説明

自律移動装置

【課題】マルチパス環境下においても精度良い測位ができ、走行経路に対して精度良く走行することができる自律移動装置を提供することにある、
【解決手段】自律移動装置1の測位部3は、平面内で規定した絶対座標系における座標位置を既知位置に配置された少なくとも3台の電波発信器2〜2からの電波の到来方位を用いて検出する。この際測位アルゴリズム処理部35は、電波発信器2〜2の少なくとも一つについて直接波と反射波とを共に設定し、直接波と反射波との別を考慮して電波発信器2〜2を3つ選択して組にし、各組毎に、各電波発信器からの電波の到来方位を用いて求めた座標位置から既知の電波発信器2〜2を見込む時の各電波発信器2〜2の存在方位を求めるとともに、到来方位と存在方位とを照合して到来方位と存在方位ととが整合すると判定された直接波と反射波との別を考慮した電波発信器の組から得られた座標位置を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、位置が既知である複数個の基地局において移動局からの電波を受信し、各基地局において検出した移動局からの電波の到来方向の関係を用いることにより移動局の位置を求める技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1には、ロランや、GPS等の既存の測位システムを利用して各移動局において測位を行い、通信手段を通じて測位結果を基地局や他の移動局に伝送する測位方法の開示や、基地局側で移動局の位置を求める場合に、基地局で位置を求める電波と移動局に位置を通知する電波とを共用する測位方法の開示があるが、前者の測位方法では、ロランやGPS等の受信器を別途備える必要があって、コスト、重量、容積の増大等の問題がある。
【0004】
一方後者では、前者の課題を解決できるものの、移動局が自分の位置を知ることができないという問題がある。
【0005】
これらの課題を解決する測位方法として、到来方向推定アルゴリズムであるMUSIC(MUltiple SIgnal lassification)法等を用いた電波到来方向推定により自己位置を測位する測位方法も提供されている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開平9−119970号公報
【特許文献2】特開2006−234683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2に開示されている到来波数の設定が必要なMUSIC法では、電波の回折、反射等実際に起こりうる現象の影響等によって、直接波と反射波が同時に受信されるというマルチパス環境のように、どれだけの電波が到来するか未定である環境下では正しい到来方向推定結果が得られないという問題があった。
【0007】
本発明は、上述の点に鑑みて為されたもので、その目的とするところは、マルチパス環境下においても精度良い測位ができ、走行経路に対して精度良く走行することができる自律移動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、請求項1の自律移動装置の発明では、走行手段と、少なくとも3つの既知位置の電波発信器から受信した電波に基づいて測位する測位部と、測位エリアの地図情報を記憶した記憶部と、前記地図情報に基づいて走行経路を生成する走行生成部と、生成された走行経路に基づいて走行手段を制御する走行制御部と、走行手段の動作に基づいて現在位置を推定するデッドレコニング手段とを備え、デッドレコニング手段は、前記測位部で測位した結果に基づいて現在位置を修正する自律移動装置において、前記測位部は、平面内で規定した絶対座標系における座標位置を既知位置に配置された少なくとも3台の電波発信器からの電波の到来方位を用いて検出するものであって、前記電波発信器の少なくとも一つについて直接波と反射波とを共に設定し、直接波と反射波との別を考慮して前記電波発信器を3つ選択して組にし、各組毎に、各電波発信器からの電波の到来方位を用いて求めた座標位置から既知の電波発信器を見込む時の各電波発信器の存在方位を求めるとともに、到来方位と存在方位とを照合して到来方位と存在方位ととが整合すると判定された直接波と反射波との別を考慮した電波発信器の組から得られた座標位置を採用することを特徴とする。
【0009】
請求項1の自律移動装置の発明によれば、マルチパス環境下においても測位部が精度良い測位ができ、その結果、走行経路に対して精度良く走行することができる。
【0010】
請求項2の自律移動装置の発明では、請求項1の発明において、前記測位部は、到来方向推定を方向に対するスペクトルを用いて定期的に行うものであって、前回測位時に推定された自身の方向と、電波発信器の位置とに基づいて方向に対するスペクトルの存在領域を限定することを特徴とする。
【0011】
請求項2の自律移動装置の発明によれば、測位部が、定期的に測位することで、スペクトルについてフィルタをかけることができ、その結果、測位部での測位時間を短縮できる。
【0012】
請求項3の自律移動装置の発明では、請求項1の発明において、マルチパスが発生する可能性が高いエリアに自身が存在するかどうかを判断する周囲環境判断部を備え、前記測位部は、マルチパスが発生する可能性の低い領域では、マルチパスを考慮しない到来方向推定を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項3の自律移動装置の発明によれば、マルチパスに対する考慮の有無を周囲環境に応じて判断することで、測位部の測位時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、マルチパス環境下においても測位部が精度良い測位ができ、その結果、走行経路に対して精度良く走行することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明を実施形態により説明する。
【0016】
図1は本実施形態の自律移動装置1の構成を示しており、自律移動装置1は、図2に示すように走行エリアに配置した電波発信器2(2〜2)から発信される電波を、アンテナ30を通じて受信し、この受信した電波の到来方向に基づいて測位する測位部3と、動作エリアの地図情報Mapを記憶する記憶部4と、地図情報Mapに基づいて走行経路を生成する経路生成部5と、生成された走行経路に基づいて走行手段(電動モータと走行輪等)6を制御する走行制御部7と、走行手段6の動作に基づいて現在位置を推定するデッドレコニング部8とを備えている。
【0017】
測位部3は、図1に示すように電波発信器2(図2参照)からの電波を受信するアンテナ30と、アンテナ30の出力から電波の到来方位を検出するための成分を取り出すとともに抽出した成分を以後の処理のためにデジタル信号に変換する機能を有したアンテナ信号処理回路部31と、アンテナ信号処理回路部31の出力を用いてアンテナ座標系における電波の到来方位を推定する電波到来方向推定部32と、電波到来方向推定のためのパラメータを格納しているパラメータ格納部33とを備える。また、測位部3では、絶対座標系における座標位置を求めるために、電波発信器2の座標位置を知る必要があるから、絶対座標系における電波発信器2の座標をあらかじめ登録した発信器座標記憶部34が設けられ、電波到来方向推定部32で推定された到来方位と発信器座標記憶部34に登録された電波発信器2の座標位置とを用いて測位部3の座標位置を求める測位アルゴリズム処理部35が設けられる。
【0018】
測位部3の座標位置は、測位部3の代表点の座標位置であって、以下の説明では測位部3に設けたアンテナ30を基準として設定したアンテナ座標系の原点の座標位置を、絶対座標系における測位部3の座標位置に用いるものとする。
【0019】
アンテナ30は、電波の到来方位を検出することができるように構成されたものを用い、本実施形態では、複数本(図示例では円周上に等間隔に4本)のアンテナ素子30aを基台30bに立設した形状のアレイアンテナを用いる。各アンテナ素子30aはモノポールであって、図示例では基台21bの一面に円周上に等間隔4本を立設してある。アンテナ座標系の原点は、アンテナ素子30aに囲まれた部位の中心、すなわち円の中心とする。
【0020】
アンテナ30の出力はアンテナ信号処理回路部31に入力される。アンテナ信号処理回路部31は、図2に示すように、各アンテナ素子30a毎のゲインを切り換えるアッテネータと、アンテナ素子30aで受信した信号を一定周波数に周波数変換する混合回路からなる高周波回路部RFと、混合回路に局発信号を与える局部発振回路SGとを備え、更に、混合回路の出力をデジタル信号に変換するA/D変換部ADを備える。
【0021】
高周波回路部RFのアッテネータ及び混合回路はアンテナ素子30aと同数個設けられる。混合回路はIQ分離(実数成分と虚数成分の分離)の機能も備える。混合回路ではダウンコンバートを行っており、局部発振回路SGから出力する局発信号の周波数(局発周波数)を変化させることによって、混合回路では一定周波数への周波数変換を行う。したがって、混合回路の出力に所定周波数を通過させる帯域フィルタを設けておくことにより、アンテナ素子30aで受信した信号のうち局発周波数に対応する成分のみが混合回路から出力されることになる。つまり、局発周波数を変化させることによって、電波発信器2からの電波に対応した成分を混合回路から取り出すことができる。尚高周波回路部RFの出力、つまり混合回路の出力周波数は、A/D変換部ADにおけるサンプリングに適した周波数(サンプリング周波数の2分の1以下の周波数)に設定される。
【0022】
A/D変換部ADは、高周波回路部RFから出力された実数成分と虚数成分とをそれぞれデジタル値に変換する。A/D変換部ADについて、サンプリング周波数、サンプリング点数、出力ビット数は、例えば10MHz、1000点、12ビットとする。電波発信器2はそれぞれ異なる周波数の電波を送信しているから、A/D変換部ADでは各周波数毎にサンプリング点数分のサンプリングを行う。本実施形態では、3台の電波発信器2からの電波を受信するものとして、受信周波数を3回切り換える。尚、受信周波数は、測位部3の現在位置に応じて、近距離に存在する電波発信器2からの電波を受信するように選択される。
【0023】
A/D変換部ADの出力は、電波到来方位推定部32の機能を実現するDSP(デジタルシグナルプロセッサ)300に入力される。DSP300は、アンテナ素子30aで受信した電波の実数成分と虚数成分とを用いて電波の到来方位を推定する。一方、絶対座標系O−XYにおける測位部3の座標位置を登録した発信器座標記憶部34は、DSP300に付設された内部メモリ(図示せず)により実現される。発信器座標記憶部34には、電波発信器2の座標位置のほか電波発信器2からの送信信号の周波数も記憶されており、測位部3から近距離に存在する電波発信器2を3台選択し、当該電波発信器2の周波数に応じて局部発振回路SGの局発周波数を選択できる。
【0024】
DSP300は、測位アルゴリズム処理部35としての機能も備えており、A/D変換部ADから出力された実数成分及び虚数成分により求めた電波の到来方位と、内部メモリに登録された電波発信器2の座標位置とを用いて、絶対座標系における測位部3の座標位置を演算により求める。この演算結果をマイクロコンピュータからなる制御部9に通信部10を介して送出する。
【0025】
この制御部9は、経路生成部5,走行制御部7,デッドレコニング部8を構成するもので、DSP300からは、座標位置のほか、電波の到来方位と各アンテナ素子30aでの受信電力も出力される。
【0026】
測位部3では、電波発信器2毎に局発周波数を変化させる必要があるが、1台の電波発信器2からの電波の到来方位を検出する間にはアンテナ30の受信条件を変化させる必要が無いから、1台ずつの電波発信器2については電波の到来方位を実質的に同時刻とみなせる程度の短時間で推定することができる。つまり、測位部3では、電波発信器2とアンテナ30との相対位置が変動する場合があるが、各電波発信器2からの電波の到来方位を推定するのに必要なデータを収集する時間は短いから、電波の到来方位が変動しない程度の短時間で到来方位を推定することができる。
【0027】
尚デッドレコニング部8は、自律移動装置1の回転角Δθ(t)を計測するジャイロセンサ80と、自律移動装置1の移動距離(Δx(t)、Δy(z))を計測する車速センサ81と、これらセンサ80、81の検出出力から自律移動装置1の移動距離と回転角を計算して現在位置を推定する移動距離・回転角計算手段82とで構成される。尚走行手段6の左右の車輪の回転数の差によってΔθ(t)を計算する手段を、ジャイロセンサ80の代わりに設けてもよい。
【0028】
次に図3の測位システムの概念図を用いて、自律移動装置1の座標位置を求める方法について詳説する。
【0029】
図3は、測位を行う対象空間(対象平面)について規定した絶対座標系O−XYの座標位置として自律移動装置1の位置を検出する。具体的には、絶対座標系O−XYにおける座標位置が既知である3台の電波発信器2(2〜2)から測位装置2に電波が到来する方位をそれぞれ検出し、各電波発信器2からの電波の到来方位と各電波発信器2(2〜2)の既知の座標位置とに基づいて、絶対座標系O−XYにおける測位装置2の座標位置を検出する。測位装置2において各電波発信器2〜2からの電波を区別するために、各電波発信器2〜2から送信する電波はそれぞれ異なる周波数に設定される。
【0030】
測位部3は、絶対座標系O−XYにおける電波の到来方位を特定することはできないから、自律移動装置1について設定したアンテナ座標系O’−X’Y’において電波の到来方位を検出する。アンテナ座標系O’−X’Y’のX’Y’平面は絶対座標系O−XYのXY平面と一致しているか平行であるものとする。
【0031】
而して今、図3において、3つの電波発信器2〜2が既知の地点P(x,y),P(x,y),P(x,y)に置かれているとする。そのとき、地点P(x,y)からの電波到来方向推定結果がφa,φb,P(x,y)からの電波到来方向推定結果がφ,P(x,y)からの電波到来方向推定結果がφで、それぞれの電波発信器2〜2の座標値と到来方向推定結果と測位結果が表1のように求められたとする。尚電波発信器2は直接波と反射波とを共に設定したもので、2a、2bは直接波と反射波とを区別して示す符号である。
【0032】
【表1】

【0033】
さて測位部35の測位アルゴリズム処理部35は、既知のカッシーニの解法を用いて自己位置の推定を行うのであるが、組み合わせを重複するような3つずつを選ぶ。上述の表1の例であれば、2a,2,2と2b,2,2である。このとき2a,2,2の組と、2b,2,2の組に対して、以下のような判定を行う。
【0034】
電波発信器2〜2がP(x,y),P(x,y),P(x,y)の3箇所に存在し、到来方向推定角がφa,φb,φ,φのとき,測位結果は以下の2通りとなる。
【0035】
,P,P, φa,φ,φ⇒x1a23,y1a23,θ1a23
,P,P, φb,φ,φ⇒x1b23,y1b23,θ1b23
電波発信器座標:P(x,y) (i=1,2,3)
測位位置P_から見た電波発信器P_の方位(θ)は数1で示すようになる。
【0036】
【数1】

【0037】
正しい測位結果tでは幾何的に
θ=θ+θ
が成り立つため、tに含まれる全てのi(t=1a23,1b23ならi=1a,2,3、t=1b23なら i=1b,2,3)で上式が成立すれば、そのtの組み合わせは正
しい測位結果とし、少なくとも一つのiで上式が不成立なら、そのtは間違った測位結果として除去する。つまり測位アルゴリズム処理部35の異常測位結果除去の機能が働くことになる。
【0038】
ここで、上述のアルゴリズムによって表1の測位結果を処理したものを表2に示す。
【0039】
尚表2では、推定された到来方位に対応する電波発信器2を添え字のみで示す。また以降に示す表においても同様に添え字で示す。またOKは採用を示し、NGは不採用の測位結果を示す。
【0040】
【表2】

【0041】
よって、判定処理の結果、1a,2,3の組み合わせが選択され,正しい測位結果は(x,y,θ)=(10,10,0)であると求められる。もし電波発信器2からの電波到来方向推定角が2つになったとして、φa,φbが得られたとすれば,電波発信器2の組み合わせとしては、(2a,2a,2),(2b,2a,2)(2a,2b,2),(2b,2b,2)という4通りになる。このときの4通りの組み合わせを表3に全て列挙する。
【0042】
【表3】

【0043】
この4通りの組み合わせに対する判定処理の結果が表4のようになれば、2a,2a、2の組み合わせのみが採用され、その測位結果(x、y、θ)=(10,10,0)となる。
【0044】
【表4】

【0045】
以上のようにして、測位部3の測位アルゴリズム処理部35は、直接波と、反射波とを分離して到来方向推定角の不適な角度を排除することによって、反射波を用いた測位結果を除去(NG)し、マルチパス環境下において精度の良い測位を行うことができるのである。
【0046】
而して自律移動装置1の経路生成部5は記憶部4の地図情報Mapに基づいて外部から指定された地点へ移動する走行経路を生成する際に、測位部3で得られた精度良い測位結果と、デッドレコニング部8が推定する現在位置とに基づいて走行経路のずれを算出し、このずれを補正する。
【0047】
これによって本実施形態の自律移動装置1は、走行経路に対して精度良く走行させることができることになる。
【0048】
尚本実施形態で用いるカッシーニの解法は既知であるので、説明は省略する。
(実施形態2)
本実施形態では、実施形態1と同じ構成を用いるが、測位部3による測位を所定時間ごとに逐次行い、次回測位時の位置と、方向を測位時の位置と方向と、車速センサ81が検出する速度から推測する。その推測した位置と方向とを用いて地図情報Mapと照合し、測位に使用する電波発信器2の方向を推定する。
【0049】
測位部3の測位アルゴリズム処理部35が次回測位時の電波発信器2の方向を推定する方法を図4に基づいて更に説明すると、自律移動装置1の位置がRobot(xt1,yt1)のとき、例えば車速センサ81が検出する速度から次回測位時の位置(xt2 ,yt2)を推測し、そのときの各電波発信器2〜2の方向(φd,φe,φf)を推定する。 そして測位アルゴリズム処理部35では、例えば既知のCapon法を用いて方向に対する電波強度のスペクトルを電波発信器2〜2毎に図5(a)〜(c)に示すように検出してその測位の演算に用いるが、検出したスペクトルに対して,上述の推定した範囲を設定し,その範囲以外を測位の演算に使用しないようにする。尚図5中φa〜φcは現在の位置における移動方向を示す。
【0050】
つまり本実施形態では、図5(a)〜(c)の破線部分にフィルタリングをかけることで、測位による処理時間を短縮するのである。
【0051】
尚Capon法は既知のものであるので、説明は省略する。またその他の構成は実施形態1と同じであるので、図示は省略する。
(実施形態3)
本実施形態の自律移動装置1は、図1に示す記憶部4に記憶させる地図情報Mapとして図6に示すようにマルチパスが起こりやすい場所(α)を設定した地図情報を用いる一方、測位アルゴリズム処理部35ではアルゴリズムとしてマルチパスを考慮したアルゴリズムと、マルチパスを考慮していないが処理時間が短いアルゴリズムとの切り替えで測位を行う機能を備えている点に特徴がある。尚その他の構成は実施形態1と同じであるので、図示は省略する。
【0052】
つまり、測位アルゴリズム処理部35は、デッドレコニング部8及び測位部3自体によって推定される現在位置と、地図情報Mapに設定されたマルチパスが起こりやすい場所(α)とを比較して現在位置がマルチパスを起こりやすい場所(α)にある場合には、マルチパスを考慮するアルゴリズムを用い、マルチパスを起こしにくい場所ではマルチパスを考慮しないアルゴリズムに切り替えるのである。
【0053】
これにより、本実施形態では、マルチパスが起こりやすい場所(α)ではこれを考慮するアルゴリズムで測位を行い、アルゴリズムを考慮する必要が無い場所では、アルゴリズムを考慮せず、処理時間が短いアルゴリズムに切り換えることで、全体の測位時間を短縮することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施形態1の全体構成図である。
【図2】実施形態1の具体的回路を示す構成図である。
【図3】実施形態1を用いた測位方法の説明図である。
【図4】実施形態2の次回測位時の電波発信器の方向推定の概念説明図である。
【図5】実施形態2の各電波発信器に対応したスペクトルデータとフィルタリングの説明図である。
【図6】実施形態3に用いる地図情報の説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 自律移動装置
〜2 電波発信器
3 測位部
30 アンテナ
30a アンテナ素子
30b 基台
31 アンテナ信号処理回路部
32 電波到来方向推定部
33 パラメータ格納部
34 発信器座標記憶部
35 測位アルゴリズム処理部
4 記憶部
5 経路生成部
6 走行手段
7 走行制御部
8 デッドレコニング部
80 ジャイロセンサ
81 車速センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行手段と、少なくとも3つの既知位置の電波発信器から受信した電波に基づいて測位する測位部と、測位エリアの地図情報を記憶した記憶部と、前記地図情報に基づいて走行経路を生成する走行生成部と、生成された走行経路に基づいて走行手段を制御する走行制御部と、走行手段の動作に基づいて現在位置を推定するデッドレコニング手段とを備え、デッドレコニング手段は、前記測位部で測位した結果に基づいて現在位置を修正する自律移動装置において、
前記測位部は、平面内で規定した絶対座標系における座標位置を既知位置に配置された少なくとも3台の電波発信器からの電波の到来方位を用いて検出するものであって、前記電波発信器の少なくとも一つについて直接波と反射波とを共に設定し、直接波と反射波との別を考慮して前記電波発信器を3つ選択して組にし、各組毎に、各電波発信器からの電波の到来方位を用いて求めた座標位置から既知の電波発信器を見込む時の各電波発信器の存在方位を求めるとともに、到来方位と存在方位とを照合して到来方位と存在方位ととが整合すると判定された直接波と反射波との別を考慮した電波発信器の組から得られた座標位置を採用することを特徴とする自律移動装置。
【請求項2】
前記測位部は、到来方向推定を方向に対するスペクトルを用いて定期的に行うものであって、前回測位時に推定された自身の方向と、電波発信器の位置とに基づいて方向に対するスペクトルの存在領域を限定することを特徴とする請求項1記載の自律移動装置。
【請求項3】
マルチパスが発生する可能性が高いエリアに自身が存在するかどうかを判断する周囲環境判断部を備え、前記測位部は、マルチパスが発生する可能性の低い領域では、マルチパスを考慮しない到来方向推定を行うことを特徴とする請求項1記載の自律移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−158905(P2008−158905A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348549(P2006−348549)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】