説明

芳香族化合物のハイドロクラッキング方法

オイルサンド、タールサンドおよびシェール油のようなより非通常型炭化水素原料が開発されつつある。このような原料を処理すると縮合多環芳香族化合物を含有する重油、ガスオイル、アスファルテン等のような生成物をより多量に生成する。これらの縮合多環芳香族化合物は、最初に同化合物内の少なくとも一環を水素化し、次いで同生成物を開環・開裂反応で処理することにより炭化水素クラッキング装置の原料に転化できる。この結果の生成物は、クラッキング装置の原料に適した低級パラフィン類、例えばガソリン留分として適切な高級パラフィン類、およびその後更に処理してもよい単環芳香族化合物(たとえばBTX)により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族環が2個以上縮合した化合物を処理して少なくとも1環を飽和し次いで生成した飽和環を同化合物の芳香族部分から開裂してC2−4アルカン・ストリームと芳香族ストリームを同時にあるいは逐次に製造するためのプロセスに関する。より詳細には、本発明のプロセスは炭化水素(例えばエチレン)の(スチーム)クラッキング装置と組み合わせて統合型プロセスを形成し、同クラッキング装置からの水素を2個以上の芳香族環を有する化合物の飽和・開裂のために使用し、生成したC2−4アルカン・ストリームを同炭化水素クラッキング装置に送るようにしてよい。更に、本発明のプロセスは炭化水素のクラッキング装置(例えば、スチーム・クラッキング装置)およびエチルベンゼン装置と組み合わせてよい。特に、本発明はオイルサンド、タールサンド、シェール油あるいは縮合環を有する芳香族化合物を高濃度で含有しているどのような重質残渣をも処理して石油化学製品の製造に適したストリームを製造するために使用してよい。
【背景技術】
【0002】
多くの工業目的に使用される低級オレフィン類の製造のための低級パラフィン類(例えばC2−4アルカン類)の需要は引き続き存在している。シェール油、オイルサンドおよびタールサンドを処理する場合、少なくとも2個の芳香族環が縮合した化合物を含有する残渣ストリームが典型的には存在している。これらの化合物種は、例えば燃料として使用可能な高級アルカン類(例えばC5−8)を製造するために、これまでハイドロクラッキング処理を受けてきている。
【0003】
米国特許6,652,737(2003年11月25日、発明者:Touveille他、譲渡人:エクソンモービル・リサーチ・アンド・エンジニアリング社)は、ナフテン原料(すなわち、アルカン類およびシクロパラフィン類を高濃度(好ましくは75質量%)で含有する原料)を処理する一つの現今のアプローチを開示している。シクロパラフィン類は第三炭素において開環反応を受ける。同生成物は軽質オレフィン類(例えば、エチレンおよびプロピレン)ストリームを含有する。本発明は異なるアプローチを採用している。その原料は不飽和化合物(特に2個以上の縮合芳香族環を有する化合物)をより高濃度で含有している。これらの化合物は部分的に水素化処理を受けて少なくとも1環は飽和し、その結果の生成物は開環・開裂反応を受けて低級(すなわちC2−4)アルカン類となる。
【0004】
他のアプローチが、米国特許4,956,075(1990年9月11日、発明者:Angevine他、譲渡人:エクソンモービル・リサーチ・アンド・エンジニアリング社)により開示されている。同特許は大形ゼオライトにより担持されたMn触媒の存在下でのガスオイル、タールサンドあるいはシェール油の処理を開示しており、これはガソリンあるいはアルキル化プロセスに適したより高級のアルカン・ストリームの製造を目的としている。本発明は異なった触媒を用いて異なった生成物ストリームを製造する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、2個以上の縮合芳香族環を有する芳香族化合物を相当な濃度(例えば20質量%以上)で含有する原料を処理するためのプロセスの提供を狙っている。最初に一つの環が飽和され、次いで開環・開裂反応を受けて低級(C2−4)アルカン・ストリームを含有する生成物ストリームを与える。同低級アルカン類は、次いでオレフィン類製造のために通常型のクラッキング処理を受けてよい。好ましい実施態様では、同プロセスはスチーム・クラッキング・プロセスと組み合わせて、同プロセスからの水素を飽和・開環工程のために使用してよい。本発明のプロセスはシェール油あるいはタールサンドからの回収油からの重質留分(ガスオイル)の処理に特に有用である。このような留分は、この種の資源の処理が増加するに従いその容量が相当増加することが期待される。
【0006】
(発明の開示)
本発明は、少なくとも2個の縮合芳香族環を有する1種あるいは複数種の化合物を20質量%以上含有する原料をハイドロクラッキングするプロセスの提供を狙っており、これらの化合物は非置換あるいは2個までのC1−4アルキル・ラジカルで置換されており、以下の工程を同時にあるいは逐次に実施することによりC2−4アルカン類混合物を35質量%以上含有する生成物ストリームを製造する。
【0007】
(i)上記原料を300〜500°Cの温度下2〜10MPaの圧力下で、原料1,000kg当たり100〜300kgの水素と芳香族水素化触媒の存在下で運転される環飽和ユニットで処理するかあるいはそれを通過させ、上記の少なくとも2個の縮合芳香族環を有する1種あるいは複数種の化合物(これらは非置換あるいは2個までのC1−4アルキル・ラジカルで置換されており、その芳香族環の少なくとも1個は完全に飽和されている)を60質量%以上含有するストリームを生成する;
【0008】
(ii)同生成ストリームを200〜600°Cの温度下1〜12MPaの圧力下で、同ストリーム1,000kg当たり50〜200kgの水素と環開裂触媒の存在下で運転される環開裂ユニットで処理するかあるいはそれを通過させる;および
【0009】
(iii)同生成物をC2−4アルカン・ストリーム、液体パラフィン・ストリームおよび芳香族ストリームに分離する。
【0010】
更に、本発明は少なくとも2個の縮合芳香族環を有する1種あるいは複数種の化合物(これらの化合物は非置換あるいは2個までのC1−4アルキル・ラジカルで置換されている)を5質量%以上、典型的には10質量%以上含有する炭化水素原料のアップグレーディングのための統合されたプロセスをも提供し、同プロセスはいくつかの蒸留工程により同炭化水素原料を処理して、少なくとも2個の縮合した芳香族環を有する1種あるいは複数種の化合物(これらの化合物は非置換あるいは2個までのC1−4アルキル・ラジカルで置換されている)を20質量%以上含有する中間ストリームを製造する。このようなアップグレーディングは以下の工程により達成される:
【0011】
(i)上記中間ストリームを300〜500°Cの温度下2〜10MPaの圧力下、原料1,000kg当たり100〜300kgの水素と芳香族水素化触媒の存在下で運転される環飽和ユニットで処理するかあるいはそれを通過させ、上記の少なくとも2個の縮合芳香族環を有する1種あるいは複数種の化合物(これらは非置換あるいは2個までのC1−4アルキル・ラジカルで置換されており、その芳香族環の少なくとも1個は完全に飽和されている)を60質量%以上含有するストリームを生成する;
【0012】
(ii)同生成ストリームを200〜600°Cの温度下1〜12MPaの圧力下、同原料ストリーム1,000kg当たり50〜200kgの水素と環開裂触媒の存在下で運転される環開裂ユニットで処理するかあるいはそれを通過させる;および
【0013】
(iii)同生成物をC2−4アルカン・ストリーム、液体パラフィン・ストリームおよび芳香族ストリームに分離する。
【0014】
本発明の一実施態様では、上記の処理は単独のユニットにより実施され、これは同時処理と考えられる。このようなアプローチの欠点は、同ユニットはより低い質量基準の時間当たり空間速度(WHSV)で運転せざるを得ない点である。好ましくは、同プロセスは2基の独立したユニットにより逐次的に実施され、この場合には全体としてのWHSVは増加する。
【0015】
更に好ましい本発明の実施態様は、オレフィン・クラッキング・プロセス、更には随意的にエチルベンゼン装置と組み合わされた上記プロセスを提供する。
【0016】
(発明を実施するための最良の形態)
シェール油、タールサンドあるいはオイルサンドのようなより非通常型炭化水素源の使用量が増加している。炭化水素源としてのこれらの物質は、一般的には5質量%、典型的には8質量%超、一般的には10質量%超ではあるが15質量%以下の芳香族化合物を含有している。
【0017】
今後5年以内に、アサバスカ・タール・サンドの処理によって相当な量のアスファルテン、残渣油および減圧ガスオイル等のような生成物(例えば、多環芳香族での環、特に縮合されていてもよい2個以上の芳香族環を有する残渣油/生成物)が得られると予測されている。本発明は、これらの生成物を処理/ハイドロクラッキングして低級(C2−4)アルカン類(パラフィン類)を製造するプロセスの提供を狙っている。この結果得られるアルカン類はオレフィン類に分解でき、また更に処理(例えば重合等)できる。
【0018】
本発明での環飽和/開環工程に用いられる原料は典型的には2個の縮合芳香族環を有する化合物を20質量%以上、好ましくは40〜55質量%含有し、また3個以上の縮合芳香族環を有する化合物を5〜20質量%、好ましくは8〜14質量%含有する。同原料は1個の縮合芳香族環を有する化合物を10〜25質量%、好ましくは12〜21質量%含有してよい。これらの芳香族化合物は非置換でもよいし、また全面的に置換されていてもよい。典型的には、約4個以下、好ましくは2個以下のC1−4アルキル・ラジカル、好ましくはC1−2アルキル・ラジカルからなる群から選ばれる置換基で置換されてよい。同原料は少量の硫黄および窒素を含有してよい。典型的には窒素は原料中に700ppm未満、好ましくは約250〜500ppm存在してよい。硫黄は原料中に2,000〜7,500ppm、好ましくは約2,000〜5,000ppm存在してよい。同原料は、本発明のプロセスにより処理される前に硫黄および窒素を除去するために、あるいはその後の処理のためにそれらの濃度を通常のレベルにまで低下するために処理してよい。
【0019】
採用されるプロセスによっては、同原料は同時あるいは統合プロセス(同一の反応器で処理される)により処理される場合には、最初の反応器に質量基準の時間当たり空間速度(WHSV)として0.1〜1×10−1、典型的には0.2〜2h−1の速度で供給され、また連続的につながれた複数の反応器による逐次プロセスの場合には典型的には1×10〜1×10−1の速度で供給される(一部のプロセスでは空間速度として容量基準の時間当たり速度(LHSV)を用いる)。LHSVとWHSVの関係はLHSV=WHSV/ストリームの(平均)密度で表される。
【0020】
本発明の最初の工程では、2個以上の縮合芳香族環を含有する化合物の少なくとも1環を飽和(水素化)するために環飽和ユニットで処理する。この工程では、典型的には60質量%以上、好ましくは75質量%、最も好ましくは85質量%以上の多環芳香族が完全に飽和された一つの芳香族環を有する。
【0021】
一般的には、同プロセスは300〜500°C、好ましくは350〜450°Cの温度下、2〜10MPa、好ましくは4〜8MPaの圧力下で実施される。
【0022】
同水素化は、耐熱性の担体に担持された水素化/水素化処理触媒の存在下で実施される。水素化/水素化処理触媒は当業界ではよく知られている。これらの触媒は、一般的には耐熱性担体(典型的にはアルミナ)に担持されたニッケル、タングステン(ウォルフラム)およびモリブデンの混合物により構成される。これらの金属は、Ni、WおよびMoからなる群から選ばれる1種あるいは複数種の金属を触媒全体(すなわち担体および金属の合計)に対して0.0001〜5質量%、好ましくは0.05〜3質量%、最も好ましくは1〜3質量%含有する。同触媒の一つの(そして典型的には最も普通の)活性形態は硫化物であり、従って同触媒は硫化物の形で担体に担持される。硫化処理工程は、反応器の外部で実施されてもよいし、水素化反応が開始される以前の段階で反応器の内部で実施されてもよい。適切な触媒の例としてはNi、MoおよびNi/W二金属触媒を上記濃度範囲に含有するものが挙げられる。
【0023】
同水素化/水素化処理触媒は、硫黄および窒素成分の濃度も低下する(あるいは、開裂反応に送られる原料中のこれらを低濃度まで除去する)。一般的には、水素化/水素化処理を受ける原料は硫黄を約2000〜7500ppm、窒素を約200〜650ppm含有する可能性がある。水素化/水素化処理を受けたストリームは硫黄を約100ppmを越えて、また窒素を約20ppmを越えて含有してはならない。
【0024】
芳香族環飽和(水素化/水素化処理)工程では、原料1,000kg当たり100〜300kg、好ましくは100〜200kgの水素を反応器に供給する。
【0025】
本発明を実施する際の考慮事項の一つは、原料中の各種芳香族化合物の安定性である。ベンゼン環は非常に安定である。単独の反応器内で同芳香族環を飽和/開裂するためには多量のエネルギーと比較的狭い範囲内にある処理条件が必要である。従って、適切な条件下では同芳香族環は単独の反応器内で飽和/開裂できる(例えば、単独の反応器内での同時反応あるいは「一段工程」プロセス)。これら処理条件の一つが、実施例1および2に示すように、長い滞留時間である。滞留時間の延長(すなわち低WHSV条件)によりベンゼンおよびメチルナフタレンは単独反応器(一段処理)プロセスによりパラフィン類に転化が可能である。更に、同原料の硫黄および窒素濃度は低レベルであり、かつそれの組成範囲は比較的狭い(例えば、同一あるいは実質的に同一の芳香族化合物類を含有する)必要がある。芳香族化合物に関する上記制約は連続式プロセスあるいは反応器に対しても当てはまる。回分式反応器では異なった芳香族化合物が存在してよい。このようなことは困難さが内包されるかもしれないが、一段工程プロセスは開裂触媒の試験のためには有用である。実施例で使用された触媒はゼオライト担体(ZSM−5)に担持されたPdであった。
【0026】
複数の縮合芳香族環を有する化合物の場合、これらの環の一つはかなり素早く水素化あるいは部分的に水素化される(例えば、炭素原子が共有されていない状態)。本発明のプロセスの第二段階では、処理された環の水素化部分は開裂される可能性がある。同環の飽和部分(4炭素鎖)の開裂により、短鎖アルキル基を有する化合物と単独芳香族化合物あるいは1環が抜けた縮合多環芳香族化合物が得られる。その結果生成される多環芳香族化合物はプロセス内で再循環されてよい。本発明の更な実施態様では、エチルベンゼン装置と組み合わされてよい。従って、より安定したベンゼンの水素化を試みるよりは、上記統合プロセス内のエチルベンゼン装置に供給してよい。
【0027】
縮合環の水素化および開裂プロセスの第二段階は、環開裂工程である。環飽和工程での生成物は環飽和部分の開裂のための環開裂プロセスで処理される。一般的には、同第二段階は200〜600°C、好ましくは350〜500°Cの温度下、1〜12MPa、好ましくは3〜9MPaの圧力下で実施される。
【0028】
同環開裂工程では、水素は原料1,000kg当たり50〜200kg、好ましくは50〜150kgの割合で供給される。
【0029】
同環開裂反応は下記の金属成分および担体により構成される触媒の存在下で進行する。同触媒は、好ましくはPd、Rh、Ru、Ir、Os、Cu、Co、Ni、Pt、Fe、Zn、Ga、In、Mo、WおよびVからなる群から選ばれる1種あるいは複数種金属を包含する。逐次プロセス(例えば二段工程プロセス)においては、上記のどの触媒成分をも開裂反応のために使用できる。
【0030】
同環開裂プロセスに使用される触媒では、同金属を触媒全体(例えば担体および金属の合計)に対して0.0001〜5質量%、好ましくは0.05〜3質量%、最も好ましくは1〜3質量%含有する。
【0031】
同環開裂触媒は典型的にはアルミノシリケート、シリコアルミノフォスフェートおよびガロシリケートなどからなる群から選ばれる担体に担持されて使用される。
【0032】
好ましくは、同環開裂触媒用の担体はモルデナイト、カンクリナイト、グメリナイト、フォージャサイト、クリノプチロライトおよび合成ゼオライトからなる群から選ばれ、ここでこれらの担体は酸性状態である(すなわち、環開裂触媒の酸成分あるいは酸性成分)。合成ゼオライトは、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−23、MCM−22、SAPO−40、ベータ、合成カンクリナイト、CIT−1、合成グメリナイト、リンデのLタイプ、ZSM−18、合成モルデナイト、SAPO−11、EU−1、ZSM−57、NU−87およびTheta−1の特性を有し、好ましくはZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ベータ、ZSM−23およびMCM−22である。水素化用金属成分は、上記の濃度になるように細孔内に交換されるかゼオライト表面に担持される。
【0033】
ゼオライトは化学技術に関するKirk Othmer Encyclopedia(第三版、第15巻、ページ638〜668、および第四版、第16巻、ページ888〜925)に詳しく述べられている。ゼオライトは酸素原子を共有するAlOおよびSiOによる四面体骨格に基づいており、M2/nOAlySiOwHOという経験式によって表される。ここで、yは2以上の数値、nはカチオンMの原子価数であり、Mは典型的にはアルカリあるいはアルカリ土類金属であり(例えば、Na、K、CaおよびMg)、wはゼオライト内に取り込まれている水分子の数である。構造的には、式Mx/n[(AlO(SiO]wHOで表される最小構造単位を有する結晶単位セルに基づいている。ここで、nはカチオンMの原子価数であり、xおよびyは単位セル内の全四面体数であり、wはゼオライト内に封じ込められている水分子の数である。一般的には、x/y比は1〜100の範囲内にある可能性がある。取り込まれている水分子の数(w)は約10〜275の範囲内にある可能性がある。天然ゼオライトの例として、モルデナイト(構造単位式において、MはNa、xは8、yは40、wは24)、フォージャサイト(構造単位式において、MはCa、Mg、Na、あるいはK、xは59、yは133、wは235)、クリノプチロライト(構造単位式において、MはNa、xは6、yは30、wは24)、カンクリナイト(Na(AlSiO(HCOおよびグメリナイトが挙げられる。合成ゼオライトは一般的には同じ単位セル構造を有する。但し、同カチオンは場合によってはアルカリ金属(典型的にはNa)およびテトラプロピルアンモニウム(TPA)の錯体で置換されているか、あるいはテトラプロピルアンモニウム(TPA)である。合成ゼオライトの例としてゼオライトA(例えば、構造単位式でMはNa、xは12、yは12、wは27)、ゼオライトX(例えば、構造単位式でMはNa、xは86、yは106、wは264)、ゼオライトY(例えば、構造単位式でMはNa、xは56、yは136、wは250)、ゼオライトL(例えば、構造単位式でMはK、xは9、yは27、wは22)およびゼオライト・オメガ(例えば、構造単位式でMはNa6.8TMA1.6、xは8、yは28、wは21)が挙げられる。好ましいゼオライトの中間細孔径は典型的には約5〜10オングストロームである(後述の修正拘束指数として1〜14)。合成ゼオライトは、ゲル・プロセス(ケイ酸ナトリウムとアルミナの使用)あるいはクレイ・プロセス(カオリンの使用)により製造され、これらの物質はそれにゼオライトが添加される母体を形成する。市販合成ゼオライトのいくつかが米国特許4,851,601に開示されている。ゼオライトは、触媒金属を取り込むためにイオン交換処理を受けるか、あるいはアンモニウム・イオンとの交換により酸性化された後に脱アンモニア処理を受ける(前述のKirk Othmerを参照されたい)。
【0034】
修正拘束指数は、ゼオライトの存在化でのn−デカンの水素化異性化によって定義され、イソデカン収率が約5%の点での修正拘束指数(CI)は下式によって与えられる:
CI=2−メチルノナン収率/5−メチルノナン収率
【0035】
環開裂触媒の担体として有用なゼオライトはまた20以下の広さ指数(SI)を有する。同指数は、ゼオライトの存在化でのブチルシクロヘキサンのようなC10シクロアルカンの水素化分解によって定義され、下式によって与えられる:
SI=イソブタン収率/n−ブタン収率
【0036】
有用ないくつかのゼオライトの例として、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−23、MCM−22の特性を有するものが挙げられ、好ましくはZSM−11、ZSM−12、ZSM−23ベータおよびMCM−22である。
【0037】
本発明のプロセスによる生成物は、典型的には5質量%未満、好ましくは2質量%未満のメタン、30〜90質量%のC2−4炭化水素、45〜5質量%のC5+炭化水素(パラフィン類)および20〜0質量%の単環芳香族化合物によって構成される。同プロセスの実施形態(例えば、プロセス第二段階でのLHSVあるいはWHSV、開環触媒の担体および金属成分)によっては、同生成物ストリームの組成は変化する可能性がある。第二段階でのLHSVを低下すればより多量の芳香族化合物が反応により消費され、その結果芳香族化合物は事実上ゼロとなり、それに対応してC2−4成分とC+成分は増加する(各々70から90質量%および10から20質量%)。逆にLHSVを増加すれば芳香族化合物は増加し(5から20質量%)、それに対応してC2−4成分とC+成分は減少する(各々30から45質量%および40から50質量%)。当業界の専門家は、例えば市場状況、生成物ストリームを処理するために組み合わせる他のユニット(例えばエチルベンゼン・ユニット)の入手性等により生成物ストリームの組成を変化できる。
【0038】
本発明の更な実施態様では、オレフィン類製造のために炭化水素クラッキング装置と組み合わせてよい。本発明による低級アルカン類ストリームは、同クラッキング装置に送られてオレフィン類を製造し、同装置により生成した水素は本発明のプロセスのための水素原料として使用される。本発明の更な実施態様では、エチルベンゼン装置と組み合わせてもよいし、あるいはオレフィン類製造のためにエチルベンゼン装置とスチーム・クラッキング装置と組み合わせてよい。芳香族生成物ストリーム(例えばベンゼン)はオレフィン・クラッキング装置からのエチレンと共にエチルベンゼン装置のための原料として使用してよい。
【0039】
本発明で使用される触媒層は固定層でも流動層でもよい(前者の方が好ましい)。流動層が使用される場合には、連続的に再生される再循環方式を採用してよい。
【0040】
オイルサンドのアップグレーディング装置、芳香族の飽和および開裂のための装置および炭化水素クラッキング装置を組み合わせた統合型プロセスを図3により概略する。
【0041】
図3の左側2はオイルサンド・アップグレーディング装置1を、また同図右側は芳香族の飽和および開裂のための装置および炭化水素クラッキング装置の組合せを模式的に示している。
【0042】
オイルサンドからのビチューメン3(通常は取り扱いおよび輸送の便のために炭化水素希釈剤により希釈されている)は通常型の蒸留ユニット4に送られる。希釈剤ストリーム5は蒸留ユニット4から回収され、オイルサンド分離ユニットあるいはオイルサンド・アップグレーディング装置に送られ、そこで油分は粒子状物質(岩石、砂、ちり等)から分離される。蒸留ユニット4からのナフサ・ストリーム6はナフサ水素化処理ユニット7に送られる。ナフサ水素化処理ユニット7で水素化処理を受けたナフサ8は回収される。同装置の塔頂からのオーバーヘッド・ガス・ストリーム9は軽質ガス/軽質パラフィン・ストリーム(例えば、メタン、エタン、プロパンおよびブタン)は炭化水素クラッキング装置10に送られる。
【0043】
蒸留ユニット4からのディーゼル燃料留分ストリーム11はディーゼル燃料留分水素化処理ユニット12に送られ、そこで処理を受けたディーゼル燃料留分13は回収される。同装置の塔頂からのオーバーヘッド・ストリーム14は軽質ガス軽質パラフィン・ストリーム(メタン、エタン、プロパンおよびブタン)であり、これは軽質ガス軽質パラフィン・ストリーム9と合流して炭化水素クラッキング装置10に送られる。蒸留ユニット4からのガスオイル・ストリーム15は減圧蒸留ユニット16に送られる。減圧蒸留ユニット16からの減圧ガスオイル・ストリーム17はガスオイル水素化処理装置18に送られる。ガスオイル水素化処理装置18からの軽質ガス・ストリーム(メタン、エタンおよびプロパン)は軽質ガス・ストリーム9および14と合流して炭化水素クラッキング装置10に送られる。ガスオイル水素化処理装置18からの水素化処理を受けたガスオイル・ストリーム20はNHCユニット21(接触クラッキング装置であるNOVA Chemicals社の重油クラッキング・ユニット)に送られる。
【0044】
減圧蒸留ユニット16からの残渣ストリーム22は減圧(重質)残渣であり、これはディレード・コーカー23に送られる。同ディレード・コーカーは多くのストリームを生成する。同装置からの軽質ガス軽質パラフィン・ストリーム24(メタン、エタンおよびプロパン)は軽質ガス軽質パラフィン・ストリーム9、14、24および19と合流して炭化水素クラッキング装置10に送られる。ナフサ・ストリーム25はナフサ水素化処理ユニット7に送られて、そこでナフサ・ストリーム8と軽質ガス軽質パラフィン・ストリーム9が生成し、前者は回収され後者は炭化水素クラッキング装置10に送られる。ディーゼル燃料留分ストリーム26はディーゼル燃料留分水素化処理ユニット12に送られ、そこで水素化処理を受けたディーゼル燃料留分13と軽質ガス軽質パラフィン・ストリーム14が生成し、前者は回収され後者は炭化水素クラッキング装置10に送られる。ガスオイル・ストリーム27は減圧ガスオイル水素化処理ユニット装置18に送られて水素化ガスオイル・ストリーム20を生成し、これはNHCユニット21に送られる。ディレード・コーカー23からの残渣分はコーク28である。
【0045】
NHCユニット21はコーク28という残渣ストリームを生成する。NHCユニット21からのスラリー・オイル・ストリーム29はディレード・コーカー23に再循環される。NHCユニット21からの軽質ガスあるいは軽質パラフィン・ストリーム30(メタン、エタン、プロパンおよびブタン)は炭化水素クラッキング装置10に送られる。NHCユニット21からのサイクルオイル・ストリーム31(重質サイクルオイルおよび軽質サイクルオイルの両方)は、前述したように芳香族飽和ユニット32に送られる。NHCユニット21からのガソリン留分34は独立して分離される。芳香族飽和ユニット32からの部分的に水素化処理を受けたサイクルオイル33(重質サイクルオイルおよび軽質サイクルオイルであってそれの少なくとも1環は飽和されている)は芳香族環開裂ユニット35に送られる。図3の模式図には示されていないが、芳香族飽和ユニット32と芳香族環開裂ユニット35は両方共水素の供給を受ける(同水素は、炭化水素クラッキング装置10からのものであってよい)。芳香族環開裂ユニットからの生成物の一つがガソリン・ストリーム34であり、これはNHCユニット21(NOVA Chemicals社の重油クラッキング・ユニット)からのガソリン・ストリームと合流される。に送られる。芳香族環開裂ユニット35からの他のストリーム36はパラフィン・ストリームであり、これは炭化水素クラッキング装置10に送られる。
【0046】
同炭化水素クラッキング装置10は多くのストリームを生成する。これらの中には、芳香族飽和ユニット32に再循環してよい芳香族ストリーム37;本発明のプロセスのために使用してよい水素ストリーム38(例えば芳香族飽和ユニット32および/あるいは芳香族環開裂ユニット35の原料として);メタン・ストリーム39;エチレン・ストリーム40;プロピレン・ストリーム41;およびCの混合物ストリーム42がある。
【0047】
前述したように、同統合プロセスはエチルベンゼン・ユニットおよびスチレン・ユニットをも内包し得る。同エチルベンゼン・ユニットは複数の芳香族ストリームおよびクラッキング装置からのエチレンを処理し、また同スチレン・ユニットは同エチルベンゼン・ユニットからのエチルベンゼンを処理してスチレン・ストリームと水素を生成する。
【0048】
本発明を下記の実施例により説明する。ただし、これらの実施例は本発明に制限を加えるものではない。
【0049】
これらの実施例は、単独の反応器の中でメチルナフタレンが最初に水素化され、次いで中程度のサイズのゼオライトに担持されたPd触媒の存在下でクラッキングされる。このようなプロセスが遭遇する困難さとは吸着阻害に起因して縮合芳香族環の完全水素化反応が非常に遅い点である。両環が飽和された後に環開裂反応が進行した。
【0050】
実施例1
500mgの乾燥した触媒を反応器に入れた。反応を開始する前に同触媒を300°Cの温度下で空気(16時間、150cmmin−1)、窒素(1時間、150cmmin−1)および水素(4時間、240cmmin−1)流により前処理して二機能性の触媒(mPd/mゼオライト(乾燥基準)=0.2%)を調製した。水素キャリアー・ガスは、1−メチルナフタレン(1−M−Np)が300Paの分圧で存在する固定層(非反応性固体とガラス・ビードが充填されていた)を80°Cの温度下で通過させることにより同芳香族化合物を含有した。同原料混合物を400°C、6MPaの反応条件下で活性化された触媒を保持する反応器に送った。生成物試料は、周囲圧にまで減圧した反応性生物から採取した。原料である同二環芳香族化合物の100%の転化が達成された。生成物収率を表1に示している。
【0051】
【表1】

【0052】
実施例1での実験は167時間連続して実施した。図1に400°C、6MPaの条件で処理した際の1−メチルナフタレンの転化を反応時間に対してプロットしている。同図に示されるように、触媒は167時間を通して非常に安定している。
【0053】
実施例2
実施例2では、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−23およびMCM−22のゼオライト細孔構造の1−M−Np転化に対する影響を調べた。表2に示すように、Pd含有ゼオライト存在下での反応により以下の化合物が生成した:メタン、エタン、プロパン、イソブタン、n−ブタン、2−メチルブタン、n−ペンタン、ジメチルブタン、メチルペンタン、3,3−ジメチルペンタンおよびメチルシクロヘキサン。
【0054】
【表2】

【0055】
0.2Pd/H−ZSM−5ゼオライト触媒の存在下で400°C、6MPaの条件で1−M−Npを転化した場合、C2+−n−アルカン類(すなわち、2個以上の炭素原子を有するn−アルカン類)は72質量%の収率で生成した。同留分はエタン(13質量%)、プロパ(41質量%)、n−ブタン(15質量%)およびn−ペンタン(3質量%)で構成されていた。0.2Pd/H−ZSM−11ゼオライト触媒の存在下で処理した場合のC2+−n−アルカン類収率はわずかに低く69質量%であった。
【0056】
しかしながら、0.2Pd/H−ZSM−12ゼオライト触媒の存在下で処理した場合、望ましいC2+−n−アルカン類生成物の収率は遥かに低い53質量%であった。0.2Pd/H−ZSM−5ゼオライト触媒存在下で処理した場合の副生成物は側鎖を有する2−メチルプロパン(19質量%)および2−メチルブタン(4質量%)であった。0.2Pd/H−ZSM−12ゼオライト触媒の存在下で処理した場合、イソブタンおよびイソペンタンを除くイソアルカン類の収率は6.2質量%であった(2,2−ジメチルブタンが1質量%、2,3−ジメチルブタンが1質量%、2−メチルペンタンが2質量%および3−メチルペンタンが2質量%)。0.2Pd/H−ZSM−23および0.2Pd/H−MCM−22のゼオライト触媒の存在下で処理した場合、C2+−n−アルカン類の収率は各々68および69質量%であった(各々エタンが22および25質量%、プロパンが31および33質量%、n−ブタンが13および8質量%およびn−ペンタンが2および3質量%)。これらの触媒を使用した場合の副生成物は側鎖を有するアルカン類であり、その収率は各々28および24質量%であった。
【0057】
表2から、ZSM−5、ZSM−11およびZSM−12に担持された触媒はより多量のプロパンおよび高級パラフィン類を生成した。ZSM−23およびMCM−22に担持された触媒はエタン型クラッキング装置にはより望ましい可能性があるエタンをより多量に生成した。
【0058】
実施例3
0.2Pd/H−ZSM−11ゼオライト触媒の触媒性能に対する全圧(ptotal)の影響を温度T=400°C、WHSV=0.003h−1の条件下で調べた。転化率および生成物分布を図2に示している。1−メチルナフタレンの転化率は試験された圧力範囲では99〜93%であった。圧力を2.0MPaから6.0MPaに上昇させるに従い、望ましい生成物の収率は73質量%から61質量%に低下した。エタン収率は9質量%から5質量%に、プロパン収率は46質量%から39質量%に、またエタン収率は9質量%から5質量%に、n−ブタン収率は18質量%から17質量%に低下した。更に、イソブタンとn−ブタンの収率比(Yイソブタン/Yn−ブタン)は0.7から1.0に変化した。イソアルカン類の生成は全圧の上昇により明らかに促進された。
【0059】
実施例4
本発明の環飽和/開環プロセス(Aromatic Ring Cleavage,ARORINCLE)は以下の2工程により構成されている。最初の工程では全原料(ガスオイル、GO)が水素化される。同工程では、触媒被毒物質である硫黄および窒素が除去され、芳香族が飽和されてナフテンになる。同工程は主として第二工程での金属触媒(典型的には貴金属触媒)を触媒被毒物質から保護するためである。第一工程からの液生成物はガス・ストリーム(メタン)から分離され、同液生成物は第二工程での原料として使用され、そこでナフテン環および芳香族環が開環されて貴重な軽質パラフィン(C〜C)を生成する。
【0060】
実験室での実験は上昇流型の固定層反応器を使用して実施した。同ユニットは一つの反応器のみを使用したので、全ての実験は第一段階のみを実施する方式で実施した。その後、他の触媒を同反応器に充填して第二段階工程を実施した。第一段階で使用した触媒は二層に積層された:第一層の触媒はNiW/Alであり第二層の触媒NiMo/Alであった。これらは両方とも市販触媒であった。これらの触媒は反応器内で通常の手順に従って硫化処理され、その後反応に供された。
【0061】
硫化処理を施された後、触媒層を30°C/時間の速度で望ましい反応温度まで加熱しガスオイル(GO)を反応器に通した。
【0062】
同反応器からの液体生成物はガス分離器によりガス流から分離し、ガラス容器に集め、実験室内の冷蔵庫に保管した。十分な量の水素化GOが集められた後、同液体生成物を窒素により泡立てて残存するHSを追い出した。集められかつガスを除去されたGOをPd/ゼオライト触媒が充填された反応器に通した。第二段階工程での反応を開始する前に、最初に同触媒を300°C、常圧の条件下で空気(16時間、150cmmin−1)、窒素(1時間、150cmmin−1)および水素(4時間、240cmmin−1)流により前処理した。
【0063】
以下の実施例では異なった条件で運転されたARORINCLEプロセスにより2種類の実験(実施例4Aおよび4B)を実施した。これらの実験に供した原料はオイルサンドからのガスオイル(沸点範囲:190〜548°C)であり、これはヘテロ原子濃度を低下するために前処理を施した。実施例4Aおよび4Bの相違は、後者では第二段階でのLHSVを0.5h−1から0.2h−1に低下した点であり、この結果パラフィン類(C〜C)と飽和物の収率が増加した。同プロセスは市場状況によっては必要に応じてパラフィン類および飽和物の収率を上げてBTX(ベンゼン、トルエンおよびザイレン)収率を下げるモード、あるいはそれの逆のモードで運転するように調整できる。
【0064】
実施例4Aおよび4Bの結果を下表に示している。
【表3】

【0065】
【表4】

【0066】
表4Aに示す結果に基づいて、同表に示す条件下でのARORINCLEプロセスのコンピューター・シミュレーションを実施した。原料1であるガスオイルの1メートル・トン(1000kg)を120kgのHで処理した場合、液分離器により7.84kgのメタンと35.17kgのC2−4生成物(例えば、別個に分離される)、HSおよびNHが分離されよう。同液分離器は液体原料(飽和物および芳香族)を(1000+120−(7.84+35.17))=1076.89kg保持しよう。これは75kgのHと共に第二反応器に送られ、その結果の生成物は7.92kgのH、372.86kgのC2−4生成物、545.97kgのC5+(パラフィン類)および221.21kgのベンゼン、トルエンおよびザイレン(BTX)により構成されよう。
【0067】
表4Bに示す結果に基づいて、同表に示す条件下でのARORINCLEプロセスのコンピューター・シミュレーションを実施した。原料1であるガスオイルの1メートル・トン(1000kg)を120kgのHで処理した場合、液分離器により7.84kgのメタンと35.17kgのC2−4生成物(例えば、別個に分離される)、HSおよびNHが分離されよう。同液分離器は液体原料(飽和物および芳香族)を(1000+120−(7.84+35.17))=1076.89kg保持しよう。これは100kgのHと共に第二反応器に送られ、その結果の生成物は16.54kgのH、443.61kgのC2−4生成物、650.76kgのC5+(パラフィン類)および62.05kgのベンゼン、トルエンおよびザイレン(BTX)により構成されよう。
【0068】
(産業上の利用可能性)
本発明は、例えばタールサンドのような重質生成物をアップグレードしてより軽質のパラフィン類、特に低級パラフィン類を生成するプロセスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1で得られた時間の関数としてのメチルナフタレンの転化率を示している。
【図2】実施例2で得られた全圧の関数としてのメチルナフタレンの転化率と収率を示している。
【図3】オイルサンドのアップグレーディング装置、芳香族化合物の水素化/開環プロセスおよび炭化水素クラッキング装置を組み合わせた単純化されたプロセス・ダイアグラムを模式的に示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個の縮合芳香族環を有する1種あるいは複数種の化合物(これらの化合物は非置換あるいは2個までのC1−4アルキル・ラジカルで置換されている)を20質量%以上含有する原料を以下の工程を同時にあるいは逐次に実施することによりC2−4アルカン類混合物を35質量%以上含有する生成物ストリームを製造するハイドロクラッキング・プロセス:
(i)上記原料を300〜500°Cの温度下2〜10MPaの圧力下で、原料1,000kg当たり100〜300kgの水素と芳香族水素化触媒の存在下で運転される環飽和ユニットで処理するかあるいはそれを通過させ、上記の少なくとも2個の縮合芳香族環を有する1種あるいは複数種の化合物(これらは非置換あるいは2個までのC1−4アルキル・ラジカルで置換されており、その芳香族環の少なくとも1個は完全に飽和されている)を60質量%以上含有するストリームを生成する;
(ii)同生成ストリームを200〜600°Cの温度下1〜12MPaの圧力下で、同ストリーム1,000kg当たり50〜200kgの水素と環開裂触媒の存在下で運転される環開裂ユニットで処理するかあるいはそれを通過させる;および
(iii)同生成物をC2−4アルカン・ストリーム、液体パラフィン・ストリームおよび芳香族ストリームに分離する。
【請求項2】
該芳香族水素化触媒はNi、WおよびMoからなる群から選ばれる1種あるいは複数種の金属を0.0001〜5質量%含有することを特徴とする請求項1のプロセス。
【請求項3】
該環開裂触媒はPd、Ru、Ir、Os、Cu、Co、Ni、Pt、Fe、Zn、Ga、In、Mo、WおよびVからなる群から選ばれる1種あるいは複数種の金属を0.0001〜5質量%含有し、同金属が広さ指数が20以下、修正拘束指数が1〜14の担体に担持されることを特徴とする請求項2のプロセス。
【請求項4】
該工程(i)において、温度が350〜450°C、圧力が4〜8MPaであることを特徴とする請求項3のプロセス。
【請求項5】
該工程(i)において水素が原料1,000kg当たり100〜200kgの割合で環飽和ユニットに供給されることを特徴とする請求項4のプロセス。
【請求項6】
該工程(ii)において、温度が350〜500°C、圧力が3〜9MPaであることを特徴とする請求項5のプロセス。
【請求項7】
該工程(ii)において水素が原料1,000kg当たり50〜150kgの割合で環飽和ユニットに供給されることを特徴とする請求項6のプロセス。
【請求項8】
該芳香族水素化触媒の耐熱性担体がアルミナであることを特徴とする請求項7のプロセス。
【請求項9】
該環開裂触媒において酸成分はアルミノシリケート、シリコアルミノフォスフェートおよびガロシリケートからなる群から選ばれることを特徴とする請求項8のプロセス。
【請求項10】
該環開裂触媒において該酸成分はモルデナイト、カンクリナイト、グメリナイト、フォージャサイト、クリノプチロライトおよび合成ゼオライトからなる群から選ばれることを特徴とする請求項9のプロセス。
【請求項11】
該芳香族水素化触媒はNi、WおよびMoからなる群から選ばれる1種あるいは複数種の金属を触媒全体に対して0.05〜3質量%含有することを特徴とする請求項10のプロセス。
【請求項12】
該環開裂触媒はPd、Ru、Pt、Mo、WおよびVからなる群から選ばれる1種あるいは複数種金属を0.05〜3質量%含有することを特徴とする請求項11のプロセス。
【請求項13】
該環開裂触媒における担体はZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−23、ベータ、およびMCM−22特性を有する合成ゼオライト群から選ばれることを特徴とする請求項12のプロセス。
【請求項14】
生成物ストリームは1種あるいは複数種のC2−4アルカン類を45質量%以上含有することを特徴とする請求項13のプロセス。
【請求項15】
炭化水素クラッキング装置と組み合わされ、同クラッキング装置で生成した水素を該環飽和ユニットおよび環開裂ユニットに送り、該C2−4アルカン・ストリームを同炭化水素クラッキング装置の原料として使用することを特徴とする請求項1のプロセス。
【請求項16】
更にエチルベンゼン・ユニットと組み合わされ、該芳香族生成物ストリームをエチルベンゼン・ユニットに送ることを特徴とする請求項15のプロセス。
【請求項17】
更にエチルベンゼン・ユニットと組み合わされ、該クラッキング装置からのエチレンの一部も同エチルベンゼン・ユニットに送ることを特徴とする請求項15のプロセス。
【請求項18】
少なくとも2個の縮合芳香族環を有する1種あるいは複数種の化合物(これらの化合物は非置換あるいは2個までのC1−4アルキル・ラジカルで置換されている)を5質量%以上含有する炭化水素原料をいくつかの蒸留工程により処理して、少なくとも2個の縮合した芳香族環を有する1種あるいは複数種の化合物(これらの化合物は非置換あるいは2個までのC1−4アルキル・ラジカルで置換されている)を20質量%以上含有する中間ストリームを製造するための以下の工程を包含する同炭化水素をアップグレーディングする統合されたプロセス:
(i)上記中間ストリームを300〜500°Cの温度下2〜10MPaの圧力下、原料1,000kg当たり100〜300kgの水素と芳香族水素化触媒の存在下で運転される環飽和ユニットを通過させ、上記の少なくとも2個の縮合芳香族環を有する1種あるいは複数種の化合物(これらは非置換あるいは2個までのC1−4アルキル・ラジカルで置換されており、その芳香族環の少なくとも1個は完全に飽和されている)を60質量%以上含有するストリームを生成する;
(ii)同生成ストリームを200〜600°Cの温度下1〜12MPaの圧力下、同原料ストリーム1,000kg当たり50〜200kgの水素と環開裂触媒の存在下で運転される環開裂ユニットを通過させる;および
(iii)同生成物をC2−4アルカン・ストリーム、液体パラフィン・ストリームおよび芳香族ストリームに分離する。
【請求項19】
該芳香族水素化触媒は耐熱性担体に担持されたMoを0.0001〜5質量%、Niを0.0001〜5質量%含有することを特徴とする請求項18のプロセス。
【請求項20】
該環開裂触媒はPd、Ru、Pt、Mo、WおよびVからなる群から選ばれる1種あるいは複数種の金属を0.0001〜5質量%含有し、同金属が広さ指数が20以下、修正拘束指数が1〜14の担体に担持されることを特徴とする請求項19のプロセス。
【請求項21】
該工程(i)において、温度が350〜450°C、圧力が4〜8MPaであることを特徴とする請求項20のプロセス。
【請求項22】
該工程(i)において水素が原料1,000kg当たり100〜200kgの割合で環飽和ユニットに供給されることを特徴とする請求項21のプロセス。
【請求項23】
該工程(ii)において、温度が350〜500°C、圧力が3〜9MPaであることを特徴とする請求項22のプロセス。
【請求項24】
該工程(ii)において水素が原料1,000kg当たり50〜150kgの割合で環飽和ユニットに供給されることを特徴とする請求項23のプロセス。
【請求項25】
該芳香族水素化触媒の耐熱性担体がアルミナであることを特徴とする請求項24のプロセス。
【請求項26】
該環開裂触媒において担体はアルミノシリケート、シリコアルミノフォスフェートおよびガロシリケートからなる群から選ばれることを特徴とする請求項25のプロセス。
【請求項27】
該環開裂触媒において該担体はモルデナイト、カンクリナイト、グメリナイト、フォージャサイト、クリノプチロライトおよび合成ゼオライトからなる群から選ばれることを特徴とする請求項26のプロセス。
【請求項28】
該芳香族水素化触媒はNi、WおよびMoからなる群から選ばれる1種あるいは複数種の金属を触媒全体に対して0.05〜3質量%含有することを特徴とする請求項27のプロセス。
【請求項29】
該環開裂触媒はPd、Ru、Ir、Os、Cu、Co、Ni、Pt、Fe、Zn、Ga、In、Mo、WおよびVからなる群から選ばれる1種あるいは複数種金属を0.05〜3質量%含有し、同金属が広さ指数が20以下、修正拘束指数が1〜14の担体に担持されることを特徴とする請求項28のプロセス。
【請求項30】
該環開裂触媒における担体はZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−23、ベータ、およびMCM−22特性を有する合成ゼオライト群から選ばれることを特徴とする請求項29のプロセス。
【請求項31】
炭化水素原料がシェール油、タールサンドおよびオイルサンドからなる群から選ばれる1種あるいは複数種の資源から選ばれることを特徴とする請求項30のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−508881(P2009−508881A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531492(P2008−531492)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001400
【国際公開番号】WO2007/033467
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(505382548)ノバ ケミカルズ(インターナショナル)ソシエテ アノニム (8)
【出願人】(508085512)ウニベルシタット シュトゥットガルト (1)
【Fターム(参考)】