船外機
【課題】ギヤケースを大きく形成することなく、動力伝達系、特にギヤ機構の耐久性を高めることができる船外機を提供する。
【解決手段】船外機10は、駆動軸28がテーパローラ軸受33で駆動軸室55に回転自在に支持され、駆動軸28の回転をプロペラ軸に伝達可能なギヤ機構29がギヤ室68に収納されている。この船外機10は、テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61をギヤ室68に戻す潤滑循環部と、テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61を受入可能なオイル貯留室101と、オイル貯留室101をギヤ室68に連通する左右の補助戻し通路115とを備えている。
【解決手段】船外機10は、駆動軸28がテーパローラ軸受33で駆動軸室55に回転自在に支持され、駆動軸28の回転をプロペラ軸に伝達可能なギヤ機構29がギヤ室68に収納されている。この船外機10は、テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61をギヤ室68に戻す潤滑循環部と、テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61を受入可能なオイル貯留室101と、オイル貯留室101をギヤ室68に連通する左右の補助戻し通路115とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに連結された駆動軸が軸受を介して駆動軸室に回転自在に支持され、この駆動軸の回転をギヤ機構でプロペラ軸に伝達可能な船外機に関する。
【背景技術】
【0002】
船外機は、通常、エンジンの回転を伝える駆動軸が鉛直に設けられ、駆動軸の下端部にピニオン(ピニオンベベルギヤ)が設けられ、ピニオンに一対のベベルギヤが噛み合わされ、ベベルギヤにクラッチ(ドッグクラッチ)を介してプロペラ軸が連結されている。
ピニオン、一対のベベルギヤおよびクラッチは、ギヤケース内のギヤ室に収納されている。このギヤ室には潤滑油が充填されている。
【0003】
プロペラ軸には推進用のプロペラが設けられ、クラッチにはシフトロッドが連結されている。
シフトロッドは、ギヤケース内のシフト室に収納されている。シフト室はギヤ室に連通されている。
【0004】
シフトロッドでクラッチを操作することにより、プロペラ軸に一対のベベルギヤの一方を連結させた正転状態や、一対のベベルギヤの他方を連結させた逆転状態に切り替えることが可能である。
さらに、シフトロッドでクラッチを操作することにより、プロペラ軸から一対のベベルギヤを切り離した中立状態に切り替えることが可能である。
【0005】
ところで、駆動軸は、ピニオンの上方の支え軸部がテーパローラ軸受でギヤケースに回転自在に支持されている。
このテーパローラ軸受は、ギヤケース内に充填されている潤滑油の油面(すなわち、オイルレベル)より上方に設けられている。
【0006】
このため、テーパローラ軸受に潤滑油を導く潤滑装置が備えられている。
潤滑装置は、駆動軸のテーパローラ軸受下側にオイルスリンガが設けられ、オイルスリンガおよびギヤ室が供給通路で連通され、テーパローラ軸受およびシフト室が戻り通路で連通されている。
オイルスリンガの外周に螺旋状の案内溝が設けられている。
【0007】
この潤滑装置によれば、駆動軸の回転がベベルギヤに伝わってベベルギヤが回転することにより、ギヤ室の潤滑油が供給通路を経てオイルスリンガに導かれる。
ここで、オイルスリンガは駆動軸と一体に回転されている。オイルスリンガが回転することにより、オイルスリンガに導かれた潤滑油がオイルスリンガの案内溝でテーパローラ軸受まで導かれる。
【0008】
テーパローラ軸受まで導かれた潤滑油でテーパローラ軸受が潤滑される。テーパローラ軸受を潤滑した潤滑油が戻り通路を経てシフト室に導かれる。
シフト室に導かれた潤滑油がシフト室からギヤ室に戻される。このように、潤滑油を循環させることにより潤滑油でテーパローラ軸受を潤滑することが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−262397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、船外機の動力伝達系、特にピニオンや一対のベベルギヤ(以下、ギヤ機構という)の耐久性をさらに高めるためにギヤ機構の形状を大きくすることが考えられる。
ここで、ギヤ機構はギヤ室に収納されている。よって、ギヤ機構の形状を大きくした場合ギヤ室の空間が減少する。
このため、テーパローラ軸受を潤滑するために潤滑油を循環させた場合、ギヤ室の内部圧力が高くなり、ギヤ室の潤滑油をシール材でギヤ室内に保つことが難しくなる。
【0011】
この対策として、船外機のギヤケースを大きく形成してギヤ室の空間を増す方法が考えられる。
しかし、ギヤケースを大きく形成した場合、船体の滑走中に海水による抵抗が大きくなり、船外機の能力(特に、滑走能力)を低下させる要因となる。
【0012】
本発明は、ギヤケースを大きく形成することなく、動力伝達系、特にギヤ機構の耐久性を高めることができる船外機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は、エンジンのクランク軸に連結された駆動軸が軸受で駆動軸室に回転自在に支持され、前記駆動軸の回転をプロペラ軸に伝達可能なギヤ機構がギヤ室に収納された船外機において、前記ギヤ機構の回転で前記ギヤ室の潤滑油を前記軸受に導き、前記軸受を潤滑した潤滑油を前記ギヤ室に戻す循環部と、前記循環部に連通され、前記軸受を潤滑した潤滑油を受入可能なオイル貯留室と、前記オイル貯留室を前記ギヤ室に連通する戻し通路と、を備え、前記オイル貯留室に案内された前記潤滑油を前記戻し通路を経て前記ギヤ室に戻すことを特徴とする。
【0014】
請求項2は、前記ギヤ室の潤滑油を前記軸受に導くために前記ギヤ室に入口部が開口された供給通路と、前記供給通路の入口部の周囲のうち、前記ギヤ機構の回転方向に対して前記入口部の奥側の部位から前記ギヤ室に突出され、前記ギヤ室の潤滑油を前記入口部に案内可能な案内凸部と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項3は、前記軸受を潤滑した潤滑油を前記オイル貯留室に案内するために、前記オイル貯留室および前記駆動軸室を連通する案内通路を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項4は、前記駆動軸室および前記ギヤ室はギヤケースに設けられ、前記ギヤケースのうち利用不能な部位に前記オイル貯留室が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明では、軸受を潤滑した潤滑油をギヤ室に戻す循環部を備え、さらに、もう一つの循環部としてオイル貯留室および戻し通路を備えている。
軸受を潤滑した潤滑油を循環部でギヤ室に戻すとともに、オイル貯留室および戻し通路でギヤ室に戻すことができる。
【0018】
よって、動力伝達系、特にギヤ機構の形状を大きくした場合に、ギヤ機構に合わせてギヤ室を大きく確保しなくても、駆動軸室からギヤ室に潤滑油を円滑に循環させることができる。
潤滑油を円滑に循環させることで、駆動軸室やギヤ室の内部圧力を好適に保つことができる。駆動軸室やギヤ室の内部圧力を好適に保つことで、駆動軸室やギヤ室から潤滑油が流出することを確実に防ぐことができる。
【0019】
さらに、動力伝達系、特にギヤ機構の形状を大きくすることで、ギヤ機構の剛性(強度)を高めることができる。
ギヤ機構の剛性(強度)を高めることで動力伝達系の耐久性を高めることができる。
【0020】
ここで、駆動軸室やギヤ室はギヤケースに形成されている。よって、駆動軸室やギヤ室を大きく確保するとギヤケースが大きくなる。
ギヤケースは船体の滑走中に海水に浸かる部位であり、海水の抵抗などを考慮するとギヤケースを大きくしないことが好ましい。
【0021】
一方、ギヤケースは、通常、鋳造品が用いられ、ギヤケースの利用不能な部位に中空部が形成されている。
ここで、ギヤケースの利用不能な部位とは、ギヤケースのうち駆動軸室やギヤ室に利用することができない部位をいう。
【0022】
よって、この中空部をオイル貯留室として利用することで、ギヤケースを大きくすることなく、駆動軸室やギヤ室の内部圧力を好適に保つことができる。
このように、ギヤケースを大きくする必要がないので、船体の滑走中に海水による抵抗が大きくなることを防ぐことができ、船外機の能力(特に、滑走能力)を確保できる。
【0023】
請求項2に係る発明では、供給通路の入口部の周囲のうち、ギヤ機構の回転方向に対して入口部の奥側の部位からギヤ室に案内凸部を突出させた。さらに、この案内凸部でギヤ室の潤滑油を入口部に案内可能とした。
【0024】
ギヤ室の潤滑油を案内凸部で入口部に案内することで、潤滑油を供給通路を経て駆動軸室にさらに良好に導くことができる。
これにより、駆動軸室の軸受に潤滑油を効率よく導いて軸受を潤滑油で一層好適に潤滑することができる。
【0025】
請求項3に係る発明では、駆動軸室の潤滑油をオイル貯留室に案内する案内通路を備えた。
よって、例えば、オイル貯留室を駆動軸室から比較的離しても、オイル貯留室を案内通路で駆動軸室に連通させることができる。
これにより、オイル貯留室を設ける部位を比較的広い範囲から選択することが可能になり、設計の自由度を高めることができる。
【0026】
請求項4に係る発明では、ギヤケースのうち利用不能な部位にオイル貯留室を設けた。
具体的には、ギヤケースの利用不能な部位に中空部が形成され、この中空部をオイル貯留室として利用した。
よって、オイル貯留室を設けるための部位を、ギヤケースに新たに確保する必要がないので、ギヤケースを大きくすることなくオイル貯留室を設けることができる。
このように、ギヤケースを大きくする必要がないので船外機の能力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る船外機を示す側面図である。
【図2】本発明に係る船外機の動力伝達機構を示す断面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2の4部拡大図である。
【図5】図4の5−5線断面図である。
【図6】(a)は本発明に係るサブ潤滑循環部を示す断面図、(b)は(a)の6b部拡大図である。
【図7】本発明に係るサブ潤滑循環部を示す概略斜視図である。
【図8】図4の8−8線断面図である。
【図9】本発明に係る動力伝達機構でプロペラを正転させる例を説明する図である。
【図10】本発明に係る潤滑循環部でテーパローラ軸受を潤滑する例を説明する図である。
【図11】本発明に係るサブ潤滑循環部でテーパローラ軸受を潤滑した潤滑油を循環する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0029】
実施例に係る船外機10について説明する。
図1に示すように、船外機10は、船外機本体12と、船外機本体12に設けられて船体14(具体的には、船尾15)に着脱可能な取付手段16とを備えている。
取付手段16は、船外機本体12を左右方向(水平方向)に揺動可能なスイベル軸17と、船外機本体12を上下方向に揺動可能なチルト軸18とを備えている。
【0030】
船外機本体12は、取付手段16に設けられたマウントケース21と、マウントケース21の上部に搭載されたエンジン23と、エンジン23を覆うエンジンカバー24と、エンジン23のクランク軸27に上端部28aが連結された駆動軸28とを備えている。
【0031】
さらに、船外機本体12は、駆動軸28を介してエンジン23の回転が伝達されるギヤ機構29と、ギヤ機構29の回転がプロペラ軸31を介して伝達されるプロペラ32と、駆動軸28のテーパローラ軸受(テーパローラベアリング、軸受)33を潤滑する潤滑手段34とを備えている。
【0032】
エンジン23は、シリンダブロック41、ヘッドカバー42、クランク軸27、シリンダ43およびピストン44などを備えている。
エンジン23が駆動することによりクランク軸27が回転し、クランク軸27の回転が駆動軸28に伝達される。
【0033】
駆動軸28は、クランク軸27から下方に延出されることにより、下部位28bがエクステンションケース37の下端部からギヤケース38に突出されている。
駆動軸28の下部位28bにギヤ機構29を介してプロペラ軸31が連結されている。
駆動軸28の下部位28b、ギヤ機構29およびプロペラ軸31はギヤケース38に収容されている。
【0034】
図2、図3に示すように、ギヤケース38は、通常、鋳造品が用いられ、ギヤケース38の利用不能な部位38a,38b,38c…に中空部39がそれぞれ形成されている。
ここで、ギヤケースの利用不能な部位38a,38b,38c…とは、ギヤケース38のうち駆動軸室55、ギヤ室68やシフト室76などに利用できない部位をいう。
なお、船外機10の構成の理解を容易にするために、以下、「駆動軸28の下部位28b」を「駆動軸28」として説明する。
【0035】
図4に示すように、駆動軸28は、第1支え軸部28cがテーパローラ軸受33を介して駆動軸室55に回転自在に支持され、第2支え軸部28dがローラ軸受(ローラベアリング)56を介して駆動軸室55に回転自在に支持されている。
すなわち、駆動軸28は、テーパローラ軸受33およびローラ軸受56で略鉛直に支持された状態で駆動軸室55に収納されている。
駆動軸室55は、ギヤケース38内に略鉛直に設けられた空間である。
【0036】
この駆動軸28には、テーパローラ軸受33の下方にオイルスリンガ58が同軸上に設けられている。
よって、駆動軸28が回転することにより、駆動軸28と一体にオイルスリンガ58が回転する。
【0037】
オイルスリンガ58は、駆動軸室55に収容され、外周に螺旋状のオイル溝58aが形成されている。
よって、オイルスリンガ58を回転することにより、駆動軸室55の潤滑油61をオイル溝58aでオイルスリンガ58の下端部58bから上端部58cまで案内できる。
【0038】
駆動軸28の第2支え軸部28dがギヤ機構29に連結されている。
ギヤ機構29は、ギヤ室68に収納されている。
このギヤ機構29は、第2支え軸部28dに設けられたピニオン63と、ピニオン63の前後に噛み合わされた前後のベベルギヤ(一対のベベルギヤ)64,65と、前後のベベルギヤ64,65をプロペラ軸31に連結可能なクラッチ66とを備えている。
【0039】
前ベベルギヤ64は、ピニオン63の前部に噛み合わされた状態で、プロペラ軸31に回転自在に嵌合されている。
また、後ベベルギヤ65は、ピニオン63の後部に噛み合わされた状態で、プロペラ軸31に回転自在に嵌合されている。
よって、エンジン23が駆動して駆動軸28(すなわち、ピニオン63)が矢印Aの如く回転することにより、前ベベルギヤ64が矢印Bの如く正転し、後ベベルギヤ65が矢印Cの如く逆転する。
【0040】
クラッチ66は、プロペラ軸31と一体に回転可能にプロペラ軸31に嵌合されている。
このクラッチ66は、一般の船外機に用いられている通常のドッグクラッチと同一構成なのでクラッチ66の詳しい説明を省略する。
【0041】
ギヤ機構29はギヤ室68に収納されている。
ギヤ室68は、ギヤケース38に設けられ、オイル室(図示せず)に連通されている。
ギヤ室68がオイル室(図示せず)に連通されることにより、オイル室の潤滑油61がギヤ室68内に充填されている。
なお、オイル室の潤滑油61は、一例として、オイルレベルOLの位置まで充填されている。
【0042】
クラッチ66の連結部73がシフトロッド74の下端部74aに連結されている。
シフトロッド74は、シフト室76に収納され、下端部74aがボール軸受(ボールベアリング)77を介してシフト室76に回転自在に支持されている。
シフト室76は、ギヤケース38内に略鉛直に形成され、底部76aがギヤ室68の前端部(具体的には、前頂部)68aに連通されている。
【0043】
このシフトロッド74は、駆動軸28の前方に配置され、駆動軸28に対して略平行に設けられている。
シフトロッド74の上端部に、操舵者が操作可能な操舵ロッド(図示せず)が設けられている。
【0044】
操舵ロッドを操作することによりシフトロッド74を矢印Dの如く旋回させることができる。シフトロッド74を旋回させることによりクラッチ66を矢印Eの如く作動させることができる。
クラッチ66を作動させることにより、プロペラ軸31に前ベベルギヤ64を連結させた正転状態や、プロペラ軸31に後ベベルギヤ65を連結させた逆転状態に切り替えられる。
また、クラッチ66を作動させることにより、プロペラ軸31から前後のベベルギヤ64,65を切り離した中立状態に切り替えられる。
【0045】
よって、クラッチ66を作動させてプロペラ軸31に前ベベルギヤ64を連結させることにより、駆動軸28の回転がピニオン63、前ベベルギヤ64およびクラッチ66を経てプロペラ軸31に伝達される。
これにより、プロペラ軸31とともにプロペラ32(図2参照)が正転することにより船体14(図1参照)が前進状態で滑走する。
【0046】
一方、クラッチ66を作動させてプロペラ軸31に後ベベルギヤ65を連結させることにより、駆動軸28の回転がピニオン63、後ベベルギヤ65およびクラッチ66を経てプロペラ軸31に伝達される。
これにより、プロペラ軸31とともにプロペラ32(図2参照)が逆転することにより船体14(図1参照)が後進する。
【0047】
また、クラッチ66を作動させてプロペラ軸31から前後のベベルギヤ64,65を切り離すことにより、駆動軸28の回転をプロペラ軸31に伝えないようにして船体14を停止状態に保つ。
【0048】
駆動軸28のテーパローラ軸受33は潤滑油61のオイルレベルOLより上方に設けられている。
よって、ギヤケース38内に潤滑手段34を備え、潤滑手段34でテーパローラ軸受33に潤滑油61を導いて、テーパローラ軸受33を潤滑油61で潤滑する必要がある。
【0049】
潤滑手段34は、駆動軸28のテーパローラ軸受33を潤滑油61で潤滑する潤滑循環部(循環部)35と、もう一つの循環部としてサブ潤滑循環部(補助潤滑循環部)36とを備えている。
【0050】
潤滑循環部35は、ギヤ室68および駆動軸室55を連通する供給通路81と、駆動軸室55と、駆動軸室55およびシフト室76を連通するシフト案内通路82と、シフト室76およびギヤ室68を連通する戻し連通路83とを備えている。
【0051】
供給通路81は、入口部(下端部)81aがギヤ室68の中央頂部68bに開口され、出口部(上端部)81bが駆動軸室55の周壁55aに開口されている。
供給通路81の入口部81aは、前ベベルギヤ64の上方に配置されている。
供給通路81の出口部81bは、上半部がオイルスリンガ58の下端部58bに対向され、下半部が下端部58bの下方に配置されている。
【0052】
図5に示すように、ギヤ室68の中央頂部68bは、入口部81aの周囲のうち、前ベベルギヤ64の回転方向(矢印F方向)に対して入口部81aの奥側の部位(以下、奥側部位という)68cに案内凸部86が設けられている。
案内凸部86は、奥側部位68cからギヤ室68に向けて突出されている。
【0053】
この案内凸部86は、入口部81aの右側に隣接された状態で、ギヤ機構29(具体的には、前ベベルギヤ64)の回転方向に対向するように設けられている。
すなわち、ギヤ室68の潤滑油61が前ベベルギヤ64の回転により導かれる方向に対向して案内凸部86が設けられている。
【0054】
よって、前ベベルギヤ64で導かれる潤滑油61の向きを案内凸部86で入口部81aに向くように矢印Gの如く変えることができる。
潤滑油61を案内凸部86で入口部81aに向けることにより、潤滑油61を入口部81aから供給通路81に矢印Gの如く円滑に案内することができる。
【0055】
潤滑油61を案内凸部86で入口部81aから供給通路81に案内することで、潤滑油61を供給通路81を経て駆動軸室55(図4参照)に良好に導くことができる。
これにより、駆動軸室55のテーパローラ軸受33に潤滑油61を効率よく導いてテーパローラ軸受33を潤滑油61で好適に潤滑することができる。
【0056】
図3、図4に示すように、シフト案内通路82は、駆動軸室55からシフト室76に向けて下り勾配に延ばされている。
このシフト案内通路82は、上端部82aが駆動軸室55の周壁55aに連通(開口)され、下端部82bがシフト室76の側壁76bに連通(開口)されている。
シフト案内通路82の上端部82aは、ナット88の上方に配置されている。
【0057】
ナット88は駆動軸室55の周壁55aにねじ結合されている。この状態で、ナット88がテーパローラ軸受33の上端に当接してテーパローラ軸受33がナット88で保持される。
シフト案内通路82の下端部82bは、シフト室76の側壁76bのうち上端部76c近傍に配置されている。
【0058】
戻し連通路83は、シフト室76の底部76aおよびギヤ室68の前頂部68aを連通する通路である。
戻し連通路83の下端部83aは、前ベベルギヤ64を支えるテーパローラ軸受(テーパローラベアリング)91の前側近傍に設けられている。
【0059】
潤滑循環部35によれば、駆動軸28で前ベベルギヤ64を回転することで、ギヤ室68の潤滑油61が前ベベルギヤ64で上方に跳ね上げられる。
前ベベルギヤ64の上方に供給通路81の入口部(下端部)81aが設けられている。よって、前ベベルギヤ64で跳ね上げられた潤滑油61が供給通路81の入口部81aから供給通路81に流入する。
供給通路81に流入した潤滑油61は、供給通路81を経て供給通路81の出口部(上端部)81b、すなわちオイルスリンガ58の下端部58bまで導かれる。
【0060】
ここで、駆動軸28と一体にオイルスリンガ58が回転している。
よって、オイルスリンガ58の下端部58bまで導かれた潤滑油61は、オイル溝58aで下端部58bから上端部58cまで案内される。
オイルスリンガ58の上端部58cまで案内された潤滑油61は、テーパローラ軸受33の下端部33aから外輪47および内輪48間の隙間を経てテーパローラ軸受33の上端部33bまで導かれる。
【0061】
これにより、テーパローラ軸受33の外輪47、内輪48および複数のローラ49が潤滑油61で潤滑される。
テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61は、ナット88の上方からシフト案内通路82に導かれ、シフト案内通路82を経てシフト室76に導かれる。
シフト室76に導かれた潤滑油61は、シフト室76の底部76aからボール軸受77および戻し連通路83を経てギヤ室68に戻される。
【0062】
図3、図6に示すように、潤滑手段34は、もう一つの循環部としてサブ潤滑循環部36を備えている。
サブ潤滑循環部36は、テーパローラ軸受33の近傍に設けられたオイル貯留室101と、オイル貯留室101および駆動軸室55を連通する左右の補助案内通路(案内通路)111と、オイル貯留室101およびギヤ室68を連通する左右の補助戻し通路(戻し通路)115とを備えている。
【0063】
図3、図7に示すように、オイル貯留室101は、テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61を受入可能な室である。
ところで、ギヤケース38は、通常、鋳造品が用いられ、ギヤケース38の利用不能な部位38a,38b,38c…に中空部39(図3参照)がそれぞれ形成されている。
ここで、利用不能な部位38a,38b,38c…のうち部位38aの中空部39がオイル貯留室101として利用されている。
【0064】
すなわち、オイル貯留室101は、ギヤケース38のうち利用不能な部位38aに設けられている。よって、オイル貯留室101を設けるための部位を、ギヤケース38に新たに確保する必要がない。
これにより、ギヤケース38を大きくすることなくオイル貯留室101を設けることができる。
ギヤケース38を大きくする必要がないので、船体14の滑走中に海水による抵抗が大きくなることを防ぐことができ、船外機10の能力を確保することができる。
【0065】
このオイル貯留室101は、駆動軸室55に沿って平面視略湾曲状に形成され、駆動軸室55の前近傍に前貯留室102を有する。
前貯留室102は、シフト案内通路82の上端部102aが開口され、シフト案内通路82の左右側から下方に向けて左前貯留室103および右前貯留室104に分岐されている。
前貯留室102の上端部102aは、エクステンションケース37(図6(a)参照)で密封されている。
一方、分岐された左右の前貯留室103,104は、シフト案内通路82側からギヤ室68に向けて(下方に向けて)略鉛直に形成されている。
【0066】
左前貯留室103は、左補助案内通路111で駆動軸室55に連通されている。
左補助案内通路111は、シフト案内通路82の左側においてシフト案内通路82に沿って設けられ、駆動軸室55から左前貯留室103に向けて下り勾配に延ばされている(図6(b)も参照)。
【0067】
この左補助案内通路111は、上端部111aが駆動軸室55の周壁55aに連通(開口)され、下端部111bが左前貯留室103の側壁103aに連通(開口)されている。
左前貯留室103および駆動軸室55を左補助案内通路111で連通することで、テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61が左補助案内通路111を経て左前貯留室103に案内される。
【0068】
同様に、右前貯留室104は、右補助案内通路111で駆動軸室55に連通されている。
右補助案内通路111は、シフト案内通路82の右側においてシフト案内通路82に沿って設けられ、駆動軸室55から右前貯留室104に向けて下り勾配に延ばされている。
【0069】
この右補助案内通路111は、上端部111aが駆動軸室55の周壁55aに連通(開口)され、下端部111bが右前貯留室104の側壁104aに連通(開口)されている。
右前貯留室104および駆動軸室55を右補助案内通路111で連通することで、テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61が右補助案内通路111を経て右前貯留室104に案内される。
【0070】
このように、左右の補助案内通路111を備えることで、例えば、オイル貯留室101を駆動軸室55から比較的離しても、補助案内通路111でオイル貯留室101を駆動軸室55に連通させることができる。
これにより、オイル貯留室101を設ける部位を比較的広い範囲から選択することが可能になり、設計の自由度を高めることができる。
【0071】
図8に示すように、左前貯留室103は、左補助戻し通路115でギヤ室68に連通されている。
左補助戻し通路115は、中心軸71に対して左側に略鉛直に設けられている。
中心軸71は、前ベベルギヤ64(図7も参照)の回転中心72から鉛直方向に延ばされた軸である。
【0072】
左補助戻し通路115の入口部115aは、左前貯留室103の底部103bに開口されている。
左補助戻し通路115の出口部115bは、ギヤ室68の中央頂部68bのうち中心軸71に対して左側の部位68dに開口されている。
【0073】
左側の部位68dは、前ベベルギヤ64やテーパローラ軸受91の回転方向(矢印F方向)に対して中心軸71の手前側の部位である。
中心軸71の手前側の部位68dに出口部115bが開口することで、左前貯留室103に案内された潤滑油61が、左補助戻し通路115を経てギヤ室68に戻される。
【0074】
右前貯留室104は、右補助戻し通路115でギヤ室68に連通されている。
右補助戻し通路115は、中心軸71に対して右側に略鉛直に設けられている。
【0075】
右補助戻し通路115の入口部115aは、右前貯留室104の底部104bに開口されている。
右補助戻し通路115の出口部115bは、ギヤ室68の中央頂部68bのうち中心軸71に対して右側の部位68eに開口されている。
【0076】
右側の部位68eは、前ベベルギヤ64やテーパローラ軸受91の回転方向(矢印F方向)に対して中心軸71の奥側の部位である。
中心軸71の奥側の部位68eに出口部115bが開口することで、右前貯留室104に案内された潤滑油61が、右補助戻し通路115を経てギヤ室68に戻される。
【0077】
ここで、右補助戻し通路115の出口部115bは、前ベベルギヤ64やテーパローラ軸受91の矢印F方向への回転方向に対して中心軸71の奥側の部位(すなわち、右側の部位)68eに開口されている。
奥側の部位68eは、中心軸71から矢印F方向に向けて下方に下がるように円弧状に形成されている。
【0078】
矢印F方向は、前ベベルギヤ64やテーパローラ軸受91の回転方向である。
よって、右補助戻し通路115の出口部115bからギヤ室68に導かれた潤滑油61を、前ベベルギヤ64やテーパローラ軸受91の回転で奥側の部位68eの壁面に沿わせて下降させるように円滑に導くことができる。
これにより、右補助戻し通路115の潤滑油61を、右補助戻し通路115の出口部115bからギヤ室68に矢印Hの如く円滑に導くことができる。
【0079】
図7に示すように、サブ潤滑循環部36によれば、テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61が左右の補助案内通路111を経てオイル貯留室101に案内され、オイル貯留室101に案内された潤滑油61が左右の補助戻し通路115を経てギヤ室68に戻される。
このように、図3に示す潤滑循環部35の他にもう一つの循環部としてサブ潤滑循環部36を備えることで、テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61をギヤ室68に円滑(迅速)に戻すことができる。
【0080】
よって、動力伝達系、特にギヤ機構29の形状を大きくした場合に、ギヤ機構29に合わせてギヤ室68を大きく確保しなくても潤滑油61を円滑に循環させることができる。
潤滑油61を円滑に循環させることで、駆動軸室55やギヤ室68(図4も参照)の内部圧力を好適に保つことができる。
駆動軸室55やギヤ室68の内部圧力を好適に保つことで、駆動軸室55やギヤ室68から潤滑油61が流出することを確実に防ぐことができる。
【0081】
さらに、動力伝達系、特にギヤ機構29の形状を大きくすることで、ギヤ機構29の剛性(強度)を高めることができる。
ギヤ機構29の剛性(強度)を高めることで動力伝達系の耐久性を高めることができる。
【0082】
ここで、駆動軸室55やギヤ室68はギヤケース38に形成されている。よって、駆動軸室55やギヤ室68を大きく確保するとギヤケース38が大きくなる。
ギヤケース38は船体14(図1参照)の滑走中に海水に浸かる部位であり、海水の抵抗などを考慮するとギヤケース38を大きくしないことが好ましい。
【0083】
これに対して、船外機10は、ギヤケース38の利用不能な部位38aの中空部39(図3参照)がオイル貯留室101として利用されている。
よって、ギヤケース38を大きくすることなく、駆動軸室55やギヤ室68の内部圧力を好適に保つことができる。
このように、ギヤケース38を大きくする必要がないので、船体14(図1参照)の滑走中に海水による抵抗が大きくなることを防いで船外機10の能力(特に、滑走能力)を確保できる。
【0084】
つぎに、テーパローラ軸受33を潤滑手段34で潤滑する例を図9〜図11に基づいて説明する。
まず、船外機10で船体14(図1参照)を前進滑走させる例を図9に基づいて説明する。
図9に示すように、エンジン23(図1参照)を駆動することにより駆動軸28が矢印Iの如く回転する。駆動軸28と一体にピニオン63が回転することにより、前ベベルギヤ64が矢印Jの如く回転する。
【0085】
この状態で、操舵ロッドでシフトロッド74を旋回させてクラッチ66を作動させることにより、クラッチ66で前ベベルギヤ64をプロペラ軸31に連結させる。
よって、駆動軸28の回転がピニオン63、前ベベルギヤ64およびクラッチ66を経てプロペラ軸31に伝達される。
プロペラ軸31でプロペラ32を矢印Jの如く正転させることで船体14(図1参照)が前進状態で滑走する。
【0086】
つぎに、潤滑手段34の潤滑循環部35で潤滑油61を潤滑する例を図10に基づいて説明する。
図10(a)に示すように、前ベベルギヤ64が矢印Jの如く回転することで、ギヤ室68の潤滑油61が前ベベルギヤ64の回転で矢印Jの如く案内凸部86に向けて案内される(導かれる)。
【0087】
潤滑油61が案内凸部86に向けて案内されることで、潤滑油61が案内凸部86で供給通路81の入口部81aに向くように矢印Kの如く導かれる。
潤滑油61を案内凸部86で入口部81aに導くことにより、潤滑油61が入口部81aを経て供給通路81に良好に案内される。
【0088】
図10(b)に示すように、供給通路81に案内された潤滑油61が、供給通路81を経て駆動軸室55(すなわちオイルスリンガ58の下端部58b)まで矢印Lの如く導かれる。
ここで、駆動軸28と一体にオイルスリンガ58が矢印Iの如く回転している。
よって、オイルスリンガ58の下端部58bまで導かれた潤滑油61が、オイル溝58aで下端部58bから上端部58cまで矢印Mの如く案内される。
【0089】
オイルスリンガ58の上端部58cまで案内された潤滑油61が、テーパローラ軸受33の下端部33aから外輪47および内輪48間の隙間を経てテーパローラ軸受33の上端部33bまで矢印Nの如く導かれる。
これにより、テーパローラ軸受33の外輪47、内輪48および複数のローラ49、すなわちテーパローラ軸受33が潤滑油61で潤滑される。
【0090】
テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61が、シフト案内通路82に矢印Oの如く導かれる。シフト案内通路82に導かれた潤滑油61がシフト案内通路82を経てシフト室76に矢印Pの如く導かれる。
シフト室76に導かれた潤滑油61は、シフト室76の底部76aからボール軸受77および戻し連通路83を経てギヤ室68に矢印Qの如く戻される。
【0091】
ついで、潤滑手段34のサブ潤滑循環部36で潤滑油61を潤滑する例を図11に基づいて説明する。
図11(a)に示すように、テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61が、サブ潤滑循環部36の左右の補助案内通路111に矢印Rの如く案内される。
【0092】
左補助案内通路111に案内された潤滑油61が、左補助案内通路111を経て左前貯留室103(オイル貯留室101)に矢印Sの如く導かれる。
左前貯留室103に導かれた潤滑油61が、左前貯留室103を経て左補助戻し通路115に矢印Tの如く導かれる。
左補助戻し通路115に導かれた潤滑油61が、左補助戻し通路115を経てギヤ室68に矢印Uの如く戻される。
【0093】
同時に、右補助案内通路111に案内された潤滑油61が、右補助案内通路111を経て右前貯留室104(オイル貯留室101)に矢印Vの如く導かれる。
右前貯留室104に導かれた潤滑油61が、右前貯留室104を経て右補助戻し通路115に矢印Wの如く導かれる。
右補助戻し通路115に導かれた潤滑油61が、右補助戻し通路115を経てギヤ室68に矢印Xの如く戻される。
【0094】
図11(b)に示すように、右補助戻し通路115の出口部115bからギヤ室68に潤滑油61が矢印Xの如く戻される。
ここで、前ベベルギヤ64(図11(a)参照)やテーパローラ軸受91が矢印Jの如く回転している。
よって、右補助戻し通路115の出口部115bからギヤ室68に導かれた潤滑油61が、前ベベルギヤ64やテーパローラ軸受91の回転で奥側の部位68eの壁面に沿って下降するように導かれる。
【0095】
奥側の部位68eは、中心軸71から矢印X方向(すなわち、潤滑油61が導かれる方向)に向けて下向きに下がるように円弧状に形成されている。
これにより、右補助戻し通路115の潤滑油61が出口部115bからギヤ室68に円滑に戻される。
【0096】
図9〜図11で説明したように、テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61を潤滑循環部35やサブ潤滑循環部36でギヤ室68に戻すことで、潤滑油61を円滑(迅速)に循環させることができる。
潤滑油61を円滑に循環させることで、駆動軸室55やギヤ室68の内部圧力を好適に保つことができる。
【0097】
駆動軸室55やギヤ室68の内部圧力を好適に保つことで、駆動軸室55やギヤ室68から潤滑油61が流出することを確実に防ぐことができる。
よって、動力伝達系、特にギヤ機構29の形状を大きくした場合に、潤滑油61を円滑に循環させるために、ギヤ機構29に合わせてギヤ室68を大きく確保する必要がない。
【0098】
一方、サブ潤滑循環部36のオイル貯留室101は、ギヤケース38の利用不能な部位38aの中空部39(図3参照)を利用している。
よって、サブ潤滑循環部36を備えることでギヤケース38を大きくすることなく、駆動軸室55やギヤ室68の内部圧力を好適に保つことができる。
このように、ギヤケース38を大きくする必要がないので、船体14(図3参照)の滑走中に海水による抵抗が大きくなることを防ぐことができ、船外機10の能力(特に、滑走能力)を確保できる。
【0099】
さらに、動力伝達系、特にギヤ機構29の形状を大きくすることで、ギヤ機構29の剛性(強度)を高めることができる。
ギヤ機構29の剛性(強度)を高めることで動力伝達系の耐久性を高めることができる。
【0100】
なお、本発明に係る船外機は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、サブ潤滑循環部36に左右の補助案内通路111を備えた例について説明したが、これに限らないで、補助案内通路111の個数は任意に選択することができる。
【0101】
また、前記実施例では、潤滑手段34で潤滑する軸受としてテーパローラ軸受33を例示したが、これに限らないで、ボール軸受などの他の軸受を採用することも可能である。
【0102】
さらに、前記実施例で示した船外機10、エンジン23、クランク軸27、駆動軸28、ギヤ機構29、プロペラ軸31、テーパローラ軸受33、潤滑手段34、潤滑循環部35、サブ潤滑循環部36、ギヤケース38、駆動軸室55、ギヤ室68、供給通路81、案内凸部86、オイル貯留室101、補助案内通路111および補助戻し通路115などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、エンジンに連結された駆動軸が軸受を介して駆動軸室に回転自在に支持され、この駆動軸の回転をギヤ機構でプロペラ軸に伝達可能な船外機への適用に好適である。
【符号の説明】
【0104】
10…船外機、23…エンジン、27…クランク軸、28…駆動軸、29…ギヤ機構、31…プロペラ軸、33…テーパローラ軸受(軸受)、35…潤滑循環部(循環部)、36…サブ潤滑循環部、38…ギヤケース、38a…利用不能な部位、51…潤滑手段、55…駆動軸室、61…潤滑油、68…ギヤ室、68a…ギヤ室の前頂部、68c…入口部の奥側の部位、81…供給通路、81a…供給通路の入口部、86…案内凸部、101…オイル貯留室、111…左右の補助案内通路(案内通路)、115…左右の補助戻し通路(戻し通路)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに連結された駆動軸が軸受を介して駆動軸室に回転自在に支持され、この駆動軸の回転をギヤ機構でプロペラ軸に伝達可能な船外機に関する。
【背景技術】
【0002】
船外機は、通常、エンジンの回転を伝える駆動軸が鉛直に設けられ、駆動軸の下端部にピニオン(ピニオンベベルギヤ)が設けられ、ピニオンに一対のベベルギヤが噛み合わされ、ベベルギヤにクラッチ(ドッグクラッチ)を介してプロペラ軸が連結されている。
ピニオン、一対のベベルギヤおよびクラッチは、ギヤケース内のギヤ室に収納されている。このギヤ室には潤滑油が充填されている。
【0003】
プロペラ軸には推進用のプロペラが設けられ、クラッチにはシフトロッドが連結されている。
シフトロッドは、ギヤケース内のシフト室に収納されている。シフト室はギヤ室に連通されている。
【0004】
シフトロッドでクラッチを操作することにより、プロペラ軸に一対のベベルギヤの一方を連結させた正転状態や、一対のベベルギヤの他方を連結させた逆転状態に切り替えることが可能である。
さらに、シフトロッドでクラッチを操作することにより、プロペラ軸から一対のベベルギヤを切り離した中立状態に切り替えることが可能である。
【0005】
ところで、駆動軸は、ピニオンの上方の支え軸部がテーパローラ軸受でギヤケースに回転自在に支持されている。
このテーパローラ軸受は、ギヤケース内に充填されている潤滑油の油面(すなわち、オイルレベル)より上方に設けられている。
【0006】
このため、テーパローラ軸受に潤滑油を導く潤滑装置が備えられている。
潤滑装置は、駆動軸のテーパローラ軸受下側にオイルスリンガが設けられ、オイルスリンガおよびギヤ室が供給通路で連通され、テーパローラ軸受およびシフト室が戻り通路で連通されている。
オイルスリンガの外周に螺旋状の案内溝が設けられている。
【0007】
この潤滑装置によれば、駆動軸の回転がベベルギヤに伝わってベベルギヤが回転することにより、ギヤ室の潤滑油が供給通路を経てオイルスリンガに導かれる。
ここで、オイルスリンガは駆動軸と一体に回転されている。オイルスリンガが回転することにより、オイルスリンガに導かれた潤滑油がオイルスリンガの案内溝でテーパローラ軸受まで導かれる。
【0008】
テーパローラ軸受まで導かれた潤滑油でテーパローラ軸受が潤滑される。テーパローラ軸受を潤滑した潤滑油が戻り通路を経てシフト室に導かれる。
シフト室に導かれた潤滑油がシフト室からギヤ室に戻される。このように、潤滑油を循環させることにより潤滑油でテーパローラ軸受を潤滑することが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−262397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、船外機の動力伝達系、特にピニオンや一対のベベルギヤ(以下、ギヤ機構という)の耐久性をさらに高めるためにギヤ機構の形状を大きくすることが考えられる。
ここで、ギヤ機構はギヤ室に収納されている。よって、ギヤ機構の形状を大きくした場合ギヤ室の空間が減少する。
このため、テーパローラ軸受を潤滑するために潤滑油を循環させた場合、ギヤ室の内部圧力が高くなり、ギヤ室の潤滑油をシール材でギヤ室内に保つことが難しくなる。
【0011】
この対策として、船外機のギヤケースを大きく形成してギヤ室の空間を増す方法が考えられる。
しかし、ギヤケースを大きく形成した場合、船体の滑走中に海水による抵抗が大きくなり、船外機の能力(特に、滑走能力)を低下させる要因となる。
【0012】
本発明は、ギヤケースを大きく形成することなく、動力伝達系、特にギヤ機構の耐久性を高めることができる船外機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は、エンジンのクランク軸に連結された駆動軸が軸受で駆動軸室に回転自在に支持され、前記駆動軸の回転をプロペラ軸に伝達可能なギヤ機構がギヤ室に収納された船外機において、前記ギヤ機構の回転で前記ギヤ室の潤滑油を前記軸受に導き、前記軸受を潤滑した潤滑油を前記ギヤ室に戻す循環部と、前記循環部に連通され、前記軸受を潤滑した潤滑油を受入可能なオイル貯留室と、前記オイル貯留室を前記ギヤ室に連通する戻し通路と、を備え、前記オイル貯留室に案内された前記潤滑油を前記戻し通路を経て前記ギヤ室に戻すことを特徴とする。
【0014】
請求項2は、前記ギヤ室の潤滑油を前記軸受に導くために前記ギヤ室に入口部が開口された供給通路と、前記供給通路の入口部の周囲のうち、前記ギヤ機構の回転方向に対して前記入口部の奥側の部位から前記ギヤ室に突出され、前記ギヤ室の潤滑油を前記入口部に案内可能な案内凸部と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項3は、前記軸受を潤滑した潤滑油を前記オイル貯留室に案内するために、前記オイル貯留室および前記駆動軸室を連通する案内通路を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項4は、前記駆動軸室および前記ギヤ室はギヤケースに設けられ、前記ギヤケースのうち利用不能な部位に前記オイル貯留室が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明では、軸受を潤滑した潤滑油をギヤ室に戻す循環部を備え、さらに、もう一つの循環部としてオイル貯留室および戻し通路を備えている。
軸受を潤滑した潤滑油を循環部でギヤ室に戻すとともに、オイル貯留室および戻し通路でギヤ室に戻すことができる。
【0018】
よって、動力伝達系、特にギヤ機構の形状を大きくした場合に、ギヤ機構に合わせてギヤ室を大きく確保しなくても、駆動軸室からギヤ室に潤滑油を円滑に循環させることができる。
潤滑油を円滑に循環させることで、駆動軸室やギヤ室の内部圧力を好適に保つことができる。駆動軸室やギヤ室の内部圧力を好適に保つことで、駆動軸室やギヤ室から潤滑油が流出することを確実に防ぐことができる。
【0019】
さらに、動力伝達系、特にギヤ機構の形状を大きくすることで、ギヤ機構の剛性(強度)を高めることができる。
ギヤ機構の剛性(強度)を高めることで動力伝達系の耐久性を高めることができる。
【0020】
ここで、駆動軸室やギヤ室はギヤケースに形成されている。よって、駆動軸室やギヤ室を大きく確保するとギヤケースが大きくなる。
ギヤケースは船体の滑走中に海水に浸かる部位であり、海水の抵抗などを考慮するとギヤケースを大きくしないことが好ましい。
【0021】
一方、ギヤケースは、通常、鋳造品が用いられ、ギヤケースの利用不能な部位に中空部が形成されている。
ここで、ギヤケースの利用不能な部位とは、ギヤケースのうち駆動軸室やギヤ室に利用することができない部位をいう。
【0022】
よって、この中空部をオイル貯留室として利用することで、ギヤケースを大きくすることなく、駆動軸室やギヤ室の内部圧力を好適に保つことができる。
このように、ギヤケースを大きくする必要がないので、船体の滑走中に海水による抵抗が大きくなることを防ぐことができ、船外機の能力(特に、滑走能力)を確保できる。
【0023】
請求項2に係る発明では、供給通路の入口部の周囲のうち、ギヤ機構の回転方向に対して入口部の奥側の部位からギヤ室に案内凸部を突出させた。さらに、この案内凸部でギヤ室の潤滑油を入口部に案内可能とした。
【0024】
ギヤ室の潤滑油を案内凸部で入口部に案内することで、潤滑油を供給通路を経て駆動軸室にさらに良好に導くことができる。
これにより、駆動軸室の軸受に潤滑油を効率よく導いて軸受を潤滑油で一層好適に潤滑することができる。
【0025】
請求項3に係る発明では、駆動軸室の潤滑油をオイル貯留室に案内する案内通路を備えた。
よって、例えば、オイル貯留室を駆動軸室から比較的離しても、オイル貯留室を案内通路で駆動軸室に連通させることができる。
これにより、オイル貯留室を設ける部位を比較的広い範囲から選択することが可能になり、設計の自由度を高めることができる。
【0026】
請求項4に係る発明では、ギヤケースのうち利用不能な部位にオイル貯留室を設けた。
具体的には、ギヤケースの利用不能な部位に中空部が形成され、この中空部をオイル貯留室として利用した。
よって、オイル貯留室を設けるための部位を、ギヤケースに新たに確保する必要がないので、ギヤケースを大きくすることなくオイル貯留室を設けることができる。
このように、ギヤケースを大きくする必要がないので船外機の能力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る船外機を示す側面図である。
【図2】本発明に係る船外機の動力伝達機構を示す断面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2の4部拡大図である。
【図5】図4の5−5線断面図である。
【図6】(a)は本発明に係るサブ潤滑循環部を示す断面図、(b)は(a)の6b部拡大図である。
【図7】本発明に係るサブ潤滑循環部を示す概略斜視図である。
【図8】図4の8−8線断面図である。
【図9】本発明に係る動力伝達機構でプロペラを正転させる例を説明する図である。
【図10】本発明に係る潤滑循環部でテーパローラ軸受を潤滑する例を説明する図である。
【図11】本発明に係るサブ潤滑循環部でテーパローラ軸受を潤滑した潤滑油を循環する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0029】
実施例に係る船外機10について説明する。
図1に示すように、船外機10は、船外機本体12と、船外機本体12に設けられて船体14(具体的には、船尾15)に着脱可能な取付手段16とを備えている。
取付手段16は、船外機本体12を左右方向(水平方向)に揺動可能なスイベル軸17と、船外機本体12を上下方向に揺動可能なチルト軸18とを備えている。
【0030】
船外機本体12は、取付手段16に設けられたマウントケース21と、マウントケース21の上部に搭載されたエンジン23と、エンジン23を覆うエンジンカバー24と、エンジン23のクランク軸27に上端部28aが連結された駆動軸28とを備えている。
【0031】
さらに、船外機本体12は、駆動軸28を介してエンジン23の回転が伝達されるギヤ機構29と、ギヤ機構29の回転がプロペラ軸31を介して伝達されるプロペラ32と、駆動軸28のテーパローラ軸受(テーパローラベアリング、軸受)33を潤滑する潤滑手段34とを備えている。
【0032】
エンジン23は、シリンダブロック41、ヘッドカバー42、クランク軸27、シリンダ43およびピストン44などを備えている。
エンジン23が駆動することによりクランク軸27が回転し、クランク軸27の回転が駆動軸28に伝達される。
【0033】
駆動軸28は、クランク軸27から下方に延出されることにより、下部位28bがエクステンションケース37の下端部からギヤケース38に突出されている。
駆動軸28の下部位28bにギヤ機構29を介してプロペラ軸31が連結されている。
駆動軸28の下部位28b、ギヤ機構29およびプロペラ軸31はギヤケース38に収容されている。
【0034】
図2、図3に示すように、ギヤケース38は、通常、鋳造品が用いられ、ギヤケース38の利用不能な部位38a,38b,38c…に中空部39がそれぞれ形成されている。
ここで、ギヤケースの利用不能な部位38a,38b,38c…とは、ギヤケース38のうち駆動軸室55、ギヤ室68やシフト室76などに利用できない部位をいう。
なお、船外機10の構成の理解を容易にするために、以下、「駆動軸28の下部位28b」を「駆動軸28」として説明する。
【0035】
図4に示すように、駆動軸28は、第1支え軸部28cがテーパローラ軸受33を介して駆動軸室55に回転自在に支持され、第2支え軸部28dがローラ軸受(ローラベアリング)56を介して駆動軸室55に回転自在に支持されている。
すなわち、駆動軸28は、テーパローラ軸受33およびローラ軸受56で略鉛直に支持された状態で駆動軸室55に収納されている。
駆動軸室55は、ギヤケース38内に略鉛直に設けられた空間である。
【0036】
この駆動軸28には、テーパローラ軸受33の下方にオイルスリンガ58が同軸上に設けられている。
よって、駆動軸28が回転することにより、駆動軸28と一体にオイルスリンガ58が回転する。
【0037】
オイルスリンガ58は、駆動軸室55に収容され、外周に螺旋状のオイル溝58aが形成されている。
よって、オイルスリンガ58を回転することにより、駆動軸室55の潤滑油61をオイル溝58aでオイルスリンガ58の下端部58bから上端部58cまで案内できる。
【0038】
駆動軸28の第2支え軸部28dがギヤ機構29に連結されている。
ギヤ機構29は、ギヤ室68に収納されている。
このギヤ機構29は、第2支え軸部28dに設けられたピニオン63と、ピニオン63の前後に噛み合わされた前後のベベルギヤ(一対のベベルギヤ)64,65と、前後のベベルギヤ64,65をプロペラ軸31に連結可能なクラッチ66とを備えている。
【0039】
前ベベルギヤ64は、ピニオン63の前部に噛み合わされた状態で、プロペラ軸31に回転自在に嵌合されている。
また、後ベベルギヤ65は、ピニオン63の後部に噛み合わされた状態で、プロペラ軸31に回転自在に嵌合されている。
よって、エンジン23が駆動して駆動軸28(すなわち、ピニオン63)が矢印Aの如く回転することにより、前ベベルギヤ64が矢印Bの如く正転し、後ベベルギヤ65が矢印Cの如く逆転する。
【0040】
クラッチ66は、プロペラ軸31と一体に回転可能にプロペラ軸31に嵌合されている。
このクラッチ66は、一般の船外機に用いられている通常のドッグクラッチと同一構成なのでクラッチ66の詳しい説明を省略する。
【0041】
ギヤ機構29はギヤ室68に収納されている。
ギヤ室68は、ギヤケース38に設けられ、オイル室(図示せず)に連通されている。
ギヤ室68がオイル室(図示せず)に連通されることにより、オイル室の潤滑油61がギヤ室68内に充填されている。
なお、オイル室の潤滑油61は、一例として、オイルレベルOLの位置まで充填されている。
【0042】
クラッチ66の連結部73がシフトロッド74の下端部74aに連結されている。
シフトロッド74は、シフト室76に収納され、下端部74aがボール軸受(ボールベアリング)77を介してシフト室76に回転自在に支持されている。
シフト室76は、ギヤケース38内に略鉛直に形成され、底部76aがギヤ室68の前端部(具体的には、前頂部)68aに連通されている。
【0043】
このシフトロッド74は、駆動軸28の前方に配置され、駆動軸28に対して略平行に設けられている。
シフトロッド74の上端部に、操舵者が操作可能な操舵ロッド(図示せず)が設けられている。
【0044】
操舵ロッドを操作することによりシフトロッド74を矢印Dの如く旋回させることができる。シフトロッド74を旋回させることによりクラッチ66を矢印Eの如く作動させることができる。
クラッチ66を作動させることにより、プロペラ軸31に前ベベルギヤ64を連結させた正転状態や、プロペラ軸31に後ベベルギヤ65を連結させた逆転状態に切り替えられる。
また、クラッチ66を作動させることにより、プロペラ軸31から前後のベベルギヤ64,65を切り離した中立状態に切り替えられる。
【0045】
よって、クラッチ66を作動させてプロペラ軸31に前ベベルギヤ64を連結させることにより、駆動軸28の回転がピニオン63、前ベベルギヤ64およびクラッチ66を経てプロペラ軸31に伝達される。
これにより、プロペラ軸31とともにプロペラ32(図2参照)が正転することにより船体14(図1参照)が前進状態で滑走する。
【0046】
一方、クラッチ66を作動させてプロペラ軸31に後ベベルギヤ65を連結させることにより、駆動軸28の回転がピニオン63、後ベベルギヤ65およびクラッチ66を経てプロペラ軸31に伝達される。
これにより、プロペラ軸31とともにプロペラ32(図2参照)が逆転することにより船体14(図1参照)が後進する。
【0047】
また、クラッチ66を作動させてプロペラ軸31から前後のベベルギヤ64,65を切り離すことにより、駆動軸28の回転をプロペラ軸31に伝えないようにして船体14を停止状態に保つ。
【0048】
駆動軸28のテーパローラ軸受33は潤滑油61のオイルレベルOLより上方に設けられている。
よって、ギヤケース38内に潤滑手段34を備え、潤滑手段34でテーパローラ軸受33に潤滑油61を導いて、テーパローラ軸受33を潤滑油61で潤滑する必要がある。
【0049】
潤滑手段34は、駆動軸28のテーパローラ軸受33を潤滑油61で潤滑する潤滑循環部(循環部)35と、もう一つの循環部としてサブ潤滑循環部(補助潤滑循環部)36とを備えている。
【0050】
潤滑循環部35は、ギヤ室68および駆動軸室55を連通する供給通路81と、駆動軸室55と、駆動軸室55およびシフト室76を連通するシフト案内通路82と、シフト室76およびギヤ室68を連通する戻し連通路83とを備えている。
【0051】
供給通路81は、入口部(下端部)81aがギヤ室68の中央頂部68bに開口され、出口部(上端部)81bが駆動軸室55の周壁55aに開口されている。
供給通路81の入口部81aは、前ベベルギヤ64の上方に配置されている。
供給通路81の出口部81bは、上半部がオイルスリンガ58の下端部58bに対向され、下半部が下端部58bの下方に配置されている。
【0052】
図5に示すように、ギヤ室68の中央頂部68bは、入口部81aの周囲のうち、前ベベルギヤ64の回転方向(矢印F方向)に対して入口部81aの奥側の部位(以下、奥側部位という)68cに案内凸部86が設けられている。
案内凸部86は、奥側部位68cからギヤ室68に向けて突出されている。
【0053】
この案内凸部86は、入口部81aの右側に隣接された状態で、ギヤ機構29(具体的には、前ベベルギヤ64)の回転方向に対向するように設けられている。
すなわち、ギヤ室68の潤滑油61が前ベベルギヤ64の回転により導かれる方向に対向して案内凸部86が設けられている。
【0054】
よって、前ベベルギヤ64で導かれる潤滑油61の向きを案内凸部86で入口部81aに向くように矢印Gの如く変えることができる。
潤滑油61を案内凸部86で入口部81aに向けることにより、潤滑油61を入口部81aから供給通路81に矢印Gの如く円滑に案内することができる。
【0055】
潤滑油61を案内凸部86で入口部81aから供給通路81に案内することで、潤滑油61を供給通路81を経て駆動軸室55(図4参照)に良好に導くことができる。
これにより、駆動軸室55のテーパローラ軸受33に潤滑油61を効率よく導いてテーパローラ軸受33を潤滑油61で好適に潤滑することができる。
【0056】
図3、図4に示すように、シフト案内通路82は、駆動軸室55からシフト室76に向けて下り勾配に延ばされている。
このシフト案内通路82は、上端部82aが駆動軸室55の周壁55aに連通(開口)され、下端部82bがシフト室76の側壁76bに連通(開口)されている。
シフト案内通路82の上端部82aは、ナット88の上方に配置されている。
【0057】
ナット88は駆動軸室55の周壁55aにねじ結合されている。この状態で、ナット88がテーパローラ軸受33の上端に当接してテーパローラ軸受33がナット88で保持される。
シフト案内通路82の下端部82bは、シフト室76の側壁76bのうち上端部76c近傍に配置されている。
【0058】
戻し連通路83は、シフト室76の底部76aおよびギヤ室68の前頂部68aを連通する通路である。
戻し連通路83の下端部83aは、前ベベルギヤ64を支えるテーパローラ軸受(テーパローラベアリング)91の前側近傍に設けられている。
【0059】
潤滑循環部35によれば、駆動軸28で前ベベルギヤ64を回転することで、ギヤ室68の潤滑油61が前ベベルギヤ64で上方に跳ね上げられる。
前ベベルギヤ64の上方に供給通路81の入口部(下端部)81aが設けられている。よって、前ベベルギヤ64で跳ね上げられた潤滑油61が供給通路81の入口部81aから供給通路81に流入する。
供給通路81に流入した潤滑油61は、供給通路81を経て供給通路81の出口部(上端部)81b、すなわちオイルスリンガ58の下端部58bまで導かれる。
【0060】
ここで、駆動軸28と一体にオイルスリンガ58が回転している。
よって、オイルスリンガ58の下端部58bまで導かれた潤滑油61は、オイル溝58aで下端部58bから上端部58cまで案内される。
オイルスリンガ58の上端部58cまで案内された潤滑油61は、テーパローラ軸受33の下端部33aから外輪47および内輪48間の隙間を経てテーパローラ軸受33の上端部33bまで導かれる。
【0061】
これにより、テーパローラ軸受33の外輪47、内輪48および複数のローラ49が潤滑油61で潤滑される。
テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61は、ナット88の上方からシフト案内通路82に導かれ、シフト案内通路82を経てシフト室76に導かれる。
シフト室76に導かれた潤滑油61は、シフト室76の底部76aからボール軸受77および戻し連通路83を経てギヤ室68に戻される。
【0062】
図3、図6に示すように、潤滑手段34は、もう一つの循環部としてサブ潤滑循環部36を備えている。
サブ潤滑循環部36は、テーパローラ軸受33の近傍に設けられたオイル貯留室101と、オイル貯留室101および駆動軸室55を連通する左右の補助案内通路(案内通路)111と、オイル貯留室101およびギヤ室68を連通する左右の補助戻し通路(戻し通路)115とを備えている。
【0063】
図3、図7に示すように、オイル貯留室101は、テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61を受入可能な室である。
ところで、ギヤケース38は、通常、鋳造品が用いられ、ギヤケース38の利用不能な部位38a,38b,38c…に中空部39(図3参照)がそれぞれ形成されている。
ここで、利用不能な部位38a,38b,38c…のうち部位38aの中空部39がオイル貯留室101として利用されている。
【0064】
すなわち、オイル貯留室101は、ギヤケース38のうち利用不能な部位38aに設けられている。よって、オイル貯留室101を設けるための部位を、ギヤケース38に新たに確保する必要がない。
これにより、ギヤケース38を大きくすることなくオイル貯留室101を設けることができる。
ギヤケース38を大きくする必要がないので、船体14の滑走中に海水による抵抗が大きくなることを防ぐことができ、船外機10の能力を確保することができる。
【0065】
このオイル貯留室101は、駆動軸室55に沿って平面視略湾曲状に形成され、駆動軸室55の前近傍に前貯留室102を有する。
前貯留室102は、シフト案内通路82の上端部102aが開口され、シフト案内通路82の左右側から下方に向けて左前貯留室103および右前貯留室104に分岐されている。
前貯留室102の上端部102aは、エクステンションケース37(図6(a)参照)で密封されている。
一方、分岐された左右の前貯留室103,104は、シフト案内通路82側からギヤ室68に向けて(下方に向けて)略鉛直に形成されている。
【0066】
左前貯留室103は、左補助案内通路111で駆動軸室55に連通されている。
左補助案内通路111は、シフト案内通路82の左側においてシフト案内通路82に沿って設けられ、駆動軸室55から左前貯留室103に向けて下り勾配に延ばされている(図6(b)も参照)。
【0067】
この左補助案内通路111は、上端部111aが駆動軸室55の周壁55aに連通(開口)され、下端部111bが左前貯留室103の側壁103aに連通(開口)されている。
左前貯留室103および駆動軸室55を左補助案内通路111で連通することで、テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61が左補助案内通路111を経て左前貯留室103に案内される。
【0068】
同様に、右前貯留室104は、右補助案内通路111で駆動軸室55に連通されている。
右補助案内通路111は、シフト案内通路82の右側においてシフト案内通路82に沿って設けられ、駆動軸室55から右前貯留室104に向けて下り勾配に延ばされている。
【0069】
この右補助案内通路111は、上端部111aが駆動軸室55の周壁55aに連通(開口)され、下端部111bが右前貯留室104の側壁104aに連通(開口)されている。
右前貯留室104および駆動軸室55を右補助案内通路111で連通することで、テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61が右補助案内通路111を経て右前貯留室104に案内される。
【0070】
このように、左右の補助案内通路111を備えることで、例えば、オイル貯留室101を駆動軸室55から比較的離しても、補助案内通路111でオイル貯留室101を駆動軸室55に連通させることができる。
これにより、オイル貯留室101を設ける部位を比較的広い範囲から選択することが可能になり、設計の自由度を高めることができる。
【0071】
図8に示すように、左前貯留室103は、左補助戻し通路115でギヤ室68に連通されている。
左補助戻し通路115は、中心軸71に対して左側に略鉛直に設けられている。
中心軸71は、前ベベルギヤ64(図7も参照)の回転中心72から鉛直方向に延ばされた軸である。
【0072】
左補助戻し通路115の入口部115aは、左前貯留室103の底部103bに開口されている。
左補助戻し通路115の出口部115bは、ギヤ室68の中央頂部68bのうち中心軸71に対して左側の部位68dに開口されている。
【0073】
左側の部位68dは、前ベベルギヤ64やテーパローラ軸受91の回転方向(矢印F方向)に対して中心軸71の手前側の部位である。
中心軸71の手前側の部位68dに出口部115bが開口することで、左前貯留室103に案内された潤滑油61が、左補助戻し通路115を経てギヤ室68に戻される。
【0074】
右前貯留室104は、右補助戻し通路115でギヤ室68に連通されている。
右補助戻し通路115は、中心軸71に対して右側に略鉛直に設けられている。
【0075】
右補助戻し通路115の入口部115aは、右前貯留室104の底部104bに開口されている。
右補助戻し通路115の出口部115bは、ギヤ室68の中央頂部68bのうち中心軸71に対して右側の部位68eに開口されている。
【0076】
右側の部位68eは、前ベベルギヤ64やテーパローラ軸受91の回転方向(矢印F方向)に対して中心軸71の奥側の部位である。
中心軸71の奥側の部位68eに出口部115bが開口することで、右前貯留室104に案内された潤滑油61が、右補助戻し通路115を経てギヤ室68に戻される。
【0077】
ここで、右補助戻し通路115の出口部115bは、前ベベルギヤ64やテーパローラ軸受91の矢印F方向への回転方向に対して中心軸71の奥側の部位(すなわち、右側の部位)68eに開口されている。
奥側の部位68eは、中心軸71から矢印F方向に向けて下方に下がるように円弧状に形成されている。
【0078】
矢印F方向は、前ベベルギヤ64やテーパローラ軸受91の回転方向である。
よって、右補助戻し通路115の出口部115bからギヤ室68に導かれた潤滑油61を、前ベベルギヤ64やテーパローラ軸受91の回転で奥側の部位68eの壁面に沿わせて下降させるように円滑に導くことができる。
これにより、右補助戻し通路115の潤滑油61を、右補助戻し通路115の出口部115bからギヤ室68に矢印Hの如く円滑に導くことができる。
【0079】
図7に示すように、サブ潤滑循環部36によれば、テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61が左右の補助案内通路111を経てオイル貯留室101に案内され、オイル貯留室101に案内された潤滑油61が左右の補助戻し通路115を経てギヤ室68に戻される。
このように、図3に示す潤滑循環部35の他にもう一つの循環部としてサブ潤滑循環部36を備えることで、テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61をギヤ室68に円滑(迅速)に戻すことができる。
【0080】
よって、動力伝達系、特にギヤ機構29の形状を大きくした場合に、ギヤ機構29に合わせてギヤ室68を大きく確保しなくても潤滑油61を円滑に循環させることができる。
潤滑油61を円滑に循環させることで、駆動軸室55やギヤ室68(図4も参照)の内部圧力を好適に保つことができる。
駆動軸室55やギヤ室68の内部圧力を好適に保つことで、駆動軸室55やギヤ室68から潤滑油61が流出することを確実に防ぐことができる。
【0081】
さらに、動力伝達系、特にギヤ機構29の形状を大きくすることで、ギヤ機構29の剛性(強度)を高めることができる。
ギヤ機構29の剛性(強度)を高めることで動力伝達系の耐久性を高めることができる。
【0082】
ここで、駆動軸室55やギヤ室68はギヤケース38に形成されている。よって、駆動軸室55やギヤ室68を大きく確保するとギヤケース38が大きくなる。
ギヤケース38は船体14(図1参照)の滑走中に海水に浸かる部位であり、海水の抵抗などを考慮するとギヤケース38を大きくしないことが好ましい。
【0083】
これに対して、船外機10は、ギヤケース38の利用不能な部位38aの中空部39(図3参照)がオイル貯留室101として利用されている。
よって、ギヤケース38を大きくすることなく、駆動軸室55やギヤ室68の内部圧力を好適に保つことができる。
このように、ギヤケース38を大きくする必要がないので、船体14(図1参照)の滑走中に海水による抵抗が大きくなることを防いで船外機10の能力(特に、滑走能力)を確保できる。
【0084】
つぎに、テーパローラ軸受33を潤滑手段34で潤滑する例を図9〜図11に基づいて説明する。
まず、船外機10で船体14(図1参照)を前進滑走させる例を図9に基づいて説明する。
図9に示すように、エンジン23(図1参照)を駆動することにより駆動軸28が矢印Iの如く回転する。駆動軸28と一体にピニオン63が回転することにより、前ベベルギヤ64が矢印Jの如く回転する。
【0085】
この状態で、操舵ロッドでシフトロッド74を旋回させてクラッチ66を作動させることにより、クラッチ66で前ベベルギヤ64をプロペラ軸31に連結させる。
よって、駆動軸28の回転がピニオン63、前ベベルギヤ64およびクラッチ66を経てプロペラ軸31に伝達される。
プロペラ軸31でプロペラ32を矢印Jの如く正転させることで船体14(図1参照)が前進状態で滑走する。
【0086】
つぎに、潤滑手段34の潤滑循環部35で潤滑油61を潤滑する例を図10に基づいて説明する。
図10(a)に示すように、前ベベルギヤ64が矢印Jの如く回転することで、ギヤ室68の潤滑油61が前ベベルギヤ64の回転で矢印Jの如く案内凸部86に向けて案内される(導かれる)。
【0087】
潤滑油61が案内凸部86に向けて案内されることで、潤滑油61が案内凸部86で供給通路81の入口部81aに向くように矢印Kの如く導かれる。
潤滑油61を案内凸部86で入口部81aに導くことにより、潤滑油61が入口部81aを経て供給通路81に良好に案内される。
【0088】
図10(b)に示すように、供給通路81に案内された潤滑油61が、供給通路81を経て駆動軸室55(すなわちオイルスリンガ58の下端部58b)まで矢印Lの如く導かれる。
ここで、駆動軸28と一体にオイルスリンガ58が矢印Iの如く回転している。
よって、オイルスリンガ58の下端部58bまで導かれた潤滑油61が、オイル溝58aで下端部58bから上端部58cまで矢印Mの如く案内される。
【0089】
オイルスリンガ58の上端部58cまで案内された潤滑油61が、テーパローラ軸受33の下端部33aから外輪47および内輪48間の隙間を経てテーパローラ軸受33の上端部33bまで矢印Nの如く導かれる。
これにより、テーパローラ軸受33の外輪47、内輪48および複数のローラ49、すなわちテーパローラ軸受33が潤滑油61で潤滑される。
【0090】
テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61が、シフト案内通路82に矢印Oの如く導かれる。シフト案内通路82に導かれた潤滑油61がシフト案内通路82を経てシフト室76に矢印Pの如く導かれる。
シフト室76に導かれた潤滑油61は、シフト室76の底部76aからボール軸受77および戻し連通路83を経てギヤ室68に矢印Qの如く戻される。
【0091】
ついで、潤滑手段34のサブ潤滑循環部36で潤滑油61を潤滑する例を図11に基づいて説明する。
図11(a)に示すように、テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61が、サブ潤滑循環部36の左右の補助案内通路111に矢印Rの如く案内される。
【0092】
左補助案内通路111に案内された潤滑油61が、左補助案内通路111を経て左前貯留室103(オイル貯留室101)に矢印Sの如く導かれる。
左前貯留室103に導かれた潤滑油61が、左前貯留室103を経て左補助戻し通路115に矢印Tの如く導かれる。
左補助戻し通路115に導かれた潤滑油61が、左補助戻し通路115を経てギヤ室68に矢印Uの如く戻される。
【0093】
同時に、右補助案内通路111に案内された潤滑油61が、右補助案内通路111を経て右前貯留室104(オイル貯留室101)に矢印Vの如く導かれる。
右前貯留室104に導かれた潤滑油61が、右前貯留室104を経て右補助戻し通路115に矢印Wの如く導かれる。
右補助戻し通路115に導かれた潤滑油61が、右補助戻し通路115を経てギヤ室68に矢印Xの如く戻される。
【0094】
図11(b)に示すように、右補助戻し通路115の出口部115bからギヤ室68に潤滑油61が矢印Xの如く戻される。
ここで、前ベベルギヤ64(図11(a)参照)やテーパローラ軸受91が矢印Jの如く回転している。
よって、右補助戻し通路115の出口部115bからギヤ室68に導かれた潤滑油61が、前ベベルギヤ64やテーパローラ軸受91の回転で奥側の部位68eの壁面に沿って下降するように導かれる。
【0095】
奥側の部位68eは、中心軸71から矢印X方向(すなわち、潤滑油61が導かれる方向)に向けて下向きに下がるように円弧状に形成されている。
これにより、右補助戻し通路115の潤滑油61が出口部115bからギヤ室68に円滑に戻される。
【0096】
図9〜図11で説明したように、テーパローラ軸受33を潤滑した潤滑油61を潤滑循環部35やサブ潤滑循環部36でギヤ室68に戻すことで、潤滑油61を円滑(迅速)に循環させることができる。
潤滑油61を円滑に循環させることで、駆動軸室55やギヤ室68の内部圧力を好適に保つことができる。
【0097】
駆動軸室55やギヤ室68の内部圧力を好適に保つことで、駆動軸室55やギヤ室68から潤滑油61が流出することを確実に防ぐことができる。
よって、動力伝達系、特にギヤ機構29の形状を大きくした場合に、潤滑油61を円滑に循環させるために、ギヤ機構29に合わせてギヤ室68を大きく確保する必要がない。
【0098】
一方、サブ潤滑循環部36のオイル貯留室101は、ギヤケース38の利用不能な部位38aの中空部39(図3参照)を利用している。
よって、サブ潤滑循環部36を備えることでギヤケース38を大きくすることなく、駆動軸室55やギヤ室68の内部圧力を好適に保つことができる。
このように、ギヤケース38を大きくする必要がないので、船体14(図3参照)の滑走中に海水による抵抗が大きくなることを防ぐことができ、船外機10の能力(特に、滑走能力)を確保できる。
【0099】
さらに、動力伝達系、特にギヤ機構29の形状を大きくすることで、ギヤ機構29の剛性(強度)を高めることができる。
ギヤ機構29の剛性(強度)を高めることで動力伝達系の耐久性を高めることができる。
【0100】
なお、本発明に係る船外機は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、サブ潤滑循環部36に左右の補助案内通路111を備えた例について説明したが、これに限らないで、補助案内通路111の個数は任意に選択することができる。
【0101】
また、前記実施例では、潤滑手段34で潤滑する軸受としてテーパローラ軸受33を例示したが、これに限らないで、ボール軸受などの他の軸受を採用することも可能である。
【0102】
さらに、前記実施例で示した船外機10、エンジン23、クランク軸27、駆動軸28、ギヤ機構29、プロペラ軸31、テーパローラ軸受33、潤滑手段34、潤滑循環部35、サブ潤滑循環部36、ギヤケース38、駆動軸室55、ギヤ室68、供給通路81、案内凸部86、オイル貯留室101、補助案内通路111および補助戻し通路115などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、エンジンに連結された駆動軸が軸受を介して駆動軸室に回転自在に支持され、この駆動軸の回転をギヤ機構でプロペラ軸に伝達可能な船外機への適用に好適である。
【符号の説明】
【0104】
10…船外機、23…エンジン、27…クランク軸、28…駆動軸、29…ギヤ機構、31…プロペラ軸、33…テーパローラ軸受(軸受)、35…潤滑循環部(循環部)、36…サブ潤滑循環部、38…ギヤケース、38a…利用不能な部位、51…潤滑手段、55…駆動軸室、61…潤滑油、68…ギヤ室、68a…ギヤ室の前頂部、68c…入口部の奥側の部位、81…供給通路、81a…供給通路の入口部、86…案内凸部、101…オイル貯留室、111…左右の補助案内通路(案内通路)、115…左右の補助戻し通路(戻し通路)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのクランク軸に連結された駆動軸が軸受で駆動軸室に回転自在に支持され、前記駆動軸の回転をプロペラ軸に伝達可能なギヤ機構がギヤ室に収納された船外機において、
前記ギヤ機構の回転で前記ギヤ室の潤滑油を前記軸受に導き、前記軸受を潤滑した潤滑油を前記ギヤ室に戻す循環部と、
前記循環部に連通され、前記軸受を潤滑した潤滑油を受入可能なオイル貯留室と、
前記オイル貯留室を前記ギヤ室に連通する戻し通路と、を備え、
前記オイル貯留室に案内された前記潤滑油を前記戻し通路を経て前記ギヤ室に戻すことを特徴とする船外機。
【請求項2】
前記ギヤ室の潤滑油を前記軸受に導くために前記ギヤ室に入口部が開口された供給通路と、
前記供給通路の入口部の周囲のうち、前記ギヤ機構の回転方向に対して前記入口部の奥側の部位から前記ギヤ室に突出され、前記ギヤ室の潤滑油を前記入口部に案内可能な案内凸部と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の船外機。
【請求項3】
前記軸受を潤滑した潤滑油を前記オイル貯留室に案内するために、前記オイル貯留室および前記駆動軸室を連通する案内通路を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の船外機。
【請求項4】
前記駆動軸室および前記ギヤ室はギヤケースに設けられ、
前記ギヤケースのうち利用不能な部位に前記オイル貯留室が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の船外機。
【請求項1】
エンジンのクランク軸に連結された駆動軸が軸受で駆動軸室に回転自在に支持され、前記駆動軸の回転をプロペラ軸に伝達可能なギヤ機構がギヤ室に収納された船外機において、
前記ギヤ機構の回転で前記ギヤ室の潤滑油を前記軸受に導き、前記軸受を潤滑した潤滑油を前記ギヤ室に戻す循環部と、
前記循環部に連通され、前記軸受を潤滑した潤滑油を受入可能なオイル貯留室と、
前記オイル貯留室を前記ギヤ室に連通する戻し通路と、を備え、
前記オイル貯留室に案内された前記潤滑油を前記戻し通路を経て前記ギヤ室に戻すことを特徴とする船外機。
【請求項2】
前記ギヤ室の潤滑油を前記軸受に導くために前記ギヤ室に入口部が開口された供給通路と、
前記供給通路の入口部の周囲のうち、前記ギヤ機構の回転方向に対して前記入口部の奥側の部位から前記ギヤ室に突出され、前記ギヤ室の潤滑油を前記入口部に案内可能な案内凸部と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の船外機。
【請求項3】
前記軸受を潤滑した潤滑油を前記オイル貯留室に案内するために、前記オイル貯留室および前記駆動軸室を連通する案内通路を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の船外機。
【請求項4】
前記駆動軸室および前記ギヤ室はギヤケースに設けられ、
前記ギヤケースのうち利用不能な部位に前記オイル貯留室が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の船外機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−49372(P2013−49372A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189006(P2011−189006)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]