説明

蒸気回収装置、加熱調理器、および水位検知装置

【課題】水タンクの水位を安定して検知することのできる蒸気回収装置、この蒸気回収装置を備えた加熱調理器、およびこの蒸気回収装置または加熱調理器に適用可能な水位検知装置を得る。
【解決手段】水位検知用発光部から発せられた光が水タンク7を介して水位検知用受光部に到達する光量と、予め定められた水位判定閾値とを対比して、水タンク7の水位を検知する水位検知部(上限水位検知部8、水位判定手段13)と、発光部から発せられた光が水タンクを介して受光部に到達する光量と予め定められた基準値とを対比して、水タンクに貯えられた水の汚れ度合いを検知する水汚れ検知部(水汚れ検知部21、水汚れ判定手段22)とを備え、水汚れ検知部が検知した水タンクの水の汚れ度合いに基づいて、水位検知部が水位検知に用いる水位検知用受光部の受光量または水位判定閾値を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気を復水して回収する蒸気回収装置、この蒸気回収装置を備えた加熱調理器、およびこの蒸気回収装置または加熱調理器に適用可能な水位検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炊飯調理器においては、「調理器本体と、この調理器本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記調理器本体を開閉自在に覆う蓋体と、この蓋体に設けた蒸気孔と、前記蓋体と鍋との間に配設され蓋体に取付けられた内蓋と、この内蓋内に設けたおねばをふき出すふき出し孔と、前記蓋体の蒸気孔と前記ふき出し孔との間に配設した環状リングと、この環状リングの壁上部と当接して前記ふき出し孔と前記蒸気孔との間を閉塞するように蓋体の下面に設けた凸部と、前記蓋体の中央部を中心として蒸気孔と反対側に位置する部分で前記凸部は除かれ、前記環状リングの壁との間で閉塞されない隙間部とを備えた」ものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−305518号公報(第1―2頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の構成の炊飯調理器では、炊飯中に発生する蒸気が蒸気孔から炊飯調理器外へ排出されるため、調理器の周辺に蒸気が結露し、壁面や天井などが汚染されてしまう。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、蒸気を外部に排出することなく水タンクに回収して復水し、かつ、該水タンクの水位を安定して検知することのできる蒸気回収装置、この蒸気回収装置を備えた加熱調理器、およびこの蒸気回収装置または加熱調理器に適用可能な水位検知装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る蒸気回収装置は、
発生する蒸気を案内する蒸気案内路と、
前記蒸気案内路により案内された蒸気を回収し復水して貯える水タンクと、
水位検知用発光部から発せられた光が前記水タンクを介して水位検知用受光部に到達する光量と予め定められた水位判定閾値とを対比して、前記水タンクの水位を検知する水位検知部と、
発光部から発せられた光が前記水タンクを介して受光部に到達する光量と予め定められた基準値とを対比して、前記水タンクに貯えられた水の汚れ度合いを検知する水汚れ検知部とを備え、
前記水汚れ検知部が検知した前記水タンクの水の汚れ度合いに基づいて、前記水位検知部が水位検知に用いる前記水位検知用受光部の受光量または前記水位判定閾値を補正する
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る蒸気回収装置は、蒸気を回収して復水して貯える水タンクを備えたので、蒸気で周囲が汚染されることがない。また、水タンク内の水の汚れ度合いによっては水タンクの水位を正確に検出できないが、本発明では水タンク内の水の汚れ度合いに基づいて水位検知部が水位検知に用いる水位検知用受光部の受光量または水位判定閾値を補正するので、精度のよい判定をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る蒸気回収装置を備えた加熱調理器の側面断面模式図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る傷つき検知部の間に水タンクを配置した場合の側面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る傷つき検知部の間に水タンクを配置していない場合の側面図である。
【図4】ポリスチレン平板の傷つき度合いと受光部の出力との関係を確認するための実験の構成を示す図である。
【図5】ポリスチレン平板への擦り回数と受光部の出力との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る蒸気回収装置を備えた加熱調理器の側面断面模式図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る水汚れ検知部の間にきれいな水を入れた水タンクを配置した場合の側面図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る水汚れ検知部の間に汚れ水を入れた水タンクを配置した場合の側面図である。
【図9】水タンク内の水の食物成分濃度と受光部の出力との関係を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る水汚れ検知部を、水が入っていない水タンクのコーナー部に配置した場合の側面模式図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る水汚れ検知部を、きれいな水が入っている水タンクのコーナー部に配置した場合の側面模式図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係る水汚れ検知部を、汚れ水が入っている水タンクのコーナー部に配置した場合の側面模式図である。
【図13】水汚れ検知部を水タンクのコーナー部に配置した場合において、水タンク内の水の食物成分濃度と受光部の出力との関係を示すグラフである。
【図14】本発明の実施の形態3に係る蒸気回収装置を備えた加熱調理器の側面断面模式図である。
【図15】本発明の実施の形態3に係る、動作時間と受光部の出力との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る水位検知装置および蒸気回収装置を備えた加熱調理器の主要部を示す断面模式図であり、本実施の形態1では、加熱調理器が炊飯器である場合の例について説明する。
【0010】
図1において、炊飯器の本体1の内部には炊飯釜2が着脱可能に収納され、本体1の上部に一端が開閉自在に軸支された蓋体3が取り付けられ、この蓋体3には着脱可能に内蓋4が取り付けられている。また、蓋体3には、一端が内蓋4の中央部に着脱可能に装着された蒸気パイプ6が配設されている。内蓋4は、蓋体3が本体1の上面開口部を覆った際に、炊飯釜2の上面開口部を覆って内部を密閉状態にする。炊飯釜2の下方には、炊飯釜2を加熱するための加熱体5が配置され、炊飯釜2の脇に水タンク7が設置されている。
【0011】
この水タンク7は、上面開口部を着脱可能に覆うタンク蓋7aと、上端がタンク蓋7aに固着された蒸気導入パイプ7bとを有している。なお、この蒸気導入パイプ7bは本発明の蒸気案内路に相当するものである。この蒸気導入パイプ7bの上端は、蓋体3内に配設された蒸気パイプ6の他端と着脱可能に接続される。つまり、蓋体3が開けられたとき蒸気パイプ6が蒸気導入パイプ7bから離れ、蓋体3が閉じられたときに蒸気パイプ6と蒸気導入パイプ7bとが接続される。蒸気パイプ6と蒸気導入パイプ7bは、炊飯時に発生した蒸気を水タンク7内に導くためのものである。水タンク7は、蒸気導入パイプ7bに流入した蒸気を水で結露させ、回収水10として貯留するためのものであり、使用者がタンクの給排水や清掃が容易に行えるように、本体1から取り外し可能に構成することができる。
【0012】
水タンク7の側面には、水タンク7に貯えられた水の水位を検出するための上限水位検知部8が設置されている。上限水位検知部8は、図示しない光学的な発光素子と受光素子とで構成されており、両者は水タンク7を挟んで対向するようにして配置されている。受光素子は、発光素子が発光した光を受光する位置に配置されており、受光した光量に応じた信号を生成して後述する制御部12の水位判定手段13に出力する。この受光素子と発光素子は、水タンク7の上限水位11とほぼ同じ高さに設けられている。上限水位検知部8の発光素子は、可視光の発光ダイオードや、波長が近赤外線の発光ダイオードなどを用い、受光素子は、発光素子が発する光の波長に対して感度を持つフォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトICなどを用いることができる。
【0013】
ここで、水タンク7を構成する部材は、発光素子が発した光を透過する部材であればよく、通常は、透明なプラスチックを用い、例えば、材料としてポリスチレンや、ポリカーボネート、アクリルなどを用いる。また、材料としてガラスなどを用いると、プラスチックに比べて傷がつきにくい上に、長期間の使用や洗浄を行っても透過率が変わりにくく、また、上限水位検知部8による水位検知の安定性もよく、見栄えもよい。
【0014】
上限水位検知部8の発光素子から発せられた光は、水タンク7を透過して、受光素子に到達する光路を進む。この光路上に回収水10が達していない場合、すなわち、水タンク7の回収水10が上限水位11に達していない場合には、受光素子に達する光量が大きく、受光素子が生成する信号も大きくなる。また、水タンク7の回収水10が上限水位11に達している場合には、発光素子から受光素子へ至る光路上に回収水10が存在することになるので、受光素子に到達する光量は減少し、受光素子が生成する信号も小さくなる。
【0015】
水タンク7の側面で上限水位検知部8の近傍には、水タンク7の傷つき度合いを検知するための傷つき検知部9が設置されている。傷つき検知部9は、例えば光学的な発光素子と受光素子とを用いて構成することができる。傷つき検知部9の構成例を図2および図3に示す。図2は投光部15と受光部16とを対向する位置に設置して両者の間に水タンク7を配置した場合の模式図、図3は図2から水タンクを取り除いた場合の模式図である。図2および図3において、投光部15は、可視光の発光ダイオードや、波長が近赤外線の発光ダイオードなどを用い、受光部16は、投光部15が発する光の波長に対して感度を持つ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトICなどを用いることができる。
【0016】
図2に示すように、水タンク7が配置されている場合は、投光部15からの光は、まず光路17aで空気中を進んだ後、光路17bで水タンク7の側壁を透過し、光路17cで水タンク7内の空中を進んだ後、光路17dで水タンク7の側壁を透過し、光路17eで空気中を進んだ後、受光部16に入射する光路を進む。受光部16は、到達した光量に応じた信号を出力する。ここで、投光部15が発した光は、水タンク7の側壁を通過することによる光量の減衰が生じる。水タンク7の側壁を透過する際の減衰率を2%、距離が短いので空気中での減衰率を0%とすると、投光部15から受光部16に到達する光量の割合は、約96%となる。
【0017】
また、図3のように水タンク7が配置されていない場合は、投光部15からの光は、光路18aで空気中を進んだ後、受光部16に入射する。受光部16は、投光部15から到達した光量に応じた信号を出力するが、前述の図2と異なり水タンク7の側壁を通過することによる光量の減衰がない。したがって、図2と同様に距離の短い空気中での光量の減衰率を0%と仮定すると、投光部15から受光部16に到達する光量の割合は、100%となり、図2の状態に比べて受光部16は大きな出力を行う。以上のように、受光部16に達する光量は、投光部15との間に水タンク7があるか否かによって変わる。
【0018】
ここで、水タンク7の表面に傷がつくと、水タンク7表面での光の透過・反射状態が変わり、透過率などが変化することが予想される。そうすると、上限水位検知部8の水位検知精度にも影響が生じることが予想される。水タンク7の傷つき度合いは用途によって異なるため、実際に行うような方法で水タンク7の洗浄を行って表面に傷をつけ、傷つけの回数と受光部16の出力の変化を実験によって確認した。
【0019】
図4は、この実験の構成を示す模式図である。図4に示すように実験においては、投光部15と受光部16を対向するように配置し、その間にポリスチレン平板19を配置した。ポリスチレン平板19は、厚さ4ミリメートルのポリスチレン製の板材である。投光部15により発せられた光は、光路20aで空気中を進み、光路20bでポリスチレン平板19を透過した後、光路20cで空気中を進んで受光部16に到達する。本実験においては、ポリスチレン平板19の片面にステンレスたわしで擦り傷をつけ、擦り回数とそのときの受光部16の出力値との関係を調べた。本実験は、水タンク7を取り外して洗うことによって生じる表面の傷が受光部16の出力に与える影響を調べるためのものであり、ステンレスたわしを用いたのは、より多く傷がつくようにして傷つきを加速させるためである。
【0020】
図5は、この実験結果を示すグラフであり、ポリスチレン平板19の擦り回数と受光部16の出力値との関係を示すものである。横軸はポリスチレン平板19の擦り回数を示す。縦軸は、受光部16の出力を示し、擦り回数が0回、すなわち、ポリスチレン平板19にまったく傷がついていない状態での受光部16の出力を100とする相対値である。図5によれば、受光部16の出力は、擦り回数が約300回に達するまでの間に約90%強まで低下する。そして、擦り回数が約300回を超えると出力は約90%を維持し、擦り回数増加による受光部16の出力低下はほとんどないことがわかる。
【0021】
したがって、投光部15が発した光を傷ついたポリスチレン平板19を透過させた場合、この光を受けた受光部16の出力は、傷ついた1面あたり約90%まで低下しうることがわかる。図2のような構成とした場合、水タンク7は2つの側壁を有し、両側壁はそれぞれ2面ずつ傷つきが生じうるので、投光部15から発せられた光は最大で傷ついた4面を透過して受光部16に到達する。図2の構成において、光が透過する4面すべてに擦り回数600回の面を用いた場合、受光部16の出力は、約54%まで低下することを実験により確認した。
【0022】
また、図1において、加熱体5の下部には、本体1の動作を制御する制御部12が設けられている。制御部12は、水位判定手段13、傷つき判定手段14、および図示しない調理器制御手段を備えている。水位判定手段13は上限水位検知部8と接続されており、上限水位検知部8の受信素子からの出力を得る。また、傷つき判定手段14は傷つき検知部9と接続されており、傷つき検知部9の受光部16からの出力を得る。調理器制御手段は、水位判定手段13や傷つき判定手段14による判定結果に基づき、調理器全体の動作を制御する。
【0023】
水位判定手段13は、上限水位検知部8が出力した信号を受け取り、予め設定された水位判定閾値と比較することで、水タンク7内の水位が上限水位11に達したか否か判定する。前述の通り、回収水10が上限水位11に達していない場合には上限水位検知部8の受光素子の出力が大きく、上限水位11に達している場合には受光素子の出力が小さいので、上限水位検知部8からの出力により回収水10の水位を判定することができる。
【0024】
傷つき判定手段14は、傷つき検知部9の受光部16からの出力値を得て、この値に基づいて水タンク7の傷つき度合いを判定する。傷つき判定手段14は、水タンク7を配置していない場合の受光部16の出力値a、および、傷がついていない水タンク7を配置した場合の受光部16の出力値bを予め記憶している。そして、現在の受光部16の出力値cを得ると、出力値aまたは出力値bに基づいて出力値cの減衰率を計算し、水タンク7の側壁の傷つき度合いを判定する。図5で示したように、水タンク7の側壁の傷つき度合いと受光部16が出力する信号との間には相関関係があるので、受光部16が出力する信号の値によって水タンク7の側壁の傷つき度合いを判定することができる。
【0025】
また、傷つき判定手段14は、水タンク7の傷つき度合いの判定結果に基づき、水位判定手段13が水位を判定する際の水位判定閾値の補正を行う。上限水位検知部8は、光学的な発光素子と受光素子で構成されているので、水タンク7の傷つき度合いによって検知性能に差異が生じてくる。すなわち、回収水10が上限水位11に達していない場合には、達している場合よりも上限水位検知部8の受光素子の出力が大きいが、水タンク7に傷つきが生じているとこの傷つきによって受光素子に到達する光量が減少し、受光素子の出力が小さくなってしまう。この場合、上限水位11に達していないにもかかわらず、水位判定手段13は上限水位11に達しているものと誤判定してしまう可能性がある。
したがって、上記のように水タンク7の傷つき度合いに応じて水位判定手段13の水位判定閾値の補正を行うことで、水タンク7に傷つきが生じた場合でもより正確に水タンク7の水位を検出することができる。
【0026】
上記のように構成された炊飯器の動作について説明する。まず、米と水の入った炊飯釜2を本体1内に収納して蓋体3を閉じ、図示しない炊飯開始のスイッチを操作する。制御部12の傷つき判定手段14は、傷がついていない水タンク7を配置した状態での傷つき検知部9の出力値bを初期値として記憶しており、初期値と現在の傷つき検知部9の出力値cとの比を求め、この値を傷つきによる光量減衰率とする。傷つき度合いが大きい場合、光量減衰率は大きくなる。そして、水位判定手段13の水位判定閾値に光量減衰率を乗じて、水位判定閾値を補正する。
【0027】
また、光量減衰率が所定値以上である場合には、水タンク7の傷つきや汚れが多いことを示すので、この場合には水タンク7の交換や洗浄を促すメッセージを、本体1に備えられた図示しない液晶表示部に表示する。このようにすることで、ユーザは水タンク7のメンテナンスを適切なタイミングで行うことができる。また、光量減衰率が短期間に急激に大きくなった場合には、水タンク7の傷つき度合いが急激に増したものと推定し、この場合には、傷つきにくい洗浄方法を行うよう促すメッセージを液晶表示部に表示してもよい。このようにすることで、ユーザの洗浄方法を改善することができ、洗浄による水タンク7の傷つきを防ぐことができる。
【0028】
次いで、水位判定手段13は、上限水位検知部8からの出力値を得て、この値と水位判定閾値とを比較することで、回収水10の水位が上限水位11に達しているか否か判定する。前述のように、水タンク7の傷つき度合いに応じて水位判定閾値が補正されているので、水位をより正確に判定することができる。
上限水位11に達していると判定した場合には、炊飯動作を行わず、回収水10の排水を促すメッセージを液晶表示部に表示する。併せて、ブザー音やスピーカによる音声等でユーザに報知してもよい。
上限水位11に達していないと判定した場合には、制御部12の動作制御手段は、加熱体5への通電を開始し、炊飯釜2を介して米や水に熱を伝える。この加熱により炊飯釜2内に発生した蒸気は、蒸気パイプ6と蒸気導入パイプ7bを通って水タンク7に導かれる。導かれた蒸気は水タンク7内に貯えられている水に接触して温度が下がり、復水して水となり、回収水10として貯留される。炊飯量にもよるが、1回の炊飯によって回収される水量は約50〜100mLである。例えば、水タンク7の底部が20cm×5cmの長方形でその面積が100cm2の場合には、回収水10の水位は1回の炊飯で0.5〜1cm程度上昇する。
【0029】
調理終了時、水位判定手段13は再び水タンク7の水位を判定する。そして、上限水位11に達していると判定した場合には、回収水10の排水を促すメッセージを液晶表示部に表示する。併せて、ブザー音やスピーカによる音声等でユーザに報知してもよい。このようにすることで、調理によって増加した回収水10の排水をユーザに促すことができ、水タンク7から水が溢れるのを防ぐことができる。
【0030】
以上のように本実施の形態1によれば、水タンク7の傷つきによって生じる光量減衰率を傷つき検知部9の出力に基づいて求め、この光量減衰率に基づいて水位判定手段13の水位判定閾値を補正するようにした。したがって、水タンク7に傷つきが生じた場合でも、より正確に水タンク7の水位を検知することができる。また、蒸気回収装置において蒸気を復水して回収するためには水タンク7の中に所定の水が入っている必要があるが、本実施の形態1によれば水タンク7の水位をより正確に検知することができるので、水タンク7内の水位を適切に保つことができ、蒸気の復水効率を安定させることができる。
【0031】
また、水タンク7の傷つき度合いが大きいと判定した場合には、水タンク7の交換や洗浄を促すメッセージを液晶表示部に表示するようにしたので、ユーザは適切なタイミングで水タンク7のメンテナンスを行うことができる。したがって、メンテナンス性の良い蒸気回収装置および蒸気回収装置を備えた加熱調理器を得ることができる。また、水タンク7を傷つき度合いの小さい良好な状態に保つことができるので、水タンク7の劣化による水位検出精度の低下を防ぐことができる。
【0032】
また、水タンク7の傷つき度合いが急激に大きくなった場合には、水タンク7が傷つきにくい洗浄方法で洗浄することを促すメッセージを液晶表示部に表示するようにしたので、ユーザの洗浄方法を改善させることができる。したがって、水タンク7の劣化を防ぐことができ、長期間使用することのできる蒸気回収装置および蒸気回収装置を備えた加熱調理器を得ることができる。また、ユーザが適切に水タンク7の洗浄を行うことができるので、水タンク7の劣化による水位検出精度の低下を防ぐことができる。
【0033】
なお、本実施の形態1では、上限水位検知部8と傷つき検知部9とを別個に備える場合の例について説明したが、傷つき検知部9を設けず、上限水位検知部8の出力を用いて水タンク7の傷つきを検知するようにしてもよい。このようにすることで、加熱調理器に組み付ける部品の数を減らし、かつ組み付けスペースを小さくすることができるので、安価で軽量、しかも小型で意匠性の良い蒸気回収装置および蒸気回収装置を備えた加熱調理器を得ることができる。
【0034】
また、本実施の形態1では、傷つき検知部9を光学的な発光素子と受光素子を用いて構成した場合の例について説明したが、超音波の送受信素子を用いて構成することもできる。水タンク7の表面での反射率は傷つき度合いによって変わるので、このようにしても水タンク7の傷つき度合いを検出することができる。
【0035】
また、本実施の形態1では、上限水位検知部8を光学的な発受光素子で構成する場合の例について説明したが、構成はこれに限るものではない。本発明は、水タンク7の傷つき度合いによって水位検知精度に差異が生じてしまうような他の水位検知手段に対しても適用することができ、同様の効果を得ることができる。
【0036】
また、本実施の形態1では、水タンク7の傷つきによって生じた光量減衰率を乗じて水位判定手段13の水位判定閾値を補正する場合の例について説明したが、水位判定閾値を補正するのではなく、受光部16の出力値を補正することとしてもよい。この場合においては、光量減衰率が大きくなった場合には、光量減衰率に応じて受光部16の出力値も大きくなるように補正する。このようにすることで、水位判定閾値を補正した場合と同様の効果を得ることができる。
【0037】
実施の形態2.
前記実施の形態1では、水タンク7の傷つき度合いを検出する場合の例について説明したが、本実施の形態2では、水タンク7に貯えられた水に含まれる食物成分濃度を検出する場合の実施例について説明する。
【0038】
図6は、本発明の実施の形態2に係る蒸気回収装置を備えた加熱調理器の主要部を示す断面模式図である。本実施の形態2においても、前記実施の形態1と同様に加熱調理器が炊飯器である場合の例について説明し、前記実施の形態1と同一または相当部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0039】
図6において、水タンク7の側面には、水汚れ検知部21が設置されている。水汚れ検知部21は、例えば光学的な発光素子と受光素子とを用いて構成することができる。水汚れ検知部21の構成例を図7に示す。図7は、投光部15と受光部16を対向する位置に設置して両者の間にきれいな水23を入れた水タンク7を配置した場合の模式図である。水汚れ検知部21は、水タンク7に貯えられた回収水10の汚れを検知するためのものであるため、通常の使用においてほぼ常に水が貯えられている高さと同等かそれ以下の高さに設置されている。投光部15は、可視光の発光ダイオードや、波長が近赤外線の発光ダイオードなどを用い、受光部16は、投光部15が発する光の波長に対して感度を持つ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトICなどを用いることができる。
【0040】
ここで、水タンク7の材料は、投光部15からの光を透過する材料とすればよく、通常は、透明なプラスチックを用い、例えば、材料としてポリスチレンや、ポリカーボネート、アクリルなどが用いられる。また、材料としてガラスなどを用いると、プラスチックに比べると傷がつきにくく、長期間の使用や、洗浄に対して、透過率が変わりにくく、水位検知部の検知の安定性もよく、見栄えもよい。
【0041】
図7に示すように、水タンク7内にきれいな水23が入っている場合、投光部15からの光は、まず光路24aで空気中を進んだ後、光路24bで水タンク7の側壁を透過し、光路24cできれいな水23を透過した後、光路24dで水タンク7側壁を透過し、光路24eで空気中を進んだ後、受光部16に入射する光路を進む。受光部16は、到達した光量に応じた信号を出力する。ここで、光路24cにおいてきれいな水23を透過する際、光量はほとんど減衰しない。きれいな水23を透過するときの光量の減衰率を1%、水タンク7の側壁を透過するときの光量の減衰率を2%、距離が短いので空気中での光量の減衰率を0%とすると、投光部15から発せられた光が受光部16に到達する光量の割合は、約95%となる。
【0042】
ここで、水タンク7に貯えられる回収水10は、加熱調理中に生じた蒸気を復水したものであるが、この蒸気には加熱調理によって生じた食物成分が含まれている。したがって、水タンク7には所定の食物成分を含む水が回収水10として貯えられることになり、この食物成分が水汚れの主な原因となる。加熱調理として炊飯を行った場合には、米からはがれた澱粉が食物成分である。本実施の形態2のように炊飯器に蒸気回収装置を適用した場合以外にも、回収水10にはさまざまな原因で水汚れが発生しうる。この場合、回収水10の汚れ度合いによって光の透過・反射状態が変わり、上限水位検知部8の水位検知精度にも影響が生じることが予想される。
【0043】
図8は、図7におけるきれいな水23の代わりに食物成分を含む水(以下、汚れ水25と称す)を貯えた場合の断面模式図である。図8において水タンク7内に汚れ水25が入っている場合は、投光部15からの光は、まず光路26aで空気中を進んだ後、光路26bで水タンク7側壁を透過し、光路26cで汚れ水25の中を進んだ後、光路26dで水タンク7側壁を透過し、光路26eで空気中を進んだ後、受光部16に入射する光路を進む。受光部16は到達した光量に応じた信号を出力する。ここで、光路26cの汚れ水25の中を透過する場合、透過する光量は汚れ水25の濃度によって異なる。汚れ度合いが大きいほど透過する光量が小さくなり、受光部16が出力する信号も小さくなる。例えば、汚れ水25を透過するときの減衰率を30%、水タンク7の側壁を透過する際の減衰率を2%、距離が短いので空気中での減衰率を0%とすると、投光部15から受光部16に到達する光量の割合は、約66%となり、図7で示したきれいな水23を貯えている場合と比べて受光部16の出力は小さくなる。
【0044】
受光部16に到達する光量の変化は、水に含まれる食物成分濃度に関連することが予想されるので、水に含まれる食物成分濃度と受光部16の出力との変化を実験によって確認した。実験においては、所定の濃度のおねばを含む回収水10を水タンク7に満たし、受光部16に到達する光量との関係を調べた。具体的には、炊飯調理により発生したおねばを直接回収した場合の食物成分濃度を100%とし、これを水で希釈して各種濃度の水(以下、食物成分を含んだ水を汚れ水と称す)を作り、濃度ごとに受光部16の出力値を検証した。
【0045】
図9は、この実験結果を示すグラフであり、水タンク7内の回収水10の食物成分濃度と受光部16の出力との関係を示すものである。図9において、横軸は水に含まれる食物成分濃度を示す。縦軸は、受光部16の出力値を示し、食物成分濃度が0%、すなわち、水タンク7にきれいな水23が満たされている場合の受光部16の出力を100とする相対値である。図9によれば、受光部16の出力は、食物成分濃度が0%から約30%に至るまでの間に約50%程度まで低下し、これ以上の濃度になると受光部16の出力は約50%で一定となることがわかる。なお、受光部16の出力値はあくまでも一例であり、汚れ水25の中を透過する光路の長さによって出力値は異なる。
【0046】
また、図6において、制御部12は、水位判定手段13、水汚れ判定手段22、および図示しない調理器制御手段を備えている。水汚れ判定手段22は水汚れ検知部21と接続されており、水汚れ検知部21からの出力を得る。調理器制御手段は、水位判定手段13や水汚れ判定手段22による判定結果に基づき、調理器全体の動作を制御する。
【0047】
水位判定手段13は、上限水位検知部8が出力した信号を受け取り、予め設定された水位判定閾値と比較することで、水タンク7内の水位が上限水位11に達したか否か判定する。前記実施の形態1で述べた通り、回収水10が上限水位11に達していない場合には上限水位検知部8の受光素子の出力が大きく、上限水位11に達している場合には受光素子の出力が小さいので、上限水位検知部8からの出力により回収水10の水位を判定することができる。
【0048】
水汚れ判定手段22は、水汚れ検知部21からの出力を得て、この値に基づいて水タンク7内の水の汚れ度合いを判定する。水汚れ判定手段22は、水タンク7にきれいな水23が貯えられている場合の受光部16の出力値dを基準値として予め記憶しておく。そして、現在の受光部16の出力値eと基準値とを比較し、現在の出力値eが基準値と比べて所定割合以下である場合には水の汚れ度合いが高いと判定し、所定割合より大きい場合には水の汚れ度合いが低いと判定する。ここで、所定割合は、例えば、80%程度とすればよい。図9に示したように、水タンク7に貯えられた水の食物成分濃度と受光部16が出力する信号との間には相関関係があるので、受光部16が出力する信号の値によって水タンク7に貯えられた水の食物成分濃度を判定することができる。
【0049】
また、水汚れ判定手段22は、水の食物成分濃度の判定結果に基づき、水位判定手段13が水位を判定する際の水位判定閾値の補正を行う。上限水位検知部8は、光学的な発光素子と受光素子で構成されているので、水タンク7内の水の食物成分濃度によって検知性能に差異が生じてくる。すなわち、水位判定手段13は、受光素子の出力が所定の値より小さくなったときに上限水位11に達したものと判定するのであるが、回収水10に高濃度の食物成分が含まれている場合にはこの影響で受光素子の出力が小さくなってしまう。このため、実際には上限水位11に到達していないにもかかわらず、上限水位11に達したものと誤判定してしまう可能性がある。
したがって、上記のように回収水10の食物成分濃度に応じて水位判定手段13の水位判定閾値の補正を行うことで、回収水10の食物成分濃度が高い場合でも、より正確に水タンク7の水位を検出することができる。
【0050】
次に、水汚れ検知部21の他の構成例について説明する。図10〜図12は、水タンク7のコーナー部を約45°の角度でよぎって対向するように投光部15と受光部16とを配置した場合の水汚れ検知部21の構成例であり、上面から見た図である。図10は、水タンク7内に水が入っておらず空気29のみ入っている状態、図11は水タンク7にきれいな水23が貯えられている状態、図12は水タンク7に汚れ水25が貯えられている状態を示している。
【0051】
図10において、側壁面27a、27b、27c、27dは、水タンク7の側壁の面を表す。投光部15から発せられた光は、まず光路28aで空気中を進んで側壁面27aから入射し、光路28bで水タンク7側壁内部を通過し、側壁面27bに達する。この場合、水タンク7の中には空気29しか入っていないため、光は光路28cを通って側壁面27cに達し、光路28dで水タンク7側壁内部を通過して側壁面27dに達した後、光路28eで空気中を進んで受光部16に入射する。水タンク7の中には空気29しか入っておらず、光路中において大きな光の発散や屈折はない。したがって、受光部16に到達する光量は大きく、受光部16の出力も大きい。
【0052】
図11においては、投光部15から発せられた光は、まず光路28aで空気中を進んだ後、光路28bで水タンク7の側壁を透過し、光路28fで水タンク7内のきれいな水の中を進む。水タンク7にはきれいな水23が入っているので、図10で示した光路28cと光路28fとは角度が異なる。さらに、光路28g、光路28h、光路28iの順に屈折して進むので、受光部16には光が届かない。したがって、受光部16からは出力が行われない。
【0053】
図12においては、投光部15から発せられた光は、図11と同様に光路28a、28b、28f、28g、28h、28iを通る。ただし、水タンク7の中には汚れ水25が貯えられているので、光路28fの途中で光が散乱する。この散乱する光を散乱光28jとして図12に模式的に示す。散乱光28jの一部は受光部16に到達するので、受光部16は出力を行う。ただし、受光部16が受光するのは投光部15が発した光の一部であるので、図10で示した場合と比較すると受光する光量は小さく、したがって、出力も小さい。
【0054】
図13は、図10〜図12のように水汚れ検知部21を配置した場合における、水タンク7内の回収水10の食物成分濃度と受光部16の出力との関係を示すものである。これは、所定の濃度のおねばを含む回収水10を水タンク7に満たし、濃度ごとに受光部16の出力値を調べた結果である。図13において、横軸は水に含まれる食物成分濃度を示す。縦軸は、受光部16の出力値を示し、食物成分濃度が0%、すなわち、水タンク7にきれいな水23が満たされている場合の受光部16の出力を0とする相対値である。図13によれば、受光部16の出力は、濃度が0%〜30%に至るまでの間に約40%程度まで上昇し、これ以上の濃度になると受光部16の出力は約40%で一定となることがわかる。なお、受光部16の出力値はあくまでも一例であり、汚れ水25の中を透過する光路の長さによって出力値は異なる。
【0055】
以上のように構成された水汚れ検知部21においては、水タンク7内の回収水10の食物成分濃度が高くなるほど散乱光28jが増加し、受光部16に到達する光が増えて受光部16の出力が大きくなる。
【0056】
水汚れ判定手段22は、水汚れ検知部21からの出力を得て、この出力値に基づいて水タンク7内の水の汚れ度合いを判定する。水汚れ判定手段22は、水タンク7に水が入っておらず空気のみである場合の受光部16の出力値fを予め記憶しておく。そして、受光部16の現在の出力値gと出力値fとを比較し、出力値gが出力値fと比べて所定割合より大きい場合には、水の汚れ度合いが高いと判定し、所定割合以下の場合には水の汚れ度合いが低いと判定する。ここで、所定割合は、例えば、20%程度とすればよい。図13に示したように、水タンク7の水の食物成分濃度が変わるので、受光部16の出力値に応じて水の食物成分濃度を判定することができる。さらにこの判定結果に基づき、水位判定手段13が水位を判定する際の水位判定閾値の変更を行う。
【0057】
上記のように構成された炊飯器の動作について説明する。まず、米と水の入った炊飯釜2を本体1内に収納して蓋体3を閉じ、図示しない炊飯開始のスイッチを操作する。制御部12の水汚れ判定手段22は、水が入っていない状態の水タンク7を配置した状態での水汚れ検知部21の出力値fと、水汚れ判定手段22が出力する現在の出力値gとの比を求め、この値を乗じて水位判定手段13の水位判定閾値を変更する。
【0058】
また、出力値fと出力値gとの比が所定割合以上であった場合には、水タンク7内の水の汚れが多いことを示すものであり、この場合には水タンク7内の水の交換を促すメッセージを図示しない液晶表示部に表示する。このようにすることで、ユーザは水タンク7の回収水10が汚れていることを知ることができ、水タンク7の水の交換を適切に行うことができる。このため、水位をより正確に判定することができる。
【0059】
次いで、水位判定手段13は、上限水位検知部8からの出力値を得て、この値と水位判定閾値とを比較することで、回収水10の水位が上限水位11に達しているか否か判定する。前述のように、水タンク7内の回収水10の汚れ度合いに応じて水位判定閾値が補正されているので、水位をより正確に判定することができる。
上限水位11に達していると判定した場合には、炊飯動作を行わず、回収水10の排水を促すメッセージを液晶表示部に表示する。併せて、ブザー音やスピーカによる音声等でユーザに報知してもよい。
上限水位11に達していないと判定した場合には、制御部12の動作制御手段は、加熱体5への通電を開始し、炊飯釜2を介して米や水に熱を伝える。この加熱により炊飯釜2内に発生した蒸気は、蒸気パイプ6と蒸気導入パイプ7bを通って水タンク7に導かれる。導かれた蒸気は水タンク7内に貯えられている水に接触して温度が下がり、復水して水となり、回収水10として貯留される。炊飯量にもよるが、1回の炊飯によって回収される水量は約50〜100mLである。例えば、水タンク7の底部が20cm×5cmの長方形でその面積が100cm2の場合には、回収水10の水位は1回の炊飯で0.5〜1cm程度上昇する。
【0060】
調理終了時、水位判定手段13は再び水タンク7の水位を判定し、上限水位11に達していると判定した場合には、回収水10の排水を促すメッセージを図示しない液晶表示部に表示する。併せて、ブザー音やスピーカによる音声等でユーザに報知してもよい。このようにすることで、調理によって増加した回収水10の排水をユーザに促すことができ、水タンク7から水が溢れるのを防ぐことができる。
【0061】
また、制御部12の水汚れ判定手段22は、炊飯動作中に回収水10の水の汚れ度合いを判定する。そして、急激に汚れ度合いが増加した場合には、炊飯動作状態が異常であると判定する。通常の正常な炊飯動作においては、炊飯釜2の上部に設けられた図示しないおねば返しによって米からでるおねばが炊飯釜2内に戻されるので、規定の米と水の分量で炊飯した場合には、おねば成分が水タンク7の回収水10に大量に貯えられることがないように構成されている。したがって、急激に汚れ度合いが増加した場合には、おねば返し等の異常や、米や水の分量などの炊飯条件の不都合が生じていることが推定されるのである。炊飯動作状態が異常であると判定した場合には、ユーザに確認を促すメッセージを液晶表示部に表示する。このように、水汚れ判定手段22が判定した水の汚れ度合いによって炊飯状態を推定することができるので、正確に炊飯動作を行うことができる。
【0062】
以上のように本実施の形態2によれば、水タンク7内の回収水10の汚れによって生じる光量減衰率を水汚れ検知部21の出力に基づいて求め、水位判定手段13の水位判定閾値を補正するようにした。したがって、水タンク7内の回収水10に汚れが生じている場合でも、より正確に水タンク7の水位を検出することができる。
【0063】
また、水タンク7内の回収水10の汚れ度合いが大きいと判定した場合には水の交換を促すようにしたので、ユーザは適切なタイミングで水の交換を行うことができる。したがって、水位判定手段13の検知精度を維持することができ、水タンク7から回収水10が溢れるのを防止することができる。また、水タンク7内の回収水10の汚れ度合いに応じて炊飯状態を推定して、異常が生じていると判定した場合にはユーザに確認を促すようにしたので、炊飯調理の失敗を減らすことができる。
【0064】
なお、本実施の形態2では、上限水位検知部8と水汚れ検知部21を別個に備える場合の例について説明したが、水汚れ検知部21を設けず、上限水位検知部8の出力を用いて水タンク7内の水の汚れ度合いを検知するようにしてもよい。このようにすることで、加熱調理器に組み付ける部品の数を減らし、かつ組み付けスペースを小さくすることができるので、安価で軽量、しかも小型で意匠性の良い蒸気回収装置および蒸気回収装置を備えた加熱調理器を得ることができる。
【0065】
また、本実施の形態2では、水汚れ検知部21を光学的な発光素子と受光素子を用いて構成した場合の例について説明したが、超音波の送受信素子を用いて構成することもできる。水タンク7内での超音波の減衰率は水の汚れ度合いによって変わるので、このようにしても水タンク7内の水の汚れ度合いを検出することができる。
【0066】
また、本実施の形態2では、前述の実施の形態1と同様に上限水位検知部8を光学的な発受光素子で構成する場合の例について説明したが、構成はこれに限るものではない。本発明は、水タンク7内の回収水10の汚れ度合いによって水位検知精度に差異が生じてしまうような他の水位検知手段に対しても適用することができ、同様の効果を得ることができる。
【0067】
また、本実施の形態2では、水タンク7内の回収水10に含まれる食物成分濃度に応じて水位判定手段13の水位判定閾値を補正する場合の例について説明したが、水位判定閾値を補正するのではなく、受光部16の出力値を補正することとしてもよい。この場合においては、食物成分濃度が大きくなった場合には、食物成分濃度に応じて受光部16の出力値も大きくなるように補正する。このようにすることで、水位判定閾値を補正した場合と同様の効果を得ることができる。
【0068】
実施の形態3.
前記実施の形態1では、水タンク7の傷つき度合いに応じて水位判定閾値を補正しており、また、前記実施の形態2では、水タンク7内の回収水10に含まれる食物成分濃度に応じて水位判定閾値を補正していた。本実施の形態3では、傷つき検知部9、水汚れ検知部21、または上限水位検知部8を構成する素子の劣化状態を検知し、この劣化状態に応じて判定閾値を補正する場合の例について説明する。
【0069】
図14は、本発明の実施の形態3に係る蒸気回収装置を備えた加熱調理器の主要部を示す断面模式図である。本実施の形態3においても、前記実施の形態1と同様に加熱調理器が炊飯器である場合の例について説明し、前記実施の形態1と同一または相当部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0070】
図14において、水タンク7の制御部12側近傍の側面には、検知部30が設置されている。検知部30は、前記実施の形態1で示した水タンク7の傷つきを検知する傷つき検知部9、または、前記実施の形態2で示した水汚れ検知部21とすることができる。検知部30は、前述の図2および図3で示す光学的な発光素子および受光素子を用いて構成することができる。
【0071】
制御部12は、水位判定手段13、判定手段31、および図示しない調理器制御手段を備えている。判定手段31は、前記実施の形態1で示した傷つき判定手段14、または、前記実施の形態2で示した水汚れ判定手段22とすることができる。調理器制御手段は、水位判定手段13や判定手段11による判定結果に基づき、調理器全体の動作を制御する。
【0072】
図15は、検知部30を構成する投光部15の経年劣化状況例を示すグラフである。図15において、横軸は時間を示し、縦軸は投光部15にまったく劣化が生じていない状態での発光量を100とする発光量の相対値である。投光部15の劣化特性は、投光部15が組み込まれた装置の動作環境条件により固有に定まる。この条件に応じて、図15に示すような劣化特性を得ることができる。図15では、動作時間5000時間経過時に投光部15の発光出力が初期値に対して90%に低下する場合の例を示している。
【0073】
このように構成した炊飯器において、判定手段31は図15で示した投光部15の劣化情報を保持している。判定手段31は、検知部30からの出力を得て水タンク7の傷つき度合いまたは回収水10の汚れ度合いを判定する。このとき、本体1の動作時間情報に基づいて投光部15の劣化状態を予測し、判定時の閾値の補正を行う。例えば、動作時間が5000時間のときには、投光部15の発光量が約90%に低下しているものと推定されるので、傷つき判定に用いる受光部16の出力値を、90%に減じて判定を行うようにする。このようにすることで、より精度の高い判定を行うことができる。
【0074】
さらには、上限水位検知部8に用いる発光素子の劣化情報を予め保持しておき、この劣化情報に基づいて水位判定閾値を補正することとしてもよい。このようにすることで、より精度の高い水位検知を行うことができる。
【0075】
以上のように本実施の形態3によれば、予め保持しておいた検知部30の劣化情報に基づいて検知部30の劣化状態を推定し、この推定結果に応じて判定手段31が判定に用いる閾値を補正するようにしたので、判定手段31はより正確に判定を行うことができる。例えば、検知部30を傷つき検知部9とした場合にはより正確に水タンク7の傷つき度合いを判定することができ、また、検知部30を水汚れ検知部21とした場合にはより正確に回収水10の汚れ度合いを判定することができる。同様にして、上限水位検知部8の劣化情報に基づいて水位判定手段13が水位を検知する際の水位判定閾値を補正することで、より正確に水タンク7の水位を判定することができる。したがって、水タンク7から回収水10が溢れるのを防止することができ、メンテナンス性の良い炊飯器を得ることができる。
【0076】
なお、本実施の形態3では、検知部30の劣化状態に応じて判定手段31が判定に用いる閾値を補正する場合の例について説明したが、閾値を補正するのではなく、受光部16の出力値を補正することとしてもよい。この場合においては、劣化度合いが大きくなった場合には、劣化度合いに応じて受光部16の出力値も大きくなるように補正する。このようにすることで、閾値を補正した場合と同様の効果を得ることができる。また同様に、上限水位検知部8の劣化状態に応じて上限水位検知部8の出力値を補正することとしてもよく、同様の効果を得ることができる。
【0077】
なお、上記説明では加熱調理器が炊飯器である場合の例について説明したが、炊飯器以外の加熱調理器にも適用可能である。また、本発明に係る水位検知装置は、加熱調理器以外にも、水位検知が必要な様々な装置への適用が可能である。例えば、家電機器としては、除湿機や加湿器の水タンクの水位検知に適用することができる。また、水だけでなく、屈折率や透過率によって他の液体または固体の検知も可能であるので、不凍液タンクの液量検知や、クリーナのゴミタンクのゴミ量検知などへの適用も可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 本体、2 炊飯釜、3 蓋体、4 内蓋、5 加熱体、6 蒸気パイプ、7 水タンク、7a タンク蓋、7b 蒸気導入パイプ、8 上限水位検知部、9 傷つき検知部、10 回収水、11 上限水位、12 制御部、13 水位判定手段、14 傷つき判定手段、15 投光部、16 受光部、17a〜17e 光路、18a 光路、19 ポリスチレン平板、20a〜20c 光路、21 水汚れ検知部、22 水汚れ判定手段、23 きれいな水、24a〜24e 光路、25 汚れ水、26a〜26e 光路、27a〜27d 側壁面、28a〜28j 光路、29 空気、30 検知部、31 判定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発生する蒸気を案内する蒸気案内路と、
前記蒸気案内路により案内された蒸気を回収し復水して貯える水タンクと、
水位検知用発光部から発せられた光が前記水タンクを介して水位検知用受光部に到達する光量と予め定められた水位判定閾値とを対比して、前記水タンクの水位を検知する水位検知部と、
発光部から発せられた光が前記水タンクを介して受光部に到達する光量と予め定められた基準値とを対比して、前記水タンクに貯えられた水の汚れ度合いを検知する水汚れ検知部とを備え、
前記水汚れ検知部が検知した前記水タンクの水の汚れ度合いに基づいて、前記水位検知部が水位検知に用いる前記水位検知用受光部の受光量または前記水位判定閾値を補正する
ことを特徴とする蒸気回収装置。
【請求項2】
発生する蒸気を案内する蒸気案内路と、
前記蒸気案内路により案内された蒸気を回収し復水して貯える水タンクと、
水位検知用発光部から発せられた光が前記水タンクを介して水位検知用受光部に到達する光量と予め定められた水位判定閾値とを対比して、前記水タンクの水位を検知する水位検知部と、
発信部から発せられた超音波が前記水タンクを介して受信部に到達する超音波量と、予め定められた基準値とを対比して、前記水タンクに貯えられた水の汚れ度合いを検知する水汚れ検知部とを備え、
前記水汚れ検知部が検知した前記水タンクの水の汚れ度合いに基づいて、前記水位検知部が水位検知に用いる前記水位検知用受光部の受光量または前記水位判定閾値を補正する
ことを特徴とする蒸気回収装置。
【請求項3】
前記水タンクに貯えられた水の汚れ度合いに応じて前記水タンクに貯えられた水の交換時期を判定する制御部と、
前記水タンクに貯えられた水の交換時期を報知する第一の報知手段とを備えた
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の蒸気回収装置。
【請求項4】
前記蒸気は加熱調理によって発生する蒸気であり、
前記水の汚れ度合いは、前記水タンクに貯えられた水に含まれる食物成分濃度である
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の蒸気回収装置。
【請求項5】
前記食物成分濃度と食物の調理状態の相関データを参照して前記食物成分濃度に対応する食物の調理状態を判定する制御部と、
前記食物の調理状態を報知する第二の報知手段とを備えた
ことを特徴とする請求項4記載の蒸気回収装置。
【請求項6】
前記食物成分は澱粉である
ことを特徴とする請求項4または請求項5記載の蒸気回収装置。
【請求項7】
前記水汚れ検知部の前記発光部は、前記水位検知部の前記水位検知用発光部を兼ねており、
前記水汚れ検知部の前記受光部は、前記水位検知部の前記水位検知用受光部を兼ねている
ことを特徴とする請求項1、及び請求項1に従属する請求項3〜請求項6のいずれか一項に記載の蒸気回収装置。
【請求項8】
前記発光部の経年劣化情報を保持しており、
前記発光部の経年劣化情報に基づいて、前記水汚れ検知部が検知する前記水タンクの水の汚れ度合いを補正する
ことを特徴とする請求項1、請求項1に従属する請求項3〜請求項6、及び請求項7のいずれか一項に記載の蒸気回収装置。
【請求項9】
前記発信部の経年劣化情報を保持しており、
前記発信部の経年劣化情報に基づいて、前記水汚れ検知部が検知する前記水タンクの水の汚れ度合いを補正する
ことを特徴とする請求項2、及び請求項2に従属する請求項3〜請求項6のいずれか一項に記載の蒸気回収装置。
【請求項10】
前記水位検知部の経年劣化情報を保持しており、
前記水位検知部の経年劣化情報に基づいて、前記水汚れ検知部が検知する前記水タンクの水の汚れ度合いを補正する
ことを特徴とする請求項7または請求項7に従属する請求項8に記載の蒸気回収装置。
【請求項11】
前記水位検知部の経年劣化情報を保持しており、
前記水位検知部の経年劣化情報に基づいて、前記水位検知部が水位検知に用いる前記水位検知用受光部の受光量または前記水位判定閾値を補正する
ことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の蒸気回収装置。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の蒸気回収装置を備えたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項13】
水位検知用発光部から発せられた光が前記水タンクを介して水位検知用受光部に到達する光量と予め定められた水位判定閾値とを対比して、前記水タンクの水位を検知する水位検知部と、
発光部から発せられた光が前記水タンクを介して受光部に到達する光量と予め定められた基準値とを対比して、前記水タンクに貯えられた水の汚れ度合いを検知する水汚れ検知部とを備え、
前記水汚れ検知部が検知した前記水タンクの水の汚れ度合いに基づいて、前記水位検知部が水位検知に用いる前記水位検知用受光部の受光量または前記水位判定閾値を補正する
ことを特徴とする水位検知装置。
【請求項14】
水位検知用発光部から発せられた光が前記水タンクを介して水位検知用受光部に到達する光量と予め定められた水位判定閾値とを対比して、前記水タンクの水位を検知する水位検知部と、
発信部から発せられた超音波が前記水タンクを介して受信部に到達する超音波量と、予め定められた基準値とを対比して、前記水タンクに貯えられた水の汚れ度合いを検知する水汚れ検知部とを備え、
前記水汚れ検知部が検知した前記水タンクの水の汚れ度合いに基づいて、前記水位検知部が水位検知に用いる前記水位検知用受光部の受光量または前記水位判定閾値を補正する
ことを特徴とする水位検知装置。
【請求項15】
前記水汚れ検知部の前記発光部は、前記水位検知部の前記水位検知用発光部を兼ねており、
前記水汚れ検知部の前記受光部は、前記水位検知部の前記水位検知用受光部を兼ねている
ことを特徴とする請求項13記載の水位検知装置。
【請求項16】
前記水位検知部の経年劣化情報を保持しており、
前記水位検知部の経年劣化情報に基づいて、前記水位検知部が水位検知に用いる前記水位検知用受光部の受光量または前記水位判定閾値を補正する
ことを特徴とする請求項13〜請求項15のいずれか一項に記載の水位検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−11230(P2012−11230A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215031(P2011−215031)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【分割の表示】特願2008−150117(P2008−150117)の分割
【原出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】