説明

自走式リサイクル機械

【課題】 走行時の制御を簡単なスイッチの遠隔操作だけで行い、走行速度の切換操作もオペレータの意向に沿って安全に行うことができるようにする。
【解決手段】 遠隔操作を行うリモコン30に走行スイッチ30Aを設ける。走行スイッチ30AのON,OFF操作により、走行用油圧モータ23,24を回転,停止させる。そして、リモコン30の走行スイッチ30AをON操作し続ける持続時間が予め決められた所定時間に達するまでは、エンジン回転数を低速走行時のエンジン回転数Nmin に設定する。一方、前記持続時間が所定時間以上になったときには、エンジン回転数を高速走行時のエンジン回転数Nmax まで漸次増大させる。これによって油圧ポンプ21の吐出量を増大させ、走行用油圧モータ23,24の回転速度を圧油の流量に応じて増大させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば間伐材、廃木材、またはコンクリート塊等のリサイクル対象物を破砕して再利用可能な小さな破砕物を生成するのに好適に用いられる自走式リサイクル機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、森林での間伐作業によって発生する間伐材や抜根、木材の剪定作業によって発生する剪定枝材、木造家屋の解体作業によって発生する廃木材等は、例えば発酵処理等を施すことにより肥料等として再利用される。また、建築物の解体作業によって発生するコンクリート塊、アスファルト塊等の廃材は、例えば地面の舗装材、埋め戻し材等として再利用される。
【0003】
そして、これら間伐材等の木材、またはコンクリート塊等の廃材からなるリサイクル原料(対象物)を、作業現場において再利用可能な小片にまで破砕するため、木材破砕機、クラッシャ等の自走式リサイクル機械を用いることは知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−263482号公報
【0005】
この種の従来技術による自走式リサイクル機械は、例えば走行用の油圧モータ等で履帯を駆動することにより自力走行を行うクローラ式(装軌式)の走行体を備えている。そして、このような自走式リサイクル機械は、例えば作業現場内での配置替え等に伴い比較的速い速度で自力走行する場合と、例えばトレーラ等に当該リサイクル機械を積み込んだり、積み下ろしたりする場合にゆっくりと遅い速度で自力走行する場合とがある。
【0006】
また、他の従来技術として、例えば人工降雪機を備えたクローラ型車両を遠隔操作で走行駆動するため、遠隔操作式の送信機に複数のスイッチを設け、これらのスイッチを選択的に操作することにより無線信号を送信してクローラ型車両の走行,停止等を制御する構成としたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献2】実開平6−2410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した特許文献2による遠隔操作式の送信機は、車両の前進、後進等を制御する複数のスイッチに加えて、走行速度を低速と高速とに切換える速度切換スイッチを設ける構成としている。
【0009】
このため、従来技術で採用している遠隔操作式の送信機は、スイッチの個数が増えて、送信機としての構造が複雑になるばかりでなく、多数のスイッチのなかから一のスイッチを選択的に押圧操作するときに、スイッチの押し間違い(誤操作)も発生し易くなるという問題がある。
【0010】
特に、大型のリサイクル機械をトレーラ等の運搬車両に積み込んだり、積み下ろしたりする場合には、自走式リサイクル機械をゆっくりと遅い速度で自力走行させる必要がある。しかし、このような場合に遠隔操作で走行速度の切換操作を、例えば低速から高速に誤って操作すると、トレーラ等に対する積み込み、積み下ろし作業を安全に行うことが難しくなるという問題がある。
【0011】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、簡単なスイッチ操作だけで走行,停止等の遠隔操作制御を容易に行うことができ、走行速度の切換操作もオペレータの意向に沿って安全に行うことができるようにした自走式リサイクル機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明は、自走可能な車体と、該車体に設けられた原動機により駆動されタンクと共に油圧源を構成する油圧ポンプと、該油圧ポンプからの圧油が供給されることにより前記車体を走行駆動する走行用油圧モータと、該走行用油圧モータの回転,停止を制御する走行制御手段と、前記車体に設けられ前記油圧ポンプからの圧油で駆動されることによりリサイクル対象物を処理する処理装置と、該処理装置でリサイクル処理した対象物を前記車体の外部に排出する排出手段と、前記油圧ポンプからの圧油を前記走行用油圧モータと前記処理装置とのいずれか一方に供給するため走行モードと作業モードとのいずれかを選択する動作モード選択手段と、前記走行制御手段を遠隔操作する遠隔操作手段とを備えてなる自走式リサイクル機械に適用される。
【0013】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記遠隔操作手段は、前記走行用油圧モータを回転,停止させるために操作されるスイッチ部を有し、前記走行制御手段は、前記遠隔操作手段のスイッチ部を操作し続ける持続時間が予め決められた所定時間に達するまでは前記走行用油圧モータの回転速度を低速に設定し、前記持続時間が所定時間以上になると、前記走行用油圧モータの回転速度を増大させる構成としたことにある。
【0014】
また、請求項2の発明によると、前記走行制御手段は、前記スイッチ部を所定時間を越えて操作し続けると、前記所定時間を境として予め決められた最高回転数まで前記走行用油圧モータの回転速度を漸次増大させる構成としている。
【発明の効果】
【0015】
上述の如く、請求項1の発明によれば、遠隔操作手段のスイッチ部を閉成し続ける持続時間が予め決められた所定時間に達するまでは走行用油圧モータの回転速度を低速に設定し、前記持続時間が所定時間以上になると、前記走行用油圧モータの回転速度を増大させる構成としている。このため、例えば大型のリサイクル機械をトレーラ等の運搬車両に積み込んだり、積み下ろしたりする場合には、オペレータがスイッチ部をON操作する時間を短くし、短時間で間欠的にON,OFF操作することにより自走式リサイクル機械をゆっくりと遅い速度で自力走行させることができ、トレーラ等に対する積み込み、積み下ろし作業を安全に行うことができる。
【0016】
一方、作業現場でリサイクル機械を配置替え等のために自力走行で移動させる場合には、可能な限り速い速度で自力走行させる方が作業内容の変更等を効率的に行うことができる。そこで、このような場合には、オペレータがスイッチ部をON操作し続ける時間(持続時間)を前記所定時間よりも長くすることにより、走行用油圧モータの回転速度を増大させることができ、自走式リサイクル機械を可能な限り速い速度で自力走行させることができる。
【0017】
従って、遠隔操作手段には、走行用油圧モータを回転,停止させるために操作されるスイッチ部(例えば、常開のON,OFFスイッチ)を設けるだけでよく、スイッチ部を操作し続ける時間に応じて走行速度を低速と高速とに容易に切換えることができる。これにより、オペレータの意向に沿ったスイッチ操作により走行,停止等の遠隔操作制御を容易に行うことができ、走行速度の切換操作もオペレータの意向に沿って安全に行うことができる。
【0018】
また、請求項2の発明は、オペレータが遠隔操作手段のスイッチ部を操作し続けるときに、その操作時間(持続時間)が所定時間を越えると、走行用油圧モータの回転速度を漸次増大させることができ、さらにON操作を続けたときには予め決められた最高回転数まで前記走行用油圧モータの回転速度を増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態による自走式リサイクル機械を、木材破砕機に適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
ここで、図1ないし図4は本発明の実施の形態を示している。図中、1は自走式リサイクル機械としての木材破砕機で、該木材破砕機1は、例えば間伐作業によって発生する間伐材や抜根、剪定作業によって発生する剪定枝材、木造家屋の解体作業によって発生する廃木材等のリサイクル対象物(原料)を細かく破砕し、肥料等として再利用可能な小片状の木材チップを生成する処理(リサイクル処理)を行うものである。
【0021】
そして、木材破砕機1は、図1に示すように、後述の走行体2、ホッパ8、フィーダ9、供給ローラ10、破砕装置12、排出コンベヤ13およびパワーユニット14等により構成されている。
【0022】
2は自走可能なクローラ式の走行体で、該走行体2は、後述のベースフレーム7等と共に木材破砕機1の車体を構成するものである。そして、走行体2は、図1に示す如くトラックフレーム3と、該トラックフレーム3の左,右両側にそれぞれ設けられた駆動輪4および遊動輪5と、これら駆動輪4と遊動輪5とに巻回された左,右の履帯としてのクローラ6(一方のみ図示)等とにより構成されている。
【0023】
ここで、走行体2の左,右の駆動輪4は、後述する左,右の走行用油圧モータ23,24により駆動され、左,右の走行用油圧モータ23,24が同一の速度で回転されるときに、車両(走行体2)は前進または後進するように直進走行を行う。そして、車両のステアリング(操舵)を行うときには、走行用油圧モータ23,24のいずれか一方を速くし、他方を遅くするように両者に回転数差を発生させ、これによって走行体2のステアリング操作を行うものである。
【0024】
7は走行体2のトラックフレーム3に固定して設けられたベースフレームで、該ベースフレーム7は、トラックフレーム3上を前,後方向に延びている。そして、ベースフレーム7の長さ方向の一端側(後端側)から中間部には後述のホッパ8、フィーダ9等が配設され、ベースフレーム7の長さ方向の他端側(前端側)には、後述の破砕装置12等が配設される構成となっている。
【0025】
8はベースフレーム7の後端側から中間部に亘って設けられたホッパで、該ホッパ8は、リサイクル対象物の供給部を構成し、例えば間伐作業によって発生した間伐材及び/又は抜根等の破砕すべき木材(リサイクル原料)が投入されるものである。
【0026】
ここで、ホッパ8は、後述のフィーダ9を挟んで対面しつつベースフレーム7上に立設された左,右の側板8A,8Bを備えている。そして、ホッパ8は、油圧ショベル等(図示せず)を用いて左,右の側板8A,8B間に投入された間伐材、抜根等の木材を、フィーダ9上に案内するものである。
【0027】
9はホッパ8の下側に位置してベースフレーム7の後端側から中間部に亘って設けられたフィーダで、該フィーダ9は、ホッパ8から後述の破砕装置12に向けて前,後方向に延びている。ここで、フィーダ9は、ベースフレーム7に沿って無限軌道を形成するチェーンベルトにより構成されている。そして、フィーダ9は、油圧モータ等の駆動源(図示せず)によって駆動されることにより、ホッパ8に投入された木材を破砕装置12に向けて連続的に搬送するものである。
【0028】
10はフィーダ9の前端部上側に位置して後述する破砕装置12の近傍に設けられた供給ローラで、該供給ローラ10は、フィーダ9によって搬送されてくる木材(リサイクル対象物)を、当該フィーダ9との間に挟込んだ状態で破砕装置12に供給するものである。また、供給ローラ10の周囲は、図1に示すようにローラカバー11により覆われている。
【0029】
12はベースフレーム7の前端側に設けられたリサイクル処理装置としての破砕装置で、該破砕装置12は、フィーダ9と供給ローラ10とを通じて供給された木材(リサイクル対象物)を細かく破砕し、肥料等として再利用可能な小片状の木材チップを生成する処理を行うものである。
【0030】
13は破砕装置12の下側から前,後方向に延びて設けられた排出手段としての排出コンベヤで、該排出コンベヤ13は、破砕装置12の下側から斜め上向きに傾斜しつつ前,後方向に延びたコンベヤフレーム13Aと、該コンベヤフレーム13Aに沿って前,後方向に延びる無限軌道を形成するベルト13Bとにより大略構成されている。
【0031】
そして、排出コンベヤ13は、破砕装置12によって破砕(リサイクル処理)された対象物としての木材チップを、ベルト13B上に積載して搬送し、この木材チップを木材破砕機1の外部に、図1中の矢示A方向へと連続的に排出するものである。
【0032】
14はフィーダ9の左側に位置してトラックフレーム3上に搭載されたパワーユニットで、該パワーユニット14は、フィーダ9に沿って前,後方向に延びた建屋カバー15と、該建屋カバー15内に収容された後述のエンジン20、油圧ポンプ21等とにより構成されている。
【0033】
16はパワーユニット14の前側に配設された操縦部で、該操縦部16には、例えば左,右の走行レバー17等が設けられ、オペレータは該走行レバー17を傾転操作することにより、木材破砕機1(走行体2)の走行を制御することができる。なお、後述のリモコン30による走行制御は、オペレータが走行レバー17を中立位置に戻したまま、操縦部16から遠く離れた状態のときに、無線信号を用いた遠隔操作により行われるものである。
【0034】
また、操縦部16には、図2に示すエンジン回転数調整部18および動作モード選択部19等が設けられている。そして、動作モード選択部19は、「走行モード」と「作業モード」とのいずれかを選択する動作モード選択手段(選択スイッチ)を構成し、後述する油圧ポンプ21からの圧油を走行用油圧モータ23,24と前記処理装置(例えば、破砕装置12の油圧アクチュエータ等)とのいずれか一方に供給するための選択操作を行うものである。
【0035】
一方、エンジン回転数調整部18は、後述するエンジン20の目標回転数を可変に設定して調整するもので、例えばエンジン回転数設定器としての操作ダイヤル、燃料レバーまたはアップダウンスイッチ等を用いて構成されている。そして、動作モード選択部19により「走行モード」ではなく、「作業モード」を選択しているときには、エンジン回転数調整部18からの指令信号等に応じてエンジン回転数は可変に設定(調整)される。
【0036】
しかし、動作モード選択部19によって「走行モード」を選択しているときには、エンジン回転数調整部18からの指令信号でエンジン回転数が制御されるのではなく、後述の図3に示す走行時の制御処理に従ってエンジン回転数は、図4中の特性線32の如く制御されるものである。
【0037】
20は木材破砕機1の原動機を構成するエンジンで、該エンジン20は、例えばディーゼルエンジン等により構成され、油圧ポンプ21と共にパワーユニット14の建屋カバー15内に収容されている。そして、エンジン20は、油圧ポンプ21を回転駆動することにより、タンク(図示せず)から吸込んだ油液を圧油として吐出させる。
【0038】
即ち、油圧ポンプ21はタンクと共に油圧源を構成し、油圧ポンプ21から吐出された圧油は、例えば図2に示すように走行用の方向制御弁22を介して左,右の走行用油圧モータ23,24に供給される。そして、走行用油圧モータ23,24は、このときに供給される圧油の流量に応じて回転速度が増減され、車両(走行体2)の走行速度は、走行用油圧モータ23,24の回転速度に従って増減されるものである。
【0039】
ここで、走行用の方向制御弁22は、後述のコントローラ25と共に走行制御手段を構成するものである。そして、方向制御弁22は、例えば中立位置と左,右の切換位置(いずれも図示せず)とを有した3位置の方向制御弁等により構成されている。また、方向制御弁22は、後述するリモコン30からの無線信号に従って中立位置と左,右の切換位置とのいずれかに切換操作される。
【0040】
この場合、走行用の方向制御弁22は、常時は中立位置となって走行用油圧モータ23,24に対する圧油の給排を遮断する。そして、方向制御弁22が中立位置から左,右の切換位置に切換えられたときには、油圧ポンプ21からの圧油が走行用油圧モータ23,24に供給される。これにより、該走行用油圧モータ23,24が一方向に回転するときには、車両(走行体2)が前進走行し、走行用油圧モータ23,24が逆方向に回転するときには、車両が後進走行するものである。
【0041】
25はエンジン20の回転数を制御する回転数制御装置としてのコントローラで、該コントローラ25は、図2に示すように、エンジン回転数演算部26、エンジン回転数制御部27、エンジン回転数増減判定部28およびエンジン回転数等の記憶部29を含んで構成されている。コントローラ25は、走行用の方向制御弁22と共に走行制御手段を構成するものである。
【0042】
そして、コントローラ25の入力側には、図2に示す如くエンジン回転数調整部18および動作モード選択部19等が接続されると共に、後述のリモコン30が無線回線等を介して接続され、コントローラ25の出力側にはエンジン20が接続されている。
【0043】
ここで、コントローラ25のエンジン回転数演算部26は、動作モード選択部19によって「作業モード」が選択されているときに、エンジン回転数調整部18からの指令信号等に応じてエンジン回転数を、例えば高速回転、中速回転または低速回転等として可変に演算して設定し、このときの制御信号をエンジン回転数制御部27を介してエンジン20に出力する。
【0044】
また、動作モード選択部19により「走行モード」が選択され、かつ後述するリモコン30からの無線信号で車両(走行体2)の走行制御を行うときには、コントローラ25のエンジン回転数演算部26とエンジン回転数増減判定部28等とにより、図3に示す処理プログラムに従って後述の如くエンジン回転数は制御されるものである。
【0045】
この場合、エンジン回転数等の記憶部29には、例えば低速走行時のエンジン回転数(Nmin )と、高速走行時のエンジン回転数(Nmax )等とが予め記憶されている。そして、エンジン回転数増減判定部28は、図3中のステップ5等に示す如く、リモコン30からの無線信号(走行スイッチ30AによるON操作)の持続時間Tが予め決められた所定時間To(例えば、2〜7秒程度)に達するか否かを判定し、「NO」と判定する間は、低速走行時のエンジン回転数(Nmin )をエンジン回転数演算部26に出力する。
【0046】
また、走行スイッチ30AによるON操作の持続時間Tが所定時間To以上となったときに(図4中の時間T3 〜T4 参照)、エンジン回転数増減判定部28は、図3中のステップ5,ステップ10に示すように「YES」と判定し、このときにはエンジン回転数を低速走行時のエンジン回転数(Nmin )よりも漸次増大させる信号をエンジン回転数演算部26に出力する。
【0047】
そして、図4中の時間T3 〜T6 に示すように、走行スイッチ30AのON操作がその後も続けられるときには、エンジン回転数が高速走行時のエンジン回転数(Nmax )となるまで一定の時間Ta をかけて漸次増大させ、その後は時間T5 〜T6 に示す如く高速走行時のエンジン回転数(Nmax )を保つものである。
【0048】
30は遠隔操作手段を構成するリモコンで、該リモコン30は、オペレータが指先等で操作(ON,OFF操作)するスイッチ部としての走行スイッチ30Aを備えている。そして、この走行スイッチ30AをON操作したときには、図2中に示す走行用の方向制御弁22が中立位置から切換わって開弁され、油圧ポンプ21からの圧油が左,右の走行用油圧モータ23,24に対して供給される。
【0049】
また、走行スイッチ30Aの操作を解除(OFF操作)したときには、走行用の方向制御弁22が中立位置に戻って閉弁され、油圧ポンプ21からの圧油の供給が遮断されることにより、走行用油圧モータ23,24は回転が停止され、車両の走行も停止される。しかし、エンジン20の回転数は、図4に示すように走行スイッチ30Aの操作を解除(OFF操作)したときにも、低速走行時のエンジン回転数(Nmin )が維持される。
【0050】
一方、走行スイッチ30AによるON操作の持続時間Tが所定時間To以上となったときには、図4中の時間T3 〜T5 に示すように、エンジン回転数が低速走行時のエンジン回転数(Nmin )よりも漸次増大され、その後に一定の時間Ta が経過するときには、時間T5 〜T6 に示す如く高速走行時のエンジン回転数(Nmax )にエンジン回転数が設定されるものである。
【0051】
本実施の形態による自走式リサイクル機械としての木材破砕機1は、上述の如き構成を有するもので、次に、間伐作業によって発生する間伐材等の木材(リサイクル対象物)を破砕して、小片状の木材チップを生成する破砕作業について説明する。
【0052】
まず、木材破砕機1のホッパ8内に、油圧ショベル等(図示せず)を用いて間伐材等の木材を投入する。これにより、間伐材等の木材(リサイクル対象物)はフィーダ9上に供給され、このフィーダ9によって破砕装置12に向けて搬送される。
【0053】
そして、破砕装置12は、高速で回転する破砕ロータ、複数の破砕ビット(いずれも図示せず)によって前記木材を破砕し、破砕された木材チップは、スクリーン(図示せず)等を通過して排出コンベヤ13のベルト13B上に導出され、このベルト13Bによって木材破砕機1の外部に排出される。
【0054】
ところで、自走式の木材破砕機1は、例えば作業現場内での配置替え等に伴い比較的速い速度で自力走行を行う場合と、例えばトレーラ等の運搬車両(図示せず)に木材破砕機1を積み込んだり、積み下ろしたりする場合にゆっくりと遅い速度で自力走行を行う場合とがある。
【0055】
そして、このような走行速度の切換制御を行うために、車両の前進、後進等を制御する複数のスイッチに加えて、走行速度を低速と高速とに切換える速度切換スイッチを設ける構成としたものがある。しかし、このような速度切換スイッチを、例えば図2に示すリモコン30に追加して設けると、スイッチの個数が増えて誤操作(スイッチの押し間違い)の原因になる虞れがある。
【0056】
そこで、本実施の形態にあっては、例えばコントローラ25にエンジン回転数増減判定部28等を形成し、リモコン30の走行スイッチ30AによるON操作の持続時間Tを、例えば2〜7秒程度の所定時間Toと比較して判定し、この判定結果に従って車両(走行体2)の走行速度を、低速と高速とに切換える構成としている。
【0057】
即ち、コントローラ25による走行制御処理がスタートすると、図3に示すステップ1で、動作モード選択部19からの選択信号により走行モードが選択されているか否かを判定する。そして、ステップ1で「NO」と判定するときには、動作モード選択部19で作業モードが選択されているので、走行体2を停止状態に保ちつつ、ステップ9に移ってリターンし、ステップ1以降の処理を繰返すようにする。
【0058】
また、ステップ1で「YES」と判定したときには、動作モード選択部19で走行モードが選択されているので、次なるステップ2に移ってリモコン30の走行スイッチ30Aが操作(ON操作)されているか否かを判定する。そして、ステップ2で「NO」と判定する間は、例えば図4中の特性線31に示す時間T1 以前のように、走行スイッチ30Aが解除(OFF)されているので、この場合にはステップ8に移ってエンジン20の回転数を低速走行時のエンジン回転数(Nmin )に保ち、その後はステップ9でリターンする。
【0059】
一方、ステップ2で「YES」と判定したときには、走行スイッチ30Aが操作(ON操作)されているので、ステップ3に移ってタイマによる計時を開始し、ON操作の持続時間Tを計時する。そして、次なるステップ4では、エンジン20の回転数を低速走行時のエンジン回転数(Nmin )に保つ。
【0060】
次に、ステップ5では、リモコン30の走行スイッチ30Aによる操作(ON操作)の持続時間Tが所定時間To(例えば、2〜7秒程度)以上となったか否かを判定する。そして、ステップ5で「NO」と判定する間は、例えば図4中の特性線31に示す時間T1 〜T2 のように、走行スイッチ30Aを操作し続ける持続時間Tが所定時間Toよりも短いので、ステップ6に移って走行スイッチ30Aの操作が解除されたか否かを判定する。
【0061】
ここで、ステップ6で「YES」と判定するときには、例えば図4中の特性線31に示す時間T2 〜T3 のように、走行スイッチ30Aの操作が解除された場合に該当するので、この場合にはステップ7に移ってタイマを停止させる。そして、次なるステップ8でエンジン20の回転数を低速走行時のエンジン回転数(Nmin )に保つように制御し、その後はステップ9でリターンする。
【0062】
また、ステップ6で「NO」と判定したときには、ステップ4に戻って、これ以降の処理を繰り返す。そして、ステップ5で「YES」と判定したときには、例えば図4中の時間T3 〜T5 のように、走行スイッチ30Aを操作し続ける持続時間Tが所定時間To以上に長くなっているので、ステップ10に移ってエンジン20の回転数を、図4中の特性線32に示すように低速走行時のエンジン回転数(Nmin )から漸次増大させる。
【0063】
次に、ステップ11では走行スイッチ30Aの操作が解除されたか否かを判定し、「NO」と判定する間は、図4中の時間T4 〜T5 のように、走行スイッチ30Aが操作(ON操作)され続けているので、ステップ12に移ってエンジン回転数Nx が高速走行時のエンジン回転数Nmax よりも低いか否かを判定する。そして、ステップ12で「YES」と判定する間は、ステップ10に戻って、これ以降の処理を繰り返す。
【0064】
一方、ステップ12で「NO」と判定したときには、エンジン回転数Nx が高速走行時のエンジン回転数Nmax まで増大しているので、この場合はステップ13でエンジン回転数Nx をエンジン回転数Nmax に保つように制御し、その後はステップ14で走行スイッチ30Aの操作が解除されたか否かを判定する。そして、ステップ14で「NO」と判定する間は、ステップ13に戻って、これ以降の処理を繰り返す。なお、この状態は図4中の時間T5 〜T6 に該当するものである。
【0065】
また、ステップ14で「YES」と判定したときには、例えば図4中の時間T6 のように、走行スイッチ30Aの操作が解除された場合であるから、この場合には、次なるステップ7に移ってタイマを停止させリセットする。そして、次のステップ8では、図4中の時間T6 以降のようにエンジン20の回転数を低速走行時のエンジン回転数(Nmin )まで低下させるように制御し、その後はステップ9でリターンする。
【0066】
また、前記ステップ11で「YES」と判定したときには、エンジン回転数を低速走行時のエンジン回転数(Nmin )から漸次増大させている途中で、走行スイッチ30Aの操作を解除した場合であるから、この場合にもステップ7に移ってタイマを停止させ、次なるステップ8でエンジン20の回転数を低速走行時のエンジン回転数(Nmin )まで低下させるように制御し、その後はステップ9でリターンする。
【0067】
かくして、本実施の形態によれば、例えばコントローラ25にエンジン回転数増減判定部28等を形成し、リモコン30の走行スイッチ30AによるON操作の持続時間Tを所定時間Toと比較して判定すると共に、この判定結果に従って車両(走行体2)の走行速度を、低速と高速とに切換える構成としている。
【0068】
このため、例えばトレーラ等の運搬車両(図示せず)に木材破砕機1を積み込んだり、積み下ろしたりする場合に、オペレータはリモコン30の走行スイッチ30AをON(閉成)操作しても、このときの走行速度が速くならないように、走行スイッチ30Aを頻繁にON,OFFを繰返すような操作を行えばよい。
【0069】
この結果、走行用油圧モータ23,24の回転速度(走行速度)は、エンジン20の回転数が低速走行時のエンジン回転数(Nmin )に維持されることによって、低速状態を保つことになり、木材破砕機1の走行体2は、ゆっくりと遅い速度で自力走行を行うことができる。
【0070】
即ち、このような場合には、オペレータがリモコン30の走行スイッチ30Aを所定時間Toよりも短い時間で、間欠的にON,OFF操作を繰返すことにより、自走式の木材破砕機1(リサイクル機械)をゆっくりと遅い速度で自力走行させることができ、トレーラ等に対する積み込み、積み下ろし作業を安全に行うことができる。
【0071】
一方、例えば作業現場内での配置替え等に伴い木材破砕機1の走行体2を、できる限り速い速度で走行駆動したいときには、オペレータがリモコン30の走行スイッチ30Aを押し続けると、この間はON操作が続けられるため、このときの持続時間Tが所定時間Toを越えるようになる。
【0072】
この結果、エンジン20の回転数が図4中の特性線32に沿って、時間T4 以降のように低速走行時のエンジン回転数(Nmin )から漸次増大され、さらに、走行スイッチ30AのON操作を続けると、図4中の時間T5 以降のように、エンジン回転数が高速走行時のエンジン回転数(Nmax )に達するまで増大される。
【0073】
これにより、オペレータが走行スイッチ30AをON操作し続ける間は、エンジン回転数が高速走行時のエンジン回転数(Nmax )に設定されるので、走行用油圧モータ23,24の回転速度(走行速度)は、高速走行に適した速度に制御され、木材破砕機1の走行体2を可能な限り速い速度で走行駆動することができる。
【0074】
また、このように走行体2を高速で走行させている途中でも、オペレータが走行スイッチ30Aから指先を離し、走行スイッチ30Aの操作の解除(OFF操作)を一旦行えば、エンジン回転数が低速走行時のエンジン回転数(Nmin )まで自動的に下がると共に、走行用の方向制御弁22が中立位置に復帰するので、走行体2の走行動作を速やかに停止させることができる。
【0075】
従って、本実施の形態によれば、オペレータが指先等でリモコン30の走行スイッチ30Aを押圧操作したり、走行スイッチ30Aから指先を離す解除操作を行ったりするだけで、走行体2の走行,停止等の遠隔操作制御を容易に行うことができ、オペレータの意向に沿った走行速度の切換操作を実現できると共に、速度の切換操作もオペレータの意向に沿って安全に行うことができる。
【0076】
しかも、遠隔操作手段としてのリモコン30には、走行用油圧モータ23,24を回転,停止させるために操作される走行スイッチ30A(例えば、押圧すれば閉成し、押圧を解除すると自動的に開成するスイッチ)を設けるだけでよく、スイッチの構造を簡素化することができる上に、走行スイッチ30Aを操作し続ける持続時間Tに応じて走行速度を低速と高速とに容易に切換えることができる。
【0077】
また、自走式リサイクル機械(例えば、木材破砕機1)のオペレータがリモコン30の走行スイッチ30Aを操作し続けるときに、その持続時間Tが数秒程度の所定時間Toを越えると、走行用油圧モータ23,24の回転速度をエンジン回転数の増加に伴って漸次増大させることができ、さらに閉成操作を続けたときには予め決められた最高回転数(エンジン回転数Nmax )まで走行用油圧モータ23,24の回転速度を増大させることができる。
【0078】
この場合、コントローラ25は、動作モード選択部19で走行モードを選択している限り、エンジン20の回転数を予め決められた低速回転数(エンジン回転数Nmin )と高速回転数(エンジン回転数Nmax )との間で可変に制御する構成としている。
【0079】
このため、リモコン30の走行スイッチ30Aを操作し続ける持続時間Tが所定時間Toに達するまでは、エンジン20の回転数を低速回転数(エンジン回転数Nmin )に設定することができ、このときには、油圧ポンプ21から走行用油圧モータ23,24に向けて吐出される圧油の吐出量を小流量に抑え、走行用油圧モータ23,24の回転速度を低速に設定することができる。
【0080】
一方、コントローラ25は、前記持続時間Tが所定時間To以上になると、エンジン20の回転数を高速回転数(エンジン回転数Nmax )になるまで漸次増大させることができる。このため、油圧ポンプ21から走行用油圧モータ23,24に向けて吐出される圧油の吐出量を漸次増大させることができ、このときの流量に応じて走行用油圧モータ23,24の回転速度を増速することができる。
【0081】
なお、上述した実施の形態では、エンジン回転数を低速走行時のエンジン回転数(Nmin )と高速走行時のエンジン回転数(Nmax )との間で可変に制御して走行用油圧モータ23,24の回転速度(走行速度)を増減する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば油圧源である油圧ポンプを可変容量型の油圧ポンプとし、該ポンプの吐出量(容量)を変えることによって走行速度を増減させる構成としてもよいものである。
【0082】
また、上述した実施の形態では、自走式のリサイクル機械としてクローラ式の走行体2を有する木材破砕機1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばクラッシャ、土質改良機、スクリーンまたはシュレッダ等と呼ばれる自走式のリサイクル機械にも適用できるものである。
【0083】
さらに、前記実施の形態では、オペレータが手動等で操作する操縦部16をパワーユニット14の前側に配設する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばリモコン30等の遠隔操作手段のみによって車体の外部から走行操作を行う構成とした自走式のリサイクル機械に適用してもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の形態による木材破砕機を示す斜視図である。
【図2】木材破砕機をリモコンにより走行制御するときの制御ブロック図である。
【図3】図2中のコントローラによる走行制御処理を示す流れ図である。
【図4】走行スイッチの操作とエンジン回転数との関係をタイムチャートとして示す特性線図である。
【符号の説明】
【0085】
1 木材破砕機(リサイクル機械)
2 走行体
6 クローラ(履帯)
7 ベースフレーム
8 ホッパ
9 フィーダ
12 破砕装置(処理装置)
13 排出コンベア(排出手段)
14 パワーユニット
15 建屋カバー
16 操縦部
19 動作モード選択部(動作モード選択手段)
20 エンジン(原動機)
21 油圧ポンプ
22 走行用の方向制御弁(走行制御手段)
23,24 走行用油圧モータ
25 コントローラ(走行制御手段)
30 リモコン(遠隔操作手段)
30A 走行スイッチ(スイッチ部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、該車体に設けられた原動機により駆動されタンクと共に油圧源を構成する油圧ポンプと、該油圧ポンプからの圧油が供給されることにより前記車体を走行駆動する走行用油圧モータと、該走行用油圧モータの回転,停止を制御する走行制御手段と、前記車体に設けられ前記油圧ポンプからの圧油で駆動されることによりリサイクル対象物を処理する処理装置と、該処理装置でリサイクル処理した対象物を前記車体の外部に排出する排出手段と、前記油圧ポンプからの圧油を前記走行用油圧モータと前記処理装置とのいずれか一方に供給するため走行モードと作業モードとのいずれかを選択する動作モード選択手段と、前記走行制御手段を遠隔操作する遠隔操作手段とを備えてなる自走式リサイクル機械において、
前記遠隔操作手段は、前記走行用油圧モータを回転,停止させるために操作されるスイッチ部を有し、
前記走行制御手段は、前記遠隔操作手段のスイッチ部を操作し続ける持続時間が予め決められた所定時間に達するまでは前記走行用油圧モータの回転速度を低速に設定し、前記持続時間が所定時間以上になると、前記走行用油圧モータの回転速度を増大させる構成としたことを特徴とする自走式リサイクル機械。
【請求項2】
前記走行制御手段は、前記スイッチ部を所定時間を越えて操作し続けると、前記所定時間を境として予め決められた最高回転数まで前記走行用油圧モータの回転速度を漸次増大させる構成としてなる請求項1に記載の自走式リサイクル機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−65805(P2010−65805A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234736(P2008−234736)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】