説明

自走式掃除機及びサスペンション構造

【課題】駆動輪に対して加わる衝撃の緩衝を適正に行って、駆動輪の走行面に対する接地性を向上させる。
【解決手段】 自律走行して掃除を行う自走式掃除機100の掃除機本体に取り付けられる駆動輪21L、21Rのサスペンション構造であって、駆動輪と、当該駆動輪を回転駆動させるための駆動モータ221、231と、第一〜第三歯車251〜253とが一体となって駆動ユニット2L、2Rが構成され、駆動ユニットを支持するユニット支持部210が掃除機本体に取付固定され、駆動ユニットは、自走式掃除機の走行面側にねじりコイルバネ222、232によって付勢されるとともに、当該駆動ユニット及びユニット支持部の各々の異なる2点どうしに回動自在に取り付けられた第一リンク220及び第二リンク230を介してユニット支持部に接続されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行して掃除を行う自走式掃除機及びこの自走式掃除機に備わる駆動輪のサスペンション構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内にて所定の走行パターンに基づいて自律走行して掃除を行う自走式掃除機が知られている。
【0003】
この自走式掃除機は、例えば、走行方向に直交する方向に沿って配設された二つの駆動輪を備えており、これらの駆動輪を駆動させて所定方向に走行しながら、床面等の走行面の掃除を行うようになっている。
【0004】
ところで、自走式掃除機として、走行中に駆動輪に加わる衝撃や振動等に基づいて生じる当該駆動輪の自走式掃除機に対する上下動を減衰するためのサスペンション構造を有するものが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。このサスペンション構造として、より具体的には、駆動モータやギヤ等の減速機構とともに駆動ユニットを一体となって構成する駆動輪を自走式掃除機の走行面側に押圧(付勢)するためのバネ部材(弾性体)等を備えたものが知られている(例えば、特許文献3及び特許文献4参照。)。
【特許文献1】特表2001−525567号公報
【特許文献2】特開2002−360480号公報
【特許文献3】特開2003−33310号公報
【特許文献4】特開2004−16385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献3及び特許文献4等に開示されたサスペンション構造の場合、走行中の駆動輪の自走式掃除機に対する上下動の減衰を好適に行うことができず、当該自走式掃除機の走行を適正に行うことができないといった問題がある。
【0006】
即ち、特許文献3の場合、駆動輪よりも当該自走式掃除機の前進方向側に設けられた一の回動軸を中心として駆動ユニットが回動自在に構成されているために、製造や取付等の誤差によって機械的な誤動作が発生し易く、駆動輪の接地性が低下して自走式掃除機の走行を適正に行うことができない。また、特許文献4の場合、圧縮方向(伸縮方向)が自走式掃除機の走行面に対して略垂直となる方向に配設された圧縮バネを介して駆動ユニット(走行部)が取り付けられている。このため、走行中に駆動輪に対して前方から斜めに衝撃が加わった場合等に、駆動輪に対する衝撃の加わる方向と圧縮バネの伸縮方向とが異なることとなるので、当該圧縮バネが適正に伸縮(圧縮)されずに衝撃の緩衝力が低下することとなって、駆動輪の走行面に対する追随性が低下してしまう。特に、サスペンション構造が、駆動輪の移動方向を案内するガイド部材を備える構成の場合、当該ガイド部材によって圧縮バネの伸縮方向が規制されるため、摩擦抵抗が増大して駆動輪の上下動をスムーズに行うことができなくなる。
【0007】
本発明の課題は、駆動輪に対して加わる衝撃の緩衝を適正に行うことができ、駆動輪の走行面に対する接地性を向上させることができる自走式掃除機及びサスペンション構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上記課題を解決するため、本発明の自走式掃除機は、例えば、図1〜図6に示
すように、
自律走行して掃除を行う自走式掃除機(100)であって、
当該自走式掃除機の掃除機本体に取り付けられる駆動輪(例えば、左駆動輪21L、右駆動輪21R)のサスペンション構造を備え、
前記サスペンション構造は、
前記駆動輪と、当該駆動輪を回転駆動させるための駆動源(例えば、左輪駆動モータ221、右輪駆動モータ231)と、当該駆動源の駆動力を前記駆動輪に伝達するための駆動力伝達部(例えば、第一〜第三歯車251〜253)とが一体となって構成された駆動ユニット(例えば、左輪側駆動ユニット2L、右輪側駆動ユニット2R)と、
掃除機本体に前記駆動輪の回転軸よりも前記自走式掃除機の前進方向側に位置をずらして取付固定され、前記駆動ユニットを支持するユニット支持部(210)と、を有し、
前記駆動ユニットは、
当該駆動ユニットの前記駆動輪の回転軸と同軸上に設けられたユニット側第一接続部(241)と前記ユニット支持部の支持部側第一接続部(211)とに回動自在に取り付けられた第一リンク(220)、並びに、当該駆動ユニットの前記ユニット側第一接続部よりも上側で、且つ、当該ユニット側第一接続部と前記走行面に対して略垂直な方向にほぼ重なる位置に設けられたユニット側第二接続部(242)と前記ユニット支持部の前記支持部側第一接続部よりも上側で、且つ、当該支持部側第一接続部と前記走行面に対して略垂直な方向にほぼ重なる位置に設けられた支持部側第二接続部(212)とに回動自在に取り付けられた第二リンク(230)を介して前記ユニット支持部に接続されるとともに、前記ユニット支持部に配設された付勢部材(例えば、ねじりコイルバネ222、232)によって、前記第一リンク及び前記第二リンクの少なくとも何れか一方を介して当該自走式掃除機の走行面側に付勢されてなることを特徴としている。
【0009】
本発明の自走式掃除機によれば、駆動輪と駆動源と駆動力伝達部とが一体となって構成された駆動ユニットは、自走式掃除機の走行面側に付勢部材によって付勢されるとともに、第一リンク及び第二リンクを介してユニット支持部に接続されているので、駆動輪に加わる衝撃の緩衝を適正に行うことができ、駆動輪の走行面に対する接地性を向上させることができる。即ち、駆動ユニットを第一リンク及び第二リンクの回動軸を中心として回動させることができるので、例えば、自走式掃除機の走行中等に駆動輪に加わる衝撃を第一リンク及び第二リンクの回動軸を介して好適に分散させることができるとともに、付勢部材により衝撃の緩衝を適正に行うことができる。これにより、走行面に対して駆動輪をより適正に追随させることができることとなって、駆動輪の接地性を向上させることができる。
【0010】
また、駆動ユニットには、第一リンクが接続されるユニット側第一接続部と第二リンクが接続されるユニット側第二接続部が、走行面に対して略垂直な方向にほぼ重なる位置に設けられているので、第一リンク及び第二リンクを介した駆動ユニットの回動をより適正に行って衝撃の緩衝をより適正に行うことができる。
【0011】
さらに、ユニット支持部には、第一リンクが接続される支持部側第一接続部と第二リンクが接続される支持部側第二接続部が、走行面に対して略垂直な方向にほぼ重なる位置に設けられているので、駆動ユニットの回動をより適正に行って衝撃の緩衝をより適正に行うことができる。
【0012】
また、ユニット支持部は、駆動輪の回転軸よりも前記自走式掃除機の前進方向側に位置をずらして配設されているので、自走式掃除機の前進中に前方から斜めに駆動輪に加わる衝撃の緩衝をより適正に行うことができる。
【0013】
さらに、付勢部材は、ユニット支持部に配設され、第一リンク及び第二リンクの少なくとも何れか一方を介して駆動ユニットを付勢するので、付勢部材によって駆動ユニットを走行面側に直接付勢する場合に比べて、駆動輪に加わる衝撃を第一リンクや第二リンクを介してより適正に緩衝することができる。
【0014】
また、本発明のサスペンション構造によれば、上記の自走式掃除機と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の自走式掃除機によれば、駆動輪に加わる衝撃を第一リンク及び第二リンクの回動軸を介して好適に分散させることができるとともに、付勢部材により衝撃の緩衝を適正に行うことができる。これにより、走行面に対して駆動輪をより適正に追随させることができることとなって、駆動輪の接地性を向上させることができる。
【0016】
本発明のサスペンション構造によれば、駆動輪に加わる衝撃を第一リンク及び第二リンクの回動軸を介して好適に分散させることができるとともに、付勢部材により衝撃の緩衝を適正に行うことができる。これにより、走行面に対して駆動輪をより適正に追随させることができることとなって、駆動輪の接地性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明について、図面を用いて具体的な態様を説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0018】
図1は、本発明を適用した好適な一実施形態として例示する自走式掃除機を側面から見て示した側面図であり、図2は、自走式掃除機を示す平面図であり、図3は、自走式掃除機を示す正面図である。また、図4は、自走式掃除機の要部構成を示すブロック図である。
【0019】
なお、図1〜図3にあっては、自走式掃除機100の筐体1内を透視した状態を示し、当該筐体1内に配設される各構成を破線で示すものとする。
【0020】
また、以下の説明では、自走式掃除機100の走行方向に沿った方向を前後方向Xとして、前進方向側を前側とし、後進方向側を後側とする。さらに、前後方向Xに直交する一方向を左右方向Yとし、前後方向X及び左右方向Yの双方に直交する方向を上下方向Zとする。
【0021】
本実施形態の自走式掃除機100は、例えば室内等にて所定の走行パターンに基づいて自律走行して掃除を行うものであり、図1〜図3に示すように、外形が略円盤状に形成され、筐体1の内部に、左右二つの駆動輪21L、21Rを回転駆動させて当該自走式掃除機100を所定方向に移動させる走行部2と、移動中に走行面である掃除面上の塵埃等を掃除するための掃除部3とが配設され、また、図4に示すように、操作部4と、記憶部5と、RAM6と、CPU7とを備え、各部はバス8により接続されて構成されている。
【0022】
記憶部5は、例えばROM(Read Only Memory)やEEPROM(Electronic Erasable Programmable ROM)等から構成されており、CPU7の制御下にて実行される各種のプログラム並びに各プログラムの処理に係るデータ等を記憶するものである。具体的には、記憶部5は、例えば、予め設定された自走式掃除機100の所定の走行パターンに係る走行パターン情報を記憶している。
【0023】
RAM(Random Access Memory)6は、例えば、揮発性の半導体メモリであり、CPU7の制御下にて記憶部5から読み出されたプログラムやデータ等の格納領域や作業領域等を構成している。
【0024】
CPU(Central Processing Unit)7は、当該自走式掃除機100を構成する各部を
統括して制御するものであり、記憶部5に格納されている所定のプログラムを読み出してRAM6の作業領域に展開し、当該プログラムに従って各種処理を実行する。
【0025】
操作部4は、例えば、自走式掃除機100の各種機能の実行等を指示するための複数の
操作キー(図示略)を有しており、ユーザにより操作された操作キーに対応する所定の操作信号をCPU7に対して出力する。
【0026】
走行部2は、当該自走式掃除機100の底部略中央の左右方向Yにおける両端部に配設された二つの駆動輪21L、21Rと、これら駆動輪21L、21Rの各々を独立して回転駆動させる左輪駆動部22及び右輪駆動部23と、当該自走式掃除機100の走行に伴って従動回転する所定数(図2中、5つ図示)の従動輪24と、前進方向側に存する壁や家具等の障害物(図示略)を検出するための近接センサ25、…、自走式掃除機100の左右方向Y側に存する横壁等の障害物(図示略)を検出するための横壁用近接センサ26、26と、気流を検知してその流速を検出する第一フローセンサ27及び第二フローセンサ28と、走行面に存する凹凸等の段差を検出するための段差検出用センサ29、…と、を備えて構成されている。
【0027】
左駆動輪21Lは、例えば、左右方向Yの軸心周りに回転可能に配設されている。また、左駆動輪21Lには、例えば、その回転駆動に基づいて回転信号を出力するロータリーエンコーダ211Lが配設されている。
【0028】
左輪駆動部22は、例えば、CPU7の制御下にて左駆動輪21Lを回転駆動させるための駆動源としての左輪駆動モータ221と、当該左輪駆動モータ221の駆動力を左駆動輪21Lに伝達するための駆動力伝達部(後述)とを備えており、当該左輪駆動部22は、左駆動輪21Lと一体となって左輪側駆動ユニット2Lを構成している。
【0029】
以下に、左輪側駆動ユニット2Lについて図5及び図6を参照して詳細に説明する。
【0030】
ここで、図5及び図6は、左輪側駆動ユニット2Lを備えてなるサスペンション構造の一例を説明するための図であり、このうち、図6は、図5の状態の左輪側駆動ユニット2Lが上側に回動した状態を図示したものである。
【0031】
図5及び図6に示すように、左輪側駆動ユニット2Lは、自走式掃除機100の走行面側にねじりコイルバネ(付勢部材)222によって付勢された状態で、掃除機本体に取付固定されるユニット支持部210に第一リンク220及び第二リンク230を介して支持されており、これにより、左駆動輪21Lのサスペンション構造が構成されている。
【0032】
また、左輪側駆動ユニット2Lは、駆動力伝達部としての第一〜第三歯車251〜253が収納されたギヤボックス240を備え、第一〜第三歯車251〜253を介して左輪駆動モータ221の駆動力を左駆動輪21Lに伝達するようになっている。即ち、ギヤボックス240には、左輪駆動モータ221が取り付け固定されており、左輪駆動モータ221の出力軸に第一歯車251が噛合され、さらに、第一歯車251に第二歯車252が噛合され、さらに、第二歯車252に中心軸が左駆動輪21Lの回転軸と同軸上に設けられた第三歯車253が噛合されている。
【0033】
第三歯車253の中心軸及び左駆動輪21Lの回転軸と同軸上には、第一リンク220の一端部が回動自在に接続されるユニット側第一接続部241が設けられている。
【0034】
また、ギヤボックス240は、その上端部から自走式掃除機100の前側に向けて延出して形成された延出部243を備え、この延出部243にユニット側第一接続部241と上下方向(走行面に対して略垂直な方向)Zにほぼ重なる位置に第二リンク230の一端部が回動自在に接続されるユニット側第二接続部242が設けられている。即ち、ユニット側第二接続部242は、ユニット側第一接続部241よりも上側に設けられている。
【0035】
また、ユニット支持部210は、左駆動輪21Lの回転軸よりも自走式掃除機100の前進方向側に位置をずらして配設されている。
【0036】
さらに、ユニット支持部210は、走行面に対して略垂直な方向に沿って略長尺に形成された部材であり、その下側部分に第一リンク220の他端部が回動自在に接続される支持部側第一接続部211が設けられている。また、ユニット支持部210の上側部分には
、支持部側第一接続部211と上下方向(走行面に対して略垂直な方向)Zにほぼ重なる位置に第二リンク230の他端部が回動自在に接続される支持部側第二接続部212が設けられている。
【0037】
支持部側第二接続部212の回動軸と同軸上には、コイル状に巻かれている部分が支点となるようにしてねじりコイルバネ222が支持されており、その端部が支持部側第二接続部212の下側に設けられたバネ固定部213に固定されて、当該ねじりコイルバネ222の第二リンク230の上側に沿うように設けられた部分により第二リンク230が走行面側に付勢された状態となっている。
【0038】
右駆動輪21Rには、上記左駆動輪21Lと略同様に、例えば、左右方向Yの軸心周りに回転可能に配設されている。また、右駆動輪21Rには、その回転駆動に基づいて回転信号を出力するロータリーエンコーダ211Rが配設されている。
【0039】
右輪駆動部23は、左輪駆動部22と略同様に構成され、例えば、CPU7の制御下にて右駆動輪21Rを回転駆動させるための駆動源としての右輪駆動モータ231と、当該右輪駆動モータ231の駆動力を右駆動輪21Rに伝達するための駆動力伝達部とを備えており、当該右輪駆動部23は、右駆動輪21Rと一体となって右輪側駆動ユニット2Rを構成している。
【0040】
なお、右輪側駆動ユニット2Rは、上記の左輪側駆動ユニット2Lと略同様の構成をなしており、その詳細な説明は省略する。
【0041】
従動輪24は、例えば、駆動輪21L、21Rの回転駆動に従った走行安定性を高める上で、当該自走式掃除機100の駆動輪21L、21Rを中心として前後の重量バランス等を考慮して所定位置に所定数配設されている。
【0042】
近接センサ25は、例えば、赤外線センサや超音波センサ等から構成されており、筐体1の前側に設けられた複数の開口を介して各近接センサ25の先端部を露出させるようにして複数配設されている。
【0043】
また、近接センサ25は、前進方向側であって自走式掃除機100の所定範囲内に存する壁や家具等の障害物を検出するための障害物検出用信号をCPU7に対して出力するようになっている。そして、自走式掃除機100の走行中に近接センサ25から出力された障害物検出用信号の入力に基づいて、CPU7は、所定の演算プログラムを実行することに従って当該自走式掃除機100の進行方向に存する障害物を検出するようになっている。
【0044】
横壁用近接センサ26は、例えば、上記近接センサ25と略同様に、赤外線センサや超音波センサ等から構成されており、筐体1の左右の駆動輪21L、21Rの各々よりも端部側に設けられた二つの開口を介して各横壁用近接センサ26の先端部を露出させるようにして各々配設されている。
【0045】
また、横壁用近接センサ26は、前進方向に略直交する左右方向Y側に存する壁や家具等の障害物であって所定範囲内に存するものを検出するための障害物検出用信号をCPU7に対して出力するようになっている。そして、横壁用近接センサ26から出力された障害物検出用信号の入力に基づいて、CPU7は、所定の演算プログラムを実行することに従って当該自走式掃除機100の後進方向に存する障害物を検出するようになっている。
【0046】
第一フローセンサ27及び第二フローセンサ28は、当該自走式掃除機100の上面の略中央部に配設されている。具体的には、第一フローセンサ27は、自走式掃除機100の所定の走行パターンに従った進行方向に流れる気流を検知可能となるように、また、第二フローセンサ28は、進行方向に直交する方向に流れる気流を検知可能となるように、各々の検知部を筐体1から露出させて所定の向きに配設されている。
【0047】
そして、自走式掃除機100の走行(移動)中に、第一フローセンサ27は、進行方向に流れる気流の流速に係る第一流速信号をCPU7に対して出力し、第二フローセンサ28は、進行方向に直交する方向に流れる気流の流速に係る第二流速信号をCPU7に対して出力するようになっている。より具体的には、第一フローセンサ27及び第二フローセンサ28は、例えばマイクロセンサ等の温度検出部を備えており、当該温度検出部にて走行中に生じる気流により低下した温度を検出した後、検出された温度の低下度合と所定の関係を有する、進行方向及び進行方向に直交する方向に流れる各々の気流の流速、即ち、自走式掃除機100の移動速度を演算して第一流速信号及び第二流速信号としてCPU7に対して出力する。
【0048】
ここで、第一フローセンサ27から出力された第一流速信号及び第二フローセンサ28から出力された第二流速信号のうちの少なくとも何れか一方がCPU7に入力されると、CPU7は、第一流速信号及び第二流速信号のうちの少なくとも何れか一方に基づいて、所定の演算プログラムを実行して、当該自走式掃除機100の移動方向を検出するようになっている。なお、CPU7は、検出された移動方向に基づいて、所定の制御プログラムの実行により、当該自走式掃除機100を所定の走行パターンに従って移動させるように左輪駆動モータ221及び右輪駆動モータ231の駆動を制御するようになっている。
【0049】
段差検出用センサ29は、例えば、上記近接センサ25及び横壁用近接センサ26と略同様に、赤外線センサや超音波センサ等から構成されており、底部の前側の端部並びに左右の駆動輪21L、21Rの前側に各段差検出用センサ29の先端部を走行面側に向けて配設されている。また、段差検出用センサ29は、走行面に存する段差の検出を行うための段差検出用信号をCPU7に対して出力するようになっている。
【0050】
掃除部3は、掃除面(走行面)上の塵埃を掻き上げる掃除用ブラシ31と、掃除面上の塵埃を吸込口32を介して集塵するために駆動する吸込用ファン33と、吸込口32と連通部34を介して連通されるとともに吸込口32を介して吸い込まれた塵埃が集塵される集塵部35と、掃除用ブラシ31よりも外側の掃除面を掃除するためのサイド掃除用ブラシ36とを備えて構成されている。
【0051】
掃除用ブラシ31は、CPU7の制御下にてブラシ駆動モータ311が回転駆動されることに基づいて、左右方向Yの軸心周りに回転可能になっている。また、掃除用ブラシ31よりも後側に吸込口32が設けられている。
【0052】
吸込口32は、掃除用ブラシ31の長手方向における略中央部に設けられ、連通部34を介して集塵部35の後側の端部に接続されている。
【0053】
吸込用ファン33は、塵埃を濾過するためのフィルター37を介して集塵部35の前側の端部と連通されており、CPU7の制御下にてファン駆動モータ331が回転駆動されることに基づいて回転可能となっている。
【0054】
サイド掃除用ブラシ36は、左右の各駆動輪21L、21Rの前側にて、当該ブラシの一部を筐体1よりも外側にはみ出させるようにして配設されている。即ち、サイド掃除用ブラシ36は、CPU7の制御下にてサイドブラシ駆動モータ361が回転駆動されることに基づいて、筐体1の縁部分に設けられた上下方向Zの軸心周りに回転可能になっている。従って、サイド掃除用ブラシ36の一部、例えば略半分が筐体1よりも外側に位置することとなって、掃除用ブラシ31よりも外側の掃除面に存する塵埃等を掃除可能となっている。
【0055】
以上のように、本実施形態の自走式掃除機100によれば、駆動輪21L、21Rと駆動モータ221、231と第一〜第三歯車251〜253とが一体となって構成された駆動ユニット2L、2Rは、自走式掃除機100の走行面側にねじりコイルバネ222、232によって付勢されるとともに、第一リンク220及び第二リンク230を介してユニ
ット支持部210に接続されているので、駆動輪21L、21Rに加わる衝撃の緩衝を適正に行うことができ、駆動輪21L、21Rの接地性を向上させることができる。即ち、駆動ユニット2L、2Rを第一リンク220及び第二リンク230の回動軸を中心として回動させることができるので、自走式掃除機100の走行中等に駆動輪21L、21Rに加わる衝撃を第一リンク220及び第二リンク230の回動軸を介して好適に分散させることができるとともに、ねじりコイルバネ222、232により衝撃の緩衝を適正に行うことができる。これにより、走行面に対して駆動輪21L、21Rをより適正に追随させることができることとなって、駆動輪21L、21Rの接地性を向上させることができる。従って、自走式掃除機100を適正に走行させることができる。
【0056】
また、駆動ユニット2L、2Rには、第一リンク220が接続されるユニット側第一接続部241と第二リンク230が接続されるユニット側第二接続部242が上下方向Zにほぼ重なる位置に設けられているので、第一リンク220及び第二リンク230を介した駆動ユニット2L、2Rの回動をより適正に行って衝撃の緩衝をより適正に行うことができる。
【0057】
さらに、ユニット支持部210には、第一リンク220が接続される支持部側第一接続部211と第二リンク230が接続される支持部側第二接続部212が上下方向Zにほぼ重なる位置に設けられているので、駆動ユニット2L、2Rの回動をより適正に行って衝撃の緩衝をより適正に行うことができる。また、ユニット支持部210は、駆動輪21L、21Rの回転軸よりも自走式掃除機100の前進方向側に位置をずらして配設されているので、自走式掃除機100の前進中に前方から斜めに駆動輪21L、21Rに加わる衝撃の緩衝をより適正に行うことができる。
【0058】
さらに、ねじりコイルバネ222、232は、ユニット支持部210に配設され、第二リンク230を介して駆動ユニット2L、2Rを付勢するので、ねじりコイルバネ222、232によって駆動ユニット2L、2Rを走行面側に直接付勢する場合に比べて、駆動輪21L、21Rに加わる衝撃を第二リンク230を介してより適正に緩衝することができる。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
【0060】
例えば、上記実施形態では、付勢部材としてのねじりコイルバネ222、232により第二リンク230を介して駆動輪を走行面側に付勢するような構成を例示したが、これに限られるものではなく、第一リンク220を介して付勢しても良いし、第一リンク220及び第二リンク230の両方を介して付勢しても良い。
【0061】
また、ユニット側第一接続部241及びユニット側第二接続部242の位置、支持部側第一接続部211及び支持部側第二接続部212の位置、第一リンク220及び第二リンク230の長さ等は適宜任意に変更しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明を適用した好適な一実施形態として例示する自走式掃除機を側面から見て示した側面図である。
【図2】図1の自走式掃除機を示す平面図である。
【図3】図1の自走式掃除機を示す正面図である。
【図4】図1の自走式掃除機の要部構成を示すブロック図である。
【図5】図1の自走式掃除機に備わるサスペンション構造の一例を説明するための図である。
【図6】図1の自走式掃除機に備わるサスペンション構造の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0063】
100 自走式掃除機
1 筐体
2L 左輪側駆動ユニット
2R 右輪側駆動ユニット
22 左輪駆動部(第一駆動部)
23 右輪駆動部(第二駆動部)
21L 左駆動輪
21R 右駆動輪
221 左輪駆動モータ(駆動源)
231 右輪駆動モータ(駆動源)
210 ユニット支持部
211 支持部側第一接続部
212 支持部側第二接続部
220 第一リンク
230 第二リンク
241 ユニット側第一接続部
242 ユニット側第二接続部
251 第一歯車(駆動力伝達部)
252 第二歯車(駆動力伝達部)
253 第三歯車(駆動力伝達部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律走行して掃除を行う自走式掃除機であって、
当該自走式掃除機の掃除機本体に取り付けられる駆動輪のサスペンション構造を備え、
前記サスペンション構造は、
前記駆動輪と、当該駆動輪を回転駆動させるための駆動源と、当該駆動源の駆動力を前記駆動輪に伝達するための駆動力伝達部とが一体となって構成された駆動ユニットと、
掃除機本体に前記駆動輪の回転軸よりも前記自走式掃除機の前進方向側に位置をずらして取付固定され、前記駆動ユニットを支持するユニット支持部と、を有し、
前記駆動ユニットは、
当該駆動ユニットの前記駆動輪の回転軸と同軸上に設けられたユニット側第一接続部と前記ユニット支持部の支持部側第一接続部とに回動自在に取り付けられた第一リンク、並びに、当該駆動ユニットの前記ユニット側第一接続部よりも上側で、且つ、当該ユニット側第一接続部と前記走行面に対して略垂直な方向にほぼ重なる位置に設けられたユニット側第二接続部と前記ユニット支持部の前記支持部側第一接続部よりも上側で、且つ、当該支持部側第一接続部と前記走行面に対して略垂直な方向にほぼ重なる位置に設けられた支持部側第二接続部とに回動自在に取り付けられた第二リンクを介して前記ユニット支持部に接続されるとともに、前記ユニット支持部に配設された付勢部材によって、前記第一リンク及び前記第二リンクの少なくとも何れか一方を介して当該自走式掃除機の走行面側に付勢されてなることを特徴とする自走式掃除機。
【請求項2】
自律走行して掃除を行う自走式掃除機の掃除機本体に取り付けられる駆動輪のサスペンション構造であって、
前記駆動輪と、当該駆動輪を回転駆動させるための駆動源と、当該駆動源の駆動力を前記駆動輪に伝達するための駆動力伝達部とが一体となって駆動ユニットが構成され、
前記駆動ユニットを支持するユニット支持部が前記掃除機本体に取付固定され、
前記駆動ユニットは、前記自走式掃除機の走行面側に付勢部材によって付勢されるとともに、当該駆動ユニット及び前記ユニット支持部の各々の異なる2点どうしに回動自在に取り付けられた第一リンク及び第二リンクを介して前記ユニット支持部に接続されてなることを特徴とするサスペンション構造。
【請求項3】
前記駆動ユニットは、
前記駆動輪の回転軸と同軸上に設けられ、前記第一リンクが接続されるユニット側第一接続部と、前記ユニット側第一接続部よりも上側で、且つ、当該ユニット側第一接続部と前記走行面に対して略垂直な方向にほぼ重なる位置に設けられ、前記第二リンクが接続されるユニット側第二接続部と、を備えることを特徴とする請求項2に記載のサスペンション構造。
【請求項4】
前記ユニット支持部は、
前記第一リンクが接続される支持部側第一接続部と、前記支持部側第一接続部よりも上側で、且つ、当該支持部側第一接続部と前記走行面に対して略垂直な方向にほぼ重なる位置に、前記第二リンクが接続される支持部側第二接続部とが設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載のサスペンション構造。
【請求項5】
前記ユニット支持部は、前記駆動輪の回転軸よりも前記自走式掃除機の前進方向側に位置をずらして配設されていることを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載のサスペンション構造。
【請求項6】
前記付勢部材は、前記ユニット支持部に配設され、前記第一リンク及び前記第二リンクの少なくとも何れか一方を介して前記駆動ユニットを付勢することを特徴とする請求項2
〜5の何れか一項に記載のサスペンション構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−20936(P2006−20936A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203139(P2004−203139)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】