色再現装置および色再現プログラム
【課題】モニタ装置に映像を表示する際に、被写体を観察照明光の下で観察する時の輝度値が再現されない。
【解決手段】絶対輝度変換部11は、被写体の映像信号、被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、映像を表示するモニタ装置を照射する観察照明光のスペクトルに基づいて求められた色変換信号を、観察照明光の輝度値と、撮影照明光の輝度値と、被写体を撮影した時の受光状態の情報とに基づいて、被写体を観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換する。
【解決手段】絶対輝度変換部11は、被写体の映像信号、被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、映像を表示するモニタ装置を照射する観察照明光のスペクトルに基づいて求められた色変換信号を、観察照明光の輝度値と、撮影照明光の輝度値と、被写体を撮影した時の受光状態の情報とに基づいて、被写体を観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正確な色再現処理を行う色再現装置および色再現プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力側デバイスで取り込まれた画像または表示されている画像を、出力側デバイスで出力または表示する場合において、入力側デバイスと出力側デバイスの画像の色の見えを同じにさせるための処理を行うシステムが知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の画像処理システムでは、入力側デバイスから出力される画像データをXYZデータに変換した後、入力側デバイスの視環境および出力側デバイスの視環境に応じた補正処理を行い、補正処理後のXYZデータをRGBデータに変換して、出力側デバイスで表示させている。
【特許文献1】特開2007−209025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の画像処理システムでは、入出力側デバイスの視環境の照明スペクトルに応じた補正処理を行うことはできるが、出力側デバイスの視環境の下に被写体を置いた状態で観察される被写体の輝度を出力側デバイスで再現することはできないという問題があった。
【0004】
本発明は、上述した課題を解決するための手段を提供することを目的としており、被写体を観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による色再現装置は、映像を表示するモニタ装置を照射する観察照明光の輝度値を検出する観察照明光輝度値検出手段と、撮影装置で被写体を撮影した時の撮影照明光の輝度値を記憶する撮影照明光輝度値記憶手段と、前記撮影装置で前記被写体を撮影した時の受光状態の情報を記憶する受光状態情報記憶手段と、前記被写体の映像信号、前記被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、前記観察照明光のスペクトルに基づいて求められた色変換信号を、前記観察照明光の輝度値、前記撮影照明光の輝度値、および、前記受光状態の情報に基づいて、前記被写体を前記観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換する輝度変換手段とを備えることにより、上記課題を解決する。
【0006】
また、本発明による色再現装置は、映像を表示するモニタ装置を照射する観察照明光の輝度値を検出する観察照明光輝度値検出手段と、撮影装置で被写体を撮影した時の撮影照明光の輝度値を記憶する撮影照明光輝度値記憶手段と、前記撮影装置で前記被写体を撮影した時の受光状態の情報を記憶する受光状態情報記憶手段と、前記被写体の映像信号、前記被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、前記観察照明光のスペクトルに基づいて求められた色変換信号を、前記観察照明光の輝度値、分光反射率が既知の色票を前記撮影装置で撮影した信号である色票信号、前記色票の分光反射率、前記撮影装置の分光特性、および、前記撮影照明光のスペクトルに基づいて、前記被写体を前記観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換する輝度変換手段とを備えることにより、上記課題を解決する。
【0007】
本発明による色再現プログラムは、映像を表示するモニタ装置を照射する観察照明光の輝度値を取得するステップと、撮影装置で被写体を撮影した時の撮影照明光の輝度値を取得するステップと、前記撮影装置で前記被写体を撮影した時の受光状態の情報を取得するステップと、前記被写体の映像信号、前記被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、前記観察照明光のスペクトルに基づいて求められた色変換信号を、前記観察照明光の輝度値、前記撮影照明光の輝度値、および、前記受光状態の情報に基づいて、前記被写体を前記観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換するステップとを備えることにより、上記課題を解決する。
【0008】
また、本発明による色再現プログラムは、映像を表示するモニタ装置を照射する観察照明光の輝度値を取得するステップと、撮影装置で被写体を撮影した時の撮影照明光の輝度値を取得するステップと、前記撮影装置で前記被写体を撮影した時の受光状態の情報を取得するステップと、前記被写体の映像信号、前記被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、前記観察照明光のスペクトルに基づいて求められた色変換信号を、前記観察照明光の輝度値、分光反射率が既知の色票を前記撮影装置で撮影した信号である色票信号、前記色票の分光反射率、前記撮影装置の分光特性、および、前記撮影照明光のスペクトルに基づいて、前記被写体を前記観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換するステップとを備えることにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0009】
本発明による色再現装置および色再現プログラムによれば、被写体を観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
−第1の実施の形態−
図1は、第1の実施の形態における色再現装置100の構成を示す図である。第1の実施の形態における色再現装置100は、照明状態検出部2と、マルチスペクトル画像データ記憶部3と、色再現特性データ記憶部4と、絶対輝度映像信号データ記憶部5と、色補正部6とを備える。映像表示用モニタ1は、例えばLCDやプラズマモニタであり、色再現装置100によって後述する色再現処理が行われた映像を表示する。なお、「映像」には、静止画像および動画像の両方が含まれる。
【0011】
照明状態検出部2は、映像表示用モニタ1を観察する環境を照明する観察照明光の情報である観察照明色情報を検出する。観察照明色情報には、観察照明光のスペクトルおよび輝度の情報が含まれる。
【0012】
マルチスペクトル画像データ記憶部3は、被写体のマルチスペクトル画像を記憶している。マルチスペクトル画像とは、分光感度特性の異なる多バンド(4バンド以上)の画像であり、例えば、マルチスペクトルカメラと称される多原色での撮影が可能なカメラによる撮影によって得られる。
【0013】
色再現特性データ記憶部4は、映像表示用モニタ1に映像を表示する際の色再現特性に関わる情報である色再現特性情報、および、撮影輝度情報を記憶している。色再現特性情報は、マルチスペクトル画像データ記憶部3に記憶されているマルチスペクトル画像が撮影された時の情報であり、撮影時の撮影照明光のスペクトルデータ、撮影装置の分光特性データ、撮影被写体の統計データ等が含まれる。撮影輝度情報には、マルチスペクトル画像が撮影された時の撮影照明光の輝度値、および、後述する受光状態係数が含まれる。
【0014】
絶対輝度映像信号データ記憶部5は、色補正部6によって色補正処理が行われた映像信号を記憶する。
【0015】
図2は、色補正部6の詳細な構成を示す図である。色補正部6は、スペクトルベース色変換処理部7と、照明状態補正部8とを備える。照明状態補正部8は、絶対輝度変換部11と、絶対輝度変換値算出部12と、表示信号変換部13とを備える。
【0016】
スペクトルベース色変換処理部7は、マルチスペクトル画像データ記憶部3に記憶されているマルチスペクトル画像に対して、色再現特性データ記憶部4に記憶されている色再現特性情報、および、照明状態検出部2によって検出される観察照明光のスペクトルに基づいた色変換処理を行って、例えば、XYZ表色系のXYZ値で表される色変換信号を求める。なお、XYZ値から算出することができるsRGB、AdobeRGB、YCCまたはxvYCC等の表色系の値を求めるようにしてもよい。
【0017】
スペクトルベース色変換処理部7によって行われる色変換処理は、既知の方法を用いて行うことができる。この色変換処理によって生成される色変換信号は、被写体を観察照明光の下で見た場合の色合いを再現したものであるが、撮影照明光および観察照明光の輝度情報は反映されていない。すなわち、被写体の絶対輝度の情報は反映されていないので、スペクトルベース色変換処理部7の色変換処理によって生成される色変換信号を、本明細書では、相対輝度映像信号と呼ぶ。従って、本明細書および特許請求の範囲において、「色変換信号」と「相対輝度映像信号」とは、同じ信号を表している。
【0018】
絶対輝度変換値算出部12は、被写体の絶対輝度の情報が反映されていない相対輝度映像信号を、被写体の絶対輝度の情報が反映された信号に変換する際に用いる絶対輝度変換値を算出する。絶対輝度変換値は、次式(1)にて表される。
絶対輝度変換値=b0/(bs×α) …(1)
ただし、式(1)において、b0は観察照明光の輝度値、bsは撮影照明光の輝度値、αは受光状態係数である。
【0019】
観察照明光の輝度値b0は、照明状態検出部2によって検出される。撮影照明光の輝度値bsは、色再現特性データ記憶部4に記憶されている撮影輝度情報に含まれている。
【0020】
受光状態係数αは、マルチスペクトル画像を撮影した時の撮影装置の絞り、シャッター速度、ISO感度の基準値に対する係数であり、「被写体を撮影した時の受光状態の情報」に対応する。すなわち、撮影装置の絞り、シャッター速度、ISO感度の基準値を予め定めておき、これらの基準値に対して、マルチスペクトル画像を撮影した時の絞り、シャッター速度、ISO感度の割合を求めて、係数αとして算出する。係数αは、マルチスペクトル画像の撮影後に、色再現装置100内の図示しない処理部で算出しておいて、色再現特性データ記憶部4に記憶させておく。なお、撮影装置の絞り、シャッター速度、ISO感度の基準値と、マルチスペクトル画像を撮影した時の絞り、シャッター速度、ISO感度のデータとを色再現特性データ記憶部4に記憶させておき、絶対輝度変換値算出部12で算出するようにしてもよい。
【0021】
絶対輝度変換部11は、スペクトルベース色変換処理部7で求められた相対輝度映像信号と、絶対輝度変換値算出部12で算出された絶対輝度変換値とを用いて、次式(2)より、絶対輝度映像信号を算出する。この絶対輝度映像信号は、例えば、XYZ表色系のXYZ値であり、Y値が再現する被写体の輝度値(cd/m2)に対応している。
絶対輝度映像信号=相対輝度映像信号×絶対輝度変換値 …(2)
【0022】
ここで、式(2)に式(1)を代入すると、絶対輝度映像信号は、次式(3)のように表すことができる。
絶対輝度映像信号=(相対輝度映像信号/α)×(b0/bs) …(3)
式(3)において、相対輝度映像信号を受光状態係数αで除算することにより、撮影装置による受光状態の影響が取り除かれ、さらに、観察照明光の輝度値b0と撮影照明光の輝度値bsとの比(b0/bs)を乗算することにより、被写体を観察照明光の下で観察する時の輝度が反映された絶対輝度映像信号を求めることができる。
【0023】
表示信号変換部13は、絶対輝度変換部11で求められた絶対輝度映像信号に対して、映像表示用モニタ1のモニタプロファイルに応じた色変換処理を行う。モニタプロファイルは、図示しない記憶装置に予め記憶させておいてもよいし、映像表示用モニタ1を色再現装置100と接続したときに、映像表示用モニタ1から取得するようにしてもよい。映像表示用モニタ1は、表示信号変換部13で色変換処理が行われた表示信号に応じた映像を表示する。
【0024】
以上、第1の実施の形態における色再現装置によれば、被写体の映像信号、被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、映像表示用モニタ1を照射する観察照明光のスペクトル情報に基づいて求められた色変換信号を、観察照明光の輝度値と、撮影照明光の輝度値と、被写体を撮影した時の受光状態の情報とに基づいて、被写体を観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換する。これにより、被写体を観察照明光の下で観察するときの色合いだけでなく、絶対輝度も反映した映像を映像表示用モニタ1に表示することができる。
【0025】
−第1の実施の形態の変形例−
別の方法により、絶対輝度変換値を算出する変形例について説明する。この変形例では、被写体を撮影する際に、色票も同時に撮影し、撮影した色票のデータを利用して、絶対輝度変換値を算出する。色票は、マクベスカラーチェッカーのような色度や分光反射率が既知のパッチからなる被写体である。なお、パッチは、少なくとも1つあればよい。
【0026】
なお、色票を被写体と同時に撮影せずに、被写体とは別に撮影するようにしてもよい。
【0027】
図3は、第1の実施の形態の変形例における絶対輝度変換値算出部12Aの構成を示す図である。絶対輝度変換値算出部12Aは、色票信号抽出部121と、撮影輝度補正係数算出部122と、変換値算出部123とを備える。
【0028】
色票信号抽出部121は、スペクトルベース色変換処理部7で求められた相対輝度映像信号から、色票が撮影されている部分の信号値である色票信号値を抽出する。色票信号値は、次式(4)にて表すことができる。
色票信号値=色票の基準信号値×撮影照明光の輝度値bs×受光状態係数α …(4)
【0029】
また、色票の基準信号値は、次式(5)にて表される。
色票の基準信号値=色票の分光反射率×撮影装置の分光特性×撮影照明光のスペクトル …(5)
【0030】
撮影輝度補正係数算出部122は、色票の分光反射率のデータを記憶しており、撮影装置の分光特性データおよび撮影照明光のスペクトルデータを用いて、式(5)より、色票の基準信号値を求める。撮影装置の分光特性データおよび撮影照明光のスペクトルデータは、色再現特性データ記憶部4に記憶されている色再現特性情報に含まれている。そして、色票信号抽出部121で抽出された色票信号値を、求めた色票の基準信号値で除算することにより、撮影輝度補正係数βを求める(次式(6)参照)。
撮影輝度補正係数β=色票信号値/色票の基準信号値
=撮影照明光の輝度値bs×受光状態係数α …(6)
【0031】
変換値算出部123は、次式(7)より、絶対輝度変換値を求める。
絶対輝度変換値=b0/β …(7)
【0032】
式(6)で表される撮影輝度補正係数βを式(7)に代入すれば分かるように、式(7)で表される絶対輝度変換値は、式(1)で表される絶対輝度変換値と等しい。
【0033】
−第2の実施の形態−
第1の実施の形態における色再現装置100では、観察照明光の下に被写体を置いた時の輝度を映像表示用モニタ1で再現するための処理を行った。しかし、実際には、映像表示用モニタ1で表示できる輝度範囲に限界があるため、被写体の輝度を正確に表示できない場合がある。
【0034】
図4(a)〜(d)は、映像表示用モニタ1に表示する映像の輝度分布の様々なパターンを示す図である。図4(a)に示すパターンでは、全ての映像表示位置において、表示する映像の輝度値が映像表示用モニタ1の最大輝度値Mより小さい。この場合には、被写体の絶対輝度をそのまま映像表示用モニタ1で表示することができる。なお、映像表示用モニタ1の最大輝度値Mとは、映像表示用モニタ1において表示可能な輝度値の上限値のことである。
【0035】
図4(b)に示すパターンでは、一部の表示位置において、表示する映像の輝度値が映像表示用モニタ1の最大輝度値Mを超えてしまっている。この場合、輝度値が映像表示用モニタ1の最大輝度値Mを超えている位置の輝度信号f(x)は、最大輝度値Mで飽和してしまう。この場合、表示する映像の輝度信号f(x)のうちの最大輝度値を検出して、この最大輝度値が映像表示用モニタ1の最大輝度値M以下になるように輝度調整を行うことが有効である。
【0036】
図4(c)は、輝度信号f(x)のうちの最大輝度値が映像表示用モニタ1の最大輝度値M以下になるように、従来の手法を用いて輝度調整を行った場合の輝度分布を示す図である。図4(c)において、実線は輝度調整を行う前の輝度分布を示し、点線は輝度調整を行った後の輝度分布を示している。上述したような輝度調整を行った場合、図4(c)の点線で示すように、表示すべき映像の輝度値が全体的に低下してしまうため、被写体の絶対輝度の表示を行うことができなくなる。
【0037】
従って、第2の実施の形態における色再現装置100Bでは、映像表示用モニタ1の表示可能な輝度範囲内で、第1の補正輝度しきい値L1および第2の補正輝度しきい値L2(L2<L1)をそれぞれ設け、輝度信号f(x)のうち、第1の補正輝度しきい値L1より大きい輝度値、および、第2の補正輝度しきい値L2より小さい輝度値に対して、輝度調整を行うようにする。図4(d)では、輝度調整を行う前の輝度分布を実線で、第2の実施の形態における色再現装置100Bによって輝度調整を行った後の輝度分布を点線でそれぞれ示している。
【0038】
なお、図4(d)に示す例では、輝度信号f(x)において、第2の補正輝度しきい値L2より小さい輝度値は存在しないため、第1の補正輝度しきい値L1より大きい輝度値に対してのみ、輝度調整が行われている。
【0039】
図5は、第2の実施の形態における色再現装置100Bの色補正部6Bの構成を示す図である。図2に示す色補正部6と同じ構成要素については、同一の符号を伏して、詳しい説明は省略する。
【0040】
色補正部6Bは、スペクトルベース色変換処理部7と、照明状態補正部8Bとを備える。照明状態補正部8Bは、絶対輝度変換部11と、絶対輝度変換値算出部12と、表示信号変換部13と、輝度調整部41と、輝度調整値算出部42とを備える。
【0041】
輝度調整値算出部42は、絶対輝度変換部11によって求められた絶対輝度映像信号と、映像表示用モニタ1の最大輝度値Mとに基づいて、輝度調整後の輝度値を求めるための変換テーブルデータを作成する。
【0042】
図6は、被写体の輝度範囲が映像表示用モニタ1の表示可能な輝度範囲よりも広い場合において、輝度調整前の輝度範囲と、輝度調整後の輝度範囲との関係を示す図である。上述したように、第1の補正輝度しきい値L1および第2の補正輝度しきい値L2を設け、第1の補正輝度しきい値L1より大きい輝度値、および、第2の補正輝度しきい値L2より小さい輝度値に対して輝度調整を行う。すなわち、第1の補正輝度しきい値L1より大きい輝度値は、映像表示用モニタ1の最大輝度値M以下になるように、輝度値を低下させる処理を行い、第2の補正輝度しきい値L2より小さい輝度値は、輝度値を増大させる処理を行う。
【0043】
第1の補正輝度しきい値L1は、映像表示用モニタ1の最大輝度値Mに応じた適切な値を設定する。例えば、映像表示用モニタ1の最大輝度値Mから所定の値を減算した値を第1の補正輝度しきい値L1としたり、最大輝度値Mに所定の係数を乗算した値を第1の補正輝度しきい値L1とすることができる。また、第2の補正輝度しきい値L2としては、予め適切な値を設定しておくことができる。
【0044】
図7は、輝度調整前の輝度値と輝度調整後の輝度値との対応関係を示す図である。輝度調整前の輝度値を横軸に、輝度調整後の輝度値を縦軸に取っている。上述したように、第1の補正輝度しきい値L1よりも大きい輝度値は、その輝度値よりも小さい輝度値に変換され、第2の補正輝度しきい値L2より小さい輝度値は、その輝度値よりも大きい輝度値に変換される。第2の補正輝度しきい値L2以上、かつ、第1の補正輝度しきい値L1以下の輝度値は、輝度調整後も同じ輝度値となる。
【0045】
輝度調整値算出部42は、図7に示すような、輝度調整を行う前の輝度値を入力値とし、輝度調整後の輝度値を出力値とするような変換テーブルデータを作成する。
【0046】
なお、輝度調整値算出部42は、上述した変換テーブルデータを作成する代わりに、輝度調整を行う前の輝度値を輝度調整後の輝度値に変換するための変換係数を作成することもできる。この場合、輝度調整を行う前の輝度値が第2の補正輝度しきい値L2より小さい場合の変換係数は、1より大きい値となり、輝度調整を行う前の輝度値が第1の補正輝度しきい値L1より大きい場合の変換係数は、1より小さい値となる。また、輝度調整を行う前の輝度値が第2の補正輝度しきい値L2以上、かつ、第1の補正輝度しきい値L1以下の場合の変換係数は1となる。
【0047】
輝度調整部41は、輝度調整値算出部42によって作成された変換テーブルデータと、絶対輝度変換部11によって求められた絶対輝度映像信号とに基づいて、輝度調整後の絶対輝度映像信号を求める。輝度調整後の絶対輝度映像信号は、表示信号変換部13に入力される。
【0048】
以上、第2の実施の形態における色再現装置によれば、絶対輝度変換部11で変換された絶対輝度映像信号の輝度値が映像表示用モニタ1の表示可能な最大輝度値を超える場合に、第1の補正輝度しきい値L1を超える輝度値に対して、映像表示用モニタ1の表示可能な最大輝度値以下とするための調整処理を行う。これにより、表示映像の輝度値が飽和する白とびの状態を回避しつつ、被写体の主要な部分の絶対輝度を表示することができる。
【0049】
また、絶対輝度変換部11で変換された絶対輝度映像信号の輝度値が第2の補正輝度しきい値L2を下回る場合に、第2の補正輝度しきい値L2より低い輝度値を増大させる処理を行うので、被写体の主要な部分の絶対輝度を表示しつつ、黒つぶれの状態を防ぐことができる。
【0050】
−第3の実施の形態−
第1および第2の実施の形態における色再現装置では、観察照明光の下に被写体を置いた時の輝度を再現するための処理を行った。しかし、映像表示用モニタ1は、観察照明光によって、表示画面全体を一様に照射されていることは少なく、一般には照明ムラが存在する。第3の実施の形態における色再現装置では、映像表示用モニタ1の照明ムラを検出し、検出した照明ムラに基づいて、表示する映像データの輝度を補正する。
【0051】
図8は、第3の実施の形態における色再現装置100Cの構成を示す図である。図1に示す第1の実施の形態における色再現装置100と同じ構成要素については、同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。第3の実施の形態における色再現装置100Cは、第1の実施の形態における色再現装置100の構成に対して、カメラ51および照明分布演算部52をさらに備えている。
【0052】
カメラ51は、映像表示用モニタ1の照明ムラを検出するために、映像表示用モニタ1よりも広い領域を撮影する。図9は、カメラ51による撮影領域を示す図である。映像表示用モニタ1は、壁77に掛けられているものとして説明する。上述したように、カメラ51は、映像表示用モニタ1よりも広い領域72を撮影する。
【0053】
なお、図9に示す例では、照明状態検出部である照明センサ2は、映像表示用モニタ1の上部に設置されている。
【0054】
照明分布演算部52は、カメラ51により撮影された映像に基づいて、映像表示用モニタ1の映像表示エリア70の照明輝度分布を求める。照明輝度分布を求める方法を、図9を用いて以下で説明する。
【0055】
カメラ51により撮影された映像のうち、映像表示用モニタ1の映像表示エリア70の近傍に、複数の照明輝度分布検出エリアを設定しておく。図9に示す例では、映像表示エリア70の外側の外枠71の四隅に、4つの照明輝度分布検出エリア73〜76を設定している。
【0056】
照明分布演算部52は、カメラ51により撮像された映像に基づいて、照明輝度分布検出エリア73〜76の輝度L73、L74、L75、L76を求め、求めた輝度に基づいて、映像表示エリア70全体の輝度分布を求める。求めた輝度分布の情報は、色補正部6Cの照明状態補正部8Cに送られる。
【0057】
なお、外枠71の照明輝度分布検出エリア73〜76の位置に、予め輝度検出用のマーカーを組み込むようにしておいてもよい。この場合には、映像表示エリア70の照明輝度分布を精度良く検出することができる。また、照明輝度分布検出エリアを4箇所ではなく、より多くの位置に設定すれば、映像表示エリア70の照明輝度分布をより精度良く検出することができる。
【0058】
図10は、色補正部6Cの構成を示す図である。色補正部6Cは、スペクトルベース色変換処理部7と、照明状態補正部8Cとを備える。照明状態補正部8Cは、絶対輝度変換部11と、絶対輝度変換値算出部12と、表示信号変換部13と、輝度ムラ補正係数算出部61と、照明ムラ補正部62とを備える。
【0059】
輝度ムラ補正係数算出部61は、照明分布演算部52で求められた照明輝度分布の情報に基づいて、映像表示用モニタ1の各画素位置(x、y)における輝度補正係数C(x、y)を算出する。画素位置(x、y)は、例えば、映像表示エリア70の左下を原点(0、0)とし、水平方向をx軸、垂直方向をy軸とした時の各画素の位置座標である。
【0060】
図11は、輝度ムラ補正係数算出部61によって算出される輝度補正係数C(x、y)を模式的に示した図である。輝度L73、L74、L75、L76を含む面80が輝度補正係数C(x,y)を模式的に表している。
【0061】
図9に示すように、映像表示用モニタ1の左上に照明装置78が設けられている場合には、照明輝度分布検出エリア73の輝度L73の値は大きく、照明輝度分布検出エリア76の輝度L76の値は小さい。従って、図11の面80で示すように、映像表示エリア70の輝度分布に応じた輝度値を再現するための輝度補正係数C(x、y)を算出する。具体的には、照明分布演算部52で求められる照明輝度分布に基づいて、図11に示す面80を表す式を求めることによって、輝度補正係数C(x、y)を算出する。面80は、平面式で近似してもよいし、高次の曲面式で表示してもよい。
【0062】
照明ムラ補正部62は、絶対輝度変換部11で求められた絶対輝度映像信号のうち、映像表示エリア70の表示位置(x、y)の輝度値に、輝度ムラ補正係数算出部61で求められた輝度補正係数C(x、y)を乗算することにより、補正後の輝度値を求める。補正後の輝度値を含む映像信号は、表示信号変換部13に送られる。
【0063】
図12(a)は、映像表示用モニタ1の左上に照明装置78が設けられている場合に、映像表示用モニタ1の映像表示エリア70に照明ムラが生じている状態を示す図、図12(b)は、照明ムラに応じた輝度補正が行われる前の映像を示す図、図12(c)は、第3の実施の形態における色再現装置によって、照明ムラに応じた輝度補正が行われた後の映像を示す図である。図12(c)に示すように、照明ムラに応じた輝度補正を行うことにより、観察照明光の下に被写体を置いた時の輝度分布をも再現することができる。
【0064】
第3の実施の形態における色再現装置によれば、画像表示用モニタ1に照射される観察照明光の照明ムラを検出し、絶対輝度変換部11によって絶対輝度映像信号に変換された輝度値に対して、検出した照明ムラに応じた補正を行う。これにより、被写体を画像表示用モニタ1の位置に置いた時の輝度だけでなく、照明ムラも忠実に再現した映像表示を行うことができる。
【0065】
映像表示用モニタ1の映像表示エリア70の照明輝度分布を検出する変形例を以下で説明する。
【0066】
−第3の実施の形態の変形例1−
図13は、映像表示用モニタ1の映像表示エリア70の照明輝度分布を検出する変形構成例を説明するための図である。この変形例における色再現装置は、カメラ51の代わりに、照明センサ91〜94を備えている。
【0067】
照明センサ91〜94は、図9を用いて説明した照明ムラ検出エリア73〜76に対応する位置の輝度を直接計測するためのセンサである。これらの照明センサ91〜94は、外枠71の中に組み込まれているのが好ましい。照明センサ91〜94でそれぞれ検出された輝度は、照明分布演算部52に送られる。照明分布演算部52、輝度ムラ補正係数算出部61、輝度ムラ補正部62で行われる処理は、図10に示す構成の場合と同じである。
【0068】
なお、照明センサ91〜94は、照明のスペクトルを検出する必要はなく、輝度のみを検出できればよいので、照明センサ2に対して、小型・安価なものを用いることができる。ただし、照明センサ91〜94として、照明センサ2と同様に、照明スペクトルを検出できるものを用いてもよいのは当然のことであり、この場合には、輝度ムラだけでなく、色ムラも検出することができる。また、輝度を検出するための照明センサは4つに限られず、より多くの照明センサを設けるようにしてもよい。
【0069】
−第3の実施の形態の変形例2−
映像表示用モニタ1の映像表示エリア70の照明輝度分布の検出を、ラインセンサを用いて行うこともできる。図14は、ラインセンサ型照明センサ140を用いて、映像表示用モニタ1の映像表示エリア70の照明輝度分布の照明ムラを検出する例を示す図である。ラインセンサ型照明センサ140は、少なくともラインセンサ142(図15参照)を備え、映像表示用モニタ1に対して、ガイドレール141に沿って図の矢印に示す方向に移動することにより、映像表示用モニタ1の映像表示エリア全体の輝度を測定する。映像表示用モニタ1の映像表示エリア全体の輝度を測定することにより、4つの照明ムラ検出エリア73〜76の輝度を求める場合に比べて、補正係数C(x,y)の算出精度を向上させることができる。
【0070】
このラインセンサ型照明センサ140は、ラインセンサ142の測定方向を反転させるための検出位置変更部143、センサの指向性を変更するための指向性変更部144、ラインセンサ142をガイドレール141に沿って移動させるための検出位置移動部145を備えている(図15参照)。検出位置変更部143によって、ラインセンサ142の測定方向を反転させることにより、照明ムラだけでなく、映像表示用モニタ1のプロファイルも測定することができる。
【0071】
図15(a)は、映像表示用モニタ1のプロファイルを検出する際のラインセンサ142の向きを、図15(b)は、照明ムラを検出する際のラインセンサ142の向きをそれぞれ示している。ラインセンサ142は、映像表示用モニタ1のプロファイルを検出する場合には、図15(a)に示すように、映像表示用モニタ1からの光を受光するが、照明ムラを検出する場合には、図15(b)に示すように、映像表示用モニタ1を照射する観察照明光からの光を受光する。
【0072】
なお、映像表示用モニタ1のプロファイルを検出する場合には、ラインセンサ142の指向性を縮小した方が検出精度が向上する。従って、指向性変更部144は、映像表示用モニタ1のプロファイルを検出する場合には、照明ムラを検出する場合に比べて、ラインセンサ142の指向性を縮小させる。
【0073】
なお、ラインセンサ型照明センサ140は、通常は外枠71の中に収納されており、照明ムラの検出の時だけ、外枠71の中から出てくる構造とすることが、外見的には好ましい。
【0074】
本発明は、上述した第1〜第3の実施の形態に限定されることはない。例えば、第2の実施の形態では、絶対輝度変換部11で変換された絶対輝度映像信号の輝度値が映像表示用モニタ1の表示可能な最大輝度値を超える場合に、第1の補正輝度しきい値L1を超える輝度値に対して、映像表示用モニタ1の表示可能な最大輝度値以下とするための調整処理を行った。この処理を第3の実施の形態における色再現装置に適用することもできる。
【0075】
図16は、図10に示す第3の実施の形態における色補正部6Cの照明状態補正部8Cの構成に対して、輝度調整部41および輝度調整値算出部42を追加した色補正部6Dの構成を示す図である。この構成によれば、第2の実施の形態における色再現装置100Bと同様に、絶対輝度変換部11で変換された絶対輝度映像信号の輝度値が映像表示用モニタ1の表示可能な最大輝度値を超える場合に、第1の補正輝度しきい値L1を超える輝度値に対して、映像表示用モニタ1の表示可能な最大輝度値以下とするための調整処理を行うことができる。これにより、表示映像の輝度値が飽和する白とびの状態を回避しつつ、被写体の主要な部分の絶対輝度を表示することができる。
【0076】
また、図16に示す構成において、絶対輝度変換部11で変換された絶対輝度映像信号の輝度値が第2の補正輝度しきい値L2を下回る場合に、第2の補正輝度しきい値L2より低い輝度値を増大させる処理を行うこともできる。この場合には、被写体の主要な部分の絶対輝度を表示しつつ、黒つぶれの状態を防ぐことができる。
【0077】
第1〜第3の実施の形態において、照明状態検出部2による観察照明光の検出を適当な時間間隔、例えば5分ごとに行い、そのたびに、色補正部6、6B、6C、6Dで上述した処理を行うようにしてもよい。この方法によれば、最新の観察照明光に応じた映像表示を行うことができる。
【0078】
映像表示用モニタ1は、RGB3原色のモニタであってもよいし、4原色以上の多原色モニタであってもよい。
【0079】
なお、上述した説明では、色再現装置100が行う処理としてハードウェアによる処理を前提としていたが、このような構成に限定される必要はない。例えば、別途ソフトウェアにて処理する構成も可能である。この場合、色再現装置100は、CPU、RAM等の主記憶装置、上記処理の全て或いは一部を実現させるためのプログラムが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を備えている。ここでは、このプログラムを色再現プログラムと呼ぶ。そして、CPUが上記記憶媒体に記憶されている色再現プログラムを読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、上述の色再現装置100と同様の処理を実現させる。
【0080】
ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、この色再現プログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該色再現プログラムを実行するようにしても良い。
【0081】
以下、第1の実施の形態において、CPUが色再現プログラムを実行することにより実現される処理の処理手順について図17を参照して説明する。なお、第2、第3の実施の形態においても同様に、ソフトウェアにて処理することが可能である。
【0082】
まず、図17のステップS1において、マルチスペクトル画像データ記憶部3から、マルチスペクトル画像を読み出す。ステップS2では、読み出したマルチスペクトル画像に対して、被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報および観察照明光のスペクトルに基づいて、所定の色変換処理を行うことにより、色変換信号を求める。ステップS3では、照明状態検出部2によって検出される観察照明光の輝度値を取得する。
【0083】
ステップS4では、色再現特性データ記憶部4から、撮影照明光の輝度値を取得する。ステップS5では、色再現特性データ記憶部4から、被写体撮影時の受光状態の情報(受光状態係数α)を取得する。ステップS6では、ステップS2で求めた色変換信号を、観察照明光の輝度値、撮影照明光の輝度値、および、受光状態の情報に基づいて、被写体を観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した絶対輝度映像信号に変換して、本処理を終了する。
【0084】
なお、図17のステップS6では、第1の実施の形態の変形例として説明した変換処理を行うこともできる。すなわち、ステップS2で求めた色変換信号を、観察照明光の輝度値、分光反射率が既知の色票を撮影装置で撮影した色票信号、色票の分光反射率、撮影装置の分光特性、および、撮影照明光のスペクトルに基づいて、絶対輝度映像信号に変換する処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】第1の実施の形態における色再現装置の構成を示す図
【図2】色補正部の詳細な構成を示す図
【図3】第1の実施の形態の変形例における絶対輝度変換値算出部の構成を示す図
【図4】図4(a)〜(d)は、映像表示用モニタに表示する映像の輝度分布の様々なパターンを示す図
【図5】第2の実施の形態における色再現装置の色補正部の構成を示す図
【図6】輝度調整前の輝度範囲と、輝度調整後の輝度範囲との関係を示す図
【図7】輝度調整前の輝度値と輝度調整後の輝度値との対応関係を示す図
【図8】第3の実施の形態における色再現装置の構成を示す図
【図9】カメラによる撮影領域を示す図
【図10】第3の実施の形態における色補正部の構成を示す図
【図11】輝度ムラ補正係数算出部によって算出される輝度補正係数C(x、y)を模式的に示した図
【図12】図12(a)は、映像表示用モニタの左上に照明装置が設けられている場合に、映像表示用モニタの映像表示エリアに照明ムラが生じている状態を示す図、図12(b)は、照明ムラに応じた輝度補正が行われる前の映像を示す図、図12(c)は、第3の実施の形態における色再現装置によって、照明ムラに応じた輝度補正が行われた後の映像を示す図
【図13】映像表示用モニタの映像表示エリアの照明輝度分布を検出する変形構成例を説明するための図
【図14】ラインセンサ型照明センサを用いて、映像表示用モニタの映像表示エリアの照明輝度分布の照明ムラを検出する例を示す図
【図15】図15(a)は、映像表示用モニタの色再現特性を検出する際のラインセンサの向きを示す図、図15(b)は、照明ムラを検出する際のラインセンサの向きを示す図
【図16】図10に示す第3の実施の形態における色補正部の照明状態補正部の構成に対して、輝度調整部および輝度調整値算出部を追加した色補正部の構成を示す図
【図17】CPUが色再現プログラムを実行することにより実現される処理の処理手順を示すフローチャート
【符号の説明】
【0086】
1…映像表示用モニタ
2…照明状態検出部
3…マルチスペクトル画像データ記憶部
4…色再現特性データ記憶部
6、6B、6C、6D…色補正部
7…スペクトルベース色変換処理部
8、8B、8C、8D…照明状態補正部
11…絶対輝度変換部
12、12A…絶対輝度変換値算出部
41…輝度調整部
42…輝度調整値算出部
51…カメラ
52…照明分布演算部
61…輝度ムラ補正係数算出部
62…照明ムラ補正部
【技術分野】
【0001】
本発明は、正確な色再現処理を行う色再現装置および色再現プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力側デバイスで取り込まれた画像または表示されている画像を、出力側デバイスで出力または表示する場合において、入力側デバイスと出力側デバイスの画像の色の見えを同じにさせるための処理を行うシステムが知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の画像処理システムでは、入力側デバイスから出力される画像データをXYZデータに変換した後、入力側デバイスの視環境および出力側デバイスの視環境に応じた補正処理を行い、補正処理後のXYZデータをRGBデータに変換して、出力側デバイスで表示させている。
【特許文献1】特開2007−209025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の画像処理システムでは、入出力側デバイスの視環境の照明スペクトルに応じた補正処理を行うことはできるが、出力側デバイスの視環境の下に被写体を置いた状態で観察される被写体の輝度を出力側デバイスで再現することはできないという問題があった。
【0004】
本発明は、上述した課題を解決するための手段を提供することを目的としており、被写体を観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による色再現装置は、映像を表示するモニタ装置を照射する観察照明光の輝度値を検出する観察照明光輝度値検出手段と、撮影装置で被写体を撮影した時の撮影照明光の輝度値を記憶する撮影照明光輝度値記憶手段と、前記撮影装置で前記被写体を撮影した時の受光状態の情報を記憶する受光状態情報記憶手段と、前記被写体の映像信号、前記被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、前記観察照明光のスペクトルに基づいて求められた色変換信号を、前記観察照明光の輝度値、前記撮影照明光の輝度値、および、前記受光状態の情報に基づいて、前記被写体を前記観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換する輝度変換手段とを備えることにより、上記課題を解決する。
【0006】
また、本発明による色再現装置は、映像を表示するモニタ装置を照射する観察照明光の輝度値を検出する観察照明光輝度値検出手段と、撮影装置で被写体を撮影した時の撮影照明光の輝度値を記憶する撮影照明光輝度値記憶手段と、前記撮影装置で前記被写体を撮影した時の受光状態の情報を記憶する受光状態情報記憶手段と、前記被写体の映像信号、前記被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、前記観察照明光のスペクトルに基づいて求められた色変換信号を、前記観察照明光の輝度値、分光反射率が既知の色票を前記撮影装置で撮影した信号である色票信号、前記色票の分光反射率、前記撮影装置の分光特性、および、前記撮影照明光のスペクトルに基づいて、前記被写体を前記観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換する輝度変換手段とを備えることにより、上記課題を解決する。
【0007】
本発明による色再現プログラムは、映像を表示するモニタ装置を照射する観察照明光の輝度値を取得するステップと、撮影装置で被写体を撮影した時の撮影照明光の輝度値を取得するステップと、前記撮影装置で前記被写体を撮影した時の受光状態の情報を取得するステップと、前記被写体の映像信号、前記被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、前記観察照明光のスペクトルに基づいて求められた色変換信号を、前記観察照明光の輝度値、前記撮影照明光の輝度値、および、前記受光状態の情報に基づいて、前記被写体を前記観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換するステップとを備えることにより、上記課題を解決する。
【0008】
また、本発明による色再現プログラムは、映像を表示するモニタ装置を照射する観察照明光の輝度値を取得するステップと、撮影装置で被写体を撮影した時の撮影照明光の輝度値を取得するステップと、前記撮影装置で前記被写体を撮影した時の受光状態の情報を取得するステップと、前記被写体の映像信号、前記被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、前記観察照明光のスペクトルに基づいて求められた色変換信号を、前記観察照明光の輝度値、分光反射率が既知の色票を前記撮影装置で撮影した信号である色票信号、前記色票の分光反射率、前記撮影装置の分光特性、および、前記撮影照明光のスペクトルに基づいて、前記被写体を前記観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換するステップとを備えることにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0009】
本発明による色再現装置および色再現プログラムによれば、被写体を観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
−第1の実施の形態−
図1は、第1の実施の形態における色再現装置100の構成を示す図である。第1の実施の形態における色再現装置100は、照明状態検出部2と、マルチスペクトル画像データ記憶部3と、色再現特性データ記憶部4と、絶対輝度映像信号データ記憶部5と、色補正部6とを備える。映像表示用モニタ1は、例えばLCDやプラズマモニタであり、色再現装置100によって後述する色再現処理が行われた映像を表示する。なお、「映像」には、静止画像および動画像の両方が含まれる。
【0011】
照明状態検出部2は、映像表示用モニタ1を観察する環境を照明する観察照明光の情報である観察照明色情報を検出する。観察照明色情報には、観察照明光のスペクトルおよび輝度の情報が含まれる。
【0012】
マルチスペクトル画像データ記憶部3は、被写体のマルチスペクトル画像を記憶している。マルチスペクトル画像とは、分光感度特性の異なる多バンド(4バンド以上)の画像であり、例えば、マルチスペクトルカメラと称される多原色での撮影が可能なカメラによる撮影によって得られる。
【0013】
色再現特性データ記憶部4は、映像表示用モニタ1に映像を表示する際の色再現特性に関わる情報である色再現特性情報、および、撮影輝度情報を記憶している。色再現特性情報は、マルチスペクトル画像データ記憶部3に記憶されているマルチスペクトル画像が撮影された時の情報であり、撮影時の撮影照明光のスペクトルデータ、撮影装置の分光特性データ、撮影被写体の統計データ等が含まれる。撮影輝度情報には、マルチスペクトル画像が撮影された時の撮影照明光の輝度値、および、後述する受光状態係数が含まれる。
【0014】
絶対輝度映像信号データ記憶部5は、色補正部6によって色補正処理が行われた映像信号を記憶する。
【0015】
図2は、色補正部6の詳細な構成を示す図である。色補正部6は、スペクトルベース色変換処理部7と、照明状態補正部8とを備える。照明状態補正部8は、絶対輝度変換部11と、絶対輝度変換値算出部12と、表示信号変換部13とを備える。
【0016】
スペクトルベース色変換処理部7は、マルチスペクトル画像データ記憶部3に記憶されているマルチスペクトル画像に対して、色再現特性データ記憶部4に記憶されている色再現特性情報、および、照明状態検出部2によって検出される観察照明光のスペクトルに基づいた色変換処理を行って、例えば、XYZ表色系のXYZ値で表される色変換信号を求める。なお、XYZ値から算出することができるsRGB、AdobeRGB、YCCまたはxvYCC等の表色系の値を求めるようにしてもよい。
【0017】
スペクトルベース色変換処理部7によって行われる色変換処理は、既知の方法を用いて行うことができる。この色変換処理によって生成される色変換信号は、被写体を観察照明光の下で見た場合の色合いを再現したものであるが、撮影照明光および観察照明光の輝度情報は反映されていない。すなわち、被写体の絶対輝度の情報は反映されていないので、スペクトルベース色変換処理部7の色変換処理によって生成される色変換信号を、本明細書では、相対輝度映像信号と呼ぶ。従って、本明細書および特許請求の範囲において、「色変換信号」と「相対輝度映像信号」とは、同じ信号を表している。
【0018】
絶対輝度変換値算出部12は、被写体の絶対輝度の情報が反映されていない相対輝度映像信号を、被写体の絶対輝度の情報が反映された信号に変換する際に用いる絶対輝度変換値を算出する。絶対輝度変換値は、次式(1)にて表される。
絶対輝度変換値=b0/(bs×α) …(1)
ただし、式(1)において、b0は観察照明光の輝度値、bsは撮影照明光の輝度値、αは受光状態係数である。
【0019】
観察照明光の輝度値b0は、照明状態検出部2によって検出される。撮影照明光の輝度値bsは、色再現特性データ記憶部4に記憶されている撮影輝度情報に含まれている。
【0020】
受光状態係数αは、マルチスペクトル画像を撮影した時の撮影装置の絞り、シャッター速度、ISO感度の基準値に対する係数であり、「被写体を撮影した時の受光状態の情報」に対応する。すなわち、撮影装置の絞り、シャッター速度、ISO感度の基準値を予め定めておき、これらの基準値に対して、マルチスペクトル画像を撮影した時の絞り、シャッター速度、ISO感度の割合を求めて、係数αとして算出する。係数αは、マルチスペクトル画像の撮影後に、色再現装置100内の図示しない処理部で算出しておいて、色再現特性データ記憶部4に記憶させておく。なお、撮影装置の絞り、シャッター速度、ISO感度の基準値と、マルチスペクトル画像を撮影した時の絞り、シャッター速度、ISO感度のデータとを色再現特性データ記憶部4に記憶させておき、絶対輝度変換値算出部12で算出するようにしてもよい。
【0021】
絶対輝度変換部11は、スペクトルベース色変換処理部7で求められた相対輝度映像信号と、絶対輝度変換値算出部12で算出された絶対輝度変換値とを用いて、次式(2)より、絶対輝度映像信号を算出する。この絶対輝度映像信号は、例えば、XYZ表色系のXYZ値であり、Y値が再現する被写体の輝度値(cd/m2)に対応している。
絶対輝度映像信号=相対輝度映像信号×絶対輝度変換値 …(2)
【0022】
ここで、式(2)に式(1)を代入すると、絶対輝度映像信号は、次式(3)のように表すことができる。
絶対輝度映像信号=(相対輝度映像信号/α)×(b0/bs) …(3)
式(3)において、相対輝度映像信号を受光状態係数αで除算することにより、撮影装置による受光状態の影響が取り除かれ、さらに、観察照明光の輝度値b0と撮影照明光の輝度値bsとの比(b0/bs)を乗算することにより、被写体を観察照明光の下で観察する時の輝度が反映された絶対輝度映像信号を求めることができる。
【0023】
表示信号変換部13は、絶対輝度変換部11で求められた絶対輝度映像信号に対して、映像表示用モニタ1のモニタプロファイルに応じた色変換処理を行う。モニタプロファイルは、図示しない記憶装置に予め記憶させておいてもよいし、映像表示用モニタ1を色再現装置100と接続したときに、映像表示用モニタ1から取得するようにしてもよい。映像表示用モニタ1は、表示信号変換部13で色変換処理が行われた表示信号に応じた映像を表示する。
【0024】
以上、第1の実施の形態における色再現装置によれば、被写体の映像信号、被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、映像表示用モニタ1を照射する観察照明光のスペクトル情報に基づいて求められた色変換信号を、観察照明光の輝度値と、撮影照明光の輝度値と、被写体を撮影した時の受光状態の情報とに基づいて、被写体を観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換する。これにより、被写体を観察照明光の下で観察するときの色合いだけでなく、絶対輝度も反映した映像を映像表示用モニタ1に表示することができる。
【0025】
−第1の実施の形態の変形例−
別の方法により、絶対輝度変換値を算出する変形例について説明する。この変形例では、被写体を撮影する際に、色票も同時に撮影し、撮影した色票のデータを利用して、絶対輝度変換値を算出する。色票は、マクベスカラーチェッカーのような色度や分光反射率が既知のパッチからなる被写体である。なお、パッチは、少なくとも1つあればよい。
【0026】
なお、色票を被写体と同時に撮影せずに、被写体とは別に撮影するようにしてもよい。
【0027】
図3は、第1の実施の形態の変形例における絶対輝度変換値算出部12Aの構成を示す図である。絶対輝度変換値算出部12Aは、色票信号抽出部121と、撮影輝度補正係数算出部122と、変換値算出部123とを備える。
【0028】
色票信号抽出部121は、スペクトルベース色変換処理部7で求められた相対輝度映像信号から、色票が撮影されている部分の信号値である色票信号値を抽出する。色票信号値は、次式(4)にて表すことができる。
色票信号値=色票の基準信号値×撮影照明光の輝度値bs×受光状態係数α …(4)
【0029】
また、色票の基準信号値は、次式(5)にて表される。
色票の基準信号値=色票の分光反射率×撮影装置の分光特性×撮影照明光のスペクトル …(5)
【0030】
撮影輝度補正係数算出部122は、色票の分光反射率のデータを記憶しており、撮影装置の分光特性データおよび撮影照明光のスペクトルデータを用いて、式(5)より、色票の基準信号値を求める。撮影装置の分光特性データおよび撮影照明光のスペクトルデータは、色再現特性データ記憶部4に記憶されている色再現特性情報に含まれている。そして、色票信号抽出部121で抽出された色票信号値を、求めた色票の基準信号値で除算することにより、撮影輝度補正係数βを求める(次式(6)参照)。
撮影輝度補正係数β=色票信号値/色票の基準信号値
=撮影照明光の輝度値bs×受光状態係数α …(6)
【0031】
変換値算出部123は、次式(7)より、絶対輝度変換値を求める。
絶対輝度変換値=b0/β …(7)
【0032】
式(6)で表される撮影輝度補正係数βを式(7)に代入すれば分かるように、式(7)で表される絶対輝度変換値は、式(1)で表される絶対輝度変換値と等しい。
【0033】
−第2の実施の形態−
第1の実施の形態における色再現装置100では、観察照明光の下に被写体を置いた時の輝度を映像表示用モニタ1で再現するための処理を行った。しかし、実際には、映像表示用モニタ1で表示できる輝度範囲に限界があるため、被写体の輝度を正確に表示できない場合がある。
【0034】
図4(a)〜(d)は、映像表示用モニタ1に表示する映像の輝度分布の様々なパターンを示す図である。図4(a)に示すパターンでは、全ての映像表示位置において、表示する映像の輝度値が映像表示用モニタ1の最大輝度値Mより小さい。この場合には、被写体の絶対輝度をそのまま映像表示用モニタ1で表示することができる。なお、映像表示用モニタ1の最大輝度値Mとは、映像表示用モニタ1において表示可能な輝度値の上限値のことである。
【0035】
図4(b)に示すパターンでは、一部の表示位置において、表示する映像の輝度値が映像表示用モニタ1の最大輝度値Mを超えてしまっている。この場合、輝度値が映像表示用モニタ1の最大輝度値Mを超えている位置の輝度信号f(x)は、最大輝度値Mで飽和してしまう。この場合、表示する映像の輝度信号f(x)のうちの最大輝度値を検出して、この最大輝度値が映像表示用モニタ1の最大輝度値M以下になるように輝度調整を行うことが有効である。
【0036】
図4(c)は、輝度信号f(x)のうちの最大輝度値が映像表示用モニタ1の最大輝度値M以下になるように、従来の手法を用いて輝度調整を行った場合の輝度分布を示す図である。図4(c)において、実線は輝度調整を行う前の輝度分布を示し、点線は輝度調整を行った後の輝度分布を示している。上述したような輝度調整を行った場合、図4(c)の点線で示すように、表示すべき映像の輝度値が全体的に低下してしまうため、被写体の絶対輝度の表示を行うことができなくなる。
【0037】
従って、第2の実施の形態における色再現装置100Bでは、映像表示用モニタ1の表示可能な輝度範囲内で、第1の補正輝度しきい値L1および第2の補正輝度しきい値L2(L2<L1)をそれぞれ設け、輝度信号f(x)のうち、第1の補正輝度しきい値L1より大きい輝度値、および、第2の補正輝度しきい値L2より小さい輝度値に対して、輝度調整を行うようにする。図4(d)では、輝度調整を行う前の輝度分布を実線で、第2の実施の形態における色再現装置100Bによって輝度調整を行った後の輝度分布を点線でそれぞれ示している。
【0038】
なお、図4(d)に示す例では、輝度信号f(x)において、第2の補正輝度しきい値L2より小さい輝度値は存在しないため、第1の補正輝度しきい値L1より大きい輝度値に対してのみ、輝度調整が行われている。
【0039】
図5は、第2の実施の形態における色再現装置100Bの色補正部6Bの構成を示す図である。図2に示す色補正部6と同じ構成要素については、同一の符号を伏して、詳しい説明は省略する。
【0040】
色補正部6Bは、スペクトルベース色変換処理部7と、照明状態補正部8Bとを備える。照明状態補正部8Bは、絶対輝度変換部11と、絶対輝度変換値算出部12と、表示信号変換部13と、輝度調整部41と、輝度調整値算出部42とを備える。
【0041】
輝度調整値算出部42は、絶対輝度変換部11によって求められた絶対輝度映像信号と、映像表示用モニタ1の最大輝度値Mとに基づいて、輝度調整後の輝度値を求めるための変換テーブルデータを作成する。
【0042】
図6は、被写体の輝度範囲が映像表示用モニタ1の表示可能な輝度範囲よりも広い場合において、輝度調整前の輝度範囲と、輝度調整後の輝度範囲との関係を示す図である。上述したように、第1の補正輝度しきい値L1および第2の補正輝度しきい値L2を設け、第1の補正輝度しきい値L1より大きい輝度値、および、第2の補正輝度しきい値L2より小さい輝度値に対して輝度調整を行う。すなわち、第1の補正輝度しきい値L1より大きい輝度値は、映像表示用モニタ1の最大輝度値M以下になるように、輝度値を低下させる処理を行い、第2の補正輝度しきい値L2より小さい輝度値は、輝度値を増大させる処理を行う。
【0043】
第1の補正輝度しきい値L1は、映像表示用モニタ1の最大輝度値Mに応じた適切な値を設定する。例えば、映像表示用モニタ1の最大輝度値Mから所定の値を減算した値を第1の補正輝度しきい値L1としたり、最大輝度値Mに所定の係数を乗算した値を第1の補正輝度しきい値L1とすることができる。また、第2の補正輝度しきい値L2としては、予め適切な値を設定しておくことができる。
【0044】
図7は、輝度調整前の輝度値と輝度調整後の輝度値との対応関係を示す図である。輝度調整前の輝度値を横軸に、輝度調整後の輝度値を縦軸に取っている。上述したように、第1の補正輝度しきい値L1よりも大きい輝度値は、その輝度値よりも小さい輝度値に変換され、第2の補正輝度しきい値L2より小さい輝度値は、その輝度値よりも大きい輝度値に変換される。第2の補正輝度しきい値L2以上、かつ、第1の補正輝度しきい値L1以下の輝度値は、輝度調整後も同じ輝度値となる。
【0045】
輝度調整値算出部42は、図7に示すような、輝度調整を行う前の輝度値を入力値とし、輝度調整後の輝度値を出力値とするような変換テーブルデータを作成する。
【0046】
なお、輝度調整値算出部42は、上述した変換テーブルデータを作成する代わりに、輝度調整を行う前の輝度値を輝度調整後の輝度値に変換するための変換係数を作成することもできる。この場合、輝度調整を行う前の輝度値が第2の補正輝度しきい値L2より小さい場合の変換係数は、1より大きい値となり、輝度調整を行う前の輝度値が第1の補正輝度しきい値L1より大きい場合の変換係数は、1より小さい値となる。また、輝度調整を行う前の輝度値が第2の補正輝度しきい値L2以上、かつ、第1の補正輝度しきい値L1以下の場合の変換係数は1となる。
【0047】
輝度調整部41は、輝度調整値算出部42によって作成された変換テーブルデータと、絶対輝度変換部11によって求められた絶対輝度映像信号とに基づいて、輝度調整後の絶対輝度映像信号を求める。輝度調整後の絶対輝度映像信号は、表示信号変換部13に入力される。
【0048】
以上、第2の実施の形態における色再現装置によれば、絶対輝度変換部11で変換された絶対輝度映像信号の輝度値が映像表示用モニタ1の表示可能な最大輝度値を超える場合に、第1の補正輝度しきい値L1を超える輝度値に対して、映像表示用モニタ1の表示可能な最大輝度値以下とするための調整処理を行う。これにより、表示映像の輝度値が飽和する白とびの状態を回避しつつ、被写体の主要な部分の絶対輝度を表示することができる。
【0049】
また、絶対輝度変換部11で変換された絶対輝度映像信号の輝度値が第2の補正輝度しきい値L2を下回る場合に、第2の補正輝度しきい値L2より低い輝度値を増大させる処理を行うので、被写体の主要な部分の絶対輝度を表示しつつ、黒つぶれの状態を防ぐことができる。
【0050】
−第3の実施の形態−
第1および第2の実施の形態における色再現装置では、観察照明光の下に被写体を置いた時の輝度を再現するための処理を行った。しかし、映像表示用モニタ1は、観察照明光によって、表示画面全体を一様に照射されていることは少なく、一般には照明ムラが存在する。第3の実施の形態における色再現装置では、映像表示用モニタ1の照明ムラを検出し、検出した照明ムラに基づいて、表示する映像データの輝度を補正する。
【0051】
図8は、第3の実施の形態における色再現装置100Cの構成を示す図である。図1に示す第1の実施の形態における色再現装置100と同じ構成要素については、同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。第3の実施の形態における色再現装置100Cは、第1の実施の形態における色再現装置100の構成に対して、カメラ51および照明分布演算部52をさらに備えている。
【0052】
カメラ51は、映像表示用モニタ1の照明ムラを検出するために、映像表示用モニタ1よりも広い領域を撮影する。図9は、カメラ51による撮影領域を示す図である。映像表示用モニタ1は、壁77に掛けられているものとして説明する。上述したように、カメラ51は、映像表示用モニタ1よりも広い領域72を撮影する。
【0053】
なお、図9に示す例では、照明状態検出部である照明センサ2は、映像表示用モニタ1の上部に設置されている。
【0054】
照明分布演算部52は、カメラ51により撮影された映像に基づいて、映像表示用モニタ1の映像表示エリア70の照明輝度分布を求める。照明輝度分布を求める方法を、図9を用いて以下で説明する。
【0055】
カメラ51により撮影された映像のうち、映像表示用モニタ1の映像表示エリア70の近傍に、複数の照明輝度分布検出エリアを設定しておく。図9に示す例では、映像表示エリア70の外側の外枠71の四隅に、4つの照明輝度分布検出エリア73〜76を設定している。
【0056】
照明分布演算部52は、カメラ51により撮像された映像に基づいて、照明輝度分布検出エリア73〜76の輝度L73、L74、L75、L76を求め、求めた輝度に基づいて、映像表示エリア70全体の輝度分布を求める。求めた輝度分布の情報は、色補正部6Cの照明状態補正部8Cに送られる。
【0057】
なお、外枠71の照明輝度分布検出エリア73〜76の位置に、予め輝度検出用のマーカーを組み込むようにしておいてもよい。この場合には、映像表示エリア70の照明輝度分布を精度良く検出することができる。また、照明輝度分布検出エリアを4箇所ではなく、より多くの位置に設定すれば、映像表示エリア70の照明輝度分布をより精度良く検出することができる。
【0058】
図10は、色補正部6Cの構成を示す図である。色補正部6Cは、スペクトルベース色変換処理部7と、照明状態補正部8Cとを備える。照明状態補正部8Cは、絶対輝度変換部11と、絶対輝度変換値算出部12と、表示信号変換部13と、輝度ムラ補正係数算出部61と、照明ムラ補正部62とを備える。
【0059】
輝度ムラ補正係数算出部61は、照明分布演算部52で求められた照明輝度分布の情報に基づいて、映像表示用モニタ1の各画素位置(x、y)における輝度補正係数C(x、y)を算出する。画素位置(x、y)は、例えば、映像表示エリア70の左下を原点(0、0)とし、水平方向をx軸、垂直方向をy軸とした時の各画素の位置座標である。
【0060】
図11は、輝度ムラ補正係数算出部61によって算出される輝度補正係数C(x、y)を模式的に示した図である。輝度L73、L74、L75、L76を含む面80が輝度補正係数C(x,y)を模式的に表している。
【0061】
図9に示すように、映像表示用モニタ1の左上に照明装置78が設けられている場合には、照明輝度分布検出エリア73の輝度L73の値は大きく、照明輝度分布検出エリア76の輝度L76の値は小さい。従って、図11の面80で示すように、映像表示エリア70の輝度分布に応じた輝度値を再現するための輝度補正係数C(x、y)を算出する。具体的には、照明分布演算部52で求められる照明輝度分布に基づいて、図11に示す面80を表す式を求めることによって、輝度補正係数C(x、y)を算出する。面80は、平面式で近似してもよいし、高次の曲面式で表示してもよい。
【0062】
照明ムラ補正部62は、絶対輝度変換部11で求められた絶対輝度映像信号のうち、映像表示エリア70の表示位置(x、y)の輝度値に、輝度ムラ補正係数算出部61で求められた輝度補正係数C(x、y)を乗算することにより、補正後の輝度値を求める。補正後の輝度値を含む映像信号は、表示信号変換部13に送られる。
【0063】
図12(a)は、映像表示用モニタ1の左上に照明装置78が設けられている場合に、映像表示用モニタ1の映像表示エリア70に照明ムラが生じている状態を示す図、図12(b)は、照明ムラに応じた輝度補正が行われる前の映像を示す図、図12(c)は、第3の実施の形態における色再現装置によって、照明ムラに応じた輝度補正が行われた後の映像を示す図である。図12(c)に示すように、照明ムラに応じた輝度補正を行うことにより、観察照明光の下に被写体を置いた時の輝度分布をも再現することができる。
【0064】
第3の実施の形態における色再現装置によれば、画像表示用モニタ1に照射される観察照明光の照明ムラを検出し、絶対輝度変換部11によって絶対輝度映像信号に変換された輝度値に対して、検出した照明ムラに応じた補正を行う。これにより、被写体を画像表示用モニタ1の位置に置いた時の輝度だけでなく、照明ムラも忠実に再現した映像表示を行うことができる。
【0065】
映像表示用モニタ1の映像表示エリア70の照明輝度分布を検出する変形例を以下で説明する。
【0066】
−第3の実施の形態の変形例1−
図13は、映像表示用モニタ1の映像表示エリア70の照明輝度分布を検出する変形構成例を説明するための図である。この変形例における色再現装置は、カメラ51の代わりに、照明センサ91〜94を備えている。
【0067】
照明センサ91〜94は、図9を用いて説明した照明ムラ検出エリア73〜76に対応する位置の輝度を直接計測するためのセンサである。これらの照明センサ91〜94は、外枠71の中に組み込まれているのが好ましい。照明センサ91〜94でそれぞれ検出された輝度は、照明分布演算部52に送られる。照明分布演算部52、輝度ムラ補正係数算出部61、輝度ムラ補正部62で行われる処理は、図10に示す構成の場合と同じである。
【0068】
なお、照明センサ91〜94は、照明のスペクトルを検出する必要はなく、輝度のみを検出できればよいので、照明センサ2に対して、小型・安価なものを用いることができる。ただし、照明センサ91〜94として、照明センサ2と同様に、照明スペクトルを検出できるものを用いてもよいのは当然のことであり、この場合には、輝度ムラだけでなく、色ムラも検出することができる。また、輝度を検出するための照明センサは4つに限られず、より多くの照明センサを設けるようにしてもよい。
【0069】
−第3の実施の形態の変形例2−
映像表示用モニタ1の映像表示エリア70の照明輝度分布の検出を、ラインセンサを用いて行うこともできる。図14は、ラインセンサ型照明センサ140を用いて、映像表示用モニタ1の映像表示エリア70の照明輝度分布の照明ムラを検出する例を示す図である。ラインセンサ型照明センサ140は、少なくともラインセンサ142(図15参照)を備え、映像表示用モニタ1に対して、ガイドレール141に沿って図の矢印に示す方向に移動することにより、映像表示用モニタ1の映像表示エリア全体の輝度を測定する。映像表示用モニタ1の映像表示エリア全体の輝度を測定することにより、4つの照明ムラ検出エリア73〜76の輝度を求める場合に比べて、補正係数C(x,y)の算出精度を向上させることができる。
【0070】
このラインセンサ型照明センサ140は、ラインセンサ142の測定方向を反転させるための検出位置変更部143、センサの指向性を変更するための指向性変更部144、ラインセンサ142をガイドレール141に沿って移動させるための検出位置移動部145を備えている(図15参照)。検出位置変更部143によって、ラインセンサ142の測定方向を反転させることにより、照明ムラだけでなく、映像表示用モニタ1のプロファイルも測定することができる。
【0071】
図15(a)は、映像表示用モニタ1のプロファイルを検出する際のラインセンサ142の向きを、図15(b)は、照明ムラを検出する際のラインセンサ142の向きをそれぞれ示している。ラインセンサ142は、映像表示用モニタ1のプロファイルを検出する場合には、図15(a)に示すように、映像表示用モニタ1からの光を受光するが、照明ムラを検出する場合には、図15(b)に示すように、映像表示用モニタ1を照射する観察照明光からの光を受光する。
【0072】
なお、映像表示用モニタ1のプロファイルを検出する場合には、ラインセンサ142の指向性を縮小した方が検出精度が向上する。従って、指向性変更部144は、映像表示用モニタ1のプロファイルを検出する場合には、照明ムラを検出する場合に比べて、ラインセンサ142の指向性を縮小させる。
【0073】
なお、ラインセンサ型照明センサ140は、通常は外枠71の中に収納されており、照明ムラの検出の時だけ、外枠71の中から出てくる構造とすることが、外見的には好ましい。
【0074】
本発明は、上述した第1〜第3の実施の形態に限定されることはない。例えば、第2の実施の形態では、絶対輝度変換部11で変換された絶対輝度映像信号の輝度値が映像表示用モニタ1の表示可能な最大輝度値を超える場合に、第1の補正輝度しきい値L1を超える輝度値に対して、映像表示用モニタ1の表示可能な最大輝度値以下とするための調整処理を行った。この処理を第3の実施の形態における色再現装置に適用することもできる。
【0075】
図16は、図10に示す第3の実施の形態における色補正部6Cの照明状態補正部8Cの構成に対して、輝度調整部41および輝度調整値算出部42を追加した色補正部6Dの構成を示す図である。この構成によれば、第2の実施の形態における色再現装置100Bと同様に、絶対輝度変換部11で変換された絶対輝度映像信号の輝度値が映像表示用モニタ1の表示可能な最大輝度値を超える場合に、第1の補正輝度しきい値L1を超える輝度値に対して、映像表示用モニタ1の表示可能な最大輝度値以下とするための調整処理を行うことができる。これにより、表示映像の輝度値が飽和する白とびの状態を回避しつつ、被写体の主要な部分の絶対輝度を表示することができる。
【0076】
また、図16に示す構成において、絶対輝度変換部11で変換された絶対輝度映像信号の輝度値が第2の補正輝度しきい値L2を下回る場合に、第2の補正輝度しきい値L2より低い輝度値を増大させる処理を行うこともできる。この場合には、被写体の主要な部分の絶対輝度を表示しつつ、黒つぶれの状態を防ぐことができる。
【0077】
第1〜第3の実施の形態において、照明状態検出部2による観察照明光の検出を適当な時間間隔、例えば5分ごとに行い、そのたびに、色補正部6、6B、6C、6Dで上述した処理を行うようにしてもよい。この方法によれば、最新の観察照明光に応じた映像表示を行うことができる。
【0078】
映像表示用モニタ1は、RGB3原色のモニタであってもよいし、4原色以上の多原色モニタであってもよい。
【0079】
なお、上述した説明では、色再現装置100が行う処理としてハードウェアによる処理を前提としていたが、このような構成に限定される必要はない。例えば、別途ソフトウェアにて処理する構成も可能である。この場合、色再現装置100は、CPU、RAM等の主記憶装置、上記処理の全て或いは一部を実現させるためのプログラムが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を備えている。ここでは、このプログラムを色再現プログラムと呼ぶ。そして、CPUが上記記憶媒体に記憶されている色再現プログラムを読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、上述の色再現装置100と同様の処理を実現させる。
【0080】
ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、この色再現プログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該色再現プログラムを実行するようにしても良い。
【0081】
以下、第1の実施の形態において、CPUが色再現プログラムを実行することにより実現される処理の処理手順について図17を参照して説明する。なお、第2、第3の実施の形態においても同様に、ソフトウェアにて処理することが可能である。
【0082】
まず、図17のステップS1において、マルチスペクトル画像データ記憶部3から、マルチスペクトル画像を読み出す。ステップS2では、読み出したマルチスペクトル画像に対して、被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報および観察照明光のスペクトルに基づいて、所定の色変換処理を行うことにより、色変換信号を求める。ステップS3では、照明状態検出部2によって検出される観察照明光の輝度値を取得する。
【0083】
ステップS4では、色再現特性データ記憶部4から、撮影照明光の輝度値を取得する。ステップS5では、色再現特性データ記憶部4から、被写体撮影時の受光状態の情報(受光状態係数α)を取得する。ステップS6では、ステップS2で求めた色変換信号を、観察照明光の輝度値、撮影照明光の輝度値、および、受光状態の情報に基づいて、被写体を観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した絶対輝度映像信号に変換して、本処理を終了する。
【0084】
なお、図17のステップS6では、第1の実施の形態の変形例として説明した変換処理を行うこともできる。すなわち、ステップS2で求めた色変換信号を、観察照明光の輝度値、分光反射率が既知の色票を撮影装置で撮影した色票信号、色票の分光反射率、撮影装置の分光特性、および、撮影照明光のスペクトルに基づいて、絶対輝度映像信号に変換する処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】第1の実施の形態における色再現装置の構成を示す図
【図2】色補正部の詳細な構成を示す図
【図3】第1の実施の形態の変形例における絶対輝度変換値算出部の構成を示す図
【図4】図4(a)〜(d)は、映像表示用モニタに表示する映像の輝度分布の様々なパターンを示す図
【図5】第2の実施の形態における色再現装置の色補正部の構成を示す図
【図6】輝度調整前の輝度範囲と、輝度調整後の輝度範囲との関係を示す図
【図7】輝度調整前の輝度値と輝度調整後の輝度値との対応関係を示す図
【図8】第3の実施の形態における色再現装置の構成を示す図
【図9】カメラによる撮影領域を示す図
【図10】第3の実施の形態における色補正部の構成を示す図
【図11】輝度ムラ補正係数算出部によって算出される輝度補正係数C(x、y)を模式的に示した図
【図12】図12(a)は、映像表示用モニタの左上に照明装置が設けられている場合に、映像表示用モニタの映像表示エリアに照明ムラが生じている状態を示す図、図12(b)は、照明ムラに応じた輝度補正が行われる前の映像を示す図、図12(c)は、第3の実施の形態における色再現装置によって、照明ムラに応じた輝度補正が行われた後の映像を示す図
【図13】映像表示用モニタの映像表示エリアの照明輝度分布を検出する変形構成例を説明するための図
【図14】ラインセンサ型照明センサを用いて、映像表示用モニタの映像表示エリアの照明輝度分布の照明ムラを検出する例を示す図
【図15】図15(a)は、映像表示用モニタの色再現特性を検出する際のラインセンサの向きを示す図、図15(b)は、照明ムラを検出する際のラインセンサの向きを示す図
【図16】図10に示す第3の実施の形態における色補正部の照明状態補正部の構成に対して、輝度調整部および輝度調整値算出部を追加した色補正部の構成を示す図
【図17】CPUが色再現プログラムを実行することにより実現される処理の処理手順を示すフローチャート
【符号の説明】
【0086】
1…映像表示用モニタ
2…照明状態検出部
3…マルチスペクトル画像データ記憶部
4…色再現特性データ記憶部
6、6B、6C、6D…色補正部
7…スペクトルベース色変換処理部
8、8B、8C、8D…照明状態補正部
11…絶対輝度変換部
12、12A…絶対輝度変換値算出部
41…輝度調整部
42…輝度調整値算出部
51…カメラ
52…照明分布演算部
61…輝度ムラ補正係数算出部
62…照明ムラ補正部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表示するモニタ装置を照射する観察照明光の輝度値を検出する観察照明光輝度値検出手段と、
撮影装置で被写体を撮影した時の撮影照明光の輝度値を記憶する撮影照明光輝度値記憶手段と、
前記撮影装置で前記被写体を撮影した時の受光状態の情報を記憶する受光状態情報記憶手段と、
前記被写体の映像信号、前記被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、前記観察照明光のスペクトルに基づいて求められた色変換信号を、前記観察照明光の輝度値、前記撮影照明光の輝度値、および、前記受光状態の情報に基づいて、前記被写体を前記観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換する輝度変換手段とを備えることを特徴とする色再現装置。
【請求項2】
映像を表示するモニタ装置を照射する観察照明光の輝度値を検出する観察照明光輝度値検出手段と、
撮影装置で被写体を撮影した時の撮影照明光の輝度値を記憶する撮影照明光輝度値記憶手段と、
前記撮影装置で前記被写体を撮影した時の受光状態の情報を記憶する受光状態情報記憶手段と、
前記被写体の映像信号、前記被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、前記観察照明光のスペクトルに基づいて求められた色変換信号を、前記観察照明光の輝度値、分光反射率が既知の色票を前記撮影装置で撮影した信号である色票信号、前記色票の分光反射率、前記撮影装置の分光特性、および、前記撮影照明光のスペクトルに基づいて、前記被写体を前記観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換する輝度変換手段とを備えることを特徴とする色再現装置。
【請求項3】
前記被写体の映像信号、前記被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、前記観察照明光のスペクトルに基づいて、前記色変換信号を生成する色変換処理手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の色再現装置。
【請求項4】
前記輝度変換手段による輝度変換後の輝度値が前記モニタ装置の表示可能な最大輝度値を超える場合に、前記輝度変換手段による変換処理後の輝度値のうち、第1の補正輝度しきい値を超える輝度値に対して、前記モニタ装置の表示可能な最大輝度値以下とするための輝度調整処理を行う輝度調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の色再現装置。
【請求項5】
前記輝度調整手段は、前記輝度変換手段による変換処理後の輝度値のうち、前記第1の補正輝度しきい値より小さい第2の補正輝度しきい値を下回る輝度値に対して、輝度値を増大させる輝度調整処理を行うことを特徴とする請求項4に記載の色再現装置。
【請求項6】
前記モニタ装置に照射される観察照明光の照明ムラを検出する照明ムラ検出手段と、
前記輝度変換手段による変換処理後の輝度値に対して、前記照明ムラに応じた補正を行う照明ムラ補正手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の色再現装置。
【請求項7】
前記照明ムラ検出手段は、前記撮影装置によって撮影された前記モニタ装置の映像に基づいて、前記モニタ装置の照明ムラを検出することを特徴とする請求項6に記載の色再現装置。
【請求項8】
前記照明ムラ検出手段は、前記モニタ装置の映像表示エリアの周囲に設けられた複数の照明センサを備え、前記複数の照明センサによって検出された輝度値に基づいて、前記モニタ装置の照明ムラを検出することを特徴とする請求項6に記載の色再現装置。
【請求項9】
前記照明ムラ検出手段は、ラインセンサを備え、前記ラインセンサによって前記モニタ装置の表示画面全体を走査することによって検出される輝度値に基づいて、前記モニタ装置の照明ムラを検出することを特徴とする請求項6に記載の色再現装置。
【請求項10】
前記被写体の映像信号は、マルチスペクトル映像信号であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の色再現装置。
【請求項11】
映像を表示するモニタ装置を照射する観察照明光の輝度値を取得するステップと、
撮影装置で被写体を撮影した時の撮影照明光の輝度値を取得するステップと、
前記撮影装置で前記被写体を撮影した時の受光状態の情報を取得するステップと、
前記被写体の映像信号、前記被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、前記観察照明光のスペクトルに基づいて求められた色変換信号を、前記観察照明光の輝度値、前記撮影照明光の輝度値、および、前記受光状態の情報に基づいて、前記被写体を前記観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換するステップと、
をコンピュータに実行させるための色再現プログラム。
【請求項12】
映像を表示するモニタ装置を照射する観察照明光の輝度値を取得するステップと、
撮影装置で被写体を撮影した時の撮影照明光の輝度値を取得するステップと、
前記撮影装置で前記被写体を撮影した時の受光状態の情報を取得するステップと、
前記被写体の映像信号、前記被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、前記観察照明光のスペクトルに基づいて求められた色変換信号を、前記観察照明光の輝度値、分光反射率が既知の色票を前記撮影装置で撮影した信号である色票信号、前記色票の分光反射率、前記撮影装置の分光特性、および、前記撮影照明光のスペクトルに基づいて、前記被写体を前記観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換するステップと、
をコンピュータに実行させるための色再現プログラム。
【請求項1】
映像を表示するモニタ装置を照射する観察照明光の輝度値を検出する観察照明光輝度値検出手段と、
撮影装置で被写体を撮影した時の撮影照明光の輝度値を記憶する撮影照明光輝度値記憶手段と、
前記撮影装置で前記被写体を撮影した時の受光状態の情報を記憶する受光状態情報記憶手段と、
前記被写体の映像信号、前記被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、前記観察照明光のスペクトルに基づいて求められた色変換信号を、前記観察照明光の輝度値、前記撮影照明光の輝度値、および、前記受光状態の情報に基づいて、前記被写体を前記観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換する輝度変換手段とを備えることを特徴とする色再現装置。
【請求項2】
映像を表示するモニタ装置を照射する観察照明光の輝度値を検出する観察照明光輝度値検出手段と、
撮影装置で被写体を撮影した時の撮影照明光の輝度値を記憶する撮影照明光輝度値記憶手段と、
前記撮影装置で前記被写体を撮影した時の受光状態の情報を記憶する受光状態情報記憶手段と、
前記被写体の映像信号、前記被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、前記観察照明光のスペクトルに基づいて求められた色変換信号を、前記観察照明光の輝度値、分光反射率が既知の色票を前記撮影装置で撮影した信号である色票信号、前記色票の分光反射率、前記撮影装置の分光特性、および、前記撮影照明光のスペクトルに基づいて、前記被写体を前記観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換する輝度変換手段とを備えることを特徴とする色再現装置。
【請求項3】
前記被写体の映像信号、前記被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、前記観察照明光のスペクトルに基づいて、前記色変換信号を生成する色変換処理手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の色再現装置。
【請求項4】
前記輝度変換手段による輝度変換後の輝度値が前記モニタ装置の表示可能な最大輝度値を超える場合に、前記輝度変換手段による変換処理後の輝度値のうち、第1の補正輝度しきい値を超える輝度値に対して、前記モニタ装置の表示可能な最大輝度値以下とするための輝度調整処理を行う輝度調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の色再現装置。
【請求項5】
前記輝度調整手段は、前記輝度変換手段による変換処理後の輝度値のうち、前記第1の補正輝度しきい値より小さい第2の補正輝度しきい値を下回る輝度値に対して、輝度値を増大させる輝度調整処理を行うことを特徴とする請求項4に記載の色再現装置。
【請求項6】
前記モニタ装置に照射される観察照明光の照明ムラを検出する照明ムラ検出手段と、
前記輝度変換手段による変換処理後の輝度値に対して、前記照明ムラに応じた補正を行う照明ムラ補正手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の色再現装置。
【請求項7】
前記照明ムラ検出手段は、前記撮影装置によって撮影された前記モニタ装置の映像に基づいて、前記モニタ装置の照明ムラを検出することを特徴とする請求項6に記載の色再現装置。
【請求項8】
前記照明ムラ検出手段は、前記モニタ装置の映像表示エリアの周囲に設けられた複数の照明センサを備え、前記複数の照明センサによって検出された輝度値に基づいて、前記モニタ装置の照明ムラを検出することを特徴とする請求項6に記載の色再現装置。
【請求項9】
前記照明ムラ検出手段は、ラインセンサを備え、前記ラインセンサによって前記モニタ装置の表示画面全体を走査することによって検出される輝度値に基づいて、前記モニタ装置の照明ムラを検出することを特徴とする請求項6に記載の色再現装置。
【請求項10】
前記被写体の映像信号は、マルチスペクトル映像信号であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の色再現装置。
【請求項11】
映像を表示するモニタ装置を照射する観察照明光の輝度値を取得するステップと、
撮影装置で被写体を撮影した時の撮影照明光の輝度値を取得するステップと、
前記撮影装置で前記被写体を撮影した時の受光状態の情報を取得するステップと、
前記被写体の映像信号、前記被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、前記観察照明光のスペクトルに基づいて求められた色変換信号を、前記観察照明光の輝度値、前記撮影照明光の輝度値、および、前記受光状態の情報に基づいて、前記被写体を前記観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換するステップと、
をコンピュータに実行させるための色再現プログラム。
【請求項12】
映像を表示するモニタ装置を照射する観察照明光の輝度値を取得するステップと、
撮影装置で被写体を撮影した時の撮影照明光の輝度値を取得するステップと、
前記撮影装置で前記被写体を撮影した時の受光状態の情報を取得するステップと、
前記被写体の映像信号、前記被写体を撮影した時の情報である色再現特性情報、および、前記観察照明光のスペクトルに基づいて求められた色変換信号を、前記観察照明光の輝度値、分光反射率が既知の色票を前記撮影装置で撮影した信号である色票信号、前記色票の分光反射率、前記撮影装置の分光特性、および、前記撮影照明光のスペクトルに基づいて、前記被写体を前記観察照明光の下で観察する時の輝度値を反映した映像信号に変換するステップと、
をコンピュータに実行させるための色再現プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図16】
【図17】
【図4】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図16】
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【図9】
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【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−171008(P2009−171008A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4195(P2008−4195)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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