説明

蓄電装置

【課題】簡単な構成で高精度に蓄電部の容量値を検出可能な蓄電装置を提供すること。
【解決手段】蓄電部25と、蓄電部25に電気的に接続された充電回路21と、蓄電部25に電気的に接続され、蓄電部電圧(Vc)が既定第1電圧(Vc1)に至ると出力が反転する第1比較器41と、蓄電部25に電気的に接続され、蓄電部電圧(Vc)が既定第2電圧(Vc2)に至ると出力が反転する第2比較器43と、充電回路21、第1比較器41、および第2比較器43と電気的に接続された制御回路53と、を備え、制御回路53は、蓄電部25を定電流(Ics)で充電する際に、第1比較器41の出力が反転してから第2比較器43の出力が反転するまでの期間(tm)を求め、この期間(tm)から蓄電部25の容量値(C)を求めるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主電源の電圧低下時に蓄電部の電力を負荷に供給するバックアップ電源としての蓄電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
商用交流電源を整流して得られる直流電源や車両用バッテリ等の直流電源からなる主電源において、その電圧が低下したときにキャパシタ等の蓄電素子に蓄えた電力を負荷に供給することで電圧低下を補い、前記負荷の継続動作を可能とするバックアップ電源としての蓄電装置が、前記主電源の瞬間的な電圧低下(以後、瞬低という)対策用や非常用の電源として用いられている。このような蓄電装置は、前記蓄電素子が劣化していると、電圧低下時に前記負荷への十分な電力供給ができなくなる可能性があるため、劣化判断が重要である。
【0003】
前記劣化判断のためには、前記蓄電素子として例えばキャパシタを用いた場合、その容量値を求める方法がある。すなわち、一般にキャパシタの劣化が進行すると、蓄電能力が低下するので前記容量値が小さくなる。ゆえに、前記容量値を監視することで前記劣化判断を行なうことができる。
【0004】
キャパシタ(コンデンサ)の容量値を測定するためには、例えば特許文献1に示す方法が提案されている。図9はこのようなコンデンサの性能(容量値)測定装置の概略構成図である。測定回路100は定電流源110とオシロスコープ120から構成される。定電流源110には容量値を求めたいコンデンサであるサンプル200が接続される。さらに、サンプル200の両端にはその電圧を観測するためのオシロスコープ120も接続されている。
【0005】
前記容量値は次のようにして求める。サンプル200を定電流源110により定電流で充電すると、その電圧は経時的に直線変化する。これは、前記容量値をC、定電流源110の電流をI、時間tの間の充電で変化するサンプル200の電圧をVとすると、C・V=I・tの関係が成立し、容量値Cと電流Iが一定であるので、V=I・t/Cとなり、電圧Vが時間tに対し一次の相関を有するためである。この性質を利用し、オシロスコープ120により電圧Vの変化を時間軸(時間t)で計測することで、C=I・t/Vより容量値Cを測定することができる。なお、特許文献1にはオシロスコープ120に替わってA−D変換器(図示せず)により電圧Vをデジタルデータに変換して求める構成も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4330567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の測定装置によると、確かにキャパシタの容量値Cを測定することができるのであるが、バックアップ電源としての蓄電装置にオシロスコープ120を含む測定装置を組み込むことは現実的ではない。これに対し、A−D変換器により電圧Vをデジタルデータとして取り込む構成については、前記蓄電装置への搭載が可能であるものの、前記蓄電装置の仕様によっては精度面で不十分となる可能性がある。その理由は次の通りである。
【0008】
特許文献1の構成では、コンデンサを含む回路に含まれる非線形素子の動作電圧よりも低い電圧(具体的には0.3V)までの電圧Vの時間変化を計測しているので、A−D変換器は少なくとも0.3Vまでの電圧が計測できればよい。これに対し、特許文献1では10ビットのA−D変換器を用い、レベルシフタも内蔵していることから、一般的なA−D変換器の仕様を考慮すると、その駆動電圧を5Vとした場合、レベルシフタにより入力電圧を例えば10倍に増幅して10ビットの分解能で電圧Vを取り込む構成が想定される。この場合、フルスケールで5Vまでの入力電圧を約4.9mV(=5V/(210−1))の分解能で取り込むことができる。なお、この分解能を1LSBという。ここで、一般的なA−D変換器では±5LSB程度の誤差を有するので、前記A−D変換器の出力誤差は約±0.49%(=±5LSB×4.9mV/5000mV×100)となる。この誤差は、前記コンデンサの容量値Cを測定する性能測定装置としては十分な精度である。
【0009】
これに対し、バックアップ対象となる負荷が例えば50V程度の高電圧を必要とする場合、前記高電圧を上記した一般的なA−D変換器で検出する場合、取り込める電圧Vが5Vまでとなるので、前記高電圧の値を抵抗分割などの手段により1桁落として前記A−D変換器に入力する必要がある。この場合の取り込み電圧精度は上記した通り±5LSB×4.9mV=±24.5mVとなる。従って、元の前記高電圧(50V)に対してはその10倍の±245mVの取り込み誤差となる。
【0010】
この取り込み誤差で電圧Vを求めると、電圧Vの誤差は次のようになる。電圧Vは時間tの前後2点の電圧絶対値の差分であるので、例えば電圧V=2Vとすると、前記電圧絶対値が48Vから50Vのように差分が2Vになる2点の電圧絶対値を取り込む必要がある。ここで、48Vを取り込むときの誤差が上記したように±245mV、50Vを取り込むときの誤差も±245mVとなる。ゆえに、両者の差分である電圧Vの誤差は最大±490mVとなる。すなわち、電圧Vは2Vであったので、2Vに対して誤差が最大±490mVにもなるので、パーセントで示すと誤差が±24.5%(=±0.49V/2V×100)にも達する。従って、このような電圧Vを用いて容量値Cを計算すると、その誤差も大きくなり、結果として劣化判断の精度が不十分となる。
【0011】
これに対し、電圧Vを大きくすれば相対的に誤差は小さくなるが、時間tが大きくなるので容量値Cを求めて劣化判断を行なうために時間がかかってしまう上、2点の前記電圧絶対値のうち一方を低い値にしなければならないため、前記電圧絶対値が低い値から高い値まで充電している間に主電源の電圧が低下すると、十分なバックアップができなくなる可能性が高まる。従って、電圧Vは前記高電圧近傍でできるだけ小さくする必要がある。
【0012】
また、容量値Cの測定精度を上げるためには例えばA−D変換器の分解能(ビット数)を上げればよいが、回路構成が複雑になるという課題があった。
【0013】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、簡単な構成で高精度にキャパシタ(蓄電部)の容量値を検出可能な蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記従来の課題を解決するために、本発明の蓄電装置は、蓄電部と、前記蓄電部に電気的に接続された充電回路と、前記蓄電部に電気的に接続され、蓄電部電圧(Vc)が既定第1電圧(Vc1)に至ると出力が反転する第1比較器と、前記蓄電部に電気的に接続され、蓄電部電圧(Vc)が既定第2電圧(Vc2)に至ると出力が反転する第2比較器と、前記充電回路、第1比較器、および第2比較器と電気的に接続された制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記蓄電部を定電流(Ics)で充電する際に、前記第1比較器の出力が反転してから前記第2比較器の出力が反転するまでの期間(tm)を求め、前記期間(tm)と、あらかじめ求められた前記既定第1電圧(Vc1)と前記既定第2電圧(Vc2)との電圧変化幅(ΔVc)から前記蓄電部の容量値(C)を求めるようにしたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の蓄電装置によれば、蓄電部電圧(Vc)を第1比較器と第2比較器からなる簡易な回路で監視し、第1比較器と第2比較器の出力反転の期間(tm)を検出するだけで容量値(C)を求めているので、A−D変換器を用いることなく高精度に蓄電部の容量値(C)を検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1における蓄電装置のブロック回路図
【図2】本発明の実施の形態1における蓄電装置の各種特性の経時特性図であり、(a)は蓄電部電圧Vcの経時特性図、(b)は電圧検出信号HLの経時特性図
【図3】本発明の実施の形態1における蓄電装置の容量値を求め劣化判断を行なう動作のフローチャート
【図4】本発明の実施の形態2における蓄電装置のブロック回路図
【図5】本発明の実施の形態3における蓄電装置のブロック回路図
【図6】本発明の実施の形態4における蓄電装置のブロック回路図
【図7】本発明の実施の形態4における蓄電装置の容量値を求め劣化判断を行なう動作のフローチャート
【図8】本発明の実施の形態5における蓄電装置のブロック回路図
【図9】従来のコンデンサの性能測定装置の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における蓄電装置のブロック回路図である。図2は、本発明の実施の形態1における蓄電装置の各種特性の経時特性図であり、(a)は蓄電部電圧Vcの経時特性図、(b)は電圧検出信号HLの経時特性図を、それぞれ示す。図3は、実施の形態1における蓄電装置の容量値を求め劣化判断を行なう動作のフローチャートである。なお、図1において太線は電力系配線を、細線は信号系配線をそれぞれ示す。また、図2において、横軸は時刻を示す。
【0019】
図1において、主電源11は直流電源であり、主電源11に並列に負荷13が接続されている。従って、通常は主電源11から負荷13に電力が供給されている。これに対し、主電源11が瞬低を起こしても負荷13を継続的に駆動させ続けるために、負荷13と並列に蓄電装置15が接続されている。
【0020】
蓄電装置15は次の構成を有する。蓄電装置15は正極端子17とグランド端子19を介して負荷13と電気的に接続される。グランド端子19は蓄電装置15内のグランドと共通になるように電気的に接続されている。
【0021】
一方、正極端子17には充電回路21および電流検出回路23を介して電力を蓄える蓄電部25と電気的に接続されている。従って、蓄電部25は充電回路21により充電される構成となる。充電回路21としては、蓄電部25を定電流Icsで充電できる構成のものであればよく、具体的にはドロッパ回路やDC/DCコンバータ等が適用できる。なお、蓄電部25を定電流Icsで充電する理由は蓄電部25の容量値Cを容易に求めることができるためである。また、蓄電部25は複数(ここでは25個)の電気二重層キャパシタを直列接続した構成としている。電流検出回路23は蓄電部25に充電される電流Icを検出するためのもので、上記した蓄電部25の定電流Icsによる充電を行なう際の制御用に用いられる。本実施の形態1において、電流検出回路23にはシャント抵抗器と差動増幅器(いずれも図示せず)からなる構成のものを用いたが、これに限定されるものではなく例えばホール素子等により電磁的に検出する構成のものでもよい。
【0022】
また、蓄電部25には並列に電圧検出回路27が接続される。電圧検出回路27は蓄電部25の電圧Vcを検出して出力する機能を有する。さらに、蓄電部25と正極端子17の間には瞬低時に蓄電部25の電力を負荷13に供給するための放電回路29が電気的に接続されている。本実施の形態1では放電回路29をダイオードで構成した。これにより、主電源11の電圧が低下すると、前記ダイオードがオンになり、蓄電部25の電力が負荷13に供給される。なお、放電回路29の構成は前記ダイオードに限定されるものではなく、外部からのオンオフ制御が可能なスイッチやDC/DCコンバータ等が適用できる。ここで、前記DC/DCコンバータを双方向型とすれば、充電回路21と放電回路29を兼用することもできる。
【0023】
また、蓄電部25には分圧回路31が並列接続されている。分圧回路31は3つの分圧抵抗器、すなわち正極端子17側から第1分圧抵抗器33、第2分圧抵抗器35および第3分圧抵抗器36の直列回路で構成される。なお、第3分圧抵抗器36の一端はグランド端子19と電気的に接続される。分圧回路31は上記の構成を有するので、蓄電部電圧Vcに比例した第1電圧V1と、蓄電部電圧Vcに比例し第1電圧V1とは異なる第2電圧V2を出力する。ここで、第1分圧抵抗器33と第2分圧抵抗器35の間の電圧を第1電圧V1、第2分圧抵抗器35と第3分圧抵抗器36の間の電圧を第2電圧V2と呼ぶ。
【0024】
分圧回路31から出力される第1電圧V1は、基準電圧源37から出力される基準電圧Vrとともに第1比較器41に入力される。同様に、分圧回路31から出力される第2電圧V2は、基準電圧Vrとともに第2比較器43に入力される。なお、第1比較器41と第2比較器43にはいずれもコンパレータを用いた。また、基準電圧Vrの入力端子の極性が第1比較器41(マイナス側)と第2比較器43(プラス側)で異なる点に注意が必要である。また、基準電圧源37として例えば3端子レギュレータが適用できる。
【0025】
ここで、上記した分圧回路31を介して第1比較器41と第2比較器43を接続することにより、蓄電部電圧Vcが最大で例えば50V程度の高電圧であっても分圧回路31で蓄電部電圧Vcに比例した電圧に降圧されるので、第1比較器41や第2比較器43として高耐電圧のコンパレータを使用しない構成とすることができる。
【0026】
第1比較器41と第2比較器43の出力は接続点45で電気的に接続される。この接続点45はプルアップ抵抗器47を介してプルアップ電圧Vccを有するプルアップ電圧源49に電気的に接続される。このように接続することで、第1比較器41および第2比較器43の出力の少なくともいずれか一方が例えば0V近傍の低電圧レベル(以下Loという)であれば接続点45の電圧はLoに、第1比較器41および第2比較器43の出力の両方がプルアップ電圧Vccとプルアップ抵抗器47の抵抗値によって決まる例えば5V近傍の高電圧レベル(以下Hiという)であれば接続点45の電圧はHiになる。ゆえに、接続点45の電圧は分圧回路31から出力される第1電圧V1と第2電圧V2に応じてHiまたはLoのいずれか一方になる。
【0027】
また、蓄電部25にはその温度Tを検出するために温度センサ51が配されている。本実施の形態1では25個の前記電気二重層キャパシタを収納したケース(図示せず)の内部に配置した。また、温度センサ51としては温度に対する感度が大きいサーミスタを用いた。なお、温度センサ51は前記サーミスタに限定されるものではなく、熱電対や白金測温体、焦電センサなど他の温度センサでもよい。
【0028】
充電回路21、電流検出回路23、電圧検出回路27、接続点45および温度センサ51は信号系配線で制御回路53にそれぞれ接続されている。制御回路53はマイクロコンピュータと周辺回路(いずれも図示せず)から構成され、電流検出回路23から電流Icを、電圧検出回路27から蓄電部電圧Vcを、温度センサ51から温度Tを、それぞれ読み込む。さらに、接続点45は制御回路53の入力ポート55に接続される。従って、接続点45の電圧(HiまたはLo、以後これを電圧検出信号HLと呼ぶ)は入力ポート55を介して前記マイクロコンピュータに入力される。また、制御回路53は充電回路21に対して制御信号contを出力することにより、蓄電部25の充電制御を行う。また、制御回路53はデータ端子57を介して外部制御回路59とも接続されている。従って、制御回路53は外部制御回路59との間でデータ信号dataにより電流Icや蓄電部電圧Vc、温度T、蓄電装置15の動作状態など様々なデータをやり取りしている。なお、外部制御回路59は蓄電装置15が例えば商用交流電源のバックアップに用いられる場合には全体監視装置などに、車両用の場合には車両制御回路などに、それぞれ相当する。
【0029】
次に、このような蓄電装置15の動作について説明する。
【0030】
まず、蓄電装置15の基本的な動作を述べる。制御回路53は主電源11が正常に動作している状態で蓄電部電圧Vcが既定の満充電電圧(ここでは50V)に至っていなければ蓄電部25を充電するように充電回路21へ制御信号contを送信する。これを受け、充電回路21は主電源11の電力を蓄電部25に充電する。この際、制御回路53は電圧検出回路27で検出された蓄電部電圧Vcが前記満充電電圧に至るまでは定電流Ics(ここでは5A)で蓄電部25を充電する。定電流Icsでの充電は電流検出回路23で検出された電流Icを監視しながら制御回路53が充電回路21を制御することにより行なっている。なお、主電源11が正常に動作している状態は、本実施の形態1では外部制御回路59からのデータ信号dataにより知ることができる構成としているが、これは例えば正極端子17に主電源電圧検出回路(図示せず)を設けて制御回路53により主電源11の電圧を検出することで、蓄電装置15内で自己完結的に主電源11の状態を求める構成としてもよい。
【0031】
蓄電部25が満充電であれば、制御回路53は蓄電部電圧Vcが前記満充電電圧を維持するように充電回路21を定電圧制御する。これにより、主電源11がいつ瞬低を起こしても負荷13に蓄電部25の電力を供給することができる。
【0032】
主電源11で瞬低が発生すると、前記ダイオードから構成される放電回路29がオンになる。これは瞬低により主電源11の電圧が蓄電部電圧Vcより下がるためである。その結果、蓄電部25の電力が放電回路29を介して負荷13に供給される。これにより、電圧検出回路27で検出された蓄電部電圧Vcが低下していくので、この変化を制御回路53が検出し、充電回路21を停止するよう制御信号contを出力する。ゆえに、放電回路29から出力された電流が充電回路21により蓄電部25側に逆流する可能性を低減している。
【0033】
主電源11の瞬低が回復すると、放電回路29のカソード側電圧が高くなるので、放電回路29は自動的にオフになる。従って、蓄電部電圧Vcは放電回路29がオフになった時点の電圧値をほぼ維持することになる。制御回路53はこの蓄電部電圧Vcの変化を検出して、蓄電部25の放電が停止し、かつ主電源11が正常に動作している状態であれば、充電回路21により蓄電部25を再び満充電にするように制御する。
【0034】
これらの動作を繰り返すことにより、瞬低が発生しても負荷13を継続して駆動し続けられる。
【0035】
次に、このような蓄電装置15において特徴となる蓄電部25の容量値Cの求め方と、その結果による劣化判断動作について説明する。
【0036】
まず、容量値Cの測定原理は従来と同じである。すなわち、蓄電部25を定電流Icsで充電している時の期間tmにおける蓄電部電圧Vcの電圧変化幅ΔVcより、
C=Ics・tm/ΔVc (1)
を計算することで容量値Cが求められる。ここで、定電流Icsは既定値であるので、期間tmと電圧変化幅ΔVcの求め方を図2により説明する。
【0037】
図2(a)は蓄電部25の充電時における蓄電部電圧Vcの経時特性図であり、横軸は時刻tを、縦軸は蓄電部電圧Vcをそれぞれ示す。蓄電部25は定電流Icsで充電されているので、蓄電部電圧Vcの経時特性は図2(a)に示すように直線関係となる。ここで、ある期間tm(時刻t1から時刻t2まで)の間における電圧変化幅ΔVc(既定第1電圧Vc1から既定第2電圧Vc2までの変化幅)を求めれば、(1)式より容量値Cが得られる。
【0038】
次に、本実施の形態1による電圧変化幅ΔVcと期間tmの求め方を述べる。本実施の形態1では蓄電部電圧Vcは分圧回路31により第1電圧V1と第2電圧V2が出力される。これらはそれぞれ同一の基準電圧Vrとともに第1比較器41と第2比較器43に入力される。ここで、第1電圧V1は第1分圧抵抗器33と第2分圧抵抗器35の間の電圧であり、第2電圧V2は第2分圧抵抗器35と第3分圧抵抗器36の間の電圧であるので、図1の回路より第1電圧V1の方が第2電圧V2より高い電圧値となる。ここで、第1分圧抵抗器33、第2分圧抵抗器35および第3分圧抵抗器36はいずれも固定抵抗器であり、これらの抵抗値は蓄電部電圧Vcが既定第1電圧Vc1に至った時に第1電圧V1が基準電圧Vrに至るように、かつ蓄電部電圧Vcが既定第2電圧Vc2に至った時に第2電圧V2が基準電圧Vrに至るようにあらかじめ決定されている。なお、前記抵抗値の決定に際しては、第1電圧V1と第2電圧V2が第1比較器41と第2比較器43を構成する前記コンパレータの入力許容電圧以内になるよう考慮している。
【0039】
このように前記抵抗値を決定することで、第1電圧V1と第2電圧V2が蓄電部電圧Vcに相当し、既定第1電圧Vc1と既定第2電圧Vc2が基準電圧Vrに相当することになる。ゆえに、第1比較器41には分圧回路31の第1電圧V1、および既定第1電圧Vc1に相当する基準電圧Vrがそれぞれ入力され、蓄電部電圧Vc(第1電圧V1に相当)が既定第1電圧Vc1(基準電圧Vrに相当)に至ると第1比較器41の出力が反転する。同様に、第2比較器43には分圧回路31の第2電圧V2、および既定第2電圧Vc2に相当する基準電圧Vrがそれぞれ入力され、蓄電部電圧Vc(第2電圧V2に相当)が既定第2電圧Vc2(基準電圧Vrに相当)に至ると第2比較器43の出力が反転する。
【0040】
なお、本実施の形態1では既定第1電圧Vc1を45V、既定第2電圧Vc2を47Vと決定している。しかし、これらの数値は一例であり定電流Icsの大きさや蓄電部25の満充電電圧等に応じて適宜決定すればよい。但し、バックアップ用の電源として蓄電装置15を用いる場合、通常はほぼ満充電状態であるので、蓄電部25の劣化状態を知るために容量値Cを測定する場合は、できるだけ満充電電圧近くの既定第1電圧Vc1および既定第2電圧Vc2とする方が望ましい。これにより、蓄電装置15の使用中で容量値Cを測定する際に、主電源11の瞬低が発生しても負荷13に対し十分な電圧を印加することができる。
【0041】
第1電圧V1が第2電圧V2より高い点、および基準電圧Vrが第1比較器41と第2比較器43において同一である点より、蓄電部25が充電され蓄電部電圧Vcが上昇すると、最初に第1電圧V1が基準電圧Vrに至る。これは図2(a)の時刻t1に示すように蓄電部電圧Vcが既定第1電圧Vc1に至ったことに相当する。その結果、第1比較器41の出力がLoからHiに反転する。一方、第2電圧V2は基準電圧Vrに至っていないので、第2比較器43の出力はHiのままである。これは、第2比較器43における基準電圧Vrがプラス側に入力されており第1比較器41とは逆であるので、第2比較器43の出力は第2電圧V2が基準電圧Vrに至っていなければHiとなる。
【0042】
これらの結果より、前記したように第1比較器41と第2比較器43の出力は接続点45で接続されるとともにプルアップ電圧源49によりプルアップされているので、第1比較器41と第2比較器43の出力が両方ともHiの時に接続点45の電圧、すなわち電圧検出信号HLはHiとなる。この様子を図2(b)に示す。なお、図2(b)において、横軸は時刻tを、縦軸は電圧検出信号HLをそれぞれ示す。時刻t1で第1電圧V1が基準電圧Vrに至ると、電圧検出信号HLはLoからHiに反転する。
【0043】
次に、蓄電部25の充電が進行すると、第2電圧V2が基準電圧Vrに至る。これは図2(b)の時刻t2に示すように蓄電部電圧Vcが既定第2電圧Vc2に至ったことに相当する。その結果、第2比較器43の出力がHiからLoに反転する。一方、第1電圧V1は既に基準電圧Vrに至っているので、第1比較器41の出力はHiのままである。これらのことから、第2比較器43の出力がLoとなったので接続点45の電圧、すなわち電圧検出信号HLはLoとなる。この様子を図2(b)に示す。時刻t2で第2電圧V2が基準電圧Vrに至ると、電圧検出信号HLはHiからLoに反転する。
【0044】
ここで、前記したように既定第1電圧Vc1と既定第2電圧Vc2はあらかじめ決められているので、電圧変化幅ΔVcもあらかじめ求められる。そこで、制御回路53は図2(b)の電圧検出信号HLの反転から期間tmを求める。具体的には時刻t1で電圧検出信号HLが反転してから時刻t2で再び反転するまでを制御回路53に内蔵したカウンタで計測することで、期間tmを求めている。なお、この期間tmは第1比較器41の出力が反転してから第2比較器43の出力が反転するまでの期間と同じことである。
【0045】
このようにして期間tmが求まると、既定値である定電流Icsおよび電圧変化幅ΔVcとともに(1)式に代入することで蓄電部25の容量値Cを求めることができる。この容量値Cは劣化とともに小さくなるので、容量値Cがあらかじめ決められた劣化限界値以下であれば蓄電部25が劣化していると判断できる。
【0046】
このようにして容量値(C)を求めると次の理由で高精度化が可能になる。まず、制御回路53は期間tmのみを計測すればよく、そのために前記マイクロコンピュータのカウンタを用いるが、前記カウンタの分解能は前記マイクロコンピュータのクロック周波数程度となるため、期間tmの計測精度は従来の10ビットのA−D変換器の精度に比べ極めて高い。次に、第1分圧抵抗器33、第2分圧抵抗器35および第3分圧抵抗器36の抵抗値が例えば環境温度により変化すると、それに応じて第1電圧V1と第2電圧V2も変化するが、その変化幅はほぼ等しい。すなわち、例えば第1電圧V1が変化して第1電圧V1から逆算される既定第1電圧Vc1が45Vから45.2Vに変化したとしても、第2電圧V2も変化するので、逆算した既定第2電圧Vc2は47Vから47.2Vに変化することになる。従って、電圧変化幅ΔVcは変化前後でいずれも2Vのまま安定している。同様に、基準電圧Vrが変化しても第1比較器41と第2比較器43の両方に入力されているので、電圧検出信号HLの反転時刻が変化するものの期間tmは一定となる。従って、容量値Cを求める際に蓄電部電圧Vcの検出を直接行なわず、既定第1電圧Vc1と既定第2電圧Vc2に至ったか否かを2値の信号(電圧検出信号HL)で求めるだけなので、従来のA−D変換器の誤差要因がなく高精度に容量値Cを求めることが可能となる。
【0047】
ここで、上記のようにして容量値Cを求めるための回路構成は、図1に示すように分圧回路31、第1比較器41、第2比較器43、プルアップ抵抗器47およびプルアップ電圧源49から構成されるので、極めて簡易な回路からなる。従って、簡易な回路構成で高精度に蓄電部25の容量値Cを求めることができる。
【0048】
なお、さらなる高精度化の構成として、第1分圧抵抗器33、第2分圧抵抗器35および第3分圧抵抗器36の抵抗値が環境温度に応じていっそう同様に変化するようにするため、例えば同一の回路基板上に、互いに近い位置にこれら3個の抵抗器を実装する構成とすればよい。なお、基準電圧源37やプルアップ電圧源49はそれぞれ1つしかないので必ずしも同一回路基板上に実装する必要はないが、回路基板の1枚化による蓄電装置15の構造簡易化や小型化の観点からは同一回路基板への実装が望ましい。
【0049】
次に、このような蓄電装置15の容量値Cを求めて劣化を判断する動作を図3のフローチャートにより説明する。なお、図3のフローチャートは制御回路53に内蔵したソフトウエアのメインルーチン(図示せず)から必要に応じて実行されるサブルーチンとして示した。
【0050】
定電流Icsによる蓄電部25の充電中に図3のサブルーチンが実行されると、まず制御回路53は入力ポート55の状態を監視する(ステップ番号S11)。次に、入力ポート55に入力される電圧検出信号HLがLoからHiに反転したか否かを判断する(S13)。もし反転していなければ(S13のNo)、S11に戻り入力ポート55の状態監視を継続する。
【0051】
一方、電圧検出信号HLが反転すれば(S13のYes)、第1電圧V1が基準電圧Vrに至った状態である。これにより制御回路53は電圧検出信号HLが一旦反転すると、第1比較器41がチャタリングを起こして反転を繰り返しても、以後の動作において図3のサブルーチンが終了するまで無視するようにしている。このように動作することで、電圧検出信号HLに対しソフトウエア的にヒステリシスを持たせている。なお、前記ヒステリシスはハードウエア的に一旦電圧が反転すれば既定の電圧幅を超えるまで再度反転させないようにしてもよい。
【0052】
S13のYesで第1電圧V1が基準電圧Vrに至ると、制御回路53は前記マイクロコンピュータに内蔵したカウンタをスタートさせる(S15)。なお、図3のフローチャートでは電圧検出信号HLが反転するまではS11とS13の動作を繰り返すように動作しているが、この動作の途中で電圧検出信号HLが反転すると僅かではあるがカウンタのスタートにずれが生じる。従って、さらなる高精度な容量値Cを求める場合は、電圧検出信号HLが反転することにより割り込みを発生させ、割り込み先でカウンタをスタートするようにすればよい。
【0053】
次に、再び入力ポート55の状態を監視し(S17)、入力ポート55に入力される電圧検出信号HLがHiからLoに反転したか否かを判断する(S19)。もし反転していなければ(S19のNo)、S17に戻り入力ポート55の状態監視を継続する。
【0054】
一方、電圧検出信号HLが反転すれば(S19のYes)、第2電圧V2が基準電圧Vrに至ったと判断する。なお、この動作も上記したようにソフトウエア的なヒステリシスを持たせている。S19でYesになることにより、制御回路53は前記カウンタをストップさせる(S21)。なお、高精度な容量値Cが必要な場合には、上記したように電圧検出信号HLの反転による割り込みを発生させ、割り込み先でカウンタをストップするようにすればよい。その後、前記カウンタの値は期間tmと比例するので、カウンタ値と時間との間の既知の比例定数より期間tmを求める(S23)。
【0055】
次に、制御回路53は求めた期間tmを用いて、(1)式より蓄電部25の容量値Cを求める(S25)。ここで、既定値である定電流Icsおよび電圧変化幅ΔVcはあらかじめ前記マイクロコンピュータのメモリに記憶されている。
【0056】
なお、本実施の形態1では定電流Icsの値を前記メモリに記憶しているが、これは電流検出回路23によって都度電流Icを測定するようにしてもよい。この場合は実際の電流値を用いて容量値Cを求めることができるので、さらなる高精度化が図れる。
【0057】
その後、制御回路53は温度センサ51より温度Tを求める(S27)。次に、あらかじめ前記メモリに内蔵された温度Tと容量値Cとの相関から容量値Cを補正する(S29)。ここで、容量値Cは温度Tが下がると緩やかに低下する非線形の相関関係を有する。従って、現在の温度Tから前記相関関係により容量値Cの変化率を求め、S25で計算した容量値Cに前記変化率を乗じることで温度Tによる容量値Cの補正を行なっている。このように温度補正を行なうことで次に述べる劣化判断の精度が向上する。
【0058】
次に、制御回路53は温度補正した容量値Cと劣化限界値を比較する(S31)。ここで、劣化限界値は蓄電装置15としてこれ以上使用できない限界の容量値のことで、蓄電装置15や負荷13等の仕様に応じてあらかじめ決定され、前記メモリに記憶されている。なお、既述したように容量値Cは劣化とともに小さくなるので、もし容量値Cが劣化限界値以下であれば、蓄電部25が劣化したと判断する(S31のYes)。この場合、制御回路53は蓄電部25の劣化信号をデータ信号dataとして外部制御回路59に出力し(S33)、その後、図3のサブルーチンを終了し前記メインルーチンに戻る。この劣化信号を受け、外部制御回路59は警告を発するなどの動作を行なうことで、蓄電部25、あるいは蓄電装置15の交換を促す。
【0059】
一方、容量値Cが劣化限界値より大きければ(S31のNo)、蓄電部25は劣化していないので、そのまま図3のサブルーチンを終了し前記メインルーチンに戻る。
【0060】
このような動作を蓄電部25の充電毎に繰り返すことにより、蓄電部25の劣化を高精度に判断できるので、蓄電装置15の信頼性が高まる。
【0061】
なお、図3のサブルーチンの実行中、すなわち容量値Cを求め蓄電部25の劣化判断を行なう動作中に、主電源11が瞬低を起こす等により定電流Icsでの蓄電部25の充電が途切れた場合、制御回路53は容量値Cを求める動作を停止する。具体的には、制御回路53は電流検出回路23により電流Icを検出しているので、主電源11の瞬低が発生すると電流Icも一瞬変化する。この変化を検出すると、制御回路53は図3のサブルーチンの実行を直ちに停止するよう割り込みをかける。これにより、容量値Cを求める動作を停止している。このような動作を行なう理由は、瞬低が発生すると蓄電部電圧Vcが既定第1電圧Vc1から既定第2電圧Vc2に至るまでの期間tmに誤差が発生するためである。従って、容量値Cを求める動作を停止することで、容量値Cの誤差を低減し劣化判断の高精度化を図ることができる。なお、瞬低発生の判断は電流Icの変化に限定されるものではなく、蓄電部電圧Vcを電圧検出回路27で検出し、その変化から瞬低発生を判断するようにしてもよい。
【0062】
以上の構成、動作により、簡単な構成で高精度に蓄電部25の容量値Cを検出可能な蓄電装置15を実現できる。
【0063】
なお、本実施の形態1ではプルアップ電圧源49を独立して設けているが、これは例えば第1比較器41や第2比較器43の駆動電圧源(図示せず)と共用する構成としてもよい。この場合は独立してプルアップ電圧源49を設ける必要がなくなるので、さらに簡易な回路構成とすることができる。
【0064】
また、制御回路53において、内部でプルアップ電圧源49とプルアップ抵抗器47の直列回路が入力ポート55に接続されている構成の前記マイクロコンピュータを用いてもよい。この場合はプルアップ電圧源49とプルアップ抵抗器47の両方が不要となり、さらに簡易な回路構成とすることができる。
【0065】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における蓄電装置のブロック回路図である。なお、図4において太線は電力系配線を、細線は信号系配線をそれぞれ示す。
【0066】
図4において、図1と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。すなわち、本実施の形態2における特徴となる構成は以下の点である。
【0067】
1)分圧回路31において、第2分圧抵抗器35を外し、第1分圧抵抗器33と第3分圧抵抗器36を直列接続する構成とした。
【0068】
2)第1比較器41と第2比較器43には、第1分圧抵抗器33と第3分圧抵抗器36の間の電圧が入力される構成とした。従って、分圧回路31から第1比較器41と第2比較器43に入力される電圧は等しくなる(第1電圧V1=第2電圧V2)。
【0069】
3)基準電圧源37の正極側とグランドの間に2個の直列接続された基準電圧分圧抵抗器61を設けた。
【0070】
4)2個の基準電圧分圧抵抗器61の間の電圧(以下、第1基準電圧Vr1と呼ぶ)が第1比較器41に入力される構成とした。
【0071】
上記以外の構成は図1と同じである。なお、図4において第1比較器41と第2比較器43の位置が異なる点に注意が必要である。また、実施の形態1で述べた第2比較器43に入力される基準電圧Vrを本実施の形態2では第2基準電圧Vr2と呼ぶ。従って、基準電圧Vrと第2基準電圧Vr2は等しい。
【0072】
図4の構成を図1の構成と比較すると、分圧回路31から第1比較器41と第2比較器43に入力される電圧が等しくなるようにし、基準電圧源37から第1比較器41と第2比較器43に入力される電圧が異なるようにしたことになる。従って、本実施の形態2において第1比較器41と第2比較器43の出力が反転する動作は次のようになる。
【0073】
まず、第2比較器43に入力される第2基準電圧Vr2は基準電圧Vrと等しいので、実施の形態1と同様にして第1分圧抵抗器33と第3分圧抵抗器36の抵抗値は蓄電部電圧Vcが既定第2電圧Vc2に至った時に第2電圧V2が第2基準電圧Vr2に至るようにあらかじめ決定される。この際、第2電圧V2が第2比較器43を構成する前記コンパレータの入力許容電圧以内になるよう考慮している。
【0074】
次に、第1比較器41に入力される第1電圧V1は第2電圧V2と等しいことから、蓄電部電圧Vcが既定第1電圧Vc1に至った時に第1電圧V1が第1基準電圧Vr1に至るように2個の基準電圧分圧抵抗器61の抵抗値が決定される。ここで、図4の回路より明らかなように第1基準電圧Vr1は第2基準電圧Vr2(=基準電圧Vr)より低いので、第1比較器41の出力が第2比較器43の出力より先に反転する。
【0075】
このようにして第1分圧抵抗器33、第3分圧抵抗器36および2個の基準電圧分圧抵抗器61の抵抗値を決定することで、第1電圧V1と第2電圧V2(両者は等しい)が蓄電部電圧Vcに相当し、既定第1電圧Vc1と既定第2電圧Vc2がそれぞれ第1基準電圧Vr1と第2基準電圧Vr2に相当することになる。ゆえに、第1比較器41には分圧回路31の第1電圧V1、および既定第1電圧Vc1に相当する第1基準電圧Vr1がそれぞれ入力され、蓄電部電圧Vc(第1電圧V1に相当)が既定第1電圧Vc1(第1基準電圧Vr1に相当)に至ると第1比較器41の出力が反転する。同様に、第2比較器43には分圧回路31の第2電圧V2、および既定第2電圧Vc2に相当する第2基準電圧Vr2がそれぞれ入力され、蓄電部電圧Vc(第2電圧V2に相当)が既定第2電圧Vc2(第2基準電圧Vr2に相当)に至ると第2比較器43の出力が反転する。
【0076】
このような構成の蓄電装置15において、容量値Cを求める動作は実施の形態1の図3と同じである。また、図3のサブルーチン実行中に瞬低が発生した場合に容量値Cを求める動作を停止する点も実施の形態1と同じである。従って、実施の形態1と同様に高精度な容量値Cの検出、および蓄電部25の劣化判断が可能となる。
【0077】
なお、図4の構成とすることで図1に比べて分圧回路31に用いる抵抗器の数が3個から2個に減る。従って、図1では3個の抵抗器が環境温度に対して同様に抵抗値が変化するように、例えば同一回路基板上に互いに近い位置に配置する構成を述べたが、図4の構成では2個の抵抗器に対して環境温度に応じ同様の抵抗値変化をするように配置すればよいので、回路基板上の抵抗器等の部品配置における設計自由度が増す。但し、2個の基準電圧分圧抵抗器61も環境温度に応じ同様の抵抗値変化をするよう配置を考慮する必要があるが、必ずしも分圧回路31に用いる抵抗器と2個の基準電圧分圧抵抗器61とを全て同一回路基板上に互いに近い位置に配置する必要はない。
【0078】
以上の構成、動作により、簡単な構成で高精度に蓄電部25の容量値Cを検出可能な蓄電装置15を実現できる。
【0079】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における蓄電装置のブロック回路図である。なお、図5において太線は電力系配線を、細線は信号系配線をそれぞれ示す。
【0080】
図5において、図4と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。すなわち、実施の形態2の構成に対する本実施の形態3における特徴となる構成は以下の点である。
【0081】
1)分圧回路31を廃した。
【0082】
2)第1比較器41と第2比較器43には、蓄電部電圧Vcを直接入力される構成とした。従って、第1電圧V1と第2電圧V2は蓄電部電圧Vcと等しくなる。
【0083】
3)第1比較器41と第2比較器43に蓄電部電圧Vcを直接入力するために第1比較器41と第2比較器43の前記コンパレータを高耐電圧タイプのものにした。
【0084】
4)基準電圧源37の基準電圧Vr(=第2基準電圧Vr2)を47Vと高電圧化した。従って、第2基準電圧Vr2は既定第2電圧Vc2と等しくなる。
【0085】
5)2個の基準電圧分圧抵抗器61の間の電圧(第1基準電圧Vr1)が45Vになるように2個の基準電圧分圧抵抗器61の抵抗値をそれぞれ決定した。従って、第1基準電圧Vr1は既定第1電圧Vc1と等しくなる。
【0086】
上記以外の構成は図4と同じである。
【0087】
以上の構成上の変更により、本実施の形態3において第1比較器41と第2比較器43の出力が反転する動作は次のようになる。
【0088】
まず、第1比較器41には第1電圧V1(=蓄電部電圧Vc)、および第1基準電圧Vr1(=既定第1電圧Vc1)がそれぞれ入力される。従って、蓄電部電圧Vc(=第1電圧V1)が既定第1電圧Vc1(=第1基準電圧Vr1)に至ると第1比較器41の出力が反転する。次に、第2比較器43には第2電圧V2(=蓄電部電圧Vc)、および第2基準電圧Vr2(=既定第2電圧Vc2)がそれぞれ入力される。従って、蓄電部電圧Vc(=第2電圧V2)が既定第2電圧Vc2(=第2基準電圧Vr2)に至ると第2比較器43の出力が反転する。
【0089】
このような構成の蓄電装置15において、容量値Cを求める動作は実施の形態1の図3と同じである。また、図3のサブルーチン実行中に瞬低が発生した場合に容量値Cを求める動作を停止する点も実施の形態1と同じである。従って、実施の形態1と同様に高精度な容量値Cの検出、および蓄電部25の劣化判断が可能となる。
【0090】
なお、図5の構成とすることで図4に比べて分圧回路31が不要となるので、さらに簡易な回路構成とすることができる。但し、高電圧を直接入力できる高価な前記コンパレータが必要となる。また、2個の基準電圧分圧抵抗器61に対し環境温度に応じて同様の抵抗値変化をするよう配置を考慮する方が望ましい点は実施の形態2と同様である。
【0091】
以上の構成、動作により、簡単な構成で高精度に蓄電部25の容量値Cを検出可能な蓄電装置15を実現できる。
【0092】
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4における蓄電装置のブロック回路図である。図7は、実施の形態4における蓄電装置の容量値を求め劣化判断を行なう動作のフローチャートである。なお、図6において太線は電力系配線を、細線は信号系配線をそれぞれ示す。
【0093】
図6において、図1と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。すなわち、実施の形態1の構成に対する本実施の形態4における特徴となる構成は以下の点である。
【0094】
1)第1比較器41の出力を制御回路53の第1入力ポート63に、第2比較器43の出力を制御回路53の第2入力ポート65に、それぞれ接続した。
【0095】
2)プルアップ抵抗器47とプルアップ電圧源49を廃した。
【0096】
3)上記より第1比較器41と第2比較器43の出力がプルアップされないので、第1比較器41と第2比較器43をコンパレータからオペアンプに変更した。
【0097】
上記以外の構成は図1と同じである。
【0098】
以上の構成上の変更によっても、第1比較器41と第2比較器43の出力が反転する動作は実施の形態1と同じである。従って、蓄電部25の充電進行とともに、まず第1比較器41の出力(以下、第1電圧検出信号HL1と呼ぶ)が反転し、次に第2比較器43の出力(以下、第2電圧検出信号HL2と呼ぶ)が反転する。但し、本実施の形態4では2つの信号が独立して制御回路53に入力されるので、蓄電部25の容量値Cを求め劣化判断を行なう動作において実施の形態1と異なる点がある。そこで、この相違点を中心に図7のフローチャート(サブルーチン)を用いて動作を説明する。なお、図7のフローチャートで図3のフローチャートと同一の動作を行なう部分には同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0099】
図7のサブルーチンが実行されると、制御回路53はまず第1入力ポート63の状態を監視する(S51)。次に、第1入力ポート63に入力される第1電圧検出信号HL1がLoからHiに反転したか否かを判断する(S53)。もし反転していなければ(S53のNo)、S51に戻り第1入力ポート63の状態監視を継続する。
【0100】
一方、第1電圧検出信号HL1が反転すれば(S53のYes)、第1電圧V1が基準電圧Vrに至ったので前記マイクロコンピュータに内蔵したカウンタをスタートさせる(S55)。次に、第2入力ポート65の状態を監視し(S57)、第2入力ポート65に入力される第2電圧検出信号HL2がHiからLoに反転したか否かを判断する(S59)。もし反転していなければ(S59のNo)、S57に戻り第2入力ポート65の状態監視を継続する。
【0101】
一方、第2電圧検出信号HL2が反転すれば(S59のYes)、第2電圧V2が基準電圧Vrに至ったので前記カウンタをストップさせる(S21)。S21以下の動作は図3と同じであるため説明を省略する。また、図7のサブルーチン実行中に瞬低が発生した場合に容量値Cを求める動作を停止する点も実施の形態1と同じである。さらに、図3のサブルーチンと同様に、第1電圧検出信号HL1や第2電圧検出信号HL2の反転判断にヒステリシスを設けたり、反転発生時に割り込みによりカウンタのスタートやストップを行なうようにしてもよい。
【0102】
このような動作によっても高精度に蓄電部25の容量値Cを求め、劣化判断を行なうことができる。
【0103】
なお、本実施の形態4の構成とすることで実施の形態1と比べプルアップ抵抗器47とプルアップ電圧源49が不要となるため、さらに簡易な回路構成とすることができる。但し、制御回路53の入力ポートを2系統使用するため、入力ポート数に余裕があるか否かで実施の形態1の構成とするか、本実施の形態4の構成とするかを適宜決定すればよい。
【0104】
以上の構成、動作により、簡単な構成で高精度に蓄電部25の容量値Cを検出可能な蓄電装置15を実現できる。
【0105】
なお、分圧回路31における3個の抵抗器に対し環境温度に応じて同様の抵抗値変化をするよう配置を考慮する方が望ましい点は実施の形態1と同様である。
【0106】
また、本実施の形態4において、実施の形態2と同様に分圧回路31を2個の抵抗器で簡略化するとともに、基準電圧源37に2個の基準電圧分圧抵抗器61を設ける構成としてもよい。この際の効果は実施の形態2と同様である。
【0107】
また、本実施の形態4では第1入力ポート63と第2入力ポート65が独立しているので、第1比較器41と第2比較器43の出力が逆になっていてもよい。すなわち、第1電圧検出信号HL1がLoからHiに反転するように構成してもHiからLoに反転するように構成してもよい。第2電圧検出信号HL2においても同様である。従って、第1電圧検出信号HL1と第2電圧検出信号HL2の出力反転は任意の組み合わせで選択すればよい。
【0108】
(実施の形態5)
図8は、本発明の実施の形態5における蓄電装置のブロック回路図である。なお、図8において太線は電力系配線を、細線は信号系配線をそれぞれ示す。
【0109】
図8において、図5、および図6と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。すなわち、本実施の形態5における特徴となる構成は実施の形態4の構成に対し、分圧回路31を廃するとともに実施の形態3における基準電圧源37に2個の基準電圧分圧抵抗器61を設ける構成を組み合わせた点である。従って、第1比較器41と第2比較器43には蓄電部電圧Vcが直接入力されるので、これらの前記オペアンプを高耐電圧タイプのものとしている。また、第1電圧V1と第2電圧V2は蓄電部電圧Vcと等しくなる。さらに、第2基準電圧Vr2を47Vに高電圧化し、第1基準電圧Vr1が45Vになるように2個の基準電圧分圧抵抗器61の抵抗値をそれぞれ決定している。従って、第1基準電圧Vr1は既定第1電圧Vc1と、第2基準電圧Vr2は既定第2電圧Vc2と、それぞれ等しくなる。上記以外の構成は図6と同じである。
【0110】
また、本実施の形態5における第1比較器41と第2比較器43の出力が反転する動作は実施の形態3と同様である。すなわち、第1比較器41には第1電圧V1(=蓄電部電圧Vc)、および第1基準電圧Vr1(=既定第1電圧Vc1)がそれぞれ入力される。従って、蓄電部電圧Vc(=第1電圧V1)が既定第1電圧Vc1(=第1基準電圧Vr1)に至ると第1比較器41の出力が反転する。この出力が第1電圧検出信号HL1として第1入力ポート63に入力される。また、第2比較器43には第2電圧V2(=蓄電部電圧Vc)、および第2基準電圧Vr2(=既定第2電圧Vc2)がそれぞれ入力される。従って、蓄電部電圧Vc(=第2電圧V2)が既定第2電圧Vc2(=第2基準電圧Vr2)に至ると第2比較器43の出力が反転する。この出力が第2電圧検出信号HL2として第2入力ポート65に入力される。
【0111】
従って、このような構成の蓄電装置15における容量値Cを求める動作は実施の形態4の図7と同じである。また、図7のサブルーチン実行中に瞬低が発生した場合に容量値Cを求める動作を停止する点も実施の形態1と同じである。ゆえに、実施の形態4と同様に高精度な容量値Cの検出、および蓄電部25の劣化判断が可能となる。
【0112】
なお、図8の構成とすることで分圧回路31もプルアップ抵抗器47とプルアップ電圧源49も不要となるので、極めて簡易な回路構成で高精度に容量値Cの検出が可能となる。但し、制御回路53における入力ポート数の余裕と高耐電圧オペアンプへのコスト的余裕が必要となる。また、2個の基準電圧分圧抵抗器61に対し環境温度に応じて同様の抵抗値変化をするよう配置を考慮する方が望ましい点は実施の形態2と同様である。また、第1電圧検出信号HL1と第2電圧検出信号HL2の出力反転を任意の組み合わせで選択してもよい点は実施の形態4と同様である。
【0113】
以上の構成、動作により、簡単な構成で高精度に蓄電部25の容量値Cを検出可能な蓄電装置15を実現できる。
【0114】
なお、実施の形態1〜5において、第1比較器41と第2比較器43の入力端子の極性は一例であり、それぞれが逆転していてもよい。この場合は第1比較器41と第2比較器43の出力における反転方向が逆になるので、制御回路53における電圧検出信号HLの反転判断を逆にする必要がある。また、この際に回路構成によっては分圧回路31の抵抗値や基準電圧分圧抵抗器61の抵抗値を変更する必要がある。
【0115】
また、実施の形態1〜5において、温度センサ51を設ける構成を示したが、これは例えば蓄電装置15を非常用電源として使用する場合のように環境温度の変化が小さければ温度センサ51を設けない構成としてもよい。この場合は求めた容量値Cの温度補正をせずに劣化判断を行なう動作となる。
【0116】
また、実施の形態1〜5において、容量値Cを求め劣化判断を行なう動作を蓄電部25の定電流Icsによる充電時に行なっているが、これは蓄電部25と並列に定電流Icsでの放電が可能な定電流放電回路(図示せず)を設け、定電流Icsでの放電中に容量値Cを求め劣化判断を行なうようにしてもよい。この場合、図2(a)の蓄電部電圧Vcの経時特性の傾きが右下がりの直線になるものの、容量値Cの求め方は実施の形態1〜5と同様である。このような前記定電流放電回路を設ける構成は、例えば蓄電部25の充電回路21が主電源11側に設けられており、蓄電装置15内で定電流充電の制御ができない場合で、容量値Cから劣化判断を行ないたい際に効果的である。なお、この場合も放電中に瞬低が発生すれば、容量値Cを求める動作を停止するように制御することで、さらに高精度な劣化判断が可能となる。
【0117】
また、実施の形態1〜5において、蓄電部25には電気二重層キャパシタを用いたが、これは電気化学キャパシタ等の他のキャパシタでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明にかかる蓄電装置は、簡単な構成で高精度に蓄電部の容量値を求めることができ劣化判断が可能となるので、特に主電源の電圧低下時に蓄電部から電力を供給する蓄電装置等として有用である。
【符号の説明】
【0119】
21 充電回路
25 蓄電部
31 分圧回路
37 基準電圧源
41 第1比較器
43 第2比較器
45 接続点
47 プルアップ抵抗器
49 プルアップ電圧源
51 温度センサ
53 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電部と、
前記蓄電部に電気的に接続された充電回路と、
前記蓄電部に電気的に接続され、蓄電部電圧(Vc)が既定第1電圧(Vc1)に至ると出力が反転する第1比較器と、
前記蓄電部に電気的に接続され、蓄電部電圧(Vc)が既定第2電圧(Vc2)に至ると出力が反転する第2比較器と、
前記充電回路、第1比較器、および第2比較器と電気的に接続された制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記蓄電部を定電流(Ics)で充電する際に、前記第1比較器の出力が反転してから前記第2比較器の出力が反転するまでの期間(tm)を求め、前記期間(tm)と、あらかじめ求められた前記既定第1電圧(Vc1)と前記既定第2電圧(Vc2)との電圧変化幅(ΔVc)から前記蓄電部の容量値(C)を求めるようにした蓄電装置。
【請求項2】
前記蓄電部に並列に接続され、前記蓄電部電圧(Vc)に比例した第1電圧(V1)と、前記蓄電部電圧(Vc)に比例し前記第1電圧(V1)とは異なる第2電圧(V2)を出力する分圧回路と、
基準電圧(Vr)を出力する基準電圧源と、をさらに備え、
前記分圧回路の前記第1電圧(V1)、および前記既定第1電圧(Vc1)に相当する前記基準電圧(Vr)が前記第1比較器に入力されるように接続されるとともに、
前記分圧回路の前記第2電圧(V2)、および前記既定第2電圧(Vc2)に相当する前記基準電圧(Vr)が前記第2比較器に入力されるように接続される構成を有する請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記第1比較器の出力と前記第2比較器の出力の接続点が前記制御回路と、プルアップ抵抗器を介してプルアップ電圧(Vcc)を有するプルアップ電圧源とに電気的に接続される構成を有し、
前記制御回路は、前記接続点の電圧検出信号(HL)が反転してから再び反転するまでを期間(tm)として求めるようにした請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記蓄電部に前記制御回路と電気的に接続された温度センサを設け、
前記制御回路は前記温度センサで温度(T)を検出し、前記温度(T)と前記容量値(C)との相関から前記容量値(C)を補正するようにした請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記制御回路は前記容量値(C)を求める間に前記蓄電部への充電が途切れた場合、前記容量値(C)を求める動作を停止するようにした請求項1に記載の蓄電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−109745(P2011−109745A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259632(P2009−259632)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】