蒸着マスク、蒸着装置、薄膜形成方法
【課題】大型基板に対応可能な蒸着マスク、蒸着装置、蒸着方法を提供する。
【解決手段】
蒸着マスク10上で開口部11をその中心間距離が基板50のピクセル51a1、51a2の中心間距離の2倍になるように形成する。この蒸着マスク10を基板50上に配置し、各ピクセル51a1、51a2、51axの上方に開口部11と遮蔽部19が交互に配置されるように位置合わせした状態で、開口部11と対面するピクセル51a1を成膜し、次いで蒸着マスク10をピクセル51a1、51a2の中心間距離だけ移動させ、移動前に遮蔽部19と対面していた未成膜のピクセル51a2、51axの上方に開口部11を位置させ、その状態で未成膜のピクセル51a2、51axに薄膜を成膜する。開口部11の間隔が従来より広いため、開口部11形成の際に蒸着マスク10が破損する虞を従来より低減でき、大型の蒸着マスク10の製作が容易になる。
【解決手段】
蒸着マスク10上で開口部11をその中心間距離が基板50のピクセル51a1、51a2の中心間距離の2倍になるように形成する。この蒸着マスク10を基板50上に配置し、各ピクセル51a1、51a2、51axの上方に開口部11と遮蔽部19が交互に配置されるように位置合わせした状態で、開口部11と対面するピクセル51a1を成膜し、次いで蒸着マスク10をピクセル51a1、51a2の中心間距離だけ移動させ、移動前に遮蔽部19と対面していた未成膜のピクセル51a2、51axの上方に開口部11を位置させ、その状態で未成膜のピクセル51a2、51axに薄膜を成膜する。開口部11の間隔が従来より広いため、開口部11形成の際に蒸着マスク10が破損する虞を従来より低減でき、大型の蒸着マスク10の製作が容易になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着マスク、蒸着装置、薄膜形成方法に関し、特に大型基板に有機ELの発光層を成膜する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、有機ELの作製手法としては、蒸着マスクを使った真空蒸着法が一般的である。蒸着マスクは高精細なパターンを転写するために熱伸びを最小にする必要があり、蒸着マスクの材質には主にインバーなどが用いられている。
図1は、蒸着対象物である基板50の平面図を示している。基板50上には、赤色の発光層が形成されるべきピクセル51が、その中心が互いに平行で等間隔の複数の直線53a〜53c上に位置するように配置され、当該直線53a〜53cのピクセル51の中心間距離は等しくされている。
【0003】
図15は従来のピクセル型の蒸着マスク110の平面図を示している。蒸着マスク110上には、ピクセル51と同じ形状かつ同じ大きさの複数の開口部111が、互いに平行で前記直線53a〜53cと同じ間隔の複数のマスク基準線113a〜113c上に位置するように設けられ、マスク基準線113a〜113c上の開口部111の中心間距離は前記直線53a〜53cのピクセル51の中心間距離と等しくされている。
図16は従来のストライプ型の蒸着マスク110の平面図を示している。蒸着マスク110上には、前記直線53a〜53c上のピクセル51全体の長さよりも長い帯状の複数の開口部111が、同一のマスク基準線113上に位置するように設けられ、開口部111の中心間距離は前記直線53a〜53cの間隔と等しくされている。
【0004】
ピクセル型とストライプ型のどちらの蒸着マスク110も、蒸着マスク110の有するマスクマーク112が基板50の有する基板マーク52と重なるように、蒸着マスク110と基板50を配置する。その状態では、同色の全てのピクセル51にそれぞれ開口部111が重なるように構成されている。
各発光層領域は、図1に示すように、例えば前記直線53a〜53cに沿った方向の長さが110μm、それに垂直な方向の長さが70μmの長方形の形状であり、隣り合うピクセルは10μmの間隔で基板50上に配置されている。
この大きさの基板50の蒸着に用いるためには、従来のピクセル型の蒸着マスク110では、マスク基準線113a〜113cに沿って隣り合う開口部111を10μmの間隔で形成する必要がある。また従来のストライプ型の蒸着マスク110では、隣り合う開口部111を170μmの間隔で形成する必要がある。特にピクセル型の蒸着マスク110では、隣り合う開口部111の間隔が狭いため、開口部111を形成する際に強度不足により蒸着マスク110が破損する虞があった。
【0005】
有機EL製造の生産性を上げるために大型基板で有機ELを製作したいという要望があるが、大型の蒸着マスクを製作することは開口形成時に上述のような破損の虞があるため困難であり、問題となっていた。特にG5サイズ以上の大型基板に対応した蒸着マスクを製作することは難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−188179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、大型基板に対応可能な蒸着マスク、蒸着装置、蒸着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、基板上の同材料が成膜される複数のピクセルに蒸気が到達できるように構成された蒸着マスクであって、一部の前記ピクセルに前記蒸気を通過する開口部を有し、前記蒸着マスクの一方向に隣り合う前記開口部の中心間距離が、同材料で成膜され、かつ前記一方向に隣り合う前記ピクセルの中心間距離の複数倍である蒸着マスクである。
本発明は蒸着マスクであって、前記一方向は、同材料で成膜され、かつ隣り合う前記ピクセルの間隔が短い方向である蒸着マスクである。
本発明は蒸着マスクであって、前記一方向に隣り合う前記ピクセルの中心間距離と同じ中心間距離で配置された複数のマスクマークを有する蒸着マスクである。
本発明は蒸着装置であって、前記蒸着マスクと、前記蒸着マスクが内部に配置される真空槽と、前記真空槽内を真空排気する真空排気装置と、前記真空槽内に蒸着材料の蒸気を放出する蒸着源と、前記蒸着マスクと前記基板とを位置合わせする位置合わせ装置と、を有する蒸着装置である。
本発明は蒸着装置であって、前記位置合わせ装置は、前記蒸着マスクの有するマスクマークと、前記基板の有する基板マークを検出する検出装置と、前記蒸着マスクを、前記蒸着マスク表面に平行な方向に移動させ、かつ前記蒸着マスク表面に垂直な回転軸線の周りに回転させるマスク移動装置と、前記検出装置の検出結果に基づいて、前記マスク移動装置による前記蒸着マスクの移動の向きと移動の量と、前記蒸着マスクの回転の向きと回転の量とを決定する制御装置とを有する蒸着装置である。
本発明は、真空排気された真空槽内に、同一材料で成膜される複数のピクセルを有する基板と、蒸着源と、複数の開口を有する蒸着マスクを配置し、前記基板に成膜を行う薄膜形成方法であって、前記ピクセルは、行列状に配置され、前記蒸着マスクは、開口部を有し、前記開口部の行間の中心距離は、前記ピクセルの行間の中心距離の複数倍であり、奇数行上の前記ピクセルに前記開口を重ねて成膜するステップと、前記蒸着マスクと前記基板のいずれかを、前記ピクセルの中心距離の倍数だけ列方向に相対移動するステップと、偶数行上の前記ピクセルに前記開口を重ねて成膜するステップと、を有する薄膜形成方法である。
本発明は、真空排気された真空槽内に、互いに離間して位置する複数のピクセルを有する基板を配置し、蒸着源から前記真空槽内に蒸着材料の蒸気を放出させ、薄膜を形成すべき前記ピクセル上に薄膜を形成する薄膜形成方法であって、各前記ピクセルの中心は、互いに平行な複数の基板基準線のいずれかの基板基準線上に配置し、前記基板基準線上の前記ピクセルの中心間距離は等しくしておき、一方向に隣り合う前記開口部の中心間距離が、同材料で成膜され、かつ前記一方向に隣り合う前記ピクセルの中心間距離の2倍である前記蒸着マスクを前記基板と対面させ、各前記ピクセルに重なる位置に、前記基板基準線に沿った方向に前記開口部と前記蒸気を遮蔽する遮蔽部が交互に配置されるように前記基板と前記蒸着マスクを位置合わせして配置した第一の状態にし、前記第一の状態を維持しながら、対面する位置に前記開口部が配置された前記ピクセル表面に前記蒸気を到達させて前記薄膜を形成し、前記蒸気の到達を停止させた後、前記蒸着マスクを、前記基板基準線に沿った移動方向に前記中心間距離だけ移動させ、前記第一の状態では、対面する位置に前記遮蔽部が配置されていた前記ピクセルに前記開口部が位置する第二の状態にし、前記第二の状態を維持しながら前記蒸気を前記成膜対象物に到達させて前記薄膜を形成する薄膜形成方法である。
本発明は薄膜形成方法であって、前記第一の状態では、前記基板基準線に沿った前記薄膜を形成すべき前記ピクセルの列の前記移動方向の最後尾に、前記遮蔽部と対面する前記ピクセルが配置されている場合は、前記ピクセルから前記中心間距離だけ後方の前記基板基準線に沿った領域外位置と対面するように前記蒸着マスク内に前記開口を配置しておき、前記最後尾の前記ピクセルが、前記第二の状態では、前記領域外位置の前記開口と対面するようにする薄膜形成方法である。
【発明の効果】
【0009】
大型の蒸着マスクの製作が容易となる。したがって、大型基板の成膜を蒸着マスクを使った真空蒸着法で行うことが可能となり、有機ELの生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】蒸着対象物である基板の平面図
【図2】本発明のピクセル型の蒸着マスクの第一例の平面図
【図3】(a)(b):第一の状態で偶数個のうち奇数行のピクセルが開口部と対面する場合を説明するための図
【図4】(a)(b):第一の状態で奇数個のうち奇数行のピクセルが開口部と対面する場合を説明するための図
【図5】(a)(b):第一の状態で偶数個のうち奇数行のピクセルが遮蔽部と対面する場合を説明するための図
【図6】(a)(b):第一の状態で奇数個のうち奇数行のピクセルが遮蔽部と対面する場合を説明するための図
【図7】本発明のピクセル型の蒸着マスクの第二例の平面図
【図8】本発明のストライプ型の蒸着マスクの平面図
【図9】本発明の蒸着装置の内部構成図
【図10】真空槽内に基板を配置した状態を説明するための図
【図11】基板保持枠を持ち上げた状態を説明するための図
【図12】基板吸着装置による基板の吸着を説明するための図
【図13】基板と蒸着マスクとの間隔調整を説明するための図
【図14】蒸着マスク交換方法を説明するための図
【図15】従来のピクセル型の蒸着マスクの平面図
【図16】従来のストライプ型の蒸着マスクの平面図
【図17】本発明のピクセル型の蒸着マスクの第三例の平面図
【図18】蒸着対象物である基板の第二例の平面図
【図19】第二例の基板の成膜に用いる蒸着マスクの平面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明である蒸着マスクの構造を、R(赤)、G(緑)、B(青)のうちいずれか一色(ここでは赤色)の発光層の有機薄膜を基板上に成膜するために使用する蒸着マスクを例に説明する。
図1は、蒸着対象物である基板50の平面図を示している。
基板50は互いに離間して配置された複数の発光層領域を有している。発光層領域には、赤色の発光層が形成されるべき赤発光層領域と、緑色の発光層が形成されるべき緑発光層領域と、青色の発光層が形成されるべき青発光層領域がある。図1では、赤、緑、青の発光層領域にそれぞれR、G、Bの符号を付して示している。
【0012】
以下、赤発光層領域をピクセルと呼び、符号51を付して説明する。ピクセル51は、その中心が互いに平行で等間隔の複数の基板基準線53a〜53c上に位置するように配置され、各基板基準線53a〜53c上のピクセル51の中心間の距離である中心間距離は等しくされている。符号d2は基板基準線53a〜53cの間隔を示し、符号d1は各基板基準線53a〜53c上のピクセル51の中心間距離を示している。
基板基準線53a〜53c上のピクセル51は互いに同じ形状かつ同じ大きさで、同じ向きに向けられて形成されている。
【0013】
図2は本発明であるピクセル型の蒸着マスク10の平面図を示している。
蒸着マスク10は、蒸気が通過する開口部11と、前記蒸気を遮蔽する遮蔽部19とを有している。遮蔽部19は、開口部11を一部のピクセル51に合せて成膜するときに、同材料(ここでは赤色の発光層の材料)が成膜されるべきピクセル51の他部に蒸気が到達しないように遮蔽する部分である。
各開口部11は、その中心が互いに平行で基板基準線53a〜53cの間隔d2と同じ間隔の複数のマスク基準線13a〜13c上に位置するように、互いに離間して配置される。開口部11は各ピクセル51と同じ形状かつ同じ大きさかつ同じ向きで形成され、マスク基準線13a〜13c上の開口部11の中心間距離は基板基準線53a〜53c上のピクセル51の中心間距離d1の2倍にされている。
【0014】
基板基準線53a〜53c上のピクセル51の数が偶数個(2m個)の場合には、当該基板基準線に対応するマスク基準線13a〜13c上に開口部11は少なくともm個配置され、基板基準線53a〜53cのピクセル51の数が奇数個(2n−1個)の場合には、当該基板基準線に対応するマスク基準線13a〜13c上に開口部11は少なくともn個配置されている(以下m、nはいずれも1以上の自然数を示している)。
基板50の発光層領域の外側の非成膜領域には複数の点形状の基板マーク52が形成されている(図1)。蒸着マスク10の外周部には、第一、第二のマスクマーク121、122が形成されている(図2)。第一、第二のマスクマーク121、122は、後述のように位置合わせするとき各基板マーク52と対面する位置を通りマスク基準線13a〜13cに平行な直線上に、それぞれ二つで一組の点形状で、互いにピクセル51の中心間距離d1だけ離間して設けられている。すなわち、第一、第二のマスクマーク121、122は、マスク基準線に平行な直線上に、距離d1だけ離間して配置されている。
【0015】
以下、一組中の第二のマスクマーク122を始点とし、第一のマスクマーク121を終点とする方向を移動方向と呼ぶ。符号5は移動方向を示している。また、移動方向5の向く方向を前方、その逆方向を後方と呼ぶ。また、基板50のピクセル51の位置を、縦の並びを列、縦方向を列方向、横の並びを行、横方向を行方向と呼び、図の左上を基準に、左から1列、2列・・、上から1行、2行・・・と呼ぶ。
各基板マーク52上にそれぞれ対応する第一のマスクマーク121が位置するように蒸着マスク10と基板50を配置したとき(以下第一の状態と呼ぶ)、マスク基準線13a〜13cの最後尾(最上行)の開口部11は、基板基準線53a〜53cの最後尾(最上行)に位置するピクセル51a1〜51c1に重なるように構成されている。すなわち、第一の状態では、基板基準線53a〜53c上のピクセル51の奇数行が、開口部11と重なる位置となる。
【0016】
第一の状態では、マスク基準線13a〜13cの開口部11の中心間距離は基板基準線53a〜53cのピクセル51の中心間距離d1の2倍にされているため、各ピクセル51に対応する位置には、マスク基準線13a〜13cに沿った方向に開口部11と遮蔽部19が交互に配置されている。すなわち、基板基準線53a〜53c上の奇数行のピクセル51は開口部11と重なり、偶数行のピクセル51は遮蔽部19と重なる。
第一の状態から、蒸着マスク10を基板50上で移動方向5にピクセル51の中心間距離d1だけ相対的に移動させ、各基板マーク52上に対応する第二のマスクマーク122を位置させると(以下第二の状態と呼ぶ)、各開口部11はピクセル51の中心間距離d1だけ前方(列方向)に移動する。
このとき、奇数行のピクセル51と重なっていた開口部11は、偶数行のピクセル51と重なる。
第一の状態にしたのち、第二の状態にすると、基板50上の全てのピクセル51は開口部11と一度ずつ対面することになる。
【0017】
本発明の蒸着マスク10は、第一の状態において、マスク基準線13a〜13cの開口部11が、基板基準線53a〜53cの最後尾に位置するピクセル51a1〜51c1又は最後尾の一つ前方のピクセル51a2〜51c2のいずれか一方と重なるように構成されている限りでは上記構成に限定されず、図17に示すように、一部のマスク基準線13a〜13cの開口部11は最後尾のピクセルと重なり、他のマスク基準線13a〜13cの開口部11は最後尾の一つ前方のピクセルと重なるように構成されていてもよい。ただし、当該他のマスク基準線13a〜13cには、最後尾の一つ前方のピクセルと重なる開口部11より後方に開口部11が一つ以上配置されている必要がある。
【0018】
具体的に説明すると、図3(a)は、基板50の基板基準線53a上にピクセル51が偶数個(2m個)配置されている場合を示す。各基板マーク52上に第一のマスクマーク121が位置するように蒸着マスク10を基板50上に配置したとき、開口部11が、基板基準線53a上の奇数行に位置するピクセル51aに重なるように構成されている。マスク基準線13aに開口部11は少なくともm個設けられており、m個の開口部11はそれぞれ基板基準線53a上で一つおきに位置する(奇数行上の)ピクセル51aと対面する。
この状態から、蒸着マスク10を移動方向5にピクセル51の中心間距離d1だけ相対的に移動させ、各基板マーク52に第二のマスクマーク122を対応させると、各開口部11はピクセル51の中心間距離d1だけ前方(列方向)に移動する。図3(b)に示すように、移動前に奇数行のピクセル51と対面していた各開口部11は、移動前に遮蔽部19と対面していた偶数行のピクセル51と対面する。
【0019】
また、図4(a)は、基板50の基板基準線53a上にピクセル51が奇数個(2n−1個)配置されている場合を示す。各基板マーク52上に第一のマスクマーク121が位置するように蒸着マスク10を基板50上に配置したとき、開口部11が、基板基準線53a上の奇数行に位置するピクセル51aに重なるように構成されている。マスク基準線13aに開口部11は少なくともn個設けられており、n個の開口部11はそれぞれ基板基準線53a上で一つおきに位置する(奇数行上の)ピクセル51aと対面する。
この状態から、蒸着マスク10を移動方向5にピクセル51の中心間距離d1だけ相対的に移動させ、各基板マーク52上に第二のマスクマーク122を位置させると、各開口部11はピクセル51の中心間距離d1だけ前方(列方向)に移動する。図4(b)に示すように、移動前に奇数行のピクセル51と対面していた開口部11は移動前に遮蔽部19と対面していた(偶数行上の)各ピクセル51と対面する。なお、移動前に最前部(最下行)のピクセル51axと対面していた開口部11はピクセル51の外側である非ピクセルと対面する。
【0020】
また、図5(a)に示すように、基板50の基板基準線53a上にピクセル51が偶数個(2m個)配置されている場合で、各基板マーク52上に第一のマスクマーク121が位置するように蒸着マスク10を配置したとき、開口部11が、基板基準線53aの最後尾の一つ前方に位置するピクセル51a2に重なるように構成されている場合には、基板基準線53aに開口部11は少なくともm+1個設けられており、m個の開口部11は基板基準線53a上で一つおきに位置するピクセル51aと対面し、最後尾のピクセル51a1の上方よりもピクセル51の中心間距離d1だけ後方に一つの開口部11が配置される。
この状態から、蒸着マスク10を基板50上で移動方向5にピクセル51の中心間距離d1だけ相対的に移動させ、各基板マーク52上に第二のマスクマーク122を位置させると、各開口部11はピクセル51の中心間距離d1だけ前方に移動し、図5(b)に示すように、最後尾のピクセル51a1の上方よりもピクセル51の中心間距離d1だけ後方に配置されていた開口部11は最後尾のピクセル51a1と対面し、移動前にピクセル51と対面していた開口部11は移動前に遮蔽部19と対面していた最後尾より前方の各ピクセル51と対面する。
【0021】
また、図6(a)に示すように、基板50の基板基準線53a上にピクセル51が奇数個(2n−1個)配置されている場合で、各基板マーク52上に第一のマスクマーク121が位置するように蒸着マスク10を基板50上に配置したとき、開口部11が、基板基準線53aの最後尾の一つ前方に位置するピクセル51a2の上方に位置するように構成されている場合には、基板基準線53aに開口部11は少なくともn個設けられており、n−1個の開口部11は基板基準線53a上で一つおきに位置するピクセル51aと対面し、最後尾のピクセル51a1の上方よりもピクセル51の中心間距離d1だけ後方に一つの開口部11が配置される。
この状態から、蒸着マスク10を基板50上で移動方向5にピクセル51の中心間距離d1だけ相対的に移動させ、各基板マーク52上に第二のマスクマーク122を位置させると、各開口部11はピクセル51の中心間距離d1だけ前方に移動し、図6(b)に示すように、最後尾のピクセル51a1の上方よりもピクセル51の中心間距離d1だけ後方に配置されていた開口部11は最後尾のピクセル51a1と対面し、移動前にピクセル51と対面していた開口部11は移動前に遮蔽部19と対面していた最後尾より前方の各ピクセル51と対面する。
【0022】
ここでは図1に示すように、各発光層領域は、赤、緑、青のうち同色の発光層領域だけで並んだ方向の長さが110μm、三色の発光層領域が赤、緑、青の順で並んだ方向の長さが70μmの長方形の形状であり、隣り合う発光層領域は10μmの間隔で基板50上に配置されている。
ここでは赤、緑、青のうち同色の発光層領域だけが並んだ方向で隣り合うピクセル(赤発光層領域)の間隔(10μm)は、三色の発光層領域が赤、緑、青の順に並んだ方向に隣り合うピクセル(赤発光層領域)の間隔(170μm)より短い。赤、緑、青のうち同色の発光層領域だけが並んだ方向を、同材料で成膜され、かつ隣り合うピクセルの間隔が短い方向と呼ぶことができる。
【0023】
基板50の基板基準線を赤、緑、青のうち同色の発光層領域だけが並んだ方向で選んだ場合には、ピクセル型の蒸着マスク10は、図2に示すように、マスク基準線13a〜13cに沿って隣り合う開口部11は130μmの間隔で形成されている(第一例)。
基板50の基板基準線を三色の発光層領域が赤、緑、青の順に並んだ方向で選んだ場合には、ピクセル型の蒸着マスク10は、図7に示すように、マスク基準線13a〜13fに沿って隣り合う開口部11は410μmの間隔で形成されている(第二例)。
上記第一例、第二例のどちらの蒸着マスクでも、隣り合う開口部11の間隔が従来のピクセル型の蒸着マスク(図15参照)より広いため、蒸着マスク10に開口部11を形成する際に強度不足のために蒸着マスク10が破損する虞が従来より低減する。
【0024】
図2に示される第一例の蒸着マスク10のように、同材料で成膜され、かつ隣り合うピクセルの間隔が短い方向に、開口部11の中心間距離を離すように開口部11を形成すると、従来の蒸着マスク(図15)と比べてマスクの細い部分(幅が10μmの帯状部分)がなくなるため第二例の蒸着マスク(図3)より好ましい。具体的には、ピクセル51a1とピクセル51a2の間隔が、ピクセル51a1とピクセル51b1の間隔より狭い。このため、ピクセル51a1とピクセル51a2の中心を結ぶ方向に、開口部11の間隔を空けると、マスクの開口部11の間隔が従来のマスクより広くなり、従来の蒸着マスクと比べてマスクの細い部分がなくなる。
蒸着マスク10上の開口部11は、図7のように複数のマスク基準線13a〜13fのいずれかのマスク基準線上に配置されている構成に限定されず、図8に示すように同一のマスク基準線13上に配置されていてもよい。
【0025】
図8はストライプ型の蒸着マスク10の平面図を示している。各開口部11はマスク基準線13に垂直な方向の長さが赤、緑、青のうち同色の発光層領域だけが並んだ方向のピクセル51全体の長さよりも長い帯状に形成され、開口部11の中心間距離は、三色の発光層領域が赤、緑、青の順に並んだ方向の同色のピクセル51の中心間距離の2倍にされている。
従って上述の大きさの基板50の蒸着に用いる蒸着マスク10では、マスク基準線13に沿って隣り合う開口部11は410μmの間隔で形成されている。隣り合う開口部11の間隔が従来のストライプ型の蒸着マスク(図16参照)より広いため、蒸着マスク10に開口部11を形成する際に強度不足のために蒸着マスク10が破損する虞が従来より低減する。
【0026】
本発明の蒸着マスク10は、成膜対象であるピクセルが、図1のように基板50上に配置されている場合に限定されず、図18のように基板50’上に千鳥に配置されている場合にも利用できる。
この場合の蒸着マスク10も、図19に示すように、マスク基準線13a〜13c上の開口部11の中心間距離が基板基準線53a〜53c上のピクセル51の中心間距離d1の2倍にされており、第一の状態において、マスク基準線13a〜13cの開口部11が、基板基準線53a〜53cの最後尾(奇数行)に位置するピクセル51a1〜51c1又は最後尾の一つ前方(偶数行)のピクセル51a2〜51c2のいずれか一方と重なるように構成されていればよい。
【0027】
次に、上述の蒸着マスク10を使用する蒸着装置の構成を説明する。図9は蒸着装置40の内部構成図を示している。
蒸着装置40は真空槽41と真空排気装置49を有している。真空排気装置49は真空槽41の外側に配置され、真空槽41内を真空排気可能に構成されている。
蒸着装置40は蒸着源42を有している。
蒸着源42は供給源42aと放出装置42bを有している。ここでは供給源42aは真空槽41の外側に配置され、放出装置42bは真空槽41内に配置されている。
供給源42aと放出装置42bはそれぞれ箱状の筺体を有している。
供給源42aの筺体の内部には、固体又は液体の有機材料が配置されるるつぼと、この有機材料を加熱する加熱手段とが配置されている。るつぼに成膜材料である有機材料を配置し、加熱して、有機材料の蒸気を発生させるように構成されている。
【0028】
供給源42aの筺体は配管によって放出装置42bの筺体に接続されており、供給源42aから有機材料の蒸気が放出装置42bの筺体に供給される。
放出装置42bの筺体の一面には放出口42cが形成されている。
放出装置42bの放出口42cは鉛直上方に向けられており、放出口42cからは有機材料の蒸気が真空槽41内の上方に向けて放出されるように構成されている。
放出口42cの上方には「ロ」字形状のマスク保持枠43が、「ロ」字形状の開口部分が放出口42cと対面するように水平に配置されている。マスク保持枠43の内周の大きさは蒸着マスク10の外周の大きさよりも小さく形成されている。
蒸着マスク10はマスク保持枠43上に載置され、放出口42cと対面する位置で水平に支持されている。符号12は一組中の第一、第二のマスクマーク121、122をまとめて示している。
【0029】
次に、この蒸着装置40を使用した成膜形成方法を説明する。
まず、真空槽41内を真空排気しておく。以後、真空排気を続けて真空槽41の真空雰囲気を維持する。
蒸着源42の供給源42aで有機材料の蒸気を発生させておく。ただし、放出口42cからはまだ蒸気の発生を開始させないようにする。
真空槽41内には蒸着マスク10の真上位置を通る水平な直線上に搬送経路が定められ、搬送経路に沿ってローラー方式の搬送機構62が設けられている。
搬送機構62は搬送部材として二つで一組の円筒状のローラー62aを複数組有している。ローラー62aは組ごとに搬送経路に沿って一列に並んで配置され、一組中の二つのローラー62aは搬送経路を中央にして互いに反対側に、それぞれの円筒形の一端部が向かい合うように配置されている。
ローラー62aの他端部にはモーター62bが固定されている。モーター62bは不図示の制御装置から制御信号を受けるとローラー62aを円筒形の中心軸線の周りに回転させるように構成されている。
【0030】
基板50は「ロ」字形状の基板保持枠61(図9では不図示)に置載されて搬送機構62上を搬送される。
基板保持枠61の「ロ」字形状の内周は基板50表面(成膜面)のピクセル51全体より大きくかつ基板50の外周より小さく形成されている。基板保持枠61の幅は搬送機構62の互いに向かい合うローラー62aの間隔よりも広く形成されている。
まず、真空槽41の外側で成膜面を下方に向けた状態で基板50を基板保持枠61上に載置する。このときピクセル51全体は「ロ」字形状の開口から下方に露出しかつ基板50自体は「ロ」字形状の開口から落下しないようになっている。
【0031】
図10に示すように、真空槽41内の真空雰囲気を維持しながら、不図示の搬入装置を使って、真空槽41内に基板保持枠61を搬入し、搬送機構62のローラー62a上に水平に載せる。
ローラー62aを回転させて基板保持枠61を移動させ、基板50の成膜面がマスク保持枠43上の蒸着マスク10と対面する位置で基板保持枠61を静止させる。
マスク保持枠43の側方には基板保持枠昇降装置45が配置されている。
基板保持枠昇降装置45は接触部45aと接触部昇降機構45bを有している。
接触部45aは基板保持枠61の下方を向いた面と対面する位置に配置されている。
接触部昇降機構45bは不図示の制御装置から制御信号を受けると、接触部45aを鉛直方向に移動させるように構成されている。
【0032】
図11に示すように、接触部45aを基板保持枠61に向かって鉛直上方に移動させ、基板保持枠61に接触させ、接触部45aを介して基板保持枠61を持ち上げ、基板保持枠61をローラー62aから離間した位置で静止させる。
基板保持枠61をローラー62aから離間させることで、搬送機構62の振動が基板保持枠61に伝わることを防止できる。
基板50の裏面(上側)と対面する位置には基板吸着装置64が配置されている。基板吸着装置64は基板吸着板64aと接着部材64bを有している。
基板吸着板64aの一面(以下表面と呼ぶ)は平面状に形成され、貫通孔が形成されている。貫通孔の形状は周囲を囲まれた孔形状に限定されず、周囲の一部に開口を有する切り欠き形状でもよい。基板吸着板64aの裏面には棒状の板吊り下げ棒64dが鉛直に固定されている。
【0033】
接着部材64bは板部と凸部を有している。凸部は、基板吸着板64aの厚みよりも長く、貫通孔よりも径が小さく形成されている。板部の一面(以下表面と呼ぶ)を基板吸着板64aの裏面に近づけたときに、凸部は貫通孔から突出する。板部には板吊り下げ棒64dの端部と対面する位置に板吊り下げ棒64dの径よりも大きい開口が形成されている。板部の裏面の開口には管状の部材吊り下げ管64eが連通するように鉛直に固定されている。
部材吊り下げ管64eの径は板吊り下げ棒64dの径よりも大きく形成されている。板吊り下げ棒64dの一端は部材吊り下げ管64eに挿入され、板吊り下げ棒64dの中心軸線と部材吊り下げ管64eの中心軸線は互いに平行にされている。
【0034】
基板吸着装置64は、板吊り下げ棒64dの一端が部材吊り下げ管64eに挿入された状態を維持しながら、基板吸着板64aと接着部材64bを相対的に近づけるように移動させると、接着部材64bの凸部の先端が基板吸着板64aの裏面から貫通孔を通って、基板吸着板64aの表面に突出するように構成されている。
基板吸着装置64は真空槽41内で、板吊り下げ棒64dと部材吊り下げ管64eの中心軸線が水平面に対して垂直で、基板吸着板64aの表面が基板50の裏面と対面するように配置されている。
板吊り下げ棒64dの一端と部材吊り下げ管64eの一端はそれぞれ真空槽41の内壁を気密に貫通し、真空槽41の外側に配置された吸着装置移動機構64cに接続されている。
吸着装置移動機構64cは不図示の制御装置から制御信号を受けると、板吊り下げ棒64dと部材吊り下げ管64eをそれぞれの中心軸線に平行な方向に昇降するように構成されている。
【0035】
基板吸着板64aはポリイミドと、セラミックと、SiCと、BNのうちいずれか1種類の材質を含有し、内部に電極が設けられて静電吸着機構を構成する。電極には真空槽41の外側に配置された不図示の電源装置が電気的に接続されている。基板吸着板64aは、内部の電極に電源装置から所定の直流電圧を印加されると、吸着対象物との間に静電気力による引力を生じさせるように構成されている。
接着部材64bの凸部の先端には接着剤層が固定されている。
基板保持枠61上の基板50は、その縁部で基板保持枠61と接触して支持されているが、成膜面は基板保持枠61の開口と対面しているため、重力によって下方に膨らむように変形する場合がある。後述する成膜工程の前に基板50の成膜面の変形を解消して平面にしておく必要がある。
【0036】
まず、基板吸着板64aを下降させ、基板吸着板64aの表面が基板50の裏面と接触する位置又はごくわずかな隙間を持って離間した位置で静止させる。
接着部材64bを下降させ、凸部先端の接着剤層を基板50の裏面に接触させ、押圧して、基板50の裏面を接着剤層を介して接着部材64bの凸部の先端に接着させる。
【0037】
図12に示すように、接着部材64bを上昇させ、凸部の先端を貫通孔に進入させながら、凸部の先端に接着された基板50の裏面を基板吸着板64aの表面に接触させる。基板吸着板64a内部の電極に所定の直流電圧を印加して、基板50との間に静電引力を生じさせる。基板50の裏面は基板吸着板64aの表面に静電吸着される。
基板50の裏面を基板吸着板64aの表面に面で静電吸着することで、以後基板50を平面の状態に維持できる。
接着部材64bを上昇させ、接着剤層による基板50裏面との接着を解消させ、凸部先端の接着剤層を基板50の裏面から離間させる。
マスク保持枠43にはマスク保持枠移動装置44が接続されている。
マスク保持枠移動装置44はここではマスク保持枠移動回転装置44aと、マスク保持枠昇降装置44bとを有している。マスク保持枠移動回転装置44aはマスク保持枠43に接続され、マスク保持枠昇降装置44bはマスク保持枠移動回転装置44aに接続されている。
【0038】
マスク保持枠移動回転装置44aは、真空槽41の外側に配置されたマスク保持枠移動制御装置69から制御信号を受けると、マスク保持枠43を互いに直交する水平な二方向(XY方向)に移動させ、かつ水平面に対して鉛直な回転軸線の周り(Θ方向)に回転させるように構成されている。
マスク保持枠昇降装置44bは、マスク保持枠移動制御装置69から制御信号を受けると、マスク保持枠移動回転装置44aと一緒にマスク保持枠43を上昇又は下降させるように構成されている。
マスク保持枠移動制御装置69には、マスク保持枠43上の蒸着マスク10と、基板50との相対位置関係を検出する検出装置が接続されている。
ここでは、検出装置は撮像装置63であり、基板50上の基板マーク52の真上位置に、レンズを鉛直下方に向けて配置されている。撮像装置63は基板マーク52と、透明な基板50を介して蒸着マスク10上のマスクマーク12の両方を撮像可能に構成されている。
【0039】
マスク保持枠移動制御装置69は撮像装置62の撮像結果から、マスクマーク12を水平面に正射影した射影マスクマークと、基板マーク52を水平面に正射影した射影基板マークとの相対位置関係を測定し、射影マスクマークと射影基板マークが一致するように、マスク保持枠移動回転装置44aによるマスク保持枠43の移動の向きと移動の量と、マスク保持枠43の回転の向きと回転の量とを決定するように構成されている。
またマスク保持枠移動制御装置69は、蒸着マスク10表面の高さと基板50表面の高さをあらかじめ分かっており、蒸着マスク10表面と基板50表面との間の間隔が所定の距離(ゼロでもよい)になるように、マスク保持枠昇降装置44bによるマスク保持枠43の移動の向きと移動の量とを決定するように構成されている。
マスク保持枠43上の蒸着マスク10と、基板50とを位置合わせする装置を位置合わせ装置と呼ぶと、ここではマスク保持枠移動44と、検出装置と、マスク保持枠移動制御装置69で位置合わせ装置が構成されている。
【0040】
図13に示すように、まず蒸着マスク10表面と基板50表面との間の間隔が所定の距離になるように、マスク保持枠43を上昇させる。蒸着マスク10表面と基板50表面との間の間隔は、間隔が開きすぎると基板50表面に輪郭がぼやけた薄膜が成膜されるため、50μm〜0μm(密着)が望ましい。
次いで、撮像装置63で基板マーク52とここでは上述の第一のマスクマーク121をそれぞれ撮像し、撮像結果に基づいて当該射影マスクマークと射影基板マークが一致するようにマスク保持枠43を水平方向に移動させ、かつ水平面に対して鉛直な回転軸線の周りに回転させ、上述の第一の状態にする。このとき、例えば図3(a)を参照し、ピクセル51と対面する位置には基板基準線53a〜53cに沿った方向に開口部11と遮蔽部19が交互に配置される。
【0041】
次いで、基板50と蒸着マスク10をいずれも静止させた状態で、第一の状態を維持しながら、放出口42cから成膜材料の蒸気を放出させると、蒸気は蒸着マスク10の各開口部11を通って、開口部11と対面するピクセル51にそれぞれ到達し、当該ピクセル51に成膜材料の薄膜が成膜される。
基板50上に所定の時間成膜したのち、放出口42cから蒸気の放出を停止させる。
次いで、蒸着マスク10をマスク保持枠43と一緒に上述の移動方向5にピクセル51の中心間距離d1だけ移動させる。
【0042】
撮像装置63で基板マーク52と上述の第二のマスクマーク122をそれぞれ撮像し、撮像結果に基づいて当該射影マスクマークと射影基板マークが一致するようにマスク保持枠43を水平方向に移動させ、かつ水平面に対して鉛直な回転軸線の周りに回転させて位置合わせし、上述の第二の状態にする。このとき例えば図3(b)を参照し、第一の状態では遮蔽部19と対面していた未成膜の各ピクセル51と対面する位置に開口部11が配置され、第一の状態では開口部11と対面していて既に成膜された各ピクセル51と対面する位置に遮蔽部19が配置される。
次いで、基板50と蒸着マスク10をいずれも静止させた状態で、第二の状態を維持しながら、放出口42cから成膜材料の蒸気を放出させると、蒸気は蒸着マスク10の各開口部11を通って、基板50の未成膜の各ピクセル51にそれぞれ到達し、当該ピクセル51のそれぞれに成膜材料の薄膜が成膜される。
【0043】
このようにして、本発明の蒸着マスク10を用いて基板50上の同色のすべてのピクセル51に薄膜を成膜できる。
基板50上に所定の時間成膜したのち、放出口42cから蒸気の放出を停止させる。
マスク保持枠43を下降させ、蒸着マスク10表面を基板50表面から離間させる。
基板吸着板64a内部の電極への直流電源の印加を停止して基板50の静電吸着を解除し、基板50を基板保持枠61上に載せる。基板吸着板64aと接着部材64bの両方を基板50から上昇させ、元の位置で静止させる。
基板保持枠昇降装置45の接触部45aを基板保持枠61と一緒に下降させ、基板保持枠61をローラー62aに載せる。接触部45aをさらに下降させ、基板保持枠61から離間させる。
ローラー62aを回転させ、蒸着マスク10を真空槽41内に残したまま、基板保持枠61を蒸着マスク10と対面する位置から移動させる。真空槽41内の真空雰囲気を維持しながら不図示の搬出装置を使って基板保持枠61を真空槽41の外側に搬出する。
【0044】
所定の枚数の基板50を成膜した後に行う蒸着マスクの交換方法を説明する。
図9を参照し、マスク保持枠43の上方にはマスク交換手段65が配置されている。マスク交換手段65は棒状の腕部65aと腕部吊り下げ棒65bと腕部移動機構65cを有している。
腕部吊り下げ棒65bは蒸着マスク10表面と対面する位置の外側に、中心軸線を水平面に対して鉛直な向きで配置されている。
腕部吊り下げ棒65bの一端は腕部65aの一端に互いの中心軸線が直角に交差する向きで固定され、腕部吊り下げ棒65bの他端は真空槽41の内壁を気密に貫通し、真空槽41の外側に配置された腕部移動機構65cに接続されている。
腕部移動機構65cは不図示の制御装置から制御信号を受けると、腕部吊り下げ棒65bを介して腕部65aを、腕部吊り下げ棒65bの中心軸線の周りに回転させ、かつ腕部65aを上昇又は下降させるように構成されている。
腕部65aが蒸着マスク10表面と対面しないように腕部吊り下げ棒65bを回転させたのち、腕部65aを下降させ、蒸着マスク10の側方に位置させる。次いで腕部吊り下げ棒65bを回転させて腕部65aを蒸着マスク10の裏面とマスク保持枠43の間に挿入する。腕部65aを上昇させ、蒸着マスク10をマスク保持枠43から離間させる。蒸着マスク10を搬送経路の上方で静止させておく。
【0045】
図14に示すように、真空槽41内の真空雰囲気を維持したまま、不図示の搬入装置を使って、蒸着マスク10を載置可能なマスク搬送板67を真空槽41内に搬入し、ローラー62aに載せる。ローラー62aを回転させてマスク搬送板67を移動させ、蒸着マスク10の真下位置で静止させる。
腕部65aを下降させ、蒸着マスク10をマスク搬送板67上に載せる。腕部吊り下げ棒65bを回転させて腕部65aを蒸着マスク10の裏面とマスク搬送板67との間から抜き出したのち、上昇させて元の位置で静止させる。
ローラー62aを回転させてマスク搬送板67を移動させ、真空槽41内の真空雰囲気を維持したまま、不図示の搬出装置を使って、マスク搬送板67を真空槽41の外側に搬出する。
【0046】
次いで、真空槽41内の真空雰囲気を維持したまま、不図示の搬入装置を使って、未使用の蒸着マスク10が載置されたマスク搬送板67を真空槽41内に搬入し、ローラー62aに載せる。ローラー62aを回転させてマスク搬送板67を移動させ、マスク保持枠43と対面する位置で静止させる。
腕部65aを下降させ、蒸着マスク10の側方に位置させる。次いで腕部吊り下げ棒65bを回転させて腕部65aを蒸着マスク10の裏面とマスク搬送板67の間に挿入する。腕部65aを上昇させ、蒸着マスク10をマスク搬送板67から離間させ、マスク搬送板67の上方で静止させる。
ローラー62aを回転させて空のマスク搬送板67を移動させ、真空槽41内の真空雰囲気を維持したまま、不図示の搬出装置を使って、空のマスク搬送板67を真空槽41の外側に搬出する。
腕部65aを下降させ、蒸着マスク10をマスク保持枠43上に載せる。腕部吊り下げ棒65bを回転させて腕部65aを蒸着マスク10の裏面とマスク保持枠43との間から抜き出したのち、上昇させて元の位置で静止させる。
このようにして図9に示すように未使用の蒸着マスク10をマスク保持枠43上に載置できる。
【0047】
本発明の基板マーク52とマスクマーク12の構成は、上述のように、蒸着マスク10上の基板マーク52と対面する位置に二つで一組の第一、第二のマスクマーク121、122が互いにピクセル51の中心間距離d1だけ離間して設けられている場合に限定されず、基板50上のマスクマーク12と対面する位置に二つで一組の基板マークが基板基準線53a〜53cに沿って互いにピクセル51の中心間距離d1だけ離間して設けられていてもよい。
【0048】
本発明の蒸着マスク10の開口部11の中心間距離は、上述のように、ピクセル51の中心間距離d1の2倍にされている場合に限定されず、ピクセル51の中心間隔d1の3倍以上にされていてもよい。すなわち、蒸着マスクの一方向に隣り合う開口部の中心間距離が、同材料で成膜され、かつ上記一方向に隣り合うピクセルの中心間距離の複数倍であればよい。また、蒸着マスクは、上記一方向に隣り合うピクセルの中心間距離と同じ中心間距離で配置された複数個のマスクマークを有する。上記複数倍の時、基板と蒸着マスクを相対移動する回数は、(複数倍−1)回となる。
蒸着マスク10を基板50上に配置すると、ピクセル51と対面する位置には、基板基準線に沿った方向に一つの開口部11と二つ以上連続した遮蔽部19とが交互に配置されるように構成されており、その状態から、基板50と蒸着マスク10とを移動方向5にピクセル51の中心間隔d1だけ相対的に移動させることを二度以上繰り返すと、各ピクセル51の上方に一度ずつ開口部11を配置することができる。
この場合、上述のような開口部11の中心間距離がピクセル51の中心間距離の2倍にされた蒸着マスクよりも、隣り合う開口部11の間隔が広いため、蒸着マスク10に開口部11を形成するときに強度不足のために蒸着マスク10が破損する虞をさらに低減することができる。
【0049】
本発明の蒸着装置40の搬送機構62は上記のようなローラー方式に限定されず、真空槽41内で対象物を水平に搬送できるならばベルトコンベア方式やリニアモーター方式、ロボットアーム方式等でもよい。
本発明の蒸着装置40は上述のように、放出口42cを鉛直上方に向け、放出口42cの上方にマスク10と基板50を順にそれぞれ水平に配置する構造に限定されず、放出口42cを鉛直下方に向け、放出口42cの下方にマスク10と基板50を順にそれぞれ水平に配置するように構成してもよいし、水平面に対して鉛直に交差する一面を基準面とし、放出口42cを基準面に向け、放出口42cと対面する位置にマスク10と基板50を順にそれぞれ基準面に平行に立てた状態で配置するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0050】
10……蒸着マスク
11……開口部
12……マスクマーク
19……遮蔽部
40……蒸着装置
41……真空槽
42……蒸着源
49……真空排気装置
50……基板
51……ピクセル
52……基板マーク
53a〜53c……基板基準線
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着マスク、蒸着装置、薄膜形成方法に関し、特に大型基板に有機ELの発光層を成膜する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、有機ELの作製手法としては、蒸着マスクを使った真空蒸着法が一般的である。蒸着マスクは高精細なパターンを転写するために熱伸びを最小にする必要があり、蒸着マスクの材質には主にインバーなどが用いられている。
図1は、蒸着対象物である基板50の平面図を示している。基板50上には、赤色の発光層が形成されるべきピクセル51が、その中心が互いに平行で等間隔の複数の直線53a〜53c上に位置するように配置され、当該直線53a〜53cのピクセル51の中心間距離は等しくされている。
【0003】
図15は従来のピクセル型の蒸着マスク110の平面図を示している。蒸着マスク110上には、ピクセル51と同じ形状かつ同じ大きさの複数の開口部111が、互いに平行で前記直線53a〜53cと同じ間隔の複数のマスク基準線113a〜113c上に位置するように設けられ、マスク基準線113a〜113c上の開口部111の中心間距離は前記直線53a〜53cのピクセル51の中心間距離と等しくされている。
図16は従来のストライプ型の蒸着マスク110の平面図を示している。蒸着マスク110上には、前記直線53a〜53c上のピクセル51全体の長さよりも長い帯状の複数の開口部111が、同一のマスク基準線113上に位置するように設けられ、開口部111の中心間距離は前記直線53a〜53cの間隔と等しくされている。
【0004】
ピクセル型とストライプ型のどちらの蒸着マスク110も、蒸着マスク110の有するマスクマーク112が基板50の有する基板マーク52と重なるように、蒸着マスク110と基板50を配置する。その状態では、同色の全てのピクセル51にそれぞれ開口部111が重なるように構成されている。
各発光層領域は、図1に示すように、例えば前記直線53a〜53cに沿った方向の長さが110μm、それに垂直な方向の長さが70μmの長方形の形状であり、隣り合うピクセルは10μmの間隔で基板50上に配置されている。
この大きさの基板50の蒸着に用いるためには、従来のピクセル型の蒸着マスク110では、マスク基準線113a〜113cに沿って隣り合う開口部111を10μmの間隔で形成する必要がある。また従来のストライプ型の蒸着マスク110では、隣り合う開口部111を170μmの間隔で形成する必要がある。特にピクセル型の蒸着マスク110では、隣り合う開口部111の間隔が狭いため、開口部111を形成する際に強度不足により蒸着マスク110が破損する虞があった。
【0005】
有機EL製造の生産性を上げるために大型基板で有機ELを製作したいという要望があるが、大型の蒸着マスクを製作することは開口形成時に上述のような破損の虞があるため困難であり、問題となっていた。特にG5サイズ以上の大型基板に対応した蒸着マスクを製作することは難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−188179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、大型基板に対応可能な蒸着マスク、蒸着装置、蒸着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、基板上の同材料が成膜される複数のピクセルに蒸気が到達できるように構成された蒸着マスクであって、一部の前記ピクセルに前記蒸気を通過する開口部を有し、前記蒸着マスクの一方向に隣り合う前記開口部の中心間距離が、同材料で成膜され、かつ前記一方向に隣り合う前記ピクセルの中心間距離の複数倍である蒸着マスクである。
本発明は蒸着マスクであって、前記一方向は、同材料で成膜され、かつ隣り合う前記ピクセルの間隔が短い方向である蒸着マスクである。
本発明は蒸着マスクであって、前記一方向に隣り合う前記ピクセルの中心間距離と同じ中心間距離で配置された複数のマスクマークを有する蒸着マスクである。
本発明は蒸着装置であって、前記蒸着マスクと、前記蒸着マスクが内部に配置される真空槽と、前記真空槽内を真空排気する真空排気装置と、前記真空槽内に蒸着材料の蒸気を放出する蒸着源と、前記蒸着マスクと前記基板とを位置合わせする位置合わせ装置と、を有する蒸着装置である。
本発明は蒸着装置であって、前記位置合わせ装置は、前記蒸着マスクの有するマスクマークと、前記基板の有する基板マークを検出する検出装置と、前記蒸着マスクを、前記蒸着マスク表面に平行な方向に移動させ、かつ前記蒸着マスク表面に垂直な回転軸線の周りに回転させるマスク移動装置と、前記検出装置の検出結果に基づいて、前記マスク移動装置による前記蒸着マスクの移動の向きと移動の量と、前記蒸着マスクの回転の向きと回転の量とを決定する制御装置とを有する蒸着装置である。
本発明は、真空排気された真空槽内に、同一材料で成膜される複数のピクセルを有する基板と、蒸着源と、複数の開口を有する蒸着マスクを配置し、前記基板に成膜を行う薄膜形成方法であって、前記ピクセルは、行列状に配置され、前記蒸着マスクは、開口部を有し、前記開口部の行間の中心距離は、前記ピクセルの行間の中心距離の複数倍であり、奇数行上の前記ピクセルに前記開口を重ねて成膜するステップと、前記蒸着マスクと前記基板のいずれかを、前記ピクセルの中心距離の倍数だけ列方向に相対移動するステップと、偶数行上の前記ピクセルに前記開口を重ねて成膜するステップと、を有する薄膜形成方法である。
本発明は、真空排気された真空槽内に、互いに離間して位置する複数のピクセルを有する基板を配置し、蒸着源から前記真空槽内に蒸着材料の蒸気を放出させ、薄膜を形成すべき前記ピクセル上に薄膜を形成する薄膜形成方法であって、各前記ピクセルの中心は、互いに平行な複数の基板基準線のいずれかの基板基準線上に配置し、前記基板基準線上の前記ピクセルの中心間距離は等しくしておき、一方向に隣り合う前記開口部の中心間距離が、同材料で成膜され、かつ前記一方向に隣り合う前記ピクセルの中心間距離の2倍である前記蒸着マスクを前記基板と対面させ、各前記ピクセルに重なる位置に、前記基板基準線に沿った方向に前記開口部と前記蒸気を遮蔽する遮蔽部が交互に配置されるように前記基板と前記蒸着マスクを位置合わせして配置した第一の状態にし、前記第一の状態を維持しながら、対面する位置に前記開口部が配置された前記ピクセル表面に前記蒸気を到達させて前記薄膜を形成し、前記蒸気の到達を停止させた後、前記蒸着マスクを、前記基板基準線に沿った移動方向に前記中心間距離だけ移動させ、前記第一の状態では、対面する位置に前記遮蔽部が配置されていた前記ピクセルに前記開口部が位置する第二の状態にし、前記第二の状態を維持しながら前記蒸気を前記成膜対象物に到達させて前記薄膜を形成する薄膜形成方法である。
本発明は薄膜形成方法であって、前記第一の状態では、前記基板基準線に沿った前記薄膜を形成すべき前記ピクセルの列の前記移動方向の最後尾に、前記遮蔽部と対面する前記ピクセルが配置されている場合は、前記ピクセルから前記中心間距離だけ後方の前記基板基準線に沿った領域外位置と対面するように前記蒸着マスク内に前記開口を配置しておき、前記最後尾の前記ピクセルが、前記第二の状態では、前記領域外位置の前記開口と対面するようにする薄膜形成方法である。
【発明の効果】
【0009】
大型の蒸着マスクの製作が容易となる。したがって、大型基板の成膜を蒸着マスクを使った真空蒸着法で行うことが可能となり、有機ELの生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】蒸着対象物である基板の平面図
【図2】本発明のピクセル型の蒸着マスクの第一例の平面図
【図3】(a)(b):第一の状態で偶数個のうち奇数行のピクセルが開口部と対面する場合を説明するための図
【図4】(a)(b):第一の状態で奇数個のうち奇数行のピクセルが開口部と対面する場合を説明するための図
【図5】(a)(b):第一の状態で偶数個のうち奇数行のピクセルが遮蔽部と対面する場合を説明するための図
【図6】(a)(b):第一の状態で奇数個のうち奇数行のピクセルが遮蔽部と対面する場合を説明するための図
【図7】本発明のピクセル型の蒸着マスクの第二例の平面図
【図8】本発明のストライプ型の蒸着マスクの平面図
【図9】本発明の蒸着装置の内部構成図
【図10】真空槽内に基板を配置した状態を説明するための図
【図11】基板保持枠を持ち上げた状態を説明するための図
【図12】基板吸着装置による基板の吸着を説明するための図
【図13】基板と蒸着マスクとの間隔調整を説明するための図
【図14】蒸着マスク交換方法を説明するための図
【図15】従来のピクセル型の蒸着マスクの平面図
【図16】従来のストライプ型の蒸着マスクの平面図
【図17】本発明のピクセル型の蒸着マスクの第三例の平面図
【図18】蒸着対象物である基板の第二例の平面図
【図19】第二例の基板の成膜に用いる蒸着マスクの平面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明である蒸着マスクの構造を、R(赤)、G(緑)、B(青)のうちいずれか一色(ここでは赤色)の発光層の有機薄膜を基板上に成膜するために使用する蒸着マスクを例に説明する。
図1は、蒸着対象物である基板50の平面図を示している。
基板50は互いに離間して配置された複数の発光層領域を有している。発光層領域には、赤色の発光層が形成されるべき赤発光層領域と、緑色の発光層が形成されるべき緑発光層領域と、青色の発光層が形成されるべき青発光層領域がある。図1では、赤、緑、青の発光層領域にそれぞれR、G、Bの符号を付して示している。
【0012】
以下、赤発光層領域をピクセルと呼び、符号51を付して説明する。ピクセル51は、その中心が互いに平行で等間隔の複数の基板基準線53a〜53c上に位置するように配置され、各基板基準線53a〜53c上のピクセル51の中心間の距離である中心間距離は等しくされている。符号d2は基板基準線53a〜53cの間隔を示し、符号d1は各基板基準線53a〜53c上のピクセル51の中心間距離を示している。
基板基準線53a〜53c上のピクセル51は互いに同じ形状かつ同じ大きさで、同じ向きに向けられて形成されている。
【0013】
図2は本発明であるピクセル型の蒸着マスク10の平面図を示している。
蒸着マスク10は、蒸気が通過する開口部11と、前記蒸気を遮蔽する遮蔽部19とを有している。遮蔽部19は、開口部11を一部のピクセル51に合せて成膜するときに、同材料(ここでは赤色の発光層の材料)が成膜されるべきピクセル51の他部に蒸気が到達しないように遮蔽する部分である。
各開口部11は、その中心が互いに平行で基板基準線53a〜53cの間隔d2と同じ間隔の複数のマスク基準線13a〜13c上に位置するように、互いに離間して配置される。開口部11は各ピクセル51と同じ形状かつ同じ大きさかつ同じ向きで形成され、マスク基準線13a〜13c上の開口部11の中心間距離は基板基準線53a〜53c上のピクセル51の中心間距離d1の2倍にされている。
【0014】
基板基準線53a〜53c上のピクセル51の数が偶数個(2m個)の場合には、当該基板基準線に対応するマスク基準線13a〜13c上に開口部11は少なくともm個配置され、基板基準線53a〜53cのピクセル51の数が奇数個(2n−1個)の場合には、当該基板基準線に対応するマスク基準線13a〜13c上に開口部11は少なくともn個配置されている(以下m、nはいずれも1以上の自然数を示している)。
基板50の発光層領域の外側の非成膜領域には複数の点形状の基板マーク52が形成されている(図1)。蒸着マスク10の外周部には、第一、第二のマスクマーク121、122が形成されている(図2)。第一、第二のマスクマーク121、122は、後述のように位置合わせするとき各基板マーク52と対面する位置を通りマスク基準線13a〜13cに平行な直線上に、それぞれ二つで一組の点形状で、互いにピクセル51の中心間距離d1だけ離間して設けられている。すなわち、第一、第二のマスクマーク121、122は、マスク基準線に平行な直線上に、距離d1だけ離間して配置されている。
【0015】
以下、一組中の第二のマスクマーク122を始点とし、第一のマスクマーク121を終点とする方向を移動方向と呼ぶ。符号5は移動方向を示している。また、移動方向5の向く方向を前方、その逆方向を後方と呼ぶ。また、基板50のピクセル51の位置を、縦の並びを列、縦方向を列方向、横の並びを行、横方向を行方向と呼び、図の左上を基準に、左から1列、2列・・、上から1行、2行・・・と呼ぶ。
各基板マーク52上にそれぞれ対応する第一のマスクマーク121が位置するように蒸着マスク10と基板50を配置したとき(以下第一の状態と呼ぶ)、マスク基準線13a〜13cの最後尾(最上行)の開口部11は、基板基準線53a〜53cの最後尾(最上行)に位置するピクセル51a1〜51c1に重なるように構成されている。すなわち、第一の状態では、基板基準線53a〜53c上のピクセル51の奇数行が、開口部11と重なる位置となる。
【0016】
第一の状態では、マスク基準線13a〜13cの開口部11の中心間距離は基板基準線53a〜53cのピクセル51の中心間距離d1の2倍にされているため、各ピクセル51に対応する位置には、マスク基準線13a〜13cに沿った方向に開口部11と遮蔽部19が交互に配置されている。すなわち、基板基準線53a〜53c上の奇数行のピクセル51は開口部11と重なり、偶数行のピクセル51は遮蔽部19と重なる。
第一の状態から、蒸着マスク10を基板50上で移動方向5にピクセル51の中心間距離d1だけ相対的に移動させ、各基板マーク52上に対応する第二のマスクマーク122を位置させると(以下第二の状態と呼ぶ)、各開口部11はピクセル51の中心間距離d1だけ前方(列方向)に移動する。
このとき、奇数行のピクセル51と重なっていた開口部11は、偶数行のピクセル51と重なる。
第一の状態にしたのち、第二の状態にすると、基板50上の全てのピクセル51は開口部11と一度ずつ対面することになる。
【0017】
本発明の蒸着マスク10は、第一の状態において、マスク基準線13a〜13cの開口部11が、基板基準線53a〜53cの最後尾に位置するピクセル51a1〜51c1又は最後尾の一つ前方のピクセル51a2〜51c2のいずれか一方と重なるように構成されている限りでは上記構成に限定されず、図17に示すように、一部のマスク基準線13a〜13cの開口部11は最後尾のピクセルと重なり、他のマスク基準線13a〜13cの開口部11は最後尾の一つ前方のピクセルと重なるように構成されていてもよい。ただし、当該他のマスク基準線13a〜13cには、最後尾の一つ前方のピクセルと重なる開口部11より後方に開口部11が一つ以上配置されている必要がある。
【0018】
具体的に説明すると、図3(a)は、基板50の基板基準線53a上にピクセル51が偶数個(2m個)配置されている場合を示す。各基板マーク52上に第一のマスクマーク121が位置するように蒸着マスク10を基板50上に配置したとき、開口部11が、基板基準線53a上の奇数行に位置するピクセル51aに重なるように構成されている。マスク基準線13aに開口部11は少なくともm個設けられており、m個の開口部11はそれぞれ基板基準線53a上で一つおきに位置する(奇数行上の)ピクセル51aと対面する。
この状態から、蒸着マスク10を移動方向5にピクセル51の中心間距離d1だけ相対的に移動させ、各基板マーク52に第二のマスクマーク122を対応させると、各開口部11はピクセル51の中心間距離d1だけ前方(列方向)に移動する。図3(b)に示すように、移動前に奇数行のピクセル51と対面していた各開口部11は、移動前に遮蔽部19と対面していた偶数行のピクセル51と対面する。
【0019】
また、図4(a)は、基板50の基板基準線53a上にピクセル51が奇数個(2n−1個)配置されている場合を示す。各基板マーク52上に第一のマスクマーク121が位置するように蒸着マスク10を基板50上に配置したとき、開口部11が、基板基準線53a上の奇数行に位置するピクセル51aに重なるように構成されている。マスク基準線13aに開口部11は少なくともn個設けられており、n個の開口部11はそれぞれ基板基準線53a上で一つおきに位置する(奇数行上の)ピクセル51aと対面する。
この状態から、蒸着マスク10を移動方向5にピクセル51の中心間距離d1だけ相対的に移動させ、各基板マーク52上に第二のマスクマーク122を位置させると、各開口部11はピクセル51の中心間距離d1だけ前方(列方向)に移動する。図4(b)に示すように、移動前に奇数行のピクセル51と対面していた開口部11は移動前に遮蔽部19と対面していた(偶数行上の)各ピクセル51と対面する。なお、移動前に最前部(最下行)のピクセル51axと対面していた開口部11はピクセル51の外側である非ピクセルと対面する。
【0020】
また、図5(a)に示すように、基板50の基板基準線53a上にピクセル51が偶数個(2m個)配置されている場合で、各基板マーク52上に第一のマスクマーク121が位置するように蒸着マスク10を配置したとき、開口部11が、基板基準線53aの最後尾の一つ前方に位置するピクセル51a2に重なるように構成されている場合には、基板基準線53aに開口部11は少なくともm+1個設けられており、m個の開口部11は基板基準線53a上で一つおきに位置するピクセル51aと対面し、最後尾のピクセル51a1の上方よりもピクセル51の中心間距離d1だけ後方に一つの開口部11が配置される。
この状態から、蒸着マスク10を基板50上で移動方向5にピクセル51の中心間距離d1だけ相対的に移動させ、各基板マーク52上に第二のマスクマーク122を位置させると、各開口部11はピクセル51の中心間距離d1だけ前方に移動し、図5(b)に示すように、最後尾のピクセル51a1の上方よりもピクセル51の中心間距離d1だけ後方に配置されていた開口部11は最後尾のピクセル51a1と対面し、移動前にピクセル51と対面していた開口部11は移動前に遮蔽部19と対面していた最後尾より前方の各ピクセル51と対面する。
【0021】
また、図6(a)に示すように、基板50の基板基準線53a上にピクセル51が奇数個(2n−1個)配置されている場合で、各基板マーク52上に第一のマスクマーク121が位置するように蒸着マスク10を基板50上に配置したとき、開口部11が、基板基準線53aの最後尾の一つ前方に位置するピクセル51a2の上方に位置するように構成されている場合には、基板基準線53aに開口部11は少なくともn個設けられており、n−1個の開口部11は基板基準線53a上で一つおきに位置するピクセル51aと対面し、最後尾のピクセル51a1の上方よりもピクセル51の中心間距離d1だけ後方に一つの開口部11が配置される。
この状態から、蒸着マスク10を基板50上で移動方向5にピクセル51の中心間距離d1だけ相対的に移動させ、各基板マーク52上に第二のマスクマーク122を位置させると、各開口部11はピクセル51の中心間距離d1だけ前方に移動し、図6(b)に示すように、最後尾のピクセル51a1の上方よりもピクセル51の中心間距離d1だけ後方に配置されていた開口部11は最後尾のピクセル51a1と対面し、移動前にピクセル51と対面していた開口部11は移動前に遮蔽部19と対面していた最後尾より前方の各ピクセル51と対面する。
【0022】
ここでは図1に示すように、各発光層領域は、赤、緑、青のうち同色の発光層領域だけで並んだ方向の長さが110μm、三色の発光層領域が赤、緑、青の順で並んだ方向の長さが70μmの長方形の形状であり、隣り合う発光層領域は10μmの間隔で基板50上に配置されている。
ここでは赤、緑、青のうち同色の発光層領域だけが並んだ方向で隣り合うピクセル(赤発光層領域)の間隔(10μm)は、三色の発光層領域が赤、緑、青の順に並んだ方向に隣り合うピクセル(赤発光層領域)の間隔(170μm)より短い。赤、緑、青のうち同色の発光層領域だけが並んだ方向を、同材料で成膜され、かつ隣り合うピクセルの間隔が短い方向と呼ぶことができる。
【0023】
基板50の基板基準線を赤、緑、青のうち同色の発光層領域だけが並んだ方向で選んだ場合には、ピクセル型の蒸着マスク10は、図2に示すように、マスク基準線13a〜13cに沿って隣り合う開口部11は130μmの間隔で形成されている(第一例)。
基板50の基板基準線を三色の発光層領域が赤、緑、青の順に並んだ方向で選んだ場合には、ピクセル型の蒸着マスク10は、図7に示すように、マスク基準線13a〜13fに沿って隣り合う開口部11は410μmの間隔で形成されている(第二例)。
上記第一例、第二例のどちらの蒸着マスクでも、隣り合う開口部11の間隔が従来のピクセル型の蒸着マスク(図15参照)より広いため、蒸着マスク10に開口部11を形成する際に強度不足のために蒸着マスク10が破損する虞が従来より低減する。
【0024】
図2に示される第一例の蒸着マスク10のように、同材料で成膜され、かつ隣り合うピクセルの間隔が短い方向に、開口部11の中心間距離を離すように開口部11を形成すると、従来の蒸着マスク(図15)と比べてマスクの細い部分(幅が10μmの帯状部分)がなくなるため第二例の蒸着マスク(図3)より好ましい。具体的には、ピクセル51a1とピクセル51a2の間隔が、ピクセル51a1とピクセル51b1の間隔より狭い。このため、ピクセル51a1とピクセル51a2の中心を結ぶ方向に、開口部11の間隔を空けると、マスクの開口部11の間隔が従来のマスクより広くなり、従来の蒸着マスクと比べてマスクの細い部分がなくなる。
蒸着マスク10上の開口部11は、図7のように複数のマスク基準線13a〜13fのいずれかのマスク基準線上に配置されている構成に限定されず、図8に示すように同一のマスク基準線13上に配置されていてもよい。
【0025】
図8はストライプ型の蒸着マスク10の平面図を示している。各開口部11はマスク基準線13に垂直な方向の長さが赤、緑、青のうち同色の発光層領域だけが並んだ方向のピクセル51全体の長さよりも長い帯状に形成され、開口部11の中心間距離は、三色の発光層領域が赤、緑、青の順に並んだ方向の同色のピクセル51の中心間距離の2倍にされている。
従って上述の大きさの基板50の蒸着に用いる蒸着マスク10では、マスク基準線13に沿って隣り合う開口部11は410μmの間隔で形成されている。隣り合う開口部11の間隔が従来のストライプ型の蒸着マスク(図16参照)より広いため、蒸着マスク10に開口部11を形成する際に強度不足のために蒸着マスク10が破損する虞が従来より低減する。
【0026】
本発明の蒸着マスク10は、成膜対象であるピクセルが、図1のように基板50上に配置されている場合に限定されず、図18のように基板50’上に千鳥に配置されている場合にも利用できる。
この場合の蒸着マスク10も、図19に示すように、マスク基準線13a〜13c上の開口部11の中心間距離が基板基準線53a〜53c上のピクセル51の中心間距離d1の2倍にされており、第一の状態において、マスク基準線13a〜13cの開口部11が、基板基準線53a〜53cの最後尾(奇数行)に位置するピクセル51a1〜51c1又は最後尾の一つ前方(偶数行)のピクセル51a2〜51c2のいずれか一方と重なるように構成されていればよい。
【0027】
次に、上述の蒸着マスク10を使用する蒸着装置の構成を説明する。図9は蒸着装置40の内部構成図を示している。
蒸着装置40は真空槽41と真空排気装置49を有している。真空排気装置49は真空槽41の外側に配置され、真空槽41内を真空排気可能に構成されている。
蒸着装置40は蒸着源42を有している。
蒸着源42は供給源42aと放出装置42bを有している。ここでは供給源42aは真空槽41の外側に配置され、放出装置42bは真空槽41内に配置されている。
供給源42aと放出装置42bはそれぞれ箱状の筺体を有している。
供給源42aの筺体の内部には、固体又は液体の有機材料が配置されるるつぼと、この有機材料を加熱する加熱手段とが配置されている。るつぼに成膜材料である有機材料を配置し、加熱して、有機材料の蒸気を発生させるように構成されている。
【0028】
供給源42aの筺体は配管によって放出装置42bの筺体に接続されており、供給源42aから有機材料の蒸気が放出装置42bの筺体に供給される。
放出装置42bの筺体の一面には放出口42cが形成されている。
放出装置42bの放出口42cは鉛直上方に向けられており、放出口42cからは有機材料の蒸気が真空槽41内の上方に向けて放出されるように構成されている。
放出口42cの上方には「ロ」字形状のマスク保持枠43が、「ロ」字形状の開口部分が放出口42cと対面するように水平に配置されている。マスク保持枠43の内周の大きさは蒸着マスク10の外周の大きさよりも小さく形成されている。
蒸着マスク10はマスク保持枠43上に載置され、放出口42cと対面する位置で水平に支持されている。符号12は一組中の第一、第二のマスクマーク121、122をまとめて示している。
【0029】
次に、この蒸着装置40を使用した成膜形成方法を説明する。
まず、真空槽41内を真空排気しておく。以後、真空排気を続けて真空槽41の真空雰囲気を維持する。
蒸着源42の供給源42aで有機材料の蒸気を発生させておく。ただし、放出口42cからはまだ蒸気の発生を開始させないようにする。
真空槽41内には蒸着マスク10の真上位置を通る水平な直線上に搬送経路が定められ、搬送経路に沿ってローラー方式の搬送機構62が設けられている。
搬送機構62は搬送部材として二つで一組の円筒状のローラー62aを複数組有している。ローラー62aは組ごとに搬送経路に沿って一列に並んで配置され、一組中の二つのローラー62aは搬送経路を中央にして互いに反対側に、それぞれの円筒形の一端部が向かい合うように配置されている。
ローラー62aの他端部にはモーター62bが固定されている。モーター62bは不図示の制御装置から制御信号を受けるとローラー62aを円筒形の中心軸線の周りに回転させるように構成されている。
【0030】
基板50は「ロ」字形状の基板保持枠61(図9では不図示)に置載されて搬送機構62上を搬送される。
基板保持枠61の「ロ」字形状の内周は基板50表面(成膜面)のピクセル51全体より大きくかつ基板50の外周より小さく形成されている。基板保持枠61の幅は搬送機構62の互いに向かい合うローラー62aの間隔よりも広く形成されている。
まず、真空槽41の外側で成膜面を下方に向けた状態で基板50を基板保持枠61上に載置する。このときピクセル51全体は「ロ」字形状の開口から下方に露出しかつ基板50自体は「ロ」字形状の開口から落下しないようになっている。
【0031】
図10に示すように、真空槽41内の真空雰囲気を維持しながら、不図示の搬入装置を使って、真空槽41内に基板保持枠61を搬入し、搬送機構62のローラー62a上に水平に載せる。
ローラー62aを回転させて基板保持枠61を移動させ、基板50の成膜面がマスク保持枠43上の蒸着マスク10と対面する位置で基板保持枠61を静止させる。
マスク保持枠43の側方には基板保持枠昇降装置45が配置されている。
基板保持枠昇降装置45は接触部45aと接触部昇降機構45bを有している。
接触部45aは基板保持枠61の下方を向いた面と対面する位置に配置されている。
接触部昇降機構45bは不図示の制御装置から制御信号を受けると、接触部45aを鉛直方向に移動させるように構成されている。
【0032】
図11に示すように、接触部45aを基板保持枠61に向かって鉛直上方に移動させ、基板保持枠61に接触させ、接触部45aを介して基板保持枠61を持ち上げ、基板保持枠61をローラー62aから離間した位置で静止させる。
基板保持枠61をローラー62aから離間させることで、搬送機構62の振動が基板保持枠61に伝わることを防止できる。
基板50の裏面(上側)と対面する位置には基板吸着装置64が配置されている。基板吸着装置64は基板吸着板64aと接着部材64bを有している。
基板吸着板64aの一面(以下表面と呼ぶ)は平面状に形成され、貫通孔が形成されている。貫通孔の形状は周囲を囲まれた孔形状に限定されず、周囲の一部に開口を有する切り欠き形状でもよい。基板吸着板64aの裏面には棒状の板吊り下げ棒64dが鉛直に固定されている。
【0033】
接着部材64bは板部と凸部を有している。凸部は、基板吸着板64aの厚みよりも長く、貫通孔よりも径が小さく形成されている。板部の一面(以下表面と呼ぶ)を基板吸着板64aの裏面に近づけたときに、凸部は貫通孔から突出する。板部には板吊り下げ棒64dの端部と対面する位置に板吊り下げ棒64dの径よりも大きい開口が形成されている。板部の裏面の開口には管状の部材吊り下げ管64eが連通するように鉛直に固定されている。
部材吊り下げ管64eの径は板吊り下げ棒64dの径よりも大きく形成されている。板吊り下げ棒64dの一端は部材吊り下げ管64eに挿入され、板吊り下げ棒64dの中心軸線と部材吊り下げ管64eの中心軸線は互いに平行にされている。
【0034】
基板吸着装置64は、板吊り下げ棒64dの一端が部材吊り下げ管64eに挿入された状態を維持しながら、基板吸着板64aと接着部材64bを相対的に近づけるように移動させると、接着部材64bの凸部の先端が基板吸着板64aの裏面から貫通孔を通って、基板吸着板64aの表面に突出するように構成されている。
基板吸着装置64は真空槽41内で、板吊り下げ棒64dと部材吊り下げ管64eの中心軸線が水平面に対して垂直で、基板吸着板64aの表面が基板50の裏面と対面するように配置されている。
板吊り下げ棒64dの一端と部材吊り下げ管64eの一端はそれぞれ真空槽41の内壁を気密に貫通し、真空槽41の外側に配置された吸着装置移動機構64cに接続されている。
吸着装置移動機構64cは不図示の制御装置から制御信号を受けると、板吊り下げ棒64dと部材吊り下げ管64eをそれぞれの中心軸線に平行な方向に昇降するように構成されている。
【0035】
基板吸着板64aはポリイミドと、セラミックと、SiCと、BNのうちいずれか1種類の材質を含有し、内部に電極が設けられて静電吸着機構を構成する。電極には真空槽41の外側に配置された不図示の電源装置が電気的に接続されている。基板吸着板64aは、内部の電極に電源装置から所定の直流電圧を印加されると、吸着対象物との間に静電気力による引力を生じさせるように構成されている。
接着部材64bの凸部の先端には接着剤層が固定されている。
基板保持枠61上の基板50は、その縁部で基板保持枠61と接触して支持されているが、成膜面は基板保持枠61の開口と対面しているため、重力によって下方に膨らむように変形する場合がある。後述する成膜工程の前に基板50の成膜面の変形を解消して平面にしておく必要がある。
【0036】
まず、基板吸着板64aを下降させ、基板吸着板64aの表面が基板50の裏面と接触する位置又はごくわずかな隙間を持って離間した位置で静止させる。
接着部材64bを下降させ、凸部先端の接着剤層を基板50の裏面に接触させ、押圧して、基板50の裏面を接着剤層を介して接着部材64bの凸部の先端に接着させる。
【0037】
図12に示すように、接着部材64bを上昇させ、凸部の先端を貫通孔に進入させながら、凸部の先端に接着された基板50の裏面を基板吸着板64aの表面に接触させる。基板吸着板64a内部の電極に所定の直流電圧を印加して、基板50との間に静電引力を生じさせる。基板50の裏面は基板吸着板64aの表面に静電吸着される。
基板50の裏面を基板吸着板64aの表面に面で静電吸着することで、以後基板50を平面の状態に維持できる。
接着部材64bを上昇させ、接着剤層による基板50裏面との接着を解消させ、凸部先端の接着剤層を基板50の裏面から離間させる。
マスク保持枠43にはマスク保持枠移動装置44が接続されている。
マスク保持枠移動装置44はここではマスク保持枠移動回転装置44aと、マスク保持枠昇降装置44bとを有している。マスク保持枠移動回転装置44aはマスク保持枠43に接続され、マスク保持枠昇降装置44bはマスク保持枠移動回転装置44aに接続されている。
【0038】
マスク保持枠移動回転装置44aは、真空槽41の外側に配置されたマスク保持枠移動制御装置69から制御信号を受けると、マスク保持枠43を互いに直交する水平な二方向(XY方向)に移動させ、かつ水平面に対して鉛直な回転軸線の周り(Θ方向)に回転させるように構成されている。
マスク保持枠昇降装置44bは、マスク保持枠移動制御装置69から制御信号を受けると、マスク保持枠移動回転装置44aと一緒にマスク保持枠43を上昇又は下降させるように構成されている。
マスク保持枠移動制御装置69には、マスク保持枠43上の蒸着マスク10と、基板50との相対位置関係を検出する検出装置が接続されている。
ここでは、検出装置は撮像装置63であり、基板50上の基板マーク52の真上位置に、レンズを鉛直下方に向けて配置されている。撮像装置63は基板マーク52と、透明な基板50を介して蒸着マスク10上のマスクマーク12の両方を撮像可能に構成されている。
【0039】
マスク保持枠移動制御装置69は撮像装置62の撮像結果から、マスクマーク12を水平面に正射影した射影マスクマークと、基板マーク52を水平面に正射影した射影基板マークとの相対位置関係を測定し、射影マスクマークと射影基板マークが一致するように、マスク保持枠移動回転装置44aによるマスク保持枠43の移動の向きと移動の量と、マスク保持枠43の回転の向きと回転の量とを決定するように構成されている。
またマスク保持枠移動制御装置69は、蒸着マスク10表面の高さと基板50表面の高さをあらかじめ分かっており、蒸着マスク10表面と基板50表面との間の間隔が所定の距離(ゼロでもよい)になるように、マスク保持枠昇降装置44bによるマスク保持枠43の移動の向きと移動の量とを決定するように構成されている。
マスク保持枠43上の蒸着マスク10と、基板50とを位置合わせする装置を位置合わせ装置と呼ぶと、ここではマスク保持枠移動44と、検出装置と、マスク保持枠移動制御装置69で位置合わせ装置が構成されている。
【0040】
図13に示すように、まず蒸着マスク10表面と基板50表面との間の間隔が所定の距離になるように、マスク保持枠43を上昇させる。蒸着マスク10表面と基板50表面との間の間隔は、間隔が開きすぎると基板50表面に輪郭がぼやけた薄膜が成膜されるため、50μm〜0μm(密着)が望ましい。
次いで、撮像装置63で基板マーク52とここでは上述の第一のマスクマーク121をそれぞれ撮像し、撮像結果に基づいて当該射影マスクマークと射影基板マークが一致するようにマスク保持枠43を水平方向に移動させ、かつ水平面に対して鉛直な回転軸線の周りに回転させ、上述の第一の状態にする。このとき、例えば図3(a)を参照し、ピクセル51と対面する位置には基板基準線53a〜53cに沿った方向に開口部11と遮蔽部19が交互に配置される。
【0041】
次いで、基板50と蒸着マスク10をいずれも静止させた状態で、第一の状態を維持しながら、放出口42cから成膜材料の蒸気を放出させると、蒸気は蒸着マスク10の各開口部11を通って、開口部11と対面するピクセル51にそれぞれ到達し、当該ピクセル51に成膜材料の薄膜が成膜される。
基板50上に所定の時間成膜したのち、放出口42cから蒸気の放出を停止させる。
次いで、蒸着マスク10をマスク保持枠43と一緒に上述の移動方向5にピクセル51の中心間距離d1だけ移動させる。
【0042】
撮像装置63で基板マーク52と上述の第二のマスクマーク122をそれぞれ撮像し、撮像結果に基づいて当該射影マスクマークと射影基板マークが一致するようにマスク保持枠43を水平方向に移動させ、かつ水平面に対して鉛直な回転軸線の周りに回転させて位置合わせし、上述の第二の状態にする。このとき例えば図3(b)を参照し、第一の状態では遮蔽部19と対面していた未成膜の各ピクセル51と対面する位置に開口部11が配置され、第一の状態では開口部11と対面していて既に成膜された各ピクセル51と対面する位置に遮蔽部19が配置される。
次いで、基板50と蒸着マスク10をいずれも静止させた状態で、第二の状態を維持しながら、放出口42cから成膜材料の蒸気を放出させると、蒸気は蒸着マスク10の各開口部11を通って、基板50の未成膜の各ピクセル51にそれぞれ到達し、当該ピクセル51のそれぞれに成膜材料の薄膜が成膜される。
【0043】
このようにして、本発明の蒸着マスク10を用いて基板50上の同色のすべてのピクセル51に薄膜を成膜できる。
基板50上に所定の時間成膜したのち、放出口42cから蒸気の放出を停止させる。
マスク保持枠43を下降させ、蒸着マスク10表面を基板50表面から離間させる。
基板吸着板64a内部の電極への直流電源の印加を停止して基板50の静電吸着を解除し、基板50を基板保持枠61上に載せる。基板吸着板64aと接着部材64bの両方を基板50から上昇させ、元の位置で静止させる。
基板保持枠昇降装置45の接触部45aを基板保持枠61と一緒に下降させ、基板保持枠61をローラー62aに載せる。接触部45aをさらに下降させ、基板保持枠61から離間させる。
ローラー62aを回転させ、蒸着マスク10を真空槽41内に残したまま、基板保持枠61を蒸着マスク10と対面する位置から移動させる。真空槽41内の真空雰囲気を維持しながら不図示の搬出装置を使って基板保持枠61を真空槽41の外側に搬出する。
【0044】
所定の枚数の基板50を成膜した後に行う蒸着マスクの交換方法を説明する。
図9を参照し、マスク保持枠43の上方にはマスク交換手段65が配置されている。マスク交換手段65は棒状の腕部65aと腕部吊り下げ棒65bと腕部移動機構65cを有している。
腕部吊り下げ棒65bは蒸着マスク10表面と対面する位置の外側に、中心軸線を水平面に対して鉛直な向きで配置されている。
腕部吊り下げ棒65bの一端は腕部65aの一端に互いの中心軸線が直角に交差する向きで固定され、腕部吊り下げ棒65bの他端は真空槽41の内壁を気密に貫通し、真空槽41の外側に配置された腕部移動機構65cに接続されている。
腕部移動機構65cは不図示の制御装置から制御信号を受けると、腕部吊り下げ棒65bを介して腕部65aを、腕部吊り下げ棒65bの中心軸線の周りに回転させ、かつ腕部65aを上昇又は下降させるように構成されている。
腕部65aが蒸着マスク10表面と対面しないように腕部吊り下げ棒65bを回転させたのち、腕部65aを下降させ、蒸着マスク10の側方に位置させる。次いで腕部吊り下げ棒65bを回転させて腕部65aを蒸着マスク10の裏面とマスク保持枠43の間に挿入する。腕部65aを上昇させ、蒸着マスク10をマスク保持枠43から離間させる。蒸着マスク10を搬送経路の上方で静止させておく。
【0045】
図14に示すように、真空槽41内の真空雰囲気を維持したまま、不図示の搬入装置を使って、蒸着マスク10を載置可能なマスク搬送板67を真空槽41内に搬入し、ローラー62aに載せる。ローラー62aを回転させてマスク搬送板67を移動させ、蒸着マスク10の真下位置で静止させる。
腕部65aを下降させ、蒸着マスク10をマスク搬送板67上に載せる。腕部吊り下げ棒65bを回転させて腕部65aを蒸着マスク10の裏面とマスク搬送板67との間から抜き出したのち、上昇させて元の位置で静止させる。
ローラー62aを回転させてマスク搬送板67を移動させ、真空槽41内の真空雰囲気を維持したまま、不図示の搬出装置を使って、マスク搬送板67を真空槽41の外側に搬出する。
【0046】
次いで、真空槽41内の真空雰囲気を維持したまま、不図示の搬入装置を使って、未使用の蒸着マスク10が載置されたマスク搬送板67を真空槽41内に搬入し、ローラー62aに載せる。ローラー62aを回転させてマスク搬送板67を移動させ、マスク保持枠43と対面する位置で静止させる。
腕部65aを下降させ、蒸着マスク10の側方に位置させる。次いで腕部吊り下げ棒65bを回転させて腕部65aを蒸着マスク10の裏面とマスク搬送板67の間に挿入する。腕部65aを上昇させ、蒸着マスク10をマスク搬送板67から離間させ、マスク搬送板67の上方で静止させる。
ローラー62aを回転させて空のマスク搬送板67を移動させ、真空槽41内の真空雰囲気を維持したまま、不図示の搬出装置を使って、空のマスク搬送板67を真空槽41の外側に搬出する。
腕部65aを下降させ、蒸着マスク10をマスク保持枠43上に載せる。腕部吊り下げ棒65bを回転させて腕部65aを蒸着マスク10の裏面とマスク保持枠43との間から抜き出したのち、上昇させて元の位置で静止させる。
このようにして図9に示すように未使用の蒸着マスク10をマスク保持枠43上に載置できる。
【0047】
本発明の基板マーク52とマスクマーク12の構成は、上述のように、蒸着マスク10上の基板マーク52と対面する位置に二つで一組の第一、第二のマスクマーク121、122が互いにピクセル51の中心間距離d1だけ離間して設けられている場合に限定されず、基板50上のマスクマーク12と対面する位置に二つで一組の基板マークが基板基準線53a〜53cに沿って互いにピクセル51の中心間距離d1だけ離間して設けられていてもよい。
【0048】
本発明の蒸着マスク10の開口部11の中心間距離は、上述のように、ピクセル51の中心間距離d1の2倍にされている場合に限定されず、ピクセル51の中心間隔d1の3倍以上にされていてもよい。すなわち、蒸着マスクの一方向に隣り合う開口部の中心間距離が、同材料で成膜され、かつ上記一方向に隣り合うピクセルの中心間距離の複数倍であればよい。また、蒸着マスクは、上記一方向に隣り合うピクセルの中心間距離と同じ中心間距離で配置された複数個のマスクマークを有する。上記複数倍の時、基板と蒸着マスクを相対移動する回数は、(複数倍−1)回となる。
蒸着マスク10を基板50上に配置すると、ピクセル51と対面する位置には、基板基準線に沿った方向に一つの開口部11と二つ以上連続した遮蔽部19とが交互に配置されるように構成されており、その状態から、基板50と蒸着マスク10とを移動方向5にピクセル51の中心間隔d1だけ相対的に移動させることを二度以上繰り返すと、各ピクセル51の上方に一度ずつ開口部11を配置することができる。
この場合、上述のような開口部11の中心間距離がピクセル51の中心間距離の2倍にされた蒸着マスクよりも、隣り合う開口部11の間隔が広いため、蒸着マスク10に開口部11を形成するときに強度不足のために蒸着マスク10が破損する虞をさらに低減することができる。
【0049】
本発明の蒸着装置40の搬送機構62は上記のようなローラー方式に限定されず、真空槽41内で対象物を水平に搬送できるならばベルトコンベア方式やリニアモーター方式、ロボットアーム方式等でもよい。
本発明の蒸着装置40は上述のように、放出口42cを鉛直上方に向け、放出口42cの上方にマスク10と基板50を順にそれぞれ水平に配置する構造に限定されず、放出口42cを鉛直下方に向け、放出口42cの下方にマスク10と基板50を順にそれぞれ水平に配置するように構成してもよいし、水平面に対して鉛直に交差する一面を基準面とし、放出口42cを基準面に向け、放出口42cと対面する位置にマスク10と基板50を順にそれぞれ基準面に平行に立てた状態で配置するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0050】
10……蒸着マスク
11……開口部
12……マスクマーク
19……遮蔽部
40……蒸着装置
41……真空槽
42……蒸着源
49……真空排気装置
50……基板
51……ピクセル
52……基板マーク
53a〜53c……基板基準線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の同材料が成膜される複数のピクセルに蒸気が到達できるように構成された蒸着マスクであって、
一部の前記ピクセルに前記蒸気を通過する開口部を有し、
前記蒸着マスクの一方向に隣り合う前記開口部の中心間距離が、同材料で成膜され、かつ前記一方向に隣り合う前記ピクセルの中心間距離の複数倍である蒸着マスク。
【請求項2】
前記一方向は、同材料で成膜され、かつ隣り合う前記ピクセルの間隔が短い方向である請求項1記載の蒸着マスク。
【請求項3】
前記一方向に隣り合う前記ピクセルの中心間距離と同じ中心間距離で配置された複数のマスクマークを有する請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の蒸着マスク。
【請求項4】
請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の蒸着マスクと、
前記蒸着マスクが内部に配置される真空槽と、
前記真空槽内を真空排気する真空排気装置と、
前記真空槽内に蒸着材料の蒸気を放出する蒸着源と、
前記蒸着マスクと前記基板とを位置合わせする位置合わせ装置と、
を有する蒸着装置。
【請求項5】
前記位置合わせ装置は、
前記蒸着マスクの有するマスクマークと、前記基板の有する基板マークを検出する検出装置と、
前記蒸着マスクを、前記蒸着マスク表面に平行な方向に移動させ、かつ前記蒸着マスク表面に垂直な回転軸線の周りに回転させるマスク移動装置と、
前記検出装置の検出結果に基づいて、前記マスク移動装置による前記蒸着マスクの移動の向きと移動の量と、前記蒸着マスクの回転の向きと回転の量とを決定する制御装置と
を有する請求項4記載の蒸着装置。
【請求項6】
請求項3記載の蒸着マスクと、
前記蒸着マスクが内部に配置される真空槽と、
前記真空槽内を真空排気する真空排気装置と、
前記真空槽内に蒸着材料の蒸気を放出する蒸着源と、
前記蒸着マスクと前記基板とを位置合わせする位置合わせ装置と、
を有する蒸着装置。
【請求項7】
前記位置合わせ装置は、
前記蒸着マスクの有する前記マスクマークと、前記基板の有する基板マークを検出する検出装置と、
前記蒸着マスクを、前記蒸着マスク表面に平行な方向に移動させ、かつ前記蒸着マスク表面に垂直な回転軸線の周りに回転させるマスク移動装置と、
前記検出装置の検出結果に基づいて、前記マスク移動装置による前記蒸着マスクの移動の向きと移動の量と、前記蒸着マスクの回転の向きと回転の量とを決定する制御装置と
を有する請求項6記載の蒸着装置。
【請求項8】
真空排気された真空槽内に、同一材料で成膜される複数のピクセルを有する基板と、蒸着源と、複数の開口を有する蒸着マスクを配置し、前記基板に成膜を行う薄膜形成方法であって、
前記ピクセルは、行列状に配置され、
前記蒸着マスクは、開口部を有し、前記開口部の行間の中心距離は、前記ピクセルの行間の中心距離の複数倍であり、
奇数行上の前記ピクセルに前記開口を重ねて成膜するステップと、
前記蒸着マスクと前記基板のいずれかを、前記ピクセルの中心距離の倍数だけ列方向に相対移動するステップと、
偶数行上の前記ピクセルに前記開口を重ねて成膜するステップと、を有する薄膜形成方法。
【請求項9】
真空排気された真空槽内に、互いに離間して位置する複数のピクセルを有する基板を配置し、
蒸着源から前記真空槽内に蒸着材料の蒸気を放出させ、
薄膜を形成すべき前記ピクセル上に薄膜を形成する薄膜形成方法であって、
各前記ピクセルの中心は、互いに平行な複数の基板基準線のいずれかの基板基準線上に配置し、前記基板基準線上の前記ピクセルの中心間距離は等しくしておき、
一方向に隣り合う前記開口部の中心間距離が、同材料で成膜され、かつ前記一方向に隣り合う前記ピクセルの中心間距離の2倍である請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の蒸着マスクを前記基板と対面させ、各前記ピクセルに重なる位置に、前記基板基準線に沿った方向に前記開口部と前記蒸気を遮蔽する遮蔽部が交互に配置されるように前記基板と前記蒸着マスクを位置合わせして配置した第一の状態にし、
前記第一の状態を維持しながら、対面する位置に前記開口部が配置された前記ピクセル表面に前記蒸気を到達させて前記薄膜を形成し、
前記蒸気の到達を停止させた後、
前記蒸着マスクを、前記基板基準線に沿った移動方向に前記中心間距離だけ移動させ、前記第一の状態では、対面する位置に前記遮蔽部が配置されていた前記ピクセルに前記開口部が位置する第二の状態にし、
前記第二の状態を維持しながら前記蒸気を前記成膜対象物に到達させて前記薄膜を形成する薄膜形成方法。
【請求項10】
前記第一の状態では、前記基板基準線に沿った前記薄膜を形成すべき前記ピクセルの列の前記移動方向の最後尾に、前記遮蔽部と対面する前記ピクセルが配置されている場合は、前記ピクセルから前記中心間距離だけ後方の前記基板基準線に沿った領域外位置と対面するように前記蒸着マスク内に前記開口を配置しておき、
前記最後尾の前記ピクセルが、前記第二の状態では、前記領域外位置の前記開口と対面するようにする請求項9記載の薄膜形成方法。
【請求項1】
基板上の同材料が成膜される複数のピクセルに蒸気が到達できるように構成された蒸着マスクであって、
一部の前記ピクセルに前記蒸気を通過する開口部を有し、
前記蒸着マスクの一方向に隣り合う前記開口部の中心間距離が、同材料で成膜され、かつ前記一方向に隣り合う前記ピクセルの中心間距離の複数倍である蒸着マスク。
【請求項2】
前記一方向は、同材料で成膜され、かつ隣り合う前記ピクセルの間隔が短い方向である請求項1記載の蒸着マスク。
【請求項3】
前記一方向に隣り合う前記ピクセルの中心間距離と同じ中心間距離で配置された複数のマスクマークを有する請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の蒸着マスク。
【請求項4】
請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の蒸着マスクと、
前記蒸着マスクが内部に配置される真空槽と、
前記真空槽内を真空排気する真空排気装置と、
前記真空槽内に蒸着材料の蒸気を放出する蒸着源と、
前記蒸着マスクと前記基板とを位置合わせする位置合わせ装置と、
を有する蒸着装置。
【請求項5】
前記位置合わせ装置は、
前記蒸着マスクの有するマスクマークと、前記基板の有する基板マークを検出する検出装置と、
前記蒸着マスクを、前記蒸着マスク表面に平行な方向に移動させ、かつ前記蒸着マスク表面に垂直な回転軸線の周りに回転させるマスク移動装置と、
前記検出装置の検出結果に基づいて、前記マスク移動装置による前記蒸着マスクの移動の向きと移動の量と、前記蒸着マスクの回転の向きと回転の量とを決定する制御装置と
を有する請求項4記載の蒸着装置。
【請求項6】
請求項3記載の蒸着マスクと、
前記蒸着マスクが内部に配置される真空槽と、
前記真空槽内を真空排気する真空排気装置と、
前記真空槽内に蒸着材料の蒸気を放出する蒸着源と、
前記蒸着マスクと前記基板とを位置合わせする位置合わせ装置と、
を有する蒸着装置。
【請求項7】
前記位置合わせ装置は、
前記蒸着マスクの有する前記マスクマークと、前記基板の有する基板マークを検出する検出装置と、
前記蒸着マスクを、前記蒸着マスク表面に平行な方向に移動させ、かつ前記蒸着マスク表面に垂直な回転軸線の周りに回転させるマスク移動装置と、
前記検出装置の検出結果に基づいて、前記マスク移動装置による前記蒸着マスクの移動の向きと移動の量と、前記蒸着マスクの回転の向きと回転の量とを決定する制御装置と
を有する請求項6記載の蒸着装置。
【請求項8】
真空排気された真空槽内に、同一材料で成膜される複数のピクセルを有する基板と、蒸着源と、複数の開口を有する蒸着マスクを配置し、前記基板に成膜を行う薄膜形成方法であって、
前記ピクセルは、行列状に配置され、
前記蒸着マスクは、開口部を有し、前記開口部の行間の中心距離は、前記ピクセルの行間の中心距離の複数倍であり、
奇数行上の前記ピクセルに前記開口を重ねて成膜するステップと、
前記蒸着マスクと前記基板のいずれかを、前記ピクセルの中心距離の倍数だけ列方向に相対移動するステップと、
偶数行上の前記ピクセルに前記開口を重ねて成膜するステップと、を有する薄膜形成方法。
【請求項9】
真空排気された真空槽内に、互いに離間して位置する複数のピクセルを有する基板を配置し、
蒸着源から前記真空槽内に蒸着材料の蒸気を放出させ、
薄膜を形成すべき前記ピクセル上に薄膜を形成する薄膜形成方法であって、
各前記ピクセルの中心は、互いに平行な複数の基板基準線のいずれかの基板基準線上に配置し、前記基板基準線上の前記ピクセルの中心間距離は等しくしておき、
一方向に隣り合う前記開口部の中心間距離が、同材料で成膜され、かつ前記一方向に隣り合う前記ピクセルの中心間距離の2倍である請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の蒸着マスクを前記基板と対面させ、各前記ピクセルに重なる位置に、前記基板基準線に沿った方向に前記開口部と前記蒸気を遮蔽する遮蔽部が交互に配置されるように前記基板と前記蒸着マスクを位置合わせして配置した第一の状態にし、
前記第一の状態を維持しながら、対面する位置に前記開口部が配置された前記ピクセル表面に前記蒸気を到達させて前記薄膜を形成し、
前記蒸気の到達を停止させた後、
前記蒸着マスクを、前記基板基準線に沿った移動方向に前記中心間距離だけ移動させ、前記第一の状態では、対面する位置に前記遮蔽部が配置されていた前記ピクセルに前記開口部が位置する第二の状態にし、
前記第二の状態を維持しながら前記蒸気を前記成膜対象物に到達させて前記薄膜を形成する薄膜形成方法。
【請求項10】
前記第一の状態では、前記基板基準線に沿った前記薄膜を形成すべき前記ピクセルの列の前記移動方向の最後尾に、前記遮蔽部と対面する前記ピクセルが配置されている場合は、前記ピクセルから前記中心間距離だけ後方の前記基板基準線に沿った領域外位置と対面するように前記蒸着マスク内に前記開口を配置しておき、
前記最後尾の前記ピクセルが、前記第二の状態では、前記領域外位置の前記開口と対面するようにする請求項9記載の薄膜形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−165581(P2011−165581A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29353(P2010−29353)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
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