説明

自転車用発電ハブの固定子及び自転車用発電ハブ

【課題】自転車用発電ハブにおいて、構成を簡素にする。
【解決手段】自転車車用発電ハブ10の固定子13は、ハブ軸15と、環状部材16と、第1ヨーク18と、第2ヨーク19と、第3ヨーク20と、を備える。環状部材16は、ハブ軸15が挿通される貫通孔16dを有する。第1ヨーク18は、環状部材16の矢印B方向(軸方向)一端側から他端側に延びる第1延出部24aを有し、環状部材16に対して回転しないように設けられる。第2ヨーク19は、環状部材16の矢印B方向他端側から一端側に延びる第2延出部26aを有し、環状部材16に対して回転しないように設けられる。第3ヨーク20は、貫通孔16dに配置され、第1ヨーク18と第2ヨーク19とを磁気的に結合し、環状部材16及びハブ軸15の双方に回転不能に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車の車輪のハブを構成する自転車用発電ハブの固定子及び自転車用発電ハブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に自転車用発電ハブは、筒状の回転子とその内部に配置される固定子を備える。従来の自転車用発電ハブの固定子は、たとえば特許文献1に開示されるように、ハブ軸と、環状部材と、環状部材の一端側に配置される第1ヨークと、環状部材の他端側に配置される第2ヨークと、環状部材の貫通孔内に配置される第3ヨークとを備える。従来の自転車用発電ハブの固定子において、各ヨークは、環状部材に回転しないように設けられる。各ヨークが設けられた環状部材の軸方向の両端には、ワッシャが配置される。従来、このワッシャを環状部材及びハブ軸に回転不能にすることにより、環状部材をハブ軸に対して周方向に位置決めしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−242374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように前記従来の自転車用ハブの固定子では、環状部材及びヨークをハブ軸に対して周方向に位置決めするために2つの位置決め部材(ワッシャ)が必要であったので、その構成が複雑であった。
【0005】
本発明の課題は、自転車用発電ハブにおいて、構成を簡素にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明1に係る自転車用発電ハブの固定子は、ハブ軸と、環状部材と、第1ヨークと、第2ヨークと、第3ヨークと、を備えている。環状部材は、ハブ軸が挿通される貫通孔を有する。第1ヨークは、環状部材の軸方向一端側から軸方向他端側に延びる第1延出部を有し、環状部材に対して回転しないように設けられる。第2ヨークは、環状部材の軸方向他端側から軸方向一端側に延びる第2延出部を有し、環状部材に対して回転しないように設けられる。第3ヨークは、貫通孔に配置され、第1ヨークと第2ヨークとを磁気的に結合し、環状部材及びハブ軸の双方に回転不能に連結される。
【0007】
この自転車用発電ハブの固定子では、環状部材の貫通孔に配置されかつ第1ヨークと第2ヨークとを磁気的に結合する第3ヨークが、環状部材及びハブ軸の双方に回転不能に連結される。これにより、環状部材と第1及び第2ヨークとが、第3ヨークを介してハブ軸に対して回転不能に連結され、ハブ軸に対して環状部材の周方向(ハブ軸の周方向)に位置決めされる。従って、環状部材をハブ軸の周方向に対して位置決めするために、環状部材の軸方向両側にワッシャ等の位置決め部材を設ける必要がなく、構成を簡素にできる。
【0008】
発明2に係る自転車用発電ハブの固定子は、発明1に係る自転車用発電ハブの固定子において、第3ヨークは、貫通孔内で環状部材に回転不能に連結される。
【0009】
この場合には、第3ヨークが貫通孔内で環状部材に回転不能に連結されるので、第3ヨークを環状部材に連結しても、環状部材の軸方向の長さがコンパクトになる。
【0010】
発明3に係る自転車用発電ハブの固定子は、発明1又は2に係る自転車用発電ハブの固定子において、環状部材及び第3ヨークの一方は第1凸部を有し、環状部材及び第3ヨークの他方は第1凹部を有する。第3ヨークは、第1凸部と第1凹部とが係合することによって環状部材に回転不能に連結される。
【0011】
この場合には、環状部材と第3ヨークとが凹凸係合により回転不能に連結されるので、連結構造が簡素になる。
【0012】
発明4に係る自転車用発電ハブの固定子は、発明1から3のいずれかに係る自転車用発電ハブの固定子において、ハブ軸及び第3ヨークの一方は第2凸部を有し、ハブ軸及び第3ヨークの他方は第2凹部を有し、第3ヨークは、第2凸部と第2凹部とが係合することによってハブ軸に回転不能に連結される。
【0013】
この場合には、第3ヨークとハブ軸とが凹凸係合により回転不能に連結されるので、連結構造が簡素になる。
【0014】
発明5に係る自転車用発電ハブの固定子は、発明4に係る自転車用発電ハブの固定子において、第2凸部および第2凹部はそれぞれ、貫通孔内に配置される。
【0015】
この場合には、ハブ軸と第3ヨークとが貫通孔内で回転不能に連結されるので、第3ヨークをハブ軸に連結しても、第3ヨークの軸方向の長さがコンパクトになる。
【0016】
発明6に係る自転車用発電ハブの固定子は、発明5に係る自転車用発電ハブの固定子において、第2凹部は、ハブ軸の外周面に形成され、ハブ軸の一端から軸方向に延びる。
【0017】
この場合には、ハブ軸の外周面に配線を通すために軸方向に延びる溝を第2凹部と兼用できる。
【0018】
発明7に係る自転車用発電ハブの固定子は、発明1から6のいずれかに係る自転車用発電ハブの固定子において、第3ヨークは、環状に形成される。
【0019】
この場合には、第3ヨークが環状であるので貫通孔に配置しやすい。
【0020】
発明8に係る自転車用発電ハブの固定子は、発明1から7のいずれかに係る自転車用発電ハブの固定子において、第1ヨーク及び第2ヨークは、それぞれ環状部材に固定される。
【0021】
この場合には、第1ヨーク及び第2ヨークが環状部材に固定されるので、環状部材及び第3ヨークを介して、第1ヨーク及び第2ヨークをハブ軸に対して回転不能に連結できる。
【0022】
発明9に係る自転車用発電ハブの固定子は、発明1から8のいずれかに係る自転車用発電ハブの固定子において、環状部材並びに前記第1、第2及び第3ヨークをハブ軸に対して環状部材の軸方向(ハブ軸の軸方向)に位置決めするために環状部材の軸方向一端側でハブ軸にかしめられる第1位置決め部材をさらに備える。
【0023】
この場合には、第1位置決め部材がかしめることによりハブ軸に固定されるので、たとえばナットで位置決めする場合に比べて、環状部材の軸方向一端側で第1ヨークに過度な力が作用しない。
【0024】
発明10に係る自転車用発電ハブの固定子は、発明9に係る自転車用発電ハブの固定子において、環状部材並びに第1、第2及び第3ヨークを位置決めするために環状部材の軸方向他端側でハブ軸にかしめられる第2位置決め部材をさらに備える。
【0025】
この場合には、第2位置決め部材がかしめることによりハブ軸に固定されるので、たとえばナットで位置決めする場合に比べて、環状部材の軸方向他端側で第2ヨークに過度な力が作用しない。
【0026】
発明11に係る自転車用発電ハブの固定子は、発明1から10のいずれかに係る自転車用発電ハブの固定子において、環状部材は、軸方向一端側に設けられる第1フランジと、軸方向他端側に設けられる第2フランジとを有する。第1の軸方向他端側の端部は、第2フランジに支持され、第2延出部の軸方向一端側の端部は、第1フランジに支持される。
【0027】
この場合には、一端部から延びる第1延出部の他端部側の端部が第2フランジに支持され、他端部から延びる第2延出部の一端部側の端部が第1フランジに支持されるので、第1延出部及び第2延出部を安定して保持できる。
【0028】
発明12に係る自転車用発電ハブは、発明1から10のいずれかに係る固定子を備える。
【0029】
この自転車用発電ハブでは、発明1から10のいずれかに係る固定子を備えることによって構成を簡素にできる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、環状部材並びに第1及び第2ヨークが、第3ヨークを介してハブ軸に対して回転不能に連結され、周方向に位置決めされる。従って、従来の自転車用発電ハブの固定子ひいては自転車用発電ハブよりも構成を簡素にできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態による自転車用発電ハブの半栽断面図。
【図2】その固定子の分解斜視図。
【図3】第1ヨーク及び第2ヨークを外した状態の固定子の側面図。
【図4】他の実施形態の図1に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1に示すように、本発明の一実施形態による自転車用の発電ハブ(ハブダイナモ)10は、自転車のフロントフォーク102に装着される。ハブ軸15を有する発電ハブ10は、固定子13と、ハブ軸15に回転自在に装着されたハブシェル14と、を備える。ハブシェル14の内周面には、環状の磁石12が設けられる。磁石12には、周方向に複数の磁極が配置される。ここで、図1から図3において、後述する環状部材16の周方向が矢印Aで示される。また、図1及び図2において、環状部材16の軸方向が矢印Bで示される。この実施形態では、ハブ軸15、環状部材16、後述する第1ヨーク18、第2ヨーク19及び第3ヨーク20が同軸上に配置される。したがって、いずれにとっても周方向は矢印A方向であり、軸方向は矢印B方向である。
【0033】
<固定子>
固定子13は、ハブ軸15と、ハブ軸15が挿通される環状部材16と、環状部材16に巻回されるコイル17と、環状部材16に設けられる第1ヨーク18及び第2ヨーク19と、第1ヨーク18及び第2ヨーク19を磁気的に結合する第3ヨーク20と、を備える。第3ヨーク20は、ハブ軸15と環状部材16とに回転不能に連結される。また、固定子13は、環状部材16の矢印B方向(軸方向:図1及び2参照)一端側(図1及び図2において左側)に配置される第1位置決め部材21と、環状部材16の矢印B方向(図1及び図2参照)他端側(図1及び図2において右側)に配置される第2位置決め部材22と、をさらに備える。
【0034】
<ハブ軸>
図1及び図2に示すように、ハブ軸15は、中空に形成され、たとえばクイックレリーズ機構11によってフロントフォーク102に着脱可能に固定される。ハブ軸15の第1端(図1左端)の外周面には、第1雄ネジ部15aが形成される。また、ハブ軸15の第2端(図1右側)の外周面には、第2雄ネジ部15bが形成される。さらに、ハブ軸15の外周面には、その中央部から第2端へと延びる軸方向溝15cが形成される。軸方向溝15cは、コイル17から延びる電気配線17aを配置するために用いられる。軸方向溝15cは、第2凹部の一例である。ハブ軸15の外周面には、第1位置決め部材21をかしめるための第1環状溝15d及び第2位置決め部材22をかしめるための第2環状溝15eが形成される。第2環状溝15eは、軸方向溝15cを横切るように形成される。軸方向溝15cの深さは、電気配線17aを配置するために、第2環状溝15eの深さよりも大きい。
【0035】
ハブ軸15の第2端には、コイル17からの電力を前照灯等の外部機器に供給するためのコネクタ28が第2雄ネジ部15bに螺合するナット部材50により固定される。
【0036】
<環状部材>
環状部材(ボビン)16には、コイル17が巻回されるとともに、第1ヨーク18及び第2ヨーク19が装着(たとえば接着)される。環状部材16は、磁石12の内周面に対向するようにハブ軸15に位置決めされる。環状部材16は、コイル17が外周面に巻回される筒状部16aと、筒状部16aの矢印B方向一端側(図1及び図2において左側)に設けられる第1フランジ16bと、筒状部16aの矢印B方向他端側(図1及び図2において右側)に設けられる第2フランジ16cとを有する。筒状部16aの貫通孔16dには、ハブ軸15が挿通される。環状部材16は貫通孔16d内で第3ヨーク20に回転不能に連結される。環状部材16は、貫通孔16d内でその径方向内側に突出する少なくとも一つの第1凸部16eを有する。図3に示すように、この実施形態では、4つの第1凸部16eが等間隔に貫通孔16d内に形成される。また、図2に示すように、第1凸部16eは、貫通孔16d内で矢印B方向中央部に形成される。
【0037】
図2に示すように、第1フランジ16bの外側面には、第1ヨーク18が装着される第1溝23aが放射状に複数(たとえば16個)形成される。第1溝23aは、貫通孔16dから径方向外方に向かって延びている。第1溝23aの径方向外方には、第1フランジ16bの外周部から切り欠かれた複数の第1切欠き部23bが形成されている。第1切欠き部23bの間には、第2ヨーク19の一端側の端部である先端部が支持される複数の第2切欠き部23cが第1切欠き部23bより浅い深さで形成されている。
【0038】
第2フランジ16cの外側面には、第2ヨーク19が装着される第2溝23dが放射状に複数(たとえば16個)形成される。第2溝23dは、第1溝23aの間に位置するように配置される。したがって、第2溝22cは、第1フランジ16bの第2切欠き部23cと同じ矢印A方向(周方向)位置に配置される。第2溝23dは、貫通孔16dから径方向外方に向かって延びる。第2溝23dの一つには、コイル17の両端を第2フランジ16c外に取り出すための2つの貫通孔23gと、コイル17を径方向に通すためのスリット23hとが形成される。第2溝23dの径方向外方には、第2フランジ16cの外周部から切り欠かれた第3切欠き部23eが形成される。第3切欠き部23eの間には、第1ヨーク18の他端側の端部である先端部が支持される第4切欠き部23fが第3切欠き部23eより浅い深さで形成される。
【0039】
<コイル>
図1に示すように、コイル17は、環状部材16の筒状部16aに巻回される。コイル17は、たとえば、銅線、アルミニウム合金線等の導電金属線材製である。コイル17の両端部には、2本の電気配線17aが電気的に接続される。電気配線17aは、コイル17で発生した電力を外部に出力するために設けられる。電気配線17aは、前述した軸方向溝15cに配置される。
【0040】
<第1ヨーク>
図2に示すように、第1ヨーク18は、複数(たとえば16個)の第1積層ヨーク24を有する。第1積層ヨーク24は、たとえば、表面に酸化被膜が形成される珪素鋼板(より詳しくは無方向性珪素鋼板)で形成された複数枚の積層片25aで構成される。なお、図2では、一つの第1積層ヨーク24にだけ積層片25aが示されるが、全ての第1積層ヨーク24は積層片25aで構成される。第1積層ヨーク24は、環状部材16の矢印B方向一端側から他端側に延びる第1延出部24aを有する。また、第1積層ヨーク24は、第1挿入部24bと、第1延出部24aと第1挿入部24bとを連結する第1外側部24cと、をさらに有する。第1延出部24aは、コイル17の径方向外側で環状部材16の一端側から他端側に延びる。第1延出部24aは、径方向外側部分がハブ軸15と実質的に平行に配置される。また、第1延出部24aは、環状部材16の一端側から他端側にかけて径方向内側部分が径方向外側部に対して接近するように斜めに形成され、径方向内側部分の先端部がハブ軸15と実質的に平行に形成される。第1延出部24aの一端側の端部である基端部24dは、第1切欠き部23bにより支持される。第1延出部24aの他端側の端部である先端部24eは、第4切欠き部23fにより支持される。第1挿入部24bは、環状部材16の貫通孔16dに挿入され、筒状部16aとハブ軸15の外周面との間で矢印B方向に環状部材16の一端側から他端側に延びる。具体的には、貫通孔16dの矢印B方向中央部の近傍まで延びる。第1外側部24cは、第1フランジ16bの第1溝23aに嵌め込まれて環状部材16に固定される。これにより、第1ヨーク18は、環状部材16に対して回転しないように設けられる。
【0041】
<第2ヨーク>
第2ヨーク19は、複数(たとえば16個)の第2積層ヨーク26を有する。この実施形態では、第2積層ヨーク26は、第1積層ヨーク24と同じ形状である。第2積層ヨーク26は、たとえば、表面に酸化被膜が形成される珪素鋼板(より詳しくは無方向性珪素鋼板)で形成された複数の積層片25bで構成されている。なお、図2では、一つの第2積層ヨーク26にだけ積層片25bが示されるが、全ての第2積層ヨーク26は積層片25bで構成される。第2積層ヨーク26は、環状部材16の矢印B方向他端側から一端側に延びる第2延出部26aを有する。また、第2積層ヨーク26は、第2挿入部26bと、第2延出部26aと第2挿入部26bとを連結する第2外側部26cと、をさらに有する。第2延出部26aは、コイル17の径方向外方で他端側から一端側に延びる。第2延出部26aは、第1延出部24aと矢印A方向(図2参照)において交互に配置される。第2延出部26aは、径方向外側部分がハブ軸15と実質的に平行に配置される。また、第2延出部26aは、環状部材16の他端側から一端側にかけて径方向内側部分が径方向外側部分に対して接近するように形成され、径方向内側部部分の先端部がハブ軸15と実質的に平行に形成される。第2延出部26aの他端側の端部である基端部26dは、第3切欠き部23eにより支持されている。第2延出部26aの一端側の端部である先端部26eは、第2切欠き部23cにより支持される。第2挿入部26bは、環状部材16の貫通孔16dに挿入され、筒状部16aとハブ軸15の外周面との間で矢印B方向に環状部材16の他端側から一端側に延びる。具体的には、貫通孔16dの矢印B方向中央部の近傍まで延びる。第2外側部26cは、第2フランジ16cの第2溝23dに嵌め込まれて環状部材16に固定される。これにより、第2ヨーク19は、環状部材16に対して回転しないように設けられる。
【0042】
<第3ヨーク>
第3ヨーク20は、図2及び図3に示すように、たとえば珪素鋼製の環状の部材である。第3ヨーク20は、環状部材16とハブ軸15の双方に回転不能に連結される。第3ヨーク20は、第1積層ヨーク24の第1挿入部24bの先端と、第2積層ヨーク26の第2挿入部26bの先端と、に接触するように貫通孔16d内で筒状部16aとハブ軸15の外周面との間に配置される。これにより、第3ヨーク20は、第1ヨーク18と第2ヨークとを磁気的に結合でき、コイル17の周囲に磁気回路が構成される。
【0043】
第3ヨーク20は、環状部材16の第1凸部16eに係合する少なくとも一つの第1凹部20aを外周面に有する。この実施形態では、4つの第1凸部16eに対応して4つの第1凹部20aが設けられる。第3ヨークは、ハブ軸15の第2凹部としての軸方向溝15cに貫通孔16d内で係合する第2凸部20bを内周面に有する。第2凸部20bにより、第3ヨーク20とハブ軸15とが回転不能に連結される。すなわち、第1ヨーク18及び第2ヨーク19が装着された環状部材16が、第3ヨーク20を介してハブ軸15に対して回転不能に連結され、ハブ軸15に対して環状部材16の矢印A方向に位置決めされる。
【0044】
<第1位置決め部材>
図1及び図2に示すように、第1位置決め部材21は、環状部材16の一端側でハブ軸15にかしめられる。第1位置決め部材21は、たとえば、アルミニウム合金、鉄系合金等の金属製である。第1位置決め部材21は、図2に示すように、第1ヨーク18に接触可能な第1鍔部21aと、ハブ軸15の外周面に嵌合可能な第1筒部21bと、を有する。第1筒部21bは、第1鍔部21aが第1ヨーク18に接触した状態で第1環状溝15dと重なり合う位置に配置される。第1筒部21bを第1環状溝15dに向けて変形させることにより、第1位置決め部材21がハブ軸15にかしめられ、矢印B方向に移動不能になる。
【0045】
<第2位置決め部材>
図1及び図2に示すように、第2位置決め部材22は、環状部材16の他端側でハブ軸15にかしめられる。第2位置決め部材22は、第1位置決め部材21と同材料からなる。第1位置決め部材21と同様に、第2位置決め部材22は、図2示すように、第2ヨーク19に接触可能な第2鍔部22aと、ハブ軸15の外周面に嵌合可能な第2筒部22bと、を有する。第2筒部22bは、第2鍔部22aが第2ヨーク19に接触した状態で第2環状溝15eと重なり合う位置に配置される。第2筒部22bを第2環状溝15eに向けて変形させることにより、第2位置決め部材22がハブ軸15にかしめられ、矢印B方向に移動不能になる。
【0046】
このように、第1位置決め部材21及び第2位置決め部材22により、環状部材16、第1ヨーク18、第2ヨーク19及び第3ヨーク20が矢印B方向(軸方向)に位置決めされる。このため、たとえばナット等を用いて軸方向に位置決めする場合と比べ、第1ヨーク18第1積層ヨーク24及び第2ヨーク19の第2積層ヨーク26に過大な軸方向の力が作用しなくなる。従って、第1ヨーク18及び第2ヨーク19が変形しにくくなる。
【0047】
<ハブシェル>
ハブシェル14は、図1に示すように、ハブ軸15に第1軸受30及び第2軸受31により回転自在に支持される。第1軸受30は、ナット部材51により矢印B方向(軸方向)の位置が調整される。ハブシェル14は、第1軸受30が配置される筒状のシェル本体40と、シェル本体40に装着される第2軸受31が配置される蓋部材42と、を有する。シェル本体40には、車輪とリムと連結される一対のハブフランジ40aが矢印B方向に間隔を隔てて配置される。
【0048】
シェル本体40の内周面には、磁石12が固定される。磁石12とシェル本体40との間には、バックヨーク27が配置される。磁石12の内周面は、第1ヨーク18の径方向外側部分及び第2ヨーク19の径方向外側部分と僅かな隙間をあけて配置される。
【0049】
<固定子の組立手順>
固定子13を組み立てる際には、環状部材16の筒状部16aにコイル17を巻回する。コイル17を巻き終わると、第1積層ヨーク24の第1挿入部24bを貫通孔16dに配置し、第1延出部24aを第1切欠き部23bに配置した状態で、第1外側部24cを第1溝23aに嵌め込む。つぎに、貫通孔16dの内部に第3ヨーク20を装着する。このとき、環状部材16の第1凸部16eに第3ヨーク20の第1凹部20aが係合するように装着する。第3ヨーク20の装着が終わると、第1ヨーク18と同様に、第2積層ヨーク26の第2挿入部26bを貫通孔16dに配置し、第2延出部26aを第3切欠き部23eに配置した状態で、第2外側部26cを第2溝23dに嵌め込む。これにより、第1ヨーク18の第1延出部24aと第2ヨーク19の第2延出部26aが矢印A方向(周方向:図2参照)に交互に配置される。また、第1ヨーク18と第2ヨーク19とが第3ヨーク20により磁気的に結合可能になる。
【0050】
これらの作業が終わると、第1ヨーク18の第1挿入部24bにハブ軸15を環状部材16の一端側から挿入する。このとき、第3ヨーク20の第2凸部20bがハブ軸15の軸方向溝15cに係合するように装着する。これにより、環状部材16並びに第1ヨーク18及び第2ヨーク19が、第3ヨーク20を介してハブ軸15に対して回転不能に連結され、矢印A方向に位置決めされる。従って、従来の自転車用発電ハブの固定子ひいては自転車用発電ハブよりも構成を簡素にできる。
【0051】
ハブ軸15を装着すると、たとえば治具等を利用して環状部材16をハブ軸15の矢印B方向(図1及び図2参照)の所定位置、すなわち、コイル17が磁石12に対向可能な位置に配置する。環状部材16を所定位置に配置すると、第1位置決め部材21及び第2位置決め部材22をハブ軸15に一端側及び他端側から装着し、第1鍔部21a及び第2鍔部22aを第1ヨーク18及び第2ヨーク19に接触させる。第1鍔部21a及び第2鍔部22aを第1ヨーク18及び第2ヨーク19に接触させた状態で、適宜のかしめ治具により第1環状溝15d及び第2環状溝15eに向けて第1筒部21b及び第2筒部22bの外周面を押圧して変形させるかしめ作業を行う。これにより、環状部材16、第1ヨーク18,第2ヨーク19及び第3ヨーク20が矢印B方向に位置決めされる。環状部材16並びに第1ヨーク18及び第2ヨーク19が第3ヨーク20を介してハブ軸15に回転不能に連結されるため、矢印B方向の位置決め時に第1位置決め部材21及び第2位置決め部材22を第1ヨーク18及び第2ヨーク19に接触させるだけでよく、きつく押圧する必要がない。このため、第1ヨーク18及び第2ヨーク19の変形を抑えることができる。
【0052】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0053】
(a)前記実施形態では、クイックレリーズ機構11によってハブ軸15をフロントフォークに固定したが、中実のハブ軸をナットによってフロントフォークに固定してもよい。
【0054】
(b)前記実施形態では、環状部材16が第1凸部16eを有し、第3ヨーク20が第1凹部20aを有していたが、逆でもよい。すなわち、環状部材が第1凹部を有し、第3ヨークが第1凸部を有してもよい。
【0055】
(c)前記実施形態では、第3ヨーク20が第2凸部20bを有し、ハブ軸15が第2凹部としての軸方向溝15cを有していたが、逆でもよい。すなわち、第3ヨークが第2凹部を有し、ハブ軸が第2凸部を有してもよい。この場合、ハブ軸に凸部が形成されるため、凸部をハブ軸と一体ではなく別体で設けるのが好ましい。
【0056】
(d)前記実施形態では、第3ヨーク20が貫通孔16d内だけに配置されていたが、本発明はこれに限定されない。
【0057】
図4において、発電ハブ110は装着部52を有し、装着部52にはたとえばディスクブレーキ装置のロータ又はローラブレーキ装置のドラムを装着可能である。なお、下記に説明する以外の構成は、前記実施形態と同様な構成である。
【0058】
発電ハブ110の第3ヨーク120は、環状部材116の両端から突出する突出部120cを両端部に有する。環状部材116の貫通孔116dの内周面には、第1凹部116eが形成される。第1凹部116eは、貫通孔116dの矢印B方向(軸方向)中央部から一端側に向かって延びる溝形状に形成される。第3ヨーク120の外周面には、第1凹部116eに係合する第1凸部120aが、貫通孔116dの矢印B方向中央部に径方向に突出して形成される。第1ヨーク118及び第2ヨーク119は、第1挿入部及び第2挿入部を有しておらず、第1延出部124a及び第2延出部126aと、第3ヨーク120の突出部120cに磁気的に結合する第1外側部124c及び第2外側部126cと、を有する。このような構成であっても、前記実施形態と同様な作用効果を有する。
【0059】
(e)前記実施形では、第3ヨーク20が貫通孔16d内で環状部材16に回転不能に連結されていたが、本発明はこれに限定されない。第3ヨークは、貫通孔の外部で環状部材と回転不能に連結されていてもよい。
【0060】
(f)前記実施形態では、本発明を自転車のフロントフォークに固定される自転車用発電ハブに適用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、自転車のフレームのリヤエンドに固定される自転車用発電ハブにも適用できる。
【符号の説明】
【0061】
10 発電ハブ
13 固定子
14 ハブシェル
15 ハブ軸
15c 軸方向溝
16 環状部材
16b 第1フランジ
16c 第2フランジ
16d 貫通孔
16e 第1凸部
18 第1ヨーク
19 第2ヨーク
20 第3ヨーク
20a 第1凹部
20b 第2凸部
21 第1位置決め部材
22 第2位置決め部材
24a 第1延出部
26a 第2延出部
116 環状部材
116e 第1凹部
118 第1ヨーク
119 第2ヨーク
120 第3ヨーク
120a 第1凸部
124a 第1延出部
126a 第2延出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブ軸と、
前記ハブ軸が挿通される貫通孔を有する環状部材と、
前記環状部材の軸方向一端側から軸方向他端側に延びる第1延出部を有し、前記環状部材に対して回転しないように設けられる第1ヨークと、
前記環状部材の軸方向他端側から前記軸方向一端側に延びる第2延出部を有し、前記環状部材に対して回転しないように設けられる第2ヨークと、
前記貫通孔に配置され、前記第1ヨークと前記第2ヨークとを磁気的に結合し、前記環状部材及び前記ハブ軸の双方に回転不能に連結される第3ヨークと、
を備える自転車用発電ハブの固定子。
【請求項2】
前記第3ヨークは、前記貫通孔内で前記環状部材に回転不能に連結される、請求項1に記載の自転車用発電ハブの固定子。
【請求項3】
前記環状部材及び前記第3ヨークの一方は第1凸部を有し、前記環状部材及び前記第3ヨークの他方は第1凹部を有し、前記第3ヨークは、前記第1凸部と前記第1凹部とが係合することによって前記環状部材に回転不能に連結される、請求項1又は2に記載の自転車用発電ハブの固定子。
【請求項4】
前記ハブ軸及び前記第3ヨークの一方は第2凸部を有し、前記ハブ軸及び前記第3ヨークの他方は第2凹部を有し、前記第3ヨークは、前記第2凸部と前記第2凹部とが係合することによって前記ハブ軸に回転不能に連結される、請求項1から3のいずれか1項に記載の自転車用発電ハブの固定子。
【請求項5】
前記第2凸部および前記第2凹部はそれぞれ、前記貫通孔内に配置される、請求項4に記載の自転車用発電ハブの固定子。
【請求項6】
前記第2凹部は、前記ハブ軸の外周面に形成され、前記ハブ軸の一端から軸方向に延びる、請求項5に記載の自転車用発電ハブの固定子。
【請求項7】
前記第3ヨークは、環状に形成される、請求項1から6のいずれか1項に記載の自転車用発電ハブの固定子。
【請求項8】
前記第1ヨーク及び前記第2ヨークは、それぞれ前記環状部材に固定される、請求項1から7のいずれか1項に記載の自転車用発電ハブの固定子。
【請求項9】
前記環状部材並びに前記第1、第2及び第3ヨークを前記環状部材の軸方向に位置決めするために前記環状部材の前記軸方向一端側で前記ハブ軸にかしめられる第1位置決め部材をさらに備える、請求項1から8のいずれか1項に記載の自転車用発電ハブの固定子。
【請求項10】
前記環状部材並びに前記第1、第2及び第3ヨークを前記環状部材の前記軸方向に位置決めするために前記環状部材の前記軸方向他端側で前記ハブ軸にかしめられる第2位置決め部材をさらに備える、請求項9に記載の自転車用発電ハブの固定子。
【請求項11】
前記環状部材は、前記軸方向一端側に設けられる第1フランジと、前記軸方向他端側に設けられる第2フランジとを有し、
前記第1延出部の前記軸方向他端側の端部は、前記第2フランジに支持され、前記第2延出部の前記軸方向一端側の端部は、前記第1フランジに支持される、請求項1から10のいずれか1項に記載の自転車用発電ハブの固定子。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載される自転車用発電ハブの固定子を備える自転車用発電ハブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−138992(P2012−138992A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288260(P2010−288260)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】