説明

蒸気タービンのタービン翼

翼形部(12)と翼脚部(14、43、52)とを備えた蒸気タービンのタービン翼(10、110、210)は、本発明に基づいて特に、翼形部(12)が蒸気タービンの低圧段における用途に対して形成され、少なくとも部分的に繊維強化複合材料(18)を含んでいることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、翼形部と翼脚部とを備えた蒸気タービンのタービン翼に関する。また本発明は、かかるタービン翼を備えた蒸気タービンに関する。
【0002】
かかるタービン翼、特に動翼として形成されたこの種のタービン翼は、従来において鋼あるいはチタンで作られている。一般にタービン翼特に最終段タービン翼は、高い効率を得るためにできるだけ大きな洗流面積(Abstromflache)を有する必要があり、このために、大きな翼長を有していなければならず、機能上大きな遠心負荷を受ける。従って、通常の用途に対して高張力鋼が利用される。高張力鋼が遠心応力の理由から採用できない箇所では、より小さな密度のためにより僅かな遠心応力しか生じないチタン翼が利用される。もっともこのチタン翼は鋼翼より非常に高価である。しかしチタン翼でも、直結形機械(50Hz)に対する洗流面積は約16m2に制限され、これが達成可能な翼長に対する決定要因となる。
【0003】
翼長に関する実際の制限のために、蒸気タービンの低圧段において従来通常、低圧流の数が増やされる。これは例えば単流(片方向流)タービン段から双流(両方向流)タービン段への切換によって、あるいは複数の低圧部分タービンの採用によって行われる。タービン装置の回転数を低減することもある。この場合、より大きな洗流面積が利用できる。しかしこれらのすべての処置は一部でかなりの経費を伴う。
【0004】
本発明の課題は、蒸気タービンの特に高い効率を可能とし、同時に蒸気タービンにおいて運転上安全に駆動される、冒頭に述べた形式のタービン翼を備えた蒸気タービンを提供することにある。
【0005】
この課題は、本発明に基づいて、冒頭に述べた形式のタービン翼において、翼形部(羽根部)が蒸気タービンの低圧段における用途に対して形成され、少なくとも部分的に繊維強化複合材料を含んでいることによって解決される。またその課題は、本発明に基づいて、かかる本発明に基づくタービン翼を有する蒸気タービンによって解決される。
【0006】
即ち、繊維強化複合材料翼は本発明に基づいて低圧段翼ないし最終段翼として採用される。強度が異なった材料に比べての繊維強化複合材料の利点は、最終段翼材料として利用において明らかに現れる。即ち、比強度(強度(Rp0.2)/密度(ρ))が、高張力焼なまし鋼において115m2/S2、チタンにおいて221m2/S2であるのに対して、繊維強化材料CFK−HM(carbon fiber reinforced plastic)において563m2/S2である。繊維強化複合材料の非常に高い強度に基づいて、今までどおりの寸法に作られたタービン翼はより大きく負荷させることができ、あるいはまた、より大きな長さのタービン翼が製造できる。その際に生ずる遠心応力は、増大された比強度に基づいて、運転安全性を犠牲にすることなく難なくタービン翼で受けられる。
【0007】
本発明に基づく繊維強化複合材料を含むタービン翼の大きな比強度によって、蒸気タービンの低圧段における用途に対する翼形部の設計に基づいて、大きな遠心応力にもかかわらず、非常に大きな洗流面積が用意できる。これは特に大きな翼長の存在によって生ずる。これによって、蒸気タービンの効率が著しく高められる。
【0008】
工業タービンの分野において、繊維強化複合材料の本発明に基づく利用により、例えば最終段のより高い背圧(空気復水)の許容によって、駆動タービンのより高い許容回転数によって、あるいは可変速駆動に対する最終段翼の増大によって、所定寸法のタービン翼はより大きな負荷を受けることができる。その結果、蒸気タービンの効率が向上する。
【0009】
既に述べたように、発電所用タービンの分野において、既存の最終段翼長の極めて大きな延長の可能性が生じ、これに伴って達成可能な洗流面積が大きく増大する。例えば従来において、フロー当たり20m2の洗流面積の伝動装置増速式に形成されたタービン発電装置を、本発明に基づくタービン翼によって、同じ洗流面積の直結形タービン発電装置に置き換えることができる。直結形タービン発電装置の小形構造に基づいて、大幅なコスト削減が可能となる。また、本発明に基づくタービン翼の採用によって、低圧フローの数を減少することができる。多重フロー発電所用途に対して、例えば3つの低圧部分のうちの1つの低圧部分を省くことができる。双流低圧タービンを単流機械に置き換えることもでき、これによって、同様に大幅なコスト削減が達成される。さらに本発明に基づく方式によって、いずれの場合にも、洗流面積が同じ場合に設備構造寸法の縮小化が達成される。
【0010】
本発明に基づくタービン翼は、特に蒸気タービンの最終動翼列に対して適しているが、本発明に基づいて後ろから二番目および場合によっては三番目の翼列にも採用できる。これらは鋼あるいはチタンから成る前段翼と組み合わせることもできる。本発明に基づくタービン翼の本発明に基づいて少なくとも部分的に繊維強化複合材料を含む翼形部は、好適には、少なくとも外壁部位に繊維強化複合材料を有している。しかし、翼形部全体が繊維強化複合材料から構成されることも有利である。また、翼先端に向かって細くなっている翼形部の場合、繊維の数が翼形部の長手方向に減少していると有利である。
【0011】
上述の課題は、さらに、本発明に基づいて、冒頭に述べた形式のタービン翼において、翼形部が少なくとも部分的に繊維強化複合材料を含み、少なくとも繊維強化複合材料を含む部位が、タービン翼の運転中において繊維強化複合材料への湿りの侵入を阻止する湿り非浸透性の変形可能な保護層によって取り囲まれていることによって解決される。さらにその課題は、かかるタービン翼が設けられた蒸気タービンによって解決される。
【0012】
これによって、蒸気タービンの運転中における翼形部の湿り吸収が効果的に防止される。その湿り吸収は時間の経過につれて、不利に部品の重量増大とそれに伴うロータの潜在的アンバランスを引き起こす。さらに、かかる湿り吸収は、繊維強化複合材料の変形を生じさせ、且つ、継続的に母材の損傷従って繊維強化複合材料を含む部品の損傷を生じさせる。本発明に基づき、湿り不浸透性保護層を設けることにより、蒸気タービンの運転安全性を損なう上述の結果が防止される。保護層が損傷することなく又はその密封機能を損なうことなく翼形部の母材の予期される変形に耐えるようにするために、本発明に基づく保護層は変形可能に形成されている。その保護層は、翼の運転中に生ずる翼形部の繊維強化複合材料を含む部位の変形にもかかわらず、保護層がその全寿命期間中にわたってその湿り不浸透性を失わないように変形可能に形成されている。これは特に、保護層が母材の最大伸び範囲を超える弾性使用範囲を有することによって達成される。翼形部における繊維強化複合材料の本発明に基づく採用によって可能とされる蒸気タービンの高い効率のほかに、タービン翼の本発明に基づく実施形状は、さらに本発明に基づく湿り不浸透性保護層によって特に運転上安全に使用することができる。
【0013】
防湿性保護層が翼形部を完全に取り囲んでいることが有利である。さらに、保護層がタービン翼全体を、即ち、翼脚も包囲していることも目的に適っている。本発明に基づく有利な実施態様において、保護層は、保護層の確実な接着が液滴衝撃時でも保たれるように形成される。さらに、翼形部の母材は、絶え間ない液滴衝撃が母材の疲労ないし破壊を引き起こさないように設計される。
【0014】
上述の課題はさらに本発明に基づいて、冒頭に述べた形式のタービン翼において、翼形部並びに翼脚部がそれぞれ少なくとも部分的に繊維強化複合材料を含んでいることによって解決される。さらに、この課題は、かかるタービン翼が設けられた蒸気タービンによって解決される。
【0015】
上述したように翼形部に繊維強化複合材料を利用することによって、繊維強化複合材料の小さな密度に基づいて、大きな洗流面積を備えたタービン翼が形成できる。これは蒸気タービンの効率を高める。また、タービン翼の翼脚にも同時に繊維強化複合材料を利用することによって、蒸気タービンのロータ軸へのタービン翼の安全且つ確実な埋め込みが保証される。即ち、特に繊維強化複合材料の繊維を、翼形部と翼脚とを通して導くことができ、これにより、翼形部および翼脚が相互に安定して結合され、タービン翼の運転中にたとえ大きな力が生じても、翼形部の割れ発生を効果的に防止することができる。これによって、運転中におけるタービン翼の運転安全性が保証される。
【0016】
繊維強化複合材料を含む部品の破損防止を保証するために、繊維強化複合材料は、有利に、ガラス繊維、例えばアラミド繊維のような合成樹脂繊維および/又は炭素繊維を含んでいる。特に繊維強化複合材料として、繊維強化材料CFK−HMが利用される。
【0017】
他の有利な実施態様において、繊維強化複合材料は、翼形部の部位においてタービン翼の主軸線からずれた角度で、特に主軸線に対して±15°、±30°および/又は±45°の角度を成して導かれている繊維を有している。これによって、翼形部の高いねじれ強度が得られる。繊維強化複合層は翼形部中央面に対して鏡面対称に配置され、これによって、ねじれが防止される。
【0018】
これに対して、非対称的配置はねじれを生じさせる。これは有利な他の実施態様において、場合によっては自律的な調整目的に利用することができる。かかる繊維あるいは層の配置様式によって、運転負荷に関係する翼幾何学形状の目的に適った変化を得るために、限られた範囲の内部において異方性を利用することもできる。これに関して、過速回転時に流れから幾分エネルギが取り去られ、これにより、それ以上に加速しないようにするために、翼列が開かれるようなねじれが利用される。流れおよび負荷に関係して最適な流れ分布を形成するために、そのねじれを利用することもできる。即ち、翼列は貫流量が少ない場合に閉じられ、貫流量が多い場合に相応して開かれる。
【0019】
翼のコストおよび強度の最適化を達成するために、翼形部が、翼形部中央に配置され繊維強化複合材料により完全に包みこまれた充填体を有していることが目的に適っている。
【0020】
繊維強化複合材料を備えた部位を包みこむ変形可能な湿り非浸透性保護層の機能を監視し、翼形部の欠陥が起こらないようにするために、保護層の下側に導電層が配置されていることが目的に適っている。この導電層は警報機構として用いられ、それにより、保護層の損傷を検出することができ、そして、例えば関連部品の補充あるいは交換のような対策ないし保護層の修繕が適時に行われる。かかる導電層は、個々に設けられるか、層間に位置する絶縁層と対を成して設けることができる。
【0021】
後者の場合、翼形部の表面部位における層構造に対して、繊維強化複合材料と、導電層特に金属層と、絶縁層と、もう1つの導電層特に金属層と、保護層とが順次配置される。保護層の機能を監視するために、周囲に対する絶縁抵抗あるいはそれらの層間の絶縁抵抗が測定される。保護層の機能を監視するために、導電層と、絶縁層と、もう1つの導電層とを含む層配置の電気容量(キャパシタンス)を測定することもできる。唯一の導電層しか存在しない場合には、保護層の機能を監視するために、相応して、周囲に対する絶縁抵抗あるいは導電層の電気抵抗の測定が適している。
【0022】
他の有利な実施態様において、保護層の下側に水溶性化学物質が配置されており、この化学物質は溶解した形態が特に化学的、光学的および/又は放射物理的方法で検知できる。この処置は保護層の異なった機能監視方式となっている。即ち、例えば蒸気タービン発電所の水・蒸気・回路の復水が連続して検査される。その中間に保護層の下側に配置された化学物質が検知されれば、これは保護層の損傷を示唆する。
【0023】
他の目的に適った実施態様において、タービン翼の前縁(入口縁)に、液滴衝撃に対して防護するための前縁強化体が設けられている。かかる前縁強化体は、タービン翼への接着によって、あるいはタービン翼への薄層重ね合わせによって形成することができる。かかる前縁強化体は密封された保護層あるいは中間層によっても形成できる。また、保護層を相応して厚肉にすることあるいは追加的保護部品を接着あるいは埋設することもできる。また、タービン翼自体の母材部分をタービン状前縁強化体で形成することもできる。あるいはまた、繊維が横方向に延びるタービン翼の積層構造によって、液滴衝撃に対する防護が達成される。
【0024】
また、タービン翼の翼脚部が、蒸気タービンのロータ軸における翼脚ホルダと接触するための接触要素を有し、その接触要素が繊維強化複合材料および/又は金属材料を含んでいることが目的に適っている。接触要素は選択的に繊維強化複合材料あるいは金属材料から構成される。その金属材料は、ロータ軸に対し耐荷重性があり寸法の合った継手を形成し、この接触要素を包みこむ翼脚部の繊維強化複合材料の過負荷を防止する、ように選定されねばならない。特に、この接触要素は金属ブッシュによって形成することができる。上述した変形可能な湿り非浸透性保護層が存在する場合、この保護層は有利に翼脚部位特に接触部位において特に強化され、あるいは保護要素で損傷から保護されねばならない。
【0025】
特に有利な実施態様において、翼脚部は、翼形部の大多数の繊維を方向転換させる方向転換要素、および/又は、翼脚部における有利な繊維ガイドを翼形部の幾何学形状に合わされた繊維ガイドに移行させる案内要素を有している。また、その方向転換要素および/又は案内要素はそれぞれ繊維強化複合材料あるいは金属材料で構成することができる。特に接触要素と案内要素ないし接触要素と方向転換要素はそれぞれ同じ要素によって形成することができる。
【0026】
さらに有利に、翼脚部は、タービンのロータ軸における翼脚ホルダにロータ軸に関して半径方向に差し込まれる差込み翼脚として形成されている。その場合目的に適って、繊維強化複合材料の繊維は、接触要素として用いるブッシュの周りをめぐって導かれている。また、かかる差込み翼脚において有利に、翼脚部における翼曲率が、差込み翼脚の異なったピン位置に応じて適合され、これによって、翼脚部から翼形部への有利な僅かな方向転換が生ずる。これによって、案内要素に対する経費が限定されたままとなる。
【0027】
有利な実施態様において、変形可能な湿り非浸透性保護層は翼脚部も包みこんでいる。これにより、翼脚部に含まれる繊維強化複合材料への湿りの侵入も効果的に防止される。これによって、タービン翼の寿命が一層増大される。
【0028】
他の有利な実施態様において、翼脚部が、タービンのロータ軸における翼脚ホルダにロータ軸に関してほぼ軸方向に差し込まれるすべり翼脚として形成されている。ここでほぼ軸方向とは、挿入方向が軸方向から±40°までずれていてもよいことを意味する。特に、翼脚部は湾曲して形成され、その翼脚曲率は、翼形部の翼脚近くにおける曲率にほぼ従っている。方向転換要素および接触要素によって、翼溝への力伝達が達成される。接触要素は案内要素の機能を果たすこともできる。これによって、案内要素に対する経費が最小となる。
【0029】
本発明に基づく蒸気タービンの有利な実施態様において、蒸気タービンはタービン翼の振動挙動を監視するための装置を有している。これによって、タービン翼の固有振動数の変化が認識できる。その変化は、蒸気タービンの運転中の翼形部における繊維強化複合材料の湿り吸収に起因する。かかるタービン翼の固有振動数の変化は、上述した変形可能な湿り非浸透性保護層の機能の点検、場合によっては、部品の損傷を防止するための保護層の補修に利用することができる。
【0030】
他の有利な実施態様において、蒸気タービンは少なくとも1個の加熱可能な静翼を有している。その加熱によって、静翼における湿りを蒸発することができ、液滴衝撃による他のタービン翼の損傷が防止できる。あるいはまた、少なくとも1つの静翼に湿りを吸引するための装置を設けることもできる。
【0031】
繊維強化複合材料翼の製造は、好適には、繊維が巻き付けられ、母材と共に含浸されるか、いわゆるプリプレグの形にされる普通の方法で行われる。次いで、これがいわゆる受型の中においてその最終形状にされ、母材の硬化も行われる。ここで、選択的に接触要素、方向転換要素あるいは案内要素も一緒に作られる。その後、例えば必要な寸法安定性、公差維持および表面品質を得るために、翼の所定箇所を例えば切削加工で加工する必要がある。また、既に取り付けられた接触要素、方向転換要素あるいは案内要素が加工されるか、あるいはこれらの要素が成形過程後に取り付けられる。また既に述べたように、前縁強化体を取り付けることができ、この前縁強化体は例えば切削加工によるような後加工によって翼形部(プロフィル)に一体化される。それに続いて、保護層および警報装置にとって必要な層による被覆が行われる。その場合、保護機能および強化機能を向上するために、個々の層を所定箇所において強化して形成することができる。
【0032】
以下図を参照して本発明に基づくタービン翼の実施例を詳細に説明する。
【0033】
図1は、特に蒸気タービンの低圧段における用途に対して形成されている本発明に基づくタービン翼10の第1実施例を示している。このタービン翼10は翼形部(羽根部)12並びに差込み脚の形態の翼脚部14を有している。翼脚部14はピン結合用の差込み部片16を有している。翼形部12はガラス繊維および/又は炭素繊維を含む繊維強化複合材料18で作られている。その繊維主方向20はタービン翼10の主軸線21に沿って延びている。
【0034】
翼形部12は翼脚部14の近くの部位に補助繊維強化複合層22を有している。この補助繊維強化複合層22は、タービン翼10の主軸線21に対してずれた角度で、例えば主軸線21に対して±15°、±30°あるいは±45°の角度を成して延び、翼形部12を補強するために利用される補助繊維を含んでいる。なお複数のかかる補助繊維強化複合層22を設けることもできる。それらの層は翼形部中央面に対して鏡面対称に配置することができ、これにより、ねじれ発生が防止される。補助繊維強化複合層の非対称的配置はねじれを生じさせる。これは場合によっては自律的な調整目的に利用される。
【0035】
図2は図1の翼形部12におけるII−II線に沿った断面図を示している。この断面図は、翼形部の大きな厚肉部位に、重量と強度とを最適化するために配置された充填体24を示している。この充填体24は繊維強化複合材料18により取り囲まれている。タービン翼10は図2において左側から駆動蒸気26によって洗流される。タービン翼10の駆動蒸気26が流入して来る側における前縁(入口縁)に、液滴衝撃に対して防護するために前縁補強体28が設けられている。この前縁補強体28は図2Cに詳細に示されている。前縁補強体28は金属から成り、タービン翼10の前縁27における接着剤および繊維強化複合材料に適合された当たり部42に接着結合40によって固定されている。
【0036】
図2Aは図2におけるタービン翼10の表面部位の構造の第1実施例を図解している。その場合、内側に位置する繊維強化複合材料18は、金属層の形態の第1導電層36と、絶縁層34と、金属層の形態の第2導電層32と、最後の保護層30とによって取り囲まれている。この保護層30は翼形部12を液体に対して密封するために防湿的に形成されている。これによって、保護層30は繊維強化複合材料18への湿りの侵入を阻止する。また保護層30は、タービン翼10の運転中に予期される変形をその密封機能を損なわずに補償するように変形可能に形成されている。導電層32と絶縁層34と導電層36との連続配置は、保護層30の機能を監視するために用いられる。湿りが保護層30を通って翼形部12の内部に浸透したか否かを検出するために、導電層30、32の周囲に対する絶縁抵抗あるいはそれらの層間の絶縁抵抗ないし層構成体の電気容量(キャパシタンス)が測定される。
【0037】
図2Bは図2におけるタービン翼10の表面部位の構造の第2実施例を示している。ここでは、繊維強化複合材料18は表示材料38を含む層で取り囲まれ、この層も保護層30で取り囲まれている。表示材料38は水溶性物質の形態で存在し、その溶解した形態が化学的、光学的および/又は放射物理的方法で検知できる。これにより、表示材料38は、保護層30における漏れを検出するために用いられる。即ち、湿りが翼形部12の内部に侵入したとき、表示材料38の水溶性化学物質が溶解し、タービンから排出された蒸気の復水において検知される。
【0038】
図3Aは本発明に基づくタービン翼110の第2実施例を示している。繊維強化複合材料18を備えた一部しか示されていない翼形部12に、翼脚部43が続いている。その繊維強化複合材料18の繊維は翼形部12から出て翼脚部43に導かれ、翼脚部43内で金属ブッシュの形態の接触・方向転換要素46の周りをめぐって導かれ、その後、繊維は再び翼形部12に戻されている。従って、その要素46は方向転換機能を果たす。この要素46は同時に、蒸気タービンのロータ軸47における軸溝48との接触を形成することにより、接触機能をも果たす。また、図3Aにおけるタービン翼110はいわゆる案内要素44を有し、この案内要素44によって、翼脚部における有利な繊維ガイドが、翼形部12の幾何学形状に合わされた繊維強化複合材料18の繊維ガイドに移行されている。
【0039】
図3Bに図3AにおけるIII−III線に沿った断面図が示されている。翼脚部43は、ロータ軸47の長手軸線50に対して直角に延びる軸溝48に差し込むための差込み部片45を備えた差込み脚の形態に形成されている。その差込み部片45はそれに対して直角に配置された差込みピンによって軸溝48に取り付けられている。その各差込み脚45は接触・方向転換要素46を有している。
【0040】
図4Aに、すべり脚の形態の翼脚部52を備えた本発明に基づくタービン翼210の第3実施例が示されている。図4Bに断面図で詳細に示されている翼脚部52は、ロータ軸の軸方向に延びる軸溝60に挿入されている。その翼脚部52は図4Aに示されているように曲がりが設けられ、方向転換要素56を有し、この方向転換要素56の周りをめぐって、繊維強化複合材料18の大多数の繊維が導かれている。これらの繊維は案内要素あるいは接触要素54によって取り囲まれている。この要素54はまず、翼脚部における有利な繊維ガイドを、翼形部12の幾何学形状に合わされた繊維強化複合材料18の繊維ガイドに移行する機能を果たす。この要素54はさらに、ロータ軸58の軸溝60との接触を形成する機能を果たす。案内・接触要素54は、翼脚部52の繊維強化複合材料18を完全に取り囲み、繊維強化翼形部12の下部において繊維強化複合材料18にも接している。
【0041】
この部位は図4Cに詳細に示されている。翼形部12が変形したときに案内・接触要素54あるいは繊維強化複合材料18の損傷が生じないようにするために、繊維強化複合材料18と要素54との間に隙間62が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に基づくタービン翼の第1実施例の概略図。
【図2】図1におけるII−II線に沿った断面図。
【図2A】図2におけるX部分の第1形態の詳細図。
【図2B】図2におけるX部分の第2形態の詳細図。
【図2C】図2におけるY部分の詳細図。
【図3A】本発明に基づくタービン翼の第2実施例の部分概略図。
【図3B】図3AにおけるIII−III線に沿った断面図。
【図4A】翼脚を平面図で示した本発明に基づくタービン翼の第3実施例の断面図。
【図4B】蒸気タービンのロータ軸における図4Aの翼脚が取り付けられた軸溝の領域の断面図。
【図4C】図4Bにおける部分Zの拡大詳細図。
【符号の説明】
【0043】
10 タービン翼
12 翼形部
14 翼脚部
18 繊維強化複合材料
21 タービン翼の主軸線
24 充填体
27 前縁(入口縁)
28 補強体
30 保護層
32 導電層
36 導電層
38 水溶性化学物質
43 翼脚部
46 接触・方向転換要素
47 ロータ軸
48 翼脚ホルダ(軸溝)
52 翼脚部
54 案内・接触要素
56 方向転換要素
58 ロータ軸
60 翼脚ホルダ(軸溝)
110 タービン翼
210 タービン翼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
翼形部(12)と翼脚部(14、43、52)とを備えた蒸気タービンのタービン翼(10、110、210)において、
翼形部(12)が蒸気タービンの低圧段における用途に対して形成され、少なくとも部分的に繊維強化複合材料(18)を含んでいることを特徴とする蒸気タービンのタービン翼(10、110、210)。
【請求項2】
特に請求項1に記載の翼形部(12)と翼脚部(14、43、52)とを備えた蒸気タービンのタービン翼(10、110、210)において、
翼形部(12)が少なくとも部分的に繊維強化複合材料(18)を含み、少なくとも繊維強化複合材料(18)を含む部位が、タービン翼(10、110、210)の運転中において繊維強化複合材料(18)への湿りの侵入を阻止する変形可能な湿り非浸透性の保護層(30)によって取り囲まれていることを特徴とする蒸気タービンのタービン翼(10、110、210)。
【請求項3】
特に請求項1又は2に記載の翼形部(12)と翼脚部(14、43、52)とを備えた蒸気タービンのタービン翼(10、110、210)において、
翼形部(12)並びに翼脚部(14、43、52)がそれぞれ少なくとも部分的に繊維強化複合材料(18)を含んでいることを特徴とする蒸気タービンのタービン翼(10、110、210)。
【請求項4】
繊維強化複合材料(18)がガラス繊維、合成樹脂繊維および/又は炭素繊維を含んでいることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のタービン翼。
【請求項5】
繊維強化複合材料(18)が、翼形部(12)の部位においてタービン翼(10、110、210)の主軸線(21)からずれた角度で、特に主軸線(21)に対して±15°、±30°および/又は±45°の角度を成して導かれた繊維を有していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のタービン翼。
【請求項6】
翼形部(12)が、翼形部中央に配置され繊維強化複合材料(18)により完全に包みこまれた充填体(24)を有していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のタービン翼。
【請求項7】
保護層(30)の下側に導電層(32、36)が配置されていることを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1つに記載のタービン翼。
【請求項8】
保護層(30)の下側に、溶解した形態が特に化学的、光学的および/又は放射物理的方法で検知できる水溶性化学物質(38)が配置されていることを特徴とする請求項2ないし7のいずれか1つに記載のタービン翼。
【請求項9】
タービン翼(10、110、210)の前縁(27)に、液滴衝撃に対して防護するための前縁強化体(28)が設けられていることを特徴とする請求項2ないし8のいずれか1つに記載のタービン翼。
【請求項10】
翼脚部(14)が、蒸気タービンのロータ軸(47、58)における翼脚ホルダ(48、60)と接触するための接触要素(46、54)を有し、該接触要素(46、54)が繊維強化複合材料(18)および/又は金属材料を含んでいることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載のタービン翼。
【請求項11】
翼脚部(14、43、52)が、翼形部(12)の大多数の繊維を方向転換させる方向転換要素(46、56)、および/又は、翼脚部(14、43、52)における有利な繊維ガイドを翼形部(12)の幾何学形状に合わされた繊維ガイドに移行させる案内要素(44、54)を有していることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載のタービン翼。
【請求項12】
翼脚部(14、43、52)が、タービンのロータ軸(47)における翼脚ホルダ(48)にロータ軸(47)に関して半径方向に差し込まれる差込み翼脚(14、43)として形成されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載のタービン翼。
【請求項13】
防湿性保護層(30)が翼脚部(14、43、52)も包みこんでいることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1つに記載のタービン翼。
【請求項14】
翼脚部(14、43、52)が、タービンのロータ軸(58)における翼脚ホルダ(60)にロータ軸(58)に関してほぼ軸方向に差し込まれるすべり翼脚(52)として形成されていることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1つに記載のタービン翼。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1つに記載のタービン翼(10、110、210)を備えていることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項16】
タービン翼(10、110、210)の振動挙動を監視するための装置を有していることを特徴とする請求項15に記載の蒸気タービン。
【請求項17】
少なくとも1個の加熱可能な静翼を有していることを特徴とする請求項15又は16に記載の蒸気タービン。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公表番号】特表2009−516798(P2009−516798A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540562(P2008−540562)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067923
【国際公開番号】WO2007/057294
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】