説明

自発光式交通標識板

【課題】製造コストを減少させると共に、消費電力が少なく且つ生産性が高い自発光式交通標識板であって、輝度を落とすことなく明瞭に認識することができる自発光式交通標識板を提供する。
【解決手段】太陽電池を電源とする自発光式交通標識板10は、所定の標識が形成された全反射型の再帰反射シート12と、再帰反射シート12上の自発光式交通標識板10表面側に設けられた導光板13であって、再帰反射シート12側の内面Sに所定の標識の表示に合わせたドット状反射部14a等が加工されたものと、導光板13の周囲側一端面に設けられた、太陽電池を電源とする発光部15とを備えており、発光部15から発光された光Aまたは導光板13内を乱反射した光A’をドット状反射部14a等により自発光式交通標識板10の外部へ反射することによって所定の標識を発光表示することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池を電源とする自発光式交通標識板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路標識等の交通標識板に太陽電池を設置しておいて、昼間は光エネルギを電気エネルギに変換して蓄電池を充電しておき、昼夜検出回路等により日没を検知すると点灯開始のスイッチを入れて、交通標識板に設けたLEDまたはEL等の発光体の点滅を開始させる自発光式交通標識板が開発されている。
【0003】
特許文献1には自己発光型道路標識板について記載されている。同図2の自己発光型標識板の断面図に示されるように、自己発光型道路標識板は裏面側から表面側へかけて導光板、光拡散板および再帰反射シートの順に構成されており、再帰反射シートは表示させたい文字等の部分だけ切り抜かれている。導光板の一端面に設けられたLEDを発光させると、光は導光板内を乱反射した後に光拡散板を通り、上記切り抜かれた文字部分から外部へ発光する。ここで、自動車等のライトからの光が再帰反射シートに入射すると、再帰反射シートの性質により入射の方向に反射光を発する。より具体的には再帰反射シート内のガラスビーズがレンズの働きをすることにより、入射光の光源の方向にそのまま反射光が出射される。この結果、道路標識板の存在を自動車の運転者に示すと共に、文字部分が当該反射光より強く発光するため、文字を容易に認識することができるようになっている。
【0004】
図9は、従来の自己発光式(以下、「自発光式」と略す。)交通標識板70の断面図を示す。図9では左側が自発光式交通標識板70の表面(発光)側であり、右側が裏面側である。図9において、符号71は自発光式交通標識板70の裏面側の裏板、72は裏板71上に設けられた導光板、73は導光板72上に設けられた透明アクリル板、74は透明アクリル板73上に貼付された表示したい交通標識が形成された再帰反射シート(半透過型)、75は導光板72の周囲の一端面側に設けられたLEDである。LED75は電子回路、太陽電池等と接続されているが、図9では省略してある。LED75を発光させると、その光Lは導光板72内を乱反射した後に透明アクリル板73を通り、半透過型の再帰反射シート74を透過して外部へ発光する。ここで、自動車等のライトからの入射光Mが再帰反射シート74に入射すると、再帰反射シート74は上述した再帰反射シート74の性質により入射光Mの光源の方向にそのまま反射光Mrefが出射される。この結果、自発光式交通標識板70の存在を自動車の運転者に示すと共に、交通標識部分からの光Lにより交通標識を容易に認識することができるようになっている。加えて図示はしないが、自発光式交通標識板70の表面の標識枠内外周に複数個のLEDを設置して、これら複数のLEDを点滅表示させることにより、自発光式交通標識板70をさらに容易に認識することができるようにしていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の自発光式交通標識板70では導光板72を使用し、導光板72上に透明アクリル板73および再帰反射シート74を使用していたが、再帰反射シート74は半透過型であるため全反射型の再帰反射シートと比較して高価であるだけでなく、光Lは再帰反射シート74を透過するため輝度が落ちるという問題があった。輝度を上げるためには大光量が必要となり、この結果、消費電力および容量の大きい蓄電池、太陽電池等が必要となるため、さらにコストが増大するという問題があった。導光板72に替えて面発光を行う無機ELシートを用いた場合、無機ELシートは多量のロット単位で発注せざるを得ないため調達コストが高価になると共に、劣化しやすいため短期間で輝度が低下するという問題があった。自発光式交通標識板70の表面の標識枠内外周に複数個のLEDを設置していたが、この外周に設置する複数個のLEDという複雑な構造のために余分な時間およびコストを要し、生産性が低くなるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は上記問題を解決するためになされたものであり、製造コストを減少させると共に、消費電力が少なく且つ生産性が高い自発光式交通標識板であって、輝度を落とすことなく明瞭に認識することができる自発光式交通標識板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の自発光式交通標識板は、太陽電池を電源とする自発光式交通標識板であって、所定の標識が形成された全反射型の再帰反射シートと、前記再帰反射シート上の前記自発光式交通標識板表面側に設けられた導光板であって、該再帰反射シート側の内面に前記所定の標識の表示に合わせたドット状反射部が加工されたものと、前記導光板の周囲側一端面に設けられた、太陽電池を電源とする発光部とを備え、前記発光部から発光された光を前記ドット状反射部により前記自発光式交通標識板外部へ反射することによって前記所定の標識を発光表示することを特徴とする。
【0008】
ここで、この発明の自発光式交通標識板において、前記導光板の周囲側一端面に、該自発光式交通標識板外部から入射し前記ドット状反射部により反射された光を検出する光センサをさらに備えることができる。
【0009】
ここで、この発明の自発光式交通標識板において、前記ドット状反射物とは異なる別のドット状反射部であって前記自発光式交通標識板外部から入射した光を反射するものをさらに備えることができる。
【0010】
ここで、この発明の自発光式交通標識板において、前記光センサと接続された下方向照射部をさらに備え、該下方向照射部は該光センサにより該自発光式交通標識板外部から入射した光が検出された場合、該自発光式交通標識板の下方向を照射する光を発光することができる。
【0011】
ここで、この発明の自発光式交通標識板において、前記光センサと接続された正面方向照射部をさらに備え、該正面方向照射部は該光センサにより該自発光式交通標識板外部から入射した光が検出された場合、該自発光式交通標識板の正面方向を照射する光を発光することができる。
【0012】
ここで、この発明の自発光式交通標識板において、前記ドット状反射部は前記所定の標識とは異なる標識の表示に合わせて加工されたものを用い、前記発光部が発光しない場合は前記所定の標識を表示し、該発光部が発光した場合は該所定の標識とは異なる標識を発光表示することができる。
【0013】
ここで、この発明の自発光式交通標識板において、前記導光板上に飛散防止用シートをさらに設けることができる。
【0014】
ここで、この発明の自発光式交通標識板において、前記所定の標識は規制標識、警戒標識、案内標識、指示標識又は補助標識とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の自発光式交通標識板は、所定の標識が形成された全反射型の再帰反射シートと、再帰反射シート上の自発光式交通標識板表面側に設けられた導光板であって、再帰反射シート側の内面に所定の標識の表示に合わせたドット状反射部が加工されたものと、導光板の周囲側一端面に設けられた、太陽電池を電源とする発光部とを備えており、発光部から発光された光または導光板内を乱反射した光をドット状反射部により自発光式交通標識板の外部へ反射することによって所定の標識を発光表示する。廉価な全反射型の再帰反射シートを用いることにより、高価な半透過型の再帰反射シートを用いた場合と比較して製造コストを減少させることができ、さらに樹脂板を材料とする導光板を用いることにより、高価な無機ELシートを用いた場合と比較して製造コストを減少させることができる。さらに発光部としてLEDを用いることにより、発光時の消費電流が少なく、且つ劣化しにくく長期間高い輝度を維持することができる。再帰反射シートを導光板の裏面に配置した結果、従来技術のように発光した光が再帰反射シートを透過しないため、輝度が落ちない。本発明の自発光式交通標識板はシンプルな構造であるため、生産性が高く納期対応が容易である。加えて、蓄電装置は電気二重層コンデンサを用いたため、充放電による経年劣化が少なく、製品寿命が従来の蓄電池の寿命と比較して長い。この結果、製造コストを減少させると共に、消費電力が少なく且つ生産性が高い自発光式交通標識板であって、輝度を落とすことなく明瞭に認識することができる自発光式交通標識板を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1における自発光式交通標識板10の断面図である。
【図2】ドット状反射部14a等の拡大図である。
【図3】所定の標識として「止まれ」の規制標識を例にした場合における導光板13の表面側と再帰反射シート12の表面側とを示す図である。
【図4】本発明の実施例2における自発光式交通標識板20の断面図である。
【図5】本発明の実施例3における自発光式交通標識板30の断面図である。
【図6】本発明の実施例4における自発光式交通標識板40の断面図である。
【図7】本発明の実施例5における自発光式交通標識板50を示す図である。
【図8】本発明の実施例6における自発光式交通標識板60を示す図である。
【図9】従来の自発光式交通標識板70の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1における自発光式交通標識板10の断面図を示す。図1では左側が自発光式交通標識板10の表面(発光)側であり、右側が裏面側である。図1において、符号11は自発光式交通標識板10の裏面側の裏板、12は裏板11上に貼付された表示したい所定の標識が形成された全反射型の再帰反射シート、13は再帰反射シート上の自発光式交通標識板10の表面側に設けられた導光板、15は導光板13の周囲側一端面に設けられた発光部である。
【0019】
上述した裏板11の材料は好適にはアルミ板であり、導光板13の材料は好適には透明なアクリル樹脂板である。再帰反射シート12を貼付した裏板11と導光板13とを合わせて、これらの周囲縁側を、コの字のコーナーを丸めるR加工(曲加工)したアルミフレームで固定することにより自発光式交通標識板10の筐体(不図示)とする。
【0020】
再帰反射シート12の所定の標識としては「止まれ」、「通行止め」、「指定方向外進行禁止」、「駐停車禁止」、「自動車専用」、「車両通行区分」等の規制標識が好適である。あるいは、「踏切あり」、「道路工事中」等の警戒標識であってもよい。その他、「都府県」等を示す案内標識、「横断歩道」等を示す指示標識、「車両の種類」等を示す補助標識であってもよいことは勿論である。所定の標識は一般的には絵文字(ピクトグラム)により構成されている。再帰反射シート12は表面側からプラスチック製の表面フィルム、微小なガラスビーズ層および反射層の順に構成されている一般的なものを用いればよい。背景技術で説明したように、ガラスビーズがレンズの働きをすることにより、入射光の光源の方向にそのまま反射光が出射される。所定の標識は適当な織物(スクリーン)にレジストで所望のピクトグラムのパターンを形成し、インクをスクリーンの開口部から押し出して再帰反射シート12上に印刷するスクリーン印刷により形成する。
【0021】
発光部15はLEDを用いることが好適である。発光部15の電源装置(不図示)は太陽電池を使用する。発光部15の駆動回路(不図示)は基板上に形成され電源装置内に内蔵されている。蓄電装置(不図示)は電気二重層コンデンサを用いることが好適である。電気二重層コンデンサは内部抵抗が低いため短時間で充放電を行うことができ、さらに充放電による経年劣化が少ないため、製品寿命が従来の蓄電池の寿命(約3〜4年位)と比較して約10年位と長い。
【0022】
図1に示されるように、導光板13には再帰反射シート12側の内面Sに所定の標識の表示に合わせたドット状反射部14a、14b、14c等(以下、「ドット状反射部14a等」と略す。)が加工されている(点線円内に示す。)。ドット状反射部14a等は発光部15から発光された光Aまたは導光板13内で乱反射した後の光A’を反射して導光板13の表面側へ反射させるように形成されている。ドット状反射部14a等は好適には内面Sに鏡のように平坦に磨き上げるプリズム鏡面加工により形成されたプリズム状の切欠きである。
【0023】
図2はドット状反射部14a等の拡大図を示す。図2で図1と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため説明は省略する。図2に示されるように、ドット状反射部14a等は発光部15からの光Aまたは導光板13内で乱反射した後の光A’を反射する反射面14as、14bs(以下、「14as等」と言う。)等を有しており、反射面14as等の内面Sに対する角度αは反射面14as等で同一である。反射面14as等を発光部15側から見た形状は略矩形であり、断面の形状は図1または2に示されるように反射面14as等を斜辺とする三角形である。しかし、反射面14as等を発光部15側から見た形状は略矩形に限定されるものではなく、発光部15からの光Aまたは導光板13内で乱反射した後の光A’を導光板13の表面側へ反射させる形状であれば他の多角形であってもよい。当該略矩形の場合、その縦横比はドット状反射部14a等の輝度等を考慮した所望の比とすることが好適である。同様に、ドット状反射部14a等の断面の形状は発光部15からの光Aまたは導光板13内で乱反射した後の光A’を導光板13の表面側へ反射させる形状であれば三角形(反射面14as等が平坦面)に限定されるものではなく、扇形等(反射面14as等が曲面)であってもよい。上記角度αは自発光式交通標識板10を表面側から見た際のドット状反射部14a等の視認性、光AまたはA’の反射効率等を考慮した所望の角度とすることが好適である。同様に、ドット状反射部14a等の高さ14ap、14bp(以下、「14ap等」と言う。)も上記視認性等を考慮した所望の高さとすることが好適である。
【0024】
ドット状反射部14a等の加工は、上述したようにプリズム鏡面加工によることが好適であるが、他の加工方法を用いてもよい。例えば、ドット状反射部14a等の形状に応じた形の刃部を有する加工具を用いて、該刃部を導光板13の裏面に押し込み、その後刃部を引き抜くことにより加工することができる。その際、刃部および導光板13、あるいはいずれか一方を導光板13が液状となる軟化点程度に加熱しておくことが好適である。他の加工方法としては、切削加工、プレス成型、射出成型等を用いてもよい。
【0025】
図3は、所定の標識として「止まれ」の規制標識を例にした場合における導光板13の表面側と再帰反射シート12の表面側とを示す。図3で図1と同じ符号を付した個所は同じ構成要素を示すため、説明は省略する。図3では説明の都合上、導光板13、発光部15、再帰反射シート12を離して(ずらして)示してある。図3に示されるように、再帰反射シート12上には「止まれ」の文字と当該文字を囲む逆三角形状の図形とがスクリーン印刷により形成されている。導光板13の再帰反射シート12側の内面部には、再帰反射シート12上に形成された「止まれ」の文字の輪郭および当該文字を囲む逆三角形状の図形の輪郭と重なるようにドット状反射部14a等が適宜間隔をあけて加工されている。発光部15は導光板13の周囲側一端面(例えば、図3に示されるように導光板13の上部端面)に列状に設けられている。符号21は光センサであるが、これについては実施例2で説明する。
【0026】
図1に示されるように、発光部15を発光させると、その光Aまたは導光板13内で乱反射した後の光A’はドット状反射部14a等により自発光式交通標識板10の外部へ反射される。図3に示されるように、ドット状反射部14a等は再帰反射シート12上に形成された「止まれ」の文字の輪郭および当該文字を囲む逆三角形状の図形の輪郭と重なるように適宜間隔をあけて加工されている。この結果、「止まれ」の文字および当該文字を囲む逆三角形状の図形が外部から視認できるように発光する。上述のようにドット状反射部14a等をプリズム鏡面加工することにより、再帰反射シート12上に形成されたピクトグラムの視認を邪魔することが少なくて済む。自発光式交通標識板10には所望の位置に明暗を感知するフォトトランジスタ(不図示)が設置されており、フォトトランジスタにより外部の明るさが所定の値以下であることが検知されると、発光部15が点灯する。発光部15の点灯は常夜において点滅点灯とすることが好適である。再帰反射シート12は発光部15からの光Aまたは導光板13内で乱反射した後の光A’によって輝ることはない。再帰反射シート12は外部から入射する光(例えば、夜間に自動車のライトから照射された光B)によって再帰反射(光Bref)する。この結果、常夜において、光Brefにより自発光式交通標識板10の標識(例えば「止まれ」)の存在を自動車等の運転者に示すと共に、ドット状反射部14a等からの光AまたはA’による発光表示により、さらに鮮明に自発光式交通標識板10の標識(例えば「止まれ」)を自動車等の運転者に視認させることができる。
【0027】
表1は本発明による発明品、従来技術による従来品および出願人による現行品の諸性能を比較した表である。表1の第1行「2/3倍」、「1倍」は自発光式交通標識板10の筐体ではなく標識部分(標識シート)の三角形(標識「止まれ」を想定)の辺の長さを表す。1辺の長さが800mm仕様を「1倍」と呼び、「2/3倍」は1辺の長さが800mm×2/3仕様であり、約530mmの三角形状である。表1の消費電流欄および効果欄に示されるように、「2/3倍」では、当社現行品の消費電流500mAを効果100%とすると、発明品は消費電流28mA〜140mAで効果5.6%と極めて少なくなっており、従来品の効果56%と比較しても1/10となっている。「1倍」では、当社現行品の消費電流800mA〜1Aを効果100%とすると、発明品は消費電流42mA〜210mAで効果5.2%と極めて少なくなっており、従来品の効果52%と比較しても1/10となっている。
【0028】
【表1】

【0029】
以上のように、本発明の実施例1によれば、太陽電池を電源とする自発光式交通標識板10は、所定の標識が形成された全反射型の再帰反射シート12と、再帰反射シート12上の自発光式交通標識板10表面側に設けられた導光板13であって、再帰反射シート12側の内面Sに所定の標識の表示に合わせたドット状反射部14a等が加工されたものと、導光板13の周囲側一端面に設けられた、太陽電池を電源とする発光部15とを備えており、発光部15から発光された光Aまたは導光板13内を乱反射した光A’をドット状反射部14a等により自発光式交通標識板10の外部へ反射することによって所定の標識を発光表示することができる。
【0030】
上述したように、廉価な全反射型の再帰反射シート12を用いることにより、高価な半透過型の再帰反射シートを用いた場合と比較して製造コストを減少させることができ、さらに樹脂板を材料とする導光板13を用いることにより、高価な無機ELシートを用いた場合と比較して製造コストを減少させることができる。さらに発光部15としてLEDを用いることにより、発光時の消費電流が少なく、且つ劣化しにくく長期間高い輝度を維持することができる。再帰反射シート12を導光板13の裏面に配置した結果、従来技術のように発光した光が再帰反射シートを透過しないため、輝度が落ちない。自発光式交通標識板10はシンプルな構造であるため、生産性が高く納期対応が容易である。加えて、蓄電装置は電気二重層コンデンサを用いたため、充放電による経年劣化が少なく、製品寿命が従来の蓄電池の寿命と比較して長い。この結果、製造コストを減少させると共に、消費電力が少なく且つ生産性が高い自発光式交通標識板であって、輝度を落とすことなく明瞭に認識することができる自発光式交通標識板10を提供することができる。
【実施例2】
【0031】
図4は、本発明の実施例2における自発光式交通標識板20の断面図を示す。図4で図1と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。図4に示されるように、自発光式交通標識板20は導光板13の周囲側一端面に、自発光式交通標識板20の外部(表面側)から入射した車両前照灯等の光Bをドット状反射部14a等により反射させ、この反射光Bを検出する光センサ21をさらに備えている。図4に示される光センサ21の位置は同図が断面図であるため、実施例1の発光部15と同じ位置に示されているが、図3の導光板13の上側に示されるように、光センサ21は導光板13の周囲側一端面(上部端面)に設けられた発光部15の列中の1箇所または複数個所に適宜設置されている。以上により、実施例1における発光部15が点滅中の消灯状態の際、発光部15からドット状反射部14a等による外部への光の反射方向とは逆の方向で、外部からの光Bをドット反射部14a等により反射して光センサ21へ集光させることができる。発光部15が点滅中の点灯状態の際は、実施例1で説明したように発光部15からドット状反射部14a等により外部へ光Aを反射することは言うまでもない。
【0032】
以上のように、本発明の実施例2によれば、自発光式交通標識板20は導光板13の周囲側一端面に、自発光式交通標識板20の外部(表面側)から入射した車両前照灯等の光Bをドット状反射部14a等により反射させ、この反射光Bを検出する光センサ21をさらに備えている。このため、実施例1における発光部15が点滅中の消灯状態の際、発光部15からドット状反射部14a等による外部への光の反射方向とは逆の方向で、外部からの光Bをドット反射部14a等により反射して光センサ21へ集光させることができる。以上により、実施例1の効果に加えて、常夜において実施例1における発光部15が点滅中の消灯状態の際、車両前照灯等の光Bを感知することができる自発光式交通標識板20を提供することができる。
【実施例3】
【0033】
図5は、本発明の実施例3における自発光式交通標識板30の断面図を示す。図5で図4と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。図5に示されるように、自発光式交通標識板30には自発光式交通標識板30の外部から入射した車両前照灯等の光Bを光センサ15側へ反射する受光専用ドット状反射部31が配置されている。受光専用ドット状反射部31は実施例1等のドット状反射部14a等とは異なる別のドット状反射部である。図5に示される自発光式交通標識板30では説明の都合上、図1または4に示されるドット状反射物14a等が省略されている。しかし、自発光式交通標識板30は図1または4に示される自発光式交通標識板10または20のように、ドット状反射物14a等を備えている。この結果、発光部15が点滅中の消灯状態だけではなく点灯状態であっても、外部からの光Bを受光専用ドット状反射部31により反射させて光センサ21へ集光させることができる。発光部15が点滅中の点灯状態の際は、実施例1で説明したように発光部15からドット状反射部14a等により外部へ光Aを反射することは言うまでもない。
【0034】
以上のように、本発明の実施例3によれば、自発光式交通標識板30には自発光式交通標識板30の外部から入射した車両前照灯等の光Bを光センサ21側へ反射させる受光専用ドット状反射部31が配置されている。以上により、実施例1および2の効果に加えて、常夜において発光部15が点滅中の消灯状態だけではなく点灯状態であっても、車両前照灯等の光Bを感知することができる自発光式交通標識板30を提供することができる。
【実施例4】
【0035】
図6は、本発明の実施例4における自発光式交通標識板40を示す。図6に示されるように、自発光式交通標識板40は支柱42上に設置されており、実施例2、3の自発光式交通標識板20、30に光センサ21と接続された下方向照射部41をさらに併設した構成となっている。図6では下方向照射部41は自発光式交通標識板40の側面に設置されているが、背面側に設置してもよい。常夜において光センサ21により自発光式交通標識板40の外部から入射した車両前照灯等の光が検出された場合、下方向照射部41に自発光式交通標識板40の下方向を照射する路面照射光Cを発光させる。光センサ21による車両前照灯等の光の検出に基づく路面照射光Cの発光は、発光部15の発光と並列して行うようにしてもよく、あるいは発光部15の発光と切替えて行うようにしてもよい。下方向照射部51の光源は好適にはLEDである。
【0036】
以上のように、本発明の実施例4によれば、自発光式交通標識板40は常夜において光センサ21により自発光式交通標識板40の外部から入射した車両前照灯等の光が検出された場合、下方向照射部41に自発光式交通標識板40の下方向を照射する路面照射光Cを発光させる。この結果、実施例2、3の効果に加えて、常夜において光センサ21により車両前照灯等の光が検出された場合、路面照射光Cを発光させて、自発光式交通標識板40が設置された一時停止等の付近にいるまたは近づいている歩行者に車両の接近を知らせることができる自発光式交通標識板40を提供することができる。
【実施例5】
【0037】
図7は、本発明の実施例5における自発光式交通標識板50を示す。図7で図6と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。図7に示されるように、自発光式交通標識板50は支柱42上に設置されており、実施例2乃至4の自発光式交通標識板20、30、40の外周に光センサ21と接続された注意喚起灯(正面方向照射部)51a、51b、51c等(以下、「注意喚起灯51a等」と言う。)をさらに併設した構成となっている。併設は図7に示されるように、自発光式交通標識板50の筐体52に別付けした収納容器(不図示)に収納することにより行う。図7では説明の都合上3個の注意喚起灯51a等のみ符号を付しているが、自発光式交通標識板50の外周上に注意喚起灯51a等に並んで示されている他の小円形も注意喚起灯である。自発光式交通標識板50は常夜において光センサ21により自発光式交通標識板50の外部から入射した車両前照灯等の光が検出された場合、自発光式交通標識板50の正面方向を照射する光を発光させる。光センサ21による車両前照灯等の光の検出に基づく注意喚起灯51a等の発光は、発光部15の発光と並列して行うようにしてもよく、あるいは発光部15の発光と切替えて行うようにしてもよい。注意喚起灯51a等の発光色は好適には赤色である。注意喚起灯51a等の発光は好適には点滅点灯(高速点滅)であり、適宜点滅周期を変化させてもよい。
【0038】
上述した自発光式交通標識板50において、自発光式交通標識板50の下側等に上記のように収納容器を設け、当該収納容器に赤外線を感知する赤外線サンサ(不図示)をさらに収納しておき、常夜において赤外線センサにより自発光式交通標識板50付近にいる歩行者が検出された場合、自発光式交通標識板50の正面方向を照射する光を発光するようにしてもよい。自発光式交通標識板50にさらに音声出力部(不図示)を設置しておき、常夜において(好適には昼間において)赤外線センサにより自発光式交通標識板50付近の歩行者が検出された場合、自発光式交通標識板50の正面方向を照射する光を発光すると共に(あるいは当該発光とは別に)、音声出力部から車両の接近を知らせる所望のメッセージを歩行者側へ出力させるようにしてもよい。
【0039】
以上のように、本発明の実施例5によれば、自発光式交通標識板50は常夜において光センサ21により自発光式交通標識板50の外部から入射した車両前照灯等の光が検出された場合、自発光式交通標識板50の正面方向を照射する光を発光する。この結果、実施例2乃至4の効果に加えて、常夜において光センサ21により車両前照灯等の光が検出された場合、正面方向を照射する光を発光させて、自発光式交通標識板50が設置された一時停止等の付近に歩行者がいることを車両の運転手へ知らせ、注意を喚起できる自発光式交通標識板50を提供することができる。
【0040】
さらに本発明の実施例5によれば、自発光式交通標識板50の下側等に赤外線を感知する赤外線サンサを設置しておき、常夜において赤外線センサにより付近の歩行者が検出された場合、自発光式交通標識板50の正面方向を照射する光を発光させて、自発光式交通標識板50が設置された一時停止等の付近に歩行者がいることを車両の運転手へ知らせ、注意を喚起できる自発光式交通標識板50を提供することができる。
【0041】
加えて本発明の実施例5によれば、自発光式交通標識板50にさらに音声出力部を設置しておき、常夜において(好適には昼間において)赤外線センサにより付近の歩行者が検出された場合、音声出力部から車両の接近を知らせる所望のメッセージを歩行者側へ出力させて、歩行者の注意を喚起できる自発光式交通標識板50を提供することができる。
【実施例6】
【0042】
上述した実施例1乃至5の自発光式交通標識板において、ドット状反射部14a等として再帰反射シート12上に形成された所定の標識とは異なる標識の表示に合わせて加工されたものを用いることもできる。この場合、昼間は発光部15が発光しないが、明るいため再帰反射シート12上に形成された所定の標識を表示することができ、常夜においては発光部15の発光により所定の標識とは異なる標識を発光表示させることができる。即ち、昼夜で異なる標識を表示させることができる。常夜において発光部15が発光しない場合(点滅点灯中の消灯状態)で且つ車両前照灯の光Bによる再帰反射(光Bref)がある場合は所定の標識を表示することができ、一方、発光部15が発光した場合は所定の標識とは異なる標識を発光表示させることができる。即ち、常夜において異なる標識を交互に表示させることもできる。
【0043】
以上のように、本発明の実施例6によれば、ドット状反射部14a等として再帰反射シート12上に形成された所定の標識とは異なる標識の表示に合わせて加工されたものを用いることもできる。この結果、昼間は再帰反射シート12上に形成された所定の標識を表示することができ、常夜においては発光部15の発光により所定の標識とは異なる標識を発光表示させることができる。即ち、昼夜で異なる標識を表示できる自発光式交通標識板を提供することができる。
【実施例7】
【0044】
図8は、本発明の実施例7における自発光式交通標識板60の断面図を示す。図8で図1と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。自発光式交通標識板60が実施例1における自発光式交通標識板10と異なる点は、導光板13が衝撃を受けた際に導光板13が飛散することを防止するために飛散防止用シート61を導光板13の表面側に貼付した点にある。図8では実施例1における自発光式交通標識板10の導光板13の表面に飛散防止用シート61を貼付した例を示したが、実施例1乃至6における自発光式交通標識板10、20、30、40、50の導光板13の表面に飛散防止シート61を貼付してもよいことは勿論である。
【0045】
以上のように、本発明の実施例7によれば、実施例1乃至6の導光板13の表面側に飛散防止用シート61を貼付した。この結果、実施例1乃至6の効果に加えて、導光板13が衝撃を受けた際に導光板13が飛散することを防止できる自発光式交通標識板60を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の活用例として、規制標識、警戒標識、案内標識、指示標識、補助標識等に適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
10、20、30、40、50、60 本発明の自発光式交通標識板、 11、71 裏板、 12 再帰反射シート(全反射型)、 13、72 導光板、 14a、14b、14c ドット状反射部、 14as、14bs 反射面、 14ap、14bp 高さ、 15 発光部、 21 光センサ、 31 受光専用ドット状反射部、 41 下方向照射部、 42 支柱、 51a、51b、51c 注意喚起灯、 52 筐体、 61 飛散防止用シート、 70 従来の自発光式交通標識板、 73 透明アクリル板、 74 再帰反射シート(半透過型)、 75 LED。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0048】
【特許文献1】特開2010−2650号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池を電源とする自発光式交通標識板であって、
所定の標識が形成された全反射型の再帰反射シートと、
前記再帰反射シート上の前記自発光式交通標識板表面側に設けられた導光板であって、該再帰反射シート側の内面に前記所定の標識の表示に合わせたドット状反射部が加工されたものと、
前記導光板の周囲側一端面に設けられた、太陽電池を電源とする発光部とを備え、
前記発光部から発光された光を前記ドット状反射部により前記自発光式交通標識板外部へ反射することによって前記所定の標識を発光表示することを特徴とする自発光式交通標識板。
【請求項2】
請求項1記載の自発光式交通標識板において、前記導光板の周囲側一端面に、該自発光式交通標識板外部から入射し前記ドット状反射部により反射された光を検出する光センサをさらに備えたことを特徴とする自発光式交通標識板。
【請求項3】
請求項2記載の自発光式交通標識板において、前記ドット状反射物とは異なる別のドット状反射部であって前記自発光式交通標識板外部から入射した光を反射するものをさらに備えたことを特徴とする自発光式交通標識板。
【請求項4】
請求項2又は3記載の自発光式交通標識板において、前記光センサと接続された下方向照射部をさらに備え、該下方向照射部は該光センサにより該自発光式交通標識板外部から入射した光が検出された場合、該自発光式交通標識板の下方向を照射する光を発光することを特徴とする自発光式交通標識板。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載の自発光式交通標識板において、前記光センサと接続された正面方向照射部をさらに備え、該正面方向照射部は該光センサにより該自発光式交通標識板外部から入射した光が検出された場合、該自発光式交通標識板の正面方向を照射する光を発光することを特徴とする自発光式交通標識板。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の自発光式交通標識板において、前記ドット状反射部は前記所定の標識とは異なる標識の表示に合わせて加工されたものを用い、前記発光部が発光しない場合は前記所定の標識を表示し、該発光部が発光した場合は該所定の標識とは異なる標識を発光表示することを特徴とする自発光式交通標識板。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の自発光式交通標識板において、前記導光板上に飛散防止用シートをさらに設けたことを特徴とする自発光式交通標識板。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の自発光式交通標識板において、前記所定の標識は規制標識、警戒標識、案内標識、指示標識又は補助標識であることを特徴とする自発光式交通標識板。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−112942(P2013−112942A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257830(P2011−257830)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(391013531)株式会社吾妻製作所 (18)
【出願人】(591044647)株式会社 スズキ技研 (36)
【Fターム(参考)】