説明

苗移植機

【課題】フロートの前側に夾雑物が溜まることがあっても、苗の植え付け深さを適正に行うことができる苗移植機を提供すること。
【解決手段】センターロータ27bのカバー37の後端部を開閉可能にし、カバー37の後端部に回動自在に取り付けられた回動角度センサ39aにより作業中に接触体39が開閉したことを検知すると接触体39に夾雑物が引っかかったと判断し、油圧バルブ48が昇降油圧シリンダ46を伸張させて苗植付部4を上昇させる。これによりフロート55,56と圃場面との間に空間部が生じて夾雑物がフロート55,56に引っかかることを防止できるて苗の植付深さが正確に検知されて植付精度が向上し、フロート55,56に引っかかった夾雑物を取り除く作業が必要無くなり作業能率が向上する。また、昇降用油圧シリンダ46の伸縮制御感度を敏感側にして苗植付部4を瞬間的に浮かせることで整地ロータ27aが夾雑物を乗り越えることができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整地ロータを備えた乗用型田植機等の苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
フロート付きの苗植付装置を備えた田植機において、苗植付装置による苗植付の直前に圃場を均平化するための整地ロータを備えた構成が知られている。
なお、本明細書では苗移植機の前進方向を前側、後退方向を後側といい、前進方向に向いて左右方向をそれぞれ左側、右側ということにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−118846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された田植機では、整地ロータが藁屑などの夾雑物を圃場にすき込めなかった場合にフロートの前側位置に、前記夾雑物が溜まり、フロートが植え付け部の植え付け深さを正確に検知できなくなり、圃場の凹凸があるにも拘わらず植え付け部が昇降せず、苗の植え付け深さがばらつき、浅い植え付けの苗は風や水流で流されて欠株となってしまい、植え付けが深い物は日照不足で生育不良を起こしてしまうという問題がある。
また、圃場に凹凸が無い場所でも突然植え付け部が上昇してしまい、苗の植え付け深さが乱れ、上記と同じ問題が発生することがある。
これを防止するためには、作業者が定期的にフロートの様子を見て、必要があれば夾雑物を取り除けばよいが、そのたびに作業者は田植機から圃場に降りねばならず、作業能率が低下すると共に作業者の労力が大きくなるという問題がある。
【0005】
近年、米の収穫後に排藁を焼くことができず、例えば二毛作を行う場合に水田圃場に藁が残ったままで次期の苗植付作業を行うことがある。藁は水に浮くため、整地ロータで圃場にすき込みにくく、フロートの前側に溜まる傾向がある。これを放置すると、上述したような問題を引き起こす。
【0006】
本発明の課題は、フロートの前側に夾雑物が溜まることがあっても、苗の植え付け深さを適正に行うことができる田植機などの苗移植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、圃場を走行する走行車体(2)と、該走行車体(2)の後部に昇降リンク機構(3)を介して設ける苗植付部(4)と、苗植付部(4)から苗を取って圃場に植え付ける苗植付装置(52)と、該苗植付装置(52)の前側の圃場を均す整地ロータ(27)と、苗植付部(4)の下部で、且つ整地ロータ(27)の後側に配置したフロート体(55,56)と、苗植付部(4)を昇降リンク機構(3)を介して昇降させる昇降油圧シリンダ(46)と、該昇降油圧シリンダ(46)を伸縮させる油圧作動装置の油圧バルブ(48)を設けた苗移植機において、整地ロータ(27)を覆うロータカバー(37)と、該ロータカバー(37)に一端部を回動自在に設けた接触体(39)と、該接触体(39)の移動を検知する回動角度センサ(39a)と、該回転角度センサ(39a)からの信号を受けると昇降油圧シリンダ(46)により苗植付部(4)を上昇させるべく油圧バルブ(48)を作動させる制御装置(100)を設けたことを特徴とする苗移植機である。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記フロート体(55,56)の取付リンクアーム(93)に設けた、該フロート体(55,56)の圃場面に対する傾斜角度を検出するフロート傾斜角度検出センサ(94)と、苗植付装置(52)の基部に設けた、苗植付装置(52)による苗植付深さを調節する植付深さ調節モータ(63)を備え、前記制御装置(100)には、前記フロート傾斜角度センサ(94)の検出した傾斜角度が基準値(具体例:10〜15度)を超えると油圧バルブ(48)を作動させ、前記接触体(39)の回動を前記回動角度センサ(39a)が検知すると、フロート傾斜角度センサ(94)の前記基準値を下方修正すると共に植付深さ調節モータ(63)を苗植付深さを「深」側に回転駆動させる制御構成を備えていることを特徴とする請求項1記載の苗移植機である。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記制御装置(100)には、前記接触体(39)の回動角度センサ(39a)から所定の回数(例えば2〜4回)または所定の時間(例えば2〜4秒)の間、連続して検知信号を受信すると、フロート傾斜角度センサ(94)の基準値(例えば10〜15度)を変更(例えば5〜10度に)するか又は植付深さ調節モータ(63)を駆動させる制御構成を備えていることを特徴とする請求項2記載の苗移植機である。
【0010】
請求項4記載の発明は、制御装置(100)には、前記フロート傾斜角度センサ(94)の基準値(例えば10〜15度)を変更(例えば5〜10度に)する信号及び植付深さ調節モータ(63)を駆動する信号の発信後、所定時間(例えば5秒前後)が経過すると油圧バルブ(48)を作動させて昇降油圧シリンダ(46)を伸張させ、またフロート傾斜角度センサ(94)の基準値を元の値に戻して植付深さ調節モータ(63)を苗植付深さの「浅」側に回転駆動させる制御構成を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の苗移植機である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、接触体(39)の移動を検知する回動角度センサ(39a)が夾雑物に接触して回動し、所定値以上(具体例:10〜15度程度以上)の回動角度で回動していることを検出すると、油圧バルブ(48)が昇降油圧シリンダ(46)を伸張させて苗植付部(4)を上昇させることにより、フロート(55,56)と圃場面との間に空間部が生じて夾雑物がフロート(55,56)に引っかかることを防止できるので、苗の植付深さが正確に検知され、苗の植付精度が従来より向上する。
また、フロート(55,56)に引っかかった夾雑物を苗移植機が取り除く作業が必要無くなるので、作業者の労力が軽減されると共に作業能率が向上する。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、接触体(39)が夾雑物に接触して回動角度センサ(39a)からの信号が発信されると、フロート傾斜角度センサ(94)が発信する基準値が下方修正されることにより、フロート(55,56)が夾雑物に接触してフロート(55,56)の傾斜角度が変化する。該フロート(55,56)の傾斜角度の変化により油圧バルブ(48)が作動して昇降油圧シリンダ(46)を伸張させて苗植付部(4)を上昇させるので、傾斜角度が変化したフロート(55,56)と圃場面との間に空間部が生じて夾雑物がフロート(55,56)に引っかかることを防止できるので、苗植付深さが正確に検知され、苗の植付精度が従来より向上する。
【0013】
また、フロート55,56にフロート55,56に夾雑物に乗り上げても、フロート(55,56)の傾斜角度が変わらない場合には苗植付部(4)が上昇しないので、僅かでも夾雑物がある度に苗植付部(4)が昇降することが防止されるので、苗の植付間隔や植付深さが乱れにくく、苗の生育が安定する。
【0014】
一方、夾雑物に乗り上げて、フロート(55,56)の傾斜角度が変わった場合には苗植付部(4)が上昇するので、苗植付装置(52)の植付深さ調節モータ(63)を「深」い方向に駆動させることにより、苗植付装置(52)は下降するので、圃場面と苗植付装置(52)との距離が変わりにくく、苗の植付間隔や植付深さを一定に保つことができるので、苗の生育が安定する。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、接触体(39)の回動角度センサ(39a)から所定回数または所定時間の間に連続して信号が発信された時にのみ、フロート傾斜角度センサ(94)の信号を発信する基準値を下方修正したり、苗植付装置(52)の植付深さ調節モータ(63)を駆動させることにより、整地ロータ(27)の回転や泥土の跳ね上がりにより、前記回動角度センサ(39a)が動いて苗植付部(4)が上昇してしまうことを防止できるので、苗植付部(4)が不要なタイミングで昇降することが防止され、苗の植付間隔や植付深さが乱れにくくなり、苗の生育が安定する。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、回動角度センサ(39a)からの信号により苗植付部(4)が上昇した後、所定時間(例えば5秒前後)経過後に自動的に苗植付部(4)を下降させ、フロート傾斜角度センサ(94)の基準値を元に戻し、苗植付装置(52)の苗植付位置を上昇させることにより、作業者が操作を行うことなく、元の作業状態に復帰することができるので、作業能率が従来より向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例の乗用型田植機の側面図である。
【図2】図1の乗用型田植機の平面図である。
【図3】図1の乗用型田植機の苗植付部の要部側面図である。
【図4】図1の乗用型田植機の苗載台の支持構造の要部背面図である。
【図5】図1の乗用型田植機の苗植付部の要部平面図である。
【図6】図1の苗移植機の整地(センター)ロータとセンタフロートの部分の側面図である。
【図7】図1の苗移植機の苗の植付制御のブロック図である。
【図8】図1の苗移植機の整地(センター)ロータとセンタフロートの部分の側面図である。
【図9】図1の苗移植機の整地ロータに設ける防波材の正面図(図9(a))と防波材の整地ロータ駆動軸部への取り付けを説明する側面図(図9(b))と整地ロータの内部から防波材に向けて流れる水の様子を示す説明図(図9(c))である。
【図10】図1の苗移植機の整地ロータに設ける防波材の正面図(図10(a))と防波材の整地ロータ駆動軸部への取り付けを説明する側面図(図10(b))と整地ロータの内部から防波材に向けて流れる水の様子を示す説明図(図10(c))である。
【図11】図1の苗移植機の整地ロータ部分の側面図である。
【図12】小型の苗移植機に適した苗植付部の要部側面図である。
【図13】図1の苗移植機の整地ロータ部分の要部側面図(図13(a))と要部斜視図(図13(b))である。
【図14】図1の苗移植機の整地ロータ部分の要部側面図である。
【図15】図1の苗移植機の整地ロータ部分の要部側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1及び図2は本発明を用いた一実施例である粉粒体繰出し装置として施肥装置を装着した乗用型田植機の側面図と平面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0019】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸11aに後輪11,11が取り付けられている。
【0020】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及びHST23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0021】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。
【0022】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0023】
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給すると苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a、…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52、…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ(図示せず)等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられている。これらフロート55,56,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52、…により苗が植付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が仰角センサ(フロート傾斜角度検出センサ)94により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブ48を切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0024】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62、…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)、…まで導き、施肥ガイド、…の前側に設けた作溝体69、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62、…に吹き込まれ、施肥ホース62、…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0025】
苗植付部4には整地装置の一例であるロータ27(27a,27b)が取り付けられている。また、苗載台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成である。
【0026】
図3の側面図と図4の背面図にロータ支持構造の要部を示し、図5にロータ27a,27bとフロート55,56と苗植付装置52部分の要部平面図を示す。
ロータ支持構造には、苗載台51の前記支持枠体65の両側辺部材65bに上端を回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した支持アーム67と該支持アーム67に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム68が設けられている。該ロータ支持フレーム68の下端にはロータ27(27a,27b)の駆動軸部70(70a,70b)が取り付けられている。また、該ロータ支持フレーム68の下端部近くは伝動ケース50に回動自在に取り付けられた連結部材71に連結している。
なお、図5に示すようにロータ駆動ケース87のクラッチシフター97及び該シフター97作動用のクラッチケーブル99を後輪ギヤケース18の内側で、かつ機体中央部へ配置している。
【0027】
ロータ昇降用モータ63(図4)が梁部材66の軸方向延長線上に設けられている。図5に示すように、フロート55,56との配置位置の関係でセンタフロート55の前方にあるロータ(センタロータということがある)27bはサイドフロート56の前方にあるロータ(サイドロータということがある)27aより前方に配置されている。そのため、左側のロータ27aの駆動軸部70aへの動力は後輪11のギヤケース18内のギアからロータ駆動ケース87内のギアに伝達され、該ロータ駆動ケース87から自在継手72等を介して伝達され、ロータ27bの駆動軸部70bは左側のロータ27aの駆動軸部70aの車体内側の端部から動力が伝達されるチェーンケース73内のチェーン(図示せず)から動力伝達される。また、右側のロータ27aの駆動軸部70aはロータ27bの駆動軸部70bから右側のチェーン(図示せず)を介して動力伝達される。
【0028】
ロータ27bの駆動軸部70bは左右一対のチェーンケース73,73を介して支持されているだけなので、チェーンケース73,73の補強のために左右一対のチェーンケース73,73を橋渡しする補強部材74が設けられている。
また、ロータ27bは梁部材66に上端部が支持された一対のリンク部材76,77によりスプリング78を介して吊り下げられている。
該一対のリンク部材76,77は梁部材66に一端部が固着支持された第一リンク部材76と該第一リンク76の他端部に一端が回動自在に連結した第二リンク部材77からなり、該第二リンク部材77の他端部と補強部材74に回動自在に支持された取付片74aとの間に前記スプリング78が接続している。
【0029】
ロータ昇降用モータ63の作動により第一リンク部材76を上方へ回動する向きに梁部材66が回動し、該梁部材66の回動に伴って、第一リンク部材76と第二リンク部材77とスプリング78を介してロータ27bを上方に上げることができる。ロータ27bを上方に移動させると、駆動軸部70bと駆動軸部70aを介してロータ27aも同時に上方に移動する。
【0030】
本実施例では標準位置で圃場面より40mmの高さにあるロータ27a,27bをロータ昇降用モータ63の回動で標準位置より最大15mm高くでき、またロータ昇降用モータ63の逆向きの回動で標準位置より最大15mm低くできるように設定している。
【0031】
図4に示すように、上記ロータ27a,27bをロータ昇降用モータ63で上下動ができる構成にしているので、ロータ27a,27bで畦際を整地しながら苗の植付を行う場合に、梁部材66の軸を回動可能にしたロータ27a,27bの作業状態からロータ27a,27bの収納状態への切替えを苗植付部4の上昇に連動させてロータ昇降用モータ63で自動的に行う構成とすることができる。
【0032】
苗植付部4の上昇時にロータ27bが昇降リンク装置3の下リンク41,41から逃げるように苗植付部4に対してスプリング78などを介して支持されているので、ロータ27aが融通性をもって苗植付部4に支持される。
また、操縦座席31近傍に設ける図示しないメータパネル上に設けたロータ高さ調節ダイヤルによりロータ27a,27bを設定高さに調整する構成にしても良い。
手動でロータ高さを設定する場合にはロータ27a,27bを収納位置に移動したままで次の苗植付作業時にロータ27a,27bを使用できないことがあるが、自動的にロータ27a,27bを設定高さに調整する構成にすると、そのような不具合を防ぐことができる。
【0033】
図4に示すように梁部材66の一端にロータ昇降用モータ63を取り付けておき、苗植付部4が上昇するとロータ27a,27bは下降するようにし、また苗植付部4が下降するとロータ27a,27bは上昇するような構成としても良い。これにより、畦際旋回時にロータ27a,27bを下降させて、旋回跡のみを整地することができる。この場合は苗植付部4の上下リンク40,41の上下動(=フロート55,56の前後傾斜角度又は仰角)を検出するフロート傾斜角度検出センサ94(図6)とロータ連動入切スイッチ96(図2)のオンにより制御装置100がロータ昇降用モータ63の駆動制御を行う。この様な構成の場合はロータ昇降用モータ63を自動で作動させることができるので、操作性が向上する。
また、図1に示すように、ロータ27a,27bの後ろ上方には、ロータカバー37を設け、フロート55,56上に泥がかからないようにしている。
【0034】
前述のように通常はロータ昇降用モータ63を作動させることでロータ27a,27bは上昇される構成であるが、本実施例では苗植付具52aにエンジン動力を伝達させるための畦クラッチ(図示せず)が畦クラッチレバー19(図2)の操作により切りになると、ロータ昇降用モータ63が作動して自動的にロータ27a,27bを下降させて整地作業を行わせる構成になっている 。
【0035】
そのために畦クラッチレバー19の入・切を検知する畦クラッチレバーセンサ19a(図4)を設けている。
従って、枕地及びその近傍では植付条数あわせのために畦クラッチレバー19の操作により畦クラッチを切りにしたときに、該畦クラッチレバーセンサ19aが畦クラッチレバー19の切りを検出し、制御装置100(図4)により自動的にロータ27a,27bを下降させて整地作業を行わせることができる。
このことにより、圃場内において荒れやすい枕地又は枕地の近くを確実に整地することができる。
【0036】
本実施例では圃場の硬軟に合わせて座席31の近傍に設けた制御感度変更ダイヤル(図示せず)を調節して昇降用油圧シリンダ46の伸縮による苗植付部4の上下位置の制御感度を複数段に変更できる構成を備えている。制御感度変更ダイヤルによる制御感度の設定値毎にセンターフロート55の前後傾斜角度(迎い角)が圃場が硬い場合は前上がり側に、圃場が軟い場合は前下がり側になるように、複数の異なる角度にそれぞれ設定される。
【0037】
従って、前記仰角(フロート傾斜角度検出)センサ94の検出値が、制御感度変更ダイヤルにて設定されているセンターフロート55の傾斜角度になるように、制御装置100により昇降用油圧シリンダ46を伸縮させて、苗植付部4が設定された上下位置になるように制御する。
【0038】
このとき、圃場が硬いと、制御感度変更ダイヤルにより昇降用油圧シリンダ46の伸縮の制御感度を鈍感側にするが、これに連動してロータ27a,27bの上下位置を上昇側に補正して整地する。逆に圃場が軟らかいと、制御感度変更ダイヤルにより昇降用油圧シリンダ46の伸縮の制御感度を敏感側にして、これに連動して上下位置を下降側に補正して整地する。これにより、制御感度変更によるセンターフロート55の前後傾斜角度(迎い角)の相違でロータ27a,27bの対地高さの相違を抑えることができる。また、土壌が硬い圃場で、ロータ27a,27bが深く入りするとロータ27a,27bが大きな駆動抵抗となる不具合を抑え、伝動機構の破損や走行速度の低下を防止することができる。こうして圃場の硬軟度に合わせて安定した均平効果を上げることができる。
【0039】
また、HST23のトラニオン軸の斜板の傾斜角度を調節することでHST油圧モータ(図示せず)の出力を変更する変速レバー16(図2)に連動させて、ロータ27a,27bを自動的に収納位置(上昇位置)にロータ昇降用モータ63により移動させることにすると、高速走行時に圃場の泥や水をロータ27a,27bが押すことがなくなる。このため、泥水流で隣接の既植苗を倒すようなことを防止できる。
【0040】
ロータ27a,27bは、図5の植付部の要部平面図に示すように3つのロータからなり、連結部材71で伝動ケース50に支持されているが、この支持構造を変更して、図6の植付部の要部平面図に示すように、より耐久性のあるロータ27a,27bの支持のために連結部材71をチェーンケース73の部分に連結する構成としても良い。
こうして、連結部材71が重量のあるチェーンケース73の位置で整地装置を支持することになるから、連結部材71によるロータ27a,27bの支持でより強度が増大し、耐久性が向上する。
【0041】
図6に、整地(センター)ロータ27bとセンターフロート55の部分の側面図を示し、図7に制御装置100による苗の植付制御のブロック図を示すように、整地(センター)ロータ27bのロータカバー37の後端部に設けた開閉可能なフラップ(接触体)39を設け、該フラップ(接触体)39にはフラップ39の回動を検知するポテンショメータ又はリミットスイッチからなる接触体回動角度センサ39aを設け、作業中にフラップ39が開閉した場合には、前記センターロータ27bが夾雑物を乗り越える際に該フラップ39に夾雑物が引っかかったと判断し、図示しない油圧作動装置の油圧バルブ48(図7参照)が昇降油圧シリンダ46を伸張させて苗植付部4を上昇させることにより、フロート55,56と圃場面との間に空間部が生じて夾雑物がフロート55,56に引っかかることを防止できるので、苗の植付深さが正確に検知され、苗の植付精度が従来より向上し、フロート55,56に引っかかった夾雑物を苗移植機が取り除く作業が必要無くなるので、作業者の労力が軽減されると共に作業能率が向上する。
【0042】
なお前記回動角度センサ39aが夾雑物に接触して所定値(具体例:10〜15度程度)以上の回動角度で所定の回数(例えば、約2〜4回のいずれか)又は所定の時間(例えば、約2〜4秒間のいずれか)に亘り、連続して開閉した場合には、該接触体39に夾雑物が引っかかったと判断することが安定した制御を行う上で望ましい。
また、昇降用油圧シリンダ46の伸縮制御感度を敏感側にして苗植付部4を瞬間的に浮かせることで整地ロータ27a,27bが夾雑物を乗り越えることができるようにする。
【0043】
なお、フロート55,56に夾雑物が引っかかり易くなる原因は次の通りである。
野焼き禁止等により、麦藁等の夾雑物を取り除かない農家が増えており、整地ロータ27a,27bの仕様の需要が高まっているが、二毛作を行う圃場では、麦藁等の夾雑物が十分に腐食して圃場に養分として還元される前に田植えのための耕うんや代掻き等の作業を行う時期を迎えるため、整地ロータ27a,27bで夾雑物を地面に押し付けきれず、フロート55,56の前に夾雑物が引っかかり、苗の植付高さが狂い、正確な苗の植え付けが行われなくなることがあった。
【0044】
また、リンクベースフレーム42(図3)には苗植付部4の上下動を検知するリンクスイッチ92を設け、また、図6に示すようにフロート55,56の圃場面に対する傾斜角度を検出するフロート傾斜角度センサ94(第2ポテンショメータまたは第2リミットスイッチからなる)をフロート55の前方上面の取付リンクアーム93に設け、苗植付装置52による苗植付深さを調節する植付深さ調節モータ63を苗植付装置52の基部に設けておき、フロート傾斜角度センサ94の検出した傾斜角度が基準値(具体例:10〜15度のいずれか)を超えると油圧バルブ48を作動させ、同時に前記接触体39の回動角度センサ39aの検知があると、制御装置100はフロート傾斜角度センサ94の前記基準値を下方修正すると共に植付深さ調節モータ63を苗植付深さを「深」い方向に回転駆動させる制御構成とすることができる。
【0045】
上記制御構成により、接触体39が夾雑物に接触して回動角度センサ39aからの信号が発信されると、フロート傾斜角度センサ94が発信する前記基準値(10〜15度のいずれか)が下方修正(5〜10度のいずれか)されることにより、フロート55,56が夾雑物に接触してフロート55,56の傾斜角度が変化する。このフロート55,56の傾斜角度の変化により油圧バルブ48が作動して昇降油圧シリンダ46を伸張させて苗植付部4を上昇させるので、傾斜角度が変化したフロート55,56と圃場面との間に空間部が生じて夾雑物がフロート55,56に引っかかることを防止できるので、苗植付深さが正確に検知され、苗の植付精度が従来より向上する。
また、フロート55,56が夾雑物に乗り上げても、フロート55,56の傾斜角度が変わらない場合には苗植付部4が上昇しないので、僅かでも夾雑物がある度に苗植付部4が昇降することが防止されるので、苗の植付間隔や植付深さが乱れにくく、苗の生育が安定する。
【0046】
一方、フロート55,56が夾雑物に乗り上げて、フロート55,56の傾斜角度が変わった場合には苗植付部4が上昇するので、苗植付装置52の植付深さ調節モータ63を「深」い方向に駆動させることにより、苗植付装置(52)は下降するので、圃場面と苗植付装置52との距離が変わりにくく、苗の植付間隔や植付深さを一定に保つことができるので、苗の生育が安定する。
また、制御装置100は、接触体39の回動角度センサ39aから前記所定回数または前記所定時間の間、連続して検知信号を受信すると、フロート傾斜角度センサ94の前記基準値(10〜15度のいずれか)を変更するか又は植付深さ調節モータ63を駆動させる制御構成を備えることもできる。
【0047】
さらに、回動角度センサ39aから前記所定回数または前記所定時間の間に連続して信号が発信された時にのみ、フロート傾斜角度センサ94の信号を発信する前記基準値を下方修正したり、苗植付装置52の植付深さ調節モータ63を駆動させることにより、整地ロータ27の回転や泥土の跳ね上がりにより、前記回動角度センサ39aが動いて苗植付部4が上昇してしまうことを防止できるので、苗植付部4が不要なタイミングで昇降することが防止され、苗の植付間隔や植付深さが乱れにくくなり、苗の生育が安定する。
【0048】
また、制御装置100は、フロート傾斜角度センサ94の前記基準値を変更する信号及び植付深さ調節モータ63を駆動する信号の発信後、所定時間(例えば5秒前後)が経過すると油圧バルブ48を作動させて昇降油圧シリンダ46を伸縮させ、またフロート傾斜角度センサ94の前記基準値を元の値に戻して植付深さ調節モータ63を苗植付深さの「浅」い方向に回転駆動させる制御構成を採用しても良い。
【0049】
こうして回動角度センサ39aからの信号により苗植付部4が上昇した後、前記所定時間経過後に自動的に苗植付部4を下降させ、フロート傾斜角度センサ94の基準値を元に戻し、苗植付装置52の苗植付位置を上昇させることにより、作業者が操作を行うことなく、元の作業状態に復帰することができるので、作業能率が従来より向上する。
【0050】
図6のカバー37に設けた接触体39とそのセンサ39aに替えて接触体(フラップ)39の下端部をレーキ(鋤状)状に形成しても良い。また、また図8に整地(センター)ロータ27bとセンターフロート55の部分の側面図を示すように、整地(センター)ロータ27bとセンターフロート55の間にレーキ状のレーキ80を取り付け、該レーキ80の回動を感知するためのセンサ(ポテンショ又はリミットスイッチ)80aを設けることで、図6の例で説明したと同様に、作業中にレーキ80が基準値以上連続して上昇した場合、夾雑物が引っかかったと判断し、苗植付装置52を上昇させて苗植付深さを深植えにし、同時に昇降用油圧シリンダ46の伸縮の制御感度を敏感にして苗植付部4を瞬間的に浮かせる夾雑物を乗り越えさせるようにしてもよい。
【0051】
図9にに示すように整地ロータ27a,27bの側面に、円形の板を設けて防波材82を設ける。図9(a)には防波材82の正面図を示す。上記防波材82は図9(b)に一部を示すように整地ロータ27a,27bは整地ロータ駆動軸部70a,70bの両端部に取り付けられ、それぞれ整地ロータ27a,27bと共に回転する構成である。防波材82には中心軸周りに排水口82aを、例えば3個均等に配置し、図9(c)に示すように整地ロータ27a,27bの内部から防波材82に向けて流れる水を排水口82aにより分割排出し、隣接条への波の影響を減少させる。
【0052】
図10には他の実施例の整地ロータ27a,27bの側面に設ける防波材83であり、図10(a)には防波材83の正面図を示す。この防波板も図10(b)に一部を示すように整地ロータ27a,27bは整地ロータ駆動軸部70a,70bの両端部に取り付けられ、整地ロータ27a,27bと共に回転する防波材83であるが、該防波材83を中心に整地ロータ駆動軸部70a,70bの反対側の円周上にプロペラ状の爪83aを設けた構成である。
【0053】
上記構成により整地ロータ27a,27bの回転に応じてプロペラ状の爪83aが回転し、図10(c)に示すように圃場の水を整地ロータ27a,27bの進行方向の反対側に巻き上げて、隣接条への波の影響を減少させる。
【0054】
図11に苗植付部4の要部側面図に示すように、サイドロータ27aの駆動軸部70aへの動力は、後輪11のギヤケース18内のギアからロータ駆動ケース87内のギアに伝達される。該ロータ駆動ケース87に中空の出力シャフト85を機体後側に向けて設け、駆動軸部70aには自在継手(ユニバーサルジョイント)72を機体前側に向けて設ける。そして、該出力シャフト85の内部に自在継手72を差し込むことにより、駆動力が左側のサイドロータ27aに伝達可能に伝達される構成となる。
【0055】
前記自在継手72の機体前端部側は、六角(多角)柱状に形成する、またはスプライン加工を施すと、自在継手72が出力シャフト85の回転に同調せずに回転することを防止でき、整地ロータ27a,27bの駆動回転速度が速くなり、泥を巻き上げて圃場面の視認性を低下させることが防止されると共に、駆動回転速度が遅くなり、圃場の整地が十分に行われず、苗の植付深さが揃わなくなることが防止される。
【0056】
なお、出力シャフト85と自在継手72の接続部とその周辺を伸縮自在な被覆ブーツ85aで覆うことにより、出力シャフト85と自在継手72の接続部に泥土が付着して整地ロータ27a,27bの動作を停止させることを防止できると共に、接続部からグリス等の潤滑剤が圃場に落下し、水質や土質を汚染することを防止できる。
そして、前記メインフレーム15の後端下部に、平面視U字形状の受け部材86を機体後方に向けて配置し、該受け部材86を自在継手72に接触させて配置する、あるいは出力シャフト85と自在継手72の接続部に設けた被覆ブーツ85aに接触させて配置する。
【0057】
上記構成により、前記整地ロータ27a,27bが整地作業を行う際、圃場との接触抵抗等により自在継手72が出力シャフト85から抜けることがあっても、前記受け部材86が自在継手72を受けて自在継手72が圃場面に向かって垂れ下がることを防止するので、自在継手72が圃場面に刺さった状態に気付かず機体を移動させた際に自在継手72が破損することが防止され、機体の耐久性が向上する。
【0058】
なお、図12に小型の苗移植機に適した苗植付部4の要部側面図を示す。この苗植付部4には左右どちらか一方の後輪11のギヤケース18から駆動力を受けるロータ駆動ケース87を機体内側(または、左右のギヤケース18,18の左右方向略中央部)に設け、該ロータ駆動ケース87に中空の出力シャフト85を機体後側に向けて設けた構成を採用しても良い。また、センターロータ27bの駆動軸部70bには、自在継手(ユニバーサルジョイント)72を機体前側に向けて設ける。そして、該出力シャフト85の内部に自在継手72を差し込むことにより、駆動力がセンターロータ27bに伝達可能に伝達される構成となる。
【0059】
前記自在継手72の機体前端部側は、六角(多角)柱状に形成する、またはスプライン加工を施すと、自在継手72が出力シャフト85の回転に同調せずに回転することを防止でき、整地ロータ27a,27bの駆動回転速度が速くなり、泥を巻き上げて圃場面の視認性を低下させることが防止されると共に、駆動回転速度が遅くなり、圃場の整地が十分に行われず、苗の植付深さが揃わなくなることが防止される。
【0060】
なお、出力シャフト85と自在継手72の接続部とその周辺を伸縮自在な被覆ブーツ85aで覆うことにより、出力シャフト85と自在継手72の接続部に泥土が付着して整地ロータ27a,27bの動作を停止させることを防止できると共に、接続部からグリス等の潤滑剤が圃場に落下し、水質や土質を汚染することを防止できる。
そして、前記メインフレーム15の後端下部に平面視U字形状の受け部材86を機体後方に向けて配置し、該受け部材86を自在継手72に接触させて配置する、あるいは出力シャフト85と自在継手72の接続部に設けた被覆ブーツ85aに接触させて配置する。
【0061】
上記構成により、前記整地ロータ27a,27bが整地作業を行う際、圃場との接触抵抗等により自在継手72が出力シャフト85から抜けることがあっても、前記受け部材86が自在継手72を受けて自在継手72が圃場面に向かって垂れ下がることを防止するので、自在継手72が圃場面に刺さった状態に気付かず機体を移動させた際に自在継手72が破損することが防止され、機体の耐久性が向上する。
【0062】
図12に示す構成が図11に示す構成と相違する点は、ロータ駆動ケース87がギヤケース18よりも機体内側にあることと、センターロータ27bの左右方向中央部に設けた駆動軸部70bに駆動力を伝動する構成であるということである。
【0063】
前記図11に示す構成において、U字状の受け部材86がロータ軸85のブーツ85aよりも後方でロータ軸85の先端を受け止めることができるようにすると、ロータ軸85が抜けてもブーツ85aで引っかかり、ロータ軸85のスプラインが縮んでも受け部材86から外れないようにしても良い。
【0064】
図11、図12に示すように、前記出力シャフト85と自在継手72の接続部及び接続部の周辺を覆う被覆ブーツ85aの機体後端位置よりも後側で、自在継手72をU字形状の受け部材86で受ける構成とすると、圃場との接触抵抗等により自在継手72が出力シャフト85から外れた際、自在継手72が被覆ブーツ85aから抜け出る前に受け部材86が自在継手72の移動を規制することができるので、自在継手72が圃場と接触して破損することが防止されると共に、自在継手72及び出力シャフト85からグリス等の潤滑剤が被覆ブーツ85a内に留まるので、水質や土質の汚染が防止される。
【0065】
図13(a)の要部側面図と図13(b)のロータ軸受け部材の斜視図に示すように、ロータ軸85の受け部材89を、ロータ軸85を駆動させる駆動部を収納したケース87のロータ軸85の連接部の下側に取り付けた構成としてもよい。
この構成によると苗植付部4をリフトさせた時にロータ軸85の駆動ケース87と受け部材89も一体となってリフトし、ロータ軸85の先端も同時に上がるので、機体下への出っ張りが少なくてすむ。
【0066】
図14の要部側面図に示すように、前記自在継手72の受け部材として、下リンク41に両端部をU字形状の受けアーム90を設け、出力シャフト85から自在継手72が外れても、該受けアーム90のU字状湾曲部で自在継手72を受け止めることができので、自在継手72が垂れ下がって圃場と接触することが防止され、自在継手72が破損せず、機体の耐久性が向上する。
【0067】
今までの構成では、整地ロータ27bのみが苗植付部4のリフト時に下リンク41に押されて下に下がるようになっている。苗植付部4を下に下げると整地ロータ27bも元の位置に戻るが、グリス切れか、泥詰まりになると、整地ロータ27bのみが下がったままになり、土に潜ってしまう問題があった。
【0068】
前記整地ロータ27bが苗植付部4のリフト時、下リンク41と干渉するのを防止するため、図15に要部側面図で示すように、下リンク41を側面視でへの字に折り曲げた構成にするとよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は田植機の苗植付部を簡易な構成とすることができて利用可能性が大きい。
【符号の説明】
【0070】
1 施肥装置付き乗用型田植機 2 走行車体
3 昇降リンク装置 4 苗植付部
5 粉粒体繰出し装置(施肥装置) 10 前輪
11 後輪 11a 後輪駆動軸
12 ミッションケース 13 前輪ファイナルケース
15 メインフレーム 16 変速レバー
18 後輪ギヤケース 19 畦クラッチレバー
19a 畦クラッチレバーセンサ 20 エンジン
21 ベルト伝動装置 23 HST
25 植付クラッチケース 26 植付伝動軸
27(27a,27b) ロータ 28 施肥伝動機構
30 エンジンカバー 31 座席
32 フロントカバー 34 ハンドル
35 フロアステップ 36 リヤステップ
37 ロータカバー 38 予備苗載台
39 接触体 39a 接触体回動角度センサ
40 上リンク 41 下リンク
42 リンクベースフレーム 43 縦リンク
44 連結軸 46 昇降油圧シリンダ
48 油圧バルブ 50 伝動ケース
51 苗載台 51a 苗取出口
51b 苗送りベルト 52 苗植付装置
52a 苗植付具 53 ブロア用電動モータ
55 センターフロート 56 サイドフロート
58 ブロア 59 エアチャンバ
60 肥料ホッパ 61 繰出部
62 施肥ホース 63 ロータ昇降用モータ
65 苗植付部支持枠体 65a 支持ローラ
65b 両側辺部材 66 梁部材
67 支持アーム 68 ロータ支持フレーム
69 作溝体
70(70a,70b) 駆動軸部
71 連結部材 72 自在継手
73 チェーンケース 74 補強部材
74a 取付片 76 第一リンク部材
77 第二リンク部材 78 スプリング
80 レーキ 80a レーキセンサ
82,83 防波材 82a 排水口
83a プロペラ状爪 85 ロータ軸
85a ロータ軸ブーツ
86 ロータ軸受け部材(U字状のアーム)
87 ロータ駆動ケース 89 受け部材
90 ロータ軸受け部材(U字状アーム)
92 リンクスイッチ 93 取付リンクアーム
94 フロート傾斜角度検出センサ
96 ロータ連動入切スイッチ 97 クラッチシフター
99 クラッチケーブル 100 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行する走行車体(2)と、該走行車体(2)の後部に昇降リンク機構(3)を介して設ける苗植付部(4)と、苗植付部(4)から苗を取って圃場に植え付ける苗植付装置(52)と、該苗植付装置(52)の前側の圃場を均す整地ロータ(27)と、苗植付部(4)の下部で、且つ整地ロータ(27)の後側に配置したフロート体(55,56)と、苗植付部(4)を昇降リンク機構(3)を介して昇降させる昇降油圧シリンダ(46)と、該昇降油圧シリンダ(46)を伸縮させる油圧作動装置の油圧バルブ(48)を設けた苗移植機において、
整地ロータ(27)を覆うロータカバー(37)と、
該ロータカバー(37)に一端部を回動自在に設けた接触体(39)と、
該接触体(39)の移動を検知する回動角度センサ(39a)と、
該回転角度センサ(39a)からの信号を受けると昇降油圧シリンダ(46)により苗植付部(4)を上昇させるべく油圧バルブ(48)を作動させる制御装置(100)
を設けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記フロート体(55,56)の取付リンクアーム(93)に設けた該フロート体(55,56)の圃場面に対する傾斜角度を検出するフロート傾斜角度検出センサ(94)と、
苗植付装置(52)の基部に設けた、苗植付装置(52)による苗植付深さを調節する植付深さ調節モータ(63)を備え、
前記制御装置(100)は、前記フロート傾斜角度センサ(94)の検出した傾斜角度が基準値を超えると油圧バルブ(48)を作動させ、前記接触体(39)の回動を前記回動角度センサ(39a)が検知すると、フロート傾斜角度センサ(94)の前記基準値を下方修正すると共に植付深さ調節モータ(63)を苗植付深さを「深」側に回転駆動させる制御構成を備えている
ことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記制御装置(100)は、前記接触体(39)の回動角度センサ(39a)から所定の回数または所定の時間の間、連続して検知信号を受信すると、フロート傾斜角度センサ(94)の基準値を変更するか又は植付深さ調節モータ(63)を駆動させる制御構成を備えていることを特徴とする請求項2記載の苗移植機。
【請求項4】
制御装置(100)は、前記フロート傾斜角度センサ(94)の基準値を変更する信号及び植付深さ調節モータ(63)を駆動する信号の発信後、所定時間(例えば5秒前後)が経過すると油圧バルブ(48)を作動させて昇降油圧シリンダ(46)を伸張させ、またフロート傾斜角度センサ(94)の基準値を元の値に戻して植付深さ調節モータ(63)を苗植付深さの「浅」側に回転駆動させる制御構成を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−5415(P2012−5415A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143952(P2010−143952)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】