびクラスII)は、各々一組の細胞表面糖タンパク質を含む(以下を参照されたい:.D.P. Stites & A.I. Terr, eds., “Basic and Clinical Immunology”, Appelton & Lange, Norwalk, Connecticut/San Mateo, California, 1991)。MHCクラスI分子は実質的に全てのタイプの体細胞で見出されるが、ただしそのレベルはそれぞれの細胞タイプで異なる。対照的に、MHCクラスII分子は、通常はいくつかの細胞タイプ(例えばリンパ球、マクロファージおよび樹状細胞)でのみ発現される。
【0003】
抗原は、クラスIまたはクラスII細胞表面分子を有する抗原提示細胞によって免疫系に提示される。例えば、CD4+ヘルパーTリンパ球はMHCクラスII分子に会合した抗原を認識し、CD8+細胞毒性リンパ球(CTL)はクラスI遺伝子生成物に会合した抗原を認識する。現在のところ、MHCクラスI分子は主として細胞性免疫反応の標的として機能し、一方、クラスII分子は液性および細胞性免疫反応の両方を調節すると考えられている(J. Klein & E. Gutze, “Major Histocompatibility Complex”, Springer Verlag, New York, 1977; E.R. Unanue, Ann. Rev. Immunology, 2:295-428(1984))。クラスIおよびMHCクラスII分子は、免疫反応の仲介物質または開始物質としてのその役割のゆえに自己免疫疾患の研究においてこれまで多くの実験で関心を集めてきた。MHCクラスII抗原は自己免疫疾患の病因についての研究の主要な対象であったが、一方、MHCクラスI抗原は移植拒絶の研究で関心を集めた。
【0004】
ヒトの疾患についての多くの実験動物モデルは、クラスIおよびMHCクラスII抗原の異常な(aberrant)発現および/または機能が、自己免疫疾患の進行、例えばインスリン依存性真性糖尿病(IDDM)(Trisch & McDevitt, Cell 85:291-297(1996))、全身性紅斑性狼瘡(SLE)(Kotzin, Cell 85:303-306(1996))およびブドウ膜網膜炎(Prendergast et al., Invest. Opthalmol. Vis. Sci. 39:754-762(1998))と連携することを示した。
【0005】
MHCクラスIおよび/またはIIの発現と疾患との間の病理学的連関は、これまで多くのこのようなモデル系で生化学的および遺伝学的アプローチを用いて調べられてきた。しかしながら、異常なMHC機能が自己免疫を仲介することに関するもっとも確かな証拠は、MHC遺伝子が不活化されている遺伝子導入動物モデルから得られた。MHCクラスI欠損動物を用いて、自己免疫疾患の進行に対する抵抗性、したがってMHC遺伝子発現に対する自己免疫の依存性が、IDDM(Serreze et al., Diabetes 43:505-509(1994))およびSLE(Mozes et al., Science 261:91-93(1993))の動物モデルで直接的に示された。
【0006】
さらにまた、TGF−ベータル欠損遺伝子導入マウス(Shull et al., Nature 359:693-699(1992); Kulkarini et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 90:770-774(1993); Boivin et al., Am. J. Pathol. 146:276-288(1995))で明瞭な進行性多病巣炎症性自己免疫疾患表現型のMHCクラスII発現に対する依存性は、MHCクラスII欠損動物を用いて最近明らかにされた。特に、MHCクラスII発現を欠くTGF−ベータル欠損動物では炎症性浸潤物、循環性抗体または糸球体を侵す免疫複合体の沈積は明らかではない(Letterio et al., J. Clin. Invest. 98:2109-2119(1996))。
MHCクラスIおよびMHCクラスIIが動物モデルの場合自己免疫疾患の発生の要件であることを支持する知見の他に、自己免疫疾患の進行とMHCクラスIおよびクラスII抗原のヒトにおける発現との連携を示す同様に強力な証拠が存在する。
【0007】
グレーヴズ病は比較的一般的な甲状腺の自己免疫疾患である。グレーヴズ病では、甲状腺抗原(特にタイロトロピンレセプター(TSHR))に対する自己抗体が甲状腺機能に変化を与え、甲状腺機能亢進症をもたらす(D.P. Stites & A.I. Terr, eds., “Basic and Clinical Immunology”, Appleton and Lang, Norwalk, Connecticut/San Manteo, California, 1991, pp.469-470))。グレーヴズ病の患者の甲状腺細胞は、異所性MHCクラスIIの発現および高レベルのMHCクラスIの発現を示す(Hanafusa et al., Lancet 2:1111-1115(1983); Bottazzo et al., Lancet 2:1115-1119(1983); Kohn et al., in “International Reviews of Immunology”, Vol.912, pp.135-165(1992))。線維芽細胞でのMHCクラスIIおよびTSHRの異所性発現(ただし単独発現ではない)が、マウスでグレーヴズ病を誘発すること、すなわち標的組織でのクラスIIの異所性発現は正常な免疫系を有する動物で自己免疫疾患を発症させることが示された。
【0008】
チオナミド療法はグレーヴズ病の治療に歴史的に用いられてきた。もっとも一般的に用いられるチオナミドはメチマゾール、カルビマゾールおよびプロピルチオウラシルである。これらのチオナミドは、チオウレア基を含み、これはもっとも強力なチオウレイレンである(W.L. Green, in Werner & Ingbar’s “The Thyroid”: A Fundamental Clinical Text, 6th Edition, L. Braveman & R. Utiger(eds), J.B. Lippincott Co., 1991, p.324)。チオナミド療法の根拠は、しかしながら免疫抑制を目指してはいない。むしろ、その基礎は甲状腺ホルモン生成の抑制であった。免疫細胞に対する影響(抗原提示の抑制または抗体産生の抑制)を示唆する実験は、高いMMI濃度による非生理学的なin vitroの人工産物としてほとんど無視された。このような環境下でのMMI活性は、遊離ラジカルのスカベンジャー活性によるものといわれている(例えば以下を参照されたい:D.S. Cooper, in Werner & Ingbar’s “The Thyroid”, 上掲書, pp.712-734))。
【0009】
全身性紅斑性狼瘡(SLE)は慢性の自己免疫疾患で、グレーヴズ病と同様に比較的発症率が高い。SLEにはもっぱら女性が罹患し、20歳から60歳の女性700人に1人が発症する(A.K. Abbus, A.H. Lichtman, J.S. Pober, eds., “Cellular and Molecular Immunology”, W.B. Saunders Company, Philadelphia, 1991, pp. 360-370))。SLEは、多様な自己抗体の産生および多臓器の関与を特徴とする(Sites & Terr, 上掲書pp.438-443))。現時点でのSLEの治療法は、コルチコステロイドおよび細胞毒性薬(例えばシクロホスファミド)の使用を必要とする。免疫抑制剤(例えばシクロスポリン、FK506、またはラパマイシン)は、T細胞の数および機能を低下させることによって免疫系を抑制する(P.J. Morris, Curr. Opin. In Immun., 3:748-751(1991)。これらの免疫抑制療法はSLEおよび他の自己免疫疾患の症状を軽減するが、一方、重篤な副作用をもたらす。実際、これらの薬剤を用いる長期の治療は、対象となっている疾患よりももっと重大な病的状態を引き起こす可能性がある。動物モデルにおけるMHCクラスI発現とSLEとの連関が明確になった。すなわち、クラスI欠損マウスは、16/6IDモデルでSLEを発症しない(Mozes et al., Science 261:91-93(1993))。
【0010】
SLE患者で乳癌を有する者は特に困難に直面する。これらの患者は、SLEのためのコルチコステロイドおよび細胞毒性薬剤治療の結果として免疫が抑制されており、癌治療のための放射線療法(現在のところ選択される治療法)は、免疫抑制状態をさらに強めるであろう。さらにまた、放射線療法は症状の発現をさらに悪化させるか、または重篤な放射線合併症を誘発するであろう。このような患者の場合、SLEと癌の同時治療を可能にするまた別の治療選択肢が極めて必要であろう。
【0011】
真性糖尿病は、相対的または絶対的インスリン不足および相対的または絶対的グルカゴン過剰を特徴とする疾患である(D.W. Foster, Diabetes Mellitus. In J.B. Stanbury et al., The Metabolic Basis of Inherited Disease. Ch.4, pp.99-117(1960))。I型糖尿病は発症しやすい遺伝背景と環境因子を必要とするようである。島細胞抗体は最初の数ヶ月の間この疾患では一般的である。それらは、おそらく部分的には細胞抗原を漏出させるβ細胞の損傷から生じるのであろうが、また初期の自己免疫疾患を表している。I型糖尿病の顕著な代謝異常は高血糖および糖尿である。糖尿病の後期の合併症は多く、これらには発作および心臓の合併症を伴うアテローム性硬化症、腎臓病および腎不全、完全な衰弱をもたらす神経障害が含まれる。HLA抗原との連関は1970年から知られている。あるHLA対立遺伝子座が発症頻度の増加に密接に関係し、他の抗原は頻度の低下と関連する。小島細胞におけるMHCクラスIの増加とMHCクラスIIの異所性発現が報告された(Bottazzo et al., NEJM 313:353-360(1985); Foulis & Farquharson, Diabetes 35:1215-1224(1986))。MHCクラスIとの絶対的な連関は、この疾患の遺伝的動物モデルで得られた。すなわち、MHCクラスI欠損はNODマウスで糖尿病発生に対する抵抗性をもたらす(Sereze et al., Diabetes 43:505-509(1994); Wicker et al., Diabetes 43:500-504(1994))。
【0012】
豊富な遺伝的、生化学的および動物モデルデータは、自己免疫進行における炎症性サイトカイン(例えばIL−12、IL−18および特にIFN−ガンマ)の貢献的役割を支持している(Sarvetnick, J. Clin. Invest. 99:371-372(1997))。非肥満性糖尿病(NOD)マウス(ヒトのI型IDDMを髣髴させる自己免疫性糖尿病を偶発的に発症する)を用いた実験は、どのようにIFN−ガンマ刺激過程が自己免疫の発生に重要な役割を果たすか、さらにどのように他の前炎症性サイトカインの作用(それらは、とりわけMHCクラスIおよびMHCクラスII抗原の発現強化である)がIFN−ガンマ刺激過程で伝えられていくかを実証的に示している。
【0013】
IL−12およびIL−18(IFN−ガンマ誘発因子)は、T細胞でのIFN−ガンマ産生の刺激で協調的に作用することが知られている(Micallef et al., Eur. J. Immunol. 26:1647-1651(1996))。糖尿病NODマウスでは、IL−18の全身性発現(Rothe et al., J. Autoimmun. 10:251-256(1997))およびIL−12の小島での発現が増加する(Rabinovitch et al., J. Autoimmun. 9:645-651(1996))。さらにまた、別のIL−12がNODマウスで自己免疫糖尿病を促進する(Trembleau et al., J. Exp. Med. 181:817-821(1995))。遺伝的分析によって、IL−18遺伝子の位置は、自己免疫糖尿病の遺伝的感受性に付随する染色体領域(Idd2)にマッピングされた(Kothe et al., J. Clin. Invest. 99:469-474(1997))。これらの報告は、自己免疫進行におけるIFN−ガンマの重要な役割を特定するために役立つ。
【0014】
自己免疫進行におけるIFN−ガンマの役割は、IFN−ガンマのシグナリング能力が何らかの態様で失われるという研究によってさらに立証された。例えば、IFN−ガンマに対する細胞レセプターに欠損を有する遺伝子導入NODマウス(Wang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 94:13844-13849(1997))は、自己免疫糖尿病を発症しない。IFN−ガンマに対する中和抗体で処置したNODマウスもまた自己免疫糖尿病を発症しない。糖尿病の開始がIFN−ガンマ欠損遺伝子導入NODマウスで遅れるだけであることは幾分驚くべきことであるが、この発見は、NODマウスで自己免疫を効果的に予防するためにはIFN−ガンマシグナルの封鎖が重要であることを明瞭に示した(さらに重要なことにはIFN−ガンマは下流の事象を刺激した)。
【0015】
同様なことがSLEの動物モデルで観察された。可溶性IFN−ガンマレセプターは以下の疾患を阻害する:NZB/NZWF1偶発的自己免疫疾患SLEモデルでの疾患(Ozmen et al., Eur. J. Immunol. 25:6-12(1995));ブドウ膜炎、この場合IFN−ガンマの誘導発現は眼の炎症を高める(Geiger et al., Invest. Opthalmol. Vis. Sci. 35:2667-2681(1994));自己免疫性胃炎、この場合IFN−ガンマ中和抗体は疾患を阻害する(Barret et al., Eur. J. Immunol. 26:1652-1655(1996))。さらにまた、ヒトの場合、IFN−ガンマによる処置はSLE様疾患の発生を伴うことが報告された(Graninger et al., J. Rheumatol. 18:1621-1622(1991))。
【0016】
γ−IFNは多くの組織でMHCクラスIおよびクラスII発現を増加させ、したがって補助調節分子、クラスIIトランスアクチベーターの作用と連関していることはよく理解されている(Mach et al., Ann. Rev. Immunol. 14:301-331(1996); Chang et al., Immunity 4:167-178(1996); Steimle et al., Science 265:106-109(1994); Chang et al., J. Exp. Med. 180:1367-1374(1994); Chin et al., Immunity 1:687-697(1994); V. Montani et al., Endocrinology 139:280-289(1998))。さらにまた、MMIは、IFNによって増加したクラスIおよびクラスIIの甲状腺での発現を抑制することが知られている(Saji et al., J. Clin. Endocrinology. Metab. 75:871-878(1992); Montani et al., Endocrinology. 139:290-302(1998))。最後に、MMIは、CIITAによって増加したクラスIIの発現を低下させることが示され、これは、Yボックスタンパク質の遺伝子発現を強化させるというMMIの作用と関連しているようである(Yボックスタンパク質はクラスIIの遺伝子発現を抑制する)(Montani et al., Endocrinology 139:280-289(1998))。
【0017】
自己免疫疾患の場合と同様に、移植拒絶の治療または予防のために新規なまたは別の方法が強く望まれる。移植拒絶は、ホストとドナーとの間の組織適合性の結果として生じ、組織の移植の成功を妨げる主要な障害である。移植拒絶に対する現在の治療は、自己免疫疾患の場合のように、種々の免疫抑制剤の使用およびコルチコステロイド治療を必要とする。
【0018】
一連の互変異性環状チオン(すなわちオキサゾリン−、チアゾリン−、およびイミダゾリン−2−(3)−チオン)でその4位および5位にメチルおよびフェニル基を有するものが文献に開示されている(Kjellin & Sandstrom, Acta Chemica Scandinavica, 23:2879-2887および2888-2899(1969))。これらの化合物は、チオン−チオール平衡の研究に用いられた。これらの化合物について医薬的またはその他の用途は報告されておらず、また推察もされていない。
【0019】
米国特許3,641,049号(Sandstrom et al., 1972年2月8日)は、N,N’−ジアルキル−4−フェニルイミダゾリン−2−チオン、特に1,3−ジメチル−4−フェニルイミダゾリン−2−チオンの抗うつ剤としての使用を開示している。ジメチル化合物はまた、ヘルペスシンプレックスおよびワクシニアウイルスに対して抗ウイルス作用を示すと報告されている。
米国再発行特許24,505号(Rimington et al., 1958年7月22日)は、抗甲状腺化合物として一群のイミダゾール化合物を開示している。
【0020】
米国特許3,505,350号(Doebel et al., 1970年4月7日)では一群の置換2−メルカプトイミダゾール誘導体が開示され、これらは抗炎症剤として有効であるという。例示された化合物には、1−(4−フルオロフェニル)−5−メチル−2−メルカプトイミダゾールおよび1−メチル−5−フェニル−2−メルカプトイミダゾールが含まれる。
米国特許3,390,150号(Henry et al., 1968年6月25日)は、抗住血吸虫活性および抗トリコモナス活性を有するニトロイミダゾール誘導体を開示する一群の特許の代表である。
【0021】
米国特許5,051,441号(Matsumoto et al., 1991年9月24日)では、免疫調節剤として作用するというジフェニルイミダゾリン誘導体が開示され、慢性関節リューマチ、多発性硬化症、全身性狼そう、およびリューマチ熱の治療に有効であることが示された。
米国特許4,073,905号(Kummer et al., 1978年2月14日)では、高血圧の治療に有用であるという2−アミノ−4−フェニル−イミダゾリンが開示されている。
米国特許5,202,312号(Matsumoto et al., 1993年4月13日)では、免疫調節活性を有するというイミダゾリン含有ペプチドが開示されている。
【0022】
PCT出願WO92/04033(Faustman et al.)では、移植される組織の表面に存在する抗原を改変するか、排除するかまたは覆い隠すことによって、レシピエントの動物で移植組織の拒絶を抑制する方法が特定されている。特に、この出願は、ヒト白血球抗原(HLA)のクラスI抗原を改変、隠蔽または排除することを提唱している。好ましい隠蔽または改変薬剤は、HLA−クラスI抗原に対して誘導した抗体のF(ab)’フラグメントである。しかしながら、そのような治療の有効性は、隠蔽または改変薬剤として作用する抗体に対するホストの免疫反応のために制限を受ける。さらに、器官移植では、この治療は、隠蔽抗体の還流が限定されるために全ての細胞に影響を及ぼすことができるというわけではない。出願人らは、ホストに移植を実施する前にHLA−クラスI発現を抑制するためにドナーにフラグメントまたは完全なウイルスをトランスフェクトしようとする。しかしながら、完全なウイルスまたはそのフラグメントを使用することは、あるウイルス(特にSV40)はクラスIの発現を高めるので(Singer & Maguire, Crit. Rev. Immunol. 10:235-237(1991)、特に表2を参照されたい)、そのような移植組織のレシピエントが合併症を発症する可能性がある。
【0023】
英国特許592,453号(Durant et al.)は、宿主対移植片病(HVG)における自己免疫疾患の治療で有用なイソチオウレア組成物およびこれらの化合物の免疫抑制能力を評価するアッセイを開示している。しかしながら、この特許はメチマゾールまたは自己免疫疾患の治療におけるMHCクラスIの抑制については記載していない。
いくつかの自己免疫疾患はメチマゾールで治療され成功したと思われる。ある研究では、MMIは若年性糖尿病の治療でシクロスポリンと同様に有効であると思われた(W. Waldhausl et al., Akt. Endocrin. Stoffw. 8:119(1987))。さらに、乾癬もまたMMIで治療された。
【0024】
米国特許5,556,754号(Singer et al. 1996年9月17日)(これはPCT出願WO94/28897と同じである)は、メチマゾール、メチマゾール誘導体およびメチマゾール類似体を用いて自己免疫疾患を治療する方法を記載している。“メチマゾール誘導体”および“メチマゾール類似体”という用語は、この特許のいずれの箇所でも特定または例示されていない。
米国特許5,310,742号(Elias, 1994年5月10日)は、乾癬および自己免疫疾患を治療するためにチオウレイレン化合物の使用を述べている。プロピルチオウラシル、メチマゾールおよびチアベンダゾールのみがこの特許で開示された具体的な化合物である。ヒトの乾癬治療のためにメチマゾールの使用が、さらに慢性関節リューマチ、狼瘡および移植拒絶の治療にチオウレイレンの使用が例として示されている。メチマゾール類似体または誘導体は開示も考察もされていない。互変異性環状チオンは開示も考察もされていない。
【0025】
米国特許4,148,885号(Renoux et al. 1979年4月10日)は、イオウを含む特定の低分子量化合物を免疫刺激剤として使用することを開示している。とりわけ、メチマゾール、チオグアニン、およびチオウラシルが特定された化合物である。メチマゾール類似体または誘導体は開示も考察もされていない。互変異性環状チオンは開示も考察もされていない。
米国特許5,010,092号(Elfarra, 1991年4月23日)は、メチマゾールまたはカルビマゾール(これはメチマゾールのプロドラッグであると教示されている)を腎毒性薬剤とともに同時投与することによりある種の薬剤の腎毒性を低下させる方法を記載している。メチマゾール類似体または誘導体はこの特許では開示も考察もされていない。互変異性環状チオンは開示も考察もされていない。
【0026】
米国特許5,578,645号(Askanazi et al. 1996年11月26日)は、伝統的な鎮痛剤に付随する副作用を最小限にする方法を記載している。これは、特定の分枝アミノ酸を鎮痛化合物と一緒に投与することによって達成される。メチマゾールが、この特許の従来技術の項でこの発明にいう副作用のいくつかをもたらす可能性がある非ステロイド系抗炎症剤として開示されている。互変異性環状チオンは開示も考察もされていない。
米国特許5,587,369号(Daynes et al. 1996年12月24日)は、損傷後の虚血の予防または抑制方法を記載している。これは、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、DHEA誘導体、またはDHEA同族体を損傷後可能なかぎり速やかに患者に投与することによって達成される。この特許の従来技術の項では、メチマゾールはトロンボキサン抑制物質であることが教示されている(トロンボキサン抑制物質は火傷で血管の変化を防止することが示された)。
米国局方(US Pharmacopeia, Rockville, Maryland, 1996)にはメチマゾールが含まれ(CAS-60-56-0)、甲状腺抑制物質であると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】米国特許3,641,049号
【特許文献2】米国再発行特許24,505号
【特許文献3】米国特許3,505,350号
【特許文献4】米国特許3,390,150号
【特許文献5】米国特許5,051,441号
【特許文献6】米国特許4,073,905号
【特許文献7】米国特許5,202,312号
【特許文献8】WO92/04033
【特許文献9】英国特許592,453号
【特許文献10】米国特許5,556,754号
【特許文献11】米国特許5,310,742号
【特許文献12】米国特許4,148,885号
【特許文献13】米国特許5,010,092号
【特許文献14】米国特許5,578,645号
【特許文献15】米国特許5,587,369号
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】D.P. Stites & A.I. Terr, eds., “Basic and Clinical Immunology”, Appelton & Lange, Norwalk, Connecticut/San Mateo, California, 1991
【非特許文献2】J. Klein & E. Gutze, “Major Histocompatibility Complex”, Springer Verlag, New York, 1977
【非特許文献3】E.R. Unanue, Ann. Rev. Immunology, 2:295-428(1984)
【非特許文献4】Trisch & McDevitt, Cell 85:291-297(1996)
【非特許文献5】Kotzin, Cell 85:303-306(1996)
【非特許文献6】Prendergast et al., Invest. Opthalmol. Vis. Sci. 39:754-762(1998)
【非特許文献7】Serreze et al., Diabetes 43:505-509(1994)
【非特許文献8】Mozes et al., Science 261:91-93(1993)
【非特許文献9】Shull et al., Nature 359:693-699(1992)
【非特許文献10】Kulkarini et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 90:770-774(1993)
【非特許文献11】Boivin et al., Am. J. Pathol. 146:276-288(1995)
【非特許文献12】Letterio et al., J. Clin. Invest. 98:2109-2119(1996)
【非特許文献13】D.P. Stites & A.I. Terr, eds., “Basic and Clinical Immunology”, Appleton and Lang, Norwalk, Connecticut/San Manteo, California, 1991, pp.469-470
【非特許文献14】Hanafusa et al., Lancet 2:1111-1115(1983)
【非特許文献15】Bottazzo et al., Lancet 2:1115-1119(1983)
【非特許文献16】Kohn et al., in “International Reviews of Immunology”, Vol.912, pp.135-165(1992)
【非特許文献17】W.L. Green, in Werner & Ingbar’s “The Thyroid”: A Fundamental Clinical Text, 6th Edition, L. Braveman & R. Utiger(eds), J.B. Lippincott Co., 1991, p.324
【非特許文献18】D.S. Cooper, in Werner & Ingbar’s “The Thyroid”, 上掲書, pp.712-734
【非特許文献19】A.K. Abbus, A.H. Lichtman, J.S. Pober, eds., “Cellular and Molecular Immunology”, W.B. Saunders Company, Philadelphia, 1991, pp. 360-370
【非特許文献20】Sites & Terr, 上掲書pp.438-443
【非特許文献21】P.J. Morris, Curr. Opin. In Immun., 3:748-751(1991)
【非特許文献22】Mozes et al., Science 261:91-93(1993)
【非特許文献23】D.W. Foster, Diabetes Mellitus. In J.B. Stanbury et al., The Metabolic Basis of Inherited Disease. Ch.4, pp.99-117(1960)
【非特許文献24】Bottazzo et al., NEJM 313:353-360(1985)
【非特許文献25】Foulis & Farquharson, Diabetes 35:1215-1224(1986)
【非特許文献26】Sereze et al., Diabetes 43:505-509(1994)
【非特許文献27】Wicker et al., Diabetes 43:500-504(1994)
【非特許文献28】Sarvetnick, J. Clin. Invest. 99:371-372(1997)
【非特許文献29】Micallef et al., Eur. J. Immunol. 26:1647-1651(1996)
【非特許文献30】Rothe et al., J. Autoimmun. 10:251-256(1997)
【非特許文献31】Rabinovitch et al., J. Autoimmun. 9:645-651(1996)
【非特許文献32】Trembleau et al., J. Exp. Med. 181:817-821(1995)
【非特許文献33】Kothe et al., J. Clin. Invest. 99:469-474(1997)
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【非特許文献35】Ozmen et al., Eur. J. Immunol. 25:6-12(1995)
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【非特許文献40】Chang et al., Immunity 4:167-178(1996)
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【非特許文献44】V. Montani et al., Endocrinology 139:280-289(1998)
【非特許文献45】Saji et al., J. Clin. Endocrinology. Metab. 75:871-878(1992)
【非特許文献46】Montani et al., Endocrinology. 139:290-302(1998)
【非特許文献47】Montani et al., Endocrinology 139:280-289(1998)
【非特許文献48】Kjellin & Sandstrom, Acta Chemica Scandinavica, 23:2879-2887および2888-2899(1969)
【非特許文献49】Singer & Maguire, Crit. Rev. Immunol. 10:235-237(1991)
【非特許文献50】W. Waldhausl et al., Akt. Endocrin. Stoffw. 8:119(1987)
【発明の概要】
【0029】
したがって、メチマゾールについては当技術分野では多様な医薬的用途が知られている。すなわち、乾癬の治療のため(Elias)、免疫刺激剤として(Renoux et al.)、ある種の薬剤の腎毒性の減少のために(Elfarra)、ある種の鎮痛剤で見出される副作用を最小限にするために(Oskinasi et al.)、甲状腺抑制物質として(米国局方)、およびトロンボキサン抑制物質として(Daynes et al.)。さらにまた、前記特許(Singer et al.)では、自己免疫疾患(例えば慢性関節リューマチおよび全身性狼そう)の治療に有用であると教示されている。この特許は、メチマゾール類似体および誘導体をこれらの治療目的に使用することについて一般的に言及しているが、これらの化合物の定義は提供されておらず、具体的な化合物も特定されていない。互変異性環状チオンの薬理学的特性は考察されておらず、メチマゾール誘導体との関連も示されていない。
【0030】
特定の種類のメチマゾール誘導体および互変異性環状チオンは自己免疫疾患の治療および移植器官の拒絶の抑制に有効であること、さらにこれらの化合物は、本来のメチマゾールの使用を凌ぐ明瞭で予期しない利点をもつことが見出された。特にこれらの化合物は以下の利点を有する:(a)基礎的およびIFN誘発クラスIのRNA発現の抑制およびIFN誘発クラスIIのRNA発現の抑制でメチマゾールよりも有効である;(b)CIITA/Yボックス調節系に作用することによってIFNの作用を抑制する;(c)メチマゾールよりもはるかに可溶性で、製剤化について顕著な自由度および利点をもたらす;(d)甲状腺機能に対してメチマゾールよりも副作用が少ない;(e)MMIの影響を受けた標的と結合する能力が強化されている;さらに(f)in vivoで治療活性を示す。これらの特性は、これまでに知られているメチマゾール、および特に互変異性環状チオンの特性からは予期できないことである。
【0031】
最後に、本発明は、これらの薬剤がインターフェロン−ガンマ作用を抑制する方法、特にMHCクラスIおよびクラスII発現並びに前炎症過程、より具体的には自己免疫疾患誘発および/または移植拒絶の誘発に関連する過程を抑制する方法に関する。
【0032】
[発明の概要]
本発明は、医薬的に許容できる担体とともに以下から選ばれる活性化合物の安全で有効な量を含む医薬組成物に関する:
【0033】
【化1】

【0034】
式中、YはH、C1−C4アルキル、C1−C4置換アルキル、−NO2または下記のフェニル成分で、
【0035】
【化2】

【0036】
式中、前記活性化合物中のY基の2つ以上はフェニル成分ではなく;R1は、H、−OH、ハロゲン(F、Cl、BrまたはI)、C1−C4アルキル、C1−C4置換アルキル、C1−C4エステル、またはC1−C4置換エステルから選ばれ;R2は、H、C1−C4アルキル、またはC1−C4置換アルキルから選ばれ;R3は、H、C1−C4アルキル、C1−C4置換アルキル、または−CH2Ph(式中Phはフェニル)から選ばれ;R4は、H、C1−C4アルキル、またはC1−C4置換アルキルから選ばれ;Xは、SまたはOから選ばれ;Zは、−SR3、−OR3、S(O)R3またはC1−C4アルキルから選ばれ;さらに、式中Yがフェニル成分でない場合は前記化合物のR2およびR3基の少なくとも2つがC1−C4アルキルで、Zがアルキルである場合は、少なくとも1つのYは−NO2である。
【0037】
これらの医薬組成物で使用される好ましい化合物は以下の式を有する:
【0038】
【化3】

【0039】
式中、YはHおよびC1−C4アルキルまたはC1−C4置換アルキルから選ばれ;R1は、H、−OH、ハロゲン(F、Cl、BrまたはI)、またはC1−C4アルキル、C1−C4置換アルキル、C1−C4エステルまたはC1−C4置換エステルから選ばれ;R2は、HまたはC1−C4アルキルまたはC1−C4置換アルキルから選ばれ;R3は、H、C1−C4アルキル、C1−C4置換アルキル、または−CH2Phから選ばれ;R4は、H、C1−C4アルキルまたはC1−C4置換アルキルから選ばれ;Xは、SまたはOから選ばれ;Zは、−SR3または−OR3から選ばれる。
【0040】
特に好ましい化合物は以下の式を有するものである:
【0041】
【化4】

【0042】
好ましい化合物はまた以下の式のものを含む:
【0043】
【化5】

【0044】
式中、R9は−OH、−MおよびMCH2COO−から選ばれ;さらにMはF、Cl、BrおよびIから選ばれる。
本発明はまた、自己免疫疾患または移植拒絶の治療を必要とする患者に、安全で有効な量の上記の活性化合物および医薬組成物を投与することによって、自己免疫疾患または移植拒絶を治療する方法に関する。
本発明はまた、クラスIおよびMHCクラスIIタンパク質の発現に対する化合物の作用を極めて効率的にスクリーニングすることができるin vivoアッセイ方法に関する。
最後に、本発明は、本明細書で特定した化合物が、クラスIまたはMHCクラスIIの発現を高めるガンマインターフェロンの作用を抑制する方法に関する。ガンマインターフェロンは免疫疾患の発現に連関している。
本明細書で用いられるように、全ての比率、割合、および百分率は、特に別に規定しないかぎり“重量”による。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、MHCクラスI PD1遺伝子の上流サイレンサー/エンハンサー領域(パネルA)、クラスI PD1遺伝子の下流サイレンサー/エンハンサー領域(パネルB)、およびHLA−DRαMHCクラスIIプロモーターの調節領域(パネルC)の模式図である。
【図2】図2は、MHC(クラスI)5'−フランキング領域のフラグメント140(−770から−636bp)とのタンパク質/DNAサイレンサー複合体の形成に対する、メチマゾールおよび本明細書で用いたいくつかの活性化合物の影響を示す。前記フラグメント140は、種々の組織で構成的MHCクラスI発現を制御する上流サイレンサー/エンハンサーをその中に含んでいる。
【図3】図3は、−250bpと翻訳開始との間のMHCクラスI遺伝子の配列を示す。
【図4】図4は、時間の関数として、MHC5'−フランキング領域(−127から+1bp)の放射能標識フラグメント127(図1参照)とのタンパク質/DNA複合体形成に対する、MMIまたは本明細書の代表的化合物(化合物8)によるFRTL−5細胞の処理の影響を示す。
【図5】図5は、本明細書の実験で使用した−176bpHLA−DRα−CAT構築物の176bp5'−フランキング領域のヌクレオチド配列を示す。
【図6】図6は、TSH存在下または非存在下で維持し、γ−IFNで処理または未処理のFRTL−5細胞から得られた抽出物とタンパク質/DNA複合体を形成する、32P−放射能標識DRα−5’−フランキング領域プローブの能力の電気泳動移動度シフト分析(EMSA)を示す。
【図7】図7は、32P−放射能標識DRα−5'−フランキング領域プローブとのタンパク質/DNA複合体形成を増加させるγ−IFNの能力に対するMMIの影響を示す。
【図8】図8は、32P−放射能標識DRα−5'−フランキング領域プローブとのタンパク質/DNA複合体形成を増加させるγ−IFNの能力に対する1mMのMMIまたは1mMの本明細書で調べた代表的化合物の影響を示す。
【図9】図9は、FRTL−5細胞における外因性クラスIプロモーター活性に対するMMIおよび/またはTSHの影響を示す。
【図10】図10は、FRTL−5細胞におけるブタクラスIプロモーターの5'−欠損変異体のCATキメラのプロモーター活性に対するMMIおよびTSHの影響を示す。
【図11】図11は、−176bpHLA−DRα−CAT構築物およびその5'−欠損(A)またはS、X1、X2およびYボックスに変異を有する−176bpDRα−CAT構築物(B)を用いて測定したFRTL−5甲状腺細胞におけるクラスII発現に対するγ−インターフェロン(IFN)の影響を示す。
【図12】図12は、FRTL−5細胞におけるMHCクラスII抗原発現に対するγ−IFNの影響を示す。
【図13】図13は、γ−IFNの濃度の関数として(A)およびMMIの存在下で(B)、FRTL−5甲状腺細胞でMHCクラスII抗原を発現させることに対するγ−IFNの影響を示す。
【図14】図14は、MMI濃度の関数として、FRTL−5甲状腺細胞におけるγ−IFN増加クラスII発現に対するγ−IFNの影響を示す。
【図15】図15は、(NZBxNZW)F1マウスの腎の免疫複合体に対するMMI、化合物10(5−フェニルメチマゾール)および化合物3(2−メルカプトイミダゾール)の影響を示す。
【図16】図16は、YボックスRNAレベルを減少させるγ−IFNの能力を逆転させる、MMI、化合物10(5−フェニルメチマゾール)、化合物7(5−メチルメチマゾール)、化合物8(N−メチルメチマゾール)、または化合物11(1−メチル−2−チオメチル−5(4)ニトロイミダゾール)の能力を示す。
【図17】図17は、自己免疫疾患の発生モデルおよびMMI、MMI誘導体または互変異性環状チオンの前記発生過程に対する作用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
[発明の詳細な説明]
本発明は、自己免疫疾患の治療および移植組織の拒絶抑制のために用いることができる医薬組成物に関する。これら医薬組成物を用いる自己免疫疾患の治療および移植組織の拒絶抑制の方法もまた、これら薬剤の製造に使用することができる特定のメチマゾール誘導体および互変異性環状チオンと同様に本発明に含まれる。本明細書で用いられるように、以下の用語は下記に示すように定義される。
【0047】
“安全で有効な量”という語句は、医療措置のいずれにも付随する合理的な利益/リスク比で、自己免疫疾患の治療または移植組織の拒絶の抑制に所望の影響を与えるために十分な医薬的に活性な化合物の量を意味する。医薬的に活性な薬剤、または前記活性な薬剤を含む医薬組成物の必要な投与量は、適切な医学的判断の範囲内で、治療されるべき症状の重篤度、治療期間、付属治療の性質、患者の年齢および健康状態、使用される個々の活性化合物および下記でより詳細に考察する事柄などによって変動するであろう。これに関して高投与量でのMMIの使用は、ある種の患者では、副作用(例えば再生不良性貧血、顆粒球減少症、肝不全および皮膚炎)を誘発することは留意されるべきである。特定の化合物について“安全で有効な量”に到達するために、本明細書で開示する化合物は通常のメチマゾール化合物より低い投与レベルで医薬活性を提供するという事実と合わせてこのようなリスクは考慮されねばならない。
【0048】
“医薬的に許容できる”ということは、本明細書で特定された医薬組成物または方法で用いられる医薬的に活性な化合物または他の成分が、ヒトおよびより下等な動物の組織と接触して用いた場合、過度の毒性、炎症、アレルギー反応などを示さず適切で、合理的な利益/リスク比でつりあうことを意味する。
本明細書で特定される医薬的に活性な化合物および医薬組成物の“投与”という用語は、注射(特に非経口的)、静脈内輸液、座薬および経口投与のような全身的使用とともに前記化合物および組成物の局所塗布を含む。本発明では経口投与が特に好ましい。
【0049】
本明細書で用いられるように、“含む”という用語は、規定の医薬的に活性な化合物および担体が開示の態様で用いられるかぎり、多様な適合する他の薬剤および医薬が不活性成分とともに本発明の医薬組成物または方法に組合わされて用いられ得ることを意味する。したがって、“含む”という用語は、より限定的な用語“から成る”および“本質的に〜から成る”を包含する。
本明細書で用いられる“患者”という用語は一切の哺乳類、動物またはヒト(本発明の化合物、組成物または方法を用いる治療が有益なもの)を包含しようとするものである。
本明細書の“適合する”とは、本発明を構成する組成物の成分が、医薬的に活性な化合物の有効性を通常の使用条件下で実質的に低下させるような態様で相互作用することなく一緒に混ぜ合わせることができることを意味する。
【0050】
本発明の医薬組成物は、医薬的に許容できる担体と一緒に、特別に定義されたメチマゾール誘導体および互変異性環状チオンを安全で有効な量で含む。
本発明の組成物で用いられるメチマゾール誘導体は以下の構造式を有するものである:
【0051】
【化6】

【0052】
これらの式で、YはH、C1−C4アルキル、C1−C4置換アルキル、−NO2、および下記のフェニル成分から選ばれる:
【0053】
【化7】

【0054】
Yは好ましくはH、フェニル成分または−NO2で、もっとも好ましくは、Hまたは下記フェニル成分である。
【0055】
【化8】

【0056】
本規定の化合物ではY基の2つ以上はフェニル成分ではない。R1は、H、−OH、ハロゲン(F、Cl、BrおよびI)、C1−C4アルキル、C1−C4置換アルキル、C1−C4エステルおよびC1−C4置換エステルから選ばれ;好ましくは、R1は、H、−OH、ハロゲン、−OOCCH2M(式中、MはHまたはハロゲン)で;もっとも好ましくはHである。R2は、H、C1−C4アルキルおよびC1−C4置換アルキルから選ばれ;好ましくは、R2基の一方または両方がメチルである。本明細書で用いられるように、“置換アルキル”または“置換エステル”は、アルキル、アリールまたはエステル基を含み、これらは1つまたは2つ以上の場所でヒドロキシルまたはアルコキシル基、カルボキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノまたはアシルアミノ基、およびこれら成分の混合物で置換される。好ましい“置換アルキル”基はC1−C4ヒドロキシルまたはアルコキシル基の他にハロゲンで置換された基である。上記の式のR3基は、H、C1−C4アルキル、C1−C4置換アルキルおよび−CH2Ph(式中、Phはフェニルである)から選ばれ;好ましい化合物では、R3は、HまたはC1−C4アルキルで;もっとも好ましくは、R3はC1−C4アルキル、特にメチルである。R4は、H、C1−C4アルキルおよびC1−C4置換アルキルから選ばれ、好ましくはHである。XはSまたはOで、好ましくはSである。最後に、Zは、C1−C4アルキル、−SR3、−S(O)R3および−OR3から選ばれ、好ましくは−SR3、−OR3およびS(O)R3で、もっとも好ましくは−SR3および−OR3で、特に−SR3である。上記の式で、Yがフェニル成分でない場合は、化合物のR2およびR3基の少なくとも2つはC1−C4アルキルでなければならない。さらに、ZがC1−C4アルキルである場合は、少なくとも1つのY基は−NO2でなければならない。
【0057】
本発明で有用な化合物には、以下の式を有する互変異性環状チオンが含まれる(前記物質は以下の文献によって開示された:Kjellin & Sandstrom, Acta Chemica Scandanavica 23:2879-2887(1969)(この文献は参照により本明細書に含まれる)):
【0058】
【化9】

【0059】
式中、R5、R6=CH3、CH3;Ph、H;H、Phであり、R7=H、CH3であり、R8=O、S、NH、NCH3である。
本発明の化合物で使用される好ましい化合物には以下の式を有するものが含まれる:
【0060】
【化10】

【0061】
好ましい別の群の化合物には以下の式のものが含まれる:
【0062】
【化11】

【0063】
式中、R10は、H、NO2、Ph、4−HOPhおよび4−m−Phから選ばれる(式中、mはF、Cl、BrまたはIである)。
本明細書で特定される特に好ましいサブセットは、Y基の1つが上記で定義したフェニル基であるものである。これらの化合物は以下の式を有する:
【0064】
【化12】

【0065】
これらの化合物では、Yは、H、C1−C4アルキルおよびC1−C4置換アルキルから選ばれ、好ましくはHである。R1は、H、−OH、ハロゲン(F、Cl、BrおよびI)、C1−C4アルキル、C1−C4置換アルキル、C1−C4エステルおよびC1−C4置換エステルから選ばれ;好ましくは、H、−OH、ハロゲン、−OOCCH2M(式中、MはHまたはハロゲン)で;もっとも好ましくはHである。R2は、H、C1−C4アルキルおよびC1−C4置換アルキルから選ばれ;好ましくは、R2基の少なくとも一方がメチルである。R3は、H、C1−C4アルキル、C1−C4置換アルキルおよび−CH2Phから選ばれ;好ましいR3成分は、Hおよびメチルである。R4は、H、C1−C4アルキルおよびC1−C4置換アルキルから選ばれ、好ましくはHである。XはSおよびOで、好ましくはSである。最後に、Z成分は、−SR3および−OR3から選ばれ、好ましくは−SR3である。特に好ましい化合物は以下の構造式を有するものである:
【0066】
【化13】

【0067】
他の好ましい化合物には以下が含まれる:
【0068】
【化14】

【0069】
式中、R9は、−OH、−Mおよび−OOCCH2Mから選ばれ、Mは、F、Cl、BrおよびIから選ばれる。
【0070】
もっとも好ましいものは下記に示す構造を有する化合物である。この化合物は、MHCクラスIおよびクラスIIタンパク質の発現の抑制について予期せぬ高活性を示した。さらにこの化合物は、甲状腺遺伝子発現、すなわちサイログロビンに対してMMIと比較した場合異なる作用を示した。これは、この化合物を自己免疫疾患、さらにグレーヴズ病の治療にも、甲状腺ホルモンの補充を必要とすることなく用いることが可能なことを示している。
【0071】
【化15】

【0072】
本明細書で特定される医薬的に活性な化合物の混合物もまた用いることができる。
上記で述べたメチマゾール誘導体および互変異性環状チオンは、当業者に周知の技術を用いて合成できる。例えば、いくつかの互変異性環状チオンの合成は文献に記載されている(Kjellin & Sandstrom, Acta Chemica Scandanavica 23:2879-2887(1969)(この文献は参照により本明細書に含まれる))。
【0073】
代表的なメチマゾール誘導体は以下の方法を用いて合成できる。適切に置換されたアセトアルデヒドの類似体を臭素およびUV光で処理して2位に臭素を付加し、続いて無水エタノールを用いて対応するジエチルアセタールを生成する。続いて封入試験管内で無水メチルアミンまたは他の適切なアミンで約16時間まで約120度で処理して臭素をこの化合物から取り除く。得られたアミノアセタールをスチームバスの温度で一晩チオシアン酸カリウムと反応させてメチマゾール誘導体を得る。
【0074】
本発明の医薬組成物は、安全で有効な量の1つまたは2つ以上のメチマゾール誘導体または互変異性環状チオン化合物(すなわち活性化合物)を含む。好ましい組成物は約0.01%から約25%の活性化合物を含み、もっとも好ましい組成物は約0.1%から約10%の活性化合物を含む。本発明の医薬組成物は、通常知られている任意の態様で、例えば腹腔内、静脈内、筋肉内、または局所的に投与できるが、ただし経口投与が好ましい。好ましい組成物は単位剤形、すなわち1回の投与のために予め計量された製剤として利用可能で、使用者が個々の投与について計量する必要がないもので、例えばピル、錠剤またはアンプルである。
【0075】
本発明の医薬組成物はさらに、上記のメチマゾール誘導体または互変異性環状チオンと適合する医薬的に許容できる担体を含む。前記医薬的に許容できる担体の他に、本医薬組成物は、それらの許容できるレベルでまた別の成分、例えば、また別の医薬的に活性な物質、賦形剤、製剤補助剤(例えば錠剤化補助剤)、着色剤、香料、保存料、および当業者の周知の他の物質を含むことができる。
【0076】
本明細書で用いられるように、“医薬担体”という用語は、固体または液体充填剤、希釈剤または被包化物質を指す。これらの物質は当医薬分野では周知である。医薬担体として役立つ物質のいくつかの例は、糖類(例えばラクトース、グルコースおよびシュクロース);澱粉(例えば、トウモロコシ澱粉およびジャガイモ澱粉);セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース);トラガカント末;麦芽;ゼラチン;タルク;ステアリン酸;ステアリン酸マグネシウム;硫酸カルシウム;植物油(例えば、ピーナツ油、綿実油;ごま油;オリーブ油;トウモロコシ油;カカオ脂);ポリオール(例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール);寒天;アルギン酸;発熱因子非含有水;等張食塩水;および燐酸緩衝溶液、並びに医薬製剤で用いられる適合する他の非毒性物質である。湿潤剤および潤滑剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、並びに着色剤、香料、錠剤化剤および保存料もまた含有することができる。成分を医薬組成物として製剤化するためには通常の技術を用いることができる。
【0077】
本発明の医薬組成物とともに用いることができる医薬担体は、実際的なサイズ/用量関係を提供するために十分な濃度で用いられる。好ましくは、医薬担体は、全医薬組成物重量で約75%から約99.99%、好ましくは約90%から約99.9%で含まれる。本出願で特定されるメチマゾール誘導体または互変異性環状チオンは、驚くべきことには、通常の担体物質中でのメチマゾールと比較してより可溶性である。このことは、これらのメチマゾール誘導体を含有する医薬組成物の製剤化においてより大きな融通性を可能にし顕著な利点を提供し、さらに極めて低用量の活性化合物の使用を可能にするであろう。
【0078】
本発明はまた、自己免疫疾患の治療方法および移植片のレシピエントにおける組織拒絶の予防または治療方法を提供する。より具体的には、本発明は、そのような治療を必要としている哺乳類に、クラスIまたはMHCクラスII分子の発現を抑制することができる本明細書で特定した薬剤を投与する方法に関する。
【0079】
本方法を用いて治療することができる自己免疫疾患の例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):慢性関節リューマチ、乾癬、若年性またはI型糖尿病、原発性特発性粘液水腫、全身性紅斑性狼瘡、ド=ケルヴァン甲状腺炎、甲状腺炎、自己免疫性喘息、重症筋無力症、皮膚硬化症、慢性肝炎、アジソン病、性機能低下、悪性貧血、白斑、円形脱毛症、セリアック病、自己免疫性腸症、特発性血小板性紫斑病、後天性脾臓萎縮、特発性尿崩症、抗精子抗体に起因する不妊症、突然の聴力喪失、感覚神経性聴力喪失、ショーグレン症候群、多発性筋炎、自己免疫性脱髄症(例えば、多発性硬化症)、横断脊髄炎、運動失調性硬化症、天疱瘡、進行性全身性硬化症、皮膚筋炎、結節性多発性動脈炎、溶血性貧血、糸球体腎炎および特発性顔面麻痺。そのもっとも広い例では、本発明のメチマゾール誘導体は、1日当たり約0.001から約100ミリグラム、好ましくは約0.05から約50ミリグラムの投与範囲で投与される。本発明の医薬組成物は、医薬活性物の適切なレベルが血中で達成されるように投与される。ある症例で要求される正確な投与レベルは、例えば使用される個々のメチマゾール誘導体、処置される疾患の性質、患者のサイズ、体重、年齢、健康状態に左右されるであろう。
【0080】
好ましい実施態様では、本発明の活性化合物(例えば5−フェニルメチマゾール)は、自己免疫疾患に罹患した哺乳類(好ましくはヒト)に投与される。メチマゾール誘導体の適切な治療量は、1日当たり約0.05から20ミリグラムの範囲である。好ましい投与量は、1日当たり約0.05から約10ミリグラムである。投薬は、8時間間隔または朝食、昼食もしくは夕食でほぼ均等に分割して毎日実施できる。治療は、例えば1年またはそれ以上の期間連続することができる。また別には、治療は次第に減少させることができる。例えば高投与量で開始し、4から10週内でより低い投与量に減少させることができる。そのような治療を受ける個体の甲状腺ホルモン(サイロキシンT4またはトリヨードサイロニンT3)または甲状腺刺激ホルモン(TSH)レベルは、いくつかの化合物については治療効果のインデックスとなろう。自己免疫疾患に罹患している哺乳類に投与される用量は、当該哺乳類の年齢、疾患の重篤度、治療経過に対する反応に応じて変動することは当業者には理解されよう。当分野で習熟する者は、罹患者に対する適切な投与量を決定するための臨床的査定パラメーターについて知識を有するであろう。
【0081】
別の好ましい実施態様では、本明細書に記載された活性化合物は、全身性紅斑性狼瘡(SLE)に罹患した哺乳類、好ましくはヒトに投与される。好ましい治療のための量は、1日当たり約0.05から約20ミリグラムで2から12ヶ月にわたって投与されるが、しかし5年間または必要な期間にわたって同様な長さの不連続な治療期間で投与することができる。また別には、本発明の組成物は、SLEを抑制するために、現存のSLE治療、ヒドロコーチゾンおよび細胞毒性薬剤と併用して投与することができる。乳癌のSLE患者は放射線で容易に治療することができない。なせならば、彼らは既にSLEのための現存の一般的治療によって免疫が抑制されているからである。さらに、SLEは放射線照射の合併症に異常な感受性を有する可能性があり、したがって放射線療法はこの疾患を悪化させる。したがって、乳癌を有するSLE患者を治療するために、本発明のメチマゾール誘導体および互変異性環状チオンを使用することは、放射線照射合併症を引き起こすことなくまたは症状を悪化させることなく、そのような患者に放射線療法を行うことを可能にするであろう。
【0082】
別の実施態様では、本発明のメチマゾール誘導体、環状互変異性チオンおよび医薬組成物は、I型または若年性糖尿病に罹患している哺乳類、好ましくはヒトに投与される。
別の実施態様では、本発明のメチマゾール誘導体、互変異性環状チオンおよび医薬組成物は、甲状腺自己抗体の血中出現に付随する自己免疫疾患に罹患している哺乳類、好ましくはヒトに投与される。
【0083】
さらに別の実施態様では、本発明のメチマゾール誘導体、互変異性環状チオンおよび医薬組成物は、レセプター自己抗体の出現を特徴とする自己免疫疾患に罹患している哺乳類、好ましくはヒトに投与される。例えば、自己免疫性喘息は、β−アドレナリン作動性レセプター自己抗体に付随する。本発明の組成物による治療はこの疾患を軽減させる。そのような自己免疫疾患の別の例は重症筋無力症である。重症筋無力症は、アセチルコリンレセプター自己抗体に付随する。重症筋無力症に罹患している患者は、より高い頻度で甲状腺自己免疫を有する。TSHとアセチルコリンレセプターとの構造的および機能的関係のために、重症筋無力症に罹患している動物、好ましくはヒトをMHCタイプIおよびタイプIIの両方を抑制することができる薬剤、例えば本発明のメチマゾール誘導体または互変異性環状チオンで処置することによってこの疾患は抑制されるであろう。
【0084】
本発明の方法はまた、移植された組織の拒絶をレシピエントの哺乳類、好ましくはヒトで予防または治療するために適している。移植される組織の例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):心臓、肺臓、腎臓、骨髄、皮膚、すい臓小島細胞、甲状腺、肝臓および全ての内分泌組織、神経組織、筋肉、線維芽細胞、および脂肪細胞。
【0085】
移植組織の拒絶の予防例として、膵臓の小島細胞をドナーから単離し、糖尿病を罹患している患者に移植する前に本発明のメチマゾール誘導体または互変異性環状チオンで処理する。糖尿病は、自己免疫疾患の結果として小島細胞の喪失によってもたらされる。小島細胞の移植はそのような欠乏を修正するであろう。小島細胞は、1日あたり約0.05から約20ミリグラムの活性化合物で、例えば水溶液として約24時間から約72時間または小島細胞のMHCクラスI分子の発現の抑制に必要な場合はそれ以上の時間処理することができる。移植後、レシピエントはさらに、ヒドロコーチゾンおよび/または他の免疫抑制剤とともにメチマゾール誘導体または互変異性環状チオンで処理される。
【0086】
本発明はまた、MHCクラスIおよびMHCクラスIIの発現を抑制する薬剤の能力を評価するin vitroアッセイに関する。本アッセイは、MHCクラスIおよびMHCクラスIIプロモーター並びにその調節配列の下流に操作可能に連結したレポーター遺伝子の活性を測定する。MHCクラスIおよびMHCクラスIIプロモーター並びにその調節配列に操作可能に連結したレポーター遺伝子は哺乳類細胞に導入され、この哺乳類細胞は候補薬剤で処理され、処理哺乳類細胞および未処理哺乳類細胞から得た溶解物中のレポーター遺伝子の活性が測定される。未処理細胞に対する処理細胞の細胞溶解物中のレポーター遺伝子活性の減少は、MHCクラスIおよびMHCクラスII発現の抑制を示唆し、順次、自己免疫疾患の抑制または移植拒絶の予防について候補薬剤の有用性を予見する。
【0087】
レポーター遺伝子に操作可能に連結することができる好ましい調節配列は、以下の調節領域に対応する配列である:クラスI遺伝子の調節領域、−1Kbから+1bp;MHCクラスI、PD1遺伝子の上流のサイレンス/エンハンサー領域、−769から−673bp(図1A);PD1遺伝子の下流調節領域、−203または−127から−1bp;PD1遺伝子の下流サイレンス領域、−127から−80bp(図1B);およびS、Y、X1およびX2ボックスを含むMHCクラスII遺伝子の調節領域、−137から−50bp(図1C)。これらの配列は、その同系のプロモーターとともに図1に示されている。他のクラスIおよびクラスII遺伝子の調節およびプロモータードメインに見出される配列的および機能的に相同な領域もまた用いることができることは当業者には理解されよう。レポーター遺伝子の例には以下が含まれるが、ただしこれらに限定されない:クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子およびヒト成長ホルモン(hGH)(J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Vol.2, 2nd ed., Cold Spring Harbor Press, NY(1989); F. Ausubel et al., in “Current Protocols in Molecular Biology” Supplement 14, section9.6(1987); John Wiley and Sons, New York(1990))。本in vitroアッセイで用いることができる哺乳類細胞の例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):哺乳類甲状腺細胞、肝細胞、神経組織、筋肉、線維芽細胞、脂肪細胞およびHELA細胞。前記レポーター遺伝子に操作可能に連結された調節配列を細胞に導入する手段は上記で述べたものと同じである。好ましい実施態様では、ルシフェラーゼ遺伝子は上記のPD1配列の1つに操作可能に連結され、FRTL−5細胞に導入される。
【0088】
MHCクラスIおよびMHCクラスII分子の発現を抑制する候補薬剤の能力はまた、候補薬剤で処理された哺乳類細胞と候補薬剤で処理されていない細胞における細胞mRNAレベルを比較することによって評価することができる。細胞のmRNAレベルを測定する方法の例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):ノザンブロッティング(J.C. Alwine et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 74:5350-5354(1977)), ドット/スロットハイブリダイゼーション(F.C. Kafatos et al., Nucleic Acids Res., 7:1541-1522(1979))、フィルターハイブリダイゼーション(M.C. Hollander et al., Biotecniques; 9:174-179(1990))、RNA分解酵素保護(J. Sambrook et al., in “Molecular Cloning, A Laboratory Manual”, Cold Spring Harbor Press, Plainview, NY(1989))、ポリメラーゼ連鎖反応(J.D.Watson et al., in “Recombinat DNA” 2nd ed., W.H. Freeman & Company, New York(1992))および核ランオフアッセイ(F. Ausubel et al., in “Current Protocols in Molecular Biology”, Supplement 9(1990), John Wiley and Sons, New York(1990))。
以下の実施例は、本発明の医薬的に活性な化合物、医薬組成物および治療方法を詳述しようとするもので、それらを限定しようとするものではない。
【実施例】
【0089】
[実施例]
実施例1
5−フェニルメチマゾールの調製
好ましい化合物5−フェニルメチマゾールは以下のように合成される:
工程1:2−ブロモフェニルアセトアルデヒドジエチルアセタールの合成
フェニルアセトアルデヒドの臭素付加は下記の文献の方法によって実施できる:P. Duhamel, L. Duhamel & J-Y Valnot, Bull. Soc. Chim. Fr. 1465(1973)。
120g(1mol、117mL)のフェニルアセトアルデヒドを3つの首が付いたフラスコでドライアイス/CCl4を用いて20℃に冷却する。160g(1mol)の臭素を激しく攪拌しながら1滴ずつ加え、冷却する。添加の後、反応溶液を2リットルの丸底フラスコに移し、約1.5リットルの絶対エタノールを添加する。この溶液を室温で一晩攪拌する。溶液を真空中で蒸発させ、Na2CO3の飽和溶液で抽出する。粗生成物をK2CO3の上で乾燥させ、ろ過して145.34gを得た。最終生成物を50μの圧力下で94℃で蒸留し、86.93g(46%)の純粋な物質を得る。
1H−NMR(CDCl3):δ1.05(3Ht),1.30(3Ht),3.3−3.9(5Hm),4.91(2Hdd),7.32−7.48(5Hm)
【0090】
工程2:2−メチルアミノフェニルアセトアルデヒドジエチルアセタールの合成
この物質は下記の方法を用いて合成できる:Jones et al., J. Am. Chem. Soc. 71:4000(1949)。
200mLの壁の厚いガラスの反応容器をドライアイス/アセトン中で冷却し、約25mLの無水メチルアミンを満たす。これに約25mL(32g)の2−ブロモフェニルアセトアルデヒドジエチルアセタールを添加する。この混合物を液体窒素中で固め、真空ポンプで反応容器内を吸引する。この反応容器を油浴中で110℃で一晩加熱する。反応容器をドライアイス/アセトンで、続いて液体窒素で冷却し、メチルアミンを水溶液に逃がす。粗反応生成物をメタノールに採取し、1NのKOH水溶液で抽出し、固形KOH上で乾燥させる。この溶液を真空中で乾燥させ、粗生成物を蒸留によって精製する。この生成物を255μの圧力下で100℃で蒸留する。物質の収量は89.7%である。
1H−NMR(CDCl3):δ0.95(3Ht),1.24(3Ht),2.23(3Hs),3.49−3.54(m),3.60(d),3.7−3.9(m),4.41(d),7.26−7.40(5Hm)
【0091】
工程3:5−フェニルメチマゾール
この物質は下記の文献の方法を用いて合成できる:R.G. Jones, J. Am. Chem. Soc. 71:383-386(1949)。
50g(224mmol)の2−メチルアミノフェニルアセトアルデヒドジエチルアセタールを100mLの50%エタノール/水の溶液に溶解する。これに26.123g(268.8mmol)のチオシアン酸カリウムおよび22.39mL(268.8mmol)の濃塩酸を攪拌しながら添加する。解放状態のビーカー内で混合物をスチームバス上で4日間過熱する。粗反応混合物を酢酸エチル(200mL)中にとり、水(3x50mL)、飽和炭酸ナトリウム(3x50mL)および飽和食塩水(3x50mL)で抽出する。この溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で乾燥させて47.65gの橙赤色の油を得る。この物質をベンゼンにとり、450gのシリカゲル上でクロマトグラフィーを実施する。カラムを最初ベンゼンで、続いて生成物の出現時に10%酢酸エチル:ベンゼンで溶出させる。生成物を含む分画を3つの分画にまとめる。分画AおよびCを一緒にし、13.93gを得、さらにエタノールから再結晶化させて2.3gを得る。群Bは再結晶により3.9gを得る。再結晶収量は14.5%である。融点は168−173℃。
1H−NMR(CDCl3):δ3.59(3Hs),6.76(1Hs),7.42(5Hm)
【0092】
1−メチル−5−フェニルイミダゾール−2(3)−チオン
下記文献を参照されたい:Kjellin & Sandstrom, Acta Chemica Scandinavica 23:2879-2887(1969)
【0093】
【化16】

【0094】
機械的攪拌装置、添加ロート、コンデンサーおよびN2注入口を備えた1リットルの丸底フラスコに、50gのα−アミノアセトフェノンヒドロクロリド、22.5mLのメチルイソチオシアネートおよび600mLの絶対エタノールを添加する。この混合物に42mLのトリエチルアミンを添加する。反応溶液を1時間還流で加熱する。
【0095】
反応混合物をほぼ乾燥するまで絞り、残留物に150mLの水を加える。生じた懸濁液を吸引ろ過し、80gの黄色固体を採集する。このろ過固形物を500mLの1N水酸化ナトリウム溶液でスラリーにする。不要物をろ過して除く。ロ液に約100mLの37%塩酸を加える。得られた懸濁物を吸引ろ過し、固形物を5mLの25%エタノール水溶液で再結晶化させる。
25.7gの青桃色の固形物を採集する(融点178−179℃)。HPLCで純度99.8%であることが示される。
元素分析は以下のとおりである:
実験値:C,62.82;H,5.21;N,14.74;S,16.63
理論値:C,63.13;H,5.30;N,14.73;S,16.86
IR、炭素NMRおよびプロトンNMRは全て所望の構造を支持した。
【0096】
1−メチル−2−メチルチオ−5−フェニル−イミダゾールの調製
【0097】
【化17】

【0098】
機械的攪拌装置、コンデンサー、温度計および添加ロートを備えた1リットルの丸底フラスコに、19.1gの1−メチル−5−フェニル−イミダゾリン−2(3)−チオン(化合物10)および335mLの95%エタノールを添加する。これに4g水酸化ナトリウムを添加し、混合物を溶液が得られるまで攪拌する。
【0099】
これに95%エタノール145mL中の15.6gのヨウ化メチルを周囲温度(28−30℃)で35分かけて添加する。得られた混合物をロータリーエバポレーターで乾燥させる。ほぼ41gの橙色の固形物を採集する。これを約600mLの塩化メチレンに溶解させ、これに約600mLの水を加える。有機層を分離する。水層を2回塩化メチレンで抽出し、橙色の層を一緒にし、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過してロータリーエバポレーターで乾燥させ、26.7gの油状の固形物を得る。これを吸引ろ過し、風乾して16.5gの青桃色の固形物を得る(融点85−87℃)。これを(2つの小規模調製物から得た0.8gおよび2.5gと合わせて)総量2.5Lのヘプタンで再結晶化する。10.7gのオフホワイトの固形物が得られる;融点87℃。HPLCで純度99.8%であることが示される。
元素分析は以下のとおりである:
実験値:C,64.70;H,5.85;N,13.70;S,15.55
理論値:C,64.66;H,5.93;N,13.70;S,15.72
IR、炭素NMRおよびプロトンNMRは全て所望の生成物の証拠を示した。
【0100】
1,3−ジメチル−4(5)−フェニル−イミダゾリン−2(3)−チオンの調製
【0101】
【化18】

【0102】
ディーン−スタークのトラップ、コンデンサー、N2注入口および磁気攪拌装置を備えた100mLの丸底フラスコに、13gのα−ヒドロキシアセトフェノン、10gのN,N−ジメチルチオウレアおよび50mLの1−ヘキサノールを加える。これを約3.5時間還流して過熱する。約3mLの水を採集する。
反応混合物を冷凍庫に1時間静置した後で沈殿が生じる。得られた混合物を吸引ろ過する。13.2gの固形物を採集する(融点105℃)。これを(別の調製物から得た10.4gの生成物と合わせて)約150mLの絶対アルコールで再結晶化する。12.5gのオフホワイトの固形物が得られる;融点126−127℃。HPLCで純度99.8%であることが示される。
元素分析は以下のとおりである:
実験値:C,64.44;H,5.81;N,13.70;S,15.55
理論値:C,64.66;H,5.93;N,13.71;S,15.71
IR、炭素NMRおよびプロトンNMRは全て所望の構造を支持した。
【0103】
4−ニトロ−1,3−ジメチルイミダゾール−2−チオンの調製
文献にはこの化合物6の調製についての報告はないが、既知の反応条件を用いることによって合理的な収量で所望の生成物が得られる。この硝化のための出発物質、化合物5は、既知の反応経路および条件を用い市販の材料から2工程で容易に調製できる。
【0104】
【化19】

【0105】
実施例2
MHCクラスIおよびMHCクラスII発現に対するMMI誘導体の作用のゲルシフトアッセイによる評価
材料:
精製ウシTSHはNIHプログラム(NIDDK−bTSH−I−1、30U/mg)から得るか、または以前に記載(L.D. Kohn & R.J. Winand, J. Biol. Chem. 250:6503-6508(1975))されたように調製した。インスリン、ヒドロコーチゾン、ヒトトランスフェリン、ソマトスタチン、およびグリシル−L−ヒスチジル−L−リジンアセテートはシグマ=ケミカル社(Sigma Chemical Co. St. Louis, MO.)から得た。
【0106】
細胞培養:
FRTL−5ラット甲状腺細胞(L.D. Kohn et al., 米国特許4608341号(1986);Ambesi-Impiombato ES., 米国特許4608341号(1986))を下記のように増殖させる。これらの細胞はTSHの非存在下では分裂せず、にもかかわらずTSHの非存在下で長期間生存する。それらのダブリングタイムは約36±6時間で、さらに、5.0%血清を含みTSHを含まない培養液(5H)で6日培養後、1x10-10mol/LのTSHは、ヨウ化物の取り込みを8−10倍に、チミジンの取り込みを10倍増大させた。細胞は、ほとんどの実験で5代から25代の継代の間はニ倍体で、クーン(Coon)の改良F12培養液で日常的に増殖させた。前記改良培養液には以下が補充されている:5%仔牛血清、1mmol/Lの非必須アミノ酸(GIBCO)および6種のホルモンの混合物(6H培養液):TSH(1x10-10M)、インスリン(10μg)、ヒドロコーチゾン0.4ng/ml、ヒトトランスフェリン(5μg/ml)、ソマトスタチン(10ng/ml)およびグリシル−L−ヒスチジル−L−リジンアセテート(10ng/ml)(L.D. Kohn et al., 米国特許4609622号(1986);E.S. Ambesi-Impiombato, 米国特許4608341号(1986))。それらを7−10日毎に継代し、2または3日毎に新鮮な培養液を与えた。個々の実験では、細胞を6H培養液で細胞同士がほぼ接触する細胞密度まで増殖させ、続いていくつかの実験では5%または0.2%の血清を含むがTSHを含まない培養液(5H)、TSHおよびインスリンを含まない培養液(4H)、TSHもインスリンもヒドロコーチゾンも含まない培養液(3H)に使用の4−7日前に移した。
【0107】
細胞抽出物:
細胞は5%仔牛血清を含む6H培養液で70−80%の細胞密度で6−7日間増殖させ、続いて、5%仔牛血清を含む5H培養液に移した。TSH(1x10-10M)、ガンマ−インターフェロン(100U/ml)、MMI(5mM)、および種々の濃度のMMI誘導体または互変異性環状チオン(0.0001から10mM)を24−48時間の間に適切なときに添加した。続いて細胞を採集し、文献(J. Dignam et al., Methods in Enzymology 101:582-598(1983))の方法を改変して抽出物を作製した。簡単に記せば、冷燐酸緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄した後、細胞をかきとって採集し、続いて遠心沈殿し、冷PBSで洗浄し再度遠心沈殿した。この沈殿物をディグナム(Dignam)緩衝液C(20mMヘペス緩衝液(pH7.9)、1.5mMMgCl2、0.42MNaCl、25%グリセロール、0.5mMジチオスレイトール(DTT)、0.5mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、1μg/Lロイペプチン、1μg/Lペプスタチン)に再懸濁させた。最終NaCl濃度を、細胞沈殿物の容積を基準にして0.42Mに調節し、細胞を凍結融解を繰り返して溶解させた。続いて抽出物を10000xgで4℃で20分遠心した。上清を回収して部分標本をとり、−70℃で保存した。
【0108】
ゲル移動度シフトアッセイ:
結合反応は20μlの容積で室温で実施した。典型的な反応混合物は、10mMトリス−Cl(pH7.9)、1mMMgCl2、1mMDTT、1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)および5%グリセロール中の1.5fmolの32PDNA、3μgの細胞抽出物、1から3μgのポリ(dI−dC)を含んでいた。保温後、反応混合物を4%アクリルアミドゲルで90−120分、160Vで0.5xTBE中で電気泳動に付し(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed. Cold Spring Harbor Press, NY, 2:11.23-11.44(1989))、続いて乾燥させオートラジオグラフを実施した。プローブは、製造元の指示にしたがい[α32P]デオキシCPTでクレノウ酵素(インビトロ標識キット、Amersham)によって標識するか、またはT4ポリヌクレオチドキナーゼを用い[γ32P]ATPによって標識した。続いて、G−50カラム(5プライム−>3プライム)または8%ポリアクリルアミドゲルのどちらかで標識プローブを精製した。
【0109】
II型のゲルシフト実験を実施するための細胞抽出物は、γ−インターフェロン処理(通常は100U/mlのインターフェロンで24から48時間)細胞から抽出物を得る点を除いて、正確にI型実験の場合にしたがって調製した(Dignam et al., 上掲書、582-598(1983); C. Giuliani et al., J. Biol. Chem. 270:11453-11462(1995); M. Saji et al., J. Biol. Chem. 272:20096-20107(1997); V. Montani et al., Endocrinology 139:280-289(1998a); V. Montani et al., Endocrinology 139:290-302(1998b))。同様に、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)は同じように実施した。EMSAに用いるオリゴヌクレオチドは合成するか(Operon Technologies, Inc)、またはキメラHLA−DRα−CAT構築物(Montani et al., 1998a, b)の制限酵素による処理に続いてQIAEX(Qiagen, Chatsworth, CA)もしくはジェットソーブ(Jet Sorb, Genomed)を用いて2%アガロースゲルで精製した。このオリゴヌクレオチドを仔牛の腸アルカリホスファターゼで脱リン酸化し、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて[γ−32P]dCTPまたは[γ−32P]ATPで標識し、続いて8%の非変性ポリアクリルアミドゲルで精製した(C. Giuliani et al., 上掲書、11453-11462(1995); M. Saji et al., 上掲書、20096-20107(1997); J. Sambrook et al., 上掲書、2:11.23-11.44(1989); V. Montani et al., 上掲書、280-289(1998a), 290-302(1998b))。
【0110】
II型のEMSAの場合の結合反応は同様に同じ条件を用いた。反応は20μlの容積で30分室温で実施した。反応混合物は、10mMトリス−Cl(pH7.9)、1mMMgCl2、1mMDTT、1mMEDTAおよび5%グリセロール中の1.5fmolの[32P]DNA、3μgの細胞抽出物、1.5から3μgのポリ(dI−dC)を含んでいた。表示がある場合は、非標識の二本鎖または一本鎖オリゴヌクレオチドを競合物として結合反応物に添加し、標識DNAを添加する前に抽出物とともに室温で20分保温した。同様に、抗血清を用いる実験では、上記の工程の前に、抗血清または正常ウサギ血清を含む同じ緩衝液中で室温で20分抽出物を保温した。保温の後で、反応混合物を0.5xのTBE中で1.5から2時間、室温で160Vで3.5または5%の非変性ポリアクリルアミドゲルで電気泳動を実施した。別に記載がなければゲルを乾燥させ、−80℃でオートラジオグラフを実施した。
【0111】
他の方法:
タンパク質濃度はブラッドフォード法(Bio-Rad)で測定し、標準物質は再結晶ウシ血清アルブミンであった。DNAを調製し、CsCl濃度勾配遠心沈殿によって精製した(L.G. Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier, NY, pp93-98(1986))。全ての構築物の配列は標準的な方法(F. Sanger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74:5463-5467(1977))で確認した。数値は、記載の実験の平均値±SEである。実験値間の有意差は平方偏差のニ方向分析によって決定し、全実験データを考察するとき、P値が<0.05である場合は有意である。
【0112】
MHCクラスIおよびMHCクラスII遺伝子のMMI感受性エレメント
MHCクラスI:
MMIに応答する調節配列がブタMHCクラスI遺伝子、PDIのプロモーターで特定された。2つの調節ドメインがPD1遺伝子の5’フランキング領域で特定された。下流の調節ドメインは、転写開始部位から約−203から−1bpの間に存在する(図1B)。この領域は、インターフェロン応答エレメントおよび主要エンハンサー(エンハンサーA)の他に環状AMP応答エレメント(CRE)を含む。ゲル移動度シフトアッセイを用いた実験では、MMI−誘発またはMMI−改変タンパク質はこの領域と相互作用し、転写開始、特にYボックスタンパク質を調節することができることが示された(Saji et al., 上掲書、20096-20107(1997); Singer et al.,米国特許5556754号(1996年9月17日))。別の複合調節領域(サイレンサーおよびエンハンサー活性のオーバーラップを示す)は、プロモーターの上流−769から−673の間にマッピングされた(J.D. Weissman & D.S. Singer, Mol. Cell. Biol. 11:4217-4227(1991))。この上流調節ドメインのエンハンサーおよびサイレンサー配列は、クラスI遺伝子の組織特異的発現および組織特異的レベルと連関し(J.D. Weissman & D.S. Singer, 上掲書、4217-4227(1991))、Sox−4を必要とする(D.S. Singer et al., 米国特許5556754号(1996))。
【0113】
Sajiら(J. Clin. Endocrinol. Metab. 75:871-878(1992b))は、MMIで処理したラットのFRTL−5細胞でのMHCクラスI遺伝子の発現低下を示した。この実験はまた、MHCクラスIの発現におけるMMIの作用は転写レベルに存在することを示した。MMIは下流の調節ドメインとの正常な複合体の出現を増加させ、上流の調節ドメインのサイレンサー複合体の出現を減少させる。これらの変化は構成的制御(上流調節ドメイン)の低下、および液性制御(下流調節ドメイン)の優勢をもたらす。MMI作用は、下流調節ドメインに作用するTSHに対して累積的である(Saji et al., 上掲書、20096-20107(1997); Singer et al.,米国特許5556754号(1996))。
【0114】
FRTL−5甲状腺細胞系は、したがってMMI作用に必要な調節DNA配列エレメントおよびトランス作動性因子を特定するために優れた系である。PD1ゲル移動度シフトアッセイは、PD1遺伝子の5’フランキング領域および、γ−インターフェロン処理もしくは未処理FRTL−5細胞、並びに、MMIおよびMMI誘導体および互変異性環状チオン処理FRTL−5細胞の細胞抽出物を用いて実施した(表1)。
【0115】
図1Aは、MMI誘導体または互変異性環状チオンゲルシフト活性のための領域をマッピングするために用いた140領域オリゴヌクレオチドのサイレンサーおよびエンハンサー領域を示している。対応するサイレンサーおよびエンハンサー領域は矢印で記されている。この140フラグメントは、PD1MHCクラスI遺伝子のPD1プロモーターに由来する(D.S. Singer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79:1403-1407(1982))。図2は、図1に記した放射能標識140フラグメントを用いたゲルシフトを示す。この図はMMIによって調節されるサイレンサー複合体を示している。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
レーン2は、サイレンサー領域と細胞抽出物との間で形成された複合体を示す:前記細胞抽出物は、5H培養液(TSHを含まない)プラス5%血清の存在下で維持したFRLT−5ラット甲状腺細胞から抽出された。5H培養液で維持した細胞から抽出物を調製する前に5mMのMMIを48時間細胞に添加することによって生じる影響は、図2のレーン1に示されている。1mM濃度の代表的なMMI誘導体を5H培養液で維持した細胞に抽出前に添加することによって生じる影響は、図2のレーン3から8に示されている。番号を付したこれら代表的な化合物の構造および名称は表1に示されている。MMIまたはその誘導体はサイレンサー複合体を減少させる。このような減少は、オートラジオグラフィーのデンシトメーターによる検査およびバス(Bas)画像化装置1500(例)によるホスホイメージングによって定量できる。定量は、コントロールに対する減少を基準にし、変化のないより速く移動する複合体によって標準化する。
以下の表2は表1に記載した化合物を用いた実験結果の要約を示しているが、EMSAでの種々の濃度の活性化合物を加えて改変されている。化合物10が最も効果的である。
【0119】
【表3】

【0120】
図3は、PD1プロモーターの下流領域の配列を示す。エンハンサーA(−180から−170bp)、インターフェロン応答エレメント(IRE;−161から−150bp)およびcAMP応答エレメント(CRE;−107から−100bp)の位置が示されている。下流サイレンサーは、−127から−80bpの間に存在する(Saji et al., 上掲書、20096-20107(1997))。127bpプローブ(−125から+1bp)を用いたとき、MMI(レーン4)またはTSH(レーン10)は迅速に移動するタンパク質/DNA複合体の形成を誘発する(図4)。この複合体は、5H細胞の処理後24から48時間で極めて明瞭である。MMI誘導体はまた、図4で化合物8(レーン1から3)について示すようにこの複合体を増加させることができる。もっとも測定に適した時間は24から48時間で(図4)、複合体は、上記に記載したようにデンシトメーターまたはホスホイメージャーを用いてコントロール(レーン7から9)と比較することによって定量することができる。この場合には、コントロール(1に設定)に対する増加が、5mMのMMIによって誘発される最大増加(任意に10と設定)に対して任意の単位で測定される。表1の全ての化合物を用いた結果(抽出物調製の48時間前に各々が細胞に種々の濃度で添加される)は表3に要約されている。ここでもまた、異なる細胞バッチに由来する抽出物を用いたいくつかの実験例を評価したとき、化合物10は明らかにもっとも有効である。
【0121】
【表4】

【0122】
MHCクラスII
主要組織適合性複合体(MHC)クラスII分子は異種ニ量体膜貫通糖タンパク質で、これらは、6番目染色体のHLA−D領域によってコードされ、免疫機能で中心的役割を果たす(R.M. German et al., Ann. Rev. Immunol. 4:281-315(1986); R.S. Schwartz & S.K. Datta, Autoimmunity and Autoimmune Dieases, in W.E. Paul (ed), Fundamental Immunology, Raven Press, NY, pp819-866(1989); C. Benoist et al., Ann. Rev. Immunol. 8:681-715(1990); L.H. Glimcher et al., Ann. Rev. Immunol. 10:13-49(1992); JP-Y Ting et al., Curr. Opin. Immunol. 5:8-16(1993))。クラスII抗原は、通常は抗原提示細胞(例えばB細胞、マクロファージまたは樹状細胞)上で発現される。クラスII分子は、CD4陽性Tリンパ球に抗原性ペプチドを提示し、T細胞活性化を惹起する(R.M. German, 上掲書、(1986); R.S. Schwartz et al., 上掲書(1989); C. Benoist et al., 上掲書(1990); L.H. Glimcher et al., 上掲書(1992); JP-Y Ting et al., 上掲書(1993))。クラスIIの発現は通常は上皮細胞(例えば甲状腺細胞、滑膜細胞または小島細胞)では明瞭ではないが、甲状腺細胞、滑膜細胞または小島細胞上でのクラスIIの異所性発現は、それぞれ甲状腺疾患、慢性関節炎、および糖尿病にそれぞれ付随している(G.F. Bottazzo et al., Lancet 2:1115-1119(1983); G.F. Bottazzo et al., N. Engl. J. Med. 313:353-360(1985); I. Todd et al., Ann. NY Acad. Sci. 475:241-249(1986); R.M. German et al., 上掲書(1986); G.R. Burmester et al., J. Clin. Invest. 80:594-605(1987); L.A. Piccinini et al., Clin. Endocrinol. (Oxf)26:253-272(1987); R.S. Schwartz et al., 上掲書(1989); C. Benoist et al., 上掲書(1990); L.H. Glimcher et al., 上掲書(1992); JP-Y. Ting et al., 上掲書(1993))。クラスIIの異所性発現は、細胞を抗原提示細胞にしてT細胞と相互作用させ、免疫反応を開始させるのではないかという仮説が浮上した(R.S. Schwartz et al., 上掲書(1989); A.P. Weetman et al., Endocr. Rev. 15:788-830(1994))。にもかかわらず、これは、組織に浸潤したリンパ球によって産生された例えばγ−IFNのようなサイトカインに対する二次反応であったかもしれないし、またその組織自体のより初期の傷害の結果であった可能性がある。より重要なことには、クラスIIが自己免疫性甲状腺疾患の開始に重要であるという直接的な証拠はほとんど存在しなかった(A.P. Weetman et al., 上掲書(1994))。しかしながら、最近の研究によってこの仮説はいっそう有力になった(N. Shimojo er al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:11074-11079(1996))。
【0123】
自己免疫性甲状腺疾患(ATD)の1形態はグレーブズ病で、この疾患では、自己抗体はTSHRに対して発生し、TSHの作用に類似することにより甲状腺機能亢進を誘発する。TSHRの細胞外ドメインで動物を免疫することによってグレーブズ病モデルを作製しようとする多くの試みが失敗に終ったが(例えば以下を参照されたい:G.S. Seetharamaiah et al., Autoimmunity 14:315-320(1993); Costagliola et al., J. Mol. Endocrinol. 13:11-21(1994); Costagliola et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 199:1027-1034(1994); Costagliola et al., Endocrinology 135:2150-2159(1994); A. Marion et al., Cell Immunol. 158:329-341(1994); N.M. Wagle et al., Autoimmunity 18:103-108(1994))、一方、ヒトのTSHRおよびMHCクラスII分子(どちらか一方ではなく)をトランスフェクトした線維芽細胞でマウスを免疫することによって、以下のようなグレーブズ病の主要な液性および組織学的特性を有するATDが誘発された(N. Schimojo et al., 上掲書11074-11079(1996):すなわち、刺激性TSHR抗体(TSHRAb)、刺激性TSHRAbとは異なるサイロトロピン結合抑制免疫グロブリン(TBII)、甲状腺ホルモンレベルの増加、甲状腺拡張、甲状腺細胞の過剰充実性である。これらの結果は、甲状腺細胞におけるMHCクラスII分子の異所性発現は、甲状腺を刺激する機能的なTSHRAbの誘発をもたらすことを示している。
【0124】
それらは、異所性クラスII発現の結果として、甲状腺細胞は抗原提示能力を獲得し、動物に通常存在するTおよびB細胞を活性化し、それによって、正常な免疫寛容を破壊することを示唆している。同様なことが、類リューマチ疾患、糖尿病、並びに自己免疫および異所性MHCクラスII発現に付随する多数の他の自己免疫疾患の発達に関係している。甲状腺細胞における異所性クラスII発現の基礎を理解することは、したがって、自己免疫性甲状腺疾患だけでなく他の多くの自己免疫疾患の病理学の理解にも潜在的に重要である。異所性MHCクラスII発現を抑制する、したがって自己免疫状態を抑制する薬剤の開発は重要である。このような薬剤はさらにMHCクラスIも抑制するかもしれない。
【0125】
FRTL−5甲状腺細胞でクラスII抗原の発現を誘発し、さらにATDで見られるヒトの甲状腺細胞での変化を模倣するγ−インターフェロン(γ−IFN)の能力は十分に記載されている(I. Todd et al., 上掲書(1985); M. Platzer et al., Endocrinology 121:2087-2092(1987); T. Misaki et al., Endocrinology 123:2849-2855(1988); M. Zakarija et al., Mol. Cell. Endocrinol. 58:329-336(1988))。ラットのFRTL−5甲状腺細胞におけるHLA−DR遺伝子の発現が、γ−IFN誘発異常発現のために重要なエレメントおよび因子を特定するためにFRTL−5甲状腺細胞モデルで研究され(V. Montani et al., 上掲書(1998a, b))、したがって、これは、ATDおよび他の免疫疾患で重要なエレメントおよび因子を特定するために合理的なモデルである。クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)レポーター遺伝子に結合させた、−176から+45bpのHLA−DR5’フランキング領域構築物を用いて、リンパ球とは異なり甲状腺細胞にはクラスII遺伝子の基礎発現は存在しないが、いくつかの免疫細胞と同様にγ−IFNによって発現が誘発されることが示された(V. Montani et al., 上掲書(1998a,b))。
【0126】
FRTL−5甲状腺細胞における異所性HLA−DR遺伝子発現を誘発するγ−IFNの能力は、MHCクラスIIを通常発現する免疫系の抗原提示細胞のように、その5’フランキング領域(−137から−65bp)上に高度に保存されたS、X1、X2、およびYボックスを必要とする(C. Benoist et al., 上掲書(1990); L.H. Glimcher et al., 上掲書(1992); JP-Y. Ting et al., 上掲書(1993); W. Reitg et al., Immunology 193:248-253(1995); V. Montani et al., 上掲書(1998a,b))。標識プローブとして−176または−137から+45bpのHLA−DR5’フランキング領域を用いゲルシフトアッセイによって、γ−IFN未処理FRTL−5細胞抽出物との主要なタンパク質/DNA複合体およびマイナーなより速く移動する複合体の形成が観察された(V. Montani et al., 上掲書(1998a,b))。γ−IFNによって誘発される異所性発現は、CBP(cAMP応答エレメント結合タンパク質のコアクティベーター)を含む特異的で新規なタンパク質/DNA複合体の形成の増加に付随する(V. Montani et al., 上掲書(1998a,b))。
【0127】
免疫細胞におけるクラスII遺伝子の発現を調節することが知られている2つの因子は、クラスIIトランスアクティベーター(CIITA)およびYボックス結合タンパク質である(JP-Y. Ting et al., 上掲書(1993); W. Reith et al., 上掲書(1995))。CIITAは非DNA結合性タンパク質トランスアクティベーターで、免疫細胞において構成的および誘発性MHCクラスII遺伝子発現を制御する分子スイッチとして機能する。CIITA発現はγ−IFNによって誘発され、その活性に必要であると考えられている(V. Steimle et al., Science 265:106-109(1994); W. Reith et al., 上掲書(1995); C.H. Chang et al., J. Exp. Med. 180:1367-1374(1996); B. Mach et al., Ann. Rev. Immunol. 14:301-331(1996))。ヒトのYボックスタンパク質、YB−1は、MHCクラスII遺伝子のYボックス(逆向きにされたCCAATボックス)に結合するというその能力によってクローニングされ(D.K. Didier et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:7322-7326(1988))、ヒトの神経膠芽腫細胞でのHLA−DR遺伝子の発現を抑制することが示された(JP-Y Ting et al., J. Exp. Med. 179:1605-1611(1944); G.H. MacDonald et al., J. Biol. Chem. 270:3527-3533(1995))。CIITAはγ−IFNによって誘発される複合体の形成を誘発することができ、さらに、FRTL−5細胞における異所性クラスII遺伝子発現に付随し(V. Montani et al., 上掲書(1978b))、FRTL−5細胞におけるYボックスタンパク質の過剰発現はこの複合体の形成を抑制する(V. Montani et al., 上掲書(1978b))。したがって、この複合体は、ATDに付随する異所性クラスII発現に必要で、さらに他の自己免疫疾患における異所性クラスII発現と関係があると考えることは合理的であろう。さらにまた、これらのデータは、クラスI遺伝子と同様にクラスIIの負の調節は一般的な転写因子、Yボックスタンパク質を必要とするという結論を支持し、クラスI遺伝子と同様に一般的な転写因子によるクラスIIの協調的な負の制御は、甲状腺細胞の増殖および機能のホルモン誘発増加時の自己寛容を維持するという以前の仮説(L.D. Kohn et al., 上掲書(1997); M. Saji et al., 上掲書(1998))と一致する。
【0128】
メチマゾール(MMI)はグレーブズ病の治療に有効な薬剤で、ラットまたはマウスの実験的甲状腺炎を予防する(D.S. Cooper, N. Engl. J. Med. 311:1353-1362(1984); T.F. Davies et al., J. Clin. Invest. 73:397-404(1984); W. Reinhardt et al., Endocrinol. Invest. 12:559-563(1989))。甲状腺細胞におけるMHCクラスII遺伝子発現に対するメチマゾールの作用は、しかしながら、矛盾に満ちている。したがって、グレーブズ病の患者でMHCクラスII抗原の発現を抑制する抗甲状腺薬の能力に関しては相違する報告が存在し(J.C. Carel et al., in The Thyroid and Autoimmunity, Drexhage and Weirsinga (eds), Excerpta Medica, Amsterdam, pp.145-147(1986); J. Aguayo et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 66:903-908(1988); T.F. Davies et al., Clin. Endocrinol. (Oxf)31:125-135(1989))、外科手術前にMMIで処置された難治性グレーブズ病患者では免疫学的パラメーターに関しては用量依存性が認められないことが懸念された(R. Paschke et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 80:2470-2474(1995))。にもかかわらず、γ−IFNまたはCIITA誘発複合体形成は、HLA−DR遺伝子発現の増加と同様に時間と濃度の関数としてFRTL−5甲状腺細胞でメチマゾールによって抑制される(V. Montani et al., 上掲書(1998a))。したがって、FRTL−5細胞におけるこの複合体のMMIによる抑制は、異所性MHCクラスII発現および自己免疫疾患を抑制するMMIの能力のマーカーと考えることができる。自己免疫疾患におけるクラスIIの異所性発現およびクラスIの異常発現の臨床的な関係性は、ヨウ化物がクラスIIおよびクラスI(これらはグレーブズ病の甲状腺で増加する)の両方の発現を抑制するという観察によって明瞭に示された(F. Schuppert et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 81:3622-3628(1996))。ヨウ化物は、MMIと同様に、グレーブズ病の患者を治療するために用いることができ、グレーブズ病患者の甲状腺摘出の準備として広範囲に用いられてきた(S. Nagataki et al., Autoregulation: effects of iodide. In: L.E. Braveman, R.D. Utiger,(eds), Werner & Ingbar’s The Thyroid: a fundamental and clinical text. Lippencott-Raven, Philadelphia, 241-247(1996))。
【0129】
図5は、HLA−DRの−176bpから5'−フランキング領域のヌクレオチド配列を示している。S、X1、X2およびYボックス(またはエレメント)(これらは、今日までに性状を調べられた全てのMHCクラスIIプロモーターで保存されている)、HLA、−DR、−DQおよび−DPには太線を付し、DRの5'および3'末端には数値を記した。いくつかの報告(JP-Y Ting et al., 上掲書(1993); C. Benoist et al., 上掲書(1990))にあるより限定的なSボックスは、より広いSボックスの上に太い点線で示した(広いSボックスは本明細書および他の報告(A.M. Reimold et al., J. Immunol. 151:4173-4182(1993))で用いられている)。
【0130】
図6は、32P標識DRα−5'フランキング領域プローブが、TSHの存在下および非存在下で維持され、さらにγ−IFNで処理または処理されていないFRTL−5細胞の抽出物とタンパク質/DNA複合体を形成する能力について電気泳動移動度シフト分析で調べたものを示している。プローブは、−137から+45bpのDR−CATキメラ(A.M. Reimold et al., 上掲書(1993); V. Montai et al., 上掲書(1998a,b))の制限酵素処理によって切り出し、図の下方に模式的に示した。抽出物は、細胞同士がほぼ集密状態(confluency)までTSH中で増殖させるか、または5H培養液で6日間維持したFRTL−5ラット甲状腺細胞から得た。各々2組の培養を、実験の終了前の最後の48時間100U/mlのγ−IFNで処理した。各組の細胞から調製した細胞抽出物を、DRα 5'−フランキング領域の−137bpを含む32P標識プローブと保温し、上記のとおりにEMSAを実施した。この実験では、オートラジオグラムは−70℃で一晩露光させた。
【0131】
図7は、32P標識DRα5'−フランキング領域プローブとのタンパク質/DNA複合体形成を増加させるγ−IFNの能力に対するMMIの影響を示している。放射能標識プローブは図6で使用し模式的に示したものと同じである。前記プローブは、DRα−CATキメラの−137bpから+45bpの5'−フランキング領域を含んでいる。抽出物は、TSH中でコンフルエンシーまで増殖させ、5H培養液で6日間維持し、続いて100U/mlのγ−IFN、5mMMMIまたはその両方で実験の終了前の最後の48時間したFRTL−5ラット甲状腺細胞から得た。上記の記載のとおり図6のように細胞抽出物を保温し、EMSAを実施した。矢印は、図6に認められる上方および下方複合体を示している。この実験では、オートラジオグラムは−70℃で72時間露光させた。レーン5は、コントロール細胞の抽出物を含んでいる。IFNまたはMMIで処理した細胞抽出物はパネルの上に記載されている。細胞抽出物がTSH中で集密状態まで増殖させ、続いて100U/mlのγ−IFNで実験の終了前の最後の48時間処理したFRTL−5ラット甲状腺細胞から調製された場合は、同じ結果が得られた。
【0132】
MMIの場合(図7)と同じプロトコルを用いたとき(ただしオートラジオグラムの露光時間は異なる)、種々の活性化合物(MMI誘導体または互変異性環状チオン)は、図8で示すように、細胞上でのクラスIIのインターフェロン誘発(異所性)発現または構成的発現に連関してクラスII複合体を減少させることが示された。化合物2、7、8はMMIよりも極めて有効なサプレッサーである(それぞれ図8Aのレーン4および図8Bのレーンレーン2および4に対して図8Aのレーン2および図8Bのレーン3)。各々の化合物についてのIFN誘発複合体における平均的減少の定量化は表4に示す。
総合すれば、種々の誘導体の異所性クラスII発現に対する影響(γ−IFNによって増加する複合体形成の減少により測定される)は、化合物によって異なり、定量が可能である。化合物10は、上記に記載したクラスIのシフトの場合と同じようにもっとも有効である。
【0133】
【表5】

【0134】
実施例3
一過性トランスフェクション分析およびCATアッセイによる、MHCクラスIおよびクラスIIのプロモーター活性に対するMMI誘導体および互変異性環状チオンの影響の評価
プラスミドの構築:
pSV3CATのマルチクローニング部位に挿入される完全長のPD1プロモーター、PD1CAT構築物pH(−38)は以前に記載された(R. Erhlich et al., Immunogenetics 30:18-26(1989))。pSV3CATのマルチクローニング部位に挿入される完全長のPD1プロモーターの連続的欠損変異体もまた以前に報告された(D.S. Singer et al., 上掲書(1991); Saji et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1944-1948(1992a); Saji et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 75:871-878(1992b))。簡単に記せば、PD1遺伝子の上流レギュレーター領域について入れ子式5'欠損シリーズをBal3消化によって作製した。このシリーズの5'末端は−1012塩基対から−68塩基対の範囲であるが、全ては共通の3'境界部分を+15塩基対に含んでいた。この欠損シリーズをまたpSV3CATレポーター構築物でクローニングし、プロモーターの活性を評価した(J.D. Weisman et al., 上掲書(1991); J. Maguire et al., Mol. Cell. Biol. 12:3078-3086(1992))。クラスIプロモーター活性に対するMMI、MMI誘導体または互変異性環状チオンの作用をスクリーニングするために、3つのクローン、p(−1100)CAT、p(−203)CATおよびp(−127)CATを一般的に用いたが、p(−203)CATが好ましい。数字は、PD1プロモーターの5´フランキング領域中のもっとも5´側の残基を示す。
【0135】
HLA−DRプロモーター構築物の構築もそれらの性状と同様に報告された(A.M. Reimold et al., 上掲書(1993))。さらに別のCAT構築物を、鋳型として5'フランキング領域の−176から+45を含むHLA−DRα−CATキメラおよび種々のプライマーを用いてPCRによって構築した(V. Montani et al., 上掲書(1998a,b))。例えば、HLA−DRαの5'−フランキング領域の−38から+45bpを含むプラスミドを以下のプライマーを用いて構築した:5'SphI制限部位を有する5'プライマー、5'−ACATGCATGCGGTCAGACTCTATTACACCCCAC−3'およびXbaI制限部位を有する3'プライマー、5'−CTAGTCTAGTTTGGGAGTCAGTAGAGCTCG−3'(V. Montani et al., 上掲書(1998a,b))。PCR生成物は、フェノール−クロロホルム抽出で精製し、XbaIおよびSphIで消化し、2%アガロースゲルでジェットソーブ(Jet Sorb, Genomed, Frederick, MD)を用いて精製し、仔牛腸アルカリホスファターゼ(New England Biolabs, Beverly, MA)で脱燐酸し、CAT−ベーシックベクター(Promega, Madison, WI)のSphIおよびXbaI部位にDNA連結キット(Takara Biochemical, Inc., Berkley, CA)を用いて記載にしたがい再連結した(A.M. Reimold et al., 上掲書(1993); V. Montani et al., 上掲書(1998a,b))。
【0136】
サイログロブリン(TG)−CAT構築物、pTG−688−CATは、先に述べたpTG−CATキメラ(H. Shimura et al., Mol. Endocrinol. 8:1049-1069(1994))から得たTGプロモーター挿入物を、クラスIIプロモーター挿入物を切り出したHLA−DRα−CATキメラに代入することによって得られた。CATレポーター遺伝子を含むが挿入物を含まないベクターはコントロールである。
【0137】
細胞培養:
FRTL−5甲状腺細胞(Interthyr Research Foundation, Baltimore, MD;ATCC CRL8305)は、先に述べたゲルシフト実験で用いたものと同じサブクローン(F1)であった。それらを以下の培養液で増殖させた:クーンの改変F12培溶液で以下を含む:5%の熱処理したマイコプラズマの存在しない仔牛血清、1mMの非必須アミノ酸、および以下を含有する6ホルモン混合物(6H)(1x10-10MのTSH、10μg/mlのインスリン、0.4ng/mlのコーチゾル、5μg/mlのトランスフェリン、10ng/mlのグリシル−L−ヒスチジル−L−リジンアセテート、および10ng/mlのソマトスタチン)。細胞はニ倍体で5代から25代継代のものであった。新しい培養液を2から3日毎に加え、細胞は7−10日毎に継代した。いくつかの実験では、細胞同士がほぼ接触するまで6H培養液中で増殖させ、続いて実験開始前の5−8日間TSHを含まない5H培養液で維持した。
【0138】
トランスフェクションとCAT分析:
CAT活性によって示されるMHCクラスIプロモーター構築物のプロモーター活性を測定するために、2つの方法を用いた。1つの方法では、ラットのFRTL−5甲状腺細胞に以前に報告された電気穿孔によってトランスフェクションを施した(M. Saji et al., 上掲書(1992b); C. Giuliani et al., 上掲書(1995); M, Saji et al., 上掲書(1997))。簡単に記せば、FRTL−5細胞を80%の細胞密度に増殖させ、5%仔牛血清を含む新しい6H培養液に12時間静置し、採集して洗浄し、0.8mLの電気穿孔緩衝液(272mMのシュクロース、7mMの燐酸ナトリウム(pH7.4)および1mMのMgCl2)に1.5x107細胞/mLで懸濁させた。20μgの完全長CAT構築物を5μgのpSVGHとともに添加した。続いて細胞に電気パルスを与え(330ボルト、静電容量25μファラッド)、平板培養し(約6x106細胞/平板)、5%仔牛血清含有6H培養液で12時間培養した。この時点で細胞を以下の培養液に静置した:5%仔牛血清添加5H培養液(コントロール)、5%仔牛血清および5mMMMIまたは異なる濃度の活性化合物(MMI誘導体または互変異性環状チオン)添加5H培養液、または5%仔牛血清および5mMMMIまたは異なる濃度の活性化合物添加6H培養液。48時間後それらを採集した。細胞生存度はほぼ80%であった。培養液をhGH放射能免疫アッセイのために採取し、トランスフェクション効率をモニターし(Nichols Institute, San Juan Capistrano, CA)、細胞はCATアッセイのために採集した。前記アッセイでは20−50μgの細胞溶解物を最終容積130μlで用いた。保温は37℃で2から4時間実施した。アセチル化クロラムフェニコールは薄層クロマトグラフィー(TLC)で分離し、TLCプレートの陽性スポットを切り出し、シンチレーション測定装置で定量した。CAT活性は、データーを比較する前に、GH活性および/または細胞タンパク質について標準化した。
【0139】
また別に、一過性トランスフェクションでは同じクラスI−CATキメラおよびDEAEデキストラン法を用いた(M.A. Lopata et al., Nucleic Acids Res. 12:5707-5717(1984); C. Giuliani et al., 上掲書(1995))。集密状態まで(細胞密度80%)細胞を6H培養液で増殖させ、1日間5H培養液にシフトさせ、ダルベッコの改変燐酸緩衝食塩水(DPBS)(pH7.4)で2回洗浄し、プラスミドDNAおよび250μgのDEAEデキストラン(5Prime-3Prime, Inc.)を含む、5mLの血清非含有5H培養液とともに1時間保温した。続いて細胞をDPBS中の10%ジメチルスルホキシドに3分間暴露し、DPBSで2回洗浄し、5H培養液で24時間培養し、続いて表示のようにMMI、MMI誘導体または互変異性環状チオンの存在下または非存在下でさらにもう48時間、同じ場所で維持した。トランスフェクション効率は、上記のように、または5μgのpRSVLuc(J.R. De Wet et al., Mol. Cell. Biol. 7:725-737(1987))を同時トランスフェクションすることによって決定した。
【0140】
MHCクラスIIプロモーター構築物のプロモーター活性を測定するために、FRTL−5細胞の一過性トランスフェクションを以下の方法の1つを用いて実施した(V. Montani et al., 上掲書(1998a, b))。1つの方法では、FRTL−5細胞をほぼ80%の細胞密度に6H培養液で培養し、採集して洗浄し、0.85mLの電気穿孔緩衝液(272mMのシュクロース、7mMの燐酸ナトリウム(pH7.4)および1mMのMgCl2)に1.5x107細胞/mLで再懸濁させた。プラスミドDNA、CATキメラ20μgを2μgのpRSV−ルシフェラーゼとともに添加した(後者はトランスフェクション効率の測定のために用いた)。細胞にパルス刺激を与え(330ボルト、静電容量25μファラッド)、平板培養し(6x106細胞/平板)、γ−IFNを補充または補充していない5%仔牛血清添加6H培養液で培養した。表示の時点でCATおよびルシフェラーゼアッセイのために細胞を採集した。第二の方法は以下のとおり相違する。FRTL−5細胞は6H培養液で80%の細胞密度に増殖させ、続いて5%仔牛血清添加5H培養液で6日間維持した。細胞を6H培養液に12時間戻し、上記のようにトランスフェクトし、5%仔牛血清添加6H培養液で12時間維持した。培養液を続いて、γ−IFN補充または非補充5%仔牛血清添加の新しい5H培養液に交換した。CAT活性を上記のように測定し、数値は、プロメガ(Promega, Madison, WI)アッセイ系を用いて測定したルシフェラーゼ活性について標準化した。
【0141】
FRTL−5甲状腺細胞におけるγ−IFN誘発クラスII発現に対するMMI、MMI誘導体、または互変異性環状チオンの影響を調べるために、以下の方法を用いた。−137bpまたは−176bpDRα−CATキメラの一過性トランスフェクションを記載のように実施し、トランスフェクション後12時間から表示の時間100U/mlのγ−IFNで処理した。各々2組の細胞に、5mMのMMI、または表示の濃度のMMI誘導体または互変異性環状チオンをγ−IFNと同時に添加し、48時間後にCAT活性を測定した。細胞の生存度は全てのサンプルで約85±5%であった。結果は、CAT活性をルシフェラーゼ活性と細胞タンパク質の両方について修正した後、γ−IFNまたはMMIが存在しないベクターコントロールとの比較で表した。全ての事例でこれらの修正は、5%未満の活性の変化を生じた。同じ結果が、TSHを含まない培養液で維持した細胞を用いるまた別のトランスフェクションプロトコルによって得られた。
【0142】
基礎クラスIプロモーター活性に対するMMIの影響およびTSHとのその付加作用を示す代表的な例は下記に提示されている。図9では、5%仔牛血清添加5H培養液で維持したFRTL−5細胞に、ブタのクラスIプロモーターの5'−フランキング領域の1100bpを含むCATキメラが記載のようにトランスフェクトされた。12時間後、培養液を新しい5H培養液に交換した。この培養液は1x10-10MのTSH、5mMのMMIまたは両者を含むものと含まないものである。細胞は36時間後にアッセイした。培養液中にTSHまたはMMIを含まないトランスフェクタントから得られた数値をコントロールとし、100%に設定した。数値は3つの実験の平均で、P<0.05(*)またはP<0.01(**)の有意の増加又は減少を示している。MMIはクラスIの基礎プロモーター活性を減少させることができ、その作用はTSH存在下でも非存在下でも細胞で測定可能であることが明らかである。
【0143】
第二の実験(図10、パネルA)では、ブタクラスIプロモーターの5'−欠損変異体のCATキメラのプロモーター活性に対するMMIおよびTSHの影響をFRTL−5細胞で調べた。6H培養液(+TSH)で増殖させたFRTL−5細胞にPD1の5'−フランキング領域を含む種々の構築物を電気穿孔でトランスフェクトした。12時間後、培養液を以下の新鮮な培養液に交換した:6H培養液(+TSH)、5mMのMMI添加6H培養液(+TSH/+MMI)またはTSHもMMIも含まない5H培養液。CAT活性は36時間後に測定した。変換率は、ルシフェラーゼレベルおよびタンパク質について標準化した。6H培養液で維持した細胞での−1100bp構築物の活性(第一の棒線)にコントロール値100%を割り振った。数値は、各々2組で実施した3つの異なる実験の平均±SEである。それぞれの構築物についての基礎発現レベルの相違は、それぞれの調節エレメント(それらのいくつかはパネルBに示されている)の活性を反映している。表示の調節エレメントには以下が含まれる:(a)異なる組織で構成的クラスIレベルを調節する場合に重要な上流サイレンサー/エンハンサー領域;(b)血清応答エレメント;(c)エンハンサーA;(d)インターフェロン応答エレメント;(e)構成的サイレンサーエレメント内にCRE類似配列を含む38bpの構成的サイレンサー(C. Giulian et al., 上掲書(1995); M. Saji et al., 上掲書(1997))。さらに記載されるものは、(f)CCAATおよび(g)TATAボックスで、これらは転写開始に重要である。これらの結果は、いずれの構築物もMMI誘導体のスクリーニングに用いることができるが、p(−203)CATが最良であるかもしれない。なぜならば、そのCAT活性はより容易に測定でき、さらにそのMMI抑制作用は最良であるからである。
【0144】
MMIの作用はまた、γ−インターフェロンで処理した細胞で容易に測定できる。別の場所で述べたように、FRTL−5甲状腺細胞でクラスIを増加させさらにクラスII抗原の発現を誘発し、さらにATDで見られるヒト甲状腺細胞の変化を模倣することができるγ−IFNの能力は、文献によく記載されている(I. Todd et al., 上掲書(1985); M. Platzer et al., 上掲書(1987); T. Misaki et al., 上掲書(1988); M. Zakarja et al., 上掲書(1988))。γ−IFNによって増加するクラスI発現またはγ−IFN誘発クラスII異所性発現に対するMMIまたはMMI誘導体の影響に関する研究は、したがってATDおよび他の免疫疾患において重要な活性を示すための合理的なモデルである。例としてp(−1100)CAT、p(−203)CAT、およびp(−127)CATクラスIキメラを用いて、クラスIプロモーター発現を増加させるγ−IFNの能力を容易に測定でき、さらにこの作用を低下させるMMIの能力も容易に測定できる(表5)。
【0145】
この実験では、FRTL−5細胞を6H培養液(TSH添加)で集密状態まで増殖させ、続いてγ−IFNまたはIFN+MMIで40時間処理する前に、5H培養液(TSH非添加)で7日間維持した。コントロール細胞は、5H培養液で同じく40時間維持したものである。CAT活性は上記のように測定した。γ−IFN処理は、CATプラスミド(pSV0コントロールは除く)をトランスフェクトした細胞は全て有意に(P<0.05または0.01)CAT活性を増加させた。重要なことには、MMIは、全CATプラスミド(pSV0は除く)トランスフェクト細胞でCAT活性を増加させる(P<0.01)γ−IFN処理の能力を顕著に低下させた。
【0146】
【表6】

【0147】
表6は、基礎クラスI活性に対するMMI、多数のMMI誘導体または互変異性環状チオンの影響を示している。表7は、IFNで増加したクラスIプロモーター活性に対するMMI、多数のMMI誘導体または互変異性環状チオンの影響を示している。化合物10の影響は両事例で明らかに最良で、化合物11,7および8がそれに続く。
【0148】
CATに結合させたHLA−DRα−176bpまたは−137bp最小プロモータークラスIIキメラを用いて、FRTl−5甲状腺細胞でのHLA−クラスII遺伝子の発現を評価した。ベクターコントロールと比較したとき、細胞がラットのリコンビナントγ−IFNで処理されなければ、HLA−DRαは一過性にトランスフェクトしたFRTL−5甲状腺細胞で発現されない(図11、各パネルの第一と第二の白棒および斑入り棒のセット)。ラットγ−IFNの作用は、ヒトγ−IFNでは再現されず、内因性クラスII発現の増加に付随していた(この増加は蛍光による全パートナー分析を用いたフローサイトメトリーで測定した(図12))。したがって、γ−IFN作用は特異的で、内因性クラスII抗原に対する影響を反映しているようである。−176bpDRα−CATキメラの−137−122−11−97−38bpへの漸進的5'欠損は、免疫細胞と同様にSボックス(−137から−123bp)がいったん除去されると、γ−IFN誘発は失われることを示した(図11、パネルA)。さらにまた、免疫細胞と同様に、γ−IFN−誘発は、Sボックスだけでなく活性のためにはX1、X2およびYボックスもまた必要とする。したがって、各々のエレメントの変異は、各々γ−IFN反応の喪失(図11、パネルB、MUTS、MUTX1、およびMUTY)または顕著な低下を生じる。
【0149】
【表7】

【0150】
【表8】

【0151】
この実験では一過性トランスフェクションは、TSHを含む培養液(6H培養液)中でほぼコンフルエンシーまで増殖させたFRTL−5細胞で実施し、トランスフェクション後に100U/mlのγ−IFNで24時間処理した。結果は、CAT活性をルシフェラーゼ活性および細胞タンパク質について修正した後、γ−IFNの非存在下でのベクターコントロール(各パネルの最初の白棒)との比較で表されている。全ての事例でこれらの修正は、5%未満の活性の変化をもたらした。結果は、3つの異なる細胞バッチで実施した3つの別々の実験の平均±SDである。1つの星印(*)は、γ−IFNで誘発されたDRαプロモーター活性における統計的に有意な増加(P<0.01)を示し、2つの星印(**)は、−176bpDRα最小プロモーターがS、X1、X2およびYボックスに変異を含むときγ−IFNで誘発されたDRαプロモーター活性における統計的に有意な減少(P<0.01)が存在することを示している。同じ結果が、TSHを含まない培養液で維持された細胞を用いるまた別のプロトコルによっても得られた。図11(上段左)は、枠で示したS、X1、X2およびYボックスの位置および欠損部分を表示した5'−末端の位置と合わせて−176bpDRα−CATを模式的に示している。図の上段右には、S、X1、X2およびYボックス内の変異が示されている。
【0152】
総合すれば、他の抗原提示細胞または免疫疾患に付随する異所性クラスII発現を示す細胞の場合のように、γ−IFNはFRTL−5細胞におけるHLA−DRαプロモーター発現を増加させることができ、インターフェロンの作用は、この作用のために全てのクラスII遺伝子に存在する高度に保存された同じ5'−フランキング領域エレメント、S、X1、X2およびYを必要とする(G.F. Bottazzo et al., 上掲書(1983); I. Todd et al., 上掲書(1985); G.F. Bottazo et al., 上掲書(1986); G.R. Burmester et al., 上掲書(1987): R.S. Schwartz et al., 上掲書(1989); C. Benoist et al., 上掲書(1990); L.H. Glimcher et al., 上掲書(1992); JP-Y. Ting et al., 上掲書(1993))。
【0153】
クラスII遺伝子発現を増加させるγ−IFNの能力は、−176bp(データーは示されていない)または−137bpDRα−CATキメラのどちらが一過性トランスフェクションに用いられたかにかかわらずその濃度に依存する。最大の効果が、各事例で100U/mlのγ−IFNで明瞭であった(図13、パネルA)。MMIは、最大有効濃度のγ−IFNが時間の関数として−137bpDRα−CATキメラの活性を増加させる能力を阻害する。したがって、100u/mlのγ−IFNによって誘発されるCAT活性は、MMI添加後24および48時間で進行的に減少した(図13、パネルB)。図13パネルBのMMIの濃度は5mMであるが、その作用はより低いMMI濃度で明瞭であり、MMI濃度に依存していた(図14)。
【0154】
これらの実験では、一過性トランスフェクションは−137bpDRα−CATキメラを用いて実施された。FRTL−5細胞は6H培養液でほぼコンフルエンシーに増殖させ、トランスフェクションから12時間して開始し表示の時間100U/mlのγ−IFNで処理した。MMIは、γ−IFNと同時またはγ−IFN添加後24時間して2組の細胞に添加した。CAT活性は、γ−IFN添加後48時間で測定し、結果は、CAT活性をルシフェラーゼ活性と細胞タンパク質について修正した後、γ−IFNの非存在下でのベクターコントロールとの比較で示されている。全ての事例でこれらの修正は、5%未満の活性の変化をもたらした。結果は、3つの異なる細胞バッチで実施した3つの別々の実験の平均±SDである。図13、パネルAでは、1つの星印(*)は、γ−IFNで誘発されたDRプロモーター活性における統計的に有意な増加を示す。図13、パネルBでは、2つの星印(**)は、メチマゾールの24または48時間暴露によるγ−IFN誘発DRαプロモーター活性の統計的に有意な減少を示している。図14では、2つの星印(**)は、MMIによるγ−IFN誘発DRαプロモーター活性の統計的に有意な減少を示している。同じ結果が、TSHを含まない培養液で維持された細胞を用いるまた別のプロトコルによっても得られた。
【0155】
【表9】

【0156】
γ−IFNおよびMMIの両者の作用は特異的であった。したがって、どちらもコントロールベクターには影響を与えず、各々はTG−CATキメラに対しては反対の効果を示した(表8)(すなわち、γ−IFNはTG−CAT活性を低下させ、MMIはTG−CAT活性におけるγ−IFN誘発低下を逆転させた)。さらにまた、MMI単独ではTG−CAT活性は増加するが、HLA−DRαCAT活性は増加しなかった(表8)。この実験では、先の実験のように、6H培養液で80%の細胞密度に増殖させ、5H培養液で6日間維持し、トランスフェクションの12時間前に6H培養液に戻したFRTL−5細胞で記載のように一過性トランスフェクションを実施した。12時間後、100U/mlのγ−IFNおよび/または5mMのMMIを補充しまたは補充していない新しい5H培養液に交換した。CAT活性は48時間後に測定した。全ての実験で細胞の生存度は85%であった。結果は、活性をルシフェラーゼ活性および細胞質タンパク質の両者について修正した後、未処置コントロールとの比較で示されている。全ての事例でこれらの修正は、5%未満の活性の変化をもたらした。結果は、3つの別々の実験の平均±SDである。
【0157】
CATアッセイでのγ−IFN誘発外因性クラスII遺伝子発現に対するその作用と一致しかつ同時に、MMIは、フローサイトメトリーで測定されたように、細胞表面の内因性クラスII抗原発現を減少させた(図12)。この実験では、FRTL−5細胞をTSH中でほぼコンフルエンシーに増殖させ、5H培養液で8日間維持し、続いて、図13および14で述べたように、100U/mlのγ−IFN、5mMのMMIまたは両者で最後の48時間処理した。細胞をRT1.Bに対するフルオレセインイソチオシアネート共役クラスII特異的モノクローナル抗体(クローンOX−6、Sera Labs, UK)で、4℃で60分染色し、ダルベッコーの燐酸緩衝食塩水で2回洗浄し、レーザーフローサイトメトリーに付した。
【0158】
表9は、FRTL−5甲状腺細胞におけるγ−IFN誘発クラスII活性にMMI、MMI誘導体または互変異性環状チオンの影響を査定した実験の結果の要約である。抑制の有効性はクラスIのそれと同様で、化合物10>化合物11>化合物7および8>化合物2>MMIである。
【0159】
したがって、クラスIまたはクラスIIプロモーターのキメラCAT構築物のCAT活性を測定することは、クラスIまたはクラスII活性に対するMMI、MMI誘導体または互変異性環状チオンの影響をアッセイするためのもう1つの方法である。これらのアッセイは、自己免疫疾患の治療または移植治療に関連して採用される治療でMMIに類似する能力をもつ薬剤を評価するために用いることができる。
【0160】
【表10】

【0161】
実施例4
MMI誘導体または互変異性環状チオンの評価に使用する高処理アッセイの作製とこれらアッセイでの前記物質の活性
クラスIRNAレベル、クラスIおよびクラスIIゲルシフト、並びにクラスIおよびクラスIIプロモーター構築物を用いた一過性トランスフェクションに対するMMI誘導体または互変異性環状チオンの作用についてのこれまでの結果は、全てのアッセイで全ての化合物について類似の結果が得られることを示した。したがって、有効性の順序、すなわち化合物10>11>7または8>2>MMIは、全てのアッセイで同じであった。このことによって、ただ1組のアッセイが種々の誘導体の高処理スクリーニングで有用である可能性が示唆された。スピードと定量の観点から、FRTL−5甲状腺細胞でクラスIおよびクラスIIプロモーター構築物の安定なトランスファクタントを作製することは有用なアプローチとなろう。以下の実験はこのことが正しいことを示している。
【0162】
MHCクラスIおよびクラスIIプロモーター−ルシフェラーゼキメラプラスミド:
ブタのPD1 5'−フランキング配列−CATキメラ(−1100、−203、および−127)、および−107から−100bpの欠損を含むCRE部位を有する2つの変異体(−203ΔCREおよび−127ΔCRE)を用いて、ルシフェラーゼレポーター遺伝子構築物を作製した。挿入物は制限酵素消化によって遊離させ、QUIAEX(QIAGEN, Chatsworth, CA)を用いてアガロースゲルで精製し、さらにDNA連結キット(TAKARA biomedicals, TAKARA SHUZO Co.)を用いてPGL−2ベーシックベクター(Promega, Madison, WI)のNheI−HindIII部位に連結した。JM109細菌のコンピテント細胞(Promega, Madison, WI)を前記連結反応物で形質転換し、寒天平板で37℃で12時間平板培養した。コロニーをとり、QIAprepスピンプラスミドキット(QIAGEN, Chatsworth, CA)および制限酵素消化を用いてミニプレップでスクリーニングした。続いて、プラスミドをCsCl勾配遠心沈殿で精製した。
【0163】
同様に、pCAT−ベーシックベクターに挿入されたHLADRαプロモーター、p(−176)CATおよびp(−137)CATを制限酵素消化によって遊離させ、QIAEX(QUIAGEN, Chatsworth, CA)を用いてアガロースゲルで精製し、5'−フランキングMluI部位を有する挿入物のPCRによる構築のための鋳型として用いた。PCR生成物をフェノール−クロロホルム抽出によって精製し、MluIおよびXbaIで消化し、QIAEX(QUIAGEN, Chatsworth, CA)を用いてアガロースゲルで精製し、DNA連結キット(TAKARA biomedicals, TAKARA SHUZO Co.)を用いてPGL−2ベーシックベクター(Promega, Madison, WI)のMluI−NheI部位に連結した。JM109細菌のコンピテント細胞(Promega, Madison, WI)を前記連結反応物で形質転換し、寒天平板で37℃で12時間平板培養した。コロニーをとり、QIAprepスピンプラスミドキット(QIAGEN, Chatsworth, CA)および制限酵素消化を用いてミニプレップでスクリーニングした。続いて、プラスミドをCsCl勾配遠心沈殿で精製した。
【0164】
FRTL−5細胞の安定なトランスフェクタント:
リポフェクタミン法(GIBCO, Life Technologies, Inc.)法を用いて、PD1−PGL−2ベーシック構築物およびクラスII−PGL−2ベーシック構築物でFRTL−5細胞を安定にトランスフェクトした。6H中でほぼコンフルエンシーに達した細胞を、20μgのプラスミドDNAおよび2μgのpcDNA3neoまたはpPUR選別ベクター(CONTECH, Palo Alto, CA)で同時にトランスフェクトした。24−48時間後に、400μg/mlのG418(GIBCO, Life Technologies, Inc)または10μMのピューロマイシン(Sigma)を培養液に添加した。3週間後に、抗生物質耐性コロニーを制限希釈によってクローニングし、それらのインターフェロン感受性についてスクリーニングした。各構築物の少なくとも5細胞株を単離し、細胞の培養液に100U/mlγ−インターフェロンを添加して各々の活性を増加させた。以下のデータ(表10−13)は、クラスIまたはクラスII−ルシフェラーゼキメラの各々のクローンの1つを用いて得られたが、それらは、それぞれの少なくとも3つの他のクローンを代表するものであった。
【0165】
ルシフェラーゼアッセイ:
ルシフェラーゼ活性は、ルシフェラーゼアッセイ系(Promega, Madison, WI)を用いて測定した。簡単に記せば、100mmの培養皿から得た処理または未処理細胞をPBSで洗浄し、かきとって微量遠心管に採集した。ペレットを1倍のレポーター溶解緩衝液100μlに溶解し、室温で15分保温した。細胞をドライアイス+エタノール中で凍結し、さらに室温の水で融解させた。ボルテックスミキサーで10秒攪拌し、管を12000xgで5分遠心した。12μlの上清を100μlのルシフェラーゼアッセイ試薬と混合し、直ちにルミノメーターに静置した。2秒置いた後10秒間光を測定した。
【0166】
安定なトランスフェクタントに対するMMI誘導体および互変異性環状チオンの影響:
TSHの存在下または非存在下で100U/mlのインターフェロンとともに維持した処理細胞は、クラスIおよびクラスIIプロモーター活性を増加させた(表10)。この実験では、FRTL−5細胞をTSHを含む6H培養液で80%の細胞密度に増殖させ、続いて100U/mlのγ−インターフェロン、5mMのMMIまたはその両方で処理した。ルシフェラーゼ活性は記載のように40時間後に測定した。いくつかの点が顕著である。第一に、インターフェロンは安定なトランスフェクタントでクラスIおよびクラスIIプロモーター活性の両方を増加させる。第二に、MMIは、インターフェロンによって増加したクラスIプロモーター活性およびインターフェロンによって増加したクラスIIプロモーター活性の両方を抑制する。第三に、一過性トランスフェクトアッセイと異なり、MMIは基礎クラスI活性は顕著には減少させない。最後に、インターフェロンによって誘発されるクラスI活性はCREの存在を必要とする:これは、インターフェロン誘発CIITAはクラスIおよびクラスII活性における増加の仲介因子であり、その活性にCREを必要とするということを示唆する最近の結果と一致する(Saji et al., 上掲書(1997); V. Montani et al., 上掲書(1998a, 1998b); Balducci-Silano et al., Endocrinology 139:2300-2313(1998))。
【0167】
p(−203)クラスIルシフェラーゼキメラのインターフェロンによって増加するクラスI活性に対する種々のMMI誘導体および互変異性環状チオンの活性は表11に示されている。一過性トランスフェクション実験で明らかな同じパターンが認められる。すなわち、化合物10の活性>11>7または8>2>MMIである。したがって、このアッセイは、RNA、ゲルシフトおよびプロモーターの一過性トランスフェクションに対する影響を測定した他の実験のデータと一致する。しかしながら、このアッセイはいくつかの主要な利点を有する。細胞は5H状態へ変化させることを必要とせず、したがって細胞調製時間が少なくなる。労力集約的な一過性トランスフェクションは不要である。このアッセイは迅速で、放射性物質による第二の長時間にわたる保温を必要としない。最後に、このアッセイは各化合物による生細胞の処理を必要とするので、細胞毒性および生存度は容易に観察でき定量することができ、そのために酵素活性の測定よりもin vivoでの使用についてより優れた予想を提供できる。
【0168】
p(−203)クラスIルシフェラーゼキメラの基礎クラスI活性に対する種々のMMI誘導体および互変異性環状チオンの活性は表12に示されている。興味深いことには、1または5mMのMMIは基礎活性に対して顕著な影響を与えないという事実にもかかわらず、より活性の高い誘導体はこのスクリーニングアッセイでは有効であるようにみえる。繰り返せば、これらの活性は迅速に、40時間の処理時間を含めて細胞の分割の7日以内に測定される。
【0169】
p(−137)クラスIIルシフェラーゼキメラのインターフェロンによって増加したクラスII活性に対する種々のMMI誘導体および互変異性環状チオンの活性は表13に示されている。一過性トランスフェクション実験で明らかな同じパターンが認められる。すなわち、化合物10の活性>11>7または8>2>MMIである。したがって、このアッセイは、クラスIRNA、クラスIおよびIIゲルシフト並びにクラスIおよびクラスIIの両プロモーターの一過性トランスフェクションに対する影響を測定した他の実験のデータと一致する。
【0170】
【表11】

【0171】
【表12】

【0172】
【表13】

【0173】
【表14】

【0174】
MMIおよび互変異性環状チオン誘導体の評価で使用する一般的高処理アッセイおよびそれらアッセイでの誘導体の活性:
MHCクラスIおよびクラスIIプロモーター構築物を安定的にトランスフェクトされたFRTL−5甲状腺細胞に対するMMI誘導体および互変異性環状チオンの作用を示した以前の結果は、これらのアッセイが他の全てのアッセイと類似の結果を生じることを示した。したがって、有効性の順序、すなわち化合物10>11>7または8>2>MMIは同じである。さらにまた、これらのデータは種々の誘導体の高処理スクリーニングのための好ましい方法を確立させた。この方法は以下のとおりである。
【0175】
1.MHCクラスIまたはクラスIIプロモーター構築物、好ましくはそれぞれp(−203)MHC−クラスI−LUCまたはp(−137)MHC−クラスII−LUCで安定的にトランスフェクトしたFRTL−5細胞を、5%仔牛血清添加の完全な6H培養液、および400μg/mlのG418(GIBCO, Life Technologies, Inc.)または10μMのピューロマイシン(Sigma)中で、必要なアッセイ数に応じて6、12、24または96穴(ウェル)プレートで増殖させる。
【0176】
2.細胞が60−70%の細胞密度の時に、これら細胞をMMI誘導体、互変異性環状チオンまたは他の化合物(5mMまたはそれより低い濃度で)の存在下または非存在下で新しい培養液とともに100U/mlのγ−インターフェロンで処理する。好ましくは5mMから5nMの濃度範囲で、2組ずつで検査する。
【0177】
3.36から48時間後、好ましくは40時間後に、6、12、または24穴プレートの細胞を1mLのPBSで洗浄し、かきとって微量遠心管に採集し、遠心して細胞をペレットにする。
4.ペレットを1倍のレポーター溶解緩衝液20、50または100μlに、繰り返しマイクロピペットで出し入れするか、またはボルテックスミキサーで攪拌することによってそれぞれ溶解し、室温で15分保温する。
【0178】
5.細胞をドライアイスとエタノール中で凍結し、室温の水で溶解する。ボルテックスミキサーで10秒間攪拌した後、試験管を12000xgで5分遠心する。
6.96穴プレートの細胞を1倍のレポーター溶解緩衝液100μlを添加し、繰り返しマイクロピペットで出し入れすることによって溶解し、さらに室温で15分保温する。
7.用いたプレートに応じて5から100μlの上清を100から300μlのルシフェラーゼアッセイ試薬と混合し、直ちにルミノメーターに静置する。
8.光を2秒間の猶予の後10秒間測定する。
【0179】
通常はウェル間でタンパク質濃度に顕著な相違は存在しないが、ルシフェラーゼの生データは、上清溶液中のタンパク質濃度を測定することによって標準化できる。アッセイ感度を高めるために、または実験室でのタイムスケジュール調節のために、60%の細胞密度に達した後、細胞を5H培養液(TSHなし)に2から7日間移し、処理が開始する12時間前に6H培養液に戻すことができる。
【0180】
インターフェロンはクラスIおよびクラスIIプロモーター活性の両方を安定なトランスフェクタントで増加させ、インターフェロンで誘発される活性の抑制は、自己免疫疾患の患者でそれら化合物の作用の一番代表的なものであるので、この方法は最適である。しかしながら、クラスIトランスフェクタントについては、インターフェロンの非存在下でのテストが、基礎プロモーター活性に対する影響を評価するために実施できる。このアッセイがインターフェロン作用について特異的あることを担保するために、テストは、p(−203ΔCRE)MHC−クラスI−LUCトランスフェクト細胞(これはインターフェロンに反応しない)で実施できる。
【0181】
このアッセイは、RNA、抗原発現、およびプロモーターの一過性トランスフェクションに対する影響を測定する他の実験のデータと一致する。しかしながら、このアッセイはいくつかの主要な利点を有する。細胞は5H状態へ変化させることを必要とせず、したがって細胞調製時間が少なくなる。労力集約的な一過性トランスフェクションは不要である。
【0182】
実施例5
MHCクラスIおよびMHCクラスIIのmRNAレベルに対するMMI誘導体および互変異性環状チオンの影響の評価:
一過性または安定にトランスフェクトされたFRTL−5細胞での外因性MHCクラスIおよびMHCクラスIIプロモーター活性にを低下させるMMI誘導体および互変異性環状チオンの能力は、前記細胞でMHCクラスIおよびクラスIIRNAレベルを同様に低下させる前記誘導体の能力と平行していた。したがって、プロモーター活性の測定は、他の種(例えばヒトまたはブタ)のプロモーターもしくはプローブ、および異なるアッセイ技術(外因性対内因性遺伝子発現の変化を測定する)を使用したとしても、細胞内の現象を再現することができる。これらのデータはまた、遺伝子発現を調節するタンパク質生成物を測定するゲルシフトの変化およびMHC表面発現(図12)とも一致する。
【0183】
細胞および処理:
FRTL−5甲状腺細胞は、以前にゲルシフトおよびトランスフェクション実験で用いたものと同じ新しいサブクローン(F1)で、そこで詳細に述べた全ての特性を保有していた。TSHの存在下での前記細胞のダブリングタイムは36±6時間で、その非存在下では前記細胞は分裂しない。TSHを含まない5H培養液で6日経過後、1x10-10MのMSHによって、cAMPレベル、ヨウ化物の取り込み、およびDNAへのチミジンの取り込みは10倍を越えた。細胞は2倍体で、5代から25代継代で以下を補充した5%仔牛血清添加クーンの改変F12培溶液で増殖させた:1mmol/Lの非必須アミノ酸(GIBCO, Grand Island, NY)および以下の6ホルモンの混合物(TSH(1x10-10M)、インスリン(10μg/ml)、ヒドロコーチゾン(0.4ng/ml)、ヒトトランスフェリン(5μg/ml)、ソマトスタチン(10μg/ml)およびグリシル−L−ヒスリジル−L−リジンアセテート(10 ng/ml))(F.S. Ambesi-Impiombato, 米国特許4,608,341号(1986); L.D. Kohn et al., 米国特許4,609,622号(1986))。継代は7−10日毎に実施し、新しい培養液を2または3日毎に加えた。細胞は使用前4−6日にTSHを含まない培養液(5H)に移した。実験は、新しい培養液中の1x10-10MのTSH、100U/mlのγ−インターフェロン、表示の濃度のMMI誘導体または互変異性環状チオン、またはこれらの混合物を添加することによって開始した。新しい培養液のみのものはコントロールとした。RNAは40時間後に単離した。
【0184】
RNA単離とノザン分析:
全細胞RNAを単離し、ノザン分析を実施し、フィルターを以下のcDNAプローブ(0.5−1.0x106cpm/ml)を用い文献にしたがって連続的にハイブリダイズさせた(O. Isozaki et al., Mol. Endocrinol. 3:1681-1692(1989); M. Saji et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:1944-1948(1992); M. Saji et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 75:871-878(1992))。プローブのうち3つは以前に記載されたものであった:全cDNA挿入物に広がるブタMHCクラスIpH7クローンの1.0kbのHpaIIフラグメント(M. Saji et al., 上掲書(1992));陽性コントロールとして使用されるラットサイログロブリン(P. Santisteban et al., J. Biol. Chem. 262:4048-4052(1987); O. Isozaki et al., 上掲書(1989));陰性コントロールとして用いられるβ−アクチン。MHCクラスIIDNAプローブはPCR増幅546bp生成物(クラスII配列の74から619bpの間)で、これは、インターフェロン処理ラットFRTL−5細胞RNAに由来し、以下のプライマーをPCRで使用した:センスプライマーのヌクレオチド配列は、5'−AGCAAGCCAGTCACAGAAGG−3'で、アンチセンスプライマーのヌクレオチド配列は5'−GATTCGACTTGGAAGATGCC−3'で、2つの領域は、クラスIIヌクレオチド配列およびタンパク質配列において高度に保存されている。PfuDNAポリメラーゼを用いた増幅後、生成物をアガロースゲルで精製し、続いて[32P]dCTPおよびクレノウ酵素を用いてランダムプライム放射能標識を実施した。
【0185】
全ての実験は異なる細胞バッチで少なくとも3回繰り返し、生物学的変動性を査定した。数値は、別に記載がなければこれらの実験の平均±SDである。実験数値間の有意性はスチューデントt検定または平方偏差の2方向分析を用いて決定した。数値は、全実験のデータを考慮したときPが0.05未満の場合有意である。
【0186】
結果:
検査したMMI誘導体および互変異性環状チオンは、基礎クラスI並びにインターフェロン誘発クラスIおよびクラスIIRNAレベルの両方を減少させた。TSH非存在下で維持した細胞の基礎クラスIRNAレベルに対するMMI誘導体および互変異性環状チオンの影響は表14に提示されている。TSH存在下で維持した細胞のγ−インターフェロン誘発クラスIRNAレベルに対する影響は表15に、TSH存在下で維持した細胞のγ−インターフェロン誘発クラスIIRNAレベルに対する影響は表16に提示されている。全ての実験で、RNAレベルは、オートラジオグラムのレーザーデンシトメトリーによって、またはβ−アクチンに対するBASホスホイメージングによって定量される。コントロール細胞におけるβ−アクチンレベルに対するクラスIまたはクラスII比を100%レベルとする。百分率で示した抑制は、この比を減少させるMMI誘導体または互変異性環状チオンの影響を示す。
【0187】
一般に、前記誘導体の作用は全てのRNAアッセイで同様で、化合物10>11>7または8>2>MMIであった。より重要なことには、この順序は、プロモーター活性に対する影響をテストするトランスフェクション実験で測定されたクラスIおよびクラスII遺伝子発現の両者に対する誘導体の能力と一致する。
サイログロブリンRNAに関する実験は前記誘導体の特異性を強調し、予期せぬ結果を提供している。MMIは、クラスIおよびクラスIIの事例(表14−16)のようにRNAレベルを低下させるよりはむしろ、TGRNAレベルをほぼ2倍に増加させる。予期に反することには、これは、比較可能な増加が明瞭ではないほとんどのMMI誘導体および互変異性環状チオン、特にクラスIおよびクラスIIRNAレベルの減少にもっとも有効な化合物(10、11、7および8)には当てはまらない。このことは、これらの誘導体/チオンは自己免疫疾患の治療に有効で甲状腺機能に対する副作用がメチマゾールよりも少ないかもしれない。
【0188】
【表15】

【0189】
【表16】

【0190】
【表17】

【0191】
【表18】

【0192】
図12で指摘したように、タンパク質/DNA複合体およびプロモーター活性を低下させるMMIの能力は、フローサイトメトリーによって測定されるように抗原発現を減少させるMMIの能力に付随する。MMI誘導体および互変異性環状チオンはまた、γ−インターフェロンによって誘発されるMHCクラスIおよびクラスII抗原発現をフローサイトメトリーで測定されたように減少させた。
【0193】
この実験では、文献にしたがって(V. Montani et al., 上掲書(1998b); M. Saji et al 上掲書(1992a); P. L. Balducci-Silano et al., Endocrinology 139:2309-2313(1998))、106細胞をMHCクラスIIまたはクラスI特異的抗体と保温した。氷上で30分後、細胞を燐酸緩衝食塩水(pH7.4)で洗浄し、フルオレセイン−イソチオシアネート(FITC)共役抗体と30分保温し、続いてセルケスト(CellQuest)ソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて、ファックスキャンサイトメーター(FACScan Cytometer)でフローサイトメトリーによって分析した。
インターフェロン誘発クラスIおよびクラスII表面発現の抑制を達成するために必要な濃度は、異なる濃度の化合物をテストすることによって決定した(表18)。他の全てのアッセイと同様に、有効性の順序は以下のとおりであった:化合物10>11>7または8>2>MMI>3。
【0194】
【表19】

【0195】
実施例6
(NZBxNZW)F1マウスの蛋白尿またはNODマウスの糖尿病を予防する、MMI、MMI誘導体(2−メルカプトイミダゾール)または互変異性環状チオン(化合物10)の能力:
本実験の目的は、NZBマウスでの狼瘡またはNODマウスでの糖尿病の発症に対するMMIおよび互変異性環状チオン(化合物10)の影響を、メチマゾール誘導体(2−メルカプトイミダゾール)と比較することによって決定することであった。化合物10は、多数のin vitroアッセイでクラスIおよびクラスII遺伝子発現を抑制するためにもっとも効果的であるとされた化合物で、対照的に、2−メルカプトイミダゾールはMMIより効果が弱く、クラスIおよびクラスII遺伝子発現を抑制する能力は無視しえるものであった。これらは、in vivo相関物に関する特定方法の有効性を立証するアッセイである。
【0196】
雌の(NZBxNZW)F1マウスは、加齢とともに偶発的にヒトの全身性紅斑性狼瘡(SLE)に類似する自己免疫疾患を発症する(Mozes et al., Clinical Immunology 18:106-113(1998))。同様に、雌のNODマウスは加齢とともにI型糖尿病に類似する疾患を発症する(Makino et al., Exp. Anim. 29:1-13(1980); L.S. Wicker et al., Diabetes 35:855-860(1986))。前者の事例では、蛋白尿が疾患の開始の基準で、後者の事例では、糖尿が疾患の開始の基準である。
【0197】
方法:
雌の(NZBxNZW)F1マウスはジャクソンラブ(Jackson Labs)から入手した。蛋白尿を半定量的に測定するために動物をAMES2855ウリスティックス(Uristix)(Miles)で見守った。蛋白尿はSLEの発症基準として、さらに腎臓における腎複合体の抑制として蛋白尿のMMI抑制の基準として採用した(Mozes et al., J. Clin Immunology 18:106-113(1998))。7−8ヶ月で、マウスは腎疾患を示す蛋白尿を生じる。治療は2ヶ月齢から6ヶ月齢で、経口的であった。各群は8匹の動物で開始した。
雌のNODマウスはまたジャクソンラブから,コントロールマウスと一緒に入手した。このコントロールマウスから前記の系統が得られた(Makino et al., Exp. Anim. 29:1-13(1980); L.S. Wicker et al., Diabetes 35:855-860(1986))。1+より高いTes−Tape陽性度を示す動物は陽性と考え、糖尿病であるとした(L.S. Wicker et al., 上掲書(1986))。8−16週では、10−40%のNODマウスが糖尿を生じ、文献のとおり糖尿病を発症した(L.S. Wicker et al., 上掲書(1986))。
【0198】
結果:
雌の(NZBxNZW)F1マウスを用いた実験(表19)では、全ての生存コントロール動物および全ての2−メルカプトイミダゾール処理動物は顕著な蛋白尿を7.5ヶ月で発症した。対照的に、MMIおよび化合物10(5−フェニルメチマゾール)(これはMMI濃度の1/5)は顕著に蛋白尿を予防した。各群の動物を殺処分し、免疫複合体について腎臓を調べた。データによればコントロール動物は著名な数の免疫複合体を腎臓に有し、一方、MMIまたは化合物10で処理した動物ではそのようではなかった(図15)。この実験では、5μmの厚い凍結腎切片で盲検態様で免疫組織学検査を実施した。この切片は固定し、FITCに結合させた免疫グロブリンG(γ鎖特異的)に対するヤギ抗体で文献(Mozes et al., Sciece 261:91-93(1993); E. Mozes et al., 上掲書(1998))にしたがって染色した。化合物10(互変異性環状チオン)およびMMIはこの実験モデルでは、SLEの予防に有効である。
【0199】
この実験では数匹の動物が、技術的理由(すなわち過去2ヶ月間のケージの水あふれ、取り扱いなど)のために死亡した。しかしながら、コントロール群の損失は実験群と同様であった。MMI、2−メルカプトイミダゾールおよび化合物10の処置は2から6.25ヶ月齢に実施された。
表20は、MMIおよびMMIの1/5濃度の化合物10(5−フェニルメチマゾール)で処理したとき糖尿および糖尿病を発症する雌のNODマウス(各群5匹)の能力を、2−メルカプトイミダゾールで処理したものまたは未処理のものと比較することによって示している。この実験ではマウスはジャクソンラブから入手した。1+より高い尿Tes−Tape陽性を示す動物を陽性で糖尿病であると考えた。
【0200】
この実験では、全ての生存コントロール動物および全ての2−メルカプトイミダゾール処理動物は12週までに糖尿病を発症した。対照的に、MMIおよび5−フェニルメチマゾール(MMI濃度の1/5)は両者とも糖尿を予防した。化合物10およびMMIはしたがって糖尿病のNODマウスの例で糖尿病の予防に有効である。技術的理由(すなわち過去2ヶ月間のケージの水あふれ、取り扱いなど)のための動物の死亡はコントロール群および実験群で同様で、結果に影響を及ぼさなかった。
これら2つの実験の結果は、in vitroアッセイは、in vivoで自己免疫疾患を治療するために有効な薬剤をそれらのクラスIおよびクラスII遺伝子発現をラットFRTL−5細胞でin vitroで抑制する能力を基に検出することができるという結論を支持する。さらにまた、MMI濃度の1/5でそのような作用を示し、さらに毒性のない化合物10の能力は、FRTL−5甲状腺細胞培養でこのアッセイプロトコルを使用することによってin vivoの有効性を合理的に予想することができるという仮説を実証しているように思われる。
【0201】
【表20】

【0202】
実施例7
インターフェロンによって誘発されるYボックスタンパク質レベルの低下に対するメチマゾールおよび互変異性環状チオンの影響:
MHCクラスIおよびクラスII遺伝子発現を抑制することが判明している因子の1つはYボックス結合タンパク質である(M. Saji et al., 上掲書(1997); J.P-Y. Ting et al., J. Exp. Med. 179:1605-1611(1994))。ヒトYボックスタンパク質、YB−1は、MHCクラスII遺伝子のYボックス(逆方向CCAATボックス)に結合する能力によってクローニングされた(D.K. Didier et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:7322-7326(1988))。YB−1のトランスフェクションによって、ヒトの神経膠芽腫細胞およびFRTL−5甲状腺細胞でのHLA−DRα遺伝子の発現が抑制されることが示された(J. P-Y. Ting et al., 上掲書(1994); G.H. MacDonald et al., J. Biol. Chem. 270:3527-3533(1995); V. Montani et al., 上掲書(1998a))。FRTL−5細胞のYボックスは、サイロトロピンレセプター(TSHR)遺伝子発現を抑制する能力によってクローニングされ(H. Shimura et al., J. Biol. Chem. 268:24125-24137(1993); M. Ohmori et al., Mol. Endocrinol. 10:76-89(1996))、したがってTSHRサプレッサーエレメント結合タンパク質−1(TSEP−1)と名づけられた。TSEP−1は甲状腺自己調節系の成分で、この系では、FRTL−5甲状腺細胞が、TSHチャレンジ後に機能的局面および増殖局面を経過するとき、TSH/cAMPはTSHRおよびMHCを減少させる(H. Shimura et al., 上掲書(1993); M. Ohmori et al., 上掲書(1996); L.D. Kohn etal., 上掲書(1995))。TSH/cAMPはYボックス遺伝子発現を増加させ、YボックスはTSHRおよびクラスI遺伝子発現のサプレッサーで、結果としてTSHRおよびクラスI遺伝子発現は低下する。
【0203】
γ−IFNは、FRTL−5細胞のYボックスタンパク質RNAレベルを減少させ、一方、MMIはこの作用を逆転させる(図16)。この実験では、FRTL−5細胞は完全な6H培養液プラス5%仔牛血清で維持され、100U/mlのγ−IFN、以下から選ばれる活性化合物(5mMのメチマゾール、0.1mMの化合物10、0.25mMの化合物11、0.5mMまたは0.25mMの化合物7、8および9、または0.5mMの化合物3)、またはIFNおよび異なる活性化合物の両方で40時間処理してから、全細胞RNAを単離し、文献(O. Ozaki et al., 上掲書(1989); M. Saji et al., Endocrinology 130;520-533(1992); M. Ohmori et al., 上掲書(1996))にしたがってノザン分析を実施した。ラットのTSEP−1プローブは、クローン31挿入物(報告されたラットTSEP−1ヌクレオチド配列の残基5から1395)(M. Ohmori et al., 上掲書(1996))であった。ラットのβ−アクチンはDr. B. Paterson(NCI, Bethesda)から提供された。全てのプローブの放射能標識、ハイブリダイゼーション(0.5−1.0x106cpm/ml)および洗浄は文献(O. Isozaki et al., 上掲書(1989); M. Saji et al., 上掲書(1992); M. Ohmori et al., 上掲書(1996))にしたがった。
γ−IFNによって減少するTSEP−1レベルに対するMMI誘導体および互変異性環状チオンの影響は表21に示されている。TSEP−1RNAレベルにおけるγ−IFN誘発低下を逆転させる化合物の能力は、繰り返せば10>11>7または8>2>MMI>3である。これは他の全てのアッセイのデータと類似する。
【0204】
YB−1はYボックス結合タンパク質のプロトタイプである。これをクラスIIプロモーターの放射能標識Yボックスエレメントを用いてクローニングし、λgt11発現DNAライブラリー(D.K. Didier et al., 上掲書(1998))をスクリーニングした。γ−IFN誘発クラスII遺伝子発現を抑制するTB−1の能力の直接的な証拠は神経膠芽腫細胞およびFRTL−5細胞で提供された(J. P-Y. Ting et al., 上掲書(1998a))。別個の実験でも、それがMHCクラスI遺伝子発現を抑制することが示された(M. Saji et al., 上掲書(1997))。これらのデータはγ−IFNはYボックスRNAレベルを低下させることを示している。Yボックスタンパク質が減少するとしたら、クラスIおよびクラスIIのYボックスによる抑制の低下がまたもたらされると推定することは合理的であろう(なぜならば、YボックスはクラスIおよびクラスII遺伝子発現を抑制する)。簡潔にいえば、γ−IFNがMHC発現を増加させる手段は両遺伝子のYボックスによる抑制を低下させることができるという仮説は合理的である。これらのデータはさらに以下のことを示している:MMI、MMI誘導体および互変異性環状チオンはYボックスRNAレベルのγ−IFN誘発低下を逆転させ、この作用は、MHC遺伝子発現のγ−IFN誘発増加を減少させるそれら化合物の作用(ゲルシフト、RNAレベルまたはプロモーター活性で判断された)と同時に発生する。総合すれば、我々は以下のように考える:γ−IFNは、TSEP−1RNAレベルを減少させることによってクラスIIの抑制性作用を低下させ、CIITARNAレベルを増加させることによって同時にクラスII発現を増加させる。正味の結果は、MHCクラスIIの“異所性”発現および異常なクラスI発現である。メチマゾールは、TSEP−1(Yボックス)RNAレベルに対するγ−IFNの影響を逆転させ、HLA−DRα5'−フランキング領域とγ−IFNとの複合体を排除する(V. Montani, 上掲書(1998a))ことによってこれを逆転させる。IFNによって増加したクラスIおよびクラスII遺伝子発現の抑制でより高い活性を有する本明細書で開示した誘導体は、Yボックス遺伝子発現に対するIFNの作用を逆転させるためにMMIより強力な能力を有する。これらの薬剤の効果の1つは、したがって、MHC遺伝子発現を変化させ、自己免疫反応を悪化させるインターフェロンの作用を予防または逆転させることである(図17)。これらの薬剤はまた同様に、自己免疫過程を開始させる最初のまたは初期の標的組織における損傷を、基礎クラスI遺伝子発現の減少によって立証されたように減少させることができる(図17)。
興味深いことには、MMI、MMI誘導体および互変異性環状チオンは基礎YボックスRNAレベルに対してごくわずかの作用を有する。このことは、前記化合物の作用は、YボックスRNAレベルにおけるγ−IFN誘発変化に対する作用で選択的である可能性を補強し、Yボックスによって制御される正常な生理的過程を害しないことを強調する。
【0205】
【表21】

【0206】
実施例8
本発明の医薬組成物の製造
組成物の投与:
本発明の活性化合物を投与する手段には以下が含まれるが、ただしこれらに限定されない:経口、舌下、筋肉内、腹腔内、経皮、鼻腔内、髄内、皮下または腸内である。患部への限局投与は当技術分野で既知の手段で達成できるが、これには以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):局所塗布、注射、輸液および多孔性装置の埋め込み(その中に本発明の化合物が含有されている)。したがって、本発明の活性化合物は、医薬的に許容できる賦形剤および他の製剤補助剤とともに本発明の1つまたは2つ以上の活性化合物を組み合わせて含有する医薬組成物として一般的に投与されるであろう。
【0207】
製剤補助剤:
そのような組成物は、水溶液、乳液、クリーム、軟膏、懸濁液、ゲル、リポソーム懸濁液などでもよい。適切な賦形剤には水、食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、および、エタノール、グルコース、シュクロース、デキストラン、マンノース、マンニトール、ソルビトール、ポリエチレングリコール(PEG)、リン酸塩、アセテート、ゼラチン、コラーゲン、カルボポル(登録商標)、植物油などの溶液が含まれる。さらにまた、適切な保存料、安定剤、抗酸化剤、抗菌剤、および緩衝剤、例えばBHA、BHT、クエン酸、アスコルビン酸、テトラサイクリンなどを含むことができる。製剤で有用なクリームまたは軟膏基剤には、ラノリン、シルバデン(登録商標)(Marion)、アクアホア(登録商標)(Duke Laboratories)などが含まれる。また別には、本発明の活性化合物を適切なポリマーマトリックスまたは膜に包含するか被包化し、したがって局所的に処置されるべき部位の近くに埋め込むために適した徐放性装置を提供してもよい。他の装置には、体内カテーテルおよびアルゼット(登録商標)ミニポンプのような装置を含む。市販の賦形剤、例えばソルビ−ケア(登録商標)(Allergan)、ネオデクドロン(登録商標)(Merck, Sharp & Dohme)、ラクリルーブ(登録商標)などを用いて眼科用調製物を製剤化してもよい。さらに、膨張剤、例えばヒト血清アルブミン、シュクロース、マンニトロールに含ませて本発明の活性化合物を提供してもよい。医薬的に許容できる賦形剤の完全な考察は以下の成書から得ることができる:Remington’s Pharmaceutical Sciences I(Mack Pub. Co.)(この文献は参照により本明細書に含まれる)。
【0208】
経口/非経口投与:
本発明の活性化合物は、自己免疫疾患の治療および器官および/または組織の移植の実施のための一般的な方法に従って経口的にも非経口的にも投与できる。任意の具体的な自己免疫および/または移植疾患の治療に必要とされる活性化合物の量はもちろん、疾患の性質および重篤度、対象者の年齢および状態、並びに当業者によって容易に決定できる他の因子に応じて変動しうる。活性化合物は単位剤形(好ましくは分割された単位剤形)で投与される。前記単位剤形は、活性化合物を適切な生理学的に許容される担体または賦形剤とともに含み、後者の多くは当業者には周知で上記に記載されている。単位剤形は、液体調製物(例えば溶液、懸濁液、分散剤、または乳液でもよく、それらはまた固体製剤(例えばピル、錠剤、カプセルなど)でもよい。単位剤形の医薬組成物、すなわち個々の投薬を使用者が計量することを要しない1回投与に適した予め計量された形態として利用可能な医薬組成物、例えばピル、錠剤、カプセル、またはアンプルが、本発明の活性化合物の特に好ましい投与方法である。
【0209】
具体的/好ましい指示:
自己免疫疾患および移植疾患の治療のために、単位剤形中の医薬組成物は、1日当たり約0.05から約60ミリグラム、好ましくは約0.05から約20ミリグラムの活性化合物を提供する組成物量を含む。経口投与用製剤を製造するためには、本発明の活性化合物またはその塩を、例えば固形粉末担体(例えばラクトース、シュクロース、マンニトール;澱粉、例えばジャガイモ澱粉、トウモロコシ澱粉またはアミロペクチンの他にラミナリア粉末およびかんきつ類パルプ粉末;セルロース誘導体、ゼラチン)と混合し、また潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウムまたはカルシウム、適切な分子量のポリエチレングリコール(カルボワックス)を添加して圧縮錠剤または糖衣用錠剤を生成してもよい。後者は、例えば濃縮糖溶液(アラビアゴム、タルクおよび/または二酸化チチニウムを含むことができる)で被覆するか、または容易に揮発する有機溶媒または有機溶媒混合物に溶解した膠で被覆する。染料をこれら被覆物に、例えば活性物質の含有量の相違を区別するために添加してもよい。本明細書で有用なカプセルには、例えば軟ゼラチンカプセル(真珠形閉鎖カプセル)、ジェルタブ、他のカプセルが含まれる。後者は、例えばゼラチンおよびグリセリンの混合物から成り、活性物質または適切なその塩を以下のものとともに含有する:固形粉末担体、例えばラクトース、シュクロース、ソルビタール、マンニトール;澱粉、例えばジャガイモ澱粉、トウモロコシ澱粉またはアミロペクチン、セルロース誘導体、またはゼラチンの他にステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸。座薬は、直腸適用のための剤形として用いられる。これらは、活性物質または適切なその塩と中性脂肪性基剤との混合物から成る。また、ゼラチン直腸カプセルを用いてもよい。これは、活性物質またはその塩と適切な分子量のポリエチレングリコール(カーボワックス)との混合物から成る。
【0210】
非経口用、特に筋肉内投与用アンプルは、好ましくは、活性化合物または水溶性のその塩および適切な安定剤、さらに必要な場合には緩衝物質の水溶液を含む。抗酸化剤、例えば重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸またはロンガリット(ホルムアルデヒド−重亜硫酸ナトリウム化合物)などが、単独または併用される安定剤として適切で、総濃度は組成物の0.01から約0.05%である。キレートを形成するその能力のために、アスコルビン酸はさらに別の安定剤効果を有し、この機能の場合にはアスコルビン酸は他のキレート形成物質と置き換えることができる。活性成分のもっとも高い安定性は、例えば亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、および/またはアスコルビン酸を適切な割合で混合するか、または他の緩衝物質(例えばクエン酸および/またはその塩)を添加することによって達成できる。さらに、アンプルは微量の保存料を含むことができる。
【0211】
本発明の活性化合物を投与するための有用な医薬製剤は下記に例示される。それらは通常の技術によって製造される。
カプセル:
活性成分 0.05から20mg
ラクトース 20−100mg
トウモロコシ澱粉U.S.P 20−100mg
エアロゾル化シリカゲル 2−4mg
ステアリン酸マグネシウム 1−2mg
【0212】
錠剤:
活性成分 0.05から20mg
微小質セルロース 50mg
トウモロコシ澱粉U.S.P 80mg
ラクトースU.S.P 50mg
ステアリン酸マグネシウム 1−2mg
この錠剤は通常の技術にしたがって糖で被覆できる。被覆物質に着色料を添加してもよい。
【0213】
咀嚼可能錠剤:
活性成分 0.05から20mg
マンニトール、N.F 100mg
香料 1mg
ステアリン酸マグネシウムU.S.P. 2mg
【0214】
座薬:
活性成分 0.05から20mg
座薬基剤 1900mg
【0215】
リキッド:
活性成分 2.0%
ポリエチレングリコール300、N.F. 10.0%
グリセリン 5.0%
重亜硫酸ナトリウム 0.02%
ソルビトール溶液70%、U.S.P. 50%
メチルパラバン、U.S.P. 0.1%
プロピルパラバン、U.S.P. 0.2%
蒸留水(U.S.P)で総量を100.0ccとする
【0216】
注射用:
活性成分 0.05から60mg
ポリエチレングリコール600 1.0cc
重亜硫酸ナトリウムU.S.P. 0.4mg
注射用の水(U.S.P)で総量を2.0ccとする
【0217】
実施例9
SLE、自己免疫疾患に罹患しているヒトの治療
SLEに罹患しているヒトを治療するために、本発明の活性化合物を、好ましくは経口的に最初は1日当たり100mgまでの投与量で投与する。しかし投与は非経口的でもよい。最初の投与の後、50mg20日間、40mg30日間まで、35mg30から60日間まで、40mg20日間まで、35mg30から60日間までの段階的減少プログラムに従い、1日当たり5mg−30mgに徐々に減少させる。1日当たり5mg−10mgで1年またはそれ以上の維持投与量もまた用いることができる。投与量は、好ましい化合物について50から100倍減少させることができる。
【0218】
活動中の疾患の臨床的徴候または症状の軽減について患者をモニターすることができる。特異的にモニターできるパラメーターには、自己抗体(特にDNA抗体);PBL細胞表面マーカー、白血球減少症;蛋白尿、高免疫グロブリン血症;およびパンチ生検による腎の免疫複合体レベルが含まれる。
さらに、SLE患者で疾患のコントロールに必要な本発明の活性化合物の治療レベルを知るために、TSHまたはT3/T4レベルをモニターすることができる。TSHレベルが正常範囲を越えて顕著に増加するとき(活性化合物の有効な作用を示している)、投与量を次の投与レベルに減少させることができる。甲状腺ホルモンレベルが正常範囲から顕著に減少するとき、これもまた投与量を減少させる指示として用いることができる。患者が甲状腺ホルモンの低下またはTSHの増加を示す場合、患者を甲状腺ホルモン(T3またはT4)プラス活性化合物で処置し、甲状腺機能の正常状態を維持することができる。TSHレベルはより良好なインデックスである。同じパラメーターで小児を評価することができる。
【0219】
実施例10
IDDM(自己免疫疾患)に罹患または前記疾患の発症のリスクが高い患者の治療
若年性糖尿病、I型糖尿病に罹患していると判明した患者または、IDDM発症のリスクが高いと当業者が決定した者を、本発明の活性化合物を、好ましくは経口的に、最初は1日当たり100mgまでの投与量で投与することによって治療することができる(ただしそれらはまた非経口的に投与することもできる)。最初の投薬の後、50mg20日間、40mg20日間まで、35mg30から60日間まで段階的減少プログラムにしたがい1日当たり5mg−30mgへ徐々に減少させる。1年またはそれ以上の期間、5mg−10mgの維持投与量もまた用いることができる。投薬はしかしながら、好ましい活性化合物について少なくとも50から100倍まで減少させることができる。
【0220】
活動中の疾患の臨床的徴候または症状の軽減について患者をモニターすることができる。特異的にモニターできるパラメーターには、糖尿、血糖、自己抗体、特に疾患の進行と正の相関を有することが当業者に知られている抗体および/または各個体の素因に関して予想に役立つ、したがってIDDMのリスクが高いことが当業者に知られている抗体、;PBL細胞表面マーカー、白血球減少症;および糖尿が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、基底のMHCクラスI活性を抑制する薬剤の能力を査定する方法:
(a)MHCクラスI調節核酸配列に操作可能に連結された1つまたは2つ以上のレポーター遺伝子で構成されたレポーター遺伝子構築物を哺乳類細胞集団に導入し;
(b)前記MHCクラスI抑制薬剤で前記細胞を処理し;
(c)前記MHCクラスI調節配列と結合した1つまたは2つ以上のレポーター遺伝子の活性を測定すること。
【請求項2】
以下の工程を含む、MHCクラスIおよびMHCクラスII分子の発現に対するγ−インターフェロンの作用を抑制する薬剤の能力を査定する方法:
(a)MHCクラスIまたはMHCクラスII調節核酸配列に操作可能に連結された1つまたは2つ以上のレポーター遺伝子で構成されたレポーター遺伝子構築物を哺乳類細胞集団に導入し;
(b)γ−インターフェロンおよび前記MHCクラスIまたはMHCクラスII抑制薬剤で前記細胞を処理し;
(c)前記MHCクラスIまたはMHCクラスII調節配列と結合した1つまたは2つ以上のレポーター遺伝子の活性を測定する。
【請求項3】
前記レポーター遺伝子構築物が、電気穿孔、形質導入、トランスフェクションおよびリポフェクションから成る群から選ばれる手段によって前記哺乳類細胞に導入される請求項2の方法。
【請求項4】
前記哺乳類細胞が、甲状腺細胞、肝細胞、神経組織、筋肉、線維芽細胞、脂肪細胞およびHELA細胞から成る群から選ばれる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記レポーター遺伝子が、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子およびヒト成長ホルモン(hGH)から成る群から選ばれる請求項4の方法。
【請求項6】
前記レポーター遺伝子構築物が前記哺乳類細胞にトランスフェクトされる請求項5の方法。
【請求項7】
前記哺乳類細胞がFRTL−5甲状腺細胞である請求項6の方法。
【請求項8】
前記レポーター遺伝子が、p(−203)MHC−クラスI−LUCおよびp(−137)MHC−クラスII−LUCから選ばれる請求項7の方法。
【請求項9】
MHCクラスIまたはMHCクラスII調節核酸配列と操作可能に連結された1つまたは2つ以上のレポーター遺伝子で構成されたレポーター遺伝子構築物を導入された哺乳類細胞。
【請求項10】
前記レポーター遺伝子が、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子およびヒト成長ホルモン(hGH)から成る群から選ばれる請求項9の哺乳類細胞。
【請求項11】
甲状腺細胞、肝細胞、神経組織、筋肉、線維芽細胞、脂肪細胞およびHELA細胞から成る群から選ばれる請求項10の哺乳類細胞。
【請求項12】
前記レポーター遺伝子構築物が、電気穿孔、形質導入、トランスフェクションおよびリポフェクションから成る群から選ばれる手段によって導入される請求項11の哺乳類細胞。
【請求項13】
前記細胞が、前記レポーター遺伝子構築物をトランスフェクトされたFRTL−5甲状腺細胞である請求項12の哺乳類細胞。
【請求項14】
前記レポーター遺伝子が、p(−203)MHC−クラスI−LUCおよびp(−137)MHC−クラスII−LUCから選ばれる請求項13の哺乳類細胞。
【請求項15】
下記式から選ばれる化合物の安全で有効な量と医薬的に許容できる担体とを含む医薬化合物:
【化1】

式中、R5およびR6は以下の成分対CH3、CH3;Ph、HおよびH、Phから選ばれ;R7はHおよびCH3から選ばれ;さらにR8はO、S、NHおよびNCH3から選ばれる。
【請求項16】
以下の式を有する化合物:
【化2】

式中、R2は、H、C1−C4アルキルおよびC1−C4置換アルキルから成る群から選ばれる。
【請求項17】
2が、C1−C4アルキルおよびC1−C4置換アルキルから成る群から選ばれる請求項16の化合物。
【請求項18】
2がメチルである請求項17の化合物。
【請求項19】
下記式から選ばれる化合物の安全で有効な量と医薬的に許容できる担体とを含む医薬組成物:
【化3】

式中、YはH、C1−C4アルキル、C1−C4置換アルキル、−NO2および下記のフェニル成分から成る群から選ばれ、
【化4】

式中、前記活性化合物中のY基の2つ以上はフェニル成分ではなく;R1は、H、−OH、ハロゲン、C1−C4アルキル、C1−C4置換アルキル、C1−C4エステル、C1−C4置換エステルから成る群から選ばれ;R2は、H、C1−C4アルキルおよびC1−C4置換アルキルから成る群から選ばれ;R3は、H、C1−C4アルキル、C1−C4置換アルキルおよび−CH2Phから成る群から選ばれ;R4は、H、C1−C4アルキルおよびC1−C4置換アルキルから成る群から選ばれ;XはSおよびOから選ばれ;Zは、−SR3、−OR3、−S(O)R3およびC1−C4アルキルから選ばれ;さらに、式中Yがフェニル成分でない場合は前記化合物のR2およびR3基の少なくとも2つはC1−C4アルキルで、Zがアルキルである場合は、少なくとも1つのYは−NO2である。
【請求項20】
前記活性化合物が以下から成る群から選ばれる請求項19に記載の医薬組成物:
【化5】

式中、R9は−OH、−Mおよび−OOCCH2Mから成る群から選ばれ;式中、MはF、Cl、BrおよびIから選ばれる。
【請求項21】
前記活性化合物が以下から成る群から選ばれる請求項19に記載の医薬組成物:
【化6】

式中、R10は、H、−NO2、Ph、4−HOPhおよび4−MPhから成る群から選ばれ、式中、MはF、Cl、BrおよびIから選ばれる。
【請求項22】
自己免疫疾患の治療用の請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項23】
自己免疫疾患の治療用の請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項24】
自己免疫疾患の治療用の請求項21に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−268805(P2010−268805A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−153679(P2010−153679)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【分割の表示】特願2000−567279(P2000−567279)の分割
【原出願日】平成11年8月27日(1999.8.27)
【出願人】(501084145)セントロン・メディカル・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SENTRON MEDICAL, INC.
【出願人】(303043690)アメリカ合衆国 (1)
【氏名又は名称原語表記】THE GOVERNMENT OF THE UNITED STATES OF AMERICA as represented by THE SECRETARY,DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES
【Fターム(参考)】