説明

色素増感型光電変換素子用電解質組成物および該電解質組成物を用いた光電変換素子

【課題】光電変換効率、特に短絡電流及び開放電圧を向上させる光電変換素子用電解質を提供することを目的とする。
【解決手段】α,β−不飽和化合物を重合させてなる共重合体であって、アルキレンオキサイド鎖を有するアクリル酸誘導体及び/またはメタクリル酸誘導体(a−1)を全誘導体100重量%中に10〜80重量%と、その他のα,β−不飽和結合を有する化合物(a−2)20〜90重量%とから形成された共重合体(A)と、共重合体(A)中の官能基と反応し得る反応性化合物(B)とを含むことを特徴とする樹脂組成物(1)、有機溶融塩(2)並びにヨウ素(3)を含んでなる色素増感型光電変換素子用電解質組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型光電変換素子の電解質として有用な電解質組成物に関する。また、これを用いた光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題を考慮した発電システム、もしくは可搬型携帯用電源として有用な光電変換素子、いわゆる太陽電池の開発が近年盛んである。これらは現在単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコン等の無機物からなる素子が中心である。これらは、現在実用化されているものもあるが、家庭用電源として広く普及させるためには、製造コストが高いこと、原材料の確保が困難であること、またエネルギーペイバックタイム、即ち製造するために要した電気量を自らの発電によって賄うために要する時間が長いこと等の問題が多く、これらの解決が望まれていた。また小型携帯型情報機器用電源として用いようとする場合には、無機物であるために柔軟なセルを構成することは困難であり、実装上の問題を有していた。
【0003】
これらの問題を解決するため、有機材料を用いた光電変換素子の検討が行われている。しかしながら、一般にはこの様な光電変換素子は、光電変換効率が低く、また耐久性も良くなかった。
【0004】
このなかでヨウ素化合物の酸化還元を利用した電解質を用いて成る色素増感型光電変換素子(非特許文献1参照)の報告がなされており、これは光電変換効率が高いという特徴を有している。しかしながら、この方法では、例えばプロピレンカーボネート等の低分子量カーボネート類、もしくはテトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等の低分子量エーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリル等の低分子量ニトリル類等の低分子量有機液体に、電極活物質としてヨウ素、もしくはヨウ素イオンを溶解させた電解質が用いられている。しかしながら低分子量有機液体では素子外部への電解液の漏洩、電極活物質の揮発、溶出等による長期信頼性に問題があった。
【0005】
このため、近年高分子化合物を主体とした高分子ゲル電解質、もしくはいわゆる有機溶融塩もしくはイオン性液体と称される有機液体を電解質に用いる検討がなされている。
【0006】
特に高分子化合物を主成分とした各種ゲル電解質の検討が行われている(特許文献1〜9参照)。これらゲル電解質からなる光電変換素子は、電解液の漏洩や枯渇といった問題を解決するだけではなく、素子の柔軟性付与や、種々の形状に加工できる等の利点もある。しかしながら高分子ゲル電解質の機械的強度を持たせるために多くのゲル化剤を導入するとイオン伝導度が低下し、逆にイオン伝導度を向上させるためにゲル化剤を減量すると、機械的強度が保てないという本質的な問題を抱えていた。
【0007】
一方、イミダゾリウム塩やピリジニウム塩を利用した有機溶融塩を主体とした電解質の検討も進められている(特許文献10〜14参照)。これら有機溶融塩からなる光電変換素子は、不揮発性の有機溶融塩を用いているため電解液の枯渇という問題はない。しかしながら、有機溶融塩は粘凋であるために、ゲル系電解質ほどではないにせよイオン伝導度の低下はさけられなかった。即ち、光電変換効率、とくに短絡電流密度(その素子が発生させることが出来る素子面積あたりの最大電流)の低下が著しいという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開平5-120912号公報
【特許文献2】特開平9-27352号公報
【特許文献3】特開平8-236165号公報
【特許文献4】特開2001-210390号公報
【特許文献5】特開2002-216845号公報
【特許文献6】特開2002-289272号公報
【特許文献7】特開2003-68137号公報
【特許文献8】特開2003-68138号公報
【特許文献9】特開2000-150006号公報
【特許文献10】特表平9-507334号公報
【特許文献11】特開2000-53662号公報
【特許文献12】特開2000-58891号公報
【特許文献13】特開2000-90991号公報
【特許文献14】特開2001-35253号公報
【非特許文献1】B.Oregan, M.Gratzel, Nature. 1991年, 第353巻, 737ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、色素増感型光電変換素子に好適に用いられる有機溶融塩を主体とした電解質に関し、光電変換特性を向上させる電解質組成物を提供することを目的にしている。さらには揮発性が低く高温の使用においても光電変換特性を向上させる電解質組成物を提供することを目的にしている。さらにはこれを用いた光電変換素子を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、有機溶融塩系を主構成成分とする電解質に側鎖にアルキレンオキサイド鎖を有するα,β−不飽和化合物を重合させてなる共重合体(A)及び反応性化合物(B)を含有する樹脂組成物(1)を添加することで、ヨウ素の酸化還元による電子の移動を円滑にして伝導性、特に短絡電流を向上させ、高温の使用においても光電変換素子の性能を維持向上させることが出来ることを見出し、本発明にいたった。
【0011】
すなわち、本発明は、α,β−不飽和化合物を重合させてなる共重合体であって、アルキレンオキサイド鎖を有するアクリル酸誘導体及び/またはメタクリル酸誘導体(a−1)を全誘導体100重量%中に10〜80重量%と、その他のα,β−不飽和結合を有する化合物(a−2)20〜90重量%とから形成された共重合体(A)と、共重合体(A)中の官能基と反応し得る反応性化合物(B)とを含むことを特徴とする樹脂組成物(1)、有機溶融塩(2)並びにヨウ素(3)を含んでなる色素増感型光電変換素子用電解質組成物に関する。また、前記アルキレンオキサイド鎖がエチレンオキサイド鎖であり、その付加モル数が1〜30である上記の色素増感型光電変換素子用電解質組成物が好ましい。
【0012】
本発明の色素増感型光電変換素子用電解質組成物を構成する共重合体(A)中の官能基は、アクリル酸及び/またはメタクリル酸に由来するカルボキシル基、またはヒドロキシル基であることが好ましい。
【0013】
また、共重合体(A)100重量部に対して、反応性化合物(B)0.001〜20重量部を含むことを特徴とする上記の色素増感型光電変換素子用電解質組成物が好ましい。また、共重合体(A)を構成するα,β−不飽和化合物の合計100重量%中、反応性化合物(B)と反応し得る官能基を有する誘導体を0.01〜20重量%の割合で含むことを特徴とする上記の色素増感型光電変換素子用電解質組成物が好ましい。
【0014】
また、反応性化合物(B)が、共重合体(A)中の官能基と反応し得る官能基を1分子中に2個以上有することを特徴とする上記の色素増感型光電変換素子用電解質組成物が好ましい。
【0015】
さらに、樹脂組成物(1)が感圧式接着剤組成物である上記の色素増感型光電変換素子用電解質組成物が好ましく、樹脂組成物(1)100重量部に対して、有機溶融塩(2)0.1〜1000重量部、およびヨウ素(3)0〜500重量部を含有する上記の色素増感型光電変換素子用電解質組成物がより好ましい。
【0016】
次に、本発明は、上記の色素増感型光電変換素子用電解質組成物を用いてなる電解質、または該電解質を用いてなる光電変換素子に関する。また、該電解質及び光電変換部材とからなることを特徴とする樹脂積層体に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に用いられる共重合体(A)は、分子内に重合性のα,β−不飽和二重結合を保有する化合物を重合させてなる共重合体であり、その構造中には、アルキレンオキサイド鎖を有するアクリル酸誘導体及び/またはメタクリル酸誘導体(a−1)を含有することが特徴である。
【0018】
本発明に用いられる、アルキレンオキサイド鎖を有するアクリル酸誘導体及び/またはメタクリル酸誘導体(a−1)としては、エチレンオキサイド鎖を有する誘導体、プロピレンオキサイド鎖を有する誘導体、およびその両者を有する誘導体が挙げられる。
【0019】
エチレンオキサイド鎖を有する誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール〔アクリル酸メトキシポリエチレングリコールとメタクリル酸メトキシポリエチレングリコールとを併せて「(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール」と表記する。以下同様。〕、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。例えば、プロピレンオキサイド鎖を有する誘導体としては、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール等を挙げることができる。
【0020】
本発明では、後述の有機溶融塩(2)、およびヨウ素(3)との相溶性を考慮して、エチレンオキサイド鎖を有するモノマーが好ましく、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0021】
本発明にアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル酸誘導体及び/またはメタクリル酸誘導体(a−1)を使用する目的は、有機溶融塩(2)、およびヨウ素(3)とアルキレンオキサイドで錯体を形成させ、酸化還元により電子伝導を担うヨウ素分子との相互作用により機能を発揮させるためである。アルキレンオキサイド鎖の役割は非常に大きく、単に錯体形成の場を与えるだけでなく、ヨウ素−ヨウ化物イオン間の相互作用から、導電性の向上を図ることが出来る。言い換えると、本発明におけるイオン伝導性は、有機溶融塩(2)、およびヨウ素(3)の量とアルキレンオキサイド鎖を有する誘導体の含有量によって大きく変動する。
【0022】
アルキレンオキサイド鎖を有するアクリル酸誘導体及び/またはメタクリル酸誘導体(a−1)において、その付加モル数{(CHRCHO)のnが(R=HまたはCH)}が1〜30であることが好ましく、4〜25の範囲がより好ましい。付加モル数が30以上1未満では、電解質の特性向上効果が得られず、また30以上で、電解質中に溶解しないか、もしくは電解質の粘度向上に伴うイオン伝導性の悪化ため、好ましくない。
【0023】
本発明のアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル酸誘導体及び/またはメタクリル酸誘導体(a−1)において、この誘導体は、全誘導体100重量%中、10〜80重量%を含有することが好ましく、20〜60重量%の範囲がより好ましく、40〜60重量%の範囲がさらに好ましい。この範囲よりも少ない場合には、その有効性が希薄になり、また多い場合には、電解質の増粘効果により光電変換素子製造の際にセル内へ注入しにくくなるなどの弊害が起こるため、好ましくない。
【0024】
本発明に用いられる共重合体(A)のうち、その他のα,β−不飽和二重結合を保有する化合物(a−2)とは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物及び/またはアルケニル基含有化合物を含んでなるものであれば特に制限はない。
【0025】
例えば、(メタ)アクリル酸メチル〔アクリル酸メチルとメタクリル酸メチルとを併せて「(メタ)アクリル酸メチル」と表記する。以下同様。〕、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸iso−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;
【0026】
例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルなどの(メタ)アクリル酸環状エステル類;
【0027】
例えば、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸1−メチルアリル、(メタ)アクリル酸2−メチルアリル、(メタ)アクリル酸1−ブテニル、(メタ)アクリル酸2−ブテニル、(メタ)アクリル酸3−ブテニル、(メタ)アクリル酸1,3−メチル−3−ブテニル、(メタ)アクリル酸2−クロルアリル、(メタ)アクリル酸3−クロルアリル、(メタ)アクリル酸−o−アリルフェニル、(メタ)アクリル酸2−(アリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸アリルラクチル、(メタ)アクリル酸シトロネリル、(メタ)アクリル酸ゲラニル、(メタ)アクリル酸ロジニル、(メタ)アクリル酸シンナミル、ジアリルマレエート、ジアリルイタコン酸、(メタ)アクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、オレイン酸ビニル,リノレン酸ビニル等の不飽和基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
【0028】
例えば、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロブチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロオクチルなどの(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステル類;
【0029】
例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、ジアクリル酸1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、トリアクリル酸1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパン トリアクリル酸等の多官能(メタ)アクリル酸エステル類;
【0030】
例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル等の水酸基(アルコキシ)含有(メタ)アクリル酸エステル類;
【0031】
例えば、(メタ)アクリル酸N−メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N−トリブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N‘−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N’−ジエチルアミノエチルなどの(メタ)アミノ基含有アクリル酸エステル類;
【0032】
例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸(3−メチル−3−オキセタニル)メチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の複素環含有(メタ)アクリルプロペン酸エステル類;
【0033】
例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン,3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
【0034】
例えば、2−(2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2 H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系の(メタ)アクリル酸誘導体類;
【0035】
例えば、2−ヒドロキシ−4−{2−(メタ)アクリロイルオキシ}エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−{2−(メタ)アクリロイルオキシ}ブトキシベンゾフェノン、2, 2'−ジヒドロキシ−4−{2−(メタ)アクリロイルオキシ}エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−{2−(メタ)アクリロイルオキシ}エトキシ−4'−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系の(メタ)アクリル酸誘導体類;
【0036】
例えば、2, 4−ジフェニル−6−[ 2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)] −S−トリアジン、2, 4−ビス(2−メチルフェニル)−6−[ 2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ) ]−S−トリアジン、2, 4−ビス(2−メトキシフェニル)−6−[ 2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)] −S−トリアジン、2, 4−ビス(2−エチルフェニル)−6−[ 2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)] −S−トリアジン、2, 4−ビス(2−エトキシフェニル)−6−[ 2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)] −S−トリアジン、2, 4−ビス(2, 4−ジメトキシフェニル)−6−[ 2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)] −S−トリアジン、2, 4−ビス(2, 4−ジメチルフェニル)−6−[ 2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)] −S−トリアジン、2, 4−ビス(2, 4−ジエトキシルフェニル)−6−[ 2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)] −S−トリアジン、2, 4−ビス(2, 4−ジエチルフェニル)−6−[ 2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)] −S−トリアジン等のトリアジン系の(メタ)アクリル酸誘導体類;
【0037】
アルケニル基含有化合物としては、例えば、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1−ブチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸およびそのナトリウム塩などの芳香族ビニル系単量体;
【0038】
例えば、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、フッ化エチニリデンなどのフッ素含有ビニル系単量体;
【0039】
例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのトリアルキルオキシシリル基含有ビニル系単量体類;
【0040】
例えば、アクリルアミド、N,N‘−ジメチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド基含有ビニル系単量体類;
【0041】
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル類;
【0042】
例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸2−カルボキシエチル、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸類;
【0043】
例えば、無水イタコン酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;
【0044】
例えば、上記不飽和カルボン酸類のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル類;
【0045】
例えば、クロロエチレン、1,1−ジクロロエチレン、アリルクロライド、アリルアルコールなどが挙げられるが特にこれらに限定されるものではない。これらは、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
【0046】
また、本発明に用いられる共重合体(A)を得るにあたっては、必要に応じてこれら(a―2)以外のα,β−不飽和二重結合を保有する化合物も全誘導体100重量%中20重量%以下で使用することができる。そのような化合物の例としては、例えば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド誘導体類;
【0047】
例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、2−メチルプロペンなどのアルケン類;
【0048】
例えば、アレン、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1、3−ブタジエンなどのジエン類などが挙げられる。
【0049】
本発明において用いられる共重合体(A)は、重合に供するその他のα,β−不飽和化合物(a−2)を適宜選択することにより、その構造中にヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、マレイミド基、ニトリル基、エポキシ基、アルコキシシリル基、アリル基などの各種の官能基を有することができる。後述する反応性化合物(B)との架橋反応性を考慮すると、カルボキシル基及び/またはヒドロキシル基を有することが好ましい。
【0050】
本発明における共重合体(A)を構成するその他のα,β−不飽和化合物(a−2)は、全誘導体100重量%中、20〜90重量%を含有することが好ましく、20〜70重量%の範囲がより好ましく、20〜60重量%の範囲がさらに好ましく、20〜40重量%の範囲が特に好ましい。この範囲よりも少ない場合には、良好な接着性は得られなくなり、また多い場合には、上記アルキレンオキサイド鎖を有するアクリル酸誘導体及び/またはメタクリル酸誘導体(a−1)が少なくなるため、イオン伝導性が低下するため、好ましくない。
【0051】
上記共重合体(A)は、バランスの良い接着特性(特に、タックと凝集力の両立)を発揮し得るように、ガラス転移点(Tg)が−80〜−20℃である共重合体を形成し得るようにその他のα,β−不飽和化合物(a−2)を選択することが好ましく、ガラス転移点(Tg)が−60〜−30℃である共重合体を形成し得るようにα,β−不飽和化合物を選択することがより好ましい。
共重合体のガラス転移点が−80℃未満の場合、該共重合体を用いて得られる樹脂層の凝集力が低下し、浮き剥がれが生じやすくなる。一方、ガラス転移点が−20℃を超えると、樹脂層の十分な接着力を得ることができない可能性がある。
【0052】
従って、その他のα,β−不飽和化合物(a−2)としては、ガラス転移点(Tg)が−50℃以下のホモポリマーを形成し得る、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸iso−オクチル、アクリル酸iso−オクチル、アクリル酸n−ノニル、アクリル酸iso−ノニル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等のアルキル側鎖のアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルをα,β−不飽和化合物の全誘導体100重量%中、20〜70重量%含有していることが好ましい。
【0053】
その他のα,β−不飽和化合物(a−2)のうち、上記のα,β−不飽和化合物と共重合に供する他の化合物としては、凝集力の制御や耐熱性の向上のために、ガラス転移点(Tg)が−20〜100℃の範囲のホモポリマーを形成し得る、アルケニル基含有化合物やα,β−不飽和カルボン酸エステルであって、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、マレイミド基、ニトリル基、エポキシ基、アルコキシシリル基、アリル基などの官能基を有するものが好ましい。更に反応性化合物(B)との間に、疎密分布を明確に表さないような均質な架橋構造を形成するためには、前記官能基がカルボキシル基及び/またはヒドロキシル基であることがより好ましい。
さらに、前記官能基がカルボキシル基である場合には、カルボキシル基を有する化合物として、アクリル酸及び/またはメタクリル酸を使用することが好ましい。
【0054】
前記の、反応性化合物(B)と反応し得る各種の官能基を有する化合物の使用量は、共重合体(A)を構成するα,β−不飽和化合物の全誘導体合計100重量%中0.01〜20重量%であることが好ましい。0.01重量%未満では充分な架橋構造が得られないため、樹脂層の凝集力が低く、繰り返し使用時での安定性や耐久性に劣り、好ましくない。
また、20重量%を超えた場合、樹脂層の凝集力が高くなりすぎるため、積層された電極面との間で、環境変化により剥離し易くなるため、好ましくない。
【0055】
本発明における共重合体(A)は、その構造中に反応性化合物(B)と反応可能な官能基を有するものであり、上記したようなα,β−不飽和化合物を重合してなるものである。例えばα,β−不飽和化合物の合計100重量部に対して、0.001〜5重量部の重合開始剤を用いて塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの方法により合成される。好ましくは溶液重合で合成される。
【0056】
重合開始剤の例としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリルや2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)や2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)やジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)や2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]などのアゾ系化合物が挙げられる。
【0057】
また、過酸化ベンゾイルやt-ブチルパーベンゾエート、クメンヒドロパーオキシドやジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートやジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエートやt-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシドやジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシドなどの有機過酸化物が挙げられる。
【0058】
また合成時には、ラウリルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、リモネン等の連鎖移動剤を使用しても良い。
【0059】
上記、共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、50,000〜2,000,000であることが接着性の点で好ましく、200,000〜1,500,000の範囲がより好ましい。Mwが2,000,000を越えると共重合体の流動性が不良となって、樹脂積層体や光電変換素子を作製することが困難となり、50,000未満では樹脂層の凝集破壊が起こりやすくなるので好ましくない。
【0060】
本発明に用いられる反応性化合物(B)は、前記した共重合体(A)中の官能基と反応しうる官能基を分子内に保有した化合物であり、このような化合物としてはポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、メラミン化合物及び金属キレートなどが挙げられるが、これらの中でも、架橋剤として作用するために、共重合体(A)中の官能基と反応し得る官能基を分子内に2個以上保有した化合物が好ましく用いられる。
【0061】
共重合体(A)中の官能基がカルボキシル基の場合、反応性化合物(B)の官能基としてはイソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、アジリジル基、オキサゾリン基が挙げられる。
共重合体(A)中の官能基がヒドロキシル基の場合は、反応性化合物(B)の官能基としてはイソシアネート基、N−メチロール基が挙げられる。
特にポリイソシアネート化合物は、架橋反応後の樹脂組成物の接着性や被覆層への密着性に優れていることから好ましく用いられる。
【0062】
例えば、ポリイソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0063】
芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0064】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0065】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0066】
脂環族ポリイソシアネートとしては、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0067】
また、一部上記ポリイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソシアヌレート環を有する3量体等も併用することができる。ポリフェニルメタンポリイソシアネート(PAPI)、ナフチレンジイソシアネート、及びこれらのポリイソシアネート変性物等を使用し得る。なおポリイソシアネート変性物としては、カルボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、水と反応したビュレット基、イソシアヌレート基のいずれかの基、またはこれらの基の2種以上を有する変性物を使用できる。ポリオールとジイソシアネートの反応物もポリイソシアネートとして使用することができる。
【0068】
これらポリイソシアネート化合物としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、キシリレンジイソシネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)等の無黄変型または難黄変型のポリイシソアネート化合物を用いると耐候性の点から、特に好ましい。
【0069】
反応性化合物(B)としてポリイソシアネート化合物を使用する場合、反応促進のため、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。例えば三級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられ、単独でもあるいは複数を使用することもできる。
【0070】
3級アミン系化合物としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)等が挙げられ、場合によっては単独、もしくは併用することもできる。
【0071】
有機金属系化合物としては、錫系化合物、非錫系化合物を挙げることができる。
錫系化合物としては、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2−エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
非錫系化合物としては、例えばジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライドなどのチタン系、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛系、2−エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネートなどの鉄系、安息香酸コバルト、2−エチルヘキ酸コバルトなどのコバルト系、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛系、ナフテン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
上記触媒の中で、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、2−エチルヘキサン酸錫等が反応性や衛生性の点で好ましい。
【0072】
また、エポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA−エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1、3−ビス(N、N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0073】
アミン化合物の例としては、好ましくは1級アミノ基を2個以上有するポリアミンであり、硬化速度が優れる点から、芳香環に直接結合していない1級アミノ基を2個以上有するポリアミンである脂肪族系ポリアミン(その骨格に芳香環を含んでも良い)が好ましい。
脂肪族系ポリアミンとしては、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メンセンジアミン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン、分子両末端のプロピレン分岐炭素にアミノ基が結合したポリプロピレングリコール(プロピレン骨格のジアミン、例えば、サンテクノケミカル社製「ジェファーミンD230」、「ジェファーミンD400」等、プロピレン骨格のトリアミン、例えば、「ジェファーミンT403」等。)、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、1,2−ジアミノプロパン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、HN(CHCHO)(CHNH[サンテクノケミカル社製「ジェファーミンEDR148」(エチレングリコール骨格のジアミン)]等のアミン窒素にメチレン基が結合したポリエーテル骨格のジアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(デュポン・ジャパン社製「MPMD」)、メタキシリレンジアミン(MXDA)、ポリアミドアミン(三和化学社製「X2000」)、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(三菱ガス化学社製「1,3BAC」)、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミン、ノルボルナン骨格のジメチレンアミン(三井化学社製「NBDA」)等を挙げることができる。
これらの中でも、特に硬化速度が高いことから、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ノルボルナン骨格のジメチレンアミン、メタキシリレンジアミン、HN(CHCHO)(CHNH(エチレングリコール骨格のジアミン)、プロピレン骨格のジアミン、プロピレン骨格のトリアミン、ポリアミドアミン(商品名:X2000)が有用に使用される。
【0074】
また、これらのポリアミンとケトンとの反応物であるケチミンもアミノ系化合物に含まれ、安定性、反応性の調整および重ね塗り性の観点から、アセトフェノンまたはプロピオフェノンと1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンとから得られるもの;アセトフェノンまたはプロピオフェノンとノルボルナン骨格のジメチレンアミン(NBDA)とから得られるもの;アセトフェノンまたはプロピオフェノンとメタキシリレンジアミンとから得られるもの;アセトフェノンまたはプロピオフェノンと、エチレングリコール骨格またはプロピレン骨格のジアミンであるジェファーミンEDR148、ジェファーミンD230、ジェファーミンD400等またはプロピレン骨格のトリアミンであるジェファーミンT403等とから得られるもの等も使用することができる。
【0075】
アジリジン化合物の例としては、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)ブチレート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−(2−メチル)アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)−2−メチルプロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラ[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ジフェニルメタン−4,4−ビス−N,N′−エチレンウレア、1,6−ヘキサメチレンビス−N,N′−エチレンウレア、2,4,6−(トリエチレンイミノ)−Syn−トリアジン、ビス[1−(2−エチル)アジリジニル]ベンゼン−1,3−カルボン酸アミド等が挙げられる。
【0076】
カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド基(−N=C=N−)を分子内に2個以上有する化合物が好ましく用いられ、公知のポリカルボジイミドを用いることができる。
【0077】
また、カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応によって生成した高分子量ポリカルボジイミドも使用できる。
このような化合物としては、以下のジイソシアネートを脱炭酸縮合反応したものが挙げられる。
ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1−メトキシフェニル−2,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートの内の一種、またはこれらの混合物を使用することができる。
【0078】
カルボジイミド化触媒としては、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、あるいはこれらの3−ホスホレン異性体等のホスホレンオキシドを利用することができる。
【0079】
このような高分子量ポリカルボジイミドとしては日清紡績株式会社製のカルボジライトシリーズが挙げられる。その中でもカルボジライトV−01,03,05,07,09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0080】
オキサゾリン化合物としては、分子内にオキサゾリン基を2個以上有する化合物が好ましく用いられ、具体的には、2′−メチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−プロピレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4−フェニレンビス−2−オキサゾリン)、2,2′−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−o−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)等を挙げることができる。または、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンや、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリンなどのビニル系誘導体とこのビニル系誘導体と共重合しうる他の誘導体との共重合体樹脂でもよい。
【0081】
メラミン化合物としては、トリアジン環を分子内に有する化合物であり、メラミン、ベンゾグアナミン、シクロヘキサンカルボグアナミン、メチルグアナミン、ビニルグアナミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン等が挙げられる。また、これらの低縮合化物やアルキルエーテル化ホルムアルデヒド樹脂やアミノプラスト樹脂を使用しても良い。
【0082】
金属キレート化合物の例としては、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウムなどの多価金属がアセチルアセトンやアセト酢酸エチルに配位した化合物を挙げられる。
【0083】
本発明の樹脂組成物は、共重合体(A)100重量部に対して、反応性化合物(B)を0.001〜20重量部含有することが好ましく、0.01〜10重量部含有することがより好ましい。反応性化合物(B)の使用量が、20重量部を越えると得られる樹脂組成物の接着性が低下傾向となり、また0.001重量部未満では凝集力が低下し、耐熱性、耐湿熱性が低下する傾向にある。
共重合体(A)中の官能基と反応性化合物(B)中の官能基との反応により、樹脂組成物が三次元架橋し、各種被着体との密着性を確保するだけでなく、含有している後述の有機溶融塩(2)、およびヨウ素(3)の局在化によるイオン伝導性能変化を防止し、従来よりも過酷な条件下における耐熱性及び耐湿熱性をも向上することができるため、光電変換素子用として好ましく使用することができる。
【0084】
本発明における有機溶融塩(2)としては、有機カチオン、もしくは無機、有機アニオンから成るものを指す。
【0085】
具体的に有機溶融塩部を構成する有機カチオンとしては、例えば芳香族系カチオン類として、N-メチル-N'-エチルイミダゾリウムカチオン、N-メチル-N'-n-プロピルイミダゾリウムカチオン、N-メチル-N'-n-プロピル-2-メチルイミダゾリウムカチオン、N-メチル-N'-n-ヘキシルイミダゾリウムカチオン等のN-アルキル-N'-アルキルイミダゾリウムカチオン類、N-ヘキシルピリジニウムカチオン、N-ブチルピリジニウムカチオン等のN-アルキルピリジニウムカチオン類等が挙げられる。また、脂肪族カチオン類として、N,N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウムカチオン等の脂肪族系カチオン類、N,N-メチルピロリジニウム等の環状脂肪族カチオン類が挙げられる。
【0086】
具体的に有機溶融塩部を構成する無機、有機アニオンとしては、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン、六フッ化リンイオン、4フッ化ホウ素イオン、三フッ化メタンスルホン酸塩、過塩素酸イオン、次塩素酸イオン、塩素酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン等無機アニオン類、ビス(トリフロロメチルスルホニル)イミド等のアミド、イミド系アニオン類等が挙げられる。
【0087】
本発明において用いられる有機溶融塩(2)の添加量は、好ましくは使用するアクリル系共重合体の合計100重量部に対して、有機溶融塩を0.1〜50重量部の範囲、更に好ましくは0.5〜30重量部の範囲が好ましい。この範囲をよりも多くの有機溶融塩を添加させることは、その他の構成分を考慮すると実質的に出来ず、またこれよりも少ない添加量では、光電変換素子を形成した際の電気的出力が低下するため好ましくない。
【0088】
本発明において用いられるヨウ素(3)は、電解質内において酸化還元を繰り返すことによって電子の移動を媒介する活物質である。特に有機溶融塩部を構成するアニオンがヨウ化物イオンだった場合には添加しなくても電子の移動を媒介することが出来るが、好ましくは電解質総重量に対し0.1重量部、更に好ましくは3重量部程度添加することで、電子の移動を考慮すると好ましい。さらに、添加量が15重量部を超える場合には、ヨウ素の持つ光の吸収によって素子の起電量が減少してしまう。これらのことを勘案し、ヨウ素の添加量はこの範囲が好ましい。
【0089】
本発明において用いられる電解質には、これらの成分の他にその素子特性、素子製造時のライン適性、実際の使用時における素子特性等を考慮し、その他の溶剤を0〜49.9重量部の範囲で加えることも出来る。
【0090】
本発明における色素増感型光電変換素子とは、非特許文献1に指し示されるような、導電性透明基板状に成形された多孔質半導体層からなる電極と、導電性を有する対極、その間をヨウ化物イオン、及びヨウ素化合物を酸化還元媒体として電解質によって構成される光電変換素子である。好ましくは、多孔質半導体層には増感色素と称される化合物を吸着してなる素子である。
【実施例】
【0091】
以下に、本発明における電解質、さらには素子化についての詳細な実施例を示す。また、下記実施例および比較例中、「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
【0092】
まず、以下の方法で表1に示す共重合体(A)溶液を製造した後、反応性化合物(B)を含有させて表2に示す樹脂組成物(1)を調整し実施例に用いた。
<共重合体(A)の製造>
(合成例1)
重合槽、攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた重合反応装置の重合槽及び滴下装置に、下記α、β−不飽和化合物をそれぞれ下記の比率で仕込んだ。
【0093】
[重合槽]
アクリル酸2−エチルヘキシル 20部
アクリル酸n−ブチル 7部
アクリル酸メチル 3部
アクリル酸2−ヒドロキシエチル 0.5部
酢酸エチル 40部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.05部
[滴下装置]
アクリル酸2−エチルヘキシル 20部
アクリル酸n−ブチル 9部
アクリル酸ポリエチレングリコール(「NKエステルAM130G」)
(付加モル数=13、新中村化学社製) 40部
アクリル酸2−ヒドロキシエチル 0.5部
酢酸エチル 60部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.05部
【0094】
重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下中、環流温度下で反応を開始した。重合率が約70%まで達したところで、滴下装置から上記α、β−不飽和化合物と重合開始剤及び有機溶剤との混合物の滴下を開始した。滴下終了後、さらに攪拌しながら8時間熟成した後、トルエン:133部を加えて室温まで冷却し、α、β−不飽和化合物の共重合体を含む透明な溶液を得た。この得られた溶液は、不揮発分濃度30.0%、粘度2000mPa・s、Mw(重量平均分子量)600,000であった。
【0095】
(合成例2)
合成例1において用いたα、β−不飽和化合物の組成を変更して、重合槽及び滴下装置にそれぞれ下記の比率で仕込み、それ以外は合成例1と同様にして重合し、α、β−不飽和化合物の共重合体を含む透明な溶液を得た。
[重合槽]
アクリル酸2−エチルヘキシル 35部
アクリル酸メチル 4部
アクリル酸 0.5部
酢酸エチル 40部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.05部
[滴下装置]
アクリル酸2−エチルヘキシル 20部
メタクリル酸ポリエチレングリコール(「ブレンマーPME1000」)
(付加モル数=23、日本油脂社製) 40部
アクリル酸 0.5部
酢酸エチル 60部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.05部
【0096】
(合成例3)
合成例1において用いたα、β−不飽和化合物の組成を変更して、重合槽及び滴下装置にそれぞれ下記の比率で仕込み、それ以外は合成例1と同様にして重合し、α、β−不飽和化合物の共重合体を含む透明な溶液を得た。
[重合槽]
アクリル酸2−エチルヘキシル 35部
メタクリル酸メチル 4部
メタクリル酸ポリエチレングリコール(「ライトエステル130MA」)
(付加モル数=9、共栄社化学社製) 10部
アクリル酸 0.5部
酢酸エチル 40部
t-ブチルパーベンゾエート 0.05部
[滴下装置]
アクリル酸2−エチルヘキシル 20部
メタクリル酸ポリエチレングリコール(「ライトエステル130MA」)
(付加モル数=9、共栄社化学社製) 30部
アクリル酸 0.5部
酢酸エチル 60部
t-ブチルパーベンゾエート 0.05部
【0097】
(合成例4)
合成例1において用いたα、β−不飽和化合物の組成を変更して、重合槽及び滴下装置にそれぞれ下記の比率で仕込み、それ以外は合成例1と同様にして重合し、α、β−不飽和化合物の共重合体を含む透明な溶液を得た。
[重合槽]
アクリル酸ブチル 20部
酢酸ビニル 4部
アクリル酸ポリエチレングリコール(「エベクリルODA−N」)
(付加モル数=7,9、ダイセルユーシービー社製) 40部
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 0.5部
酢酸エチル 40部
t-ブチルパーベンゾエート 0.05部
[滴下装置]
アクリル酸n−ブチル 35部
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 0.5部
酢酸エチル 60部
t-ブチルパーベンゾエート 0.05部
【0098】
(合成例5) 比較例用(エチレンオキサイド鎖無し)
合成例1において用いたα、β−不飽和化合物の組成を変更して、重合槽及び滴下装置にそれぞれ下記の比率で仕込み、それ以外は合成例1と同様にして重合し、α、β−不飽和化合物の共重合体を含む透明な溶液を得た。
【0099】
[重合槽]
アクリル酸2−エチルヘキシル 40部
アクリル酸n−ブチル 7部
アクリル酸メチル 3部
アクリル酸2−ヒドロキシエチル 0.5部
酢酸エチル 40部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.05部
[滴下装置]
アクリル酸2−エチルヘキシル 40部
アクリル酸n−ブチル 9部
アクリル酸2−ヒドロキシエチル 0.5部
酢酸エチル 60部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.05部
【0100】
(合成例6) 比較例用(エチレンオキサイド鎖:10重量%未満)
合成例1において用いたα、β−不飽和化合物の組成を変更して、重合槽及び滴下装置にそれぞれ下記の比率で仕込み、それ以外は合成例1と同様にして重合し、α、β−不飽和化合物の共重合体を含む透明な溶液を得た。
【0101】
[重合槽]
アクリル酸2−エチルヘキシル 32部
アクリル酸n−ブチル 7部
アクリル酸メチル 3部
アクリル酸2−ヒドロキシエチル 0.5部
酢酸エチル 40部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.05部
[滴下装置]
アクリル酸2−エチルヘキシル 40部
アクリル酸n−ブチル 9部
アクリル酸ポリエチレングリコール(「NKエステルAM130G」)
(付加モル数=13、新中村化学社製) 8部
アクリル酸2−ヒドロキシエチル 0.5部
酢酸エチル 60部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.05部
【0102】
(合成例7)比較例用(エチレンオキサイド鎖:80重量%を超える)
合成例1において用いたα、β−不飽和化合物の組成を変更して、重合槽及び滴下装置にそれぞれ下記の比率で仕込み、それ以外は合成例1と同様にして重合し、α、β−不飽和化合物の共重合体を含む透明な溶液を得た。
【0103】
[重合槽]
アクリル酸2−エチルヘキシル 5部
アクリル酸n−ブチル 2部
アクリル酸メチル 1部
アクリル酸ポリエチレングリコール(「NKエステルAM130G」)
(付加モル数=13、新中村化学社製) 40部
アクリル酸2−ヒドロキシエチル 0.5部
酢酸エチル 40部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.05部
[滴下装置]
アクリル酸2−エチルヘキシル 5部
アクリル酸n−ブチル 1部
アクリル酸ポリエチレングリコール(「NKエステルAM130G」)
(付加モル数=13、新中村化学社製) 45部
アクリル酸2−ヒドロキシエチル 0.5部
酢酸エチル 60部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.05部
【0104】
合成例1〜7で得られたα,β−不飽和化合物の共重合体(A)について、溶液外観、不揮発分濃度(%)、溶液粘度、重量平均分子量(Mw)を以下の方法に従って求め、結果を表1に示した。
【0105】
《溶液外観》
共重合体(A)溶液の外観を目視にて評価した。
【0106】
《不揮発分濃度の測定》
共重合体(A)の各溶液、約1gを金属容器に秤量し、150℃オーブンにて20分間乾燥して、残分を秤量して残率計算をし、不揮発分濃度(%)とした。
【0107】
《溶液粘度の測定》
共重合体(A)の各溶液を23℃中でB型粘度計(東京計器社製)にて、#3のローターを使用して12rpm、1分間回転の条件で測定し、溶液粘度(mPa・s)とした。
【0108】
《重量平均分子量(Mw)の測定》
Mwの測定は昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPC System−21」を用いた。GPCは溶媒に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0109】
共重合体(A)溶液
【表1】

【0110】
共重合体(A)及び反応性化合物(B)を含有する樹脂組成物(1)
【表2】


TDI/TMP(トルレンジイソシネートのトリメチローププロパンアダクト体)
TAT(トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン)
【0111】
(実施例1)
《電解質の調製》
有機溶融塩を含む電解質組成物を有機溶融塩混合物と称し、以下に示す有機溶融塩混合物(1)または(2)と表1に示す樹脂組成物(1)を用い、表3に示す様に色素増感型光電変換素子用電解質を調整した。素子評価および耐久性試験結果
【0112】
有機溶融塩混合物(1)
3−メトキシプロピオニトリル 10部
ヨウ化リチウム 0.27部
ヨウ素 0.25部
4−ターシャリーブチルピリジン 1.35部
N-メチル-N'-n-プロピル-2-メチルイミダゾリウムヨウ化物(DPMII) 3.2部
【0113】
有機溶融塩混合物(2)
ヨウ素 5部
N-メチル-N'-ヘキシルイミダゾリウムヨウ化物塩(HMII)6部
N-メチル-N'-エチルイミダゾリウムテトラフロロボーレート 4部
【0114】
色素増感型光電変換素子用電解質の調整
【表3】

【0115】
(実施例2) 光電変換素子特性の評価
素子材料の調製(電極の調製)
酸化スズ膜を形成させた導電ガラス上に、酸化チタン分散液をハンドアプリケータにて焼成後の膜厚においておよそ10マイクロメートル程度、幅10ミリメートルに塗工し、その後100℃で30分、さらに460℃で40分程度乾燥、焼成を行った。このときの塗膜厚を実測したところ8マイクロメートルであった。こうして得られた多孔質膜を、ルテニウム色素(ソーラロニックス社製ルテニウム535)0.5ミリモル/リットルのエタノール溶液に24時間含浸させた。含浸終了後、エタノールで過剰の色素を洗浄し、60℃で20分間乾燥させた。
【0116】
光電変換素子の組み立て
前項にて調製した透明電極の酸化チタン焼成部が1センチメートル平方の正方形となるようにもう一辺の酸化チタン焼成膜を削切した。さらに厚さ25マイクロメートルのポリプロピレンフイルムをスペーサーとし、セルを構成した。
そのスペーサーの上から正方形に削切した酸化チタン焼成膜に、調製した電解質20マイクロリットルを塗工し、その上から白金板で覆い封止材で固定する事で素子を作成した。さらに3日以上放置することによって硬化剤による樹脂の硬化を待って素子の光電変換特性を測定した。
【0117】
光電変換特性の測定
こうして得られた光電変換素子の透明電極部、及び白金対極部に電極を取り付けた。さらに、AM−1.5条件下における素子特性を、短絡電流密度(Jsc, mA/cm2)、開放電圧(Voc, mV)、光電変換効率(μ, %)の面から評価を行った。
セルを温度40℃、湿度80%の環境試験器中に30日間保存する耐久性試験を行ったのち、再度素子特性評価を実施した。この際、光電変換効率の残存率を下記式(1)にて算出した。素子評価および耐久性試験結果を表4に示す。
【0118】
式(1)
残存率(%)=耐久試験後の変換効率(%)÷耐久試験前の変換効率(%)×100
【0119】
素子評価および耐久性試験結果
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明では、側鎖にアルキレンオキサイド鎖を有するα,β−不飽和化合物を重合させてなる共重合体(A)及び反応性化合物(B)を含有する樹脂組成物(1)、有機溶融塩(2)、およびヨウ素(3)とを含有することで、光電変換特性および耐久性が向上することを見出した。このことはヨウ素を酸化・還元媒体として電子を輸送する電解質のイオン伝導性の向上によるものと考えられる。特に本発明における効果は、特定の有機溶融塩によって構成される場合に顕著な効果を発揮する。このため、その他の酸化還元媒体を用いて電子を輸送する電解質については、本発明において示される側鎖にアルキレンオキサイド鎖を有するα,β−不飽和化合物を重合させてなる共重合体(A)を添加することで、そのイオン伝導性を高めることが出来る可能性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α,β−不飽和化合物を重合させてなる共重合体であって、アルキレンオキサイド鎖を有するアクリル酸誘導体及び/またはメタクリル酸誘導体(a−1)を全誘導体100重量%中に10〜80重量%と、その他のα,β−不飽和結合を有する化合物(a−2)20〜90重量%とから形成された共重合体(A)と、共重合体(A)中の官能基と反応し得る反応性化合物(B)とを含むことを特徴とする樹脂組成物(1)、有機溶融塩(2)並びにヨウ素(3)を含んでなる色素増感型光電変換素子用電解質組成物。
【請求項2】
前記アルキレンオキサイド鎖がエチレンオキサイド鎖であり、その付加モル数が1〜30であることを特徴とする請求項1記載の色素増感型光電変換素子用電解質組成物。
【請求項3】
共重合体(A)中の官能基がカルボキシル基であることを特徴とする請求項1または2記載の色素増感型光電変換素子用電解質組成物。
【請求項4】
共重合体(A)中のカルボキシル基がアクリル酸及び/またはメタクリル酸に由来することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の色素増感型光電変換素子用電解質組成物。
【請求項5】
共重合体(A)中の官能基がヒドロキシル基であることを特徴とする請求項1または2いずれか記載の色素増感型光電変換素子用電解質組成物。
【請求項6】
共重合体(A)100重量部に対して、反応性化合物(B)0.001〜20重量部を含むことを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の色素増感型光電変換素子用電解質組成物。
【請求項7】
共重合体(A)を構成するα,β−不飽和化合物の合計100重量%中、反応性化合物(B)と反応し得る官能基を有する誘導体を0.01〜20重量%の割合で含むことを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の色素増感型光電変換素子用電解質組成物。
【請求項8】
反応性化合物(B)が、共重合体(A)中の官能基と反応し得る官能基を1分子中に2個以上有することを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の色素増感型光電変換素子用電解質組成物。
【請求項9】
樹脂組成物(1)が感圧式接着剤組成物であることを特徴とする請求項1〜8いずれか記載の色素増感型光電変換素子用電解質組成物。
【請求項10】
上記樹脂組成物(1)100重量部に対して、有機溶融塩(2)0.1〜1000重量部、およびヨウ素(3)0〜500重量部を含有することを特徴とする請求項1〜9いずれか記載の色素増感型光電変換素子用電解質組成物。
【請求項11】
請求項10記載の色素増感型光電変換素子用電解質組成物を用いてなる電解質。
【請求項12】
請求項11記載の電解質及び光電変換部材とからなることを特徴とする樹脂積層体。
【請求項13】
請求項11記載の電解質を用いてなる光電変換素子。


【公開番号】特開2007−194102(P2007−194102A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12076(P2006−12076)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】