説明

船舶搭載用通信装置及びその方法

【課題】 安い通信費用により、効率よく船舶側から陸上側へデータを送信することが可能な船舶搭載用通信装置及びその方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 船舶に搭載され、船舶運行時における船舶の運行データを所定の送信先に対して送信する船舶搭載用通信装置であって、通信衛星を介して診断設備に運航データを送信する衛星通信装置と、陸上の基地局と通信を行って、陸上側に設置された通信装置に運航データを送信する携帯電話端末とを備え、船舶が携帯電話端末の通信エリアに位置している場合に、携帯電話端末により、運航データの少なくとも一部を所定の送信先へ送信する船舶搭載用通信装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の送信先、例えば、陸上側に設置された送信先に対して、船舶運行時における船舶の運行データを船舶側から送信する船舶搭載用通信装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶に搭載したディーゼル主機関については、安全且つ円滑な運航を図ることなどを目的として、長期間(例えば数十年)にわたり、ディーゼル主機関の各種性能データに基づく性能管理や、ディーゼル主機関の各種部品保守データに基づく部品保守管理を行う必要がある。
例えば、特開2002−221076号公報(特許文献1)には、このようなディーゼル主機関の性能データ等を逐次ディーゼル主機関メーカに送信して診断を行う診断システムが開示されている。
具体的には、特許文献1に開示されている発明では、ディーゼル主機関メーカの業務サーバと、船舶に搭載されたパソコンとをインマルサット(国際海事衛星機構)が運営する人工衛星により接続し、船舶側で収集したディーゼル主機関の性能データをディーゼル主機関メーカの業務サーバに送信している。
【特許文献1】特開2002−221076号公報(第3−7頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されている発明によれば、通信衛星を用いてデータ送信を行うため、いかなる海域であっても通信が可能であるという利点がある。
しかしながら、通信衛星を使用したデータ送信は、通信費が高いという問題があった。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、安い通信費用により、効率よく船舶側から陸上側へデータを送信することが可能な船舶搭載用通信装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、船舶に搭載され、船舶運行時における船舶の運行データを所定の送信先へ送信する船舶搭載用通信装置であって、通信衛星を介して前記診断設備に前記運航データを送信する衛星通信装置と、陸上の基地局と通信を行って、前記陸上側に設置された通信装置に前記運航データを送信する携帯電話端末とを備え、前記船舶が前記携帯電話端末の通信エリアに位置している場合に、前記携帯電話端末により、前記運航データの少なくとも一部を所定の送信先へ送信する船舶搭載用通信装置を提供する。
【0006】
本発明によれば、検出されたデータの一部を、通信費の安い携帯電話端末によって所定の送信先、例えば、陸上側に設置されている送信先に送信するため、通信費の低減が可能となる。
携帯電話端末としては市販の携帯電話を使用することができ、通信手段としてパーソナルコンピュータを利用し、所定のインタフェースによって携帯電話と接続することができる。そして前記パーソナルコンピュータに所定の自動化プログラムを実行させることが好ましい。
所定の送信先としては、例えば、陸上側に設置された送信先がある。この送信先としては、例えば、ディーゼル主機関の診断を行う造船メーカや、運行管理を行う運行管理会社などが挙げられる。
上記運航データは、例えば、ディーゼル主機関の性能データ、部品保守データなどが含まれる。携帯電話端末によって送信されるデータは、例えば、新造船時には、速力・馬力(馬力曲線=パワーカーブ)、燃費、エンジン回転数、プロペラピッチ角制御プログラムなどである。実運行時は、例えば、性能(速力・馬力)、燃費(燃料流量(l/h))、GPS(対地速度、船位置)、相対風向・風速、燃料消費量、燃料油温度、主機回転数、軸馬力、給油温度、船体運度、喫水、水深、海水温度、舵角、外的要因などである。外的要因としては、風向、風速、波浪、気温などを選択することができる。
好ましくは、ディーゼル主機関の性能データは、データロガーがあるものに対しては自動的に、ないものに対しては手動にて、衛星通信装置又は携帯電話端末から送信される。送信された運行データ、例えば、ディーゼル主機関の性能データは、造船メーカの通信手段において受信される。その後、例えば、この性能データに基づいて造船メーカの自動性能解析手段により性能解析が行われる。なお、この性能解析結果を造船メーカの通信手段から前記ネットワークを介して船舶及び運航管理会社の通信手段へと送信するようにしてもよい。
前記性能データは、例えば、主機関回転数、機関負荷、ロードインジケータ値、シリンダ出口温度、過給機入口温度、過給機出口温度、筒内最高圧、圧縮圧力、掃気圧及び過給機回転数のデータなどが含まれる。
また、好ましくは、船舶の通信手段からインマルサットまたは携帯電話端末を利用したネットワークを介して送信されるディーゼル主機関の部品保守データを、造船メーカの通信手段(陸上側の診断設備)において受信し、瞬時にこの部品保守データに基づいて造船メーカの自動部品保守解析部により部品保守解析を行い、この部品保守解析結果を造船メーカの通信装置から前記ネットワークを介して船舶及び運航管理会社の通信装置へと送信するようにしてもよい。
前記部品保守データには少なくとも排気弁、シリンダライナ及びピストンリングの保守データが含まれる。
また、前記部品保守解析結果としてトレンドグラフ、各部品の摩耗・焼損状況に応じたメーカ見解を示した状況・アドバイス表及び点検履歴チャートを出力するようにしてもよい。
【0007】
上記記載の船舶搭載用通信装置において、前記運航データのうち、遅延無く前記所定の送信先へ送る必要があるデータが、前記衛星通信装置により送信され、データ送信の遅延が許容されるデータが、前記携帯電話端末により送信されることが好ましい。
【0008】
携帯電話端末では通信エリアの限定や電波の状況等により送信できる機会が限られる。したがって、遅延なく送信することが必要となる特定のデータについては、確実に送信できるように、衛星通信装置を用いて送信し、他のデータは、携帯電話端末を利用して送信を行う。
【0009】
上記記載の船舶搭載用通信装置は、前記携帯電話端末の通信エリアが記録された記憶装置と、汎地球測位システム受信装置とを備え、前記通信エリアと前記汎地球測位システム受信装置によって検出された前記船舶の位置とに基づいて、前記船舶が前記携帯電話端末の通信エリアに位置しているか否かを判定することが好ましい。
【0010】
本発明によれば、汎地球測位システム(以下GPS;Global Positioning
Systemと呼ぶ。)受信装置により、船舶の航行位置を検出可能である。GPS受信装置により検出された位置を、予め記録された通信エリアの情報と照合することで、船舶が携帯電話端末の通信エリアに位置しているか否かを判定可能である。そして、船舶が携帯電話端末の通信エリアに位置している場合に、上述のデータ送信を行うことができる。
【0011】
上記記載の船舶搭載用通信装置において、前記船舶の航行データおよび時刻に基づいて、前記船舶が前記携帯電話端末の通信エリアに位置しているか否かを判定し、前記船舶が前記携帯電話端末の通信エリアに位置していると判定した場合に、前記運航データの少なくとも一部を前記携帯電話端末を用いて送信することが好ましい。
【0012】
航行データは、例えば、船舶の入港、出港時間のデータなどである。入港、出港時には沿岸に位置するため、船舶は携帯電話端末の通信エリアに入る。したがってこの時刻に合わせて携帯電話端末によるデータ送信を行うことができる。
【0013】
上記記載の船舶搭載用通信装置において、前記携帯電話端末による送信が中断した場合、未送信データリストを作成し、次回の携帯電話端末接続時に、前記未送信データリストを参照して、前記未送信のデータを送信することが好ましい。
【0014】
携帯電話端末の場合、船舶が通信エリアをはずれたり、電波状況が良好でない場合に通話が中断される場合がある。本発明においては、送信されなかったデータのリストが作成され、次回の接続時に送信が行われるから、データの送信漏れが防止され、データ送信を確実に行うことが可能となる。
【0015】
上記記載の船舶搭載用通信装置において、前記運航データは圧縮、暗号化されて送信されることが好ましい。
【0016】
本発明においては、データが圧縮されることで容量が小さくなり、通信時間の短縮が可能となるので、通信コストを更に下げることが可能となる。また暗号化することにより、データを安全に送信することが可能となる。
【0017】
本発明は、船舶運行時における船舶の運行データを所定の送信先に対して送信する船舶搭載用通信方法であって、船舶には、通信衛星を介して前記診断設備に前記運航データを送信する衛星通信装置と、陸上の基地局と通信を行って、前記陸上側に設置された通信装置に前記運航データを送信する携帯電話端末とが搭載されており、前記船舶が前記携帯電話端末の通信エリアに位置している場合に、前記携帯電話端末により、前記運航データの少なくとも一部を前記所定の送信先へ送信する船舶搭載用通信方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の船舶搭載用通信装置によれば、通信コストの安い携帯電話端末を利用してデータの一部を送信するので、通信コストを下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる船舶搭載用通信装置をディーゼル主機関診断システムに適用した場合の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る船舶搭載用通信装置を備えるディーゼル主機関診断システムの構成図、図2は本実施形態に係るディーゼル主機関診断システムにおけるデータの流れを示すフローチャートである。このディーゼル主機関診断システムは、船舶1、造船メーカ2、および運航管理会社3との間で相互にデータを送受信するシステムである。本実施形態に係る船舶搭載用通信装置は、船舶から造船メーカ2並びに運行管理会社3へのデータ送信を行うものである。
【0020】
船舶1の機関室1aには、船舶1に搭載したディーゼル主機関(図示せず)の各部に配設された各センサ5によって測定される性能データ(シリンダ出口温度のデータなど)を、自動的に記録(計測)するデータロガー6、データロガー6から送られてきた性能データをプリントアウトするプリンタ7、前記データをプリンタ7とブリッジ1bに設けられたパソコン8とに分岐して送信するデータ分岐装置9、及び、データロガー6から送られてきた性能データをパソコン8に送信する通信ポート10が設置されている。さらに符号11は船舶1の乗組員がディーゼル主機関の点検時などにディーゼル主機関の排気弁などの部品保守データをキーボードなどにより手入力し、また、自動計測されない一部の性能データ(筒内最高圧力や圧縮圧力などのデータ)を定期的に手入力するパソコンである。この手入力された部品保守データや一部の性能データも、パソコン11からパソコン8へ送信される。
【0021】
ブリッジ1bには、パソコン8、通信ポート12、記憶装置15などが備えられている。通信ポート12は、通信ポート10からデータを受信する。記憶装置15は、データロガー6やパソコン11から送信された性能データや部品保守データを蓄積する。
符号16は航行データ(入港、出港の時刻を示すデータ)が記録された記憶装置である。なお、これら記憶装置15、16はハードディスクとしてパソコン8に内蔵させることができる。
符号20はインマルサット通信装置(衛星通信装置)、符号21は携帯電話(携帯電話端末)である。インマルサット通信装置20はパソコン8に接続され、パソコン8から送られたデータをアンテナ20aを介してインマルサット衛星(通信衛星)50に送信する装置である。携帯電話21は所定のインタフェースを介してパソコン8と接続され、地上の基地局51に対して無線データ通信を行うことができる。なお、携帯電話21としては市販のものを用いることができる。
本実施形態に係る船舶搭載用通信装置23は、パソコン8、インマルサット通信装置20、及び携帯電話21を備えて構成されている。
【0022】
造船メーカ2は、インターネット60に接続された業務サーバ25を備える。業務サーバ25には主機関診断データベース(性能解析時の比較対象になる各性能データの初期値、各部品の使用限界値、異常の発生原因や対策などに関するデータを蓄積したデータベース)25aや、性能解析プログラム及び部品保守解析プログラムが備えられている。
運航管理会社3にはインターネット60に接続されたパソコン28を備える。
また符号53はインマルサット衛星50とデータを送受信してインターネット60に接続する衛星通信アンテナである。
【0023】
このように構成されたシステムにおいて、データロガー6は、船舶1に搭載したディーゼル主機関の各部に配設された各センサ5によって測定される性能データを、定期的に自動的に記録(計測)し、データ分岐装置9又は通信ポート10、12を介して、パソコン8へ送信する。プリンタ7は、データ分岐装置9から送信されてきた性能データをプリントアウトする。
パソコン11では、船舶1の乗組員がディーゼル主機関の点検時などにディーゼル主機関の排気弁などの部品保守データを、キーボードなどにより手入力し、また、自動計測されない一部の性能データも定期的に手入力する。パソコン11は、この手入力された部品保守データや一部の性能データをパソコン8へ送信する。
データロガー6やパソコン11からパソコン8へ送信された性能データや部品保守データは、記憶装置15に蓄積される。
【0024】
このようにして蓄積された性能データ、部品保守データは、造船メーカ2の業務サーバ25にパソコン8により以下のようにして自動送信される。以下に示した処理は、記憶装置15等に記憶された所定のプログラムにより自動処理される。
まず、これら蓄積されたデータは、
(A)遅延無く送るデータ
(B)データ送信の遅延が可能なデータ
とに分けられる。データ(B)としては、以下に示すデータを全体から予め選択する。例えば600チャンネルの中から60チャンネル程度選出する。
具体的には、例えば新造船時には速力・馬力(馬力曲線=パワーカーブ)、燃費、エンジン回転数、プロペラピッチ角制御プログラムなどである。実運行時は、性能(速力・馬力)、燃費(燃料流量(l/h))、GPS(対地速度、船位置)、相対風向・風速、燃料消費量。燃料油温度、主機回転数、軸馬力、給油温度、船体運度、喫水、水深、海水温度、舵角、外的要因として風向、風速、波浪、気温などである。
【0025】
データ(A)(上記以外の性能データ、部品保守データ)は以下のようにして送信される。データ(A)が定期的(例えば30分〜60分おき)にパソコン8からインマルサット通信装置20へ送信され、このインマルサット通信装置20からアンテナ20a、インマルサット衛星50、衛星通信アンテナ53、およびインターネット60を介して造船メーカ2の業務サーバ25において受信される。
【0026】
データ(B)は図3に示したように送信される。
送信処理は、フォアグラウンド処理である計測プログラム100とバックグラウンド処理である船陸通信時間管理プログラム200とに分けられる。計測プログラム100は計測処理101とファイル出力処理102を有し、上記のようにセンサ5によって検出が行われ、計測フォルダFaにデータファイルf1が作成される。このデータファイルf1は各検出データに対応して複数作成され、暗号化された状態で記憶装置15に記録される。また、データファイル名を列挙した列挙ファイルf2も同様に記憶装置15に記録される。
船陸通信時間管理プログラム200では、初期設定ファイルf3を読み込んで動作する。前記プログラムは、まず時間制御処理201が、予め決められた所定時刻となるまで次の処理を待つ。この時刻は、船舶1が沿岸近くに位置する時刻であり、船舶1が携帯電話の通信エリアに位置しているか否かを、記憶装置16の航行データ(入港、出港時刻)と現在時刻とを用いることで求める。入港、出港時であれば沿岸近くであり、携帯電話の通信エリアに位置していると考えられるからである。
所定時刻となると送信対象ファイル判断処理202により、列挙ファイルf2のコピーとして送信対象データ名割付ファイルf2’が作成される。そして次のコピー処理203において、計測フォルダFa内のデータファイルf1が圧縮格納フォルダFbにファイルf1’としてコピーされた上で復号化、圧縮処理が行われ、さらに圧縮されたデータが再暗号化される。
【0027】
次いで、メール用情報ファイル作成処理204にて初期設定ファイルf4を作成する。初期設定ファイルf4は送信対象データ名割付ファイルf2’に基づいて作成される。例えば、初期設定ファイルf4は割付ファイルf2’に列挙されているデータファイルf1’名を次の自動メールプログラム300に渡すものである。
そして、自動メールプログラム実行処理205にて自動メールプログラム300が実行される。自動メールプログラム300は処理301で初期設定ファイルf4を読み込み、接続・送信処理302にて携帯電話21を用いてダイアルアップ接続を行う。接続後、送信対象のデータを圧縮格納フォルダFbから読み込み、インターネット60を介して業務サーバ25に送信する。通信不可能であれば、定めた間隔でリトライを繰り返し、通信が確保できたらデータを送信する。
送信結果は送信実行ステータスファイルf5に記録される。例えば、送信実行ステータスファイルf5には、各データファイルf1’が送信成功したか否かが記録される。
送信実行ステータスファイルf5は、陸船通信時間管理プログラム200の判断処理206に送られ、ここで送信が成功したデータファイルf1’が圧縮格納フォルダFbから削除され、送信対象データ名割付ファイルf2’からデータ名が削除される。
例えば、通信エリア外に長く留まっていて接続できなかった場合や、天候等の影響でデータが送信できなかった場合、通話中にデータ転送が完了しなかった場合などは、自動的に未送信データリストとしての送信実行ステータスファイルf5が作成され、次回の送信時に、通話が確定したときにて順番に送信が行われる。
【0028】
このようにして船舶1から送信された各データは業務サーバ25によって受信され、業務サーバ25はこれらのデータに基づき、主機関診断データベースを用いて性能解析プログラムによりディーゼル主機関の性能解析・部品保守解析を行い、この解析結果を、インターネット60を介して、船舶1のパソコン8と運航管理会社3のパソコン28とへ送信する。
【0029】
具体的には、図2に示すように、業務サーバ25は、データロガー6からパソコン8を介して自動的に(途中で乗組員が介入せずに)送信される性能データや、パソコン11からパソコン8を介して手動で(乗組員の入力により)送信される性能データに基づき、性能解析プログラムにより自動的に異常検知処理を行うとともに性能トレンドグラフ、性能曲線及びリコメンドリストを作成し、これらを性能解析結果として顧客(船舶1の乗組員及び運航管理会社3の担当者)のパソコン8、28へ送信する。なお、異常検知は、それぞれの性能データにおける初期データとの差異を求め、この差異が所定値以上であるか否かを判断することにより行う。
【0030】
また、業務サーバ25は、パソコン11からパソコン8を介して手動で(乗組員の入力により)送信される部品保守データに基づき、部品保守解析プログラムにより自動的に寿命予測処理及び異常検知処理を行ってトレンドグラフ、状況・アドバイス表及び点検履歴チャートを作成し、これらを保守解析結果として顧客のパソコン8、28へ送信する。
【0031】
業務サーバ25から送信される性能トレンドグラフ、性能曲線、リコメンドリスト、トレンドグラフ、状況・アドバイス表及び点検履歴チャートは、顧客の要求により、パソコン8やパソコン28の画面に表示される。
これにより、顧客は、これらの性能トレンドグラフ、性能曲線、リコメンドリスト、トレンドグラフ、状況・アドバイス表及び点検履歴チャートを見て、ディーゼル主機関の性能を把握したり、ディーゼル主機関の部品の保守状況や交換時期などを把握したり、異常発生時の原因究明や対策の参考にすることができる。
【0032】
また、造船メーカ2の担当者においては、業務サーバ25から出力される性能トレンドグラフや性能曲線、リコメンドリスト、トレンドグラフ、状況・アドバイス表及び点検履歴チャートなど、業務サーバ25を介して得られるディーゼル主機関の各データを見て、更に詳細に異常発生原因の究明や対策案の検討などを行うこともできる。
この検討結果は、紙に記載したりフロッピー(登録商標)ディスクに記録したりして顧客へ送付し、或いはインターネット60を介して顧客のパソコン8、28へ送信する。
【0033】
以上のように、本実施形態によれば、データを部分的に携帯電話21によって、陸上側に設置されている送信先である造船メーカ2の業務サーバ25に送信することにより、インマルサットの使用を減らして通信コストを下げることができる。
また、携帯電話21の場合、船舶が通信エリアをはずれたり、電波状況が良好でない場合に通話が中断される場合があるが、送信されなかったデータのリストを作成することにより、次回の接続時に送信が行われる。したがってデータの送信を確実に行うことができる。
また、データが圧縮されることで容量が小さくなり、通信時間の短縮が可能となる。したがって通信コストをさらに下げることが可能となる。また暗号化することによりデータを安全に送信することが可能となる。
また通信手段として市販の携帯電話21を使用することで、機器の導入が非常に容易である。
さらにまた、パソコン8等の機器は従来と同じものを用いることができるため、取り扱いが容易である。
【0034】
上記の実施形態の変形例として、図4に示した構成としてもよい。
図において符号22は所定のインタフェースを介してパソコン8に接続されたGPS受信装置である。GPS受信装置22は、アンテナ22aを用いてGPS衛星52から送信される電波を受信し、これによって船舶1の現在位置を算出する。
記憶装置16には、予め携帯電話21の通信エリア情報(携帯電話が使用可能な海域を示した情報)を記録しておく。パソコン8はこの情報とGPS受信装置22によって算出された船舶1の位置データとに基づいて、船舶1の現在位置が携帯電話の通信エリア内であるか否かを判定する。
本変形例においては、図3の時間制御処理201に代えて、またはこれと併用して上記の判定を用いる。すなわち、船舶1が携帯電話の通信エリアに入っていると判定された場合に、処理202以降のデータ送信を行う。
このように構成することで、入港、出港の時刻に関わらず、携帯電話による通信の機会を広げることができる。
【0035】
なお、上記各実施形態において、携帯電話によって送信を行う場合とインマルサット衛星によって送信を行う場合とを併用してもよい。例えば携帯電話の通信エリア外に長く位置している場合には上記の各例において携帯電話で送るデータをインマルサット衛星50経由で送信するようにしてもよい。すなわち携帯電話の通信エリアに位置している場合には一部のデータを携帯電話で送信し、携帯電話の通信エリア外に長く位置している場合にはすべてのデータをインマルサットにより送信する。この場合はデータ送信の大きな遅延を防止することが可能である。
また、携帯電話端末としては、上記の各例において用いた携帯電話21のほか、データ通信カード等であってもよいのは言うまでもない。
また、上記実施形態においては、ディーゼル主機関に係る運行データを造船メーカ2や運行管理会社3へ送信する場合について述べたが、これに限らず、船舶の運行データを送信する送信先は、上記機関に限られない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態にかかるディーゼル主機関診断システムの構成図である。
【図2】前記ディーゼル主機関診断システムにおけるデータの流れを示すフローチャートである。
【図3】船陸通信プログラム処理の流れを示した概要図である。
【図4】ディーゼル主機関診断システムの変形例について示した構成図である。
【符号の説明】
【0037】
1 船舶
3 運航管理会社
5 センサ
6 データロガー
8 パソコン
9 データ分岐装置
7 プリンタ
10 通信ポート
11 パソコン
15 記憶装置
16 記憶装置
20 インマルサット通信装置(衛星通信装置)
22 GPS受信装置
23 船舶搭載用通信装置
25 業務サーバ(診断設備)
28 パソコン
52 GPS衛星
50 インマルサット衛星
60 インターネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に搭載され、船舶運行時における船舶の運行データを所定の送信先に対して送信する船舶搭載用通信装置であって、
通信衛星を介して前記診断設備に前記運航データを送信する衛星通信装置と、
陸上の基地局と通信を行って、前記陸上側に設置された通信装置に前記運航データを送信する携帯電話端末と
を備え、
前記船舶が前記携帯電話端末の通信エリアに位置している場合に、前記携帯電話端末により、前記運航データの少なくとも一部を前記送信先へ送信する船舶搭載用通信装置。
【請求項2】
前記運航データのうち、遅延無く前記送信先へ送る必要があるデータが、前記衛星通信装置により送信され、データ送信の遅延が許容されるデータが、前記携帯電話端末により送信される請求項1に記載の船舶搭載用通信装置。
【請求項3】
前記携帯電話端末の通信エリアが記録された記憶装置と、汎地球測位システム受信装置とを備え、
前記通信エリアと前記汎地球測位システム受信装置によって検出された前記船舶の位置とに基づいて、前記船舶が前記携帯電話端末の通信エリアに位置しているか否かを判定する請求項1または2に記載の船舶搭載用通信装置。
【請求項4】
前記船舶の航行データおよび時刻に基づいて、前記船舶が前記携帯電話端末の通信エリアに位置しているか否かを判定し、前記船舶が前記携帯電話端末の通信エリアに位置していると判定した場合に、前記運航データの少なくとも一部を前記携帯電話端末を用いて送信する請求項1から請求項3のいずれかの項に記載の船舶搭載用通信装置。
【請求項5】
前記携帯電話端末による送信が中断した場合、未送信データリストを作成し、次回の携帯電話端末接続時に、前記未送信データリストを参照して、前記未送信のデータを送信する請求項1から請求項4のいずれかの項に記載の船舶搭載用通信装置。
【請求項6】
前記運航データは圧縮、暗号化されて送信される請求項1から請求項5のいずれかの項に記載の船舶搭載用通信装置。
【請求項7】
船舶運行時における船舶の運行データを所定の送信先に対して送信する船舶搭載用通信方法であって、
船舶には、通信衛星を介して前記診断設備に前記運航データを送信する衛星通信装置と、陸上の基地局と通信を行って、前記陸上側に設置された通信装置に前記運航データを送信する携帯電話端末とが搭載されており、
前記船舶が前記携帯電話端末の通信エリアに位置している場合に、前記携帯電話端末により、前記運航データの少なくとも一部を前記送信先へ送信する船舶搭載用通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−148257(P2006−148257A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332342(P2004−332342)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】